説明

インクジェットヘッド、インクジェット記録装置およびインクジェットヘッド製造方法

【課題】配線部材の劣化を防止しつつ、ヘッド強度を保ち、ヘッドの大型化、コストアップを防ぐことのできるインクジェットヘッドを提供する。
【解決手段】第1板状部材10と、第1板状部材10の主面11の面積に比べて面積の小さい主面を有し、第1板状部材10の第1領域15に積層された第2板状部材20と、電気機械変換素子27の駆動電源を供給する配線部材50と、第2板状部材20の縁部のうち、第1板状部材10の縁部14より内側に位置する縁部24に形成され、配線部材50と電気的に接続する接続端子29と、第1板状部材10よりも上位に積層された第3板状部材30に接合する第1接合面42と、第1板状部材10のうち第2板状部材20が積層されていない第2領域16に接合する第2接合面とを有するフレーム部材40とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッド、インクジェット記録装置およびインクジェットヘッド製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大凡寸法の等しい幾つもの板状部材を積層することにより、ノズル、圧力室、インク供給路などを構成し、アクチュエータに電気的に接続する配線部材も同様に積層し、配線を横から引き出すインクジェットヘッドが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
さらに、近年、印刷や成膜などで作成した薄い電気機械変換素子を用いたインクジェットヘッドや、低コスト化などを目的として、電気機械変換素子の駆動回路を、ヘッドを構成する板状部材に実装したインクジェットヘッドが知られている(たとえば特許文献2参照)。
【0004】
ところで、インクジェットプリンタは、微細なインク滴を数多く吐出させることから、インクのミストが多数発生し易い。さらに、インクジェットプリンタでは、ミストが周囲を漂うため、配線部材に付着したり、インクジェットのメンテナンスの際などにインクが飛び散り、配線部材に付着したりする場合がある。その際に、配線部材として、一般的に用いられるポリイミドなど水分を透過する材料を用いていたり、インクが薬剤を含有していたりすると、配線部材を劣化させるという問題があった。
【0005】
そのような問題に対し、配線部材へのインクの付着を防ぐべく、配線部材をインクジェットヘッドのフレーム内部に引き込む構成とし、配線部材をカバーする方法が知られている。しかしながら、フレームとの接着しろの分だけヘッドを構成する板状部材の寸法が大きくなり、コストアップに繋がるという問題があった。このような問題に対し、特許文献3には、インクジェットヘッドの小型化を図るべく、板状部材の積層された上半分の寸法を小さくし、下半分の寸法の大きな板状部材の外周部分でフレームと接合する構成が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献3に開示されているように、寸法の大きな板状部材の枚数を減らしたり、板状部材を薄くしたりすると、ヘッドをフレームで強固に支えることができなくなる。このため、インクジェットヘッドの強度や剛性が不足し、印字品質を低下させたり、ヘッド寿命を低下させたりするという問題があった。
【0007】
また、上述のように、電気機械変換素子の駆動回路を、板状部材に実装したインクジェットヘッドにおいては、板状部材に対して立体的に配線を行うことができず、電気機械変換素子や駆動回路への配線部材の引き出し個所を板状部材の縁部に設けなくてはならない。このため、フレームで配線部材をカバーするためには、フレームとの接合個所を板状部材の端部のさらに外側に余分に設ける必要がある。したがって、ヘッドが大型化し、コストアップを招くという問題があった。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、配線部材の劣化を防止しつつ、ヘッド強度を保ち、ヘッドの大型化、コストアップを防ぐことのできるインクジェットヘッド、インクジェット記録装置およびインクジェットヘッド製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、複数のノズル孔からインク滴を吐出するインクジェットヘッドであって、インクの流路が形成された第1板状部材と、前記流路が形成され、前記第1板状部材の主面の面積に比べて面積の小さい主面を有し、前記第1板状部材の主面の一部である第1領域に積層された第2板状部材と、前記複数のノズル孔それぞれに連通する複数の液室各々に対応して設けられ、前記ノズル孔からインク滴を吐出させる電気機械変換素子と、前記電気機械変換素子の駆動電源を供給する配線部材と、前記第2板状部材の縁部のうち、前記第1板状部材の縁部より内側に位置する縁部に形成され、前記配線部材と電気的に接続する接続端子と、前記第1板状部材よりも上位に積層された第3板状部材の、積層方向において上方に位置する主面である上面に接合する第1接合面と、前記第1板状部材の前記主面のうち前記第2板状部材が積層されていない第2領域に接合する第2接合面とを有し、前記第1板状部材、前記第2板状部材、前記第3板状部材および前記配線部材を覆って保護するフレーム部材とを備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、インクジェット記録装置であって、複数のノズル孔からインク滴を吐出するインクジェットヘッドであって、インクの流路が形成された第1板状部材と、前記流路が形成され、前記第1板状部材の主面の面積に比べて面積の小さい主面を有し、前記第1板状部材の主面の一部である第1領域に積層された第2板状部材と、前記複数のノズル孔それぞれに連通する複数の液室各々に対応して設けられ、前記ノズル孔からインク滴を吐出させる電気機械変換素子と、前記電気機械変換素子の駆動電源を供給する配線部材と、前記第2板状部材の縁部のうち、前記第1板状部材の縁部より内側に位置する縁部に形成され、前記配線部材と電気的に接続する接続端子と、前記第1板状部材よりも上位に積層された第3板状部材の、積層方向において上方に位置する主面である上面に接合する第1接合面と、前記第1板状部材の前記主面のうち前記第2板状部材が積層されていない第2領域に接合する第2接合面とを有し、前記第1板状部材、前記第2板状部材、前記第3板状部材および前記配線部材を覆って保護するフレーム部材とを備えたインクジェットヘッドを搭載したことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、インク滴を吐出する複数のノズル孔が形成された板状部材を含む複数の板状部材であって、積層された複数の板状部材を備え、複数の前記ノズル孔それぞれに連通する複数の液室と、前記液室各々に対応して設けられ、前記ノズル孔からインク滴を吐出させる電気機械変換素子と、前記電気機械変換素子の駆動電源を供給する配線部材とを備えたインクジェットヘッドを製造するインクジェットヘッド製造方法であって、インクの流路が形成された第1板状部材の積層方向において上方に位置する主面である上面の一部である第1領域に、縁部に前記配線部材と電気的に接続する接続端子が形成された第2板状部材であって、前記第1板状部材の主面の面積に比べて面積の小さい主面を有する前記第2板状部材を、前記接続端子が形成された前記縁部が前記第1板状部材の縁部より内側に位置するように積層したときに、前記第1板状部材の前記上面のうち前記第2板状部材が積層されていない第2領域と、前記第1板状部材よりも上位に積層された第3板状部材の、積層方向において上方に位置する主面である上面とを同一平面上に位置させるための曲げ部を前記第1板状部材に形成する形成工程と、前記第3板状部材の前記上面とフレーム部材の接合面とを接合すると同時に、前記第2領域と前記フレーム部材の接合面とを接合することにより、前記第1板状部材、前記第2板状部材、前記第3板状部材および前記配線部材を覆って保護する接合工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、比較的面積の大きい主面を有する第1板状部材上に比較的面積の小さい主面を有する第2板状部材を積層し、第1板状部材の端部よりも内側配置された端部に接続端子を配置し、フレーム部材を第1板状部材および最上位に積層された第3板状部材に接合させることにより、配線部材や接続端子を覆うことにより、配線部材の劣化を防止しつつ、ヘッドの強度を保ち、ヘッドの大型化、コストアップを防ぐことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、第1の実施の形態にかかるインクジェットヘッド1の構成を示す分解斜視図である。
【図2】図2は、図1におけるIV−IV線で切断したインクジェットヘッド1の断面の一部を示す図である。
【図3】図3におけるV−V線で切断したインクジェットヘッド1の断面の一部を示す図である。
【図4】図4は、第2の実施の形態にかかるインクジェットヘッド2の断面図である。
【図5】図5は、第3の実施の形態にかかるインクジェットヘッド3の断面図である。
【図6】図6は、第4の実施の形態にかかるインクジェットヘッド4の断面図である。
【図7−1】図7−1は、第4の実施の形態にかかる曲げ部形成工程を説明するための図である。
【図7−2】図7−2は、積層工程を説明するための図である。
【図7−3】図7−3は、接合工程を説明するための図である。
【図8−1】図8−1は、第5の実施の形態にかかる曲げ部形成工程および積層工程を説明するための図である。
【図8−2】図8−2は、第5の実施の形態にかかる接合工程を説明するための図である。
【図9】図9は、第6の実施の形態にかかる画像記録装置100の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかるインクジェットヘッド、インクジェット記録装置およびインクジェットヘッド製造方法の最良な実施の形態を詳細に説明する。
【0015】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態にかかるインクジェットヘッド1の構成を示す分解斜視図である。図2は、図1におけるIV−IV線で切断したインクジェットヘッド1の断面の一部を示す図である。図3は、図1におけるV−V線で切断したインクジェットヘッド1の断面の一部を示す図である。
【0016】
図1に示すように、インクジェットヘッド1は、複数の板状部材10〜30と、フレーム部材40と、配線部材50とを備えている。板状部材10、板状部材20および板状部材30は、この順に積層され、積層構造を形成している。ここで、板状部材10は、第1板状部材として機能し、板状部材20,30は、第2板状部材として機能し、板状部材30は、最上位に積層された第3板状部材として機能する。すなわち、本実施の形態におけるインクジェットヘッド1においては、第2板状部材としての板状部材30は、第3板状部材としても機能する。なお、実施の形態においては、説明の便宜上、積層方向A、すなわち、板状部材10からフレーム部材40に向かう方向を上方向とする。
【0017】
板状部材10は、インク滴を吐出する複数のノズル孔17を有している。板状部材20は、複数の個別インク供給口25を有している。図2に示すように、板状部材20の下側の主面22には、複数の個別インク供給口25それぞれに対応して複数の個別液室26が形成されている。各個別液室26はそれぞれ、ノズル孔17に連通している。板状部材30は、共通インク流路35を有している。共通インク流路35は、個別インク供給口25にインクを供給する。
【0018】
図1に示すように、フレーム部材40には、図示しないインクタンクから共通インク流路35にインクを供給するインク供給口44が、フレーム部材40の厚さ方向に貫通して設けられている。フレーム部材40は、第1接合面42および第2接合面43において、積層された板状部材10〜30と直接または間接的に接合する。これにより、インクタンクからインク供給口44、共通インク流路35および個別インク供給口25を経由し、ノズル孔17に到達するインク流路が形成される。すなわち、板状部材10〜30には、インクの流路が形成されている。また、フレーム部材40は、板状部材10〜30と接合することにより、板状部材10〜30および後述の配線部材を覆い、これらを保護する。
【0019】
板状部材20は、シリコンで形成されている。さらに、個別液室26などの構造体は、板状部材20にドライエッチングや異方性ウェットエッチングなどの工法を施すことにより加工、形成される。これにより、精度の高い加工を行うことができる。
【0020】
板状部材20には、電気機械変換素子27と、ドライバIC28と、接続端子29が設けられている。電気機械変換素子27は、立体的に配線を行う事が困難な薄い圧電体や抵抗体などで構成されている。電気機械変換素子27は、印刷、塗布、成膜、貼り付けなどの方法により形成される。ドライバIC28の駆動電圧出力は、電気機械変換素子27と接続している。
【0021】
ドライバIC28のI/Oの他、駆動電源入力などから引き出された配線は、接続端子29に接続している。接続端子29は、板状部材20の所定の一辺を形成する縁部24に平面的に配置されている。接続端子29は、配線部材50に接続している。配線部材50は、たとえば、FPC(Flexible Printed Circuit)やFFC(Flexible Flat Cable)などである。ドライバIC28は、接続端子29および配線部材50を介し、図示せぬ上位制御装置と接続している。ドライバIC28は、上位制御装置から送られる印字データに従って、駆動する電気機械変換素子27を選択する。
【0022】
フレーム部材40は、さらに配線部材50を外部に引き出すための引出口45を有している。配線部材50は、縁部51を含む一部の領域がフレーム部材40に内包され、縁部52は引出口45からインクジェットヘッド1の外部に引き出されている。ここで、縁部51は、接続端子29に接続する側の縁部であり、縁部52は、縁部51に対向する縁部である。
【0023】
以上の構成において、配線部材50からドライバIC28に駆動電源が供給される。ドライバIC28は、選択した電気機械変換素子27へ駆動電圧を印加する。これにより、選択された電気機械変換素子27が駆動し、駆動した電気機械変換素子27に対応する個別液室26の圧力変化を生み出すことにより、対応するノズル孔17からインク滴が吐出される。
【0024】
図1および図3に示すように、板状部材20の主面21の面積は、板状部材10の主面11の面積に比べて小さい。より詳しくは、板状部材20は、縁部24に略垂直な辺を形成する縁部23の長さが、板状部材10の対応する縁部13の長さに比べて短くなるように形成されている。そして、積層構造において、板状部材20の、接続端子29が形成された縁部24は、板状部材10の対応する縁部14の内側に配置される。すなわち、配線部材50を引き出す部分の板状部材20の外形寸法は、板状部材10の対応する部分の外形寸法に比べて小さい。
【0025】
このように、板状部材20は、主面21の面積が板状部材10の主面11の面積に比べて小さく、縁部23の長さが板状部材10の縁部13の長さに比べて短い。このため、板状部材20は、板状部材10の主面11全面に積層されるのではなく、その一部である第1領域15のみに積層される。すなわち、板状部材10には、板状部材20が積層された状態において、接続端子29が形成された縁部24の外側に、上部に板状部材が積層されていない領域である第2領域16が存在する。ここで、板状部材10の第1領域15は、ノズル孔17が形成されている領域であり、第2領域16は、ノズル孔17が形成されていない領域である。
【0026】
板状部材30についても、板状部材20と同様である。すなわち、板状部材30の主面31の面積が板状部材10の主面11に比べて小さく、板状部材10の縁部13に略平行な縁部33の長さが縁部13の長さに比べて短くなるように形成されている。そして、積層構造において、板状部材30の縁部34は、板状部材10の対応する縁部14の内側に配置される。ここで、縁部34は、縁部33に略垂直な辺を形成している。なお、本実施の形態にかかる板状部材30においては、縁部33の長さが板状部材20の縁部23よりもさらに短くなるように形成されている。
【0027】
フレーム部材40の下側には、第1接合面42と第2接合面43が形成されている。第1接合面42および第2接合面43は、いずれも平面状に形成されている。このように、第1接合面42および第2接合面43を平面状にすることにより、第1接合面42と第2接合面43の面出しを容易にすることができる。第1接合面42と第2接合面43は同一平面上に形成されておらず、フレーム部材40上側の主面41から第1接合面42までの積層方向Aにおける長さ、すなわち第1接合面42の高さは、主面41から第2接合面43までの積層方向Aにおける長さ、すなわち第2接合面43の高さに比べて短い。ここで、第1接合面42と第2接合面43の高さの差は、板状部材10の主面11と、最上位層を形成する板状部材30の上方の主面31の積層方向Aにおける高さの差に等しい。
【0028】
以上の構成により、フレーム部材40の第2接合面43を板状部材10の第2領域16と接合させるとともに、フレーム部材40の第1接合面42を、積層構造における最上位層である板状部材30の上方の主面32と接合させることができる。
【0029】
このように、フレーム部材40が配線部材50の少なくとも一部を内包するので、配線部材50や配線部材50の電気的接合部へのインクミストの付着を防ぐことができる。さらに、複数の板状部材10〜30の積層構造の一部において、板状部材10上に積層されている板状部材20、30の主面21、32の面積が少なくともフレーム部材40の第2接合面43の面積分だけ小さくなるように板状部材20、30を形成し、接続端子29が形成された縁部24および縁部34が縁部14よりも内側に位置するように板状部材20、30を積層し、これにより生じたスペースにフレーム部材40を配置することとしたので、板状部材10の縁部14の外側にフレーム部材40を配置する場合に比べて、インクジェットヘッド1の小型化を図ることができ、コストアップを防ぐことができる。
【0030】
さらに、フレーム部材40は、第2接合面43において板状部材10と接合するとともに、第1接合面42において、最上位層の板状部材30とも接合する。すなわち、フレーム部材40は、複数層が積層されている領域とも接合することができる。したがって、フレーム部材40により板状部材10〜30の積層構造を強固に支えることができ、インクジェットヘッド1の強度および剛性を十分確保することができる。すなわち、信頼性の高いインクジェットヘッド1を提供することができる。
【0031】
また、フレーム部材40の第1接合面42は、その面積および形状が第2板状部材20の主面21の面積および形状とほぼ同一に形成されており、第1接合面42は、板状部材30の主面32だけでなく、接続端子29の上部を覆っている。そして、配線部材50の上部と第1接合面42の間の隙間は接着剤46により封止される。このように、接続端子29の上部をフレーム部材40で覆うことにより、接続端子29と配線部材50の接合部を補強することができる。
【0032】
また、板状部材20は、シリコンで形成される。シリコンで形成された板状部材は、予め規定されたサイズのシリコンウエハから切り出されるので、板状部材20の面積を板状部材10に比べて小さくすることにより、シリコンウエハ1枚からの板状部材20の取数を増加させることができる。したがって、大幅な低コスト化を図ることができる。
【0033】
第1板状部材および第2板状部材の数は、実施の形態に限定されるものではない。たとえば、第1の変更例としては、インクジェットヘッド1は、積層された2以上の第1板状部材を備えてもよい。また、インクジェットヘッド1は、積層された3以上の第2板状部材を備えてもよい。この場合には、複数の第2板状部材のうち最上位に積層された第2板状部材は、積層構造における最上位に積層された第3板状部材としても機能する。また、インクジェットヘッド1は、1つの第2板状部材を備えることとしてもよい。この場合には、当該第2板状部材は積層構造における最上位に積層された第3板状部材としても機能する。
【0034】
第1の実施の形態にかかる板状部材20は、接続端子29が形成されている縁部24としての辺全体が、対応する板状部材10の縁部14の内側に位置するように形成されていたが、縁部24のうち接続端子29が形成されている部分のみが板状部材10の縁部14よりも内側に配置されていればよく、縁部24の形状、外形寸法は実施の形態に限定されるものではない。例えば、第2の変更例として、縁部24に凹部を形成し、この凹部に接続端子29を形成してもよい。この場合、縁部24のうち凹部のみが板状部材10の縁部14の内側に配置され、縁部24の他の部分は縁部14上に配置される。
【0035】
さらに、第3の変更例としては、板状部材10〜30の形状は、略長方形状に限定されるものではなく、台形状や円形状など他の形状であってもよい。板状部材20の縁部のうち接続端子29が形成された縁部が、板状部材10の縁部の内側に配置されていればよく、板状部材10〜30の形状は、実施の形態に限定されるものではない。
【0036】
このように、板状部材20の外形寸法を配線部材50を引き出す部分において小さくし、この寸法差が生じた領域でフレーム部材40と面積の大きい板状部材10とを接合すればよく、これによりインクジェットヘッド1の小型化を実現しつつ、強度および剛性を確保することができる。
【0037】
配線部材を板状部材に対して平面的に配された接続端子に接続することが好ましいが、これにかえて、第3の変更例として、板状部材に対して立体的に配された接続端子に接続することとしてもよい。また、ドライバIC28と電気機械変換素子27の接続は、ワイヤボンディングによる立体配線であってもよく、また他の例としては、特開2009−056662号公報に開示された構成のように、ドライバICが板状部材に実装されておらず、配線部材から直接電気機械変換素子に配線されている構成であってもよい。
【0038】
(第2の実施の形態)
図4は、第2の実施の形態にかかるインクジェットヘッド2の断面図である。図4は、図1に示すV−V線に相当する線で切断したインクジェットヘッド2の断面の一部を示している。第2の実施の形態にかかるインクジェットヘッド2は、板状部材10〜30に加えて、板状部材60をさらに備えている。板状部材60は、第1板状部材として機能する。すなわち、本実施の形態にかかるインクジェットヘッド2は、2層の第1板状部材と、2層の第2板状部材を備えている。
【0039】
板状部材60は、板状部材10の主面11上に積層されている。板状部材20は、板状部材60の主面61上に積層されている。板状部材60の主面61の面積および形状は、板状部材10の主面11の面積および形状と同一である。
【0040】
第2の実施の形態にかかるインクジェットヘッド2によれば、インク流路形状が複雑な場合など、第1板状部材としての面積の大きな板状部材が板状部材10のみでは不足する場合であっても、第1板状部材としての板状部材60を追加することにより、板状部材10の第2領域16上に板状部材60が積層され、強度が増加するので、より信頼性の高いインクジェットヘッド2を提供することができる。
【0041】
なお、第2の実施の形態にかかるインクジェットヘッド2のこれ以外の構成は、第1の実施の形態にかかるインクジェットヘッド1の構成と同様である。
【0042】
(第3の実施の形態)
図5は、第3の実施の形態にかかるインクジェットヘッド3の断面図である。図5は、図1に示すV−V線に相当する線で切断したインクジェットヘッド3の断面の一部を示している。第3の実施の形態にかかるインクジェットヘッド3の板状部材10は、その主面11の面積が、第2の実施の形態にかかるインクジェットヘッド2の板状部材10の主面11の面積に比べて、少なくとも第2領域16分だけ小さく、縁部14が板状部材60の縁部64よりも内側に位置するように積層されている。
【0043】
フレーム部材40内部へのインクの侵入を防ぐ観点からは、ノズル孔17が形成されている領域の強度が必要とされるが、これ以外の領域の強度はあまり必要とされない。そこで、図5に示すように、第3の実施の形態においては、板状部材10の縁部14が板状部材60の縁部64よりも内側に位置するように、板状部材10の主面11の縁部13の長さを図4に示す第2の実施の形態にかかる縁部13よりも短くし、主面11の面積を小さくした。これにより、第2の実施の形態にかかるインクジェットヘッド2に比べて、コストを低減することができる。
【0044】
なお、第3の実施の形態にかかるインクジェットヘッド3のこれ以外の構成は、第2の実施の形態にかかるインクジェットヘッド2の構成と同様である。
【0045】
第3の実施の形態にかかる板状部材10は、その主面11の面積が板状部材20の主面21の面積よりも小さく、その縁部14が板状部材20の縁部24よりも内側に位置するように積層されているが、板状部材10と板状部材20のサイズの関係はこれに限定されるものではない。すなわち、板状部材10は、ノズル孔17が形成された領域が確保され、かつ板状部材60よりも小さく形成されればよい。第1の変更例としては、例えば、板状部材10は、板状部材20よりも大きく、その縁部14が板状部材20の縁部24よりも外側に位置してもよい。
【0046】
(第4の実施の形態)
図6は、第4の実施の形態にかかるインクジェットヘッド4の断面図である。図6は、図1に示すV−V線に相当する線で切断したインクジェットヘッド4の断面の一部を示している。
【0047】
第4の実施の形態にかかるインクジェットヘッド4のフレーム部材40においては、第1接合面42と第2接合面43は、同一平面上に位置するように形成されている。さらに、板状部材10は、第2領域15に曲げ部60を備えている。この曲げ部60により、板状部材10に段差が生じ、板状部材10の主面11のうち第2接合面43と接合する接合領域18と、第1接合面42と接合する板状部材30の主面31が同一平面上に位置する。以上の構成により、フレーム部材40と板状部材10〜30とは、同一平面上で接合される。
【0048】
図7−1から図7−3は、インクジェットヘッド4の製造方法を説明するための図である。図7−1から図7−3は、図1に示すV−V線に相当する線で切断したインクジェットヘッド4の断面の一部を示している。
【0049】
まず、図7−1に示す曲げ部形成工程においては、板状部材10に曲げ部60を形成する。このとき、板状部材10上に板状部材20、30を積層したときに、板状部材10の接合領域18と、板状部材30の主面31が同一平面上に位置するように曲げ部60を形成する。
【0050】
曲げ部60は、プレス加工により形成する。これにより、安価に曲げ部60を形成することができる。また、他の例としては、上述のように、板状部材10の主面11のうち第2接合面43と接合する接合領域18と、第1接合面42と接合する板状部材30の主面31が同一平面上に位置するような曲げ部の原型を付けた電極を用いたニッケル電気鋳造により、曲げ部60を形成してもよい。このように、電気鋳造により形成することにより、安価かつ高精度に曲げ部60を形成することができる。
【0051】
次に、図7−2に示す積層工程において、曲げ部60が形成された板状部材10の主面11のうち第1領域15上に板状部材20、30を積層する。次に、図7−3に示す接合工程において、同一平面上に形成された第1接合面42および第2接合面43を備えるフレーム部材40をそれぞれ板状部材30の主面31および板状部材10の主面11の第2領域16と接合させる。
【0052】
このように、フレーム部材40の第1接合面42と第2接合面43を同一平面上に形成し、フレーム部材40と板状部材10〜30を同一平面上において接合させることにより、フレーム部材40の接合面を一括してラッピングすることができ、ラッピングを容易化することができる。また、フレーム部材40の面出しを容易にすることができる。
【0053】
なお、第4の実施の形態にかかるインクジェット4のこれ以外の構成は、他の実施の形態にかかるインクジェットの構成と同様である。
【0054】
なお、図4に示す第2の実施の形態にかかるインクジェット2のように積層された2以上の第1板状部材を備える場合には、第1板状部材のうちフレーム部材と接合する板状部材の上方の主面と、最上位層の板状部材の上方の主面とが同一平面上に位置するように、2以上の第1板状部材それぞれに曲げ部を形成すればよい。
【0055】
(第5の実施の形態)
次に、第5の実施の形態にかかるインクジェットヘッド4について説明する。第5の実施の形態にかかるインクジェットヘッド4は、第4の実施の形態にかかるインクジェットヘッド4と製造方法が異なっている。なお、第5の実施の形態にかかるインクジェットヘッド4の構造は、第4の実施の形態にかかるインクジェットヘッド4の構造と同様である。
【0056】
図8−1および図8−2は、第5の実施の形態にかかるインクジェットヘッド4の製造方法を説明するための図である。図8−1および図8−2は、図1に示すV−V線に相当する線で切断したインクジェットヘッド4の断面の一部を示している。
【0057】
まず、図8−1に示す曲げ部形成工程において、板状部材10に曲げ部61を形成する。このとき、板状部材10上に板状部材20、30を積層したときに、板状部材10の第2領域18が、板状部材30の上方の主面31よりも上方に位置するように曲げ部61を形成する。このように曲げ部60を形成することにより、第2領域18は、上下方向に弾性を有する。
【0058】
次に、図8−2に示す接合工程において、板状部材10〜30にフレーム部材40を接合するときに、フレーム部材40の第2接合面43により接合領域18を押下することにより、第2領域18の弾性を吸収しながら第2接合面43と接合領域18とを接合する。
【0059】
これにより、板状部材10の曲げ部60の加工精度が低い場合や、フレーム部材40の第1接合面42と第2接合面43の加工精度が低い場合であっても、フレーム部材40と板状部材10〜30とを確実に接合することができる。また、これにより、低コスト化を図ることができる。
【0060】
(第6の実施の形態)
図9は、第6の実施の形態にかかる画像記録装置100の斜視図である。第1〜第5の実施の形態にかかるインクジェットヘッドは、インクジェット記録装置としての画像形成装置に適用することができる。以下、第1〜第5の実施の形態にかかるインクジェットヘッドを搭載した画像形成装置100について説明する。
【0061】
画像形成装置100の内部には、キャリッジ101が設けられており、支柱102に沿って左右に移動可能に構成されている。キャリッジ101はベルト103に繋がり、ベルト103はモータ104に繋がっている。モータ104が回転することによりベルト103が左右に動き、同時にキャリッジ101を左右に移動させる。キャリッジ101にはインクジェットヘッド105が具備されている。インクジェットヘッド105は、上述のように、第1〜第5の実施の形態において説明したインクジェットヘッドであり、図示せぬノズルが多数、複数列に渡って形成されている。インクジェットヘッド105はキャリッジ101の移動と共に左右に移動する。このように、第1〜第5の実施の形態において説明したインクジェットヘッドを備えることにより、画像形成装置100の小型化および低コスト化を図ることができる。
【0062】
さらに、画像形成装置100は、メディア106を支えるプラテン107と紙送りローラ112が設けられている。プラテン107でメディア106を支えながら、モータ109により紙送りローラ112を動かすことでメディア106を前に搬送する。
【0063】
図示しない制御装置から送られて来る画像データに従い、キャリッジ101を左に移動させながら、インクジェットヘッド105からメディア106に液滴を吐出させ、メディア106を前方に所望の距離だけ移動させた後、続いてキャリッジ101を右に移動させながらインクジェットヘッド105からメディア106に液滴を吐出させる。以上の動作を繰り返すことによりメディア106上一面に所望の画像を得ることができる。
【0064】
キャリッジ101は、印写を行わない際にはメンテナンス装置110の上で待機しており、ここでは、インクジェットヘッド105からインクを吸引し、吐出しなくなったノズルを回復させたり、インクジェットヘッド105をキャップしてノズルを封止し、インクが乾燥してノズルから吐出しなくなるのを防いだりすることが可能となっている。
【0065】
以上のように、本実施の形態の画像形成装置100は、第1〜第5の実施の形態にかかるインクジェットヘッドを搭載しているので、装置の低コスト化を図ることができる。また、信頼性の高い画像形成装置100を提供することができる。
【符号の説明】
【0066】
1〜4 インクジェットヘッド
10、20、30 板状部材
17 ノズル孔
25 個別インク供給口
26 個別液室
27 電気機械変換素子
28 ドライバIC
29 接続端子
35 共通インク流路
40 フレーム部材
50 配線部材
60 曲げ部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0067】
【特許文献1】特開2005−254616号公報
【特許文献2】特開2006−256029号公報
【特許文献3】特開2010−094880号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズル孔からインク滴を吐出するインクジェットヘッドであって、
インクの流路が形成された第1板状部材と、
前記流路が形成され、前記第1板状部材の主面の面積に比べて面積の小さい主面を有し、前記第1板状部材の主面の一部である第1領域に積層された第2板状部材と、
前記複数のノズル孔それぞれに連通する複数の液室各々に対応して設けられ、前記ノズル孔からインク滴を吐出させる電気機械変換素子と、
前記電気機械変換素子の駆動電源を供給する配線部材と、
前記第2板状部材の縁部のうち、前記第1板状部材の縁部より内側に位置する縁部に形成され、前記配線部材と電気的に接続する接続端子と、
前記第1板状部材よりも上位に積層された第3板状部材の、積層方向において上方に位置する主面である上面に接合する第1接合面と、前記第1板状部材の前記主面のうち前記第2板状部材が積層されていない第2領域に接合する第2接合面とを有し、前記第1板状部材、前記第2板状部材、前記第3板状部材および前記配線部材を覆って保護するフレーム部材と
を備えたことを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項2】
前記第2板状部材は、前記第3板状部材であって、
前記フレーム部材の前記第1接合面は、前記第3板状部材としての前記第2板状部材の前記上面に接続することを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド。
【請求項3】
前記フレーム部材の前記第1接合面および前記第2接合面は、同一平面上に位置するように形成され、
前記第1板状部材は、前記第1領域と前記第3板状部材の前記上面とを同一平面上に位置させるための曲げ部を有することを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェットヘッド。
【請求項4】
前記第2板状部材は、シリコン基板であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のインクジェットヘッド。
【請求項5】
前記第1接合面および前記第2接合面は平面状に形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のインクジェットヘッド。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のインクジェットヘッドを搭載したことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項7】
インク滴を吐出する複数のノズル孔が形成された板状部材を含む複数の板状部材であって、積層された複数の板状部材を備え、複数の前記ノズル孔それぞれに連通する複数の液室と、前記液室各々に対応して設けられ、前記ノズル孔からインク滴を吐出させる電気機械変換素子と、前記電気機械変換素子の駆動電源を供給する配線部材とを備えたインクジェットヘッドを製造するインクジェットヘッド製造方法であって、
インクの流路が形成された第1板状部材の積層方向において上方に位置する主面である上面の一部である第1領域に、縁部に前記配線部材と電気的に接続する接続端子が形成された第2板状部材であって、前記第1板状部材の主面の面積に比べて面積の小さい主面を有する前記第2板状部材を、前記接続端子が形成された前記縁部が前記第1板状部材の縁部より内側に位置するように積層したときに、前記第1板状部材の前記上面のうち前記第2板状部材が積層されていない第2領域と、前記第1板状部材よりも上位に積層された第3板状部材の、積層方向において上方に位置する主面である上面とを同一平面上に位置させるための曲げ部を前記第1板状部材に形成する形成工程と、
前記第3板状部材の前記上面とフレーム部材の接合面とを接合すると同時に、前記第2領域と前記フレーム部材の接合面とを接合することにより、前記第1板状部材、前記第2板状部材、前記第3板状部材および前記配線部材を覆って保護する接合工程と
を有することを特徴とするインクジェットヘッド製造方法。
【請求項8】
前記形成工程において、前記第2領域の少なくとも一部が前記第3板状部材の前記上面よりも積層方向において上方に位置するように前記曲げ部を形成し、
前記接合工程において、前記第1板状部材の前記第2領域を前記フレーム部材で押圧することにより、前記第2領域と前記第3板状部材の前記上面とが同一平面上に位置するように前記曲げ部を加工すると同時に、前記第3板状部材の前記上面と前記フレーム部材の前記接合面とを接合し、前記第1板状部材の前記第2領域と前記フレーム部材の前記接合面とを接合することを特徴とする請求項7に記載のインクジェットヘッド製造方法。
【請求項9】
前記曲げ部は、曲げ加工により形成されることを特徴とする請求項7に記載のインクジェットヘッド製造方法。
【請求項10】
前記曲げ部は、当該曲げ部に対応する原型を付けた電極を用いた電気鋳造により形成されることを特徴とする請求項7に記載のインクジェットヘッド製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図7−3】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−59907(P2013−59907A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199574(P2011−199574)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】