説明

イモビライザ認証システム用スロット装置

【課題】携帯機以外の異物が収納部に挿入された場合には、作動スライダが加圧されにくく仮に加圧されてもロックできないため、検出スイッチをオン状態に保つことはできない。
【解決手段】イモビライザ認証システム用のスロット装置1は、携帯機10が挿脱可能な収納部3bを有する可動ホルダ3に、作動部5aを有する作動スライダ5が移動可能に支持されている。収納部3bに挿入された携帯機10は作動スライダ5の被押圧部5cを押し込むため、作動部5aが可動ホルダ3の外部へ徐々に突出していく。携帯機10がさらに挿入されると可動ホルダ3が同方向へスライド移動し、携帯機10が所定位置まで挿入された時点で作動部5aが検出スイッチ6をオン動作させると共に、可動ホルダ3がハートカム体4にロックされるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池消耗時などに携帯機(電子キー)を装填してトランスポンダ信号に基づく該携帯機の認証を可能ならしめるイモビライザ認証システム用スロット装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、車両本体とユーザの所持する携帯機(電子キー)との間で無線通信を行い、該携帯機のIDコードが予め登録されたIDコードに合致した場合だけエンジンの始動を許可するというイモビライザ認証システムが、多くの自動車に採用されるようになっている。かかるイモビライザ認証システムにおいては、車両側の制御装置から送信されるリクエスト信号に応じて、電池を内蔵した携帯機からアンサー信号が送信され、このアンサー信号に含まれる複雑な暗号のIDコードを制御装置が照合することによって該携帯機の認証を行うことができるため、車両の盗難を防止するうえで顕著な効果を期待できる。
【0003】
ただし、携帯機は内蔵電池が消耗するとアンサー信号を送信することができないため、通常、自動車のイモビライザ認証システムにおいては、車両側(例えばインストルメントパネル)に携帯機を装填可能なスロット装置を設置して電池消耗時にも携帯機のIDコードを照合できるようになっている。すなわち、この種のスロット装置に携帯機を挿入して所定位置まで押し込むと、スロット装置に設けられた検出スイッチがオン動作して、車両側の制御装置が電磁誘導により携帯機にトランスポンダ信号を生じさせるようになっている。これにより、制御装置はトランスポンダ信号に含まれるIDコードを照合することによって、スロット装置に装填されている携帯機の内蔵電池を消耗させることなく該携帯機の認証を行うことができる。
【0004】
しかしながら、この種のスロット装置には携帯機以外の異物(例えば指や棒状物など)が挿入される可能性があるため、こうした異物の挿入によって検出スイッチがオン動作されてもイモビライザ認証システムに悪影響が及ばないように配慮しておく必要がある。そこで従来、携帯機以外の異物の挿入によって検出スイッチがオン動作されても、該検出スイッチを速やかにオフ状態に自動復帰させることのできるスロット装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
かかる従来のスロット装置では、携帯機(電子キー)を挿入していくと、ホルダ部材がシャッタ部材を介して押し込まれて携帯機の挿入方向へスライド移動していき、携帯機を所定位置まで挿入すると、該携帯機はホルダ部材に保持(係止)される。そして、この携帯機をさらに挿入していくと、検出スイッチ(照合スイッチ)がホルダ部材に駆動されてオン動作すると共に、シャッタ部材およびホルダ部材に付設されたリンク機構の働きで該ホルダ部材が筐体の凹部に係止され、シャッタ部材はホルダ部材と携帯機との間に挟み込まれた状態となる。しかるに、携帯機以外の異物を挿入してシャッタ部材およびホルダ部材を押し込むことにより検出スイッチをオン動作させても、この異物を取り除けばシャッタ部材は第1の戻しばねに付勢されて初期位置へ復帰するため、シャッタ部材の復帰動作に伴ってリンク機構はホルダ部材を筐体の凹部から離脱させる。その結果、ホルダ部材が第2の戻しばねに付勢されて初期位置へ復帰し、検出スイッチもオフ状態に復帰するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−162261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されている従来のスロット装置は、シャッタ部材とホルダ部材とが複雑なリンク機構を介して連結されて部品点数も多いため、小型化や低コスト化が図りにくいという問題があった。また、かかる従来のスロット装置では、携帯機以外の異物の挿入によって検出スイッチが必ず毎回オン動作してしまうという問題もあった。つまり、スロット装置に装填される携帯機は内蔵電池が消耗していてアンサー信号を返信できないという想定なので、一般的なイモビライザ認証システムにおいては、検出スイッチがオン動作すると、車両側のバッテリーが無駄に消耗されるのを回避するためにリクエスト信号を送信しないように設計されている。その場合、携帯機以外の異物がスロット装置に挿入されたときに検出スイッチが簡単にオン動作してしまうと、その異物が挿入されている間はリクエスト信号が送信されず携帯機の認証が行えないことになってしまう。
【0008】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、構造が簡素で小型化や低コスト化が図りやすく、かつ、携帯機以外の異物が挿入されても検出スイッチが簡単にオン動作しないイモビライザ認証システム用スロット装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、無線通信機能を有する携帯機が挿脱可能な収納部を有して該携帯機の挿入方向に沿ってスライド移動可能な可動ホルダと、この可動ホルダを初期位置へ復帰させるための戻しばねと、電磁誘導によるトランスポンダ信号を前記携帯機に生ぜしめる認証動作を行わせるための検出スイッチと、前記可動ホルダを所定のスライド位置に拘持可能なロック機構とを備え、前記収納部に挿入して前記可動ホルダに保持された前記携帯機を前記戻しばねの付勢力に抗して前記挿入方向へ押し込むことにより、前記可動ホルダが同方向へスライド移動すると共に、前記携帯機が所定位置まで押し込まれた時点で前記検出スイッチがオン動作して前記トランスポンダ信号に基づく前記認証動作が行えるようにしてあるイモビライザ認証システム用スロット装置において、前記収納部内の一部に配置された被押圧部と、この被押圧部から延出して前記可動ホルダの外部へ突出する作動部とを有する作動スライダを備え、この作動スライダが前記可動ホルダに対して前記作動部の前記突出量を増減させる向きに移動可能であると共に、前記被押圧部を前記携帯機が押し込むことによって前記作動部が前記検出スイッチをオン動作させるように構成した。
【0010】
このように構成されたスロット装置は、携帯機以外の異物が可動ホルダの収納部に挿入されたとき、該異物が作動スライダの被押圧部の存しない場所で可動ホルダを押し込んでも検出スイッチはオン動作しない。そのため、被押圧部を収納部内の適宜場所(例えば収納部内奥の一隅部)に配置しておくことにより、携帯機の挿入時には必ず被押圧部が加圧されるものの、携帯機以外の異物の挿入時には被押圧部が加圧されにくい構造を容易に実現することができ、これにより、携帯機以外の異物が挿入されても検出スイッチは簡単にはオン動作しなくなる。また、携帯機以外の異物が被押圧部を押し込んで検出スイッチをオン動作させたとしても、作動スライダはロックされないため、該異物が取り除かれれば検出スイッチは速やかにオフ状態に自動復帰する。しかも、作動スライダと可動ホルダとの間に特別なリンク機構は不要なので、このスロット装置は構造が簡素で小型化や低コスト化が図りやすい。
【0011】
上記の構成において、作動スライダが可動ホルダに対して携帯機の挿入方向に沿って移動可能であると、作動スライダを可動ホルダの奥部に無理なく配置させることができるため、装置全体の小型化が一層容易となる。ただし、作動部を突出せるためのスペースが容易に確保できる場合には、作動スライダが可動ホルダに対して別の方向へ移動可能な構成であっても良い。
【0012】
また、上記の構成において、作動スライダが可動ホルダ以外の部材に支持されていても良いが、作動スライダが可動ホルダによって移動可能に支持されていると、作動スライダの支持構造を簡素化できるため好ましい。この場合において、作動スライダがばね部材を介して可動ホルダに弾性的に支持されていると、このばね部材によって作動スライダを初期位置へ自動復帰させることができると共に、作動スライダのガタを防止できるため、構造を複雑化せずに作動スライダの動作を安定させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のイモビライザ認証システム用スロット装置は、携帯機が保持可能であると共に所定のスライド位置でロック可能な可動ホルダに対して作動スライダが移動可能であり、この作動スライダの位置変化によって検出スイッチがオン動作するようにしてある。したがって、携帯機以外の異物が可動ホルダの収納部に挿入されたときに、該異物が作動スライダの被押圧部を押し込んで検出スイッチをオン動作させたとしても、作動スライダはロックされないため、該異物が取り除かれれば検出スイッチは速やかにオフ状態に自動復帰する。また、携帯機以外の異物が被押圧部の存しない場所で可動ホルダを押し込んでも検出スイッチはオン動作しないため、被押圧部を収納部内の適宜場所に配置しておくことにより、携帯機の挿入時には必ず被押圧部が加圧されるものの、異物の挿入時には被押圧部が加圧されにくい構造を容易に実現することができ、これにより、携帯機以外の異物が挿入されても検出スイッチは簡単にはオン動作しなくなる。しかも、作動スライダと可動ホルダとの間に特別なリンク機構は不要なので、このスロット装置は構造が簡素で小型化や低コスト化が図りやすい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態例に係るイモビライザ認証システム用スロット装置を筐体を除いて示す外観図である。
【図2】図1の可動ホルダから作動スライダを取り外した状態を示す分解斜視図である。
【図3】該スロット装置に対して携帯機の挿入が開始された状態を示す説明図である。
【図4】図3に対応する縦断面図である。
【図5】携帯機を該スロット装置の可動ホルダに保持される位置まで挿入した状態を示す説明図である。
【図6】図5に対応する縦断面図である。
【図7】携帯機を該スロット装置の検出スイッチがオン動作する位置まで挿入した状態を示す説明図である。
【図8】図7に対応する縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態例に係るイモビライザ認証システム用スロット装置について、図1〜図8を参照しつつ説明する。
【0016】
これらの図に示すスロット装置1は、車両のインストルメントパネル等に設置されて、ユーザの所持する携帯機(電子キー)10を装填することによって該携帯機10の認証が行えるようにするためのものである。すなわち、自動車のイモビライザ認証システムにおいては、車両側の制御装置から送信されるリクエスト信号に応じて、電池を内蔵した携帯機10からアンサー信号が送信され、このアンサー信号に含まれるIDコードを制御装置が照合することによって携帯機10の認証を行うことができるが、電池消耗時にも携帯機10のIDコードが照合できるようにするため、車両側に携帯機10が装填可能なスロット装置1が設置されている。
【0017】
スロット装置1は、固定部材である筐体2と、この筐体2に矢印A方向に沿ってスライド移動可能に取り付けられた可動ホルダ3と、この可動ホルダ3を所定のスライド位置でロック(拘持)するハートカム体4と、可動ホルダ3の奥部の一隅部に矢印A方向に沿ってスライド移動可能に組み込まれた作動スライダ5と、この作動スライダ5によってオン動作する検出スイッチ6と、筐体2の図示せぬばね受け部に弾接して可動ホルダ3を矢印Aと反対方向へ弾性付勢する一対の第1コイルばね7とによって主に構成されており、作動スライダ5は第2コイルばね8を介して可動ホルダ3に弾性的に支持されている。
【0018】
可動ホルダ3には、矩形状の挿入口3aを介して携帯機10が挿脱される収納部3bと、携帯機10の両側面に設けられた凹部10aに嵌入可能な一対の係止爪3cと、作動スライダ5の作動部5aや柱状部5bを挿通させるための孔を有する奥壁3dと、ハートカム体4のカム面4aに係合する係合ピン3eとが設けられている。収納部3bの幅寸法は携帯機10の幅寸法と略同等であり、図5に示すように、携帯機10が奥壁3d付近まで収納部3b内へ挿入されると、一対の係止爪3cが一対の凹部10aに嵌入することにより、携帯機10は可動ホルダ3に係止(保持)された状態となる。係止爪3cは弾性片3fの先端(自由端)部分に形成されており、この係止爪3cの背面側には凸部3gが形成されている。携帯機10は一対の係止爪3cを押し広げるようにして収納部3bに挿入されていくため、携帯機10が所定量挿入された時点で係止爪3cが凹部10aにスナップインされるようになっている。
【0019】
また、こうして可動ホルダ3に係止された携帯機10をさらに挿入方向(矢印A方向)へ押し込むと、係合ピン3eが同方向へ直線的にスライド移動するが、この係合ピン3eはカム面4aに沿って移動するため、ハートカム体4が回転軸4bを中心に図5の時計回りに回転し始める。そして、携帯機10が可動ホルダ3を矢印A方向へ所定量スライド移動させると、係合ピン3eがカム面4aのロック部4cに入り込むため、図7に示すように可動ホルダ3がハートカム体4によってロックされる。なお、図1と図2に示すように、ハートカム体4は回転軸4bに支持された捩じりコイルばね9を有しており、この捩じりコイルばね9の付勢力に抗して係合ピン3eがカム面4aに弾接するようになっている。なお、ハートカム体4のカム面4aの具体的な構成は、プッシュロックスイッチやカード用コネクタなどにおいて従来より知られている所謂ハートカム機構によるプッシュロック機構であり、ここでは詳細な説明を省略する。また、前述した一対の第1コイルばね7は、可動ホルダ3が矢印A方向へスライド移動するのに伴って弾性圧縮されていく。
【0020】
作動スライダ5には、収納部3b内に常時配置されて携帯機10に当接可能な被押圧部5cと、この被押圧部5cから矢印A方向へ延出する作動部5aおよび柱状部5bとが設けられている。作動部5aは奥壁3dを貫通して可動ホルダ3の外部へ突出しており、作動スライダ5は可動ホルダ3に対して作動部5aの突出量を増減させる向き(矢印A方向に沿う方向)に移動可能である。そして、携帯機10が被押圧部5cを加圧して作動スライダ5を矢印A方向へ所定位置までスライド移動させると、作動部5aの先端部分がアクチュエータ6aを駆動して検出スイッチ6がオン動作するようになっている。柱状部5bも奥壁3dを貫通しているが、柱状部5bに外挿されている第2コイルばね8は常に収納部3bの内部に存し、柱状部5bの先端部分に設けられた抜け止め部5dは常に収納部3bの外部に存する。なお、この抜け止め部5dはスライドコアなどの金型を用いて形成されているが、ワッシャーなどの別部材を用いて抜け止め部を形成することも可能である。
【0021】
図4に示すように、収納部3b内で第2コイルばね8が奥壁3dに弾接しているため、携帯機10が被押圧部5cを加圧していない非挿入時などにおいても、作動スライダ5は第2コイルばね8の付勢力によって可動ホルダ3にガタつきなく保持されている。この第2コイルばね8は、作動スライダ5が加圧されて可動ホルダ3に対し矢印A方向へスライド移動するのに伴って弾性圧縮されていく。なお、作動スライダ5の被押圧部5cは収納部3bの内奥の一隅部に配置されているが、図5に示すように、収納部3bへ深く挿入した携帯機10は必ず被押圧部5cと当接するようになっている。また、可動ホルダ3に作動部5aを挟み込むように延びる一対のガイド部3hが突設してあり、作動部5aがこれらガイド部3hに案内されながらスライド移動するようになっているため、この作動スライダ5は可動ホルダ3に対して傾くことなく円滑にスライド移動させることができる。
【0022】
検出スイッチ6は、アクチュエータ6aが作動スライダ5の作動部5aに駆動されてステム6bを押し込むことによりオン動作するように構成されたプッシュスイッチである。そして、収納部3bに挿入された携帯機10が作動スライダ5を所定位置まで押し込んで検出スイッチ6からオン信号が出力されると、イモビライザ認証システムの図示せぬ制御装置がリクエスト信号を送信せずに携帯機10の認証動作を行うようになっている。すなわち、制御装置は電磁誘導によって携帯機10にトランスポンダ信号を生じさせ、このトランスポンダ信号に含まれるIDコードを照合することによって、携帯機10の内蔵電池を消耗させることなく携帯機10の認証が可能となる。
【0023】
次に、このように構成されたスロット装置1の動作について詳しく説明する。電池消耗時などに携帯機10を作動スライダ5の挿入口3aへ挿入すると、図3と図4に示すように、携帯機10の先端部が一対の係止爪3cを押し広げながら収納部3bに挿入されていくが、携帯機10が被押圧部5cに当接するまでは作動スライダ5に位置変化は起こらない。
【0024】
携帯機10が収納部3bの内部にさらに挿入されると、携帯機10の先端一側部(図3の上端左隅部)が被押圧部5cに当接するため、作動スライダ5は携帯機10に押し込まれて矢印A方向(携帯機10の挿入方向)へスライド移動していく。かかる作動スライダ5のスライド移動に伴って第2コイルばね8は弾性圧縮されていき、作動部5aは検出スイッチ6のアクチュエータ6aに近接していく。なお、第1コイルばね7のばね圧は第2コイルばね8のばね圧に比べて十分高く、この動作において第1コイルばね7により作動スライダ5は移動しない。そして、携帯機10の挿入量が図5と図6の状態になると、係止爪3cが凹部10aに嵌入することによって携帯機10は可動ホルダ3に係止(保持)された状態となり、この後、携帯機10をさらに押し込むと、携帯機10が可動ホルダ3の奥壁3dに接してこれを押し込むことにより、可動ホルダ3がスライド移動を開始する。その際、例えば被押圧部5cの厚み寸法を矢印A方向に沿って大きくする等して、携帯機10が被押圧部5cを介して奥壁3dを押し込むようにしても良い。
【0025】
すなわち、図5と図6の状態から携帯機10を矢印A方向へさらに押し込むと、可動ホルダ3および作動スライダ5が携帯機10と一体的に同方向へスライド移動するため、一対の第1コイルばね7(図1参照)が弾性圧縮されていくと共に、係合ピン3eがハートカム体4を図5の時計回りに回転させていき、作動部5aはアクチュエータ6aを徐々に駆動していく。そして、携帯機10が可動ホルダ3および作動スライダ5を図7と図8の状態まで押し込むと、作動部5aがアクチュエータ6aを介してステム6bを押し込んで検出スイッチ6をオン動作させると共に、検出スイッチ6がオン動作した直後に可動ホルダ3がハートカム体4のロック部4cに入り込んでロック(拘持)されるようになっている。また、弾性片3fの凸部3gが筐体2の肉厚部2aと対向する位置まで可動ホルダ3がスライド移動するため、係止爪3cは肉厚部2aに規制されて凹部10aから離脱不能となる。これにより、携帯機10はスロット装置1に脱落の虞なく装填された状態となり、検出スイッチ6はオン状態に保たれる。前述したように、検出スイッチ6からオン信号が出力されると、イモビライザ認証システムの制御装置は電磁誘導によって携帯機10にトランスポンダ信号を生じさせ、このトランスポンダ信号に含まれるIDコードを照合して携帯機10の認証を行うため、認証が成立すると車両エンジンの始動が許可される。また、検出スイッチがオン動作すると、制御装置は車両のバッテリーの消耗を回避するためにリクエスト信号を送信しないように設計されている。
【0026】
なお、こうして装填した携帯機10をスロット装置1から離脱させる際には、まず、ハートカム体4にロックされている携帯機10をさらにもう一段深く押し込んで係合ピン3eをロック部4cから離脱させる。これにより、ハートカム体4に拘持されていた可動ホルダ3がロック解除されるため、第1コイルばね7の反力で可動ホルダ3および作動スライダ5が挿入口3a側(反矢印A方向)へスライド移動して図5と図6の状態に復帰する。この過程で検出スイッチ6がオフ状態に復帰すると共に、ハートカム体4がカム面4aに沿う係合ピン3eの移動に伴って図7の反時計回りに回転する。そして、図5と図6の状態でユーザが携帯機10を手前へ強く引っ張れば、弾性片3fの撓みによって係止爪3cが携帯機10の凹部10aから外れるため、スロット装置1から携帯機10を抜き取ることができる。また、携帯機10が抜き取られると作動スライダ5は第2コイルばね8の反力で挿入口3a側へスライド移動するため、図3と図4の状態に復帰する。
【0027】
次に、携帯機10以外の異物が挿入口3aから収納部3b内へ挿入された場合の動作について説明する。作動スライダ5の被押圧部5cは収納部3bの内奥の一隅部に配置されているため、指や棒状物などのように細長い異物が収納部3bへ挿入されたとしても、その異物によって被押圧部5cが加圧される可能性は低い。むしろ、かかる異物は奥壁3dを加圧する可能性が高く、その場合、可動ホルダ3が矢印A方向へスライド移動してハートカム体4にロックされてしまうことはあるが、検出スイッチ6がオン動作してしまうことはなく、よってイモビライザ認証システムの制御装置がリクエスト信号の送信を停止することはない。なお、こうして可動ホルダ3がハートカム体4にロックされてしまっても、その後、携帯機10を収納部3bへ深く挿入すればロック解除できるので不都合は生じない。
【0028】
また、携帯機10以外の異物の挿入によって被押圧部5cが加圧された結果、作動スライダ5が矢印A方向へスライド移動して検出スイッチ6がオン動作してしまったとしても、作動スライダ5はロックされないので、かかる異物が取り除かれれば作動スライダ5は第2コイルばね8に付勢されて初期位置へ復帰し、よって検出スイッチ6は速やかにオフ状態に復帰する。つまり、このスロット装置1は、収納部3bへの挿入物が可動ホルダ3と作動スライダ5を共に押し込んでスライド移動させた場合だけ、検出スイッチ6をオン状態に保っておくことが可能となるように構成されている。
【0029】
以上説明したように、本実施形態例に係るイモビライザ認証システム用のスロット装置1においては、携帯機10が収納部3bに挿入されたときには必ず作動スライダ5の被押圧部5cが加圧されるものの、携帯機10以外の異物が収納部3bに挿入されたときには被押圧部5cの存しない場所で可動ホルダ3が押し込まれる可能性が高く、その場合、検出スイッチ6はオン動作しない。つまり、このスロット装置1は、携帯機10以外の異物が挿入されても検出スイッチ6が簡単にはオン動作しない構造になっている。また、携帯機10以外の異物が被押圧部5cを押し込んで検出スイッチ6をオン動作させたとしても、作動スライダ5はロックされないため、該異物が取り除かれれば検出スイッチ6は速やかにオフ状態に自動復帰する。つまり、このスロット装置1は、異物の挿入に起因するリクエスト信号の不所望な停止が起こりにくい構造にして通常の認証動作が支障なく行えるようにしてあると共に、電池消耗時などに携帯機10を挿入すれば確実に認証が行えるようにしてあるため、使い勝手が良く実用性に富むスロット装置となっている。
【0030】
また、本実施形態例に係るスロット装置1は、作動スライダ5と可動ホルダ3との間に特別なリンク機構が不要なため、構造が簡素で小型化や低コスト化が図りやすくなっている。なお、上記した実施形態例では、作動スライダ5の被押圧部5cを収納部3bの内奥の一隅部に配置しているが、指や棒状物などの異物が収納部3bに挿入されても加圧されにくい適宜場所に被押圧部5cを配置しておけば、上記の実施形態例と同様の効果が得られる。
【0031】
また、本実施形態例に係るスロット装置1は、作動スライダ5が可動ホルダ3によって移動可能に支持されているため、作動スライダ5の支持構造が極めて簡素である。しかも、作動スライダ5は第2コイルばね8を介して可動ホルダ3に弾性的に支持されているため、この第2コイルばね8によって作動スライダ5を初期位置へ自動復帰させることができると共に、作動スライダ5のガタを防止できるようになっている。それゆえ、このスロット装置1は、簡素な構造でありながら作動スライダ5の動作が安定したものとなっている。なお、本実施形態例に係るスロット装置1では、第2コイルばね8を収納部3bの内側に配置しているが、収納部3bの外側の抜け止め部5dと可動ホルダ3の奥壁3dとの間に第2コイルばね8を配置しても良い。ただし、その場合には、第2コイルばね8のばね圧を検出スイッチ6の作動力に比べて十分に小さく設定し、携帯機10以外の異物の挿入によって可動ホルダ3が押し込まれたとき、第2コイルばね8が弾性圧縮して可動ホルダ3のみを移動させて、作動スライダ5の作動部5aが検出スイッチ6を押さないようにする必要がある。さらには第2コイルばね8を削除しても良い。また、作動スライダ5を可動ホルダ3以外の部材に支持させることも可能であり、例えば筐体2に形成したガイド部等によって作動スライダ5を支持するという構造や、プッシュスイッチで構成した検出スイッチ6の操作軸(アクチュエータ)を収納部3bの内部まで延出させ、この延出部分に作動スライダを形成するという構造にしても良い。
【0032】
また、本実施形態例に係るスロット装置1は、作動スライダ5が可動ホルダ3に対して携帯機10の挿入方向(矢印A方向)に沿って移動可能なため、作動スライダ5を可動ホルダ3の奥部に無理なく配置させることができ、この点からも装置全体の小型化が容易である。ただし、作動部5aを突出せるためのスペースが容易に確保できる場合には、作動スライダ5が可動ホルダ3に対して別の方向へ移動可能な構成であっても良い。例えば、可動ホルダ3の一側壁に設けた孔を貫通して携帯機10の挿入方向と略直交する方向へ移動可能な作動スライダに該携帯機10と摺動可能な傾斜面を設けておけば、携帯機10の挿入時に該作動スライダの作動部を可動ホルダ3の側方へ突出させて検出スイッチをオン動作させることができる。
【0033】
なお、上記の実施形態例では、作動スライダ5の作動部5aがアクチュエータ6aを介してステム6bを押し込むことによって検出スイッチ6がオン動作するように構成されているが、作動部5aが検出スイッチ6のステム6bを直接押し込むように構成することもできる。また、検出スイッチとして、光センサや磁気センサ等の非接触式のスイッチを使用することも可能である。
【0034】
また、上記の実施形態例では、可動ホルダ3を所定のスライド位置に拘持可能なロック機構としてハートカム構造のもの(ハートカム体4)を採用しているが、他のカム構造のものやソレノイド等をロック機構として使用することも可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 スロット装置
2 筐体
3 可動ホルダ
3b 収納部
3c 係止爪
3e 係合ピン
4 ハートカム体(ロック機構)
4a カム面
4c ロック部
5 作動スライダ
5a 作動部
5c 被押圧部
6 検出スイッチ
6a アクチュエータ
7 第1コイルばね(戻しばね)
8 第2コイルばね(ばね部材)
10 携帯機(電子キー)
10a 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信機能を有する携帯機が挿脱可能な収納部を有して該携帯機の挿入方向に沿ってスライド移動可能な可動ホルダと、この可動ホルダを初期位置へ復帰させるための戻しばねと、電磁誘導によるトランスポンダ信号を前記携帯機に生ぜしめる認証動作を行わせるための検出スイッチと、前記可動ホルダを所定のスライド位置に拘持可能なロック機構とを備え、前記収納部に挿入して前記可動ホルダに保持された前記携帯機を前記戻しばねの付勢力に抗して前記挿入方向へ押し込むことにより、前記可動ホルダが同方向へスライド移動すると共に、前記携帯機が所定位置まで押し込まれた時点で前記検出スイッチがオン動作して前記トランスポンダ信号に基づく前記認証動作が行えるようにしてあるイモビライザ認証システム用スロット装置であって、
前記収納部内の一部に配置された被押圧部と、この被押圧部から延出して前記可動ホルダの外部へ突出する作動部とを有する作動スライダを備え、この作動スライダが前記可動ホルダに対して前記作動部の前記突出量を増減させる向きに移動可能であると共に、前記被押圧部を前記携帯機が押し込むことによって前記作動部が前記検出スイッチをオン動作させるようにしたことを特徴とするイモビライザ認証システム用スロット装置。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記作動スライダが前記可動ホルダに対して前記携帯機の挿入方向に沿って移動可能であることを特徴とするイモビライザ認証システム用スロット装置。
【請求項3】
請求項1または2の記載において、前記作動スライダが前記可動ホルダによって移動可能に支持されていることを特徴とするイモビライザ認証システム用スロット装置。
【請求項4】
請求項3の記載において、前記作動スライダがばね部材を介して前記可動ホルダに弾性的に支持されていることを特徴とするイモビライザ認証システム用スロット装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−116215(P2011−116215A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−274602(P2009−274602)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】