説明

インクジェット記録装置

【課題】 記録紙が上流側の搬送ローラを抜けた後、排紙ローラで搬送する際の用紙後端部分の印字精度の向上、およびそれに伴って起こる記録紙の排紙ローラへの入り込み時の画像悪化を回避する。
【解決手段】 排紙ローラに従動回転する排紙ピンチローラを略円筒形状で、ローラ部ほぼ全幅を記録紙と接触させるよう構成する。排紙ピンチローラは両端部の外径が中央部分の外径に比べて小さく、両端部と中央部分とが滑らかに結ばれた形状にする。また、プラテンには排紙ローラと排紙ピンチローラの狭持部に向けてガイド形状を設け、狭持部上流には記録紙の端部の浮きを押さえる付勢ローラを配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラテンを挟んで配置された2本の搬送ローラにより記録紙を搬送して印字を行うインクジェット記録装置の用紙搬送性に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は記録紙を搬送ローラにより記録位置まで搬送して印字を行い、印字後は排紙ローラにより機外に排紙する。排紙ローラは排紙ローラと従動回転する従動ローラで圧接され、従動ローラは印字後のインクが転写しないように、特開平3−142247のように拍車を使用している。
【特許文献1】特開平3−142247号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、拍車は高価であり、また、上流側の搬送ローラを抜けた後の印字精度を向上させるためには、拍車の排紙ローラへの圧接力(以下、拍車圧とする)を上げる必要があるが、拍車圧を高くすると記録紙に傷をつけてしまう。
【0004】
本発明は、記録紙が上流側の搬送ローラを抜けた後、排紙ローラで搬送する際の用紙後端部分の印字精度の向上、およびそれに伴って起こる記録紙の排紙ローラへの入り込み時の画像悪化の回避を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記目的を達成するために、記録ヘッドと、記録紙を搬送する搬送方向上流側の第1搬送ローラと下流側の第2搬送ローラ、前記第1搬送ローラと第2搬送ローラそれぞれと従動回転する第1従動ローラと第2従動ローラと、第2搬送ローラ上流に配置され記録紙の浮きを防止し、さらに搬送される記録紙により従動回転させられる付勢ローラと、記録紙を支持し記録ヘッドと記録紙の間隔を規定するプラテンを備えるインクジェット記録装置において、前記第2従動ローラは略円筒形状にし、ローラ部のほぼ全幅を記録紙と接触させる。
【0006】
ここで、前記第2従動ローラは、ローラ部の両端部の外径が中央部分の外径に比べて小さく、両端部と中央部分とが滑らかに結ばれた形状をしている。
【0007】
前記第1搬送ローラは金属ローラ、前記第2搬送ローラは金属軸と金属軸と同軸な複数のそれぞれ同径のゴム部からなるゴムローラで構成する。
【0008】
また、前記第1従動ローラと第2従動ローラの各主動ローラへの圧接力は、第1従動ローラの方が大きくなるように設定する。
【0009】
また、前記プラテンは前記第2搬送ローラと第2従動ローラの狭持部に向けてガイドする複数のガイド形状を有し、前記第2搬送ローラのゴム部間にガイド形状が入り込むように構成する。
【0010】
また、前記プラテンは搬送方向に伸びる高さの異なる2種類以上のリブを有し、前記付勢ローラはバネにより前記プラテンの複数の突起のうち2番目以降に高いリブに圧接させる。
【0011】
さらに、前記付勢ローラは、記録紙の端部を抑える位置に配置する。
【0012】
前記付勢ローラは、前記プラテンの前記第2搬送ローラと第2従動ローラの狭持部に向けてガイドする複数のガイド形状それぞれの上流部分に配置する。
【0013】
記録ヘッドと、記録紙を搬送する搬送方向上流側の第1搬送ローラと下流側の第2搬送ローラ、前記第1搬送ローラと第2搬送ローラそれぞれと従動回転する第1従動ローラと第2従動ローラと、第2搬送ローラ記録紙の浮きを防止し記録紙の搬送により従動回転させられる付勢ローラと、記録紙を支持し記録ヘッドと記録紙の間隔を規定するプラテンを備えるインクジェット記録装置において、前記第1従動ローラと第2従動ローラを同一部品で構成する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、プラテンを挟んで配置された2本の搬送ローラにより記録紙を搬送する記録装置において、排紙部を安価に構成でき、印字精度も向上させることができる。さらには、排紙部分を幅広のピンチローラで構成することで、排紙側からも給紙可能な記録装置に発展させることも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明の実施の形態を複数の実施例に基づき図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は本発明による記録装置の紙送り部の斜視図、図2は略側面図である。
【0017】
紙送り部は、給紙部から給紙された記録紙を搬送するLFローラ11、LFローラ11と従動回転するピンチローラ12、LFローラ11から抜けた後の記録紙を搬送し、さらに印字終了した記録紙を機外に排出させる排紙ローラ13、排紙ローラ13と従動回転する排紙ピンチローラ14、記録紙を支持し記録ヘッド(不図示)と記録紙の距離を規定するプラテン16、排紙ローラ13の上流に位置し記録紙Pの浮きを防止する付勢ローラ15からなる。ここで、ピンチローラ12と排紙ピンチローラ14は同一形状である。
【0018】
LFローラ11は金属ローラ、排紙ローラ13は金属軸13bと金属軸13bと同軸な2つのそれぞれ同径のゴム部13aからなるゴムローラであり、軸受を介してシャーシ1に取り付けられる。
【0019】
ピンチローラ12はピンチローラホルダ17に取り付けられ、ピンチローラばね19によりLFローラ11に圧接されている。排紙ピンチローラ14は排紙ピンチローラホルダ18に取り付けられ、排紙ピンチローラばね20により排紙ローラ13に圧接されている。ここで、LFローラ11と排紙ローラ13のどちらにも噛んで用紙を搬送する際の送りを金属ローラで精度を出しやすいLFローラで規定するため、ピンチローラ12のLFローラ11への圧接力は、排紙ピンチローラ14の排紙ローラ13への圧接力より大きく設定する。また、ピンチローラ12と排紙ピンチローラ14はローラ端部で記録紙に跡や傷をつけないように、図4に示すようなローラ部の両端部の外径は中央部分の外径に比べて40μm(半径で20μm)ほど小さく、両端部と中央部分とが滑らかに結ばれた形状をしている。
【0020】
ここで、ピンチローラ12、排紙ピンチローラ14ともそれぞれピンチローラホルダ17、排紙ピンチローラホルダ18の回転軸17a、18aを中心に回動可能になっている。また、ピンチローラ12および排紙ピンチローラ14は、記録紙Pをプラテン16に押し付けて記録ヘッド(不図示)と記録紙Pの距離(以下、紙間とする)を安定させるために、それぞれLFローラ11とピンチローラ12、排紙ローラ13と排紙ピンチローラ14の中心を結ぶ直線は記録紙Pの搬送方向に直交する方向に対しプラテン16側に所定の角度傾くように取り付けられる。
【0021】
図3は紙送り部の略上面図である。プラテン16は上流プラテン161と下流プラテン162の2部品からなり、記録紙Pの搬送方向に紙間を規定する4本の同じ高さのリブ16aと、リブ16aよりわずかに低いリブ16bという2種類の高さのリブを有する。ここで、下流プラテン162のリブ16bのうち2本は排紙ローラ13と排紙ピンチローラ14との狭持部に向けたガイド形状16cを有している。下流プラテン162のガイド形状16cは排紙ローラ13のゴム部13aを外れた所にくるように構成する。
【0022】
付勢ローラ15は中心軸に貫通穴を有し、ばね軸である付勢ローラばね21を貫通穴に通した状態で排紙ピンチローラホルダ18に取り付けられる。ここで付勢ローラ15の幅方向の位置は記録紙の端部を押さえる位置に配置される。これによって、インクが打ち込まれた記録紙Pの端部が浮き上がるのを規制でき、記録紙Pは排紙ローラ13と排紙ピンチローラ14の狭持部へスムーズに入り込むようになる。付勢ローラ15は排紙ピンチローラホルダ18がシャーシ1に組み込まれた状態では下流プラテン162のリブ16b上に載るようになっている。また、記録紙Pのあり/なしで付勢ローラ15の圧接力の変化がないように、付勢ローラ15の中心軸と排紙ピンチローラホルダ18の回転軸18aは同軸になっている。
【0023】
次に記録紙Pの搬送動作について説明する。LFローラ11で搬送された記録紙Pは上流プラテン161、下流プラテン162のリブ16a上を搬送され、付勢ローラ15に噛みこまれさらにリブ16bのガイド形状16cに沿って排紙ローラ13と排紙ピンチローラ14の狭持部に搬送される。記録紙PはLFローラ11および排紙ローラ13で搬送されながら記録ヘッド(不図示)により印字を行われ、印字が終了したら排紙ローラ13により機外に排出される。
【実施例2】
【0024】
実施例1においては、ピンチローラ12と排紙ピンチローラ14は同一形状であったが、これらを別部品にして排紙ピンチローラ14をもっと幅広もしくは幅狭にしても良い。
【実施例3】
【0025】
図5は本実施例の紙送り部の略上面図である。実施例1においては、下流プラテン162のガイド形状16cの隣のリブ16bに付勢ローラ15を配置したが、記録紙の端部をきちんと押さえることができるならば、図5のようにガイド形状16cを有するリブ16b上に付勢ローラ15を配置しても良い。
【実施例4】
【0026】
図6は本実施例の排紙ローラ13と下流プラテン162の関係を表した上面図である。実施例1においては、排紙ローラ13は金属軸13bと金属軸と同軸な2つのそれぞれ同径のゴム部13aから構成されていたが、図6のように、ゴム部13を4個もしくはそれ以上で構成し、その間に多くの下流プラテン162のガイド形状16cを配置しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明による紙送り部の斜視図。
【図2】本発明による紙送り部の略側面図。
【図3】本発明による紙送り部の略上面図。
【図4】本発明によるピンチローラ又は、排紙ピンチローラの概略図。
【図5】本発明による第4の実施例における紙送り部の略上面図。
【図6】本発明による第5の実施例における紙送り部の略上面図。
【符号の説明】
【0028】
P 記録紙
1 シャーシ
11 LFローラ
12 ピンチローラ
13 排紙ローラ
13a ゴム部
13b 金属軸
14 排紙ピンチローラ
15 付勢ローラ
16 プラテン
161 上流プラテン
162 下流プラテン
16a リブ
16b リブ
16c ガイド形状
17 ピンチローラホルダ
17a ピンチローラホルダ回転軸
18 排紙ピンチローラホルダ
18a 排紙ピンチローラホルダ回転軸
19 ピンチローラばね
20 排紙ピンチローラばね
21 付勢ローラばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録ヘッドと、記録紙を搬送する搬送方向上流側の第1搬送ローラと下流側の第2搬送ローラ、前記第1搬送ローラと第2搬送ローラそれぞれと従動回転する第1従動ローラと第2従動ローラと、第2搬送ローラ上流に配置され記録紙の浮きを防止し、さらに搬送される記録紙により従動回転させられる付勢ローラと、記録紙を支持し記録ヘッドと記録紙の間隔を規定するプラテンを備えるインクジェット記録装置において、前記第2従動ローラは略円筒形状であり、ローラ部のほぼ全幅を記録紙と接触させることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記第2従動ローラは、ローラ部の両端部の外径が中央部分の外径に比べて小さく、両端部と中央部分とが滑らかに結ばれた形状を有することを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記第1搬送ローラは金属ローラであり、前記第2搬送ローラは、金属軸と金属軸と同軸な複数のそれぞれ同径のゴム部からなるゴムローラであることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記第1従動ローラと第2従動ローラの各主動ローラへの圧接力は、第1従動ローラの方が大きいことを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記プラテンは前記第2搬送ローラと第2従動ローラの狭持部に向けてガイドする複数のガイド形状を有し、前記第2搬送ローラのゴム部間にガイド形状が入り込むことを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記プラテンは搬送方向に伸びる高さの異なる2種類以上のリブを有し、前記付勢ローラはバネにより前記プラテンの複数の突起のうち2番目以降に高いリブに圧接されていることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記付勢ローラは、記録紙の端部を抑える位置に配置されていることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記付勢ローラは、前記プラテンの前記第2搬送ローラと第2従動ローラの狭持部に向けてガイドする複数のガイド形状それぞれの上流部分に配置されていることを特徴とする請求項6記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
記録ヘッドと、記録紙を搬送する搬送方向上流側の第1搬送ローラと下流側の第2搬送ローラ、前記第1搬送ローラと第2搬送ローラそれぞれと従動回転する第1従動ローラと第2従動ローラと、第2搬送ローラ記録紙の浮きを防止し記録紙の搬送により従動回転させられる付勢ローラと、記録紙を支持し記録ヘッドと記録紙の間隔を規定するプラテンを備えるインクジェット記録装置において、前記第1従動ローラと第2従動ローラを同一部品で構成することを特徴とするインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−193228(P2006−193228A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−3816(P2005−3816)
【出願日】平成17年1月11日(2005.1.11)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】