説明

インクジェット記録装置

【課題】交換式の廃インク吸収体を容易に入手可能で、かつ小型化された記録装置を提供する。
【解決手段】本発明のプリンタ1は、着脱可能な交換式インクタンク6から供給されるインクを吐出する記録ヘッド4と、該記録ヘッド6から強制的にインクを吸引するポンプ7を含む回復系2であると、吸引されたインクを保持する廃インク吸収部3とを備えており、廃インク吸収部3は、プリンタ1に固定された固定式廃インク収納部9を有するとともに、着脱可能な交換式廃インク収納部10を保持し、交換式廃インク収納部10が、少なくとも1つの使用済みの交換式インクタンク6であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
廃インク回収手段を備えたインクジェット記録方式の記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクの液滴を噴射して記録を行うこの種のインクジェット記録装置においては、記録ヘッドのインク吐出口面に付着したインクが乾燥して増粘・固着したり、紙粉やほこりなどの異物が付着したり、さらには記録ヘッド内に気泡が侵入したりすると、インクの吐出が不安定になるばかりか、吐出不良が発生する。そのため、インクジェット記録装置に記録ヘッドの吐出不良を回復するための負圧ポンプを用いたヘッド回復系を設け、回復動作により、インクを吸引する。
【0003】
回復動作によって吸引されたインクは記録装置本体内に設けられた廃インク収容部に収容される。廃インク収容部は廃インクを吸収・保持するための廃インク吸収体を有し、チューブ、ジョイント等の流路を介して回復装置の吸引ポンプと連結される。廃インク吸収体は、装置寿命の間に生じる廃インク量を保持しなければならないのでその容積は大きくなり、それと同時に廃インク収容部も大きくなる。
【0004】
また、近年は記録装置の小型化が進み、廃インクタンクに割り当てられるスペースは出来るだけ小さくされることが望まれ、廃インクタンクを受容できるスペースの有効活用が要望されている。
【0005】
廃インクタンクが大容量になるのを防ぐために、例えば、特許文献1に示されたインクジェット記録装置では、吸引ポンプで吸引した廃インクを廃インク溜めに回収し、廃インク溜めに一旦回収した廃インクをインクカートリッジに設けた廃インクタンクに分配して回収し、各インクカートリッジ交換の際に、廃インクタンクも交換されるようにしている。
【0006】
しかしながらキャリッジに搭載したインクカートリッジに廃インクタンクを設けておくと、キャリッジを走査するたびに廃インクタンクも移動しなければならず、キャリッジが走査する範囲で廃インクタンクが移動するための余分なスペースが必要になるとともに、キャリッジを走査するときに印字動作には必要でない回収した廃インクの重量分までも含めて加減制御を行うためのキャリッジモータへの負荷が大きく、小型プリンタに搭載可能な小型のモータではトルクが不足し対応できないため、廃インクカートリッジが交換可能なように個別に設ける方法が提案されている。
【0007】
この場合、廃インクカートリッジが搭載されていない状態で記録装置を使用すると廃インクが記録装置の外部に溢れてしまうことから、廃インクカートリッジのインク残量検知手段の外に廃インクカートリッジの装着を検知する手段が必要となる。
【0008】
特許文献2ではインクカートリッジおよび廃インクカートリッジが個々に装着可能なカートリッジ保持部材に廃インクカートリッジを装着しない限りインクカートリッジの装着を許可せず、インクカートリッジを装着した状態では廃インクカートリッジの取外しを禁止する着脱規制手段を設け、インク残量検知手段によってインクカートリッジ内のインクの有無を検知するだけで、インクカートリッジの交換時には必ず廃インクカートリッジが装着されることによって、廃インクカートリッジの装着の有無検知を省いている。
【0009】
さらに、特許文献3では、記録装置内部に、吸引した廃インクを一時貯留する廃インクタンクと、廃インクタンクに連結され廃インクタンクに貯留した廃インクを排出する廃インクポンプ7を有する廃インク充填手段と、廃インク充填手段に着脱自在に連結され、廃インク充填手段で排出する廃インクを充填する廃インクカートリッジを設け、廃インクカートリッジに設けた電極間の静電容量の変化により廃インクを充填し、廃インクを容易に廃棄可能な形態が開示されている。
【0010】
さらにより効率的に複数の物性が混在した廃インクを廃インク吸収体に保持させるため、特許文献4においては固定式廃インク収納部に、インク拡散を促進させかつ常温で蒸発可能な物質を染み込ませ吸収性を高める方法が提案されている。
【特許文献1】特公平6−39168号公報
【特許文献2】特許第02617999号公報
【特許文献3】特開2001−310487号公報
【特許文献4】特開2003−54009号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
近年複数色が一体となったインクタンクカートリッジを使用するインクジェット記録装置においては印刷する画像により使用されるインクに差が有り、各色の残インク量が異なるため、インクタンクの交換頻度が多くなり、廃インクの量も増加するため、記録装置の寿命中の廃インクを保持できる量の廃インク吸収体が必要となる。また、廃インクの溢れを防止するため、廃インク吸収体の容積を多くし、満杯となる前に警告を出すようにしている。しかし、使用状態によっては廃インクの充填スピード、頻度、設置環境により廃インク吸収体が満杯もしくは充填不能となってしまい、インクジェット記録装置が使えなくなってしまうおそれがあった。
【0012】
また、モバイル系プリンタにおいてはその携帯性と相反する部分であるため廃インク吸収体のサイズおよびレイアウトは大きな問題となっている。
【0013】
また、近年の記録装置は文字品位向上のために顔料系のインク、写真画質向上のために染料系のインクと性質の異なるインクを混在して使用する場合が多く、この場合、染料系のインクを用いる場合には増粘・固着等の問題は発生しないが、顔料系のインクを用いる場合には、廃インク吸収体の全域にインクが行き渡らないうちに廃インク流入部近辺にインクの増粘・固着が発生し、廃インクを吸収することができなくなってしまうという問題も発生している。
【0014】
このため、固定式廃インク吸収部に一時保管した後、交換式廃インク収納部に廃インクを充填する記録装置においては廃インクが溢れ出すおそれがあり、この回避手段として顔料インクが拡散しやすいように廃インク吸収体を拡散部とインク吸収部の2層構造にしたり、廃インクをまず外装などのプラスチック部品上に滴下させその上で拡散させたり、例えば特許文献2にあるような処理を施す必要が提案されているが、たとえば特許文献2のような処理を廃棄するための部品に施すとコストアップにつながってしまう。
【0015】
また、交換式廃インク収納部はユーザが消耗品として別途入手する必要があり、入手し忘れた場合、固定式の廃インク吸収体が一杯になってしまうおそれがあった。
【0016】
そこで、本発明は、交換式の廃インク吸収体を容易に入手可能で、かつ小型化された記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、本発明のインクジェット記録装置は、着脱可能な交換式インクタンクから供給されるインクを吐出する記録ヘッドと、該記録ヘッドから強制的にインクを吸引する吸引手段と、吸引されたインクを保持する廃インク保持手段とを備えたインクジェット記録装置において、廃インク保持手段は、インクジェット記録装置に固定された固定式廃インク収納部を有するとともに、着脱可能な交換式廃インク収納部を保持し、交換式廃インク収納部が、少なくとも1つの使用済みの交換式インクタンクであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、交換式の廃インク吸収体を容易に入手可能で、記録装置を小型化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(第1の実施形態)
次に本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0020】
図1は、本発明におけるプリンタ(インクジェット記録装置)1の回復系(吸引回路)2、吸引された廃インクを保持する廃インク吸収部3、および算出部40を示した模式図である。
【0021】
回復動作を行う際、記録ヘッド4とキャップ5が密着し、回復系2に備えられたポンプ7が動作し、記録ヘッド4内の気泡とインクを吸引する。
【0022】
吸引したインクは、流路8を介して回復系2と接続されている廃インク吸収部3に保持される。
【0023】
本発明におけるプリンタ1の回復系2は、プリンタ1に交換可能に搭載された交換式インクタンク6から供給されるインクを吐出する記録ヘッド4に、インクの吐出特性を回復する回復動作に接合するキャップ5と、キャップ5および記録ヘッド4を介して交換式インクタンク6内に残ったインクを吸引し、廃インク吸収部3へと廃インクを送給するポンプ7とを有する。
【0024】
本発明におけるプリンタ1の廃インク吸収部3は、プリンタ1に固定された固定式廃インク吸収部9と、ユーザによりプリンタ1から着脱可能な交換式廃インク収納部10との2つから構成されている。交換式廃インク収納部10はインクタンク6と同一形状であり、使用済みのインクタンク6が1個以上搭載可能となっている。この際使用されるインクタンク6には記憶素子13が搭載されており、記憶素子13には少なくともインクタンク6の着脱判定手段、インク充填量、インク使用量、廃インク充填量、交換式廃インク使用済みフラグの記憶領域を有し、廃インク充填量は、複数色一体型インクタンクの場合、色数分の領域を持ち、インク室毎に充填量の管理が可能となっている。
【0025】
固定式廃インク吸収部9の容積A’は、プリンタ1に搭載されたインクタンク6の吸収体容積をB、インクタンク6を1個を使い切る際に必要となる廃インク吸収部3の容積をA、交換式廃インク収納部への充填可能量をCとした場合、従来、プリンタ1の廃インク吸収部3の容積は、例えば寿命中に100タンク使用されることを想定した場合100A必要となるが、本発明においてはB≧A’+nC≧Aとなるように設定している(nは交換式廃インク収納部10の装着数)。すなわち、インクタンクの残インク量がゼロであれば(C=Bの場合)、少なくとも1個以上の交換式廃インク収納部があればよい。
【0026】
切替弁14は、キャップ5と廃インク吸収部3を接続する流路8の途中に設けられている。すなわち、回復系2に1箇所、廃インク吸収部3に2箇所、より詳細には、本実施形態においては、切替弁14はキャップ5とポンプ7との間、ポンプ7と固定式廃インク吸収部9との間、およびポンプ7と交換式廃インク収納部10との間の合計3箇所に設けられている。これら切替弁14は、キャップ5で吸引した廃インクを固定式廃インク吸収部9と交換式廃インク収納部10に分けて送り込むことが可能な構成となっている。
【0027】
また、交換式廃インク収納部10と接合し、廃インクを充填する充填口15(図8参照)と、切替弁14との間には複数の交換式廃インク収納部10が搭載された際に充填先を切り替えるための充填先切替バルブ16が設けられている。
【0028】
切替弁14はプリンタ1からの信号もしくはユーザによる切り替えにより、少なくとも下記の経路に切り替えが可能となっている。
[1]キャップ5―固定式廃インク吸収部9
[2]キャップ5―交換式廃インク収納部10
[3]固定式廃インク吸収部9―交換式廃インク収納部10
[1]は、固定式廃インク吸収部9と交換式廃インク収納部10との間の切替弁14を閉じ、キャップ5とポンプ7との間の切替弁14を開くとともに、固定式廃インク吸収部9とポンプ7との間の切替弁14を開くことでキャップ5と固定式廃インク吸収部9との間を連通させた状態である。
【0029】
[2]は、固定式廃インク吸収部9と交換式廃インク収納部10との間の切替弁14を閉じ、キャップ5とポンプ7との間の切替弁14を開くとともに、交換式廃インク収納部10とポンプ7との間の切替弁14を開くことでキャップ5と交換式廃インク収納部10との間を連通させた状態である。
【0030】
[3]はキャップ5とポンプ7との間の切替弁14を閉じ、固定式廃インク吸収部9とポンプ7との間の切替弁14を開くとともに、交換式廃インク収納部10とポンプ7との間の切替弁14を開くことで、固定式廃インク吸収部9と交換式廃インク収納部10との間を連通させた状態である。
【0031】
本発明におけるプリンタ1の算出部40は、後述する交換式廃インク収納部10への廃インクの充填量および使用済みの交換式インクタンク6内の残インク量を算出する。また、算出部40は、記憶素子13が記憶した交換式インクタンク6の残インク量に関する情報に基づき残インク量を算出する。なお、算出部40は、この残インク量を、残インク量をプリンタ1の不図示のカウンタによりカウントされるインク滴の吐出回数であるドットカウントに基づき算出するものであってもよい。
【0032】
次にプリンタ1の使用時について説明する。
【0033】
第1の段階として、複数の色が一体に構成されている交換式インクタンク6をユーザが使い切り、交換式廃インク収納部10の装着位置17に搭載すると、不図示の搭載検知手段と使用済みインクタンク6に搭載された記憶素子13との間で電気的接続が確立した場合に交換式廃インク収納部10を使用するモードへ移行する。
【0034】
第2の段階として、記憶素子13内部の情報から使用インク量を読み込み、使用インク量がインクエンドの閾値を超えている場合は第3の段階へ移行する。また、閾値を超えていない場合は、プリンタ1上の表示手段、例えばプリンタ1に設けた不図示の交換式廃インク装着LEDを点灯させることで誤装着確認を行い、誤装着の場合、インクタンク搭載位置への搭載を促す。誤装着で無い場合は、解除手段、例えばユーザが不図示のリセットボタンを押すことにより、第3の段階へと移行する。なお、インクエンドの閾値とは、ここでは使用インク量が所定の量となりインクタンク6内のインクを消費しきったとする値を指す。
【0035】
第3の段階として、図2に示すように、複数色のインク室が一体的に設けられた交換式インクタンク6の場合、色毎に使用したインク量に差があるため、記憶素子13に記録している使用インク量からインクタンク6内部の残インク量を算出し、ポンプ7の吸引量を計算する。切替弁14を[3]の状態に切り替え、固定式廃インク吸収部9と交換式廃インク収納部10を接続し、計算値に基づき回復系2のポンプ7を駆動させ、交換式廃インク収納部10として用いられている交換式インクタンク6内部の残インクを吸引し、固定式廃インク吸収部9に一時的に保持させる容積リセット動作を行う。
【0036】
第4の段階として、図3に示すように、回復系2のポンプ7を逆転させ、第3の段階で固定式廃インク吸収部9内部に一時保持した残インクを交換式廃インク収納部10に充填する、すなわち、再度使用済みインクタンク内に戻す。この際、本発明における交換式廃インク収納部10は使用済みインクタンクを用いているため、交換式廃インク収納部10内部の吸収部材は既に同成分のインクと接触しており、廃インクが充填された場合においても吸収部材内部発生する毛管力により保持され、廃インクが溢れ出すことは無い。さらには、交換式廃インク収納部10への廃インク充填スピードは、プリンタ使用中に行う回復系2の吸引スピードと同等が望ましい。また、廃インク充填後に記憶素子13の廃インク充填量カウンタに充填量の書込みを行う。これにより、交換式廃インク収納部10を構成する各タンク内に均等に廃インクを分配することができる。
【0037】
また、一旦使用済み交換式廃インク収納部10として使用した交換式廃インク収納部10をユーザが誤ってインクタンク6として使用した際の混色を防止するため、記憶素子13の、交換式廃インク収納部10の使用済みフラグを立て、廃インク充填済みインクタンク6が記録ヘッド4に搭載された場合は吸引動作を行わないようにする。
【0038】
第5の段階として、図4に示すように、切替弁14を[2]の状態に切り替え、キャップ5から吸引したインクを交換式廃インク収納部10に充填可能する。
【0039】
第6の段階として、図5に示すように、プリンタ1を使用し、回復動作が必要となった場合、回復系2のポンプ7を駆動させる前に、交換式廃インク収納部10の記憶素子13から廃インク充填量を読み込み、読み込まれた廃インク充填量がニアフル(ほぼ満杯)状態でなければポンプ7を動作させる。
【0040】
第7の段階として、図6に示すように、第6の段階が繰り返され、廃インク充填量がニアフルとなった場合、交換式廃インク収納部10が満杯となったことを知らせる表示手段、例えば不図示の交換LEDを点灯させると共に、複数の交換式廃インク収納部10が搭載されている場合、充填先切替弁14を切り替え、次の交換式廃インク収納部10とキャップ5を接続する。
【0041】
第8の段階として、図7に示すように、プリンタ1に搭載した交換式廃インク収納部10のすべてのインク室の廃インク充填量がニアフルとなった場合、交換式廃インク収納部10が満杯となった事を知らせる表示手段、不図示の交換LEDを点灯させると共に、切替弁14を[1]の状態に切り替え、キャップ5から吸引したインクを固定式廃インク吸収部9に充填する。
【0042】
また、本プリンタがコンピュータと接続されている場合は、コンピュータのモニタ上に誤装着確認および交換式廃インク収納部10のニアフルを表示しても良い。
【0043】
また、インクタンク6に記憶素子13が構成されていない場合は、インク使用量および、廃インク充填量はプリンタ本体内のドットカウントにより算出しても良い。
【0044】
また、使用済みインクタンク6を交換式廃インク収納部10として用いる際に、エマージェンシータンク作成モード等を案内し、インクタンク6内部の残インクでベタパターンを打ってインクを使い切った後に交換式廃インク収納部10として使用するように設定すれば、充填可能量C≒インクタンク6の吸収体容積Bとすることによりリセット動作(第3の段階)を短時間、あるいは廃止することも可能である。
【0045】
また、図8に示すように、一つのインクタンク内部を2室に分割し、吸収部材を収容する吸収体室22と液体を収容する液体収容室23を持ち、吸収体室22と液体収容室23が連通部24により気体と液体の交換動作を行うインクタンク12において、交換式廃インク収納部10として使用する際は、供給口25を上向きに装着し、大気連通口26をシール部材27にて閉塞し、圧接部材28を押し込むことにより、吸収体室22の吸収部材を充填口15にて押し込み、連通部24及び空になった液体収容室23が実質的にキャップ5および大気に連通するようにして廃インクを充填しても良い。
(第2の実施形態)
次に本発明の第2の実施形態について図面を参照して説明する。なお、符号は第1の実施形態と同様の構成のものについては同じ符号を用いるものとする。
【0046】
本実施形態のプリンタ1は、基本的は構成は第1の実施形態で説明したものと同様であるが、図9に示すように、複数色が一体に構成されるインクタンクを交換式廃インク収納部10として装着した際に、インクタンクの各インク供給口25に対応する位置に廃インクを充填するための充填位置切替バルブ29が設けられている点が異なる。
【0047】
次にプリンタの使用時について説明する。
【0048】
基本的な動作も第1の実施形態で説明したものと同様であるが、本実施形態の場合、図10に示すように、プリンタ1を使用し、回復動作が必要となった場合、回復系2のポンプ7を駆動させる前に、回復動作により発生する廃インク量と、交換式廃インク収納部10の記憶素子13から読み込んだ廃インク充填可能量を比較し、発生する廃インクを充填可能なインク室を決定し、充填位置切替バルブ29を切り替えた後ポンプ7を動作させる。また、この際、複数の交換式廃インク収納部10が搭載された状態であれば、発生する廃インクを充填可能な交換式廃インク収納部10に充填するように充填先切替バルブ16を切り替えても良い。
(第3の実施形態)
次に、顔料系インクおよび染料系インクの双方を対象とした本発明の第3の実施形態について説明する。なお、本実施形態のプリンタ1の構成および動作は、第1の実施形態で説明したプリンタと同じ構成であるため、詳細の説明は省略し、符号は第1の実施形態と同様の構成のものについては同じ符号を用いるものとする。
【0049】
近年のインクジェットプリンタにおいては、テキストの黒文字品位向上のための顔料系のインクと、写真画質向上のための染料インクを併用する場合があるが、この際、顔料系インクは廃インク吸収体への浸透性が悪いため、顔料系インク吸引後に、染料系インクと混合させことにより廃インク吸収部3への適切な分散を行うようにしている。
【0050】
次にプリンタの使用時について説明する。
【0051】
キャップ5より吸引するインクが顔料系インクの場合、切替弁14を染料系インクを保持していたインクタンク6が装着された交換式廃インク収納部10へと流れ込むように切り替え、充填可能なインク室に充填するように充填位置切替バルブ29を切り替え、ポンプ7を動作させる。
【0052】
吸引されるインクが染料系インクの場合で、複数の交換式廃インク収納部10が装着されている場合は他方の交換式廃インク収納部10側に切替弁14を切り替え、充填可能なインク室に充填するように充填位置切替バルブ29を切り替えポンプ7を動作させる。なお、交換式廃インク収納部10が1つしか装着されておらず、これに顔料系インクが充填されている場合には切替弁14を切り替え、染料系インクは固定式廃インク吸収部9の方へと充填する。
(第4の実施形態)
次に本発明の第4の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本実施形態のプリンタ1の構成および動作は、第1の実施形態で説明したプリンタと同じ構成であるため、詳細の説明は省略し、符号は第1の実施形態と同様の構成のものについては同じ符号を用いるものとする。
【0053】
上述した各実施形態では、固定式廃インク吸収部9と交換式廃インク収納部10とに繋がる流路8がポンプ7で分岐した構成を例に説明したが、本実施形態のプリンタ1の構成は、図11に示すように、ポンプ7には流路8を介して固定式廃インク吸収部9のみが接続されており、交換式廃インク収納部10は、固定式廃インク吸収部9の底面、もしくは固定式廃インク吸収部9を保持するハウジングに設けられたドレイン31、および切替弁14を介して接続されている。
【0054】
次にプリンタの使用状態について説明する。
【0055】
第1の段階として、プリンタ1を使用して固定式廃インク吸収部9の充填率が例えば80%を超えた時点で、交換式廃インク収納部10が装着されているかをインクタンク6に搭載した記憶素子13との電気的接続により判定すると共に、記憶素子13内部の情報から使用インク量を読み込み、使用インク量がインクエンドの閾値を超えている場合は第2の段階へ移行する。
【0056】
第2の段階として、装着された使用済みインクタンク6の記憶素子13から読み込んだ使用インク量と、注入可能量から、交換式廃インク収納部10に充填可能な廃インク量を計算し、プリンタ本体内の廃インク満杯のエラーとなる閾値を例えば110%に変更し、切替弁14を開放する。
【0057】
第3の段階においては、プリンタ1の回復動作により固定式廃インク吸収部9の満杯エラーの閾値が固定式廃インク吸収部9の容積を超えており、この閾値を超えた廃インクはドレイン31を介して交換式廃インク収納部10に保持される。
【0058】
第4の段階として、回復動作による廃インクは、交換式廃インク収納部10に保持されるが、第2の段階で計算した充填可能量手前で満杯エラーを発生させ、ユーザに交換式廃インク収納部10の交換、もしくは固定式廃インク吸収部9の交換を促す。
【0059】
また、交換式廃インク収納部10に用いるインクタンク6は色数分、例えば3色一体タンクの場合、使用済みインクタンク6を3個以上搭載可能とするのが望ましく、各色独立インクタンク6の場合、独立タンクの数分装着可能とするのが望ましいが、最低1タンク装着可能で有ればよい。また、ドレイン31を固定式廃インク吸収部9全域を経由するようにすることで、連続吸引時の溢れ出しインクを交換式廃インク収納部10に充填させても良く、また、ドレイン31を複数設け、例えば、図12に示すように、キャップ5と固定式廃インク吸収部9の接続部近傍など、溢れ出しが想定される位置に交換式廃インク収納部10を配置しても良い。
【0060】
以上、上述した本発明の各実施形態は、廃インクタンクに使用済みのインクタンクを用い、使用済みインクタンクの残量により充填方法および量を変更する。また、廃インクタンクとして用いる使用済みのインクタンクは満杯になれば交換可能である。このような仕様とすることで廃インクタンク部分が大型化されずに済む。よってインクジェット記録装置を小型化することが可能となる。また、廃インクタンクの容量によって寿命が規定されることがないのでインクジェット記録装置の長期の使用が可能となる。さらに、使用済みインクカートリッジの有効利用およびユーザへの金銭的負担も抑制することができる。また、顔料系の廃インクを廃インク吸収体内部に拡散させて充填することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第1の実施形態のプリンタの構成の概略を示す模式図である。
【図2】図1に示したプリンタにおける廃インク充填の第3の段階を示す模式図である。
【図3】図1に示したプリンタにおける廃インク充填の第4の段階を示す模式図である。
【図4】図1に示したプリンタにおける廃インク充填の第5の段階を示す模式図である。
【図5】図1に示したプリンタにおける廃インク充填の第6の段階を示す模式図である。
【図6】図1に示したプリンタにおける廃インク充填の第7の段階を示す模式図である。
【図7】図1に示したプリンタにおける廃インク充填の第8の段階を示す模式図である。
【図8】吸収体室と液体収容室とを有するインクタンク内での廃インクの流れを説明するための側断面図である。
【図9】本発明の第2の実施形態のプリンタの構成の概略を示す模式図である。
【図10】充填位置切替バルブの切り替え動作を説明する図である。
【図11】本発明の第4の実施形態のプリンタの構成の一例の概略を示す模式図である。
【図12】本発明の第4の実施形態のプリンタの構成の他の例の概略を示す模式図である。
【符号の説明】
【0062】
1 プリンタ
2 回復系
3 廃インク吸収部
4 記録ヘッド
6 交換式インクタンク
7 ポンプ
8 流路
9 固定式廃インク吸収部
10 交換式廃インク収納部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着脱可能な交換式インクタンクから供給されるインクを吐出する記録ヘッドと、該記録ヘッドから強制的にインクを吸引する吸引手段と、吸引されたインクを保持する廃インク保持手段とを備えたインクジェット記録装置において、
前記廃インク保持手段は、前記インクジェット記録装置に固定された固定式廃インク収納部を有するとともに、着脱可能な交換式廃インク収納部を保持し、前記交換式廃インク収納部が、少なくとも1つの使用済みの前記交換式インクタンクであることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記交換式廃インク収納部への廃インクの充填量および前記使用済みの交換式インクタンク内の残インク量を算出する算出手段を有し、前記算出手段が前記交換式廃インク収納部への廃インクの充填量を前記使用済みの交換式インクタンクの残インク量に基づき算出する、請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記交換式インクタンクは前記残インク量に関する情報を記憶する記憶素子を有し、前記算出手段は、前記残インク量を前記記憶素子の情報から算出する、請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記算出手段は、前記残インク量を、前記インクジェット記録装置でカウントされるインク滴の吐出回数であるドットカウントに基づき算出する、請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記交換式インクタンクが複数のインク室を有し、前記各インク室内に残存した残インク量に差がある場合、前記吸引手段は、前記使用済みの交換式インクタンクの内部に残ったインクを吸引する、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記算出手段は、前記使用済みの交換式インクタンクの内部に残ったインクの吸引量を前記記憶素子の情報から算出する、請求項5に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記算出手段は、前記使用済みの交換式インクタンクの内部に残ったインクの吸引量を、前記インクジェット記録装置でカウントされるインク滴の吐出回数であるドットカウントに基づき算出する、請求項5に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記吸引手段と、前記固定式廃インク収納部および前記各交換式廃インク収納部とを接続するインクの流路には切替弁が設けられている、請求項1ないし7のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−281508(P2006−281508A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−101917(P2005−101917)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】