説明

インクジェット記録用液体組成物の製造方法およびインクジェット記録装置

【課題】殺菌剤や防カビ剤が添加されていないインクジェット記録用液体組成物を用いても、長期に渡ってカビや細菌の繁殖によるインクジェット記録用液体組成物の品質劣化を抑制するインクジェット記録装置を提供すること。
【解決手段】インクジェット記録用液体組成物を貯留する貯留容器と、液滴吐出面および該液滴吐出面に配置されたノズルを少なくとも備え、前記インクジェット記録用液体組成物を液滴状にして前記ノズルから吐出する液滴吐出手段と、前記貯留容器から前記液滴吐出手段へ前記インクジェット記録用液体組成物を移送する供給管と、前記貯留容器内に微細気泡を供給する微細気泡発生装置と、を含むことを特徴とするインクジェット記録装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録方式での画像の形成に用いられるインクジェット記録用液体組成物の製造方法およびインクジェット記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録に用いられるインクや、滲み等の防止のために必要に応じてインク中の顔料等の凝集を促進する液体(いわゆる処理液)などのインクジェット記録用液体組成物は、通常、工場内で調合されてから、店舗等の流通経路を経て消費者へと届けられる。そして、消費者によりインクジェット記録用液体組成物が利用される。
【0003】
このようにインクジェット記録用液体組成物は、調合されてから、画像の形成のために完全に消費されるまでのタイムスパンは非常に長いため、この間におけるインクジェット記録用液体組成物の品質が安定して維持されることは極めて重要である。
そこで、カビや細菌の繁殖によるインクジェット記録用液体組成物の品質劣化を長期に渡って抑制するために、インクジェット記録用液体組成物中に防菌剤や防カビ剤を添加することが知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【0004】
一方、近年、容器内で空気と水とを超高速で旋回させることによって、直径が数十μm以下の微細気泡を発生させる技術が提案されている(特許文献2、非特許文献1参照)。 この微細気泡は、従来の直径がミリメーターオーダーやそれ以上のサイズの気泡と比べて、発生した気泡が液中で収縮・消失したり、生理活性効果が得られたり、気泡がマイナスに帯電しているためプラスのものに付着しやすいなどの特有の効果を有している。そして、微小気泡を利用すれば、例えば、水質浄化等の自然環境浄化や、殺菌処理等、多方面にわたる応用が可能であることが知られている。
【特許文献1】特開平10−230610号公報
【特許文献2】特許第3397154号公報
【非特許文献1】(株)ナノプラネット研究所ホームページ(http://www.nanoplanet.co.jp/index.html)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
なお、上述したようにインクジェット記録用液体組成物には、殺菌剤や防カビ剤が添加されるが、これらの成分は、画像の形成には何ら必要の無い成分であり、場合によっては抗菌性等以外の特性を劣化させる場合もあることから、本来は、添加されない方が好ましいといえる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、殺菌剤や防カビ剤が添加されていないインクジェット記録用液体組成物を製造した後に長期に渡ってカビや細菌の繁殖による品質劣化を抑制するインクジェット記録用液体組成物の製造方法、および、殺菌剤や防カビ剤が添加されていないインクジェット記録用液体組成物を用いても、長期に渡ってカビや細菌の繁殖によるインクジェット記録用液体組成物の品質劣化を抑制するインクジェット記録装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は以下の本発明により達成される。すなわち、
請求項1に係わる発明は、
顔料分散液と、水溶性有機溶媒と、界面活性剤と、水とを混合した混合液を調合する混合液調合工程を少なくとも含み、
前記顔料分散液、および、前記混合液から選択される少なくとも一方の液体に、微細気泡を供給して処理することを特徴とするインクジェット記録用液体組成物の製造方法である。
【0007】
請求項2に係わる発明は、
インク中に含まれる顔料の凝集を促進する凝集剤と、水溶性有機溶媒と、界面活性剤と、水とを混合した混合液を調合する混合液調合工程を少なくとも含み、
前記混合液に、微細気泡を供給して処理することを特徴とするインクジェット記録用液体組成物の製造方法である。
【0008】
請求項3に係わる発明は、
前記混合液に対して超音波を印加することにより、前記混合液中に溶解するガス成分を脱気させる脱気工程を更に含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット記録用液体組成物の製造方法である。
【0009】
請求項4に係わる発明は、
インクジェット記録用液体組成物を貯留する貯留容器と、
液滴吐出面および該液滴吐出面に配置されたノズルを少なくとも備え、前記インクジェット記録用液体組成物を液滴状にして前記ノズルから吐出する液滴吐出手段と、
前記貯留容器から前記液滴吐出手段へ前記インクジェット記録用液体組成物を移送する供給管と、
前記貯留容器内に微細気泡を供給する微細気泡発生装置と、
を含むことを特徴とするインクジェット記録装置である。
【0010】
請求項5に係わる発明は、
前記貯留容器内に貯留された前記インクジェット記録用液体組成物に超音波を印加する超音波印加手段を備えたことを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録装置である。
【0011】
請求項6に係わる発明は、
前記液滴吐出手段が、前記ノズル内を流れる液体を加熱する発熱素子を有することを特徴とする請求項5に記載のインクジェット記録装置である。
【0012】
請求項7に係わる発明は、
前記液滴吐出手段から吐出された前記インクジェット記録用液体組成物を回収する回収部と、回収された前記インクジェット記録用液体組成物を前記回収部から前記貯留容器へと移送する回収管と、を更に備えたことを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置である。
【0013】
請求項8に係わる発明は、
前記貯留容器の容量が、500cm以上5000cm以下の範囲内であることを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置である。
【0014】
請求項9に係わる発明は、
インクジェット記録用液体組成物が、顔料を含むインクであることを特徴とする請求項5〜8のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【発明の効果】
【0015】
以上に説明したように請求項1に記載の発明によれば、殺菌剤や防カビ剤が添加されていないインクジェット記録用液体組成物(インク)を製造した後に、長期に渡ってカビや細菌の繁殖による品質劣化を抑制するインクジェット記録用液体組成物の製造方法を提供することができる。
請求項2に記載の発明によれば、殺菌剤や防カビ剤が添加されていないインクジェット記録用液体組成物(処理液)を製造した後に、長期に渡ってカビや細菌の繁殖による品質劣化を抑制するインクジェット記録用液体組成物の製造方法を提供することができる。
請求項3に記載の発明によれば、微細気泡処理により溶解したガスを脱気したインクジェット記録用液体組成物の製造方法を提供することができる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、殺菌剤や防カビ剤が添加されていないインクジェット記録用液体組成物を用いても、長期に渡ってカビや細菌の繁殖によるインクジェット記録用液体組成物の品質劣化を抑制するインクジェット記録装置を提供することができる。
請求項5に記載の発明によれば、微細気泡処理によりインクジェット記録用液体組成物中に溶解したガスを脱気できるインクジェット記録装置を提供することができる。
請求項6に記載の発明によれば、インクジェット記録用液体組成物の吐出時の加熱による気泡の発生に起因する吐出不良を抑制できるインクジェット記録装置を提供することができる。
請求項7に記載の発明によれば、インクジェット記録用液体組成物の利用効率の高いインクジェット記録装置を提供することができる。
請求項8に記載の発明によれば、高速且つ大量の画像が形成できるインクジェット記録装置を提供することができる。
請求項9に記載の発明によれば、顔料を含むインクを用いた場合でも画像形成時の色濃度のばらつきを抑制できるインクジェット記録装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
<インクジェット記録用液体組成物の製造方法>
本発明のインクジェット記録用液体組成物の製造方法は、顔料分散液と、水溶性有機溶媒と、界面活性剤と、水とを混合した混合液を調合する混合液調合工程を少なくとも含み、
前記顔料分散液、および、前記混合液から選択される少なくとも一方の液体に、微細気泡を供給して処理することを特徴とする(以下、本実施態様を、「第1の製造方法」と称す場合がある)。
【0018】
また、本発明のインクジェット記録用液体組成物の製造方法は、インク中に含まれる顔料の凝集を促進する凝集剤と、水溶性有機溶媒と、界面活性剤と、水とを混合した混合液を調合する混合液調合工程を少なくとも含み、前記混合液に、微細気泡を供給して処理することを特徴とする(以下、本実施態様を、「第2の製造方法」と称す場合がある)。
【0019】
なお、第1の製造方法は、顔料を含むインク(顔料インク)に関するものであり、第2の製造方法は、処理液に関するものである。
また、第1、第2の製造方法では、混合液調合工程を経た後に、混合液を濾過する濾過工程を実施することが好ましい。さらに、混合液調合工程を経た後又は濾過工程を経た後に脱気工程を実施することが好ましい。また、脱気工程は、混合液に対する超音波処理のみならず、減圧脱気等により実施することもできる。
【0020】
顔料インクや処理液の製造に用いる原料である顔料分散液、水溶性有機溶媒、界面活性剤、水、凝集剤のうち、水溶性有機溶媒や、界面活性剤、凝集剤は市販の精製処理されたものやビンなどの密閉された容器に入ったものが利用されるため、これらの成分に起因して菌等が発生する可能性は極めて乏しい。また、水としては、超純水や、イオン交換水など十分に精製されたものが用いられるため、これに起因して菌等が発生する可能性も極めて乏しい。
【0021】
しかし、顔料分散液は、複数の原料を予め調合して作製されるものであるため、調合過程で菌などが混入している可能性がある。さらに、混合液調合工程においても、顔料インクや処理液を構成する各種原料成分が、大気に曝されたり、混合に用いる容器内壁に付着した汚れと接触したりすることになるため、この過程で菌が混入する可能性がある。
【0022】
このような観点から、顔料インクを製造する場合には、顔料分散液、および、脱気工程を経る前の混合液から選択される少なくとも一方の液体に、微細気泡を供給して処理することによって、顔料インク中に混入する菌等を滅菌できる。なお、顔料インクの滅菌をより確実にするためには、微細気泡による処理(以下、「微細気泡処理」と称す場合がある)は、顔料分散液よりも混合液に対して行うことがより好ましい。
また、処理液を製造する場合には、脱気工程を経る前の混合液に対して、微細気泡を供給して処理することによって、処理液中に混入する菌等を滅菌できる。
【0023】
それゆえ、第1の製造方法を利用して製造されたインクや、第2の製造方法を利用して製造された処理液では、殺菌剤や防カビ剤が添加されていなくても、長期に渡ってカビや細菌の繁殖による品質劣化を抑制することができる。これに加えて、抗菌剤や防カビ剤などの、画像の形成に本来必要の無い成分を添加する必要がないため、これらの成分の添加による種々の副作用;例えば、記録ヘッドの噴射特性の劣化や、保存安定性の劣化等の発生を招くこともない。
【0024】
顔料分散液や、混合液に対する微細気泡処理条件としては、十分な滅菌ができるのであれば特に限定されるものではないが、微細気泡処理の対象となる液体1L当たりに対して微細気泡の供給量が0.5L/min以上の割合であることが好ましく、2L/min以上の割合であることがより好ましい。微細気泡の供給量が0.5L/minを下回ると、十分な滅菌処理が行えない場合がある。なお、微細気泡の供給量の上限は特に限定されないが、液中に溶解するガス量が増加しすぎて、脱気工程で時間を要するなどの不都合が発生する場合もあるため、実用上は、1L/min以下であることが好ましい。
【0025】
また微細気泡処理時間としては、1min〜10minの範囲が好ましく、5min〜10minの範囲がより好ましい。1minよりも小さい場合には十分な滅菌処理が行えない場合がある。また、10minを超えると、処理時間が長くなるので、液中に溶解するガス量が増加しすぎて、脱気工程で時間を要したり、顔料インクや処理液の生産性が低下してしまう場合がある。
次に、各工程の詳細について説明する。
【0026】
−混合液調合工程−
混合液調合工程では、顔料インクや処理液といったインクジェット記録用液体組成物を構成する各種原料成分を混合する。混合方法としては特に限定されず、公知の方法が利用できるが、例えば、容器に各種原料成分を投入した後、プロペラなどの攪拌子により攪拌混合することができる。
なお、混合液調合工程で用いる顔料分散液については、予め遠心分離処理して、粗大粒子成分を除去したものを用いてもよい。遠心分離条件としては、7000rpm〜9000rpmで20min〜30min程度の範囲で実施することができる。しかしながら、微細気泡処理を行う場合、遠心分離処理を省いて混合液を調合しても、混合液中の粗大粒子量を低減することができる。これは、微細気泡処理には、粗大粒子を破砕する作用があるためであると推定される。
また、微細気泡処理は、混合液を混合攪拌しながら実施してもよく、混合攪拌を終えた後に実施してもよいが、後者の場合は、微細気泡が万遍なく混合液と混じりあうように緩やかに攪拌を行うことが好ましい。
【0027】
−濾過工程−
濾過工程では、混合液を濾過して、異物や沈殿物を除去する。濾過方法としては公知の方法が利用でき、例えば、フィルターを用いることができる。なお、フィルターの目開きとしては1μm〜20μm程度の範囲内のものが選択できる。また、フィルターの材質としては、混合液に溶解したり、混合液により直ぐに劣化するものでなければよく、例えば、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PP(ポリプロピレン)等が利用できる。
なお、微細気泡処理を、混合液調合工程中や濾過工程実施前に行わなかった場合は、濾過工程を終えた後に実施することができる。
【0028】
−脱気工程−
脱気工程では、濾過工程を経た混合液の脱気を行う。脱気方法としては特に限定されず、公知の方法が利用できるが、例えば、減圧脱気や、超音波の印加などが挙げられ、これらの中でも超音波の印加がより好ましい。超音波処理の条件としては、適宜選択できるが、例えば、出力200W、周波数28KHzであれば、処理時間は5分以上30分以下の範囲内とすることが好ましい。
なお、殺菌効果を向上させるためには、微細気泡処理時間を長くしたり、発生させる微細気泡量を多くすることが好ましいが、この場合、混合液中に溶解するガス成分の量も多くなる。このため、脱気が不十分なまま、インクジェット記録装置で使用すると、記録ヘッドからインクや処理液を噴射する際に、溶解していたガスが気泡化するために、安定的に連続噴射できなくなる場合がある。
それゆえ、このような場合は脱気工程を行うことが特に好ましく、脱気条件も溶存ガスがより多く脱気できるように選択することが好ましい。
【0029】
上記の脱気工程を経て得られたインクジェット記録用液体組成物は、インクカートリッジなどの容器に充填される。
【0030】
次に、顔料分散液や混合液の微細気泡処理について、具体例を挙げて説明する。図1は、微細気泡処理に用いられる微細気泡処理装置の一例を示す概略模式図であり、図中、100が微細気泡処理装置、110が第1の原料供給管、112が第2の原料供給管、120が微細気泡発生装置、122が液体供給管、124がポンプ、126が気体供給管、130が容器、140が液体(顔料分散液、又は、混合液)を表す。
【0031】
図1に示す微細気泡処理装置100は、容器130と、容器130へと原料溶液を供給する第1の原料供給管110および第2の原料供給管112と、容器130の底部に配置された微細気泡発生装置と、容器130外に配置されたポンプ124と、一方の端が容器130側面の底部側に接続され、他方の端が微細気泡発生装置120に接続された液体供給管122と、液体供給管122の途中に配置されたポンプ124と、一方の端が容器130に設けられ、他方の端が微細気泡発生装置120に接続された気体供給管126とから構成される。
【0032】
微細気泡処理装置100を用いてインク用の混合液を微細気泡処理する場合、まず、第1の原料供給管110を介して顔料分散液を容器130内へと供給すると共に、第2の原料供給管112を介して、水溶性有機溶媒と、界面活性剤と、水と、その他必要に応じて用いられる各種添加剤とを予め混合した溶液を容器130内へと供給する。各成分を容器130内へと所定量したら、容器130内に配置された不図示の攪拌子(例えば、プロペラ等)により攪拌しながら、微細気泡発生装置120内で発生させた微細気泡を微細気泡発生口(不図示)から、容器130中に満たされた混合液140中に供給する。これにより混合液140を微細気泡処理することができる。
【0033】
なお、微細気泡発生装置120により微細気泡を発生させる場合、液体供給管122を介して容器130内に満たされた混合液140と、気体供給管126を介して外気(空気)とを微細気泡発生装置120へと供給し、微細気泡発生装置120内で混合液と空気とを超高速で旋回させる等により微細気泡を含む混合液を発生させて、微細気泡発生装置120外へと吐出する。ここで、気体供給管126を介して微細気泡発生装置120へと供給される気体は、空気に限定されず、窒素ガス等のその他の気体でもよい。
【0034】
一方、顔料分散液を微細気泡処理する場合、図1に示す微細気泡処理装置100から第2の原料供給管112を取り除いた装置を用いり、あるいは、第2の原料供給管112のバルブを閉じた状態で微細気泡処理すればよい。
処理液用の混合液を微細気泡処理する場合、図1に示す微細気泡処理装置100から第1の原料供給管110を取り除いた装置を用いり、あるいは、第1の原料供給管110のバルブを閉じた状態で微細気泡処理すればよい。なお、凝集剤は、容器130内に直接投入してもよいし、第2の原料供給管112中を流れる液体中に予め混合しておいてもよい。
【0035】
<インクジェット記録装置>
次に、本発明のインクジェット記録装置について説明する。本発明のインクジェット記録装置は、インクジェット記録用液体組成物を貯留する貯留容器と、液滴吐出面および該液滴吐出面に配置されたノズルを少なくとも備え、前記インクジェット記録用液体組成物を液滴状にして前記ノズルから吐出する液滴吐出手段と、前記貯留容器から前記液滴吐出手段へ前記インクジェット記録用液体組成物を移送する供給管と、前記貯留容器内に微細気泡を供給する微細気泡発生装置と、を含むことを特徴とする。
【0036】
本発明のインクジェット記録装置では、貯留容器内に貯留されたインクジェット記録用液体組成物中に、微細気泡発生装置から微細気泡を供給することにより、インクジェット記録用液体組成物に対して微細気泡処理を施すことができる。このため、貯留容器内に貯留されたインクジェット記録用液体組成物に殺菌剤や防カビ剤が添加されていなくても、長期に渡ってカビや細菌の繁殖による品質劣化を抑制することができる。これに加えて、抗菌剤や防カビ剤などの、画像の形成に本来必要の無い成分を添加する必要がないため、これらの成分の添加による種々の副作用;例えば、記録ヘッドの噴射特性の劣化や、保存安定性の劣化等の発生を招くこともない。
これに加えて、貯留容器に貯留されたインクジェット記録用液体組成物が、顔料を含むインクである場合、時間の経過と共に、顔料の凝集物が形成されて粗大粒子が発生したり、分散性が劣化してくる傾向がある。しかし、本発明では、微細気泡処理を行うため、このような問題を抑制できる。これは微細気泡処理には、粗大粒子を破砕する作用があるためであると推定される。
なお、微細気泡処理を実施するタイミングは特に限定されず、例えば、インクジェット記録装置の駆動時や停止時に自動的に実施してもよいし、1ヶ月に1回の割合など、一定の時間間隔で自動的に実施してもよいし、任意のタイミングで強制的に微細気泡処理を実施させてもよい。
【0037】
また、本発明のインクジェット記録装置は、ホームユースやオフィイスユースの小型のインクジェット記録装置であってもよい。しかし、このような装置では、貯留容器が小さいために、貯留容器内のインクジェット記録用液体組成物が早期に消費されることや、コストパフォーマンスの点から、あまり大きなメリットは得られないことも多い。
これに対して、高速且つ大量の画像形成が可能ないわゆる大型のインクジェット記録装置(貯留容器の容量が、500cm(0.5L)以上5000cm(5L)以下の装置)では、大量のインクジェット記録用液体組成物が貯留容器内に長期に渡って貯留されることになる。このため、長期に渡ってカビや細菌の繁殖によるインクジェット記録用液体組成物の品質劣化を抑制することは極めて重要である。これに加えてインクジェット記録装置や貯留容器のサイズが大きいために、貯留容器の内部や周囲に微細気泡発生装置を配置することも容易である。このため、本発明のインクジェット記録装置は、大型のインクジェット記録装置であることが特に好ましい。
【0038】
一方、インクジェット記録用液体組成物が微細気泡処理された場合、インクジェット記録用液体組成物中に溶解するガス量が増加する。このため、微細気泡処理後に脱気処理が行えるように、インクジェット記録装置には、貯留容器内に貯留されたインクジェット記録用液体組成物に超音波を印加する超音波印加手段が設けられていることが好ましい。
【0039】
液滴吐出手段は、ノズル内を流れる液体を加熱する発熱素子を備え、この発熱素子を利用して液滴をノズルから吐出するいわゆるサーマル方式であっても、ノズル内を流れる液体を振動させる圧電素子を備え、この圧電素子を利用して液滴をノズルから吐出するいわゆるピエゾ方式であってもよい。
しかし、インクジェット記録用液体組成物が微細気泡処理された場合、インクジェット記録用液体組成物中に溶解するガス量が増加するため、サーマル方式の液滴吐出手段では、ノズルを流れるインクジェット記録用液体組成物が加熱された際に、液体中に溶解していたガスが気化して気泡を発生し、液滴吐出手段から吐出される液滴の吐出不良を起こしやすくなる場合がある。この点からは、サーマル方式の液滴吐出手段を用いる場合には、超音波印加手段と組み合わせて用いることが特に好ましい。この場合、液滴吐出時の吐出不良をより確実に抑制することができる。
【0040】
また、インクジェット記録用液体組成物の利用効率を向上させるために、インクジェット記録装置は、液滴吐出手段から吐出された液滴が回収できる構成を有していることが好ましい。
この場合、インクジェット記録装置は、液滴吐出手段から吐出されたインクジェット記録用液体組成物を回収する回収部と、回収されたインクジェット記録用液体組成物回収部から貯留容器へとを移送する回収管と、を更に備えていることが好ましい。
【0041】
インクジェット記録用液体組成物としては、少なくともインクを用いることができ、インクと共に処理液を用いることもできる。なお、複数種類のインクジェット記録用液体組成物を用いる場合には、個々のインクジェット記録用液体組成物に対応した貯留容器を設ける。また、インクに含まれる色材は顔料、染料のいずれでもよい。
なお、顔料を含むインクでは、インクジェット記録装置が長時間稼動しない状態が続くと貯留容器中で顔料が沈降・堆積して、貯留容器中の液面近傍と底面近傍とで顔料濃度が変化してくることがある。このような状態で画像を形成した場合、色濃度のばらつきが発生してしまうことになる。しかし、本発明のインクジェット記録装置では、微細気泡処理を実施する際に、貯留容器内のインクがおだやかに攪拌されるため、上述したような問題の発生を抑制することができる。
【0042】
液滴吐出手段は、その幅方向の長さが、画像の形成に際して搬送される記録用紙の幅(搬送方向と直交する方向の長さ)と同程度またはそれ以上である長尺状の記録ヘッド(いわゆるFWA(Full Width Array))タイプの記録ヘッドであることが好ましい。このタイプの記録ヘッドは、高速且つ大量の画像形成が可能ないわゆる大型機に用いられることが多い。また、この記録ヘッドは、使用するインクジェット記録用液体組成物の種類の数だけ、記録用紙の搬送方向に配置することができる。例えば、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、サイアン(C)およびブラック(K)からなる4色のインク、並びに、処理液に対応した5つの記録ヘッドを搬送方向に沿って配置すれば、フルカラーの画像が形成できる。
但し、液滴吐出手段はFWAタイプ以外にも、記録用紙の搬送方向と直交する方向に対して走査可能な小型のサイズのものでもよい。
【0043】
−インクジェット記録装置の具体例−
次に、本発明のインクジェット記録装置の具体例を図面を用いて説明する。図2は、本発明のインクジェット記録装置の一構成例を示す概略模式図であり、主に装置内のインクジェット記録用液体組成物の移送経路に着目した図を示したものであり、その他の構成については記載を省略してある。
ここで、図2中、200はインクジェット記録装置、210は液滴吐出手段、220は微細気泡発生装置、230は超音波印加手段、240は回収部、250、252、254はポンプ、260はフィルタ、270は供給管、272は(未吐出液)回収管、274は
(吐出液)回収管、276は循環管、278は気体供給管、280は貯留容器、290は、インクジェット記録用液体組成物を表し、矢印は、液体や気体の流れ方向を表す。
【0044】
図2に示すインクジェット記録装置200の主要部は、貯留容器280と、液滴吐出手段210とから構成される。
ここで、貯留容器280の側面底部側には、微細気泡発生装置220が設けられており、微細気泡発生装置220から微細気泡を含む液体が貯留容器280へと吐出できるようになっている。微細気泡発生装置220は気体供給管278および循環管276に接続されており、気体供給管278を介して外気(空気)が、循環管276を介して貯留容器280内に貯留されたインクジェット記録用液体組成物290が微細気泡発生装置220に供給される。また、循環管276の微細気泡発生装置220と接続されていない側の端は、貯留容器280の側面底部側(但し、微細気泡発生装置220が配置された側と反対面)に接続されており、循環管276の途中にはポンプ254が配置されている。また、貯留容器280の底部には、超音波印加手段230が配置されている。
なお、超音波印加手段230は設けなくてもよく、また、超音波印加手段230の代わりに消泡装置(例えば、市販のものとして、バブシャット タイプS 新日本石油(株)、消泡能力:100L/minなど)を利用することもできる。また、微細気泡発生装置220は、貯留容器280内に配置されていてもよい。
【0045】
一方、液滴吐出手段210と貯留容器280とは、供給管270により接続されており、供給管270の途中にはポンプ250が設けられている。供給管270は、貯留容器280内のインクジェット記録用液体組成物290を吸い上げて液滴吐出手段210へと供給できるように、その吸入口が、インクジェット記録用液体組成物290の液面よりも下側に位置するように設けられている。
また、液滴吐出手段210と貯留容器280とは(未吐出液)回収管272により接続されており、供給管270を介して液滴吐出手段210に供給されたものの吐出されなかったインクジェット記録用液体組成物290を貯留容器280へと回収して再利用できるようになっている。
【0046】
画像の形成に際しては、原稿画像情報に応じて所定のタイミングで液滴吐出手段210の所定のノズルからから吐出されたインクジェット記録用液体組成物290が不図示の記録媒体表面に付与される。また、液滴吐出手段210をメンテナンスする場合など、非画像形成時に吐出されるインクジェット記録用液体組成物290は、回収部240により回収される。この回収部240は、非画像形成時にインクジェット記録用液体組成物290が吐出される場合に、液滴吐出手段210および/または回収部240が移動することによって、液滴吐出手段210の液滴吐出面に対向する位置に配置される。
回収部240の形状としては特に限定されず、液滴吐出手段210から吐出されるインクジェット記録用液体組成物290の回収に適した形状であればよいが、例えば御椀状であってもよい。この場合、椀の開口部が液滴吐出面に対向した状態でインクジェット記録用液体組成物290を受け止めて回収する。
【0047】
回収部240と貯留容器280とは、(吐出液)回収管274と接続されており、回収部240により回収されたインクジェット記録用液体組成物290は、回収管274を介して貯留容器274へと移送され、再利用される。なお、回収管274の途中には、液体の流れ方向上流側にポンプ252が設けられ、液体の流れ方向下流側にフィルタ260が設けられている。
【0048】
微細気泡発生装置220により微細気泡を発生させる場合、循環管276を介して貯留容器280内に貯留されたインクジェット記録用液体組成物290と、気体供給管278を介して外気(空気)とを微細気泡発生装置220へと供給し、微細気泡発生装置220内で混合液と空気とを超高速で旋回させる等により微細気泡を含む混合液を発生させて、微細気泡発生装置220外(すなわち、貯留容器280)内へと吐出する。ここで、気体供給管278を介して微細気泡発生装置220へと供給される気体は、空気に限定されず、窒素ガス等のその他の気体でもよい。
【0049】
なお、微細気泡処理中や処理直後は、貯留容器280内に貯留されたインクジェット記録用液体組成物290中に溶解しているガスの濃度が高くなるため、脱気処理を行うことが好ましい。この脱気処理は、超音波印加手段230により貯留容器280内に貯留されたインクジェット記録用液体組成物290に対して超音波を印加することにより実施できる。
【0050】
−微細気泡発生装置−
次に、本発明に用いられる微細気泡発生装置について説明する。本発明に用いられる微細気泡発生装置としては、微細気泡発生装置から微細気泡が吐出された直後において、平均直径が100μm以下の微細気泡が生成できるものであれば、その構成は特に限定されないが、容器内で、気体と液体とを超高速で回転させて微細気泡を発生させる旋回式であることが好ましい。旋回式の微細気泡発生装置としては、特許文献2に記載の旋回式微細気泡発生装置が挙げられる。
【0051】
この旋回式微細気泡発生装置としては、例えば、下部流通台の円形収容室の水液流旋回導入構造と、その上部に被着した上方へ漸拡形状の有蓋円筒体の内部の周辺部分に形成される旋回上昇水液流形成構造と、その周辺部分より内側の部分に形成される旋回下降水液流形成構造と、その旋回上昇水液流と旋回下降水液流の遠向心分離作用により該有蓋円筒体の中心部分に形成される負圧の旋回空洞部と、該負圧の旋回空洞部に、上蓋中心に取付けられた気体自吸管から自吸された気体と旋回水流中から溶出された気体部分が集積して、旋回下降する気体渦管が形成され、かつその伸長と先細りが形成されるごとくなる気体渦管形成構造と、その伸長、先細り化されて下降する気体渦管が円形収容室の底部の中央還流口に旋回突入するとき、放出通路の抵坑を受け、その旋回速度を低下して、旋回速度差を発生し、同部の気体渦管が強制的に切断されて微細気泡を発生する微細気泡発生構造と、その発生した微細気泡を旋回下降水液流に含め、旋回噴流として側面放出口から器外に放出させるごとくした旋回噴流放出構造とから構成されてなるものを挙げることができる。
【0052】
旋回式微細気泡発生装置としては、例えば、(株)ナノプラネット製のM2−L型などの市販の装置が利用できる。
【0053】
<インクジェット記録用液体組成物>
−インク−
次に、本発明に用いられるインクについて説明する。本発明に用いられるインクは、色材と、水と、水溶性有機溶媒と、界面活性剤とを含有し、必要に応じて他の成分を含有してもよい。
【0054】
上記インクに使用される色材は、染料、顔料どちらでも構わないが、特に1種以上の顔料が好ましい。これは、染料に比べて顔料の方が、処理液との混合時に凝集が生じやすいためであると考えている。また特に、近年オフィスで文字に多用されるブラック画像の要求が高いため、ブラック(黒色)インクには、画像の耐水性、耐光性に優れた黒色顔料であるカーボンブラックを使用することが好ましい。また、顔料の中でも、顔料が高分子分散剤により分散されている顔料、自己分散可能な顔料、樹脂により被覆された顔料が好ましい。
【0055】
本発明において使用される顔料としては、有機顔料、無機顔料のいずれも使用でき、黒色顔料では、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック顔料等が挙げられる。黒色とシアン、マゼンタ、イエローの3原色顔料のほか、赤、緑、青、茶、白等の特定色顔料や、金、銀色等の金属光沢顔料、無色または淡色の体質顔料、プラスチックピグメント等を使用しても良い。また、シリカ、アルミナ、又は、ポリマービード等をコアとして、その表面に染料又は顔料を固着させた粒子、染料の不溶レーキ化物、着色エマルション、着色ラテックス等も顔料として使用することも可能である。更には、本発明のために、新規に合成した顔料でも構わない。
【0056】
前記顔料の具体例としては、Raven7000、Raven5750、Raven5250、Raven5000ULTRAII、Raven3500、Raven2500ULTRA、Raven2000、Raven1500、Raven1255、Raven1250、Raven1200、Raven1190ULTRAII、Raven1170、Raven1080ULTRA、Raven1060ULTRA、Raven790ULTRA、Raven780ULTRA、Raven760ULTRA(以上、コロンビアン・カーボン社製)、Regal400R、Regal330R、Regal660R、Mogul L、Monarch 700、Monarch 800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch1000、Monarch 1100、Monarch 1300、Monarch 1400(以上、キャボット社製)、Color Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW2V、Color Black 18、Color Black FW200、Color BlackS150、Color Black S160、Color Black S170、Printex 35、Printex U、Printex V、Printex 140U、Printex 140V、Special Black 6、Special Black 5、Special Black 4A、Special Black4(以上、デグッサ社製)、No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300、MCF−88、MA600、MA7、MA8、MA100(以上、三菱化学社製)等を使用することができが、これらに限定されるものではない。また、黒色顔料としては、マグネタイト、フェライト等の磁性体微粒子やチタンブラック等を用いてもよい。
【0057】
本発明において使用される水に自己分散可能な顔料とは、顔料表面に水に対する可溶化基を数多く有し、高分子分散剤が存在しなくとも水中で安定に分散する顔料のことを指す。具体的には、通常のいわゆる顔料に対して酸・塩基処理、カップリング剤処理、ポリマーグラフト処理、プラズマ処理、酸化/還元処理等の表面改質処理等を施すことにより、水に自己分散可能な顔料が得られる。
【0058】
また、水に自己分散可能な顔料としては、上記顔料に対して表面改質処理を施した顔料の他、キャボット社製のCab−o−jet−200、Cab−o−jet−250、Cab−o−jet−260、Cab−o−jet−270、Cab−o−jet−300、IJX−444、IJX−55、オリエント化学社製のMicrojet Black CW−1、CW−2、さらには日本触媒社から販売されている自己分散顔料等の市販の自己分散顔料等も使用できる。
【0059】
シアン色の顔料としては、C.I.Pigment Blue−1、−2、−3、−15、−15:1、−15:2、−15:3、−15:4、−16、−22、−60等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0060】
マゼンタ色の顔料としては、C.I.Pigment Red−5、−7、−12、−48、−48:1、−57、−112、−122、−123、−146、−168、−184、−202等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0061】
さらにイエロー色の顔料としては、C.I.Pigment Yellow−1、−2、−3、−12、−13、−14、−16、−17、−73、−74、−75、−83、−93、−95、−97、−98、−114、−128、−129、−138、−151、−154、−180等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また各色色材として、色材が各種樹脂でカプセル化されたいわゆるカプセル染料・顔料を使用してもよい。
【0062】
一方、本発明に用いられる染料としては、水溶性染料、分散染料いずれも使用できる。
水溶性染料の具体例としては、C.I.Direct Black−2、−4、−9、−11、−17、−19、−22、−32、−80、−151、−154、−168、−171、−194、−195、C.I.Direct Blue−1、−2、−6、−8、−22、−34、−70、−71、−76、−78、−86、−112、−142、−165、−199、−200、−201、−202、−203、−207、−218、−236、−287、−307、C.I.Direct Red−1、−2、−4、−8、−9、−11、−13、−15、−20、−28、−31、−33、−37、−39、−51、−59、−62、−63、−73、−75、−80、−81、−83、−87、−90、−94、−95、−99、−101、−110、−189、−227、C.I.Direct Yellow−1、−2、−4、−8、−11、−12、−26、−27、−28、−33、−34、−41、−44、−48、−58、−86、−87、−88、−132、−135、−142、−144、−173、C.I.Food Black−1、−2、C.I.Acid Black−1、−2、−7、−16、−24、−26、−28、−31、−48、−52、−63、−107、−112、−118、−119、−121、−156、−172、−194、−208、C.I.Acid Blue−1、−7、−9、−15、−22、−23、−27、−29、−40、−43、−55、−59、−62、−78、−80、−81、−83、−90、−102、−104、−111、−185、−249、−254、C.I.Acid Red−1、−4、−8、−13、−14、−15、−18、−21、−26、−35、−37、−52、−110、−144、−180、−249、−257、−289、C.I.Acid Yellow−1、−3、−4、−7、−11、−12、−13、−14、−18、−19、−23、−25、−34、−38、−41、−42、−44、−53、−55、−61、−71、−76、−78、−79、−122などが挙げられる。
【0063】
分散染料の具体例としては、C.I.Disperse Yellow−3、−5、−7、−8、−42、−54、−64、−79、−82、−83、−93、−100、−119、−122、−126、−160、−184:1、−186、−198、−204、−224、C.I.Disperse Orange−13、−29、−31:1、−33、−49、−54、−66、−73、−119、−163、C.I.Disperse Red−1、−4、−11、−17、−19、−54、−60、−72、−73、−86、−92、−93、−126、−127、−135、−145、−154、−164、−167:1、−177、−181、−207、−239、−240、−258、−278、−283、−311、−343、−348、−356、−362、C.I.Disperse Violet−33、C.I.Disperse Blue−14、−26、−56、−60、−73、−87、−128、−143、−154、−165、−165:1、−176、−183、−185、−201、−214、−224、−257、−287、−354、−365、−368、C.I.Disperse Green−6:1、−9などが挙げられる。
【0064】
本発明に用いられる色材は、インクの全質量に対し1〜15質量%の範囲で含まれることが好ましく、2〜10質量%の範囲で含まれることがより好ましい。インク中の色材量が1質量%未満の場合には、十分な光学濃度が得られない場合が存在し、色材量が15質量%よりも多い場合には、液体の噴射特性が不安定となる場合ある。
【0065】
本発明においては、インクに保湿性能を高め液体粘度を調整する材料として水溶性有機溶媒を使用する。
水溶性有機溶媒としては例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセリン等の多価アルコール類、ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、トリエタノールアミン等の含窒素溶媒、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類、あるいは、チオジエタノール、チオジグリセロール、スルホラン、ジメチルスルオキシド等の含硫黄溶媒、炭酸プロピレン、炭酸エチレン等を用いることができるがこれらに限定されるものではない。
【0066】
本発明に使用される水溶性有機溶媒は、単独で使用しても、あるいは2種以上を混合して使用してもよい。水溶性有機溶媒はインク全質量に対し1〜60質量%の範囲で含まれることが好ましく、更には5〜40質量%の範囲で含まれることがより好ましい。
【0067】
インクには通常水が用いられるが、この水は、イオン交換水、蒸留水、純水、超純水等を用いることができる。
インクに含まれる水の含有量は、20〜80質量%の範囲、特に30〜60質量%の範囲とすることが好ましい。20質量%未満となると、吐出安定性が低下する場合があり、正常に吐出しない場合がある。また、80質量%を超えると、長期保存安定性で劣る場合がある。
【0068】
インクの液体粘度は、1〜15mPa・sの範囲であることが好ましい。粘度が1mPa・sより粘度が小さいと、記録媒体上での増粘が十分でなく良好な画質が得られない場合があり、また、吐出安定性等も損なわれる場合が発生する場合がある。また15mPa・sを超えると、吐出安定性が十分でなく、画像抜け・カスレが発生する場合がある。
【0069】
さらに、インクには、画像濃度、にじみ、色間にじみ、画像均一性の向上効果を増幅させ、目詰まり、吐出応答性・吐出安定性、保存安定性を調整するために、水溶性樹脂を加えることもできる。特に、インクに水溶性樹脂を含有させると、画質向上効果が大きくなる。これは、水溶性樹脂を添加することにより、色材同士のネットワーク化を補助し、インク中にて色材が3次元構造をとりやすくするため、処理液と混合した際の増粘が促進・増幅されるためであると推測される。また、水溶性樹脂を添加することにより画像が形成された後も記録媒体上でネットワーク構造を保持できるため、定着性、耐擦性に優れた画像を提供することができる。
【0070】
前記水溶性樹脂としては、親水性構造部と疎水性構造部とを有する化合物などが有効に使用でき、具体的には、縮合系重合体および付加重合体などが挙げられる。上記縮合系重合体としてはポリエステル系重合体が挙げられ、一方、付加重合体としてはα,β−エチレン性不飽和基を有するモノマーの付加重合体が挙げられる。また、付加重合体としては、例えば、親水基を有するα,β−エチレン性不飽和基を有するモノマーと疎水基を有するα,β−エチレン性不飽和基を有するモノマーを適宜組み合わせて共重合したものなどが使用される。さらに、親水基を有するα,β−エチレン性不飽和基を有するモノマーの単独重合体も使用できる。
【0071】
上記親水基を有するα,β−エチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、カルボキシル基、スルホン酸基、水酸基、りん酸基等を有するモノマー、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、フマル酸、フマル酸モノエステル、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホン化ビニルナフタレン、ビニルアルコール、アクリルアミド、メタクリロキシエチルホスフェート、ビスメタクリロキシエチルホスフェート、メタクリロオキシエチルフェニルアシドホスフェート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート等がある。
【0072】
一方、疎水基を有するα,β−エチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン誘導体、ビニルシクロヘキサン、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸アルキルエステル、アクリル酸フェニルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸フェニルエステル、メタクリル酸シクロアルキルエステル、クロトン酸アルキルエステル、イタコン酸ジアルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステル等がある。
【0073】
上記親水基および疎水基を有するモノマーを共重合することにより得られる共重合体は、ランダム、ブロック、及びグラフト共重合体等いずれの構造でもよい。
好ましい共重合体の例としては、スチレン−スチレンスルホン酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−メタクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、メタクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸、スチレン−メタクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸シクロヘキシルエステル−メタクリル酸共重合体等が挙げられる。
【0074】
これらの共重合体に、ポリオキシエチレン基、水酸基を有するモノマーを適宜共重合させても良い。また、酸性官能基を表面に有する顔料との親和性を高め、分散安定性を良くするため、カチオン性の官能基を有するモノマー、例えばN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノアクリルアミド、N−ビニルピロール、N−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルイミダゾール等を適宜共重合させてもよい。
【0075】
また、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアルギン酸、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンブロックコポリマー、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリアミン類、ポリアミド類、ポリビニルイミダゾリン、アミノアルキルアクリレート・アクリルアミド共重合体、キトサン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリビニールアルコール、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、多糖類とその誘導体等も有効に使用できる。
【0076】
特に限定するわけではないが、水溶性樹脂の親水基はカルボン酸またはカルボン酸の塩であることが好ましい。これは、特に親水基にカルボン酸を用いた場合には、記録媒体上の色材の凝集度合いが適度であるためと考えられる。
【0077】
これらの水溶性樹脂のうち、親水基が酸性基である共重合体は、水溶性を高めるため、塩基性化合物との塩の状態で使用することが好ましい。
これらの重合体と塩を形成する化合物としては、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属類;モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン等の脂肪族アミン類;モノメタノールアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等のアルコールアミン類;アンモニア;等が使用できる。
【0078】
好ましくは、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属類の塩基性化合物が使用される。これは、アルカリ金属類は強電解質であり、親水基の解離を促進させる効果があるためと考えられる。
【0079】
前記水溶性樹脂の中和量としては、共重合体の酸価に対して60%以上中和されていることがより好ましく、更に好ましくは、共重合体の酸価に対して80%以上中和されていることである。
なお、これら水溶性樹脂は、単独で用いても2種類以上混合して用いてもよい。
【0080】
その他、本発明に用いられるインクには、ポリエチレンイミン、ポリアミン類、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、グルコース、フルクトース、マンニット、D−ソルビット、デキストラン、ザンサンガム、カードラン、シクロアミロース、マルチトール等多糖類及びその誘導体、その他ポリマーエマルション、シクロデキストリン、大環状アミン類、デンドリマー、クラウンエーテル類、尿素及びその誘導体、アセトアミド等を用いることができる。
【0081】
また、必要に応じて、酸化防止剤、防カビ剤、導電剤、紫外線吸収剤、及びキレート化剤等を含有させてもよい。該キレート化剤としては、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、イミノ二酢酸(IDA)、エチレンジアミンージ(o−ヒドロキシフェニル酢酸)(EDDHA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ジヒドロキシエチルグリシン(DHEG)、トランス−1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸(CyDTA)、ジエチレントリアミン−N,N,N’,N’,N’−五酢酸(DTPA)、グリコールエーテルジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸(GEDTA)等が挙げられる。
【0082】
これらに加えて、2次障害が出ない程度に電解質やカチオン性物質を使用してもよい。電解質としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン、及びアルミニウムイオン、バリウムイオン、カルシウムイオン、銅イオン、鉄イオン、マグネシウムイオン、マンガンイオン、ニッケルイオン、スズイオン、チタンイオン、亜鉛イオンなどが挙げられる。
【0083】
また、本発明に用いられるインクには、浸透剤として界面活性剤等を含有する。
上記界面活性剤としてはノニオン、アニオン、カチオン、両性いずれの界面活性剤でも使用できる。ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド、アセチレンアルコールエチレンオキシド付加物、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマー、グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビトールエステルのポリオキシエチレンエーテル等があげられる。
【0084】
前記アニオン界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩およびスルホン酸塩、並びに高級アルキルスルホコハク酸塩等を添加してもよい。
【0085】
前記カチオン性界面活性剤としては、テトラアルキルアンモニウム塩、アルキルアミン塩、ベンザルコニウム塩、アルキルピリジウム塩、イミダゾリウム塩等が挙げられ、例えば、ジヒドロキシエチルステアリルアミン、2−ヘプタデセニル−ヒドロキシエチルイミダゾリン、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、セチルピリジニウムクロライド、ステアラミドメチルピリジウムクロライド等が挙げられる。
【0086】
また、前記両性界面活性剤としては、ベタイン、スルフォベタイン、サルフェートベタイン、イミダゾリン等が使用できる。その他、ポリシロキサンポリオキシエチレン付加物等のシリコーン系界面活性剤やオキシエチレンパーフルオロアルキルエーテルなどのフッ素系界面活性剤、スピクリスポール酸やラムノリピド、リゾレシチンなどのバイオサーファクタントなども使用できる。
これらの界面活性剤は単独でも2種以上を混合して使用することもできる。インク中に含まれる界面活性剤量は、表面張力や濡れ性の兼ね合いから、インク全質量に対して合計で0.001〜10質量%の範囲であることが望ましい。
【0087】
本発明に用いられるインクは、表面張力が20〜60mN/mの範囲であることが好ましい。
ここで、上記表面張力としては、ウイルヘルミー型表面張力計(協和界面科学株式会社製)を用い、23℃、55%RHの環境において測定した値を採用した。
【0088】
−処理液−
本発明に用いられる処理液は、インクを凝集及び/または増粘させる成分を含むものであり、前述の水、水溶性有機溶媒、界面活性剤、を基本成分として含有し、さらにインクを凝集及び/または増粘させる成分(凝集剤)としては、インク中に含まれる色材の種類に応じて選択することができる。
【0089】
表面にアニオン性基を有する色材を含有するインクに対しては、インク凝集剤として電解質化合物又はカチオン性化合物等を用いることが好ましい。
前記電解質化合物の電解質成分としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン及び、アルミニウムイオン、バリウムイオン、カルシウムイオン、銅イオン、鉄イオン、マグネシウムイオン、マンガンイオン、ニッケルイオン、スズイオン、チタンイオン、亜鉛イオン等の多価金属イオンと、塩酸、臭酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、チオシアン酸、および、酢酸、蓚酸、乳酸、フマル酸、フマル酸、クエン酸、サリチル酸、安息香酸等の有機カルボン酸及び、有機スルホン酸の塩等が挙げられる。
【0090】
上記に列挙した電解質を含むインク凝集剤の具体例としては、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、硫酸ナトリウム、硝酸カリウム、酢酸ナトリウム、蓚酸カリウム、クエン酸ナトリウム、安息香酸カリウム等のアルカリ金属類の塩、および、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸ナトリウムアルミニウム、硫酸カリウムアルミニウム、酢酸アルミニウム、塩化バリウム、臭化バリウム、ヨウ化バリウム、酸化バリウム、硝酸バリウム、チオアン酸バリウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、リン酸二水素カルシウム、チオシアン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、酢酸カルシウム、サリチル酸カルシウム、酒石酸カルシウム、乳酸カルシウム、フマル酸カルシウム、クエン酸カルシウム、塩化銅、臭化銅、硫酸銅、硝酸銅、酢酸銅、塩化鉄、臭化鉄、ヨウ化鉄、硫酸鉄、硝酸鉄、蓚酸鉄、乳酸鉄、フマル酸鉄、クエン酸鉄、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、塩化マンガン、硫酸マンガン、硝酸マンガン、リン酸二水素マンガン、酢酸マンガン、サリチル酸マンガン、安息香酸マンガン、乳酸マンガン、塩化ニッケル、臭化ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル、硫酸スズ、塩化チタン、塩化亜鉛、臭化亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、チオシアン酸亜鉛、酢酸亜鉛等の多価金属類の塩等が挙げられる。
【0091】
一方、前記カチオン性化合物としては、1級、2級、3級および4級アミンおよびそれらの塩等が挙げられる。
前記カチオン性化合物からなるインク凝集剤の具体例としては、テトラアルキルアンモニウム塩、アルキルアミン塩、ベンザルコニウム塩、アルキルピリジウム塩、イミダゾリウム塩、ポリアミン等が挙げられ、例えば、イソプロピルアミン、イソブチルアミン、t−ブチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ノニルアミン、ジプロピルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルプロピルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、ジエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、ジヒドロキシエチルステアリルアミン、2−ヘプタデセニル−ヒドロキシエチルイミダゾリン、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、セチルピリジニウムクロライド、ステアラミドメチルピリジウムクロライド、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体、ジアリルアミン重合体、モノアリルアミン重合体等が挙げられる。
【0092】
なお、上記に列挙したインク凝集剤の内でもより好ましいものとしては、硫酸アルミニウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、硫酸スズ、塩化亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛、硝酸アルミニウム、モノアリルアミン重合体、ジアリルアミン重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体等が挙げられる。
【0093】
一方、表面にカチオン性基を有する色材を含有するインクに対しては、インク凝集剤としてアニオン性化合物等を用いることが好ましい。
前記アニオン化合物としては、有機カルボン酸または有機スルホン酸、およびそれらの塩等が挙げられる。具体的には、有機カルボン酸としては、酢酸、蓚酸、乳酸、フマル酸、クエン酸、サリチル酸、安息香酸等が挙げられ、これらの基本構造を複数個有するオリゴマー、ポリマーであってもよい。また、有機スルホン酸としては、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸等の化合物が挙げられ、これら基本構造を複数個有するオリゴマー、ポリマーでも構わない。
【0094】
インク凝集液中に含まれるインク凝集剤は、1種類のみでもよいが、2種類以上を用いてもよい。また、インク凝集液中のインク凝集剤の含有量としては、0.1〜15質量%の範囲内が好ましく、0.5〜10質量%の範囲内がより好ましい。
【0095】
また、本発明に用いられる処理液中には、水溶性ポリマー、水溶性オリゴマー、樹脂エマルジョン、無機酸化物の1種以上を含むことができる。
上記樹脂エマルションとしては、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、メラミン系樹脂、尿素樹脂系、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリブテン系樹脂、各種ワックス類等が挙げられる。また、市販のエマルションとしては、例えばボンコート4001(アクリル系樹脂エマルション、大日本インキ化学工業株式会社製)、ボンコート5454(スチレン−アクリル系樹脂エマルション、大日本インキ化学工業株式会社製)、J−74J、J−734(ジョンクリル社製) 等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0096】
樹脂エマルションは、樹脂・ワックス類を機械的に水性媒体中に微細化・分散したり、乳化重合・分散重合・懸濁重合などで微粒子を直接重合し作製してもよい。本発明における好ましい様態としては、これらの樹脂は親水性部分と疎水性部分とを併せ持つ重合体であるのが望ましい。その粒子形状は、球形その他任意で良い。乳化重合の場合、乳化剤を用いても、ソープフリーでもどちらでもよい。
【0097】
また、前記無機酸化物としては、高分子量の無水珪酸(SiO)やアルミナ(Al)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0098】
これらの樹脂エマルションまたは無機酸化物コロイドの体積平均粒子径は、10nm〜2μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは、50〜500nmの範囲である。体積平均粒子径が2μmより大きいと、処理液の吐出安定性や放置時の安定性に問題が生じ易い。また、10nmより小さいとノズルの放置回復性等に問題が生じ易い。
【0099】
また、その添加量は、処理液中に固形分量で0.1質量%以上10質量%以下が好ましい。0.1質量%未満では、印字物の定着性改善の効果がなく濃度も低下する場合がある。10質量%を超えて添加すると、吐出安定性の低下や、画像乾燥性の悪化が見られる場合がある。
【0100】
また、上記処理液は無色透明液として使用しても、色材を含有した例えばカラーインクとして使用してもよい。なお後者の場合、処理液にはさらに前記と同様の色材が含まれることが好ましい。そして、処理液に含まれる上記色材としては、前記インクの場合と同様に顔料であることが好ましい。
【0101】
上記処理液に色材が含まれる場合には、該色材は処理液の全質量に対し1〜15質量%の範囲で含まれることが好ましく、2〜10質量%の範囲で含まれることがより好ましい。
【0102】
また、本発明における処理液の表面張力は、20〜40mN/mの範囲であることが好ましい。このような範囲の場合に、画像乾燥時間が早くかつ画質効果の両立が実現できやすい。
なお、上記表面張力は、前記同様ウイルヘルミー型表面張力計を用いて、23℃、55%RHの環境下で測定した。
【0103】
<触媒を利用したインクジェット記録装置内の防カビ、抗菌性>
インクジェット記録装置内では、インクジェット記録用液体組成物以外にも、インクジェット記録装置中の様々な場所でも、カビや細菌汚染によって種々のトラブルが発生する場合がある。このようなトラブルとしては、例えば、ノズル周辺であれば画像の乱れや、ノズルの目詰まり等による信頼性の悪化が挙げられ、インクジェット記録用液体組成物の廃液回収部では悪臭の原因となったり、カビや細菌の温床となる場合がある。また、貯留容器内に貯留されたインクジェット記録用液体組成物については上述したような微細気泡処理による対応が可能であるが、例えば、貯留容器内の気圧を調整するために貯留容器内外を連通するように設けられた連通孔周辺でカビ等が発生してしまうことも考えられる。
【0104】
また、以上に説明したような問題は、高速且つ大量の画像形成に用いられる大型機において顕在化しやすい。これは、大型機が、比較的長期に渡って使用されること、大容量のインクジェット記録用液体組成物用の貯留容器を有すること、画像形成等に伴い発生する廃液量が多いこと、ミスト対策のためにエアフローやエアー流路を工夫する等により装置外の空気を装置内へと取り込むこと、などが理由である。
【0105】
一方、抗菌や防カビ効果を有する代表的な物質のひとつとして、酸化チタンのような光触媒が一般的に知られている。しかし、上述したようなトラブルが発生する場所は、インクジェット記録内;すなわち光の当たらない場所である。
本発明者らは、この点を考慮して、可視光や紫外線を照射しなくても抗菌性や防カビ性といった触媒効果を用いることが重要であると考えた。このような触媒材料としては、例えば、Ti、Zr、Hf、Ceから選択される金属元素を含む金属塩が挙げられる。そして、金属塩を構成する金属元素としてはTiが好ましく、また、金属塩は燐酸系の塩であることが好ましい。
【0106】
また、上記の金属塩以外に鉄化合物、アルミ化合物、カリウム化合物およびチタン化合物を含む触媒(例えば、ニチリンケミカル株式会社製、セフィール)も挙げられる。
この触媒ではカリウム化合物のカリウム40が、空気中の水分子に働きかけ、ヒドロキシルラジカル(・OH)と過酸化水素とを生成する。過酸化水素からは、セルフィール中の鉄やチタンなどの遷移元素が働くフェントン反応によりヒドロキシラジカルが生成されます。また、過酸化水素から生成されたヒドロペルオキシラジカル(・OOH)や空気中の酸素を原料とする反応によりスーパーオキシドイオン(O)が生成され、このスーパーオキシドイオンも分解反応に寄与する。このような酸化力は細菌やカビに対して有効であり、この反応により、細菌を死滅させ、カビの生育を抑制することができる。
【0107】
上記の触媒は、インクジェット記録装置内の任意の場所に設けることができ、例えば、ノズル部、ノズル周辺部、記録ヘッドメンテナンス部(例えば、ワイパーブレード、流路、吸収体等)などが挙げられる。
【実施例】
【0108】
以下、本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明は以下に示す実施例にのみ限定されるものではない。
【0109】
<インクA1>
インクA1は下記組成物からなり、pHは7.4、表面張力は32.5mN/m、粘度は3.2mPa・sである。
・顔料分散液(Cabojet−300、キャボット社製) 4質量%
・水溶性有機溶媒(ジエチレングリコール) 25質量%
・界面活性剤(アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物) 0.2質量%
・イオン交換水 残部
【0110】
<インクA2>
インクA2は下記組成物からなり、pHは7.9、表面張力は33mN/m、粘度は4.3mPa・sである。
・顔料分散液(Cabojet−300、キャボット社製) 4質量%
・水溶性有機溶媒(ジエチレングリコール) 25質量%
・界面活性剤(アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物) 0.2質量%
・防カビ剤(1,2ベンゾイソチアゾリン−3−オン) 0.2質量%
・イオン交換水 残部
【0111】
<<インクの製造>>
(実施例A1)
インクA1を以下の手順で製造した。
まず、顔料分散液を、遠心分離機(佐久間製作所社製、SS−2000)を用いて7000rpmで30min処理し、沈殿物を除去して、これを混合液調整用の原料とした。
次に、図1に示す微細気泡処理装置100を用いて、顔料分散液、水溶性有機溶媒、界面活性剤、イオン交換水を十分に混合する共に微細気泡処理した。なお、本実施例で用いた微細気泡処理装置100の容器130は、底面のサイズが20cm×30cm、高さが30cmのSUS製のタンクであり、このタンクの底面の中央部近傍に微細気泡発生装置120として(株)ナノプラネット製のM2−MS型が配置されている。なお、気体供給管126からは、空気が微細気泡発生装置120に供給される。
ここで、顔料分散液、水溶性有機溶媒、界面活性剤、イオン交換水をタンク内に供給することにより得られた2Lの混合液を、直径30mmのプロペラで気泡を発生させないようにゆっくりと攪拌しながら、微細気泡発生装置から下記条件で微細気泡を含む混合液を1min間タンク中へと吐出させ、混合液を微細気泡処理した。なお、液面から微細気泡発生装置の吐出口までの水深は、約30cmであった。
【0112】
−微細気泡発生装置の駆動条件−
・圧力:0.2MPa
・流量:15L/min
・旋回速度:毎秒500回転
なお、上記と同様の条件にて、空気と純水を用いて微細気泡発生装置を駆動させ、装置の吐出口近傍から吐出される微細気泡を含む液体を高速カメラ(フォトロン製、FASTCAM−APX RS)で撮影して得られた写真に写っている微細気泡について、ランダムに約100個の直径を測定したところ平均直径は約35μmであった。
【0113】
次に、混合・微細気泡処理を終えた混合液をフィルター(メンブレンフィルター、ミリポア製、目開き5μm、材質;PVDF)で濾過しインク1を得た。
【0114】
(実施例A2)
微細気泡処理時間を5分に変更した以外は、実施例A1と同様にしてインクA1を得た。
【0115】
(実施例A3)
微細気泡処理時間を10分に変更した以外は、実施例A1と同様にしてインクA1を得た。
【0116】
(実施例A4)
微細気泡処理時間を5分に変更すると共に、濾過工程を経た後の混合液に対して、超音波発生装置(SIBATA社製、SU−18TH)により、出力200Wの超音波を5分間印加した以外は、実施例1と同様にしてインク1を得た。
【0117】
(比較例A1)
実施例A1において、微細気泡処理を実施しなかった以外は、実施例A1と同様にしてインク1を得た。
【0118】
(比較例A2)
インクA1の代わりにインクA2を、比較例A1と同様の条件で、混合、微細気泡処理、濾過して調合した。
【0119】
<評価>
得られたインクについては、連続噴射安定性、保存安定性、および防カビ性を評価した。結果を表1に示す。
【0120】
【表1】

【0121】
なお、表1中に示す連続噴射安定性、保存安定性、および防カビ性の評価方法および評価基準は以下の通りである。
【0122】
<連続噴射安定性>
試作記録ヘッド(解像度600dpi、256ノズル、発熱素子を内蔵したサーマル方式ヘッド)に、各実施例、比較例に示す手順で作製されたインクを充填(:2ヘッド)し、10の8乗回連続噴射後に着弾精度(一括によるJ6パターン:JEITA標準パターンを印字の劣化度合い)を目視評価した。評価基準は以下の通りである。
○:すじが確認できない
△:すじ抜けがあるが目立たない
×:すじ抜け多数あり
【0123】
<保存安定性評価>
試作記録ヘッド(解像度600dpi、256ノズル、発熱素子を内蔵したサーマル方式のヘッドに各実施例、比較例に示す手順で作製されたインクを充填(:8ヘッド)した後、ノズル面周辺をシリコン樹脂のキャップでキャッピングした状態で2週間放置(室温23℃/湿度55%環境下)した。
そして、2週間放置後、ノズルからインクを吐出させて、一括による1ノズル:100ドットずつの256ラインパターンを印字し、目視観察してノズル目詰まり度合いを評価した。評価基準は以下の通りである。
○:吐出率100%
△:90%<吐出率<100%
×:吐出率<90%
なお、吐出率とは、観察されたライン数/256ライン(吐出率100%のときのライン数で、全ノズル数(256ノズル)に対応)で表される値である。
【0124】
<防カビ評価>
プラスチックシャーレ中に、各実施例、比較例に示す手順で作製したインクを2ml入れ、ふたをして温度28±2℃、湿度約97%で保存した。4週間後にカビ菌糸等の発生状態を目視および顕微鏡で観察した。評価基準は以下の通りである。
○:カビ発生無し。
△:カビ発生が全面積の1/4未満。
(インクカートリッジ中で2年間変化無しと同等の結果であり、実用上問題がない)
×:カビの発生が全面積の1/4以上。実際に使用不可能。
【0125】
<<インクジェット記録装置>>
−インクジェット記録装置−
評価には、1)主要部が図2に示す構成を有するインクジェット記録装置において記録ヘッドとしてサーマル方式の記録ヘッドを備えた装置(以下、「装置S1」と称す場合がある)と、2)主要部が図2に示す構成を有するインクジェット記録装置においてピエゾ方式の記録ヘッドを備えた装置(以下、「装置P1」と称す場合がある)、3)主要部が図2に示す構成を有するインクジェット記録装置から微細気泡発生装置および超音波印加手段を取り除き且つサーマル方式の記録ヘッドを備えた装置(以下、「装置SN」と称す場合がある)の4種類を準備した。
これらの装置は、市販のインクジェット記録装置(富士ゼロックス社製WorkCentre B900)を改造した改造機である。なお、テストに際しては、予めタンク内等を十分に洗浄した。
【0126】
次に、これら装置S1、P1、SNの主要部の構成にいて説明する。
(1)貯留容器
貯留容器として用いたタンクは底面のサイズが10cm×20cm、高さが20cmの箱型のPET製容器である。なお、評価に際しては2Lのインクを充填した。
【0127】
(2)微細気泡発生装置
装置S1、P1で用いた微細気泡発生装置120として(株)ナノプラネット製、M2−L型を用いた。なお、評価に際しては下記条件で駆動させた。
−微細気泡発生装置の駆動条件−
・圧力:0.2MPa
・流量:15L/min
・旋回速度:毎秒500回転
なお、上記と同様の条件にて、空気と純水を用いて微細気泡発生装置を駆動させ、装置の吐出口近傍から吐出される微細気泡を含む液体を高速カメラで撮影して得られた写真に写っている微細気泡について、ランダムに約100個の直径を測定したところ平均直径は約35μmであった。
【0128】
(3)超音波発生手段
装置S1、P1で用いた超音波発生手段としては、タムラ製作所製、TBL4535D−40(発振子:ボルト締めラシュバン型振動子)を用い、タンク底面の中央部に取り付けた状態で使用した。なお、評価に際しては、出力70W、発振周波数40kHzで超音波を印加した。
【0129】
(3)サーマル方式の記録ヘッド
装置S1、SNで用いたサーマル方式の記録ヘッドとしては、試作記録ヘッド(解像度600dpi、256ノズル)を用いた。
【0130】
(4)ピエゾ方式の記録ヘッド
装置P1で用いたピエゾ方式の記録ヘッドとしては、試作記録ヘッド(解像度600dpi、256ノズル)を用いた。
【0131】
−インク−
評価には、比較例A1に示す手順で調合したインク(インクB1)と、比較例A2に示す手順で準備したインク(インクB2)とを準備した。
【0132】
<実施例B1>
装置S1のタンクにインクB1を充填した後、微細気泡発生装置を1min駆動させてタンク内のインクを微細気泡処理した。
続いて、微細気泡処理から約10分後に連続噴射安定性と保存安定性とを評価した。また、微細気泡処理後、タンクを28℃97%RHの環境下にて4週間放置して、防カビ性を評価した。
【0133】
<実施例B2>
実施例B1において、微細気泡処理時間を5minに変更した以外は実施例B1と同様にして評価した。
【0134】
<実施例B3>
実施例B1において、微細気泡処理後に超音波を5min印加し、超音波印加を終了してから約10分後に、連続噴射安定性と保存安定性とを評価した。また、超音波印加後、タンクを28℃97%RHの環境下にて4週間放置して、防カビ性を評価した。
【0135】
<実施例B4>
実施例B1において、装置S1の代わりに装置P1を用いた以外は、実施例B1と同様にして評価した。
【0136】
<実施例B5>
実施例B2において、装置S1の代わりに装置P1を用いた以外は、実施例B2と同様にして評価した。
【0137】
<実施例B6>
実施例B3において、装置S1の代わりに装置P1を用いた以外は、実施例B3と同様にして評価した。
【0138】
<比較例B1>
装置S1のタンクにインクB1を充填した後、連続噴射安定性と保存安定性とを評価した。また、タンクを28℃97%RHの環境下にて4週間放置して、防カビ性を評価した。
【0139】
<比較例B2>
比較例B1において、インクB1の代わりにインクB2を用いた以外は、比較例B1と同様に評価した。
【0140】
以上に示した実施例、比較例の結果を以下の表2に示す。
【0141】
【表2】

【0142】
なお、表2中に示す連続噴射安定性、保存安定性、および防カビ性の評価方法および評価基準は以下の通りである。
【0143】
<連続噴射安定性>
各実施例、比較例に示す手順で作製されたインクを充填(:2ヘッド)し、10の8乗回連続噴射後に着弾精度(一括によるJ6パターン:JEITA標準パターン)の劣化度合い)を目視評価した。評価基準は以下の通りである。
○:すじが確認できない
△:すじ抜けがあるが目立たない
×:すじ抜け多数あり
【0144】
<保存安定性>
各実施例、比較例に示す手順で作製されたインクを充填(:8ヘッド)した後、ノズル面周辺をシリコン樹脂のキャップでキャッピングした状態で2週間放置(室温23℃/湿度55%環境下)した。
そして、2週間放置後、ノズルからインクを吐出させて、一括による1ノズル:100ドットずつの256ラインパターンを印字し、目視観察してノズル目詰まり度合いを評価した。評価基準は以下の通りである。
○:吐出率100%
△:90%<吐出率<100%
×:吐出率<90%
なお、吐出率とは、観察されたライン数/256ライン(吐出率100%のときのライン数で、全ノズル数(256ノズル)に対応)で表される値である。
【0145】
<防カビ性>
放置終了後にカビ菌糸等の発生状態を目視および顕微鏡で観察した。評価基準は以下の通りである。
○:カビ発生無し。
△:カビ発生が全面積の1/4未満。
(インクカートリッジ中で2年間変化無しと同等の結果であり、実用上問題がない)
×:カビの発生が全面積の1/4以上。実際に使用不可能。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】微細気泡処理に用いられる微細気泡処理装置の一例を示す概略模式図である。
【図2】本発明のインクジェット記録装置の一構成例を示す概略模式図である。
【符号の説明】
【0147】
100 微細気泡処理装置
110 第1の原料供給管
112 第2の原料供給管
120 微細気泡発生装置
122 液体供給管
124 ポンプ
126 気体供給管
130 容器
140 混合液
200 インクジェット記録装置
210 液滴吐出手段
220 微細気泡発生装置
230 超音波印加手段
240 回収部
250 252、254 ポンプ
260 フィルタ
270 供給管
272(未吐出液)回収管
274(吐出液)回収管
274 貯留容器
276 循環管
278 気体供給管
280 貯留容器
290 インクジェット記録用液体組成物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料分散液と、水溶性有機溶媒と、界面活性剤と、水とを混合した混合液を調合する混合液調合工程を少なくとも含み、
前記顔料分散液、および、前記混合液から選択される少なくとも一方の液体に、微細気泡を供給して処理することを特徴とするインクジェット記録用液体組成物の製造方法。
【請求項2】
インク中に含まれる顔料の凝集を促進する凝集剤と、水溶性有機溶媒と、界面活性剤と、水とを混合した混合液を調合する混合液調合工程を少なくとも含み、
前記混合液に、微細気泡を供給して処理することを特徴とするインクジェット記録用液体組成物の製造方法。
【請求項3】
前記混合液に対して超音波を印加することにより、前記混合液中に溶解するガス成分を脱気させる脱気工程を更に含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット記録用液体組成物の製造方法。
【請求項4】
インクジェット記録用液体組成物を貯留する貯留容器と、
液滴吐出面および該液滴吐出面に配置されたノズルを少なくとも備え、前記インクジェット記録用液体組成物を液滴状にして前記ノズルから吐出する液滴吐出手段と、
前記貯留容器から前記液滴吐出手段へ前記インクジェット記録用液体組成物を移送する供給管と、
前記貯留容器内に微細気泡を供給する微細気泡発生装置と、
を含むことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記貯留容器内に貯留された前記インクジェット記録用液体組成物に超音波を印加する超音波印加手段を備えたことを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記液滴吐出手段が、前記ノズル内を流れる液体を加熱する発熱素子を有することを特徴とする請求項5に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記液滴吐出手段から吐出された前記インクジェット記録用液体組成物を回収する回収部と、回収された前記インクジェット記録用液体組成物を前記回収部から前記貯留容器へと移送する回収管と、を更に備えたことを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記貯留容器の容量が、500cm以上5000cm以下の範囲内であることを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
インクジェット記録用液体組成物が、顔料を含むインクであることを特徴とする請求項5〜8のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−138021(P2009−138021A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−312339(P2007−312339)
【出願日】平成19年12月3日(2007.12.3)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】