説明

インクジェット記録装置および記録ヘッドの回復処理方法

【課題】記録ヘッドにおける吐出口の形成面の状況に適確に把握することにより、最適な回復処理を行なうことができるインクジェット記録装置および記録ヘッドの回復処理方法を提供すること。
【解決手段】記録デューティーが高デューティー範囲のときに、記録速度が低くなるほど回復処理の程度を高くすることにより、記録ヘッドにおける吐出口の形成面におけるインクの付着の可能性が高くなるほど、回復処理の程度を高める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを吐出可能な記録ヘッドを用いるインクジェット記録装置、および記録ヘッドの回復処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、種々の画像の出力装置として、記録ヘッドに形成された複数の吐出口からインク(インク滴)を吐出して、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置(インクジェットプリンタ)が広く使用されている。吐出口からインクを吐出させる技術としては、吐出口に連通するインク流路に電気熱変換体(ヒータ)やピエゾ素子などを備えて、それらを駆動する方式が知られている。電気熱変換体を用いた場合には、それに駆動パルスを付与して熱エネルギーを発生させることにより、インク流路内のインクを発泡させ、その発泡エネルギーを利用して吐出口からインクを吐出させることができる。記録データに基づいて記録ヘッドからインクを吐出することにより、記録媒体に画像を記録することができる。以下、このような電気熱変換体やピエゾ素子などの吐出エネルギー発生手段、インク流路、および吐出口を含む構成部分を「ノズル」ともいう。
【0003】
このようなインクジェット記録装置としては、いわゆるシリアルスキャンタイプとフルラインタイプとがある。シリアルスキャンタイプの記録装置は、記録ヘッドが主走査方向に移動しつつインクを吐出する記録動作と、主走査方向と交差する副走査方向に記録媒体を搬送する搬送動作、とを繰り返することにより、記録媒体上に順次画像を記録する。フルラインタイプの記録装置は、記録媒体の幅方向の全域に亘って延在する長尺な記録ヘッドを用い、記録ヘッドからインクを吐出しつつ、記録媒体を長さ方向に連続的に搬送することにより、記録媒体上に連続的に画像を記録する。これらのタイプの記録装置に用いられる記録ヘッドとしては、複数のノズルを集積配備したマルチノズルヘッドがある。フルラインタイプの記録装置用の記録ヘッドとしては、記録媒体の搬送方向と直交する方向に多数のマルチノズルヘッドを配列させたラインヘッドがある。
【0004】
このようなインクジェット記録装置は、一般に求められている要求、つまり高品位かつ高解像度の画像を高速に記録するという要求を満足することができる。また、画像の記録時に記録ヘッドと記録媒体とが接触しないため、非常に安定した画像記録を行うことができる。
【0005】
一方、インクジェット記録装置は、流体であるインクを扱うため、記録ヘッドに流体力学的な種々の不都合が生じるおそれがある。また、環境温度や放置時間等によって、液体であるインクの粘性が変化した場合に、画像の記録に大きな影響を及ぼすおそれがある。また、記録ヘッドのノズルから吐出される1つのインク滴は主滴と副滴(サテライト)とに分離することが知られており、主滴は副滴よりも先に吐出口から離れ、その主滴に続いて副滴が吐出口から離れる。
【0006】
記録ヘッドの駆動周波数は、記録速度が高くなるほど高くなる。その記録速度は、フルラインタイプのインクジェット記録装置においては記録媒体の搬送速度に対応する。また、記録ヘッドから実際に吐出されるインクの周期は、記録デューティーに応じて変換する。記録デューティーは単位記録領域当たりのインクの吐出量に対応し、その記録デューティーが高くなるほど、インクの吐出周期は短くなる。
【0007】
また、記録ヘッドの吐出口が形成されている吐出口面にインクが付着した場合には、インクの不吐出を招くおそれがあるため、通常、記録ヘッドのインクの吐出状態を良好に維持するための回復処理が行なわれている。その回復処理としては、吐出口面をワイピングするワイピング処理、および画像の記録に寄与しないインクを吐出口から吐出させる予備吐出などがある。
【0008】
従来において、このような回復処理の程度、例えば、予備吐出におけるインクの吐出数などは、単位記録領域に対するインクの付与量に対応する記録デューティー、または回復処理を実施する時点までの記録動作に要した記録時間に応じて、制御されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、記録デューティーや記録時間に応じて回復処理を制御するだけでは、記録ヘッドの状況に応じた最適な回復処理を実施することが難しく、回復処理の実施が少な過ぎた場合にはインクの不吐出を招くおそれがある。また、回復処理を必要以上に実施した場合には、インクの無駄やスループットの低下を招くおそれがある。例えば、予備吐出におけるインクの吐出数が多過ぎた場合には、必要以上にインクが吐出されて無駄に消費される。また、一般に回復処理の程度が高いワイピング動作は、その実施に要する時間が比較的に長いために、そのワイピング動作を必要以上に実施した場合には、スループットの大きな低下およびワイパーの劣化を招くおそれがある。また、フルラインタイプの記録装置の場合は、長尺な記録ヘッドにおける多数のノズルに使用頻度の差が生じやすく、それらのノズルの状況に応じた最適な記録動作を実施することが難しい。
【0010】
本発明の目的は、記録ヘッドにおける吐出口の形成面の状況に適確に把握することにより、最適な回復処理を行なうことができるインクジェット記録装置および記録ヘッドの回復処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のインクジェット記録装置は、インクを吐出可能な複数のノズルが形成された記録ヘッドを用いて、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置において、前記記録ヘッドにおけるインクの吐出状態を良好に維持するための回復処理を行なう回復処理手段と、単位記録領域当たりのインクの吐出量に対応する記録デューティーと、記録速度と、に基づいて、前記回復処理手段を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記記録デューティーを低デューティー範囲と中デューティー範囲と高デューティー範囲に分け、前記記録デューティーが前記高デューティー範囲のときには、記録速度が低くなるほど前記回復処理の程度を高くするように前記回復処理手段を制御することを特徴とする。
【0012】
本発明の記録ヘッドの回復処理方法は、インクを吐出可能な複数のノズルが形成された記録ヘッドを用いて、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置において、前記記録ヘッドのインクの吐出状態を良好に維持するための回復処理を行う記録ヘッドの回復処理方法であって、単位記録領域当たりのインクの吐出量に対応する記録デューティーと、記録速度と、に基づいて、前記回復処理を制御する制御工程を含み、前記制御工程は、前記記録デューティーを低デューティー範囲と中デューティー範囲と高デューティー範囲に分け、前記記録デューティーが前記高デューティー範囲のときには、記録速度が低くなるほど前記回復処理の程度を高くすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、少なくとも記録デューティーと記録速度とに基づいて記録ヘッドの回復処理を制御し、記録ヘッドにおける吐出口の形成面の状況に適確に把握することにより、最適な回復処理を行うことができる。すなわち、記録デューティーが高デューティー範囲のときに、記録速度が低くなるほど回復処理の程度を高くすることにより、記録ヘッドにおける吐出口の形成面におけるインクの付着の可能性が高くなるほど、回復処理の程度を高めることができる。このような最適な回復処理を行うことにより、記録ヘッドにおけるインクの吐出状態を良好に維持して、インクの無駄やスループットの低下を招くことなく高品位の画像を記録することができる。
【0014】
さらに、回復処理の制御パラメータとして、記録デューティーと記録速度の他に、記録時間をも加えることにより、より最適な回復処理を実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
(第1の実施形態)
図1は、本発明を適用可能なインクジェット記録装置の概略正面図である。本例の記録装置10は、いわゆるフルラインタイプのインクジェット記録装置である。
【0017】
記録装置10には、この記録装置に画像情報を送るためのホスト装置(ホストPC)12が接続されている。記録装置10には、ブラック(K),シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y)のインクを吐出するための4つの記録ヘッド22K、2C、22M、22Yが記録媒体(本例の場合は、ロール紙)Pの搬送方向(矢印A方向)に並ぶように配置される。これらの記録ヘッド22K、22C、22M、22Y(以下、これらをまとめて「記録ヘッド22」ともいう)は、いわゆる長尺のラインヘッドである。記録ヘッド22は、矢印A方向と交差する方向(本例の場合は、直交する方向)に延在し、その長さは、記録装置10によって記録可能な記録媒体の最大の記録幅よりもやや長く、また画像の記録中は固定されていて動かない。
【0018】
記録装置10には、記録ヘッド22におけるインクの吐出状態を良好に維持するための回復処理を行う回復ユニット40が組み込まれている。回復ユニット40には、記録ヘッド22における吐出口の形成面をキャッピング可能なキャッピング機構50が備えられている。キャッピング機構50は、記録ヘッド22のそれぞれに対して独立して備えられている。本例の場合は、4つの記録ヘッド22に加えて、さらに2つの記録ヘッドを配備することが可能であり、これに対応できるように、4つのキャッピング機構50に加えて、2つの予備的なキャッピング機構50が備えられている。追加配備する記録ヘッドは、例えば、淡マゼンタおよび短シアンのインクを吐出するための記録ヘッドである。キャッピング機構50には、後述するように、ブレード、インク除去部材、ブレード保持部材、キャップ等が備えられている。
【0019】
記録媒体(ロール紙)Pは、ロール紙供給ユニット24から供給され、記録装置10に組み込まれた搬送機構26によって矢印A方向に搬送される。搬送機構26は、ロール紙Pを載置して搬送する搬送ベルト26a、この搬送ベルト26aを回転させる搬送モータ26b、搬送ベルト26aに張力を与えるローラ26cなどによって構成される。
【0020】
ロール紙Pに画像を記録する際には、ロール紙Pを連続的に搬送し、そのロール紙P上の記録開始位置が記録ヘッド22Kの下に到達したときに、記録データ(画像情報)に基づいて、その記録ヘッド22Kがブラックインクの吐出を開始する。そして、そのロール紙P上の記録開始位置が記録ヘッド22C,22M,22Yの下に順次到達したときから、記録データ(画像情報)に基づいて、それらの記録ヘッドがシアン、マゼンタ、およびイエローのインクの吐出を開始する。このように、記録ヘッド22から各色のインクを吐出することにより、ロール紙P上にカラー画像を記録する。
【0021】
記録装置10には、記録ヘッド22K,22C,22M,22Yのそれぞれに供給するためのインクを貯留するメインタンク28K,28C,28M,28Y(これらをまとめて「メインタンク28」ともいう)が備えられている。さらに記録装置10には、それらのメインタンク28内のインクを不図示のサブタンクを通して記録ヘッド22に供給したり、後述する回復処理を行なうためのポンプなども備えられている。これらのインクタンク28やポンプなどによって、インクの供給装置が構成されている。
【0022】
図2は、記録装置10の制御系のブロック構成図である。
【0023】
ホストPC12から送信された記録データやコマンドは、インタフェースコントローラ102を介して、記録装置10のCPU100に受信される。CPU100は、記録データの受信、記録動作、ロール紙Pのハンドリング等、記録装置全般の制御を掌る演算処理装置である。CPU100は、受信したコマンドを解析した後に、記録データの成分のイメージデータを、イメージメモリ106にビットマップ展開してラスター分割し、そのデータを記録ヘッドのそれぞれに割り当てる。記録動作の前には、出力ポート114とモータ駆動部116を介して、キャッピングモータ122とヘッドアップダウンモータ118を駆動し、記録ヘッド22をキャッピング機構50から離して記録位置に移動させる。キャッピングモータ122は、後述するように、キャッピング機構50を矢印A方向および逆方向に移動させるためのモータである。ヘッドアップダウンモータ118は、後述するように、記録ヘッド22を図1中の矢印C方向に上下動させるためのモータである。
【0024】
出力ポート114とモータ駆動部116を介して、ロ−ル紙Pを繰り出すためのロールモータ(図示せず)、およびロール紙Pを一定速度で搬送するための搬送モータ26b等を駆動して、ロ−ル紙Pを記録位置に搬送する。一定速度で搬送されるロ−ル紙Pに対してインクを吐出し始めるタイミング(記録タイミング)を決定するために、先端検知センサ(図示せず)がロ−ル紙Pの先端位置を検出する。その後、CPU100は、ロ−ル紙Pの搬送に同期して、イメージメモリ106から、記録ヘッド22のそれぞれに対応する記録データを順次に読み出す。この読み出された記録データは、記録ヘッド制御回路112を経由して、対応する記録ヘッド22に転送される。
【0025】
CPU100の動作は、プログラムROM104に記憶された処理プログラムに基づいて実行される。プログラムROM104には、制御フローに対応する処理プログラム、およびデータテーブルなどが記憶されている。ワークRAM108は、作業用のメモリとして使用される。CPU100は、それぞれの記録ヘッド22のクリーニングや回復処理時に、出力ポート114およびモータ駆動部116を介してポンプモータ124を駆動して、後述するインクの加圧および吸引等を制御する。
【0026】
図3は、本例における記録ヘッドの構成およびインクの吐出メカニズムを説明するためのノズル部分の断面図である。本例の記録ヘッドは、インクの吐出エネルギー発生手段として電気熱変換体(ヒータ)を用いるものである。その吐出エネルギー発生手段としては、ピエゾ素子などを用いることもできる。
【0027】
記録ヘッド22には、多数のノズル21が図3中の紙面の表裏方向に並ぶように構成されている。共通液室21A内に供給されたインクは、インク流路21Bを通して吐出口21Cに導かれ、その吐出口21CにてメニスカスMを形成する。インク流路21Bには、インクの吐出エネルギー発生手段としての電気熱変換体(ヒータ)21Dが備えられている。共通液室21Aには、圧力調整ポンプによって、不図示のサブタンクからインクが供給される。したがって、その圧力調整ポンプの回転数を変更することにより、記録ヘッド22内の供給するインクの負圧の大きさ、すなわちノズル21内のインクに作用する負圧の大きさを制御することができる。サブタンクには、メインタンク28からインクが供給される。
【0028】
電気熱変換体21Dを発熱させることにより、インク流路21B内のインクが発泡して気泡Bを発生し、吐出口21Cからインクが吐出される。電気熱変換体21Dは、シリコン素子基板156上に周知の技術により形成されている。ノズル21は、メニスカスMの近傍におけるインクの濡れ性を均一化させるために、シリコン素子基板156とシリコン天板158との間に形成されている。電気熱変換体21Dは、電気抵抗層および配線をパタ−ンニングして形成されたものである。この配線を経由して、電気抵抗層に電圧を印加して電流を流すことにより、電気熱変換体21Dが発熱する。
【0029】
図3において、(a)はノズル21の待機状態、(b)は電気熱変換体21Dの加熱状態、(c)はインクの膜沸騰状態、(d)はインクの最大発泡状態、(e)はインクの吐出状態、(f)は気泡Bの消泡状態である。インクは、主滴D1と副滴(サテライト)D2として吐出される。(g)は、気泡Bの消泡に伴うインクの再充填状態であり、共通液室21Aからインク流路21B内にインクが供給される。(h)はオーバーシュートの状態であり、共通液室21Aからインク流路21B内へのインクの過度な供給により、メニスカスMが凸状となる。この状態となった場合には、吐出口21Cからインクが漏れ出るおそれがある。
【0030】
図4は、図3のようなインクの吐出動作に伴うメニスカスMの位置の変化の説明図である。図4において、P0は吐出口21Cの開口位置、P1は図3(a)の待機状態におけるメニスカスMの位置、P2は図3(f)の消泡状態におけるメニスカスMの最大後退位置、P3は図3(h)のオーバーシュートの状態におけるメニスカスMの位置である。
【0031】
図3(b),(c),(d)のようなインクの発泡によって、メニスカスMの位置は、吐出口21Cから外方に向かって(以下、「正の方向」ともいう)変位する。そして、インクの吐出に前後する気泡Bの消泡により、図3(e),(f)のように、メニスカスMの位置が吐出口21Cから内方に向かって(以下、「負の方向」ともいう)変位する。t0は、インクの吐出タイミングである。その後、図3(g)のようなインクの再充填により、メニスカスMの位置が正の方向に戻る。その際、図3(h)のようなオーバーシュートが生じた場合には、メニスカスMの位置が吐出口21Cの位置P0を越える。図4中の曲線L1,L2は、オーバーシュートが生じた2回の実験におけるメニスカスMの位置の検出結果である。
【0032】
このようなオーバーシュートが生じた場合には、吐出口21Cからインクが漏れ出て、それが吐出口形成面(吐出口21Cが形成されている面)を濡らすおそれがある。このような吐出口形成面の濡れは、吐出口21Cからのインクの正常な吐出を阻害し、インクが吐出できない不吐出状態を招くおそれがある。以下、このような吐出口形成面の濡れに起因するインクの不吐出は、「濡れによる不吐出」ともいう。
【0033】
図5は、メニスカスの位置と、記録ヘッドのブロック駆動方式における駆動間隔(OCW)と、の関係の説明図である。記録ヘッドの駆動方式としては、全ノズルを複数のブロックに分割し、それらのブロック毎にノズルを駆動するブロック駆動方式がある。また、同じブロック内において隣接するノズルを分割して駆動するブロック内分割駆動方式もある。以下、このようなブロック駆動方式において、各ブロック間の駆動間隔をOCW(One heat Cycle Width)という。
【0034】
図5において、501および502は、全ノズルを8ブロックに分割して駆動するための駆動パルスであり、駆動パルス501におけるOCWは17.2μs、駆動パルス502におけるOCWは42.7μsである。503および503は、各ブロック毎のノズルにおけるメニスカスの振動(変位)を概念的に表す曲線である。駆動パルス501を用いた場合には、曲線503のように、各ブロックのノズルにおけるメニスカスが短時間の間に重複するように振動する。そのため、それぞれのノズル内のインクのクロストークにより、曲線505のようにメニスカスの振動波が大きくなってオーバーシュートを招くおそれがある。一方、駆動パルス502を用いた場合には、曲線504のように、各ブロックのノズルにおけるメニスカスが時間的にずれて振動するため、インクのクロストークの影響を抑えて、曲線506のようにメニスカスの振動波を小さく抑えることができる。
【0035】
ブロック毎の駆動周波数は記録速度に応じて異なり、例えば、記録速度が高速の100mm/sのときは、記録ヘッドの駆動周波数(ブロック毎の駆動周波数)を2.4KHzとし、比較的短い1周期C1内において8つのブロックを駆動することができる。また、記録速度が低速の50mm/sのときは、記録ヘッドの駆動周波数を1.2KHzとし、比較的長い1周期C2内において8つのブロックを駆動することができる。したがって、OCWの設定可能範囲は、記録速度が高速の100mm/sのときは比較的狭くなり、記録速度が低速の50mm/sのときは比較的広くなる。
【0036】
OCWは、記録速度に応じて変更させる他、記録デューティーに応じても変更可能である。例えば、記録デューティーが高い場合には、インクのクロストークの影響を回避するため、およびインク吐出後のノズル内に対するインクのリフィール性能を維持するために、OCWを長くすることもできる。
【0037】
記録速度が50mm/s、駆動周波数が1.2KHzのときに、記録デューティーが低いためにOCWの設定できる範囲には余裕があるのため、そのOCWを42.7μsまで拡張することができる。OCWを17.2μsとした場合には、振動が減衰するまでの時間が無いために、振動は増幅されて大きな振動となってしまう。しかし、OCWが42.7μmであれば、振動を次のパルスまでに減衰することができるため、図5中の曲線505のような大きなメニスカスの振動波にはならない。
【0038】
また記録ヘッドは、ブロック毎における複数のノズルが複数のノズル列上に分けて形成されたものであってもよい。その場合、ブロック毎における複数のノズルをノズル列毎に時間的にずらして駆動することにより、メニスカスの振動を抑えることができる。ノズル列は、例えば、互いに隣接する2つのノズル列であって、それぞれのノズル列上のノズルの位置がノズルピッチの半ピッチ分だけ互いにずらされたものであってもよい。その場合、一方のノズル列には、ノズル番号が奇数番目のノズルが配列され、他方のノズル列には、ノズル番号が偶数番目のノズルが配列される。
【0039】
図6は、キャッピング機構50のキャッピング動作とワイピング動作を説明するための図である。
【0040】
本例のキャッピング機構50は、桶60にキャップ52とワイパブレード(クリーニングブレード)54を備えており、記録ヘッド22の回復処理を行なうための回復ユニットを構成する。記録ヘッド22の回復処理は、例えば、予備吐出、吸引回復、加圧回復、循環回復、およびワイピングを含むことができる。
【0041】
予備吐出は、記録ヘッド22の吐出口からキャップ52内などに向かって、画像の記録に寄与しないインクを吐出させる動作である。吸引回復は、記録ヘッドの22の吐出口形成面22Aをキャッピングした状態のキャップ52内に負圧を導入して、記録ヘッド22の吐出口からキャップ52内に、画像の記録に寄与しないインクを吸引排出させる動作である。加圧回復は、記録ヘッド22内のインクを加圧して、その吐出口からキャップ52内などに向かって、画像の記録に寄与しないインクを排出させる動作である。循環回復は、記録ヘッド22と不図示のサブタンクとの間において、インクを循環させる動作である。ワイピングは、後述するように、ワイパブレード54によって吐出口形成面22Aをワイピングする動作である。このワイピング動作は、通常、予備吐出などの他の回復処理に比して長い時間が掛かる。またキャップ52は、待機状態などにおいて吐出口形成面22Aをキャッピングすることにより、記録ヘッド22の吐出口の乾燥を防止する共に、それを保護する。
【0042】
図6(a)は、記録ヘッド22の待機状態を示し、キャップ52が吐出口形成面22Aをキャッピングしている。ワイピングの際には、まず図6(b)のように、記録ヘッド22が矢印C1方向に上昇することにより、キャッピングが解除されると共に、記録ヘッド22に対するワイパブレード54の侵入量が比較的大きい量hに設定される。その後、図6(c)のように、キャッピング機構50が矢印B方向(矢印A方向の逆方向)に移動することにより、ワイパブレード54が記録ヘッド22の角部22Bに当って湾曲される。Iは、吐出口形成面22Aに付着しているインクである。その後、図6(d)のように、記録ヘッド22が矢印C1方向にさらに上昇して、記録ヘッド22に対するワイパブレード54の侵入量が比較的小さい量iに設定され、そしてキャッピング機構50が矢印B方向に移動することによりワイピングを開始する。そして、図6(e)のようにワイピングが終了したときに、吐出口形成面22Bが清掃されて、インクIが吸収体23の位置に移動される。インクIは、その吸収体23に吸収される。その後、図6(f)のように、記録ヘッド22が矢印C1方向にさらに上昇してから、図6(g)のように、キャッピング機構50が矢印A方向に移動する。そして、図6(h)のように記録ヘッド22が矢印C2方向に下降することにより、図6(a)の待機状態に戻る。
【0043】
図7は、記録ヘッド22の回復処理の制御方法の概念図であり、記録速度、記録時間、および記録デューティーの3つのパラメータに基づいて回復処理を制御する。そのため、それらのパラメータによって規定される3次元空間が回復処理の制御空間領域となる。
【0044】
パラメータとしての記録速度は、前述したように記録ヘッドの駆動周波数に対応する。その記録速度は、例えば、50mm/s〜60mm/sの低速、70mm/s〜80mm/sの中速、および90mm/s〜100mm/sの高速を含むことができる。パラメータとしての記録時間は、記録動作を開始してから記録動作が終了するまでの経過時間であり、その記録動作の終了後に回復処理が行なわれる。
【0045】
パラメータとしての記録デューティーは、単位記録領域当たりのインクの吐出量に対応する。本例においては、図8のように記録ヘッド22のノズルを複数のブロックに分けてブロック駆動し、それらのブロック毎におけるドットカウント値の内の最大の値(以下、「最大ドットカウント値」という)に基づいて、最大記録デューティーを求める。そして、その最大記録デューティーを、パラメータとしての記録デューティーとする。つまり、ブロック毎の記録デューティー(ブロック単位記録デューティー)の内の最大のものが、パラメータとしての記録デューティーとなる。
【0046】
ブロック毎におけるドットカウント値は、各ブロック内のノズルから単位記録領域当たりに吐出されるインクの吐出数の合計、つまり単位記録領域内に形成されるインクのドットの総数である。このようなドットカウント値は、ブロック毎の記録データに基づいて算出することができる。図8のように記録媒体の1ページに画像を記録した場合には、左から3番目のブロックのドットカウント値が最大ドットカウント値となり、それに基づいて最大記録デューティーが求められる。ドットカウント値が大きいブロックは、それが小さいブロックよりも「濡れによる不吐出」が生じる可能性は高い。
【0047】
記録媒体の1ページを単位記録領域として場合、最大記録デューティーは下式によって求めることができる。
【0048】
【数1】

【0049】
aは、最大ドットカウント値である。bは、記録媒体の1ページに記録デューティー100%の画像をベタ記録した場合における1ブロック当りのドットカウント値であり、記録媒体のサイズに関する情報に基づいて算出することができる。cは、記録される記録媒体のページ数であり、記録媒体の記録枚数に関する情報に基づいて、あるいは記録媒体のサイズと記録時間に関する情報に基づいて、求めることができる。
【0050】
また、ブロック毎のドットカウント値、あるいはブロック毎に算出した記録デューティーに、重み付けをしてから、最大記録デューティーを求めてもよい。
【0051】
図9は、同じ画像を複数枚の記録媒体に記録する場合の回復処理の制御を説明するためのフローチャートである。まず、1枚目の記録媒体を記録するための一連の処理工程中において、最大記録デューティーを算出すると共に、記録速度を取得する(ステップS1,S2)。その後、所定の複数枚の記録媒体に対する記録動作が終了(ステップS3)してから、記録時間を取得する(ステップS3)。その後、後述するテーブルを参照し(ステップS5)、記録速度、記録時間、および記録デューティー(本例の場合は、最大記録デューティー)の3つのパラメータに基づいて回復処理を行なう(ステップS6)。所定枚数の記録媒体に対する記録動作が終了する前に、その記録動作を中断して回復処理を行なってもよい。その場合、パラメータとしての記録時間は、記録動作を中断した時点の記録時間となる。
【0052】
図10は、通常の記録動作、つまり種々の画像を1枚または複数枚の記録媒体に記録する記録動作の1ジョブの終了後に、回復処理を制御する場合のフローチャートである。まず、1ジョブの記録動作を実行するための一連の処理工程中において、記録速度を取得する(ステップS11)。その後、記録動作が終了(ステップS12)してから、記録時間を取得すると共に最大記録デューティーを算出する(ステップS13,S14)。その後、後述するテーブルを参照し(ステップS15)、記録速度、記録時間、および記録デューティー(本例の場合は、最大記録デューティー)の3つのパラメータに基づいて回復処理を行なう(ステップS16)。記録動作の1ジョブが終了する前に、その記録動作を中断して回復処理を行なってもよい。その場合、パラメータとしての記録時間および最大記録デューティーは、記録動作を中断した時点の記録時間および最大記録デューティーとなる。
【0053】
図11から図13は、記録速度、記録時間、および記録デューティー(本例の場合は、最大記録デューティー)の3つのパラメータに基づく、回復処理の制御例の説明図である。本例の場合、回復処理は予備吐出とワイピングであり、回復処理の制御形態は、予備吐出とワイピングの一方を実施する形態と、いずれも実施しない形態と、を含む。予備吐出は、記録ヘッドにおける全ノズルのそれぞれから、画像の記録に寄与しないインクを吐出するものであり、その吐出数は、800発から600発の範囲において制御される。その吐出数が多くなるほど、回復処理の程度が高くなる(強い回復処理となる)。ワイピングは、前述したように、ワイパブレード54によって吐出口形成面22Aをワイピングする動作であり、本例の場合は、少なくとも1回の規定回数だけ吐出口形成面22Aをワイピングする。このワイピングは、予備吐出よりも回復処理の程度が高く、予備吐出よりも強い回復処理である。
【0054】
最大記録デューティーが0〜8%,8〜25%,25〜100%のときは、それぞれ図11,図12,図13のテーブルを用い、記録速度と記録時間との関係に応じて回復処理を制御する。以下においては、最大記録デューティーの0〜8%を「低デューティー範囲」、8〜25%を「中デューティー範囲」、25〜100%を「高デューティー範囲」ともいう。低デューティー範囲の図11のテーブル、中デューティー範囲の図12のテーブル、および高デューティー範囲の図13のテーブルは、それぞれ次のように特徴付けられている。
【0055】
(低デューティー範囲の制御)
例えば、テキスト、バーコード、およびスポットカラーなどを記録する低デューティー範囲(1〜8%)のときは、記録速度が低くなるほど「濡れによる不吐出」が生じる可能性は高くなる。
【0056】
記録装置は、記録速度に応じた駆動周波数の設定が可能であり、例えば、記録速度が100mm/sと25mm/sの場合を比較する。100mm/sの場合には、1秒の中で1ラインの記録に割り当てられる時間は480μsであり、1ラインは8分割されているため、1ドットの吐出時間の割り当てであるOCWは48μsとなる。一方、20mm/sの場合には、1ラインの記録に割り当てられる時間は1.92ms(1920μs)であるため、1ドットの吐出時間の割り当てであるOCWは190μsである。
【0057】
しかし、これら記録速度に対して、記録デューティーの変化によってOCWの制御ができないため、記録デューティーが低い場合には、1ライン間の間隔が広く、OCWの間隔が広くなり、一度生じた振動は時間をかけて減衰することができる。すなわち、低速記録時に安定して吐出が行える分、サテライトも持続的に発生するという状況を生み出すことになる。
【0058】
記録デューティーが低いときの濡れによる不吐出の主な原因として、主滴の吐出に準じて発生するサテライトの吐出口面への付着がある。更に、記録時間が長期に渡れば、それらサテライトが累積して、濡れによる不吐出が生じる可能性が高くなる。
【0059】
図11のテーブルは、このような「濡れによる不吐出」が生じる可能性を考慮して設定されている。すなわち、そのテーブルを用いる低デューティー範囲の回復処理の制御傾向は、記録速度が低くなるほど回復処理を強くし、かつ記録時間が長くなるほど回復処理を強くする傾向となる。したがって、記録速度が高くかつ記録時間が短いときには、弱い回復処理が行なわれることになる。記録速度が90mm/sおよび100mm/s、かつ記録時間が0〜10sのときは、回復処理は行なわれない。一方、記録速度が低くかつ記録時間が長いときには、強い回復処理が行なわれることになる。予備吐出におけるインクの吐出数が増加するにつれて、予備吐出の程度は高くなる。記録速度が50mm/sおよび60mm/s、かつ記録時間が90s以上のときには、最も強い回復処理であるワイピングが行なわれる。
【0060】
このような制御傾向により、低デューティー範囲における「濡れによる不吐出」の発生を効率よく抑えることができる。仮に、記録速度や記録時間に拘わらず、最も強い回復処理であるワイピングを行なった場合には、そのワイピングに長時間を要するために、スループットの低下を招くおそれがある。
【0061】
(中デューティー範囲の制御)
例えば、イラストや写真などを記録する中デューティー範囲(9〜50%)のときは、記録速度が高くなるほど「濡れによる不吐出」が生じる可能性は高くなる。これは、低デューティーの場合ではオーバーシュートしても十分な減衰時間があったが、これらの中デューティーの場合には、記録の割り当て時間が短くなり、記録速度が上がって駆動周波数が上がるために、1ドットの吐出時間の割り当てであるOCWの間隔が小さくなるためである。すなわち、ことでOCWの割り当ての間隔が小さくなって、インク吐出後のメニスカスが減衰できなくなり、増幅した振動によってメニスカスが凸の状態とになり、その状態のままインクを吐出するオーバーシュートが生じて、濡れいよる不吐出が発生しやすくなる。
【0062】
図12のテーブルは、このような「濡れによる不吐出」が生じる可能性を考慮して設定されている。すなわち、そのテーブルを用いる低デューティー範囲の回復処理の制御傾向は、記録速度が高くなるほど回復処理を強くし、記録時間が長くなるほど回復処理を強くする傾向となる。したがって、記録速度が低くかつ記録時間が短いときには、弱い回復処理が行なわれることになる。記録速度が50mm/sおよび60mm/s、かつ記録時間が0〜10sのときは、回復処理は行なわれない。一方、記録速度が高くかつ記録時間が長いときには、強い回復処理が行なわれることになる。記録速度が90mm/sおよび100mm/s、かつ記録時間が90s以上のときには、最も強い回復処理であるワイピングが行なわれる。
【0063】
このような制御傾向により、中デューティー範囲における「濡れによる不吐出」の発生を効率よく抑えることができる。仮に、記録速度や記録時間に拘わらず、最も強い回復処理であるワイピングを行なった場合には、そのワイピングに長時間を要するために、スループットの低下を招くおそれがある。
【0064】
(高デューティー範囲の制御)
例えば、ベタ画像などを記録する高デューティー範囲(51〜100%)のときは、記録速度が低くなるほど「濡れによる不吐出」が生じる可能性は高くなる。高デューティー時は、記録速度によるオーバーシュートの影響は各記録速度においえほぼ変わらない状況になる。高デューティーの範囲内では、どの記録速度でも一様にオーバーシュートが引き起こされやすい。
【0065】
しかしながら、記録速度が遅くなった場合には比較的にインクの吐出が安定し、記録速度の速い場合に比べてインクの吐出が安定するために、低デューティーのときに起きたように、主滴の吐出に伴って発生するサテライトによる影響が支配的となる。
【0066】
図13のテーブルは、このような「濡れによる不吐出」が生じる可能性を考慮して設定されている。すなわち、そのテーブルを用いる高デューティー範囲の回復処理の制御傾向は、記録速度が低くなるほど回復処理を強くし、記録時間が長くなるほど回復処理を強くする傾向となる。したがって、記録速度が高くかつ記録時間が短いときには、弱い回復処理が行なわれることになる。記録速度が90mm/sおよび100mm/s、かつ記録時間が0〜10sのときは、回復処理は行なわれない。一方、記録速度が低くかつ記録時間が長いときには、強い回復処理が行なわれることになる。記録速度が50mm/sおよび60mm/s、かつ記録時間が90s以上のときには、最も強い回復処理であるワイピングが行なわれる。
【0067】
このような制御傾向により、高デューティー範囲における「濡れによる不吐出」の発生を効率よく抑えることができる。仮に、記録速度や記録時間に拘わらず、最も強い回復処理であるワイピングを行なった場合には、そのワイピングに長時間を要するために、スループットの低下を招くおそれがある。
【0068】
このように本例においては、図11から図13のようなテーブルを用いて、3つのパラメータに基づいて回復処理を制御する。しかし、このようなテーブルを用いることなく、3つのパラメータを関係付ける数式を用いて、同様に回復処理を制御することもできる。
【0069】
(他の実施形態)
記録デューティーを分ける3つの範囲(低、中、および高デューティー範囲)は、0%〜8%、8%〜25%、および25%〜100%の範囲に限定されず任意であり、また4つ以上の範囲に分けてもよい。高デューティー範囲は、少なくとも100%を含む範囲であればよく、また低デューティーは、少なくとも0%を含む範囲であればよい。
【0070】
また、回復処理としては、予備吐出およびワイピングの他、吸引回復、加圧回復および循環回復などの種々の処理を含むことができる。回復処理の程度は、例えば、ワイピングの場合にはワイピングの回数、吸引回復の場合には吸引時間、加圧回復の場合には加圧時間、循環回復の場合には循環時間に応じて制御することができる。また、回復処理を制御するためのパラメータとして、少なくとも記録デューティーと記録速度の2つを用いることができればよい。さらに、記録デューティーと記録速度に、画像の記録に要する記録時間を加えた3つのパラメータを用いることにより、より適確に回復処理を制御することができる。また、記録動作の制御機能の少なくとも一部、および回復処理の制御機能の少なくとも一部は、ホスト装置(ホストPC)12に持たせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施形態におけるインクジェット記録装置の正面図である。
【図2】図1のインクジェット記録装置の制御系のブロック構成図である。
【図3】(a)から(h)は、インクの吐出状況を説明するためのノズル部分の断面図である。
【図4】ノズルに形成されるインクのメニスカスの変位の説明図である。
【図5】記録ヘッドのブロック駆動と、インクのメニスカスの振動と、の関係の説明図である。
【図6】(a)から(h)は、図1のインクジェット記録装置におけるワイピング動作の説明図である。
【図7】本発明の実施形態における回復処理の制御空間領域の概念図である。
【図8】図1のインクジェット記録装置における記録ヘッドと記録画像との関係の説明図である。
【図9】本発明による回復処理の第1の制御例を説明するためのフローチャートである。
【図10】本発明による回復処理の第2の制御例を説明するためのフローチャートである。
【図11】本発明による最大記録デューティー0%〜8%のときの回復処理の制御用テーブルの説明図である。
【図12】本発明による最大記録デューティー8%〜25%のときの回復処理の制御用テーブルの説明図である。
【図13】本発明による最大記録デューティー25%〜100%のときの回復処理の制御用テーブルの説明図である。
【符号の説明】
【0072】
10 インクジェット記録装置
21 ノズル
21A 共通液室
21B インク流路
21C 吐出口
21D 電気熱変換体(ヒータ)
22(22Y,22M,22C,22K) 記録ヘッド
26 搬送機構
40 回復ユニット
50 キャッピング機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出可能な複数のノズルが形成された記録ヘッドを用いて、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置において、
前記記録ヘッドにおけるインクの吐出状態を良好に維持するための回復処理を行なう回復処理手段と、
単位記録領域当たりのインクの吐出量に対応する記録デューティーと、記録速度と、に基づいて、前記回復処理手段を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記記録デューティーを低デューティー範囲と中デューティー範囲と高デューティー範囲に分け、前記記録デューティーが前記高デューティー範囲のときには、記録速度が低くなるほど前記回復処理の程度を高くするように前記回復処理手段を制御する
ことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記記録デューティーが前記中デューティー範囲のときに、前記記録速度が高くなるほど前記回復処理の程度を高くするように前記回復処理手段を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記回復処理手段は、前記回復処理として、前記ノズルから画像の記録に寄与しないインクを吐出させる予備吐出を含み、
前記制御手段は、前記回復処理の程度を高くするために、前記予備吐出によって前記ノズルから吐出されるインクの吐出数を増加させるように前記回復処理手段を制御する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記回復処理手段は、前記回復処理として、前記記録ヘッドにおいて前記ノズルが形成される吐出口形成面をワイピングする処理を含む
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記記録デューティーおよび前記記録速度と共に、画像の記録に要する記録時間に基づいて前記回復処理手段を制御し、前記記録時間が長くなるほど前記回復処理の程度を高くするように前記回復処理手段を制御する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記記録ヘッドは、前記複数のノズルが複数のブロックに分けてブロック駆動され、
前記記録デューティーは、前記ブロック毎における単位記録領域当たりのインクの吐出量に対応するブロック単位記録デューティーの内の最大のものである
ことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記記録デューティーまたは前記記録速度の少なくとも一方に応じて、前記ブロックの駆動間隔を変更可能な変更手段を備えることを特徴とする請求項6に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記記録ヘッドは、前記ブロック毎における前記複数のノズルが複数のノズル列上に分けて形成され、前記ブロック毎における前記複数のノズルは、前記ノズル列毎に時間的にずらして駆動されることを特徴とする請求項6または7に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
記録媒体を所定の搬送方向に搬送する搬送手段を備え、
前記記録ヘッドは、前記搬送方向と交差する方向における記録領域の全域に亘って延在する
ことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
インクを吐出可能な複数のノズルが形成された記録ヘッドを用いて、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置において、前記記録ヘッドのインクの吐出状態を良好に維持するための回復処理を行う記録ヘッドの回復処理方法であって、
単位記録領域当たりのインクの吐出量に対応する記録デューティーと、記録速度と、に基づいて、前記回復処理を制御する制御工程を含み、
前記制御工程は、前記記録デューティーを低デューティー範囲と中デューティー範囲と高デューティー範囲に分け、前記記録デューティーが前記高デューティー範囲のときには、記録速度が低くなるほど前記回復処理の程度を高くする
ことを特徴とする記録ヘッドの回復処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−12653(P2010−12653A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−173302(P2008−173302)
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】