説明

イミノオキサゾリジン類および抗凝固剤としてのそれらの使用

本発明は、新規イミノオキサゾリジン類、それらの製造方法、疾患(特に血栓塞栓性障害)の処置および/または予防のためのそれらの使用、並びに疾患の処置および/または予防用の医薬を製造するためのそれらの使用に関する。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規イミノオキサゾリジン類、それらの製造方法、疾患(特に血栓塞栓性障害)の処置および/または予防のためのそれらの使用、疾患の処置および/または予防用の医薬を製造するためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
血液凝固は、生物の保護メカニズムであり、それは、血管壁の欠損を迅速かつ確実に「封止」するのを助ける。かくして、血液の損失を回避または最小に維持できる。血管損傷後の止血は、主に、血漿タンパク質の複雑な反応の酵素的カスケードが誘起される凝血系により実行される。多数の血液凝固因子がこの過程に関与し、それらの因子の各々は、活性化されると、各々の次の不活性な前駆体をその活性形態に変換する。カスケードの終わりでは、可溶性のフィブリノーゲンが不溶性のフィブリンに変換されるに至り、血餅の形成をもたらす。血液凝固では、共通の反応経路で終わる内因性と外因性のシステムは、伝統的に区別されている。ここで、酵素前駆体のX因子から形成されるXa因子は、この2つの凝血経路を連結するので、鍵となる役割を果たす。活性化されたセリンプロテアーゼXaは、プロトロンビンをトロンビンに切断する。生じるトロンビンは、次いで、フィブリノーゲンをフィブリンに切断する。続くフィブリン単量体のクロスリンクは、血餅の形成を、従って止血を引き起こす。加えて、トロンビンは、同様に止血にかなり貢献する血小板凝集の強力なエフェクターである。
【0003】
止血は、複雑な調節メカニズムに従う。凝血系の制御されない活性化または活性化過程の阻害の欠陥は、血管(動脈、静脈、リンパ管)または心腔における局所的な血栓または塞栓の形成を引き起こし得る。これは、深刻な血栓塞栓性障害を導き得る。加えて、消費性凝固障害の場合、過凝固状態−全身的な−は、汎発性の血管内凝血をもたらし得る。血栓塞栓性の合併症は、さらに、微小血管障害性の溶血性貧血、血液透析などの体外血液循環で、および心臓代用弁(prosthetic heart valves)とも関連して起こる。
【0004】
血栓塞栓性障害は、最も工業化された国々における最も頻繁な罹患と死亡の原因である。静脈血栓塞栓症(VTE)の発生は、1000人につき1症例より高いと見積もられている[R.H. White, "The epidemiology of venous thromboembolism" Circulation 2003, 107 (Suppl. 1), 14-18]。毎年、1000人につき約1.3ないし4.1人が、最初の卒中に罹患し[V.L. Feigin, C.M. Lawes, D.A. Bennett, C.S. Anderson, Lancet Neurol. 2003, 2, 43-53]、1000人につき約5人が、心筋梗塞に罹患している[J. Fang, M.H. Alderman, Am. J. Med. 2002, 113, 208-214]。
【0005】
先行技術から知られている抗凝血剤、即ち、血液凝固を阻害または予防する物質は、様々な、しばしば深刻な、欠点を有する。従って、血栓塞栓性障害の有効な処置方法または予防は、実際のところ非常に困難かつ不満足なものである。
【0006】
血栓塞栓性障害の治療および予防では、ヘパリンが最初に使用され、非経腸で、または皮下に投与される。現今では、より好適な薬物動態学的特性のために、低分子量ヘパリンがますます好まれている;しかしながら、低分子量ヘパリンを用いても、ヘパリン治療に伴う後述する既知の欠点を回避するのは不可能である。このように、ヘパリンは、経口投与されると効果がなく、比較的短い半減期である。ヘパリンは血液凝固カスケードの複数の因子を同時に阻害するので、作用は非選択的である。さらに、高い出血のリスクがある;特に、脳出血および消化管での出血が起こり得、それは、血小板減少、薬物誘導脱毛症または骨粗鬆症をもたらし得る [Pschyrembel, Klinisches Woerterbuch, 257th edition, 1994, Walter de Gruyter Verlag, page 610, entry "Heparin"; Roempp Lexikon Chemie, Version 1.5, 1998, Georg Thieme Verlag Stuttgart, entry "Heparin"]。
【0007】
第2のクラスの抗凝血剤は、ビタミンKアンタゴニストである。これらには、例えば1,3−インダンジオン類、並びに、ことさらに、肝臓におけるある種のビタミンK依存性凝血因子の様々な生成物の合成を非選択的に阻害する、ワーファリン、フェノプロクモン(phenprocoumon)、ジクマロールおよび他のクマリン誘導体などの化合物が含まれる。しかしながら、作用メカニズムのために、作用の開始は非常に遅い(作用開始までの潜時36ないし48時間)。この化合物は経口投与できる;しかしながら、出血のリスクが高く治療係数が狭いために、時間のかかる患者の個別の調整と監視が必要である [J. Hirsh, J. Dalen, D.R. Anderson et al., "Oral anticoagulants: Mechanism of action, clinical effectiveness, and optimal therapeutic range" Chest 2001, 119, 8S-21S; J. Ansell, J. Hirsh, J. Dalen et al., "Managing oral anticoagulant therapy" Chest 2001, 119, 22S-38S; P.S. Wells, A.M. Holbrook, N.R. Crowther et al., "Interactions of warfarin with drugs and food" Ann. Intern. Med. 1994, 121, 676-683]。
【0008】
最近、血栓塞栓性障害の処置および予防のための新規治療アプローチが記載された。この新規治療アプローチのねらいは、Xa因子の阻害である。血液凝固カスケードにおいてXa因子が果たす中心的役割のために、Xa因子は、抗凝血剤の最も重要な標的の1つである [J. Hauptmann, J. Stuerzebecher, Thrombosis Research 1999, 93, 203; S.A.V. Raghavan, M. Dikshit, "Recent advances in the status and targets of antithrombotic agents" Drugs Fut. 2002, 27, 669-683; H.A. Wieland, V. Laux, D. Kozian, M. Lorenz, "Approaches in anticoagulation: Rationales for target positioning" Curr. Opin. Investig. Drugs 2003, 4, 264-271; U.J. Ries, W. Wienen, "Serine proteases as targets for antithrombotic therapy" Drugs Fut. 2003, 28, 355-370; L.-A. Linkins, J.I. Weitz, "New anticoagulant therapy" Annu. Rev. Med. 2005, 56, 63-77]。
【0009】
動物モデルで、様々なペプチド性および非ペプチド性化合物がXa因子阻害剤として有効であることが示された。既に、多数の直接的Xa因子阻害剤が知られている [J.M. Walenga, W.P. Jeske, D. Hoppensteadt, J. Fareed, "Factor Xa Inhibitors: Today and beyond" Curr. Opin. Investig. Drugs 2003, 4, 272-281; J. Ruef, H.A. Katus, "New antithrombotic drugs on the horizon" Expert Opin. Investig. Drugs 2003, 12, 781-797; M.L. Quan, J.M. Smallheer, "The race to an orally active Factor Xa inhibitor: Recent advances" Curr. Opin. Drug Discovery & Development 2004, 7, 460-469]。オキサゾリジノン部分構造を有するXa因子阻害剤は、WO01/47919、WO02/064575およびWO03/000256に記載されている。
【発明の開示】
【0010】
本発明の目的は、障害、特に血栓塞栓性障害を制御するための新規物質を提供することである。
【0011】
本発明は、一般式(I)
【化1】

[式中、
Aは、式
【化2】

{式中、
は、水素、(C−C)−アルキル、(C−C)−シクロアルキル、ヒドロキシ、(C−C)−アルコキシ、アミノ、モノ−もしくはジ−(C−C)−アルキルアミノ、(C−C)−シクロアルキルアミノ、(C−C)−アルカノイルアミノまたは(C−C)−アルコキシカルボニルアミノを表し、
ここで、(C−C)−アルキル、(C−C)−アルコキシ、モノ−およびジ−(C−C)−アルキルアミノは、各場合で、ヒドロキシル、(C−C)−アルコキシ、アミノ、モノ−もしくはジ−(C−C)−アルキルアミノ、(C−C)−シクロアルキルアミノまたは4員ないし7員の飽和複素環(これは、窒素原子を介して結合しており、N−RおよびOからなる群からの環構成員を含有していてもよく、ここで、Rは、水素または(C−C)−アルキルを表す)により置換されていてもよく、
そして、*は、フェニル環への結合点を示す}
の基を表すか、
【0012】
または、
Aは、式−C(=O)NR
{式中、
およびRは、同一であるか、または異なり、相互に独立して、(C−C)−アルキルまたは(C−C)−シクロアルキルであるか、
または、
およびRは、それらが結合している窒素原子と一体となって、4員ないし6員の飽和または部分不飽和複素環を形成しており、それは、N−RおよびOからなる群から1個の環構成員を含有していてもよく、(C−C)−アルキル、ヒドロキシ、(C−C)−アルコキシ、オキソ、アミノ、モノ−もしくはジ−(C−C)−アルキルアミノにより置換されていてもよく(ここで、Rは、水素または(C−C)−アルキルを表す)、
ここで、上記の全ての(C−C)−アルキル基は、ヒドロキシル、(C−C)−アルコキシ、アミノ、モノ−もしくはジ−(C−C)−アルキルアミノまたは(C−C)−シクロアルキルアミノにより置換されていてもよい}
の基を表し、
Zは、フェニル、ピリジル、ピリミジニル、ピラジニル、チエニル、フリルまたはピロリルを表し、ハロゲン、シアノ、(C−C)−アルキル(これは、ヒドロキシルまたはアミノにより置換されていてもよい)、エチニル、シクロプロピルおよびアミノからなる群から選択される同一かまたは異なる置換基により各場合で一置換または二置換されていてもよく、
およびRは、同一であるか、または異なり、相互に独立して、水素、ハロゲン、シアノ、(C−C)−アルキル、シクロプロピル、トリフルオロメチル、ヒドロキシル、(C−C)−アルコキシ、トリフルオロメトキシ、アミノ、モノ−もしくはジ−(C−C)−アルキルアミノを表し、
ここで、(C−C)−アルキルおよび(C−C)−アルコキシは、各場合でヒドロキシル、(C−C)−アルコキシ、アミノ、モノ−もしくはジ−(C−C)−アルキルアミノまたは(C−C)−シクロアルキルアミノにより置換されていてもよく、
そして、
は、水素、(C−C)−アルキルまたはシアノを表す]
の化合物並びにその塩、溶媒和物および塩の溶媒和物を提供する。
【0013】
本発明による化合物は、式(I)の化合物およびそれらの塩、溶媒和物および塩の溶媒和物、式(I)に包含される後述する式の化合物およびそれらの塩、溶媒和物および塩の溶媒和物、並びに、式(I)に包含される実施態様として後述する化合物およびそれらの塩、溶媒和物および塩の溶媒和物(後述する式(I)に包含される化合物が、既に塩、溶媒和物および塩の溶媒和物でない場合に)である。
【0014】
本発明による化合物は、それらの構造によって、立体異性体(エナンチオマー、ジアステレオマー)で存在できる。従って、本発明は、エナンチオマーまたはジアステレオマーおよびそれらの各々の混合物を含む。そのようなエナンチオマーおよび/またはジアステレオマーの混合物から、立体異性的に均一な構成分を既知の方法で単離できる。
本発明による化合物が互変異性体で存在できる場合、本発明は、全ての互変異性体を含む。
【0015】
本発明に関して、好ましいは、本発明による化合物の生理的に許容し得る塩である。本発明はまた、それら自体は医薬適用に適さないが、例えば本発明による化合物の単離または精製に使用できる塩も含む。
【0016】
本発明による化合物の生理的に許容し得る塩には、鉱酸、カルボン酸およびスルホン酸の酸付加塩、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸および安息香酸の塩が含まれる。
【0017】
本発明による化合物の生理的に許容し得る塩には、また、常套の塩基の塩、例えば、そして好ましくは、アルカリ金属塩(例えばナトリウム塩およびカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えばカルシウム塩およびマグネシウム塩)、および、アンモニアまたは1個ないし16個の炭素原子を有する有機アミン(例えば、そして好ましくは、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジメチルアミノエタノール、プロカイン、ジベンジルアミン、N−メチルモルホリン、アルギニン、リジン、エチレンジアミンおよびN−メチルピペリジン)から誘導されるアンモニウム塩が含まれる。
【0018】
本発明に関して、溶媒和物は、固体または液体状態で、溶媒分子との配位により錯体を形成している本発明による化合物の形態である。水和物は、配位が水とのものである、溶媒和物の特別な形態である。本発明に関して、好ましい溶媒和物は水和物である。
【0019】
さらに、本発明はまた、本発明による化合物のプロドラッグも含む。用語「プロドラッグ」は、それら自体は生物学的に活性であっても不活性であってもよいが、それらが体内に滞在する時間中に、本発明による化合物に変換される(例えば代謝的または加水分解的に)化合物を含む。
【0020】
本発明に関して、断りのない限り、置換基は、以下の意味を有する:
本発明に関して、(C−C)−アルキルおよび(C−C)−アルキルは、各々、1個ないし6個および1個ないし4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキルラジカルを表す。好ましいのは、1個ないし4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキルラジカルである。以下のラジカルは、例として、そして好ましいものとして言及し得る:メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、1−エチルプロピル、n−ペンチルおよびn−ヘキシル。
【0021】
本発明に関して、(C−C)−シクロアルキルは、3個ないし7個の炭素原子を有する単環式シクロアルキル基を表す。好ましいのは、3個ないし6個の炭素原子を有するシクロアルキルラジカルである。以下のラジカルは、例として、そして好ましいものとして言及し得る:シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチル。
【0022】
本発明に関して、(C−C)−アルコキシおよび(C−C)−アルコキシは、各々、1個ないし6個および1個ないし4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルコキシラジカルを表す。好ましいのは、1個ないし4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルコキシラジカルである。以下のラジカルは、例として、そして好ましいものとして言及し得る:メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシおよびtert−ブトキシ。
【0023】
本発明に関して、(C−C)−アルカノイル[(C−C)−アシル]は、1個ないし6個の炭素原子を有し、二重結合した酸素原子を1位に有し、1位を介して結合している、直鎖または分枝鎖のアルキルラジカルを表す。好ましいのは、1個ないし4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルカノイルラジカルである。以下のラジカルは、例として、そして好ましいものとして言及し得る:ホルミル、アセチル、プロピオニル、n−ブチリル、イソブチリルおよびピバロイル。
【0024】
本発明に関して、(C−C)−アルコキシカルボニルは、1個ないし6個の炭素原子を有し、カルボニル基を介して結合している、直鎖または分枝鎖のアルコキシラジカルを表す。好ましいのは、アルコキシ基中に1個ないし4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルコキシカルボニルラジカルである。以下のラジカルは、例として、そして好ましいものとして言及し得る:メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、n−プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニルおよびtert−ブトキシカルボニル。
【0025】
本発明に関して、モノ−(C−C)−アルキルアミノおよびモノ−(C−C)−アルキルアミノは、各々、1個ないし6個および1個ないし4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキル置換基を有するアミノ基を表す。好ましいのは、1個ないし4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のモノアルキルアミノラジカルである。以下のラジカルは、例として、そして好ましいものとして言及し得る:メチルアミノ、エチルアミノ、n−プロピルアミノ、イソプロピルアミノおよびtert−ブチルアミノ。
【0026】
本発明に関して、ジ−(C−C)−アルキルアミノおよびジ−(C−C)−アルキルアミノは、各場合で1個ないし6個および1個ないし4個の炭素原子を有する2個の同一かまたは異なる直鎖または分枝鎖のアルキル置換基を有するアミノ基を表す。好ましいのは、各場合で、1個ないし4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のジアルキルアミノラジカルである。以下のラジカルは、例として、そして好ましいものとして言及し得る:N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、N−エチル−N−メチルアミノ、N−メチル−N−n−プロピルアミノ、N−イソプロピル−N−n−プロピルアミノ、N−tert−ブチル−N−メチルアミノ、N−エチル−N−n−ペンチルアミノおよびN−n−ヘキシル−N−メチルアミノ。
【0027】
本発明に関して、(C−C)−シクロアルキルアミノは、3個ないし7個の炭素原子を有するシクロアルキル置換基を有するアミノ基を表す。好ましいのは、3個ないし6個の炭素原子を有するシクロアルキルアミノラジカルである。以下のラジカルは、例として、そして好ましいものとして言及し得る:シクロプロピルアミノ、シクロブチルアミノ、シクロペンチルアミノ、シクロヘキシルアミノおよびシクロヘプチルアミノ。
【0028】
本発明に関して、(C−C)−アルカノイルアミノは、1個ないし6個の炭素原子を有し、カルボニル基を介して結合している直鎖または分枝鎖のアルカノイル置換基を有するアミノ基を表す。好ましいのは、1個ないし4個の炭素原子を有するアルカノイルアミノラジカルである。以下のラジカルは、例として、そして好ましいものとして言及し得る:ホルムアミド、アセトアミド、プロピオンアミド、n−ブチルアミドおよびピバロイルアミド。
【0029】
本発明に関して、(C−C)−アルコキシカルボニルアミノは、アルコキシラジカル中に1個ないし6個の炭素原子を有し、カルボニル基を介して結合している直鎖または分枝鎖のアルコキシカルボニル置換基を有するアミノ基を表す。好ましいのは、アルコキシ基中に1個ないし4個の炭素原子を有するアルコキシカルボニルアミノラジカルである。以下のラジカルは、例として、そして好ましいものとして言及し得る:メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、n−プロポキシカルボニルアミノおよびtert−ブトキシカルボニルアミノ。
【0030】
本発明に関して、4員ないし7員の複素環は、環の窒素原子を含有し、この環の窒素原子を介して結合しており、環構成員としてNおよびOからなる群からさらなるヘテロ原子を含有していてもよい、4個ないし7個の環原子を有する飽和複素環を表す。好ましいのは、窒素を介して結合しており、NおよびOからなる群からさらなるヘテロ原子を含有していてもよい、5員または6員の飽和複素環である。以下のラジカルは、例として言及し得る:アゼチジニル、ピロリジニル、オキサゾリジニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、アゼピニルおよび1,4−ジアゼピニル。特に好ましいのは、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニルおよびモルホリニルである。
【0031】
本発明に関して、4員ないし6員の飽和または部分不飽和複素環は、環の窒素原子を含有し、この窒素原子を介して結合しており、NおよびOからなる群からさらなるヘテロ原子を含有していてもよく、飽和であるかまたは二重結合を含有する、4個ないし6個の環原子を有する複素環を表す。好ましいのは、窒素を介して結合しており、NおよびOからなる群からさらなるヘテロ原子を含有していてもよい、5員または6員の飽和または部分不飽和複素環である。以下のラジカルは、例として言及し得る:アゼチジニル、ピロリジニル、オキサゾリジニル、イミダゾリジニル、ピロリニル、ピラゾリニル、イミダゾリニル、4−オキサゾリニル、イソオキサゾリニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、テトラヒドロピリジニルおよびテトラヒドロピリミジニル。特に好ましいのは、ピロリジニル、ピロリニル、ピペリジニル、ピペラジニルおよびモルホリニルである。
【0032】
本発明に関して、ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を含む。好ましいのは、フッ素または塩素である。
【0033】
本発明による化合物中のラジカルが置換されている場合、そのラジカルは、断りのない限り、一置換または多置換されていてよい。本発明に関して、1回以上出てくるラジカルの意味は、相互に独立している。1個、2個または3個の同一かまたは異なる置換基による置換が好ましい。1個の置換基による置換がことさら特に好ましい。
【0034】
好ましいのは、式中、
Aが、式
【化3】

{式中、
4Aは、水素、ヒドロキシル、メトキシまたはアミノを表し、
4Bは、メチルまたはエチル(各場合で、ヒドロキシル、アミノ、ピロリジノまたはシクロプロピルアミノにより置換されていてもよい)を表すか、または、アミノを表し、
4Cは、水素、メチルまたはエチルを表し、ここで、メチルおよびエチルは、各場合で、ヒドロキシル、アミノ、ピロリジノまたはシクロプロピルアミノにより置換されていてもよく、
そして、
*は、フェニル環への結合点を示す}
の基を表し、
Zが、式
【化4】

{式中、
は、フッ素、塩素、メチルまたはエチニルを表し、
そして、
#は、カルボニル基への結合点を示す}
の基を表し、
が、水素を表し、
が、水素、フッ素またはメチルを表し、
そして、
が、水素または(C−C)−アルキルを表す、
式(I)の化合物並びにそれらの塩、溶媒和物および塩の溶媒和物である。
【0035】
特に好ましいのは、式中、
Aが、式
【化5】

{式中、*は、フェニル環への結合点を示す}
の基を表し、
Zが、式
【化6】

{式中、
は、フッ素、塩素またはメチルを表し、
そして、
#は、カルボニル基への結合点を示す}
の基を表し、
が、水素を表し、
が、水素、フッ素またはメチルを表し、
そして、
が、水素を表す、
式(I)の化合物並びにそれらの塩、溶媒和物および塩の溶媒和物である。
【0036】
ラジカルの各々の組合せまたは好ましい組合せで示される個々のラジカルの定義は、特に与えられたラジカルの組合せから独立して、他の組合せのいかなるラジカルの定義によっても置き換えられ得る。
上述の好ましい範囲の2つまたはそれ以上の組合せがことさら特に好ましい。
【0037】
本発明は、さらに、式中、Rが水素を表す本発明による式(I)の化合物の製造方法を提供し、その方法は、式(II)
【化7】

の(2S)−3−アミノプロパン−1,2−ジオールを、不活性溶媒中、塩基の存在下、式(III)
【化8】

(式中、Zは、上記の意味を有し、そして、
Xは、適する脱離基、例えばハロゲン、好ましくは塩素を表す)
の化合物と反応させ、式(IV)
【化9】

(式中、Zは上記の意味を有する)
の化合物を得、
次いで、酢酸中の臭化水素酸を利用して、必要に応じて無水酢酸を添加して、式(V)
【化10】

(式中、Zは上記の意味を有する)
の化合物に変換し、
【0038】
次いで、これらを、不活性溶媒中、塩基の存在下で、式(VI)
【化11】

(式中、Zは上記の意味を有する)
の化合物に環化し、
次いで、不活性溶媒中、必要に応じてプロトン酸またはルイス酸の存在下、式(VII)
【化12】

(式中、A、RおよびRは、上記の意味を有する)
の化合物と反応させ、式(VIII)
【化13】

(式中、A、Z、RおよびRは、上記の意味を有する)
の化合物を得、
次いで、これらを、不活性溶媒中、臭化シアンと、必要に応じて酸の存在下で反応させ、式(I−A)
【化14】

(式中、A、Z、RおよびRは、上記の意味を有する)
の化合物を得、
そして、式(I−A)の化合物を、必要に応じて、適切な(i)溶媒および/または(ii)塩基もしくは酸で、それらの溶媒和物、塩および/または塩の溶媒和物に変換することを特徴とする。
【0039】
が水素を表さない本発明による式(I)の化合物は、文献から知られる方法と同様に、式(VIII)の化合物から製造できる[例えば、R=シアノには:a) R. Evers, M. Michalik, J. Prakt. Chem. 1991, 333, 699-710; N. Maezaki, A. Furusawa, S. Uchida, T. Tanaka, Tetrahedron 2001, 57, 9309-9316; G. Berecz, J. Reiter, G. Argay, A. Kalman, J. Heterocycl. Chem. 2002, 39, 319-326; b) R. Mohr, A. Buschauer, W. Schunack, Arch. Pharm. (Weinheim Ger.) 1988, 321, 221-227;R=アルキルには:a) V.A. Vaillancourt et al., J. Med. Chem. 2001, 44, 1231-1248; b) F.B. Dains et al., J. Amer. Chem. Soc. 1925, 47, 1981-1989; J. Amer. Chem. Soc. 1922, 44, 2637-2643 および T. Shibanuma, M. Shiono, T. Mukaiyama, Chem. Lett. 1977, 575-576 参照;合成スキーム2および3も参照]。
【0040】
必要に応じて、本発明による化合物は、上記の方法により得られた式(I)の化合物から出発して、個々の置換基の、特に、R、R、R、RおよびRで列挙した置換基の官能基のさらなる変換によっても製造できる。これらの変換は常套の方法により実施され、例えば、アルキル化、アミノ化、アシル化、エステル化、エステル切断、アミド形成、酸化または還元並びに一時的な保護基の導入および除去などの反応が含まれる。
【0041】
工程(II)+(III)→(IV)のための不活性溶媒は、例えば、ジクロロメタン、トリクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、1,2−ジクロロエタンもしくはトリクロロエチレンなどのハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、グリコールジメチルエーテルもしくはジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、ベンゼン、キシレン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサンもしくは鉱油留分(mineral oil fractions)などの炭化水素類、または、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N,N'−ジメチルプロピレンウレア(DMPU)、N−メチルピロリドン(NMP)、アセトニトリル、ピリジンもしくは水などの他の溶媒である。上述の溶媒の混合物を使用することも可能である。好ましいのは、水、2−メチルテトラヒドロフランおよびトルエンの混合物を使用することである。
【0042】
この工程では、(2S)−3−アミノプロパン−1,2−ジオール(II)を遊離塩基または酸付加塩として用いることができる;好ましいのは、塩酸塩を使用することである。
【0043】
工程(II)+(III)→(IV)に適する塩基は、常套の無機または有機塩基である。これらには、特に、重炭酸ナトリウムもしくはカリウムなどのアルカリ金属重炭酸塩、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウムもしくは炭酸セシウムなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属炭酸塩、または、トリエチルアミン、N−メチルモルホリン、N−メチルピペリジン、N,N−ジイソプロピルエチルアミンもしくはピリジンなどの有機アミンが含まれる。好ましいのは、重炭酸ナトリウムを使用することである。
【0044】
ここで、塩基は、式(II)の化合物またはその塩酸塩1moleにつき、1ないし3molの量で、好ましくは1ないし2molの量で用いる。この反応は、一般的に、0℃ないし+50℃、好ましくは+5℃ないし+30℃の温度範囲で実施する。
【0045】
反応(IV)→(V)は、1ないし5、好ましくは3ないし5当量の酢酸中の水性臭化水素酸を使用して実施し、必要に応じて無水酢酸を添加する。この反応は、一般的に、+20℃ないし+100℃、好ましくは+50℃ないし+80℃の温度範囲で実施する。
【0046】
工程(V)→(VI)のための不活性溶媒は、例えば、ジクロロメタン、トリクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、1,2−ジクロロエタンもしくはトリクロロエチレンなどのハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、グリコールジメチルエーテルまたはジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、ベンゼン、キシレン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサンもしくは鉱油留分などの炭化水素類、または、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N,N'−ジメチルプロピレンウレア(DMPU)、N−メチルピロリドン(NMP)もしくはアセトニトリルなどの他の溶媒である。上述の溶媒の混合物を使用することも可能である。好ましいのは、ジクロロメタンまたはテトラヒドロフランを使用することである。
【0047】
(V)→(VI)の環化に適する塩基は、常套の無機塩基である。これらには、特に、重炭酸ナトリウムもしくは重炭酸カリウムなどのアルカリ金属重炭酸塩、または、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウムもしくは炭酸セシウムなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属炭酸塩が含まれる。好ましいのは、炭酸カリウムを使用することである。
【0048】
ここで、塩基は、式(V)の化合物1moleにつき、1ないし5molの量で、好ましくは3ないし5molの量で用いる。この反応は、一般的に、0℃ないし+50℃、好ましくは+10℃ないし+30℃の温度範囲で実施する。
【0049】
工程(VI)+(VII)→(VIII)のための不活性溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールもしくはtert−ブタノールなどのアルコール類、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、グリコールジメチルエーテルもしくはジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、または、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N,N'−ジメチルプロピレンウレア(DMPU)、N−メチルピロリドン(NMP)、アセトニトリルもしくは水などの他の溶媒である。上述の溶媒の混合物を使用することも可能である。好ましいのは、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エタノールまたはこれらの水との混合物を使用することである。
【0050】
工程(VI)+(VII)→(VIII)は、場合により、触媒量のプロトン酸、例えばp−トルエンスルホン酸、または、ルイス酸、例えばイッテルビウム(III)トリフルオロメタンスルホネート、を添加して実施することもできる。
【0051】
反応(VI)+(VII)→(VIII)は、一般的に、0℃ないし+100℃、好ましくは+20℃ないし+80℃の温度範囲で実施する。
【0052】
工程(VIII)→(I−A)のための不活性溶媒は、例えば、ジクロロメタン、トリクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエタン、テトラクロロエタンもしくは1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、ジオキサンもしくはテトラヒドロフランなどのエーテル類、ベンゼン、キシレン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサンもしくは鉱油留分などの炭化水素類、または、アセトニトリルなどの他の溶媒である。上述の溶媒の混合物を使用することも可能である。好ましいのは、テトラヒドロフランまたはアセトニトリルを使用することである。
【0053】
有利には、工程(VIII)→(I−A)は、強い無機または有機酸を添加して実施できる。これらには、特に、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸またはトリフルオロ酢酸などの酸が含まれる。
【0054】
反応(VIII)→(I−A)は、一般的に、−20℃ないし+50℃、好ましくは0℃ないし+40℃の温度範囲で実施する。
【0055】
全工程は、大気圧、加圧または減圧で実施できる(例えば0.5ないし5bar)。一般に、これらの反応は、大気圧で実施する。
【0056】
式(II)、(III)および(VII)の化合物は、購入できるか、文献から知られているか、または、それらは、文献から知られている方法と同様に製造できる。
【0057】
本発明による化合物の製造は、下記の合成スキームにより例示説明できる:
スキーム1
【化15】

[X=脱離基、例えば塩素]
【0058】
スキーム2
【化16】

[R3A=CNまたはアルキル;Y=脱離基、例えばMeSまたはPhO]
【0059】
スキーム3
【化17】

[R3B=アルキル]
【0060】
本発明による化合物は、予想し得なかった有用な薬理活性スペクトル、特に、高い効力を有する。
従って、それらは、ヒトおよび動物における疾患の処置および/または予防用の医薬としての使用に適する。
本発明による化合物は、特に抗凝血剤として作用する、血液凝固因子Xaの選択的阻害剤である。
加えて、本発明による化合物は、好都合な物理化学的特性、例えば、治療的適用に有利である、水および生理的媒体における良好な溶解度を有する。
本発明はさらに、障害、好ましくは血栓塞栓性障害および/または血栓塞栓性合併症の処置および/または予防のための、本発明による化合物の使用を提供する。
【0061】
本発明の目的上、「血栓塞栓性障害」には、特に、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)または非ST上昇型心筋梗塞(非STEMI)、安定狭心症、不安定狭心症、血管形成術または大動脈冠動脈バイパス術などの冠動脈介入後の再閉塞および再狭窄、末梢動脈閉塞疾患、肺栓塞症、深部静脈血栓および腎静脈血栓、一過性虚血発作および血栓性および血栓塞栓性卒中などの障害が含まれる。
【0062】
従って、これらの物質は、例えば心房細動などの急性、間欠性または持続性心不整脈を有する患者、および電気的除細動を受けている者、さらに、心臓弁障害を有するか、または人工心臓弁を有する患者における、心原性血栓塞栓症、例えば、脳虚血、卒中および全身性血栓塞栓症および虚血の予防および処置にも適する。加えて、本発明による化合物は、汎発性血管内凝固症候群(DIC)の処置に適する。
【0063】
血栓塞栓性合併症は、さらに、微小血管障害性溶血性貧血、血液透析などの体外血液循環において、そして心臓代用弁と関連して起こる。
【0064】
さらに、本発明による化合物は、アテローム硬化性血管障害および炎症障害、例えば運動器のリウマチ性障害の予防および/または処置にも、およびそれに加えて、アルツハイマー病の予防および/または処置にも適する。さらに、本発明による化合物は、腫瘍成長および転移形成の阻害、微小血管障害、加齢に伴う黄斑変性症、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症および他の微小血管の障害、また、例えば、腫瘍患者における、特に大きい外科的介入または化学もしくは放射線治療を受けている患者における、静脈血栓塞栓症などの血栓塞栓性合併症の予防および処置にも使用できる。
【0065】
本発明による化合物は、さらに、エクスビボの凝血の防止、例えば、血液および血清製品の保存、カテーテルおよび他の医療器具および装置の清浄化/予処理、インビボまたはエクスビボで使用される医療器具および装置の合成表面(synthetic surface)の被覆、または、Xa因子を含む生物学的サンプルにも使用できる。
【0066】
本発明は、さらに、障害、特に上述の障害の処置および/または予防のための、本発明による化合物の使用を提供する。
本発明は、さらに、障害、特に上述の障害の処置および/または予防用の医薬を製造するための、本発明による化合物の使用を提供する。
本発明は、さらに、抗凝血的に有効な量の本発明による化合物を使用する、障害、特に上述の障害の処置および/または予防方法を提供する。
【0067】
本発明は、さらに、抗凝血的に有効な量の本発明による化合物を添加することを特徴とする、インビトロの、特に、保存血液またはXa因子を含む生物学的サンプルにおける、血液凝固の防止方法を提供する。
【0068】
本発明は、さらに、特に上述の障害の処置および/または予防のための、本発明による化合物および1種またはそれ以上のさらなる活性化合物を含む医薬を提供する。以下の化合物は、組合せに適する活性化合物として、例として、そして好ましく言及し得る:
・脂質低下剤、特にHMG−CoA(3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−補酵素A)リダクターゼ阻害剤;
・冠血管治療剤/血管拡張剤、特にACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害剤;AII(アンジオテンシンII)受容体アンタゴニスト;β−アドレナリン受容体アンタゴニスト;アルファ−1−アドレナリン受容体アンタゴニスト;利尿剤;カルシウムチャネル遮断剤;環状グアノシン一リン酸(cGMP)濃度の上昇をもたらす物質、例えば、可溶性グアニル酸シクラーゼの刺激剤;
・プラスミノーゲン活性化剤(血栓溶解剤/線維素溶解剤)および血栓溶解/線維素溶解を高める化合物、例えば、プラスミノーゲン活性化因子阻害因子の阻害剤(PAI阻害剤)またはトロンビン活性型繊維素溶解阻害因子の阻害剤(TAFI阻害剤);
抗凝血剤;
血小板凝集阻害性物質(血小板凝集阻害剤、栓球凝集阻害剤);
フィブリノーゲン受容体アンタゴニスト(糖タンパク質IIb/IIIaアンタゴニスト)。
【0069】
本発明は、さらに、少なくとも1種の本発明による化合物を、通常1種またはそれ以上の不活性、非毒性の医薬的に許容し得る補助剤と共に含む医薬、および上述の目的でのそれらの使用を提供する。
【0070】
本発明による化合物は、全身的および/または局所的に作用できる。この目的で、それらは、適する方法で、例えば、経口で、非経腸で、肺に、鼻腔に、舌下に、舌に、頬側に、直腸に、皮膚に、経皮で、結膜もしくは耳の経路で、またはインプラントもしくはステントとして、投与できる。
これらの投与経路のために、本発明による化合物を適する投与形で投与できる。
【0071】
経口投与に適するのは、先行技術で説明される通りに働き、本発明による化合物を迅速におよび/または改変された形態で送達し、本発明による化合物を結晶および/または無定形および/または溶解形態で含むものであり、例えば、錠剤(非被覆および被覆錠剤、例えば、腸溶性被覆、または、溶解が遅延されるか、または不溶であり、本発明による化合物の放出を制御する被覆を施された錠剤)、口腔中で迅速に崩壊する錠剤、またはフィルム/オブラート、フィルム/凍結乾燥剤、カプセル剤(例えば、ハードまたはソフトゼラチンカプセル剤)、糖衣錠、顆粒剤、ペレット剤、散剤、乳剤、懸濁剤、エアゾール剤または液剤である。
【0072】
非経腸投与は、吸収段階を回避して(例えば、静脈内、動脈内、心臓内、脊髄内または腰椎内に)、または吸収を含めて(例えば、筋肉内、皮下、皮内、経皮または腹腔内)、行うことができる。非経腸投与に適する投与形は、なかんずく、液剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥剤または滅菌粉末剤形態の注射および点滴用製剤である。
【0073】
他の投与経路に適する例は、吸入用医薬形態(なかんずく、粉末吸入器、噴霧器)、点鼻薬/液/スプレー;舌、舌下または頬側投与用の錠剤、フィルム/オブラートまたはカプセル剤、坐剤、眼または耳用製剤、膣用カプセル剤、水性懸濁剤(ローション、振盪混合物)、親油性懸濁剤、軟膏、クリーム、経皮治療システム(例えば、パッチ)、ミルク、ペースト、フォーム、散布用粉末剤(dusting powder)、インプラントまたはステントである。
好ましいのは、経口または非経腸投与、特に経口投与である。
【0074】
本発明による化合物は、上述の投与形に変換できる。これは、不活性、非毒性、医薬的に適する補助剤と混合することにより、それ自体既知の方法で行うことができる。これらの補助剤には、なかんずく、担体(例えば微結晶セルロース、ラクトース、マンニトール)、溶媒(例えば液体ポリエチレングリコール類)、乳化剤および分散剤または湿潤剤(例えばドデシル硫酸ナトリウム、ポリオキシソルビタンオレエート)、結合剤(例えばポリビニルピロリドン)、合成および天然ポリマー(例えばアルブミン)、安定化剤(例えば抗酸化剤、例えばアスコルビン酸など)、着色料(例えば無機色素、例えば酸化鉄など)および香味および/または臭気の隠蔽剤が含まれる。
【0075】
一般に、非経腸投与で約0.001ないし1mg/体重kg、好ましくは約0.01ないし0.5mg/体重kgの量を投与するのが、有効な結果を達成するために有利であると明らかになった。経口投与の投与量は、約0.01ないし100mg/体重kg、好ましくは約0.01ないし20mg/体重kg、ことさら特に好ましくは約0.1ないし10mg/体重kgである。
【0076】
それにも拘わらず、必要に応じて、体重、投与経路、活性化合物に対する個体の応答、製剤の様式および投与を行う時間または間隔に応じて、上述の量から逸脱することが必要であり得る。従って、上述の最小量より少なくても十分な場合があり、一方上述の上限を超えなければならない場合もある。大量に投与する場合、これらを1日に亘る数回の個別投与に分割するのが望ましいことがある。
【0077】
下記の実施例により、本発明を例示説明する。本発明は、これらの実施例に限定されない。
以下の試験および実施例における百分率のデータは、断りの無い限り、重量パーセントである;部は、重量部である。液体/液体溶液の溶媒比、希釈比および濃度のデータは、各場合で体積に基づく。
【実施例】
【0078】
A.実施例
略語および頭字語:
【表1】

【0079】
LC−MSおよびHPLCの方法:
方法1:
MS 装置: Micromass ZQ; HPLC 装置: Waters Alliance 2795; カラム: Phenomenex Synergi 2μ Hydro-RP Mercury 20 mm x 4 mm;移動相A:水1l+50%強度ギ酸0.5ml、移動相B:アセトニトリル1l+50%強度ギ酸0.5ml;グラジエント:0.0分90%A→2.5分30%A→3.0分5%A→4.5分5%A;流速:0.0分1ml/分、2.5分/3.0分/4.5分2ml/分;オーブン:50℃;UV検出:210nm。
【0080】
方法2:
装置:DAD 検出を有するHP 1100;カラム:Kromasil 100 RP-18, 60 mm x 2.1 mm, 3.5 μm;移動相A:HClO(70%)5ml/水1l、移動相B:アセトニトリル;グラジエント:0分2%B→0.5分2%B→4.5分90%B→9分0%B→9.2分2%B→10分2%B;流速:0.75ml/分;カラム温度:30℃;UV検出:210nm。
【0081】
出発物質:
実施例1A
5−クロロチオフェン−2−カルボニルクロリド
【化18】

5−クロロチオフェン−2−カルボン酸を塩化チオニルと反応させることにより、表題化合物を製造する。R. Aitken et al., Arch. Pharm. (Weinheim Ger.) 1998, 331, 405-411 参照。
【0082】
実施例2A
4−(4−アミノフェニル)モルホリン−3−オン
【化19】

4−フルオロニトロベンゼンをモルホリン−3−オン[J.-M. Lehn, F. Montavon, Helv. Chim. Acta 1976, 59, 1566-1583]と反応させ、続いて得られる4−(4−ニトロフェニル)モルホリン−3−オンを還元することにより、表題化合物を製造する(WO01/47919、出発物質IおよびII、pp.55−57参照)。
【0083】
実施例3A
5−クロロ−N−[(2S)−2−オキシラニルメチル]−2−チオフェンカルボキサミド
【化20】

表題化合物は、WO2004/101557(実施例6A)に記載の通りに、(i)(2S)−3−アミノプロパン−1,2−ジオールヒドロクロリドの、5−クロロチオフェン−2−カルボニルクロリドによる、塩基としての重炭酸ナトリウムの存在下でのアシル化、(ii)酢酸/無水酢酸中の臭化水素酸を利用するヒドロキシ−臭素交換、および、(iii)塩基としての炭酸カリウムの存在下でのエポキシド形成により製造する。
【0084】
実施例:
実施例1
5−クロロ−N−({(5S)−2−イミノ−3−[4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}メチル)−チオフェン−2−カルボキサミド
【化21】

【0085】
段階a):5−クロロ−N−((2R)−2−ヒドロキシ−3−{[4−(3−オキソ−4−モルホリニル)フェニル]アミノ}プロピル)−2−チオフェンカルボキサミド
【化22】

4−(4−アミノフェニル)モルホリン−3−オン(実施例2A)6.18g(32mmol)および5−クロロ−N−[(2S)−2−オキシラニルメチル]−2−チオフェンカルボキサミド(実施例3A)7.00g(32mmol)を、エタノール/水(9:1)130mlに懸濁し、75℃で終夜撹拌する(溶液の形成)。この溶液を氷浴中で冷却し、得られる白色沈殿を濾過し、ジエチルエーテルで洗浄し、高真空下で乾燥させる。これにより、表題化合物4.98gを得る。母液の濃縮、さらなるエタノール/水(9:1)50ml中の5−クロロ−N−[(2S)−2−オキシラニルメチル]−2−チオフェンカルボキサミド3.5g(16mmol)の添加、75℃での終夜のさらなる撹拌、および、氷浴中での冷却後に得られる沈殿の濾過により、さらに3.44gの表題化合物を得る。
収量:全部で8.42g(理論値の62%)
LC−MS(方法1):R=1.46分;
MS(ESIpos):m/z=410[M+H]
1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ = 8.60 (t, 1H), 7.69 (d, 1H), 7.18 (d, 1H), 7.02 (d, 2H), 6.59 (d, 2H), 5.65 (t, 1H), 5.08 (d, 1H), 4.13 (s, 2H), 3.91 (dd, 2H), 3.87-3.74 (m, 1H), 3.59 (m, 2H), 3.30-2.90 (m, 4H).
【0086】
段階b):5−クロロ−N−({(5S)−2−イミノ−3−[4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}メチル)チオフェン−2−カルボキサミド
【化23】

アルゴン下、室温で、段階a)由来の5−クロロ−N−((2R)−2−ヒドロキシ−3−{[4−(3−オキソ−4−モルホリニル)フェニル]アミノ}プロピル)−2−チオフェンカルボキサミド700mg(1.71mmol)を、臭化シアンの5モル濃度THF溶液13.7ml(68.3mmol)中、6時間撹拌する。反応混合物を濃縮し、残渣(690mg)を分取HPLCにより精製する[カラム:YMC Gel ODS-AQ S-11 μm;移動相:アセトニトリル/0.2%強度トリフルオロ酢酸35:65]。これにより、表題化合物491mg(理論値の89%)を、トリフルオロ酢酸塩として得る。飽和水性重炭酸ナトリウム溶液と共にTHF中で撹拌することにより遊離塩基を解放し、次いで、溶液をジクロロメタンで抽出する。合わせた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮する。これにより、表題化合物282mg(理論値の38%)を遊離塩基として得る。
HPLC(方法2):R=3.58分;
MS(ESIpos):m/z=435[M+H]
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ = 8.91 (t, 1H), 7.79 (d, 2H), 7.67 (d, 1H), 7.33 (d, 2H), 7.19 (d, 1H), 6.15 (s, 1H), 4.78-4.69 (m, 1H), 4.19 (s, 2H), 4.16-4.08 (m, 1H), 3.97 (dd, 2H), 3.79 (m, 1H), 3.69 (dd, 2H), 3.58-3.50 (m, 2H).
【0087】
B. 薬理活性の評価
本発明による化合物は、特に凝血因子Xaの選択的阻害剤として作用し、プラスミンまたはトリプシンなどの他のセリンプロテアーゼを阻害しないか、または、顕著に高い濃度でのみ阻害する。
【0088】
凝血因子Xaの阻害剤は、Xa因子阻害のIC50値が、他のセリンプロテアーゼ、特にプラスミンおよびトリプシンの阻害のIC50値と比較して、少なくとも100倍小さいならば、「選択的」と呼ばれる。ここで、選択性の試験方法に関して、下記の実施例Ba.1)およびa.2)の試験方法を参照する。
【0089】
本発明による化合物の有利な薬理特性は、以下の方法により測定できる。
a)試験の説明(インビトロ)
a.1)Xa因子阻害の測定
ヒトXa因子(FXa)の酵素的阻害を、FXa特異的発色基質の変換を使用して測定する。Xa因子は、発色基質からp−ニトロアニリンを切断する。測定は、マイクロタイタープレートで以下の通りに実施する。
【0090】
試験物質を様々な濃度でDMSOに溶解し、ヒトFXa(0.5nmol/l、50mmol/lトリスバッファー[C,C,C−トリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタン]、150mmol/l NaCl、0.1%BSA[ウシ血清アルブミン]、pH=8.3に溶解)と、25℃で10分間インキュベートする。純粋なDMSOを対照として使用する。次いで、発色基質(150μmol/l Pefachrome(登録商標) FXa、Pentapharm より)を添加する。25℃で20分間のインキュベーション時間の後、405nmの吸光度を測定する。試験物質を含有する試験混合物の吸光度を、試験物質を含まない対照混合物と比較し、これらのデータからIC50値を算出する。
この試験で、実施例1は、5.4nMのIC50を示す。
【0091】
a.2)選択性の測定
選択的FXa阻害を評価するために、トリプシンおよびプラスミンなどの他のヒトセリンプロテアーゼの阻害について試験物質を調べる。トリプシン(500mU/ml)およびプラスミン(3.2nmol/l)の酵素活性を測定するために、これらの酵素をTrisバッファー(100mmol/l、20mmol/l CaCl、pH=8.0)に溶解し、試験物質または溶媒と10分間インキュベートする。次いで、対応する特異的発色基質(Chromozym Trypsin(登録商標)および Chromozym Plasmin(登録商標);Roche Diagnostics より)を添加することにより酵素反応を開始し、405nmの吸光度を20分後に測定する。全ての測定は37℃で実施する。試験物質を含有する試験混合物の吸光度を、試験物質を含まない対照サンプルと比較し、これらのデータからIC50値を算出する。
この試験で、実施例1は、各場合で>10μMのIC50を示す。
【0092】
a.3)抗凝血作用の測定
試験物質の抗凝血作用をインビトロでヒトおよびウサギの血漿で測定する。この目的で、0.11モル濃度クエン酸ナトリウム溶液を採血液として使用して、クエン酸ナトリウム/血液の混合比1:9で血液を採取する。血液を採取した直後に、それを徹底的に混合し、約2500gで10分間遠心分離する。上清をピペットで取り出す。市販の試験キット(Hemoliance(登録商標) RecombiPlastin、Instrumentation Laboratory より)を使用して、プロトロンビン時間(PT、同義語:トロンボプラスチン時間、クイック試験(quick test))を様々な濃度の試験物質または対応する溶媒の存在下で測定する。試験化合物を血漿と37℃で3分間インキュベートする。次いで、トロンボプラスチンの添加により凝血を開始し、凝血が起こる時間を測定する。プロトロンビン時間の倍増をもたらす試験物質の濃度を測定する。
【0093】
b)抗血栓活性(インビボ)の測定
b.1)動静脈シャントモデル(ウサギ)
絶食しているウサギ(系統:Esd:NZW)を、Rompun/Ketavet 溶液(各々5mg/kgおよび40mg/kg)の筋肉内投与により麻酔する。C.N. Berry ら [Semin. Thromb. Hemost. 1996, 22, 233-241] により記載された方法に従い、動静脈シャントにおいて、血栓形成を開始させる。この目的で、左頸静脈および右頸動脈を露出させる。長さ10cmの静脈カテーテルを使用して、2本の血管を体外シャントにより連結する。中央で、このカテーテルを、ループを形成するように配列した粗いナイロン糸を含む長さ4cmのさらなるポリエチレンチューブ(PE160、Becton Dickenson)に取り付け、血栓形成性表面を形成させる。体外循環を15分間維持する。次いでシャントを除去し、血栓を伴うナイロン糸の重さを直ちに測定する。ナイロン糸自体の重量は、実験開始前に測定した。体外循環を設置する前に、耳静脈を介して静脈内に、または咽頭チューブを使用して経口で、試験物質を投与する。
【0094】
C.医薬組成物の実施例
本発明による化合物は、以下の方法で医薬製剤に変換できる:
錠剤:
組成:
本発明による化合物100mg、ラクトース(一水和物)50mg、トウモロコシデンプン(天然)50mg、ポリビニルピロリドン(PVP25)(BASF, Ludwigshafen, Germanyより)10mgおよびステアリン酸マグネシウム2mg。
錠剤重量212mg。直径8mm、曲率半径12mm。
製造:
本発明による化合物、ラクトースおよびデンプンの混合物を、5%強度PVP水溶液(m/m)で造粒する。顆粒を乾燥させ、次いで、ステアリン酸マグネシウムと5分間混合する。この混合物を常套の打錠機を使用して打錠する(錠剤の形状について、上記参照)。打錠のガイドラインとして、打錠力15kNを使用する。
【0095】
経口投与できる懸濁液:
組成:
本発明による化合物1000mg、エタノール(96%)1000mg、Rhodigel(登録商標)(FMC, Pennsylvania, USA のキサンタンガム)400mgおよび水99g。
経口懸濁液10mlは、本発明による化合物の単回用量100mgに相当する。
製造:
Rhodigel をエタノールに懸濁し、本発明による化合物を懸濁液に添加する。撹拌しながら水を添加する。Rhodigel の膨潤が完了するまで、混合物を約6時間撹拌する。
【0096】
経口投与できる液剤:
組成:
本発明による化合物500mg、ポリソルベート2.5gおよびポリエチレングリコール400 97g。経口液剤20gは、本発明による化合物の単回用量100mgに相当する。
製造:
本発明による化合物を、ポリエチレングリコールおよびポリソルベートの混合物に撹拌しながら懸濁する。本発明による化合物が完全に溶解するまで、撹拌を継続する。
【0097】
i.v.液剤:
本発明による化合物を、飽和溶解度より低い濃度で、生理的に許容し得る溶媒(例えば、等張塩水、グルコース溶液5%および/またはPEG400溶液30%)に溶解する。溶液を濾過滅菌に付し、無菌のパイロジェン不含の注射容器に満たす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

[式中、
Aは、式
【化2】

{式中、
は、水素、(C−C)−アルキル、(C−C)−シクロアルキル、ヒドロキシ、(C−C)−アルコキシ、アミノ、モノ−もしくはジ−(C−C)−アルキルアミノ、(C−C)−シクロアルキルアミノ、(C−C)−アルカノイルアミノまたは(C−C)−アルコキシカルボニルアミノを表し、
ここで、(C−C)−アルキル、(C−C)−アルコキシ、モノ−およびジ−(C−C)−アルキルアミノは、各場合で、ヒドロキシル、(C−C)−アルコキシ、アミノ、モノ−もしくはジ−(C−C)−アルキルアミノ、(C−C)−シクロアルキルアミノまたは4員ないし7員の飽和複素環(これは、窒素原子を介して結合しており、N−RおよびOからなる群からの環構成員を含有していてもよく、ここで、Rは、水素または(C−C)−アルキルを表す)により置換されていてもよく、
そして、*は、フェニル環への結合点を示す}
の基を表すか、
または、
Aは、式−C(=O)NR
{式中、
およびRは、同一であるか、または異なり、相互に独立して、(C−C)−アルキルまたは(C−C)−シクロアルキルであるか、
または、
およびRは、それらが結合している窒素原子と一体となって、4員ないし6員の飽和または部分不飽和複素環を形成しており、それは、N−RおよびOからなる群から1個の環構成員を含有していてもよく、(C−C)−アルキル、ヒドロキシ、(C−C)−アルコキシ、オキソ、アミノ、モノ−もしくはジ−(C−C)−アルキルアミノにより置換されていてもよく(ここで、Rは、水素または(C−C)−アルキルを表す)、
ここで、上記の全ての(C−C)−アルキル基は、ヒドロキシル、(C−C)−アルコキシ、アミノ、モノ−もしくはジ−(C−C)−アルキルアミノまたは(C−C)−シクロアルキルアミノにより置換されていてもよい}
の基を表し、
Zは、フェニル、ピリジル、ピリミジニル、ピラジニル、チエニル、フリルまたはピロリルを表し、ハロゲン、シアノ、(C−C)−アルキル(これは、ヒドロキシルまたはアミノにより置換されていてもよい)、エチニル、シクロプロピルおよびアミノからなる群から選択される同一かまたは異なる置換基により各場合で一置換または二置換されていてもよく、
およびRは、同一であるか、または異なり、相互に独立して、水素、ハロゲン、シアノ、(C−C)−アルキル、シクロプロピル、トリフルオロメチル、ヒドロキシル、(C−C)−アルコキシ、トリフルオロメトキシ、アミノ、モノ−もしくはジ−(C−C)−アルキルアミノを表し、
ここで、(C−C)−アルキルおよび(C−C)−アルコキシは、各場合でヒドロキシル、(C−C)−アルコキシ、アミノ、モノ−もしくはジ−(C−C)−アルキルアミノまたは(C−C)−シクロアルキルアミノにより置換されていてもよく、
そして、
は、水素、(C−C)−アルキルまたはシアノを表す]
の化合物並びにその塩、溶媒和物および塩の溶媒和物。
【請求項2】
式中、
Aが、式
【化3】

{式中、
4Aは、水素、ヒドロキシル、メトキシまたはアミノを表し、
4Bは、メチルまたはエチル(各場合で、ヒドロキシル、アミノ、ピロリジノまたはシクロプロピルアミノにより置換されていてもよい)を表すか、または、アミノを表し、
4Cは、水素、メチルまたはエチルを表し、ここで、メチルおよびエチルは、各場合で、ヒドロキシル、アミノ、ピロリジノまたはシクロプロピルアミノにより置換されていてもよく、
そして、
*は、フェニル環への結合点を示す}
の基を表し、
Zが、式
【化4】

{式中、
は、フッ素、塩素、メチルまたはエチニルを表し、
そして、
#は、カルボニル基への結合点を示す}
の基を表し、
が、水素を表し、
が、水素、フッ素またはメチルを表し、
そして、
が、水素または(C−C)−アルキルを表す、
請求項1に記載の式(I)の化合物並びにその塩、溶媒和物および塩の溶媒和物。
【請求項3】
式中、
Aが、式
【化5】

{式中、*は、フェニル環への結合点を示す}
の基を表し、
Zが、式
【化6】

{式中、
は、フッ素、塩素またはメチルを表し、
そして、
#は、カルボニル基への結合点を示す}
の基を表し、
が、水素を表し、
が、水素、フッ素またはメチルを表し、
そして、
が、水素を表す、
請求項1または請求項2に記載の式(I)の化合物並びにそれらの塩、溶媒和物および塩の溶媒和物。
【請求項4】
式中、Rが水素を表す請求項1に記載の式(I)の化合物の製造方法であって、式(II)
【化7】

の(2S)−3−アミノプロパン−1,2−ジオールを、不活性溶媒中、塩基の存在下、式(III)
【化8】

(式中、Zは、請求項1に記載の意味を有し、そして、
Xは、適する脱離基、例えばハロゲン、好ましくは塩素を表す)
の化合物と反応させ、式(IV)
【化9】

(式中、Zは上記の意味を有する)
の化合物を得、
次いで、酢酸中の臭化水素酸を利用して、必要に応じて無水酢酸を添加して、式(V)
【化10】

(式中、Zは上記の意味を有する)
の化合物に変換し、次いで、これらを、不活性溶媒中、塩基の存在下で、式(VI)
【化11】

(式中、Zは上記の意味を有する)
の化合物に環化し、
次いで、不活性溶媒中、必要に応じてプロトン酸またはルイス酸の存在下、式(VII)
【化12】

(式中、A、RおよびRは、請求項1に記載の意味を有する)
の化合物と反応させ、式(VIII)
【化13】

(式中、A、Z、RおよびRは、上記の意味を有する)
の化合物を得、
次いで、これらを、不活性溶媒中、臭化シアンと、必要に応じて酸の存在下で反応させ、式(I−A)
【化14】

(式中、A、Z、RおよびRは、上記の意味を有する)
の化合物を得、
そして、式(I−A)の化合物を、必要に応じて、適切な(i)溶媒および/または(ii)塩基もしくは酸で、それらの溶媒和物、塩および/または塩の溶媒和物に変換することを特徴とする、方法。
【請求項5】
疾患の処置および/または予防のための、請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項6】
血栓塞栓性障害の処置および/または予防用の医薬を製造するための、請求項1に記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項7】
インビトロで血液凝固を防止するための、請求項1に記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項8】
請求項1に記載の式(I)の化合物を、不活性、非毒性の医薬的に適する補助剤と組み合わせて含む、医薬。
【請求項9】
請求項1に記載の式(I)の化合物を、さらなる活性化合物と組み合わせて含む、医薬。
【請求項10】
血栓塞栓性障害の処置および/または予防のための、請求項8または請求項9に記載の医薬。
【請求項11】
抗凝血的に有効な量の少なくとも1種の請求項1に記載の式(I)の化合物または請求項8ないし請求項10のいずれかに記載の医薬を使用することを含む、ヒトおよび動物における血栓塞栓性障害の処置および/または予防方法。
【請求項12】
抗凝血的に有効な量の請求項1に記載の式(I)の化合物を添加することを特徴とする、インビトロで血液凝固を防止する方法。

【公表番号】特表2008−536883(P2008−536883A)
【公表日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−506966(P2008−506966)
【出願日】平成18年4月8日(2006.4.8)
【国際出願番号】PCT/EP2006/003232
【国際公開番号】WO2006/111285
【国際公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(503412148)バイエル・ヘルスケア・アクチェンゲゼルシャフト (206)
【氏名又は名称原語表記】Bayer HealthCare AG
【Fターム(参考)】