説明

インクジェット記録用圧着葉書用紙

【課題】高速輪転方式で印字したインクジェット記録画像の印字濃度、耐水性・鮮明性に優れ、特にフルカラー用インクの耐水性・鮮明性、ゴースト防止を可能にする。
【解決手段】接着層の主成分であるインク定着剤がコロイド滴定方法による四級化率が84%以上であるアルキルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物であり、更に数平均分子量を500〜2000とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速輪転方式で印字されたフルカラーインクジェット記録画像の印字濃度、耐水性・鮮明性に優れ、また圧着後、剥離しても印字画像が対向面に転写されない圧着葉書用紙に関するものである。ここで述べる圧着葉書用紙とは、通常の状態では粘着性、接着性共に示さず、加圧時に接着性を示し、加圧接着(以下、「圧着」という)後に剥離可能な感圧接着剤を主成分とした接着層を基紙に設けた葉書用紙である。
【背景技術】
【0002】
近年、通信・郵便等の連絡手段で情報を伝達する量が多くなる一方で、個人情報など、親展性を必要とする連絡手段が要望されている。また郵便法の改正に伴い、封書よりも郵便料金が安く、封書と同様に通信の機密保持が可能な親展性をもつ葉書用紙が開発され普及し始めている。
この親展性をもつ葉書用紙は定形事項(内容説明、注意事項、依頼事項など)を色インキで印刷した後、トナー定着型のレーザープリンター方式で宛名面(受取人の住所、氏名など)及び親展面である接着層面に個人情報(暗証番号、会員番号、請求金額、預金残高など)を記録した用紙を二つ折り(4面タイプという)、または情報を多く記録できる三つ折り(6面タイプという)状の葉書仕様に親展面を内側にして折り畳み、再剥離が可能となるように圧着して情報を隠ぺいした後、郵送して受取人が再剥離可能な部分を剥離して個人情報を読み取る圧着葉書用紙である(特許文献1,2参照)。
【0003】
このような圧着葉書用紙に要求される品質としては、(1)紫外線或いは熱による劣化が少なく、剥離強度の安定性に優れる。(2)色インキ着肉性・耐刷性が優れる。(3)6面タイプ仕様において、接着層面同士のブロッキングがなく、更にレーザープリンター印字における接着層のプレヒート板への転移がない(以下、糊粕の付着という)。これらの品質を得るには圧着葉書用紙の接着層を形成する感圧接着剤、微粒子充填剤、結着剤などの主成分及び劣化防止剤などの添加剤の選択が非常に重要である。
【0004】
従来から感圧接着剤としては、主として天然ゴムにメタクリル酸メチル、スチレンなどの不飽和モノマーをグラフト化した天然ゴム誘導体を使用している。
即ち、天然ゴム誘導体は高度の自着力を保ち、互いに接触させて圧力を加えると接着性は発現するがタック性は低いという特徴を持っている。グラフト化によって分子の極性が大きくなり、親水性物質に対するアンカーリング力が増大する。
天然ゴム誘導体単独の接着層を基紙に設けると色インキ印刷適性に欠け、またブロッキングの発生或いはプレヒート板に糊粕が付着するため、通常、カオリン、炭酸カルシウム、非晶質合成シリカ、澱粉粒子で代表される微粒子充填剤を適宜組み合わせて接着層用組成物とし、該組成物が塗工液としての調液容易性、経済性、安全性などから一般的に水性塗工方式であるエアーナイフコーターなどで塗工して接着層を設ける。
【0005】
ところで圧着葉書用紙の宛名面或いは親展個人情報面に印字する方式として、トナー定着型のレーザープリンター方式に代わり、最近では高速輪転方式で印字が可能な水溶性インク定着型のインクジェットプリンター方式が採用されている。
使用する水溶性インクは、例えばコダックヴァーサマーク社のインク(以下、ヴァーサマークインクという)であるインク#1000番台、具体的には#1040ブラック、#1069ブラックなどのインクが最も有力である。ヴァ−サマークインクの特徴はインク固形分が4〜7質量%で染料以外は大部分が水であり、誘電率に優れている。因に一般インクジェットプリンターの水溶性インクのインク固形分は15質量%以上であり、染料、水以外にインクカートリッジヘッドの乾燥防止用に不揮発性の高沸点溶媒が比較的多く含有されおり、高速輪転方式用インクとは大きく異なる。
【0006】
このような高速輪転方式インクジェット記録用圧着葉書用紙に要求される品質としては、圧着葉書用紙に要求される品質に加えて、(4)インク記録画像の印字濃度が高い。(5)インク記録画像の耐水性・鮮明性が優れる。(6)インク印字時のインク吸収が速い。(7)圧着後、剥離しても親展面のインク印字画像が対向面に転移しない(以下、ゴースト防止という)等が挙げられる。更に最近では、例えばヴァーサマークインク#2000番台、具体的には#2001シアン、#2002マゼンタ、#2003ブラック、#2004イエローなどのフルカラー用インクの印字濃度、耐水性・鮮明性に優れ、且つゴースト防止が重要な項目になっている。
インクジェット印字画像のインク定着化・耐水化技術は、再剥離性接着剤組成物にインク定着剤であるカチオン性ポリマーを含有することによって電荷的にインク中の染料分子を捕捉し、インクとインク定着剤間にファンデルワールス力が働き、染料分子を再剥離性接着剤層に定着する。
【0007】
そこでインク定着剤であるカチオン性ポリマーとして種々の提案が成されている。それらの提案を以下に示す。
提案1:高pH域で電荷が零乃至負に変化するカチオン性ポリマーと正電荷を保持するカチオン性ポリマーの2種類と多価金属塩類を含有する接着層用組成物の提案が成されている(特許文献3,4参照)。しかし、これらの提案では、印字画像の耐水性・鮮明性、特にフルカラー用が不十分である。
提案2:分子量10,000乃至100,000、カチオン当量6.0〜7.5meq/gのポリジメチルアミン・エピクロルヒドリン及び/又は変性ジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物を含有する接着層用組成物の提案が成されている(特許文献5参照)。しかしこの提案でも印字画像の耐水性・鮮明性、特にフルカラー用のマゼンタインク(#2002)の耐水性が不十分である。
【0008】
提案3:天然ゴムエマルジョン100質量部に対してポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂或いは水溶性変性ポリアミン系樹脂の何れか一方を5〜100質量部含有するという提案(特許文献6参照)が成されているが、接着層用塗工液調液時のカチオン性ポリマーの添加によりゲル化したり、耐水性・鮮明性、特に本発明者が目的とするフルカラー用インクの耐水性・鮮明性、ゴーストが不十分であったり、添加増量を図ると剥離強度が低下するなどの問題がある。
【特許文献1】特開平3−90394号公報
【特許文献2】特開平3−169596号公報
【特許文献3】特開平9−157611号公報
【特許文献4】特開平10−879号公報
【特許文献5】特開平10−52985号公報
【特許文献6】特開平10−337980号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は高速輪転方式で印字したインクジェット記録画像の印字濃度、耐水性・鮮明性に優れ、特にフルカラー用インクの耐水性・鮮明性、ゴースト防止に優れたインクジェット記録用圧着葉書用紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
通常の状態では粘着性、接着性共に示さず、加圧により剥離可能な感圧接着剤、微粒子充填剤、インク定着剤を主成分とした接着層用組成物を塗工して接着層を設けたインクジェット記録用圧着葉書用紙において、インク定着剤がコロイド滴定方法による四級化率が84%以上であるアルキルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物であることにより目的は達成され、更に数平均分子量を500〜2000とすることにより、顕著な効果が得られるという知見をもって本発明に至った。
【発明の効果】
【0011】
接着層用組成物を塗工して接着層を設けたインクジェット記録用圧着葉書用紙において、高速輪転方式で印字した、例えばヴァーサマークインク#1000番台で印字したインクジェット記録画像の印字濃度、耐水性・鮮明性に優れ、更にフルカラー用インク#2000番台の耐水性・鮮明性、ゴースト防止に優れ、特にマゼンタインク#2002の耐水性・鮮明性に優れたインクジェット記録用圧着葉書用紙を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のインクジェット記録用圧着葉書用紙の接着層は、感圧接着剤、微粒子充填剤、インク定着剤、結着剤を主成分とする接着層用組成物から成る。
本発明に使用する感圧接着剤としては、例えば天然ゴム、変性天然ゴム、スチレン・ブタジエンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂、アクリル酸エステル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、熱可塑性エラストマーなどがエマルジョンの形態で1種または2種以上混合して使用するが、特に好ましくは不飽和モノマーをグラフト重合した天然ゴム誘導体である。
本発明に使用する不飽和モノマーとしては、具体的にアクリロニトリル、スチレン、メタクリル酸メチル、塩化ビニリデン、無水マレイン酸、アクリルアミド、ビニルピロリドン、ジメチルアクリルアミド、メタクリル酸グリシジルなどが挙げられるが、好ましくはホモポリマー生成等の副反応が起こり難く、グラフト化反応が確実に起こるメタクリル酸メチル、スチレン、アクリロニトリルであり、特に好ましくはメタクリル酸メチルである。グラフト重合する不飽和モノマーは天然ゴム誘導体100質量部に対して10〜40質量部である。10質量部未満では水性塗工時においてポンプ送液系で天然ゴムの凝集物が発生してポンプ詰まりや凝集物が塗工面(接着層)に転移するなど、即ち機械的安定性に欠ける。40質量部を越えると剥離強度が大きく低下する。
【0013】
本発明に使用するコロイド滴定方法による四級化率が84%以上となり得るアルキルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物としては、具体的にジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物、ジエチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物、ジプロピルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物、ジブチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物、メチルエチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物、メチルプロピルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物、メチルブチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物、エチルプロピルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物、エチルブチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物を1種または2種以上含有するが、特に好ましくはジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物である。
【0014】
本発明でいう四級化率は1/400Nのアルキルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物を標準ポリアニオンである1/400Nのポリビニル硫酸カリウム溶液でコロイド滴定し、カチオン色素であるトルイジンブルー0.1%溶液を指示薬として青色から赤紫色に変化した時点の滴定値からミリ当量/gを計算した。
pHによってコロイドの表面荷電は変化するため、本発明ではpH4とpH10のコロイド当量を求め、四級化率は[pH10/pH4×100]を求め、この値が84%以上のものを本発明に使用する。
【0015】
本発明に使用するアルキルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物の数平均分子量は好ましくは500〜2000であり、特に好ましくは800〜1500である。
本発明に使用するアルキルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物のコロイド滴定方法による四級化率は84%以上であり、特に好ましくは95%以上である。
84%未満では、特にインク#2000番台のシアンインク#2001及びマゼンタインク#2002の耐水性が劣る。
本発明に使用するカチオン性ポリマーは感圧接着剤100質量部に対して5〜70質量部であり、好ましくは10〜50質量部である。5質量部未満では耐水効果が少なく、70質量部を越えても顕著な効果は得られず、また剥離強度も低下する。
【0016】
本発明に使用する微粒子充填剤としては、例えばタルク、カオリン、焼成カオリン、酸性白土、活性白土、非晶質合成シリカ、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、ゼオライト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、尿素ホルマリン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂などが挙げられ、1種または2種以上混合して使用するが、特に好ましくはブロッキング防止、印刷適性に優れ、更にインク吸収の速い非晶質合成シリカ及びロール汚れ防止、フォーム加工適性に優れたコーンスターチ、小麦澱粉或いは不透明度の高い二酸化チタンである。
【0017】
本発明に使用する微粒子充填剤の結着剤として水溶性高分子、疎水性高分子ラテックスが好ましく、水溶性高分子としては、例えば澱粉、カゼイン、大豆蛋白、ゼラチン及びポリビニルアルコール及びその誘導体。疎水性高分子ラテックスとしては、例えばアクリル酸エステルとメチルメタクリレートまたはスチレンとの共重合体であるアクリル系ラテックス。酢酸ビニルとアクリル酸エ ステルまたはマレイン酸エステルとの共重合体である酢酸ビニル系ラテックス。塩化ビニリデンとメチルアクリレート、アクリロニトリルまたは塩化ビニルとの共重合体である塩化ビニリデン系ラテックス。スチレンとブタジエンを主構成モノマーとしたスチレンブタジエン系ラテックスが挙げられるが、好ましくは結着力に優れたポリビニルアルコール及びその誘導体、スチレンブタジエン系ラテックスである。
【0018】
本発明では感圧接着剤の空気酸化、熱、UV劣化を防止するため劣化防止剤を含有する。劣化防止剤としては、具体的に4,4′−ブチルデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシメチルフェノール、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4′−イソプロピリデンビス(2−イソプロピルフェノール)などのフェノール系;トリ(ノニルフェニル)ホスフェート、ジフェニルイソデシルホスフェート、トリオクタデシルホスフェートなどのリン系;1,3−ジメチルブチル−N−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N′−ビス(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N′−イソプロピル−p−フェニレンジアミンなどのアミン系が挙げられ、1種または2種以上混合して使用する。
本発明の接着層用組成物は所望により、帯電防止剤、蛍光増白剤、防腐剤、消泡剤、浸透剤、着色染料などの助剤を適宜混合して目的の機能が達成できる。
【0019】
本発明のインクジェット記録用圧着葉書用紙は、本発明の接着層用組成物を塗工液として基紙の片面または両面に設ける。本発明に使用する基紙は木材パルプと内填用微粒子充填剤を主成分として構成される。木材パルプとしてはLBKP、NBKPなどの化学パルプ;GP、PGW、RMP、TMP、CTMP、CGPなどの機械パルプ;DIP等の故紙再生パルプなどであり、これらのパルプは抄紙適性、塗工適性、更には印刷適性を維持するために叩解機で叩解度(フリーネス)を調整する。
叩解度はパルプの種類により異なるが、一般的に150〜500ml〔カナディアンスタンダードフリーネス(以下、CSFという):JIS P−8121〕である。
内填用微粒子充填剤はサイテックスインクの吸収性向上、不透明性、印刷適性を維持するために、例えばタルク、焼成カオリン、炭酸カルシウム、二酸化チタンなどが挙げられ、混合比率はパルプ100質量部に対して5〜30質量部であり、好ましくは10〜20質量部である。
更に従来から公知のサイズ剤、歩留向上剤、カチオン化剤、紙力増強剤などの各種添加剤を混合して長網抄紙機、円網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機などで酸性、中性、アルカリ性の基紙を得る。
【0020】
本発明の接着層用組成物を基紙の片面に設ける方法としては、ブレードコーター、エアーナイフコーター、カーテンコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ビルブレードコーター、ゲートロールコーター、トランスファロールコーターなどの塗工方式で基紙の片面に塗工量が1.5〜10g/m2(乾燥質量固形分)となるように塗工・乾燥して接着層を設け、更にプリンター印字適性、色インキ印刷適性向上を図るためにスーパーカレンダー、ソフトカレンダーなどの平滑化装置で接着層表面の平滑度をベック式平滑度で20〜40秒となるように処理を行い、二つ折りインクジェット記録用圧着葉書用紙を得る。
【0021】
或いは接着層用組成物を基紙の両面に設ける方法としては、ブレードコーター、エアーナイフコーター、カーテンコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ビルブレードコーター、ゲートロールコーター、トランスファロールコーターなどの塗工方式で基紙の片面、次いでもう一方の面に(両面の剥離バランスが得られるように)片面塗工量を1.5〜10g/m2(乾燥質量固形分)の範囲で塗工・乾燥して接着層を設け、更に上記と同様にスーパーカレンダー、ソフトカレンダーなどの平滑化装置で接着層表面の平滑度をベック式平滑度で20〜40秒となるように処理を行い、三つ折りインクジェット記録用圧着葉書用紙を得る。
【実施例】
【0022】
以下、最も代表的な実施例により、本発明の好適態様とその優れた効果を具体的に説明する。尚、以下において部はすべて質量部であり、%はすべて質量%である。
【0023】
実施例1
〔二つ折り(片面塗工)インクジェット記録用圧着葉書用基紙の作製〕
LBKP(CSF300ml) 100部
タルク 20部
50%ロジンサイズエマルジョン 3.4部
50%硫酸バンド水溶液 5部
4%両性ポリアクリルアミド水溶液 3.8部
上記配合の1%スラリーを長網抄紙機で抄造した後、6%酸化澱粉(日本食品化工製:MS−3800)水溶液で両面付着量1.2g/m2(乾燥質量固形分)となるようにサイズプレスを行い、坪量138g/m2の二つ折りインクジェット記録用圧着葉書用基紙を得た。
【0024】
〔二つ折り(片面塗工)インクジェット記録用圧着葉書用紙の作製〕
調液水550部を撹拌下、25%カセイソーダ水溶液16部(質量固形分4部)、非晶質合成シリカ粉末(水澤化学工業製:ミズカシルP78D)50部、非晶質合成シリカ粉末(水澤化学工業製:ミズカシルP78F)50部、小麦澱粉粉末(グリコ栄養食品製:75A)20部を徐々に添加・分散する。次いでメタクリル酸メチルを25%グラフト重合した50%変性天然ゴムエマルジョン200部(質量固形分100部)、四級化率84%で数平均分子量2000のジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物50%水溶液100部(質量固形分50部)、10%ポリビニルアルコール水溶液100部(質量固形分10部)、50%スチレンブタジエン共重合体ラテックス80部(質量固形分40部)、4,4′−ブチルデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)40%分散液7.5部(質量固形分3部)を徐々に添加した後、希釈水で25.0%固形分濃度に調整してインクジェット記録用接着層用塗工液を得た。
【0025】
この接着層用塗工液を上記で作製した138g/m2の基紙にエアーナイフコーターで塗工量が6.5g/m2(乾燥質量固形分)となるように塗工・乾燥して接着層を設けた後、ソフトカレンダーでベック式平滑度で25〜30秒となるように処理して二つ折りインクジェット記録用圧着葉書用紙を得た。
【0026】
実施例2
〔三つ折り(両面塗工)インクジェット記録用圧着葉書用基紙の作製〕
LBKP(CSF300ml) 90部
NBKP(CSF300ml) 10部
タルク 20部
50%ロジンサイズエマルジョン 3.2部
50%硫酸バンド水溶液 4部
4%両性ポリアクリルアミド水溶液 3.6部
上記配合の1%スラリーを長網抄紙機で抄造した後、6%酸化澱粉(日本食品化工製:MS−3800)水溶液で両面付着量1.2g/m2(乾燥質量固形分)となるようにサイズプレスを行い、坪量113g/m2の三つ折り圧着葉書用基紙を得た。
【0027】
〔三つ折り(両面塗工)インクジェット記録用圧着葉書用紙の作製〕
実施例1の接着層用塗工液を上記で作製した113g/m2の基紙の片面(乾燥質量固形分の塗工量6.8g/m2)、次いでもう一方の面(乾燥質量固形分の塗工量6.5g/m2 )にエアーナイフコーターで両面の剥離強度バランスが得られるように塗工・乾燥して接着層を設けた後、ソフトカレンダーでベック式平滑度で25〜35秒となるように処理して三つ折り圧着葉書用紙を得た。
【0028】
実施例3
〔三つ折り(両面塗工)インクジェット記録用圧着葉書用紙の作製〕
実施例1の四級化率84%で数平均分子量2000のジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物50%水溶液を四級化率99%で数平均分子量300のジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物50%水溶液に同量置き換えた以外は実施例2と同様の方法で三つ折りインクジェット記録用圧着葉書用紙を得た。
【0029】
実施例4
〔三つ折り(両面塗工)インクジェット記録用圧着葉書用紙の作製〕
実施例1の四級化率84%で数平均分子量2000のジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物50%水溶液を四級化率99%で数平均分子量3000のジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物50%水溶液に同量置き換えた以外は実施例2と同様の方法で三つ折りインクジェット記録用圧着葉書用紙を得た。
【0030】
実施例5
〔三つ折り(両面塗工)インクジェット記録用圧着葉書用紙の作製〕
実施例1の四級化率84%で数平均分子量2000のジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物50%水溶液を四級化率99%で数平均分子量500のジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物50%水溶液に同量置き換えた以外は実施例2と同様の方法で三つ折りインクジェット記録用圧着葉書用紙を得た。
【0031】
実施例6
〔三つ折り(両面塗工)インクジェット記録用圧着葉書用紙の作製〕
実施例1の四級化率84%で数平均分子量2000のジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物50%水溶液を四級化率99%で数平均分子量1100のジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物50%水溶液に同量置き換えた以外は実施例2と同様の方法で三つ折りインクジェット記録用圧着葉書用紙を得た。
【0032】
比較例1
〔二つ折り(片面塗工)インクジェット記録用圧着葉書用紙の作製〕
実施例1の四級化率84%で数平均分子量2000のジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物50%水溶液を除いた以外は同様の方法で二つ折りインクジェット記録用圧着葉書用紙を得た。
【0033】
比較例2
〔三つ折り(両面塗工)インクジェット記録用圧着葉書用紙の作製〕
実施例1の四級化率84%で数平均分子量2000のジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物50%水溶液を除いた以外は実施例2と同様の方法で三つ折り圧着葉書用紙を得た。
【0034】
比較例3
〔三つ折り(両面塗工)インクジェット記録用圧着葉書用紙の作製〕
実施例1の四級化率84%で数平均分子量2000のジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物50%水溶液を四級化率51%で数平均分子量1100のジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物50%水溶液に同量置き換えた以外は実施例2と同様の方法で三つ折りインクジェット記録用圧着葉書用紙を得た。
【0035】
比較例4
〔三つ折り(両面塗工)インクジェット記録用圧着葉書用紙の作製〕
実施例1の四級化率84%で数平均分子量2000のジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物50%水溶液を四級化率80%で数平均分子量1100のジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物50%水溶液に同量置き換えた以外は実施例2と同様の方法で三つ折りインクジェット記録用圧着葉書用紙を得た。
【0036】
実施例1〜6、比較例1〜4で得た二つ折り及び三折りインクジェット記録用圧着葉書用紙を下記方法により測定・評価した。
測定・評価方法
《剥離強度》
〔二つ折り(片面に接着層を有する)インクジェット記録用圧着葉書用紙〕
23℃50%RHの室内で親展情報を印字する接着層面を内側にしてV状に巾102mm×長さ152.5mmの大きさとなるように折り合わせ、ドライシーラー(PRESSLE multi 6852T)の加圧目盛を所望の目盛に設定して圧着し、次いで圧着葉書用紙を巾25mm×長さ150mmの大きさに切り、圧着部を引張速度300mm/分のテンシロン万能引張試験器(熊谷理器工業製)によりT字剥離試験を行い、剥離強度を測定した。本発明の二つ折りインクジェット記録用圧着葉書用紙は実施例1において、圧着10分後の剥離強度が0.65N/25mmが得られるシーラー加圧目盛18とした。
【0037】
〔三つ折り(両面に接着層を有する)インクジェット記録用圧着葉書用紙〕
23℃50%RHの室内で親展情報を印字する接着層面を矢印(→)面にして→N状に巾102mm×長さ152.5mmの大きさとなるように三つ折りに合わせ、ドライシーラーの加圧目盛を所望の目盛に設定して圧着し、次いで圧着葉書用紙を巾25mm×長さ150mmの大きさに切り、親展情報圧着部及びもう一方の宛名・定形事項圧着部を引張速度300mm/分のテンシロン万能引張試験器によりT字剥離試験を行い、剥離強度を測定した。本発明の三つ折りインクジェット記録用圧着葉書用紙は実施例2において、圧着10分後の親展情報面の剥離強度0.65N/25mmが得られるシーラー加圧目盛30とした。
単位はN/25mmで表し、数値は大きい方が剥離強度が強いことを示す。
【0038】
《インクジェット印字画像の耐水性・鮮明性》
インクジェットプリンター(キャノン製:BJC420J)のインクカートリッジにヴァーサマークブラックインク#1069、ヴァーサマークマゼンタインク#2002、或いはヴァーサマークブラックインク#2003を注入後、接着層面にテスト印字パターン(文字、線、ベタ)を印字して20分後の水中に30分浸積、自然乾燥後の印字画像の消色度及び画像鮮明性を目視判定した。
○印 :消色、滲みはまったくなく、非常に優れている。
○△印:僅かに消色しているが、滲みはまったくなく優れている。
×印 :消色、滲みが発生し、実用的ではない。
【0039】
《圧着・剥離後のインクジェット印字画像のゴースト》
上記の印字画像の耐水性・鮮明性評価用と同様に印字した後、剥離強度測定用サンプルと同様の方法で二つ折り或いは三つ折りに合わせ、ドライシーラーの加圧目盛を調節して圧着直後の剥離強度が0.6N/25mmとなるように圧着した。そして1時間後のゴーストを目視評価した。
○印:ゴーストはまったくなく、優れている。
△印:ゴーストは僅かに認められるが、実用上問題ない。
×印:ゴーストがあり、実用的ではない。
【0040】
以上の測定・評価結果を纏めて表1、表2、表3に示した。また表3に総合評価を示した。○印:優れている。×印:実用的ではない。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
通常の状態では粘着性、接着性共に示さず、加圧により剥離可能な感圧接着剤、微粒子充填剤、インク定着剤を主成分とした接着層用組成物を塗工して接着層を設けたインクジェット記録用圧着葉書用紙において、インク定着剤がコロイド滴定方法による四級化率が84%以上であるアルキルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物であることを特徴とするインクジェット記録用圧着葉書用紙。
【請求項2】
アルキルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物が数平均分子量500〜2000であることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録用圧着葉書用紙。

【公開番号】特開2007−237550(P2007−237550A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−62765(P2006−62765)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】