説明

インクジェット捺染用インク及びそれを用いたインクジェット捺染方法

【課題】、出射性、特にはヘッドの高速駆動時での出射性および経時保存した時の出射性に優れるインクジェット捺染用インク及びインクジェット捺染方法を提供する。
【解決手段】少なくとも水、水溶性染料及び水溶性有機溶媒を含有するインクジェット捺染用インクにおいて、粒径が1〜30nmの微粒子を該インクジェット捺染用インク中に5×102〜80×103個/ml含有することを特徴とするインクジェット捺染用インク及びインクジェット捺染方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット捺染用インクおよびにインクジェット捺染用記録方法に関するものであり、特に、高速駆動時の出射性および経時保存後の出射性に優れる捺染用に用いるインクジェット捺染用インクおよびにインクジェット捺染方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、捺染の分野において、納期短縮、少量多品種生産対応として、製版工程が必要ないインクジェット捺染方式が望まれている。インクジェット捺染方式では、インクを長期間にわたって保存、使用する場合が多く、その保存安定性を高めることが重要である。また、同時に出射安定性も重要であり、インクジェット用インクにおいては、不純物が様々な不具合を生じさせることは、良く知られており、例えば、不純物が多いために濾過性が悪化したり、連続出射時に曲がりが生じたり、欠が発生したりなど、出射性が悪化する場合がある。更に、近年はインクジェットにより製品を本格的な生産に用いる需要も増えてきており、プリント速度の向上についての要望が年々高まりつつある。
【0003】
このため従来より、染料を精製することが知られている。例えば、多価金属塩を除去するために染料を精製して使用することが記載されている(例えば、特許文献1、2を参照)。また、残留する塩素イオンや硫酸物イオンの量をおさえることが記載されている(例えば、特許文献3を参照)。また、活性炭を用いた染料精製の例として、いくつかの記載がある(例えば、特許文献4、5を参照)。これらの報告によれば、製造時に不純物を除去するという観点で発明がなされている。
【0004】
また、インク中の不純物をなるべく減らすという観点から、インク中の粒子の総体積量を規定する事により、出射の安定性を向上させることが記載されている(例えば、特許文献6を参照)。
【0005】
しかしながら、インクジェット用インクは製造から流通を経て消費されるまでに長期間保存することが求められ、その間に発生する分解物、例えば染料分解物が引き起こす様々な問題に対しては、充分な効果を発揮するものではなかった。さらに、近年のプリント速度の向上時に発生する出射に関する不具合については、まだ問題点としても認識されておらず、当然十分な効果を発揮するものではなかった。
【特許文献1】特開平05−5053号公報
【特許文献2】特開平2004−295472号公報
【特許文献3】特開平05−186727号公報
【特許文献4】特開平11−19404号公報
【特許文献5】特開2005−29610号公報
【特許文献6】特許第3027982号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、この様な事態に鑑み、本発明の目的は、出射性、特にはヘッドの高速駆動時での出射性および経時保存した時の出射性に優れるインクジェット捺染用インク及びインクジェット捺染方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。
【0008】
1.少なくとも水、水溶性染料及び水溶性有機溶媒を含有するインクジェット捺染用インクにおいて、粒径が1〜30nmの微粒子を該インクジェット捺染用インク中に5×102〜80×103個/ml含有することを特徴とするインクジェット捺染用インク。
【0009】
2.前記水溶性染料を5〜20質量%含有することを特徴とする前記1記載のインクジェット捺染用インク。
【0010】
3.前記微粒子が活性炭粒子であることを特徴とする前記1又は2記載のインクジェット捺染用インク。
【0011】
4.前記微粒子の含有量が5×102〜20×103個/mlであることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項記載のインクジェット捺染用インク。
【0012】
5.インク調液後に中空糸膜を使用した脱気工程を用いることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項記載のインクジェット捺染用インク。
【0013】
6.前記脱気工程が、中空糸膜及び超音波処理装置を用いた脱気工程を含むことを特徴とする前記5記載のインクジェット捺染用インク。
【0014】
7.前記1〜6のいずれか1項記載のインクジェット捺染用インクを、駆動周波数が10kHz〜20kHzのプリントヘッドを用いて印字することを特徴とするインクジェット捺染方法。
【0015】
8.前記プリントヘッドがピエゾ駆動方式を用いてインクを吐出し、印字することを特徴とする前記7記載のインクジェット捺染方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、出射性、特にはヘッドの高速駆動時での出射性および経時保存した時の出射性に優れるインクジェット捺染用インク及びインクジェット捺染方法を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明を更に詳しく説明する。
【0018】
即ち、本発明者らは鋭意検討の結果、出射性、特にはヘッドの高速駆動時での出射性および経時保存後の出射性に優れるインクジェット捺染用インク(以後単にインクともいう)を見出した。
【0019】
インクジェットの記録方式には種々のタイプのものがあるが近年主流であるオンデマンド型の記録方式はピエゾ素子を用いるいわゆるピエゾ方式(圧電素子方式)とサーマルジェット方式(バブルジェット(登録商標))に分類される。ピエゾ方式はインク吐出時に多数回加圧、減圧を繰り返す為キャビテーションによる微小な気泡が発生しやすくインク吐出時にドット抜け、着弾位置ずれ等の原因となり粒状性等のプリント品質を劣化させる事が知られている。一般にキャビテーションとはある温度の液体の圧力がその温度によって決まる蒸気圧より低くなると液体が蒸発し気泡となる物理現象である。
【0020】
その為用いられるインクは通常脱気処理が行われており、インクに含有される気体量を出来るだけ少なくして吐出時の気泡発生を防止している。水溶性染料を用いたような溶解系のインクにおいては、脱気処理を行う事でキャビテーションは起きない事と認識されているが、本発明者らは溶解系インクにおいても、高速で駆動するヘッドによる吐出時や、経時保存後のインクで出射不良が生じる現象において、キャビテーションの影響があることを見出した。更には、本来溶解系には存在しないはずである微粒子が、微粒子がある範囲以外の量で存在する時に、特に駆動周波数が高いヘッドを用いて出射した場合に、長時間出射を続けると全ノズルがほぼ同時に出射しなくなる現象が見られる。
【0021】
この様に本発明者らは、適度な微粒子数にコントロールすることにより、インクの出射性、経時保存後の出射性に優れた効果を発揮することを見出した。
【0022】
本発明のインクジェット捺染用インクは、インク中に少なくとも水、水溶性染料、水溶性有機溶媒を含有し、平均粒径が1〜30nmの微粒子がインク中に5×102〜80×103個/mlの割合で含まれることが好ましい。更にインク中の微粒子が5×102〜20×103個/mlである事が特に好ましい。インク中の微粒子数がこの範囲より多い場合、微粒子に付着した気泡核の影響で、キャビテーションが発生し出射不良を引き起こしてしまう。特にはヘッドの駆動周波数が10kHz以上の高速駆動でインクが出射される場合には、この減少が顕著である。また、微粒子数がこの範囲より少ない場合も、出射不良を引き起こしてしまう。特にはインクを経時で保存した後のインク出射安定性の低下が顕著に発生する。原因については明確なメカニズムが確認できてはいないが、以下のように推定される。
【0023】
インク中の微粒子の多くは、精製した染料から持ち込まれる活性炭である事は確認されている。インク作製時の最終工程にフィルターをかける事で、ほとんどの持ち込み活性炭や未溶解染料等の固形分は除去されるのだが、わずかな量においてはインク中に残存している。本発明の範囲以上での残存量の場合は、既に説明したように微粒子に付着した気泡核によりキャビテーションが発生するが、逆に少ない場合には、経時保存による分解物、例えば染料や界面活性剤の分解物により、出射性を損なっている。したがって本発明の範囲の下限値の量の活性炭がインク中に残存する事で、分解物を吸着しているものと推定している。
【0024】
通常の紙媒体への印刷を目的とした市販プリンター用インクにおいては、染料濃度は通常2〜4%前後であり、染料から持ち込まれる微粒子の数も特には考慮する必要はないが、本発明のような捺染を用途としたインクについては、染料濃度が非常に高く、5%〜20%の範囲で使用される場合は、多くの持ち込み微粒子があり、その量を本発明の範囲でコントロールする事で、安定した出射性を確保できる。
【0025】
微粒子をコントロールする手段は様々な方法が考えられるが、代表的なものとしてはろ過による微粒子除去方法が好ましい。更に、フィルター径、フィルター材料、フィルター時の通液速度等を適宜選択する事で本発明の範囲にコントロールする事で、効果を得る事ができる。
【0026】
微粒子量の測定方法は、適宜選択可能であるが、コールターカウンター装置を用いての測定が好ましい。測定原理は周知な方法であるため割愛するが、アパーチャーサイズを粒子サイズに合わせて用いる必要がある。本発明における微粒子量の測定には、50μmのアパーチャー径を用いた際の測定結果がより好ましい範囲を検出できる事が分かっているが、その条件に限定されるものではない。測定装置としては、ベックマン・コールター社の精密粒度分布測定装置Multisizer3を用いて測定した。
【0027】
本発明における活性炭は、吸着性の強い、大部分が炭素質の炭をさし、末状,顆粒状またはペレット状の無定形炭素であり、無数の微細孔を有するので単位容積当たり,非常に大きな表面積をもつ特徴を有する。本発明に於いては、様々な活性炭を使用することが可能であり、溶剤回収用活性炭、自動車キャニスター用活性炭、水処理用活性炭、薬液脱色用活性炭などを使用することができる。また、形状は粉末状が好ましく、製法としては水蒸気炭が好ましい。
【0028】
インク中から溶存気体を脱気する方法としては、大きく分けて、煮沸や減圧等の物理的方法により脱気する方法と、吸収剤をインク中に混入させる化学的方法とがある。
【0029】
本発明においては、いかなる手段にて脱気を行うことは可能である。特に、気体透過性のある中空糸膜内にインクを通液し、中空糸膜の外表面側を減圧することにより、インク中の溶存気体を透過、除去する方法は、インクの物性に悪影響を与えずに効率よくインク中の溶存気体を除去することができ、好ましい。
【0030】
本発明に使用される中空糸膜の脱気モジュールは市販のものが利用可能である。例えば三菱レイヨン(株)MHFシリーズ、大日本インキ化学工業(株)SEPARELシリーズ等があげられる。中空糸膜モジュールを用いての脱気処理は、例えばモジュール端部のインク供給口より中空糸膜の内側にインクを供給しモジュール側壁のガス脱気口より吸引して中空糸膜の外側を10KPa以下の減圧にすると共に膜を透過したインク中の溶存ガスを排出し、脱気されたインクはモジュールの他方の端部のインク出口より出る。この中空糸膜モジュールを用いての脱気処理は中空糸膜の外側にインクを供給し内側を減圧するようにすることもできる。
【0031】
また、本発明においては、脱気工程中に超音波処理装置を通す事により、粒子の表面についている微小な気泡核を取り除く事が特に望ましい。特には、ヘッドの高速駆動時に発生するキャビテーション防止に特に好ましい。本発明に使用する超音波処理装置は特に限定されないが(株)日本精機製作所製 循環式RUS−600T(周波数20kHz、最大出力600W)、(株)ブランソン製連続式モデル900型(周波数20kHz、最大出力900W)等が使用可能である。超音波処理条件としては周波数、振幅、照射エネルギーがあげられるが、周波数については30KHzより大きいと凝集作用が強くなり分散性が劣化するので10〜30kHzの範囲で行う事が好ましい。振幅についても大きいほどキャビテーション圧が高いため一般的な振幅範囲20〜60μm範囲で行える。又照射エネルギーは1*104〜1*105J、好ましくは2*104〜8*104Jである。照射エネルギーが低すぎると気泡核を除去する能力が不十分であり、高すぎると温度上昇が起こり凝集を引き起こす。又中空糸膜による脱気処理後一旦釜等に溜めてから超音波脱気を行っても構わないが連続で行う方が好ましい。
【0032】
インク中の溶存酸素濃度は、出射安定性において2ppm以下である事と好ましく、特には1ppm以下である事がより好ましい。
【0033】
インク中の溶存酸素濃度は、オストワルド法(実験化学講座1基本操作[I]、241頁、1975年、丸善)や、マススペクトル法で測定することができるし、ガルバニ電池型やポーラログラフ型などの簡便な酸素濃度計や比色分析法で測定することができる。市販の溶存酸素濃度計としては(東亜電波工業(株)製DO−30A型)を挙げることができる。
【0034】
本発明における着色剤としては、例えば、反応性染料、酸性染料、直接染料などの水溶性染料を挙げることができる。本発明においては、いずれの着色剤においても使用できるが、布帛が綿、絹等の素材の場合は反応性染料及び水性媒体から構成されるインクが好ましく用いられ、ナイロン、羊毛、絹、レーヨン等の素材の場合は酸性染料、直接染料等と水性媒体から構成されるインクが好ましく用いられる。又、布帛がポリエステル素材の場合は分散性染料と水性媒体から構成されるインクが好ましく用いられる。
【0035】
本発明に好ましい酸性染料の具体的化合物を以下に示す。ただし、これらに例示した化合物に限定されるものではない。
【0036】
本発明に好ましい酸性染料は、
C.I.Acid Yellow1,3,6、11,17,18,19,23,25,36,38,40,40:1,42,44,49,59,59:1,61,65,67,72,73,79,99,104,159,169,176,184,193,200,204,207,215,219219:1,220,230,232,235,241,242,246、
C.I.Acid Orange3,7,8,10,19,22,24,51,51S,56,67,74,80,86,87,88,89,94,95,107,108,116,122,127,140,142,144,149,152,156,162,166,168、
C.I.Acid Red1,6,8,9,13,18,27,35,37,52,54,57,73,82,88,97,97:1,106,111,114,118,119,127,131,138,143,145,151,183,195,198,211,215,217,225,226,249,251,254,256,257,260,261,265,266,274,276,277,289,296,299,315,318,336,337,357,359,361,362,364,366,399,407,415、447
C.I.Acid Vioret 17,19,21,42,43,47,48,49,54,66,78,90,97,102,109,126、
C.I.Acid Blue1,7,9,15,23,25,40,61:1,62,72,74,80,83,90,92,103,104,112,113,114,120,127,127:1,128,129,138,140,142,156,158,171,182,185,193,199,201,203,204,205,207,209,220,221,224,225,229,230,239,258,260,264,277:1,278,279,280,284,290,296,298,300,317,324,333,335,338,342,350、
C.I.Acid Green9,12,16,19,20,25,27,28,40,43,56,73,81,84,104,108,109、
C.I.Acid Brown2,4,13,14,19,28,44,123,224,226,227,248,282,283,289,294,297,298,301,355,357,413、
C.I.Acid Black1,2,3,24,24:1,26,31,50,52,52:1,58,60,63,63S,107,109,112,119,132,140,155,172,187,188,194,207,222
本発明に好ましい反応性染料の具体的化合物を以下に示す。ただし、これらに例示した化合物に限定されるものではない。
【0037】
C.I.Reactive Yellow2,3,7,15,17,18,22,23,24,25,27,37,39,42,57,69,76,81,84,85,86,87,92,95,102,105,111,125,135,136,137,142,143,145,151,160
,161,165,167,168,175,176、
C.I.Reactive Orange1,4,5,7,11,12,13,15,16,20,30,35,56,64,67,69,70,72,74,82,84,86,87,91,92,93,95,107、
C.I.Reactive Red2,3,3:1,5,8,11,21,22,23,24,28,29,31,33,35,43,45,49,55,56,58,65,66,78,83,84,106,111,112,113,114,116,120,123,124,128,130,136,141,147,158,159,171,174,180,183,184,187,190,193,194,195,198,218,220,222,223,226,228,235、
C.I.Reactive Violet1,2,4,5,6,22,23,33,36,38、
C.I.Reactive Blue2,3,4,7,13,14,15,19,21,25,27,28,29,38,39,41,49,50,52,63,69,71,72,77,79,89,104,109,112,113,114,116,119,120,122,137,140,143,147,160,161,162,163,168,171,176,182,184,191,194,195,198,203,204,207,209,211,214,220,221,222,231,235,236、
C.I.Reactive Green8,12,15,19,21、
C.I.Reactive Brown2,7,9,10,11,17,18,19,21,23,31,37,43,46、
C.I.Reactive Black5,8,13,14,31,34,39等が挙げられる。
【0038】
本発明に好ましい直接染料の具体的化合物を以下に示す。ただし、これらに例示した化合物に限定されるものではない。
【0039】
C.I.Direct Yellow8,9,10,11,12,22,27,28,39,44,50,58,86,87,98,105,106,130,137,142,147,153、
C.I.Direct Orange6,26,27,34,39,40,46,102,105,107,118、
C.I.Direct Red2,4,9,23,24,31,54,62,69,79,80,81,83,84,89,95,212,224,225,226,227,239,242,243,254
C.I.Direct Violet9,35,51,66,94,95
C.I.Direct Blue1,15,71,76,77,78,80,86,87,90,98,106,108,160,168,189,192,193,199,200,201,202,203,218,225,229,237,244,248,251,270,273,274,290,291
C.I.Direct Green26,28,59,80,85、
C.I.Direct Brown44,44:1,106,115,195,209,210,212:1,222,223、
C.I.Direct Black17,19,22,32,51,62,108,112,113,117,118,132,146,154,159,169、
本発明の水溶性有機溶媒としては、例えば、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、グリセリン、2−エチル−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール等)、アミン類(例えば、エタノールアミン、2−(ジメチルアミノ)エタノール等)、一価アルコール類(例えばメタノール、エタノール、ブタノール等)、多価アルコールのアルキルエーテル類(例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等)、2,2′−チオジエタノール、アミド類(例えばN,N−ジメチルホルムアミド等)、複素環類(2−ピロリドン等)、アセトニトリル等が挙げられる。水溶性有機溶媒量としては全インク質量に対して10〜60質量%が好ましい。
【0040】
本発明における布帛は特に限定されるものではなく、綿、絹、羊毛、ナイロン、ポリエステル、レーヨン、アクリル系繊維等種々の繊維素材が挙げられ、又、これらの混紡、交織物、不織布等のものであってもよい。
【0041】
本発明の捺染方法においては、均一な染色物を得るために布帛に付着した不純物や汚れの除去を行なう事が好ましい(精練工程)。
【0042】
また、にじみ防止効果のため、前処理剤をパッド法、コーティング法、スプレー法などで付与せしめるのが好ましい(前処理工程)。その後、分散染料で染色することが可能な繊維が含有されている布帛上に、先に述べた構成のインクを用いてインクジェット記録方式で画像を形成した後(インク付与工程)、インクが付与されている布帛を熱処理し(発色工程)、更に熱処理された布帛を洗浄すること(洗浄工程)によって布帛への捺染が完了し、捺染物が得られる。
【0043】
本発明のインクジェット捺染方法の場合、精練工程として、布帛繊維に付着した天然不純物(油脂、ロウ、ペクチン質、天然色素等)、布帛製造過程で用いた薬剤の残留分(のり剤等)、よごれなどを洗浄しておくことが望ましい。洗浄に用いられる洗浄剤としては水酸化ナトリウム,炭酸ナトリウムといったアルカリ、陰イオン性界面活性剤,非イオン性界面活性剤といった界面活性剤、酵素等が用いられる。
【0044】
前処理としては、水溶性高分子類を布帛に前処理するなどの公知の方法から繊維素材やインクに適した方法を適宜選択すればよく、特に限定されるものではない。例えば、水溶性金属塩、ポリカチオン化合物、水溶性高分子、界面活性剤及び撥水剤からなる群から選ばれる少なくとも1つの物質が0.2〜50質量%付与された布帛に対して使用すれば、高度なにじみ防止が可能であり、高精細な画像を布帛にプリントすることができ好ましい。
【0045】
また、酸性染料を用いた場合の好ましい態様によれば、前処理剤は蒸熱により酸を発生するpH調整剤を含んでなることが好ましい。pH調整剤の好ましい例としては、酸アンモニウム塩、例えば硫酸アンモニウム、酒石酸アンモニウム、または第二リン酸ソーダが挙げられる。これらのpH調整剤を添加することで、色相の安定化と染着性とを向上させることが出来るとの利点が得られる。これらの添加量は染料種等を考慮して適宜決定されてよいが、0.2〜5質量%程度が好ましく、より好ましくは0.5〜3質量%程度である。
【0046】
発色工程とは、プリント後布帛表面に付着したのみで、十分布帛に吸着・固着されていないインク中の染料を布帛に吸着・固着させることによりそのインク本来の色相を発現させる工程である。その方法としては、蒸気によるスチーミング、乾熱によるベーキング、サーモゾル、過熱蒸気によるHTスチーマー、加圧蒸気によるHPスチーマーなどが利用される。それらはプリントする素材、インクなどにより適宜選択される。また、印字された布帛は直ちに加熱処理しても、しばらくおいてから加熱処理しても用途に合わせて乾燥・発色処理すればよく、本発明においてはいずれの方法を用いてもよい。
【0047】
加熱処理後は洗浄工程が必要である。なぜなら染着に関与しなかった染料が残留することで、色の安定性が悪くなり堅牢度が低下するからである。
【0048】
また、布帛に施した前処理物を除去することも必要である。
【0049】
そのままにしておくと堅牢性の低下ばかりでなく布帛が変色する。
【0050】
そのため除去対象物や目的に応じた洗浄が必須である。その方法は、プリントする素材、インクにより選択され、例えばポリエステルの場合一般的には、苛性ソーダ、界面活性剤、ハイドロサルファイトの混合液により処理するものである。その方法は、通常オープンソーパーなどの連続型や液流染色機などによるバッチ型で実施されるもので、本発明においてはいずれの方法を用いてもよい。
【0051】
洗浄後は乾燥が必要である。洗浄した布帛を絞ったり脱水した後、干したりあるいは乾燥機、ヒートロール、アイロン等を使用して乾燥させる。
【0052】
インクの長期保存安定性を保つため、防腐剤、防黴剤をインク中に添加してもかまわない。防腐剤・防黴剤としては、芳香族ハロゲン化合物(たとえばPreventol CMK)、メチレンジチオシアナート、含ハロゲン窒素硫黄化合物、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン(たとえばPROXEL GXL)などが挙げられる。本発明はこれらに限定されるものではない。
【0053】
高温蒸熱法で染色する際に用いる捺染用インクジェットインクまたは捺染プリントに使用する布帛には染着助剤が含まれていることが好ましい。染着助剤は捺染布を蒸熱する際に、布状に凝縮した水と共融混合物を作り、再蒸発する水分の量を抑え、昇温時間を短縮する作用がある。さらに、この共融混合物は、繊維上の染料を溶解し染料の繊維への拡散速度を助長する作用がある。染着助剤としては尿素が挙げられる。
【実施例】
【0054】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されるものではない。
【0055】
下記内容のインクジェット捺染用インク1〜23を作製した。
【0056】
C.I.Acid Yellow 79 9部
エチレングリコール 25部
グリセリン 10部
プロキセルGXL(アビシア社製) 0.1部
微粒子(活性炭粒子) 個数は表1に示す
イオン交換水 残部
微粒子の個数は、孔径0.02μm〜0.8μmのメンブランフィルターを選択し、インク中の微粒子数をコントロールした。微粒子個数の測定は、コールターカウンター(BECKMAN COULTER社製、Multisizer3)にてアパーチャー径50μmを用いて行い、各インクた中の微粒子個数は表1に示す。
【0057】
連続出射性試験1
作製したインクをコニカミノルタIJ株式会社性シェアモードタイプピエゾ型ヘッド(256ノズル)を用い、駆動周波数19kHz、液滴速度が7m/sとなる駆動条件で5分連続に駆動させた時の出射状態を観察し、欠発生により正常に出射していないノズル数を数え、以下の評価をした。
【0058】
連続出射性試験2
作製したインクをコニカミノルタIJ株式会社性シェアモードタイプピエゾ型ヘッド(256ノズル)を用い、駆動周波数12kHz、液滴速度が7m/sとなる駆動条件で5分連続に駆動させた時の出射状態を観察し、欠発生により正常に出射していないノズル数を数え、以下の評価をした。
【0059】
連続出射性試験3
作製したインクをコニカミノルタIJ株式会社性シェアモードタイプピエゾ型ヘッド(256ノズル)を用い、駆動周波数8kHz、液滴速度が7m/sとなる駆動条件で5分連続に駆動させた時の出射状態を観察し、欠発生により正常に出射していないノズル数を数え、以下の評価をした。
【0060】
保存後の連続出射性試験
作製したインクを60℃サーモ中に2週間保存した後に、コニカミノルタIJ株式会社性シェアモードタイプピエゾ型ヘッド(256ノズル)を用い、駆動周波数19kHz、液滴速度が7m/sとなる駆動条件で60分連続に駆動させた時の出射状態を観察し、曲がりなど正常に出射していないノズル数を数え、以下の評価をした。
【0061】
◎;ノズル欠、斜め出射が一切発生しない
○;ノズル欠がないが、斜め出射が3本以内。画質には問題ないレベル
△;ノズル欠がないが、斜め出射が10本以内。画質には問題ないレベル
×;ノズル欠が10本以内で発生もしくは斜め出射が11本以上。画質には筋ムラが発生し実用上許容できないレベル
××;ノズル欠が10本以上発生しもしくは斜め出射が多数発生。画質には筋ムラ、濃度ムラが発生し実用上許容できないレベル。
【0062】
【表1】

【0063】
本発明は、出射試験、特にはヘッドの高速駆動時での出射性特および保存後の出射試験共に優れていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも水、水溶性染料及び水溶性有機溶媒を含有するインクジェット捺染用インクにおいて、粒径が1〜30nmの微粒子を該インクジェット捺染用インク中に5×102〜80×103個/ml含有することを特徴とするインクジェット捺染用インク。
【請求項2】
前記水溶性染料を5〜20質量%含有することを特徴とする請求項1記載のインクジェット捺染用インク。
【請求項3】
前記微粒子が活性炭粒子であることを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェット捺染用インク。
【請求項4】
前記微粒子の含有量が5×102〜20×103個/mlであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のインクジェット捺染用インク。
【請求項5】
インク調液後に中空糸膜を使用した脱気工程を用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のインクジェット捺染用インク。
【請求項6】
前記脱気工程が、中空糸膜及び超音波処理装置を用いた脱気工程を含むことを特徴とする請求項5記載のインクジェット捺染用インク。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項記載のインクジェット捺染用インクを、駆動周波数が10kHz〜20kHzのプリントヘッドを用いて印字することを特徴とするインクジェット捺染方法。
【請求項8】
前記プリントヘッドがピエゾ駆動方式を用いてインクを吐出し、印字することを特徴とする請求項7記載のインクジェット捺染方法。

【公開番号】特開2009−46544(P2009−46544A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−212164(P2007−212164)
【出願日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(305002394)コニカミノルタIJ株式会社 (317)
【Fターム(参考)】