説明

イミダゾールおよびベンゾイミダゾールカスパーゼのインヒビターならびにそれらの使用

【課題】本発明は、カスパーゼインヒビターを提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は明細書中に記載の化合物であって、Rは、COH、CHCOH、またはそれらのエステル、アミド、もしくは同配体であり;RおよびRは、独立して、水素または必要に応じて置換されたC〜C脂肪族基から選択され;そしてRおよびRは、各々独立して、水素、必要に応じて置換されたC〜C脂肪族基から選択されるか、またはRおよびRは、それらが結合する環と一緒になって、必要に応じて置換された二環式環を形成するものを提供する。このカスパーゼインヒビターは、癌、急性炎症および自己免疫障害、虚血性疾患、ならびに特定の神経変性障害のような多くの疾患の処置に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、米国仮特許出願第60/252,252号(2000年11月21日出願)に対する優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、医化学の分野であり、そして細胞のアポトーシスおよび炎症を媒介するカスパーゼを阻害する新規化合物およびその薬学的組成物に関する。本発明はまた、本発明の化合物および薬学的組成物を使用して、カスパーゼ活性が関連する疾患を処置する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
アポトーシスすなわちプログラム細胞死は、生物が望まない細胞を排除する、主要な機構である。アポトーシスの調節解除(過剰なアポトーシス、またはアポトーシスを受けることができないかのいずれか)は、多くの疾患(例えば、癌、急性炎症および自己免疫疾患、虚血疾患ならびに特定の神経変性疾患)に関与している(一般には、Science、1998、281、1283−1312;Ellisら、Ann.Rev.Cell.Biol.、1991、7、663を参照のこと)。
【0004】
カスパーゼは、アポトーシスおよび細胞分解についてのシグナル伝達において、重要な媒介因子である、システインプロテアーゼ酵素のファミリーである(Thornberry、Chem.Biol.、1998、5、R97−R103)。これらのシグナル伝達経路は、細胞の型および刺激に依存して異なるが、全てのアポトーシス経路は、重要なタンパク質のタンパク質分解を導く共通のエフェクター経路に合流するようである。カスパーゼは、シグナル伝達経路のエフェクター段階およびさらに上流の開始時の両方に関与する。開始事象に関与する上流のカスパーゼは、活性化され、次に、アポトーシスの後期段階に関与する他のカスパーゼを活性化する。
【0005】
カスパーゼ−1(最初に同定されたカスパーゼ)は、インターロイキン転換酵素すなわち「ICE」としても公知である。カスパーゼ−1は、Asp−116とAla−117との間でのpIL−1βの特異的切断によって、前駆体インターロイキン−1β(「pIL−1β」)を、炎症誘発活性形態に転換する。カスパーゼ−1に加えて、11種の他の公知のヒトカスパーゼが存在し、これらの全てが、アスパルチル残基で特異的に切断する。これらはまた、切断部位のN末端側の少なくとも4アミノ酸残基についての厳密な要求性を有することが観察されている。
【0006】
これらのカスパーゼは、好まれるアミノ酸配列または主に認識されるアミノ酸配列に依存して、3つの群に分類されている。カスパーゼ1、4および5を含むカスパーゼの群は、切断部位のN末端側の4位で疎水性芳香族アミノ酸を好むことが示されている。カスパーゼ2、3および7を含む別の群は、切断部位のN末端側で、1位および4位の両方でアスパルチル残基、好ましくは、Asp−Glu−X−Aspの配列を認識する。カスパーゼ6,8、9および10を含む第三の群は、主要認識配列中の多くのアミノ酸を許容するが、分枝脂肪族側鎖を有する残基(例えば、バリンおよびロイシン)を4位で好むようである。
【0007】
これらのカスパーゼはまた、その推定機能に従って、グループ分けされている。第一のサブファミリーは、カスパーゼ−1(ICE)、4および5からなる。これらのカスパーゼは、炎症誘発性サイトカインのプロセシングに関与し、従って、炎症において重要な役割を果たすことが示されている。このクラスのうちで最も研究された酵素であるカスパーゼ−1は、タンパク質分解性切断によって、IL−1β前駆体を活性化する。従って、この酵素は、炎症性応答において重要な役割を果たす。カスパーゼ−1はまた、インターフェロンγ誘導因子(IGIFまたはIL−18)(これは、抗原提示、T細胞活性化および細胞接着を調節する重要な免疫調節因子である、インターフェロンγの産生を刺激する)のプロセシングにも関与する。
【0008】
残りのカスパーゼは、第二、第三のサブファミリーを形成する。これらの酵素は、アポトーシスを導く細胞内シグナル伝達経路において中心的に重要である。この酵素からなる1つのサブファミリーは、アポトーシス経路(原形質膜からのシグナルの伝達を含む)における開始事象に関与する。このサブファミリーのメンバーとしては、カスパーゼ−2、8、9および10が挙げられる。エフェクターカスパーゼ3、6および7からなる他のサブファミリーは、アポトーシスによる細胞の体系的な分解および死を生じる、最終的な下流切断事象に関与する。上流のシグナル伝達に関与するカスパーゼは、下流のカスパーゼを活性化し、次いで、DNA修復機構を無効にし、DNAをフラグメント化し、細胞骨格を解体し、そして最終的に細胞を断片化する。
【0009】
カスパーゼによって主に認識される4アミノ酸の配列の知識は、カスパーゼインヒビターを設計するために使用されてきた。構造CHCO−[P4]−[P3]−[P2]−CH(R)CHCOHを有する、可逆的なテトラペプチドインヒビターが調製されており、ここで、P2〜P4は、最適なアミノ酸認識配列を示し、そしてRは、カスパーゼシステインスルフヒドリルに結合し得る、アルデヒド、ニトリルまたはケトンである。RanoおよびThornberry、Chem.Biol.4、149−155(1997);Mjalliら、Bioorg.Med.Chem.Lett.3、2689−2692(1993);Nicholsonら、Nature 376、37−43(1995)。類似のテトラペプチド認識配列に基づく不可逆的インヒビターが調製されており、ここで、Rは、アシルオキシメチルケトン−COCHOCOR’である。R’は、必要に応じて置換されたフェニル(例えば、2,6−ジクロロベンゾイルオキシ)によって例示され、そしてRは、COCHXであり、ここでXは、FまたはClのような脱離基である。Thornberryら、Biochemistry 33、3934(1994);Dolleら、J Med.Chem.37、563−564(1994)。
【0010】
細胞のアポトーシスの増大に関連する哺乳動物の種々の疾患状態を処置するための、カスパーゼインヒビターの有用性は、ペプチド性カスパーゼインヒビターを使用して実証されている。例えば、げっ歯類モデルにおいて、カスパーゼインヒビターは、梗塞サイズを減少させ、心筋梗塞後の心筋細胞のアポトーシスを阻害し、発作から生じる病変容積および神経学的欠損を減少させ、外傷性脳損傷における外傷後アポトーシスおよび神経学的欠損を減少させ、劇症肝臓破壊を処置するに有効であり、そして内毒素ショック後の生存を改善することが示されている。Yaoitaら、Circulation、97、276(1998);Endresら、J Cerebral Blood Flow and Metabolism、18、238、(1998);Chengら、J.Clin.Invest.、101、1992(1998);Yakovlevら、J Neurosience、17、7415(1997);Rodriquezら、J.Exp.Med.、184、2067(1996);Grobmyerら、Mol.Med.、5、585(1999)。
【0011】
一般に、上記のペプチド性インヒビターは、いくつかのカスパーゼ酵素に対して非常に強力である。しかし、この効力は、アポトーシスの細胞モデルにおいて、常に反映されるわけではない。さらに、ペプチド性インヒビターは、代表的に、所望されない薬理学的特性(例えば、乏しい経口吸収、乏しい安定性および迅速な代謝)によって特徴づけられる。PlattnerおよびNorbeck、Drug Discovery Technologies、ClarkおよびMoos編、(Ellis Horwood、Chichester、England、1990)。
【0012】
ペプチド性カスパーゼインヒビターの薬理学的特性を改善することの必要性を認識して、ペプチド模倣物および非天然アミノ酸ペプチドインヒビターが報告されている。
【0013】
WO 95/35308は、インターロイキン−1β変換酵素のインヒビター、とりわけ、以下の式:
【0014】
【化5】

の化合物を開示し、ここで、Xは、=N−または=CH−から独立して選択され;Rは、水素を含み;Rは、水素であり、そしてRは、α−アミノ酸側鎖を含み;そしてR13は、水素、芳香族環またはヘテロ芳香族環、必要に応じてFによって個々に、または多重に置換されたC〜C直鎖または分枝鎖のアルキル基を含む。WO 95/35308は、ICEに対して活性な化合物を報告し、他のカスパーゼに対する活性を報告していない。
【0015】
WO 98/10778は、以下の式:
【0016】
【化6】

のインターロイキン−1β変換酵素(ICE)/CED−3ファミリーインヒビターを使用する、アポトーシスの阻害を開示し、ここで、nは、1または2であり;R、RおよびRは、種々の基であり;Aは、天然または非天然のアミノ酸であり;Bは、とりわけハロメチル基を含み;そしてXおよびYは、種々の置換基である。
【0017】
WO 00/061542は、以下の式:
【0018】
【化7】

を有するジペプチドアポトーシスインヒビターを開示し、ここで、Rは、必要に応じて置換されたアルキル基または水素基であり;Rは、水素または必要に応じて置換されたアルキルであり;Yは、天然または非天然のアミノ酸の残基であり、そしてRは、アルキル基、飽和炭素環式基、部分的に飽和した炭素環式基、アリール基、飽和ヘテロ環式基、部分的に飽和したヘテロ環式基またはヘテロアリール基であり、ここで、この基は、必要に応じて置換され;Xは、O、S、NRまたは(CRであり、ここで、RおよびRは、各自、独立して、水素、アルキルおよびシクロアルキルからなる群より選択され、そしてnは、0、1、2または3であり;あるいは、XはNRであり、そしてRおよびRは、これらが結合する窒素原子と一緒になって、飽和ヘテロ環式基、部分的に飽和したヘテロ環式基またはヘテロアリール基を形成し、ここで、この基は、必要に応じて置換されるか、あるいは、Xは、CRであり、そしてRおよびRは、これらが結合する炭素と一緒になって、飽和炭素環式基、部分的に飽和した炭素環式基、アリール基、飽和ヘテロ環式基、部分的に飽和したヘテロ環式基または酸素含有へテロアリール基であり、ここで、この基は、必要に応じて置換され;但し、XがOである場合、Rは、非置換ベンジルまたはt−ブチルではなく;そしてXがCHである場合、RはHではない。
【0019】
多くのカスパーゼインヒビターが報告されているが、これらが、治療的に有効な、適切な薬理学的特性を有するか否かは明らかではない。従って、インビボでの有効なアポトーシス阻害を提供する、強力で、安定かつ膜を透過する低分子カスパーゼインヒビターの必要性がなおも存在する。このような化合物は、カスパーゼ酵素が役割を果たす上記の疾患を処置するのに、非常に有効である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
(発明の要旨)
現在、本発明の化合物およびその薬学的組成物が、カスパーゼおよび細胞のアポトーシスのインヒビターとして特に有効であることが見出されている。これらの化合物は、以下の一般式I:
【0021】
【化8】

を有し、ここで:
は、COH、CHCOHもしくはそれらのエステル、アミドまたは同配体であり;
は、水素または必要に応じて置換されたC〜C脂肪族基であり;
は、水素または必要に応じて置換されたC〜C脂肪族基であり;
およびRは、それぞれ独立して、水素および必要に応じて置換されたC〜C脂肪族基から選択されるか、またはRおよびRは、それらが結合する環と一緒になって必要に応じて置換された二環式環を形成し、この二環式環は、以下:
【0022】
【化9】

から選択される。
【0023】
本発明の化合物は、アポトーシスの細胞モデルにおいて良好な効力を有し、ある範囲のカスパーゼ標的にわたる強力な阻害特性を有する。さらに、これらの化合物は、改善された細胞透過特性および薬物動態特性を有し、そしてその効力の結果として、カスパーゼが関与する疾患に対する改善された効力を有することが予測される。したがって、本発明は以下を提供する。
(1) 以下の式Iの化合物であって:
【化101】


ここで、
は、COH、CHCOH、またはそれらのエステル、アミド、もしくは同配体であり;
は、水素または必要に応じて置換されたC〜C脂肪族基であり;
は、水素または必要に応じて置換されたC〜C脂肪族基であり;そしてRおよびRは、各々独立して、水素、必要に応じて置換されたC〜C脂肪族基から選択されるか、またはRおよびRは、それらが結合する環と一緒になり、必要に応じて置換された二環式環を形成し、該二環式環は、以下:
【化102】


から選択される、化合物。
(2) Rが、必要に応じて置換されたC1〜6の直鎖状または分枝状のアルキル基である、項目1に記載の化合物。
(3) 以下からなる群より選択される1つ以上の特徴を有する、項目1に記載の化合物:
a)Rは、COHまたはそのエステル、アミド、もしくは同配体である;
b)Rは、C1〜6の直鎖状または分枝状のアルキル基である;
c)Rは、水素である;および
d)RおよびRは、各々水素であるか、または、RおよびRは、それらが結合する環と一緒になって、ベンゾイミダゾール環を形成する。
(4) 以下の特徴を有する、項目3に記載の化合物:
a)Rは、COHまたはそのエステル、アミド、もしくは同配体である;
b)Rは、C1〜6の直鎖状または分枝状のアルキル基である;
c)Rは、水素である;および
d)RおよびRは、各々水素であるか、または、RおよびRは、それらが結合する環と一緒になって、ベンゾイミダゾール環を形成する。
(5) 以下からなる群より選択される、化合物:
[3S/R,(2S)]−5−フルオロ−3−{2−[(1H−イミダゾール−2−カルボニル)−アミノ]−プロピオニルアミノ}−4−オキソ−ペンタン酸;
[3S/R,(2S)]−5−フルオロ−3−{2−[(1H−イミダゾール−2−カルボニル)−アミノ]−プロピオニルアミノ}−4−オキソ−ペンタン酸tert−ブチルエステル;
[3S/R,(2S)]−3−{2−[(1H−ベンゾイミダゾール−2−カルボニル)−アミノ]−プロピオニルアミノ}−5−フルオロ−4−オキソ−ペンタン酸;
[3S/R,(2S)]−5−フルオロ−3−{2−[(1H−イミダゾール−2−カルボニル)−アミノ]−ブチリルアミノ}−4−オキソ−ペンタン酸;
[3S/R,(2S)]−5−フルオロ−3−{2−[(1H−イミダゾール−2−カルボニル)−アミノ]−3−メチルブチリルアミノ}−4−オキソ−ペンタン酸;
[3S/R,(2S)]−3−{2−[(1H−ベンゾイミダゾール−2−カルボニル)−アミノ]−3−メチルブチリルアミノ}−5−フルオロ−4−オキソ−ペンタン酸;
またはそれらの付加塩。
(6) 項目1〜5のいずれか1項に記載の化合物および薬学的に受容可能なキャリアを含む、薬学的組成物。
(7) 患者におけるカスパーゼ関連疾患を処置する方法であって、以下の式Iの化合物の治療有効量を該患者に投与する工程を包含し:
【化103】


ここで:
は、COH、CHCOH、またはそれらのエステル、アミド、もしくは同配体であり;
は、水素または必要に応じて置換されたC〜C脂肪族基であり;
は、水素または必要に応じて置換されたC〜C脂肪族基であり;そしてRおよびRは、各々独立して、水素、必要に応じて置換されたC〜C脂肪族基から選択されるか、またはRおよびRは、それらが結合する環と一緒になり、必要に応じて置換された二環式環を形成し、該二環式環は、以下:
【化104】


から選択される、方法。
(8) 前記疾患または処置が、IL−1媒介疾患、アポトーシス媒介疾患、炎症疾患、自己免疫疾患、破壊性骨疾患、増殖障害、感染疾患、変性疾患、細胞死に関連する疾患、過剰の食餌アルコール摂取疾患、ウイルス媒介疾患、ブドウ膜炎、炎症性腹膜炎、変形性関節症、膵炎、喘息、成人呼吸促進症候群、糸球体腎炎、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、強皮症、慢性甲状腺炎、グレーヴズ病、自己免疫胃炎、糖尿病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性好中球減少症、血小板減少症、慢性活性肝炎、重症筋無力症、炎症性腸疾患、クローン病、乾癬、アトピー性皮膚炎、瘢痕、対宿主性移植片病、器官移植拒絶、骨粗鬆症、白血病および関連障害、脊髄形成異常症候群、多発性骨髄腫関連骨障害、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、転移性黒色腫、カポージ肉腫、多発性骨髄腫、出血性ショック、敗血症、敗血症性ショック、火傷、細菌性赤痢、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、ケネディ病、プリオン病、大脳虚血、癲癇、心筋虚血、急性心臓病および慢性心臓病、心筋梗塞、うっ血性心不全、アテローム硬化症、冠状動脈バイパス移植、脊髄筋萎縮症、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、HIV関連脳炎、老化、脱毛症、発作に起因する神経学的損傷、潰瘍性大腸炎、外傷性脳損傷、脊髄障害、B型肝炎、C型肝炎、G型肝炎、黄熱病、デング熱、または日本脳炎、種々の形態の肝臓疾患、腎臓疾患、多発性嚢胞腎疾患、H.pylori関連胃潰瘍疾患および十二指腸潰瘍疾患、HIV感染、結核、髄膜炎、冠状動脈バイパス移植に関連する合併症の処置、あるいは種々の形態の癌の処置のための免疫療法から選択される、項目7に記載の方法。
(9) 前記疾患が、IL−1媒介疾患、アポトーシス媒介疾患、炎症疾患、自己免疫疾患、破壊性骨疾患、感染疾患、変性疾患、細胞死に関連する疾患、過剰の食餌アルコール摂取疾患、ウイルス媒介疾患、ブドウ膜炎、炎症性腹膜炎、変形性関節症、膵炎、成人呼吸促進症候群、糸球体腎炎、慢性関節リウマチ、糖尿病、血小板減少症、炎症性腸疾患、クローン病、乾癬、瘢痕、器官移植拒絶、骨粗鬆症、出血性ショック、敗血症、敗血症性ショック、火傷、細菌性赤痢、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、ケネディ病、プリオン病、大脳虚血、癲癇、急性心臓病および慢性心臓病、冠状動脈バイパス移植、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、脱毛症、潰瘍性大腸炎、外傷性脳損傷、脊髄障害、種々の形態の肝臓疾患、腎臓疾患、H.pylori関連胃潰瘍疾患および十二指腸潰瘍疾患、および髄膜炎から選択される、項目8に記載の方法。
(10) 前記疾患または状態が、冠状動脈バイパス移植に関連する合併症である、項目7に記載の方法。
(11) 前記疾患が癌である、項目7に記載の方法。
(12) 前記方法が、化学療法または放射線療法と組み合わせて用いられる、項目11に記載の方法。
(13) 前記化合物が、癌の処置のための免疫療法の成分である、項目11に記載の方法。
(14) 前記化合物が、以下からなる群より選択される1つ以上の特徴を有する、項目7〜13のいずれか1項に記載の方法:
a)Rは、COHまたはそのエステル、アミド、もしくは同配体である;
b)Rは、C1〜6の直鎖状または分枝状のアルキル基である;
c)Rは、水素である;および
d)RおよびRは、各々水素であるか、または、RおよびRは、それらが結合する環と一緒になって、ベンゾイミダゾール環を形成する。
(15) 前記化合物が以下の特徴を有する、項目7〜13のいずれか1項に記載の方法:
a)Rは、COHまたはそのエステル、アミド、もしくは同配体である;
b)Rは、C1〜6の直鎖状または分枝状のアルキル基である;
c)Rは、水素である;および
d)RおよびRは、各々水素であるか、または、RおよびRは、それらが結合する環と一緒になって、ベンゾイミダゾール環を形成する。
(16) 前記化合物が、以下からなる群より選択される、項目7〜13のいずれか1項に記載の方法:
[3S/R,(2S)]−5−フルオロ−3−{2−[(1H−イミダゾール−2−カルボニル)−アミノ]−プロピオニルアミノ}−4−オキソ−ペンタン酸;
[3S/R,(2S)]−5−フルオロ−3−{2−[(1H−イミダゾール−2−カルボニル)−アミノ]−プロピオニルアミノ}−4−オキソ−ペンタン酸tert−ブチルエステル;
[3S/R,(2S)]−3−{2−[(1H−ベンゾイミダゾール−2−カルボニル)−アミノ]−プロピオニルアミノ}−5−フルオロ−4−オキソ−ペンタン酸;
[3S/R,(2S)]−5−フルオロ−3−{2−[(1H−イミダゾール−2−カルボニル)−アミノ]−ブチリルアミノ}−4−オキソ−ペンタン酸;
[3S/R,(2S)]−5−フルオロ−3−{2−[(1H−イミダゾール−2−カルボニル)−アミノ]−3−メチルブチリルアミノ}−4−オキソ−ペンタン酸;
[3S/R,(2S)]−3−{2−[(1H−ベンゾイミダゾール−2−カルボニル)−アミノ]−3−メチルブチリルアミノ}−5−フルオロ−4−オキソ−ペンタン酸;
またはそれらの付加塩。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(発明の詳細な説明)
本発明は、カスパーゼインヒビターとして特に有効な、新規化合物およびその薬学的に受容可能な誘導体を提供する。本発明はまた、この化合物を使用して、哺乳動物においてカスパーゼ媒介性の疾患状態を処置するための方法を提供する。この化合物は、以下の一般式I:
【0025】
【化10】

を有し、ここで:
は、COH、CHCOHもしくはそれらのエステル、アミドまたは同配体であり;
は、水素または必要に応じて置換されたC〜C脂肪族基であり;
は、水素または必要に応じて置換されたC〜C脂肪族基であり;
およびRは、それぞれ独立して、水素および必要に応じて置換されたC〜C脂肪族基から選択されるか、またはRおよびRは、それらが結合する環と一緒になって必要に応じて置換された二環式環を形成し、この二環式環は、以下:
【0026】
【化11】

から選択される。
【0027】
本明細書中に使用される場合、用語「脂肪族」とは、完全に飽和であるか、または1単位以上の不飽和を含むが、しかし芳香族ではない、直鎖、分枝鎖、または環状のC〜C12炭化水素を意味する。例えば、適切な脂肪族基としては、置換されているか、または置換されていない、直鎖、分枝鎖、または環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、および(シクロアルキル)アルキル、(シクロアルケニル)アルキル、または(シクロアルキル)アルケニルのような、それらのハイブリッドが挙げられる。単独またはより大きな部分の一部として用いられる、用語「アルキル」、「アルコキシ」、「ヒドロキシアルキル」、「アルコキシアルキル」、および「アルコキシカルボニル」は、1〜12の炭素原子を含む直鎖および分枝鎖の両方を含む。単独またはより大きな部分の一部として用いられる、用語「アルケニル」および「アルキニル」は、2〜12の炭素原子を含む直鎖および分枝鎖の両方を含み得る。単独またはより大きな部分の一部として用いられる、用語「シクロアルキル」は、完全に飽和であるか、1単位以上の不飽和を含むが、しかし芳香族ではない、環状C〜C12炭化水素を含み得る。
【0028】
用語「ハロアルキル」、「ハロアルケニル」、および「ハロアルコキシ」とは、状況に応じて1つ以上のハロゲン原子で置換された、アルキル、アルケニル、またはアルコキシを意味する。用語「ハロゲン」とは、F、Cl、Br、またはIを意味する。
【0029】
用語「ヘテロ原子」とは、窒素、酸素、または硫黄を意味し、そして窒素および硫黄の任意の酸化形態、ならびに任意の塩基性窒素の四元化された(quaternized)形態を含む。また、用語「窒素」は、ヘテロ環式環の置換可能な窒素も含む。例としては、酸素、硫黄、または窒素より選択される0〜3のヘテロ原子を有する飽和または部分的に不飽和の環において、窒素は、N(3,4−ジヒドロ−2H−ピロリルにおけるような)でも、NH(ピロリジニルにおけるような)でも、NR(N置換されたピロリジニルにおけるような)でもよい。
【0030】
本明細書中に使用される場合、用語「炭素環(carbocycle)」、「炭素環の(carbocyclyl)」、「炭素環状の(carbocyclo)」、または「炭素環状の」とは、3〜14員の脂肪族環系を意味する。飽和または部分的に不飽和のいずれかの、用語「炭素環」、「炭素環の」、「炭素環状の(carbocyclo)」、または「炭素環状の(carbocyclic)」はまた、必要に応じて置換された環をいう。用語「炭素環」、「炭素環の」、「炭素環状の(carbocyclo)」、または「炭素環状の(carbocyclic)」はまた、1つ以上の芳香族環または非芳香族環(例えば、ラジカルまたは結合の部分が、脂肪族環上にある、デカヒドロナフチル、テトラヒドロナフチル、またはインダニル中に)に縮合された脂肪族環も含む。
【0031】
単独、またはより大きい部分(「アラルキル」、「アラルコキシ」、もしくは「アリロキシアルキル」)の一部として用いられる用語「アリール」とは、5〜14員を有する芳香族環基をいう(例えば、フェニル、ベンジル、フェネチル、1−ナフチル、2−ナフチル、1−アントラシルおよび2−アントラシル)。用語、「アリール」はまた、必要に応じて置換された環もいう。用語「アリール」は用語「アリール環」と互換的に用いられ得る。「アリール」はまた、1つの芳香族環が1つ以上の環に縮合された、縮合多環式芳香族環系も含む。例としては、1−ナフチル、2−ナフチル、1−アントラシルおよび2−アントラシル
が挙げられる。また、本明細書中に使用される場合、用語「アリール」の範囲内には、1つの芳香族環が1つ以上の非芳香族環(例えば、インダニル、フェナントリジル、またはテトラヒドロナフチル)に縮合され、ラジカルまたは結合部分がその芳香族環上にある基も含まれる。
【0032】
本明細書中に使用される場合、用語「ヘテロ環」、「ヘテロシクリル」、または「ヘテロ環式(heterocyclic)」は、1つ以上(好ましくは1〜4)の環炭素が、N、O、またはSのようなヘテロ原子によって各々置換されている、5〜14員(好ましくは、5〜10)の非芳香族環系を含む。ヘテロ環式環の例としては、3−1H−ベンズイミダゾール−2−オン、(1−置換)−2−オキソ−ベンズイミダゾール−3−イル、2−テトラヒドロフラニル、3−テトラヒドロフラニル、2−テトラヒドロピラニル、3−テトラヒドロピラニル、4−テトラヒドロピラニル、[1,3]−ジオキサラニル、[1,3]−ジチオラニル、[1,3]−ジオキサニル、2−テトラヒドロチオフェニル、3−テトラヒドロチオフェニル、2−モルホリニル、3−モルホリニル、4−モルホリニル、2−チオモルホリニル、3−チオモルホリニル、4−チオモルホリニル、1−ピロリジニル、2−ピロリジニル、3−ピロリジニル、1−ピペラジニル、2−ピペラジニル、1−ピペリジニル、2−ピペリジニル、3−ピペリジニル、4−ピペリジニル、4−チアゾリジニル、ジアゾロジニル、N−置換ジアゾロニル、1−フタリミジニル、ベンゾキサニル、ベンゾピロリジニル、ベンゾピペリジニル、ベンゾキソラニル、ベンゾチオラニル、およびベンゾチアニルが挙げられる。また、本明細書中に使用される場合、用語「ヘテロシクリル」または「ヘテロ環式」の範囲内には、1つの非芳香族ヘテロ原子含有環が、1つ以上の芳香族環または非芳香族環(例えば、インドリニル、クロマニル、フェナントリジニル、テトラヒドロキノリニルまたはテトラヒドロイソキノリニル)に縮合され、ラジカルまたは結合部分がその非芳香族ヘテロ原子含有環上にある基も含まれる。飽和であるか、または部分的に不飽和であるかのいずれかの、用語「ヘテロ環」、「ヘテロシクリル」、または「ヘテロ環式」はまた、必要に応じて置換された環もいう。
【0033】
単独、またはより大きい部分の一部(「ヘテロアラルキル」または「ヘテロアリールアルコキシ」におけるように)として用いられる、用語「ヘテロアリール」とは、5〜14員のヘテロ芳香族環基をいう。ヘテロアリール環の例としては、2−フラニル、3−フラニル、N−イミダゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、5−イミダゾリル、3−フラザニル、3−イソキサゾリル、4−イソキサゾリル、5−イソキサゾリル、2−オキサジアゾリル、5−オキサジアゾリル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、1−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル、1−ピラゾリル、3−ピラゾリル、4−ピラゾリル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−ピリミジル、4−ピリミジル、5−ピリミジル、3−ピリダジニル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、5−テトラゾリル、2−トリアゾリル、5−トリアゾリル、2−チエニル、3−チエニル、カルバゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、インドリル、キノリニル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、イソキノリニル、インドリル、イソインドリル、アクリジニル、またはベンゾイソキサゾリルが挙げられる。また、本明細書中に使用される場合、用語「ヘテロアリール」の範囲内には、1つのヘテロ原子環が、1つ以上の芳香族環または非芳香族環に縮合され、ラジカルまたは結合部分がヘテロ芳香族環上にある基も含まれる。例としては、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、およびピリド[3,4−d]ピリミジニルが挙げられる。用語「ヘテロアリール」はまた、必要に応じて置換された環もいう。用語「ヘテロアリール」は、用語「ヘテロアリール環」または「ヘテロ芳香族の」と、互換的に用いられ得る。
【0034】
アリール(アラルキル、アラルコキシ、アリールオキシアルキル等を含む)基、またはヘテロアリール(ヘテロアラルキルおよびヘテロアリールアルコキシ等を含む)基は、1つ以上の置換基を含み得る。アリール、ヘテロアリール、アラルキル、またはヘテロアラルキル基の不飽和炭素原子上の適切な置換基の例としては、ハロゲン、−R、−OR、−SR、1,2−メチレン−ジオキシ、1,2−エチレンジオキシ、保護されたOH(例えば、アシルオキシ)、フェニル(Ph)、置換されたPh、−O(Ph)、置換された−O(Ph)、−CH(Ph)、置換された−CH(Ph)、−CHCH(Ph)、置換された−CHCH(Ph)、−NO、−CN、−N(R、−NRC(O)R、−NRC(O)N(R、−NRCO、−NRNRC(O)R、−NRNRC(O)N(R、−NRNRCO、−C(O)C(O)R、−C(O)CHC(O)R、−CO、−C(O)R、−C(O)N(R、−OC(O)N(R、−S(O)、−SON(R、−S(O)R、−NRSON(R、−NRSO、−C(=S)N(R、−C(=NH)−N(R、−(CHNHC(O)R、−(CHNHC(O)CH(V−R)(R)が挙げられ;ここでRは、水素、置換されているかまたは置換されていない脂肪族基、置換されていないヘテロアリールまたはヘテロ環式環、フェニル(Ph)、置換されたPh、−O(Ph)、置換された−O(Ph)、−CH(Ph)、あるいは置換された−CH(Ph)であり;yは、0〜6であり;そしてVは、リンカー基である。Rの脂肪族基またはフェニル環上の置換基の例としては、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アミノカルボニル、ハロゲン、アルキル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルアミノカルボニルオキシ、ジアルキルアミノカルボニルオキシ、アルコキシ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニル、ヒドロキシ、ハロアルコキシ、またはハロアルキルが挙げられる。
【0035】
脂肪族基または非芳香族ヘテロ環式環は、1つ以上の置換基を含み得る。脂肪族基の飽和炭素上または非芳香族ヘテロ環式環の飽和炭素上の適切な置換基の例としては、アリール基またはヘテロアリール基の不飽和炭素について上に列挙した置換基および以下:=O、=S,=NNHR、=NN(R、=N−、=NNHC(O)R、=NNHCO(アルキル)、=NNHSO(アルキル)、または=NR(ここでRは、各々、水素、置換されていない脂肪族基、または置換された脂肪族基より独立して選択される)が挙げられる。脂肪族基上の置換基の例としては、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アミノカルボニル、ハロゲン、アルキル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルアミノカルボニルオキシ、ジアルキルアミノカルボニルオキシ、アルコキシ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニル、ヒドロキシ、ハロアルコキシ、またはハロアルキルが挙げられる。
【0036】
非芳香族ヘテロ環式環の窒素上の適切な置換基としては、−R、−N(R、−C(O)R、−CO、−C(O)C(O)R、−C(O)CHC(O)R、−SO、−SON(R、−C(=S)N(R、−C(=NH)−N(R、および−NRSOが挙げられる;ここでRは、水素、脂肪族基、置換された脂肪族基、フェニル(Ph)、置換されたPh、−O(Ph)、置換された−O(Ph)、−CH(Ph)、置換された−CH(Ph)、または置換されていないヘテロアリールもしくはヘテロ環式環である。脂肪族基またはフェニル環上の置換基の例としては、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アミノカルボニル、ハロゲン、アルキル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルアミノカルボニルオキシ、ジアルキルアミノカルボニルオキシ、アルコキシ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニル、ヒドロキシ、ハロアルコキシ、またはハロアルキルが挙げられる。
【0037】
置換基または改変体の組み合わせは、そのような組み合わせが、安定または化学的に実施可能な化合物を生じる場合にのみ、許容可能である。安定な化合物または化学的に実施可能な化合物とは、水分または他の化学反応性条件の非存在下で、40℃以下の温度で少なくとも1週間保持された場合に化学的構造が本質的に変化されないものである。
【0038】
基が、エステルまたはアミドの形態である場合、本発明の化合物は、哺乳動物中で、活性カスパーゼインヒビターである、対応するカルボン酸までの代謝的切断を受ける。これらが代謝的切断を受けることに起因して、エステルまたはアミド基の正確な性質は、本発明の実施に必要不可欠ではない。R基の構造は、比較的単純なジエチルアミドからステロイドエステルまでの範囲にある。Rカルボン酸のエステルの例としては、C1〜12脂肪族(例えば、C1〜6アルキルまたはC3〜10シクロアルキル)、アリール(例えば、フェニル)、アラルキル(例えば、ベンジルまたはフェネチル)、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリール、およびヘテロアラルキルが挙げられるが、これらに限定されない。適切なRヘテロ環式環としては、ピペリジニル、ピペラジニル、またはモルホリニルのような、1つまたは2つのヘテロ原子を有する5〜6員のヘテロ環式環が挙げられるが、これらに限定されない。適切なRヘテロアリール環の例としては、ピリジル、ピリミジニル、フラニル、およびチエニルのような、1つまたは2つのヘテロ原子を有する5〜6員のヘテロアリール環が挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
カルボン酸のアミドは、1級でも、2級でも、3級でもよい。アミド窒素上の適切な置換基としては、Rエステルアルコールについての上記の脂肪族、アリール基、アラルキル基、ヘテロ環式基、ヘテロ環式アルキル基、ヘテロアリール基、およびヘテロアラルキル基より独立して選択される1つまたは2つの基が挙げられるが、これらに限定されない。同様に、他のプロドラッグは、本発明の範囲内に含まれる。Bradley D.Anderson、「Prodrugs for Improved CNS Delivery」、Advanced Drug Delivery Reviews(1996)、19、171〜202を参照のこと。
【0040】
カルボン酸、エステル、およびアミドの同配体または生物同配体(bioisostere)は、親のカルボン酸またはエステルに類似の生物学的特性を有する新規化合物を作製するための、原子または原子群の置換によって生じる。生物同配体の置換は、生理化学(physicochemically)または位相学に基づき得る。カルボン酸についての同配体の置換の例は、CONHSO(アルキル)(例えば、CONHSOMe)である。
【0041】
が各々COHまたはCHCOH、γ−ケト酸またはδ−ケト酸である、本発明の化合物は、開環形態(a)または閉環ヘミケタール形態(b)のいずれでも溶液中に存在し得る(γ−ケト酸についてはy=1、δ−ケト酸についてはy=2)。本明細書中のいずれの異性体形態の表示も、もう一方を含むことを意味する。
【0042】
【化12】

同様に、本発明の特定の化合物が、互変異性形態または水和形態で存在し得、化合物の全てのそのような形態が本発明の範囲内にあることは当業者に明らかである。他に示されない限り、本明細書中に示された構造はまた、その構造の全ての立体化学形態(すなわち、各々の不斉中心についてのRおよびS立体配置)を含むことを意味する。従って、本発明の化合物の単一の異性体ならびに鏡像異性体およびジアステレオマーの混合物は、本発明の範囲内にある。他に示されない限り、本明細書中に示された構造はまた、1つ以上の異性体的に重い原子の存在のみが異なる化合物も含むことを意味する。例えば、ジュウテリウムもしくはトリチウムによる水素の置換または13C−もしくは14C−重炭素による炭素の置換を除く、本発明の構造を有する化合物は、本発明の範囲内にある。
【0043】
WO 95/35308に一般的に記載されるの多くのジペプチドのICE/カスパーゼインヒビターが、酵素的および細胞に基づく下記のアッセイによって、カスパーゼに対する活性について現在試験されている。試験した化合物の中で、式Iの新規化合物が、多くのカスパーゼ酵素に対して予想外に良好な活性を有することが見出された。
【0044】
およびRが一緒になってイミダゾールに縮合された環を形成する場合、本発明の以下の実施形態が提供される:
【0045】
【化13】

ここでR、RおよびRは、上記の通りであり、そしてRは、1つ以上の任意の置換基を表す。環状窒素の非近傍位置に結合された場合の、R基の例としては、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、ハロ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、およびアルキルカルボニルが挙げられる。環状窒素の近傍位置に結合された場合の、R基の例としては、C1〜6アルキル、アルキルアミノ、およびジアルキルアミノが挙げられる。
【0046】
本発明の好ましい化合物は式Iの化合物であり、この化合物は、以下の特徴の1つ以上を有し、より好ましくは、以下の特徴の全てを有する:
(a)Rが、COHまたはエステル、アミドまたはそれらの同配体であること;
(b) Rが、C〜Cの直鎖または分枝鎖のアルキル基であること;
(c) Rが水素であること;ならびに
(d) RおよびRの各々が水素であるか、またはRおよびRが、それらが結合する環と一緒になって、ベンズイミダゾール環を形成すること。
【0047】
ここで、Rが置換される場合、好ましい置換基としては、ヒドロキシ、チオ、アミノまたはハロゲンが挙げられる。
【0048】
式Iの化合物の具体的な代表例は、表1に示される。
【0049】
【化14】

【0050】
【表1】


本発明の化合物は、以下の一般的なスキームIおよび引き続く調製実施例によって示されるように、類似の化合物について当業者に公知の方法によって、一般的に調製され得る。
【0051】
【化15】

試薬:(a)EDC、ジイソプロピルエチルアミン、HOBt、2;(b)加水分解またはTFA/DCM;(c)DMAP、EDC、ジイソプロピルエチルアミン、HOBt、4;(d)Dess−Martin periodinane。
【0052】
スキームIは、本発明の化合物を調製するための一般的な経路を示す。以下の略号が使用される:EDCは1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミドである;HOBTは1−ヒドロキシベンゾトリアゾールである;TFAはトリフルオロ酢酸である;DCMはジクロロメタンである;そしてDMAPは4−ジメチルアミノピリジンである。公知のイミダゾール−2−カルボン酸または公知のベンズイミダゾール−2−カルボン酸(一般構造1によって表わされる)の、アミノエステル誘導体2との反応は、アミド3を提供する。エステル3がtert−ブチルエステルである場合、DCM中のTFAが使用され、酸4を提供する。他のR基については、標準的な加水分解が用いられ得る。次いで、酸4はアミノアルコール5とカップリングし、6を提供する。Rの性質に依存して、アミノアルコール5の代わりに、続く酸化工程を回避するアミノケトンが用いられ得る。フルオロメチルケトンの場合、ここで、CORは、COtBuであり、アミノアルコール5は、Reveszら、Tetrahedron Lett.、1994、35、9693の方法に従って得られ得る。最終的に、化合物6のヒドロキシルは酸化され、次いでこの化合物は、Rの性質に従って適切に処理される。例えば、生成物IがRがカルボン酸であることを必要とする場合、7のRは、好ましくはエステルであり、そしてこのスキームの最終工程は加水分解である。
【0053】
(実験)
(実施例1)
[3S/R,(2S)]−5−フルオロ−3−{2−[(1H−イミダゾール−2−カルボニル)−アミノ]−プロピオニルアミノ}−4−オキソ−ペンタン酸,トリフルオロ酢酸塩(化合物1)
【0054】
【化16】

方法A:
(2S)−2−[(1H−イミダゾール−2−カルボニル)−アミノ]−プロピオン酸tert−ブチルエステル
【0055】
【化17】

N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(3mL)中、1H−イミダゾール−2−カルボン酸(0.17g)の溶液に、0℃に冷却する前に、アラニンtert−ブチルエステルヒドロクロリド(0.22g)、ジイソプロピルエチルアミン(0.27mL)およびHOBT(0.41g)を添加し、そして反応溶液を、EDC.HCl(0.32g)で処理した。冷却槽を取り除き、反応混合溶液を、周囲の温度で18時間攪拌し、その後、酢酸エチルで希釈し、水およびブラインで洗浄し、乾燥させ(MgSO)そして減圧下で濃縮した。残渣を、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中、30%酢酸エチル)によって精製し、副標題化合物を、無色の油状物(0.263g、73%)として得た:
【0056】
【化18】

方法B:
[3S/R,4S/R,(2S)]−5−フルオロ−4−ヒドロキシ−3−{2−[(1H−イミダゾール−2−カルボニル)−アミノ]−プロピオニルアミノ}−ペンタン酸tert−ブチルエステル
【0057】
【化19】

ジクロロメタン(2mL)中、(2S)−2−[(1H−イミダゾール−2−カルボニル)−アミノ]−プロピオン酸tert−ブチルエステル(0.257g)の溶液を、0℃に冷却し、その後、トリフルオロ酢酸を添加し、そして反応混合物を室温まで温め、2時間攪拌し、その後、減圧下でエバポレートした。残渣を、ジクロロメタン(2回)およびトルエン(2回)でエバポレートし、必要な(2S)−2−[(1H−イミダゾール−2−カルボニル)−アミノ]−プロピオン酸(0.40g)を残し、これは、さらなる精製を用いずに使用した。
【0058】
THF(7mL)中、(2S)−2−[(1H−イミダゾール−2−カルボニル)−アミノ]−プロピオン酸および3−アミノ−5−フルオロ−4−ヒドロキシ−ペンタン酸tert−ブチルエステル(0.254g)の溶液を、0℃に冷却し、その後、DMAP(0.151g)、ジイソプロピルエチルアミン(0.56mL)、HOBT(0.16g)およびEDC.HCl(0.23g)を添加した。反応混合物を周囲の温度で18時間攪拌し、その後、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン中、5%メタノール)で精製し、副標題化合物を、無色の固体(0.386g,97%)として得た:
【0059】
【化20】

方法C:
[3S/R,(2S)]−5−フルオロ−3−{2−[(1H−イミダゾール−2−カルボニル)−アミノ]−プロピオニルアミノ}−4−オキソ−ペンタン酸tert−ブチルエステル
【0060】
【化21】

ジクロロメタン中、[3S/R,(2S)]−5−フルオロ−4−ヒドロキシ−3−{2−[(1H−イミダゾール−2−カルボニル)−アミノ]−プロピオニルアミノ}−ペンタン酸tert−ブチルエステル(0.381g)の溶液を、0℃に冷却し、その後、1,1,1トリアセトキシ−1,1−ジヒドロ−1,2−ベンズヨードキソール−3(1H)−オン(0.476g)を添加した。この混合物を、室温で2時間、攪拌し、その後、さらに1,1,1トリアセトキシ−1,1−ジヒドロ−1,2−ベンズヨードキソール−3(1H)−オン(0.05g)を添加し、そして反応混合物を、90分間攪拌し、その後、減圧下で濃縮した。この残渣を、酢酸エチルに溶解し、そしてNaHSO水溶液およびNa水溶液の混合溶液(1:1)で洗浄した。有機層を収集し、乾燥させ(MgSO)、濃縮した。この残渣を、フラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタン中、5%メタノール)で精製し、副標題化合物を無色の泡状物(319mg、84%)として得た:
【0061】
【化22】

方法D:
化合物1
【0062】
【化23】

ジクロロメタン(2mL)中、[3S/R,(2S)]−5−フルオロ−3−{2−[(1H−イミダゾール−2−カルボニル)−アミノ]−プロピオニルアミノ}−4−オキソ−ペンタン酸tert−ブチルエステル(0.31g)の溶液を、0℃に冷却し、その後、トリフルオロ酢酸を滴下して、反応混合溶液を室温まで温め、そして2時間攪拌した後、減圧下でエバポレートした。この残渣を、ジクロロメタンで同時にエバポレートし(2回)、エーテル下で粉砕し、表題化合物を無色の固体(0.35g)として得た:
【0063】
【化24】

(実施例2)
[3S/R,(2S)]−3−{2−[(1H−ベンゾイミダゾール−2−カルボニル)−アミノ]−プロピオニルアミノ}−5−フルオロ−4−オキソ−ペンタン酸,トリフルオロ酢酸塩(化合物2)
【0064】
【化25】

これは、1H−ベンゾイミダゾール−2−カルボン酸から、上記の方法A〜Dに記載したのと類似の手順を用いて調製した(142mg、最終工程に対して90%):(化合物は、TFA塩として単離した)オフホワイトの固体;
【0065】
【化26】

(実施例3)
[3S/R,(2S)]−5−フルオロ−3−{2−[(1H−イミダゾール−2−カルボニル)−アミノ]−ブチリルアミノ}−4−オキソ−ペンタン酸,トリフルオロ酢酸塩(化合物3)
【0066】
【化27】

これは、1H−ベンゾイミダゾール−2−カルボン酸から、上記の方法A〜Dに記載したのと類似の手順を用いて調製した(147mg、最終工程に対して64%):
【0067】
【化28】

(実施例4)
[3S/R,(2S)]−5−フルオロ−3−{2−[(1H−イミダゾール−2−カルボニル)−アミノ]−3−メチルブチリルアミノ}−4−オキソ−ペンタン酸(化合物4)
【0068】
【化29】

これは、1H−ベンゾイミダゾール−2−カルボン酸から、上記の方法A〜Dに記載したのと類似の手順を用いて調製した(80g、最終工程に対して85%):
【0069】
【化30】


(実施例5)
([3S/R,(2S)]−3−{2−[(1H−ベンゾイミダゾール−2−カルボニル)−アミノ]−3−メチルブチリルアミノ}−5−フルオロ−4−オキソ−ペンタン酸)
(化合物5)
【0070】
【化31】

これを、1H−ベンゾイミダゾール−2−カルボン酸から、上記の方法A〜Dに記載される手順と類似の手順を使用して、調製した(90mg、最終工程について87%)白色粉末、
【0071】
【化32】

本発明の化合物は、カスパーゼを阻害するように設計される。従って、本発明の化合物は、アポトーシス、IL−1βの放出、またはカスパーゼの活性を直接阻害するその能力について、アッセイされ得る。これらの活性の各々についてのアッセイは、当該分野において公知であり、そして試験の節において、以下で詳細に記載される。
【0072】
別の実施形態によれば、本発明は、本発明の化合物または上記のようなその薬学的に受容可能な塩、および薬学的に受容可能なキャリアを含む、組成物を提供する。
【0073】
本発明の化合物の薬学的に受容可能な塩が、これらの組成物において利用される場合、これらの塩は、好ましくは、無機性または有機性の酸および塩基から誘導される。このような酸の塩のうちには、以下が含まれる:酢酸塩、アジピン酸塩、アルギニン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニル−プロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩、およびウンデカン酸塩。塩基性の塩としては、以下が挙げられる:アンモニウム塩、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩およびカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩およびマグネシウム塩)、有機塩基との塩(例えば、ジシクロヘキシルアミン)、N−メチル−D−グルカミン、およびアルギニン、リジンなどのアミノ酸との塩。
【0074】
また、塩基性の窒素含有基が、以下の薬剤のような低級アルキルハロゲン化物で四級化され得る:例えば、メチル、エチル、プロピル、およびブチルの塩化物、臭化物およびヨウ化物;硫酸ジアルキル(例えば、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジブチルおよび硫酸ジアミル)、長鎖ハロゲン化物(例えば、デシル、ラウリル、ミリスチルおよびステアリルの、塩化物、臭化物およびヨウ化物)、ハロゲン化アラルキル(例えば、ベンジルおよびフェネチルの臭化物など)。水または油に可溶性または分散可能な生成物が、これによって得られる。
【0075】
本発明の組成物および方法において利用される化合物はまた、適切な官能基を付加することによって改変され、選択的な生物学的特性を増強し得る。このような改変は、当該分野において公知であり、そして所定の生物学的系(例えば、血液、リンパ系、中枢神経系)への生物学的貫入を増強する改変、経口アベイラビリティを増加させる改変、溶解度を増加させて注射による投与を可能にする改変、代謝を変化させる改変、および排出速度を変化させる改変が挙げられる。
【0076】
これらの組成物において使用され得る薬学的に受容可能なキャリアとしては、イオン交換物質、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レクチン、血清タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)、緩衝物質(例えば、リン酸塩)、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質(例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム)、ポリビニルピロリドン、セルロースに基づく物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、蝋、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコール、および羊毛脂が挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
好ましい実施形態によれば、本発明の組成物は、患者(好ましくは、ヒト)への薬学的投与のために、処方される。本発明の1つの局面は、カスパーゼ関連疾患の処置の必要のある患者において、カスパーゼ関連疾患を処置する方法に関し、この方法は、治療有効量の式Iの化合物またはその薬学的組成物を、この患者に投与する工程を包含する。用語「患者」は、ヒトおよび脊椎動物の被験体を含む。
【0078】
本発明のこのような薬学的組成物は、経口的に、非経口的に、吸入スプレーによって、局所的に、直腸的に、鼻孔的に、頬的に、膣的に、または移植されたリザバーを介して、投与され得る。用語「非経口的」とは、本明細書中で使用される場合、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液包内、胸骨下、硬膜下腔内、肝臓内、病変内、および頭蓋内の、注射または注入の技術を含む。好ましくは、この組成物は、経口的にかまたは静脈内に投与される。
【0079】
本発明の組成物の滅菌注射可能な形態は、水性または油状の懸濁物であり得る。これらの懸濁物は、当該分野において公知の技術に従って、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を使用して、処方され得る。滅菌注射可能調製物はまた、非毒性の非経口的に受容可能な希釈剤または溶媒内の、滅菌注射可能な溶液または懸濁物であり得る(例えば、1,3−ブタンジオール溶液のような)。使用され得る受容可能なビヒクルおよび溶媒のうちでも、水、リンガー溶液および等張性塩化ナトリウム溶液である。さらに、滅菌の不揮発性油が、従来、溶媒または懸濁媒体として使用されている。この目的で、任意のブレンドされた不揮発性油(合成モノグリセリドまたは合成ジグリセリドが挙げられる)が使用され得る。脂肪酸(例えば、オレイン酸)およびそのグリセリド誘導体は、天然の薬学的に受容可能な油(例えば、オリーブ油またはヒマシ油)と同様に、特にそのポリオキシエチル化バージョンにおいて、注射可能物の調製の際に有用である。これらの油溶液または懸濁物はまた、長鎖アルコール希釈剤または分散剤(例えば、カルボキシメチルセルロースまたは薬学的に受容可能な投薬形態(エマルジョンおよび懸濁物が挙げられる)を処方する際に通常使用される類似の分散剤)を含み得る。他の通常使用される界面活性剤(例えば、Tween、Span、および薬学的に受容可能な固体、液体、または他の投薬形態を製造する際に通常使用される他の乳化剤またはバイオアベイラビリティエンハンサー)もまた、処方の目的で使用され得る。
【0080】
本発明の薬学的組成物は、任意の経口的に受容可能な投薬形態(カプセル剤、錠剤、水性懸濁剤または液剤が挙げられるが、これらに限定されない)で投与され得る。経口使用のための錠剤の場合には、通常使用されるキャリアとしては、ラクトースおよびコーンスターチが挙げられる。滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム)もまた、代表的に添加される。カプセル剤形態での経口投与のためには、有用な希釈剤としては、ラクトースおよび乾燥コーンスターチが挙げられ得る。水性懸濁物が、経口使用のために必要とされる場合、活性成分は、乳化剤および懸濁剤と組み合わせられる。所望であれば、特定の甘味料、矯味矯臭剤または着色剤もまた、添加され得る。
【0081】
あるいは、本発明の薬学的組成物は、直腸投与のための坐剤の形態で投与され得る。これらは、薬剤を、適切な非刺激性の賦形剤(これは、室温では固体であるが直腸の温度では液体であり、従って、直腸において融解して、薬物を溶出する)と混合することによって、調製され得る。このような物質としては、ココアバター、蜜蝋およびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0082】
本発明の薬学的組成物は、特に、処置の標的が局所適用によって容易にアクセス可能な領域または器官を含む場合に、局所的に投与され得る。この処置の標的としては、眼、皮膚、または下部腸管の疾患が挙げられる。適切な局所処方物は、これらの領域または器官の各々に対して、容易に調製される。
【0083】
下部腸管に対する局所適用は、直腸坐剤処方物(上記を参照のこと)または適切な浣腸処方物において、もたらされ得る。局所経皮パッチもまた使用され得る。
【0084】
局所適用のために、薬学的組成物は、1種以上のキャリア中に懸濁または溶解した活性成分を含む、適切な軟膏として処方され得る。本発明の化合物の局所投与のためのキャリアとしては、鉱油、白色鉱油、流動パラフィン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化蝋および水が挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、薬学的組成物は、1種上の薬学的に受容可能なキャリアに懸濁または溶解した活性成分を含む、適切なローションまたはクリームに処方され得る。適切なキャリアとしては、鉱油、ソルビタンモノステアレート、ポリソルベート60、セチルエステル蝋、セテアリールアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水が挙げられるが、これらに限定されない。
【0085】
眼での使用のためには、薬学的組成物は、等張性の、pHを調整された滅菌生理食塩水中の微粉化された懸濁物、または好ましくは、等張性の、pHを調整された滅菌生理食塩水中の溶液として処方され得、これは、ベンジルアルコニウムクロリドのような防腐剤を含むかまたは含まないかのいずれかである。あるいは、眼での使用のためには、薬学的組成物は、ワセリンのような軟膏に処方され得る。
【0086】
本発明の薬学的組成物はまた、鼻孔エアロゾルまたは吸入によって投与され得る。このような組成物は、薬学的処方物の分野において周知の技術に従って調製され、そしてベンジルアルコールまたは他の適切な保存剤、バイオアベイラビリティを増強するための吸収促進剤、フルオロカーボン、および/あるいは他の従来の可溶化剤または分散剤を使用して、生理食塩水中で溶液として調製され得る。
【0087】
上記組成物は、カスパーゼ関連疾患を処置するために特に有用である。用語「カスパーゼ関連疾患」とは、IL−1媒介疾患、アポトーシス媒介疾患、炎症疾患、自己免疫疾患、破壊性骨疾患、増殖障害、感染疾患、変性疾患、細胞死に関連する疾患、過剰の食餌アルコール摂取疾患、ウイルス媒介疾患、ブドウ膜炎、炎症性腹膜炎、変形性関節症、膵炎、喘息、成人呼吸急迫症候群、糸球体腎炎、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、強皮症、慢性甲状腺炎、グレーヴズ病、自己免疫胃炎、糖尿病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性好中球減少症、血小板減少症、慢性活性肝炎、重症筋無力症、炎症性腸疾患、クローン病、乾癬、アトピー性皮膚炎、瘢痕、対宿主性移植片病、器官移植拒絶、骨粗鬆症、白血病および関連障害、脊髄形成異常症候群、多発性骨髄腫関連骨障害、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、転移性黒色腫、カポージ肉腫、多発性骨髄種、出血性ショック、敗血症、敗血症性ショック、火傷、細菌性赤痢、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンティングトン病、ケネディ病、プリオン病、大脳虚血、癲癇、心筋虚血、急性心臓病および慢性心臓病、心筋梗塞、うっ血性心不全、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈バイパス移植、脊髄筋萎縮症、筋萎縮症性側索硬化症、多発性硬化症、HIV関連脳炎、老化、脱毛症、発作に起因する神経学的損傷、潰瘍性大腸炎、外傷性脳傷害、脊髄障害、B型肝炎、C型肝炎、G型肝炎、黄熱病、デング熱、または日本脳炎、種々の形態の肝疾患、腎性疾患、多発性嚢胞腎疾患(polyaptic kidney disease)、H.pylori関連胃潰瘍疾患および十二指腸潰瘍疾患、HIV感染、結核、ならびに髄膜炎をいう。
【0088】
本発明の組成物の好ましい使用としては、IL−1媒介疾患、アポトーシス媒介疾患、炎症疾患、自己免疫疾患、破壊性骨疾患、感染疾患、変性疾患、細胞死に関連する疾患、過剰の食餌アルコール摂取疾患、ウイルス媒介疾患、ブドウ膜炎、炎症性腹膜炎、変形性関節症、膵炎、成人呼吸急迫症候群、糸球体腎炎、慢性関節リウマチ、糖尿病、血小板減少症、炎症性腸疾患、クローン病、乾癬、瘢痕、器官移植拒絶、骨粗鬆症、出血性ショック、敗血症、敗血症性ショック、火傷、細菌性赤痢、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンティングトン病、ケネディ病、プリオン病、大脳虚血、癲癇、急性心臓病および慢性心臓病、冠状動脈バイパス移植、筋萎縮症性側索硬化症、多発性硬化症、脱毛症、潰瘍性大腸炎、外傷性脳傷害、脊髄障害、種々の形態の肝疾患、腎臓疾患、H.pyloriに関連する胃潰瘍および十二指腸潰瘍の疾患、ならびに髄膜炎が挙げられる。
【0089】
化合物および組成物はまた、冠状動脈バイパス移植片に関連する合併症を処置する際に有用である。化合物および組成物はまた、単独または別の治療(例えば、化学療法または放射線療法)と組み合わせてのいずれかで、癌を処置するために特に有用である。化合物および組成物はまた、種々の形態の癌の処置のための免疫療法の成分として、有用であり得る。
【0090】
上記の組成物に存在する化合物の量は、この実施例に記載される任意のアッセイにより測定される場合に、疾患の重篤度またはカスパーゼ活性および/もしくは細胞のアポトーシスにおける検出可能な減少を引き起こすのに十分であるべきである。
【0091】
別の実施形態に従って、本発明の組成物は、別の治療剤をさらに含み得る。このような治療剤として、組織プラスミノゲンアクチベーターおよびストレプトキナーゼのような血栓崩壊剤が挙げられるがこれらに限定されない。第2の因子が使用される場合、第2の因子は、本発明の化合物または組成物と別個の投薬形態あるいは本発明の化合物または組成物を含む単一投薬形態の一部のいずれかとして投与され得る。
【0092】
任意の特定の患者に特異的な用量および処置レジメンは、使用される特定の化合物の活性、年齢、体重、全体的な健康、性別、食事、投与時間、排出速度、薬物の組み合わせ、および主治医の判断ならびに処置される特定の疾患の重篤度を含む、種々の因子に依存することもまた理解されるべきである。活性成分の量はまた、組成物中の特定の化合物および他の治療剤(存在する場合)に依存する。
【0093】
好ましい実施形態において、本発明は、前述の疾患のうちの1つを有する哺乳動物を処置する方法を提供する。この方法は、薬学的に受容可能な上記の組成物を該哺乳動物に投与する工程を包含する。この実施形態において、患者に別の治療剤またはカスパーゼインヒビターもまた投与される場合、これは、単一の投薬形態で本発明の化合物と共に送達されるか、または別個の投薬形態として送達される。別個の投薬形態として投与される場合、他のカスパーゼインヒビターまたは薬剤は、本発明の化合物を含む薬学的に受容可能な組成物の投与の前、同時、または後に投与され得る。
【0094】
本発明がより完全に理解されるために、以下の調製および試験の実施例を示す。これらの実施例は、例示のみの目的のためであり、いかなる様にも、本発明の範囲の限定として考慮されない。
【0095】
(実施例6)
(酵素アッセイ)
カスパーゼ阻害についてのアッセイは、組換え体の、精製されたヒトカスパーゼ−1、−3、または−8による蛍光発生基質の切断に基づく。このアッセイは、WO0142216に記載されるアッセイと本質的に同一の様式で実施される。
【0096】
化合物1〜5は、各々、カスパーゼ−1、カスパーゼ−3、およびカスパーゼ−8の各々に対して、20000M−1−1より大きいKinact値を有する。
【0097】
(実施例7)
(末梢血単核細胞(PBMC)の混合集団からのIL−1β分泌の阻害)
カスパーゼ−1によるプレIL−1βのプロセシングは、種々の細胞供給源を用いて細胞培養物中で測定され得る。健常なドナーから獲得されたヒトPBMCは、多くのクラスの生理学的刺激因子に応答してインターロイキンおよびサイトカインのスペクトルを生成するリンパ球および単核細胞の混合集団を提供する。末梢血単核細胞の混合集団からのIL−1β分泌の阻害に使用されるアッセイ条件は、WO0142216に見出され得る。
【0098】
この化合物の阻害能は、IC50値により表され得る。この値は、ポジティブコントロールと比較して、成熟IL−1βの50%が上清中に検出されるインヒビターの濃度である。試験された化合物は、PBMCからのIL−1β分泌の阻害について1μM未満のIC50値を提供することを見出した。
【0099】
(実施例8)
(抗Fas誘導性アポトーシスアッセイ)
細胞性アポトーシスは、Fasリガンド(FasL)の、そのレセプターであるCD95(Fas)への結合により誘導され得る。カスパーゼ−8の媒介するアポトーシス経路の阻害に対する化合物の効果を測定するためのアッセイの条件は、WO0142216に見出され得る。
【0100】
化合物1〜5は、各々、FAS誘導性アポトーシスアッセイにおける活性について、200nM未満のIC50値を提供することを見出した。
【0101】
本発明者らは、本発明の多くの実施形態を記載しているが、本発明者らの基礎となる実施例が、本発明の化合物および方法を使用する他の実施形態を提供するために変更され得ることが明らかである。従って、本発明の範囲は、実施例により表される特定の実施形態ではなく添付の特許請求の範囲により規定されるべきであることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【公開番号】特開2009−46511(P2009−46511A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−262291(P2008−262291)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【分割の表示】特願2002−544413(P2002−544413)の分割
【原出願日】平成13年11月19日(2001.11.19)
【出願人】(598032106)バーテックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (414)
【氏名又は名称原語表記】VERTEX PHARMACEUTICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】130 Waverly Street, Camridge, Massachusetts 02139−4242, U.S.A.
【Fターム(参考)】