イメージセンサおよび画像形成装置
【課題】本発明は、読み取り対象物上の照度差を少なく抑えることができ、低コストで画質の劣化を防止できるイメージセンサを得ることにある。
【解決手段】原稿2に光を照射するイメージセンサ10は、有機エレクトロルミネセンスにより発光するEL発光素子24, 25を光源として用いている。EL発光素子24, 25は、走査方向に離間する第1および第2の端部36, 37と、これら第1および第2の端部36, 37の間に位置する中間部38とを含むライン状をなしている。EL発光素子24, 25は、第1および第2の端部36, 37の光度が上記中間部38の光度よりも高くなるように光度分布が変化する特性を有する。
【解決手段】原稿2に光を照射するイメージセンサ10は、有機エレクトロルミネセンスにより発光するEL発光素子24, 25を光源として用いている。EL発光素子24, 25は、走査方向に離間する第1および第2の端部36, 37と、これら第1および第2の端部36, 37の間に位置する中間部38とを含むライン状をなしている。EL発光素子24, 25は、第1および第2の端部36, 37の光度が上記中間部38の光度よりも高くなるように光度分布が変化する特性を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネセンスにより発光するEL発光素子を光源とするイメージセンサおよびこのイメージセンサを搭載した画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、スキャナ機能、印刷機能、複写機能およびネットワーク接続機能等を有する、いわゆるマルチファンクション・ペリフェラルズ(MFP)と称する多機能形の画像形成装置は、原稿のような読み取り対象物から文字や画像等の情報を光学的に読み取るライン走査型のイメージセンサを搭載している。
【0003】
この種のイメージセンサは、読み取り対象物に光を照射する光源を備えている。この光源としては、LED発光素子が広く用いられているが、近年では、LED発光素子に代えて特許文献1に見られるようなEL発光素子を用いることが試されている。
【0004】
EL発光素子は、走査方向に延びる帯状のガラス基板と、このガラス基板の表面に形成された発光部とを備えている。発光部は電界を与えた際のエレクトロルミネセンスにより発光するものであり、ガラス基板の長手方向に沿って一直線状に延びている。
【0005】
ところで、EL発光素子からの光が読み取り対象物の光照射面に照射された時、EL発光素子の長手方向に沿う中間部と向かい合う光照射面の中央部は、EL発光素子の長手方向に沿う広範囲の箇所から光を受けることができる。これに対し、光照射面の端部は、EL発光素子の中央部から離れるため、光照射面の中央部に比べてEL発光素子から照射される光が減少する。このため、光照射面の中央部と端部との間に照度差が生じる。
【0006】
さらに、EL発光素子を光源とするイメージセンサを画像形成装置に組み込んだ際に、EL発光素子が画像形成装置から熱影響を受けるのを避けられない。EL発光素子は細長い形状を有するために、全長に亘って均等に加熱されるわけではなく、その中間部が局部的に加熱されることがあり得る。この結果、EL発光素子の長手方向に沿う温度分布が不均一となり、EL発光素子自体に温度差が生じる。
【0007】
通常、EL発光素子は、温度が高い箇所ほど光度が高くなるという特性を有している。このため、EL発光素子の長手方向に沿う光度分布にばらつきが生じ、これが読み取り対象物の光照射面に照度差を生じさせる一つの要因となる。
【0008】
光照射面に照度差が生じた場合、イメージセンサの出力として照度の低い箇所の画質が照度の高い箇所の画質よりも劣化するといった問題が生じてくる。
【0009】
この光度のばらつきに伴う画質の劣化を防止するため、従来のライン走査型のイメージセンサでは、受光センサを用いて光源の光度を検出し、この検出された光度に基づいて画像信号を補正することが行われている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−87502号公報
【特許文献2】特開平6−225077号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献2に開示されたイメージセンサでは、受光センサで検出された光度を補正するための複雑な信号処理回路を必要とする。そのため、光度を補正することで良好な画像信号が得られるとしても、信号処理回路のコストが増大するのを避けられず、イメージセンサの価格が高騰するといった不具合が生じてくる。
【0011】
本発明の目的は、読み取り対象物上の照度差を少なく抑えて画質の劣化を防止でき、しかも、複雑な信号処理回路が不要となってコストを低減できるイメージセンサを得ることにある。
【0012】
本発明の他の目的は、上記イメージセンサを搭載した画像形成装置を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の一つの形態に係るイメージセンサは、有機エレクトロルミネセンスにより発光するEL発光素子を用いて読み取り対象物に光を照射するイメージセンサであって、上記EL発光素子は、走査方向に離間する第1および第2の端部と、これら第1および第2の端部の間に位置する中間部とを含むライン状をなすとともに、上記第1および第2の端部の光度が上記中間部の光度よりも高くなるように上記EL発光素子の光度分布を変化させたことを特徴としている。
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の一つの形態に係る画像形成装置は、読み取り対象物を搬送する搬送路と、上記搬送路に設置され、上記読み取り対象物から画像情報を光学的に読み取るイメージセンサと、を備えている。
上記イメージセンサは、上記読み取り対象物に向けて光を照射する光源を含み、この光源は、有機エレクトロルミネセンスにより発光するEL発光素子であり、このEL発光素子は、走査方向に離間する第1および第2の端部と、これら第1および第2の端部の間に位置する中間部とを含むライン状をなすとともに、上記第1および第2の端部の光度が上記中間部の光度よりも高くなるように上記EL発光素子の光度分布を変化させたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、EL発光素子の第1および第2の端部の光度が中間部の光度よりも高くなるので、EL発光素子から読み取り対象物に光が照射された時に、この読み取り対象物の光照射面上の照度差を少なく抑えることができる。
【0016】
したがって、複雑な信号処理回路を用いることなく画質の劣化を防止でき、読み取り対象物から画像情報を安定して読み取ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下本発明の第1の実施の形態を、図1ないし図11に基づいて説明する。
【0018】
図1は、画像形成装置1の概略を直線状に展開して示している。画像形成装置1は、読み取り対象物としての原稿2を載置するホッパーテーブル3を備えている。ホッパーテーブル3に載置された原稿2は、給紙ローラ4を介して搬送路5に送り込まれるようになっている。搬送路5は、ホッパーテーブル3と図示しないスタッカーとの間を結んでいる。
【0019】
搬送路5の上に複数のローラ6が配置されている。ローラ6は、原稿2の送り方向に間隔を存して並んでいるとともに、互いに同期して回転するようになっている。このローラ6の回転により、原稿2が搬送路5の始端から終端に向けて順次搬送される。
【0020】
搬送路5の途中に密着型イメージセンサ10が配置されている。密着型イメージセンサ10は、搬送路5に沿って搬送される原稿2から文字や画像等の情報を光学的に読み取るためのものであって、搬送路5の下方に設置されている。
【0021】
図2ないし図4に示すように、密着型イメージセンサ10は、合成樹脂製のハウジング11を有している。ハウジング11は、走査方向に沿う細長い棒状をなしており、原稿2の搬送方向に対し直交する方向に延びている。
【0022】
ハウジング11の上面に第1の凹部12が形成されている。第1の凹部12は、ハウジング11の長手方向に延びている。第1の凹部12は、ハウジング10の上面に開口する開口部13と、この開口部13と向かい合う底面14とを有している。開口部13は、透明板としてのガラス板15で塞がれている。ガラス板15は搬送路5に露出しており、このガラス板15の上を原稿2が通過するようになっている。
【0023】
ハウジング11の底面に第2の凹部16が形成されている。第2の凹部16は、ハウジング11の長手方向に延びている。第2の凹部16は、ハウジング11の内部に形成した連通孔17を通じて第1の凹部12に通じている。連通孔17は、ハウジング11の幅方向に沿う中央部に位置するとともに、ハウジング11の長手方向に延びている。
【0024】
連通孔17の内部にレンズユニット18が保持されている。レンズユニット18は、ハウジング11の長手方向に延びており、その上端部が第1の凹部12の内部に突出している。レンズユニット18は、走査方向と直交するように起立する中心軸線O1を有している。
【0025】
第2の凹部16にセンサ基板19が取り付けられている。センサ基板19は、第2の凹部16を閉塞するようにハウジング11の長手方向に延びている。センサ基板19の上面に複数のCCDのような受光素子20が実装されている。受光素子20は、ハウジング11の長手方向に間隔を存して一列に並んでいるとともに、レンズユニット18の中心軸線O1上に位置している。
【0026】
ハウジング11の第1の凹部12は、図5に示すような有機EL光源ユニット22を収容している。本実施の形態の有機EL光源ユニット22は、リジッドなプリント配線板23、一対のEL発光素子24,25および四つのフレキシブル配線板26を備えている。
【0027】
図3および図5に示すように、プリント配線板23は、一対のEL支持部27a,27bを有している。EL支持部27a,27bは、走査方向に沿うようにハウジング11の長手方向にライン状に延びている。EL支持部27a,27bは、夫々一端28および他端29を有している。一端28および他端29は、EL支持部27a,27bの長手方向に離間している。
【0028】
一方のEL支持部27aの一端28と他方のEL支持部27bの一端28とは、ブリッジ部30を介して互いに連結されている。同様に、一方のEL支持部27aの他端29と他方のEL支持部27bの他端29とは、他のブリッジ部31を介して互いに連結されている。このため、プリント配線板23のEL支持部27a,27bは、互いに間隔を存して平行に配置されている。
【0029】
図4および図7に示すように、各EL支持部27a,27bは、第1の面32と、この第1の面32の反対側に位置する第2の面33とを有している。第1の面32は、ガラス板15の方向を向いている。第1の面32のうちEL支持部27a,27bの一端28および他端29に対応する位置に夫々一対の第1の電極34が形成されている。図6に示すように、第1の電極34は、EL支持部27a,27bの幅方向に並んでいる。
【0030】
図4に示すように、EL支持部27a,27bの第2の面33は、ハウジング11の第1の凹部12の底面14の方向を向いている。一方のEL支持部27aの第2の面33に一対の第2の電極35(一方のみを図示)が形成されている。第2の電極35は、EL支持部27aの一端28に位置するとともに、プリント配線板23に形成した図示しない導体層を介して第1の電極34に電気的に接続されている。
【0031】
EL発光素子24,25は、EL支持部27a,27bの第1の面32に実装されている。EL発光素子24,25は、走査方向に沿うようにライン状に延びている。EL発光素子24,25は、第1の端部36、第2の端部37および中間部38を有している。第1の端部36と第2の端部37とは、EL発光素子24,25の長手方向に互いに離間している。中間部38は、第1の端部36と第2の端部37との間に位置している。
【0032】
図7に示すように、EL発光素子24,25は、夫々透明なガラス基板39と発光部40とを備えている。ガラス基板39は、走査方向に沿ってライン状に延びており、例えば両面接着テープ41を介してEL支持部27a,27bの第1の面32に接着されている。
【0033】
ガラス基板39の一端および他端に、夫々一対の第3の電極42が形成されている。第3の電極42は、例えばインジウムと錫の酸化膜からなるITO(Indium Tin Oxide)電極であって、図6に示すようにEL発光素子24,25の第1および第2の端部36,37においてガラス基板39の幅方向に並んでいる。
【0034】
発光部40は、ガラス基板39の下面に形成されている。発光部40は、電界を与えた際のエレクトロルミネセンスにより発光するものであり、ガラス基板39の長手方向に延びる帯状の発光面40aを有している。発光部40は、その長手方向に沿う一端および他端が第3の電極42に電気的に接続されている。このため、発光部40は、長手方向に沿う両端に電圧を印加することで電界が与えられて、帯状に発光するようになっている。
【0035】
図7に示すように、フレキシブル配線板26は、EL発光素子24,25とプリント配線板23との間を電気的に接続するためのものである。各フレキシブル配線板26は、第4の電極43および第5の電極44を有している。
【0036】
第4の電極43は、プリント配線板23の第1の電極34に異方性導電膜45を介して熱圧着されている。第5の電極44は、ガラス基板36の第3の電極42に他の異方性導電膜46を介して熱圧着されている。
【0037】
図3および図4に示すように、EL支持部27a,27bの第2の面33は、金属板47を間に挟んで第1の凹部12の底面14に固定されている。EL発光素子24,25を第1の凹部12に固定した状態では、EL発光素子24,25がレンズユニット18を間に挟んで二列に並んでいる。それとともに、EL発光素子24,25は、その全長に亘ってガラス板15で覆われている。
【0038】
したがって、ガラス板15は、原稿2から情報を読み取る時に、原稿2とEL発光素子24,25との間に介在される。
【0039】
図2および図3に示すように、ハウジング11にEL発光素子24,25の駆動を司る回路板50が支持されている。回路板50は、ハウジング11の長手方向に延びる長方形状をなしており、その長手方向に沿う複数個所がハウジング11の側面から突出する複数のボス部51にリベット52を介して固定されている。さらに、回路板50は、センサ基板19の下面に積層されて、このセンサ基板19に電気的に接続されている。
【0040】
回路板50の下面に複数の電子回路部品53が実装されている。電子回路部品53は、動作中に発熱するLSI54を含んでいる。LSI54は、EL発光素子24,25の中間部38の真下に位置している。LSI54が発する熱は、回路板50からセンサ基板19およびリベット52を通じてハウジング11に伝わるとともに、このハウジング11からEL発光素子24,25に伝わる。そのため、EL発光素子24,25は、LSI54からの熱影響を受けた時に、その中間部38が局部的に加熱される傾向にある。
【0041】
図4に示すように、回路板50は、二本のケーブル56を介して有機EL光源ユニット22のプリント配線板23に電気的に接続されている。ケーブル56は、ハウジング11に形成したケーブル通路57およびセンサ基板19に開けた貫通孔58を通じて配線されている。
【0042】
有機EL光源ユニット22を動作させると、EL発光素子24,25の発光部40が発光する。発光部40の発光面40aから放射された光は、ガラス板15を通じて原稿2に照射される。原稿2に照射された光は、原稿2の下面(光照射面)で反射した後、レンズユニット18を介して受光素子20に導かれる。受光素子20は、受光量に応じたレベルの信号を出力する。これにより、原稿2に描かれた文字や画像のような情報が光学的に読み取られる。
【0043】
原稿2から情報を光学的に読み取るに際しては、原稿2の光照射面上に照度差が生じることがないように、光照射面上の照度分布をEL発光素子24,25の長手方向に沿って均等化することが望ましい。
【0044】
原稿2の光照射面のうち走査方向に沿う中央部は、EL発光素子24,25の中間部38と対向し、EL発光素子24,25の長手方向に沿う広い範囲から光を受けることができる。これに対し、EL発光素子24,25の第1および第2の端部39,40と対向する光照射面の端部では、EL発光素子24,25の長手方向に沿う広い範囲から光を受けることができない。そのため、原稿2の光照射面の端部は、光照射面の中央部に比べて照度が低くなる。
【0045】
さらに、本実施の形態によると、EL発光素子24,25の中間部38の温度がLSI54の熱影響を受けて高くなるので、EL発光素子24,25の中間部38の光度が第1および第2の端部36,37に比べて高くなる。
【0046】
この結果、原稿2の光照射面では、EL発光素子24,25の中間部41と対向する中央部の照度が益々高くなり、光照射面上の照度分布がEL発光素子24,25の長手方向(走査方向)に沿って不均一となる。
【0047】
この照度分布のばらつきを改善するため、第1の実施の形態では、EL発光素子24,25の発光面40aの上に位置するガラス基板39の上面に、図5や図8に示すような遮光層61を形成している。遮光層61としては、例えば黒色樹脂を用いることができる。この黒色樹脂は、ガラス基板39の上面に例えば0.2mmの厚みで貼り付けており、光の透過を完全に遮ることができる特性を有している。
【0048】
遮光層61は、EL発光素子24,25の長手方向と直交する方向に沿う幅寸法Lを有している。遮光層61の幅寸法Lは、EL発光素子24,25の中間部38から第1および第2の端部36,37の方向に進むに従い漸次減少している。言い換えると、EL発光素子24,25の中間部38に対応する位置では、発光面40aが遮光層61により大きく覆われて発光に寄与する面積が減少している。逆にEL発光素子24,25の第1および第2の端部36,37に対応する位置では、発光面40aの多くが露出されて発光に寄与する面積が中間部38よりも増加している。
【0049】
図9は、遮光層61を有するEL発光素子24,25の長手方向に沿う光度分布を示している。この図9から明らかなように、EL発光素子24,25の中間部38では、第1および第2の端部36,37よりも光度が低下している。
【0050】
したがって、遮光層61は、EL発光素子24,25の第1および第2の端部36,37の光度が中間部38の光度を上回るようにEL発光素子24,25の長手方向に沿う光度分布を変化させている。
【0051】
このような本発明の第1の実施の形態によると、EL発光素子24,25の第1および第2の端部36,37の光度を中間部38の光度よりも高くしたので、EL発光素子24,25から原稿2に光を照射した時に、この光照射面の中央部と端部との間の照度差が少なくなる。
【0052】
すなわち、原稿2の端部では、原稿2の中央部と比較した場合に、EL発光素子24,25から照射される光が減少するが、EL発光素子24,25の光度分布を上記のように変化させることで、原稿2の端部に照射される光の量と原稿2の中央部に照射される光の量が互いにバランスし合う。よって、原稿2の端部と中央部との間での照度差が少なくなる。
【0053】
さらに、たとえEL発光素子24,25の中間部38がLSI54の熱影響を受けて、この中間部38の光度が高くなっても、上記遮光層61の存在により光度の増加分が相殺される。
【0054】
この結果、EL発光素子24,25からの光が原稿2に照射された時に、この原稿2の光照射面上の照度がEL発光素子24,25の第1および第2の端部36,37と対向する位置で急激に低下するのを防止できる。
【0055】
図10は、EL発光素子24,25の長手方向(走査方向)に対する原稿2の光照射面上の照度分布を示している。この図10において、Aは、遮光層61を有するEL発光素子24,25を用いて原稿2に光を照射した時の光照射面上の照度分布を示し、Bは、全長に亘って光度分布が均一のEL発光素子を用いて原稿2に光を照射した時の光照射面上の照度分布を示している。
【0056】
光度分布が均一なEL発光素子を用いた場合、原稿2の光照射面上の照度は、特性Bで示すように原稿2の中央部が最も高く、そこから原稿2の端部に進むに従い次第に低下するとともに、原稿2の端部の付近で照度が急激に低下する傾向を示す。これは、原稿2の端部に導かれるEL発光素子の光が原稿2の中央部に比べて減少しているとともに、EL発光素子の中間部の温度上昇によりEL発光素子の中間部の光度が高くなっているためである。
【0057】
これに対し、遮光層61により光度分布を変化させたEL発光素子24,25を用いた場合は、特性Aで示すように原稿2の中央部の照度は若干低下すものの、原稿2の端部での照度の落ち込みが少なくなり、原稿2の端部から中央部にかけての照度分布が略均等となっている。これは、遮光層61の存在により、原稿2の端部に照射される光の量と原稿2の中央部に照射される光の量が互いにバランスしているためである。
【0058】
図11は、遮光層61を有するEL発光素子24,25を用いた密着型イメージセンサ10と、全長に亘って光度分布が均一のEL発光素子を用いた密着型イメージセンサの夫々における出力を比較した結果を示している。
【0059】
この図11において、特性Aは、遮光層61を有するEL発光素子24,25を用いた密着型イメージセンサ10の出力を示し、特性Bは、比較例としての光度分布が均一のEL発光素子を用いた密着型イメージセンサの出力を示している。
【0060】
図11から分かるように、第1の実施の形態に係る密着型イメージセンサ10では、原稿2の端部での出力の落ち込みが少なく抑えられているのに対し、比較例の密着型イメージセンサでは、原稿2の端部に近づくに従い出力の落ち込みが第1の実施の形態に係る密着型イメージセンサ10よりも大きくなっている。
【0061】
したがって、比較例の密着型イメージセンサでは、照度の低い原稿2の端部に相当する箇所の出力が劣化していることが分かる。
【0062】
以上のことから、本発明の第1の実施の形態によれば、EL発光素子24,25の長手方向に沿う光度分布を意識的に変化させることで、原稿2の光照射面上の照度差を少なく抑えることができる。そのため、受光センサや複雑な信号処理回路を用いて画像信号を補正する場合との比較において、簡単な構成で密着型イメージセンサ10が読み取る画質の劣化を防止することができる。
【0063】
したがって、原稿2から画像情報を安定して読み取ることができる安価な密着型イメージセンサ10およびこのイメージセンサ10を搭載した画像形成装置1を得ることができる。
【0064】
なお、本発明は上記第1の実施の形態に特定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施可能である。
【0065】
図12および図13は、本発明の第2の実施の形態を開示している。
【0066】
この第2の実施の形態は、密着型イメージセンサ10のガラス板15に遮光層71を形成した点が上記第1の実施の形態と相違している。これ以外の密着型イメージセンサ10の基本的な構成は上記第1の実施の形態と同一である。そのため、第2の実施の形態において、第1の実施の形態と同一の構成部分には同一の参照符号を付して、その説明を省略する。
【0067】
図13に概略的に示すように、ガラス板15は、EL発光素子24,25を上方から覆う一対の領域72a,72bを有している。領域72a,72bは、EL発光素子24,25の長手方向(走査方向)に延びているとともに、これら領域72a,72bの上に夫々遮光層71が形成されている。遮光層71は、第1の実施の形態と遮光層61と同一の材質および特性を有している。
【0068】
遮光層71は、EL発光素子24,25の長手方向と直交する方向に沿う幅寸法Lを有している。遮光層71の幅寸法Lは、EL発光素子24,25の中間部38から第1および第2の端部36,37の方向に進むに従い漸次減少している。この結果、EL発光素子24,25の中間部38に対応する位置では、発光面40aが遮光層71により大きく覆われて発光に寄与する面積が減少している。逆にEL発光素子24,25の第1および第2の端部36,37に対応する位置では、発光面40aの多くが露出されて発光に寄与する面積が中間部38よりも増加している。
【0069】
このような第2の実施の形態においても、遮光層71の存在により、EL発光素子24,25の第1および第2の端部36,37の光度を中間部38の光度よりも高くすることができる。そのため、EL発光素子24,25から原稿に光を照射した時に、この原稿の光照射面の中央部と端部との間の照度差が少なくなる。
【0070】
よって、上記第1の実施の形態と同様に、ガラス板15に遮光層71を設けるだけの簡単な構成で、密着型イメージセンサ10が読み取る画質の劣化を防止できるといった利点がある。
【0071】
なお、遮光層は、光を完全に遮るものに限らず、光をある程度まで透過させる特性を有していてもよい。
【0072】
さらに、遮光層をEL発光素子の発光面とガラス板の双方に形成するようにしてもよい。
【0073】
また、光度は、輝度と発光面積により表されることができるため、輝度を変化させることにより光度を変化させても良い。
【0074】
加えて、本発明に係るイメージセンサは、密着型に限らず、縮小結像型のイメージセンサにも同様に適用できる。この場合、縮小結像型のイメージセンサでは、EL発光素子は発光部の光源として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る画像形成装置の概略を示す側面図。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る密着型イメージセンサの斜視図。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る密着型イメージセンサの幅方向に沿う断面図。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る密着型イメージセンサの長手方向に沿う断面図。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る有機EL光源ユニットの平面図。
【図6】本発明の第1の実施の形態において、EL発光素子とプリント配線板との接続部分の構造を示す有機EL光源ユニットの平面図。
【図7】本発明の第1の実施の形態において、EL発光素子とプリント配線板との接続部分の構造を示す有機EL光源ユニットの断面図。
【図8】本発明の第1の実施の形態において、EL発光素子の発光面を遮光層で覆った状態を概略的に示す平面図。
【図9】本発明の第1の実施の形態において、EL発光素子の長手方向に沿う光度分布を示す特性図。
【図10】本発明の第1の実施の形態において、原稿の光照射面上の照度分布を示す特性図。
【図11】本発明の第1の実施の形態において、密着型イメージセンサの出力比率を示す特性図。
【図12】本発明の第2の実施の形態に係る密着型イメージセンサの斜視図。
【図13】本発明の第2の実施の形態において、有機EL光源ユニットのガラス板を遮光層で覆った状態を概略的に示す平面図。
【符号の説明】
【0076】
2…読み取り対象物(原稿)、5…搬送路、10…イメージセンサ(密着型イメージセンサ)、24,25…EL発光素子、36…第1の端部、37…第2の端部、38…中間部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネセンスにより発光するEL発光素子を光源とするイメージセンサおよびこのイメージセンサを搭載した画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、スキャナ機能、印刷機能、複写機能およびネットワーク接続機能等を有する、いわゆるマルチファンクション・ペリフェラルズ(MFP)と称する多機能形の画像形成装置は、原稿のような読み取り対象物から文字や画像等の情報を光学的に読み取るライン走査型のイメージセンサを搭載している。
【0003】
この種のイメージセンサは、読み取り対象物に光を照射する光源を備えている。この光源としては、LED発光素子が広く用いられているが、近年では、LED発光素子に代えて特許文献1に見られるようなEL発光素子を用いることが試されている。
【0004】
EL発光素子は、走査方向に延びる帯状のガラス基板と、このガラス基板の表面に形成された発光部とを備えている。発光部は電界を与えた際のエレクトロルミネセンスにより発光するものであり、ガラス基板の長手方向に沿って一直線状に延びている。
【0005】
ところで、EL発光素子からの光が読み取り対象物の光照射面に照射された時、EL発光素子の長手方向に沿う中間部と向かい合う光照射面の中央部は、EL発光素子の長手方向に沿う広範囲の箇所から光を受けることができる。これに対し、光照射面の端部は、EL発光素子の中央部から離れるため、光照射面の中央部に比べてEL発光素子から照射される光が減少する。このため、光照射面の中央部と端部との間に照度差が生じる。
【0006】
さらに、EL発光素子を光源とするイメージセンサを画像形成装置に組み込んだ際に、EL発光素子が画像形成装置から熱影響を受けるのを避けられない。EL発光素子は細長い形状を有するために、全長に亘って均等に加熱されるわけではなく、その中間部が局部的に加熱されることがあり得る。この結果、EL発光素子の長手方向に沿う温度分布が不均一となり、EL発光素子自体に温度差が生じる。
【0007】
通常、EL発光素子は、温度が高い箇所ほど光度が高くなるという特性を有している。このため、EL発光素子の長手方向に沿う光度分布にばらつきが生じ、これが読み取り対象物の光照射面に照度差を生じさせる一つの要因となる。
【0008】
光照射面に照度差が生じた場合、イメージセンサの出力として照度の低い箇所の画質が照度の高い箇所の画質よりも劣化するといった問題が生じてくる。
【0009】
この光度のばらつきに伴う画質の劣化を防止するため、従来のライン走査型のイメージセンサでは、受光センサを用いて光源の光度を検出し、この検出された光度に基づいて画像信号を補正することが行われている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−87502号公報
【特許文献2】特開平6−225077号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献2に開示されたイメージセンサでは、受光センサで検出された光度を補正するための複雑な信号処理回路を必要とする。そのため、光度を補正することで良好な画像信号が得られるとしても、信号処理回路のコストが増大するのを避けられず、イメージセンサの価格が高騰するといった不具合が生じてくる。
【0011】
本発明の目的は、読み取り対象物上の照度差を少なく抑えて画質の劣化を防止でき、しかも、複雑な信号処理回路が不要となってコストを低減できるイメージセンサを得ることにある。
【0012】
本発明の他の目的は、上記イメージセンサを搭載した画像形成装置を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の一つの形態に係るイメージセンサは、有機エレクトロルミネセンスにより発光するEL発光素子を用いて読み取り対象物に光を照射するイメージセンサであって、上記EL発光素子は、走査方向に離間する第1および第2の端部と、これら第1および第2の端部の間に位置する中間部とを含むライン状をなすとともに、上記第1および第2の端部の光度が上記中間部の光度よりも高くなるように上記EL発光素子の光度分布を変化させたことを特徴としている。
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の一つの形態に係る画像形成装置は、読み取り対象物を搬送する搬送路と、上記搬送路に設置され、上記読み取り対象物から画像情報を光学的に読み取るイメージセンサと、を備えている。
上記イメージセンサは、上記読み取り対象物に向けて光を照射する光源を含み、この光源は、有機エレクトロルミネセンスにより発光するEL発光素子であり、このEL発光素子は、走査方向に離間する第1および第2の端部と、これら第1および第2の端部の間に位置する中間部とを含むライン状をなすとともに、上記第1および第2の端部の光度が上記中間部の光度よりも高くなるように上記EL発光素子の光度分布を変化させたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、EL発光素子の第1および第2の端部の光度が中間部の光度よりも高くなるので、EL発光素子から読み取り対象物に光が照射された時に、この読み取り対象物の光照射面上の照度差を少なく抑えることができる。
【0016】
したがって、複雑な信号処理回路を用いることなく画質の劣化を防止でき、読み取り対象物から画像情報を安定して読み取ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下本発明の第1の実施の形態を、図1ないし図11に基づいて説明する。
【0018】
図1は、画像形成装置1の概略を直線状に展開して示している。画像形成装置1は、読み取り対象物としての原稿2を載置するホッパーテーブル3を備えている。ホッパーテーブル3に載置された原稿2は、給紙ローラ4を介して搬送路5に送り込まれるようになっている。搬送路5は、ホッパーテーブル3と図示しないスタッカーとの間を結んでいる。
【0019】
搬送路5の上に複数のローラ6が配置されている。ローラ6は、原稿2の送り方向に間隔を存して並んでいるとともに、互いに同期して回転するようになっている。このローラ6の回転により、原稿2が搬送路5の始端から終端に向けて順次搬送される。
【0020】
搬送路5の途中に密着型イメージセンサ10が配置されている。密着型イメージセンサ10は、搬送路5に沿って搬送される原稿2から文字や画像等の情報を光学的に読み取るためのものであって、搬送路5の下方に設置されている。
【0021】
図2ないし図4に示すように、密着型イメージセンサ10は、合成樹脂製のハウジング11を有している。ハウジング11は、走査方向に沿う細長い棒状をなしており、原稿2の搬送方向に対し直交する方向に延びている。
【0022】
ハウジング11の上面に第1の凹部12が形成されている。第1の凹部12は、ハウジング11の長手方向に延びている。第1の凹部12は、ハウジング10の上面に開口する開口部13と、この開口部13と向かい合う底面14とを有している。開口部13は、透明板としてのガラス板15で塞がれている。ガラス板15は搬送路5に露出しており、このガラス板15の上を原稿2が通過するようになっている。
【0023】
ハウジング11の底面に第2の凹部16が形成されている。第2の凹部16は、ハウジング11の長手方向に延びている。第2の凹部16は、ハウジング11の内部に形成した連通孔17を通じて第1の凹部12に通じている。連通孔17は、ハウジング11の幅方向に沿う中央部に位置するとともに、ハウジング11の長手方向に延びている。
【0024】
連通孔17の内部にレンズユニット18が保持されている。レンズユニット18は、ハウジング11の長手方向に延びており、その上端部が第1の凹部12の内部に突出している。レンズユニット18は、走査方向と直交するように起立する中心軸線O1を有している。
【0025】
第2の凹部16にセンサ基板19が取り付けられている。センサ基板19は、第2の凹部16を閉塞するようにハウジング11の長手方向に延びている。センサ基板19の上面に複数のCCDのような受光素子20が実装されている。受光素子20は、ハウジング11の長手方向に間隔を存して一列に並んでいるとともに、レンズユニット18の中心軸線O1上に位置している。
【0026】
ハウジング11の第1の凹部12は、図5に示すような有機EL光源ユニット22を収容している。本実施の形態の有機EL光源ユニット22は、リジッドなプリント配線板23、一対のEL発光素子24,25および四つのフレキシブル配線板26を備えている。
【0027】
図3および図5に示すように、プリント配線板23は、一対のEL支持部27a,27bを有している。EL支持部27a,27bは、走査方向に沿うようにハウジング11の長手方向にライン状に延びている。EL支持部27a,27bは、夫々一端28および他端29を有している。一端28および他端29は、EL支持部27a,27bの長手方向に離間している。
【0028】
一方のEL支持部27aの一端28と他方のEL支持部27bの一端28とは、ブリッジ部30を介して互いに連結されている。同様に、一方のEL支持部27aの他端29と他方のEL支持部27bの他端29とは、他のブリッジ部31を介して互いに連結されている。このため、プリント配線板23のEL支持部27a,27bは、互いに間隔を存して平行に配置されている。
【0029】
図4および図7に示すように、各EL支持部27a,27bは、第1の面32と、この第1の面32の反対側に位置する第2の面33とを有している。第1の面32は、ガラス板15の方向を向いている。第1の面32のうちEL支持部27a,27bの一端28および他端29に対応する位置に夫々一対の第1の電極34が形成されている。図6に示すように、第1の電極34は、EL支持部27a,27bの幅方向に並んでいる。
【0030】
図4に示すように、EL支持部27a,27bの第2の面33は、ハウジング11の第1の凹部12の底面14の方向を向いている。一方のEL支持部27aの第2の面33に一対の第2の電極35(一方のみを図示)が形成されている。第2の電極35は、EL支持部27aの一端28に位置するとともに、プリント配線板23に形成した図示しない導体層を介して第1の電極34に電気的に接続されている。
【0031】
EL発光素子24,25は、EL支持部27a,27bの第1の面32に実装されている。EL発光素子24,25は、走査方向に沿うようにライン状に延びている。EL発光素子24,25は、第1の端部36、第2の端部37および中間部38を有している。第1の端部36と第2の端部37とは、EL発光素子24,25の長手方向に互いに離間している。中間部38は、第1の端部36と第2の端部37との間に位置している。
【0032】
図7に示すように、EL発光素子24,25は、夫々透明なガラス基板39と発光部40とを備えている。ガラス基板39は、走査方向に沿ってライン状に延びており、例えば両面接着テープ41を介してEL支持部27a,27bの第1の面32に接着されている。
【0033】
ガラス基板39の一端および他端に、夫々一対の第3の電極42が形成されている。第3の電極42は、例えばインジウムと錫の酸化膜からなるITO(Indium Tin Oxide)電極であって、図6に示すようにEL発光素子24,25の第1および第2の端部36,37においてガラス基板39の幅方向に並んでいる。
【0034】
発光部40は、ガラス基板39の下面に形成されている。発光部40は、電界を与えた際のエレクトロルミネセンスにより発光するものであり、ガラス基板39の長手方向に延びる帯状の発光面40aを有している。発光部40は、その長手方向に沿う一端および他端が第3の電極42に電気的に接続されている。このため、発光部40は、長手方向に沿う両端に電圧を印加することで電界が与えられて、帯状に発光するようになっている。
【0035】
図7に示すように、フレキシブル配線板26は、EL発光素子24,25とプリント配線板23との間を電気的に接続するためのものである。各フレキシブル配線板26は、第4の電極43および第5の電極44を有している。
【0036】
第4の電極43は、プリント配線板23の第1の電極34に異方性導電膜45を介して熱圧着されている。第5の電極44は、ガラス基板36の第3の電極42に他の異方性導電膜46を介して熱圧着されている。
【0037】
図3および図4に示すように、EL支持部27a,27bの第2の面33は、金属板47を間に挟んで第1の凹部12の底面14に固定されている。EL発光素子24,25を第1の凹部12に固定した状態では、EL発光素子24,25がレンズユニット18を間に挟んで二列に並んでいる。それとともに、EL発光素子24,25は、その全長に亘ってガラス板15で覆われている。
【0038】
したがって、ガラス板15は、原稿2から情報を読み取る時に、原稿2とEL発光素子24,25との間に介在される。
【0039】
図2および図3に示すように、ハウジング11にEL発光素子24,25の駆動を司る回路板50が支持されている。回路板50は、ハウジング11の長手方向に延びる長方形状をなしており、その長手方向に沿う複数個所がハウジング11の側面から突出する複数のボス部51にリベット52を介して固定されている。さらに、回路板50は、センサ基板19の下面に積層されて、このセンサ基板19に電気的に接続されている。
【0040】
回路板50の下面に複数の電子回路部品53が実装されている。電子回路部品53は、動作中に発熱するLSI54を含んでいる。LSI54は、EL発光素子24,25の中間部38の真下に位置している。LSI54が発する熱は、回路板50からセンサ基板19およびリベット52を通じてハウジング11に伝わるとともに、このハウジング11からEL発光素子24,25に伝わる。そのため、EL発光素子24,25は、LSI54からの熱影響を受けた時に、その中間部38が局部的に加熱される傾向にある。
【0041】
図4に示すように、回路板50は、二本のケーブル56を介して有機EL光源ユニット22のプリント配線板23に電気的に接続されている。ケーブル56は、ハウジング11に形成したケーブル通路57およびセンサ基板19に開けた貫通孔58を通じて配線されている。
【0042】
有機EL光源ユニット22を動作させると、EL発光素子24,25の発光部40が発光する。発光部40の発光面40aから放射された光は、ガラス板15を通じて原稿2に照射される。原稿2に照射された光は、原稿2の下面(光照射面)で反射した後、レンズユニット18を介して受光素子20に導かれる。受光素子20は、受光量に応じたレベルの信号を出力する。これにより、原稿2に描かれた文字や画像のような情報が光学的に読み取られる。
【0043】
原稿2から情報を光学的に読み取るに際しては、原稿2の光照射面上に照度差が生じることがないように、光照射面上の照度分布をEL発光素子24,25の長手方向に沿って均等化することが望ましい。
【0044】
原稿2の光照射面のうち走査方向に沿う中央部は、EL発光素子24,25の中間部38と対向し、EL発光素子24,25の長手方向に沿う広い範囲から光を受けることができる。これに対し、EL発光素子24,25の第1および第2の端部39,40と対向する光照射面の端部では、EL発光素子24,25の長手方向に沿う広い範囲から光を受けることができない。そのため、原稿2の光照射面の端部は、光照射面の中央部に比べて照度が低くなる。
【0045】
さらに、本実施の形態によると、EL発光素子24,25の中間部38の温度がLSI54の熱影響を受けて高くなるので、EL発光素子24,25の中間部38の光度が第1および第2の端部36,37に比べて高くなる。
【0046】
この結果、原稿2の光照射面では、EL発光素子24,25の中間部41と対向する中央部の照度が益々高くなり、光照射面上の照度分布がEL発光素子24,25の長手方向(走査方向)に沿って不均一となる。
【0047】
この照度分布のばらつきを改善するため、第1の実施の形態では、EL発光素子24,25の発光面40aの上に位置するガラス基板39の上面に、図5や図8に示すような遮光層61を形成している。遮光層61としては、例えば黒色樹脂を用いることができる。この黒色樹脂は、ガラス基板39の上面に例えば0.2mmの厚みで貼り付けており、光の透過を完全に遮ることができる特性を有している。
【0048】
遮光層61は、EL発光素子24,25の長手方向と直交する方向に沿う幅寸法Lを有している。遮光層61の幅寸法Lは、EL発光素子24,25の中間部38から第1および第2の端部36,37の方向に進むに従い漸次減少している。言い換えると、EL発光素子24,25の中間部38に対応する位置では、発光面40aが遮光層61により大きく覆われて発光に寄与する面積が減少している。逆にEL発光素子24,25の第1および第2の端部36,37に対応する位置では、発光面40aの多くが露出されて発光に寄与する面積が中間部38よりも増加している。
【0049】
図9は、遮光層61を有するEL発光素子24,25の長手方向に沿う光度分布を示している。この図9から明らかなように、EL発光素子24,25の中間部38では、第1および第2の端部36,37よりも光度が低下している。
【0050】
したがって、遮光層61は、EL発光素子24,25の第1および第2の端部36,37の光度が中間部38の光度を上回るようにEL発光素子24,25の長手方向に沿う光度分布を変化させている。
【0051】
このような本発明の第1の実施の形態によると、EL発光素子24,25の第1および第2の端部36,37の光度を中間部38の光度よりも高くしたので、EL発光素子24,25から原稿2に光を照射した時に、この光照射面の中央部と端部との間の照度差が少なくなる。
【0052】
すなわち、原稿2の端部では、原稿2の中央部と比較した場合に、EL発光素子24,25から照射される光が減少するが、EL発光素子24,25の光度分布を上記のように変化させることで、原稿2の端部に照射される光の量と原稿2の中央部に照射される光の量が互いにバランスし合う。よって、原稿2の端部と中央部との間での照度差が少なくなる。
【0053】
さらに、たとえEL発光素子24,25の中間部38がLSI54の熱影響を受けて、この中間部38の光度が高くなっても、上記遮光層61の存在により光度の増加分が相殺される。
【0054】
この結果、EL発光素子24,25からの光が原稿2に照射された時に、この原稿2の光照射面上の照度がEL発光素子24,25の第1および第2の端部36,37と対向する位置で急激に低下するのを防止できる。
【0055】
図10は、EL発光素子24,25の長手方向(走査方向)に対する原稿2の光照射面上の照度分布を示している。この図10において、Aは、遮光層61を有するEL発光素子24,25を用いて原稿2に光を照射した時の光照射面上の照度分布を示し、Bは、全長に亘って光度分布が均一のEL発光素子を用いて原稿2に光を照射した時の光照射面上の照度分布を示している。
【0056】
光度分布が均一なEL発光素子を用いた場合、原稿2の光照射面上の照度は、特性Bで示すように原稿2の中央部が最も高く、そこから原稿2の端部に進むに従い次第に低下するとともに、原稿2の端部の付近で照度が急激に低下する傾向を示す。これは、原稿2の端部に導かれるEL発光素子の光が原稿2の中央部に比べて減少しているとともに、EL発光素子の中間部の温度上昇によりEL発光素子の中間部の光度が高くなっているためである。
【0057】
これに対し、遮光層61により光度分布を変化させたEL発光素子24,25を用いた場合は、特性Aで示すように原稿2の中央部の照度は若干低下すものの、原稿2の端部での照度の落ち込みが少なくなり、原稿2の端部から中央部にかけての照度分布が略均等となっている。これは、遮光層61の存在により、原稿2の端部に照射される光の量と原稿2の中央部に照射される光の量が互いにバランスしているためである。
【0058】
図11は、遮光層61を有するEL発光素子24,25を用いた密着型イメージセンサ10と、全長に亘って光度分布が均一のEL発光素子を用いた密着型イメージセンサの夫々における出力を比較した結果を示している。
【0059】
この図11において、特性Aは、遮光層61を有するEL発光素子24,25を用いた密着型イメージセンサ10の出力を示し、特性Bは、比較例としての光度分布が均一のEL発光素子を用いた密着型イメージセンサの出力を示している。
【0060】
図11から分かるように、第1の実施の形態に係る密着型イメージセンサ10では、原稿2の端部での出力の落ち込みが少なく抑えられているのに対し、比較例の密着型イメージセンサでは、原稿2の端部に近づくに従い出力の落ち込みが第1の実施の形態に係る密着型イメージセンサ10よりも大きくなっている。
【0061】
したがって、比較例の密着型イメージセンサでは、照度の低い原稿2の端部に相当する箇所の出力が劣化していることが分かる。
【0062】
以上のことから、本発明の第1の実施の形態によれば、EL発光素子24,25の長手方向に沿う光度分布を意識的に変化させることで、原稿2の光照射面上の照度差を少なく抑えることができる。そのため、受光センサや複雑な信号処理回路を用いて画像信号を補正する場合との比較において、簡単な構成で密着型イメージセンサ10が読み取る画質の劣化を防止することができる。
【0063】
したがって、原稿2から画像情報を安定して読み取ることができる安価な密着型イメージセンサ10およびこのイメージセンサ10を搭載した画像形成装置1を得ることができる。
【0064】
なお、本発明は上記第1の実施の形態に特定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施可能である。
【0065】
図12および図13は、本発明の第2の実施の形態を開示している。
【0066】
この第2の実施の形態は、密着型イメージセンサ10のガラス板15に遮光層71を形成した点が上記第1の実施の形態と相違している。これ以外の密着型イメージセンサ10の基本的な構成は上記第1の実施の形態と同一である。そのため、第2の実施の形態において、第1の実施の形態と同一の構成部分には同一の参照符号を付して、その説明を省略する。
【0067】
図13に概略的に示すように、ガラス板15は、EL発光素子24,25を上方から覆う一対の領域72a,72bを有している。領域72a,72bは、EL発光素子24,25の長手方向(走査方向)に延びているとともに、これら領域72a,72bの上に夫々遮光層71が形成されている。遮光層71は、第1の実施の形態と遮光層61と同一の材質および特性を有している。
【0068】
遮光層71は、EL発光素子24,25の長手方向と直交する方向に沿う幅寸法Lを有している。遮光層71の幅寸法Lは、EL発光素子24,25の中間部38から第1および第2の端部36,37の方向に進むに従い漸次減少している。この結果、EL発光素子24,25の中間部38に対応する位置では、発光面40aが遮光層71により大きく覆われて発光に寄与する面積が減少している。逆にEL発光素子24,25の第1および第2の端部36,37に対応する位置では、発光面40aの多くが露出されて発光に寄与する面積が中間部38よりも増加している。
【0069】
このような第2の実施の形態においても、遮光層71の存在により、EL発光素子24,25の第1および第2の端部36,37の光度を中間部38の光度よりも高くすることができる。そのため、EL発光素子24,25から原稿に光を照射した時に、この原稿の光照射面の中央部と端部との間の照度差が少なくなる。
【0070】
よって、上記第1の実施の形態と同様に、ガラス板15に遮光層71を設けるだけの簡単な構成で、密着型イメージセンサ10が読み取る画質の劣化を防止できるといった利点がある。
【0071】
なお、遮光層は、光を完全に遮るものに限らず、光をある程度まで透過させる特性を有していてもよい。
【0072】
さらに、遮光層をEL発光素子の発光面とガラス板の双方に形成するようにしてもよい。
【0073】
また、光度は、輝度と発光面積により表されることができるため、輝度を変化させることにより光度を変化させても良い。
【0074】
加えて、本発明に係るイメージセンサは、密着型に限らず、縮小結像型のイメージセンサにも同様に適用できる。この場合、縮小結像型のイメージセンサでは、EL発光素子は発光部の光源として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る画像形成装置の概略を示す側面図。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る密着型イメージセンサの斜視図。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る密着型イメージセンサの幅方向に沿う断面図。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る密着型イメージセンサの長手方向に沿う断面図。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る有機EL光源ユニットの平面図。
【図6】本発明の第1の実施の形態において、EL発光素子とプリント配線板との接続部分の構造を示す有機EL光源ユニットの平面図。
【図7】本発明の第1の実施の形態において、EL発光素子とプリント配線板との接続部分の構造を示す有機EL光源ユニットの断面図。
【図8】本発明の第1の実施の形態において、EL発光素子の発光面を遮光層で覆った状態を概略的に示す平面図。
【図9】本発明の第1の実施の形態において、EL発光素子の長手方向に沿う光度分布を示す特性図。
【図10】本発明の第1の実施の形態において、原稿の光照射面上の照度分布を示す特性図。
【図11】本発明の第1の実施の形態において、密着型イメージセンサの出力比率を示す特性図。
【図12】本発明の第2の実施の形態に係る密着型イメージセンサの斜視図。
【図13】本発明の第2の実施の形態において、有機EL光源ユニットのガラス板を遮光層で覆った状態を概略的に示す平面図。
【符号の説明】
【0076】
2…読み取り対象物(原稿)、5…搬送路、10…イメージセンサ(密着型イメージセンサ)、24,25…EL発光素子、36…第1の端部、37…第2の端部、38…中間部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機エレクトロルミネセンスにより発光するEL発光素子を用いて読み取り対象物に光を照射するイメージセンサであって、
上記EL発光素子は、走査方向に離間する第1および第2の端部と、これら第1および第2の端部の間に位置する中間部とを含むライン状をなすとともに、上記第1および第2の端部の光度が上記中間部の光度よりも高くなるように上記EL発光素子の光度分布を変化させたことを特徴とするイメージセンサ。
【請求項2】
請求項1の記載において、上記EL発光素子は、走査方向に延びる発光面を有し、この発光面の上に上記EL発光素子の光度分布を変化させる遮光層を設けたことを特徴とするイメージセンサ。
【請求項3】
請求項2の記載において、上記遮光層は、走査方向と直交する方向に沿う幅寸法を有し、この遮光層の幅寸法が上記EL発光素子の中間部から第1および第2の端部の方向に進むに従い逐次減少することを特徴とするイメージセンサ。
【請求項4】
請求項1の記載において、上記EL発光素子と上記読み取り対象物との間に介在される透明板をさらに備えており、この透明板の上に上記EL発光素子の光度分布を変化させる遮光層を設けたことを特徴とするイメージセンサ。
【請求項5】
請求項4の記載において、上記EL発光素子を支持するハウジングをさらに備えており、上記透明板は、上記EL発光素子を覆うように上記ハウジングに支持されていることを特徴とするイメージセンサ。
【請求項6】
請求項4又は請求項5の記載において、上記遮光層は、走査方向と直交する方向に沿う幅寸法を有し、この遮光層の幅寸法が上記EL発光素子の中間部から第1および第2の端部の方向に進むに従い逐次減少することを特徴とするイメージセンサ。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項の記載において、上記EL発光素子の駆動を司る回路板をさらに備えており、この回路板は動作中に発熱する回路部品を含むとともに、この回路部品は、上記EL発光素子の中間部に対応する位置に設けられていることを特徴とするイメージセンサ。
【請求項8】
読み取り対象物を搬送する搬送路と、
上記搬送路に設置され、上記読み取り対象物から画像情報を光学的に読み取るイメージセンサと、を具備する画像形成装置であって、
上記イメージセンサは、上記読み取り対象物に向けて光を照射する光源を含み、この光源は、有機エレクトロルミネセンスにより発光するEL発光素子であり、このEL発光素子は、走査方向に離間する第1および第2の端部と、これら第1および第2の端部の間に位置する中間部とを含むライン状をなすとともに、上記第1および第2の端部の光度が上記中間部の光度よりも高くなるように上記EL発光素子の光度分布を変化させたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
有機エレクトロルミネセンスにより発光するEL発光素子を用いて読み取り対象物に光を照射するイメージセンサであって、
上記EL発光素子は、走査方向に離間する第1および第2の端部と、これら第1および第2の端部の間に位置する中間部とを含むライン状をなすとともに、上記第1および第2の端部の光度が上記中間部の光度よりも高くなるように上記EL発光素子の光度分布を変化させたことを特徴とするイメージセンサ。
【請求項2】
請求項1の記載において、上記EL発光素子は、走査方向に延びる発光面を有し、この発光面の上に上記EL発光素子の光度分布を変化させる遮光層を設けたことを特徴とするイメージセンサ。
【請求項3】
請求項2の記載において、上記遮光層は、走査方向と直交する方向に沿う幅寸法を有し、この遮光層の幅寸法が上記EL発光素子の中間部から第1および第2の端部の方向に進むに従い逐次減少することを特徴とするイメージセンサ。
【請求項4】
請求項1の記載において、上記EL発光素子と上記読み取り対象物との間に介在される透明板をさらに備えており、この透明板の上に上記EL発光素子の光度分布を変化させる遮光層を設けたことを特徴とするイメージセンサ。
【請求項5】
請求項4の記載において、上記EL発光素子を支持するハウジングをさらに備えており、上記透明板は、上記EL発光素子を覆うように上記ハウジングに支持されていることを特徴とするイメージセンサ。
【請求項6】
請求項4又は請求項5の記載において、上記遮光層は、走査方向と直交する方向に沿う幅寸法を有し、この遮光層の幅寸法が上記EL発光素子の中間部から第1および第2の端部の方向に進むに従い逐次減少することを特徴とするイメージセンサ。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項の記載において、上記EL発光素子の駆動を司る回路板をさらに備えており、この回路板は動作中に発熱する回路部品を含むとともに、この回路部品は、上記EL発光素子の中間部に対応する位置に設けられていることを特徴とするイメージセンサ。
【請求項8】
読み取り対象物を搬送する搬送路と、
上記搬送路に設置され、上記読み取り対象物から画像情報を光学的に読み取るイメージセンサと、を具備する画像形成装置であって、
上記イメージセンサは、上記読み取り対象物に向けて光を照射する光源を含み、この光源は、有機エレクトロルミネセンスにより発光するEL発光素子であり、このEL発光素子は、走査方向に離間する第1および第2の端部と、これら第1および第2の端部の間に位置する中間部とを含むライン状をなすとともに、上記第1および第2の端部の光度が上記中間部の光度よりも高くなるように上記EL発光素子の光度分布を変化させたことを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−141405(P2008−141405A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−324664(P2006−324664)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(504426126)東芝ディーエムエス株式会社 (21)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(504426126)東芝ディーエムエス株式会社 (21)
【Fターム(参考)】
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