説明

インクジェット用硬化性樹脂組成物、その硬化物及び当該硬化物を有するプリント配線板

【課題】インクジェットプリンターに使用することができ、且つ、耐熱性、耐薬品性、絶縁性及び保存安定性に優れるインクジェット用硬化性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】(A)下記一般式(1)で示されるビスアリルナジイミド化合物と、


(式中、Rは、炭素数2〜18のアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す。)特定構造のビスマレイミド化合物と、(C)希釈剤と、(D)ヒドロキノン及びヒドロキノン誘導体の少なくとも一方を含有するインクジェット用硬化性樹脂組成物であって、その粘度が25℃で150mPa・s以下であることを特徴とするインクジェット用硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板の製造に有用な、耐熱性に優れるインクジェット用硬化性樹脂組成物、その硬化物及び当該硬化物を有するプリント配線板に関するものである。より具体的には、ソルダーレジストインキやマーキングインキのようなプリント配線板の製造に使用する硬化性樹脂組成物であって、低粘度で、作業性及び保存安定性に優れ、更に耐熱性、耐薬品性、無電解金めっき耐性及び絶縁性に優れるインクジェット用硬化性樹脂組成物、その硬化物、及び当該硬化物を用いたプリント配線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、一部の民生用プリント配線板、及び産業用プリント配線板の製造に使用する硬化性樹脂組成物、例えばソルダーレジストインキとしては、高精度、高密度の観点から、液状現像型ソルダーレジスト組成物が使用される。この液状現像型ソルダーレジスト組成物は、これを用いて形成した塗膜に紫外線を照射し、これを現像することによって画像を形成し、更にこれに熱を加えたり光を照射して仕上げ硬化(本硬化)することで、ソルダーレジストを形成する。また現在は、環境問題への配慮から、液状現像型ソルダーレジスト組成物のうち、現像液として希アルカリ水溶液を用いるアルカリ現像タイプの液状ソルダーレジスト組成物を使用することが主流となっている。上記希アルカリ水溶液を用いるアルカリ現像タイプの液状ソルダーレジスト組成物としては、例えば、ノボラック型エポキシ樹脂と不飽和基含有モノカルボン酸の反応生成物に酸無水物を付加したカルボキシル基含有感光性樹脂、光重合開始剤、希釈剤及びエポキシ樹脂からなるソルダーレジスト組成物が存在する(特許文献1参照)。
【0003】
しかし、上述のアルカリ現像タイプの液状ソルダーレジスト組成物は、カルボキシル基含有感光性樹脂とエポキシ樹脂の反応性が高く、その使用前に両者が反応することを防ぐため、それぞれを分けて保存する二液型という構成をとる必要がある。そのため、使用前にこれらを混合し、混合後数日以内に使用しなければならないという欠点がある。
【0004】
また、上述の液状ソルダーレジスト組成物を用いてソルダーレジストを形成するためには、塗布、乾燥、露光、現像及び熱硬化等の多くの工程を経る必要があり、またそれらの工程には、それぞれ塗布機、乾燥機、露光機、現像機及び熱硬化炉等の設備が必要となるため、製造のコストがかかるという欠点がある。
【0005】
以上の問題を解決するための方法として、インクジェットプリンターを用いて硬化性樹脂組成物のパターンを基板上に描画し、これを乾燥することでソルダーレジストパターンを作成する方法が提案されている(特許文献2参照)。しかし、従来からソルダーレジストの形成に用いられるスクリーン印刷法では、使用する硬化性樹脂組成物の粘度は2,000〜15,000mPa・s(25℃)であるのに対し、インクジェットプリンターを用いた場合の硬化性樹脂組成物の粘度は10〜150mPa・s(25℃)と低く、その粘度の差は大きい。従って、実際にこのような粘度の低い硬化性樹脂組成物をインクジェットプリンターに用いる場合、乾燥工程でかかる熱によりその粘度がさらに低下し、形成したパターンにニジミが発生するため十分な精度をもったソルダーレジストパターンを得ることができず、その実用化には至ってない。
【0006】
また、硬化性樹脂組成物の粘度を低くする方法として、低分子量の化合物、例えばトリメチロールプロパントリグリシジルエーテルのようなエポキシ樹脂やトリアリルイソシアヌレート(TAIC)等を希釈剤として用いる方法が考えられる。しかしこの場合、当該樹脂組成物を用いて形成した硬化物は耐熱性や硬化性に欠けるという問題があった。
【0007】
そこで、その硬化物に耐熱性等の特性を付与する目的で、比較的分子量が低く、耐熱性のあるビスアリルナジイミド化合物を硬化性樹脂組成物に配合する方法も考えられる(特許文献4参照)。ここで、ビスアリルナジイミド化合物を配合した樹脂組成物は、一般的に250℃前後の高温で硬化する必要があるため、過酸化物を用いてこれを硬化する方法が提案されている(特許文献3参照)。しかし、過酸化物を用いて形成した硬化物をプリント配線板に用いた場合、プリント配線板の銅箔等の金属表面の酸化が激しくなり、その物性が低下するという問題が生じる。
【0008】
また、ビスアリルナジイミド化合物を樹脂組成物に配合した場合、時として経時とともに樹脂組成物がゲル化することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭61−243869号公報
【特許文献2】特開平7−263845号公報
【特許文献3】特開平7−18031号公報
【特許文献4】国際公開WO2006/075654号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、プリント配線板の製造に有用な、低粘度で、作業性及び保存安定性に優れ、更に耐熱性、耐薬品性、無電解金めっき耐性、及び絶縁性に優れる硬化性樹脂組成物を提供することにある。具体的には、ビスアリルナジイミド化合物を配合した場合に、時として発生する経時によるゲル化を防ぐことができるインクジェット用硬化性樹脂組成物を提供することにある。
本発明者等は、種々の検討の結果、上記ゲル化が次の理由に起因するものとの推測に至った。即ち、ビスアリルナジイミド化合物は、その合成過程であるイミド化の際にアミック酸が閉環しきれないことがあり、アミック酸が閉環しきれていないビスアリルナジイミド化合物が合成される場合がある。また、ナジック酸にジアミンを付加し脱水反応させて合成する場合においては、脱水反応が不十分な場合がある。そして、このようなビスアリルナジイミド化合物はカルボン酸が残っているため酸性化し、それによりエン反応やディールス・アルダー反応が起こりやすくなる。
以上から、本発明者等は、上述のようなアミック酸が閉環しきれていないビスアリルナジイミド化合物が含まれる硬化性樹脂組成物はゲル化が起こりやすくなるとの推測に至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明は以下の特徴を有する。
即ち、本発明の特徴の一つは、(A)下記一般式(1)で示されるビスアリルナジイミド化合物と、
【化1】

(式中、Rは、炭素数2〜18のアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す。)
(B)下記一般式(2)で示されるビスマレイミド化合物と、
【化2】

(式中、Rは、炭素数2〜32のアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す。)と、
(C)希釈剤と、
(D)ヒドロキノン及びヒドロキノン誘導体の少なくとも一方とを含有するインクジェット用硬化性樹脂組成物であって、
その粘度が25℃で150mPa・s以下であることを特徴とするインクジェット用硬化性樹脂組成物である。
【0012】
また、本発明の他の特徴は、上記ビスアリルナジイミド化合物(A)が下記一般式(3)で示されるアミック酸化合物を加熱脱水して得られるビスアリルナジイミド化合物(a−1)
【化3】

(式中、Rは、炭素数2〜32のアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す。)
及び下記一般式(4)で示される無水アリルナジック酸に下記一般式(5)で示されるジアミン化合物を付加し脱水反応させて得られるビスアリルナジイミド化合物(a−2)
【化4】

【化5】

(式中、Rは、炭素数2〜32のアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す。)
の少なくとも一方を含むインクジェット用硬化性樹脂組成物である。
【0013】
また、本発明の好適な態様としては、上記希釈剤(C)が、有機溶剤(C−1)及び重合性モノマー(C−2)の少なくとも一方であるインクジェット用硬化性樹脂組成物である。ここで、前記重合性モノマー(C−2)は、アクリロイル基及びメタクリロイル基の少なくとも一方を有することが好ましい。
【0014】
また、本発明においては、インクジェット用硬化性樹脂組成物の成分のそれぞれの配合量を以下のとおりとすることが好ましい。
即ち、前記ビスアリルナジイミド化合物(A)の配合量は、当該ビスアリルナジイミド化合物(A)及び前記有機溶剤(C)を除くインクジェット用硬化性樹脂組成物の成分の配合量に対して30〜96質量%であることが好ましい。
前記ビスマレイミド化合物(B)は、前記ビスアリルナジイミド化合物(A)100質量部に対して4〜45質量部配合することが好ましい。
前記希釈剤(C)は、前記ビスアリルナジイミド化合物(A)100質量部に対して25〜1900質量部配合することが好ましい。尚、前記希釈剤(C)として前記重合性モノマー(C−2)を単独で用いる場合には、これを前記ビスアリルナジイミド化合物(A)100質量部に対して25〜200質量部配合することが好ましい。
更に前記ヒドロキノン及びヒドロキノン誘導体の少なくとも一方(D)は、前記ビスアリルナジイミド化合物(A)100質量部に対して0.04〜0.5質量部配合することが好ましい。
【0015】
更に、本発明の他の特徴は、インクジェットプリンターを用いて、プリント配線板の基板上、若しくはプリント配線板上に形成されるソルダーレジストパターン上に上記インクジェット用硬化性樹脂組成物のパターンを描画し、これを熱硬化することにより得られる硬化性樹脂組成物の硬化物を有するプリント配線板である。
尚、前記有機溶剤(C)として前記重合性モノマー(C−2)を用いる場合は、インクジェットプリンターを用いて、プリント配線板の基板上、若しくはプリント配線板上に形成されるソルダーレジストパターン上に上記インクジェット用硬化性樹脂組成物のパターンを描画し、これに紫外線を照射して光硬化した後に熱硬化することによりその硬化物を形成することもできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のインクジェット用硬化性樹脂組成物は、低粘度であることによりインクジェットプリンターを用いて基板上にパターンを描画することが可能である。また、本発明のインクジェット用硬化性樹脂組成物を熱硬化等することにより得られる硬化物は耐熱性に優れており、プリント配線板用のソルダーレジストやマーキングインクとして使用することができる。更に、本発明のインクジェット用硬化性樹脂組成物は、ヒドロキノンやヒドロキノン誘導体を配合することにより、ビスアリルナジイミド化合物を配合した場合に、時として発生する経時による当該樹脂組成物のゲル化を防ぐことができる。そして、このような硬化性樹脂組成物の硬化物をインクジェットプリンターを用いて形成できることにより、プリント配線板の製造工程が簡略化することで生産性が向上し、更に製造設備の維持費等も低減できることから、プリント配線板の生産コストの低減化にも貢献できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を詳述する。尚、本発明が当該実施形態に限定されないことはもとよりである。
【0018】
本発明のインクジェット用硬化性樹脂組成物は、(A)下記一般式(1)で示されるビスアリルナジイミド化合物と、
【化6】

(式中、Rは、炭素数2〜18のアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す。)
(B)下記一般式(2)で示されるビスマレイミド化合物と、
【化7】

(式中、Rは、炭素数2〜32のアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す。)と、
(C)希釈剤と、
(D)ヒドロキノン及びヒドロキノン誘導体の少なくとも一方とを含有することにより、ソルダーレジストやマーキングインキに求められる耐熱性等の必要な特性を維持した状態で、インクジェットプリンターでパターンを描画できる粘度(25℃で150mPa・s以下)とすることが可能である。
【0019】
また、本発明のインクジェット用硬化性樹脂組成物は、前記ビスアリルナジイミド化合物(A)が、下記一般式(3)で示されるアミック酸化合物を加熱脱水して得られるビスアリルナジイミド化合物(a−1)
【化8】

(式中、Rは、炭素数2〜32のアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す。)
及び下記一般式(4)で示される無水アリルナジック酸に下記一般式(5)で示されるジアミン化合物を付加し脱水反応させて得られるビスアリルナジイミド化合物(a−2)
【化9】

【化10】

(式中、Rは、炭素数2〜32のアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す。)
の少なくとも一方を含む場合であっても、ヒドロキノン又はヒドロキノン誘導体の少なくとも一方を配合することにより、上記ビスアリルナジイミド化合物(a−1)及び(a−2)を起因として発生すると推測される当該樹脂組成物のゲル化を防止することができると考えられる。
【0020】
即ち、本発明では、ビスアリルナジイミド化合物(A)を配合することにより、硬化性樹脂組成物の硬化物に耐熱性を付与することができる。しかし、当該ビスアリルナジイミド化合物(A)は、それ単独では250℃前後に加熱しないと熱硬化しない。そこで、本発明の特徴の一つである一般式(2)で示されるビスマレイミド化合物(B)と当該ビスアリルナジイミド化合物(A)とを併用することにより、その硬化温度をプリント配線板の製造で一般的に用いられている100〜200℃、好ましくは140〜180℃にすることが可能となる。また、前記ビスアリルナジイミド化合物(A)と前記ビスマレイミド化合物(B)を併用することにより当該ビスマレイミド化合物(B)の結晶性は低下し、更に希釈剤(C)を加えることによって、低粘度で保存安定性に優れた液状の硬化性樹脂組成物を提供することが可能となる。
【0021】
以下、本発明のインクジェット用硬化性樹脂組成物について説明する。
【0022】
<ビスアリルナジイミド化合物(A)>
本発明に用いられるビスアリルナジイミド化合物(A)は、下記一般式(1)で示されるビスアリルナジイミド化合物である。
【化11】

(式中、Rは、炭素数2〜18のアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す。)
特に好ましいものとしては、上記一般式(1)中のRが、下記式(6)、(7)及び(8)
【化12】

で示される化合物である。具体的には、丸善石油化学社製のBANI−M、BANI−H、BANI−X(何れも製品グレード名)等が挙げられる。
【0023】
また、本発明に用いられるビスアリルナジイミド化合物(A)は、下記一般式(3)で示されるアミック酸化合物を加熱脱水して得られるビスアリルナジイミド化合物(a−1)
【化13】

(式中、Rは、炭素数2〜32のアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す。)
及び下記一般式(4)で示される無水アリルナジック酸に下記一般式(5)で示されるジアミン化合物を付加し脱水反応させて得られるビスアリルナジイミド化合物(a−2)
【化14】

【化15】

(式中、Rは、炭素数2〜32のアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す。)
の少なくとも一方を含む。
【0024】
これらのビスアリルナジイミド化合物(A)は、単独又は複数種を混合して用いても良い。また、その配合量は、当該ビスアリルナジイミド化合物(A)及び有機溶剤(C)を除くインクジェット用硬化性樹脂組成物の成分の配合量に対して30〜96質量%であることが望ましい。更に必要に応じて、希釈効果のあるモノアリルナジイミド、例えば丸善石油化学社製のANI−HP(製品グレード名)等を使用することもできる。
【0025】
<ビスマレイミド化合物(B)>
本発明に用いられるビスマレイミド化合物(B)は、下記一般式(2)
【化16】

(式中、Rは、炭素数2〜32のアルキル基、アリール基、又はアラルキル基を示す。)
で示される化合物である。特に好ましいものとしては、Rが、下記式(9)、(10)、(11)及び(12)
【化17】

で示される化合物である。具体的には、ケイ・アイ化成社製のBMI、BMI−70、BMI−80(何れも製品グレード名)、大和化成工業社製のBMI−1000、BMI−3000、BMI−4000、BMI−5000(何れも製品グレード名)等が挙げられる。これらのビスマレイミド化合物(B)は、単独又は複数種を混合して用いても良い。また、その配合量は、前記ビスアリルナジイミド化合物(A)100質量部に対して、4〜45質量部、好ましくは15〜35質量部である。当該ビスマレイミド化合物(B)の配合量が、前記ビスアリルナジイミド化合物(A)100質量部に対して4質量部未満の場合、硬化性樹脂組成物の硬化性が低下するため好ましくない。一方、前記ビスマレイミド化合物(B)の配合量が、前記ビスアリルナジイミド化合物(A)100質量部に対して45質量部を超えた場合、硬化性樹脂組成物の耐熱性や硬化性が低下したり、更にはビスマレイミド化合物(B)の結晶性が強くなるためインクジェットノズルの目詰まりの原因となり、好ましくない。尚、必要に応じて、希釈効果のあるモノマレイミド化合物、例えばフェニルマレイミドやシクロヘキシルマレイミド、及び硬化性向上効果のあるアニリン樹脂から誘導される多官能マレイミド化合物、例えばBMI−2000(製品グレード名)等を使用することもできる。
【0026】
<希釈剤(C)>
本発明で用いられる希釈剤(C)としては、有機溶剤(C−1)、重合性モノマー(C−2)が挙げられる。また重合性モノマー(C−2)としてはアクリロイル基及びメタクリロイル基の少なくとも一方を有するものが好ましい。
【0027】
前記有機溶剤(C−1)としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤等が挙げられる。これらの有機溶剤(C−1)は、単独で又は複数種を組み合わせて用いることができる。
【0028】
前記重合性モノマー(C−2)としては、スチレン、クロロスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン誘導体;酢酸ビニル、酪酸ビニル又は安息香酸ビニル等のビニルエステル類;ビニルイソブチルエーテル、ビニル−n−ブチルエーテル、ビニル−t−ブチルエーテル、ビニル−n−アミルエーテル、ビニルイソアミルエーテル、ビニル−n−オクタデシルエーテル、ビニルシクロヘキシルエーテル、エチレングリコールモノブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド、N−ヒドロキシメチルメタクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;トリアリルイソシアヌレート、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル等のアリル化合物;2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メチルトリグリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、1,3―ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、4−(メタ)アクリロイルオキシメチルー2−メチルー2−エチルー1,3−ジオキソラン、4−(メタ)アクリロイルオキシメチルー2−イソブチルー2−エチルー1,3−ジオキソラン、4−(メタ)アクリロイルオキシメチルー2−シクロヘキシルー1,3−ジオキソラン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートの等の1分子中にアクリロイル基及び/又はメタクリロイル基が1個以上有する化合物が挙げられる。これらの中で、特に1分子中に1〜4個のアクリロイル基及びメタクリロイル基の少なくとも一方を有する化合物が好ましい。更には、その粘度が、25℃で300mPa・s以下となる化合物が特に好ましい。これらの重合性モノマー(C−2)は、単独又は複数種を混合して用いても良い。
【0029】
尚、本明細書においては、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレート及びそれらの混合物を総称する用語であり、他の類似の表現についても同様である。
【0030】
上記希釈剤(C)の配合量は、前記ビスアリルナジイミド化合物(A)100質量部に対して好ましくは25〜1900質量部、より好ましくは40〜400質量部である。
当該希釈剤(C)の配合量が、前記ビスアリルナジイミド化合物(A)100質量部に対して25質量部未満の場合、前記ビスアリルナジイミド化合物(A)の溶解不良が起きたり、硬化性樹脂組成物が高粘度化して基板等に塗布できなくなるため好ましくない。また希釈剤(C)として有機溶剤(C−1)のみを用いる場合に、その配合量が前記ビスアリルナジイミド化合物(A)100質量部に対して1900質量部を超えると、硬化性樹脂組成物に含まれる固形分の含有量が少なくなるため、これを基板等に塗布した際の塗膜の膜厚の確保が困難となる。更に希釈剤(C)として重合性モノマー(C−2)のみを使用する場合、その配合量は、前記ビスアリルナジイミド化合物(A)100質量部に対して25〜200質量部であることが好ましい。当該重合性モノマー(C−2)の配合量が、前記ビスアリルナジイミド化合物(A)100質量部に対して200質量部を超えた場合、硬化性樹脂組成物を硬化する際に塗膜が割れ易くなるので好ましくない。
【0031】
<ヒドロキノン、ヒドロキノン誘導体(D)>
本発明で用いられるヒドロキノン及びヒドロキノン誘導体の少なくとも一方(D)としては、ヒドロキノン、アルブチン(ヒドロキノン−β−D−グルコシド)、ヒドロキノンモノベンジルエーテル、二酢酸ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、ヒドロキノンジメチルエーテル、ヒドロキノンモノエチルエーテル、ヒドロキノンスルホン酸カリウム、ヒドロキノン−2,5−ジスルホン酸二カリウム、ヒドロキノンモノ−n−ヘキシルエーテル、ヒドロキノンモノフェニルエーテル、p−メトキシフェノール、2−メチルヒドロキノン、2,5ジ−tーブチルヒドロキノン等が挙げられる。これらのヒドロキノン及びヒドロキノン誘導体の少なくとも一方(D)は、単独又は複数種を用いても良い。また前記ヒドロキノン及びヒドロキノン誘導体の少なくとも一方(D)の配合量は、前記ビスアリルナジイミド化合物(A)100質量部に対して0.04〜0.5質量部であることが好ましい。当該配合量が前記ビスアリルナジイミド化合物(A)100質量部に対して0.04質量部未満である場合、ゲル化を防止して保存安定性向上させる効果が少なくなるため好ましくない。一方、当該配合量が前記ビスアリルナジイミド化合物(A)100質量部に対して0.5質量部を超えると、硬化物の塗膜特性の劣化が生じるため好ましくない。
【0032】
<その他添加剤>
本発明の硬化性樹脂組成物には、硬化性を向上させるために、熱又は活性エネルギー線照射によりラジカルを発生するラジカル重合開始剤を配合することができる。このようなラジカル重合開始剤としては、銅箔等の金属表面を酸化させる過酸化物を除く重合開始剤が使用でき、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインとベンゾインアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン類;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、N,N−ジメチルアミノアセトフェノン等のアミノアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類又はキサントン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドや、2−トリクロロメチル−5−スチリル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(p−シアノスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール等のハロメチルオキサジアゾール系化合物;2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(p−メトキシ−フェニルビニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−p−メトキシスチリル−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(1−p−ジメチルアミノフェニル−1,3−ブタジエニル)−s−トリアジン等のハロメチル−s−トリアジン系化合物が挙げられる。これらのラジカル重合開始剤は、単独又は複数種を混合して用いても良い。その配合量は、前記希釈剤(C)として有機溶剤(C−1)を配合する場合、当該有機溶剤(C−1)を除いた硬化性樹脂組成物の成分の配合量に対して10質量%以下であり、好ましくは0.5〜5質量%である。当該配合量が10質量%を超えた場合、硬化性樹脂組成物の塗膜特性が低下するため好ましくない。
【0033】
また、本発明の硬化性樹脂組成物には、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の第三級アミン類等の重合開始助剤を加えることができる。
【0034】
更に、本発明の硬化性樹脂組成物には、ナノシリカ等の超微粉の無機充填剤、又は酸化チタン等の無機顔料等を配合することができる。これらの配合量は、硬化性樹脂組成物の不揮発分100質量部に対して、30質量部以下であることが好ましい。当該配合量が30質量部を超えた場合、硬化性樹脂組成物の粘度が上昇するため、インクジェットプリンターを用いてのパターンの塗布が困難となり、また当該樹脂組成物の硬化性が低下するため好ましくない。
【0035】
本発明の硬化性樹脂組成物には、上記以外に、ジシアンジアミド、o−トリルビグアニド、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン等のグアナミン類、メラミン等の酸化防止剤、アントラキノン系、ペリレン系、ジスアゾ系、イソインドリン系、フタロシアニン系等の有機顔料、消泡剤、密着性付与剤、レベリング剤、顔料分散剤等の各種添加剤類を配合することができる。これらの添加剤の配合量は、硬化性樹脂組成物の不揮発分100質量部に対して5質量部以下である。当該配合量が5質量部を超えた場合、硬化性樹脂組成物の粘度が上昇するため、インクジェットプリンターを用いてのパターンの塗布が困難となり、また当該樹脂組成物の硬化性が低下するため好ましくない。
【0036】
本発明のインクジェット用硬化性樹脂組成物、及びその硬化物を有するプリント配線板は、例えば以下の手順で作製される。
即ち、まずは上記硬化性樹脂組成物の各成分を、例えばロールミル、サンドミル、ボールミル、ビーズミル、アトライターのような撹拌機又は分散機を使用して均一に混合・分散させる。そして、混合・分散された組成物について、25℃で150mPa・s以下、好ましくは110〜5mPa・sとなるように希釈剤(C)で粘度を調整し、本発明のインクジェット用硬化性樹脂組成物を作製する。
【0037】
そして、インクジェットプリンターを用いて、回路形成されたプリント配線板表面に上記硬化性樹脂組成物のパターンを描画する。その後、100〜200℃、好ましくは140〜180℃で10〜60分、当該パターンを熱硬化することにより、耐熱性等に優れた硬化物であるレジストパターンを得ることができる。また、本発明のインクジェット用熱硬化性樹脂組成物において、前記希釈剤(C)として重合性モノマー(C−2)を用い、更に活性エネルギー線照射によりラジカルを発生する前記ラジカル重合開始剤を配合した場合には、インクジェットプリンターを用いて、回路形成されたプリント配線板表面に上記硬化性樹脂組成物のパターンを描画した後、当該パターンに紫外線等の活性エネルギー線を照射してこれを光硬化させることにより、ニジミ等の少ないパターンを形成することができる。そして、当該光硬化させたパターンを100〜200℃、好ましくは140〜180℃で10〜60分、熱硬化させることにより、耐熱性に優れた硬化物であるレジストパターンを得ることができる。
【0038】
上記インクジェットプリンターとしては、オンデマンド・ピエゾ方式のインクジェットプリンターを用いることができる。当該インクジェットプリンターを用いる場合、ノズルを室温、又は約60℃以下に加温して塗布することができる。
【0039】
前記活性エネルギー線の照射光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ又はメタルハライドランプ等が好適に用いられる。またレーザー光線等も活性エネルギー線として利用できる。
【0040】
上述の通り、本発明のインクジェット用硬化性樹脂組成物を用いてプリント配線板を製造する場合、従来のアルカリ現像タイプの液状ソルダーレジスト組成物のような複雑な工程を必要としないことから、低価格で、かつイオン性物質等の付着が無い、信頼性の高いプリント配線板を提供することができる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。尚、以下において特に断りのない限り、「部」は質量部を意味する。
【0042】
ビスアリルナジイミド化合物(A)の選定
製造ロットの異なる下記一般式(13)で表わされるビスアリルナジイミド−1について、表1に示す成分及び割合にて配合し、これをディゾルバーで攪拌した。当該攪拌物を1μmのディスクフィルターを用いてろ過し、例1〜3の組成物を得た。
【化18】

【0043】
【表1】

ビスマレイミド−1:ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン
アクリレート−1:1,4−ブタンジオールジアクリレート
アクリレート−2:4−ヒドロキシブチルアクリレート
アクリレート−3:トリメチロールプロパントリアクリレート
【0044】
例1から例3の各組成物をそれぞれ500mlの褐色ガラス瓶に500g入れ、栓を完全に閉めて密封状態にした。次いで、各ガラス瓶を温度50℃の保管庫に7日間保存した後、これを常温に戻してから各組成物の状態を目視で観察し、以下のとおり評価を行った。その結果を表2に示す。
○:増粘等変化が全く見られない
△:明らかな増粘が見られる
×:固体化している
【0045】
【表2】

【0046】
表2に示すとおり、例1と例2の製造ロットのビスアリルナジイミド−1を配合した組成物は、増粘等の変化が見られず、保存安定性が良いことが分かる。一方、例3の製造ロットのビスアリルナジイミド−1は、保存安定性に問題が生じたことが分かる。
【0047】
そこで、保存安定性に問題が生じた製造ロット3のビスアリルナジイミド−1と、保存安定性の良い製造ロット1のビスアリルナジイミド−1を用いて、これらを表3に示す組成及び割合にて配合し、これをディゾルバーで攪拌した。当該撹拌物を1μmのディスクフィルターを用いてろ過し、実施例1〜6、及び比較例1〜5の各組成物を得た。
【0048】
【表3】

<ビスマレイミド化合物(B)>
ビスマレイミド−1:ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン
<希釈剤(C)>
アクリレート−1:1,4−ブタンジオールジアクリレート
アクリレート−2:4−ヒドロキシブチルアクリレート
アクリレート−3:トリメチロールプロパントリアクリレート
<開始剤>
開始剤−1:BASF社製イルガキュア379
<ヒドロキノン、ヒドロキノン誘導体(D)>
ヒドロキノン誘導体−1:p−メトキシフェノール
ヒドロキノン誘導体−2:2−メチルヒドロキノン
ヒドロキノン誘導体−3:2,5ジ−t−ブチルヒドロキノン
<添加剤>
アミン−1:ジアザビシクロウンデセン(酸性を塩基性で中和する目的で添加)
【0049】
実施例1から6、及び比較例1から5の各組成物をそれぞれ500mlの褐色ガラス瓶に500g入れ、栓を完全に閉めて密封状態にした。次いで、各ガラス瓶を温度50℃の保管庫に7日間保存した後、これを常温に戻してから各組成物の状態を目視で観察し、以下のとおり評価を行った。その結果を表4に示す。
○:増粘等変化が全く見られない
△:明らかな増粘が見られる
×:固体化している
【0050】
【表4】

【0051】
<耐熱性・耐薬品性試験>
富士フィルム製インクジェットプリンターDimatix Materials Printer DMP−2831を用いて、プリント配線板用銅張積層板(FR−4 厚み1.6mm 大きさ150×95mm)に、実施例1から6、及び比較例1から5の組成物で10×20mmの大きさの長方形のパターンを膜厚が10μmになるように印刷した。その直後、高圧水銀灯を用いて1000mJ/cmの積算光量で上記パターンにUV照射した。次いで、当該UV照射後のパターンを熱風循環式乾燥炉にて180℃30分加熱して熱硬化し、各試験片を得た。
【0052】
熱硬化したパターンの耐熱性及び耐薬品性を評価するため、各試験片にロジン系フラックスを塗布し、これを260℃ のはんだ槽に10秒間浸漬した。その後、はんだ槽から取り出した各試験片を自然冷却し、更にこれをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに10分間浸漬して洗浄した。当該洗浄後の各試験片の塗膜(パターン)の状態を目視で以下のとおり評価した。その結果を表5に示す。
○:塗膜に変化が全く見られない
△:わずかに浮き、はがれが見られる
×:明らかなはがれが見られる
【0053】
<絶縁性試験>
実施例1から6、及び比較例1から5の組成物について、銅張り積層板の代わりにIPC B−25テストパターンのクシ型電極Bクーポンを用い、また膜厚を40μmにしたこと以外は上記耐熱性・耐薬品性試験に記載の方法と同様の方法で各試験片を作製した。当該各試験片に、DC500Vのバイアスを印加し、絶縁抵抗値を測定した。各試験片の絶縁抵抗値が100GΩ以上であれば○、100GΩ未満であれば×とした。その結果を表5に示す。
【0054】
【表5】

【0055】
以上のとおり、本発明のインクジェット用硬化性樹脂組成物は、耐熱性、耐薬品性、及び絶縁性に優れる硬化物を形成することができる。また本発明のインクジェット用硬化性樹脂組成物は、ビスアリルナジイミドの製造ロットによらず、ゲル化を防止することができ、保存安定性に優れる硬化性樹脂組成物である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)で示されるビスアリルナジイミド化合物と、
【化19】

(式中、Rは、炭素数2〜18のアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す。)
(B)下記一般式(2)で示されるビスマレイミド化合物と、
【化20】

(式中、Rは、炭素数2〜32のアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す。)と、
(C)希釈剤と、
(D)ヒドロキノン及びヒドロキノン誘導体の少なくとも一方とを含有するインクジェット用硬化性樹脂組成物であって、
その粘度が25℃で150mPa・s以下であることを特徴とするインクジェット用硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記ビスアリルナジイミド化合物(A)が、下記一般式(3)で示されるアミック酸化合物を加熱脱水して得られるビスアリルナジイミド化合物(a−1)
【化21】

(式中、Rは、炭素数2〜32のアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す。)
及び下記一般式(4)で示される無水アリルナジック酸に下記一般式(5)で示されるジアミン化合物を付加し脱水反応させて得られるビスアリルナジイミド化合物(a−2)
【化22】

【化23】

(式中、Rは、炭素数2〜32のアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す。)
の少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット用硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記希釈剤(C)が、有機溶剤(C−1)及び重合性モノマー(C−2)の少なくとも一方であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット用硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記重合性モノマー(C−2)がアクリロイル基及びメタクリロイル基の少なくとも一方を有することを特徴とする請求項3に記載のインクジェット用硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記ビスアリルナジイミド化合物(A)の配合量が、当該ビスアリルナジイミド化合物(A)及び前記有機溶剤(C)を除くインクジェット用硬化性樹脂組成物の成分の配合量に対して30〜96質量%であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクジェット用硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記ビスマレイミド化合物(B)を前記ビスアリルナジイミド化合物(A)100質量部に対して4〜45質量部配合することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインクジェット用硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記希釈剤(C)を前記ビスアリルナジイミド化合物(A)100質量部に対して25〜1900質量部配合することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のインクジェット用硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
前記重合性モノマー(C−2)を前記ビスアリルナジイミド化合物(A)100質量部に対して25〜200質量部配合することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のインクジェット用硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
前記ヒドロキノン及びヒドロキノン誘導体の少なくとも一方(D)を前記ビスアリルナジイミド化合物(A)100質量部に対して0.04〜0.5質量部配合することを特徴とする請求項1乃至8に記載のインクジェット用硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
インクジェットプリンターを用いて請求項1乃至9のいずれか1項に記載のインクジェット用硬化性樹脂組成物を基板上に塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を熱硬化することにより得られることを特徴とするインクジェット用硬化性樹脂組成物の硬化物。
【請求項11】
インクジェットプリンターを用いて請求項4に記載のインクジェット用硬化性樹脂組成物を基板上に塗布して塗膜を形成し、当該塗膜に紫外線を照射してこれを光硬化し、当該光硬化した塗膜を熱硬化することにより得られることを特徴とするインクジェット用硬化性樹脂組成物の硬化物。
【請求項12】
プリント配線板上にソルダーレジストパターンを形成し、当該ソルダーレジストパターン上にインクジェットプリンターを用いて請求項1乃至9のいずれか1項に記載のインクジェット用硬化性樹脂組成物を塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を熱硬化することにより得られる硬化物を有することを特徴とするプリント配線板。
【請求項13】
プリント配線板上にソルダーレジストパターンを形成し、当該ソルダーレジストパターン上にインクジェットプリンターを用いて請求項4に記載のインクジェット用硬化性樹脂組成物を塗布して塗膜を形成し、当該塗膜に紫外線を照射してこれを光硬化し、当該光硬化した塗膜を熱硬化することにより得られる硬化物を有することを特徴とするプリント配線板。

【公開番号】特開2012−214532(P2012−214532A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78843(P2011−78843)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(591021305)太陽ホールディングス株式会社 (327)
【Fターム(参考)】