説明

インクジェット用インク、カラーフィルタおよびその製造方法、ならびにそれを用いる液晶ディスプレイおよび画像表示デバイス

【課題】良好な輝度・色相を呈し、耐熱性・耐光性・耐薬品性に優れた色画素を形成可能で、青色のインクジェット用インク、カラーフィルタ、カラーフィルタの製造方法、ならびに液晶ディスプレイおよび画像表示デバイスを提供する。
【解決手段】一般式(1)で表される染料と、2種類の金属含有染料からなる群から選ばれる少なくとも1種の染料と、多官能エポキシ化合物または多官能オキセタン化合物と、有機溶剤とを含むインクジェット用インク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット用インク、カラーフィルタおよびその製造方法、ならびにそれを用いる液晶ディスプレイおよび画像表示デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータ、特に大画面液晶テレビの発達に伴い、液晶ディスプレイ(LCD)、とりわけカラー液晶ディスプレイの需要が増加する傾向にある。一方で、カラー液晶ディスプレイが高価であることから、コストダウンの要求が高まっている。特に、コスト的に比重の高いカラーフィルタに対するコストダウンの要求が高い。このようなカラーフィルタは、通常、赤(R)、緑(G)、および青(B)の3原色の着色パターンを備える。このカラーフィルタを備える液晶ディスプレイにおいては、R、G、およびBのそれぞれの画素に対応する電極をON、OFFさせることで液晶がシャッタとして作動し、R、G、およびBのそれぞれの画素を光が通過してカラー表示が行われる。
【0003】
カラーフィルタの製造方法としては、従来、いわゆるカラーレジスト法が広く使用されていた。この方法では、主に染料を含有する感光性樹脂組成物を所定の基板上に塗布し、塗膜を形成した後、この塗膜をパターン露光し、現像するという操作を所定回数繰り返すことによってカラーフィルタを製造する。例えば、特許文献1では、ジピロメテン系染料を含む着色硬化性組成物を用いて、カラーレジスト法によりカラーフィルタを製造することが開示されている。
【0004】
しかしながら、この方法では、R、G、およびBの3色を着色するために、同一の工程を3回繰り返す必要があり、コスト高になるという問題や、歩留まりが低下するという問題があった。そこで、近年、カラーフィルタの製造方法として、インクジェット法で着色インクを吹き付けして着色層(色画素)を形成する方法が提案されている(特許文献2)。インクジェット法は、非常に微細なノズルからインク液滴を記録部材に直接吐出、付着させて、文字や画像を得る記録方式である。インクジェット法は、インクジェットヘッドを順次移動させることにより、大面積のカラーフィルタを高生産性で製造でき、低騒音で操作性がよいという利点をもつ。
【0005】
なお、通常、インクジェット法によって所定の位置に吐出されたインクには、そのあと光照射処理または加熱処理などの硬化処理が施される。
硬化処理として光照射処理を使用すると、短時間での硬化が期待できる。しかしながら、光照射処理を実施するためには、UV照射装置など高額な装置を使用する必要があり、装置の大型化や製造コストの増加などを招くことになる。そのため、加熱処理による硬化手段を用いることが望まれている。
【0006】
一方、インクジェット法に使用されるインクとしては、主に、顔料を含むインクが提案されていた。近年、カラーフィルタの更なる高精細化が望まれているが、顔料を含むインクでは、解像度が向上せず、粗大粒子などによる色ムラが発生するなどの問題があり、必ずしも実用上満足いくものではなかった。このような問題に対して、染料を含むインクを使用することが提案されており、コントラストなどの優れた光学特性を示すことが期待されている。
しかしながら、インクジェット法により染料を含むインクを吐出し、上述した加熱処理のみによって硬化させ、所望の色画素を得る研究については、十分な検討がなされていないのが現状である。一例として、特許文献3の実施例では、C.I.アシッドブルーと多官能エポキシド化合物とを含有するインクを用いて、熱処理により該インクを硬化させ、カラーフィルタを作製している。
なお、各色インクのなかでも青色のインクに関しては、他の色のインクと比べて実用上求められる要求が高く、得られる色画素が良好な色相、輝度、並びに、優れた耐熱性、優れた耐薬品性などを示すことが必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−292970号公報
【特許文献2】特開平8−146215号公報
【特許文献3】特開平10−104416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、加熱処理による硬化手段によって、優れた輝度・色相を示し、耐熱性・耐薬品性にも優れた色画素を形成することができる、染料を含む青色のインクジェット用インクの開発を目的として、従来公知の組成物について検討を行った。具体的には、上記特許文献3で具体的に開示されているC.I.アシッドブルーと多官能エポキシド化合物とを含むインクを使用して、インクジェット法によりインクを吐出し、熱硬化処理を行ったところ、得られる色画素は熱によって色相が劣化しやすく、いわゆる耐熱性が実用上必ずしも満足いくものではないことを見出した。
さらに、本発明者らは、上記特許文献1に開示されているジピロメテン系染料、テトラアザポルフィリン系色素、およびラジカル重合性モノマーを含む着色硬化性組成物を使用して、上記と同様の熱硬化処理による硬化検討を行ったところ、得られる色画素の耐薬品性や耐熱性が必ずしも十分でなく更なる改良が必要であった。また、得られる色画素中で染料の相分離、凝集などが起こる場合があることを見出した。その結果、色相変化やコントラスト低下などが生じており、さらなる改良が必要であった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、良好な輝度・色相を呈し、耐熱性・耐光性に優れた色画素を形成することができ、各種溶媒に対する耐薬品性に優れたカラーフィルタを製造することができ、熱硬化プロセスに対応可能な、青色のインクジェット用インク、このようなインクジェット用インクにより得られる光学特性、耐光性、耐熱性、耐薬品性などの特性に優れたカラーフィルタ、およびこのような特性を持つカラーフィルタを安定して、コストアップを招くことなく製造することができるカラーフィルタの製造方法、ならびに高輝度バックライトに対応できる、高コントラスト、高彩度の液晶ディスプレイおよび画像表示デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、所定のシアン染料と、所定のジピロメテン系金属錯体と、多官能エポキシ化合物または多官能オキセタン化合物とを含むインクを使用することにより、外観、色相、輝度、各種溶媒に対する耐性(耐薬品性)、耐熱性、耐光性などに優れた色画素を製造することができることを見出した。
【0011】
本発明者らは、上記課題が下記の<1>〜<12>の構成により解決されることを見出した。
<1> 後述する一般式(1)で表される染料と、後述する一般式(2−1)で表される染料、後述する一般式(2−2)で表される染料、および後述する一般式(2−3)で表される染料からなる群から選ばれる少なくとも1種の染料と、多官能エポキシ化合物または多官能オキセタン化合物と、有機溶剤とを含むインクジェット用インク。
<2> 前記多官能エポキシ化合物および前記多官能オキセタン化合物が、それぞれ官能基数3以上の多官能エポキシ化合物および多官能オキセタン化合物である、<1>に記載のインクジェット用インク。
<3> さらに、2官能以上の多官能チオール化合物を含む、<1>または<2>に記載のインクジェット用インク。
<4> さらに、酸無水物を含有する、<1>〜<3>のいずれかに記載のインクジェット用インク。
<5> さらに、塩基性化合物または熱塩基発生剤を含有する、<1>〜<3>のいずれかに記載のインクジェット用インク。
<6> 25℃における粘度が30mPa・s以下である、<1>〜<5>のいずれかに記載のインクジェット用インク。
【0012】
<7> 25℃における表面張力が20〜40mN/mである、<1>〜<6>のいずれかに記載のインクジェット用インク。
<8> さらに、界面活性剤を含有する、<1>〜<7>のいずれかに記載のインクジェット用インク。
<9> 基板上に形成された隔壁により区画された凹部に、<1>〜<8>のいずれかに記載のインクジェット用インクをインクジェット法により付与する描画工程と、
凹部に吐出された前記インクジェット用インクを加熱する硬化工程とを備えるカラーフィルタの製造方法。
<10> <9>に記載のカラーフィルタの製造方法により製造されるカラーフィルタ。
<11> <10>に記載のカラーフィルタを備える液晶ディスプレイ。
<12> <10>に記載のカラーフィルタを備える画像表示デバイス。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、良好な輝度・色相を呈し、耐熱性・耐光性に優れた色画素を形成することができ、各種溶媒に対する耐薬品性に優れたカラーフィルタを製造することができ、熱硬化プロセスに対応可能な、青色のインクジェット用インク、このようなインクジェット用インクにより得られる光学特性、耐光性、耐熱性、耐薬品性などの特性に優れたカラーフィルタ、およびこのような特性を持つカラーフィルタを安定して、コストアップを招くことなく製造することができるカラーフィルタの製造方法、ならびに高輝度バックライトに対応できる、高コントラスト、高彩度の液晶ディスプレイおよび画像表示デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のカラーフィルタの製造方法の一実施形態における製造工程を示すフローチャートである。
【図2】(a)〜(f)は、それぞれ本発明のカラーフィルタの製造方法における基板からカラーフィルタに至る製造工程順に示す基板およびカラーフィルタの模式的断面図である。
【図3】粒子状物質および相分離構造が観察されない場合の光学顕微鏡写真(倍率100倍)である。
【図4】粒子状物質が観察される場合の光学顕微鏡写真(倍率100倍)である。
【図5】相分離構造が観察される場合の光学顕微鏡写真(倍率100倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るインクジェット用インク、このインクジェット用インクを用いたカラーフィルタおよびその製造方法、ならびにそれを用いる液晶ディスプレイおよび画像表示デバイスについて詳細に説明する。
<インクジェット用インクおよびその製造方法>
まず、本発明のインクジェット用インクの構成成分、およびその製造方法について詳細に説明する。
本発明のインクジェット用インクは、一般式(1)で表される染料と、一般式(2−1)で表される染料〜一般式(2−3)で表される染料からなる群から選択される少なくとも1種の染料と、多官能エポキシ化合物または多官能オキセタン化合物と、有機溶剤とを含有する。
以下に各構成成分について詳述する。
【0016】
<一般式(1)で表される染料>
本発明のインクジェット用インクは、一般式(1)で表される染料(シアン染料)を含有する。この染料を含有することにより、耐熱性・耐光性・耐薬品性に優れたカラーフィルタを製造することができる。また、後述する一般式(2−1)〜一般式(2−3)で表される染料(ジピロメテン系染料)と併用することにより、得られる色画素中における染料の分散性がより向上され、より優れた色相・輝度を示す色画素を形成することができる。一般式(1)で表される染料と、後述するジピロメテン系染料とでは、その構造が一部類似しており、分子間相互作用が働きやすいため、それぞれの染料の凝集がより抑えられたものと推測される。
【0017】
【化1】

【0018】
一般式(1)中、Rは、それぞれ独立に水素原子または置換基を表す。
で表される「置換基」としては、置換可能な基であればよく、例えば、脂肪族基(総炭素数1〜15のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基が好ましい。例えば、メチル基、エチル基、ビニル基、アリル基、エチニル基、イソプロペニル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。)、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)、アリール基(総炭素数6〜16が好ましく、総炭素数6〜12がより好ましい。例えば、フェニル基、4−ニトロフェニル基、2−ニトロフェニル基、2−クロロフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2−メチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、2−メトキシフェニル基、2−メトキシカルボニル−4−ニトロフェニル基等が挙げられる。)、ヘテロ環基(総炭素数3〜15が好ましく、総炭素数3〜10がより好ましい。例えば、3−ピリジル基、2−ピリジル基、2−ピリミジニル基、2−ピラジニル基、1−ピペリジル基等が挙げられる。)、シアノ基、カルボキシル基、カルバモイル基(総炭素数1〜16が好ましく、総炭素数1〜12がより好ましい。例えば、カルバモイル基、ジメチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、N−メチル−N−プロピルカルバモイル基、N−エチル−N−メトキシエチルカルバモイル基、ビス(2−メチルブチル)カルバモイル基、ビス(2−エチルヘキシル)カルバモイル基、ビス(メトキシエチル)カルバモイル基、ビス(エトキシエチル)カルバモイル基、ビス(プロポキシエチル)カルバモイル基、N−カルボキシメチル−N−メチルカルバモイル基等が挙げられる。)、
【0019】
脂肪族オキシカルボニル基(総炭素数2〜16が好ましく、総炭素数2〜10がより好ましい。例えば、メトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等が挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(総炭素数7〜17が好ましく、総炭素数7〜15がより好ましい。例えば、フェノキシカルボニル基等が挙げられる。)、アシル基(総炭素数2〜15が好ましく、総炭素数2〜10がより好ましい。例えば、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基等が挙げられる。)、ヒドロキシ基、脂肪族オキシ基(総炭素数1〜12が好ましく、総炭素数1〜10がより好ましい。例えば、メトキシ基、エトキシエトキシ基、メトキシエトキシ基、メトキシジエトキシ基、フェノキシエトキシ基、チオフェノキシエトキシ基等が挙げられる。)、アリールオキシ基(総炭素数6〜18が好ましく、総炭素数6〜14がより好ましい。例えば、フェノキシ基、4-メチルフェノキシ基等が挙げられる。)、アシルオキシ基(総炭素数2〜14が好ましく、総炭素数2〜10がより好ましい。例えば、アセトキシ基、メトキシアセトキシ基、ベンゾイルオキシ基等が挙げられる。)、カルバモイルオキシ基(総炭素数1〜16が好ましく、総炭素数1〜10がより好ましい。例えば、ジメチルカルバモイルオキシ基、ジイソプルピルカルバモイル基、N,N-ビス(メトキシエチル)-カルバモイル基、N,N-ビス(エトキシエチル)-カルバモイル基等が挙げられる。)、ヘテロ環オキシ基(総炭素数1〜15が好ましく、総炭素数3〜10がより好ましい。例えば、3-フリルオキシ基、3-ピリジルオキシ基、N-メチル2-ピペリジルオキシ基等が挙げられる。)、
【0020】
アシルアミノ基(総炭素数2〜15が好ましく、総炭素数3〜12がより好ましい。例えば、N-メチルアセチルアミノ基、N-エトキシエチルベンゾイルアミノ基、N-メチルメトキシアセチルアミノ基等が挙げられる。)、カルバモイルアミノ基(総炭素数1〜16が好ましく、総炭素数1〜12がより好ましい。例えば、N,N-ジメチルカルバモイルアミノ基、N-メチル-N-メトキシエチルカルバモイルアミノ基等が挙げられる。)、スルファモイルアミノ基(総炭素数0〜16が好ましく、総炭素数0〜12がより好ましい。例えば、N,N-ジメチルスルファモイルアミノ基が挙げられる。)、脂肪族オキシカルボニルアミノ基(総炭素数2〜15が好ましく、総炭素数2〜10がより好ましい。例えば、メトキシカルボニルアミノ基、メトキシエトキシカルボニルアミノ基等が挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(総炭素数7〜17が好ましく、総炭素数7〜15がより好ましい。例えば、フェノキシカルボニルアミノ基、4-メトキシカルボニルアミノ基等が挙げられる。)、脂肪族スルホニルアミノ基(総炭素数1〜12が好ましく、総炭素数1〜8がより好ましい。例えば、メタンスルホニルアミノ基、ブタンスルホニルアミノ基等が挙げられる。)、アリールスルホニルアミノ基(総炭素数6〜17が好ましく、総炭素数6〜15がより好ましい。例えば、フェニルスルホニルアミノ基、4−メチルフェニルスルホニルアミノ基等が挙げられる。)、脂肪族チオ基(総炭素数1〜16が好ましく、総炭素数1〜12がより好ましい。例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、エトキシエチルチオ基等が挙げられる。)、アリールチオ基(総炭素数6〜22が好ましく、総炭素数6〜14がより好ましい。例えば、フェニルチオ基、2-t-ブチルチオ基等が挙げられる。)、脂肪族スルホニル基(総炭素数1〜15が好ましく、総炭素数1〜8がより好ましい。例えば、メタンスルホニル基、ブタンスルホニル基、メトキシエタンスルホニル基等が挙げられる。)、
【0021】
アリールスルホニル基(総炭素数6〜16が好ましく、総炭素数6〜12がより好ましい。例えば、ベンゼンスルホニル基、4−t−ブチルベンゼンスルホニル基、4−トルエンスルホニル基、2−トルエンスルホニル基等が挙げられる。)、スルファモイル基(総炭素数0〜16が好ましく、総炭素数0〜12がより好ましい。例えば、スルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、N,N-ジエチルスルファモイル基等が挙げられる。)、脂肪族スルホニルカルバモイル基(総炭素数2〜17が好ましく、総炭素数2〜13がより好ましい。例えば、メチルスルホニルカルバモイル基、ブチルスルホニルカルバモイル基、2−メチルブチルスルホニルカルバモイル基等が挙げられる。)、アリールスルホニルカルバモイル基(総炭素数7〜21が好ましく、総炭素数7〜17がより好ましい。例えば、フェニルスルホニルカルバモイル基等が挙げられる。)、脂肪族カルボニルスルファモイル基(総炭素数2〜17が好ましく、総炭素数2〜13がより好ましい。例えば、メチルカルボニルスルファモイル基、ブチルカルボニルスルファモイル基、2−エチルヘキシルカルボニルスルファモイル基等が挙げられる。)、アリールカルボニルスルファモイル基(総炭素数7〜21が好ましく、総炭素数7〜17がより好ましい。例えば、フェニルカルボニルスルファモイル基等が挙げられる。)、脂肪族スルホニルスルファモイル基(総炭素数1〜16が好ましく、総炭素数1〜12がより好ましい。例えば、メチルカルボニルスルファモイル基、ブチルカルボニルスルファモイル基、2−エチルヘキシルカルボニルスルファモイル基等が挙げられる。)、アリールスルホニルスルファモイル基(総炭素数6〜16が好ましく、総炭素数6〜12がより好ましい。例えば、フェニルスルホニルスルファモイル基等が挙げられる。)、スルホ基、イミド基、ヘテロ環チオ基、またはこれらを組み合わせた基が挙げられる。
【0022】
上記の「脂肪族基」としては、その脂肪族部位が直鎖、分岐鎖、または環状であって飽和および不飽和のいずれであってもよく、例えば、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基を含み、無置換であっても置換基で置換されていてもよい。また、「アリール基」は、単環および縮合環のいずれでもよく、無置換であっても置換基で置換されていてもよい。「ヘテロ環基」は、そのヘテロ環部位が環内にヘテロ原子(例えば、窒素原子、イオウ原子、酸素原子)を持つものであり、飽和環および不飽和環のいずれであってもよく、単環および縮合環であってもよく、無置換であっても置換基で置換されていてもよい。
【0023】
の置換基が更に置換可能な基である場合には、さらに該置換基を有していてもよく、2個以上の置換基を有している場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0024】
本発明の効果の点で、Rは、ハロゲン原子、脂肪族基(アルキル基など)、シアノ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヒドロキシ基、脂肪族オキシ基、カルバモイルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、脂肪族オキシカルボニルオキシ基、カルバモイルアミノ基、スルフアモイルアミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、脂肪族スルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、脂肪族チオ基、アリールチオ基、脂肪族スルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、脂肪族スルホニルカルバモイル基、アリールスルホニルカルバモイル基、脂肪族カルボニルスルファモイル基、アリールカルボニルスルファモイル基、脂肪族スルホニルスルファモイル基、アリールスルホニルスルファモイル基、イミド基、またはこれらを組み合わせた基である場合が好ましく、脂肪族基、カルバモイル基、ヒドロキシ基、脂肪族オキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、脂肪族オキシ基、脂肪族オキシカルボニルオキシ基、カルバモイルアミノ基、スルファモイルアミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、脂肪族スルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、脂肪族スルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、脂肪族スルホニルカルバモイル基、脂肪族カルボニルスルファモイル基、脂肪族スルホニルスルファモイル基、イミド基、またはこれらを組み合わせた基である場合が更に好ましく、カルバモイル基、ヒドロキシ基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族オキシ基、脂肪族オキシカルボニルオキシ基、カルバモイルアミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、アリールスルホニル基、脂肪族スルホニルカルバモイル基、脂肪族カルボニルスルファモイル基、脂肪族スルホニルスルファモイル基、イミド基、脂肪族スルホニル基、またはこれらを組み合わせた基である場合が最も好ましい。
【0025】
一般式(1)中、Lはそれぞれ独立に、脂肪族または芳香族の連結基を表す。これらの連結基を使用すると、得られる色画素の外観・色相がより優れる。なお、それぞれのLは同一でも異なってもよい。
Lで表される脂肪族の連結基としては、無置換でも置換基を有していてもよく、総炭素数1〜20の脂肪族基が好ましく、総炭素数1〜15の脂肪族基がより好ましい。例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。
Lで表される芳香族の連結基としては無置換でも置換基を有していてもよく、総炭素数6〜20の芳香族基が好ましく、総炭素数6〜16の芳香族基がより好ましい。例えば、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられ、最も好ましいのはフェニレン基である。
なお、n=0の場合は、RとS(硫黄原子)とが直接結合する。
【0026】
一般式(1)中、Zは2つの炭素原子と共に6員環を形成するのに必要な非金属原子群を表し、4つのZは同一でも異なっていてもよい。形成される6員環は、アリール環またはヘテロ環のいずれであってもよく、縮環していてもよく、縮環した環が更に置換基を有していてもよい。6員環としては、例えば、ベンゼン環、ピリジン環、シクロヘキセン環、ナフタレン環等が挙げられ、ベンゼン環である態様が好適である。
【0027】
一般式(1)において、Mは2個の水素原子、2価の金属原子、2価の金属酸化物、2価の金属水酸化物、または2価の金属塩化物を表す。該Mとしては、例えば、VO、TiO、Zn、Mg、Si、Sn、Rh、Pt、Pd、Mo、Mn、Pb、Cu、Ni、Co、Fe、AlCl、InCl、FeCl、TiCl、SnCl、SiCl、GeCl、Si(OH)、H等が挙げられ、VO、Zn、Mn、Cu、Ni、Coである態様が好適である。本発明の効果の点でMはVO、Mn、Co、Ni、Cu、ZnまたはMgである場合が好ましく、VO、Co、CuまたはZnである場合が更に好ましく、Cuである場合が最も好ましい。
【0028】
一般式(1)において、mはそれぞれ独立に1または2を表し、mは2である場合が好ましい。
nはそれぞれ独立に0または1を表し、nは1である場合が好ましい。
pはそれぞれ独立に1〜5の整数を表し、1〜3である場合が好ましく、1である場合がより好ましい。
【0029】
本発明においては、分子中の複数のRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。なかでも、Rは、−OY、−COOY、−SOY、−CON(Y)CO−、−CON(Y)SO−、−SON(Y)CO−、または−SONH−を有することが好ましい。これにより、得られる色画素の外観特性や耐薬品性がより向上する。
上記−OY、−COOY、−SOY、−CON(Y)CO−、−CON(Y)SO−(スルホニルカルバモイル基)、−SON(Y)CO−(アシルスルファモイル基)、または−SONH−は、一般式(1)において、連結基Lに結合していてもよく、連結基Lを介さずに−S(=O)−と直接結合していてもよい。連結基Lを介さずに−S(=O)−と直接結合している場合、Rは−OYであることが好ましく、−S(=O)−と共にテトラアザポルフィリン環に直接結合する−SOYを構成する(m=2)ことが好ましい。
【0030】
Yは水素原子、金属原子または共役酸を表す。Yで表される金属原子はLi、Na、K、Mg、Caが挙げられ、好ましいのはLi、Na、Kである。Yで表される共役酸を形成する塩基としては、3級アミン類(例えば、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルピペリジン、4−メチルモルホリン)、グアニジン類(例えば、グアニジン、N,N−ジフェニルグアニジン、1,3−ジ−o−トリルグアニジン)、ピリジン類(例えば、ピリジン、2-メチルピリジン)等が挙げられる。中でも、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジフェニルグアニジン、1,3−ジ−o−トリルグアニジンが好ましい。
【0031】
、r、r及びrはそれぞれ独立に0または1を表し、r+r+r+rは1以上であり、r+r+r+rが2〜4であることが好ましい。また、r、r、r及びrは各々1であることもまた好ましい。
【0032】
以下、上記「−S(O)m−(L)n−(R)p」で表される基の例を示す。但し、本発明においては、これらに限定されるものではない。なお、以下の例の中では、好ましくはT−95、T−97、T−114、T−115、T−117、T−127、T−130が挙げられる。
【0033】
【化2】

【0034】
【化3】

【0035】
以下に一般式(1)で表される染料の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0036】
【化4】

【0037】
【化5】

【0038】
なお、上記一般式(1)で表される染料(テトラアザポルフィリン系染料)は、例えば、特開2006−58787号公報、特開2006−124379号公報、特開2006−124679号公報等に記載の方法で合成することができる。
【0039】
<一般式(2−1)〜一般式(2−3)で表される染料>
本発明のインクジェット用インクは、一般式(2−1)で表される染料、一般式(2−2)で表される染料、および一般式(2−3)で表される染料からなる群から選択される少なくとも1種を含有する。該ジピロメテン系染料を使用することにより、より優れた色相・輝度を有する色画素を形成することができる。なお、上記染料中、2種を併用してもよい。
以下に各式で表される染料について詳述する。
【0040】
<一般式(2−1)で表される染料>
以下に、一般式(2−1)で表される染料の各置換基について詳述する。
【0041】
【化6】

【0042】
一般式(2−1)中、R11〜R16は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。R11〜R16における置換基としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24の、直鎖、分岐鎖、または環状のアルキル基で、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、ドデシル、ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1−ノルボルニル、1−アダマンチル)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜18のアルケニル基で、例えば、ビニル、アリル、3−ブテン−1−イル)、アリール基(好ましくは炭素数6〜48、より好ましくは炭素数6〜24のアリール基で、例えば、フェニル、ナフチル)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のヘテロ環基で、例えば、チオフェン環、ピリジン環、フラン環、ピリミジン環、ベンゾトリアゾール環、ピラゾール環、イミダゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、オキサゾール環、チアジアゾール環、トリアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、より具体的には、2−チエニル、4−ピリジル、2−フリル、2−ピリミジニル、1−ピリジル、2−ベンゾチアゾリル、1−イミダゾリル、1−ピラゾリル、ベンゾトリアゾール−1−イル)、シリル基(好ましくは炭素数3〜38、より好ましくは炭素数3〜18のシリル基で、例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリブチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、t−ヘキシルジメチルシリル)、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のアルコキシ基で、例えば、メトキシ、エトキシ、1−ブトキシ、2−ブトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、ドデシルオキシ、シクロアルキルオキシ基で、例えば、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜48、より好ましくは炭素数6〜24のアリールオキシ基で、例えば、フェノキシ、1−ナフトキシ)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のヘテロ環オキシ基で、例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のシリルオキシ基で、例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ、ジフェニルメチルシリルオキシ)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24のアシルオキシ基で、例えば、アセトキシ、ピバロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、ドデカノイルオキシ)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24のアルコキシカルボニルオキシ基で、例えば、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、シクロアルキルオキシカルボニルオキシ基で、例えば、シクロヘキシルオキシカルボニルオキシ)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数7〜32、より好ましくは炭素数7〜24のアリールオキシカルボニルオキシ基で、例えば、フェノキシカルボニルオキシ)、カルバモイルオキシ基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のカルバモイルオキシ基で、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N−ブチルカルバモイルオキシ、N−フェニルカルバモイルオキシ、N−エチル−N−フェニルカルバモイルオキシ)、スルファモイルオキシ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のスルファモイルオキシ基で、例えば、N,N−ジエチルスルファモイルオキシ、N−プロピルスルファモイルオキシ)、アルキルスルホニルオキシ基(好ましくは炭素数1〜38、より好ましくは炭素数1〜24のアルキルスルホニルオキシ基で、例えば、メチルスルホニルオキシ、ヘキサデシルスルホニルオキシ、シクロヘキシルスルホニルオキシ)、
【0043】
アリールスルホニルオキシ基(好ましくは炭素数6〜32、より好ましくは炭素数6〜24のアリールスルホニルオキシ基で、例えば、フェニルスルホニルオキシ)、アシル基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のアシル基で、例えば、ホルミル、アセチル、ピバロイル、ベンゾイル、テトラデカノイル、シクロヘキサノイル)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24のアルコキシカルボニル基で、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、オクタデシルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルシクロヘキシルオキシカルボニル(下記構造式(i)で表される基))、
【0044】
【化7】

【0045】
アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜32、より好ましくは炭素数7〜24のアリールオキシカルボニル基で、例えば、フェノキシカルボニル)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のカルバモイル基で、例えば、カルバモイル、N,N−ジエチルカルバモイル、N−エチル−N−オクチルカルバモイル、N,N−ジブチルカルバモイル、N−プロピルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル、N−メチル−N−フェニルカルバモイル、N,N−ジシクロへキシルカルバモイル)、アミノ基(好ましくは炭素数32以下、より好ましくは炭素数24以下のアミノ基で、例えば、アミノ、メチルアミノ、N,N−ジブチルアミノ、テトラデシルアミノ、2−エチルへキシルアミノ、シクロヘキシルアミノ)、アニリノ基(好ましくは炭素数6〜32、より好ましくは炭素数6〜24のアニリノ基で、例えば、アニリノ、N−メチルアニリノ)、ヘテロ環アミノ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のヘテロ環アミノ基で、例えば、4−ピリジルアミノ)、カルボンアミド基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24のカルボンアミド基で、例えば、アセトアミド、ベンズアミド、テトラデカンアミド、ピバロイルアミド、シクロヘキサンアミド)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のウレイド基で、例えば、ウレイド、N,N−ジメチルウレイド、N−フェニルウレイド)、イミド基(好ましくは炭素数36以下、より好ましくは炭素数24以下のイミド基で、例えば、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24のアルコキシカルボニルアミノ基で、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、オクタデシルオキシカルボニルアミノ、シクロヘキシルオキシカルボニルアミノ)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜32、より好ましくは炭素数7〜24のアリールオキシカルボニルアミノ基で、例えば、フェノキシカルボニルアミノ)、スルホンアミド基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のスルホンアミド基で、例えば、メタンスルホンアミド、ブタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、ヘキサデカンスルホンアミド、シクロヘキサンスルホンアミド)、スルファモイルアミノ基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のスルファモイルアミノ基で、例えば、N,N−ジプロピルスルファモイルアミノ、N−エチル−N−ドデシルスルファモイルアミノ)、アゾ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のアゾ基で、例えば、フェニルアゾ、3−ピラゾリルアゾ)、
【0046】
アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のアルキルチオ基で、例えば、メチルチオ、エチルチオ、オクチルチオ、シクロヘキシルチオ)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜48、より好ましくは炭素数6〜24のアリールチオ基で、例えば、フェニルチオ)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のヘテロ環チオ基で、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、2−ピリジルチオ、1−フェニルテトラゾリルチオ)、アルキルスルフィニル基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のアルキルスルフィニル基で、例えば、ドデカンスルフィニル)、アリールスルフィニル基(好ましくは炭素数6〜32、より好ましくは炭素数6〜24のアリールスルフィニル基で、例えば、フェニルスルフィニル)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のアルキルスルホニル基で、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、ブチルスルホニル、イソプロピルスルホニル、2−エチルヘキシルスルホニル、ヘキサデシルスルホニル、オクチルスルホニル、シクロヘキシルスルホニル)、アリールスルホニル基(好ましくは炭素数6〜48、より好ましくは炭素数6〜24のアリールスルホニル基で、例えば、フェニルスルホニル、1−ナフチルスルホニル)、スルファモイル基(好ましくは炭素数32以下、より好ましくは炭素数24以下のスルファモイル基で、例えば、スルファモイル、N,N−ジプロピルスルファモイル、N−エチル−N−ドデシルスルファモイル、N−エチル−N−フェニルスルファモイル、N−シクロヘキシルスルファモイル)、スルホ基、ホスホニル基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のホスホニル基で、例えば、フェノキシホスホニル、オクチルオキシホスホニル、フェニルホスホニル)、ホスフィノイルアミノ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のホスフィノイルアミノ基で、例えば、ジエトキシホスフィノイルアミノ、ジオクチルオキシホスフィノイルアミノ)、またはこれらを組み合わせた基が挙げられる。
【0047】
一般式(2−1)中のR11とR12、R12とR13、R14とR15、および/またはR15とR16とは、各々独立に互いに結合して5員、6員、もしくは7員の飽和環、または不飽和環を形成していてもよい。形成される5員、6員、および7員の環が、更に置換可能な基である場合には、上記R11〜R16で説明した置換基で置換されていてもよく、2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0048】
一般式(2−1)中のR17は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表し、R17のハロゲン原子、アルキル基、アリール基、およびヘテロ環基は、上記R11〜R16で説明したハロゲン原子、アルキル基、アリール基、およびヘテロ環基とそれぞれ同義であり、その好ましい範囲も同様である。R17のアルキル基、アリール基、およびヘテロ環基が、更に置換可能な基である場合には、上記R11〜R16で説明した置換基で置換されていてもよく、2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0049】
一般式(2−1)において好ましくは、R11およびR16は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、シリル基、ヒドロキシ基、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、アニリノ基、ヘテロ環アミノ基、カルボンアミド基、ウレイド基、イミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、アゾ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ホスフィノイルアミノ基、またはこれらを組み合わせた基を表し、R12およびR15は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、アゾ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、またはこれらを組み合わせた基を表し、R13およびR14は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、シリル基、ヒドロキシ基、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アニリノ基、カルボンアミド基、ウレイド基、イミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、アゾ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、ホスフィノイルアミノ基、またはこれらを組み合わせた基を表し、R17は、水素原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。
【0050】
より好ましくは、上記一般式(2−1)において、R11およびR16は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、ヘテロ環アミノ基、カルボンアミド基、ウレイド基、イミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、アゾ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ホスフィノイルアミノ基、またはこれらを組み合わせた基を表し、R12およびR15は、それぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ニトロ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、またはこれらを組み合わせた基を表し、R13およびR14は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、カルボンアミド基、ウレイド基、イミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、またはこれらを組み合わせた基を表し、R17は、水素原子またはアルキル基を表す。
【0051】
特に好ましくは、一般式(2−1)において、R11およびR16は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アミノ基、ヘテロ環アミノ基、カルボンアミド基、ウレイド基、イミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、アゾ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ホスフィノイルアミノ基、またはこれらを組み合わせた基を表し、一般式(2−1)において、R12およびR15は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、またはこれらを組み合わせた基を表し、R13およびR14は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、またはこれらを組み合わせた基を表し、R17は水素原子を表す。
【0052】
一般式(2−1)中のMaは、金属原子または金属化合物を表す。金属原子または金属化合物としては、錯体を形成可能な金属原子または金属化合物であればいずれであってもよく、2価の金属原子、2価の金属酸化物、2価の金属水酸化物、または2価の金属塩化物が含まれる。例えば、Zn、Mg、Si、Sn、Rh、Pt、Pd、Mo、Mn、Pb、Cu、Ni、Co、Fe等の他に、AlCl、InCl、FeCl、TiCl、SnCl、SiCl、GeClなどの金属塩化物、TiO、VO等の金属酸化物、Si(OH)等の金属水酸化物も含まれる。
これらの中でも、錯体の安定性、分光特性、耐熱性、耐光性、および製造適性等の観点から、Fe、Zn、Co、V=O、またはCuが好ましく、Znが最も好ましい。
【0053】
一般式(2−1)中のXは、金属原子Maに結合可能な基であればいずれであってもよく、水、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール)、カルボン酸類(例えば、酢酸)等、更に「金属キレート」[1]坂口武一・上野景平著(1995年 南江堂)、同[2](1996年)、同[3](1997年)等、に記載の化合物が挙げられる。
【0054】
一般式(2−1)におけるXは、Maの電荷を中和する為に必要な基を表し、例えば、ハロゲン原子、水酸基、カルボン酸基、燐酸基、スルホン酸基等が挙げられる。
【0055】
一般式(2−1)におけるXとXとが互いに結合して、Maとともに5員、6員または7員の環を形成してもよい。形成される5員、6員および7員の環は、飽和環であっても不飽和環であってもよい。また、5員、6員および7員の環は、炭素原子のみで構成されていてもよく、窒素原子、酸素原子、および/または硫黄原子から選ばれる原子を少なくとも1個有するヘテロ環を形成していてもよい。
【0056】
<一般式(2−2)で表される染料>
以下に、一般式(2−2)で表される染料の各置換基について詳述する。
【0057】
【化8】

【0058】
一般式(2−2)中、R12〜R15は、それぞれ独立に、水素原子、または置換基を表す。R17は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。Maは、金属原子または金属化合物を表す。Xは、NR(Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、またはアリールスルホニル基を表す。)、窒素原子、酸素原子、または硫黄原子を表し、Xは、NRa(Raは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、またはアリールスルホニル基を表す。)、酸素原子、または硫黄原子を表し、Yは、NRc(Rcは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、またはアリールスルホニル基を表す。)、窒素原子、または炭素原子を表し、Yは、窒素原子、または炭素原子を表す。R18およびR19は、それぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、またはヘテロ環アミノ基を表す。R18とYは、互いに結合して5員、6員、または7員の環を形成していてもよく、R19とYは、互いに結合して5員、6員、または7員の環を形成していてもよい。XはMaと結合可能な基を表し、aは0、1または2を表す。
【0059】
一般式(2−2)中のR12〜R15、およびR17は、それぞれ一般式(2−1)中のR12〜R15、およびR17とそれぞれ同義であり、好ましい態様も同様である。
一般式(2−2)中のMaは、金属原子または金属化合物を表し、一般式(2−1)において説明した、金属原子または金属化合物と同義であり、その好ましい範囲も同様である。
【0060】
一般式(2−2)中、R18およびR19は、それぞれ独立に、アルキル基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖、または環状のアルキル基で、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、ドデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1−アダマンチル)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜24、より好ましくは炭素数2〜12のアルケニル基で、例えば、ビニル、アリル、3−ブテン−1−イル)、アリール基(好ましくは炭素数6〜36、より好ましくは炭素数6〜18のアリール基で、例えば、フェニル、ナフチル)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは炭素数1〜12のヘテロ環基で、例えば、2−チエニル、4−ピリジル、2−フリル、2−ピリミジニル、1−ピリジル、2−ベンゾチアゾリル、1−イミダゾリル、1−ピラゾリル、ベンゾトリアゾール−1−イル)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは炭素数1〜18のアルコキシ基で、例えば、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、ブトキシ、ヘキシルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、ドデシルオキシ、シクロヘキシルオキシ)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜24、より好ましくは炭素数1〜18のアリールオキシ基で、例えば、フェノキシ、ナフチルオキシ)、アルキルアミノ基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは炭素数1〜18のアルキルアミノ基で、例えば、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、ブチルアミノ、ヘキシルアミノ、2−エチルヘキシルアミノ、イソプロピルアミノ、t−ブチルアミノ、t−オクチルアミノ、シクロヘキシルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、N,N−ジプロピルアミノ、N,N−ジブチルアミノ、N−メチル−N−エチルアミノ)、アリールアミノ基(好ましくは炭素数6〜36、より好ましくは炭素数6〜18のアリールアミノ基で、例えば、フェニルアミノ、ナフチルアミノ、N,N−ジフェニルアミノ、N−エチル−N−フェニルアミノ)、ヘテロ環アミノ基(好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは炭素数1〜12のヘテロ環アミノ基で、例えば、2−アミノピロール、3−アミノピラゾール、2−アミノピリジン、3−アミノピリジン)、またはこれらを組み合わせた基を表す。
【0061】
一般式(2−2)中、R18およびR19で表されるアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、およびヘテロ環アミノ基が、更に置換可能な基である場合には、上記一般式(2−1)のR11〜R16で表される置換基で置換されていてもよく、2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0062】
一般式(2−2)中、Xは、NR、窒素原子、酸素原子、または硫黄原子を表し、Xは、NRa、酸素原子、または硫黄原子を表す。RとRaは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖、または環状のアルキル基で、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、ドデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1−アダマンチル)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜24、より好ましくは炭素数2〜12のアルケニル基で、例えば、ビニル、アリル、3−ブテン−1−イル)、アリール基(好ましくは炭素数6〜36、より好ましくは炭素数6〜18のアリール基で、例えば、フェニル、ナフチル)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは炭素数1〜12のヘテロ環基で、例えば、2−チエニル、4−ピリジル、2−フリル、2−ピリミジニル、1−ピリジル、2−ベンゾチアゾリル、1−イミダゾリル、1−ピラゾリル、ベンゾトリアゾール−1−イル)、アシル基(好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは炭素数2〜18のアシル基で、例えば、アセチル、ピバロイル、2−エチルヘキシル、ベンゾイル、シクロヘキサノイル)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは炭素数1〜18のアルキルスルホニル基で、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、イソプロピルスルホニル、シクロヘキシルスルホニル)、アリールスルホニル基(好ましくは炭素数6〜24、より好ましくは炭素数6〜18のアリールスルホニル基で、例えば、フェニルスルホニル、ナフチルスルホニル)を表す。
RとRaで表されるアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基は、更に、上記一般式(2−1)のR11〜R16で表される置換基で置換されていてもよく、複数の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0063】
一般式(2−2)中、Yは、NRc、窒素原子、または炭素原子を表し、Yは、窒素原子、または炭素原子を表す。Rcは、上記XのRと同義である。
【0064】
一般式(2−2)中、R18とYとが互いに結合して、R18、Y、および炭素原子と共に5員環(例えば、シクロペンタン、ピロリジン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、テトラヒドロチオフェン、ピロール、フラン、チオフェン、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン)、6員環(例えば、シクロヘキサン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、ペンタメチレンスルフィド、ジチアン、ベンゼン、ピペリジン、ピペラジン、ピリダジン、キノリン、キナゾリン)、または7員環(例えば、シクロヘプタン、ヘキサメチレンイミン)を形成してもよい。
【0065】
一般式(2−2)中、R19とYとが互いに結合して、R19、Y、および炭素原子と共に5員、6員、又は7員の環を形成していてもよい。形成される5員、6員、および7員の環は、上記のR18とYおよび炭素原子で形成される環から、1個の結合が二重結合に変化した環が挙げられる。
【0066】
一般式(2−2)中、R18とY、およびR19とYが結合して形成される5員、6員、および7員の環が、更に置換可能な環である場合には、上記一般式(2−1)のR11〜R16で表される置換基で置換されていてもよく、2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0067】
一般式(2−2)中、XはMaと結合可能な基を表し、上記一般式(2−1)におけるXと同様な基が挙げられる。aは0、1、または2を表す。
【0068】
一般式(2−2)で表される化合物の好ましい態様としては、R12〜R15、R17、およびMaはそれぞれ、一般式(2−1)で表される染料の説明で記載した好ましい態様であり、XはNR(Rは水素原子、アルキル基)、窒素原子、又は酸素原子であり、XはNRa(Raは水素原子、アルキル基、ヘテロ環基)、又は酸素原子であり、YはNRc(Rcは水素原子、又はアルキル基)、窒素原子、又は炭素原子であり、Yは窒素原子、又は炭素原子であり、Xは酸素原子を介して結合する基であり、R18およびR19は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、若しくはアルキルアミノ基であり、又はR18とYとが互いに結合して5員若しくは6員環を形成し、又はR19とYとが互いに結合して5員若しくは6員環を形成し、aは0又は1を表す。
【0069】
一般式(2−2)で表される化合物の更に好ましい態様としては、R12〜R15、R17、Maはそれぞれ、一般式(2−1)で表される染料の説明で記載した特に好ましい態様であり、XおよびXは、酸素原子であり、YはNHであり、Yは窒素原子であり、Xは酸素原子を介して結合する基であり、R18およびR19は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、若しくはアルキルアミノ基であり、又はR18とYとが互いに結合して5員若しくは6員環を形成し、又はR19とZとが互いに結合して5員若しくは6員環を形成し、aは0又は1を表す。
【0070】
<一般式(2−3)で表される染料>
以下に、一般式(2−3)で表される染料の各置換基について詳述する。
【0071】
【化9】

【0072】
一般式(2−3)中、R11〜R16はそれぞれ独立に、水素原子、または置換基を表す。R17は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。Maは、金属原子または金属化合物を表す。
【0073】
一般式(2−3)中のR11〜R17は、それぞれ一般式(2−1)中のR11〜R17と同義であり、好ましい態様も同様である。
一般式(2−3)中のMaは、金属原子または金属化合物を表し、一般式(2−1)において説明した、金属原子または金属化合物と同義であり、その好ましい範囲も同様である。
【0074】
次に、一般式(2−1)〜一般式(2−3)で表される染料の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるわけではない。なお、他の具体例として、特願2008−149467号明細書の段落番号[0058]〜[0074]に記載の染料などが挙げられる。
【0075】
【化10】

【0076】
【化11】

【0077】
【化12】

【0078】
一般式(2−1)〜一般式(2−3)で表される染料は、米国特許第4,774,339号、同−5,433,896号、特開2001−240761号、同2002−155052号、特許第3614586号、Aust.J.Chem,1965,11,1835−1845、J.H.Boger et al,Heteroatom Chemistry,Vol.1,No.5,389(1990)等に記載の方法で合成することができる。
【0079】
インクジェット用インク中、上述した一般式(1)で表される染料と、一般式(2−1)〜一般式(2−3)で表される染料との総含有量は、インク全量に対して、1〜30質量%が好ましく、3〜20質量%がより好ましい。含有量が少なすぎる場合、カラーフィルタとして必要な光学濃度を達成するために、膜厚が厚くなる。そのためブラックマトリクスも厚くする必要があり、ブラックマトリクス形成が困難になるので好ましくない。含有量が多すぎる場合、インク粘度が高くなり吐出が困難になる、また溶媒へ溶解しにくくなるので好ましくない。
【0080】
なお、インクジェット用インク中、一般式(1)で表される染料(シアン染料)と一般式(2−1)〜一般式(2−3)で表される染料(ジピロメテン系染料)との質量比(シアン染料/ジピロメテン系染料)は、特に限定されないが、得られる色画素がより優れた外観、優れた耐薬品性を示す点より、その質量比は0.3〜4が好ましく、1〜3がより好ましい。
【0081】
<有機溶剤>
インクジェット用インクは、有機溶剤を含有する。有機溶剤としては、各成分の溶解性を満足すれば特に限定されない。
有機溶剤の具体例としては、水や、エステル類、例えば、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、アルキルエステル類、乳酸メチル、乳酸エチル、オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチルなど;3−オキシプロピオン酸メチル、3−オキシプロピオン酸エチルなどの3−オキシプロピオン酸アルキルエステル類、例えば、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチルなど;2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピルなどの2−オキシプロピオン酸アルキルエステル類、例えば、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチルなど;ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチルなど;エーテル類、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテートなど;ケトン類、例えば、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノンなど;芳香族炭化水素類、例えば、キシレンなど;ジシクロヘキシルメチルアミンなどの有機溶剤、などが好適に挙げられる。これらは1種または2種以上を併用しても構わない。
【0082】
インクジェット用インク中の有機溶剤の含有量は、インク全量に対して、30〜90質量%が好ましく、50〜90質量%がさらに好ましい。30質量%以上であると1画素内に打滴されるインク量が保たれ、画素内でのインクの濡れ広がりが良好である。また、90質量%以下であると、インク中の機能膜(例えば画素など)を形成するための溶媒以外の成分量を所定量以上に保つことができる。これより、カラーフィルタを形成する場合には、1画素当たりのインク必要量が多くなり過ぎることがなく、例えば隔壁で区画された凹部にインクジェット法でインクを付与する場合に、凹部からのインク溢れや隣の画素との混色の発生を抑制することができる。
【0083】
本発明で用いられる有機溶剤の沸点は、130〜280℃が好ましい。沸点が低すぎると、面内の画素の形状の均一性の点で好ましくない。沸点が高すぎると、プリベークによる溶媒除去の点で好ましくない。なお、有機溶剤の沸点は、圧力1atmのもとでの沸点を意味し、化合物辞典(Chapman & Hall 社)などの物性値表により知ることができる。
【0084】
有機溶剤の好ましい使用形態の一つとして、沸点が160℃以上の有機溶剤を、有機溶剤全量中の10質量%以上含むことが好ましい。なかでも、沸点が160〜250℃の有機溶剤が好ましく、180〜240℃がより好ましい。沸点が上記所定範囲の有機溶剤の含有量は、使用される有機溶剤全量中、10質量%以上が好ましく、20〜100質量%が好ましく、25〜75質量%がより好ましい。所定の沸点を有する有機溶剤を上記範囲内で含有すると、インクの乾燥を制御でき、吐出安定性が付与できる点、吐出後のインクのレベリング性向上の点で好ましい。一方、沸点の低い有機溶剤を含む場合は、インクジェットヘッド上でもすばやく蒸発するため、ヘッド上でのインクの粘度上昇や固形分の析出等を容易に引き起こし、吐出性の悪化を伴う場合が多い。また、インクが基板面に着弾し、基板面上を濡れ拡がる場合も、濡れ拡がりの縁の部分において溶媒が蒸発することでインクの粘度上昇が起こり、ピニング(PINNING)という現象により、濡れ拡がりが抑えられる場合がある。
【0085】
なお、沸点が160℃以上の有機溶剤としては、例えば、2−ヘプタノール、シクロヘキサノール、2−フルアルデヒド、N,N−ジエチルエタノールアミン、2−メチルシクロヘキサノール、N,N−ジメチルアセトアミド、2−(メトキシメトキシ)エタノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、モノエタノールアミン、3−メチルシクロヘキサノール、4−メチルシクロヘキサノール、1−ヘプタノール、N,N−エチルホルムアミド、2−オクタノール、テトラヒドロフリルアルコール、N−メチルホルムアミド、エチレングリコールモノイソアミルエーテル、エチレングリコールモノアセテート、2,3−ブタンジオール、グリセリンモノアセテート、2−エチル−1−ヘキサノール、1,2−プロパンジオール、ジメチルスルホキシド、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、1,2−ブタンジオール、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3,3,5−トリメチル−1−ヘキサノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、1−オクタノール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、N−メチルピロリドン、γ―ブチロラクトン、ベンジルアルコール、N−メチルアセトアミド、1,3−ブタンジオール、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ホルムアミド、1−ノナノール、1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、α−テルピネオール、アセトアミド、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、1−デカノール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコールジアセテート、2−ブテン−1,4−ジオール、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,5−ペンタンジオール、1−ウンデカノール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコール、2−ピロリドン、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールなどが挙げられる。
【0086】
<多官能エポキシ化合物または多官能オキセタン化合物>
本発明のインクジェット用インクは、重合性モノマーとして多官能エポキシ化合物、または、多官能オキセタン化合物を含有する。該エポキシ化合物またはオキセタン化合物の添加により、インク液滴と基板との密着性が向上する。併せて、上述した染料のインク中での分散均一性の向上による輝度・色相の向上や、耐候性・耐熱性・耐薬品性などの堅牢性の向上が期待できる。
各種性能が向上する理由としては、多官能エポキシ化合物または多官能オキセタン化合物の重合反応時に、ヒドロキシ基などが発生し、これら極性官能基が上述した染料と相互作用し、色画素中での染料の分散性を向上させつつ、膜内の染料を固定化する機能が発現しているためと推測される。
【0087】
多官能エポキシ化合物としては、エポキシ基(オキシラン環)を複数個(2個以上)有する化合物であれば特に限定されないが、芳香族エポキシ化合物(芳香族エポキシド)、脂環式エポキシ化合物(脂環式エポキシド)、及び、脂肪族エポキシ化合物(脂肪族エポキシド)などが挙げられる。
芳香族エポキシ化合物としては、少なくとも1個の芳香族核を有する多価フェノール、あるいは、そのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジ又はポリグリシジルエーテルが挙げられる。例えば、ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、並びにノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0088】
脂環式エポキシ化合物としては、少なくとも1個のシクロへキセンまたはシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイドまたはシクロペンテンオキサイド含有化合物が好ましく挙げられる。
脂肪族エポキシ化合物としては、脂肪族多価アルコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル等がある。その代表例としては、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル又は1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリンあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はトリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテルに代表されるポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0089】
以下に、多官能のエポキシ化合物を詳しく例示する。
多官能エポキシ化合物の例としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、等が挙げられる。
【0090】
オキセタン化合物としては、オキセタン環を複数個(2個以上)有する化合物であれば特に限定されず、特開2001−220526号、同2001−310937号、同2003−341217号の各公報に記載される如き、公知のオキセタン化合物を任意に選択して使用できる。
【0091】
多官能オキセタン化合物の例としては、例えば、3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサ−ノナン、3,3’−(1,3−(2−メチレニル)プロパンジイルビス(オキシメチレン))ビス−(3−エチルオキセタン)、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,2−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,3−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、エチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリシクロデカンジイルジメチレン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、1,4−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ヘキサン、ペンタエリスリトールトリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ポリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジトリメチロールプロパンテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、エチレンオキサイド(EO)変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、プロピレンオキサイド(PO)変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、等の多官能オキセタンが挙げられる。
【0092】
上述した多官能エポキシ化合物または多官能オキセタン化合物のなかでも、得られる色画素の色相・輝度などの光学特性、耐熱性、耐薬品性、耐光性がより優れる点で、3個以上の官能基(エポキシ基またはオキセタン基)を有する化合物が好ましく、3〜4個の官能基を有する化合物がより好ましい。
【0093】
上述した多官能エポキシ化合物または多官能オキセタン化合物のなかでも、得られる色画素の色相・輝度などの光学特性、耐熱性、耐薬品性、耐光性がより優れる点、インクジェット吐出時の安定性がより優れる点で、分子量が200〜2000の化合物が好ましく、400〜1500がより好ましい。
【0094】
上述した多官能エポキシ化合物または多官能オキセタン化合物のなかでも、得られる色画素の色相・輝度などの光学特性、耐熱性、耐薬品性、耐光性がより優れる点で、オクタノール/水分配係数(ClogP)が−3〜10の化合物が好ましく、−1〜8がより好ましい。
なお、一般に、logPは、n−オクタノールと水を用いて実測により求めることもできるが、本発明においては、具体的に、logP値推算プログラムを使用して分配係数(ClogP値)(計算値)を求めることができる。
【0095】
上述した多官能エポキシ化合物または多官能オキセタン化合物の総含有量は、インクジェット用インクの固形分中の30〜80質量%が好ましく、40〜80質量%がより好ましい。モノマーの使用量が上記範囲内であれば、画素部の重合が十分となるため、画素部の膜強度の不足に起因する傷の発生が起こりにくくなったり、透明導電膜を付与する際にクラックやレチキュレーションが発生しにくくなったり、配向膜を設ける際の耐溶剤性が向上したり、電圧保持率を低下させない等の効果が得られる。ここで、配合割合を特定するためのインクジェット用インクの固形分とは、溶剤を除く全ての成分を含み、液状の多官能エポキシ化合物または多官能オキセタン化合物なども固形分に含まれる。
【0096】
上述のインクジェット用インクは、必要に応じて、他の添加剤(例えば、多官能チオール化合物、酸無水物または塩基性化合物、界面活性剤、熱重合開始剤など)を含有していてもよい。
以下に、任意成分について詳述する。
【0097】
<多官能チオール化合物>
本発明のインクジェット用インクは、2個以上のチオール基を有する多官能チオール化合物を含有することが好ましい。所定の官能数の多官能チオール化合物を使用することにより、色画素中での染料の分散性が向上し、堅牢性、耐薬品性、耐熱性、色相に優れると共に、レベリング性に優れた色画素を形成することができる。さらには、このチオール化合物を使用することにより、インク自体の膜強度を低下させずに、インクの粘度を低く保つことができ、吐出安定性にも優れたインクが得られる。
【0098】
上記多官能チオール化合物は、分子内にチオール基を2個以上有しており、3〜6個有していることが好ましい。チオール基の数が2個より少ないと、得られる画素の耐熱性、耐薬品性、耐光性に劣る場合がある。また、チオール基の数が6個より多いと、合成が非常に困難であり、かつ、使用するチオール化合物の粘度が高すぎて、インクの吐出安定性が劣る場合がある。
多官能チオール化合物の分子量は、特に制限されないが、インクの吐出安定性の観点から、200〜1200が好ましく、400〜1000がより好ましい。
【0099】
多官能チオール化合物は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
多官能チオール化合物の具体例としては、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)等が挙げられる。なかでも、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)が好ましい。
【0100】
インクジェット用インク中の多官能チオール化合物の含有量は、インク全量に対して、0.5〜20質量%が好ましく、2〜12質量%がより好ましい。含有量が少なすぎる場合、色画素の堅牢性や耐熱性に関する効果が十分に得られないので好ましくない。含有量が多すぎる場合、表面形状など、画素の膜質が悪化する事があり好ましくない。
【0101】
<酸無水物、または、塩基性化合物もしくは熱塩基発生剤>
本発明のインクジェット用インクは、酸無水物、または、塩基性化合物もしくは熱塩基発生剤を含有していてもよい。該化合物は、上述した多官能エポキシ化合物または多官能オキセタン化合物の重合反応を促進する役割(硬化剤)を果たし、色相・輝度などの光学特性、耐熱性、耐薬品性などにより優れた色画素を形成することができる。
【0102】
酸無水物としては特に限定されず、例えば、多塩基酸無水物が挙げられる。より具体的には2塩基酸無水物(ジカルボン酸無水物。例えば、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、無水クロレンド酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸など)、3塩基酸無水物(トリカルボン酸無水物。例えば、無水トリメリット酸、無水ヘキサヒドロトリメリット酸など)、4塩基酸無水物などが挙げられる。
【0103】
塩基性化合物としては、特に限定されず、第一級、第二級、第三級の脂肪族アミン類(ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロプレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミンなど)、芳香族アミン類または複素環アミン類(アニリン誘導体、ピロール誘導体、チアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ピラゾール誘導体、フラザン誘導体、ピロリン誘導体、ピロリジン誘導体、イミダゾリン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ピリジン誘導体、ピリダジン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾリジン誘導体、ピペリジン誘導体、ピペラジン誘導体、モルホリン誘導体、インドール誘導体など)、アミド誘導体、イミド誘導体等が挙げられるが、特に脂肪族アミンが好適に用いられる。
【0104】
インクのポットライフがより長くなる点より、加熱により塩基を発生する化合物である熱塩基発生剤が好ましく使用される。熱塩基発生剤としては、特に限定されず、加熱により脱炭酸して分解する有機酸と塩基の塩、分子内求核置換反応、ロッセン転位、ベックマン転位等の反応により分解してアミン類を放出する化合物や、加熱により何らかの反応を起こして塩基を放出する化合物が好ましく用いられる。
例えば、塩化モノアルキルトリメチルアンモニウム、塩化モノアルキルベンジルジメチルアンモニウム、ジアルキルエチルメチルアンモニウムエトサルフェート、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化アルキルジアンモニウムなどのアンモニウム塩;モノアルキルアミン類、ジアルキルアミン類、トリアルキルアミン類、芳香族アミン類、アルカノールアミン類などのアミン類;同一分子内に窒素原子を2個有するジアミノ化合物、窒素原子を3個以上有するジアミノ重合体、アミド基含有化合物、ウレア化合物、含窒素複素環化合物等が挙げられ、好ましく用いられる。
【0105】
その他にも、1−メチル−1−(4−ビフェニルイル)エチルカルバメート、1,1−ジメチル−2−シアノエチルカルバメート等のカルバメート誘導体、尿素やN,N−ジメチル−N’−メチル尿素等の尿素誘導体、1,4−ジヒドロニコチンアミド等のジヒドロピリジン誘導体、有機シランや有機ボランの四級化アンモニウム塩、ジシアンジアミド、トリクロロ酢酸グアニジン、トリクロロ酢酸メチルグアニジン、トリクロロ酢酸カリウム、フェニルスルホニル酢酸グアニジン、p−クロロフェニルスルホニル酢酸グアニジン、p−メタンスルホニルフェニルスルホニル酢酸グアニジン、フェニルプロピオール酸カリウム、フェニルプロピオール酸グアニジン、フェニルプロピオール酸セシウム、p−クロロフェニルプロピオール酸グアニジン、p−フェニレン−ビス−フェニルプロピオール酸グアニジン、フェニルスルホニル酢酸テトラメチルアンモニウム、フェニルプロピオール酸テトラメチルアンモニウム等が挙げられる。
【0106】
インクジェット用インク中の酸無水物または塩基性化合物もしくは熱塩基発生剤の総含有量は、インク全量に対して、0.1〜10質量%が好ましく、0.2〜5質量%がより好ましい。含有量が少なすぎる場合、色画素の堅牢性や耐熱性に関する効果が十分に得られないので好ましくない。含有量が多すぎる場合、表面形状など、画素の膜質が悪化する事があり、好ましくない。
【0107】
<界面活性剤>
本発明のインクジェット用インクには、さらに界面活性剤を用いてもよい。界面活性剤の例として、特開平7−216276号公報の段落番号[0021]や、特開2003−337424号公報、特開平11−133600号公報に開示されている界面活性剤が、好適なものとして挙げられる。
界面活性剤の含有量は、インクジェット用インク全量に対して5質量%以下が好ましく、0.01〜2質量%がより好ましい。上記範囲内であれば、インクの他物性を損ねること無く、好ましい表面張力を得られる点で好ましい。
【0108】
<熱重合開始剤>
本発明のインクジェット用インクは、重合性モノマーの重合反応を促進する目的で、熱重合開始剤を併用してもよい。熱重合開始剤は、インクジェット用インクに用いられるエポキシ化合物またはオキセタン化合物の種類、重合経路にあわせて選択することができる。熱重合開始剤としては、例えば、特許出願2007−303656号明細書の段落番号[0086]〜[0117]に記載される熱重合開始剤を用いてもよい。
【0109】
熱重合開始剤の含有量は、インクジェット用インク中の全固形分に対して、0.01〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜30質量%である。含有量が上述の範囲内であると、より良好な感度と強固な硬化部を形成することができる。
【0110】
その他の添加剤としては、特開2000−310706号公報の段落番号[0058]〜[0071]に記載のその他の添加剤が挙げられる。
【0111】
インクジェット用インクの各成分の含有量としては、得られる色画素の各特性がより優れる点で、インク全量に対して、一般式(1)で表される染料と一般式(2−1)で表される染料〜一般式(2−3)で表される染料(ジピロメテン系染料)との総含有量は1〜30質量%が好ましく、より好ましくは2〜20質量%であり、有機溶剤の含有量は30〜90質量%が好ましく、より好ましくは50〜90質量%であり、多官能エポキシ化合物または多官能オキセタン化合物の総含有量は5〜50質量%が好ましく、より好ましくは7〜30質量%である。
【0112】
<インクジェット用インクの製造方法>
本発明のインクジェット用インクの製造には、公知のインクジェット用インクの製造方法を適用することが可能である。例えば、溶媒中に染料を溶解させた後、インクジェット用インクに必要な各成分(例えば、多官能エポキシ化合物または多官能オキセタン化合物、熱重合開始剤)を溶解させてインクジェット用インクを調製することができる。
【0113】
<インクジェット用インクの物性値>
本発明のインクジェット用インクの物性値としては、インクジェットヘッドで吐出可能な範囲であれば特に限定されないが、インク粘度は安定吐出観点から、25℃において30mPa・s以下であることが好ましく、2〜30mPa・sであることがより好ましく、2〜20mPa・sがさらに好ましい。また、装置で吐出する際には、インクジェットインクの温度を20〜80℃の範囲でほぼ一定温度に保持することが好ましい。装置の温度を高温に設定すると、インクの粘度が低下し、より高粘度のインクを吐出可能となる。しかし、温度が高くなることにより、熱によるインクの変性や熱重合反応がヘッド内で発生したり、インクを吐出するノズル表面で溶剤が蒸発しやすくなり、ノズル詰まりが起こりやすくなるため、装置の温度は20〜80℃の範囲が好ましい。
【0114】
なお、粘度は、25℃にインクジェット用インクを保持した状態で、一般に用いられるE型粘度計(例えば、東機産業(株)製E型粘度計(RE−80L)を用いることにより測定される値である。
【0115】
また、インクジェット用インクの25℃の表面張力(静的表面張力)としては、非浸透性の基板に対する濡れ性の向上、および吐出安定性の点で、20〜40mN/mが好ましく、20〜35mN/mがより好ましい。また、装置で吐出する際には、インクジェット用インクの温度を20〜80℃の範囲で略一定温度に保持することが好ましく、そのときの表面張力を20〜40mN/mとすることが好ましい。インクジェット用インクの温度を所定精度で一定に保持するためには、インク温度検出手段と、インク加熱または冷却手段と、検出されたインク温度に応じて加熱または冷却を制御する制御手段とを備えていることが好ましい。あるいは、インク温度に応じてインクを吐出させる手段への印加エネルギーを制御することにより、インク物性変化に対する影響を軽減する手段を有することも好適である。
【0116】
上述の表面張力は、一般的に用いられる表面張力計(例えば、協和界面科学(株)製、表面張力計FACE SURFACE TENSIOMETER CBVB−A3など)を用いて、ウィルヘルミー法で液温25℃、60%RHにて測定される値である。
【0117】
また、インクジェット用インクが基板着弾後に濡れ拡がる形状を適正に保つためには、基板に着弾後のインクジェット用インクの液物性を所定の範囲に保持することが好ましい。このためには、基板および/または基板の近傍を所定温度範囲内に保持することが好ましい。あるいは、基板を支持する台の熱容量を大きくするなどにより、温度変化の影響を低減することも有効である。
【0118】
<色画素(色画像)>
本発明のインクジェット用インクを用いて、後述する方法にて得られる色画素(色画像、記録材)の色度は、C光源を使用して測定したCIE−XYZ表色系で表した場合、xy色度図上での値が7≦Y(刺激値Yが7以上)とした時、0.125<x<0.145及び0.075<y<0.140で囲まれた範囲内にあることが好ましい。より好ましくは0.130<x<0.140及び0.090<y<0.120で囲まれた範囲内にあることである。
【0119】
色はXYZ表色系において、(x,y,Y)の3つの変数で次式のように表すことができる。このとき、下記x,yは、色相と彩度を表す変数であり、X、Y、Zは色刺激値である。
(式W)
x=X/(X+Y+Z)、y=Y/(X+Y+Z)
【0120】
また、得られる色画素の色相がxy色度図上での上記好適範囲にある場合の輝度Y値は、カラーフィルタへの応用の観点からは、7以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、12以上であることが特に好ましい。
【0121】
<カラーフィルタおよびその製造方法>
次に、図面に示す好適実施形態を参照して、上記のインクジェット用インクを用いたカラーフィルタおよびその製造方法について詳細に説明する。
本発明のカラーフィルタは、本発明のインクジェット用インクを用いてインクジェット法により形成された色画素を備えることを特徴とするものであり、すなわち、本発明のインクジェット用インクを用いてインクジェット法により製造されたことを特徴とするものである。また、本発明のカラーフィルタの製造方法は、基板上に形成された隔壁により囲まれた凹部に、本発明のインクジェット用インクをインクジェット法により付与して画素を形成する工程(以下、「画素形成工程」という)を有することを特徴とする。好ましくは、画素形成工程は、基板上の隔壁により区画された凹部にインクジェット法により液滴としてインクを付与する描画工程と、さらに、描画された少なくとも1色の画素(凹部内のインク)を形成した後に熱により硬化して色画素を形成する加熱工程を含む硬化工程を有し、必要に応じてさらにベーク処理などの他の工程を設けて構成することができる。
【0122】
図1は、本発明のカラーフィルタの製造方法の一実施形態における製造工程を示すフローチャートであり、図2(a)〜(f)は、本発明のカラーフィルタの製造方法における基板からカラーフィルタに至る製造工程順に示す基板およびカラーフィルタの模式的断面図である。
図1および図2(a)〜(f)に示すように、本発明のカラーフィルタ10の製造方法は、基板12にブラックマトリックス(BM)となる隔壁(バンク)14を形成する隔壁形成工程S102(図2(b)参照)と、隔壁14に撥液性(撥インク性)を付与する撥液処理工程S104と、隣接する隔壁14間の凹部16に、本発明のインクジェット用インク18をインクジェット法により付与して色画素20を形成する画素形成工程S106(図2(c)〜(e)参照)と、形成された色画素20を保護する保護膜22を形成してカラーフィルタ10を製造する保護膜形成工程S108(図2(f)参照)とを有する。
【0123】
また、画素形成工程S106は、上述したように、隔壁14間の凹部16にインク18をインクジェット法により液滴として吐出して付与する描画工程S110(図2(c)参照)と、凹部16に付与されたインク18を乾燥させてインク18内の溶剤を除去してインク残部18aとする予備処理工程S112(図2(d)参照)と、基板12上の凹部16内のインク残部18aを加熱する加熱工程によりインク残部18aを重合して硬化させ、色画素20を形成する硬化工程S114(図2(e)参照)とを有する。
なお、隔壁14は、画素形成工程S106の前の隔壁形成工程S102において、予め基板12上に形成されたものであり、隔壁14の隔壁形成工程S102およびその形成方法の詳細については後述し、まず始めに、画素形成工程S106について説明する。
【0124】
<画素形成工程>
図2(c)〜(e)に示すように、画素形成工程S106では、描画工程S110において、隔壁(色離隔壁)14間の凹部16に、本発明のインクジェット用インク18の液滴をインクジェット法で付与して、硬化工程S114で付与されたインク18を硬化して画素20を形成する。この画素20は、カラーフィルタ10を構成する赤色(R)、緑色(G)、青色(B)などの色画素となるものである。本発明のインクジェット用インクを用いることにより、青色(B)の色画素を有するカラーフィルタ10を製造することができる。なお、カラーフィルタの基板12としては、特に限定されず、ガラス板や、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂板を用いることができる。
【0125】
描画工程S110において用いられるインクジェット方式としては、特に限定されず、帯電したインクジェット用インクを連続的に噴射し電場によって制御する方法、圧電素子を用いて間欠的にインクジェット用インクを噴射する方法、インクジェット用インクを加熱してその発泡を利用して間欠的に噴射する方法等の、各種の方法を採用できる。
使用されるインクジェットヘッドとしては、コンティニュアス型やオンデマンド型のピエゾ方式、サーマル方式、ソリッド方式、静電吸引方式等の種々の方式のインクジェットヘッド(吐出ヘッド)を用いることができ、オンデマンド型の種々の方式のインクジェットヘッドを用いることが好ましく、特に、オンデマンド型のピエゾ方式のインクジェットヘッドを用いることが好ましい。また、インクジェットヘッドの吐出部(ノズル)は、単列配置に限定されず、複数列としても千鳥格子状に配置としてもよい。
さらに、ヘッドは、インクの温度が管理できるように温調機能を持つものが好ましい。射出時の粘度は、5〜25mPa・sとなるように射出温度を設定し、粘度の変動幅が±5%以内になるようにインク温度を制御することが好ましい。また、駆動周波数としては、1〜500kHzで稼動することが好ましい。ノズルの形状は、必ずしも円形である必要はなく、楕円形、矩形等の形状に制限されるものではない。ノズル径は、10〜100μmの範囲であることが好ましい。なお、ノズルの開口部自身は必ずしも真円とは限らないが、その場合、ノズル径は該開口部の面積と同等の円で表したときの径とする。
【0126】
本発明のインクジェット用インクを用いて製造するカラーフィルタとしては、単色のカラーフィルタのみならず、イエロー(Y)とマゼンタ(M)とでなる赤色(R)の色画素、イエロー(Y)とシアン(C)とでなる緑色(G)の色画素、マゼンタ(M)とシアン(C)とでなる青色(B)の色画素を有する3色のカラーフィルタや、さらに、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の色画素を有する4〜6色の色画素を有するカラーフィルタなどが挙げられる。
【0127】
本発明のインクジェット用インク以外に、カラーフィルタを形成するためのそれぞれの着色用インクとしては、公知のものを使用することができる。例えば、マゼンタ色調インクの場合は、カップリング成分(以降、カプラー成分と呼ぶ)として、フェノール類、ナフトール類、アニリン類、ピラジンのようなヘテロ環類、開鎖型活性メチレン化合物類などを有するアリールもしくはヘテリルアゾ染料;例えばカプラー成分として開鎖型活性メチレン化合物類などを有するアゾメチン染料;アントラピリドン染料(例えばUS2004/0239739A1明細書記載のTable 1中のNo.20の化合物や、国際公開第04/104108号パンフレット記載の化合物(13)など)などを含んだインクを挙げることができる。
【0128】
イエロー色調用インクとしては、例えば、カプラー成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類、ピラゾロンやピリドン等のような複素環類、開鎖型活性メチレン化合物類、などを有するアリールもしくはヘテリルアゾ染料;例えば、カプラー成分として開鎖型活性メチレン化合物類などを有するアゾメチン染料;例えば、ベンジリデン染料やモノメチンオキソノール染料等のようなメチン染料;例えば、ナフトキノン染料、アントラキノン染料等のようなキノン系染料などがあり、これ以外の染料種としてはキノフタロン染料、ニトロ・ニトロソ染料、アクリジン染料、アクリジノン染料などを含んだインクを挙げることができる。
【0129】
シアン色調用染料としては、例えば、カプラー成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類などを有するアリールまたはヘテリルアゾ染料;例えば、カプラー成分としてフェノール類、ナフトール類、ピロロトリアゾールのような複素環類などを有するアゾメチン染料;シアニン染料、オキソノール染料、メロシアニン染料などのようなポリメチン染料;ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料などのようなカルボニウム染料;フタロシアニン染料;アントラキノン染料;インジゴ・チオインジゴ染料などを含んだインクを挙げることができる。
【0130】
カラーフィルタパターンの形状については、特に限定はなく、ブラックマトリックス形状として一般的なストライプ状であっても、格子状であっても、さらにはデルタ配列状であってもよい。
【0131】
本発明においては、図2(c)に示すように、描画工程S110において基板12上の凹部16にインク18の液滴を付与してインク18の層を形成した後、図2(d)に示すように、予備処理工程S112でインク18内に含まれる有機溶剤を乾燥して除去してインク残部18aとした後に、図2(e)に示すように、インク残部18aを加熱する加熱工程からなる硬化工程S114によりインク残部18aを重合して画素20を形成してもよい。また、インク残部の熱重合が開始する温度をT℃としたときに、予備処理工程S112において、T℃未満の温度で予備加熱(以下、予備加熱工程ともいう)を行ってインク18内に含まれる有機溶剤を強制的に乾燥させて除去してインク残部18aとした後に、インク残部18aをT℃以上の温度で加熱する加熱工程によりインク残部18aを重合して硬化させて、画素20を形成してもよい。
【0132】
<硬化工程>
本発明のカラーフィルタの製造方法においては、赤色(R)、緑色(G)、および青色(B)など所望の色相の未硬化画素インク18aを、熱により硬化する工程を設けることができる。
本発明のインクジェット用インクは、熱硬化により優れた色相・輝度・耐熱性・耐薬品性を示す色画素を形成することができ、光照射などのプロセスを設ける必要はない。
【0133】
本硬化工程では、隔壁および所望の色相からなる未硬化画素インクを形成し、加熱処理(いわゆるベーク処理)を行って、熱による硬化を施すことができる。すなわち、隔壁および未硬化画素インクが形成されている基板を、電気炉、乾燥器などに入れて加熱する、あるいは赤外線ランプを照射して加熱することができる。
【0134】
このときの加熱温度および加熱時間は、インクジェット用インクの組成や画素の厚みに依存するが、一般に充分な耐溶剤性、耐アルカリ性、および紫外線吸光度を確保する観点から、約120℃〜約250℃で約10分〜約120分間加熱することが好ましい。
【0135】
また、本発明のインクジェット用インクを用いたカラーフィルタの製造方法では、熱処理による画素形成用凹部(未硬化画素)内のインクの重合を行う前に、予備処理工程S112として、予備加熱工程を設けてもよい。予備加熱工程における加熱温度は特に制限は無いが、未硬化画素インクの熱重合が開始する温度をT℃とした場合に、T℃未満であり、未硬化画素インクの重合が起きない温度が好ましく、50〜100℃がより好ましく、60〜90℃がさらに好ましい。本予備加熱工程を入れることで、インクジェット法により付与されたインク中の有機溶剤の蒸発が促進され、カラーフィルタを効率的に作製することができる上に、インク残部の粘度が熱により低下するため、より高い流動性が得られ、高い平坦性の画素を有するカラーフィルタを得ることが可能になる。
【0136】
温度Tは、以下のようにして求めることができる。インクを加熱し、加熱によりインクの重合が開始し、インクのゲル化などが観察される温度をTとする。より具体的には、加熱前のインク粘度に対して、加熱後のインク粘度の上昇が5mPa・s以上の場合の加熱温度をTとする。
【0137】
本発明のインクを用いたカラーフィルタの製造方法においては、描画工程S110から予備加熱工程(S112)および硬化工程(S114)までの画素形成工程S106を、24時間以内で行う事が好ましく、12時間以内で行う事がより好ましく、6時間以内に行う事がさらに好ましい。描画工程S110から、硬化工程S114までの画素の形成を24時間以内で行うことにより、画素の面状を向上させることができる。
なお、本発明のカラーフィルタの製造方法においては、画素形成工程S106、すなわち描画工程S110から予備加熱工程(S112)、硬化工程(S114)までを、1色毎に行っても良いし、複数色毎に行っても良いし、または描画工程S110で全色について描画を行い、予備加熱工程(S112)による予備加熱、硬化工程S114による硬化を全色について行っても良い。また、画素形成工程S106を1色または複数色毎に行う場合、形成する画素の色の順序は、特に制限的ではなく、どのような色の順序でも良い。
【0138】
<隔壁形成工程>
本発明のカラーフィルタの製造方法では、上述した画素形成工程S106において、図2(c)〜(e)に示すように、基板12上に形成された隔壁14により囲まれた凹部16に、インクジェット法により本発明のインクジェット用インク18の液滴を付与して画素20が形成される。
この隔壁14は、特に制限的ではなく、公知の隔壁を用いることができ、どの様なものでもよいが、カラーフィルタを作製する場合は、ブラックマトリクスの機能を持った遮光性を有する隔壁であることが好ましい。
そのため、図1に示す例では、隔壁形成工程S102において、図2(b)に示すように、図2(a)に示す基板12上に、このようなブラックマトリクスの機能を持つ遮光性のある隔壁14を形成する。
【0139】
なお、この隔壁14は、公知のカラーフィルタ用ブラックマトリクスと同様の素材を用い、同様の公知の方法により作製することができる。例えば、特開2007−193090号公報の段落番号[0108]〜[0126]や、特開2005−3861号公報の段落番号[0021]〜[0074]や、特開2004−240039号公報の段落番号[0012]〜[0021]に記載のブラックマトリクス(いわゆる樹脂ブラックマトリックス)や、特開2006−17980号公報の段落番号[0015]〜[0020]や、特開2006−10875号公報の段落番号[0009]〜[0044]に記載のインクジェット用ブラックマトリクスなどが挙げられる。また、隔壁14は、ブラックマトリクス機能と隔壁機能とを別々に持つ層からなる2層構造であっても良い。例えば、特開2004−361491号公報の段落番号[0054]〜[0057]や、特開2004−295039号公報の段落番号[0067]〜[0069]や、特開2006−86128号公報の段落番号[0068]〜[0069]、[0103]、[0109]〜[0110]に記載の金属遮光膜とその上に形成された樹脂製、好ましくは、撥液性の樹脂製の隔壁(バンク)層とからなる2層構造であっても良い。
本発明法では、上述した公知の作製方法の中でも、コスト削減の観点から感光性樹脂転写材料を用いることが好ましい。感光性樹脂転写材料は、仮支持体上に少なくとも遮光性を有する樹脂層を設けたものであり、基板に圧着して、遮光性を有する樹脂層を基板に転写することができる。
【0140】
感光性樹脂転写材料は、特開平5−72724号公報に記載されている感光性樹脂転写材料、すなわち一体型となったフイルムを用いて形成することが好ましい。該一体型フイルムの構成の例としては、仮支持体/熱可塑性樹脂層/中間層/感光性樹脂層(本発明において「感光性樹脂層」とは光照射により硬化しうる樹脂をいい、それが遮光性を有するときには「遮光性を有する樹脂層」ともいい、目的の色に着色されているときには「着色樹脂層」ともいう。)/保護フイルムを、この順に積層した構成が挙げられる。感光性樹脂転写材料を構成する仮支持体、熱可塑性樹脂層、中間層、保護フィルムや、転写材料の作製方法については、特開2005−3861号公報の段落番号[0023]〜[0066]や特開2007−193090号公報の段落番号[0108]〜[0126]に記載のものが好適なものとして挙げられる。
【0141】
また、このような隔壁14は、インクジェット用インクの混色を防ぐために、撥インク処理を施してもよい。
このため、図1に示す例では、隔壁形成工程S102の後、撥液処理工程S104において、図2(b)に示す基板12上の隔壁14に、撥液処理、すなわち撥インク処理を施す。
なお、このような撥インク処理としては、例えば、特開2007−187884号公報の段落番号[0086]〜[0087]に記載された撥インク処理方法、具体的には、(1)撥インク性物質を隔壁に練りこむ方法(例えば、特開2005−36160号公報参照)、(2)撥インク層を新たに設ける方法(例えば、特開平5−241011号公報参照)、(3)プラズマ処理により撥インク性を付与する方法(例えば、特開2002−62420号公報参照)、(4)隔壁の壁上面に撥インク材料を塗布する方法(例えば、特開平10−123500号公報参照)、などが挙げられ、特に(3)基板上に形成された隔壁にプラズマによる撥インク化処理を施す方法が好ましい。
【0142】
これらの他、本発明法に適用可能な撥インク処理方法として、特開2004−361491号公報の段落番号[0058]に記載された撥インク処理方法(例えば、特開平9−203803号公報、特開平9−230129号公報および特開平9−230127号公報参照)や、特開2006−86128号公報の段落番号[0074]〜[0075]、[0111]〜[0118]、[0130]に記載された撥インク処理方法などを挙げることができる。
なお、上述した例では、基板12上の隔壁14に撥インク処理を施しているが、本発明はこれに限定されず、同時に基板12上の凹部16内に親インク処理を施しても良い。
なお、隔壁14が撥インク性を備えている場合には、撥液処理工程S104は不要であるが、その場合においても、基板12上の凹部16内に親インク処理を施しても良い。
【0143】
図2(e)に示すように、基板12上に隔壁14および画素20を形成して、カラーフィルタ10を作製した後には、耐性向上の目的で、図2(f)に示すように、画素20および隔壁14の全面を覆うように保護層としてオーバーコート層22を形成することができる。オーバーコート層22は、R,G,Bなどの画素20および隔壁14を保護すると共に表面を平坦にすることができる。但し、工程数が増える点からは設けないことが好ましい。オーバーコート層22は、樹脂(OC剤)を用いて構成することができ、樹脂(OC剤)としては、アクリル系樹脂組成物、エポキシ樹脂組成物、ポリイミド樹脂組成物などが挙げられる。中でも、可視光領域での透明性で優れており、インクジェット用インクの樹脂成分が通常アクリル系樹脂を主成分としており、密着性に優れることから、アクリル系樹脂組成物が望ましい。オーバーコート層の例として、特開2003−287618号公報の段落番号[0018]〜[0028]に記載のものや、オーバーコート剤の市販品として、JSR社製のオプトマーSS6699Gが挙げられる。
【0144】
本発明のカラーフィルタは、さらに透明導電膜として、酸化インジウムスズ(ITO)層を有していてもよい。ITO層の形成方法としては、例えば、インライン低温スパッタ法や、インライン高温スパッタ法、バッチ式低温スパッタ法、バッチ式高温スパッタ法、真空蒸着法、およびプラズマCVD法などが挙げられ、特にカラーフィルタに対するダメージを少なくするため、低温スパッタ法が好ましく用いられる。
【0145】
本発明のカラーフィルタは、例えば、液晶ディスプレイ、テレビ、パーソナルコンピュータ、液晶プロジェクタ、ゲーム機、携帯電話などの携帯端末、デジタルカメラ、カーナビなどの画像表示、特にカラー画像表示の用途に特に制限なく好適に適用できる。
また、本発明のカラーフィルタは、電子ペーパや有機EL素子デバイスなどの画像表示デバイス、特にカラー画像表示デバイスにも適用可能である。
【0146】
以上、本発明のインクジェット用インク、カラーフィルタおよびその製造方法、ならびにそれを用いる液晶ディスプレイおよび画像表示デバイスについて、種々の実施形態や実施例を挙げて詳細に説明したが、本発明は、上記実施例や実施形態には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよいのは、もちろんのことである。
【実施例】
【0147】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、割合、機器、操作等は本発明の範囲から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。なお、以下の実施例において、特に断りのない限り「%」および「部」は、「質量%」および「質量部」を表し、分子量とは重量平均分子量のことを示す。
【0148】
(隔壁形成用の濃色組成物の調製)
濃色組成物K1は、まず表1に記載の量のK顔料分散物1、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートをはかり取り、温度24℃(±2℃)で混合して150rpmで10分間攪拌し、さらに攪拌しながら、表1に記載の量のメチルエチルケトン、バインダー2、ハイドロキノンモノメチルエーテル、DPHA液、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[4’−(N,N−ビスジエトキシカルボニルメチル)アミノ−3’−ブロモフェニル]−s−トリアジン、界面活性剤1をはかり取り、温度25℃(±2℃)でこの順に添加して、温度40℃(±2℃)で150rpmで30分間攪拌することによって得られた。なお、表1に記載の量は質量部であり、詳しくは以下の組成となっている。
【0149】
<K顔料分散物1>
・カーボンブラック(デグッサ社製 Nipex35) 13.1%
・分散剤(下記化合物1) 0.65%
・ポリマー(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=72/28モル比
のランダム共重合物、分子量3.7万) 6.72%
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 79.53%
【0150】
【化13】

【0151】
<バインダー2>
・ポリマー(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=78/22モル比
のランダム共重合物、分子量3.8万) 27%
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 73%
【0152】
<DPHA液>
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(重合禁止剤MEHQ 500ppm含有、日本化薬(株)製、商品名:KAYARAD
DPHA) 76%
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 24%
【0153】
<界面活性剤1>
・下記構造物1 30%
・メチルエチルケトン 70%
【0154】
【化14】

【0155】
【表1】

【0156】
(隔壁の形成)
無アルカリガラス基板を、UV洗浄装置で洗浄後、洗浄剤を用いてブラシ洗浄し、更に超純水で超音波洗浄した。基板を120℃で3分熱処理して表面状態を安定化させた。
基板を冷却し23℃に温調後、スリット状ノズルを有すガラス基板用コーター(エフ・エー・エス・アジア社製、商品名:MH−1600)にて、上述のように調製した濃色組成物K1を塗布した。引き続きVCD(真空乾燥装置、東京応化工業社製)で30秒間、溶媒の一部を乾燥して塗布層の流動性を無くした後、120℃で3分間プリベークして膜厚2.3μmの濃色組成物層K1を得た。
超高圧水銀灯を有すプロキシミティー型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング株式会社製)で、基板とマスク(画像パターンを有す石英露光マスク)を垂直に立てた状態で、露光マスク面と濃色感光層K1の間の距離を200μmに設定し、窒素雰囲気下、露光量300mJ/cmで隔壁幅20μm、スペース幅100μmにパターン露光した。
【0157】
次に、純水をシャワーノズルにて噴霧して、濃色組成物層K1の表面を均一に湿らせた後、KOH系現像液(ノニオン界面活性剤含有、商品名:CDK−1、富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製を100倍希釈したもの)を23℃で80秒、フラットノズル圧力0.04MPaでシャワー現像しパターニング画像を得た。引き続き、超純水を、超高圧洗浄ノズルにて9.8MPaの圧力で噴射して残渣除去を行い、大気下にて露光量2500mJ/cmにて基板の濃色組成物層K1が形成された面側からポスト露光を行って、オーブンにて240℃で50分加熱し、膜厚2.0μm、光学濃度4.0、100μm幅の開口部を有するストライプ状の隔壁を得た。
【0158】
(撥インク化プラズマ処理)
隔壁を形成した基板に、カソードカップリング方式平行平板型プラズマ処理装置を用いて、以下の条件にて撥インク化プラズマ処理を行った。
使用ガス :CF
ガス流量 :80sccm
圧力 :40Pa
RFパワー:50W
処理時間 :30sec
【0159】
<青色(B)用インク>
下記の成分を表2に記載の配合割合で混合し、1時間撹拌した。その後、平均孔径0.25μmのミクロフィルターで減圧濾過して青色用インク液(B−1〜B−9、B比較−1〜B比較−4)を調製した。
【0160】
青色(B)用インクの調製に用いた各材料の詳細を以下に示す。
(有機溶剤)
・シクロヘキサノン(和光純薬社製)
・ベンジルアルコール(和光純薬社製)
・ジエチレングリコールモノメチルエーテル(和光純薬社製)
【0161】
(重合性モノマー)([ ]内はClogP値)
・ビスフェノールAジグリシジルエーテル(Aldrich製)(官能基数:2個)[3.98]
・イソシアヌル酸トリグリシジル(東京化成製)(官能基数:3個)[−1.20]
・トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(Aldrich製)(官能基数:3個)[1.09]
・デナコールEX−411(ナガセケムテックス製)(官能基数:4個)
・OXT−221(東亞合成製)(官能基数:2個)[1.25]
・デナコールEX−313(ナガセケムテックス製)(官能基数:2−3個)
・DPHA(日本化薬社製(KAYARAD DPHA))[2.94]
:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(比較例に該当)
【0162】
(界面活性剤)
・KF−353(信越シリコーン社製):ポリエーテル変性シリコーンオイル
・F781−F(大日本インキ化学工業製(メガファックF781F))
(酸無水物)
・エピクロンB−570(大日本インキ化学工業製):メチルテトラヒドロ無水フタル酸
(アミン化合物)
・2−エチル−4−メチルイミダゾール(和光純薬製)
【0163】
(多官能チオール)
・TPMP:トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)(Aldrich製)
・カレンズMT−PE1(昭和電工社製)
:ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)
・DPMP:ペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)(Aldrich製)
【0164】
(染料)
・特定染料C−1(上記一般式(1)で表される染料の例示化合物CA−19に該当)
・特定染料C−2(上記一般式(1)で表される染料の例示化合物CC−5に該当)
・特定染料C−3(特開2008−292970号公報に記載の例示化合物CB−34に該当)
・C.I.Acid Blue 113(特開平10−104416号公報に記載の化合物に該当)(比較例に該当)
・特定染料M−1(上記一般式(2−2)で表される染料の例示化合物I−21に該当)
・特定染料M−2(上記一般式(2−2)で表される染料の例示化合物III−58に該当)
・特定染料M−3(上記一般式(2−2)で表される染料の例示化合物III-1)
【0165】
【化15】

【0166】
【化16】

【0167】
【化17】

【0168】
【化18】

【0169】
【化19】

【0170】
【表2】

【0171】
<インクジェット方式によるカラーフィルタの製造>
上記で調製されたB−1のインクを用いて、上記で得られた基板上の隔壁で区分された領域内(凸部で囲まれた凹部)に、富士フイルムDimatix社製インクジェットプリンターDMP−2831を用い、吐出を行い、その後、100℃オーブン中で2分間加熱を行った。
次に、220℃のオーブン中で30分間静置することにより、単色のカラーフィルタを作製した。得られた色画素の膜厚は2.0μmであった。
なお、他のB−2〜B−9のそれぞれのインクについても、同様の方法により、それらインクを用いてカラーフィルタを作製した。
【0172】
<粘度、表面張力の測定>
上記で調製されたインクの粘度、および表面張力を測定した。
インク粘度は、得られたインクを25℃に調温したまま、東機産業(株)製E型粘度計(RE−80L)を用いて以下の条件で測定した。結果を表3に示す。
(測定条件)
・使用ロータ:1° 34’×R24
・測定時間 :2分間
・測定温度 :25℃
【0173】
表面張力は、得られたインクを25℃に調温したまま、協和界面科学(株)製表面張力計(FACE SURFACE TENSIOMETER CBVB−A3)を用いて測定した。結果を表3に示す。
【0174】
<外観検査>
上記で作製した単色のカラーフィルタを、倍率100倍の光学顕微鏡で観察した。視野内に大きさ1μm以上の粒子状物質が観察された場合、または相分離構造が観察された場合を不合格(×)とし、視野内に粒子状物質が観察されない場合を合格(○)とした。例として、図3に合格の場合を、図4に粒子状物質が観察される不合格の場合を、図5に相分離構造が観察される不合格の場合の観察図を示す。結果を以下の表3に示す。
【0175】
<色相>
上記で作製した単色のカラーフィルタの色相が、光源にC光源を用いた際、0.130<x<0.140及び0.090<y<0.120の範囲(範囲A)であれば◎、該範囲Aには含まれないが、0.125<x<0.145及び0.075<y<0.140の範囲であれば○、それ以外の範囲であれば×とした。色相の測定は、UV−560(日本分光社製)を用いた。結果を以下の表3に示す。
【0176】
<輝度>
上記で作製した単色のカラーフィルタの色相が、光源にC光源を用いた際、0.125<x<0.145及び0.075<y<0.140の範囲であった場合、その時の輝度Yの値が12以上を◎、10以上を○、7以上を△、7未満を×とした。輝度の測定は、UV−560(日本分光社製)を用いた。結果を以下の表3に示す。
【0177】
<耐熱性評価>
上記で作製した単色のカラーフィルタを、220℃に加熱したオーブン内に入れ、1時間放置した後、色相を測定した。色相の測定は、UV−560(日本分光社製)を用い、評価前後のΔEabが3未満を◎とした。ΔEabが3以上7未満を○と、ΔEabが7以上15未満を△と、ΔEabが15以上を×とした。結果を以下の表3に示す。
なお、ΔEabは、CIE1976(L*,a*,b*)空間表色系による以下の色差公式から求められる値である(日本色彩学会編 新編色彩科学ハンドブック(昭和60年)p.266)。
ΔEab={(ΔL)2+(Δa)2+(Δb)21/2
【0178】
<耐薬品性評価>
上記で作製した単色のカラーフィルタを、評価を行う薬品(N―メチルピロリドン、2−プロパノール、5%硫酸水溶液、5%水酸化ナトリウム水溶液)中に20分間浸し、その前後の色相を測定した。色相の測定は、UV−560(日本分光社製)を用い、ΔEabが3未満を◎とした。ΔEabが3以上7未満を○と、ΔEabが7以上15未満を△と、ΔEabが15以上を×とした。結果を以下の表3に示す。
【0179】
以下の表3中の評価結果において、実用上の使用の観点から、×が含まれていないことが必要である。
【0180】
【表3】

【0181】
上記表3中「−」は、実験を実施していないこと(未実施)を表す。
【0182】
表3の結果から分かるように、本発明のインクジェット用インクを用いて、熱硬化プロセスにより得られた色画素は、外観、色相および輝度などの光学特性に優れ、かつ、耐熱性・耐薬品性にも優れていた。
一方、B比較−1〜B比較−4においては、上記のいずれかの項目において「×」が含まれており、所望の特性を有する色画素を得ることはできなかった。
より具体的には、一般式(1)で表される染料には該当しない特開平10−104416号公報に記載の化合物を使用したB比較−1においては、得られた色画素は耐熱性に劣っていた。
また、特開2008−292970号公報に具体的に記載の染料およびラジカル重合性モノマーを使用したB比較−2〜B比較−4においては、得られた色画素が外観不良を示したり、耐薬品性、耐熱性などの点で劣ったりしていた。
【符号の説明】
【0183】
10 カラーフィルタ
12 基板
14 隔壁
16 凹部
18 インク
18a 未硬化画素インク
20 画素
22 保護膜


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表される染料と、一般式(2−1)で表される染料、一般式(2−2)で表される染料、および一般式(2−3)で表される染料からなる群から選ばれる少なくとも1種の染料と、多官能エポキシ化合物または多官能オキセタン化合物と、有機溶剤とを含むインクジェット用インク。
【化1】


(一般式(1)中、Rは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。Lは、それぞれ独立に、脂肪族または芳香族の連結基を表す。Zは2つの炭素原子と共に6員環を形成するのに必要な非金属原子群を表し、4つのZは同一であっても異なっていてもよい。Mは2個の水素原子、2価の金属原子、2価の金属酸化物、2価の金属水酸化物または2価の金属塩化物を表す。mはそれぞれ独立に1または2を表し、nはそれぞれ独立に0または1を表す。pはそれぞれ独立に1〜5の整数を表す。r、r、r及びrはそれぞれ独立に0または1を表し、r+r+r+r≧1を満たす。複数のR中、少なくとも1つのRは、−OY、−COOY、−SOY、−CON(Y)CO−、−CON(Y)SO−、−SON(Y)CO−、または−SONH−を有する。Yは水素原子、金属原子または共役酸を表す。)
【化2】


(一般式(2−1)中、R11〜R16はそれぞれ独立に、水素原子、または置換基を表す。R17は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。Maは、金属原子または金属化合物を表す。Xは、Maに結合可能な基を表し、Xは、Maの電荷を中和する為に必要な基を表す。XとXは、互いに結合して5員、6員、または7員の環を形成していてもよい。)
【化3】


(一般式(2−2)中、R12〜R15は、それぞれ独立に、水素原子、または置換基を表す。R17は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。Maは、金属原子または金属化合物を表す。Xは、NR(Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、またはアリールスルホニル基を表す。)、窒素原子、酸素原子、または硫黄原子を表し、Xは、NRa(Raは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、またはアリールスルホニル基を表す。)、酸素原子、または硫黄原子を表し、Yは、NRc(Rcは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、またはアリールスルホニル基を表す。)、窒素原子、または炭素原子を表し、Yは、窒素原子、または炭素原子を表す。R18およびR19は、それぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、またはヘテロ環アミノ基を表す。R18とYは、互いに結合して5員、6員、または7員の環を形成していてもよく、R19とYは、互いに結合して5員、6員、または7員の環を形成していてもよい。XはMaと結合可能な基を表し、aは0、1または2を表す。)
【化4】


(一般式(2−3)中、R11〜R16はそれぞれ独立に、水素原子、または置換基を表す。R17は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。Maは、金属原子または金属化合物を表す。)
【請求項2】
前記多官能エポキシ化合物および前記多官能オキセタン化合物が、それぞれ官能基数3以上の多官能エポキシ化合物および多官能オキセタン化合物である、請求項1に記載のインクジェット用インク。
【請求項3】
さらに、2官能以上の多官能チオール化合物を含む、請求項1または2に記載のインクジェット用インク。
【請求項4】
さらに、酸無水物を含有する、請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェット用インク。
【請求項5】
さらに、塩基性化合物または熱塩基発生剤を含有する、請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェット用インク。
【請求項6】
25℃における粘度が30mPa・s以下である、請求項1〜5のいずれかに記載のインクジェット用インク。
【請求項7】
25℃における表面張力が20〜40mN/mである、請求項1〜6のいずれかに記載のインクジェット用インク。
【請求項8】
さらに、界面活性剤を含有する、請求項1〜7のいずれかに記載のインクジェット用インク。
【請求項9】
基板上に形成された隔壁により区画された凹部に、請求項1〜8のいずれかに記載のインクジェット用インクをインクジェット法により付与する描画工程と、
凹部に吐出された前記インクジェット用インクを加熱する硬化工程とを備えるカラーフィルタの製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載のカラーフィルタの製造方法により製造されるカラーフィルタ。
【請求項11】
請求項10に記載のカラーフィルタを備える液晶ディスプレイ。
【請求項12】
請求項10に記載のカラーフィルタを備える画像表示デバイス。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−57838(P2011−57838A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208557(P2009−208557)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】