説明

インクジェットプリンタ及び印刷方法

印刷ヘッド(26)の印刷媒体Fの送り方向Xと直交する方向の位置を固定した状態で、印刷媒体Fを印刷ヘッド(26)に対して相対移動させながら、所定のインクノズル(26d)を用いて印刷ヘッド(26)の最大印刷幅Wより狭い幅Wの印刷領域にデータを所定回数印刷する。その後、印刷媒体Fを所定ピッチずつ移動させながら所定回数の印刷を実行する度に、印刷ヘッド(26)を印刷媒体Fの送り方向Xと直交する方向に移動させ、再び印刷ヘッド(26)を固定した状態で移動前に使用していたインクノズル(26d)とは少なくとも一部が異なるインクノズル(26d)を用いて前記印刷領域に印刷を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタ、特にライン型インクジェットプリンタと、その印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタは、印刷中に印刷ヘッドを行方向に駆動するシリアル型と、印刷ヘッドを移動させることなく印刷するライン型とに大別される。
【0003】
シリアル型のインクジェットプリンタは一般的に民生用に用いられる。ライン型のインクジェットプリンタは、例えば、包装フィルムや段ボール箱等の印刷媒体の特定の印刷対象領域に、製造年月日(賞味期限)、バーコード、ブロックコード等を印刷する産業用に用いられている。シリアル型のインクジェットプリンタは、印刷媒体の送り方向に並ぶ多数のインクノズルを備え、印刷媒体の送り方向と直交する方向(行方向)に印刷ヘッドを移動させながら印刷を実行する。
【0004】
シリアル型インクジェットプリンタは、1行分の印刷が終了すると、印刷媒体を1行分搬送する。ライン型のインクジェットプリンタは、印刷媒体の移動方向と直交する方向に並ぶ多数のインクノズルを備え、印刷媒体を搬送しながら印刷を実行する。
【0005】
印刷媒体上の印刷対象領域の幅はライン型印刷ヘッドの印刷可能幅(最大印刷幅)に比して狭いのが一般的である。このため、通常の使用状態では印刷可能幅に対応する全てのインクノズルが同時に使用されることはなく、印刷対象領域の外に位置するノズルは殆ど使用されない。特に、同一の印刷を繰り返すと、一部のインクノズルだけが繰り返して使用され、特定のインクノズルはほとんど使用されない事態が発生する場合がある。使用されないインクノズルはインクの吐出不良を起こし易い。このため、インクノズルの頻繁なクリーニングが必要となる。さらに、頻繁に使用されるインクノズルとあまり使用されないインクノズルとの間に、寿命の差が発生し、印刷ヘッド全体の寿命が低下する。
【0006】
特許文献1は、低密度で配置されたインクノズルを用いて高密度の印刷が可能なインクジェットプリンタを開示する。このインクジェットプリンタは、印刷ヘッドを、インクノズルの配置方向(行方向)にインクノズルの配置ピッチより小さい微小ピッチだけ移動可能な構成を有する。このインクジェットプリンタは、この微小ピッチだけ印刷ヘッドを行方向に移動させながら印刷することで、見かけ上の高密度印刷を可能にする。
【0007】
特許文献1に開示された技術は、低密度配置のインクノズルを用いて高密度で印刷を行うことができる。しかし、この技術は、頻繁に使用されるインクノズルとほとんど使用されないインクノズルと間に寿命差が生ずる問題や、寿命差が生ずることによって、印刷ヘッド全体の寿命が低下するという問題を解決することはできない。
【特許文献1】特開平6-71947号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ライン型のインクジェットプリンタにおいて、使用されるインクノズルと使用されないインクノズルとの寿命差の問題を軽減し、印刷ヘッド全体の寿命を向上させることを目的とする。
また、本発明は、使用されないインクノズルの目詰まり防止も目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、この発明の第1の観点に係るインクジェットプリンタは、
印刷媒体の送り方向と交差する方向に配列された複数のインクノズルを備える印刷ヘッドと、
この印刷ヘッドを前記印刷媒体の送り方向と交差する方向に駆動する印刷ヘッド制御回路と、
前記印刷媒体の前記印刷ヘッドに対する位置(相対位置)を検出する位置検出回路と、
前記印刷媒体を該印刷ヘッドに対して相対移動させながら、前記印刷ヘッドの所定のインクノズルを用いて前記印刷ヘッドの最大印刷幅より小さい幅の印刷領域に印刷を実行し、前記位置検出回路の検出する位置に基づき、印刷媒体を移動させながら所定回数の印刷を実行する度に、前記印刷ヘッド制御回路を介して前記印刷ヘッドを前記印刷媒体の送り方向と交差する方向に移動させ、再び前記所定のインクノズルとは少なくとも一部が異なる別のインクノズルを用いて前記印刷領域に印刷を実行する印刷制御回路と、
を有することを特徴とする。
【0010】
上記構成のインクジェットプリンタにおいて、前記印刷制御回路は、前記印刷ヘッドの前記印刷媒体の送り方向と交差する方向の位置を固定した状態で、印刷を実行し、所定回数の印刷を実行する度に、前記印刷ヘッド制御回路を介して前記印刷ヘッドを前記印刷媒体の送り方向と交差する方向に移動させ、再び前記印刷ヘッドを固定した状態で印刷を実行するように構成してもよい。
【0011】
上記構成のインクジェットプリンタにおいて、前記印刷制御回路は、前記印刷ヘッドを、前記印刷ヘッド制御回路を介して、前記印刷領域への印刷を最初に実行する初期位置より、前記印刷領域への印刷を繰り返し実行しつつ前記印刷媒体の送り方向と直交する方向に沿って一方の移動端に向かって移動させる制御を行うとともに、前記一方の移動端より、前記印刷領域への同一の印刷を繰り返し実行しつつ前記印刷媒体の送り方向と直交する方向に沿って前記初期位置まで移動させる制御を行う、ように構成してもよい。
【0012】
上記構成のインクジェットプリンタにおいて、前記印刷ヘッド制御回路は、印刷対象データのドットパターンを展開するバッファメモリを備え、前記印刷ヘッド制御回路は、前記印刷ヘッドの移動に合わせて、印刷対象ドットパターンデータの展開位置をシフトする、ように構成してもよい。
【0013】
上記構成のインクジェットプリンタにおいて、前記位置検出回路は、前記印刷媒体に送り方向に所定間隔で付与されているマークと、該マークを検知するセンサと、印刷媒体の送り量を検出するエンコーダと、を含んでもよい。このエンコーダは、印刷媒体の表面と接触して回転する従動ローラを備え、この従動ローラの回転角度を検出する、ように構成することが望ましい。
【0014】
上記目的を達成するため、この発明の第2の観点に係るインクジェットプリンタを用いた印刷方法は、
複数のインクノズルを備える印刷ヘッドを用いて印刷を行う印刷方法であって、
印刷媒体を印刷ヘッドに対して相対移動させながら、所定のインクノズルヘッドを用いて印刷ヘッドの最大印刷幅より小さい幅の印刷対象領域に印刷を実行する印刷ステップと、
所定回数の印刷を実行したことを検出し、前記印刷ヘッドを印刷媒体の送り方向と交差する方向に移動させる移動ステップと、を備え、
前記印刷ステップは、印刷ヘッドの移動後、移動前の印刷に使用していたインクノズルとは少なくとも一部が異なるインクノズルを用いて前記印刷媒体の印刷対象領域に印刷を実行する、
ことを特徴とする。
【0015】
上記構成の印刷方法において、例えば、前記印刷ステップは、前記印刷ヘッドの印刷媒体の送り方向と直交する方向の位置を固定した状態で、より印刷媒体をヘッドキャリアに対して所定ピッチずつ相対移動させながら、所定のインクノズルを用いて印刷ヘッドの最大印刷幅より小さい幅の特定印刷位置に印刷を実行するステップから構成され、前記移動ステップは、前記ヘッドキャリア制御回路を介してヘッドキャリアを印刷媒体の送り方向と直交する方向に移動させるステップから構成される。
【0016】
上記構成の印刷方法において、例えば、前記移動ステップは、所定回数の印刷を実行したことを検出する度に、印刷ヘッドを移動し、前記印刷ステップは、前記移動ステップにより印刷ヘッドが移動される度に、移動前に印刷に使用したインクノズルとは少なくとも一部が異なるインクノズルを用いて印刷を実行する。
【0017】
上記構成の印刷方法において、例えば、前記印刷媒体の相対位置の検出は、印刷媒体に送り方向に所定間隔で付したレジマークを検出するステップと、印刷媒体の送り量を検出するステップとを含む。
【0018】
上記目的を達成するため、この発明の第3の観点に係るインクジェットプリンタは、
印刷媒体の送り方向と交差する方向に配列された複数のインクノズルを備える印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドを前記印刷媒体の送り方向と直交する方向に駆動するヘッド制御手段と、
前記印刷媒体の前記印刷ヘッドに対する位置を検出する位置検出手段と、
前記印刷媒体を該印刷ヘッドに対して相対移動させながら、前記印刷ヘッドの所定のインクノズルを用いて前記印刷ヘッドの最大印刷幅より小さい幅の印刷領域に印刷を実行し、前記位置検出手段の検出する位置に基づき、印刷媒体を移動させながら所定回数の印刷を実行する度に、前記印刷ヘッド制御手段を介して前記印刷ヘッドを前記印刷媒体の送り方向と直交する方向に移動させ、再び前記所定のインクノズルとは少なくとも一部が異なる別のインクノズルを用いて前記印刷領域に印刷を実行する印刷制御手段と、
を有することを特徴とする。
【0019】
上記目的を達成するため、この発明の第4の観点に係るコンピュータプログラムは、
コンピュータに、
複数のインクノズルを備える印刷ヘッドを用いて印刷を行う印刷方法であって、
印刷媒体を印刷ヘッドに対して相対移動させながら、印刷ヘッドが備えている複数のインクノズルのうちの所定のインクノズルヘッドを用いて印刷ヘッドの最大印刷幅より小幅の印刷対象領域に印刷を実行させる印刷ステップと、
所定回数の印刷を実行したことを検出し、前記印刷ヘッドを印刷媒体の送り方向と交差する方向に移動させる移動ステップと、
移動後の印刷ヘッドの前記所定のインクノズルとは少なくとも一部が異なるインクノズルを用いて前記印刷媒体の印刷対象領域に印刷を実行させる再印刷ステップと、
を実行させる。
このコンピュータプログラムは、記録媒体に格納されて流通され、或いは、搬送波に重畳されて伝送される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ライン型インクジェットプリンタにおいて、印刷ヘッドのインクノズルをより均等に使用することができるので、インクノズルの吐出不良を抑えることができる。また、印刷ヘッド全体の寿命を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のインクジェットプリンタの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1のインクジェットプリンタに用いる印刷ヘッド単体のノズル面側から見た斜視図である。
【図3】図1のインクジェットプリンタの制御系を示すブロック図である。
【図4】図4(A)〜図4(C)は、印刷対象領域とインクノズルとの位置関係及びインクノズルの位置に応じてラインバッファメモリにドットパターンデータを展開する手法を説明するための図である。より具体的には、図4(A)は、印刷ヘッドがホームポジションにある場合を説明するための図である。図4(B)は、印刷ヘッドがホームポジションから3ドットだけ図面右方向に移動した状態を説明するための図である。図4(C)は、印刷ヘッドがホームポジションから3ドットだけ図面右方向に移動した状態を説明するための図である。
【図5】図5(A)〜図5(C)は、印刷ヘッドの位置と印刷対象領域と印刷された文字列との位置関係を示す平面図であるである。より具体的には、図5(A)は、印刷ヘッドがホームポジションにある場合を説明するための図である。図5(B)は、印刷ヘッドがホームポジションから図面右方向に移動した状態にある場合を説明するための図である。図5(C)は、印刷ヘッドがホームポジションから図面左方向に移動した状態にある場合を説明するための図である。
【図6A】印刷ヘッドの移動パターン例を示す図であり、印刷ヘッドが移動可能範囲の一方の端に達した後に初期位置へ復帰する際も所定量ずつ移動しながら文字列を印刷する移動パターンの例を示す図である。
【図6B】印刷ヘッドの移動パターン例を示す図であり、図6Aに示す場合より、1回の移動量SAが大きい場合の移動パターンの例を示す図である。
【図6C】印刷ヘッドの移動パターン例を示す図であり、図6Aに示す場合より、1回の移動量SAが小さい場合の移動パターンの例を示す図である。
【図6D】印刷ヘッドの移動パターン例を示す図であり、印刷ヘッドが移動可能範囲の一方の端に達した後に初期位置へ一気に復帰する移動パターンの例を示す図である。
【図6E】印刷ヘッドの移動パターン例を示す図であり、印刷ヘッドが移動可能範囲の一方の端に達したとき、文字列の印刷を複数回実行する間、印刷ヘッドが同一位置に位置している移動パターンの例を示す。
【図7】印刷ヘッドを印刷媒体送の搬送方向と直交する方向に移動しながら、印刷を行う動作の一例を説明するためのフローチャートである。
【図8】印刷ヘッドをずらす(移動する)処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0022】
F 包装フィルム
M レジマーク
SP 特定印刷
10 インクジェットプリンタ
21 機枠
22 印刷部
23 メンテナンス部
24 ガイドレール
25 ヘッドキャリア
26 印刷ヘッド
26a 筐体
26b ヘッド本体
26c ノズル面
26d インクノズル
27 プラテン
28 ガイドローラ
29 ワイパー部
30 吸引部
31 センサ
40 従動ローラ
101 供給ロール
102 巻取りロール
103 印刷媒体送り装置
104 ボールねじ駆動機構
105 エンコーダ
107 ヘッドキャリア駆動回路
108 印刷ヘッド制御回路
110 CPU(中央処理装置)
111 ヘッドキャリア制御回路
112 印刷媒体送り制御回路
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施例に係るインクジェットプリンタ10を説明する。このインクジェットプリンタ10は、包装材料から構成される印刷媒体の一包装単位毎に、賞味期限を印刷するためのものである。
【0024】
図1に示すように、インクジェットプリンタ10を含む包装設備は、供給ロール101から供給される包装フィルム(印刷媒体)Fに一包装単位毎に例えば賞味期限を印刷し、その包装フィルムで商品を包装する。インクジェットプリンタ10は、供給ロール101から供給された包装フィルムFに賞味期限を印刷する。
【0025】
巻取りロール102は、賞味期限が印刷された包装フィルムFを巻き取る。包装フィルムFの幅方向の一側には、一定間隔で(一包装単位毎、例えば300mm毎に)レジマークMが予め印刷されている。巻取りロール102は、印刷媒体送り装置103により回転駆動される。回転媒体送り装置103の駆動によって巻取りロール102が駆動されると、包装フィルムFが送られる(搬送される)。
【0026】
センサ31は、例えば、光センサ等から構成され、包装フィルムFの送りに伴ってレジマークMを検出する。包装フィルムFの駆動方向(送り方向)をX方向とする。
【0027】
インクジェットプリンタ10の機枠21は、X方向と平面的に見て直交するY方向に延びている。機枠21には、印刷部22と右にメンテナンス部23とが設けられている。ガイドレール24が、印刷部22とメンテナンス部23に渡ってY方向に延びて、印刷部22とメンテナンス部23に固定されている。ガイドレール24には、ヘッドキャリア25がY方向に移動可能に支持されている。また、ガイドレール24内には、ヘッドキャリア25をY方向に移動するためのボールねじから構成された送りねじ(図示せず)が配置されている。この送りねじがボールねじ駆動機構104によって正回転されると、ヘッドキャリア25がY方向の正方向に移動し、逆回転されると、ヘッドキャリア25がY方向の負方向に移動する。
【0028】
ボールねじ駆動機構104は、送りねじを正回転又は逆回転させるモータ、例えば、パルスモータを備える。ボールねじ駆動機構104は、ヘッドキャリア駆動回路107(図3)により駆動されるヘッドキャリア駆動機構の一例である。ヘッドキャリア25のY方向の位置は、ボールねじ駆動機構104のパルスモータの回転角を制御することにより制御される。パルスモータの回転角は、オープン制御によって制御してもよく、或いは、送りねじの回転位置をエンコーダで検出し、検出した回転位置に基づいてクローズド制御によって制御してもよい。
【0029】
ヘッドキャリア25には、印刷ヘッド26が着脱可能に搭載されている。印刷ヘッド26はインクジェットプリンタヘッドから構成される。このインクジェットプリンタヘッドは、略直方体状の筐体26aと該筐体26a内に収容されたヘッド本体26bとインクタンク(図示せず)とを備える。ヘッド本体26bは、図2に単体形状を示すように、その下面にY方向に長いノズル面26cを有する。このノズル面26cに、長手方向(Y方向)に整列させて多数のインクノズル26dが同一ピッチで形成されている。インクノズル26dは、図2ではY方向に一列に配置されているが、ドット密度を高めるために千鳥状等、Y方向に複数列に配列することも可能である。
【0030】
ヘッドキャリア25及びボールねじ駆動機構104によるヘッドキャリア駆動機構(ヘッドキャリア駆動回路107(図3)により駆動される)は、ヘッドキャリア25(印刷ヘッド26)をインクノズル26dの配列ピッチと同等以上の分解能で、Y方向に駆動することができる。
【0031】
機枠21の印刷部22には、ガイドレール24と平行にプラテン27が支持されている。プラテン27は、ガイドレール24に沿って移動する印刷ヘッド26の全移動範囲、すなわち、包装フィルムFの全幅に対応する長さを有する。プラテン27は、印刷ヘッド26の位置に拘わらず、印刷ヘッド26との間に印刷包装フィルムFを挟み、包装フィルムFを平坦に保持し、印刷ヘッド26による包装フィルムFへの印刷を可能とする。
【0032】
印刷部22には、複数のガイドローラ28が支持されている。ガイドローラ28は、供給ロール101から出た包装フィルムFをプラテン27と印刷ヘッド26の間に導き、また、印刷が終了した包装フィルムFを巻取りロール102に向けて排出する。
【0033】
機枠21には、エンコーダ105が固定されている。エンコーダ105は、プラテン27との間に包装フィルムFを挟む(該フィルム表面と接触する)従動ローラ40を有する。従動ローラ40は、包装フィルムFの送り(搬送)に従って回転し、その回転量(つまり包装フィルムFの移動量)がエンコーダ105によって検出される。包装フィルムFの移動量は、巻取ロール102の回転量を検出すること等によっても検出可能である。しかし、外付けタイプのエンコーダ105によれば、既存の設備に改変を加えることなく容易に移動量を検出できる。
【0034】
メンテナンス部23には、ワイパー部29と吸引部30とが配置されている。ワイパー部29は、印刷ヘッド26のノズル面26cに付着したインクを拭き取る。吸引部30は、印刷休止時にノズル面26cを真空雰囲気下に置いて、ノズル面26cからの異物や余分なインクを吸引して除去する。
【0035】
次に、前記機械的構成を有する包装装置の回路構成の主要部を説明する。
図3に示すように、ライン型インクジェットプリンタ10は、前述のエンコーダ105、ヘッドキャリア駆動回路107、印刷媒体送り制御回路112に加えて、印刷ヘッド制御回路108と記憶回路109と中央処理装置(CPU)110とを備える。
印刷ヘッド制御回路108は、内部に、プリントバッファ(ドットパターンメモリ)や印刷ヘッド26のインクノズルのインクの吐出の制御を実行するドライバ回路を備える。印刷ヘッド制御回路108は、プリントバッファ上に展開されたドットパターンデータに従って、印刷ヘッド26の多数のインクノズル26dのどのノズルを使って印刷を実行するかを制御する。
【0036】
記憶回路109は、例えば、ROM、RAM等の半導体記憶回路から構成され、印刷情報を予め記憶し、CPU110に供給する。印刷情報は、印刷すべき文字列(テキスト、記号、数字、等、絵文字など)を特定する文字情報と文字列の位置を特定する印刷位置情報とを含む。印刷位置情報は、例えば、包装フィルムFの幅方向及び長さ方向のどの位置に文字列を印刷するかを特定する情報である。なお、この例では、印刷情報を、手入力その他によって記憶回路109に予め格納することとするが、同様に、CPU110の作業領域となるRAMに手入力や通信・記録媒体からの読み出しなどにより入力することも可能である。
【0037】
なお、記憶回路109は、印刷対象の各文字情報をドットパターンの形式で記憶してもよく、或いは、コード情報の形式で記憶してもよい。CPU110は、文字情報に基づいて、印刷対象のドットラインのドットパターン(ドットの印刷・非印刷)を定義する情報を生成し、印刷ヘッド制御回路108に供給する。例えば、記憶回路109にドットパターン形式で文字情報が格納されている場合には、CPU110は、印刷対象のドットパターンを記憶回路109から読み出し、ドットライン単位で印刷ヘッド制御回路108に提供する。また、例えば、記憶回路109にコード情報の形式で文字情報が格納されている場合には、CPU110は、印刷対象のコード情報とその属性情報(制御情報)とを記憶回路109から読み出し、記憶回路109内に用意されているキャラクタジェネレータなどを用いて、印刷対象文字列のドットパターンをワークメモリ上に展開する。CPU110は、展開したドットパターンを、ドットライン単位で読み出して、印刷ヘッド制御回路108に供給する。
【0038】
また、CPU110は、印刷位置情報に基づいて、ヘッドキャリア制御回路111及びボールねじ駆動機構104を介してヘッドキャリア25を包装フィルムFの幅方向の特定位置に移動させる。
【0039】
ライン型のインクジェットプリンタは、印刷ヘッド26を固定し、この印刷ヘッド26に対して包装フィルムFを所定ピッチずつ送りながら、印刷ヘッド26による最大印刷幅より小幅の特定印刷位置に、印刷情報によって定まる所定のインクノズルを用いて印刷を実行する。CPU110には、センサ31から包装フィルムFのレジマークMを検出したことを示す検出信号が与えられる。また、CPU110には、エンコーダ105から、包装フィルムFの送り量に対応する信号が供給される。例えば、包装フィルムFが一定量搬送される度にパルス信号が供給される。
【0040】
CPU110は、センサ31から検出信号及びエンコーダ105からの移動量を示す信号に基づいて、センサ31がレジマークMを検出してからの包装フィルムFの送り量を求める。CPU110は、求めた移動量と記憶回路109から読み出した印刷位置情報(包装フィルムFの印刷ヘッド26に対する相対位置情報)とに基づいて、印刷媒体送り制御回路112、印刷媒体送り装置103を介して巻取りロール102を間欠的にまたは連続的に駆動する。具体的には、CPU110は、例えば、センサ31が一つのレジマークMを検出した後、所定量だけ包装フィルムFが送られたときに印刷動作を1回実行する(賞味期限の情報を1回印刷する)。
【0041】
センサ31とエンコーダ105は、包装フィルムFのヘッドキャリア25(印刷ヘッド26)に対する送り位置(送り量)を検出する相対位置検知手段を構成している。なお、図3において、CPU110と印刷媒体送り制御回路112を破線で接続しているのは、本インクジェットプリンタ10は既存の包装設備に適用可能であることを示している。
【0042】
CPU110は、さらに、同一の内容を繰り返し印刷するとき、印刷ヘッド26の特定のインクノズル26dだけが使い続けられ、一部のインクノズル26dが殆ど使用されないという事態が発生することを防止するために、定期的にヘッドキャリア25をY方向に移動させる。より詳細には、CPU110は、さらに、同一の内容を繰り返し印刷するとき、印刷ヘッド26の特定のインクノズル26dだけが使い続けられ、一部のインクノズル26dが殆ど使用されないという事態が発生することを防止するために、定期的にヘッドキャリア25をY方向に移動させる。
【0043】
より詳細には、CPU110は、同一の内容を繰り返し印刷するとき、印刷回数を計数する。そして、CPU110は、所定回数(例えば、1〜5回)の印刷を実行する度に、ヘッドキャリア制御回路111に指示して、ヘッドキャリア25を所定のずらし量SAだけY方向に移動させ、移動後の位置にヘッドキャリア25(印刷ヘッド26)を固定させる。さらに、CPU110は、印刷ヘッド制御回路108に指示して、印刷に使用するインクノズル26dとして、ヘッドキャリア25のずらし方向とは、反対方向にずらし量SAの分だけずれた範囲にあって印刷対象領域Arに対向しているものを選択する。
【0044】
図4(A)〜図4(C)を参照して具体的に説明する。
印刷ヘッド制御回路108は、印刷対象のドットパターンを格納するためのラインバッファメモリ(ドットパターンメモリ)108aを備える。このラインバッファメモリ108aは、印刷対象の1ドットライン分又は数ドットライン分のドットパターンデータを格納する容量を備えるものでもよく、或いは、印刷対象データの全体が展開可能なサイズでもよい。
【0045】
ラインバッファメモリ108aの各記憶セルは印刷ヘッド26のインクノズル26dのいずれかに対応している。印刷ヘッド26のドライバ回路は、各記憶セルに印刷を示すデータが格納されていると、対応するインクノズル26dからインクを吐出させ、印刷媒体F上にインクのドットを形成する。
【0046】
例として、図4(A)に示すように、印刷ヘッド26を包装フィルムF上の印刷対象領域Arに対向するように配置し、この状態でドットパターン「001111・・・1100」に相当するドットラインを印刷する場面を想定する。ここでは、「0」はインクを吐出しないドット、「1」はインクを吐出するドットを示すとする。印刷ヘッド制御回路108内に配置されたラインバッファメモリ108a(印刷対象ラインのドットデータを格納するためのバッファメモリ)内の各記憶セル(ビットメモリ)のうち、印刷対象領域Ar内のインクノズル26dに対応する記憶セルには、対応するインクノズル26dがインクを吐出するか否かを示すビットデータ「1」又は「0」が格納される。さらに、印刷対象領域Arの外に位置するインクノズル26dに対応するレジスタにはインクを吐出しないことを示す「0」が展開される。
【0047】
この状態で所定回数、例えば10回、印刷を行うと、CPU110は、ヘッドキャリア制御回路111を介して、図4(B)又は図4(C)に示すように、印刷ヘッド26を移動量SAだけ移動させる。図4(B)は、図4(A)に対し、印刷ヘッド26を図面右方向に3ドット(3インクノズル分)移動した状態を示す。また、図4(C)は、図4(A)に対し、印刷ヘッド26を図面左方向に3ドット(3インクノズル分)移動した状態を示す。
【0048】
さらに、CPU110は、印刷ヘッド26を移動しても、印刷対象領域Ar内の相対的に同一の位置に印刷ができるように、ラインバッファメモリ108aに展開するドットパターンデータを、印刷ヘッド26の移動方向に対応する方向とは逆方向に印刷ヘッド26の移動量に対応するドット数分だけシフトする。そして、格納すべき対応するデータが存在しない場合には「0」を追加する。
【0049】
以下、この印刷動作をより詳細に説明する。
図5(A)〜5(C)は、この印刷の態様を例示したものである。図5(A)〜5(C)において、記号W1は印刷ヘッド26による最大印刷幅、記号W2はW1より小幅の印刷対象領域Arを示す。また、「賞味期限 04.10.22」の文字列SPが包装フィルムFの印刷対象領域Arに印刷される。文字列SPは、包装フィルムFの幅方向の同一位置に施される。図5(A)〜5(C)の記号Zは、包装フィルムFの幅方向の一方の縁部であり、変化していない。
【0050】
図5(A)は、印刷ヘッド26(ヘッドキャリア25)による初期の印刷の態様を示している。プリンタ10は、包装フィルムFと印刷ヘッド26とのこの相対位置で所定回数の印刷を実行する。続いて、図5(B)に示すように、CPU110は、印刷ヘッド26をY方向にずらし量SAだけ移動させて再び固定し、図5(A)に示した状態のときに用いたインクノズル26dのセットとは、それよりもずらし量SAだけずれた範囲にあるインクノズル26dのセットを用いて同一位置に同一の文字列SPを印刷する。以下、図5(B)に示す位置での所定回数の印刷が終了したら、CPU10は、同様の動作を繰り返し、その度に印刷ヘッド26をY方向にずらし量SAだけ移動させて固定し、同一の文字列SPを、ずらし量SAだけさらにずれた範囲にあるインクノズル26dのセットを用いて実行する。図5(C)には、印刷ヘッド26の最初の移動を含めてn回の移動を繰り返した状態を示す。
【0051】
以上の印刷動作は、以下の3つのステップから構成される。
1.印刷ヘッド26のY方向の位置を固定し、包装フィルムFを印刷ヘッド26に対して所定ピッチずつ送り方向に移動させながら、印刷対象領域Arの範囲内にあるインクノズル26dを用いて印刷ヘッド26の最大印刷幅より小さい幅の印刷対象領域に文字列を印刷する第1のステップ。
2.所定回数(1回を含む)の印刷を実行する度に、印刷ヘッド26を所定ずらし量SAだけY方向に移動させて再び固定する第2のステップ。
3.移動後の印刷ヘッド26の位置で、印刷対象領域Arと対向する範囲に位置するインクノズル26dを用いて前記特定印刷位置に同一の印刷を実行する第3のステップ。第3のステップで使用するインクノズル26dと、従前の第1のステップ又は直前の第3のステップで使用したインクノズル26dとは少なくとも一部が異なる。
【0052】
所定のずらし量SAは、予め定めた距離とする他、乱数表等を用いてランダムにすることも可能である。
【0053】
印刷ヘッド26が一方の移動端に達した後は、例えば
1.印刷ヘッド26を一気に初期位置に復帰させて同一の印刷動作を実行する、
2.復帰動作時にも、所定回数の印刷を実行する度に印刷ヘッド26を所定のずらし量SAだけ移動させる動作を繰り返して、初期位置に復帰させる、
のいずれかの態様を取ることが好ましい。
【0054】
図6A〜図6Eは、印刷ヘッド26の移動パターン例を示している。
図6A、図6B、図6Eは、印刷ヘッド26が一方の移動端に達した後も所定量ずつ移動させながら文字列SPを印刷する例を示す。また、図6Dは、印刷ヘッド26が一方の移動端に達した後、一気に初期位置に復帰させる例を示す。図6Eの例では、印刷ヘッド26が移動可能範囲の一方の端に達したとき、文字列の印刷を所定回数(2回)実行する間、印刷ヘッド26を同一位置に保持している。
【0055】
図6A、図6B、図6Eに示されるように、印刷ヘッド26が移動可能範囲の一方の端に達した後に初期位置へ復帰させる際も所定量SAずつ移動させながら文字列SPを印刷すると、印刷ヘッド26が移動可能範囲の一端と他端との間を往復する工程で印刷を行うことができる。これにより、特定印刷を行うにあたり、印刷ヘッド26の前記往復の工程を有効利用でき、印刷ヘッド26の動きに対する印刷効率を高めることができる。
【0056】
図6Cは、ずらし量SAが極めて小さい例(例えば文字列SPを1回印刷する毎に印刷ヘッド26を移動させる)を示した。ずらし量SAは任意に決めることができる。例えば、文字列SPの印刷ピッチp(図1)を考慮して、同ピッチpが長い場合は、包装フィルムFの送り時間が長いので、印刷ヘッド26のずらし量SAを大きくする等の決め方をとることができる。
【0057】
印刷ヘッド26のずらし量SAを大きくすると、印刷ヘッド26の一回の移動あたり、印刷ヘッド26の移動方向に沿って多数のインクノズルを移動させることができる。これにより、印刷ヘッド26の一回の移動に伴い、より多くのインクノズルを印刷に使用することができ、多くのインクノズルをより均等に使用することができる。
【0058】
図7は、印刷処理を実行するためのフローチャートの一例である。
【0059】
CPU110は、同一文字列を繰り返して印刷する処理を開始する場合に図7の処理を開示する。まず、CPU110は、印刷回数をカウントするための印刷カウンタをクリアする(ステップS101)。次に、CPU110は、他の処理で、印刷媒体送り制御回路112を介して印刷媒体送り装置103を起動し、包装フィルムFの送りを開始させる。次に、CPU110は、包装フィルムFがX方向の所定の印刷位置に達したか否かを判断する(ステップS102)。包装フィルムFが印刷位置に達していると判断したら(ステップS102;Yes)、文字列SPを印刷対象領域Arに印刷し(ステップS103)、印刷が1回実行される度に印刷カウンタをインクリメント(1加算)する(ステップS104)。CPU110は、印刷回数が所定回数Nに達するまで以上の印刷動作を繰り返す(ステップS105、S102〜S104)。
【0060】
一方、特定印刷回数が所定回数Nに達したと判別したら(ステップS105;Yes)、CPU110は、ヘッドキャリア制御回路111を制御してボールねじ駆動機構104を駆動して、印刷ヘッド26の位置をY方向にずらし量SAだけずらす(ステップS106)。続いて、CPU110は、印刷カウンタをクリアし(ステップS107)、ステップS102に処理を戻し、上述の動作を繰り返す。
【0061】
図8は、図7のステップS106のヘッドずらし動作、即ち、印刷ヘッド26を特定ずらし量SAだけ移動させ、印刷ヘッド26が移動端に達したときにずらし方向を反転する処理を説明するためのフローチャートである。
【0062】
この処理を開始すると、CPU110は、まず、ずらし方向が右方向に設定されているか左方向に設定されているかを、例えば、内部メモリに設定したずらし方向フラグの内容から判断し(ステップS201)、設定されているずらし方向にずらし量SAだけ印刷ヘッド26を移動させる(ステップS202,S203)。なお、印刷ヘッド26をずらし量SAだけ移動できない場合には、最大限移動できる範囲で移動すればよい。続いて、CPU110は、印刷ヘッド26を同一方向にずらした回数をカウントするずらしカウンタをインクリメント(1加算)する(ステップS204)。次に、CPU110は、ずらしカウンタのカウント値が(W1-W2)/SAに達したか否か(すなわち、印刷ヘッド26が移動端に達したか否か)を判断し(ステップS205)、移動端に達していなければ(ステップS205;No)、今回の処理を終了し、図7の印刷処理にリターンし、ステップS107に進む。
【0063】
一方、ステップS205で印刷ヘッド26が移動端に達したと判断したら(ステップS205;Yes)、ずらしカウンタをクリアし(ステップS206)、ずらし方向フラグの値を反転して、ずらし方向を反転し(ステップS207)、今回の処理を終了し、図7の印刷処理にリターンし、ステップS107に進む。
【0064】
以上説明したように、この実施例によれば、印刷ヘッド26の1ドットラインの幅よりも狭い印刷領域にデータを印刷する場合でも、全てのインクノズル26dを印刷に使用することができる。
【0065】
なお、この発明は、前記実施例に限定されず、種々の変形及び応用が可能である。
例えば、前記実施の形態においては、1枚のシート状の包装フィルムF上に所定ピッチで配置された複数の印刷領域に賞味期限を表す同一のデータを繰り返して印刷する場合を例に本発明を説明したが、印刷媒体や対象データや印刷の態様は任意である。例えば、この発明は複数枚のシートに印刷するインクジェットプリンタにも適用可能である。また、印刷データは同一でも、異なってもよい。
【0066】
また、プリンタが用いられる場面や、プリンタの制御部の構成及び動作は上述の例に限定されない。例えば、図3に示す回路構成や、図7及び図8に示したフローチャートは一例にすぎず、任意に変更可能である。例えば、図3に示す印刷ヘッド制御回路108やヘッドキャリア制御回路111を制御用のプロセッサで構成することも可能である。また、図1に示すX方向とY方向とは直角が望ましいが、直角でなくてもよい。
【0067】
例えば、印刷ヘッド26の最大印刷幅よりも狭い1つの印刷領域に連続して任意のデータを印刷する場合にも本発明を適用可能である。この場合も、従来のインクジェットプリンタであれば、印刷に使用されない端部のインクノズルを印刷に使用できる。
【0068】
また、前記説明においては、賞味期限を示す文字列の印刷を所定回行う毎に印刷ヘッド26を移動させたが、印刷ヘッド26を移動させるタイミングは任意である。例えば、有意データの印刷を予め定められている回数(固定値又は一定のルールに基づいて定まる値)又はランダム求められた回数だけ実行する度に、印刷ヘッド26を移動させてもよい。また、任意のドットライン数の印刷を行う毎に印刷ヘッド26を移動させてもよい。
【0069】
また、印刷領域は印刷媒体上に予め定められているものでも、インクジェットプリンタが判別するものでもよい。
【0070】
また、この発明は印刷媒体上に予め設定されている印刷領域の幅が印刷ヘッド26の最大印刷幅よりも小さい場合に実施できる。また、例えば、実際に印刷されるデータの幅(インクを吐出する幅)が印刷ヘッド26の最大印刷幅よりも小さい場合に、それを検出して、上述の印刷ヘッド26の移動処理を行うようにしてもよい。この場合、例えば、CPU110は、ラインバッファメモリ(1ドットライン又は複数ドットライン分のドットパターンデータが展開される)又はページバッファ(1ページ分のドットパターンデータが展開される)上に展開されたドットパターンデータからインクを塗布するエリアの幅を判別し、インク塗布エリアの幅が最大印刷幅よりも小さいか否かを判別し、小さいと判断した場合に、上述の印刷ヘッドを定期的に又は不定期に移動させる動作を行う。
【0071】
また、印刷ヘッド26の移動量SAの値は任意である。但し、インクノズルの配列のピッチの自然数倍であることが望ましい。さらに、(全インクノズル数−印刷領域に対応するインクノズル数)×インクノズルのピッチであることが望ましい。
【0072】
さらに、図4(A)〜図4(C)を参照して、ラインバッファメモリ108aに展開するドットパターンデータの位置を印刷ヘッド26の位置に応じてシフトする例を示したが、印刷位置が変化してもかまわない場合には、ラインバッファメモリ108aに格納するドットパターンデータをシフトする動作を行わないようにしてもよい。
【0073】
さらに、この発明はシリアル形のインクジェットプリンタにも適用可能である。即ち、シリアル形インクジェットプリンタのインクノズル列の長さ(1印刷行の幅)よりも狭い印刷領域にデータを印刷する場合に、印刷ヘッドをインクノズルの列と同一方向に定期的に又は不定期に移動させてもよい。
【0074】
この発明は、カラー印刷装置にも適用可能である。この場合には、各色(例えば、Y(黄色),M(マゼンタ)、C(シアン)、黒)の印刷ヘッドについて、上述の制御を行えばよい。
【0075】
なお、CPU110等に上述の印刷動作及び制御動作を実行させるためのコンピュータプログラムの全部又は一部を、記録媒体(ROM、フレキシブルディスク、ハードディスク、CD−ROM、MO、CD−R、フラッシュメモリ等)に記録して配布・流通させたり、制御用のメモリにインストールさせてもよい。また、そのようなプログラムを示すデータ信号で搬送波を変調して、これを通信ネットワークを介して伝送することにより流通・配布させることも可能である。
【0076】
本出願は、2004年1月9日に出願された、日本国特許出願2004−004449号に基づく。本明細書中に、日本国特許出願2004−004449号の明細書、特許請求の範囲、図面全体を参照として取り込むものとする。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、インクジェットプリンタ及びインクジェットプリンタを用いた印刷方法の分野において利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体の送り方向と交差する方向に配列された複数のインクノズルを備える印刷ヘッドと、
この印刷ヘッドを前記印刷媒体の送り方向と交差する方向に駆動する印刷ヘッド制御回路と、
前記印刷媒体の前記印刷ヘッドに対する位置を検出する位置検出回路と、
前記印刷媒体を該印刷ヘッドに対して相対移動させながら、前記印刷ヘッドの所定のインクノズルを用いて前記印刷ヘッドの最大印刷幅より小さい幅の印刷領域に印刷を実行し、前記位置検出回路の検出する位置に基づき、印刷媒体を移動させながら所定回数の印刷を実行する度に、前記印刷ヘッド制御回路を介して前記印刷ヘッドを前記印刷媒体の送り方向と交差する方向に移動させ、再び前記所定のインクノズルとは少なくとも一部が異なる別のインクノズルを用いて前記印刷領域に印刷を実行する印刷制御回路と、
を有することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
請求項1記載のインクジェットプリンタにおいて、
前記印刷制御回路は、前記印刷ヘッドの前記印刷媒体の送り方向と交差する方向の位置を固定した状態で、印刷を実行し、所定回数の印刷を実行する度に、前記印刷ヘッド制御回路を介して前記印刷ヘッドを前記印刷媒体の送り方向と交差する方向に移動させ、再び前記印刷ヘッドを固定した状態で印刷を実行する、
ことを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項3】
請求項1記載のインクジェットプリンタにおいて、
前記印刷制御回路は、前記印刷ヘッドを、前記印刷ヘッド制御回路を介して、
前記印刷領域への印刷を最初に実行する初期位置より、前記印刷領域への印刷を繰り返し実行しつつ前記印刷媒体の送り方向と直交する方向に沿って一方の移動端に向かって移動させる制御を行うとともに、
前記一方の移動端より、前記印刷領域への同一の印刷を繰り返し実行しつつ前記印刷媒体の送り方向と直交する方向に沿って前記初期位置まで移動させる制御を行う、
ことを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項4】
請求項1記載のインクジェットプリンタにおいて、
前記印刷ヘッド制御回路は、印刷対象データのドットパターンを展開するバッファメモリを備え、
前記印刷ヘッド制御回路は、前記印刷ヘッドの移動に合わせて、印刷対象ドットパターンデータの展開位置をシフトする、
ことを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項5】
請求項1記載のインクジェットプリンタにおいて、
前記位置検出回路は、
前記印刷媒体に送り方向に所定間隔で付与されているマークを検知するセンサと、
印刷媒体の送り量を検出するエンコーダと、を含んでいる、
ことを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項6】
請求項5記載のインクジェットプリンタにおいて、前記エンコーダは、印刷媒体の表面と接触して回転する従動ローラを備え、この従動ローラの回転角度を検出する、
ことを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項7】
複数のインクノズルを備える印刷ヘッドを用いて印刷を行う印刷方法であって、
印刷媒体を印刷ヘッドに対して相対移動させながら、所定のインクノズルヘッドを用いて印刷ヘッドの最大印刷幅より小さい幅の印刷対象領域に印刷を実行する印刷ステップと、
所定回数の印刷を実行したことを検出し、前記印刷ヘッドを印刷媒体の送り方向と交差する方向に移動させる移動ステップと、を備え、
前記印刷ステップは、印刷ヘッドの移動後、移動前の印刷に使用していたインクノズルとは少なくとも一部が異なるインクノズルを用いて前記印刷媒体の印刷対象領域に印刷を実行する、
ことを特徴とするインクジェットプリンタによる印刷方法。
【請求項8】
請求項7記載の印刷方法において、
前記印刷ステップは、前記印刷ヘッドの印刷媒体の送り方向と直交する方向の位置を固定した状態で、より印刷媒体をヘッドキャリアに対して所定ピッチずつ相対移動させながら、所定のインクノズルを用いて印刷ヘッドの最大印刷幅より小さい幅の特定印刷位置に印刷を実行するステップから構成され、
前記移動ステップは、前記ヘッドキャリア制御回路を介してヘッドキャリアを印刷媒体の送り方向と直交する方向に移動させるステップから構成される、
ことを特徴とする印刷方法。
【請求項9】
請求項7記載の印刷方法において、
前記移動ステップは、所定回数の印刷を実行したことを検出する度に、印刷ヘッドを移動し、
前記印刷ステップは、前記移動ステップにより印刷ヘッドが移動される度に、移動前に印刷に使用したインクノズルとは少なくとも一部が異なるインクノズルを用いて印刷を実行する、
ことを特徴とする印刷方法。
【請求項10】
請求項7記載のインクジェットプリンタによる印刷方法において、前記印刷媒体の相対位置の検出は、印刷媒体に送り方向に所定間隔で付されたマークを検出するステップと、印刷媒体の送り量を検出するステップとを含む、
ことを特徴とする印刷方法。
【請求項11】
印刷媒体の送り方向と直交する方向に配列された複数のインクノズルを備える印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドを前記印刷媒体の送り方向と直交する方向に駆動する印刷ヘッド制御手段と、
前記印刷媒体の前記印刷ヘッドに対する位置を検出する位置検出手段と、
前記印刷媒体を該印刷ヘッドに対して相対移動させながら、前記印刷ヘッドの所定のインクノズルを用いて前記印刷ヘッドの最大印刷幅より小さい幅の印刷領域に印刷を実行し、前記位置検出手段の検出する位置に基づき、印刷媒体を移動させながら所定回数の印刷を実行する度に、前記印刷ヘッド制御手段を介して前記印刷ヘッドを前記印刷媒体の送り方向と直交する方向に移動させ、再び前記所定のインクノズルとは少なくとも一部が異なる別のインクノズルを用いて前記印刷領域に印刷を実行する印刷制御手段と、
を有することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項12】
コンピュータに、
複数のインクノズルを備える印刷ヘッドを用いて印刷を行う印刷方法であって、
印刷媒体を印刷ヘッドに対して相対移動させながら、印刷ヘッドが備えている複数のインクノズルのうちの所定のインクノズルヘッドを用いて印刷ヘッドの最大印刷幅より小幅の印刷対象領域に印刷を実行させる印刷ステップと、
所定回数の印刷を実行したことを検出し、前記印刷ヘッドを印刷媒体の送り方向と交差する方向に移動させる移動ステップと、
移動後の印刷ヘッドの前記所定のインクノズルとは少なくとも一部が異なるインクノズルを用いて前記印刷媒体の印刷対象領域に印刷を実行させる再印刷ステップと、
を実行させるコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図7】
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【図8】
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【国際公開番号】WO2005/065952
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【発行日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516914(P2005−516914)
【国際出願番号】PCT/JP2005/000201
【国際出願日】平成17年1月11日(2005.1.11)
【出願人】(396004981)セイコープレシジョン株式会社 (481)
【Fターム(参考)】