説明

インクジェットプリンタ

【課題】必要な流量やノズル圧を確保すると共に、衝撃や振動によるインクの流れ落ちが低減されたインク循環経路を備えたインクジェットプリンタを提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態は、複数のノズルが形成されたノズル面を備えたインクヘッドを有する記録部と、ノズル面よりも重力方向上方に配置され、記録部に供給するインクを貯留する第1のタンクと、ノズル面よりも重力方向下方に配置され、記録部からのインクを回収して貯留する第2のタンクと、記録部と第1のタンクとを接続している第1のチューブと、記録部と第2のタンクとを接続している第2のチューブと、第1のタンクと第2のタンクとを接続している第3のチューブと、第2のタンク内のインクを第1のタンクに揚送するポンプと、を具備するインク循環経路を有し、第1のチューブは、重力方向に蛇行されているインクジェットプリンタである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク循環経路を備えたインクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、サーマルヘッド方式、あるいは電気機械変換素子(ピエゾ)方式等のインクヘッドを搭載したインクジェットプリンタが知られている。このインクジェットプリンタは、インクヘッドに形成されたノズルからインク滴を吐出することによって、記録用紙等の記録媒体上に画像を記録する。
【0003】
このようなインクジェットプリンタの一例として、インク循環経路を備えたものが知られている。例えば、特許文献1には、記録ヘッド(インクヘッド)と、記録ヘッドよりも上方に設けられた第1のインク室と、記録ヘッドよりも下方に設けられた第2のインク室と、記録ヘッド、第1のインク室及び第2のインク室をそれぞれ接続し、インク流路を形成している配管と、ポンプと、からなるインク循環経路を備えたインクジェットプリンタが開示されている。このインク循環経路は、記録ヘッド、第1のインク室及び第2のインク室の配置位置の高低差(水頭差)によって、第1のインク室から記録ヘッドにインクを供給し、記録ヘッドから吐出されなかったインクを第2のインク室内に回収する。そして、第2のインク室内に回収したインクは、ポンプにより第1のインク室へと汲み上げられる。かくして、インクが循環される。
【0004】
このようなインクジェットプリンタにおいて、一般的に、記録ヘッドのノズル内は負圧に保たれている。この負圧により、ノズル内には、インクが重力方向上方に窪んだメニスカスが形成され、ノズルからインクが垂れないようになっている。しかし、例えば、輸送時や記録ヘッドの交換時の衝撃や振動によりメニスカスが破壊されて、第1のインク室と記録ヘッドとを接続している配管に空気が混入してしまうと、配管中のインクが混入した空気と置換して、第1のインク室内のインクが流れ落ちてしまう。これを防止するために、特許文献1のインク循環経路では、第1のインク室と記録ヘッドとを接続している配管に電磁弁が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−219580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の特許文献1のように、水頭差だけで第1のインク室から記録ヘッドを経由して第2のインク室までインクを流す構成において、第1のインク室と記録ヘッドとを接続している配管に電磁弁を設けると、第1のインク室から記録ヘッドまでの流路抵抗が増加してしまうため、必要な流量やノズル圧を確保するのが難しくなる。
【0007】
そこで、本発明は、必要な流量やノズル圧を確保すると共に、衝撃や振動によるインクの流れ落ちが低減されたインク循環経路を備えたインクジェットプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態は、複数のノズルが形成されたノズル面を備えたインクヘッドを有する記録部と、前記ノズル面よりも重力方向上方に配置され、前記記録部に供給するインクを貯留する第1のタンクと、前記ノズル面よりも重力方向下方に配置され、前記記録部からのインクを回収して貯留する第2のタンクと、前記記録部と前記第1のタンクとを接続している第1のチューブと、前記記録部と前記第2のタンクとを接続している第2のチューブと、前記第1のタンクと前記第2のタンクとを接続している第3のチューブと、前記第2のタンク内のインクを前記第1のタンクに揚送するポンプと、を具備するインク循環経路を有し、前記第1のチューブは、重力方向に蛇行されていることを特徴とするインクジェットプリンタである。
【0009】
本発明の一実施形態は、インクを吐出する複数のノズルが形成されたインクヘッドを有する記録部と、前記複数のノズルが形成されたノズル面より重力方向上方に配置され、前記記録部に供給するインクを貯留するタンクと、前記記録部で吐出されなかったインクを前記タンクに戻すポンプと、を少なくとも有するインク循環部を備えるインクジェットプリンタであって、前記タンクから前記記録部に前記インクを供給するインク経路は、重力方向に流れるインクを重力に逆らった方向に流すために形成された第1の湾曲部と、重力に逆らった方向に流れるインクを重力方向に流すために形成された第2の湾曲部と、を複数有することを特徴とするインクジェットプリンタである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、必要な流量やノズル圧を確保すると共に、衝撃や振動によるインクの流れ落ちが低減されたインク循環経路を備えたインクジェットプリンタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明のインクジェットプリンタのインク経路及び大気経路を示す概略図である。
【図2】図2は、第1の実施形態の第1のインク経路を示す概略図である。
【図3】図3は、第1のインク経路の蛇行状態を示す図である。
【図4】図4(a)乃至(d)は、第1の実施形態の第1のインク経路中のインクの動作を示す概略図である。
【図5】図5は、第1の実施形態の第1のインク経路を示す概略図である。
【図6】図6は、第1の実施形態の第1のインク経路を示す概略図である。
【図7】図7(a)並びに(b)は、第1の変形例の第1のインク経路を示す概略図である。
【図8】図8(a)並びに(b)は、第2の変形例の第1のインク経路を示す概略図である。
【図9】図9は、第3の変形例の第1のインク経路を示す概略図である。
【図10】図10は、第2の実施形態の第1のインク経路を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、インクジェットプリンタ1のインク経路及び大気経路を示す概略図である。
なお、図示しないが、このインクジェットプリンタ1は、記録媒体を供給する供給部、供給された記録媒体を搬送する搬送機構、画像記録された記録媒体を搬出する搬出部、インクヘッドのクリーニングを行うクリーニング部及びインク吐出制御を始めとしてプリンタ全体を制御する制御部等、通常のインクジェットプリンタが備えている構成を有している。
【0014】
インクジェットプリンタ1は、例えば、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)及びブラック(K)の4色のインクを用いて記録媒体に画像を記録する。図1には、代表的な1色のインクに関わるインク経路のみが示されているが、このプリンタは、インク色毎に同様のインク経路を備えている。
【0015】
インクジェットプリンタ1は、大別すると、インク循環経路(インク循環部)6と、インク循環部6にインクを補充するインク補充部11と、不要となったインクやオーバーフローしたインクを収容する廃液部12と、インク循環部6内の圧力を調整する圧力調整部18と、インク循環部6における第1のタンク4内部を大気と連通、又は遮断可能とする第1の大気開放部60と、インク循環部6における第2のタンク5内部を大気と連通、又は遮断可能とする第2の大気開放部61と、を有している。
【0016】
なお、上述のように4色のインクを用いた場合には、インクジェットプリンタ1は、独立した4系統のインク循環部6を備えることとなる。ただし、本実施形態では、廃液部12、圧力調整部18、第1の大気開放部60の一部、及び第2の大気開放部61の一部は全色で共用されている。
【0017】
まず、インク補充部11について説明する。
インク補充部11は、インクカートリッジトレイ22と、ジョイント部23と、カートリッジ判断部24と、補給弁25と、により構成されている。
【0018】
インクカートリッジトレイ22は、インクカートリッジ21を着脱可能に保持する。このインクカートリッジトレイ22には、ジョイント部23が設けられている。
ジョイント部23は、インクカートリッジ21がインクカートリッジトレイ22における所定の位置に保持された際に、インクカートリッジ21のインク供給口と接続される。また、ジョイント部23は、インク経路10によって第2のタンク5に接続されている。
【0019】
カートリッジ判断部24は、インクカートリッジ21の誤装着を防止し、かつインク残量を検出する。
補給弁25は、ジョイント部23と第2のタンク5とを接続しているインク経路10に設けられている。この補給弁25は、インク循環部6内のインク量に基づいて開閉動作が制御される。つまり、後述のように、インク循環部6内のインク量が所定量以下の場合、補給弁25が開放されて第2のタンク5にインクが供給され、インク循環部6内のインク量が所定量以上の場合、補給弁25が閉じられる。
【0020】
次に、廃液部12について説明する。
廃液部12は、廃液タンク26と、この廃液タンク26を置く廃液タンクトレイ27と、廃インク量検知部28と、タンク装着検知部29と、オーバーフロータンク30と、により構成されている。
【0021】
廃液タンクトレイ27は、インク循環部6の最下部よりも低い位置に設けられており、この上に廃液タンク26が配置されている。廃インク量検知部28は、廃液タンク26の重量や、廃液タンク26内のインク液面の高さの違いを読み取ることによって、廃液タンク26内に収容されたインク量を検知する。タンク装着検知部29は、光学的な検知により廃液タンク26の装着の有無を検知する。
【0022】
オーバーフロータンク30は、インク循環部6から溢れたインクを回収して、廃液タンク26に流し込む。そのため、廃液タンク26とオーバーフロータンク30とは、廃液経路31により接続されている。このオーバーフロータンク30は、上面が開口したトレイ形状を有しており、大気と連通した状態となっている。そして、このオーバーフロータンク30は、後述するポンプ34が破損してインクが漏れても、そのインクを全て受けるようにポンプ34の下方に設けられている。
さらに、このオーバーフロータンク30には、第1の大気開放部60、及び第2の大気開放部61が接続されている。
【0023】
ここで、第1の大気開放部60は、大気経路13と、第1のタンク共通気室14と、大気開放弁32と、を有している。
【0024】
大気経路13は、一端側が第1のタンク4の大気ポート4cと接続され、他端側がオーバーフロータンク30と接続されている。この大気経路13中に、第1のタンク共通気室14及び大気開放弁32が設けられている。より具体的には、大気経路13中において、第1のタンク共通気室14が大気開放弁32よりも第1のタンク4側となるように配置されている。なお、第1のタンク共通気室14は、他色の第1のタンクとも接続されており、第1のタンク共通気室14と大気開放弁32とは、全色で共用されている。
【0025】
このように構成された第1の大気開放部60は、オーバーフロータンク30が大気と連通しているため、大気開放弁32を開閉(開放/遮断)することによって第1のタンク共通気室14の内部を大気と連通、又は遮断させる。つまり、全色の第1のタンク4は、第1のタンク共通気室14に接続されているため、大気開放弁32の開閉によって同時に大気と連通、又は遮断させることができる。
【0026】
また、第1の大気開放部60は、プリンタに異常が発生した際に第1のタンク4からインクが溢れ出したとしても、溢れ出たインクをオーバーフロータンク30に流すことができる。なお、本実施形態では、第1のタンク共通気室14を設けたが、第1のタンク共通気室14は必須構成ではない。つまり、第1の大気開放部60は、第1のタンク4内を大気と連通した状態(大気開放状態)、又は大気から遮断した状態(密閉状態)にさせることができればよい。
【0027】
また、第2の大気開放部61は、大気経路15と、第2のタンク共通気室16と、大気開放弁33と、を有している。
【0028】
大気経路15は、一端側が第2のタンク5の大気ポート5cと接続され、他端側がオーバーフロータンク30と接続されている。この大気経路15中に、第2のタンク共通気室16及び大気開放弁33が設けられている。より具体的には、大気経路15中において、第2のタンク共通気室16が大気開放弁33よりも第2のタンク5側となるように配置されている。なお、第2のタンク共通気室16は、他色の第2のタンクとも接続されており、第2のタンク共通気室16と大気開放弁33とは、全色で共用されている。
【0029】
このように構成された第2の大気開放部61は、オーバーフロータンク30が大気と連通しているため、大気開放弁33を開閉(開放/遮断)することによって第2のタンク共通気室16の内部を大気と連通、又は遮断させる。つまり、全色の第2のタンク5は、第2のタンク共通気室16に接続されているため、大気開放弁33の開閉によって同時に大気と連通、又は遮断させることができる。
【0030】
また、第2の大気開放部61は、プリンタに異常が発生した際に第2のタンク5からインクが溢れ出したとしても、溢れ出たインクをオーバーフロータンク30に流すことができる。なお、本実施形態では、第2のタンク共通気室16を設けたが、第2のタンク共通気室16は必須構成ではない。つまり、第2の大気開放部61は、第2のタンク5内を大気と連通した状態(大気開放状態)、又は大気から遮断した状態(密閉状態)にさせることができればよい。
【0031】
次に、インク循環部6について説明する。
インク循環部6は、画像記録部3と、第1のタンク4と、第2のタンク5と、ポンプ34と、熱交換器36と、フィルタ37と、により構成されている。インクヘッド2のノズル孔が形成されたノズル面50、第1のタンク4内の第1のインク液面51及び第2のタンク5内の第2のインク液面52は、高さ方向(重力方向)で高い位置から低い位置へと順に、第1のインク液面51、ノズル面50、第2のインク液面52となるように位置されている。インク循環部6は、インク循環時において、第1のタンク4から、インク分配器19、各インクヘッド2、インク回収器20、第2のタンク5、ポンプ34、一方向弁35、熱交換器36及びフィルタ37の順にインクが流れて第1のタンク4へ帰還するように、各構成部がインク経路(第1〜第3のチューブ7〜9)により接続されている。
【0032】
インク循環部6の各構成部について詳細に説明する。
第1のタンク4は、インクヘッド2より重力方向上方に配置されている。この第1のタンク4には、インク入口ポート4aと、インク出口ポート4bと、大気ポート4cと、が設けられている。
【0033】
インク入口ポート4aは、第3のチューブ9を介してフィルタ37に接続されており、フィルタ37を通ったインクを第1のタンク4内に流入させる。
インク出口ポート4bは、第1の経路としての第1のチューブ7と接続されており、第1のタンク4内から流出したインクをインク分配器19に流入させる。
大気ポート4cは、大気経路13を介して第1のタンク共通気室14と接続されている。
【0034】
また、第1のタンク4内には、タンク内のインク液面51を所定の高さに保つために、第1の液面検出部38が設けられている。
この第1の液面検出部38は、第1のタンク4内でインクの液面の高さに応じて回動するように支持軸38dにより軸支されたフロート部材38aと、フロート部材38aに取り付けられた磁石38cと、液面位置センサ38bと、により構成されている。
【0035】
液面位置センサ38bは、例えば、磁気センサであり、フロート部材38aに取り付けられた磁石38cを検出する。これによって、液面位置センサ38bは、フロート部材38aの位置、すなわち第1のタンク4内のインク液面51の高さを検出する。このように、第1の液面検出部38は、第1のタンク4内に貯留されているインク量を所定の量に維持するために設けられている。
【0036】
ここで、図2は、第1のタンク4と画像記録部3とを接続している第1の経路としての第1のチューブ7を示す概略図である。
第1のチューブ7は、少なくとも2つの山部101、103と谷部102、104とを有するように蛇行(湾曲)している。換言すれば、第1のチューブ7は、重力方向に流れるインクを重力に逆らった方向に流すために形成された第1の湾曲部としての谷部102、104と、重力に逆らった方向に流れるインクを重力方向に流すために形成された第2の湾曲部としての山部101,103と、を有するように蛇行している。
【0037】
この第1のチューブ7は、山部101、103の内面下側が谷部102、104の内面上側よりも重力方向上方となっている。つまり、図3に示すように、例えば、第1のチューブ7は、山部101の最下点の高さAが谷部102の最上点の高さBよりも重力方向上方に位置しているように蛇行している。
【0038】
なお、本実施形態では、第1のチューブ7は、第1のタンク4と画像記録部3との間で蛇行している。つまり、山部101、103は、第1のタンク4より重力方向下方となり、谷部102,104は、画像記録部3よりも重力方向上方となるように形成されている。また、本実施形態では、第1のチューブ7を介して画像記録部3に供給するインク量は、画像記録部3で吐出されるインク量を上回るように設定されている。このような流量を確保しつつ流路抵抗を大きくしないため、かつ後述のような空気とインクとの置換が起こるようにするために、第1のチューブ7の内径はφ4以上であることが好ましい。
【0039】
このような構成により、インク循環部6がインクで満たされているとき、後述するように、第1のチューブ7内のインクに空気が流入しても、山部に形成された空気層がバッファとして機能し、隣り合う山部と谷部との間で空気層が連通しない。
【0040】
そして、第1のチューブ7は、第1のタンク4内のインクを画像記録部3へと供給する。
【0041】
画像記録部3は、複数のインクヘッド2と、これらインクヘッド2にインクを分配するインク分配器19と、これらインクヘッド2からインクを回収するインク回収器20と、を有している。
【0042】
インク分配器19は、複数のインクヘッド2と接続されている。また、インク分配器19は、第1のチューブ7を介して第1のタンク4と接続されている。
インク回収器20は、複数のインクヘッド2と接続されている。また、インク回収器20は、第2のチューブを介して第2のタンク5と接続されている。
【0043】
なお、前述したようにインクヘッド2に流入するインク量は、インクヘッド2のノズルから吐出されるインク量を上回るように設定されている。このため、ノズルから吐出されなかったインクは、インク回収器20でいったん回収され、第2のチューブ8を経由して第2のタンク5に流出する。
【0044】
インクヘッド2内は、インク循環時に、画像記録動作に適した負圧(本実施形態では、ゲージ圧で約−1kPa)に保たれている。これにより、ノズル内には、内側に球面上に凹んだメニスカスが形成される。そして、インクヘッド2は、外部装置から入力された画像信号に基づいてインクを吐出し、搬送部によって搬送される記録媒体上に画像を記録する。
【0045】
なお、本実施形態の画像記録部3は、記録媒体の幅(搬送方向に直交する方向)に満たない短尺なインクヘッド2を用いて、これらインクヘッド2を記録媒体の幅方向に、例えば千鳥状に(互い違いに)配列してフレーム等に固定し、ラインヘッドを構成している。もちろん、画像記録部3は、ラインタイプ(ラインヘッド)に限らず、記録媒体上を走査しながら記録を行うシリアルタイプ(シリアルヘッド)であってもよい。
【0046】
第2のタンク5は、インクヘッド2より重力方向下方に配置されている。この第2のタンク5には、インク回収器20から第2のチューブ8を介してインクが流入するインク入口ポート5aと、第3のチューブ9にインクを送り出すインク出口ポート5bと、大気経路15により第2のタンク共通気室16に接続されている大気ポート5cと、インク経路10により補給弁25を介してジョイント部23(インクカートリッジ21)に接続されている補給ポート5dと、が設けられている。インクカートリッジ21は、第2のタンク5よりも重力方向上方に配置されており、補給弁25を開くことによって第2のタンク5内にインクを補充する。
【0047】
なお、本実施形態は、補給弁25を開くことによりインクカートリッジ21から第2のタンク5にインクを補充するような構成であるが、本発明はこのような構成に限定されず、インクカートリッジ21から第2のタンク5へインクを送液することができればよい。従って、例えば、補給弁25の代わりにポンプ等によりインクの送液を行ってもよい。
【0048】
また、第2のタンク5内には、インク液面52を所定の高さに保つために、第1のタンク4と同様、第2の液面検出部39が設けられている。この第2の液面検出部39は、第2のタンク5内でインクの液面の高さに応じて回動するように支持軸39dにより軸支されたフロート部材39aと、フロート部材39aに取り付けられた磁石39cと、液面位置センサ39bと、により構成されている。
【0049】
液面位置センサ39bは、例えば、磁気センサであり、フロート部材39aに取り付けられた磁石39cを検出する。これによって、液面位置センサ39bは、フロート部材39aの位置、すなわち第2のタンク5内のインク液面52の高さを検出する。このように、第2の液面検出部39は、第2のタンク5内に貯留されているインク量を所定の量に維持するために設けられている。
【0050】
すなわち、上記した補給弁25の開閉動作は、第2のインク液面52の高さを所望の範囲に維持するように、第2の液面検出部39の検出結果に応じて行われる。具体的には、第2の液面検出部39がONの場合、第2のタンク5のインク量が十分足りていると判断し、補給弁25は閉じた状態となっている。逆に、第2の液面検出部39がOFFの場合、第2のタンク5のインク量が不足していると判断し、補給弁25を開いた状態にする。この動作により、インクカートリッジ21からインクが第2のタンク5内に補給され、第2のタンク5の液面高さが所望の範囲に維持される。
【0051】
特に、インクカートリッジ21のインクが消費され空となった場合には、第2のタンク5にはインクは補給されず、第2の液面検出部39のOFF状態が継続される。所定時間、第2の液面検出部39がOFFの場合、インクカートリッジ21が空と判断され、インクカートリッジの交換を促す告知(不図示の表示部への表示や警告音等)がなされる。
【0052】
ポンプ34は、例えば、電磁式のピストンポンプであることができる。ポンプ34の駆動及び停止は、インク液面51の高さを所望の範囲に維持するように、第1の液面検出部38の検出結果に応じて行われる。具体的には、第1の液面検出部38がONの場合、第1のタンク4のインク量が十分足りていると判断し、ポンプ34を停止する。逆に、第1の液面検出部38がOFFの場合、第1のタンク4のインク量が不足していると判断し、ポンプ34を駆動する。この動作により、第2のタンク5からインクが第1のタンク4に汲み上げられ、第1のタンク4の液面高さが所望の範囲に維持される。
【0053】
本実施形態では、ポンプ34の送液能力は、第2のタンク5内に流入してくるインク量よりも多くのインクを第1のタンク4へと送液可能に設定されている。これは、第2のタンク5内のインクのオーバーフローを防止するためである。すなわち、通常の使用状態で第2のタンク5内に流入するインク流量よりも、ポンプ34が駆動した際に揚送可能なインク流量を多くすることで、第2のタンク5からインクが溢れないようにしている。
【0054】
なお、本実施形態では、ポンプ34として電磁式のピストンポンプを用いているが、第2のタンク5内に流入するインク量よりも多くのインクを送液できる能力があれば、例えば、ダイヤフラムポンプ、ギアポンプ、チューブポンプ、ロータリーポンプ、渦巻きポンプを用いてもよい。
【0055】
ポンプ34の下流側(第1のタンク4への送液側)には、不図示の一方向弁が接続されており、第1のタンク4のインク液面51と、第2のタンク5のインク液面52との高低差によるインクの逆流(第1のタンク4から第2のタンク5への逆流)を防止している。つまり、ポンプ34が停止すると、水頭差により第1のタンク4から第2のタンク5へインクが逆流しようとするため、この流れを防止している。
【0056】
また、前述したように、ポンプ34の送液能力は、第1のタンク4からインクヘッド2を経由し第2のタンク5に流入するインク量よりも多くのインク量を送液可能に設定されているため、インク循環動作中、ポンプ34は間欠動作を行うことになる。
【0057】
熱交換器36は、インク循環部6内を流れるインクを加温、及び/又は、冷却する。すなわち、熱交換器36は、インク循環部6内を流れるインクの温度を画像記録可能な所望の温度に制御する。なお、各インクヘッド2、又はその近傍のインク流路には、熱交換器36を制御するために温度センサ40が配置されている。
【0058】
フィルタ37は、インクヘッド2に供給されるインクに含まれる異物を除去し、インクヘッド2に形成されたノズル孔の目詰まりなどに起因する記録不良をなくすために設けられている。
【0059】
次に、圧力調整部18について説明する。
圧力調整部18は、ベローズ41と、錘42と、ベローズ昇降機構43と、により構成されている。
【0060】
ベローズ41は、第2のタンク共通気室16に大気経路17によって接続されている。また、ベローズ41には、錘42が取り付けられている。この錘42は、ベローズ昇降機構43によって昇降する。つまり、ベローズ昇降機構43が上昇すると、ベローズ41は縮み、ベローズ昇降機構43が下降すると、ベローズ41は伸長する。なお、ベローズ41を縮めさせた状態のベローズ昇降機構43の位置を待機位置とする。また、ベローズ41を伸長させた状態のベローズ昇降機構43の位置を負圧生成位置とする。
【0061】
ここで、大気開放弁33を閉じると、第2のタンク5の空気部分、第2のタンク共通気室16、及びベローズ41の内部は連通しつつ外部とは閉じられた空間となる。この状態でベローズ41を伸縮させると、上記閉じられた空間の体積が増減する。これによって、全色の第2のタンク5内の圧力は、同時に変化する。
【0062】
すなわち、大気開放弁33を閉じた状態でベローズ昇降機構43を待機位置から負圧生成位置に移動させると、ベローズ41が錘42の重さによって下方に引っ張られ、上記閉じられた空間の体積が増加する。これにより、第2のタンク共通気室16内には、錘42に加わる重力と釣り合う大きさの負圧がかかる。
【0063】
第2のタンク共通気室16は、第2のタンク5と連通している。そのため、第2のタンク5には、第2のタンク共通気室16と同じ負圧がかかる。さらに、第2のタンク5は、第2のチューブ8を介してインクヘッド2と連通しているため、インクヘッド2にも同じ負圧がかかる。この負圧は、インクヘッド2内部に、記録に適した圧(例えば、インク循環状態で、ノズル圧が約−1kPa)が加わるように設定されている。そして、この圧により、ノズル孔にメニスカスが形成される。
【0064】
次に、画像記録時(インク循環時)及び待機時(非インク循環時)の各構成部の動作について、簡単に説明する。
まず、大気開放弁32を開放し、第1のタンク4内を大気開放状態にする。これと共に大気開放弁33を閉じ、圧力調整部18により第2のタンク5内の圧力を所定の負圧状態にする。このような状態でインクジェットプリンタ1は、第1のタンク4及び第2のタンク5内のインク量に応じてポンプ34、補給弁25の動作を制御し、インクを循環させる。つまり、上述のように、第1のタンク4、インク分配器19、インクヘッド2、インク回収器20、第2のタンク5、ポンプ34、熱交換器36、フィルタ37の順にインクが流れ、第1のタンク4へ帰還するようインクが循環する。
【0065】
また、インクジェットプリンタ1の待機時には、大気開放弁32を閉じ、第1のタンク4内を大気に対して遮断すると共に、大気開放弁33を開放し、第2のタンク5を大気開放状態とする。
【0066】
このとき、第2のタンク5は、前述したようにインクヘッド2より重力方向下方に配置されているため、インクヘッド2のノズルには水頭差によりメニスカスが形成されている。つまり、待機時において、インクヘッド2からインクが垂れ落ちることはない。
【0067】
このように構成されたインク循環部6において、輸送時や記録ヘッドの交換時の衝撃や振動によりメニスカスが破壊され、インクヘッド2のノズルからインク循環部6内に空気が流入すると、第1のタンク4と第2のタンク5との水頭差分で釣り合っていたバランスが崩れる。そして、インクヘッド2のノズルから流入した空気は、第1のチューブ7内のインクと置換しながら、第1のタンク4の負圧により第1のタンク4へ移動しようとする。そして、最終的に、第1のタンク4内に蓄えられたインクは、第2のタンク5に向かって流れ落ちてしまう。
【0068】
従って、インクヘッド2のノズルから空気の流入が発生しても、第2のタンクへ流入するインクの量を所定の流量以下に規制し、第2のタンク5からインクが溢れないようにする必要がある。
【0069】
本実施形態において、装置の輸送、設置、移設時等の振動や衝撃によってインクヘッド2のノズル内に形成されたメニスカスが破壊された場合について、図4(a)乃至(d)を参照して説明する。
【0070】
インクヘッド2のノズル内に形成されたメニスカスが破壊されると、第1のチューブ7内のインクがノズル内から少しずつ落ちて、図4(a)に示すように、このインクと置換した空気が山部101の下流側に流入する。そして、図4(b)に示すように、この空気が、振動によって山部101を越えて谷部102に向かって流入する。さらに、この空気は、谷部102を越えて山部103に達し、山部103のインクと置換する。このとき、山部103の部分のインクが下流側へと落ちる。かくして、空気は、図4(c)に示すように、浮力によって山部103に留まる。山部103にある程度空気が溜まると、この空気は、空気層を形成する。最終的に、図4(d)に示すように、この空気層がバッファとなり、インクの振動を抑制する。従って、インクに空気が流入しなくなり、これ以上インクと空気とが置換しない。つまり、第1のタンク4内のインクは、インクヘッド2の側(下流側)へ落ちることはない。
【0071】
なお、第2のタンク5内には、第1のチューブ7内で空気と置換しながら落ちるインクの分を考慮した許容部分が予め設けられている。具体的には、本実施形態では、少なくともインク回収器20、及び第2のチューブ8内のインクが流れ落ちてもオーバーフローしない許容部分を有している。
【0072】
このように、第1のタンク4と画像記録部3とを接続している第1のチューブ7が山部と谷部とを有するように蛇行していることにより、画像記録部3のインクヘッド2に設けられたノズル内に流入した空気は、第1のチューブ7内のインクと置換しながら山部101に達し、さらに、谷部102を通って山部103に達して空気層を形成する。この空気層は、振動等に対するバッファとして働き、これ以上インクの移動が起こらない。かくして、衝撃や振動により流れ落ちるインク量を減少させることができる。
【0073】
インクの振動が大きい場合、山部103を越えてさらに空気が流入してしまうことが考えられる。この場合、図5に示すように、山部を3つ以上設けておけば、上述の図4(a)〜(d)の動作が上流側の山部103と山部105との間でも起こり、図6に示すように、山部105にも空気層が形成される。山部の数が増えたことにより空気層の数が増えれば、空気層によるバッファ効果も高まり、さらにインクの振動を抑えることができる。これにより、振動が大きい場合でも第1のタンク4内のインクがインクヘッド2の側(下流側)へ落ちることはない。かくして、第1のタンク4内のインクが第2のタンク5へと流れることはなく、第2のタンク5内のインクがオーバーフローすることがない。
【0074】
また、図7(a)に示すように、第1のチューブ7を蛇行させる際、谷部102,104,106を画像記録部3のノズル面高さよりも低くする。これにより、第1のチューブ7の谷部により多くの空気層を確保でき、インクの振動を防ぐことができる。また、図7(b)に示すように、第1のチューブ7を蛇行させる際、少なくとも1つの谷部を画像記録部3のノズル面高さより低くしてもよい。この場合、画像記録部3のノズル面高さよりも低くされる谷部が画像記録部3に近ければ、落ちるインク量が少なくて済むので、図7(b)では最も画像記録部3に近い谷部102を画像記録部3のインク液面の高さよりも低くしている。
【0075】
また、図8(a)に示すように、第1のチューブ7を蛇行させる際、山部101,103,105を第1のタンク4内のインク液面高さよりも高くする。これにより、第1のチューブ7の山部により多くの空気層を確保でき、インクの振動を防ぐことができる。また、図8(b)に示すように、第1のチューブ7を蛇行させる際、少なくとも1つの山部を第1のタンク4内のインク液面高さよりも高くしてもよい。第1のタンク4内のインク液面高さよりも高くされる山部が画像記録部3に近ければ、インクが落ちにくいので、図8(b)では最も画像記録部3に近い山部101を第1のタンク4内のインク液面高さよりも高くしている。
【0076】
また、図9に示すように、第1のチューブ7をスパイラル形状にすることにより、蛇行する第1のチューブ7に比べて、よりコンパクトに配設することができる。
【0077】
図10は、本発明の第2の実施形態の第1のチューブ7を示す概略図である。
図10では、第1のタンク4と画像記録部3との間に、第1の経路として、内部に少なくとも2つの山部と谷部とを備えたインク経路を有する樹脂製のジョイント110を設けている。このような構成により、チューブでは座屈してしまう曲率での蛇行も可能となるため、よりコンパクトな設計が可能になる。
【0078】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内でさまざまな改良及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0079】
1…インクジェットプリンタ、2…インクヘッド、3…画像記録部、4…第1のタンク、5…第2のタンク、6…インク循環経路、7…第1のチューブ、8…第2のチューブ、9…第3のチューブ、10…インク経路、11…インク補充部、12…廃液部、13…大気経路、14…第1のタンク共通気室、15…大気経路、16…第2のタンク共通気室、17…大気経路、18…圧力調整部、19…インク分配器、20…インク回収器、21…インクカートリッジ、22…インクカートリッジトレイ、23…ジョイント部、24…カートリッジ判断部、25…補給弁、26…廃液タンク、27…廃液タンクトレイ、28…廃インク量検知部、29…タンク装着検知部、30…オーバーフロータンク、31…廃液経路、32,33…大気開放弁、34…ポンプ、36…熱交換器、37…フィルタ、38…第1の液面検出部、39…第2の液面検出部、40…温度センサ、41…ベローズ、42…錘、43…ベローズ昇降機構、51…第1のインク液面、52…第2のインク液面、60…第1の大気開放部、61…第2の大気開放部、101,103,105…山部、102,104,106…谷部、110…ジョイント。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルが形成されたノズル面を備えたインクヘッドを有する記録部と、
前記ノズル面よりも重力方向上方に配置され、前記記録部に供給するインクを貯留する第1のタンクと、
前記ノズル面よりも重力方向下方に配置され、前記記録部からのインクを回収して貯留する第2のタンクと、
前記記録部と前記第1のタンクとを接続している第1のチューブと、
前記記録部と前記第2のタンクとを接続している第2のチューブと、
前記第1のタンクと前記第2のタンクとを接続している第3のチューブと、
前記第2のタンク内のインクを前記第1のタンクに揚送するポンプと、を具備するインク循環経路を有し、
前記第1のチューブは、重力方向に蛇行されていることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記第1のチューブの前記蛇行は、少なくとも2つの山部と谷部とを有することを特徴とする請求項1記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記インク循環経路がインクで満たされているとき、
前記第1のチューブ内のインクに空気が流入したとき、隣り合う山部と谷部との間で空気が連通しないように、前記山部の最下点の高さが前記谷部の最上点の高さよりも重力方向上方に位置していることを特徴とする請求項2記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記谷部は、前記ノズル面よりも重力方向下方に位置していることを特徴とする請求項3記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記山部は、前記第1のタンク内のインク液面高さよりも重力方向上方に位置していることを特徴とする請求項3記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記第1のチューブは、内部に少なくとも2つの山部と谷部とを備えたインク経路を有する樹脂製のジョイントである請求項1記載のインクジェットプリンタ。
【請求項7】
インクを吐出する複数のノズルが形成されたインクヘッドを有する記録部と、前記複数のノズルが形成されたノズル面より重力方向上方に配置され、前記記録部に供給するインクを貯留するタンクと、前記記録部で吐出されなかったインクを前記タンクに戻すポンプと、を少なくとも有するインク循環部を備えるインクジェットプリンタであって、
前記タンクから前記記録部に前記インクを供給するインク経路は、重力方向に流れるインクを重力に逆らった方向に流すために形成された第1の湾曲部と、重力に逆らった方向に流れるインクを重力方向に流すために形成された第2の湾曲部と、を複数有することを特徴とするインクジェットプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−224909(P2011−224909A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98154(P2010−98154)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【出願人】(511050985)オルテック株式会社 (24)
【Fターム(参考)】