説明

インクジェットプリンタのヘッドメンテナンス機構

【課題】共通の回転駆動源によりヘッドキャップ、インク吸引ポンプを駆動するヘッドメンテナンス機構を小型でコンパクトに構成すること。
【解決手段】インクジェットプリンタのヘッドメンテナス機構1では、共通駆動源であるステッピングモータ5の回転が減速歯車列19、チューブポンプ駆動用のポンプ歯車16、摩擦クラッチ機構18を介して、ヘッドキャップ2、ワイパ3を駆動する有限回転型の円筒カム11に伝達される。また円筒カム11に形成した間欠歯車25によって円筒カム11は有限回転角度範囲内の所定回転範囲では直接に回転駆動される。円筒カム11に形成したカム溝12にはヘッドキャップ2を密閉状態でキャッピングするインク吸引位置および大気開放状態でキャッピングするインク空吸引位置に移動させるカム溝部分が形成されている。ヘッドキャップ2、ワイパ3およびチューブポンプ4を駆動する動力伝達機構を小型でコンパクトに構成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッドを搭載したキャリッジを印字幅方向に往復移動させて印字を行うシリアル型のインクジェットプリンタにおけるヘッドメンテナンス機構に関するものである。更に詳しくは、単一の回転駆動源を用いてヘッドキャップ、ワイパおよびインク吸引ポンプを駆動するインクジェットプリンタのヘッドメンテナンス機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリアル型のインクジェットプリンタにおいては、インクジェトヘッドによる印字範囲から外れた位置にヘッドメンテナンス機構を配置し、このヘッドメンテナンス機構によって、インクジェットヘッドのインクノズル面の汚れのワイピング、インクノズルの詰まりを防止するためのキャッピング、インクノズルから増粘状態のインクを吸引するインク吸引動作などを行うようにしている。インクジェットプリンタのヘッドメンテナス機構としては、その小型・コンパクト化および低価格化の要請から、ステップモータなどの単一の回転駆動源を用いて、インクノズル面をワイピングするためのワイパの移動、インクノズル面をキャッピングするためのヘッドキャップのキャッピング動作、およびキャッピングされたインクノズル等からインクを吸引するためのインク吸引ポンプの駆動を行うように構成されたものが主流となっている。
【0003】
例えば、特開2000−141673号公報にはかかる構成のヘッドメンテナンス機構が開示されている。この公開公報に開示されているヘッドメンテナンス機構では、単一のモータが一方向に回転すると、この回転により、スライド式ラックおよびカム機構を介してヘッドキャップ、ワイパなどが駆動され、モータが逆方向に回転すると、この回転によって円筒カムを介してダイヤフラム式のインク吸引ポンプが駆動されるようになっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、単一のモータの一方向回転によりヘッドキャップ、ワイパを駆動し、逆方向回転によってインク吸引ポンプを駆動する形式のヘッドメンテナス機構においては、次のような解決すべき課題がある。
【0005】
まず、モータの回転運動を往復運動に変換するために一般的に円筒カムが使用されているが、この円筒カムは一方向に継続して回転駆動されるので、各動作を制御するためには、位置検出器を配置して、円筒カムの原点位置あるいは初期位置を検出する必要がある。
【0006】
また、ヘッドキャップ、ワイパ駆動用の動力伝達機構と、インク吸引ポンプ駆動用の動力伝達機構を別個に配置する必要があり、ヘッドメンテナンス機構の小型化、コンパクト化には不利である。
【0007】
さらに、インク吸引ポンプとして、正転および逆転を行う必要のある形式のポンプ、例えばチューブポンプなどを採用できない。すなわち、チューブポンプを用いる場合には、当該ポンプはその駆動力入力要素であるポンプ歯車を正転させるとローラがインクチューブを押し潰しながら回転してインク吸引動作を行い、逆転させるとローラがインクチューブを押し潰していないレリーズ状態となる。インク吸引動作後にはレリーズ状態にする必要があるので、一方向の回転駆動の場合にはチューブポンプを用いることができない。
【0008】
次に、インクジェットプリンタのヘッドメンテナンス機構においては、インク吸引ポンプによるヘッドキャップからのインク吸引形態として、インクノズルからインクを吸引する場合と、キャッピングされたヘッドキャップを大気開放状態にしてヘッドキャップに溜まっているインクを吸引する場合(インク空吸引)とがある。これら双方のインク吸引形態を実現するためには、ヘッドキャップをインクノズル面にキャッピングした状態を形成した後に、ヘッドキャップに取り付けた大気開放弁を開閉する機構が備わっている必要がある。この機構をコンパクトに構成できれば、ヘッドメンテナンス機構の小型化、コンパクト化あるいは薄型化に有利である。
【0009】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、位置検出器を用いることなく、ヘッドキャップ、ワイパ、インク吸引ポンプなどの動作制御を行うことのできるインクジェットプリンタのヘッドメンテナス機構を提案することにある。
【0010】
また、本発明の課題は、インク吸引ポンプを正転駆動および逆転駆動させることのできるインクジェットプリンタのヘッドメンテナス機構を提案することにある。
【0011】
さらに、本発明の課題は、ヘッドキャップ、ワイパ、インク吸引ポンプを駆動するための動力伝達機構がコンパクトに構成されたインクジェットプリンタのヘッドメンテナス機構を提案することにある。
【0012】
さらにまた、本発明の課題は、インクノズル面にキャッピングされたヘッドキャップ内部を大気開放するか否かの切り換え機構がコンパクトに構成されたインクジェットプリンタのヘッドメンテナス機構を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明のインクジェットプリンタのヘッドメンテナンス機構は、インクジェットヘッドのインクノズル面をキャッピングしたキャッピング位置および当該位置から退避した退避位置を往復移動可能なヘッドキャップと、前記ヘッドキャップからインクを吸引するためのインク吸引ポンプと、前記ヘッドキャップおよび前記インク吸引ポンプを駆動するための共通の回転駆動源と、回転運動を前記ヘッドキャップの往復運動に変換するための円筒カムと、前記回転駆動源から回転駆動力が伝達される前記インク吸引ポンプの駆動力入力要素であるポンプ歯車と、前記ポンプ歯車の回転を前記円筒カムに伝達する摩擦クラッチ機構とを有しており、前記円筒カムは、時計回りの回転停止位置および反時計回りの回転停止位置が予め設定されている有限回転型のものであり、当該円筒カムは、各回転停止位置に至ると前記摩擦クラッチ機構の滑りによって各回転停止位置に停止することを特徴としている。
【0014】
本発明における典型的な構成では、前記円筒カムの外周面に形成された円周方向に所定の角度範囲に亘って延びるカム溝と、このカム溝に沿って摺動可能なヘッドキャップ駆動用のキャップ側移動ピンとを有している。
【0015】
ここで、円筒カムの回転角度範囲を規定するための機構は、予め定まった位置に配置されている固定側係合部と、前記円筒カムに形成されている第1および第2の回転側係合部から構成することができる。この場合には、前記円筒カムの時計回りの回転停止位置は、前記第1の回転側係合部が前記固定側係合部に当たることにより規定され、前記円筒カムの反時計回りの回転停止位置は、前記第2の回転側係合部が前記固定側係合部に当たることにより規定される。
【0016】
この代わりに、前記円筒カムの時計回りの回転停止位置を、前記カム溝における円周方向の一方のカム溝端面に前記キャップ側移動ピンが当たることにより規定し、前記円筒カムの反時計回りの回転停止位置を、前記カム溝における円周方向の他方のカム溝端面に前記キャップ側移動ピンが当たることにより規定することも可能である。
【0017】
本発明では、共通の回転駆動源からの回転を、摩擦クラッチ機構を介して有限回転型の円筒カムに伝達するようにしている。有限回転型の円筒カムを原点位置あるいは初期位置に復帰させることにより、その駆動を制御できるので、位置検出器を別途設ける必要が無い。また、摩擦クラッチ機構よりも回転力伝達経路の上流側に位置しているポンプ歯車によってインク吸引ポンプを駆動しているので、インク吸引ポンプを、回転方向に制限されることなく駆動できる。
【0018】
次に、本発明において、前記ポンプ歯車および前記円筒カムを同軸状態に配列すれば、これらをコンパクトに配置できる。
【0019】
また、前記摩擦クラッチ機構は、前記ポンプ歯車の円形端面と、前記円筒カムの円形端面と、これら円形端面を弾性力によって常に押し付けているばね部材とを備えた構成とすることができる。
【0020】
さらに、本発明ではインク吸引ポンプを時計回りおよび反時計回りに回転駆動できるので、前記インク吸引ポンプとしてチューブポンプを用いることができる。
【0021】
一方、大気開放機構を備えた前記ヘッドキャップとしては、前記インクノズル面に対峙する側が開口しているキャップ本体と、このキャップ本体を保持しているキャップホルダと、前記インクノズル面にキャッピングされた状態の前記キャップ本体内部を大気開放するための大気開放弁と、前記キャップ本体を前記キャップホルダから突出する方向に付勢している付勢部材とを備えており、この付勢部材の付勢力に逆らって前記キャップ本体を所定量だけ押し込むと、前記大気開放弁が閉状態に切り換わる構成のものを採用することができる。
【0022】
この場合、前記カム溝は、前記キャップホルダを前記インクノズルに最も接近したインク吸引位置に押し出して当該位置に保持する第1のカム溝部分と、前記キャップホルダを前記インク吸引位置から後退したインク空吸引位置に保持する第2のカム溝部分とを備えたものとし、前記インク吸引位置では前記キャップ本体が、前記大気開放弁が閉状態で前記インクノズル面にキャッピングされ、前記インク空吸引位置では前記キャップ本体が、前記大気開放弁が開状態で前記インクノズル面にキャッピングされるようにすればよい。
【0023】
また、前記カム溝は、前記第1のカム溝部分に位置している前記キャップ側移動ピンを前記第2のカム溝部分に案内する案内用カム溝部分を備え、前記第1のカム溝部分のカム溝端面に位置している前記キャップ側移動ピンが、当該カム溝端面から離れる方向に移動すると、当該キャップ側移動ピンは前記案内用カム溝部分に沿って前記第2のカム溝部分に案内される構成とすることができる。
【0024】
さらに、前記第2のカム溝部分は、その一端が前記第2のカム溝端面によって規定され、他端が前記第1の溝部分に繋がった構成とすることができる。
【0025】
有限回転型の円筒カムは、一般には、そのカム溝が360度以内の角度範囲に亘って形成された連続したカム溝とされる。
【0026】
次に、円筒カムを回転駆動する際に、円筒カムに作用する負荷が増加して摩擦クラッチ機構に滑りが発生して回転力の伝達が効率良く行われなくなる事態を回避するためには、前記円筒カムと一体回転するように当該円筒カムに同軸状態に配置された間欠歯車を有し、この間欠歯車に、前記円筒カムの有限回転角度範囲内の所定の回転角度範囲において前記回転駆動源の側から回転力を直接に伝達すればよい。
【0027】
一方、本発明のインクジェットプリンタのヘッドメンテナンス機構は、共通の回転駆動源からの回転力によって、ヘッドキャップ、ワイパおよびインク吸引ポンプを駆動するためのものであり、インクジェットヘッドのインクノズル面をキャッピングするためのヘッドキャップと、前記インクノズル面をワイピングするためのワイパと、前記ヘッドキャップからインクを吸引するためのインク吸引ポンプと、前記ヘッドキャップ、前記ワイパおよび前記インク吸引ポンプを駆動するための共通の回転駆動源と、この回転駆動源の回転駆動力を前記ヘッドキャップ、前記ワイパおよび前記インク吸引ポンプに伝達する動力伝達機構とを有しており、この動力伝達機構は、円筒カムと、この円筒カムのカム溝に沿って摺動可能であり当該円筒カムの回転に伴って移動するヘッドキャップ移動用のキャップ側移動ピンと、前記カム溝に沿って摺動可能であり前記円筒カムの回転に伴って移動するワイパ移動用のワイパ側移動ピンと、前記円筒カムに同軸状態で配置されている前記インク吸引ポンプの駆動力入力要素であるポンプ歯車と、前記円筒カムが前記ポンプ歯車と一体回転するように所定の摩擦力でこれら円筒カムおよびポンプ歯車を係合させている摩擦クラッチ機構と、前記ポンプ歯車に前記共通駆動源からの回転力を伝達する駆動歯車と、前記円筒カムの時計回りの回転停止位置および反時計回りの回転停止位置を規定している回転停止位置規定部とを有し、前記円筒カムのカム溝は、前記円筒カムが第2の回転方向に回転すると前記ワイパ側移動ピンが当接あるいは当接直前の位置に到る第1のカム溝端面と、この第1のカム溝端面に連続して前記ワイパ側移動ピンを移動させるワイパ移動領域と、前記キャップ側移動ピンを移動させるキャップ移動領域と、このキャップ移動領域の端に形成され、前記円筒カムが第1の回転方向に回転すると前記キャップ側移動ピンが当接あるいは当接直前の位置に到る第2の溝端面を備えていることを特徴とている。
【0028】
ここで、前記ヘッドキャップは、前記インクノズル面に対峙する側が開口しているキャップ本体と、このキャップ本体を保持しているキャップホルダと、前記インクノズル面にキャッピングされた状態の前記キャップ本体内部を大気開放するための大気開放弁と、前記キャップ本体を前記キャップホルダから突出する方向に付勢している付勢部材とを備え、この付勢部材の付勢力に逆らって前記キャップ本体を所定量だけ押し込むと、前記大気開放弁が閉状態に切り換わる構成とすることができる。
【0029】
また、前記カム溝の前記キャップ移動領域は、前記キャップホルダを前記インクノズルに最も接近したインク吸引位置に押し出した位置に保持する第1のカム溝部分と、前記キャップホルダを前記インク吸引位置から後退したインク空吸引位置に保持する第2のカム溝部分とを備え、前記インク吸引位置では前記キャップ本体が、前記大気開放弁が閉状態で前記インクノズル面にキャッピングされ、前記インク空吸引位置では前記キャップ本体が、前記大気開放弁が開状態で前記インクノズル面にキャッピングされるように構成することができる。
【0030】
さらに、前記カム溝は、前記第1のカム溝部分の一端が前記第2のカム溝端面によって規定されており、更に、前記第2のカム溝端面の側に前記キャップ側移動ピンが位置している状態から前記円筒カムが前記第2の回転方向に回転すると、前記キャップ側移動ピンを当該第2のカム溝部分に案内する案内用カム溝部分を備えている構成とすることができる。
【0031】
さらにまた、前記第2のカム溝部分は、その一端が前記第2のカム溝端面によって規定されており、他端が前記第1の溝部分に繋がっている構成とすることができる。
【0032】
また、前記カム溝は360度以内の角度範囲に亘って形成された連続したカム溝とすることができる。
【0033】
次に、前記円筒カムと一体回転するように当該円筒カムに同軸状態に配置された間欠歯車を有しており、前記ワイパ側移動ピンが前記第1のカム溝端面に当接あるいは当接直前の位置にある前記円筒カムの回転角度位置から前記キャップ側移動ピンが前記第2のカム溝端面に当接あるいは当接直前の位置にある前記円筒カムの回転角度位置までの回転角度範囲を越えない所定の角度範囲に亘ってのみ、前記間欠歯車は前記駆動歯車に噛み合い状態とされることが望ましい。
【0034】
前記インク吸引ポンプとしては、前記ポンプ歯車が前記第1の回転方向に回転する時のみポンピング動作を行うものを採用することができる。
【0035】
この場合、前記インク吸引ポンプとして前記円筒カムに対して同軸状に配置されたチューブポンプを用いれば、ヘッドメンテナンス機構をコンパクトに構成できる。
【0036】
なお、前記キャップ側移動ピンを前記カム溝に沿って確実に移動させるためには、当該ピンをカム溝の底面に向けて付勢しているばね部材を有していることが望ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したインクジェットプリンタのヘッドメンテナス機構の実施例を説明する。図1は本例のインクジェットプリンタのヘッドメンテナンス機構を示す平面図であり、図2はその分解斜視図である。また、図3はハウジングを除いた状態でヘッドメンテナンス機構を示す斜視図であり、図4および図5は図3の矢印IVおよびVの側から見た場合の側面図であり、図6は図1、3のVI−VI線で切断した部分を示す部分断面図である。なお、以下の説明においては、ヘッドメンテナンス機構が搭載されるインクジェットプリンタは一般的な構成のものであるので、図示を省略すると共に本明細書においてはその説明を省略するものとする。
【0038】
(全体構成)
ヘッドメンテナンス機構1は、インクジェットプリンタのインクジェットヘッドのインクノズル面をキャッピングするためのヘッドキャップ2と、インクノズル面をワイピングするためのワイパ3と、ヘッドキャップ2からインクを吸引するためのインク吸引ポンプであるチューブポンプ4を備えている。また、ヘッドキャップ2、ワイパ3およびチュープポンプ4を駆動するための共通駆動源としてのステッピングモータ5を備えている。更に、ステッピングモータ5の回転力をヘッドキャップ2、ワイパ3およびチューブポンプ4に伝達する動力伝達機構6を備えている。これらの各部分はハウジング7に取り付けられている。
【0039】
(動力伝達機構6)
本例の動力伝達機構6は円筒カム11を備えており、この円筒カム11の外周面には円周方向に向けて所定の深さのカム溝12が形成されている。カム溝12には、円筒カム11の回転に伴って当該カム溝12に沿って摺動可能な状態でヘッドキャップ移動用のキャップ側移動ピン13が差し込まれている。また、このピン13とは90度時計回りにオフセットした位置において、同じく円筒カム11の回転に伴ってカム溝12に沿って摺動可能な状態でワイパ移動用のワイパ側移動ピン14が差し込まれている。また、円筒カム11の円形底面11aの直下には同軸状態でチューブポンプ4の駆動力入力要素であるポンプ歯車16が対峙している。
【0040】
ポンプ歯車16の直下にはチューブポンプ4が同軸状態で配置されており、このチューブポンプ4の中心軸17はホンプ歯車16および円筒カム11の中心を貫通して上方に突出している。この中心軸17は、その下端17aがハウジング7に対して回転自在の状態で支持され、上端17bが、ハウジング上面に一対のビスによって固定した上壁8に形成した軸孔8aに回転自在の状態で差し込まれている。
【0041】
円筒カム11とポンプ歯車16は摩擦クラッチ機構18によって摩擦係合状態に保持されている。本例の摩擦クラッチ機構18は、円筒カム11の円形底面11aと、ポンプ歯車16の上側端面16aと、円筒カム11の中心孔11bに装着されたコイルばね20から構成されている。コイルばね20は円筒カム11と上壁8の間に圧縮状態で装着されており、常に、円筒カム11を所定のばね力で下方に押している。従って、円筒カム11の円形底面11aとポンプ歯車16の上端面16aの間は所定のばね力で押し付けられており、これによって発生する摩擦力によって一体回転可能となっている。摩擦力を越える負荷が作用すると、これらの間には滑りが発生する。
【0042】
ポンプ歯車16は、歯車減速機構19を介してステッピングモータ5に連結されている。歯車減速機構19は、モータ出力軸に取り付けたモータ歯車21に噛み合っている複合減速減速歯車22と、この複合減速歯車22の小径歯車22aに噛み合っている減速歯車23(駆動歯車)を備えており、この減速歯車23がポンプ歯車16に噛み合っている。
【0043】
ここで、本例では、円筒カム11には、その下端外周面に、ほぼ200度程度の角度範囲に亘って歯部24が形成された間欠歯車25が一体形成されている。
この間欠歯車25の歯部24も減速歯車23に噛み合い可能である。
【0044】
また、本例の円筒カム11は有限回転型のものであり、その時計回りの回転停止位置および反時計回りの回転停止位置を規定するための回転停止位置規定部が設けられている。本例における回転停止位置規定部は、円筒カム11の円環状の上端面の内周縁に沿って一定の角度範囲に亘り形成した円弧溝11cの両端を規定しているストッパ壁11d、11eと、上壁8の裏面から円筒カム11の円弧溝11c内に突出させた突起8bから構成されている。円筒カム11が時計回りに回転すると、そのストッパ壁11dが突起8bに当たり、当該円筒カム11の回転が阻止されるようになっている。また、円筒カム11が反時計回りに回転すると、他方のストッパ壁11eが突起8bに当たり、当該円筒カムの回転が阻止されるようになっている。
【0045】
このように構成されている本例の動力伝達機構6では、ステッピングモータ5の回転が、減速歯車機構19を介してポンプ歯車16に伝達され、ポンプ歯車16の回転は摩擦クラッチ機構18を介して円筒カム11に伝達される。また、円筒カム11の間欠歯車25が減速歯車23に噛み合っている状態では、ステッピングモータ5の回転が直接に円筒カム11に伝達される。
【0046】
円筒カム11が回転すると、定まった位置においてそのカム溝12に差し込まれているキャップ側移動ピン13およびワイパ側移動ピン14が円筒カム11の回転軸線の方向(図2〜6の上下方向)に移動して、キャッピング状態およびワイピング状態を形成可能である。また、チューブポンプ4によって、キャッピング状態にあるヘッドキャップ2からインクの吸引が行われる。
【0047】
(ヘッドキャップ2およびワイパ3)
次に、主に図6〜図9を参照して本例のヘッドキャップ2の構造を説明する。
図7〜図9は図3のVII−VII線で切断した部分を示す部分断面図であり、図7はヘッドキャップ2が退避位置にある状態(開状態)を示し、図8はヘッドキャップ2がインクノズルからインク吸引が行われるインク吸引位置にあるキャッピング状態を示し、図9はヘッドキャップ2が当該ヘッドキャップからインク吸引が行われるインク空吸引位置にあるキャッピング状態を示している。
【0048】
ヘッドキャップ2は、インクジェットヘッド100のインクノズル面101に対峙している上側が開口している箱形のキャップ本体31と、このキャップ本体31を上側開口から受け入れた状態で保持しているキャップホルダ32を備えている。キャップホルダ32の一端面からは水平腕32aが突出しており、この先端部に形成されたピン孔32bに上記のキャップ側移動ピン13が差し込まれている。本例では、このキャップ側移動ピン13はピン孔32bに挿入されているコイルばね32cによって常にピン孔32bから突出する方向に押されている。
従って、キャップ側移動ピン13の先端は常に、円筒カム11のカム溝12の底面に押し付けられている。
【0049】
キャップ本体31にはインク吸収体33が装着されており、ここに回収されたインクは、キャップ本体31の底板部分に形成したインク取り出し口34から排出される。
【0050】
また、キャップ本体31の底板部分とキャップホルダ32の間にはキャップ本体内部を大気開放するための大気開放弁機構35が構成されている。すなわち、キャップ本体31の底板部分からは下方に向けて円筒状の大気開放筒36が延びており、この下端に対峙するキャップホルダ32には弁座37が形成されている。キャップ本体31はキャップホルダ32に対して上下方向に所定量だけ移動可能な状態で取り付けられている。常時は、キャップ本体31はコイルばね38によって上方に押し付けられており、従って、大気開放筒36が弁座37から離れて大気開放状態に保持されている。キャップ本体31を上側から所定量だけ押し込むと、大気開放筒36の下端が弁座37に当たり、当該大気開放筒36が閉じて、大気開放弁機構35が閉状態になる。
【0051】
図7に示すヘッドキャップ2はその退避位置2Aに位置している状態である。
これに対して、図8および図9はヘッドキャップ2がインクノズル面101をキャッピングした状態を示してある。図8に示す状態は、大気開放弁機構35が閉状態でキャッピングが行われるインク吸引位置2Bにヘッドキャップ2が位置している状態である。この位置では、図7に示す退避位置2AからL1だけキャップホルダ32が上昇しているが、キャップ本体31の側は、真上に位置しているインクジェットヘッド100のインクノズル面101に当たって相対的に下方に押し込められて、大気開放筒36が座面37に着座した状態になっている。この状態でチューブポンプ4によってインク吸引動作を行うと、インクジェットヘッド100のインクノズルからインクが吸引されて外部に排出される。
【0052】
これに対して、図9に示す状態は、退避位置2AからL1よりも小さな量だけキャップホルダ32が上昇してキャップ本体31がインクノズル面101をキャッピングしているが、上昇量L2が小さいので、大気開放弁機構35が開状態のままとなっているインク空吸引位置2Cの状態である。この状態でチューブポンプ4によってインク吸引動作を行うと、インクノズルからのインク吸引は行われずに、キャップ本体31のインク吸収体33に回収されているインクが外部に吸引排出される。
【0053】
次に、ワイパ3は、矩形のワイパブレード3aと、これを保持しているブレードホルダ3bとを備えており、ブレードホルダ3bは、退避位置と、インクジェッドヘッド100のインクノズル面101をワイピング可能なワイピング位置の間を往復移動可能な状態でハウジング7に取り付けられている。ブレードホルダ3bの側面からは水平腕3cが延びており、この水平腕3cの先端部に上記のワイパ側移動ピン14が取り付けられている。
【0054】
(チューブポンプ4)
次に、図2および図10、11を主に参照してチューブポンプ4の構造を説明する。図10、11はチューブポンプの動作を示す説明図であり、図10はローラがインクチューブを押し潰しながら回転するポンピング状態を、図11はローラがインクチューブから退避したポンプレリーズ状態を示している。チューブポンプ4は、ハウジング7に形成された円形凹部41に回転自在の状態で挿入された回転体42を備えており、この回転体42は、中心軸17と、その下端に形成された下端板43と、中心軸17の中程の位置に形成されたローラ駆動円盤44を備えている。下端板43とローラ駆動円盤44の間には一対のローラ45、46が回転自在の状態で取り付けられている。これらローラ45、46とハウジング側の円形凹部41の内周面41aの間にはインクチューブ47が引きまわれている。インクチューブ47の一端はヘッドキャップ2のインク取り出し口34に連通しており、他端は不図示のインク回収部に連通している。
【0055】
ローラ駆動円盤44の上端面はポンプ歯車16の下端面に対峙している。これらの双方の面には円周方向の一箇所の位置に係合突起(図示せず)が形成されており、360度回転すると、これらが係合してポンプ歯車16とチューブポンプ4が一体回転するようになっている。
【0056】
また、図10、11に示すように、ローラ駆動円盤44にはローラ45、46の中心軸45a、46aをガイドする円弧状ガイド溝44a、44bが形成されている。チューブポンプ4が図10のように矢印の方向に回転すると、一対のローラ45、46は半径方向の外側に移動して、インクチューブ47を押し潰しながら公転する。これによりインク吸引動作(ポンピング動作)が行われる。逆に、図11に示すように、逆方向に回転すると、一対のローラ45、46は半径方向の内方に退避するので、インクチューブ47が押し潰されていないレリーズ状態が形成される。
【0057】
(円筒カムのカム溝)
次に、図12を参照して、本例のヘッドメンテナンス機構1の円筒カム11に形成されているカム溝12について詳細に説明する。図12(a)は円筒カム11のカム溝12を平面上に展開した状態で示す平面展開図であり、図12(b)は各部分の溝深さを示す説明図であり、図12(c)は間欠歯車25および減速歯車23の位置を示す説明図である。
【0058】
本例のカム溝12は、円筒カム11が反時計回り(第2の回転方向)に回転するとワイパ側移動ピン14が当接可能な第1のカム溝端面51と、この第1のカム溝端面51に連続しているワイパ側移動ピン14を移動させるワイパ移動領域52と、キャップ側移動ピン13を移動させるキャップ移動領域53と、このキャップ移動領域53の端に形成された第2のカム端面54を備えている。第2のカム溝端面54には、円筒カム11が時計回り(第1の回転方向)に回転するとキャップ側移動ピン13が当接可能である。本例では約350度の角度範囲に亘りカム溝12が形成されており、ワイパ移動領域52およびキャップ移動領域53の間は繋ぎ領域55によって連続している。勿論、これらのワイパ移動領域52およびキャップ移動領域53を不連続なカム溝としてもよい。
【0059】
ここで、前述のように、円筒カム11の時計回りおよび反時計回りの回転停止位置は、円筒カム11のストッパ壁11d、11eと、上壁8に形成した突起8bとの係合により規定される。本例では、円筒カム11が時計回りに回転してそのストッパ壁11dが突起8bに当たることにより、その時計回りの回転が停止し、この状態では、キャップ側移動ピン13がカム溝端面54に当接した状態あるいは当接直前の位置に到ることになる。逆に、円筒カムが反時計回りに回転してそのストッパ壁11eが突起8bに当たることにより、その反時計回りの回転が停止し、この状態では、ワイパ側移動ピン14がカム溝端面51に当接した状態あるいは当接直前の位置に到ることになる。
【0060】
次に、ワイパ移動領域52はほぼ90度の角度範囲に亘る台形状のカム溝部分からなり、第1のカム溝端面51に位置しているワイパ側移動ピン14は、円筒カム11が時計回りに回転すると、このワイパ移動領域52に沿って相対的に摺動して、昇降する。円筒カム11がほぼ45度回転するとワイパ3は退避位置からインクノズル面を払拭可能なワイピング位置に至り、さらにほぼ45度回転すると再び退避位置に戻る。ワイパ側移動ピン14が図12(a)におけるカム溝12の繋ぎ領域55に位置している状態において、円筒カムを反時計回りに回転すると、ワイパ3はワイピング位置に上昇した後に退避位置に戻る。
【0061】
次に、カム溝12のキャップ移動領域53は、水平に延びる繋ぎ領域55に連続して、一定の角度で上方に傾斜している傾斜カム溝部分61と、この傾斜カム溝部分61の上端に連続して水平に延びる上側水平カム溝部分62(第1のカム溝部分)と、この上側水平カム溝部分62の下側に平行に形成された下側水平カム溝部分63(第2のカム溝部分)を備えている。また、円筒カム11が反時計回りに回転すると、上側水平カム溝部分62の第2のカム溝端面54に位置しているキャップ側移動ピン13を下側水平カム溝部分63に案内するための案内用カム溝部分64を備えている。
【0062】
キャップ側移動ピン13が図12(a)に示す繋ぎ領域55に位置している状態ではヘッドキャップ2はその退避位置2Aに位置している(図7参照)。この状態で円筒カム11が時計回りに回転すると、キャップ側移動ピン13は傾斜カム溝部分61に沿って上昇して上側水平カム溝部分62に到る。この状態は、図8に示すように、大気開放弁機構35が閉じた状態でヘッドキャップ2によりインクノズル面101がキャッピングされたインク吸引位置2Aである。これに対して、キャップ側移動ピン13が下側カム溝部分63に位置している状態は、図9に示すように大気開放弁機構35が開いた状態でヘッドキャップ2によりインクノズル面101がキャッピングされたインク空吸引位置2Bである。
【0063】
ここで、本例の繋ぎ領域55、傾斜カム溝部分61および上側水平カム溝部分62は図12(b)から分かるように溝深さが最も深く、上側水平カム溝部分62の溝深さは、第2のカム溝端面54の側の部分から漸減して当該端面54に到る部分が一定深さの浅い溝となっている。また、上側水平カム溝部分62の下側の溝側面62aが階段状に切り欠かれ、浅い溝深さH2の下側水平カム溝部分63が形成されている。この下側水平カム溝部分63の一端は第2のカム溝端面54に繋がっており、他方の端は傾斜カム溝部分61に繋がっている。
【0064】
案内用カム溝部分64は、下側水平カム溝部分63の底面をその下側部分63aを残して切り欠くことにより形成され、これらの水平カム溝部分62、63の中間の深さH3のカム溝部分64aと、このカム溝部分64aから傾斜カム溝部分61に向けて溝深さが漸減しているカム溝部分64bを備えている。このカム溝部分64bの端が下側水平カム溝部分63に連続している。
【0065】
図13は、このように構成されたカム溝部分を備えたキャップ移動領域53に沿って移動するキャップ側移動ピン13の移動経路を示す説明図である。この図を参照して説明すると、円筒カム11が時計回りAに回転すると、矢印aで示すように、キャップ側移動ピン13は水平な繋ぎ領域55の位置13(1)から傾斜カム溝部分61に沿って移動して上側水平カム溝部分62に案内されて、第2のカム溝端面54に到る。
【0066】
この位置13(2)にキャップ側移動ピン13が位置している状態において、円筒カム11が反時計回りBに回転すると、矢印bで示すように、キャップ側移動ピン13は上側水平カム溝部分62に沿って反対方向に移動し、案内用カム溝部分64に到ると、上側水平カム溝部分62から当該案内用カム溝部分64に落下し、当該部分に沿って下降して、下側水平カム溝部分63に到る。
【0067】
この位置13(3)にキャップ側移動ピン13が位置している状態において、円筒カム11を再び時計回りAに回転すると、矢印cで示すように、キャップ側移動ピン13は細幅の溝底面部分(63a)に沿って下側水平カム溝部分62を移動して、その端面54の位置13(4)に到る。
【0068】
ここで、円筒カム11に形成されている間欠歯車25の歯部24は、図12(c)に示すように、カム溝12における第2のカム溝端面54の近傍の角度位置から傾斜カム溝部分61の近傍の角度位置に到る角度範囲に亘って形成されている。換言すると、円筒カム11が時計回りに回転した場合には、そのカム溝12に沿って相対移動するキャップ側移動ピン13がカム溝の第2のカム溝端面54に当たる手前の回転角度位置において、間欠歯車25の歯部24の一端24aが固定した位置に配置されている減速歯車23を通過して、当該減速歯車23との噛み合いが解除されるようになっている。また、円筒カム11が反時計回りに回転した場合には、そのカム溝12に沿って相対移動するワイパ側移動ピン14がカム溝の第1のカム溝端面51に当たる手前の回転角度位置において、間欠歯車25の歯部24の他端24bが減速歯車23を通過して、当該減速歯車23との噛み合いが解除されるようになっている。
【0069】
(動作説明)
次に、主に図14、15および16を参照して本例のヘッドメンテナンス機構1の動作を説明する。図14は初期状態にあるヘッドメンテナンス機構1のヘッドキャップ2をインク吸引位置2Bに移動する場合に動作を示すタイミングチャートであり、図15は初期状態にあるヘッドメンテナンス機構1のヘッドキャップ2をインク空吸引位置2Cに移動する場合の動作を示すタイミングチャートであり、図16は各時点における円筒カム11、キャップ側移動ピン13およびワイパ側移動ピン14の相対位置関係を示す説明図である。
【0070】
まず、ヘッドキャップ2をその退避位置2Aからインク吸引位置2Bに移動する動作を説明する。キャップ側移動ピン13およびワイパ側移動ピン14は、図12に示す初期位置にあり、図16(a)にはこの初期位置の各部分の相対位置関係が示されている。減速歯車23に対して、間欠歯車25の歯部24の一端24bは反時計方向に僅かに外れた位置にある。
【0071】
この状態においてステッピングモータ5を逆転駆動すると(時点t0)、減速歯車機構19の減速歯車23が反時計回りに回転する。この減速歯車23に噛み合っているポンプ歯車16は時計回りAに回転し、摩擦クラッチ機構18によってポンプ歯車16に連結されている円筒カム11も時計回りAに回転する。円筒カム11が回転すると、その間欠歯車25の歯部24も減速歯車23に噛み合い状態に移行し(時点t1)、この後は、ステッピングモータ5の回転力が摩擦クラッチ機構18を経ることなく円筒カム11に伝達される。よって、円筒カム11に作用する負荷が増加しても円筒カム11を確実に回転させることができる。
【0072】
円筒カム11の時計回りの回転によって、カム溝12を相対的に摺動するワイパ側移動ピン14はカム溝12のワイパ移動領域52に沿って摺動して、ワイパ3をその退避位置からワイピング位置に持ち上げる(時点t2からt4の間)。
この間の時点t3においてインクジェットヘッド100をワイパ3の位置を経由して移動させることにより、ワイパブレード3aによってインクノズル面101がワイピングされる。
【0073】
更に円筒カム11が回転すると、ワイパ3は下降して退避位置に戻り(時点t5)、今度はキャップ側移動ピン13がカム溝12の傾斜カム溝部分61に沿って上昇を開始する。これによりヘッドキャップ2がその退避位置2Aから上昇を開始する。キャップ側移動ピン13がカム溝12の上側水平カム溝部分62に到る時点t7よりも僅かに手前の時点t6の前からヘッドキャップ2のキャップ本体31が真上に待機しているインクジェットヘッド100のインクノズル面101をキャッピングした状態になり、この後は、キャップホルダ32のみが上昇して、相対的にキャップ本体31が下方に押し下げられる。この結果、時点t6においてヘッドキャップ2の大気開放弁機構35が閉じ状態に移行し、しかる後に、ヘッドキャップ2はインク吸引位置2Bに到る。この状態が図8および図16(b)に示す状態である。
【0074】
次に、更に円筒カム11が時計回りに回転すると、円筒カム11の間欠歯車25の歯部24の端24aが減速歯車23を通過して、間欠歯車25と減速歯車23の噛み合いが解除される(時点t8)。この後は、円筒カム11は摩擦クラッチ機構18を介してポンプ歯車16と一体回転し、時点t9においてキャップ側移動ピン13がカム溝12の第2のカム溝端面54に位置する。
【0075】
この状態では、円筒カム11のストッパ壁11dが上壁8の突起8bに当たり、当該円筒カム11の回転が阻止される。従って、この後は、摩擦クラッチ機構18に滑りが発生して円筒カム11は回転せずに停止状態に保持され、ポンプ歯車16のみが回転を継続する。図16(c)はこの状態を示してある。ポンプ歯車16がその初期位置からほぼ1回転すると、当該ポンプ歯車16がチューブポンプ4のローラ駆動円盤44に係合し(時点t10)、これ以後は、チューブポンプ4が時計回りに回転駆動される。この結果、図10に示すように一対のローラ45、46がインクチューブ47を押し潰しながら公転して、大気開放弁機構35が閉じ状態でキャッピングされているヘッドキャップ2からインクの吸引動作を行う。この結果、インクジェットヘッド100のインクノズルからインクが吸引されて外部に排出される。
【0076】
インク吸引動作が終了した後に、ステッピングモータ5を正転すると、上記とは逆の動作が行われて、各部分が初期状態に戻る。すなわち、円筒カム11は、ワイパ側移動ピン14がカム溝12の第1のカム溝端面51に位置する時点(時点t0)まで反時計回りに回転する。ワイパ側移動ピン14がカム溝12の第1のカム溝端面51に位置する状態では、円筒カム11のストッパ壁11eが上壁8の突起8bに当たり、当該円筒カム11の回転が阻止される。従って、この後は、摩擦クラッチ機構18に滑りが発生して円筒カム11はその位置に保持される。しかるに、ポンプ歯車16は継続して反時計回りに回転を継続し、このポンプ歯車16によってチューブポンプ4が反時計回りに回転して、図11に示すように一対のローラ45、46が半径方向の内側に退避してインクチューブ47の押し潰し状態が解除されたポンプレリーズ状態が形成される。この状態を図16(d)に示してあり、各部分の相対位置は図16(a)に示す初期状態と同一となる。
【0077】
次に、図15を参照してヘッドキャップ2をインク空吸引位置2Cに移動する場合の動作を説明する。この場合においても図15における時点t9までの動作は同一である。時点t9においてはヘッドキャップ2がインク吸引位置2Bに至り、キャップ側移動ピン13がカム溝12の第2のカム溝端面54に位置する。
【0078】
この後は時点t11においてモータ5を逆方向に一定期間だけ回転駆動する(時点t11から時点t13まで)。この結果、円筒カム11は反時計回りに回転して、図13において矢印bで示した経路に沿ってカム溝12を移動し、時点t13においては下側水平カム溝部分63に到る。ここで、ヘッドキャップ2のキャップホルダ32が下降するので、インクノズル面101に押し付けられているキャップ本体31はキャッピング状態のままで相対的に上方に押し上げられ、時点t13に到る手前の時点t12において、閉じ状態の大気開放弁機構35が開状態に戻る。
【0079】
時点t13においてモータ5を逆転駆動すると、円筒カム11は時計回りに回転し、キャップ側移動ピン13はそのカム溝12の下側水平カム溝部分63に沿って摺動して第2のカム溝端面54に位置する。この時点t14以後は、円筒カム11は停止し、ポンプ歯車16のみが回転する。時点t15以後はポンプ歯車16がチューブポンプ4のローラ駆動円盤44に係合してチューブポンプ4が駆動され、インク吸引動作を開始する。この場合には、ヘッドキャップ2の大気開放弁機構35が開いているので、インクノズルからのインク吸引は行われず、ヘッドキャップ2のインク吸収体33に保持されているインクが吸引されて外部に排出される(すなわち、インク空吸引が行われる。)。
【0080】
(実施例の効果)
以上説明したように、本例のインクジェットプリンタのヘッドメンテナス機構1においては、ステッピングモータ5の回転を、歯車減速機構19、ポンプ歯車16、摩擦クラッチ機構18を介して円筒カム11に伝達している。また、円筒カム11によってヘッドキャップ2およびワイパ3を移動する必要のない動作状態では、円筒カム11のストッパ壁11d、11eを上壁8の突起8bに当てることにより、当該円筒カム11の回転を阻止し、摩擦クラッチ機構18に滑りを発生させ、チューブポンプ駆動用のポンプ歯車16のみを回転できるようにしている。
【0081】
従って、円筒カム11はそのストッパ壁11d、11eよって規定される回転角度範囲だけ時計回りあるいは反時計回りに回転するのみであり、その初期位置あるいは原点位置に常に復帰させることができる。よって、モータの一方向回転によって連続して同一方向に回転する円筒カムを用いてヘッドキャップ、ワイパあるいはインク吸引ポンプを駆動する場合とは異なり、円筒カムの位置検出器を設ける必要がなく、ステッピングモータのステップ数に基づき、各部分の動作制御を行うことが可能である。この結果、廉価で制御性の良い駆動制御を実現できる。
【0082】
また、ステッピングモータのステップ数に基づき、チューブポンプ4によるインク吸引量を制御できる。
【0083】
さらに、ポンプ歯車16を時計回りおよび反時計回りに回転駆動できるので、チューブポンプを、そのローラがインクチューブを押し潰しながら回転するポンピング状態と、ローラがインクチューブから退避したポンプレリーズ状態に切り換えることができる。よって、一方向回転のみによってインク吸引ポンプが駆動されるヘッドメンテナンス機構とは異なり、モータの正逆回転によってポンプ状態を切り換え制御することが可能になる。
【0084】
さらにまた、ポンプ歯車16とチューブポンプ4には約360度の遊びがあるので、ポンプレリーズ状態からキャップおよびワイパ動作のみを実施する場合にはチューブポンプ4は動作しない。よって、不必要なチューブポンプ4の動作、すなわちインクチューブの押し潰し動作を回避できるので、インクチューブの耐久性を維持することができる。また、キャップ状態ではインクチューブが潰れていないので、インクチューブの変形がないという効果が得られる。
【0085】
また、円筒カム11のカム溝12に上側水平カム溝部分61と下側水平カム溝部分62を形成し、円筒カム11を反時計回りに回転させることにより、上側水平カム溝部分61に位置しているキャップ側移動ピン13を案内用カム溝部分64を介して下側水平カム溝部分62に導くようにしている。従って、密閉状態でヘッドキャップ2をキャッピングしてインクノズルからインクを吸引する状態と、大気開放状態でヘッドキャップ2をキャッピングしてヘッドキャップ2のインク吸収体33からインクを吸引してインクノズルからはインクの吸引を行わない状態を、大気開放弁機構を駆動するための駆動機構を別途配置することなく実現できる。
【0086】
これに加えて、本例では、円筒カム11の下側にポンプ歯車16およびチューブポンプ4が同軸状態に配置されているので、これらの設置スペース、特に、平面方向の設置面積を大幅に低減でき、極めて小型のヘッドメンテナンス機構を実現できる。
【0087】
次に、本例では、円筒カム11の回転停止位置を、円筒カム側のストッパ壁11d、11eと、上壁側の突起8bとの係合によって規定している。円筒カムの回転を、キャップ側移動ピン13とカム溝端面54との係合、およびワイパ側移動ピン14とカム溝端面51との係合によって規制することもできるが、この場合には、各ピン13、14にクラッチ力が加わり、キャップ、ワイパが移動して、ヘッド等に対する位置決め不良が発生しやすく、また、ピン13、14の固定部の耐久性にも問題が発生しやすい。本例では、ハウジング7に固定した上壁8に形成した突起8bが円筒カム固定用の力を受けるので、ヘッド等に対するキャップ、ワイパの位置決め不良を回避でき、また、ピン取り付け部分の耐久性が問題になることもない。
【0088】
(その他の実施の形態)
なお、上記の例ではインク吸引ポンプとしてチューブポンプを使用しているが、これ以外のインク吸引ポンプを用いることも可能である。
【0089】
また、上記の例では、ステッピングモータによってヘッドキャップ、ワイパおよびチューブポンプを駆動しているが、例えば、ヘッドキャップおよびインク吸引ポンプのみを駆動する形態のヘッドメンテナンス機構に対しても本発明を同様に適用できる。
【0090】
更に、上記の例では、カム溝を360度以内の角度範囲に亘る実質的に連続した1本のカム溝としてあるが、例えば、ワイパ駆動用のカム溝部分と、ヘッドキャップ駆動用のカム溝部分を不連続な、あるいは分離したカム溝として形成することも可能である。また、カム溝の角度範囲を360度以上の角度とすることも可能である。
【0091】
また、上記の例では間欠歯車を用いて円筒カムに大きな負荷が作用した場合においても滑りなく確実に円筒カムを回転できるようにしているが、円筒カムに作用する負荷が小さい場合などにおいては間欠歯車を省略することも可能である。
【0092】
なお、上記の例において、円筒カム11の回転を阻止するための力が小さい場合などにおいては、円筒カムの回転停止位置を規定するためのストッパ壁11d、11eおよび上壁側の突起8bを省略して、各ピン13、14とカム溝端面54、51との係合によって、円筒カム11の回転停止位置を規定することも可能である。
【0093】
以上説明したように、本発明のインクジェットプリンタのヘッドメンテナンス機構は、単一の駆動源からの回転駆動力をインク吸引ポンプの入力要素であるポンプ歯車から摩擦クラッチ機構を介して円筒カムに伝達し、この円筒カムの有限回転によってヘッドキャップおよび/またはワイパを移動させるようにしている。従って、本発明によれば、回転角度範囲が規定されている円筒カムの回転角度位置を位置検出器を用いて検出することなく、円筒カムを初期位置あるいは原点位置に位置決めできる。よって、廉価で制御が容易な駆動機構を備えたヘッドメンテナンス機構を実現できる。
【0094】
また、インク吸引ポンプ側の動力伝達機構およびヘッドキャップ、ワイパ側の動力伝達機構を別個の位置に配置する必要がないので、小型でコンパクトなヘッドメンテナンス機構を実現できる。
【0095】
さらに、本発明では、駆動源から正逆双方の回転をインク吸引ポンプに伝達できるので、チューブポンプなどを用いる場合には、駆動源からの回転方向を切り換えることによりポンプ状態を切り換え制御することが可能になる。
【0096】
次に、本発明においては、円筒カムに形成したカム溝に、ヘッドキャップを密閉状態でキャッピングした状態、および大気開放状態でキャッピングした状態を形成可能なカム溝部分を形成してあるので、ヘッドキャップを大気開放するための弁機構を駆動するための駆動機構を別途設ける必要がないので、小型でコンパクトなヘッドメンテナンス機構を実現できる。
【0097】
さらに、本発明においては、円筒カムとポンプ歯車とインク吸引ポンプを同軸状態に配列してあるので、特に、平面方向の所要スペースを節約することができ、これによっても、小型でコンパクトなヘッドメンテナンス機構を実現可能である。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明を適用したインクジェットプリンタのヘッドメンテナンス機構の実施例を示す平面図である。
【図2】図1のヘッドメンテナンス機構の分解斜視図である。
【図3】図1のヘッドメンテナス機構をそのハウジングを除いた状態で示す斜視図である。
【図4】図3の矢印IVの方向から見た場合の側面図である。
【図5】図3の矢印Vの側から見た側面図である。
【図6】図1、3のVI−VI線で切断した部分を示す部分断面図である。
【図7】図3のVII−VII線で切断した部分を示す部分断面図であり、ヘッドキャップが退避位置にある状態を示す。
【図8】図3のVII−VII線で切断した部分を示す部分断面図であり、ヘッドキャップがインクノズルからインク吸引を行うインク吸引位置にあるキャッピング状態を示す。
【図9】図3のVII−VII線で切断した部分を示す部分断面図であり、ヘッドキャップがインクノズルからのインク吸引が行われないインク空吸引位置にあるキャッピング状態を示す。
【図10】図1のヘッドメンテナンス機構におけるチューブポンプの動作を示す説明図であり、ポンピング状態を示す。
【図11】図1のヘッドメンテナンス機構におけるチューブポンプの動作を示す説明図であり、ポンプレリーズ状態を示す。
【図12】(a)は円筒カムのカム溝を平面上に展開した状態で示す平面展開図であり、(b)は各部分の溝深さを示す説明図であり、(c)は間欠歯車および減速歯車の位置を示す説明図である。
【図13】カム溝のキャップ移動領域に沿って移動するキャップ側移動ピンの移動経路を示す説明図である。
【図14】初期状態にあるヘッドメンテナンス機構のヘッドキャップをインク吸引位置に移動する場合の動作を示すタイミングチャートである。
【図15】初期状態にあるヘッドメンテナンス機構のヘッドキャップをインク空吸引位置に移動する場合の動作を示すタイミングチャートである。
【図16】各時点における円筒カム、キャップ側移動ピンおよびワイパ側移動ピンの相対位置関係を示す説明図である。
【符号の説明】
【0099】
1…インクジェットプリンタのヘッドメンテナス機構、2…ヘッドキャップ、3…ワイパ、4…チューブポンプ、5…ステッピングモータ、6…動力伝達機構、7…ハウジング、8…上壁、11…円筒カム、12…カム溝、13…キャップ側移動ピン、14…ワイパ側移動ピン、17…中心軸、18…摩擦クラッチ機構、19…減速歯車列、20…コイルばね、21…モータ歯車、22…複合減速歯車、23…減速歯車(駆動歯車)、31…キャップ本体、32…キャップホルダ、33…インク吸収体、34…インク取り出し口、35…大気開放弁機構、51…第1のカム溝端面、52…ワイパ移動領域、53…キャップ移動領域、54…第2のカム端面、55…繋ぎ領域、61…傾斜カム溝部分、62…上側水平カム溝部分(第1のカム溝部分)、63…下側水平カム溝部分(第2のカム溝部分)、64…案内用カム溝部分。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットヘッドのインクノズル面をキャッピングしたキャッピング位置および当該位置から退避した退避位置を往復移動可能なヘッドキャップと、
前記ヘッドキャップからインクを吸引するためのインク吸引ポンプと、
前記ヘッドキャップおよび前記インク吸引ポンプを駆動するための共通の回転駆動源と、
回転運動を前記ヘッドキャップの往復運動に変換するための円筒カムと、
前記回転駆動源から回転駆動力が伝達される前記インク吸引ポンプの駆動力入力要素であるポンプ歯車と、
前記ポンプ歯車の回転を前記円筒カムに伝達する摩擦クラッチ機構とを有しており、
前記円筒カムは、時計回りの回転停止位置および反時計回りの回転停止位置が予め設定されている有限回転型のものであり、当該円筒カムは、各回転停止位置に至ると前記摩擦クラッチ機構の滑りによって各回転停止位置に停止することを特徴とするインクジェットプリンタのヘッドメンテナンス機構。
【請求項2】
請求項1において、
前記円筒カムの外周面に形成された円周方向に所定の角度範囲に亘って延びるカム溝と、
このカム溝に沿って摺動可能なヘッドキャップ駆動用のキャップ側移動ピンとを有していることを特徴とするインクジェットプリンタのヘッドメンテナンス機構。
【請求項3】
請求項1または2において、
予め定まった位置に配置されている固定側係合部と、前記円筒カムに形成されている第1および第2の回転側係合部とを有しており、
前記円筒カムの時計回りの回転停止位置は、前記第1の回転側係合部が前記固定側係合部に当たることにより規定され、
前記円筒カムの反時計回りの回転停止位置は、前記第2の回転側係合部が前記固定側係合部に当たることにより規定されることを特徴とするインクジェットプリンタのヘッドメンテナンス機構。
【請求項4】
請求項2において、
前記円筒カムの時計回りの回転停止位置は、前記カム溝における円周方向の一方のカム溝端面に前記キャップ側移動ピンが当たることにより規定され、
前記円筒カムの反時計回りの回転停止位置は、前記カム溝における円周方向の他方のカム溝端面に前記キャップ側移動ピンが当たることにより規定されることを特徴とするインクジェットプリンタのヘッドメンテナンス機構。
【請求項5】
請求項3または4において、
前記ポンプ歯車および前記円筒カムは同軸状態に配列されていることを特徴とするインクジェットプリンタのヘッドメンテナンス機構。
【請求項6】
請求項5において、
前記摩擦クラッチ機構は、前記ポンプ歯車の円形端面と、前記円筒カムの円形端面と、これら円形端面を弾性力によって常に押し付けているばね部材とを備えていることを特徴とするインクジェットプリンタのヘッドメンテナス機構。
【請求項7】
請求項5において、
前記インク吸引ポンプは、前記ポンプ歯車が時計回りおよび反時計回りのいずれか一方に回転した場合にのみポンピング動作を行うチューブポンプであることを特徴とするインクジェットプリンタのヘッドメンテナンス機構。
【請求項8】
請求項6において、
前記ヘッドキャップは、
前記インクノズル面に対峙する側が開口しているキャップ本体と、
このキャップ本体を保持しているキャップホルダと、
前記インクノズル面にキャッピングされた状態の前記キャップ本体内部を大気開放するための大気開放弁と、
前記キャップ本体を前記キャップホルダから突出する方向に付勢している付勢部材とを備えており、
この付勢部材の付勢力に逆らって前記キャップ本体を所定量だけ押し込むと、前記大気開放弁が閉状態に切り換わることを特徴とするインクジェットプリンタのヘッドメンテナンス機構。
【請求項9】
請求項8において、
前記カム溝は、
前記キャップホルダを前記インクノズルに最も接近したインク吸引位置に押し出して当該位置に保持する第1のカム溝部分と、
前記キャップホルダを前記インク吸引位置から後退したインク空吸引位置に保持する第2のカム溝部分とを備えており、
前記インク吸引位置では前記キャップ本体が、前記大気開放弁が閉状態で前記インクノズル面にキャッピングされ、
前記インク空吸引位置では前記キャップ本体が、前記大気開放弁が開状態で前記インクノズル面にキャッピングされることを特徴とするインクジェットプリンタのヘッドメンテナンス機構。
【請求項10】
請求項9において、
前記第1のカム溝部分に位置している前記キャップ側移動ピンを前記第2のカム溝部分に案内する案内用カム溝部分を備えており、
前記第1のカム溝部分のカム溝端面に位置している前記キャップ側移動ピンが、当該カム溝端面から離れる方向に移動すると、当該キャップ側移動ピンは前記案内用カム溝部分に沿って前記第2のカム溝部分に案内されることを特徴とするインクジェットプリンタのヘッドメンテナンス機構。
【請求項11】
請求項10において、
前記第2のカム溝部分は、その一端が前記第2のカム溝端面によって規定されており、他端が前記第1の溝部分に繋がっていることを特徴とするインクジェットプリンタのヘッドメンテナンス機構。
【請求項12】
請求項10において、
前記円筒カムに形成されている前記カム溝は360度以内の角度範囲に亘って形成された連続したカム溝であることを特徴とするインクジェットプリンタのヘッドメンテナンス機構。
【請求項13】
請求項1ないし12のうちのいずれかの項において、
前記円筒カムと一体回転するように当該円筒カムに同軸状態に配置された間欠歯車を有しており、
この間欠歯車には、前記円筒カムの有限回転角度範囲内の所定の回転角度範囲において前記回転駆動源の側から回転力が伝達されることを特徴とするインクジェットプリンタのヘッドメンテナンス機構。
【請求項14】
インクジェットヘッドのインクノズル面をキャッピングするためのヘッドキャップと、
前記インクノズル面をワイピングするためのワイパと、
前記ヘッドキャップからインクを吸引するためのインク吸引ポンプと、
前記ヘッドキャップ、前記ワイパおよび前記インク吸引ポンプを駆動するための共通の回転駆動源と、
この回転駆動源の回転駆動力を前記ヘッドキャップ、前記ワイパおよび前記インク吸引ポンプに伝達する動力伝達機構とを有しており、
この動力伝達機構は、
円筒カムと、
この円筒カムのカム溝に沿って摺動可能であり当該円筒カムの回転に伴って移動するヘッドキャップ移動用のキャップ側移動ピンと、
前記カム溝に沿って摺動可能であり前記円筒カムの回転に伴って移動するワイパ移動用のワイパ側移動ピンと、
前記円筒カムに同軸状態で配置されている前記インク吸引ポンプの駆動力入力要素であるポンプ歯車と、
前記円筒カムが前記ポンプ歯車と一体回転するように所定の摩擦力でこれら円筒カムおよびポンプ歯車を係合させている摩擦クラッチ機構と、
前記ポンプ歯車に前記共通駆動源からの回転力を伝達する駆動歯車と、
前記円筒カムの時計回りの回転停止位置および反時計回りの回転停止位置を規定している回転停止位置規定部とを有し、
前記円筒カムのカム溝は、
前記円筒カムが第2の回転方向に回転すると前記ワイパ側移動ピンが当接あるいは当接直前の位置に到る第1のカム溝端面と、この第1のカム溝端面に連続して前記ワイパ側移動ピンを移動させるワイパ移動領域と、前記キャップ側移動ピンを移動させるキャップ移動領域と、このキャップ移動領域の端に形成され、前記円筒カムが第1の回転方向に回転すると前記キャップ側移動ピンが当接あるいは当接直前の位置に到る第2の溝端面を備えていることを特徴とするインクジェットプリンタのヘッドメンテナンス機構。
【請求項15】
請求項14において、
前記ヘッドキャップは、
前記インクノズル面に対峙する側が開口しているキャップ本体と、
このキャップ本体を保持しているキャップホルダと、
前記インクノズル面にキャッピングされた状態の前記キャップ本体内部を大気開放するための大気開放弁と、
前記キャップ本体を前記キャップホルダから突出する方向に付勢している付勢部材とを備えており、
この付勢部材の付勢力に逆らって前記キャップ本体を所定量だけ押し込むと、前記大気開放弁が閉状態に切り換わることを特徴とするインクジェットプリンタのヘッドメンテナンス機構。
【請求項16】
請求項15において、
前記カム溝の前記キャップ移動領域は、
前記キャップホルダを前記インクノズルに最も接近したインク吸引位置に押し出した位置に保持する第1のカム溝部分と、
前記キャップホルダを前記インク吸引位置から後退したインク空吸引位置に保持する第2のカム溝部分とを備えており、
前記インク吸引位置では前記キャップ本体が、前記大気開放弁が閉状態で前記インクノズル面にキャッピングされ、
前記インク空吸引位置では前記キャップ本体が、前記大気開放弁が開状態で前記インクノズル面にキャッピングされることを特徴とするインクジェットプリンタのヘッドメンテナンス機構。
【請求項17】
請求項16において、
前記第1のカム溝部分の一端は前記第2のカム溝端面によって規定されており、
前記カム溝は更に、前記第2のカム溝端面の側に前記キャップ側移動ピンが位置している状態から前記円筒カムが前記第2の回転方向に回転すると、前記キャップ側移動ピンを当該第2のカム溝部分に案内する案内用カム溝部分を備えていることを特徴とするインクジェットプリンタのヘッドメンテナンス機構。
【請求項18】
請求項17において、
前記第2のカム溝部分は、その一端が前記第2のカム溝端面によって規定されており、他端が前記第1の溝部分に繋がっていることを特徴とするインクジェットプリンタのヘッドメンテナンス機構。
【請求項19】
請求項18において、
前記円筒カムに形成されている前記カム溝は360度以内の角度範囲に亘って形成された連続したカム溝であることを特徴とするインクジェットプリンタのヘッドメンテナンス機構。
【請求項20】
請求項14ないし18のうちのいずれかの項において、
前記円筒カムと一体回転するように当該円筒カムに同軸状態に配置された間欠歯車を有しており、
前記ワイパ側移動ピンが前記第1のカム溝端面に当接あるいは当接直前の位置に到る前記円筒カムの回転角度位置から前記キャップ側移動ピンが前記第2のカム溝端面に当接あるいは当接直前の位置に到る前記円筒カムの回転角度位置までの回転角度範囲を越えない所定の角度範囲に亘ってのみ、前記間欠歯車は前記駆動歯車に噛み合い状態とされることを特徴とするインクジェットプリンタのヘッドメンテナンス機構。
【請求項21】
請求項14ないし20のうちのいずれかの項において、
前記インク吸引ポンプは、前記ポンプ歯車が前記第1の回転方向に回転する時のみポンピング動作を行うものであることを特徴とするインクジェットヘッドのヘッドメンテナンス機構。
【請求項22】
請求項21において、
前記インク吸引ポンプは前記円筒カムに対して同軸状に配置されたチューブポンプであることを特徴とするインクジェットプリンタのヘッドメンテナンス機構。
【請求項23】
請求項14ないし20のうちのいずれかの項において、
前記キャップ側移動ピンを前記カム溝の底面に向けて付勢しているばね部材を有していることを特徴とするインクジェットプリンタのヘッドメンテナンス機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−149734(P2008−149734A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−67197(P2008−67197)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【分割の表示】特願2001−359921(P2001−359921)の分割
【原出願日】平成13年11月26日(2001.11.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】