説明

インクカートリッジ

【課題】 インクジェット記録装置に用いられるインクカートリッジは、高価であってインクの種類に応じて容易かつ正確にインクジェット記録装置の制御条件を変えることができない。
【解決手段】 インクを吐出する記録ヘッドを有する記録部に対して着脱自在であって、記録媒体に吐出されるインクを貯溜するインクカートリッジ34において、記録ヘッドにインクを供給するためのインク供給用針状部材が差し込まれる接続部31を有し、インクを貯溜するインク収納体35と、記録に使用されずに回収されるインクを保持する廃インク回収体28と、インク収納体35が収容される第1部材36Aおよびこの第1部材36Aに対して開閉可能な第2部材37を有するケーシング36と、このケーシング36の第1部材36Aの外装の一部に配された情報媒体32とを具え、ケーシング36に対してインク収納体35および廃インク回収体28を交換可能とした。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、複写機,FAX,ワードプロセッサ,各種プリンタなどの記録機能を有する機器の記録部に使用可能なインクジェット記録装置に対して使用されるインクカートリッジに関し、特にインクカートリッジ内に収納されたインクや廃インク回収体を交換可能としたインクカートリッジに関する。
【0002】
【従来の技術】インクジェット記録法は、記録時における騒音の発生が無視し得る程度にきわめて小さく加えていわゆる普通紙に記録が行なえるので、近年数々のものが実用化されてきている。その中で、いわゆるバブルジェット(登録商標)記録法は熱エネルギーをインクに作用させてインク液滴吐出のための原動力を得るという点において、他の液体噴射記録法とは異なる特長を有している。即ち、この記録法は、熱エネルギーの作用を受けたインクが状態変化に伴う急激な体積変化(膜沸騰現象)を起こし、この作用力により記録ヘッド部先端のオリフィスによりインクが吐出され飛翔的インク滴が形成され、そのインク液滴が記録媒体に付着し記録が行なわれるもので、その記録ヘッドは例えば、図7(A),(B)に示すように構成されている。図7において、101はインク吐出口102に連通する液路、103は液路101においてインクに熱エネルギーを付与する熱作用部、104は熱作用部103に形成された電気熱変換体、105は電気熱変換体104に通電のための電極、106は発熱抵抗層、107は発熱抵抗層106および電極105をインクから保護するための保護層であり、この保護層107により電極4からの電気的リークと共にその熱的酸化をも防止している。
【0003】このように構成された記録ヘッドにおいては、前記したように電気熱変換体104の通電がなされると、インク滴形成エネルギーである熱エネルギーの作用を受けた熱作用部103のインクが急激な体積の増大に伴う状態変化、すなわち熱作用部103にあるインクが瞬時間のうちに気体状態に達して気泡が発生し、その成長によって、熱作用部103とインク吐出口102との間に存在するインクをインク滴として吐出するものである。ところで、この気泡の発生、消滅の繰返のさいにインクは高熱を受けるため、熱的に不安定なインクでは化学変化を起こしやすく、その結果熱作用部において、不溶物の生成沈殿が起こり、ひいてはヘッドが吐出不能に至る虞がある。そこで、このような記録ヘッドを用いて高速で長時間の記録を行うためには、インクの安定性の改良を図る一方、記録ヘッドのインクに対応した最適駆動条件を設定することがきわめて重量となる。
【0004】図8は上述したような構造を有する記録ヘッドに設けられた電気熱変換体104に記号Pで示すパルス波形の電気信号を入力する際の熱作用面108の表面温度Tと、発生する気泡の体積Vの時間的変化が示されている。いま、電気熱変換体104に時刻t0と時刻tfにおいて、オン・オフされるパルス状の電気信号Pが入力されると、熱作用面108の表面温度Tは時刻tfにおいて最高温度Tpに達する。ここで、最高温度Tpが熱作用面108に接するインクの沸点Tbより大きいとき、インクで満たされている熱作用部103において、T=Tbとなる時刻tb0から気泡が発生し、時間の経過とともにその体積が増大し、時刻tpにおいて最大体積Vpとなる。
【0005】そして、時刻tfにおいて電気信号Pが「オフ」されると表面温度Tは減衰し始め、気泡の体積Vも減少する。なお、インクジェット記録装置においてはインク滴の飛翔を効率よく安定して飛翔させるために例えば、前述のバブルジェット記録法では電気熱変換体に電気エネルギーを供給する電圧,パルス幅,周波数などの膜沸騰化駆動条件と、さらに安定した実用記録を行うための予備吐出などの制御とがそのインクジェット記録装置用として設定したインクの特性に合わせハードウェアまたはソフトウェアとしてあらかじめプログラムされている。従って、このような記録ヘッドに対して他の機種用のインクを使用しても、正常な記録が行なえなくなってしまうので、通常はその記録装置の機種に従って使用されるインクカートリッジの形態は、それぞれ専用に設計され、使用者の間違いがないよう配慮されてきた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来のインクジェット記録装置では、自在にインクの選択ができないために、そのインクジェット記録装置の使用目的に合ったインク以外を使用することが困難である。また、将来において、よりよいインクが開発されても、装置内のプログラムが適正でないため、使用する事が不可能であった。そこで、上述の問題を解決するために、いくつかの提案がなされている。例えば、インクの品種に応じ記録装置の使用者がハードウェアの設定やソフトウェアをその都度再設定するという提案がある。この提案はインクの性質に最適のインクジェット記録装置制御条件を細かく設定できる点において優れているが、変更すべきパラメータが非常に多いため、煩わしいだけではなく、誤った設定をすると異常な印字や過度のストレスをヘッドに与える虞があるため、その信頼性が充分でない。
【0007】また、かかる欠点を除去するために、本発明者はインクの種類に応じてインクジェット記録装置制御条件に関する情報を含んだ媒体(ROMなど)をインクカートリッジに持たせ、インクジェット記録装置がその情報に従って自動的にパラメータを再設定できるようにすることを考えて提案した。これによれば、収容されたインクの情報を確実に本体装置に伝達することができ適切な記録を行なえる。しかしながら頻繁に交換が行なわれるインクカーリッジにおいて、例えば半導体メモリなどの比較的高価な情報媒体を搭載して情報の伝達を行うことは、インクカートリッジ自体の価格を引き上げることになる。さらにまた、情報媒体からインクジェット記録装置に情報が読み込まれるようにするためには、例えばROMの場合、多くの接続電極にて装置本体側の電極と正確に接続する事が必要であり、従来以上にインクカートリッジとインクジェット記録装置本体との機械的嵌合精度を高めなければならず、この点でもインクカートリッジの価格を上げる要因になる。
【0008】
【発明の目的】本発明の目的は、インクジェット記録装置の記録ヘッドにインクを供給するために使用されるインクカートリッジを、インクが収納されるインク収納体と、情報伝達用の情報媒体が装着されるケーシングとに分離し、このケーシングを再使用することで安価なインクカートリッジを提供することにある。
【0009】本発明の他の目的は、インクの種類に応じて容易かつ正確にインクジェット記録装置の制御条件を変えることができる高性能で信頼性が高く、かつ安価なインクカートリッジを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、インクを吐出する記録ヘッドを有する記録部に対して着脱自在であって、記録媒体に吐出されるインクを貯溜するインクカートリッジにおいて、前記記録ヘッドにインクを供給するためのインク供給用針状部材が差し込まれる接続部を有し、インクを貯溜するインク収納体と、記録に使用されずに回収されるインクを保持する廃インク回収体と、前記インク収納体が収容される第1部材およびこの第1部材に対して開閉可能な第2部材を有するケーシングと、このケーシングの前記第1部材の外装の一部に配された情報媒体とを具え、前記ケーシングに対して前記インク収納体および前記廃インク回収体を交換可能としたことを特徴とするものである。
【0011】本発明においては、インクを使い切った後、インクカートリッジの交換時にその内部に収容されているインク収納体と廃インク回収体とを交換し、情報媒体が装着されたケーシングをそのまま再利用する。
【0012】インク収納体に収納されたインクがなくなった場合、ケーシングの一部を構成する第2部材を開放し、ケーシングの一部を構成する第1部材から廃インク回収体と、インク供給用の針状部材が差し込まれる接続部を有するインク収納体とを取り外した後、インクが貯留された新規なインク収納体および新規な廃インク回収体をケーシングに取り付ける。この場合、インク供給用の針状部材が差し込まれるインク収納体の接続部も新しくなっているため、ケーシングを再利用してもインク供給用針状部材との接続部分でインク漏れなどが生じない。
【0013】また、情報媒体をケーシングに装着することにより、その位置精度が良好に保持される結果、インクジェット記録装置の電極との位置決めを改めて行うことなく、これらの接続が安定してなされる。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明のインクカートリッジにおいて、インク収納体に第1嵌合部を形成すると共にこの第1嵌合部と嵌合し合う第2嵌合部をケーシングの第1部材に形成するようにしてもよい。
【0015】記録に使用されないインクを廃インク回収体に導く回収経路に対して接続する2つの接続部分をケーシングに設けるようにしてもよい。
【0016】インク収納体と廃インク回収体とを隔てる仕切りをケーシングに形成することも可能である。
【0017】
【実施例】本発明によるインクカートリッジをインクジェット記録装置に組み込んだ一実施例について、図1〜図6を参照しながら詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限らず、この特許請求の範囲に記載された本発明の概念に包含されるあらゆる変更や修正が可能であり、従って本発明の精神に帰属する他の技術にも当然応用することができる。
【0018】図1は本発明を適用するインクジェット記録装置の一例を示す。ここで、1はキャリッジ2に搭載された記録ヘッドであり、キャリッジ2は不図示のアイドラプーリとの間に張設されたタイミングベルトにより、これも不図示のキャリッジ駆動モータによって駆動され、その正逆転によって案内軸3に沿い往復移動される。なお、記録ヘッド1にはインクカートリッジ4から不図示のインクチューブを介してインクが供給され、キャリッジ2による左から右への移動中にそのインク吐出口(不図示)から対向配置されて搬送される記録媒体として、例えば記録シート5に向けてインクが吐出され、記録ヘッドの走査と記録媒体の搬送との相対移動によって所望の記録が行われる。
【0019】6は記録シート5を記録ヘッド1の吐出面対向位置に所定の間隔を保って保持する板状の固定プラテン、7は記録シート5をシート送りするフィードローラ、8はフィードローラ7に圧接してその間に記録シート5を挾持するように従動するピンチローラ、9はピンチローラ8に圧接力を付与するためのピンチローラホルダであり、ホルダ9はステンレス板などで形成され、そのばね力によってピンチローラ8をフィードローラ7に向けて偏倚させている。10および11は手差しなどで給紙された記録シート5を保持し、フィードローラ7とピンチローラ8との間に導くための上部ガイドおよび下部ガイドである。
【0020】そこで、フィードローラ7とピンチローラ8とによって送給された記録シート5は記録ヘッド1により記録がなされた後排出ローラ12とこれに圧接する不図示の拍車との間に挾持され、排出される。また、図1R>1の左方において、20はインクカートリッジ4をカートリッジ挿入口21からカートリッジガイド22を介して挿入したときにインクカートリッジ4に差込まれる中空針であり、この中空針20から不図示のチューブを介して記録ヘッド1にインクが供給される。
【0021】なお、23は記録ヘッド1の印字(記録)中断,中止,休止時に記録ヘッド1を初期位置(非記録位置)に移動して行なわれるクリーニング,キャッピング,回復などの動作がなされる回復動作を行う回復手段である。
【0022】次いで、図2により本発明にかかるインクカートリッジ34の構成について説明する。図2は、本発明の一実施例によるインクカートリッジ34の構成を示すもので、35はインクカセット、36はケーシング、36Aは廃インク回収体28とインク袋27のみを収容したインクカセット35とをこの順番で逐次収納可能な収容部であり、本発明の第1部材に相当する。そこで、本例ではこの収容部36Aに廃インク回収体28およびインクカセット35を収納するにあたり、インクカセット35に設けた嵌合凹部29と収容部36Aに設けた嵌合凸部30とが互いに一致したときにのみ、これらが収容可能であり、さらにケーシング36の上蓋37を閉じることにより、一体のインクカートリッジ34が得られる。つまり、本実施例における上蓋37が本発明の第2部材として機能し、嵌合凹部29および嵌合凸部30が本発明の第1嵌合部および第2嵌合部にそれぞれ相当する。
【0023】なお、ケーシング36内には廃インク回収体28とインクカセット35とを隔てる仕切り壁38が設けられている。この仕切り壁38は本発明の仕切りに相当するものであり、インクカートリッジ34内で廃インク回収体28とインクカセット35とが密着状態で存在することを回避し、回収した廃インクの蒸発が促進可能なようにされている。そして、ケーシング36に取り付けられている情報媒体32には、その収納されているインクカセット35内のインクの品種に対応した制御情報が格納されている。
【0024】上述した嵌合凹部29は、インクカセット25の周面に形成され、嵌合凸部30はケーシング26の収容部26Aの内周面に嵌合凹部29の形状に対応して形成されている。なお、ケーシング36の方はプラスチックのモールド成形品あるいは金属加工品として精度よく形成されており、図示のように、矢印方向からインクカセット35を収容部36Aに嵌め合せることができる。
【0025】このように構成したインクカートリッジ34では、インクカセット35の嵌合凹部29とケーシング36の嵌合凸部30との組合わせ位置が、それぞれインクカセット35内に収納されているインクの品種に応じてあらかじめ決められており、また、その組合せ位置が一致するケーシング36の側の情報媒体32には対応するインクカセット35に収納されているインクの品種に応じた記録装置側の制御情報が記憶されている。そこで、上述のように1つのインクカセット35に対しては、このインクカセット35に収納されているインク品種に対応する制御情報を有する情報媒体32が取り付けられているケーシング36にしか嵌合されない。
【0026】一方、インクカセット35に格納される可撓性のインク袋27には、インクカートリッジ34を記録装置側に装着するときにインク供給用の中空針20(図4参照)が差込まれるシリコーンゴムなどの弾性材料で形成された本発明の接続部としてのキャップ部材31がチューブなどで接続される。また、32はケーシング36の正面に装着されている情報媒体であり、電気的または電子的に情報を記憶させておくことができるもので、例えばROM,電気的に消去が可能なROM,抵抗,コンデンサ,電池,バッテリバックアップRAM、論理回路などを構成要素としてあげることができる。さらに、その他の物理的な方法、例えばケーシング36に特殊な形状を持たせることで記録させる方法、または光学的な反射や透過の変化にて記録する方法、磁気的に記録する方法などでも良いが、これらの場合、それに対応した情報読み取り手段を該インクジェット記録装置に設置する必要があることはいうまでもない。
【0027】かくして該情報媒体32にはインクカセット25に収納されているインクの品種に対応してインクジェット記録装置本体の制御を行うために必要な情報が書き込まれる。32Aはその情報媒体32の端子であり、情報媒体32とインクジェット記録装置本体との間の電気的接続を行う。なお、これらの端子32Aは高密度に配置されるために本実施例のように極めて狭い面積に形成される。33はケーシング36の両側面に形成されたレールであり、カートリッジガイド22を介してカートリッジ挿入口21にインクカートリッジ34を挿入するときに、このレール33が不図示の案内溝と嵌め合わされることにより、正確に装着されるようにしてある。
【0028】本実施例では、インクカセット35と廃インク回収体28とを個別に交換できるようにしてあるので、いずれか不使用となった方のみを取り替えればよく、また、いずれの実施例においても情報媒体32が設けられており、インクカセットに比して比較的高価につくケーシング36の方はその品種のインク補給のための交換に際して引続き再使用できるので、ランニングコストの低減に大いに貢献することができる。また、情報媒体をインクがなくなることで交換することがないので、本体装置との接合部の精度は十分に維持される。
【0029】なお、廃インク回収体28からのインクがインクカートリッジ34を構成するケーシング36の外方に漏れ出さないようにシール性良く収納されていることは言うまでもない。
【0030】次に、本発明によるインクカートリッジではないけれども、大まかな部分で上述したインクカートリッジ34と同一の構成を持つインクカートリッジについて、図3を用いて説明する。このインクカートリッジ4は、記録に使用されるインクが収容されたインク収納体としてのインクカセット25とインクカセット25が着脱自在なケーシング26とで構成されるものである。インクカセット25にはインク袋27と回復動作のための空吐出によって吐出された廃インクを吸収して収容可能な廃インク回収体28とが格納されている。また、インクカセット25の外装は通常プラスチックのモールド成型などによって形成されるもので、そのサイズはケーシング26に形成された収容部26Aの形状に合わせてある。
【0031】このようにインクを収容したインクカセット25と、該インクカセット25を収納するケーシング26との二部品構成とすることで、インクを使用した後、新たなインクカセット25をケーシング26に挿着するだけでよく、ケーシング26は再使用できるので、ランニングコストの低減に貢献できる。また、情報を伝達する情報媒体32を交換することがないので、本体装置との接合部の精度も十分に維持される。
【0032】図4は、図3にて示したインクカセット25とケーシング26とからなるインクカートリッジ4をインクジェット記録装置のインクカートリッジ受入部40に装着するときの状態を示すが、図2に示したインクカートリッジ34もこれと同様な構成を有することは言うまでもない。ここで、ケーシング26のレール33とインクジェット記録装置のカートリッジ挿入口21に設けられたガイド41とが精度良く噛み合ってインクカートリッジ4が矢印方向に挿入されるとキャップ部材31にインクカートリッジ受入部40に設置された中空のインク針20が差し込まれることにより、インク袋27内のインクがインクジェット記録装置内に供給可能になる。
【0033】また、インクの再充填操作などで記録ヘッド1から強制的に排出されたインクは、記録装置本体に設置されたチューブ42aを通り、孔43a,44を介して廃インク回収体28に回収される。さらに、前述した回復操作によって排出される廃インクは、記録装置本体に設置されたチューブ42bを通り、孔43b,44を介して廃インク回収体28に回収される。つまり、上述したチューブ42a,42bが本発明の回収経路に相当し、孔43a,43b,44が本発明の接続部分に相当する。さらにまた、インクカートリッジ4が完全にインクカートリッジ受入部40に装着されると、後述するインクジェット記録装置本体側の制御部と電気的につながっている接続ピン45と端子32Aとが一対一で接続され、情報媒体32に書き込まれた制御情報をインクジェット記録装置本体のCPUによってアクセスすることが可能となる。
【0034】図5は、インクジェット記録装置側の制御系をインクカートリッジ34との接続状態で示すもので、50は中央処理装置であるCPU、51はROMやRAMなどの記憶装置であり、このような接続状態で記録装置に電源が投入されると、後述する手順に従って情報媒体32内のデータがインタフェース52を介して記憶装置51に読み込まれる。なお、53は記録装置本体の制御部、54は入出力コントローラ、55はヘッド駆動装置、56はホストコンピュータに対するペリフェラルプログラマブルインタフェース(PPI)、57はデータバス、58はアドレスバスである。
【0035】図6に従って、インクカートリッジ34が装着されたときの記録動作開始までの制御動作の手順について説明する。まず電源が投入されると、インクカートリッジ34が装着されたか否かをステップS1で判断し、装着されていない場合にはステップS2で例えば警告ランプによりその装着されていない警告を行う。また、ステップS1で装着されていると判断した場合にはステップS3に進み、記憶装置51のROMからデータを読み取る。そして、ステップS4でそのデータがないか否かの判断により、なければステップS5に分岐して警告ランプなどにより表示し、データがある場合にはステップS6に進んで情報媒体32に格納されている駆動条件を記憶装置51のRAMに転写する。かくしてステップS7で転写されたデータに基づき、その条件およびシーケンスで記録ヘッド1を予備加熱した上、ステップS8で記録が可能となったか否かを判断し、可能との判断に基づいてステップS9で記録実施のフローに移行する。
【0036】なお、本発明は、特にインクジェット記録方式の中でもバブルジェット方式の記録ヘッドや記録装置において優れた効果をもたらすものである。かかる方式によれば記録の高密度化,高精細化が達成できるからである。
【0037】その代表的な構成や原理については、例えば米国特許第4723129号明細書,同第4740796号明細書に開示されている基本的な原理を用いて行うものが好ましい。この方式は、所謂オンデマンド型,コンティニュアス型のいずれにも適用可能であるが、特にオンデマンド型の場合には、液体(インク)が保持されているシートや液路に対応して配置されている電気熱変換体に、記録情報に対応していて核沸騰を越える急速な温度上昇を与える少なくとも1つの駆動信号を印加することによって、電気熱変換体に熱エネルギを発生せしめ、記録ヘッドの熱作用面に膜沸騰を生じさせて、結果的にこの駆動信号に一対一で対応した液体(インク)内の気泡を形成できるので有効である。この気泡の成長,収縮により吐出用開口を介して液体(インク)を吐出させて、少なくとも1つの滴を形成する。この駆動信号をパルス形状とすると、即時適切に気泡の成長収縮が行われるので、特に応答性に優れた液体(インク)の吐出が達成でき、より好ましい。このパルス形状の駆動信号としては、米国特許第4463359号明細書,同第4345262号明細書に記載されているようなものが適している。なお、上記熱作用面の温度上昇率に関する発明の米国特許第4313124号明細書に記載されている条件を採用すると、さらに優れた記録を行うことができる。
【0038】記録ヘッドの構成としては、上述の明細書に開示されているような吐出口,液路,電気熱変換体の組合せ構成(直線状液流路または直角液流路)の他に熱作用部が屈曲する領域に配置されている構成を開示する米国特許第4558333号明細書,米国特許第4459600号明細書を用いた構成も本発明に含まれるものである。加えて、複数の電気熱変換体に対して、共通するスリットを電気熱変換体の吐出部とする構成を開示する特開昭59−123670号公報や熱エネルギの圧力波を吸収する開孔を吐出部に対応させる構成を開示する特開昭59−138461号公報に基いた構成としても本発明の効果は有効である。すなわち、記録ヘッドの形態がどのようなものであっても、記録を確実に効率よく行いうるからである。
【0039】さらに、記録装置が記録できる記録媒体の最大幅に対応した長さを有するフルラインタイプの記録ヘッドに対しても本発明は有効に適用できる。そのような記録ヘッドとしては、複数記録ヘッドの組合せによってその長さを満たす構成や、一体的に形成された1個の記録ヘッドとしての構成のいずれでもよい。
【0040】また、本発明に記録装置の構成として設けられる、記録ヘッドに対しての回復手段、予備的な補助手段などを付加することは本発明の効果を一層安定できるので、好ましいものである。これらを具体的に挙げれば、記録ヘッドに対してのキャッピング手段,クリーニング手段,加圧または吸引手段,電気熱変換体またはこれとは別の加熱素子あるいはこれらの組み合わせによる予備加熱手段、記録とは別の吐出を行う予備吐出モードを行うことも安定した記録を行うために有効である。
【0041】また、搭載される記録ヘッドの種類ないし個数についても、例えば単色のインクに対応して1個のみが設けられたものの他、記録色や濃度を異にする複数のインクに対応して複数個数設けられるものであってもよい。
【0042】さらに加えて、本発明インクジェット記録装置の形態としては、コンピュータなどの情報処理機器の画像出力端末として用いられるものの他、リーダなどと組合せた複写装置、さらには送受信機能を有するファクシミリ装置の形態を採るものであってもよい。
【0043】
【発明の効果】本発明のインクカートリッジによると、インクを使い切った後、インクカートリッジの交換時にその内部に収容されているインク収納体と廃インク回収体とを交換し、情報媒体が装着されたケーシングをそのまま再利用することができる。
【0044】また、インク収納体に収納されたインクがなくなった場合、ケーシングの一部を構成する第2部材を開放することにより、ケーシングの一部を構成する第1部材から廃インク回収体と、インク供給用の針状部材が差し込まれる接続部を有するインク収納体とを容易に取り外すことができ、逆にインクが貯留された新規なインク収納体と新規な廃インク回収体とを第1部材に嵌め込んで第2部材を閉じるだけで、これらの取り付けを容易に行うことができる。この場合、インク供給用の針状部材が差し込まれるインク収納体の接続部も新しくなっているため、ケーシングを再利用してもインク供給用針状部材との接続部分でインク漏れなどが発生しない。
【0045】しかも、情報媒体を装着したケーシングを再利用しているので、情報媒体の位置精度も良好に保つことができ、インクジェット記録装置の電極との位置決めを改めて行なずともこれらを安定した接続状態に維持できる。
【0046】このように、情報媒体が装着されたケーシングを再利用(リサイクル)することにより、ランニングコストの低減のみならず、資源の有効利用にも寄与しつつ、インク供給の信頼性を確保したインクカートリッジを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるインクカートリッジが組み込まれるインクジェット記録装置の一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示したインクジェット記録装置に組み込まれる本発明によるインクカートリッジの一実施例の分解斜視図である。
【図3】図1に示したインクジェット記録装置に組み込み可能なインクカートリッジの参考例の分解斜視図である。
【図4】図3に示したインクカートリッジとインクジェット記録装置との接続部分の概略構造を表す破断斜視図である。
【図5】図1,図2に示した実施例におけるインクジェット記録装置とインクカートリッジとの間で情報を授受するための回路を表すブロック図である。
【図6】図1,図2,図5に示した実施例における記録操作のための制御手順を表すフローチャートである。
【図7】インクジェット記録ヘッドの概略構成を示し、(A)がその正面図、(B)が(A)中のX−Y矢視断面図である。
【図8】記録ヘッドの電気熱変換体にパルス状の電気信号を入力した際の熱作用面の表面温度と発生する気泡の体積の時間的変化との関係を表すグラフである。
【符号の説明】
1 記録ヘッド
2 キャリッジ
3 案内軸
4 インクカートリッジ
5 記録シート
6 固定プラテン
7 フィードローラ
8 ピンチローラ
9 ピンチローラホルダ
10 上部ガイド
11 下部ガイド
12 排出ローラ
20 中空針
21 カートリッジ挿入口
22 カートリッジガイド
23 回復手段
25 インクカセット
26 ケーシング
26A 収容部
27 インク袋
28 廃インク回収体
29 嵌合凹部
30 嵌合凸部
31 キャップ部材
32 情報媒体
32A 端子
33 レール
34 インクカートリッジ
35 インクカセット
36 ケーシング
36A 収容部
37 上蓋
38 仕切り壁
40 インクカートリッジ受入部
41 ガイド
42,42a,42b チューブ
43,43a,43b,44 孔
45 接続ピン
50 CPU
51 記憶装置
52 インタフェース
53 制御部
54 入出力コントローラ
55 ヘッド駆動装置
56 ペリフェラルプログラマブルインタフェース(PPI)
57 データバス
58 アドレスバス

【特許請求の範囲】
【請求項1】 インクを吐出する記録ヘッドを有する記録部に対して着脱自在であって、記録媒体に吐出されるインクを貯溜するインクカートリッジにおいて、前記記録ヘッドにインクを供給するためのインク供給用針状部材が差し込まれる接続部を有し、インクを貯溜するインク収納体と、記録に使用されずに回収されるインクを保持する廃インク回収体と、前記インク収納体が収容される第1部材およびこの第1部材に対して開閉可能な第2部材を有するケーシングと、このケーシングの前記第1部材の外装の一部に配された情報媒体とを具え、前記ケーシングに対して前記インク収納体および前記廃インク回収体を交換可能としたことを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項2】 前記インク収納体は第1嵌合部をさらに有し、前記ケーシングの前記第1部材はこの第1嵌合部と嵌合し合う第2嵌合部を有することを特徴とする請求項1に記載のインクカートリッジ。
【請求項3】 前記ケーシングは、記録に使用されないインクを前記廃インク回収体に導く回収経路にそれぞれ接続する2つの接続部分をさらに有することを特徴とする特許請求の範囲第1項に記載のインクカートリッジ。
【請求項4】 前記ケーシングは、前記インク収納体と前記廃インク回収体とを隔てる仕切りをさらに有することを特徴とする特許請求の範囲第1項に記載のインクカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図7】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図5】
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【図8】
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【公開番号】特開2001−353882(P2001−353882A)
【公開日】平成13年12月25日(2001.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−124417(P2001−124417)
【分割の表示】特願平2−22175の分割
【出願日】平成2年2月2日(1990.2.2)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】