説明

インクジェット記録装置およびインクジェット記録方法

【課題】インクジェット記録装置において、インクを交換したことによる、交換するインクと交換されるインクが完全に切り替わるまでの経時的な記録特性の変化に対応して、記録ヘッドの駆動制御を適切に行う。
【解決手段】交換によって新たに使用されるインクの保存されていた期間が1年以上の場合は、インク供給量が2ccごとに吐出性能検査が行われるように設定する。また、保存期間が6ヶ月以上1年未満、6ヶ月未満の場合は、インク供給量がそれぞれ3cc、5ccごとに吐出性能検査が行われるように設定する。そして、各検査ごとに検出される吐出性能に応じて記録ヘッドの駆動パラメータを設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置およびインクジェット記録方法に関し、詳しくは、記録ヘッドが吐出するインクの状態ないし性質の変化に起因した記録特性の変動を抑制する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置で記録に用いるインクは、使用されない間にその状態もしくは性質の変化を生じることがあり、その結果として、記録濃度などの記録特性が変動することがある。例えば、記録に使用されない間にインクにおける溶媒の蒸発によって染料や顔料など色材の濃度が変化してしまい、記録される画像に濃度むらを生じることがある。また、特に、色材として顔料を用いたインクでは、長期間インクを使用しないことによって顔料の分散安定性や溶解安定性が低下してしまい、インクの状態が初期の状態から変化して吐出速度が変化することがある。そして、その結果として吐出量の変化に応じて記録濃度が変化することになる。
【0003】
このようなインクの状態もしくは性質の変化に対処する技術として、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1には、インクが記録ヘッドにおける吐出に使用されていない時間からインクの色材濃度を予測し、この予測に基づいて得られる色材濃度の変化に応じて記録ヘッドの駆動制御を行い吐出量を変更して記録濃度を一定にすることが記載されている。これにより、インクの色材濃度の変化にかかわらず濃度むらが低減された記録を行うことができる。
【0004】
また、インクの長期間の保存によって顔料の分散安定性や溶解安定性が低下することによるインクの状態もしくは性質の変化に対処する技術が、特許文献2に記載されている。特許文献2では、インクの製造日から使用するまでに経過した時間から、時間経過によるインクの状態変化を予測し、この予測した状態変化に基づいて記録ヘッドの駆動パルスを制御して吐出速度を安定化している。これにより、分散安定性や溶解安定性などのインクの状態変化に起因した記録濃度の変動を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−79709号公報
【特許文献2】特開2008−62514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に開示される技術では、上記のようにインクの状態が変化してしまったインクを交換して新たに用いるときに、それまで使用していたインクの状態と差があることに起因して記録特性が変化するという問題を解決できない。すなわち、上述のように長期間保存されていたインクが、インクの交換によってそれまで記録装置で用いられていたインクに切り替わるまでの記録動作では、インクが記録ヘッドに供給される量に応じて、交換するインク交換されるインクが混在する割合が変化する。そして、その混在する割合に応じて記録特性が経時的に変化することがある。
【0007】
例えば、インクタンクと記録ヘッドが離間していて、チューブなどの比較的長い供給部材を介して記録ヘッドへインクを供給するような構成では、インクタンクから記録ヘッドまでの供給路が長い。このため、インクタンクからインクが記録ヘッドに到達するまで長い時間を要する。この結果、インクを交換する場合に、交換するインクと交換されるインクが入れ替わるのに比較的長い時間を要することになる。そして、この期間に記録を行うときには、記録ヘッドに供給されるインクにおいて、上記のように交換するインクと交換されるインクが混在する割合が変化し、それに応じて記録特性が経時的に変化する。なお、このような問題は、上記とは逆の場合、つまり、使用までに長期間を要してインクの状態ないし性質が変化してしまったインクを使用していてその残量が少なくなることによって交換される場合にも当てはまることはもちろんである。すなわち、インクの状態ないし性質が変化してしまったインクを交換によって状態がそれほど変化していないインクに切り替えられる場合にも上述の問題が当てはまる。要するに、インクの交換による交換するインクと交換されるインクの状態ないし性質に大きな差があるときに生じうる問題である。
【0008】
本発明の目的は、インクを交換したことによって交換前後のインクが完全に切り替わるまでの経時的な記録特性の変化に対応して、記録ヘッドの駆動制御を適切に行うことが可能なインクジェット記録装置およびインクジェット記録方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのために本発明では、交換可能に用いられるインクを貯留したインクタンクおよびインクを吐出するためのエネルギーを発生するエネルギー発生素子を備えた記録ヘッドを用い、前記インクタンクから供給路を介して供給されるインクを前記記録ヘッドから吐出して記録を行うインクジェット記録装置であって、前記記録ヘッドから吐出されるインクによる記録特性を検査する記録特性検査手段と、用いるインクを交換するときの、交換するインクおよび交換されるインクそれぞれの、所定の時点からインクジェット記録装置で用いられるまでの時間の情報を取得する不使用時間情報取得手段と、前記用いるインクを交換した時点から、インクタンクから供給路を介して記録ヘッドに供給されるインク供給量を検知する検知手段と、前記不使用時間取得手段によって取得された、交換するインクおよび交換されるインクそれぞれの時間情報に基づいて、前記記録特性検査手段による検査の実施頻度を設定する実施頻度設定手段と、前記実施頻度設定手段によって設定された頻度で前記記録特性検査手段によって実施される記録特性の検査結果に基づき、記録ヘッドのエネルギー発生素子が発生するエネルギーを制御するエネルギー制御手段と、を具えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上の構成によれば、インクを交換したことによる、交換するインクと交換されるインクが完全に切り替わるまでの経時的な記録特性の変化に対応して、記録ヘッドの駆動制御を適切に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置(以下、単に、記録装置ともいう)の概略構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示す記録装置の制御部の構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示した記録装置におけるインク供給の構成を示す模式図である。
【図4】図3に示す記録ヘッドを模式的に示す斜視図である。
【図5】(a)〜(c)は、本発明の一実施形態における吐出性能検査を説明する図であり、光学的にインク吐出性能を検査する機構を示している。
【図6】(a)は、MPU102が吐出性能検査工程の実施頻度を決定する際の決定処理の手順を示すフローチャートであり、(b)は、吐出性能検査に基づく記録ヘッドの駆動パラメータ設定処理を示すフローチャートである。
【図7】(a)は、インク交換後のインク供給量と吐出性能の変化の関係を示す図であり、(b)は、吐出性能検査に基づく記録ヘッドの駆動制御の効果を示す図である。
【図8】(a)および(b)は、インクタンク交換後の吐出性能検査の実施頻度を定めるためのテーブルの二例を示す図である。
【図9】本発明の一実施形態にかかる記録ヘッドの駆動パルス幅を定めるためのテーブルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置(以下、単に、記録装置ともいう)の概略構成を示す斜視図である。本実施形態の記録装置は、いわゆるシリアルスキャン型の記録装置であり、記録媒体の搬送方向(副走査方向)に対して交差する方向(主走査方向)に記録ヘッドを走査させて画像を記録する。
【0014】
記録装置10において、給紙モータ5の駆動力がギヤを介して伝達されることによって回転する給紙ローラ6によって記録媒体が搬送される。また、キャリッジモータ3の駆動力によってキャリッジ2を記録媒体の搬送方向とは交差する(略直交する)方向に移動させながら、記録ヘッドからインクを吐出することにより一定のバンド幅で記録を行う。そして、記録したバンド幅分だけ記録媒体を搬送し、さらに次のバンド幅の記録を行う。このような記録ヘッドによる走査と記録媒体の搬送とを繰り返すことにより、記録媒体全体にわたる記録を行うことができる。なお、本実施形態では、キャリッジモータ3からキャリッジ2への駆動力の伝達にキャリッジベルト4を用いている。この駆動伝達構成としては、キャリッジベルト4の代わりにリードスクリュー等の他の構成を用いてもよい。
【0015】
記録媒体積載部から給紙された記録媒体は、給紙ローラ6と圧力ローラ7によって挟持されて搬送されることにより記録部に導かれる。記録を行っていない休止状態にある記録ヘッドは、記録ヘッドの吐出口(以下、ノズルともいう)が形成された面(吐出口面)がキャップで当接するように覆われる(キャッピング)。このキャッピングにより、吐出口を外気より遮断することができ、吐出口の乾燥を防止することができる。ホスト装置から画像データが送られて来て本記録装置が記録指示を受信したときには、キャッピングモータ1を駆動して吐出口面からキャップを離間させ、キャリッジ2の主走査方向への移動ができるようにする。記録ヘッドの一記録走査分の記録データがプリントバッファに蓄積されると、キャリッジモータ3によりキャリッジ2を移動させて記録を行う。
【0016】
なお、マルチパス記録を行う場合は、記録ヘッドによる走査後に、記録したバンド幅よりも少ない搬送量だけ記録媒体の搬送を行う。すなわち、記録ヘッドの1回の走査で記録可能な領域に対して、記録ヘッドを複数回走査させて記録を完成させる。これにより、ノズル毎の吐出量のばらつきに起因する濃度むらを低減した高品位な画像を記録することができる。
【0017】
本実施形態で用いる記録ヘッドから吐出されるインクに用いられる水溶性有機溶剤としては、公知のインクに使用されているものであれば用いることができる。
【0018】
図2は、図1に示す記録装置の制御部の構成を示すブロック図である。図2において、プログラマブル・ベリフェラルインタフェース(以下、PPIという)101は、ホストコンピュータ(不図示、以下ホストという)から送られてくる指令信号(コマンド)や記録情報信号を受信してMPU102に転送する。さらに、PPI101には、コンソール106からの制御信号や指示信号、及び、キャリッジ2がホーム位置にあることを検出するホーム位置センサ107からの信号が入力される。MPU102は、ROM105(メモリ)に記憶された制御プログラムに従って記録装置10の各部を制御する。RAM103(メモリ)は、ホストコンピュータから受信した受信信号を貯えたり、MPU102のワークエリアとして使用されたり、記録に関する各種データを一時的に記憶する。
【0019】
ROM104には、フォントを記録するためのコード情報に対応した文字や記号等のパターン情報が格納されており、入力されたコード情報に対応した各種パターン情報を出力する。プリントバッファ121には、ROM104から読み出されたパターンデータやホストから送信された記録情報を展開して得られたビットマップデータが格納される。このプリントバッファ121は、1回の記録ヘッドの記録走査に必要なビットマップデータを格納するだけの容量は少なくともある。ROM105には、MPU102が実行する処理プログラムが格納されている。これらの各部は、アドレスバス117およびデータバス118を介して、MPU102により制御される。
【0020】
キャリッジモータ3は、記録ヘッド112を搭載したキャリッジ2を移動させて往復走査させるための駆動力を発生する。給紙モータ5は、記録媒体を搬送するための駆動力を発生する。キャッピングモータ1は、記録ヘッド112の吐出口面にキャップ部材を当接・離間する際や、吐出口面に付着したインクをワイパにより拭き取るワイピング動作の際に駆動される。シートセンサ109は、記録媒体の有無を検知し、本実施形態においては、記録ヘッド112による記録可能位置まで記録媒体が搬送されたか否かを検知している。
【0021】
吐出性能検査用センサ122は、記録ヘッドから吐出されたインク滴の有無を検知する。そして、MPU102は、図6(a)および(b)にてその詳細が後述されるように、この吐出性能検査用センサによる検査を実施するタイミングを設定する処理およびその検査に基づく記録ヘッドの駆動パラメータの設定処理を実行する。
【0022】
なお、キャッピングモータ1、キャリッジモータ3、給紙モータ5は、それぞれモータドライバ114〜116により駆動される。また、コンソール106には、キーボードスイッチ及び表示ランプなどが設けられている。さらに、ホーム位置センサ107はキャリッジ2のホーム位置近傍に設けられ、記録ヘッド112を搭載したキャリッジ2がホーム位置に到達したことを検知する。
【0023】
本実施形態において、記録ヘッド112は、インクに熱エネルギーを与えて膜沸騰による状態変化を生起させてインク滴を吐出するサーマル方式のインクジェット記録ヘッドである。記録ヘッド112のヒータは、記録信号(記録データ)に基づいてヘッドドライバにより駆動される。
【0024】
記録装置はPPI101を介してホストコンピュータやカメラ、スキャナーなどの外部装置に接続している。MPU102は、外部装置から送られてくるコマンドや記録情報信号と、ROM106に格納されている制御プログラムと、RAM106内に格納された記録情報に基づいて記録動作を制御する。また、各部に対する電力は電源部120により供給され、電源部120は駆動電源装置としてACアダプタと電池を有している。
【0025】
図3は、図1に示した記録装置におけるインク供給の構成を示す模式図である。図3に示すように、本実施形態では、ブラックインク(Bk)、シアンインク(Cyan)、マゼンタインク(Magenta)、イエロインク(Yellow)の4色のインクを用いる。これらのインクはそれぞれ顔料を色材として用いたものである。インクは、それぞれのインクを収容したインクタンク39からチューブ45と、キャリッジ2の移動範囲の近傍に設けられたジョイント46と、を介して記録ヘッド112に供給される。また、キャリッジ2には供給されるインクを一時的に貯留するサブタンク(不図示)が4色のインクごとに搭載されている。インクバッファ41は、供給経路中(主にタンク内)の空気が膨張することによってインクタンク内からあふれ出るインクを一時的に保持するものである。
【0026】
本実施形態では、装置本体の所定の位置に装着されたメインタンク39から上記のチューブ45などを介してキャリッジ2上のサブタンクに供給し、それぞれのサブタンクから記録ヘッドにインクを供給する。これにより、キャリッジ2に搭載するサブタンクを小型化することができる。これにより、キャリッジ移動の高速化を図る上でモータなどの駆動機構の小型軽量化が可能となる。
【0027】
インクタンク39は、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)等の樹脂によりインジェクションブロー等により成型され、超音波溶着、熱溶着、接着、勘合などの技術を用いて組み立てが行われる。インクタンク内部は外装がそのままインクチャンバーといて機能する形式のものや内部にインクを充填した袋を持つもの、また内部に多孔質体を挿入してインク保持をさせ同時に負圧を発生させるもの等がある。また、負圧機構をインクタンクに持たせる場合、インクタンク内部の袋部分を袋内部または外部に設けられたばね機構等によって拡大方向に支持することによって負圧を発生させるようしてもよい。
【0028】
また、インクタンク39には各種情報を保持する記憶素子209が設けられており、図6(a)にて後述されるように、MPU102は、この記憶素子からそのインクタンクに収納されるインクの製造日時情報やインク使用量などを読み出すことができる。
【0029】
図4は、図3に示す記録ヘッドを模式的に示す斜視図である。図4に示すように、記録ヘッド112は、ブラックインクを吐出する複数のノズル15を配列したブラックヘッド14を備えている。また、記録ヘッド112は、シアンインク、マゼンタインク、イエロインクを夫々吐出するノズル16、17、18を夫々配列したシアンヘッド11、マゼンタヘッド12、イエロヘッド13を備えている。
【0030】
ブラックヘッド14には、1cmあたり約245ノズルの密度で640個のノズルが配列されており、シアンヘッド11、マゼンタヘッド12、イエロヘッド13には夫々、1cmあたり約490ノズルの密度で1280個のノズルが配列されている。4つの記録ヘッド11〜14に対してそれぞれ対応する色のインクが供給口23を介して供給される。
【0031】
以上説明した本実施形態の記録装置は、インクの色材に関する状態ないし性質の変化を検出ための吐出性能検査を行う。図5(a)〜(c)は、本実施形態における吐出性能検査を説明する図であり、光学的にインク吐出性能を検査する機構を示している。
【0032】
本実施形態では、インクの吐出状態を検出するために発光素子58と受光素子59を含む光学式センサ(図2に示すセンサ122に対応)を用いる。図5(a)に示すように、LEDなどの発光素子58は光を照射し、発光素子58に対向して設けられたフォトダイオードなどの受光素子59は発光素子58照射した光を受光する。発光素子58、受光素子59は、記録ヘッド112の幅よりも広い幅で配置され、4つの記録ヘッド11〜14を挟むように配置されている。本実施形態では、発光素子が照射する光の中心(光軸)60と、複数のノズルが配列されたノズル列の並びが略平行になるよう発光、受光素子58、59が配置されている。なお、記録ヘッド11〜14の吐出口から吐出されるインク滴全てが、発光素子と受光素子からなる光学式センサにおける検出領域におさまらないときには、光学センサの検出範囲まで記録ヘッドを移動させ、検出可能な記録ヘッドからインク滴を吐出すればよい。そして、1つの記録ヘッドについて吐出状態の検出動作が終了すると、記録ヘッド112を所定量移動して、次の記録ヘッドに関して吐出状態の検出動作を行う。なお、ノズル列の並びに対して光軸60が斜めに交差するように発光、受光素子58、59を配置しても良い。このような構成では、記録ヘッドを移動させながらインク滴を吐出することでインクの吐出状態を検出することができる。また、インクの吐出状態を検出するために吐出されたインク滴61は、図5(b)のように廃インク65としてインク受け62で受け止められ、インク排出口64から排出されて廃インク吸収体(不図示)に導かれ、吸収される。なお、記録装置の構造的に廃インク吸収体等の吸収手段に吐出されたインクを吸収させることが困難な場合には適当な容積を持つインク溜め容器等に廃インクを回収してもよい。
【0033】
光学式センサの検出範囲に対応する位置に記録ヘッドのノズルが位置し、ノズルから正常にインク滴が吐出されたときは、図5(c)に示すように、記録ヘッド11〜14夫々から吐出されたインク滴61が光軸60を遮る。その結果、受光素子59が受光する光量が低下し、受光素子59からの出力信号レベルは低下する。これにより、MPU102はインクの吐出有無を検出できる。
【0034】
本実施形態では、吐出性能検査工程として、以下のような手順にて吐出性能を検査する。インク滴が記録ヘッドから吐出されてから光学式センサによって吐出を検出するまでの遅延時間TをMPU201によって検知する。そして、その検知した時間と吐出口から光学式センサの光軸60までの距離Lから、インク滴の平均飛翔速度v(吐出速度ともいう)を以下の式から算出する。
【0035】
v=L(mm)/T(msec)
前述したように、長期保管した顔料インクの分散安定性や溶解安定性が低下すると、吐出速度が低下しそれに伴って吐出量も変化する。その結果、記録濃度が変化して画像品位が低下する。そこで、本実施形態は、ヘッドドライバを介して記録ヘッド112へ印加する駆動パルスのうち、吐出速度が高速化するような駆動パルスを選択し、吐出速度の低下を抑制するよう駆動制御を行う。
【0036】
図6(a)は、MPU102が吐出性能検査工程の実施頻度を決定する際の決定処理の手順を示すフローチャートである。また、図6(b)は、吐出性能検査に基づく記録ヘッドの駆動パラメータ設定処理を示すフローチャートである。
【0037】
MPU102は、インクタンクが交換されたことを検知すると、各記録ジョブの開始時に、交換されたインクタンクについて、図6(a)に示す吐出性能検査工程実施頻度決定処理を起動する。先ず、ステップS601で、交換されたインクタンクの記憶素子からのそのインクタンクの製造年月日情報(あるいは充填タイプのインクタンクの場合は充填された日時の情報)を読み出す。そして、MPU102が認識している現在時刻と比較し(S602)、そのインクタンクが保存されていた期間、つまり使用されていなかった期間を算出する(S603)。
【0038】
一方で、MPU102は、インクタンク記憶素子から、そのインクタンクが装着されてからの総吐出ドット数(S604)とクリーニング実行回数を読み出す(S605)。この総吐出ドット数は、記録ヘッドを駆動してインクを吐出するごとにその記録ヘッドからの吐出回数をカウントするとともにそれまでの累計値を求め、それを対応するインク色のインクタンクの記憶素子にカウント値を書き込んだものである。また、クリーニング実行回数は、記録ヘッドに対してキャッピングをした状態で行う所定量のインク吸引による吐出回復処理の回数をカウントし、同様に対応するインク色のインクタンクの記憶素子にカウント値を書き込んだものである。なお、いわゆる予備吐出による回復処理の量は、上述の総吐出ドット数に含められる。以上の読み出した総吐出ドット数とクリーニング実行回数に基づいて、そのインクタンクから記録ヘッドに供給されたインク供給量aを算出する(S606)。そして、ステップS607で、算出したインク供給量aが閾値Nccより多く、閾値Mccより少ないか否かを判断する。
【0039】
ここで、閾値Mcc以上の場合は、チューブから記録ヘッド112に至るまでのインクが総て交換後の新たなインクに入れ替わっていると判断し、新たに吐出性能検査工程の実行頻度を変更する必要性がないため、本処理を終了する。同様に、閾値Ncc以下と判断した場合は、交換後の新たなインクが交換前のインクと混在したものが記録ヘッド112まで未だ到達していないと判断し、実行頻度を変更せずに本処理を終了する。
【0040】
一方、算出したインク供給量aがNccより多く、かつMccより少ないと判断したときは、交換前のインクと交換後のインクとが混在した状態で記録ヘッドに供給される状態であるため、その混在したインクによって吐出性能が変化しているおそれがある。そこで、図8にて後述されるように、ステップS603で求めたインクの保存期間と、ステップS606で算出したインク供給量とに基づいて、ROM105に格納されている吐出性能検査の実行頻度テーブルを参照し、実行頻度を決定する(S608)。これにより、吐出性能の変化率に応じた適切な検査の実行タイミングで吐出性能の検査を行うことができ、結果として、記録ヘッドの駆動パラメータの制御による記録特性の安定化を良好に行うことが可能となる。なお、交換されたインクタンクが複数あるときは、上述の処理を繰り返すことにより交換された総てのインクタンクについて実施頻度の決定を行う。以上の工程を経て吐出性能検査工程の実施頻度が決定されると、本処理を終了する。
【0041】
図6(b)は、図6(a)を参照して上述した吐出性能検査の実施頻度決定処理によって決定された頻度に従って実施される吐出性能検査およびそれに基づく記録ヘッドの駆動パルス設定の処理を示すフローチャートである。
【0042】
上述のように設定された頻度で本処理が起動され、先ず、ステップS609で、図5(a)〜(c)で上述した吐出性能検査を実施し、吐出性能として吐出速度を求める。次に、ステップ610で、図9にて後述されるように、テーブルを参照して記録ヘッドの駆動パラメータとして駆動パルスのパルス幅を設定する。
【0043】
以下では、以上説明した吐出性能検査の実施頻度を決定する処理の詳細、およびそれに応じた吐出性能検査に基づく駆動パルス設定の詳細に関する実施形態を説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1の実施形態では、吐出性能検査工程の実施頻度として、通常時の実施頻度と、インクタンク交換後新しいインクに切り替わるまでの間の実施頻度と、をインクタンク交換後のインク供給量に応じて切り替えるものである。
【0044】
図7(a)は、インクタンクの保存期間(不使用期間)が1ヵ月のインクのインクタンクを、保存期間がそれぞれ6ヶ月、1年、3年のインクのインクタンクに交換してからのインク供給量と、吐出性能検査で検出される吐出速度の関係を示した図である。ここで、インク供給量とは、図6(a)のステップS606で説明したように求められるものであり、また、図7(a)に示す関係は予め実験的に求めたものである。
【0045】
図7(a)に示すように、インク供給量が5ccまでは交換後のインクが記録ヘッドまで到達していないため、吐出速度に変化は生じない。その後インク供給量が増えると、交換後のインクが交換前のインクと混在した状態で記録ヘッドまで到達し、吐出速度が低下していく。インク供給量が15cc付近からはチューブから記録ヘッドに至るまでの経路の大半が交換後のインクに置換されて来るため吐出速度の低下が抑制されはじめ、20ccを超えたところで交換後のインクに完全に置換されて吐出速度が安定する。そして、保存期間が長いほど上述した吐出速度の低下率が大きくなる。このように、保存期間が交換されるインク(1ヶ月)より長い(6ヶ月、1年、3年)インクは、分散性の低下などの性質の変化によって吐出速度が低下する。なお、交換されるインク相互の保存期間の長短が逆の場合は、図7(a)に示すのとは逆の関係、つまり、吐出速度が増すように変化する。このような場合に対処して、図6(a)に示すステップS608の処理では、交換されるインクの保存期間と、ステップS603で求めた新たなインクの保存期間の長短を求め、それに応じたテーブルを用いる。
【0046】
図7(a)に示す特性から、本実施形態では、インクタンク交換後の吐出性能検査工程の実施頻度として図8(a)のような実施頻度を設定する。すなわち、図6(a)のステップS608では、図8(a)に示すテーブルを参照して吐出性能検査の頻度を設定する。具体的には、交換によって新たに使用されるインク(インクタンク)の保存期間が1年以上の場合は、上記インク供給量が2ccごとに吐出性能検査が行われるように設定される。また、保存期間が6ヶ月以上1年未満、6ヶ月未満の場合は、インク供給量がそれぞれ3cc、5ccごとに吐出性能検査が行われるように設定される。なお、図6(a)のステップS607の判断において、閾値Nは5cc、閾値Mは20ccであり、インクタンク交換後の図6(a)の処理で定められる実施頻度以外の、通常時の吐出性能検査工程の実施頻度はインク供給量30cc毎である。
【0047】
図8(a)のテーブルによれば、保存期間が短く、吐出性能劣化が比較的小さい6ヶ月保存のインクタンクに交換した後の吐出性能検査工程の実施頻度はインク供給量5cc毎とされる。また、保存期間が長く、吐出性能劣化が著しい3年保存のインクタンクに交換した後の吐出性能検査工程の実施頻度はインク供給量2cc毎とされる。
【0048】
以上のように定められた検査頻度で、交換したインクを吐出する記録ヘッド(本実施形態では図4に示すインク色ごとの吐出口列)の吐出性能の検査を行う(図6(b)のS609)。そして、この検査の結果に基づいて図9に示すテーブルを参照して対象の記録ヘッドにおけるノズルごとにヒータに供給する駆動パルスのパルス幅を設定する。具体的には、前回の検査のときの吐出速度と今回の検査で得られる吐出速度の差Δvを求め、この差Δvの絶対値で図9に示すテーブルを参照してパルス幅を設定する。図9に示すように、吐出速度の差Δvが大きくなるほどパルス幅を長くする制御を行う。これにより、吐出速度の低下をパルス幅を大きくすることによって補うことができる。なお、交換されるインク相互の保存期間の長短が逆の場合は、図9に示すのとは逆の関係、つまり、吐出速度の差Δvが大きくなるほどパルス幅を短くするテーブルを用いる。
【0049】
図7(b)は、上述したように、図8(a)で示した吐出性能検査の実施頻度にて検査を実施し、その結果から記録ヘッドのヒータに供給する駆動パルスの幅を変更した場合の吐出速度とインク供給量の関係を示した図である。上述したように、顔料インクは長期間の保管や、過剰な高温を経験するような輸送等により、溶解安定性や分散安定性が下がることがある。安定性がどの程度のものであるかはインク種により様々であるが、速度変化に応じた駆動テーブルを用いることにより、インクの保存期間によらず、吐出速度を略一定とすることができ、記録濃度などの記録特性を安定化することができる。具体的には、図7(b)に示すとおり、吐出速度の変化幅を全体で1.5m/s以内に抑制することができ、インクタンク交換による吐出性能の劣化を補うことができる。
【0050】
以上説明した本実施形態の検査頻度の設定によれば、長期保管によるインクの分散安定性や溶解安定性の低下による吐出性能の低下の程度に応じた最適なタイミングで吐出性能検査工程を実施でき、吐出性能が劣化する状態をタイムリーに把握できる。また、インクタンク交換前後のインクが混在しているような条件を除けば、吐出性能は比較的安定している。このため、その期間をインク供給量の情報から把握し、むやみに吐出性能検査工程を増やさずにすむため、トータルスループットを低下させることがないという利点がある。
【0051】
なお、図8(a)に示すように、本実施形態は、交換されるインクの保存期間にかかわらず交換によって新たに用いられるインク(タンク)の保存期間だけに応じて検査の頻度を定めるものである。すなわち、交換されるインクの保存期間は、上述の例の場合1ヶ月であるが、この交換されるインクの保存期間にかかわらずこの期間より新たに用いられるインクの保存期間が長い場合は、一律に図8(a)に示すテーブルを用いる。例えば、交換されるインクの保存期間が1ヶ月でなく5ヶ月である場合は、図7(a)に示すような吐出速度の低下の程度も異なる。しかし、本実施形態は、図9に示すように、最終的に記録ヘッドの駆動パルスの幅を定める場合に、連続する検査の間における吐出速度の変化量に応じてパルス幅を定める。このことから、交換による交換するインクと交換されるインク相互の保存期間の差を基準とするのではなく、長いほうの保存期間に応じて検査の頻度を定めても、最終的に設定されるパルス幅は、吐出速度を一定化するのに適切なものとなる。
【0052】
また、本実施形態では、吐出性能検査を、記録ヘッドから吐出されるインク滴の吐出速度を検出する処理としたが、使用するインクの吐出性能を把握できる処理であればどのような処理であってもよい。例えばインク滴の吐出に必要な最小エネルギーを検出したり、吐出量を検出したりする処理でも本発明を適用することができる。
【0053】
また、本実施形態では、吐出性能検査の結果に応じて記録ヘッドに印加する駆動パルスの幅を制御するものとしたが、駆動電圧や、駆動パルスとしてダブルパルス幅を制御してもよく、吐出速度を安定化できる制御であれば適応は可能である。
【0054】
(第2実施形態)
本発明の第2の実施形態では、上記第1の実施形態1と同様の構成のインクジェット記録装置を用いて、交換後インクタンクの保存期間と、インクの供給量とに応じて、段階的に吐出性能検査工程の実施頻度を変化させる。
【0055】
図8(b)は、本実施形態で用いるインクタンク交換後の吐出性能検査の実施頻度を設定するためのテーブルを示す図である。また、図6(a)のステップS607で用いる、閾値Nは5cc、閾値Mは20ccであり、インクタンク交換後以外の、通常時の吐出性能検査工程の実施頻度はインク供給量30cc毎である。図7(a)に示すとおり、インク供給量が5cc〜10ccの区間においては交換後のインクよりも交換前のインクの混在比率が高いため、吐出速度の低下が軽微である。しかしながら、インク供給量が10ccを超えると交換後のインクの混在比率が高まり、吐出速度の低下が著しくなるため、吐出性能検査の頻度を高めることが望ましい。一方、インク供給量が15ccを超えると記録ヘッドに到達するインクの大半が交換後のインクに入れ替わるため、吐出速度が安定し始め、吐出性能検査の実施頻度を減らすことが可能となる。
【0056】
以上の点から、各保存期間のインクタンクに交換したときの吐出性能検査の実施頻度を、インク供給量に応じて段階的に変化させる。すなわち、図8(b)に示すように、インク供給量が5cc以上10cc未満の場合、保存期間が1年以上のときはインク供給量が2ccごとに吐出性能検査が行われるように設定される。また、保存期間が6ヶ月以上1年未満、6ヶ月未満の場合は、いずれもインク供給量が5ccごとに吐出性能検査が行われるように設定される。インク供給量が多くなって、10cc以上15cc未満の場合、保存期間が1年以上のときはインク供給量が2ccごとに吐出性能検査が行われるように設定される。また、保存期間が6ヶ月以上1年未満、6ヶ月未満の場合は、それぞれインク供給量が3cc、5ccごとに吐出性能検査が行われるように設定される。
【0057】
このような形態によれば、吐出速度の低下レベルに最適な実施頻度を設定でき、吐出速度の低下具合を正確に把握できるばかりでなく、実施頻度をむやみに高めることがないため、スループットの低下を抑制することが可能となる。
【0058】
また、図8(b)に示す吐出性能検査の実施頻度で検査を実施し、その結果から記録ヘッドの駆動パルスの幅を図9に示すテーブルに基づいて変更することにより、インクタンク交換後の吐出速度の変化幅が2.0m/s以内に抑制される。
【0059】
以上の構成により、第1実施形態で示したのと同様に吐出速度の変化幅を抑制しつつ、第1実施形態と比較して吐出性能検査の実施回数を低減でき、画像安定性とスループットの両立を達成することができる。
【0060】
なお、本実施形態においてはインク供給量が5cc毎などに定期的に吐出性能検査工程の実施頻度を変更するものとしたが、インク特性やインクタンクの保存期間に応じて、適宜最適な供給量毎に実施頻度を変更する制御を行えば同様の効果を得ることができる。
【0061】
また、本実施形態ではインクタンクの保管期間に因らず、同じ供給量毎に吐出性能検査の実施頻度を変更するものとしたが、この形態に限られない。例えば、吐出速度変化の小さい保存期間の場合には実施頻度を変更する供給量を多めに設定し、吐出速度変化の大きい保存期間の場合には供給量を少なく設定するなど、保存期間に応じて吐出性能検査工程の実施頻度を変更するインク供給量を設定してもよい。
【0062】
(他の実施形態)
上述の各実施形態は、特に顔料インクにおける顔料の分散性や溶解性の低下に起因した、長期保存インクの状態ないし性質の変化による記録特性の変化に対処したものであるが、本発明の適用はこの形態に限られないことはもちろんである。例えば、インクの色材濃度の変化に起因して記録濃度が変化する場合にも、本発明を適用できる。この場合、例えば、インクの保存期間に応じて交換後の記録濃度を検査する頻度を定め、濃度変化に応じてパルス幅などの駆動パラメータを設定することにより、吐出量を制御して記録濃度を一定にすることができる。
【0063】
以上のとおり、本発明のインクジェット記録装置は、交換可能に用いられるインクを貯留したインクタンクおよびインクを吐出するためのエネルギーを発生するエネルギー発生素子を備えた記録ヘッドを用いる。そして、インクタンクから供給路を介して供給されるインクを前記記録ヘッドから吐出して記録を行う。この記録装置において、記録特性検査部は、記録ヘッドから吐出されるインクによる記録特性を検査する。また、不使用時間情報取得部は、用いるインクを交換するときの、交換するインクおよび交換されるインクそれぞれの、所定の時点からインクジェット記録装置で用いられるまでの時間の情報を取得する。さらに、検知部は、用いるインクを交換した時点から、インクタンクから供給路を介して記録ヘッドに供給されるインク供給量を検知する。実施頻度設定部は、不使用時間取得部によって取得された、交換するインクおよび交換されるインクそれぞれの時間情報に基づいて、記録特性検査部による検査の実施頻度を設定する。そして、エネルギー制御部は、実施頻度設定部によって設定された頻度で記録特性検査部によって実施される記録特性の検査結果に基づき、記録ヘッドのエネルギー発生素子が発生するエネルギーを制御する。
【符号の説明】
【0064】
2 キャリッジ
10 記録装置
11 シアンヘッド
12 マゼンタヘッド
13 イエロヘッド
14 ブラックヘッド
58 発光素子
59 受光素子
60 光軸
101 PPI
102 MPU
103 RAM
104、105 ROM
122 吐出性能検査用光学式センサ
209 インクタンク記憶素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交換可能に用いられるインクを貯留したインクタンクおよびインクを吐出するためのエネルギーを発生するエネルギー発生素子を備えた記録ヘッドを用い、前記インクタンクから供給路を介して供給されるインクを前記記録ヘッドから吐出して記録を行うインクジェット記録装置であって、
前記記録ヘッドから吐出されるインクによる記録特性を検査する記録特性検査手段と、
用いるインクを交換するときの、交換するインクおよび交換されるインクそれぞれの、所定の時点からインクジェット記録装置で用いられるまでの時間の情報を取得する不使用時間情報取得手段と、
前記用いるインクを交換した時点から、インクタンクから供給路を介して記録ヘッドに供給されるインク供給量を検知する検知手段と、
前記不使用時間情報取得手段によって取得された、交換するインクおよび交換されるインクそれぞれの時間情報に基づいて、前記記録特性検査手段による検査の実施頻度を設定する実施頻度設定手段と、
前記実施頻度設定手段によって設定された頻度で前記記録特性検査手段によって実施される記録特性の検査結果に基づき、記録ヘッドのエネルギー発生素子が発生するエネルギーを制御するエネルギー制御手段と、
を具えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記実施頻度設定手段は、前記交換するインクおよび交換されるインクそれぞれの時間情報と、前記検知手段によって検知されるインク供給量と、に基づいて、前記記録特性検査手段による検査の実施頻度を設定することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記実施頻度設定手段は、前記交換するインクおよび交換されるインクそれぞれの時間情報のうち長い方の時間情報に基づいて、前記記録特性検査手段による検査の実施頻度を設定することを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記実施頻度設定手段は、前記交換するインクおよび交換されるインクそれぞれの時間情報のうち長い方の時間情報が長いほど前記記録特性検査手段による検査の実施頻度を高くすることを特徴とする請求項3に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記実施頻度設定手段は、前記インク供給量が所定の閾値を超えるまでは前記検査の実施頻度を変更しないことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記記録特性検査手段が検査する記録特性は、記録ヘッドから吐出されるインクの速度であることを特徴とする、請求項1ないし5のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記エネルギー制御手段は、前記記録特性検査手段がインクの吐出速度の低下を検知した場合は、前記エネルギー発生素子が発生するエネルギーを増すように制御することを特徴とする請求項6に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
交換可能に用いられるインクを貯留したインクタンクおよびインクを吐出するためのエネルギーを発生するエネルギー発生素子を備えた記録ヘッドを用い、前記インクタンクから供給路を介して供給されるインクを前記記録ヘッドから吐出して記録を行うためのインクジェット記録方法であって、
前記記録ヘッドから吐出されるインクによる記録特性を検査する記録特性検査工程と、
用いるインクを交換するときの、交換するインクおよび交換されるインクそれぞれの、所定の時点からインクジェット記録装置で用いられるまでの時間の情報を取得する不使用時間情報取得工程と、
前記用いるインクを交換した時点から、インクタンクから供給路を介して記録ヘッドに供給されるインク供給量を検知する検知工程と、
前記不使用時間情報取得工程によって取得された、交換するインクおよび交換されるインクそれぞれの時間情報に基づいて、前記記録特性検査工程による検査の実施頻度を設定する実施頻度設定工程と、
前記実施頻度設定工程によって設定された頻度で前記記録特性検査工程によって実施される記録特性の検査結果に基づき、記録ヘッドのエネルギー発生素子が発生するエネルギーを制御するエネルギー制御工程と、
を有したことを特徴とするインクジェット記録方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−176590(P2012−176590A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41834(P2011−41834)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】