説明

インクジェット記録装置およびインクジェット記録方法

【課題】記録デューティなどの記録条件の影響によって記録画像に濃度ムラが発生するのを低減し得るインクジェット記録装置およびインクジェット記録方法を提供する。
【解決手段】記録ヘッドは、同一種類の液体を吐出する第1、第2ノズル列L8,L0を有する。第1ノズル列L8からは比較的少量の液滴が吐出され、第2ノズル列L0からは比較的大量の液滴が吐出される。記録ヘッドの各主記録走査における記録デューティが一定値以上であるとき、第1ノズル列L8の端部ノズルEC2に対応するドット形成予定位置の少なくとも一部に対し、第1ノズル列L8による液滴の吐出を停止させ、代わりに第2ノズル列L0の端部ノズルEC1から吐出された液滴を吐出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク滴を吐出するインクジェット記録ヘッドを用いて記録を行うインクジェット記録装置およびインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、低騒音、低ランニングコストであると共に、装置の小型化、およびカラー化が容易であるという利点を有することから、プリンタ、複写機、ファクシミリなどに広く利用されている。現在、インクジェット記録装置では、画像を形成するドットの粒状感を軽減させるために、記録ヘッドから吐出されるインク滴を小液滴化し、ドットのサイズを小さくする傾向にある。特に、カラーインクを吐出させる記録ヘッドでは、インク滴の液滴サイズが15pl程度から5pl、2plというように、年々、小液滴化している。また、デジタル入力機器の進歩、普及が著しい現在では、その入力機器によって得られる画像が高画質化しているため、その入力画像に見合った高精細な画像を出力することが、インクジェット記録装置にも求められるようになってきている。このように、入力機器との関係からもインクジェット記録装置の小液滴化は、さらに進む傾向にあり、記録ヘッドのノズルの開口径も液滴サイズに応じて小径化されている。
【0003】
ところが、インク滴が小液滴化するにつれ、液滴の運動エネルギーは小さくなり、液滴自身が周囲の環境から影響を受けやすくなってきている。例えば、高密度でインク滴の吐出が行われた場合、すなわち高記録デューティでの記録動作が行われた場合には、記録ヘッドの周囲に発生する気流によりインク滴の飛翔方向が曲がる。詳しくは、記録ヘッドのノズル列端部から吐出されたインク滴の飛翔方向が、気流の影響によりノズル列の中央部側へ曲がる。その結果、記録媒体上でのインク着弾位置が正規の位置からずれるという現象が起こる。この現象は、記録ヘッドに形成されるノズル列の端部において特に顕著に現れる。
【0004】
この着弾ずれを解消するために、記録ヘッドに設けられたノズル列の最端部に位置するノズル(以下、最端部ノズルと称す)とこれに隣接するノズルとの配列間隔を広げることが提案されている(特許文献1)。最端部ノズル近傍の配列間隔を広げることにより、高記録デューティ時に発生する気流によってノズル列中央部側に引き寄せられるインク滴の着弾位置を補正することができる。
【0005】
【特許文献1】特開2003−145775号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に示される方法は、高記録デューティでの記録時に、ノズル列端部から吐出されたインク滴の着弾位置が大きくずれることを想定した補正方法である。このため、高記録デューティ時には有効であるが、低記録デューティ時にはノズル列端部からのインク滴にずれが生じるという問題がある。すなわち、低記録デューティで画像形成を行う場合は気流の発生は小さく、ノズル列端部から吐出されたインク滴もそれほど気流の影響を受けない。そのため、インク滴の飛翔方向はさほど曲がらず、ノズル列端部のピッチを広げた分だけ、着弾位置がずれることとなる。これが濃度むらとなって画像上に現れる。特に、高速記録を目的とした1ないし2パスモードの記録では、各行のつなぎ部で黒いすじ状の濃度むらが目立ち、その結果、画像品質が損なわれるという問題が発生する。
【0007】
このような濃度むらの発生状況をより具体的に説明する。
ここで、記録ヘッドで2回の走査を行うことにより、ヘッド幅分のデータを記録する場合を考える。なお、記録ヘッドとしては、インク滴の量が1.5pl、ノズルの配列密度が1200dpi、ノズル数が256個、ノズル配列方向の幅が0.21インチのものを用いる。この場合、A4サイズの記録媒体の記録可能領域(8×11インチ)へ画像を形成するためには、記録ヘッドを約104回走査する必要がある。このとき、記録ヘッドを駆動周波数30kH(記録ヘッドの移動速度は25インチ/秒)で駆動する。記録デューティが約50%以上の高デューティになると、記録ヘッドのノズル列端部から吐出されたインク滴の飛翔方向は、気流の影響によりノズル列の中央部側へ曲がる。その結果、ノズル列の端部から吐出されたインク滴の着弾位置は、ノズル列中央部側にずれる。しかし、ノズル列端部のノズルピッチは前述のように予め広げられているため、インク滴のずれ量はノズルピッチを広げた分で相殺され、結果的に適正な位置へとインク滴は着弾し、各行のつなぎ部分における濃度スジの発生は低減される。
【0008】
一方、同様の記録ヘッドを用い、同様の記録条件にて記録動作を行う場合であっても、記録デューティが低く(約50%以下)になると、記録ヘッドの周囲に発生する気流は少なくなる.従って、ノズル列端部から吐出されるインク滴の中央部側へのずれ量も小さくなる。すると、ノズル列端部のノズルピッチを広げた分、これら端部ノズルから吐出されたインク滴より形成されるドットが互いに重なり合い、各行のつなぎ部において黒すじを発生させる。
【0009】
本発明は、上記の課題に着目してなされたものであり、記録ヘッドの周辺に発生する気流の影響によって発生する濃度ムラを軽減し得るインクジェット記録装置およびインクジェット記録方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を実現するため、本発明は以下の構成を有するものとなっている。
すなわち、本発明の第1の形態は、所定量の小インク滴と前記所定量よりも多量の大インク滴とを吐出可能な記録手段を記録媒体に対して主走査させて前記記録媒体上に記録を行うインクジェット記録装置において、前記記録手段の主走査によって前記記録媒体上に形成されるバンドを構成する複数のラスタのうち、端部に位置するラスタに吐出されるべき前記小インク滴の吐出予定位置の少なくとも一部に対して前記大インク滴を吐出する制御手段を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の第2の形態は、所定量の小インク滴と前記所定量よりも多量の大インク滴とを吐出可能な記録手段を記録媒体に対して主走査させて前記記録媒体上にバンド単位で記録を行うインクジェット記録装置において、単一のバンドに吐出されるべきインク滴の数をカウントするカウント手段と、前記単一のバンドの端部に位置するラスタに吐出されるべき前記小インク滴の吐出予定位置の少なくとも一部に対して前記大インク滴を吐出する制御手段と、を備え、前記カウント手段により得られたカウント値に基づいて、前記制御手段による吐出制御が実行されるか否かが決定されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の第3の形態は、所定量の小インク滴と前記所定量よりも多量の大インク滴とを吐出可能な記録手段を記録媒体に対して主走査させて前記記録媒体上にバンド単位で記録を行うインクジェット記録装置において、単一のバンドに吐出されるべきインク滴の数をカウントするカウント手段と、前記カウント手段により得られたカウント値が予め定められた閾値を超えているかを判定する判定手段と、前記カウント値が閾値を超えていると判定された場合に、前記単一のバンドの端部に位置するラスタに吐出されるべき前記小インク滴の吐出予定位置の少なくとも一部に対して前記大インク滴を吐出する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の第4の形態は、所定量のインク滴を吐出する第1ノズルを所定の方向に配列してなる第1ノズル列および前記所定量よりも多量のインク滴を吐出する第2ノズルを前記所定の方向に配列してなる第2ノズル列を少なくとも有する記録手段を前記所定の方向と交差する方向に走査させながら前記ノズルから記録媒体上にインク滴を吐出させて記録を行うインクジェット記録装置において、前記第1ノズル列の端部ノズルによるドット形成予定位置の少なくとも一部に対し、前記第1ノズル列の端部ノズルからインク滴を吐出させる代わりに、前記第2ノズル列の端部ノズルから液滴を吐出させる制御手段を備えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の第5の形態は、所定量のインク滴を吐出する第1ノズルを所定の方向に配列してなる第1ノズル列および前記所定量よりも多量のインク滴を吐出する第2ノズルを前記所定の方向に配列してなる第2ノズル列を少なくとも有する記録手段を前記所定の方向と交差する方向に主走査させながら前記ノズルから記録媒体上にインク滴を吐出させて記録を行うインクジェット記録装置において、前記記録ヘッドの単一の主走査における記録ドット数が予め定められた閾値を超えるか否かを判断する判断手段と、前記記録ドット数が前記閾値を超える場合、前記第1ノズル列の端部ノズルによるドット形成予定位置の少なくとも一部に対し、前記第1ノズル列の端部ノズルから液滴を吐出させる代わりに、前記第2ノズル列の端部ノズルから液滴を吐出させる制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の第6の形態は、所定量の小インク滴と前記所定量よりも多量の大インク滴とを吐出可能な記録手段を記録媒体に対して主走査させて前記記録媒体上に記録を行うインクジェット記録方法において、前記記録手段の主走査によって前記記録媒体上に形成されるバンドを構成する複数のラスタのうち、端部に位置するラスタに吐出されるべき前記小インク滴の吐出予定位置の少なくとも一部に対して前記大インク滴を吐出する工程を備えることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の第7の形態は、所定量の小インク滴と前記所定量よりも多量の大インク滴とを吐出可能な記録手段を記録媒体に対して主走査させて前記記録媒体上にバンド単位で記録を行うインクジェット記録方法において、単一のバンドに吐出されるべきインク滴の数をカウントする工程と、前記カウント手段により得られたカウント値が予め定められた閾値を超えているかを判定する工程と、前記カウント値が閾値を超えていると判定された場合に、前記単一のバンドの端部に位置するラスタに吐出されるべき前記小インク滴の吐出予定位置の少なくとも一部に対して前記大インク滴を吐出する工程と、を備えることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の第8の形態は、所定量のインク滴を吐出する第1ノズルを配列した第1ノズル列と、前記所定量より多量のインク滴を吐出する第2ノズルを配列した第2ノズル列とを少なくとも有する記録手段を前記ノズルの配列方向と交差する方向に主走査させながら前記ノズルから記録媒体上にインク滴を吐出させて記録を行うインクジェット記録方法において、前記記録ヘッドの1回の主走査における記録ドット数が予め定められた閾値を超えるか否かを判断する工程と、前記記録ドット数が閾値を超える場合、前記第1ノズル列の端部ノズルによるドット形成予定位置の少なくとも一部に対し、前記第1ノズル列から液滴を吐出させる代わりに、前記第2ノズル列の端部ノズルから液滴を吐出させる工程と、を備えることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の第9の形態は、所定量のインク滴を吐出する第1ノズルを配列した第1ノズル列と、前記所定量より多量のインク滴を吐出する第2ノズルを配列した第2ノズル列とを少なくとも有する記録手段を前記ノズルの配列方向と交差する方向に走査させながら前記ノズルから記録媒体上にインク滴を吐出させて記録を行うインクジェット記録方法において、前記第1ノズル列の1回の主走査における記録ドット数が予め定められた閾値を超えるか否かを判断する工程と、前記第1ノズル列の記録ドット数が閾値を超える場合、前記第1ノズル列の端部ノズルによるドット形成予定位置の少なくとも一部に対し、前記第1ノズル列から液滴を吐出させる代わりに、前記第2ノズル列の端部ノズルから液滴を吐出させる工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
以上の構成によれば、各記録領域における端部の画像を小ドットに代えて大ドットで形成することにより、気流の影響によるインク滴の着弾ずれを低減できる。その結果、各記録走査によって形成される記録領域同士のつなぎ部における濃度ムラを軽減でき、画像全体の品質を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に説明する本発明に係る第1の実施形態は、記録媒体上へ記録ヘッドにより画像形成を行う際に以下の処理を行う。すなわち、(1)吐出量の異なるノズルを配列してなる記録ヘッドにおいて、小液滴を吐出するノズルを配列したノズル列の端部ノズルによる小ドット形成予定位置に、大液滴を吐出するノズルを配列したノズル列の端部ノズルによって大ドットを形成する。(2)各記録走査領域における記録デューティが所定の閾値より高い場合には、前記小液滴を吐出する端部ノズルによる小ドット形成予定位置に、大液滴を吐出する大ノズルによって大ドットを形成する。
【0021】
そして、これらの特徴的構成によって、1パスないし低パスにおいても濃度ムラのない高品位な記録画像を記録できる。
【0022】
本発明者は、上記(1)、(2)について鋭意検討を行ない、どの程度の液滴サイズ及び記録デューティーで液滴吐出の着弾位置が変化するかを確認した。具体的には、記録ヘッドのインク滴のサイズおよび記録デューティー毎に記録媒体上へのドット着弾状態の判定を行った。小液滴(本例では、約1.5pl)の吐出を行う場合、高デューティー(約50%以上)の時には、ノズル列端部から吐出される液滴がノズル列中央部側へ流れる気流に引き寄せられ、着弾ドットのズレにより行間(スキャン間)で白スジが目立った。そこで、最端部ノズルを含む端部近傍のノズルから吐出される小液滴(1.5pl)のドットを大液滴(本例では、5pl)のドットで置き換えて画像形成を行った。大液滴(5pl)は小液滴よりも気流の影響を受けにくく、気流による着弾ズレが起こりにくい。また、大液滴のドットは着弾面積が大きいため、仮に着弾ズレが生じたとしても、ドット間に空白が生じにくい。従って、小液滴のドットを大液滴のドットで置き換えると、原理的に白スジの発生確率が低くなる。このドット置換による白スジ軽減効果を確かめるために、記録媒体から約20cm離れた状態で両眼視力1.0〜1.5程度の視力のパネラーが画像評価した。その結果、特に白スジが目立たない画像であると判定された。
【0023】
なお、ここでは、小液滴を1.5pl、大液滴を5plとして説明したが、本発明において適用可能な小液滴および大液滴の吐出量はこの例に限られるものではない。ここで例示した吐出量(1.5pl/5pl)とは異なる吐出量を適用した場合であっても、小液滴のドットを大液滴ドットで置換することは白スジ軽減に効果がある。
【0024】
このように本発明によれば、ノズル列の端部ノズルから吐出された液滴がヨレることで生じる濃度ムラを大幅に低減することが可能になる。
【0025】
(第1の実施形態)
<インクジェット記録装置の概略構成>
次に、図面を参照して本発明のインクジェット記録装置に係る第1の実施形態をより詳細に説明する。
【0026】
図1は、本発明を適用したインクジェット記録装置の実施形態における主要部の構成を示す図である。
【0027】
図1において、記録ヘッドカートリッジ1がキャリッジ2に交換可能に搭載されている。記録ヘッドカートリッジ1は、記録ヘッドおよびインクタンク部を有する。この記録ヘッドカートリッジ1には、記録ヘッドを駆動するための信号の授受などを行うための不図示のコネクタが設けられている。また、キャリッジ2には、上記コネクターを介して各記録ヘッドカートリッジ1に駆動信号等を伝達するための不図示のコネクタホルダ(電気接続部)が設けられている。
【0028】
キャリッジ2は、主走査方向に延在して装置本体に設置されたガイドシャフト3に沿って往復移動可能に案内支持されている。そして、キャリッジ2は主走査モータ4によりモータプーリ5、従動プーリ6およびタイミングベルト7等の駆動機構を介して駆動されるとともにその位置及び移動が制御される。また、キャリッジ2には、ホームポジションセンサ30が設けられており、キャリッジ2と共に移動する。このホームポジションセンサ30は、往復移動経路の所定の基準位置に設けられた遮蔽板36を通過する際に、これを検出するようになっており、この遮蔽板36の検出位置をキャリッジ2の往復移動経路中におけるホームポジション(基準位置)としている。
【0029】
また、プリント用紙やプラスチック薄板等の記録媒体8は、オートシートフィーダ(以降ASF)32の給紙トレイに積載されている。このASF32は、給紙モータ35からギアを介してピックアップローラ31を回転させることにより、給紙トレイから一枚ずつ分離されて記録装置の本体部に設けられた搬送ローラ9へと給紙される。搬送ローラ9へと搬送された記録媒体8は、搬送ローラ9の回転によって記録ヘッドカートリッジ1のノズル面と対向する位置(プリント部)を通過して搬送(副走査)される。また、搬送ローラ9はLFモータ34の回転によりギアを介して行われる。その際、給紙されたかどうかの判定と給紙時の頭出し位置の確定は、ペーパエンドセンサ33を記録媒体8が通過した時点で行われる。さらに、記録媒体8の後端が実際にどこに存在しているかを検出し、記録媒体8の後端から現在の記録位置までを割り出すためにもペーパエンドセンサ33は使用される。
【0030】
なお、記録媒体8は、プリント部において平坦なプリント面を形成するように、その裏面をプラテン(不図示)により支持される。この場合、キャリッジ2に搭載された各記録ヘッドカートリッジ1は、それらのノズル面がキャリッジ2から下方へ突出しており、前記2組の搬送ローラ対の間に保持されている記録媒体8と平行になるよう保持されている。
【0031】
記録ヘッドは、例えば、ノズルからインク滴を吐出するインクジェット方式を採用したものであって、インク滴を吐出するエネルギーとして熱エネルギーを発生させる電気熱変換体(エネルギー発生手段)を備えたものとなっている。すなわち記録ヘッドは、上記電気熱変換体によって印加される熱エネルギーによる膜沸騰により生じる気泡の圧力を利用して、ノズルよりインクを吐出してプリントを行うものである。但し、圧電素子によってインクを吐出する等、その他の方式を用いる記録ヘッドにも本実施形態は適用可能である。
【0032】
<記録ヘッドカートリッジ>
ここで、本実施形態に使用する記録ヘッドカートリッジについて図2ないし図10を用いて説明する。
【0033】
図2は、本発明で適用される好適な記録ヘッドカートリッジ1を示す図である。(a)は、記録ヘッドH1001とインクタンクH1900とで構成される記録ヘッドカートリッジ1の斜視図である。(b)は、(a)に示した記録ヘッドH1001に装着されるインクタンクH1900を、記録ヘッドH1001に装着する前の状態を示している。
【0034】
ここに示す記録ヘッドカートリッジ1は、記録ヘッドH1001とこれに着脱自在に設けられたインクタンクH1900とで構成されている。この記録ヘッドカートリッジ1は、インクジェット記録装置本体に設けられたキャリッジ2に対して着脱可能に構成されており、キャリッジ2への装着時には、位置決め手段によって所定の位置に位置決めされて保持される。また、記録ヘッドカートリッジ1は、キャリッジ2へと装着されることによって電気的接点の接触によりキャリッジ2と電気的に接続される。
【0035】
インクタンクH1900としては、4つのインクタンクH1901〜H1904が用いられる。H1901はブラックインクを収容するためのインクタンク、H1902はシアンインクを収容するためのインクタンク、H1903はマゼンタインクを収容するためのインクタンク、H1904はイエローインクを収容するためのインクタンクH1904である。これらのインクタンクH1901,H1902,H1903,H1904はそれぞれが記録ヘッドH1001に対して独立して着脱自在であり、それぞれ個別に交換可能となっている。このような構成とすることにより、インクタンクH1900を適宜交換して、インクを無駄なく使用できるので、インクジェット記録装置の記録のランニングコストを低く抑えることができる。
【0036】
次に記録ヘッドH1001に関して、それを構成しているそれぞれの構成要素毎にさらに詳しく順を追って説明する。
【0037】
(1)記録ヘッド
記録ヘッドH1001は、電気信号に応じてインクに対して膜沸騰を生じさせるための熱エネルギーを生成する電気熱変換体を用いたバブルジェット方式の記録ヘッドである。ここでは、電気熱変換体とインクの吐出口とが対向するように配置された、いわゆるサイドシュータ型の記録ヘッドを用いる。
【0038】
記録ヘッドH1001は、図3の分解斜視図に示すように、記録素子ユニットH1002とインク供給ユニット(液体供給ユニット)H1003とタンクホルダーH2000とから構成されている。
【0039】
さらに、図4の分解斜視図に示すように、記録素子ユニットH1002は、第1の記録素子基板H1100、第2の記録素子基板H1101、第1のプレートH1200、電気配線テープ(電気配線基板)H1300、電気コンタクト基板H2200、第2のプレートH1400で構成されている。また、インク供給ユニットH1003は、インク供給部材H1500、流路形成部材H1600、ジョイントシール部材H2300、フィルターH1700、シールゴムH1800から構成されている。
【0040】
(1−1)記録素子ユニット
第1のプレートH1200は、例えば、厚さ0.5〜10mmのアルミナ(Al2O3)材料で形成されている。但し、第1のプレートH1200の素材は、アルミナに限られるものではなく、記録素子基板の材料の線膨張率と同等の線膨張率を有し、かつ、記録素子基板の材料の熱伝導率と同等もしくは同等以上の熱伝導率を有する他の材料であってもよい。具体的には、第1のプレートH1200の素材は、例えば、シリコン(Si)、窒化アルミニウム(AlN)、ジルコニア、窒化珪素(Si3N4)、炭化珪素(SiC)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)のうちいずれであってもよい。第1のプレートH1200には、インク供給口H1201として、第1の記録素子基板H1100にブラックのインクを供給するための供給口と、第2の記録素子基板H1101にシアン、マゼンタ、イエローのインクをそれぞれ供給するための供給口とが形成されている。また、第1の記録素子基板H100の両側部には、インク供給ユニットH1003との接続用のビス止め部H1206が形成されている。
【0041】
図5は、使用頻度の高いブラックインク用の第1の記録素子基板H1100の構成を説明するために一部破断して示す斜視図である。第1の記録素子基板H1100には、例えば、厚さ0.5〜1mmのSi基板H1110に、インク流路である長溝状の貫通孔であるインク供給口H1102が形成されている。インク供給口H1102を挟んだ両側には、電気熱変換素子H1103がそれぞれ1列ずつ並べて配置されており、さらに電気熱変換素子H1103に電力を供給するAlなどからなる不図示の電気配線が形成されている。これら電気熱変換素子H1103と電気配線とは成膜技術により形成されている。電気熱変換素子H1103は、基板H1100上で千鳥状に配列されている。すなわち電気熱変換素子H1103に対応するノズルOBk,EBkの位置は、その並び列方向に直交する方向に並ばないように少しずれて配置されている。さらに、この電気配線に電力を供給するための電極部H1104が電気熱変換素子H1103の両外側の側辺に沿って配列して形成されており、電極部H1104上にはAuなどからなるバンプH1105が形成されている。
【0042】
そして、Si基板H1110上には、電気熱変換素子H1103に対応したインク流路を形成するインク流路壁H1106とその上方を覆う天井部とが設けられている。天井部は、樹脂材料からなる構造体によって構成されており、ここには、フォトリソ技術によって複数のノズルOBk、EBkが形成されている。これらノズルOBk、EBkによってノズル群H1108が構成される。また、これらノズルOBk、EBkは、電気熱変換素子H1103にそれぞれ対向して設けられている。この第1の記録素子H1100において、インク流路H1102から供給されたインクは各電気熱変換素子H1103の発熱によって発生した気泡の圧力によって、各電気熱変換素子H1103に対向するノズルから吐出される。
【0043】
また、図6は、第2の記録素子基板H1101を、その構成を説明するために一部破断して示した斜視図である。第2の記録素子基板H1101は、シアン、マゼンタ、イエローの3色のインクを吐出させるためのものであり、6個のインク供給口H1102が並列して形成されている。なお、図6では3個のインク供給口H1102のみを示している。ここで、インク供給口H1102の両側には、電気熱変換素子H1103とノズルH1107とがそれぞれ千鳥状に配置されて形成されている。なお、インク供給口H1102を挟んで配列された2列のノズルEC1とOC1、EM1とOM1、EY1とOY1によって、それぞれノズル群H1100C1、H1100M1、H1100Yなどが形成されている。
【0044】
また、Si基板H1110には、第1の記録素子基板H1100と同じように電気配線、電極部H1104などがさらに形成されており、その上に樹脂材料でフォトリソ技術によってインク流路壁H1106やノズルH1107が形成されている。そして第1の記録素子基板H1100と同様に電気配線に電力を供給するための電極部H1104にはAuなどからなるバンプH1105が形成されている。なお、図6では、内部構造を説明する都合上、Si基板の一部のみが示されており、ノズル群などを初めとするその他の構造も一部のみが示されている。実際のノズル群の配列は、図9にて後に説明する。
【0045】
記録素子基板H1100,H1101は、インク供給口1102が第1のプレートH1200のインク供給口H1201にそれぞれ連通するように接続され、かつ、第1のプレートH1200に対して精度良く位置するように接着固定される。この接着に用いられる第1の接着剤は、低粘度で硬化温度が低く、短時間で硬化し、硬化後比較的高い硬度を有し、かつ、耐インク性のあるものが望ましい。例えば、第1の接着剤としては、エポキシ樹脂を主成分とした熱硬化接着剤が用いられ、その際の接着層の厚みは50μm以下が望ましい。
【0046】
第2のプレートH1400は、例えば、厚さ0.5〜1mmの一枚の板状部材であり、例えばアルミナ(Al2O3)などのセラミックや、Al、SUSなどの金属材料で形成されている。そして、第1のプレートH1200に接着固定された第1の記録素子基板H1100と第2の記録素子基板H1101とのそれぞれの外形寸法よりも大きな2つの開口部を有する形状となっている。第2のプレート1400は第1のプレートH1200に第2の接着剤により接着されている。これによって、電気配線テープH1300を接着した際に、電気配線テープH1300を第1の記録素子基板H1100および第2の記録素子基板H1101に接着面平面上で接触して電気接続できるようになっている。
【0047】
電気配線テープH1300は、第1の記録素子基板H1100と第2の記録素子基板H1101に対してインクを吐出するための電気信号を印加する電気信号経路を形成するものである。電気配線テープH1300には、それぞれの記録素子基板H1100,H1101に対応する2つの開口部が形成されている。この開口部の縁付近には、それぞれの記録素子基板H1100,H1101の電極部H1104に接続される電極端子H1302が形成されている。また、電気配線テープH1300の端部には、電気信号を受け取るための外部信号入力端子H1301を有する電気コンタクト基板H2200と電気的接続を行うための電気端子接続部H1303が形成されている。なお、電極端子H1302と電気端子接続部H1303は連続した銅箔の配線パターンでつながっている。
【0048】
電気配線テープH1300は裏面で第3の接着剤によって第2のプレートH1400の下面に接着固定され、さらに、第1のプレートH1200の一側面側に折り曲げられ、第1のプレートH1200の側面に接着固定されている。第3の接着剤としては、例えば、エポキシ樹脂を主成分とした厚さ10〜100μmの熱硬化接着剤が使用されている。
【0049】
電気配線テープH1300と第1および第2の記録素子基板H1100、H1101との電気的な接続は、例えば、記録素子基板の電極部H1104と電気配線テープの電極端子H1302とを熱超音波圧着法により電気接合させることにより行われる。そして、記録素子基板と電気配線テープとの電気接続部分は、第1の封止剤H1307と第2の封止剤H1308によって封止されており、これによって電気接続部分がインクによる腐食や外的衝撃から保護されている。第1の封止剤H1307は、主に電気配線テープの電極端子H1302と記録素子基板H1100,H1101の電極部H1104との接続部の裏側からの封止と記録素子基板H1100,H1101の外周部分の封止とに用いられている。また、第2の封止剤H1308は、接続部の表側からの封止に用いられている。
【0050】
電気配線テープH1300の端部には、電気コンタクト基板H2200が異方性導電フィルムなどを用いて熱圧着して電気的に接続されている。電気コンタクト基板H2200には、位置決め用の端子位置決め穴H1309と、固定用の端子結合穴H1310とが形成されている。
【0051】
(1−2)インク供給ユニット
図4に示すように、インク供給部材H1500は、インクタンクH1900から記録素子ユニットH1002にインクを導くためのインク供給ユニットH1003の一構成部品である。インク供給部材H1500は、例えば、樹脂成形により形成されている。その樹脂材料には、形状的剛性を向上させるためにガラスフィラーを5〜40%混入したものを使用することが望ましい。
【0052】
インク供給部材H1500は、図4に示すように、タンクホルダーH2000と共に、インクタンク1900を脱着自在に収容する収容部を形成している。この収容部には、図7に示すように、底部にインクタンク1900のタンク位置決めピンH1908に係合するタンク位置決め穴H1502が設けられている。また、後側の壁には、インクタンクの第1の爪H1909に係合する第1の穴H1503、第2の爪H1910に係合する第2の穴H1504が設けられている。またインクタンクH1900の前部には、収容部の壁に係合する第3の爪H1911が形成された可動レバーH1912が設けられている。このレバーH1012に力を加えて弾性変形させて動かすことにより、第3の爪H1911を外してインクタンク1900を取り外せるようになっている。これらの構成のうち、穴1503,1504はインク供給部材H1500に形成されており、インク供給部材H1500は、着脱自在のインクタンクH1900を保持する手段の一部を構成している。
【0053】
インク供給部材H1500において、インクタンクH1900の収容部の底部の位置には、インクタンクH1900のインク供給口H1907部分に当接されるジョイント部H1520が設けられている。ここには、外部からのゴミの進入を防ぐためのフィルターH1700が溶着により接合されており、さらに、ジョイント部H1520からのインクの蒸発を防止するために、シールゴムH1800が装着されている。インク供給部材H1500内には、ジョイント部H1520の、インクタンクH1900との接触面から下面に延びるインク流路H1501が形成されている。
【0054】
インク供給部材H1500の底面には流路形成部材H1600が取り付けられている。流路形成部材H1600には、記録素子ユニットH1002にインクを供給するインク(液体)導入口H1602が設けられており、このインク導入口H1602とインク供給部材H1500のインク流路H1501とが連通するように位置決めされている。
【0055】
(1−3)記録素子ユニットとインク供給ユニットとの結合
次に、記録素子ユニットH1002とインク供給ユニットH1003との結合について説明する。
【0056】
記録素子ユニットH1002とインク供給ユニットH1003とは、図4のようにジョイントシール部材H2300を間に挟んでビス2400によって結合されている。ジョイントシール部材H2300はゴムなどの圧縮永久ひずみが少ない弾性材料から作られており、これを間に挟んで圧接させることで、インク供給口1201とインク導入口1602とをインクリークが発生しないように良好に連通させることができる。
【0057】
そして記録素子ユニットH1002の電気コンタクト基板H2200はインク供給部材H1500の後面に、位置決めされ固定される。電気コンタクト基板H2200の位置決めは、端子位置決め穴H1309にインク供給ユニットH1003の後面の2個所に設けられた端子位置決めピンH1515を通すことによって行われる。この際、端子結合穴H1310にインク供給ユニットH1003の端子結合ピンH1516が通され、この端子結合ピンH1516をしめることにより、固定が行われる。固定方法はこれに限られることはなく、その他の固定手段を用いて固定しても良い。
【0058】
以上のようにインク供給ユニットH1003と記録素子ユニットH1002とを結合し、これを図8に示すようにタンクホルダーH2000に結合する。これにより、図2に示される記録ヘッドH1001が完成する。
【0059】

【0060】
記録装置においては、記録ヘッドH1001がキャリッジ2に搭載され、更に、記録ヘッドH1001にインクタンクH1900が装着される。このような状態でキャリッジ2が主走査方向(キャリッジ移動方向)に往復移動している間に、記録ヘッドからインクを吐出して被記録媒体に画像記録を行うものである。
【0061】
<ノズルの配列>
次に、本発明の第1の実施形態における第2の記録素子基板H1101におけるノズルの配列を説明する。
【0062】
図9は本発明の実施形態における記録ヘッドのノズル群の配置を説明するための底面図、図10は第2の記録素子基板H1101をノズルの開口部側から見た底面図であり、色毎のノズル群の配列および構成を示している。
【0063】
本実施形態における第2の記録素子基板H1101には、中央にイエローのノズル群が配置され、その左右両側にシアンのノズル群とマゼンタのノズル群がそれぞれ配置されている。
【0064】
すなわち、第1のシアンノズル群H1100C1、第1のマゼンタノズル群H1100M1、イエローノズル群H1100Y、第2のマゼンタノズル群H1100M2、および第2のシアンノズル群H1100C2が、記録走査方向に沿って順次配置されている。つまり、記録素子基板H1101の全体からすると、イエローノズル群を中心に左右対称にシアン、マゼンタの4つのノズル群が配置されている。
【0065】
上記のような左右対称のヘッド構成をとることにより、記録媒体上へのインクの打ち込み順を往復両走査で同一にすることができる。このため、高速化のために双方向記録を行う場合であっても、往走査と復走査とでインクの打ち込み順が異なることで生じる色ムラを生じさせずに済む。
【0066】
また、各ノズル群は、2列のノズル列からなっている。すなわち、第1のシアンノズル群H1100C1は、偶数番目のラスタを形成するノズル(偶数ノズル)EC1からなる偶数ノズル列L0と、奇数番目のラスタを形成するノズル(奇数ノズル)OC1からなる奇数ノズル列L1とを有する。また、第1のマゼンタノズル群H1100M1は、偶数ノズルEM1からなる偶数ノズル列L2と奇数ノズルOM1からなる奇数ノズル列L3とを有する。また、イエローノズル群H1100Yは、偶数ノズルEYからなる偶数ノズル列L4と奇数ノズルOYからなる奇数ノズル列L5とを有する。また、第2のマゼンタノズル群H1100M2は、偶数ノズルEM2からなる偶数ノズル列L6と奇数ノズルOM2からなる奇数ノズル列L7とを有する。また、第2のシアン群H1100C2は、偶数ノズルEC2からなる偶数ノズル列L8と奇数ノズルOC2からなる奇数ノズル列L9とを有する。
【0067】
また、第1のシアンノズル群H1100C1および第1のマゼンタノズル群H1100M1における偶数ノズル列L0,L2は、5.0plのインク滴を吐出し得る大径のノズルを配したノズル列となっている。一方、奇数ノズル列L1,L3は、1.5plのインク滴を吐出し得る小径のノズルを配したノズル列となっている。
【0068】
これに対し、第2のマゼンタノズル群H1100M2および第2のシアンノズル群H1100C2では、偶数ノズル列L6,L8が1.5plのインク滴を吐出し得る小径のノズルを配したノズル列となっている。また、奇数ノズル列L7,L9が5.0plのインク滴を吐出し得るノズルからなるノズル列となっている。
【0069】
また、各々のノズル列は600dpiで256個のノズルが配列され、一方のノズル列(例えば、偶数ノズル列)を構成する各ノズルの間に、他方のノズル列(例えば、奇数ノズル列)の各ノズルが配置されている。すなわち、各ノズル群は、同一色、同一吐出量のノズル列が600dpiずれて千鳥状に配されており、これにより、1200dpiの解像度が得られるものとなっている。
【0070】
また、図10に示されるように、シアンおよびマゼンタについては、同一ラスタに対し、大径のノズルから吐出されたインク滴(大液滴)と、小径のノズルから吐出されたインク滴(小液滴)とをそれぞれ着弾させることが可能になっている。この小液滴によって記録媒体上に形成されるドットは比較的小径のドット(いわゆる小ドット)となり、一方、大液滴によって記録媒体上に形成されるドットは比較的大径のドット(いわゆる大ドット)となる。
【0071】
なお、この記録装置では、記録ヘッドの各吐出ヒータは、駆動電圧は24V、駆動周波数は30KHzで駆動される。また、キャリッジは25inch/secの速度で移動し、キャリッジの走査方向において1200dpiの解像度が得られるようになっている。
【0072】
<制御系>
図11は、上記インクジェット記録装置における制御系の概略構成を示すブロック図である。同図において、コントローラ200は主制御部であり、例えばマイクロ・コンピュータ形態のCPU201、プログラムや所要のテーブルその他の固定データを格納したROM203、画像データを展開する領域や作業用の領域等を設けたRAM205などを有する。ホスト装置210は、画像データの供給源であり、記録すべき画像データの作成、処理等を行うコンピュータ、あるいは画像読み取り用のリーダ部等によって構成される。また、このホスト装置210からは、画像データ、その他のコマンド、ステータス信号等が、インタフェース(I/F)212を介してコントローラ200との間で送受信される。
【0073】
また、コントローラ200には、スイッチ群220が接続されている。このスイッチ郡220は、電源スイッチ222、吸引回復の起動を指示するための回復スイッチ226等をはじめとする種々のデータや指令などを入力するためのスイッチを含んでいる。
【0074】
さらに、コントローラ200には、インクジェット記録装置の状態を検出するためのセンサ群が接続されている。センサ群は、上述のホームポジションセンサ30、プリント媒体の有無を検出するためのペーパセンサ33、および環境温度を検出するために適宜の部位に設けられた温度センサ234等を含んでいる。
【0075】
また、コントローラ200には、記録ヘッドH1001を駆動するためのヘッドドライバ240が接続されている。この実施形態における記録ヘッドH1001は、インクを吐出するための複数のノズル内に設けられた電気熱変換素子(吐出ヒータ)H1103を有する。また、吐出ヒータH1103は、ノズルからインクを吐出させるための熱エネルギーを発生させるものとなっており、後述のヘッドドライバ240によって駆動される。
【0076】
さらに、コントローラ200には、インクジェット記録装置における各種モータ4、34、35夫々を駆動するモータドライバ250、260、270が接続されている。モータドライバ250は主走査モータ4を駆動するドライバであり、モータドライバ270は、記録媒体8を搬送(副走査)するために用いられる副走査モータを駆動するドライバである。また、モータドライバ260は、ASF32の給紙トレイに積載された記録媒体8をASFから分離、給紙するために用いられるモータ35を駆動するドライバである。
【0077】
図12は、上記記録ヘッドに設けられている各ノズル群を駆動するヘッドドライバの概略構成を示すブロック図である。
【0078】
ヘッドドライバは、前述の記録ヘッドの各ノズル群H1100C1,H1100M1,H1100Y,H1100M2,およびH1100C2の各ノズル列毎に設けられており、合計10個のヘッドドライバが設けられている。
【0079】
図12は、2個のヘッドドライバ240A,240Bを示している。一方のヘッドドライバ240Aは、第1のシアンノズル群(または第1のマゼンタノズル群)の偶数ノズル列L0(またはL2)のヘッドドライバである。また、他方のヘッドドライバ240Bは、第2のシアンノズル群(または第2のマゼンタノズル群)の偶数ノズル列L8(またはL6)のヘッドドライバである。なお、両ヘッドドライバ240A、240Bは、同一の構成を有している。このため、両ヘッドドライバ240A,240Bにおいて同一部分には同一符号を付してある。また、他のノズル列においても同様の構成を有するヘッドドライバが設けられている。
【0080】
以下、ヘッドドライバ240A,240Bの構成、作用を説明する。
【0081】
図12において、42は記録ヘッド基体であり、この記録ヘッド基体42には、ヘッドドライバ240と記録ヘッドH1101とが一体に構成されている。43はシフトクロックに同期して入力端子43aからシリアルに入力される記録信号を保持するシフトレジスタ、44はシフトレジスタ43からパラレルに出力される記録データを入力端子44aから入力されるラッチ信号に応じてラッチするラッチ回路である。45はこのラッチ回路44から出力される記録データと、ブロック選択回路46から出力される信号と、入力端子45aから入力されるヒートパルス信号と、の論理積を出力するアンドゲート45aをノズル数分だけ配列してなるアンドゲートアレーである。47はアンドゲートアレー45から出力された駆動制御信号に応じて各ノズル内のヒータ48に対して電流の供給、遮断を行う複数のトランジスタからなるトランジスタアレーである。なお、ブロック選択回路46は、各記録ヘッドにおけるヒータをブロック単位で時分割に駆動するための信号を出力するものである。
【0082】
次に、上記のように構成されたヘッドドライバの各部の動作を図13に示すタイミングチャートと共に説明する。
【0083】
シフトレジスタ43には、転送クロック(CLK)が入力されており、この転送クロックに従って、入力端子からシリアルに供給される記録データ(DATA)を順次転送していく。そして、記録ヘッドの各ノズル列分に相当する記録データが転送されると、その記録データをパラレルにラッチ回路44へと出力する。
【0084】
ラッチ回路44ではシフトレジスタ43から出力された記録データをラッチ信号(Latch)に応じて一定期間保持し、その各ノズル列に対応する信号を、各ヒータ48に対応して設けられた論理回路の各アンドゲート45aへと出力する。また、ブロック選択回路46には、コントローラ200から供給される3ビットのブロック指定信号46aが所定のタイミングで入力される。このブロック指定信号46aによって指定されたノズルブロックに対応するアンドゲート45aに対し、ブロックイネーブル信号(block0〜8)を出力する。各アンドゲート45aは、このブロックイネーブル信号と、ラッチ回路44から出力された記録データと、ヒートパルス信号との論理積を表す信号をトランジスタアレー47の各トランジスタに出力する。この際、ブロックイネーブル信号と、記録データのうちインク吐出を示す吐出データと、ヒートパルスデータとがアンドゲート45aに入力されると、アンドゲート45aの出力信号はハイレベルになり、対応するトランジスタがオンする。その結果、オン状態になったトランジスタに接続されているヒータに電流が流れてヒータが発熱され、ノズル内のインクの核沸騰によって吐出口からインク滴が吐出される。また、ブロックイネーブル信号はBlock0〜8へと順次所定のタイミングで切り替わり、各ヒータはブロック毎に順次駆動され、ノズルからインクが吐出される。以上のようにして記録媒体上にインクが吐出され、インクによる画像が記録される。
【0085】
なお、上記の動作は、両ヘッドドライバ240A、240Bのいずれにおいても同様に行われる。
【0086】
次に、各ヘッドドライバ240A,240Bに入力される前の段階において、コントローラ200により各ノズル列の端部ノズルに供給される記録データに対して行われるデータ処理を説明する。なお、本実施形態においては、図17に示されるように、往路走査での記録と復路走査での記録を交互に行いながら各バンドを記録していく、いわゆる1パス双方向記録を行う場合を例にとって説明する。図17において、記録ヘッドの1回の走査で記録されるバンドは256ノズル分の幅を有し、1つのバンドは256個のラスタで構成される。
【0087】
まず、小インク滴を吐出する第2シアンノズル列H1100C2のヘッドドライバ240Bに入力される記録データの処理について説明する。
【0088】
ホスト装置210から送信された記録データは、I/F212を介してRAM205内のプリントバッファ内に格納される。このプリントバッファは記録ヘッドにおける各ノズル列毎に設けられ、各プリントバッファには一回の記録走査において記録すべき各ノズル列に対応した記録データがそれぞれ格納される。ここで、CPU201は、プリントバッファ内に格納された2値の記録データのうち、インクの吐出を指示する“1”のデータ(以下、吐出データとも呼ぶ)の数をカウントし、次の記録領域(バンド)に対応する吐出データ数が予め設定した閾値を超えているか否かの判断を行う。つまり、各色ノズル列それぞれについて、バンド単位で記録ドット数を算出し、それが閾値を超えるか否かを判定するのである。
【0089】
この後、記録動作開始指令に応じて、CPU201は、プリントバッファ内に格納されている記録データをシリアルデータとして読み出し、それを順次シフトレジスタ43へと転送する。但し、読み出されたシリアルデータの中で、シアンノズル列、マゼンタノズル列の最端部ノズルに対応する記録データ(最端部データ)については、記録ドット数が閾値を超えているか否かの判断に基づいて異なる処理が行われる。具体的には、後述するように、記録ドット数が閾値を超えている場合には、端部ノズルで記録されるべき小ドットを大ドットに置き換える処理を行う。なお、ここで記載の「ノズル列の最端部ノズル」とは、ノズル列の中、最も外側に位置する1つのノズルを指す。また、後述の「ノズル列の端部ノズル」とは、ノズル列の最端部ノズルと、その近傍のノズルとを含めた複数のノズルの中の、少なくとも1つのノズルを指す。
【0090】
この第1の実施形態において、例えば、大ドットを形成する第2ノズル列としてのノズル列L0(またはL2)と、小ドットを形成する第1ノズル列としてのノズル列L8(またはL6)による記録動作においては、次のような処理が行われる。この処理について図18を参照しながら説明する。なお、この図18に示される処理は、ROM203に格納されたプログラムに従って、CPU201が実行する。
【0091】
まず、ステップS801において、一回の走査で記録される記録領域(バンド)内における記録ドットの数をカウントする。次に、S802において、このカウント値が予め定めた所定の閾値を超えているか否かを判定する。カウント値が閾値を超えていると判定された場合はステップS803へ進み、端部ラスタに本来記録されるべき小ドットを大ドットに置き換えるための処理(ドット置換処理)を行う。
【0092】
ここで、ドット置換処理の一例を示す。まず、プリントバッファ内に格納されている記録データのうち、小ドットを形成するノズル列L8(またはL6)の最端部ノズルEC2(EM2)に対応する最端部データの全てを、非吐出を表す“0”のデータに変換する。例えば、吐出を示す“1”の最端部データを検出し、検出された“1”のデータを“0”のデータに変換する。このように変換された“0”のデータはシフトレジスタ43へと転送される。このため、記録ドット数が閾値を超える場合には、小ドットを形成するノズル列EC2の端部ノズルからはインク滴は吐出されない。なお、この閾値は、小液滴の着弾位置に大きなヨレを発生させるような気流が記録ヘッドの周囲に発生するような値に設定されている。
【0093】
次に、大ドットを形成するノズル列L0(またはL2)の最端部ノズルEC1(またはEM1)に対応する最端部データのうち、小ドットの形成予定位置に対する最端部データの全てを、インク吐出を表す“1”のデータに変換する。すなわち、 小インク滴の吐出を示す“1”のデータを“0”のデータに変換した位置(小ドットの形成予定位置)については、大インク滴データが“0”のデータであろうが、強制的に“1”のデータに変換する。こうして変換されたデータはシフトレジスタ43へと送られる。このため、記録ドット数が閾値を超える場合には、小ドットの形成予定位置に対して、ノズル列L0(またはL2)の最端部ノズルEC1(またはEM1)から大インク滴が吐出され、大ドットが形成される。
【0094】
このように第1の実施形態では、一つの記録領域(バンド)に対する記録ドット数が閾値を超える場合、最端部ノズルEC2(またはEM2)から吐出される小インク滴の吐出は禁止され、代わりに端部ノズルEC1(またはEM1)から大インク滴が吐出される。つまり、一回の走査で記録される記録領域(バンド)における画像の端部には、小ドットに代えて大ドットのみが吐出されることとなる。このドットの形成状態が図14(b)である。
【0095】
図14(a)(b)は、バンド内の端部近傍におけるドット着弾状態を示した図である。図14(a)は、最端部ラスタR1を小ドットで形成した場合、つまり、ドット置換処理を行わない場合の図である。ラスタR1,R3,R5,・・・は、第2シアンノズル群H1100C2における偶数ノズル列L8の各ノズルEC2から吐出された小インク滴(インク量1.5pl)によって形成された小ドットDSで構成されるラスタである。一方、ラスタR2,R4,R6,・・・は、第1シアンノズル群H1100C1における奇数ノズル列L1の各ノズルOC1から吐出された小インク滴(インク量1.5pl)によって形成された小ドットDSで構成されるラスタである。
【0096】
図14(a)のように記録デュ−ティーが高い場合、ラスタR1を構成する各ドットDSはノズル列の中央部側へ約10μmヨレた位置に形成される。これは記録ヘッドの端部ノズルから吐出されたインク滴が、記録ヘッドの周囲に生じる気流の影響により、ノズル列中央部側へ引き寄せられるためである。理想的なドットDSは、図14(a)の破線にて示すように、ドットの中心が格子の中央部に一致するように着弾するドットである。
【0097】
そこで、本実施形態では、図14(b)のように、記録領域の端部に相当するラスタR1を形成するドットとして、本来使用すべき小ドットDSの代わりに大ドットDLを用いるようにする。図14(b)は、ノズル列L8の各ノズルEC2によってラスタR1に本来着弾させるべき小ドットDSを、ノズル列L0の端部ノズルEC1から吐出される大インク滴による大ドットDLに置換した状態を示している。図のように、記録領域の端部を形成するドットとして、気流の影響を受け難い大ドットDLを用いることで、端部ドットの着弾ズレを軽減することができる。しかも、大きなドットで各記録領域の端部を形成するので、各記録領域の間で白スジが発生するのを解消することができる。なお、この白スジ解消効果は、シアンインクとマゼンタインクのいずれについても同様に得られる。
【0098】
(第1の実施形態の変形例)
上述した形態では、各色ノズル列それぞれについて、バンド単位で記録ドット数を算出し、その算出ドットが閾値を超えるか否かを判定し、閾値を超えたノズル列についてその端部ノズルで記録される小ドットを別のノズル列の同色大ドットに置換する処理を行っていた。しかし、置換処理を行うか否かを決めるのは別の基準であってもよい。例えば、バンドに記録される各色ドットの合計数を算出し、その合計数が閾値を超えるか否かを判定し、閾値を超えた場合は端部ノズルにより記録される小ドットを同色の大ドットに置換する処理を行う形態であってもよい。なお、この変形例で用いる閾値は、第1の実施形態で用いる閾値よりも大きい値をとることは勿論である。
【0099】
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、各走査領域間の白スジの発生だけでなく、黒スジの発生も低減可能なものである。なお、本実施形態において使用する記録装置の機構的構成、および制御系の構成などは上記第1の実施形態と同様のため、その説明の詳細は省略する。 この第2の実施形態においても、上記第1の実施形態と同様の条件で記録動作を行う。すなわち、駆動電圧を24V、駆動周波数を30KHz、キャリッジ速度を25inch/secとし、主走査方向においては1200dpiの解像度で記録を行う。また、使用する記録ヘッドも、上記第1の実施形態と同様に、図10に示すものを用いる。
【0100】
図15は、この第2の実施形態におけるインク滴の着弾状態の一例を示す図である。この第2の実施形態では、記録領域の端部(バンド)に位置するラスタR1に関し、本来記録されるべき小ドットDSの全てを大ドットDLに置き換えるのではなく、小ドットDSの一部を大ドットDLに置き換えるようにしている。従って、小ドットDSと大ドットDLとが混在した状態でラスタR1が形成されることになる。
【0101】
ラスタR1に形成予定の小ドットDSを大ドットDLに置き換える割合は、白スジ軽減効果と黒スジ軽減効果のバランスを考慮して決めればよい。ここでは、小ドット形成予定位置の約半分に本来通り小ドットDSを形成し、残り半分に大ドットDLを形成するようにしている。
【0102】
例えば、ラスタR1の全てのドットを小ドットDSで形成するような記録データが入力された場合、偶数ノズル列L8の端部ノズルは1ドットおきにしか駆動させず、残りの小ドット形成予定位置には、偶数ノズル列L0における端部ノズルEC1によって大ドットDLを形成する。つまり、1ドットおきに小ドットDSを大ドットDLに置換してラスタR1を形成するようになっている。これによれば、各記録領域の端部ラスタR1に、気流による影響を受けにくい大ドットDLが含まれることとなり、この大ドットDLが各記録領域間で隣接することによって各記録領域間の白スジを目立たなくすることができる。さらに、この場合には、大ドットDLのみでラスタR1を形成する第1の実施形態に比べ、ラスタR1全体の濃度を抑えることができ、大ドットDLによる黒スジの発生を低減することもできる。
【0103】
(第3の実施形態)
第1および第2の実施形態では、バンドを構成する複数のラスタのうち、最端部ラスタについて、小ドットの少なくとも一部を大ドットに置換しているが、ドット置換を行う対象ラスタは最端部ラスタに限られるものではない。この第3実施形態では、バンドを構成する複数のラスタのうち、最端部ラスタとその近傍のラスタについて、小ドットの少なくとも一部を大ドットに置換する点を特徴としている。なお、本実施形態において使用する記録装置の機構的構成、および制御系の構成などは、上記第1の実施形態と同様のため、その説明の詳細は省略する。
【0104】
図16は、第3の実施形態におけるインク滴の着弾状態を示す図である。この図16では、最端部ラスタR1とそれに隣接するラスタR2について、小ドットDSの一部を大ドットに置き換えた例を示している。より具体的には、ラスタR1については、図15のR1と同様に、大ドットDLと小ドットDSとを交互に形成している。また、ラスタR2については、小ドットDSの形成予定位置に、2ドットおきに大ドットDLを形成するようにしている。なお、この図16では、最端部ラスタとその隣接ラスタについてドット置換処理を行っているが、ドット置換処理を行うラスタの数はこれに限られるものではない。最端部ラスタとその近傍の数ラスタ分についてドット置換処理を行うようにしてもよい。
【0105】
本実施形態によれば、上記第1の実施形態と同様に、各記録走査領域間の白スジを目立たなくすることができる。また、上記第2の実施形態と同様に、各記録走査領域間の白スジおよび黒スジを目立たなくすることができる。さらに、最端部ラスタR1だけでなく、これに隣接するラスタR2にも、ドット置換処理を行っているため、より広い範囲で小ドットの着弾ズレ軽減効果を得ることができる。
【0106】
以上のように本発明におけるドット置換処理は、バンドを構成する複数のラスタのうち、端部に位置するラスタについて行うものである。ここで、端部に位置するラスタとは、最端部ラスタのみを指すか(第1,第2の実施形態)、あるいは最端部ラスタとその近傍ラスタ(第3の実施形態)を指す。
【0107】
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態では、記録ヘッド内に形成されている各ノズル群を2本のノズル列によって構成し、さらに、各シアンおよびマゼンタのノズル群については、大ドットを形成するためのノズル列と、小ドットを形成するためのノズル列の2列で構成した。しかし、本発明は、各ノズル群をそれぞれ単一のノズル列によって構成した記録ヘッドを用いることも可能である。但し、その場合にも、シアン、マゼンタなどのインクを吐出するノズル列として、大ドットを形成するためのノズル列と小ドットを形成するノズル列とを設け、同一のラスタ上に大、小2種類のドットを形成し得るようにすることが望ましい。
【0108】
また、本発明は、記録ヘッドの幅に対応する領域(図17の場合は、256ラスタ分の領域)に記録すべき画像を1回の記録走査で完成させる、いわゆる1パス記録に限定されるものではない。記録ヘッドの幅に対応する領域に記録すべき画像を複数回の記録走査で完成させる、いわゆるマルチパス記録方式にも有効である。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に用いる記録ヘッドカートリッジを示す斜視図であり、(a)はインクタンクが装着された状態を、(b)はインクタンクが取り外された状態をそれぞれ示している。
【図3】図2に示す記録ヘッドカートリッジの記録ヘッドの分解斜視図である。
【図4】図3に示す記録ヘッドカートリッジの記録ヘッドをさらに細かく分解して示す分解斜視図である。
【図5】図3に示す記録ヘッドカートリッジの第1の記録素子基板を一部破断して示す斜視図である。
【図6】図3に示す記録ヘッドカートリッジの第2の記録素子基板を一部破断して示す斜視図である。
【図7】図3に示す記録ヘッドカートリッジの側断面図である。
【図8】組立の完了した記録ヘッドを底面側から見た斜視図である。
【図9】本発明の実施形態における記録素子基板をノズル群から見た平面図である。
【図10】本発明の実施形態における記録素子基板をノズル群から見た拡大平面図である。
【図11】インクジェット記録装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【図12】図11に示すヘッドドライバの概略構成を示すブロック図である。
【図13】本発明の実施形態における記録ヘッドのヒータの駆動タイミングを示すタイミングチャートである。
【図14】本発明の第1の実施形態によって記録媒体上にドットを形成した状態を示す模式図であり、(a)は端部ラスタを小ドットで形成した状態を、(b)は端部ラスタを大ドットで形成した状態を、それぞれ示している。
【図15】本発明の第2の実施形態によって記録媒体上にドットが形成された状態を示す模式図である。
【図16】本発明の第3の実施形態によって記録媒体上にドットが形成された状態を示す模式図である。
【図17】本発明の実施形態において実行される1パス双方向記録を模式的に示す説明図である。
【図18】本発明の実施形態におけるドット置換処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0110】
1 記録ヘッドカートリッジ
2 キャリッジ
8 記録媒体
9 搬送ローラ
25 吐出ヒータ
34 LFモータ
200 コントローラ
201 CPU
203 ROM
205 RAM
210 ホスト装置
212 インターフェース
240 ヘッドドライバ
H1100C1 第1のシアンノズル群
H1100C2 第2のシアンノズル群
H1100M1 第1のマゼンタノズル群
H1100M2 第2のマゼンタノズル群
H1100Y イエローノズル群
L0,L2,L4,L6,L8 偶数ノズル列
L1,L3,L5,L7,L9 奇数ノズル列
EC1,EM1,EY,EM2,EC2 偶数ノズル
OC1,OM1,OY,OM2,OC2 奇数ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定量の小インク滴と前記所定量よりも多量の大インク滴とを吐出可能な記録手段を記録媒体に対して主走査させて前記記録媒体上に記録を行うインクジェット記録装置において、
前記記録手段の主走査によって前記記録媒体上に形成されるバンドを構成する複数のラスタのうち、端部に位置するラスタに吐出されるべき前記小インク滴の吐出予定位置の少なくとも一部に対して前記大インク滴を吐出する制御手段を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
所定量の小インク滴と前記所定量よりも多量の大インク滴とを吐出可能な記録手段を記録媒体に対して主走査させて前記記録媒体上にバンド単位で記録を行うインクジェット記録装置において、
単一のバンドに吐出されるべきインク滴の数をカウントするカウント手段と、
前記単一のバンドの端部に位置するラスタに吐出されるべき前記小インク滴の吐出予定位置の少なくとも一部に対して前記大インク滴を吐出する制御手段と、を備え、
前記カウント手段により得られたカウント値に基づいて、前記制御手段による吐出制御が実行されるか否かが決定されることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項3】
所定量の小インク滴と前記所定量よりも多量の大インク滴とを吐出可能な記録手段を記録媒体に対して主走査させて前記記録媒体上にバンド単位で記録を行うインクジェット記録装置において、
単一のバンドに吐出されるべきインク滴の数をカウントするカウント手段と、
前記カウント手段により得られたカウント値が予め定められた閾値を超えているかを判定する判定手段と、
前記カウント値が閾値を超えていると判定された場合に、前記単一のバンドの端部に位置するラスタに吐出されるべき前記小インク滴の吐出予定位置の少なくとも一部に対して前記大インク滴を吐出する制御手段と、を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記端部に位置するラスタは、前記バンドの最端部に位置するラスタであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記端部に位置するラスタは、前記バンドの最端部に位置するラスタとこのラスタの近傍に位置するラスタであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
所定量のインク滴を吐出する第1ノズルを所定の方向に配列してなる第1ノズル列および前記所定量よりも多量のインク滴を吐出する第2ノズルを前記所定の方向に配列してなる第2ノズル列を少なくとも有する記録手段を前記所定の方向と交差する方向に走査させながら前記ノズルから記録媒体上にインク滴を吐出させて記録を行うインクジェット記録装置において、
前記第1ノズル列の端部ノズルによるドット形成予定位置の少なくとも一部に対し、前記第1ノズル列の端部ノズルからインク滴を吐出させる代わりに、前記第2ノズル列の端部ノズルから液滴を吐出させる制御手段を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項7】
所定量のインク滴を吐出する第1ノズルを所定の方向に配列してなる第1ノズル列および前記所定量よりも多量のインク滴を吐出する第2ノズルを前記所定の方向に配列してなる第2ノズル列を少なくとも有する記録手段を前記所定の方向と交差する方向に主走査させながら前記ノズルから記録媒体上にインク滴を吐出させて記録を行うインクジェット記録装置において、
前記記録ヘッドの単一の主走査における記録ドット数が予め定められた閾値を超えるか否かを判断する判断手段と、
前記記録ドット数が前記閾値を超える場合、前記第1ノズル列の端部ノズルによるドット形成予定位置の少なくとも一部に対し、前記第1ノズル列の端部ノズルから液滴を吐出させる代わりに、前記第2ノズル列の端部ノズルから液滴を吐出させる制御手段と、を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記各ノズル列の端部ノズルは、各ノズル列の最も外側に位置する最端部ノズルであることを特徴とする請求項6または7に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記各ノズル列の端部ノズルは、各ノズル列の最も外側に位置する最端部ノズルと、その近傍に位置する少なくとも一つのノズルとからなることを特徴とする請求項6または7に記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記第1ノズル列内の端部ノズルによるインク滴の吐出を停止させ、且つ前記第1ノズル列内の端部ノズルによるドット形成予定位置の全てに対し、前記第2ノズル列内の端部ノズルから液滴をさせるよう制御することを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項11】
前記判断手段は、前記記録ヘッドの第1ノズル列の主走査における記録ドット数が前記閾値を超えるか否かを判断し、
前記制御手段は、前記第1ノズル列による記録ドット数が前記閾値を超える場合に、前記第1ノズル列内の端部ノズルによる液滴の吐出を停止させると共に、前記第1ノズル列内の端部ノズルによるドット形成予定位置の少なくとも一部に対し、前記第2ノズル列内の端部ノズルから液滴を吐出させることを特徴とする請求項7に記載のインクジェット記録装置。
【請求項12】
前記制御手段は、前記第1ノズル列内の複数の端部ノズルのうち、より外側に位置する端部ノズルのインク滴の吐出数をより低減させ、且つ前記第2ノズル列内の複数の端部ノズルのうち、より外側に位置する端部ノズルのインク滴の吐出数をより増加させることを特徴とする請求項1ないし7に記載のインクジェット記録装置。
【請求項13】
所定量の小インク滴と前記所定量よりも多量の大インク滴とを吐出可能な記録手段を記録媒体に対して主走査させて前記記録媒体上に記録を行うインクジェット記録方法において、
前記記録手段の主走査によって前記記録媒体上に形成されるバンドを構成する複数のラスタのうち、端部に位置するラスタに吐出されるべき前記小インク滴の吐出予定位置の少なくとも一部に対して前記大インク滴を吐出する工程を備えることを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項14】
所定量の小インク滴と前記所定量よりも多量の大インク滴とを吐出可能な記録手段を記録媒体に対して主走査させて前記記録媒体上にバンド単位で記録を行うインクジェット記録方法において、
単一のバンドに吐出されるべきインク滴の数をカウントする工程と、
前記カウント手段により得られたカウント値が予め定められた閾値を超えているかを判定する工程と、
前記カウント値が閾値を超えていると判定された場合に、前記単一のバンドの端部に位置するラスタに吐出されるべき前記小インク滴の吐出予定位置の少なくとも一部に対して前記大インク滴を吐出する工程と、を備えることを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項15】
所定量のインク滴を吐出する第1ノズルを配列した第1ノズル列と、前記所定量より多量のインク滴を吐出する第2ノズルを配列した第2ノズル列とを少なくとも有する記録手段を前記ノズルの配列方向と交差する方向に主走査させながら前記ノズルから記録媒体上にインク滴を吐出させて記録を行うインクジェット記録方法において、
前記記録ヘッドの1回の主走査における記録ドット数が予め定められた閾値を超えるか否かを判断する工程と、
前記記録ドット数が閾値を超える場合、前記第1ノズル列の端部ノズルによるドット形成予定位置の少なくとも一部に対し、前記第1ノズル列から液滴を吐出させる代わりに、前記第2ノズル列の端部ノズルから液滴を吐出させる工程と、を備えることを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項16】
所定量のインク滴を吐出する第1ノズルを配列した第1ノズル列と、前記所定量より多量のインク滴を吐出する第2ノズルを配列した第2ノズル列とを少なくとも有する記録手段を前記ノズルの配列方向と交差する方向に走査させながら前記ノズルから記録媒体上にインク滴を吐出させて記録を行うインクジェット記録方法において、
前記第1ノズル列の1回の主走査における記録ドット数が予め定められた閾値を超えるか否かを判断する工程と、
前記第1ノズル列の記録ドット数が閾値を超える場合、前記第1ノズル列の端部ノズルによるドット形成予定位置の少なくとも一部に対し、前記第1ノズル列から液滴を吐出させる代わりに、前記第2ノズル列の端部ノズルから液滴を吐出させる工程と、を備えることを特徴とするインクジェット記録方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2006−192891(P2006−192891A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−359509(P2005−359509)
【出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.バブルジェット
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】