説明

インクジェットインク組成物、及び、インクジェット記録方法

【課題】硬化性に優れ、かつ、筋ムラがなく、光沢性、柔軟性に優れた画像が得られるインクジェットインク組成物、及び、インクジェット記録方法を提供すること。
【解決手段】(成分A)N−ビニルラクタム類、(成分B)式(B)で表される化合物、及び、(成分C)炭素数6〜18の炭化水素ジオールのジ(メタ)アクリル酸エステル、を含有することを特徴とするインクジェットインク組成物。(a)前記インクジェットインク組成物をインクジェット方式により吐出して支持体上に画像を形成する画像形成工程、及び、(b)得られた画像に活性放射線を照射して、前記インクジェットインク組成物を硬化させて、前記支持体上に硬化した画像を有する印刷物を得る硬化工程を含むことを特徴とするインクジェット記録方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットインク組成物、及び、インクジェット記録方法に関する。
【0002】
画像データ信号に基づき、紙などの被記録媒体に画像を形成する画像記録方法として、電子写真方式、昇華型及び溶融型熱転写方式、インクジェット方式などがある。
インクジェット方式は、印刷装置が安価であり、かつ、印刷時に版を必要とせず、必要とされる画像部のみにインク組成物を吐出し被記録媒体上に直接画像形成を行うため、インク組成物を効率良く使用でき、特に小ロット生産の場合にランニングコストが安い。さらに、騒音が少なく、画像記録方式として優れており、近年注目を浴びている。
中でも、紫外線などの放射線の照射により硬化可能なインクジェット記録用インク組成物(放射線硬化型インクジェット記録用インク組成物)は、紫外線などの放射線の照射によりインク組成物の成分の大部分が硬化するため、溶剤系インク組成物と比べて乾燥性に優れ、また、画像がにじみにくいことから、種々の被記録媒体に印字できる点で優れた方式である。従来のインクジェット記録用インク組成物として、特許文献1及び2が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−262178号公報
【特許文献2】特開2009−35650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、硬化性に優れ、かつ、筋ムラがなく、光沢性、柔軟性に優れた画像が得られるインクジェットインク組成物、及び、インクジェット記録方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、以下に記載の手段により解決された。
<1>(成分A)N−ビニルラクタム類、(成分B)式(B)で表される化合物、及び、(成分C)炭素数6〜18の炭化水素ジオールのジ(メタ)アクリル酸エステル、を含有することを特徴とするインクジェットインク組成物、
【0006】
【化1】

(式(B)中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2〜R12はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表す。)
【0007】
<2>(成分D)重合開始剤として、α−ヒドロキシケトン化合物、及び/又は、モノアシルホスフィンオキサイド化合物を含有する、<1>に記載のインクジェットインク組成物、
<3>前記成分AがN−ビニルカプロラクタムである、<1>又は<2>に記載のインクジェットインク組成物、
<4>前記成分Aの含有量が、インク組成物の全重量に対し、8重量%以上40重量%以下である、<1>〜<3>のいずれか1つに記載のインクジェットインク組成物、
<5>前記成分Bが、4−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、及び/又は、3,3,5−トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートである、<1>〜<4>のいずれか1つに記載のインクジェットインク組成物、
<6>前記成分Bの含有量が、インク組成物の全重量に対し、10重量%以上45重量%以下である、<1>〜<5>のいずれか1つに記載のインクジェットインク組成物、
<7>前記炭化水素ジオールが、炭素数9〜18の直鎖炭化水素ジオール、炭素数6〜18の分岐炭化水素ジオール、及び、炭素数6〜18の環状炭化水素ジオールよりなる群から選ばれた少なくとも1種のジオールである、<1>〜<6>のいずれか1つに記載のインクジェットインク組成物、
<8>前記成分Cの含有量が、インク組成物の全重量に対し、10重量%以上45重量%以下である、<1>〜<7>のいずれか1つに記載のインクジェットインク組成物、
<9>シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤を含有しないか、又は、シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤の総含有量が、インク組成物の全重量に対し、0重量%を超え0.01重量%以下である、<1>〜<8>のいずれか1つに記載のインクジェットインク組成物、
<10>インク組成物に含有されるエチレン性不飽和化合物のうち、70重量%以上がエーテル結合を含有しない化合物である、<1>〜<9>のいずれか1つに記載のインクジェットインク組成物、
<11>(a)<1>〜<10>のいずれか1つに記載のインクジェットインク組成物をインクジェット方式により吐出して支持体上に画像を形成する画像形成工程、及び、
(b)得られた画像に活性放射線を照射して、前記インクジェットインク組成物を硬化させて、前記支持体上に硬化した画像を有する印刷物を得る硬化工程を含むことを特徴とするインクジェット記録方法、
<12>印刷物における画像の少なくとも一部を、前記画像形成工程及び前記硬化工程を2回以上繰り返して形成する、<11>に記載のインクジェット記録方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、硬化性に優れ、かつ、筋ムラがなく、光沢性、柔軟性に優れた画像が得られるインクジェットインク組成物、及び、インクジェット記録方法を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
I.インクジェットインク組成物
本発明のインクジェットインク組成物(以下、「インク組成物」ともいう。)は、(成分A)N−ビニルラクタム類、(成分B)式(B)で表される化合物、及び、(成分C)炭素数6〜18の炭化水素ジオールのジ(メタ)アクリル酸エステル、を含有することを特徴とする。なお、明細書中、数値範囲を表す「A〜B」の記載は、「A以上B以下」と同義である。
【0010】
【化2】

(式(B)中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2〜R12はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表す。)
【0011】
本発明のインク組成物は、活性放射線により硬化可能な油性のインク組成物である。「活性放射線」とは、その照射によりインク組成物中に開始種を発生させるエネルギーを付与できる放射線であり、α線、γ線、X線、紫外線、可視光線、電子線などを包含する。中でも、硬化感度及び装置の入手容易性の観点から紫外線及び電子線が好ましく、紫外線がより好ましい。
【0012】
活性放射線硬化型のインクジェット印刷により得た印刷物は、水性インクジェット、溶剤インクジェットにより得た印刷物に比べ、硬化膜の光沢性が低く、筋ムラが目立つといわれている。これは、インクジェット着弾直後に打滴が活性放射線によって硬化されることで、打滴の着弾形状が保存されることが1つの要因と考えられる。
一方、本発明のインク組成物は、印刷物の光沢性に優れ、筋ムラの少ないインクジェット画像を提供する。理由は定かではないが、吐出された成分A〜成分Cを含むインク組成物は、着弾直後の活性放射線照射によって、打滴の内部から硬化する。一方、特に酸素溶存量が高いと推定される成分Cの効果で、空気と接する打滴の最表面のみが選択的に酸素重合阻害を受け、打滴の最表面が長時間液状に保たれ、打滴最表面が濡れ広がり、合一が促進される。その結果、より平滑な平面が形成され、高度な光沢性を有し、筋ムラの目立たない画像が得られると推定される。同一部分を重ね打ちにより印刷するマルチパスモードでの印刷では、重ね打ち時に先に打滴された液滴上に打滴が重なるケースが発生する。この際、先に打滴されたインク膜の最表面が液状であると、後に打たれた打滴の濡れ広がりが大きくなり、より高い光沢度が得られる。
【0013】
打滴の硬化状態のコントロールにあたっては、打滴のごく最表面のみが液状態を保持することが重要である。打滴内部までもが液状態を長時間保持してしまうと最終的に印刷物がべとついたり、重ね打ち時に後から着弾した打滴が膜の内部に入り込み、印刷物にクレーター状のくぼみを形成してしまう。その結果、逆に印刷物表面の平滑性を失うことになりかねない。また、内部の硬化性が低いと、着弾後の打滴干渉(打滴の重なりにより打滴位置がずれる)を生じさせることで、筋ムラを目立たせてしまうことも考えられる。
本発明によれば、成分A〜成分Cの組み合わせにより、打滴内部の硬化性を強く促進しつつ、硬化膜最表面のみを選択的に長時間液状に保つことが実現できるため、光沢性が高く、筋ムラの目立たない印刷物が得られたものと考えられる。
【0014】
(成分A)N−ビニルラクタム類
本発明のインク組成物は(成分A)N−ビニルラクタム類を含有する。N−ビニルラクタム類としては、式(A)で表されるN−ビニルラクタム類が好ましい。
【0015】
【化3】

【0016】
式(A)中、nは1〜5の整数を表し、インク組成物が硬化した後の柔軟性、被記録媒体との密着性、及び、原材料の入手性の観点から、nは2〜4の整数であることが好ましく、nが2又は4であることがより好ましく、nが4である、すなわちN−ビニルカプロラクタムであることが特に好ましい。N−ビニルカプロラクタムは安全性に優れ、汎用的で比較的安価に入手でき、特に良好なインク硬化性、及び、硬化膜の被記録媒体への密着性が得られるので好ましい。
また、上記N−ビニルラクタム類は、ラクタム環上にアルキル基、アリール基等の置換基を有していてもよく、飽和又は不飽和環構造を連結していてもよい。
成分Aは、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0017】
成分Aの含有量は、インク組成物の全重量に対し、8〜40重量%が好ましく、8〜35重量%がより好ましく、12〜32重量%がさらに好ましく、14〜25重量%が特に好ましい。上記範囲であると、画像内部の硬化性を強く促進しつつ、硬化膜最表面のみを選択的に長時間液状を保つことができ、光沢性が高く、筋ムラの目立たない印刷物が得られる。
【0018】
(成分B)式(B)で表される化合物
本発明のインク組成物は、(成分B)式(B)で表される化合物を含有する。成分Bを含有することで、光沢性に優れ、べたつきが少なく、柔軟性に優れる硬化膜が得られる。理由は定かではないが、剛直な特定の環状構造を有する成分Bを含有することで、インク組成物の硬化開始直後から、膜内の弾性率を高く維持し、インクの内部硬化性を向上させる結果、光沢性に優れる硬化膜が得られると考えられる。
【0019】
【化4】

(式(B)中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2〜R12はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表す。)
【0020】
1は水素原子又はメチル基を表し、優れた硬化性が得られるという観点から、水素原子が好ましい。
2〜R12はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表す。前記アルキル基としては、炭素数1〜10の直鎖又は分岐を有するアルキル基が好ましく、炭素数1〜6の直鎖又は分岐を有するアルキル基が好ましく、メチル基、t−ブチル基がより好ましい。R2〜R12の少なくとも1個はアルキル基であることが好ましく、1〜5個がアルキル基であることが好ましく、1〜3個がアルキル基であることがより好ましい。
【0021】
成分Bの具体例としては、4−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられ、中でも、4−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、及び/又は、3,3,5−トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートが好ましく、特に好ましくは、3,3,5−トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートである。
【0022】
成分Bの含有量は、光沢性に優れ、硬化膜のべたつきが少なく、柔軟性の高い印刷物が得られることから、インク組成物の全重量に対し、10〜45重量%が好ましく、15〜40重量%がより好ましく、20〜35重量%がさらに好ましい。
【0023】
(成分C)炭素数6〜18の炭化水素ジオールのジ(メタ)アクリル酸エステル
本発明のインク組成物は、(成分C)炭素数6〜18の炭化水素ジオールのジ(メタ)アクリル酸エステルを含有する。成分Cを含有することにより光沢性に優れ、硬化膜のべたつきが少ない膜が得られる。
【0024】
前記炭化水素ジオールは、炭素数9〜18の直鎖炭化水素ジオール、炭素数6〜18の分岐炭化水素ジオール、及び、炭素数6〜18の環状炭化水素ジオールよりなる群から選ばれた少なくとも1種のジオールであることが好ましい。すなわち、成分Cが、下記の成分C−1〜成分C−3であることが好ましい。
【0025】
(成分C−1)炭素数9〜18の直鎖炭化水素ジオールのジ(メタ)アクリル酸エステル
成分Cは、(成分C−1)炭素数9〜18の直鎖炭化水素ジオールのジ(メタ)アクリル酸エステルであることが好ましい。前記直鎖炭化水素ジオールの炭素数は、10〜16がより好ましく、10〜12がさらに好ましい。
成分C−1の好ましい例として、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリデカンジオールジ(メタ)アクリレート、オクタデカンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられ、好ましくはアクリレート化合物であり、より好ましくはデカンジオールジアクリレート、ドデカンジオールジアクリレートであり、特に好ましくは、デカンジオールジアクリレートである。
【0026】
(成分C−2)炭素数6〜18の分岐炭化水素ジオールのジ(メタ)アクリル酸エステル
成分Cは、(成分C−2)炭素数6〜18の分岐炭化水素ジオールのジ(メタ)アクリル酸エステルであることが好ましい。前記分岐炭化水素ジオールの炭素数は6〜12がより好ましく、6〜8がさらに好ましい。
分岐炭化水素ジオールは、不飽和結合を含まないものが好ましい。分岐炭化水素ジオール中のヒドロキシ基間を結ぶ直鎖の炭素数は3〜5が好ましい。前記直鎖から分岐するアルキル基は、炭素数1〜4が好ましく、メチル基がより好ましい。また、分岐の数は1又は2が好ましく、1が好ましい。
成分C−2の好ましい例として、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−n−ブチル−2−エチルー1,3−プロパンジオールジアクリレートが挙げられ、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレートが好ましい。
【0027】
(成分C−3)炭素数6〜18の環状炭化水素ジオールのジ(メタ)アクリル酸エステル
成分Cは、(成分C−3)炭素数6〜18の環状炭化水素ジオールのジ(メタ)アクリル酸エステルであることが好ましい。前記環状炭化水素ジオールの炭素数は6〜12が好ましく、6〜10がより好ましい。
環状炭化水素ジオールは、環状炭化水素基を1つのみ有するものが好ましい。また、環状炭化水素基は、不飽和結合や橋かけ環構造を含まない単環状脂肪族基であることが好ましい。前記環状炭化水素基としては、シクロアルキレン基が好ましく、シクロアルキレン基を構成する炭素数は、3〜12が好ましく、4〜10がより好ましく、5〜8がさらに好ましい。
環状炭化水素ジオールのヒドロキシ基と環状炭化水素基とは、直接、又は、二価の連結基を介して結合し、前記連結基は炭素数1〜5のアルキレン基が好ましく、炭素数1〜3のアルキレン基がより好ましく、メチレン基がさらに好ましい。
成分C−3の好ましい例として、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等が挙げられ、シクロヘキサンジメタノールジアクリレートがより好ましい。
【0028】
成分C−1〜成分C−3のうち、(成分C−1)炭素数9〜18の直鎖炭化水素ジオールのジ(メタ)アクリル酸エステル及び/又は(成分C−2)炭素数6〜18の分岐炭化水素ジオールのジ(メタ)アクリル酸エステルを含有することが好ましく、最も好ましくは、(成分C−2)炭素数6〜18の分岐炭化水素ジオールのジ(メタ)アクリル酸エステルを含有することである。
【0029】
また、(成分C−1)炭素数6〜18の直鎖炭化水素ジオールのジ(メタ)アクリル酸エステル、及び、(成分C−2)炭素数6〜18の分岐炭化水素ジオールのジ(メタ)アクリル酸エステルより選択される少なくとも1つと、(成分C−3)炭素数6〜18の環状炭化水素ジオールのジ(メタ)アクリル酸エステルの少なくとも1つを組み合わせて使用することが好ましい。上記の組み合わせにより、光沢性に優れ、硬化膜のべたつき、硬化膜の柔軟性に優れるインク組成物が得られる。
(成分C−1)炭素数6〜18の直鎖炭化水素ジオールのジ(メタ)アクリル酸エステル、及び/又は、(成分C−2)炭素数6〜18の分岐炭化水素ジオールのジ(メタ)アクリル酸エステル、と、(成分C−3)炭素数6〜18の環状炭化水素ジオールのジ(メタ)アクリル酸エステルとの重量比が、6:1〜1:2であることが好ましく、より好ましくは、5:1〜1:1である。
【0030】
成分Cの含有量は、硬化性及び柔軟性の観点から、インク組成物の全重量に対し、10〜45重量%が好ましく、15〜35重量%がより好ましく、20〜30重量%がさらに好ましい。
【0031】
本発明のインク組成物に含まれるモノマー中、成分A〜成分Cの含有量は、光沢性の向上、筋ムラの抑制の観点から70重量%以上が好ましく、75〜98重量%がより好ましく、80〜95重量%がさらに好ましい。
【0032】
また、疎水性を高めて耐水性、耐候性を得るという観点から、インク組成物中における成分Bと成分Cとをあわせた含有量は、25〜75重量%が好ましく、30〜70重量%がより好ましく、35〜68重量%がさらに好ましく、40〜65重量%が特に好ましい。
【0033】
(他の重合性化合物)
本発明のインク組成物は、成分A〜成分C以外の、他の重合性化合物を含有していてもよい。
他の重合性化合物としては、公知の重合性化合物を用いることができ(成分A)〜(成分C)以外の(メタ)アクリレート化合物、ビニルエーテル化合物、アリル化合物、N−ビニル化合物、不飽和カルボン酸類等が例示できる。例えば、特開2009−221414号公報に記載のラジカル重合性モノマー、特開2009−209289号公報に記載の重合性化合物、特開2009−191183号公報に記載のエチレン性不飽和化合物が挙げられる。
【0034】
ただし、成分A〜成分C以外の、他の重合性化合物を配合する場合には、インク組成物は、優れた光沢性が得られるという観点から、エーテル結合(エーテル性酸素原子)を有する重合性化合物をできるだけ含有しないことが好ましい。すなわち、本発明のインク組成物中の成分A〜成分Cを含むエーテル結合を含有しない重合性化合物の割合は、重合性化合物の全重量に対し、70〜100重量%であることが好ましく、75〜100重量%であることがより好ましく、80〜100重量%であることがさらに好ましい。
【0035】
(成分D)重合開始剤
本発明のインク組成物は、好ましくは(成分D)重合開始剤を含有する。重合開始剤は、前記活性放射線等の外部エネルギーを吸収して重合開始種を生成する化合物である。重合開始剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
本発明に用いることができる重合開始剤としては、芳香族ケトン類、アシルホスフィン化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、及び、炭素ハロゲン結合を有する化合物等が挙げられる。これらの重合開始剤の具体例としては、特開2008−208190号公報に記載のラジカル重合開始剤が挙げられる。中でも本発明における好ましい重合開始剤は、芳香族ケトン類及びアシルホスフィン化合物である。
【0037】
前記芳香族ケトンとしては、α−ヒドロキシケトンが好ましく、例えば、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられ、中でも、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン化合物が好ましい。なお、本発明において、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン化合物には、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが任意の置換基で置換された化合物も含まれる。置換基としては、ラジカル重合開始剤としての能力を発揮し得る範囲で任意に選択することができ、具体的には炭素数1〜4のアルキル基が例示できる。
【0038】
前記アシルホスフィン化合物としては、特開2008−208190号公報に記載のアシルホスフィンオキサイド化合物が好ましく挙げられ、中でもモノアシルホスフィンオキサイド化合物がより好ましい。
モノアシルホスフィンオキサイド化合物としては、イソブチリルメチルホスフィン酸メチルエステル、イソブチリルフェニルホスフィン酸メチルエステル、ピバロイルフェニルホスフィン酸メチルエステル、2−エチルヘキサノイルフェニルホスフィン酸メチルエステル、ピバロイルフェニルホスフィン酸イソプロピルエステル、p−トルイルフェニルホスフィン酸メチルエステル、o−トルイルフェニルホスフィン酸メチルエステル、2,4−ジメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸メチルエステル、p−三級ブチルベンゾイルフェニルホスフィン酸イソプロピルエステル、アクリロイルフェニルホスフィン酸メチルエステル、イソブチリルジフェニルホスフィンオキサイド、2−エチルヘキサノイルジフェニルホスフィンオキサイド、o−トルイルジフェニルホスフィンオキサイド、p−三級ブチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、3−ピリジルカルボニルジフェニルホスフィンオキサイド、アクリロイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、ベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ピバロイルフェニルホスフィン酸ビニルエステル、アジポイルビスジフェニルホスフィンオキサイド、ピバロイルジフェニルホスフィンオキサイド、p−トルイルジフェニルホスフィンオキサイド、4−(三級ブチル)ベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、テレフタロイルビスジフェニルホスフィンオキサイド、2−メチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、バーサトイルジフェニルホスフィンオキサイド、2−メチル−2−エチルヘキサノイルジフェニルホスフィンオキサイド、1−メチル−シクロヘキサノイルジフェニルホスフィンオキサイド、ピバロイルフェニルホスフィン酸メチルエステル、ピバロイルフェニルホスフィン酸イソプロピルエステル、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等が挙げられ、中でも2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドが好ましい。
【0039】
本発明のインク組成物は、α−ヒドロキシケトン化合物、及び/又は、モノアシルホスフィンオキサイド化合物を含有することが好ましい。硬化性、耐ブロッキング性の観点から、α−ヒドロキシケトン化合物とモノアシルホスフィンオキサイド化合物との併用がより好ましい。
【0040】
本発明において、重合開始剤の総使用量は、硬化性、硬化膜内での硬化度の均一性の観点から、重合性化合物の総使用量に対して、好ましくは0.01〜35重量%、より好ましくは0.5〜20重量%、さらに好ましくは1.0〜15重量%の範囲である。 また、増感剤を用いる場合、重合開始剤の総使用量は、増感剤に対して、重合開始剤:増感剤の重量比で、好ましくは200:1〜1:200、より好ましくは50:1〜1:50、さらに好ましくは20:1〜1:5の範囲である。
【0041】
(成分E)界面活性剤
本発明に用いることができるインク組成物には、長時間安定した吐出性を付与するため、界面活性剤を添加してもよい。
ただし、光沢性、筋ムラを抑制する観点から、本発明のインク組成物は、シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤を含有しないか、又は、シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤の総含有量が、インク組成物の全重量に対し、0重量%を超え0.1重量%以下が好ましく、0重量%を超え、0.05重量%以下がより好ましい。
なお、シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤以外の界面活性剤としては、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。
【0042】
(成分F)着色剤
本発明のインク組成物は、形成された画像部の視認性を向上させるため、好ましくは着色剤を含有する。着色剤としては、特に制限はないが、耐候性に優れ、色再現性に富んだ顔料及び油溶性染料が好ましく、溶解性染料等の公知の着色剤から任意に選択して使用できる。着色剤は、活性放射線による硬化反応の感度を低下させないという観点から、重合禁止剤として機能しない化合物を選択することが好ましい。
【0043】
本発明に使用できる顔料としては、特に限定されるわけではないが、例えばカラーインデックスに記載される下記の番号の有機又は無機顔料が使用できる。
赤又はマゼンタ顔料としては、Pigment Red 3,5,19,22,31,38,42,43,48:1,48:2,48:3,48:4,48:5,49:1,53:1,57:1,57:2,58:4,63:1,81,81:1,81:2,81:3,81:4,88,104,108,112,122,123,144,146,149,166,168,169,170,177,178,179,184,185,208,216,226,257、Pigment Violet 3,19,23,29,30,37,50,88、Pigment Orange 13,16,20,36、
青又はシアン顔料としては、Pigment Blue 1,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,17−1,22,27,28,29,36,60、緑顔料としては、Pigment Green 7,26,36,50、黄顔料としては、Pigment Yellow 1,3,12,13,14,17,34,35,37,55,74,81,83,93,94,95,97,108,109,110,120,137,138,139,153,154,155,157,166,167,168,180,185,193、黒顔料としては、Pigment Black 7,28,26、白色顔料としては、Pigment White 6,18,21などが目的に応じて使用できる。
本発明においては、水非混和性有機溶媒に溶解する範囲で分散染料を用いることもできる。分散染料は一般に水溶性の染料も包含するが、本発明においては水非混和性有機溶媒に溶解する範囲で用いることが好ましい。
分散染料の好ましい具体例としては、C.I.ディスパースイエロー 5,42,54,64,79,82,83,93,99,100,119,122,124,126,160,184:1,186,198,199,201,204,224及び237;C.I.ディスパーズオレンジ 13,29,31:1,33,49,54,55,66,73,118,119及び163;C.I.ディスパーズレッド 54,60,72,73,86,88,91,92,93,111,126,127,134,135,143,145,152,153,154,159,164,167:1,177,181,204,206,207,221,239,240,258,277,278,283,311,323,343,348,356及び362;C.I.ディスパーズバイオレット 33;C.I.ディスパーズブルー 56,60,73,87,113,128,143,148,154,158,165,165:1,165:2,176,183,185,197,198,201,214,224,225,257,266,267,287,354,358,365及び368;並びにC.I.ディスパーズグリーン 6:1及び9;等が挙げられる。
【0044】
着色剤は、インク組成物に添加された後、適度に当該インク組成物内で分散することが好ましい。着色剤の分散には、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等の各分散装置を用いることができる。
【0045】
着色剤は、インク組成物の調製に際して、各成分と共に直接添加してもよい。また、分散性向上のため、あらかじめ溶剤又は本発明に使用する重合性化合物のような分散媒体に添加し、均一分散あるいは溶解させた後、配合することもできる。
本発明において、溶剤が硬化画像に残留する場合の耐溶剤性の劣化、及び、残留する溶剤のVOC(Volatile Organic Compound:揮発性有機化合物)の問題を避けるためにも、着色剤は、重合性化合物のような分散媒体に予め添加して、配合することが好ましい。なお、分散適性の観点のみを考慮した場合、着色剤の添加に使用する重合性化合物は、最も粘度の低いモノマーを選択することが好ましい。着色剤はインク組成物の使用目的に応じて、1種又は2種以上を適宜選択して用いればよい。
【0046】
なお、インク組成物中において固体のまま存在する顔料などの着色剤を使用する際には、着色剤粒子の平均粒径は、好ましくは0.005〜0.5μm、より好ましくは0.01〜0.45μm、さらに好ましくは0.015〜0.4μmとなるよう、着色剤、分散剤、分散媒体の選定、分散条件、ろ過条件を設定することが好ましい。この粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インク組成物の保存安定性、透明性及び硬化感度を維持することができるので好ましい。
インク組成物中における着色剤の含有量は、色、及び使用目的により適宜選択されるが、インク組成物全体の重量に対し、0.01〜30重量%であることが好ましい。
【0047】
(成分G)分散剤
本発明のインク組成物は、分散剤を含有することが好ましい。特に顔料を使用する場合において、顔料をインク組成物中に安定に分散させるため、分散剤を含有することが好ましい。分散剤としては、高分子分散剤が好ましい。なお、本発明における「高分子分散剤」とは、重量平均分子量が1,000以上の分散剤を意味する。
【0048】
高分子分散剤としては、DISPERBYK−101、DISPERBYK−102、DISPERBYK−103、DISPERBYK−106、DISPERBYK−111、DISPERBYK−161、DISPERBYK−162、DISPERBYK−163、DISPERBYK−164、DISPERBYK−166、DISPERBYK−167、DISPERBYK−168、DISPERBYK−170、DISPERBYK−171、DISPERBYK−174、DISPERBYK−182(BYKケミー社製);EFKA4010、EFKA4046、EFKA4080、EFKA5010、EFKA5207、EFKA5244、EFKA6745、EFKA6750、EFKA7414、EFKA745、EFKA7462、EFKA7500、EFKA7570、EFKA7575、EFKA7580(エフカアディティブ社製);ディスパースエイド6、ディスパースエイド8、ディスパースエイド15、ディスパースエイド9100(サンノプコ(株)製);ソルスパース(SOLSPERSE)3000、5000、9000、12000、13240、13940、17000、22000、24000、26000、28000、32000、36000、39000、41000、71000などの各種ソルスパース分散剤(Noveon社製);アデカプルロニックL31、F38、L42、L44、L61、L64、F68、L72、P95、F77、P84、F87、P94、L101、P103、F108、L121、P−123((株)ADEKA製)、イオネットS−20(三洋化成工業(株)製);ディスパロン KS−860、873SN、874(高分子分散剤)、#2150(脂肪族多価カルボン酸)、#7004(ポリエーテルエステル型)(楠本化成(株)製)が挙げられる。
インク組成物中における分散剤の含有量は、使用目的により適宜選択されるが、インク組成物全体の重量に対し、0.05〜15重量%であることが好ましい。
【0049】
(成分H)オリゴマー
本発明のインク組成物は、オリゴマーを含有することが好ましい。
オリゴマーは、一般に有限個(一般的には5〜100個)のモノマーが結合した重合体であり、オリゴマーと称される公知の化合物を任意に選択可能であるが、本発明においては、重量平均分子量が400〜10,000(より好ましくは500〜5,000)の重合体を選択することが好ましい。
前記オリゴマーは、ラジカル重合性基を有していてもよい。前記ラジカル重合性基としては、エチレン性不飽和基が好ましく、(メタ)アクリロキシ基がより好ましい。
【0050】
本発明におけるオリゴマーとしては、いかなるオリゴマーでもよいが、例えば、オレフィン系(エチレンオリゴマー、プロピレンオリゴマー、ブテンオリゴマー等)、ビニル系(スチレンオリゴマー、ビニルアルコールオリゴマー、ビニルピロリドンオリゴマー、アクリレートオリゴマー、メタクリレートオリゴマー等)、ジエン系(ブタジエンオリゴマー、クロロプレンゴム、ペンタジエンオリゴマー等)、開環重合系(ジ−,トリ−,テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリエチルイミン等)、重付加系(オリゴエステルアクリレート、ポリアミドオリゴマー、ポリイソシアネートオリゴマー)、付加縮合オリゴマー(フェノール樹脂、アミノ樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂等)等を挙げることができる。この中で、オリゴエステル(メタ)アクリレートが好ましく、その中では、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートがより好ましく、ウレタン(メタ)アクリレートがさらに好ましい。
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート、芳香族ウレタン(メタ)アクリレートが好ましく挙げられるが、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートがより好ましく挙げられる。
また、ウレタン(メタ)アクリレートは、4官能以下のウレタン(メタ)アクリレートであることが好ましく、2官能以下のウレタン(メタ)アクリレートであることがより好ましい。
ウレタン(メタ)アクリレートを含有することにより、基材の密着性に優れ、硬化性に優れるインク組成物が得られる。
オリゴマーについて、オリゴマーハンドブック(吉川淳二監修、(株)化学工業日報社)も参照することができる。
【0051】
また、オリゴマーの市販品としては、ウレタン(メタ)アクリレートとして、例えば、第一工業製薬(株)製のR1204、R1211、R1213、R1217、R1218、R1301、R1302、R1303、R1304、R1306、R1308、R1901、R1150等や、ダイセル・サイテック(株)製のEBECRYLシリーズ(例えば、EBECRYL230、270、4858、8402、8804、8807、8803、9260、1290、1290K、5129、4842、8210、210、4827、6700、4450、220)、新中村化学工業(株)製のNKオリゴU−4HA、U−6HA、U−15HA、U−108A、U200AX等、東亞合成(株)製のアロニックスM−1100、M−1200、M−1210、M−1310、M−1600、M−1960等が挙げられる。
ポリエステル(メタ)アクリレートとして、例えば、ダイセル・サイテック(株)製のEBECRYLシリーズ(例えば、EBECRYL770、IRR467、81、84、83、80、675、800、810、812、1657、1810、IRR302、450、670、830、870、1830、1870、2870、IRR267、813、IRR483、811等)、東亞合成(株)製のアロニックスM−6100、M−6200、M−6250、M−6500、M−7100、M−8030、M−8060、M−8100、M−8530、M−8560、M−9050等が挙げられる。
また、エポキシ(メタ)アクリレートとして、例えば、ダイセル・サイテック(株)製のEBECRYLシリーズ(例えば、EBECRYL600、860、2958、3411、3600、3605、3700、3701、3703、3702、3708、RDX63182、6040等)等が挙げられる。
【0052】
オリゴマーは、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
本発明のインク組成物におけるオリゴマーの含有量としては、インク組成物の全重量に対して、0.1〜50重量%が好ましく、0.5〜20重量%がより好ましく、1〜10重量%であることがさらに好ましい。
【0053】
(その他の成分)
本発明のインク組成物には、必要に応じて、前記成分以外に、増感剤、共増感剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、褪色防止剤、導電性塩類、溶剤、高分子化合物、塩基性化合物等を含む。これらは、特開2009−221416号公報に記載されており、本発明においても使用できる。
【0054】
また、本発明のインク組成物は、保存性、及び、ヘッド詰まりの抑制という観点から、好ましくは重合禁止剤を含有する。
重合禁止剤は、本発明のインク組成物全量に対し、200〜20,000ppm添加することが好ましい。
重合禁止剤としては、ニトロソ系重合禁止剤や、ヒンダードアミン系重合禁止剤、ハイドロキノン、ベンゾキノン、p−メトキシフェノール、TEMPO、TEMPOL、クペロンAl等が挙げられる。
【0055】
(インク物性)
本発明においては、吐出性を考慮し、25℃における粘度が40mPa・s以下であるインク組成物を使用することが好ましい。より好ましくは5〜40mPa・s、さらに好ましくは7〜30mPa・sである。また、吐出温度(好ましくは25〜80℃、より好ましくは25〜50℃)における粘度が、3〜15mPa・sであることが好ましく、3〜13mPa・sであることがより好ましい。本発明のインク組成物は、粘度が上記範囲になるように適宜組成比を調整することが好ましい。室温での粘度を高く設定することにより、多孔質な被記録媒体(支持体)を用いた場合でも、被記録媒体中へのインク組成物の浸透を回避し、未硬化モノマーの低減が可能となる。さらにインク組成物の液滴着弾時のインク滲みを抑えることができ、その結果として画質が改善されるので好ましい。
【0056】
本発明のインク組成物の25℃における表面張力は、20〜35mN/mであることが好ましく、23〜33mN/mであることがより好ましい。ポリオレフィン、PET、コート紙、非コート紙など様々な被記録媒体へ記録する場合、滲み及び浸透の観点から、20mN/m以上が好ましく、濡れ性の点では35mN/m以下が好ましい。
【0057】
II.インクジェット記録方法
本発明のインクジェット記録方法は、(a)本発明のインクジェットインク組成物をインクジェット方式により吐出して支持体上に画像を形成する画像形成工程、及び、(b)得られた画像に活性放射線を照射して、前記インクジェットインク組成物を硬化させて、前記支持体上に硬化した画像を有する印刷物を得る硬化工程を含むことを特徴とする。本発明のインクジェット記録方法は、(a)及び(b)工程を含むことにより、支持体上において硬化したインク組成物によって画像を形成する方法である。
【0058】
本発明において、支持体としては、特に限定されず、公知の被記録媒体を使用することができる。例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上述した金属がラミネートされ又は蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が挙げられる。また、本発明における被記録媒体として、非吸収性被記録媒体が好適に使用することができる。
【0059】
本発明のインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置としては、特に制限はなく、目的とする解像度を達成し得る公知のインクジェット記録装置を任意に選択して使用することができる。即ち、市販品を含む公知のインクジェット記録装置であれば、いずれも、本発明のインクジェット記録方法の(a)工程における支持体へのインク組成物の吐出を実施することができる。
本発明で用いることのできるインクジェット記録装置としては、例えば、インク供給系、温度センサー、活性放射線源を含む装置が挙げられる。
インク供給系は、例えば、本発明のインク組成物を含む元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク組成物供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドからなる。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、好ましくは1〜100pL、より好ましくは3〜42pL、さらに好ましくは8〜30pLのマルチサイズドットを、好ましくは320×320〜4,000×4,000dpi、より好ましくは400×400〜1,600×1,600dpi、さらに好ましくは720×720dpiの解像度で吐出できるよう駆動することができる。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
【0060】
本発明において、吐出されるインク組成物を一定温度にすることが好ましいことから、インク組成物供給タンクからインクジェットヘッド部分までは、断熱及び加温を行うことができる。温度コントロールの方法としては、特に制約はないが、例えば、温度センサーを各配管部位に複数設け、インク組成物の流量、環境温度に応じた加熱制御をすることが好ましい。温度センサーは、インク組成物供給タンク及びインクジェットヘッドのノズル付近に設けることができる。また、加熱するヘッドユニットは、装置本体を外気からの温度の影響を受けないよう、熱的に遮断又は断熱されていることが好ましい。加熱に要するプリンター立上げ時間を短縮するため、あるいは、熱エネルギーのロスを低減するために、他部位との断熱を行うと共に、加熱ユニット全体の熱容量を小さくすることが好ましい。
【0061】
本発明のインク組成物のような放射線硬化型インク組成物は、概して通常インクジェット記録用インク組成物で使用される水性インク組成物より粘度が高いため、吐出時の温度変動による粘度変動が大きい。インク組成物の粘度変動は、液滴サイズの変化及び液滴吐出速度の変化に対して大きな影響を与え、ひいては画質劣化を引き起こす。したがって、吐出時のインク組成物の温度はできるだけ一定に保つことが必要である。よって、本発明において、インク組成物の温度の制御幅は、設定温度の±5℃であることが好ましく、設定温度の±2℃であることがより好ましく、設定温度の±1℃であることがさらに好ましい。
【0062】
次に、(b)得られた画像に活性放射線を照射して、前記インクジェットインク組成物を硬化させて、前記支持体上に硬化した画像を有する印刷物を得る硬化工程について説明する。
被記録媒体上に吐出されたインク組成物は、活性放射線を照射することによって硬化する。これは、本発明のインク組成物に含まれる光重合開始剤が活性放射線の照射により分解して、ラジカルなどの重合開始種を発生し、その開始種の機能にラジカル重合性化合物の重合反応が、生起、促進されるためである。このとき、インク組成物において重合開始剤と共に増感剤が存在すると、系中の増感剤が活性放射線を吸収して励起状態となり、重合開始剤と接触することによって重合開始剤の分解を促進させ、より高感度の硬化反応を達成させることができる。
【0063】
ここで、使用される活性放射線は、α線、γ線、電子線、X線、紫外線、可視光又は赤外光などが使用され得る。活性放射線のピーク波長は、増感剤の吸収特性にもよるが、例えば、200〜600nmであることが好ましく、300〜450nmであることがより好ましく、350〜420nmであることがさらに好ましい。
【0064】
また、本発明のインク組成物の、光重合開始系は、低出力の活性放射線であっても十分な感度を有するものである。したがって、露光面照度が、好ましくは10〜4,000mW/cm2、より好ましくは20〜2,500mW/cm2で硬化させることが適当である。
【0065】
活性放射線源としては、水銀ランプやガス・固体レーザー等が主に利用されており、紫外線光硬化型インクジェット記録用インク組成物の硬化に使用される光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプが広く知られている。しかしながら、現在環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。さらに、LED(UV−LED)、LD(UV−LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、光硬化型インクジェット用光源として期待されている。
また、発光ダイオード(LED)及びレーザーダイオード(LD)を活性放射線源として用いることが可能である。特に、紫外線源を要する場合、紫外LED及び紫外LDを使用することができる。例えば、日亜化学(株)は、主放出スペクトルが365nmと420nmとの間の波長を有する紫色LEDを上市している。さらに一層短い波長が必要とされる場合、LEDとして、米国特許番号第6,084,250号明細書に開示されている、300nmと370nmとの間に中心付けされた活性放射線を放出し得るLEDが例示できる。また、他の紫外LEDも、入手可能であり、異なる紫外線帯域の放射を照射することができる。本発明で好ましい活性放射線源はUV−LEDであり、特に好ましくは350〜420nmにピーク波長を有するUV−LEDである。
なお、LEDの被記録媒体上での最高照度は10〜2,000mW/cm2であることが好ましく、20〜1,000mW/cm2であることがより好ましく、50〜800mW/cm2であることが特に好ましい。
【0066】
本発明のインク組成物は、このような活性放射線に、好ましくは0.01〜120秒、より好ましくは0.01〜90秒、さらに好ましくは0.01〜10秒照射されることが適当である。
また、本発明のインクジェット記録方法においては、インク組成物を吐出した後0.01〜10秒の間に、2,000mW/cm2以下の露光面照度で活性放射線を照射し、前記インク組成物を硬化させることが好ましい。
活性放射線の照射条件並びに基本的な照射方法は、特開昭60−132767号公報に開示されている。具体的には、インク組成物の吐出装置を含むヘッドユニットの両側に光源を設け、いわゆるシャトル方式でヘッドユニットと光源を走査することによって行われる。活性放射線の照射は、インク組成物の着弾後、一定時間(好ましくは0.01〜0.5秒、より好ましくは0.01〜0.3秒、さらに好ましくは0.01〜0.15秒)をおいて行われることになる。このようにインク組成物の着弾から照射までの時間を極短時間に制御することにより、被記録媒体に着弾したインク組成物が硬化前に滲むことを防止するこが可能となる。また、多孔質な被記録媒体に対しても光源の届かない深部までインク組成物が浸透する前に露光することができるため、未反応モノマーの残留を抑えることができるので好ましい。
さらに、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させてもよい。国際公開第99/54415号パンフレットでは、照射方法として、光ファイバーを用いた方法やコリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されており、このような硬化方法もまた、本発明のインクジェット記録方法に適用することができる。
【0067】
本発明のインクジェット記録方法においては、光沢性に優れた画像が得られることから、印刷物における画像の少なくとも一部を、前記(a)画像形成工程及び前記(b)硬化工程を2回以上繰り返して形成することが好ましい。
前記印刷物における画像の少なくとも一部を、前記(a)画像形成工程及び前記(b)硬化工程を2回以上繰り返して形成する態様の例としては、1色につき前記(a)及び(b)工程を1回ずつ行ってカラー画像を形成する態様や、単色の画像について前記(a)及び(b)工程を2回以上繰り返して単色の画像を形成する態様、カラー画像における1色について前記(a)及び(b)工程を2回以上繰り返して単色の画像を形成し、さらにカラー画像の他の色についても同様に前記(a)及び(b)工程を2回以上繰り返すことにより、カラー画像を形成する態様が挙げられる。
本発明のインク組成物は、シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤を含有しないことが好ましい。これらの界面活性剤を含まないインク組成物を使用して前記(a)及び(b)工程を2回以上繰り返した場合、先に吐出されたインク組成物の液滴の表面にこれらの界面活性剤の偏在がなく、長時間にわたり打滴表面が液状態を保持するため、後に吐出されたインク組成物の液滴との合一が容易に進行し、結果として画像の光沢性が向上する。
【0068】
上述したようなインクジェット記録方法を採用することにより、表面の濡れ性が異なる様々な支持体に対しても、着弾したインク組成物のドット径を一定に保つことができ、画質が向上する。なお、カラー画像を得るためには、明度の低い色から順に重ねていくことが好ましい。明度の低いインク組成物から順に重ねることにより、下部のインク組成物まで照射線が到達しやすくなり、良好な硬化感度、残留モノマーの低減、密着性の向上が期待できる。また、照射は、全色を吐出してまとめて露光することが可能だが、1色毎に露光するほうが、硬化促進の観点で好ましい。
【0069】
本発明のインクジェット記録方法には、本発明のインク組成物を1つ以上含むインクセットを好適に使用することができる。吐出する各着色インク組成物の順番は、特に限定されるわけではないが、明度の低い着色インク組成物から被記録媒体に付与することが好ましい。本発明のインク組成物として、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックのインク組成物を使用する場合には、イエロー→シアン→マゼンタ→ブラックの順で被記録媒体上に付与することが好ましい。また、これにホワイトを加えて使用する場合にはホワイト→イエロー→シアン→マゼンタ→ブラックの順で被記録媒体上に付与することが好ましい。さらに、本発明はこれに限定されず、ライトシアン、ライトマゼンタのインク組成物とシアン、マゼンタ、ブラック、ホワイト、イエローの濃色インク組成物の計7色が少なくとも含まれるインクセットとしても使用することができ、その場合には、ホワイト→ライトシアン→ライトマゼンタ→イエロー→シアン→マゼンタ→ブラックの順で被記録媒体上に付与することが好ましい。
このようにして、本発明のインク組成物は、活性放射線の照射により高感度で硬化することで、支持体表面に画像を形成することができる。
【0070】
本発明のインク組成物を複数色そろえ、インクセットとして用いる場合、本発明のインク組成物を少なくとも1つ含み、本発明のインク組成物又は本発明以外のインク組成物と組み合わせた2種以上のインク組成物を有するインクセットであれば、特に制限はないが、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、ホワイト、ライトマゼンタ、及び、ライトシアンよりなる群から選択される色の本発明のインク組成物を少なくとも1つ含むことが好ましい。
また、本発明のインクセットは、本発明のインクジェット記録方法に好適に用いることができる。
本発明のインク組成物を使用してフルカラー画像を得るためには、本発明のインクセットとして、少なくともイエロー、シアン、マゼンタ、及び、ブラックよりなる4色の濃色インク組成物を組み合わせたインクセットであることが好ましく、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック、ホワイトよりなる5色の濃色インク組成物を組み合わせたインクセットであることがより好ましく、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック、及び、ホワイトよりなる5色の濃色インク組成物と、ライトシアン、及び、ライトマゼンタよりなる2色のインク組成物とを組み合わせたインクセットであることがさらに好ましい。
なお、本発明における「濃色インク組成物」とは、着色剤の含有量がインク組成物全体の1重量%を超えているインク組成物を意味する。前記着色剤としては、特に制限はなく公知の着色剤を用いることができ、顔料や分散染料が例示できる。
本発明のインクセットが、少なくとも1つの濃色インク組成物、及び、少なくとも1つの淡色インク組成物を含んでおり、濃色インク組成物と淡色インク組成物とが同系色の着色剤を用いている場合、濃色インク組成物と淡色インク組成物との着色剤濃度の比が、濃色インク組成物:淡色インク組成物=15:1〜4:1であることが好ましく、12:1〜4:1であることがより好ましく、10:1〜4.5:1であることがさらに好ましい。上記範囲であると、粒状感の少ない、鮮やかなフルカラー画像が得られる。
【実施例】
【0071】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、以下の記載における「部」とは、特に断りのない限り「重量部」を示すものとする。
【0072】
本発明で使用した素材は下記に示す通りである。
(着色剤)
・IRGALITE BLUE GLVO(シアン顔料、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
・CINQUASIA MAGENTA RT−335−D(マゼンタ顔料、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
・NOVOPERM YELLOW H2G(イエロー顔料、クラリアント社製)
・SPECIAL BLACK 250(ブラック顔料、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
・タイペークCR60−2(ホワイト顔料、石原産業(株)製)
(分散剤)
・SOLSPERSE32000(分散剤、Noveon社製)
・SOLSPERSE36000(分散剤、Noveon社製)
(モノマー(成分A))
・V−CAP(N−ビニルカプロラクタム、ISP社製)
(モノマー(成分B))
・CD217(4−t−ブチルシクロヘキシルアクリレート、Sartomer社製)
・CD420(3,3,5−トリメチルシクロヘキシルアクリレート、Sartomer社製)
(モノマー(成分C))
・SR341(3−メチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート、Sartomer社製)
・CD406(シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、Sartomer社製)
・SR238(1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、Sartomer社製)
・NKエステルA−DOD−N(1,9−ノナンジオールジアクリレート、新中村化学工業(株)製)
・CD595(1,10−デカンジオールジアクリレート、Sartomer社製)
・CD262(1,12−ドデカンジオールジアクリレート、Sartomer社製)
・SD833S(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、Sartomer社製)
・KAYARAD R−684(ジシクロペンタニルジアクリレート、日本化薬(株)製)
(その他のモノマー)
・NKエステルAMP−10G(フェノキシエチルアクリレート、新中村化学工業(株)製)
・SR9003(PO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、Sartomer社製)
・SR508(ジプロピレングリコールジアクリレート、Sartomer社製)
・SR506D(イソボロニルアクリレート、Sartomer社製)
・SR489(トリデシルアクリレート、Sartomer社製)
(オリゴマー)
・CN964 A85(2官能脂肪族ウレタンアクリレート・15重量%トリプロピレングリコールジアクリレート含有、Sartomer社製)
・1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート(日本化成(株)製)
(重合禁止剤・重合開始剤・界面活性剤)
・FIRSTCURE ST−1(重合禁止剤、トリス(N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシアミン)アルミニウム塩(10重量%)とフェノキシエチルアクリレート(90重量%)との混合物、Chem First社製)
・LUCIRIN TPO(光重合開始剤、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、BASF社製)
・IRGACURE184(光重合開始剤、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
・TEGORAD2100(シリコーン系界面活性剤、デグサ社製)
・BYK377(シリコーン系界面活性剤、BYK Chemie社製)
【0073】
(シアンミルベースAの調製)
IRGALITE BLUE GLVOを300部と、SR9003を620部と、SOLSPERSE32000を80部とを撹拌混合し、シアンミルベースAを得た。なお、シアンミルベースAの調製は分散機モーターミルM50(アイガー社製)に入れて、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで4時間分散を行った。
【0074】
シアンミルベースAと同様にして、表1に示す組成、分散条件でマゼンタミルベースB、イエローミルベースC、ブラックミルベースD及びホワイトミルベースEを調製した。
【0075】
【表1】

【0076】
(実施例1〜18、及び、比較例1〜7)
<インク組成物の作製方法>
前記ミルベースに含まれる着色剤、分散剤、モノマーを含む表1に記載の素材を混合、撹拌することで、実施例1〜18、及び、比較例1〜7のインク組成物を得た。
【0077】
<インクジェット記録方法>
UV硬化型インクジェットプリンター LUXELJET UV250(富士フイルムグラフィックシステムズ(株)製)を用い、インクジェット画像を印刷した。Avery permanent 400(Avery社製、ポリ塩化ビニル(PVC)支持体)上に、解像度600×450dpi、サイズ2m×1mで、100%ベタ画像の印刷を行った。ランプはIntegration Technology社製SUB ZERO 085 H bulbランプユニットを装着し、前後のランプ強度をレベル5に設定した。印字中、路面照度を測定したところ、980mW/cm2であった。また、吐出から露光までの時間は、0.2〜0.3秒であった。また、1ドロップあたりの吐出量は、6〜42pLの範囲で行った。
なお、同装置は、インクジェットヘッドを走査させることで描画を行うものであり、また、ヘッドの両端にそれぞれUVランプ1つずつ装着されており、1回のヘッド走査で2つのUVランプが照射されるような形態になっている。ベタ画像は、支持体の同一箇所にインク打滴と2つのランプによるUV照射とを交互に8回繰り返すことにより形成した。
【0078】
<光沢性評価>
上記インクジェット記録方法によって得られた画像を用い、Sheen Instruments社製光沢度計を用い、測定角60°で測定を行った。評価基準は、以下の通りである。結果を表2及び表3に示した。
4:光沢度40以上
3:光沢度30以上40未満
2:光沢度20以上30未満
1:光沢度20未満
【0079】
<筋ムラ評価>
上記インクジェット画像記録方法によって得られた画像の筋ムラを画像から2m離れた地点から目視で評価した。評価基準は以下の通りである。結果を表2及び表3に示した。
3:筋ムラが目視でははっきりと見えない。
2:筋ムラが目視でわずかに確認できる。
1:筋ムラが目視ではっきり確認できる。
【0080】
<硬化性評価>
上記インクジェット記録方法にて得られた画像を触診により、画像のべとつきの程度を以下の基準で評価した。結果を表2及び表3に示した。
3:画像にべとつきなし。
2:画像がややべとついているが、未硬化のインク組成物又は硬化膜は手に転写しない。
1:画像がべとついており、未硬化のインク組成物又は硬化膜の一部が手に転写した。
【0081】
<柔軟性評価>
硬化膜の柔軟性を評価する方法として、折り曲げテストを実施した。前記インクジェット記録方法にて、100%、200%のベタ画像を作成し、以下の基準で評価を行った。結果を表2及び表3に示した。
3:100%、200%、のサンプルでは割れが発生しない。
2:100%のサンプルでは割れが発生しないが、平均膜厚200%のサンプルで、画像部の折り曲げた部分に割れが入る。
1:平均膜厚100%、200%いずれのサンプルでも、画像部の折り曲げた部分に割れが入る。
【0082】
【表2】

【0083】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(成分A)N−ビニルラクタム類、
(成分B)式(B)で表される化合物、及び、
(成分C)炭素数6〜18の炭化水素ジオールのジ(メタ)アクリル酸エステル、を含有することを特徴とする
インクジェットインク組成物。
【化1】

(式(B)中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2〜R12はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表す。)
【請求項2】
(成分D)重合開始剤として、α−ヒドロキシケトン化合物、及び/又は、モノアシルホスフィンオキサイド化合物を含有する、請求項1に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項3】
前記成分AがN−ビニルカプロラクタムである、請求項1又は2に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項4】
前記成分Aの含有量が、インク組成物の全重量に対し、8重量%以上40重量%以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項5】
前記成分Bが、4−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、及び/又は、3,3,5−トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項6】
前記成分Bの含有量が、インク組成物の全重量に対し、10重量%以上45重量%以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項7】
前記炭化水素ジオールが、炭素数9〜18の直鎖炭化水素ジオール、炭素数6〜18の分岐炭化水素ジオール、及び、炭素数6〜18の環状炭化水素ジオールよりなる群から選ばれた少なくとも1種のジオールである、請求項1〜6のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項8】
前記成分Cの含有量が、インク組成物の全重量に対し、10重量%以上45重量%以下である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項9】
シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤を含有しないか、又は、シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤の総含有量が、インク組成物の全重量に対し、0重量%を超え0.01重量%以下である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項10】
インク組成物に含有されるエチレン性不飽和化合物のうち、70重量%以上がエーテル結合を含有しない化合物である、請求項1〜9のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項11】
(a)請求項1〜10のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物をインクジェット方式により吐出して支持体上に画像を形成する画像形成工程、及び、
(b)得られた画像に活性放射線を照射して、前記インクジェットインク組成物を硬化させて、前記支持体上に硬化した画像を有する印刷物を得る硬化工程を含むことを特徴とする
インクジェット記録方法。
【請求項12】
印刷物における画像の少なくとも一部を、前記画像形成工程及び前記硬化工程を2回以上繰り返して形成する、請求項11に記載のインクジェット記録方法。

【公開番号】特開2011−144250(P2011−144250A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5443(P2010−5443)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】