インクジェット記録装置及び記録方法
【課題】印字速度を低下させず、また、インクジェットヘッドの数を増やさずに、記録媒体印刷面の隠蔽率を高める。
【解決手段】マルチドロップ方式の複数のインクジェットヘッドを備えたインクジェット記録装置において、印字解像度が要求される第1のインクを吐出するインクジェットヘッドについては、主走査方向に形成されるインクドットの数を多くかつ1ドットに対するドロップ数が少なくなるようにインク液滴の吐出を制御し、記録媒体の記録面の隠蔽性が要求される第2のインクを吐出するインクジェットヘッドについては、主走査方向に形成されるインクドットの数を少なくかつ1ドットに対するドロップ数が多くなるようにインク液滴の吐出を制御する。
【解決手段】マルチドロップ方式の複数のインクジェットヘッドを備えたインクジェット記録装置において、印字解像度が要求される第1のインクを吐出するインクジェットヘッドについては、主走査方向に形成されるインクドットの数を多くかつ1ドットに対するドロップ数が少なくなるようにインク液滴の吐出を制御し、記録媒体の記録面の隠蔽性が要求される第2のインクを吐出するインクジェットヘッドについては、主走査方向に形成されるインクドットの数を少なくかつ1ドットに対するドロップ数が多くなるようにインク液滴の吐出を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、マルチドロップ方式のインクジェットヘッドを備えたインクジェット記録装置及び記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、黒色インク(K)、シアン色インク(C)、マゼンタ色インク(M)、イエロー色インク(Y)等のカラーインクとは別に、白色インク(W)を用い、記録媒体の印刷面に白色の下地を形成した後、この下地の上にカラーの画像を形成するようにしたインクジェット記録装置が知られている。
【0003】
このようなインクジェット記録装置で印刷されるカラー画像は、白色インクによる記録媒体印刷面の隠蔽率が高いほど、品質が向上する。そこで、この種のインクジェット記録装置は、隠蔽率を高めるための工夫がなされている。例えば、白色インクによる印字走査回数を他のカラーインクよりも増やすことで、隠蔽率を高める工夫が知られている。また、白色インクのヘッド数を他のカラーインクよりも多くすることで、隠蔽率を高める工夫も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−194847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、白色インクによる印字走査回数を他のカラーインクよりも増やした場合には、1画像の印字速度が低下するという問題がある。また、白色インクのヘッド数を他のカラーインクよりも多くした場合には、ヘッドの総数が増えるために装置が大型化する上、製品コストやメンテナンスにかかるコストも高くなるという問題がある。このため、これらの問題を解決できるインクジェット記録装置及び記録方法が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態によれば、連続吐出するインク液滴のドロップ数を可変して記録媒体上に形成されるインクドットの径を制御するマルチドロップ方式の複数のインクジェットヘッドを備えたインクジェット記録装置において、印字解像度が要求される第1のインクを吐出するインクジェットヘッドについては、主走査方向に形成されるインクドットの数を多くかつ1ドットに対するドロップ数が少なくなるようにインク液滴の吐出を制御し、記録媒体の記録面の隠蔽性が要求される第2のインクを吐出するインクジェットヘッドについては、主走査方向に形成されるインクドットの数を少なくかつ1ドットに対するドロップ数が多くなるようにインク液滴の吐出を制御するようにしたものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】インクジェット記録装置の要部構成を示すブロック図。
【図2】プリンタコントローラの要部構成を示すブロック図。
【図3】ヘッド駆動回路の要部構成を示すブロック図。
【図4】インクジェットヘッドの一部を分解して示す斜視図。
【図5】インクジェットヘッドの前方部における横断面図。
【図6】インクジェットヘッドの前方部における縦断面図。
【図7】インクジェットヘッドの動作原理の説明に用いる模式図。
【図8】インクジェットヘッドのノズルの電極に印加される駆動パルス信号の通電波形図。
【図9】インクジェットヘッドのマルチドロップ方式による階調印字の説明に用いる模式図。
【図10】インクジェットヘッドにおいて最大階調を7階調として印字を行う場合の駆動パルス信号の通電波形図。
【図11】第1の実施形態において、各カラーインクを吐出するインクジェットヘッドと白色インクを吐出するインクジェットヘッドとに対してそれぞれ印加される駆動パルス信号の通電波形図。
【図12】第1の実施形態における各カラーインクと白色インクの印字結果を示す模式図。
【図13】第2の実施形態において、各カラーインクを吐出するインクジェットヘッドと白色インクを吐出するインクジェットヘッドとに対してそれぞれ印加される駆動パルス信号の通電波形図。
【図14】第2の実施形態における各カラーインクと白色インクの印字結果を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、インクジェット記録装置及び記録方法の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
なお、この実施形態は、記録媒体の印刷面に白色の下地を形成した後、この下地の上にカラーの画像を形成するようにしたインクジェット記録装置に適用した場合である。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、インクジェット記録装置1の要部構成を示すブロック図である。図1において、矢印Xは主走査方向を示しており、矢印Yは副走査方向を示している。インクジェット記録装置1は、搬送モータ21を動力源として駆動する図示しない搬送機構により、記録媒体2を副走査方向Yに搬送する。なお、記録媒体2は、インクジェット記録装置1によって画像形成が可能なものであれば、その材質、厚み、大きさ等は特に限定されるものではない。
【0010】
インクジェット記録装置1は、5つのインクジェットヘッド11A,11B,11C,11D,11Eを搭載したヘッドキャリッジ12を備えている。
【0011】
ヘッドキャリッジ12は、主走査方向Xの一端側と他端側とにそれぞれ配置された一対のプーリ14A,14B間に掛け渡されたキャリッジベルト13に取り付けられている。一端側のプーリ14Aは、正逆転が可能なキャリッジモータ22の回転軸に固定されている。その結果、キャリッジモータ22の正転及び逆転により、キャリッジベルト13は、主走査方向Xに往復移動する。そして、このキャリッジベルト13の往復移動に付勢されて、ヘッドキャリッジ12は主走査方向Xに往復移動する。
【0012】
インクジェット記録装置1は、ヘッドキャリッジ12が主走査方向Xに往復移動する際に、このキャリッジ12の搭載された各インクジェットヘッド11A〜11Eから選択的にインク液滴を吐出させて、記録媒体2の記録面にインクドットによる画像を形成する。
【0013】
各インクジェットヘッド11A〜11Eは、それぞれ連続吐出するインク液滴のドロップ数を可変して記録媒体2上に形成されるインクドットの径を制御するマルチドロップ方式によるものである。各インクジェットヘッド11A〜11Eのうち、ヘッド11Aは、黒色インク(K)のヘッド(以下、黒ヘッド11Aと称する)である。ヘッド11Bは、シアン色インク(C)のヘッド(以下、シアンヘッド11Bと称する)である。ヘッド11Cは、マゼンタ色インク(M)のヘッド(以下、マゼンタヘッド11Cと称する)である。ヘッド11Dは、イエロー色インク(Y)のヘッド(以下、イエローヘッド11Dと称する)である。ヘッド11Eは、白色インク(W)のヘッド(以下、白ヘッド11Eと称する)である。
【0014】
ここで、黒、シアン、マゼンタ及びイエローの各カラーインク(K,C,M,Y)は、印字解像度が要求される第1のインクである。白色インク(W)は、記録媒体2の記録面の隠蔽性が要求される第2のインクである。
【0015】
インクジェット記録装置1は、さらに、各インクジェットヘッド11A〜11E別のヘッド駆動回路23A,23B,23C,23D,23Eと、プリンタコントローラ24とを備えている。
【0016】
プリンタコントローラ24は、パーソナルコンピュータ等のホスト装置3から周知のインターフェースを介して供給される印刷データを基に、搬送モータ21、キャリッジモータ22及び各ヘッド駆動回路23A〜23Eを制御する。その結果、記録媒体2の印刷面に当該印刷データに対応したカラー画像が形成される。
【0017】
プリンタコントローラ24は、第1の制御手段31と、第2の制御手段32とを備えている。
第1の制御手段31は、印字解像度が要求される第1のインク(K,C,M,Y)を吐出するインクジェットヘッド11A,11B,11C,11Dについて、主走査方向Xに形成されるインクドットの数を多くかつ1ドットのドロップ数が少なくなるようにインク液滴の吐出を制御する。
【0018】
第2の制御手段32は、記録媒体2の記録面の隠蔽性が要求される第2のインク(W)を吐出するインクジェットヘッド11Eついて、主走査方向Xに形成されるインクドットの数を少なくかつ1ドットのドロップ数が多くなるようにインク液滴の吐出を制御する。
なお、これまでの説明から明らかなように、主走査方向Xとは、記録媒体2とインクジェットヘッド11A〜11Eとの相対移動時に印字する方向である。
【0019】
図2は、プリンタコントローラ24の要部構成を示すブロック図である。プリンタコントローラ24は、制御部本体を構成するCPU(Central Processing Unit)41、プログラム等の固定的データを格納したROM(Read Only Memory)42、可変的なデータを一時的に記憶するための領域が形成されるRAM(Random Access Memory)43の他、通信インターフェース44、I/O(Input/Output)ポート45、第1のモータドライバ46、第2のモータドライバ47等を備えている。CPU41は、ROM42、RAM、通信インターフェース44、I/Oポート45及び第1,第2のモータドライバ46,47を、アドレスバス,データバスなどのバスライン48で接続している。
【0020】
通信インターフェース44は、予め設定された通信プロトコルに従い、ホスト装置3から送信される印刷データを取込む。CPU41は、通信インターフェース44を介して取込んだ印刷データを解析して、インクジェットヘッド11A〜11E毎の印字データを作成する。
【0021】
I/Oポート45は、各ヘッド駆動回路23A〜23Eを電気的に接続する。CPU41は、I/Oポート45を介して各ヘッド駆動回路23A〜23Eに、それぞれその駆動回路23A〜23Eに対応するインクジェットヘッド11A〜11Eの印字データと制御信号とを送信する。制御信号は、シフトクロック信号とラッチパルス信号とタイミングパルス信号とを含む。
【0022】
第1のモータドライバ46は、CPU41の指令により、搬送モータ21を駆動する。第2のモータドライバ47は、CPU41の指令により、キャリッジモータ22を駆動する。
【0023】
CPU41は、ROM42に記憶されたプログラムに基づいて、RAM43の領域を適宜使用することにより、第1の制御手段31及び第2の制御手段32としての制御を実行する。
【0024】
各ヘッド駆動回路23A〜23Eは、同一構成であり、その要部を図3で示す。図3は、ヘッド駆動回路23A〜23Eのブロック図である。
【0025】
ヘッド駆動回路23A〜23Eは、シフトレジスタ51と、ラッチ回路52と、出力制御回路53と、駆動波形発生回路54とを備える。シフトレジスタ51はラッチ回路52と接続し、ラッチ回路52は出力制御回路53と接続し、出力制御回路53は駆動波形発生回路54と接続し、駆動波形発生回路54はインクジェットヘッド11A〜11Eと接続している。
【0026】
シフトレジスタ51は、プリンタコントローラ24から供給される印字データを、同じくプリンタコントローラ24から供給されるシフトクロック信号に同期して順次シフトしながら格納する。ラッチ回路52は、シフトレジスタ51に格納された印字データを、プリンタコントローラ24から供給されるラッチパルス信号に応じてラッチする。出力制御回路53は、ラッチ回路52でラッチされた印字データを、プリンタコントローラ24から供給されるタイミングパルス信号に同期して駆動波形発生回路54に出力する。駆動波形発生回路54は、出力制御回路53から供給される印字データを駆動波形パルス信号に変換して、インクジェットヘッド11A〜11Eに出力する。
【0027】
各インクジェットヘッド11A〜11Eは、同一構成であり、その要部を図4〜図6で示す。図4は、インクジェットヘッド11A〜11Eの一部を分解して示す斜視図、図5は、同ヘッド11A〜11Eの前方部における横断面図、図6は、同ヘッド11A〜11Eの前方部における縦断面図である。
【0028】
インクジェットヘッド11A〜11Eは、ベース基板61の前方側の上面に第1の圧電部材62を接合し、この第1の圧電部材62の上に第2の圧電部材63を接合する。インクジェットヘッド11A〜11Eは、図5の矢印で示すように、第1の圧電部材62と第2の圧電部材63とを、板厚方向に沿って互いに相反する方向に分極して接合する。そしてインクジェットヘッド11A〜11Eは、この接合した圧電部材62,63の先端側から後端側に向けて多数の長尺な溝68を設ける。各溝68は、間隔が一定でありかつ平行である。各溝68は、先端が開口し、後端が上方に斜傾する。
【0029】
インクジェットヘッド11A〜11Eは、各溝68の側壁及び底面に電極69を設ける。さらにインクジェットヘッド11A〜11Eは、各溝68の後端から第2の圧電部材63の後部上面に向けて、電極69から延出された引出し電極70を設ける。
【0030】
インクジェットヘッド11A〜11Eは、各溝68の上部を天板64で塞ぎ、各溝68の先端をオリフィスプレート65で塞ぐ。天板64は、その内側後方に共通インク室71を備える。インクジェットヘッド11A〜11Eは、天板64とオリフィスプレート65とで囲まれた各溝68によって、インクの吐出を行うノズル72を形成する。ノズル72は、インク室とも称される。インクジェットヘッド11A〜11Eは、オリフィスプレート65の各溝68と対向する位置にインク吐出口73を開ける。
【0031】
インクジェットヘッド11A〜11Eは、ベース基板61の後方側の上面に、導電パターン74が形成されたプリント基板75を接合し、このプリント基板75の上に、駆動手段であるヘッド駆動回路23A〜23Eを内蔵したドライブIC76を搭載する。ドライブIC76は、導電パターン74に接続する。導電パターン74は、各引出し電極70とワイヤボンディングにより導線77で結合する。
【0032】
次に、上記の如く構成された各インクジェットヘッド11A〜11Eの動作原理について、図7及び図8を用いて説明する。
【0033】
図7の(a)は、中央のノズル72aと、このノズル72aに隣接する両隣のノズル72b,72cの電極69がいずれも接地電位の状態を示している。この状態では、ノズル72aとノズル72b及びノズル72aとノズル72cとで挟まれた圧電部材62,63からなる側壁78a,78bは、何ら歪み作用を受けない。
【0034】
図7の(b)は、中央のノズル72aの電極69に負電圧(−Vs)が印加された状態を示している。なお、両隣のノズル72b,72cの電極69はいずれも接地電位である。この状態では、各側壁78a,78bに、圧電部材62,63の分極方向と直交する方向に電界が作用する。この作用により、各側壁78a,78bは、ノズル72aの容積を拡大するようにそれぞれ外側に変形する。
【0035】
図7の(c)は、中央のノズル72aの電極69に正電圧(+Vs)が印加された状態を示している。なお、両隣のノズル72b,72cの電極69はいずれも接地電位である。この状態では、各側壁78a,78bに、圧電部材62,63の分極方向と直交する方向で図7(b)のときとは逆の方向に電界が作用する。この作用により、各側壁78a,78bは、ノズル72aの容積を縮小するようにそれぞれ内側に変形する。
【0036】
図8は、ノズル72aからインク液滴を吐出するためにノズル72aの電極69に印加される駆動パルス信号の通電波形を示している。時間Ttによって示される区間は、インク液滴(1ドロップ)の吐出に必要な時間であり、この時間Ttは、準備区間の時間T1、吐出区間の時間T2及び後処理区間の時間T3に区分される。さらに、準備時間T1は、定常区間の時間Taと拡大区間の時間(T1−Ta)とに細分化され、吐出区間の時間T2は、維持区間の時間Tbと復元区間の時間(T2−Tb)とに細分化される。準備時間T1、吐出時間T2及び後処理時間T3は、使用するインクや温度等の条件により、適切な値に設定される。
【0037】
図8に示すように、ヘッド駆動回路23A〜23Eは、先ず、時点t0において、ノズル72a,72b,72cに対応した各電極69にそれぞれ0ボルトの電圧を印加する。そして、定常時間Taが経過するのを待機する。この間、各ノズル72a,72b,72cは、図7の(a)の状態となる。
【0038】
定常時間Taが経過して時点t1になると、ヘッド駆動回路23A〜23Eは、ノズル72aに対応した電極69に所定の負電圧(−Vs)を印加する。そして、準備時間T1が経過するのを待機する。負電圧(−Vs)が印加されると、ノズル72aの両側の側壁78a,78bが、ノズル72aの容積を拡大するようにそれぞれ外側に変形して、図7の(b)の状態となる。この変形により、ノズル72a内の圧力が低下する。このため、共通インク室71からノズル72a内にインクが流れ込む。
【0039】
準備時間T1が経過して時点t2になると、ヘッド駆動回路23A〜23Eは、さらに維持時間Tbが経過するまで、ノズル72aに対応した電極69に負電圧(−Vs)を印加し続ける。この間、各ノズル72a,72b,72cは、図7の(b)の状態を維持する。
【0040】
維持時間Tbが経過して時点t3になると、ヘッド駆動回路23A〜23Eは、ノズル72aに対応した電極69に印加する電圧を0ボルトに戻す。そして、吐出時間T2が経過するのを待機する。印加電圧が0ボルトになると、ノズル72aの両側の側壁78a,78bが定常状態に復元されて、図7の(a)の状態に戻る。この復元により、ノズル72a内の圧力が増大する。このため、ノズル72aに対応したインク吐出口73からインク液滴が吐出する。
【0041】
吐出時間T2が経過して時点t4になると、ヘッド駆動回路23A〜23Eは、ノズル72aに対応した電極69に所定の正電圧(+Vs)を印加する。そして、後処理時間T3が経過するのを待機する。正電圧(+Vs)が印加されると、ノズル72aの両側の側壁78a,78bが、ノズル72aの容積を縮小するようにそれぞれ内側に変形して、図7の(c)の状態となる。この変形により、ノズル72a内の圧力がさらに増大する。このため、インク液滴の吐出によりノズル72a内に生じる急激な圧力低下が緩和される。
【0042】
後処理時間T3が経過して時点t5になると、ヘッド駆動回路23A〜23Eは、ノズル72aに対応した電極69に印加する電圧を再度0ボルトに戻す。印加電圧が0ボルトに戻されたことに応じて、ノズル72aの両側の側壁78a,78bが定常状態に復元される。すなわち、各ノズル72a,72b,72cは、図7の(a)の状態に戻る。
【0043】
ヘッド駆動回路23A〜23Eは、図8に示した通電波形の駆動パルス信号をノズル72aの電極69に供給する。そうすると、ノズル72aに対応したインク吐出口73から1ドロップのインク液滴が吐出される。
【0044】
次に、マルチドロップ方式による階調印字について、図9及び図10を用いて説明する。マルチドロップ方式は、インク液滴の大きさを変えずに1ドットに対して打ち込むインク液滴のドロップ数を可変して1ドットの濃度を変化させ、階調を表現する。そこで、ヘッド駆動回路23A〜23Eは、図8に示した通電波形の駆動パルス電圧を、1つのノズル72の電極69に複数回連続して繰り返し入力する。そうすると、このノズル72に対応したインク吐出口73からインク液滴が複数回連続して吐出される。すなわち、マルチドロップ方式による階調印字が行われる。
【0045】
図9の(a)〜(d)は、インク吐出口73から吐出するインク液滴81と、このインク液滴81が記録媒体2上に到達して浸透したインクドット82の状態を示す。
1階調印字のときには、図9の(a)に示すように、インク液滴81が1個(ドロップ数=1)である。このため、記録媒体2に浸透するインクの量は少ない。
2階調印字のときには、図9の(b)に示すように、インク液滴81が2個(ドロップ数=2)である。このため、記録媒体2に浸透するインクの量は、1階調印字のときの略2倍となり、ドットの径も大きくなる。
3階調印字のときには、図9の(c)に示すように、インク液滴81が3個(ドロップ数=3)である。このため、記録媒体2に浸透するインクの量は、1階調印字のときの略3倍となり、ドットの径はさらに大きくなる。
7階調印字のときには、図9の(d)に示すように、インク液滴81が7個(ドロップ数=7)である。このため、記録媒体2に浸透するインクの量は、1階調印字のときの略7倍となる。最大階調が7階調とすると、最大径のドットが記録媒体2に印字される。
なお、4階調印字から6階調印字までについては図示しないが、インク液滴の数が階調数に応じて増加し、記録媒体2に浸透するインクの量もそれに応じて増加する点は同じである。
【0046】
このように、マルチドロップ方式による階調印字の場合には、吐出するインク液滴の数と印字濃度との関係が直線的に変化する。したがって、駆動パルスの数によって吐出するインク液滴の数を制御することで、良好な階調印字が実現できる。
【0047】
図10は、最大階調を7階調として印字を行う場合の駆動パルス信号の通電波形を示す。インクジェットヘッド11A〜11Eは、あるノズルからインクを吐出するとき、側壁を共有する両隣のノズルは、同時にインクを吐出することはできない。そこで、各ノズル72を、“n”,“n−1”,“n+1”の3つのグループに分割する。具体的には、あるノズルがグループ“n”に属すると仮定すると、このノズルに対して一方の側に隣接するノズルがグループ“n−1”に属し、他方の側に隣接するノズルがグループ“n+1”に属するように分割する。そして、図10に示すように、グループ毎にタイミングをずらして、各ノズルの電極に駆動パルス信号を供給する。
【0048】
ここで、グループ間のディレイ時間を“Td”とすると、最大階調が7階調のときの3分割駆動に要するサイクルタイムTcは、次の(2)式で表される。
Tc=(Tt*7+Td)*3 …(2)
駆動周波数Fは、サイクルタイムTcの逆数になるので、次の(3)式で表される。
【0049】
F=1/(Tt*7+Td)*3 …(3)
以上が、連続吐出するインク液滴81のドロップ数を可変して記録媒体2上に形成されるインクドット82の径を制御するマルチドロップ方式のインクジェットヘッド11A〜11Eの動作原理である。
【0050】
さて、第1の実施形態で用いるインクジェットヘッド11A〜11Eは、インクの吐出体積によって最大駆動周波数が[表1]に示す値で駆動可能なものである。
【表1】
【0051】
すなわち、印字データが1Hexつまりは図8に示す基本駆動波形の印加回数が1回(1ドロップ)のときのインク吐出体積は6pLであり、そのときの最大駆動周波数は28000Hzである。印字データが2Hexつまりは図8に示す基本駆動波形の印加回数が2回(2ドロップ)のときのインク吐出体積は12pLであり、そのときの最大駆動周波数は16700Hzである。以下、印字データが3Hexから9Hexまでのインク吐出体積と最大駆動周波数との対応関係は、[表1]の通りである。
【0052】
このように、インクジェットヘッド11A〜11Eは、吐出するドロップ数が少なければ、その分、駆動周波数を高くできるという特性を有する。この特性を用いて、第1の実施形態では、図11に示すように、各カラーインク(K,C,M,Y)を吐出するインクジェットヘッド11A,11B,11C,11Dについては、主走査方向Xに1200dpiという高解像度で、しかも毎秒28000dotの速度で印字データにより1ドロップ(6Pl)のインク液滴81を吐出することにより、画像を形成する。かかる吐出制御は、第1の制御手段31によって実現される。
【0053】
一方、白インク(W)を吐出するインクジェットヘッド11Eについては、主走査方向Xに300dpiという低解像度で、しかも毎秒7000dotの速度で6ドロップ(36pL)のインク液滴81を連続して吐出することにより、下地としての画像を形成する。かかる吐出制御は、第2の制御手段32によって実現される。
【0054】
なお、副走査方向Yの解像度は、各カラーインク(K,C,M,Y)を吐出する場合と同様の1200dpiである。
【0055】
上述したような吐出制御による各カラーインク(K,C,M,Y)と白インク(W)の印字結果を、図12に示す。また、各カラーインク(K,C,M,Y)と白インク(W)の主走査方向Xの解像度、インクジェットヘッド11A,11B,11C,11D,11Eの駆動周波数、インク液滴81の吐出体積、主走査方向Xに対するインクジェットヘッド11A,11B,11C,11D,11Eの移動速度、及び、主走査方向Xの300dpiのときのインク液滴81の吐出体積は、それぞれ[表2]のようになる。
【表2】
【0056】
図12と表2とから明らかなように、白インク(W)の単位面積当たりの吐出量は、各カラーインク(K,C,M,Y)の約1.5倍となる。このため、記録媒体2の印刷面に対する白インク(W)の隠蔽性が向上する。その一方で、主走査方向Xの印字速度は、白インク(W)による印字の解像度を低くすることによって、各カラーインク(K,C,M,Y)の場合と等しくしており、低下はない。
【0057】
したがって、第1の実施形態のインクジェット記録装置1によれば、印字速度が低下することなく、また、インクジェットヘッドの数を増やすこともなく、白色インク(W)による記録媒体印刷面の隠蔽率を高め得る効果を奏する。
【0058】
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、各カラーインク(K,C,M,Y)を吐出するインクジェットヘッド11A,11B,11C,11Dについて、最大で2ドロップのインク液滴81を吐出することにより、画像を形成する場合である。なお、インクジェット記録装置1のハードウェアの部分については第1の実施形態と同一なので、図1〜図10及び表1については第2の実施形態でも用いるものとし、その詳しい説明は省略する。
【0059】
第2の実施形態の場合、図13に示すように、各カラーインク(K,C,M,Y)を吐出するインクジェットヘッド11A,11B,11C,11Dについては、主走査方向Xに1200dpiという高解像度で、しかも毎秒16700dotの速度で印字データにより2ドロップ(12Pl)または1ドロップ(6pL)のインク液滴81を吐出することにより、画像を形成する。つまり、画像は、2階調で表現される。かかる吐出制御は、第1の制御手段31によって実現される。
【0060】
一方、白インク(W)を吐出するインクジェットヘッド11Eについては、主走査方向Xに300dpiという低解像度で、しかも毎秒4175dotの速度で9ドロップ(54pL)のインク液滴81を連続して吐出することにより、下地としての画像を形成する。かかる吐出制御は、第2の制御手段32によって実現される。
【0061】
なお、副走査方向Yの解像度は、各カラーインク(K,C,M,Y)を吐出する場合と同様の1200dpiである。
【0062】
上述したような吐出制御による各カラーインク(K,C,M,Y)と白インク(W)の印字結果を、図14に示す。また、各カラーインク(K,C,M,Y)と白インク(W)の主走査方向Xの解像度、インクジェットヘッド11A,11B,11C,11D,11Eの駆動周波数、インク液滴81の吐出体積、主走査方向Xに対するインクジェットヘッド11A,11B,11C,11D,11Eの移動速度、及び、主走査方向Xの300dpiのときのインク液滴81の吐出体積は、それぞれ[表3]のようになる。
【表3】
【0063】
図14と表3とから明らかなように、白インク(W)の単位面積当たりの吐出量は、各カラーインク(K,C,M,Y)の約1.125倍となる。このため、記録媒体2の印刷面に対する白インク(W)の隠蔽性が向上する。その一方で、主走査方向Xの印字速度は、白インク(W)による印字の解像度を低くすることによって、各カラーインク(K,C,M,Y)の場合と等しくしており、低下はない。
【0064】
したがって、第2の実施形態のインクジェット記録装置1においても、第1の実施形態と同様の作用効果を奏し得る。
【0065】
なお、前記実施形態では、5つのインクジェットヘッド11A,11B,11C,11D,11Eを搭載したインクジェット記録装置1に適用した場合を示したが、ヘッドの個数は5つに限定されるものではない。少なくとも、カラーインクのように印字解像度が要求される第1のインクと、白色インクのように記録媒体2の記録面の隠蔽性が要求される第2のインクとを用いる2以上のインクジェットヘッドを搭載したインクジェット記録装置であれば、本実施形態を適用できるものである。
【0066】
また、前記実施形態では、第2のインクを下地用の白色インク(W)としたが、第2のインクはこれに限定されるものではない。例えば、第1のインクであるカラーインク(K,C,M,Y)によって記録媒体2の記録面に形成した画像をオーバーコートするためのインクを第2のインクとするインクジェット記録装置にも、本実施形態を適用できるものである。
【0067】
同様に、第1のインクであるカラーインク(K,C,M,Y)によって記録媒体2の記録面に形成される画像をアンダーコートするためのインクを第2のインクとするインクジェット記録装置にも、本実施形態を適用できるものである。
【0068】
また、解像度を必要とする第1のインクを回路記号用のインクとし、隠蔽性を必要とする第2のインクをレジストインクとして、回路基板をプリントするインクジェット記録装置にも、本実施形態を適用することができる。
【0069】
また、前記実施形態では、各インクジェットヘッド11A〜11Eを主走査方向Xに配列してヘッドキャリッジ12に搭載し、このヘッドキャリッジ12を主走査方向Xに往復移動させて、副走査方向Yに移動する記録媒体2の記録面に画像を形成するインクジェット記録装置1を示したが、記録媒体2の搬送方向に沿って複数のライン型ヘッドを配置してなるインクジェット記録装置にも、本実施形態を適用することは可能である。
【0070】
この他、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0071】
1…インクジェット記録装置、2…記録媒体、11A〜11E…インクジェットヘッド、12…ヘッドキャリッジ、21…搬送モータ、22…キャリッジモータ、23A〜23E…ヘッド駆動回路、24…プリンタコントローラ、31…第1の制御手段、32…第2の制御手段。
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、マルチドロップ方式のインクジェットヘッドを備えたインクジェット記録装置及び記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、黒色インク(K)、シアン色インク(C)、マゼンタ色インク(M)、イエロー色インク(Y)等のカラーインクとは別に、白色インク(W)を用い、記録媒体の印刷面に白色の下地を形成した後、この下地の上にカラーの画像を形成するようにしたインクジェット記録装置が知られている。
【0003】
このようなインクジェット記録装置で印刷されるカラー画像は、白色インクによる記録媒体印刷面の隠蔽率が高いほど、品質が向上する。そこで、この種のインクジェット記録装置は、隠蔽率を高めるための工夫がなされている。例えば、白色インクによる印字走査回数を他のカラーインクよりも増やすことで、隠蔽率を高める工夫が知られている。また、白色インクのヘッド数を他のカラーインクよりも多くすることで、隠蔽率を高める工夫も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−194847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、白色インクによる印字走査回数を他のカラーインクよりも増やした場合には、1画像の印字速度が低下するという問題がある。また、白色インクのヘッド数を他のカラーインクよりも多くした場合には、ヘッドの総数が増えるために装置が大型化する上、製品コストやメンテナンスにかかるコストも高くなるという問題がある。このため、これらの問題を解決できるインクジェット記録装置及び記録方法が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態によれば、連続吐出するインク液滴のドロップ数を可変して記録媒体上に形成されるインクドットの径を制御するマルチドロップ方式の複数のインクジェットヘッドを備えたインクジェット記録装置において、印字解像度が要求される第1のインクを吐出するインクジェットヘッドについては、主走査方向に形成されるインクドットの数を多くかつ1ドットに対するドロップ数が少なくなるようにインク液滴の吐出を制御し、記録媒体の記録面の隠蔽性が要求される第2のインクを吐出するインクジェットヘッドについては、主走査方向に形成されるインクドットの数を少なくかつ1ドットに対するドロップ数が多くなるようにインク液滴の吐出を制御するようにしたものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】インクジェット記録装置の要部構成を示すブロック図。
【図2】プリンタコントローラの要部構成を示すブロック図。
【図3】ヘッド駆動回路の要部構成を示すブロック図。
【図4】インクジェットヘッドの一部を分解して示す斜視図。
【図5】インクジェットヘッドの前方部における横断面図。
【図6】インクジェットヘッドの前方部における縦断面図。
【図7】インクジェットヘッドの動作原理の説明に用いる模式図。
【図8】インクジェットヘッドのノズルの電極に印加される駆動パルス信号の通電波形図。
【図9】インクジェットヘッドのマルチドロップ方式による階調印字の説明に用いる模式図。
【図10】インクジェットヘッドにおいて最大階調を7階調として印字を行う場合の駆動パルス信号の通電波形図。
【図11】第1の実施形態において、各カラーインクを吐出するインクジェットヘッドと白色インクを吐出するインクジェットヘッドとに対してそれぞれ印加される駆動パルス信号の通電波形図。
【図12】第1の実施形態における各カラーインクと白色インクの印字結果を示す模式図。
【図13】第2の実施形態において、各カラーインクを吐出するインクジェットヘッドと白色インクを吐出するインクジェットヘッドとに対してそれぞれ印加される駆動パルス信号の通電波形図。
【図14】第2の実施形態における各カラーインクと白色インクの印字結果を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、インクジェット記録装置及び記録方法の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
なお、この実施形態は、記録媒体の印刷面に白色の下地を形成した後、この下地の上にカラーの画像を形成するようにしたインクジェット記録装置に適用した場合である。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、インクジェット記録装置1の要部構成を示すブロック図である。図1において、矢印Xは主走査方向を示しており、矢印Yは副走査方向を示している。インクジェット記録装置1は、搬送モータ21を動力源として駆動する図示しない搬送機構により、記録媒体2を副走査方向Yに搬送する。なお、記録媒体2は、インクジェット記録装置1によって画像形成が可能なものであれば、その材質、厚み、大きさ等は特に限定されるものではない。
【0010】
インクジェット記録装置1は、5つのインクジェットヘッド11A,11B,11C,11D,11Eを搭載したヘッドキャリッジ12を備えている。
【0011】
ヘッドキャリッジ12は、主走査方向Xの一端側と他端側とにそれぞれ配置された一対のプーリ14A,14B間に掛け渡されたキャリッジベルト13に取り付けられている。一端側のプーリ14Aは、正逆転が可能なキャリッジモータ22の回転軸に固定されている。その結果、キャリッジモータ22の正転及び逆転により、キャリッジベルト13は、主走査方向Xに往復移動する。そして、このキャリッジベルト13の往復移動に付勢されて、ヘッドキャリッジ12は主走査方向Xに往復移動する。
【0012】
インクジェット記録装置1は、ヘッドキャリッジ12が主走査方向Xに往復移動する際に、このキャリッジ12の搭載された各インクジェットヘッド11A〜11Eから選択的にインク液滴を吐出させて、記録媒体2の記録面にインクドットによる画像を形成する。
【0013】
各インクジェットヘッド11A〜11Eは、それぞれ連続吐出するインク液滴のドロップ数を可変して記録媒体2上に形成されるインクドットの径を制御するマルチドロップ方式によるものである。各インクジェットヘッド11A〜11Eのうち、ヘッド11Aは、黒色インク(K)のヘッド(以下、黒ヘッド11Aと称する)である。ヘッド11Bは、シアン色インク(C)のヘッド(以下、シアンヘッド11Bと称する)である。ヘッド11Cは、マゼンタ色インク(M)のヘッド(以下、マゼンタヘッド11Cと称する)である。ヘッド11Dは、イエロー色インク(Y)のヘッド(以下、イエローヘッド11Dと称する)である。ヘッド11Eは、白色インク(W)のヘッド(以下、白ヘッド11Eと称する)である。
【0014】
ここで、黒、シアン、マゼンタ及びイエローの各カラーインク(K,C,M,Y)は、印字解像度が要求される第1のインクである。白色インク(W)は、記録媒体2の記録面の隠蔽性が要求される第2のインクである。
【0015】
インクジェット記録装置1は、さらに、各インクジェットヘッド11A〜11E別のヘッド駆動回路23A,23B,23C,23D,23Eと、プリンタコントローラ24とを備えている。
【0016】
プリンタコントローラ24は、パーソナルコンピュータ等のホスト装置3から周知のインターフェースを介して供給される印刷データを基に、搬送モータ21、キャリッジモータ22及び各ヘッド駆動回路23A〜23Eを制御する。その結果、記録媒体2の印刷面に当該印刷データに対応したカラー画像が形成される。
【0017】
プリンタコントローラ24は、第1の制御手段31と、第2の制御手段32とを備えている。
第1の制御手段31は、印字解像度が要求される第1のインク(K,C,M,Y)を吐出するインクジェットヘッド11A,11B,11C,11Dについて、主走査方向Xに形成されるインクドットの数を多くかつ1ドットのドロップ数が少なくなるようにインク液滴の吐出を制御する。
【0018】
第2の制御手段32は、記録媒体2の記録面の隠蔽性が要求される第2のインク(W)を吐出するインクジェットヘッド11Eついて、主走査方向Xに形成されるインクドットの数を少なくかつ1ドットのドロップ数が多くなるようにインク液滴の吐出を制御する。
なお、これまでの説明から明らかなように、主走査方向Xとは、記録媒体2とインクジェットヘッド11A〜11Eとの相対移動時に印字する方向である。
【0019】
図2は、プリンタコントローラ24の要部構成を示すブロック図である。プリンタコントローラ24は、制御部本体を構成するCPU(Central Processing Unit)41、プログラム等の固定的データを格納したROM(Read Only Memory)42、可変的なデータを一時的に記憶するための領域が形成されるRAM(Random Access Memory)43の他、通信インターフェース44、I/O(Input/Output)ポート45、第1のモータドライバ46、第2のモータドライバ47等を備えている。CPU41は、ROM42、RAM、通信インターフェース44、I/Oポート45及び第1,第2のモータドライバ46,47を、アドレスバス,データバスなどのバスライン48で接続している。
【0020】
通信インターフェース44は、予め設定された通信プロトコルに従い、ホスト装置3から送信される印刷データを取込む。CPU41は、通信インターフェース44を介して取込んだ印刷データを解析して、インクジェットヘッド11A〜11E毎の印字データを作成する。
【0021】
I/Oポート45は、各ヘッド駆動回路23A〜23Eを電気的に接続する。CPU41は、I/Oポート45を介して各ヘッド駆動回路23A〜23Eに、それぞれその駆動回路23A〜23Eに対応するインクジェットヘッド11A〜11Eの印字データと制御信号とを送信する。制御信号は、シフトクロック信号とラッチパルス信号とタイミングパルス信号とを含む。
【0022】
第1のモータドライバ46は、CPU41の指令により、搬送モータ21を駆動する。第2のモータドライバ47は、CPU41の指令により、キャリッジモータ22を駆動する。
【0023】
CPU41は、ROM42に記憶されたプログラムに基づいて、RAM43の領域を適宜使用することにより、第1の制御手段31及び第2の制御手段32としての制御を実行する。
【0024】
各ヘッド駆動回路23A〜23Eは、同一構成であり、その要部を図3で示す。図3は、ヘッド駆動回路23A〜23Eのブロック図である。
【0025】
ヘッド駆動回路23A〜23Eは、シフトレジスタ51と、ラッチ回路52と、出力制御回路53と、駆動波形発生回路54とを備える。シフトレジスタ51はラッチ回路52と接続し、ラッチ回路52は出力制御回路53と接続し、出力制御回路53は駆動波形発生回路54と接続し、駆動波形発生回路54はインクジェットヘッド11A〜11Eと接続している。
【0026】
シフトレジスタ51は、プリンタコントローラ24から供給される印字データを、同じくプリンタコントローラ24から供給されるシフトクロック信号に同期して順次シフトしながら格納する。ラッチ回路52は、シフトレジスタ51に格納された印字データを、プリンタコントローラ24から供給されるラッチパルス信号に応じてラッチする。出力制御回路53は、ラッチ回路52でラッチされた印字データを、プリンタコントローラ24から供給されるタイミングパルス信号に同期して駆動波形発生回路54に出力する。駆動波形発生回路54は、出力制御回路53から供給される印字データを駆動波形パルス信号に変換して、インクジェットヘッド11A〜11Eに出力する。
【0027】
各インクジェットヘッド11A〜11Eは、同一構成であり、その要部を図4〜図6で示す。図4は、インクジェットヘッド11A〜11Eの一部を分解して示す斜視図、図5は、同ヘッド11A〜11Eの前方部における横断面図、図6は、同ヘッド11A〜11Eの前方部における縦断面図である。
【0028】
インクジェットヘッド11A〜11Eは、ベース基板61の前方側の上面に第1の圧電部材62を接合し、この第1の圧電部材62の上に第2の圧電部材63を接合する。インクジェットヘッド11A〜11Eは、図5の矢印で示すように、第1の圧電部材62と第2の圧電部材63とを、板厚方向に沿って互いに相反する方向に分極して接合する。そしてインクジェットヘッド11A〜11Eは、この接合した圧電部材62,63の先端側から後端側に向けて多数の長尺な溝68を設ける。各溝68は、間隔が一定でありかつ平行である。各溝68は、先端が開口し、後端が上方に斜傾する。
【0029】
インクジェットヘッド11A〜11Eは、各溝68の側壁及び底面に電極69を設ける。さらにインクジェットヘッド11A〜11Eは、各溝68の後端から第2の圧電部材63の後部上面に向けて、電極69から延出された引出し電極70を設ける。
【0030】
インクジェットヘッド11A〜11Eは、各溝68の上部を天板64で塞ぎ、各溝68の先端をオリフィスプレート65で塞ぐ。天板64は、その内側後方に共通インク室71を備える。インクジェットヘッド11A〜11Eは、天板64とオリフィスプレート65とで囲まれた各溝68によって、インクの吐出を行うノズル72を形成する。ノズル72は、インク室とも称される。インクジェットヘッド11A〜11Eは、オリフィスプレート65の各溝68と対向する位置にインク吐出口73を開ける。
【0031】
インクジェットヘッド11A〜11Eは、ベース基板61の後方側の上面に、導電パターン74が形成されたプリント基板75を接合し、このプリント基板75の上に、駆動手段であるヘッド駆動回路23A〜23Eを内蔵したドライブIC76を搭載する。ドライブIC76は、導電パターン74に接続する。導電パターン74は、各引出し電極70とワイヤボンディングにより導線77で結合する。
【0032】
次に、上記の如く構成された各インクジェットヘッド11A〜11Eの動作原理について、図7及び図8を用いて説明する。
【0033】
図7の(a)は、中央のノズル72aと、このノズル72aに隣接する両隣のノズル72b,72cの電極69がいずれも接地電位の状態を示している。この状態では、ノズル72aとノズル72b及びノズル72aとノズル72cとで挟まれた圧電部材62,63からなる側壁78a,78bは、何ら歪み作用を受けない。
【0034】
図7の(b)は、中央のノズル72aの電極69に負電圧(−Vs)が印加された状態を示している。なお、両隣のノズル72b,72cの電極69はいずれも接地電位である。この状態では、各側壁78a,78bに、圧電部材62,63の分極方向と直交する方向に電界が作用する。この作用により、各側壁78a,78bは、ノズル72aの容積を拡大するようにそれぞれ外側に変形する。
【0035】
図7の(c)は、中央のノズル72aの電極69に正電圧(+Vs)が印加された状態を示している。なお、両隣のノズル72b,72cの電極69はいずれも接地電位である。この状態では、各側壁78a,78bに、圧電部材62,63の分極方向と直交する方向で図7(b)のときとは逆の方向に電界が作用する。この作用により、各側壁78a,78bは、ノズル72aの容積を縮小するようにそれぞれ内側に変形する。
【0036】
図8は、ノズル72aからインク液滴を吐出するためにノズル72aの電極69に印加される駆動パルス信号の通電波形を示している。時間Ttによって示される区間は、インク液滴(1ドロップ)の吐出に必要な時間であり、この時間Ttは、準備区間の時間T1、吐出区間の時間T2及び後処理区間の時間T3に区分される。さらに、準備時間T1は、定常区間の時間Taと拡大区間の時間(T1−Ta)とに細分化され、吐出区間の時間T2は、維持区間の時間Tbと復元区間の時間(T2−Tb)とに細分化される。準備時間T1、吐出時間T2及び後処理時間T3は、使用するインクや温度等の条件により、適切な値に設定される。
【0037】
図8に示すように、ヘッド駆動回路23A〜23Eは、先ず、時点t0において、ノズル72a,72b,72cに対応した各電極69にそれぞれ0ボルトの電圧を印加する。そして、定常時間Taが経過するのを待機する。この間、各ノズル72a,72b,72cは、図7の(a)の状態となる。
【0038】
定常時間Taが経過して時点t1になると、ヘッド駆動回路23A〜23Eは、ノズル72aに対応した電極69に所定の負電圧(−Vs)を印加する。そして、準備時間T1が経過するのを待機する。負電圧(−Vs)が印加されると、ノズル72aの両側の側壁78a,78bが、ノズル72aの容積を拡大するようにそれぞれ外側に変形して、図7の(b)の状態となる。この変形により、ノズル72a内の圧力が低下する。このため、共通インク室71からノズル72a内にインクが流れ込む。
【0039】
準備時間T1が経過して時点t2になると、ヘッド駆動回路23A〜23Eは、さらに維持時間Tbが経過するまで、ノズル72aに対応した電極69に負電圧(−Vs)を印加し続ける。この間、各ノズル72a,72b,72cは、図7の(b)の状態を維持する。
【0040】
維持時間Tbが経過して時点t3になると、ヘッド駆動回路23A〜23Eは、ノズル72aに対応した電極69に印加する電圧を0ボルトに戻す。そして、吐出時間T2が経過するのを待機する。印加電圧が0ボルトになると、ノズル72aの両側の側壁78a,78bが定常状態に復元されて、図7の(a)の状態に戻る。この復元により、ノズル72a内の圧力が増大する。このため、ノズル72aに対応したインク吐出口73からインク液滴が吐出する。
【0041】
吐出時間T2が経過して時点t4になると、ヘッド駆動回路23A〜23Eは、ノズル72aに対応した電極69に所定の正電圧(+Vs)を印加する。そして、後処理時間T3が経過するのを待機する。正電圧(+Vs)が印加されると、ノズル72aの両側の側壁78a,78bが、ノズル72aの容積を縮小するようにそれぞれ内側に変形して、図7の(c)の状態となる。この変形により、ノズル72a内の圧力がさらに増大する。このため、インク液滴の吐出によりノズル72a内に生じる急激な圧力低下が緩和される。
【0042】
後処理時間T3が経過して時点t5になると、ヘッド駆動回路23A〜23Eは、ノズル72aに対応した電極69に印加する電圧を再度0ボルトに戻す。印加電圧が0ボルトに戻されたことに応じて、ノズル72aの両側の側壁78a,78bが定常状態に復元される。すなわち、各ノズル72a,72b,72cは、図7の(a)の状態に戻る。
【0043】
ヘッド駆動回路23A〜23Eは、図8に示した通電波形の駆動パルス信号をノズル72aの電極69に供給する。そうすると、ノズル72aに対応したインク吐出口73から1ドロップのインク液滴が吐出される。
【0044】
次に、マルチドロップ方式による階調印字について、図9及び図10を用いて説明する。マルチドロップ方式は、インク液滴の大きさを変えずに1ドットに対して打ち込むインク液滴のドロップ数を可変して1ドットの濃度を変化させ、階調を表現する。そこで、ヘッド駆動回路23A〜23Eは、図8に示した通電波形の駆動パルス電圧を、1つのノズル72の電極69に複数回連続して繰り返し入力する。そうすると、このノズル72に対応したインク吐出口73からインク液滴が複数回連続して吐出される。すなわち、マルチドロップ方式による階調印字が行われる。
【0045】
図9の(a)〜(d)は、インク吐出口73から吐出するインク液滴81と、このインク液滴81が記録媒体2上に到達して浸透したインクドット82の状態を示す。
1階調印字のときには、図9の(a)に示すように、インク液滴81が1個(ドロップ数=1)である。このため、記録媒体2に浸透するインクの量は少ない。
2階調印字のときには、図9の(b)に示すように、インク液滴81が2個(ドロップ数=2)である。このため、記録媒体2に浸透するインクの量は、1階調印字のときの略2倍となり、ドットの径も大きくなる。
3階調印字のときには、図9の(c)に示すように、インク液滴81が3個(ドロップ数=3)である。このため、記録媒体2に浸透するインクの量は、1階調印字のときの略3倍となり、ドットの径はさらに大きくなる。
7階調印字のときには、図9の(d)に示すように、インク液滴81が7個(ドロップ数=7)である。このため、記録媒体2に浸透するインクの量は、1階調印字のときの略7倍となる。最大階調が7階調とすると、最大径のドットが記録媒体2に印字される。
なお、4階調印字から6階調印字までについては図示しないが、インク液滴の数が階調数に応じて増加し、記録媒体2に浸透するインクの量もそれに応じて増加する点は同じである。
【0046】
このように、マルチドロップ方式による階調印字の場合には、吐出するインク液滴の数と印字濃度との関係が直線的に変化する。したがって、駆動パルスの数によって吐出するインク液滴の数を制御することで、良好な階調印字が実現できる。
【0047】
図10は、最大階調を7階調として印字を行う場合の駆動パルス信号の通電波形を示す。インクジェットヘッド11A〜11Eは、あるノズルからインクを吐出するとき、側壁を共有する両隣のノズルは、同時にインクを吐出することはできない。そこで、各ノズル72を、“n”,“n−1”,“n+1”の3つのグループに分割する。具体的には、あるノズルがグループ“n”に属すると仮定すると、このノズルに対して一方の側に隣接するノズルがグループ“n−1”に属し、他方の側に隣接するノズルがグループ“n+1”に属するように分割する。そして、図10に示すように、グループ毎にタイミングをずらして、各ノズルの電極に駆動パルス信号を供給する。
【0048】
ここで、グループ間のディレイ時間を“Td”とすると、最大階調が7階調のときの3分割駆動に要するサイクルタイムTcは、次の(2)式で表される。
Tc=(Tt*7+Td)*3 …(2)
駆動周波数Fは、サイクルタイムTcの逆数になるので、次の(3)式で表される。
【0049】
F=1/(Tt*7+Td)*3 …(3)
以上が、連続吐出するインク液滴81のドロップ数を可変して記録媒体2上に形成されるインクドット82の径を制御するマルチドロップ方式のインクジェットヘッド11A〜11Eの動作原理である。
【0050】
さて、第1の実施形態で用いるインクジェットヘッド11A〜11Eは、インクの吐出体積によって最大駆動周波数が[表1]に示す値で駆動可能なものである。
【表1】
【0051】
すなわち、印字データが1Hexつまりは図8に示す基本駆動波形の印加回数が1回(1ドロップ)のときのインク吐出体積は6pLであり、そのときの最大駆動周波数は28000Hzである。印字データが2Hexつまりは図8に示す基本駆動波形の印加回数が2回(2ドロップ)のときのインク吐出体積は12pLであり、そのときの最大駆動周波数は16700Hzである。以下、印字データが3Hexから9Hexまでのインク吐出体積と最大駆動周波数との対応関係は、[表1]の通りである。
【0052】
このように、インクジェットヘッド11A〜11Eは、吐出するドロップ数が少なければ、その分、駆動周波数を高くできるという特性を有する。この特性を用いて、第1の実施形態では、図11に示すように、各カラーインク(K,C,M,Y)を吐出するインクジェットヘッド11A,11B,11C,11Dについては、主走査方向Xに1200dpiという高解像度で、しかも毎秒28000dotの速度で印字データにより1ドロップ(6Pl)のインク液滴81を吐出することにより、画像を形成する。かかる吐出制御は、第1の制御手段31によって実現される。
【0053】
一方、白インク(W)を吐出するインクジェットヘッド11Eについては、主走査方向Xに300dpiという低解像度で、しかも毎秒7000dotの速度で6ドロップ(36pL)のインク液滴81を連続して吐出することにより、下地としての画像を形成する。かかる吐出制御は、第2の制御手段32によって実現される。
【0054】
なお、副走査方向Yの解像度は、各カラーインク(K,C,M,Y)を吐出する場合と同様の1200dpiである。
【0055】
上述したような吐出制御による各カラーインク(K,C,M,Y)と白インク(W)の印字結果を、図12に示す。また、各カラーインク(K,C,M,Y)と白インク(W)の主走査方向Xの解像度、インクジェットヘッド11A,11B,11C,11D,11Eの駆動周波数、インク液滴81の吐出体積、主走査方向Xに対するインクジェットヘッド11A,11B,11C,11D,11Eの移動速度、及び、主走査方向Xの300dpiのときのインク液滴81の吐出体積は、それぞれ[表2]のようになる。
【表2】
【0056】
図12と表2とから明らかなように、白インク(W)の単位面積当たりの吐出量は、各カラーインク(K,C,M,Y)の約1.5倍となる。このため、記録媒体2の印刷面に対する白インク(W)の隠蔽性が向上する。その一方で、主走査方向Xの印字速度は、白インク(W)による印字の解像度を低くすることによって、各カラーインク(K,C,M,Y)の場合と等しくしており、低下はない。
【0057】
したがって、第1の実施形態のインクジェット記録装置1によれば、印字速度が低下することなく、また、インクジェットヘッドの数を増やすこともなく、白色インク(W)による記録媒体印刷面の隠蔽率を高め得る効果を奏する。
【0058】
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、各カラーインク(K,C,M,Y)を吐出するインクジェットヘッド11A,11B,11C,11Dについて、最大で2ドロップのインク液滴81を吐出することにより、画像を形成する場合である。なお、インクジェット記録装置1のハードウェアの部分については第1の実施形態と同一なので、図1〜図10及び表1については第2の実施形態でも用いるものとし、その詳しい説明は省略する。
【0059】
第2の実施形態の場合、図13に示すように、各カラーインク(K,C,M,Y)を吐出するインクジェットヘッド11A,11B,11C,11Dについては、主走査方向Xに1200dpiという高解像度で、しかも毎秒16700dotの速度で印字データにより2ドロップ(12Pl)または1ドロップ(6pL)のインク液滴81を吐出することにより、画像を形成する。つまり、画像は、2階調で表現される。かかる吐出制御は、第1の制御手段31によって実現される。
【0060】
一方、白インク(W)を吐出するインクジェットヘッド11Eについては、主走査方向Xに300dpiという低解像度で、しかも毎秒4175dotの速度で9ドロップ(54pL)のインク液滴81を連続して吐出することにより、下地としての画像を形成する。かかる吐出制御は、第2の制御手段32によって実現される。
【0061】
なお、副走査方向Yの解像度は、各カラーインク(K,C,M,Y)を吐出する場合と同様の1200dpiである。
【0062】
上述したような吐出制御による各カラーインク(K,C,M,Y)と白インク(W)の印字結果を、図14に示す。また、各カラーインク(K,C,M,Y)と白インク(W)の主走査方向Xの解像度、インクジェットヘッド11A,11B,11C,11D,11Eの駆動周波数、インク液滴81の吐出体積、主走査方向Xに対するインクジェットヘッド11A,11B,11C,11D,11Eの移動速度、及び、主走査方向Xの300dpiのときのインク液滴81の吐出体積は、それぞれ[表3]のようになる。
【表3】
【0063】
図14と表3とから明らかなように、白インク(W)の単位面積当たりの吐出量は、各カラーインク(K,C,M,Y)の約1.125倍となる。このため、記録媒体2の印刷面に対する白インク(W)の隠蔽性が向上する。その一方で、主走査方向Xの印字速度は、白インク(W)による印字の解像度を低くすることによって、各カラーインク(K,C,M,Y)の場合と等しくしており、低下はない。
【0064】
したがって、第2の実施形態のインクジェット記録装置1においても、第1の実施形態と同様の作用効果を奏し得る。
【0065】
なお、前記実施形態では、5つのインクジェットヘッド11A,11B,11C,11D,11Eを搭載したインクジェット記録装置1に適用した場合を示したが、ヘッドの個数は5つに限定されるものではない。少なくとも、カラーインクのように印字解像度が要求される第1のインクと、白色インクのように記録媒体2の記録面の隠蔽性が要求される第2のインクとを用いる2以上のインクジェットヘッドを搭載したインクジェット記録装置であれば、本実施形態を適用できるものである。
【0066】
また、前記実施形態では、第2のインクを下地用の白色インク(W)としたが、第2のインクはこれに限定されるものではない。例えば、第1のインクであるカラーインク(K,C,M,Y)によって記録媒体2の記録面に形成した画像をオーバーコートするためのインクを第2のインクとするインクジェット記録装置にも、本実施形態を適用できるものである。
【0067】
同様に、第1のインクであるカラーインク(K,C,M,Y)によって記録媒体2の記録面に形成される画像をアンダーコートするためのインクを第2のインクとするインクジェット記録装置にも、本実施形態を適用できるものである。
【0068】
また、解像度を必要とする第1のインクを回路記号用のインクとし、隠蔽性を必要とする第2のインクをレジストインクとして、回路基板をプリントするインクジェット記録装置にも、本実施形態を適用することができる。
【0069】
また、前記実施形態では、各インクジェットヘッド11A〜11Eを主走査方向Xに配列してヘッドキャリッジ12に搭載し、このヘッドキャリッジ12を主走査方向Xに往復移動させて、副走査方向Yに移動する記録媒体2の記録面に画像を形成するインクジェット記録装置1を示したが、記録媒体2の搬送方向に沿って複数のライン型ヘッドを配置してなるインクジェット記録装置にも、本実施形態を適用することは可能である。
【0070】
この他、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0071】
1…インクジェット記録装置、2…記録媒体、11A〜11E…インクジェットヘッド、12…ヘッドキャリッジ、21…搬送モータ、22…キャリッジモータ、23A〜23E…ヘッド駆動回路、24…プリンタコントローラ、31…第1の制御手段、32…第2の制御手段。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続吐出するインク液滴のドロップ数を可変して記録媒体上に形成されるインクドットの径を制御するマルチドロップ方式の複数のインクジェットヘッドと、
印字解像度が要求される第1のインクを吐出する前記インクジェットヘッドについては、前記記録媒体と前記インクジェットヘッドとの相対移動時に印字する方向である主走査方向に形成される前記インクドットの数を多くかつ1ドットに対する前記ドロップ数が少なくなるように前記インク液滴の吐出を制御する第1の制御手段と、
前記記録媒体の記録面の隠蔽性が要求される第2のインクを吐出する前記インクジェットヘッドについては、前記主走査方向に形成される前記インクドットの数を少なくかつ1ドットに対する前記ドロップ数が多くなるように前記インク液滴の吐出を制御する第2の制御手段と、
を具備したことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記第1のインクはカラーインクであり、前記第2のインクは白色インクであることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記第1のインクはカラーインクであり、前記第2のインクはオーバーコート用インクであることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記第1のインクはカラーインクであり、前記第2のインクはアンダーコート用インクであることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記第1のインクは回路記号用のインクであり、前記第2のインクはレジストインクであることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
連続吐出するインク液滴のドロップ数を可変して記録媒体上に形成されるインクドットの径を制御するマルチドロップ方式の複数のインクジェットヘッドを備えたインクジェット記録装置の記録方法であって、
印字解像度が要求される第1のインクを吐出する前記インクジェットヘッドについては、前記記録媒体と前記インクジェットヘッドとの相対移動時に印字する方向である主走査方向に形成される前記インクドットの数を多くかつ1ドットに対する前記ドロップ数が少なくなるように前記インク液滴の吐出を制御し、
前記記録媒体の記録面の隠蔽性が要求される第2のインクを吐出する前記インクジェットヘッドについては、前記主走査方向に形成される前記インクドットの数を少なくかつ1ドットに対する前記ドロップ数が多くなるように前記インク液滴の吐出を制御することを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項7】
前記第1のインクはカラーインクであり、前記第2のインクは白色インクであることを特徴とする請求項6記載のインクジェット記録方法。
【請求項8】
前記第1のインクはカラーインクであり、前記第2のインクはオーバーコート用インクであることを特徴とする請求項6記載のインクジェット記録方法。
【請求項9】
前記第1のインクはカラーインクであり、前記第2のインクはアンダーコート用インクであることを特徴とする請求項6記載のインクジェット記録方法。
【請求項10】
前記第1のインクは回路記号用のインクであり、前記第2のインクはレジストインクであることを特徴とする請求項6記載のインクジェット記録方法。
【請求項1】
連続吐出するインク液滴のドロップ数を可変して記録媒体上に形成されるインクドットの径を制御するマルチドロップ方式の複数のインクジェットヘッドと、
印字解像度が要求される第1のインクを吐出する前記インクジェットヘッドについては、前記記録媒体と前記インクジェットヘッドとの相対移動時に印字する方向である主走査方向に形成される前記インクドットの数を多くかつ1ドットに対する前記ドロップ数が少なくなるように前記インク液滴の吐出を制御する第1の制御手段と、
前記記録媒体の記録面の隠蔽性が要求される第2のインクを吐出する前記インクジェットヘッドについては、前記主走査方向に形成される前記インクドットの数を少なくかつ1ドットに対する前記ドロップ数が多くなるように前記インク液滴の吐出を制御する第2の制御手段と、
を具備したことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記第1のインクはカラーインクであり、前記第2のインクは白色インクであることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記第1のインクはカラーインクであり、前記第2のインクはオーバーコート用インクであることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記第1のインクはカラーインクであり、前記第2のインクはアンダーコート用インクであることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記第1のインクは回路記号用のインクであり、前記第2のインクはレジストインクであることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
連続吐出するインク液滴のドロップ数を可変して記録媒体上に形成されるインクドットの径を制御するマルチドロップ方式の複数のインクジェットヘッドを備えたインクジェット記録装置の記録方法であって、
印字解像度が要求される第1のインクを吐出する前記インクジェットヘッドについては、前記記録媒体と前記インクジェットヘッドとの相対移動時に印字する方向である主走査方向に形成される前記インクドットの数を多くかつ1ドットに対する前記ドロップ数が少なくなるように前記インク液滴の吐出を制御し、
前記記録媒体の記録面の隠蔽性が要求される第2のインクを吐出する前記インクジェットヘッドについては、前記主走査方向に形成される前記インクドットの数を少なくかつ1ドットに対する前記ドロップ数が多くなるように前記インク液滴の吐出を制御することを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項7】
前記第1のインクはカラーインクであり、前記第2のインクは白色インクであることを特徴とする請求項6記載のインクジェット記録方法。
【請求項8】
前記第1のインクはカラーインクであり、前記第2のインクはオーバーコート用インクであることを特徴とする請求項6記載のインクジェット記録方法。
【請求項9】
前記第1のインクはカラーインクであり、前記第2のインクはアンダーコート用インクであることを特徴とする請求項6記載のインクジェット記録方法。
【請求項10】
前記第1のインクは回路記号用のインクであり、前記第2のインクはレジストインクであることを特徴とする請求項6記載のインクジェット記録方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−139940(P2012−139940A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121(P2011−121)
【出願日】平成23年1月4日(2011.1.4)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月4日(2011.1.4)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]