説明

インクジェット記録装置

【課題】インクジェット記録ヘッドの吐出安定性が良好で、記録メディアへの多様性があり、かつ形成した画像のフェザリング、ブリードが防止され、基材への接着性が高く印字品質の高いインクジェット記録装置の提供。
【解決手段】記録ヘッドのノズルよりインク滴を吐出させて画像記録を行うインクジェット記録装置であって、インクは、少なくとも色剤と、水と、親水性主鎖に複数の側鎖を有し、活性エネルギー線を照射することにより、側鎖間で架橋結合可能な高分子化合物と、を含有するものであり、インク滴の非吐出時に、ノズル内のインクメニスカスをノズルからインク滴を吐出させない程度に微振動させることを特徴とするインクジェット記録装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
記録ヘッドのノズルよりインク滴を吐出させて画像記録を行うインクジェット記録装置は、比較的簡単な装置で、高精細な画像の記録が可能であり、各方面で急速な発展を遂げている。また、使用される用途も多岐にわたり、それぞれの目的にあった記録媒体あるいはインクが使用される。
【0003】
特に、近年では記録速度の大幅な向上がみられ、軽印刷用途にも耐え得る性能を持つ記録装置の開発も行われている。
【0004】
しかしながら、インクジェット記録装置においてその性能を引き出すためにはインクの吸収性を付与したインクジェット専用紙が必要である。
【0005】
インクの吸収性があまり無いコート紙やアート紙、もしくは吸収性の全くないプラスチックフイルム上に記録する際には、異色インク液体同士が記録媒体上で混ざり色濁りを起こすいわゆるブリード等の課題があり、インクジェットに対して記録媒体の多様性をもたせる上で課題となっていた。
【0006】
上記の課題において、室温において固体のワックス等を素材とするホットメルト型インク組成物を用い、加熱等により液化し、何らかのエネルギーを加えて吐出させ、記録媒体上に付着しつつ冷却固化して記録ドットを形成するホットメルト型インクジェット記録方法が提案されている。
【0007】
このインクは室温で固体であるために取り扱い時に汚れることが無く、また、溶融時のインク蒸発量が実質無いためノズルの目詰まりがない。さらに、付着後直ちに固化するため色にじみも少なく、紙質に関係なく良好な印刷品質を提供するインク組成物が提案されている(特許文献1,2参照)。
【0008】
しかしながらこのような方法で記録された画像は、インクドットが柔らかいワックス状であるため、ドットの盛り上がりに起因する品質の劣化や、擦過性能の不足等の課題があった。
【0009】
一方、紫外線を露光することにより硬化するインクジェット記録用インクが開示されている(特許文献3参照)。また、顔料が必須に含有され、かつ重合性材料として三官能以上のポリアクリレートが必須とされており、かつ、ケトン、アルコールを主溶剤とするいわゆる非水系インクが提案されている(特許文献4参照)。
【0010】
また、水系の紫外線重合モノマーを用いたインクが提案されている(特許文献5参照)。
【0011】
これらの方法では、インク自身を硬化成分により硬化させるため非吸収性の媒体に対しても記録が可能となったが、色剤以外の硬化成分を多量に含有し、かつ揮発しないため記録面がインクドットにより盛り上がり、画質、特に光沢の不自然さを生じさせた。
【0012】
また、従来公知の硬化成分に対しては安全上の懸念点があり、たとえ安全性をクリアしたとしても物質選択の狭さがあり素材、物性の自由な設計を行えないという課題があった。
【0013】
さらに、インク滴を小径化したりインクに顔料やポリマーを加えたりすると、インク滴の非吐出時にノズル開口付近のインクが増粘し易くなり、極めて短い時間インク滴の吐出を中断しただけで、吐出再開時に吐出できなくなったり、吐出インク滴の質量、吐出速度や飛翔方向が変化したりして、画質が著しく低下する現象が発生する。ノズル開口は20〜40μm程度と極めて小さく、インクが流動拡散しにくいため、ごく少量の水分や溶剤がノズル開口から蒸発しただけで、ノズル開口付近では局所的にインクの粘度が上昇する。この吐出の中断は、ヘッドが画像記録待機位置にある時、キャリッジの加減速時、そして、画像パターンに依っては画像記録中にも起こる。ラテックスやポリマーを含むインクは、吐出をごく短時間、例えば秒のオーダー停止しただけで、ノズル開口から極微量の水分や溶剤が蒸発し被膜を形成するため粘度が急上昇する。また、顔料を含むインクは、中断中にノズル開口から水分や溶剤が蒸発すると、局所的に凝集が起こり、粘度が上昇する恐れもある。吐出インク滴を微小化すると、ノズル開口で局所的に増粘したインクが吐出により持ち去られる速度は遅くなり、粘度の低いバルクのインクと置換されにくくなるので、吐出不良が簡単に解消しない。インク滴の小径化とインクへの顔料やポリマー添加により、ごく短時間の吐出中断時にもノズル詰まりが起こり易くなり、この対策が必要となった。
【特許文献1】米国特許第4,391,369号明細書
【特許文献2】米国特許第4,484,948号明細書
【特許文献3】米国特許第4,228,438号明細書
【特許文献4】特公平5−64667号公報
【特許文献5】特開平7−224241号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、本発明の目的は、インクジェット記録ヘッドの吐出安定性が良好で、記録メディアへの多様性があり、かつ形成した画像のフェザリング、ブリードが防止され、基材への接着性が高く印字品質の高いインクジェット記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題は、以下の構成により解決される。
(1)
記録ヘッドのノズルよりインク滴を吐出させて画像記録を行うインクジェット記録装置であって、インクは、少なくとも色剤と、水と、親水性主鎖に複数の側鎖を有し、活性エネルギー線を照射することにより、側鎖間で架橋結合可能な高分子化合物と、を含有するものであり、インク滴の非吐出時に、ノズル内のインクメニスカスをノズルからインク滴を吐出させない程度に微振動させることを特徴とするインクジェット記録装置。
(2)
前記高分子化合物をインク全質量に対して、0.8〜5.0質量%含有することを特徴とする(1)に記載のインクジェット記録装置。
(3)
前記親水性主鎖がポリ酢酸ビニルのケン化物であり、かつケン化度が77〜99%、重合度が200〜4000であることを特徴とする(1)または(2)に記載のインクジェット記録装置。
(4)
前記親水性主鎖に対する前記側鎖の変性率が0.8モル%以上4モル%以下であることを特徴とする(1)乃至(3)の何れか1つに記載のインクジェット記録装置。
(5)
前記記録ヘッドのインクチャネルの音響的共振周期の1/2をALとした時、記録ヘッドの圧力発生手段に対してパルス幅が(2n)AL(nは1以上の整数)の矩形波を少なくとも1つ含む微振動パルスを印加することにより前記微振動させることを特徴とする(1)乃至(4)の何れか1つに記載のインクジェット記録装置。
(6)
前記微振動パルスは、パルス幅が2ALの矩形波を含むことを特徴とする(5)に記載のインクジェット記録装置。
(7)
前記微振動パルスは、パルス幅が1ALと2ALの矩形波を含むことを特徴とする(5)に記載のインクジェット記録装置。
(8)
前記微振動パルスは、インク滴を吐出させる吐出パルスに先立って印加されることを特徴とする(5)乃至(7)の何れか1つに記載のインクジェット記録装置。
(9)
前記(2n)ALの矩形波は、前記微振動パルスの少なくとも最後に印加されることを特徴とする(5)乃至(8)の何れか1つに記載のインクジェット記録装置。
(10)
前記最後に印加される(2n)ALの矩形波の1AL後に、吐出パルスを印加することを特徴とする(9)に記載のインクジェット記録装置。
(11)
インク滴を吐出させる吐出パルスは、インクチャネルの容積を膨張させ1AL後に元に戻す矩形波からなる第1のパルスと、インクチャネルの容積を収縮させ一定時間後に元に戻す矩形波からなる第2のパルスとを含み、第1のパルスの電圧Vonが第2のパルスの電圧Voffよりも大きいことを特徴とする(5)乃至(10)の何れか1つに記載のインクジェット記録装置。
(12)
前記微振動パルスは、インクチャネルの容積を収縮させた後に元に戻す矩形波からなり、前記吐出パルスの第2のパルスの電圧Voffと同電圧であることを特徴とする(11)に記載のインクジェット記録装置。
(13)
前記圧力発生手段は、前記吐出パルス又は前記微振動パルスの印加により前記インクチャネルの容積を変化させる電気・機械変換手段であることを特徴とする(5)〜(12)の何れか1つに記載のインクジェット記録装置。
(14)
前記電気・機械変換手段は、隣接するインクチャネル間の隔壁の少なくとも一部を形成し、且つ電圧を印加することによりせん断モードで変形する圧電材料により構成されることを特徴とする(13)に記載のインクジェット記録装置。
【発明の効果】
【0016】
インクジェット記録ヘッドの吐出安定性が良好で、記録メディアへの多様性があり、かつ形成した画像のフェザリング、ブリードが防止され、基材への接着性が高く印字品質の高いインクジェット記録装置を提供することできた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に本発明に関する実施の形態の例を示すが、本発明の態様はこれらに限定されるものではない。
【0018】
以下本発明を詳細に説明する。
【0019】
本発明に係るインクジェット記録装置は、記録ヘッドのノズルよりインク滴を吐出させて画像記録を行うインクジェット記録装置であって、インクは、少なくとも色剤と、水と、親水性主鎖に複数の側鎖を有し、活性エネルギー線を照射することにより、側鎖間で架橋結合可能な高分子化合物と、を含有するものであり、インク滴の非吐出時に、ノズル内のインクメニスカスをノズルからインク滴を吐出させない程度に微振動させることに特徴がある。
【0020】
(第1の実施形態例)
はじめに、本発明のインクジェット記録装置に用いられるインクについて説明する。
【0021】
本発明に用いるインクは、少なくとも色剤と、水と、親水性主鎖に複数の側鎖を有し、活性エネルギー線を照射することにより、側鎖間で架橋結合可能な高分子化合物と、を含有するインクである。
【0022】
〈活性エネルギー線架橋性高分子化合物〉
本発明に係る親水性主鎖に複数の側鎖を有し、活性エネルギー線を照射することにより側鎖間で架橋結合可能な高分子化合物とは、ポリ酢酸ビニルのケン化物、ポリビニルアセタール、ポリエチレンオキサイド、ポリアルキレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、または前記親水性樹脂の誘導体、ならびにこれらの共重合体からなる群より選ばれる少なくとも一種の親水性樹脂に対して、側鎖に光二量化型、光分解型、光重合型、光変性型、光解重合型等の変性基を導入したものである。光重合型の架橋性基が感度、生成される画像の性能の観点から望ましい。
【0023】
親水性主鎖においては、側鎖の導入に対する簡便性や、取り扱いの観点からポリ酢酸ビニルのケン化物が好ましく、その重合度は200以上4000以下が好ましく、200以上2000以下がハンドリングの観点からより好ましい。主鎖に対する側鎖の変性率は0.3モル%以上4モル%以下が好ましく0.8モル%以上4モル%以下が反応性の観点からより好ましい。0.3モル%より小さいと架橋性が不足し本発明の効果が小さくなり、4モル%より大きいと架橋密度が大きくなり硬くてもろい膜となり、膜の強度が落ちてしまう。
【0024】
光二量化型の変性基としては、ジアゾ基、シンナモイル基、スチルバゾニウム基、スチルキノリウム基等を導入したものが好ましく、例えば、特開昭60−129742号公報等の公報に記載された感光性樹脂(組成物)が挙げられる。
【0025】
特開昭60−129742号公報記載の感光性樹脂は、ポリビニルアルコール構造体中にスチルバゾニウム基を導入した下記一般式(1)で表される化合物である。
【0026】
【化1】

【0027】
式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基を表し、A-はカウンターアニオンを表す。
【0028】
特開昭56−67309号公報記載の感光性樹脂は、ポリビニルアルコール構造体中に、下記一般式(2)で表される2−アジド−5−ニトロフェニルカルボニルオキシエチレン構造、または、下記一般式(3)で表され、4−アジド−3−ニトロフェニルカルボニルオキシエチレン構造を有する樹脂組成物である。
【0029】
【化2】

【0030】
また、下記一般式(4)で表される変性基も好ましく用いられる。
【0031】
【化3】

【0032】
式中、Rはアルキレン基または芳香族環を表す。好ましくはベンゼン環である。
【0033】
光重合型の変性基としては、例えば、特開2000−181062号、特開2004−189841号に示される下記一般式(5)で表される樹脂が反応性との観点から好ましい。
【0034】
【化4】

【0035】
式中、R2はメチル基または水素原子を表し、nは1または2を表し、Xは−(CH2m−COO−または−O−を表し、Yは芳香族環または単結合手を表し、mは0〜6までの整数を表す。
【0036】
また、特開2004−161942号公報に記載されている光重合型の下記一般式(6)で表される変性基を、従来公知の水溶性樹脂に用いることも好ましい。
【0037】
【化5】

【0038】
式中、R3はメチル基または水素原子を表し、R4は炭素数2〜10の直鎖状または分岐状のアルキレン基を表す。
【0039】
このような活性エネルギー線架橋型の樹脂は、インク全質量に対して0.8質量%から5.0質量%含有することが、好ましい。0.8質量%以上存在することで、架橋効率が向上し、架橋後のインク粘度の急激な上昇によりビーディングやカラーブリードがより好ましくなる。5.0質量%以下の場合は、インク物性や記録ヘッド内状態に悪影響しにくくなり、吐出安定性やインク保存性の観点で好ましい。
【0040】
本発明の活性エネルギー線架橋型の樹脂においては、元々ある程度の重合度をもった主鎖に対して側鎖間で架橋結合を介して架橋をするため、一般的な連鎖反応を介して重合する活性エネルギー線硬化型の樹脂に対して光子一つ当たりの分子量増加効果が著しく大きい。一方、従来公知の活性エネルギー線硬化型の樹脂においては架橋点の数は制御不可能であるため硬化後の膜の物性をコントロールすることができず、硬くてもろい膜となりやすい。
【0041】
本発明に用いられる樹脂においては架橋点の数は親水性主鎖の長さと、側鎖の導入量で完全に制御でき、目的に応じたインク膜の物性制御が可能である。
【0042】
さらに、従来公知の活性エネルギー線硬化型インクが色剤以外のほぼ全量が硬化成分であり、そのため硬化後のドットが盛り上がり、光沢に代表される画質に劣ることに対し、本発明に用いられる樹脂においては必要量が少量ですみ、乾燥成分が多いため乾燥後の画質の向上が図られ、かつ定着性も良い。
【0043】
(光重合開始剤、増感剤)
本発明においては、光重合開始剤や増感剤を添加するのも好ましい。これらの化合物は溶媒に溶解、または分散した状態か、もしくは感光性樹脂に対して化学的に結合されていてもよい。
【0044】
適用される光重合開始剤、光増感剤について特に制限はなく、従来公知の物を用いることができる。
【0045】
適用される光重合開始剤、光増感剤について特に制限はないが、水溶性の物が混合性、反応効率の観点から好ましい。特に4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン(HMPK)、チオキサントンアンモニウム塩(QTX)、ベンゾフェノンアンモニウム塩(ABQ)が水系溶媒への混合性という観点で好ましい。
【0046】
さらに、樹脂との相溶性の観点から下記一般式(7)で表される4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン(n=1、HMPK)や、そのエチレンオキシド付加物(n=2〜5)がより好ましい。
【0047】
【化6】

【0048】
式中、nは1〜5の整数を表す。
【0049】
また、他には一例としベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ビス−N,N−ジメチルアミノベンゾフェノン、ビス−N,N−ジエチルアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類。チオキサトン、2、4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、クロロチオキサントン、イソプロポキシクロロチオキサントン等のチオキサントン類。エチルアントラキノン、ベンズアントラキノン、アミノアントラキノン、クロロアントラキノン等のアントラキノン類。アセトフェノン類。ベンゾインメチルエーテル等のベンゾインエーテル類。2,4,6−トリハロメチルトリアジン類、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール2量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール2量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール2量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2,−ジ(p−メトキシフェニル)−5−フェニルイミダゾール2量体、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体の2,4,5−トリアリールイミダゾール2量体、ベンジルジメチルケタール、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、フェナントレンキノン、9,10−フェナンスレンキノン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等ベンゾイン類、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体、ビスアシルフォスフィンオキサイド、及びこれらの混合物等が好ましく用いられ、上記は単独で使用しても混合して使用してもかまわない。
【0050】
これらの光重合開始剤に加え、促進剤等を添加することもできる。これらの例として、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等があげられる。
【0051】
これらの光重合開始剤は親水性主鎖に対して、側鎖にグラフト化されていても好ましい。
【0052】
〔着色剤〕
本発明のインクジェット用インクに用いられる色材としては、染料または顔料を用いることが好ましい。
【0053】
(染料)
本発明で用いることのできる染料としては、特に制限はなく、酸性染料、直接染料、反応性染料等の水溶性染料、分散染料等が挙げられる。
【0054】
以下、本発明のインクジェット用インクに適用可能な染料の具体例を列挙するが、本発明では、これら例示する染料にのみ限定されるものではない。
【0055】
[水溶性染料]
本発明で用いることのできる水溶性染料としては、例えば、アゾ染料、メチン染料、アゾメチン染料、キサンテン染料、キノン染料、フタロシアニン染料、トリフェニルメタン染料、ジフェニルメタン染料等を挙げることができる。
【0056】
〈C.I.アシッドイエロー〉
1、3、11、17、18、19、23、25、36、38、40、42、44、49、59、61、65、67、72、73、79、99、104、110、114、116、118、121、127、129、135、137、141、143、151、155、158、159、169、176、184、193、200、204、207、215、219、220、230、232、235、241、242、246、
〈C.I.アシッドオレンジ〉
3、7、8、10、19、24、51、56、67、74、80、86、87、88、89、94、95、107、108、116、122、127、140、142、144、149、152、156、162、166、168、
〈C.I.アシッドレッド〉
88、97、106、111、114、118、119、127、131、138、143、145、151、183、195、198、211、215、217、225、226、249、251、254、256、257、260、261、265、266、274、276、277、289、296、299、315、318、336、337、357、359、361、362、364、366、399、407、415、
〈C.I.アシッドバイオレット〉
17、19、21、42、43、47、48、49、54、66、78、90、97、102、109、126、
〈C.I.アシッドブルー〉
1、7、9、15、23、25、40、62、72、74、80、83、90、92、103、104、112、113、114、120、127、128、129、138、140、142、156、158、171、182、185、193、199、201、203、204、205、207、209、220、221、224、225、229、230、239、249、258、260、264、278、279、280、284、290、296、298、300、317、324、333、335、338、342、350、
〈C.I.アシッドグリーン〉
9、12、16、19、20、25、27、28、40、43、56、73、81、84、104、108、109、
〈C.I.アシッドブラウン〉
2、4、13、14、19、28、44、123、224、226、227、248、282、283、289、294、297、298、301、355、357、413、
〈C.I.アシッドブラック〉
1、2、3、24、26、31、50、52、58、60、63、107、109、112、119、132、140、155、172、187、188、194、207、222、
〈C.I.ダイレクトイエロー〉
8、9、10、11、12、22、27、28、39、44、50、58、79、86、87、98、105、106、130、132、137、142、147、153、
〈C.I.ダイレクトオレンジ〉
6、26、27、34、39、40、46、102、105、107、118、
〈C.I.ダイレクトレッド〉
2、4、9、23、24、31、54、62、69、79、80、81、83、84、89、95、212、224、225、226、227、239、242、243、254、
〈C.I.ダイレクトバイオレット〉
9、35、51、66、94、95、
〈C.I.ダイレクトブルー〉
1、15、71、76、77、78、80、86、87、90、98、106、108、160、168、189、192、193、199、200、201、202、203、218、225、229、237、244、248、251、270、273、274、290、291、
〈C.I.ダイレクトグリーン〉
26、28、59、80、85、
〈C.I.ダイレクトブラウン〉
44、106、115、195、209、210、222、223、
〈C.I.ダイレクトブラック〉
17、19、22、32、51、62、108、112、113、117、118、132、146、154、159、169、
〈C.I.ベイシックイエロー〉
1、2、11、13、15、19、21、28、29、32、36、40、41、45、51、63、67、70、73、91、
〈C.I.ベイシックオレンジ〉
2、21、22、
〈C.I.ベイシックレッド〉
1、2、12、13、14、15、18、23、24、27、29、35、36、39、46、51、52、69、70、73、82、109、
〈C.I.ベイシックバイオレット〉
1、3、7、10、11、15、16、21、27、39、
〈C.I.ベイシックブルー〉
1、3、7、9、21、22、26、41、45、47、52、54、65、69、75、77、92、100、105、117、124、129、147、151、
〈C.I.ベイシックグリーン〉
1、4、
〈C.I.ベイシックブラウン〉
1、
〈C.I.リアクティブイエロー〉
2、3、7、15、17、18、22、23、24、25、27、37、39、42、57、69、76、81、84、85、86、87、92、95、102、105、111、125、135、136、137、142、143、145、151、160、161、165、167、168、175、176、
〈C.I.リアクティブオレンジ〉
1、4、5、7、11、12、13、15、16、20、30、35、56、64、67、69、70、72、74、82、84、86、87、91、92、93、95、107、
〈C.I.リアクティブレッド〉
2、3、5、8、11、21、22、23、24、28、29、31、33、35、43、45、49、55、56、58、65、66、78、83、84、106、111、112、113、114、116、120、123、124、128、130、136、141、147、158、159、171、174、180、183、184、187、190、193、194、195、198、218、220、222、223、228、235、
〈C.I.リアクティブバイオレット〉
1、2、4、5、6、22、23、33、36、38、
〈C.I.リアクティブブルー〉
2、3、4、5、7、13、14、15、19、21、25、27、28、29、38、39、41、49、50、52、63、69、71、72、77、79、89、104、109、112、113、114、116、119、120、122、137、140、143、147、160、161、162、163、168、171、176、182、184、191、194、195、198、203、204、207、209、211、214、220、221、222、231、235、236、
〈C.I.リアクティブグリーン〉
8、12、15、19、21、
〈C.I.リアクティブブラウン〉
2、7、9、10、11、17、18、19、21、23、31、37、43、46、
〈C.I.リアクティブブラック〉
5、8、13、14、31、34、39、
〈C.I.フードブラック〉
1、2、
等を挙げることができる。
【0057】
更に、染料として、下記一般式(8)で表される化合物または一般式(9)で表される化合物が挙げられる。
【0058】
【化7】

【0059】
上記一般式(8)において、R1は水素原子または置換可能な置換基を表し、水素原子またはフェニルカルボニル基が好ましい。R2は異なってもよく水素原子または置換可能な置換基を表し、水素原子が好ましい。R3は水素原子または置換可能な置換基を表し、水素原子またはアルキル基が好ましい。R4は水素原子または置換可能な置換基を表し、水素原子、アリールオキシ基が好ましい。R5は異なってもよく水素原子または置換可能な置換基を表し、スルホン酸基が好ましい。nは1〜4の整数を表し、mは1〜5の整数を表す。
【0060】
上記一般式(9)において、Xはフェニル基またはナフチル基を表し、置換可能な置換基で置換されていてもよく、スルホン酸基またはカルボキシル基で置換されていることが好ましい。Yは水素イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、アンモニウムイオンまたはアルキルアンモニウムイオンを表す。R6は異なってもよく水素原子またはナフタレン環に置換可能な置換基を表す。qは1または2を表す。pは1〜4の整数を表す。ただし、q+p=5である。Zは置換可能な置換基を表し、カルボニル基、スルホニル基または下記一般式(10)で表される基を表し、特に、下記一般式(10)で表される基が好ましい。
【0061】
【化8】

【0062】
上記一般式(10)において、W1、W2はそれぞれ異なっていてもよいハロゲン原子、アミノ基、水酸基、アルキルアミノ基またはアリールアミノ基を表し、ハロゲン原子、水酸基またはアルキルアミノ基が好ましい。
【0063】
[分散染料]
また、分散染料としては、アゾ系分散染料、キノン系分散染料、アントラキノン系分散染料、キノフタロン系分散染料等種々の分散染料を用いることができ、以下にその具体的化合物を挙げる。
【0064】
〈C.I.Disperse Yellow〉
3、4、5、7、9、13、23、24、30、33、34、42、44、49、50、51、54、56、58、60、63、64、66、68、71、74、76、79、82、83、85、86、88、90、91、93、98、99、100、104、108、114、116、118、119、122、124、126、135、140、141、149、160、162、163、164、165、179、180、182、183、184、186、192、198、199、202、204、210、211、215、216、218、224、227、231、232、
〈C.I.Disperse Orange〉
1、3、5、7、11、13、17、20、21、25、29、30、31、32、33、37、38、42、43、44、45、47、48、49、50、53、54、55、56、57、58、59、61、66、71、73、76、78、80、89、90、91、93、96、97、119、127、130、139、142、
〈C.I.Disperse Red〉
1、4、5、7、11、12、13、15、17、27、43、44、50、52、53、54、55、56、58、59、60、65、72、73、74、75、76、78、81、82、86、88、90、91、92、93、96、103、105、106、107、108、110、111、113、117、118、121、122、126、127、128、131、132、134、135、137、143、145、146、151、152、153、154、157、159、164、167、169、177、179、181、183、184、185、188、189、190、191、192、200、201、202、203、205、206、207、210、221、224、225、227、229、239、240、257、258、277、278、279、281、288、298、302、303、310、311、312、320、324、328、
〈C.I.Disperse Violet〉
1、4、8、23、26、27、28、31、33、35、36、38、40、43、46、48、50、51、52、56、57、59、61、63、69、77、
〈C.I.Disperse Green〉
9、
〈C.I.Disperse Brown〉
1、2、4、9、13、19、
〈C.I.Disperse Blue〉
3、7、9、14、16、19、20、26、27、35、43、44、54、55、56、58、60、62、64、71、72、73、75、79、81、82、83、87、91、93、94、95、96、102、106、108、112、113、115、118、120、122、125、128、130、139、141、142、143、146、148、149、153、154、158、165、167、171、173、174、176、181、183、185、186、187、189、197、198、200、201、205、207、211、214、224、225、257、259、267、268、270、284、285、287、288、291、293、295、297、301、315、330、333、
〈C.I.Disperse Black〉
1、3、10、24
等が挙げられる。
【0065】
《顔料》
本発明に使用できる顔料としては、従来公知の有機及び無機顔料が使用できるが、アニオン性顔料である。例えばアゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料や、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリレン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサンジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロニ顔料等の多環式顔料や、酸性染料型レーキ等の染料レーキや、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料等の有機顔料、カーボンブラック等の無機顔料が挙げられる。
【0066】
具体的な有機顔料を以下に例示する。
【0067】
マゼンタまたはレッド用の顔料としては、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
【0068】
オレンジまたはイエロー用の顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー138等が挙げられる。
【0069】
グリーンまたはシアン用の顔料としては、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
【0070】
顔料の分散方法としては、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等の各種分散機を用いることができる。また、顔料分散体の粗粒分を除去する目的で、遠心分離装置を使用すること、フィルターを使用することも好ましい。
【0071】
本発明に係るインクにおいては、顔料表面にスルホン酸、カルボン酸等の極性基をペンダントした自己分散顔料、あるいは高分子分散剤を用いて分散した顔料が好ましい。
【0072】
本発明に係る高分子分散剤としては、特に制限はなく、水溶性樹脂または非水溶性樹脂が用いられる。これらの高分子としては、例えば、スチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸、アクリル酸誘導体、メタクリル酸、メタクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマル酸、フマル酸誘導体から選ばれた単一の単量体からなる重合体、あるいは2種以上の単量体からなる共重合体およびこれらの塩を挙げることができる。またポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロース誘導体、ゼラチン、ポリエチレングリコールなどの水溶性高分子も用いることができる。
【0073】
これら水溶性樹脂のインク全量に対する含有量としては、0.1〜10質量%が好ましく、更に好ましくは、0.3〜5質量%である。また、これらの水溶性樹脂は二種以上併用することも可能である。
【0074】
本発明のインクジェット用インクに使用する顔料分散体の平均粒径は、500nm以下が好ましく200nm以下がより好ましく、10nm以上、200nm以下であることが好ましく、10nm以上、150nm以下がより好ましい。顔料分散体の平均粒径が500nmを越えると、分散が不安定となり。また、顔料分散体の平均粒径が10nm未満になっても顔料分散体の安定性が悪くなりやすく、インクの保存安定性が劣化しやすくなる。
【0075】
顔料分散体の粒径測定は、光散乱法、電気泳動法、レーザードップラー法等を用いた市販の粒径測定機器により求めることが出来る。また、透過型電子顕微鏡による粒子像撮影を少なくとも100粒子以上に対して行い、この像をImage−Pro(メディアサイバネティクス製)等の画像解析ソフトを用いて統計的処理を行うことによっても求めることが可能である。
【0076】
顔料の分散方法としては、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等各種を用いることができる。
【0077】
〈水溶性溶媒〉
本発明に係る溶媒としては、水性液媒体が好ましく用いられ、前記水性液媒体としては、水及び水溶性有機溶剤等の混合溶媒が更に好ましく用いられる。好ましく用いられる水溶性有機溶剤の例としては、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール)、多価アルコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド)等が挙げられる。
【0078】
〈界面活性剤〉
本発明のインクに好ましく使用される界面活性剤としては、アルキル硫酸塩、アルキルエステル硫酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、グリセリンエステル、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アミンオキシド等の活性剤、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。
【0079】
これらの界面活性剤は顔料の分散剤としても用いることが出来、特にアニオン性及びノニオン性界面活性剤を好ましく用いることができる。
【0080】
〈各種添加剤〉
本発明においては、その他に従来公知の添加剤を含有することができる。例えば蛍光増白剤、消泡剤、潤滑剤、防腐剤、増粘剤、帯電防止剤、マット剤、水溶性多価金属塩、酸塩基、緩衝液等pH調整剤、酸化防止剤、表面張力調整剤、非抵抗調整剤、防錆剤、無機顔料等である。
【0081】
次いで、本発明のインクジェット記録装置で用いることができる記録媒体について説明する。
【0082】
〈記録用紙〉
紙には、塗工紙、非塗工紙があり、塗工紙としては、1m2あたりの塗工量が片面20g前後のアート紙、1m2あたりの塗工量が片面10g前後のコート紙、1m2あたりの塗工量が片面5g前後の軽量コート紙、微塗工紙、マット調仕上げのマットコート紙、ダル調仕上げのダルコート紙、新聞用紙などを挙げることが出来る。非塗工紙としては、化学パルプ100%使用の印刷用紙A、化学パルプ70%以上使用の印刷用紙B、化学パルプ40%以上70%未満使用の印刷用紙C、化学パルプ40%未満使用の印刷用紙D、機械パルプを含有しカレンダー処理を行ったグラビア用紙などを挙げることが出来る。更に詳しくは、「最新紙加工便覧」紙加工便覧編集委員会編、テックタイムス発行、「印刷工学便覧」日本印刷学会編、などに詳細に記載されている。
【0083】
普通紙とは、非塗工用紙、特殊印刷用紙及び情報用紙の一部に属す、80〜200μmの非コート紙が用いられる。本発明で用いられる普通紙としては、例えば、上級印刷紙、中級印刷紙、下級印刷紙、薄様印刷紙、微塗工印刷用紙、色上質紙等特殊印刷用紙、フォーム用紙、PPC用紙、その他情報用紙等があり、具体的には下記する用紙及びこれらを用いた各種の変性/加工用紙があるが、本発明は特にこれらに限定されるものではない。上質紙及び色上質紙、再生紙、複写用紙・色もの、OCR用紙、ノーカーボン紙・色もの、ユポ60、80、110ミクロン、ユポコート70、90ミクロン等の合成紙、その他片面アート紙68kg、コート紙90kg、フォームマット紙70、90、110kg、発泡PET38ミクロン、みつおりくん(以上、小林記録紙)、OK上質紙、ニューOK上質紙、サンフラワー、フェニックス、OKロイヤルホワイト、輸出上質紙(NPP、NCP、NWP、ロイヤルホワイト)OK書籍用紙、OKクリーム書籍用紙、クリーム上質紙、OK地図用紙、OKいしかり、きゅうれい、OKフォーム、OKH、NIP−N(以上、新王子製紙)、金王、東光、輸出上質紙、特需上質紙、書籍用紙、書籍用紙L、淡クリーム書籍用紙、小理教科書用紙、連続伝票用紙、上質NIP用紙、銀環、金陽、金陽(W)、ブリッジ、キャピタル、銀環書籍、ハープ、ハープクリーム、SKカラー、証券用紙、オペラクリーム、オペラ、KYPカルテ、シルビアHN、エクセレントフォーム、NPIフォームDX(以上、日本製紙)、パール、金菱、ウスクリーム上質紙、特製書籍用紙、スーパー書籍用紙、書籍用紙、ダイヤフォーム、インクジェットフォーム(以上、三菱製紙)、金毯V、金毯SW、白象、高級出版用紙、クリーム金毯、クリーム白象、証券・金券用紙、書籍用紙、地図用紙、複写用紙、HNF(以上、北越製紙)しおらい、電話帳表紙、書籍用紙、クリームしおらい、クリームしおらい中ラフ、クリームしおらい大ラフ、DSK(以上、大昭和製紙)、せんだいMP上質紙、錦江、雷鳥上質、掛紙、色紙原紙、辞典用紙、クリーム書籍、白色書籍、クリーム上質紙、地図用紙、連続伝票用紙(以上、中越パルプ)、OP金桜(チューエツ)、金砂、参考書用紙、交換証用紙(白)、フォーム印刷用紙、KRF、白フォーム、カラーフォーム、(K)NIP、ファインPPC、紀州インクジェット用紙(以上、紀州製紙製)、たいおう、ブライトフォーム、カント、カントホワイト、ダンテ、CM用紙、ダンテコミック、ハイネ、文庫本用紙、ハイネS、ニューAD用紙、ユトリロエクセル、エクセルスーパーA、カントエクセル、エクセルスーパーB、ダンテエクセル、ハイネエクセル、エクセルスーパーC、エクセルスーパーD、ADエクセル、エクセルスーパーE、ニューブライトフォーム、ニューブライトNIP(以上、大王製紙製)、日輪、月輪、雲嶺、銀河、白雲、ワイス、月輪エース、白雲エース、雲岑エース(以上、日本紙業製)、たいおう、ブライトフォーム、ブライトニップ(以上、名古屋パルプ)、牡丹A、金鳩、特牡丹、白牡丹A、白牡丹C、銀鳩、スーパー白牡丹A、淡クリーム白牡丹、特中質紙、白鳩、スーパー中質紙、青鳩、赤鳩、金鳩Mスノービジョン、スノービジョン、金鳩スノービジョン、白鳩M、スーパーDX、はまなすO、赤鳩M、HKスーパー印刷紙(以上、本州製紙製)、スターリンデン(A・AW)、スターエルム、スターメイプル、スターローレル、スターポプラ、MOP、スターチェリーI、チェリーIスーパー、チェリーIIスーパー、スターチェリーIII、スターチェリーIV、チェリーIIIスーパー、チェリーIVスーパー(以上、丸住製紙製)、SHF(以上、東洋パルプ製)、TRP(以上、東海パルプ製)等が挙げられる。
【0084】
〈各種フィルム〉
各種フィルムとしては、一般的に使用されているものはすべて使用できる。例えば、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルムなどがある。また、写真用印画紙であるレジンコートペーパーや合成紙であるユポ紙なども使用できる。
【0085】
〈各種インクジェット用記録媒体〉
各種インクジェット用記録媒体としては、基材に吸収性支持体や非吸収性支持体を用いて、表面にインク受容層が形成されたものである。インク受容層としては、コート層、膨潤層、微細空隙層からなるものがある。
【0086】
膨潤層は水溶性ポリマーからなるインク受容層が膨潤することでインクを吸収する。微細空隙層は2次粒径が20〜200nm程度の無機あるいは有機微粒子とバインダーからなり、100nm程度の微細な空隙がインクを吸収する。
【0087】
近年は、基材に、紙基材の両面をオレフィン樹脂で被覆したRCペーパーを用いて上記微細空隙層を設けたインクジェット記録媒体が、写真画像の面で好んで用いられている。
【0088】
次いで、本発明に係るインクジェット記録装置について説明する。
【0089】
本発明のインクジェット記録装置は、記録ヘッドのノズルよりインク滴を吐出させて画像記録を行うインクジェット記録装置であって、インク滴の非吐出時に、ノズル内のインクメニスカスをノズルからインク滴を吐出させない程度に微振動させることに特徴がある。
【0090】
本発明の少なくとも色剤と、水と、親水性主鎖に複数の側鎖を有し、活性エネルギー線を照射することにより、側鎖間で架橋結合可能な高分子化合物と、を含有するインクは、ポリマーを含むため吐出をごく短時間、例えば秒のオーダー停止しただけで、ノズル開口から極微量の水分や溶剤が蒸発し被膜を形成するため粘度が急上昇する。このことにより、ごく短時間の吐出中断時にもノズル詰まりが起こり易くなる。
【0091】
そこで、本発明では、インク滴の非吐出時に、ノズル内のインクメニスカスをノズルからインク滴を吐出させない程度に微振動させることにより、ノズル内のインクを効率良く攪拌させ、低温・低湿環境下でもデキャップ特性の改善効果が高く、安定吐出を可能としている。
【0092】
ここで、デキャップ特性とは、ノズル面開放状態の場合にインクメニスカス乾燥によってインクが増粘する、いわゆるデキャップ現象による初発速度の低下量を示す。
【0093】
図1は、本発明に係るインクジェット記録装置の概略構成を示す図である。インクジェット記録装置1において、記録媒体Pは、搬送機構3の搬送ローラ対32に挟持され、更に、搬送モータ33によって回転駆動される搬送ローラ31により図示Y方向に搬送されるようになっている。
【0094】
搬送ローラ31と搬送ローラ対32の間には、記録媒体Pの記録面PSと対向するように記録ヘッド2が設けられている。この記録ヘッド2は、記録媒体Pの幅方向に亘って掛け渡されたガイドレール4に沿って、不図示の駆動手段によって、上記記録媒体Pの搬送方向(副走査方向)と略直交する図示X−X’方向(主走査方向)に沿って往復移動可能に設けられたキャリッジ5に、ノズル面側が記録媒体Pの記録面PSと対向するように配置されて搭載されており、圧力発生手段(不図示)がフレキシケーブル6を介して、後述する吐出パルスや微振動パルスを生成するための回路が設けられる駆動信号発生部100(図3参照)に電気的に接続されている。
【0095】
かかる記録ヘッド2は、キャリッジ5の移動に伴って記録媒体Pの記録面PSを図示X−X’方向に移動し、この移動過程でインク滴を吐出することによって所望のインクジェット画像を記録するようになっている。
【0096】
また、記録ヘッド2の両側に活性エネルギー線照射手段である120W/cmメタルハライドランプ200(日本電池社製 MAL 400NL、電源電力3kW・hr)が設置されており、インク着弾後0.1秒後に紫外線が照射されてインクが硬化し、高精細な画像を形成される。
【0097】
本発明でいう活性エネルギー線とは、例えば電子線、紫外線、α線、β線、γ線、エックス線等が上げられるが、人体への危険性や、取り扱いが容易で、工業的にもその利用が普及している電子線や紫外線が好ましい。
【0098】
電子線を用いる場合には、照射する電子線の量は0.1〜30Mradの範囲が望ましい。0.1Mrad未満では十分な照射効果が得られず、30Mradを越えると支持体等を劣化させる可能性があるため、好ましくない。
【0099】
紫外線を用いる場合は、光源として例えば0.1kPaから1MPaまでの動作圧力を有する低圧、中圧、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプや紫外域の発光波長を持つキセノンランプ、冷陰極管、熱陰極管、LED等従来公知の物が用いられる。
【0100】
活性光線の照射条件として、インク着弾後0.001〜1.0秒の間に活性光線が照射されることが好ましく、より好ましくは0.001〜0.5秒である。高精細な画像を形成するためには、照射タイミングができるだけ早いことが特に重要となる。
【0101】
活性光線の照射方法として、その基本的な方法が特開昭60−132767号に開示されている。これによると、本実施形態の様にヘッドユニットの両側に光源を設け、シャトル方式でヘッドと光源を走査する。照射は、インク着弾後、一定時間を置いて行われることになる。更に、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させる。米国特許第6,145,979号では、照射方法として、光ファイバーを用いた方法や、コリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されている。本発明のインクジェット記録装置においては、これらの何れの照射方法も用いることができる。
【0102】
また、活性光線を照射を2段階に分け、まずインク着弾後0.001〜2.0秒の間に前述の方法で活性光線を照射し、更に活性光線を照射する方法も好ましい態様の1つである。活性光線の照射を2段階に分けることで、よりインク硬化の際に起こる記録材料の収縮を抑えることが可能となる。
【0103】
なお、図中、7はインク受け器であり、記録ヘッド2が画像記録領域外、即ち、非記録時のホームポジション等の待機位置に設けられている。記録ヘッド2がこの待機位置にある時、ノズル開口で増粘したインクをインクリフレッシュのためにこのインク受け器7に向けてインク滴を少量はき捨てるようにする。記録ヘッド2がこの待機位置において長期間作動停止している時は、図示しないが、記録ヘッド2のノズル面にキャップを被せることにより保護するようになっている。また、8は記録媒体Pを挟んで上記インク受け器7の反対位置に設けられたインク受け器であり、往復両方向で記録するとき、往動から復動に切り替えるときに、上記同様にはき捨てられたインク滴を受け入れる。
【0104】
このように、本発明における吐出パルスによるインク滴の吐出とは、画像記録のための吐出とインクリフレッシュのための画像記録領域外での吐き捨て等が挙げられる。本発明においては、インク滴の非吐出時、即ち、このようなインク滴の吐出を行わないときにノズル内のインクメニスカスをノズルからインク滴を吐出させない程度に微振動させる。
【0105】
ここで画像記録領域内とは、画像データが記録ヘッドに供給され、画像データに基づいて記録ヘッドのノズルからインク滴を吐出して記録が行われる領域であり、例えば記録媒体としてA4の大きさの紙の全面に記録する場合等は、A4の大きさの紙全面が画像記録領域となる。
【0106】
また、画像記録領域外とは、画像記録領域以外の領域であり、基本的には画像データが記録ヘッドには供給されず、すべてのノズルから画像データに基づくインク滴の吐出は行われない。また、非印字画素とは画像記録領域内において、インク滴の吐出を行わない画素を指す。
【0107】
図2、図3は、記録ヘッド2の一例を示す図であり、図2(a)は概観斜視図、(b)は断面図、図3はインク吐出時の作動を示す図である。同図において、21はインクチューブ、22はノズル形成部材、23はノズル、24はカバープレート、25はインク供給口、26は基板、27は隔壁である。そして、インクチャネル28が隔壁27、カバープレート24及び基板26によって形成されている。
【0108】
記録ヘッド2は、ここでは図3に示すように、カバープレート24と基板26の間に、電気・機械変換手段であるPZT等の圧電材料からなる複数の隔壁27A、27B、27Cで隔てられたインクチャネル28が多数並設されたせん断モード(シェアモード)タイプの記録ヘッドを示している。図3では多数のインクチャネル28の一部である3本(28A、28B、28C)が示されている。インクチャネル28の一端(以下、これをノズル端という場合がある)はノズル形成部材22に形成されたノズル23につながり、他端(以下、これをマニホールド端という場合がある)はインク供給口25を経て、インクチューブ21によって図示されていないインクタンクに接続されている。そして、各インクチャネル28内の隔壁27表面には両隔壁27の上方から基板26の底面に亘って繋がる電極29A、29B、29Cが密着形成され、各電極29A、29B、29Cは駆動信号発生部100に接続している。
【0109】
本実施形態において示したように、せん断モードで変形する圧電材料により構成される場合には、後述する矩形波をより効果的に利用することができ、駆動電圧を低下させ、より効率的な駆動が可能となるために好ましい。
【0110】
駆動信号発生部100は、複数の駆動パルスを含む一連の駆動信号を各画素周期毎に発生する駆動信号発生回路と、各インクチャネル毎に前記駆動信号発生回路から供給された駆動信号の中から各画素のデータに応じて駆動パルスを選択して各インクチャネルに供給する駆動パルス選択回路とからなり、各画素のデータに応じて電気・機械変換手段としての隔壁27を駆動するための駆動パルスを供給する。この駆動パルスには、微振動パルスと吐出パルスとを含んでいる。
【0111】
各隔壁27は、ここでは図3の矢印で示すように分極方向が異なる2枚の圧電材料27a、27bによって構成されているが、圧電材料は例えば符号27aの部分のみであってもよく、隔壁27の少なくとも一部にあればよい。
【0112】
各隔壁27表面に密着形成された電極29A、29B、29Cに駆動信号発生部100の制御により吐出パルスが印加されると、以下に例示する動作によってインク滴をノズル23から吐出する。なお、図3ではノズルは省略してある。
【0113】
まず、電極29A、29B、29Cのいずれにも吐出パルスが印加されない時は、隔壁27A、27B、27Cのいずれも変形しないが、図3(a)に示す状態において、電極29A及び29Cを接地すると共に電極29Bに吐出パルスを印加すると、隔壁27B、27Cを構成する圧電材料の分極方向に直角な方向の電界が生じ、各隔壁27B、27C共に、それぞれ隔壁27a、27bの接合面にズリ変形を生じ、図3(b)に示すように隔壁27B、27Cは互いに外側に向けて変形し、インクチャネル28Bの容積を拡大してインクチャネル28B内に負の圧力が生じてインクが流れ込む(Draw)。
【0114】
また、この状態から電位を0に戻すと、隔壁27B、27Cは図3(b)に示す膨張位置から図3(a)に示す中立位置に戻り、インクチャネル28B内のインクに高い圧力が掛かる(Release)。次いで、図3(c)に示すように、隔壁27B、27Cを互いに逆方向に変形するように吐出パルスを印加して、インクチャネル28Bの容積を縮小すると、インクチャネル28B内に正の圧力が生じる(Reinforce)。これによりインクチャネル28Bを満たしているインクの一部によるノズル内のインクメニスカスがノズルから押し出される方向に変化する。この正の圧力がインク滴をノズルから吐出する程に大きくなると、インク滴はノズルから吐出する。他の各インクチャネルも吐出パルスの印加によって上記と同様に動作する。このような吐出法をDRR駆動法と呼び、シェアモードタイプの記録ヘッドの代表的な駆動法である。
【0115】
このように少なくとも一部が圧電材料で構成された隔壁27によって隔てられた複数のインクチャネル28を有する記録ヘッド2を駆動する場合、一つのインクチャネルの隔壁が吐出の動作をすると、隣のインクチャネルが影響を受けるため、通常、複数のインクチャネル28のうち、互いに1本以上のインクチャネル28を挟んで離れているインクチャネル28をまとめて1つの組となすようにして、2つ以上の組に分割し、各組毎にインク吐出動作を時分割で順次行うように駆動制御される。例えば、全インクチャネル28を駆動してベタ画像を出力する場合には、インクチャネル28を2インクチャネルおきに選んで3相に分けて吐出する、いわゆる3サイクル吐出法が行われる。
【0116】
かかる3サイクル吐出動作について図4を用いて更に説明する。図4に示す例では、記録ヘッドはインクチャネルがA1、B1、C1、A2、B2、C2、A3、B3、C3の9つのインクチャネル28で構成されているとして説明する。また、このときのA、B、Cの各組のインクチャネル28に印加されるパルス波形のタイミングチャートを図5に示す。
【0117】
インク吐出時には、まずA組(A1、A2、A3)の各インクチャネルの電極に電圧を掛け、その両隣のインクチャネルの電極を接地する。例えばA組のインクチャネルに1AL幅の正電圧の吐出パルスを掛けると、吐出したいA組のインクチャネルの隔壁が外側に変形し、そのインクチャネル28内に負圧が発生する。この負圧により、インクタンクからA組のインクチャネル28にインクが流れ込む(Draw)。
【0118】
この状態を1AL間保つと、圧力が正圧に反転するので、このタイミングで電極を接地すると、隔壁の変形が元に戻り、高い圧力がA組のインクチャネル28内のインクに掛かる(Release)。更に、同じタイミングでA組の各インクチャネルの電極に負電圧を掛けると、隔壁が内側に変形し、更に高い圧力がインクに掛かり(Reinforce)、ノズルからインク柱が押し出される。1AL後、圧力が反転してインクチャネル28内が負圧になり、更に1AL経過すると、インクチャネル28内の圧力が反転して正圧になるので、このタイミングで電極を接地すると、隔壁の変形が元に戻り、残留する圧力波をキャンセルできる。
【0119】
続いてB組(B1、B2、B3)の各インクチャネル28、更に続いてC組(C1、C2、C3)の各インクチャネル28へと上記同様に動作する。
【0120】
なお、AL(Acoustic Length)とは、インクチャネルの音響的共振周期の1/2である。このALは、電気・機械変換手段である隔壁27に矩形波の電圧パルスを印加して吐出するインク滴の速度を測定し、矩形波の電圧値を一定にして矩形波のパルス幅を変化させたときに、インク滴の飛翔速度が最大になるパルス幅として求められる。また、パルスとは、一定電圧波高値の矩形波であり、0Vを0%、波高値電圧を100%とした場合に、パルス幅とは、電圧の0Vからの立ち上がり10%と波高値電圧からの立ち下がり10%との間の時間として定義する。更に、ここで矩形波とは、電圧の10%と90%との間の立ち上がり時間、立ち下がり時間のいずれもがALの1/2、好ましくは1/4以内であるような波形を指す。
【0121】
かかるせん断モードタイプのインクジェット記録ヘッドでは、隔壁の変形は壁の両側に設けられる電極に掛かる電圧差で起こるので、インク吐出を行うインクチャネルの電極に負電圧を掛ける代わりに、図6に示すように、インク吐出を行うインクチャネルの電極を接地して、その両隣のインクチャネルの電極に正電圧を掛けるようにしても同様に動作させることができる。この後者の方法によれば、正電圧だけで駆動させることができるために好ましい態様である。
【0122】
次に、図7及び図8を用いて、かかるシェアモードタイプの記録ヘッド2において、画像記録領域内でメニスカスに微振動を与える動作について説明する。ここでも上記同様に3サイクル吐出動作を行うものについて説明する。また、ここでは、駆動波形電圧に正電圧のみを使用し、A組→B組→C組の順に吐出させるものとする。また、ここでは、駆動信号は微振動パルスと吐出パルス各1種の駆動パルスで構成されたものを例に説明する。
【0123】
本実施形態においてノズルからインク滴を吐出させない程度に微振動させる微振動パルスは、吐出パルスを印加する場合と同様、図3に示す駆動信号発生部100において生成される。また、微振動パルスは矩形波からなり、パルス幅が(2n)AL(nは1以上の整数)の矩形波を少なくとも1つ含むことが好ましい。
【0124】
微振動パルスに矩形波を用いることで、台形波を使用する方法に比べてメニスカスを微振動させる効率が良く、低い駆動電圧で振動させることができる上に、簡単なデジタル回路で駆動回路を設計できる効果がある。
【0125】
例えば、図7に示す例では、画像記録領域内において、始めにA組のインクチャネルの電極を接地し、B組及びC組のインクチャネルの電極に2AL幅の正電圧の矩形波からなる微振動パルスを印加している。これによりA組のインクチャネルのノズル内のメニスカスは、ノズルからインク滴を吐出させない程度に押し出させるように微振動が与えられ、B組及びC組の各インクチャネルは片側の隔壁のみが変位して、A組のインクチャネルの半分の強度の微振動が与えられる。
【0126】
続いて、A組のインクチャネルに1AL幅の正電圧の吐出パルスを与え、引き続き2AL幅の正電圧の吐出パルスをB組及びC組のインクチャネルにそれぞれ与えると、上述したDRR駆動法によりA組のインクチャネルからインクが吐出され、画素が記録される。マルチドロップ吐出を行う場合には、吐出したいインク滴数分だけこの2種類のパルスを繰り返す。
【0127】
A組のインクチャネルからの吐出が終了し、続いてB組のインクチャネルから吐出させる場合も同様に、B組のインクチャネルの電極を接地してからA組及びC組のインクチャネルの電極にそれぞれ2AL幅の正電圧の微振動パルスを印加し、メニスカスを微振動させる。その後、B組のインクチャネルの電極に1AL幅の正電圧の吐出パルスを与え、引き続き2AL幅の正電圧の吐出パルスをA組及びC組のインクチャネルの電極に与えることでB組のインクチャネルからの吐出が行われ、画素が記録される。C組のインクチャネルの微振動パルスの印加及び吐出も同様に行われる。
【0128】
次に、A組、B組、C組のインクチャネルがいずれも吐出を行わず、A組→B組→C組の順にメニスカスに微振動を与える場合について、図8を用いて説明する。
【0129】
図7と同様、始めにA組のインクチャネルの電極は接地し、B組及びC組のインクチャネルの電極に2AL幅の正電圧の微振動パルスを印加することで、A組のインクチャネルのノズル内のメニスカスに微振動が与えられる。続いて、A組、B組、C組いずれのインクチャネルにも2AL幅の正電圧のパルスを与えると、隔壁は変位しないためインク吐出も行われない。
【0130】
続いて、各画素内における駆動パルスの選択方法について、図9を用いて説明する。図9のON波形およびOFF波形は、駆動信号発生回路が生成する2種類の駆動信号を示す。この駆動信号は、微振動パルス(1)と吐出パルス(2)、(3)との3種の駆動パルスで構成されており、2ドロップのマルチドロップ吐出の選択が可能な駆動信号の例である。ON波形およびOFF波形は、各インクチャネルの駆動パルス選択回路にそれぞれ供給されており、各インクチャネルの印字データに応じたパルス選択ゲート信号の制御により、各インクチャネルの電極へ選択的に供給される。駆動パルス選択回路は、パルス選択ゲート信号がHighのときにはON波形を電極に供給し、パルス選択ゲート信号がLowのときにはOFF波形を電極に供給する。図9は、A組、B組、C組の各インクチャネル駆動の1周期分を表記しているが、以降は、A組インクチャネル駆動のタイミングを例として説明する。
【0131】
微振動パルスの印加前の期間および微振動パルスの印加後から吐出パルスの印加前までの期間、吐出パルス印加後の期間には、それぞれパルス分割信号が印加される。画素の印字データが与えられると、それに応じてパルス分割信号に同期したパルス選択ゲート信号がONとなる。A組インクチャネルに対応するパルス選択ゲート信号がONである期間(図9の(1)〜(2))は、A組インクチャネルの電極には駆動波形のON波形が印加され、このとき、B組およびC組インクチャネルに対応するパルス選択ゲート信号はOFFであるから、B組およびC組のインクチャネルの電極にはOFF波形が印加されて、A組インクチャネルの両側の隔壁が変位する。また、図9の(3)の期間は、A組、B組、C組のパルス選択ゲート信号がいずれもOFFであるため、A組、B組、C組のインクチャネルの電極にはOFF波形が印加されて、いずれの隔壁も変位しない。
【0132】
B組、C組インクチャネル駆動のタイミングも同様に動作する。
【0133】
このように、印字画素(図7の場合)にも非印字画素(図8の場合)にも常に、微振動パルスを印加していることで、ノズル開口付近のインクの増粘を効果的に抑制することができる。
【0134】
特に、図7に示したように、画像記録領域内の全ての印字画素に、吐出パルスに先立って微振動パルスが印加されるようにすれば、各画素において印字を行う直前に常にメニスカスに微振動が与えられるため、常に安定したインク吐出となり高画質の記録を行うことができ、しかも、連続吐出中においては、先に吐出した際の残留圧力波を微振動パルスの印加によりキャンセルすることができるため、より高品質の画像記録が可能となる。
【0135】
なお、吐出パルスに先立ってとは、微振動させた後のインク滴の吐出において、デキャップ特性の改善に効果が見られる範囲の時間を指す。
【0136】
このように画像記録領域内の全ての印字画素に微振動パルスが印加される場合、ノズル先端からインク滴を吐出させない程度に微振動させるメニスカスの最大押し出し量は、ノズル半径以下であることが好ましい。メニスカス微振動による押し出し量が大きいと、直後のインク吐出のタイミングまでにメニスカスが戻りきれず、安定な吐出が困難となるが、メニスカスの最大押し出し量をノズル半径以下に抑制することで、メニスカス微振動直後でも安定した吐出が可能となる。
【0137】
なお、最大押し出し量とは、1回のメニスカス押し出し動作におけるノズル先端からのメニスカスの押し出し量の最大値である。ノズル23からのメニスカスの押し出し量は、例えば、KEYENCE社製デジタルマイクロスコープ「VH−6300」を用いてストロボ同期により測定することができる。押し出し量は、図11に示すように、メニスカスMのノズル23の略中央部におけるノズル先端からの突出量を、ノズル形成部材22と略垂直方向に測定した値dである。
【0138】
また、ノズル23の開口形状は真円に限らず楕円形状等様々であるが、ここでノズル半径とは、ノズル23のインクの先端(ノズル形成部材22の表面)側の最長径の1/2のことである。
【0139】
なお、微振動パルスの最後にパルス幅(2n)ALの矩形波が印加される場合は、図7に示すように、その1AL後に吐出パルスを印加することが好ましい。その理由は、微振動パルスによる残留圧力波のキャンセルは必ずしも完全ではないため、微振動パルスの1AL後に吐出パルスを印加すると、残留した圧力波と吐出パルスによる圧力波とが逆位相となり、残留圧力波の吐出への影響を最小にすることができるためである。
【0140】
以上の例では、n=1として、パルス幅が2ALの微振動パルスを1つ含むようにしているが、nは2以上の整数でもよい。また、本実施形態のように微振動パルスがパルス幅2ALの矩形波のみを含むものは、最短の周期で全ての画素毎にメニスカスを微振動させることができるので、特に高速描画を達成する場合に好ましい態様である。
【0141】
図5、図6、図7及び図9に示す例では、吐出パルスは、インクチャネルの容積を膨張させ1AL後に元に戻す矩形波からなる第1のパルスに引き続いてインクチャネルの容積を収縮させ2AL後に元に戻す矩形波からなる第2のパルスとからなり、第1のパルスの電圧Vonが第2のパルスの電圧Voffよりも大きい。特に、この第1のパルスの電圧Vonと第2のパルスの電圧Voffとの電圧比は、Von/Voff=2/1付近が好ましい。VonをVoffよりも大きく設定することは、特に吐出するインクの粘度が高い場合においてインクチャネル内へのインクの供給を促進する効果があり好ましい態様である。微振動パルスは、インクチャネルの容積を収縮させた後に元に戻す矩形波のみからなり、前記吐出パルスの第2のパルスの電圧Voffと同電圧に設定している。これは、吐出パルス及び微振動パルスを発生するための駆動信号発生部100における電源電圧数を少なくして回路コストを下げることができるために好ましい態様である。また、微振動パルスの電圧を電圧の低いVoff電圧に設定することで、微振動が強く掛かりすぎることがなく、インク滴をノズルから吐出させない程度の微振動を効率良く掛けることができる。
【0142】
(第2の実施形態例)
以上の第1の実施の形態例の説明では、画像記録領域内の各画素に微振動パルスを駆動信号発生部100から出力する場合について説明したが、第1の実施の形態例において、画像記録領域以外でも同様にして駆動信号発生部100から微振動パルスを出力することが好ましい。
【0143】
例えば、記録紙の画像記録領域内で微振動パルスを出力すると共に、画像記録領域外でも微振動パルスを出力させる。
【0144】
このようにすることで、画像記録領域外での吐出ノズルの乾燥を有効に防止でき、画像記録領域の記録開始点や各ラインの開始点において良好なインク液滴の吐出を行うことが可能になる。
【0145】
なお画像記録領域外における記録ヘッドの基本的な駆動方法は、第1の実施形態例の画像記録領域内の駆動と同様であるので説明は省略する。画像記録領域外においては、画像データがないので、例えば、図8のような微振動パルスを用いて、ヘッドが画像記録領域外の例えば待機ポジションにある時に全ノズルに微振動を掛けてノズル開口面のインク粘度を下げてやると、どのノズルも第1滴からインク滴の吐出が可能となる。
【0146】
また、図7に示すような微振動パルスと吐出パルスを用いて、インクリフレッシュのための画像記録領域外での吐き捨てのためのインク滴の吐出に先立って、全ノズルを微振動させることが好ましい。
【0147】
このことにより画像記録のインク滴の吐出のための吐出パルスとインクリフレッシュのための画像記録領域外での吐き捨ての吐出パルスを同一電圧に設定できる。通常、インクリフレッシュのための吐出パルスは、インクが増粘しているため、画像記録のインク滴の吐出のための吐出パルスより高い電圧を用いるが、インクリフレッシュの直前に微振動パルスを印加することにより、同電圧に設定することができる。
【0148】
なお、単にデキャップ特性を改善するだけであれば、増粘したインクを吐き捨てするだけでも効果はあるが、増粘したインクは吐き捨て時の飛翔速度が小さいため、インクの一部がノズル23の表面側に残り、ノズル形成部材22を汚してしまう恐れがある。これを防ぐために、上記のように微振動を掛けて粘度を低下させてから吐き捨てすると、飛翔速度が大きくなり、ノズル形成部材22にインクが残るような問題はない。
【0149】
さらに、微振動パルスの電圧は前述のように吐出パルスの第2のパルスの電圧Voffと同電圧に設定しているため、微振動パルスの電圧、画像記録のための吐出パルスの電圧及びインクリフレッシュのための吐出パルスの電圧はいずれも同電圧とすることができる。これにより、駆動用の電源電圧数が少なく回路コストを下げることができ、また、矩形パルスのみで全駆動波形が構成されるため、簡単なデジタル回路で駆動回路を設計できるようになる。
【0150】
また、記録ヘッド2が画像記録領域外に存在する時のインクメニスカスMの微振動の最大押し出し量は、画像記録領域内に存在する時のインクメニスカスMの微振動の最大押し出し量よりも大きいことが好ましい。これは、画像記録領域内ではインクメニスカスMの微振動の最大押し出し量を大きくさせると、画像記録のためのインク滴の吐出に影響するため、インクメニスカスMの微振動の最大押し出し量を抑えなければならないが、画像記録領域外では、前記インク滴の吐出への影響は関係がないので、インクメニスカスMの微振動の最大押し出し量をより大きくさせることにより、ノズル23内のインクを効率良く攪拌し、より高いデキャップ特性の改善効果を得ることができるようになる。
【0151】
ノズル23先端から押し出されるインクメニスカスMの最大押し出し量は、隔壁に印加される微振動パルスの電圧の大きさ、休止期間の長さやパルス幅を変えることによって調整されるが、ここで、記録ヘッド2が画像記録領域外に存在する時に、かかるインクメニスカスMを微振動させるために記録ヘッド2に印加する微振動パルスの好ましい一例を図10(j)に、この微振動パルスとインクリフレッシュのための吐出パルスの組み合わせを図10(k)にそれぞれ示す。同図に示すように、微振動パルスは、インクチャネルの容積を拡大させるため(N1)ALのパルス幅である矩形波の電圧パルスと、(N2)ALの幅の第1の休止期間と、インクチャネルの容積を縮小させるための(N3)ALのパルス幅である矩形波の電圧パルスと、(N4)ALの幅の第2の休止期間を有する。
【0152】
なお、N1、N3は2以上の整数、N2、N4は1以上の実数である。N1、N2、N3、N4は、20以下が好ましく、6以下がさらに好ましい。あまり長すぎると駆動周期が長くなってしまうため好ましくない。また、N2、N4は1以上の整数であることが好ましい。
【0153】
このように(N1)AL、(N2)AL、(N3)AL、(N4)ALからなる矩形波のパルスを駆動信号として、この駆動信号を複数回繰り返し印加することで、図11に示すようにインクメニスカスMを効率的に微振動させることができる。
【0154】
N1、N3は2以上の整数、N2、N4は1以上の実数であれば任意であり、また、N1、N2、N3、N4は全て同一である必要はなく、それぞれ異なる値としてもよいが、上記実施形態の様にN1=N2=N3=N4=4とするとデキャップ特性の改善効果が高く好ましい。
【0155】
パルス幅であるN1、N3を2AL以上の長さに、第1の休止期間N2、第2の休止期間N4を1AL以上の長さにとるので、各パルスエッジで発生する圧力波同士の重畳が抑えられ、この微振動によりノズル23からインク滴が吐出されることがない。
【0156】
かかる記録ヘッド2において、インクリフレッシュのための画像記録領域外での吐き捨てのためのインク滴の吐出に先立って、図10(j)の微振動パルスにより前記ノズル23内のインクメニスカスをノズル23先端からの最大押し出し量がノズル半径以上となるように押し出す動作と、静止位置よりもインクチャンネル側に引き込ませる動作を複数回繰り返すことにより、ノズル23からインク滴を吐出させずにインクメニスカスを微振動させることが好ましい。
【0157】
インクメニスカスをノズル23の半径以上に押し出すと、ラプラースの法則から明らかなように、圧力を取り去っても、インクはノズル23内に吸い込まれないので、負圧を掛けて引き込む必要がある。従って、吐出中にノズル半径以上押し出すと、インクメニスカスを静止位置に戻すのに時間が掛かるので、普通、ノズル半径以上には押し出さない。本発明では、インクメニスカスをノズル半径以上押し出し、次にインクメニスカスを静止位置より引き込むので、確実にノズル23内のインクを攪拌することができる。
【0158】
以上のように、インクリフレッシュのための画像記録領域外での吐き捨てのためのインク滴の吐出に先立って、ノズル23内のインクメニスカスMをノズル23先端からの最大押し出し量がノズル半径以上となるように押し出す動作と、静止位置よりも更にインクチャンネル側に引き込ませる動作を複数回繰り返すことによりノズル23付近とインクチャネル内とのインクの交流が促進されてインクを確実に攪拌することができ、両者のインクの粘度の差が抑制され、デキャップ特性の改善が図られる。複数回繰り返す回数は、10回以上が好ましい。少なすぎるとデキャップ特性の改善に対する効果が小さくなる。
【0159】
なお、ノズル23先端から押し出されるインクメニスカスMの最大押し出し量dは、ノズル半径の3倍以下とする。インクメニスカスMの最大押し出し量dがノズル半径の3倍を越えるようになると、インク滴がノズル23から吐出してしまい、誤吐出発生の原因となる。
【0160】
上記微振動パルスを用いることにより、吐出パルスと同電位で、誤吐出を起こさせることもなく、効果的にインクメニスカスを微振動させることができる。
【0161】
即ち、図10(k)に示すように、微振動パルス電圧、画像記録領域の吐出パルス電圧及びインクリフレッシュのための吐出パルス電圧はいずれも同電圧としている。これにより、駆動用の電源電圧数が少なく回路コストを下げることができ、また、矩形パルスのみで全駆動波形が構成されるため、簡単なデジタル回路で駆動回路を設計できるようになる。
【0162】
(第3の実施形態例)
前記第1及び第2の実施形態例における吐出パルス、微振動パルスは、他の波形にすることも可能である。
【0163】
図10の(a)〜(i)に例を示す。
【0164】
例えば、吐出パルスとしては、図10の(g)〜(i)に示すように、インクチャネルの容積を膨張させ一定時間後にインクチャネルの容積を元に戻すか、インクチャネルの容積を収縮させ一定時間後にインクチャネルの容積を元に戻すことにより液滴を吐出させるような片極のパルスでもよい。この場合の微振動パルスは、その電圧(振幅)を吐出パルスの電圧(振幅)より小さくすることにより、または、微振動パルスのパルス幅を調整することにより、ノズルからインク滴を吐出させずに微振動させることができる。
【0165】
また、微振動パルスは、1つではなく、図10の(e)、(f)に示すように、複数の微振動パルスにより複数回の微振動をさせるようにしてもよい。
【0166】
この場合、偶数AL幅、即ちパルス幅が(2n)ALの矩形波は微振動パルス中に少なくとも1つ含まれることが好ましいが、図10の(f)に示すように、パルス幅(2n)ALの矩形波が一連の微振動パルス中の最後に少なくとも含まれるようにすると、微振動パルスによる残留圧力波をキャンセルする効果があるために、メニスカスを微振動させた直後に吐出を行うような高周波駆動を行う場合に好ましい。
【0167】
また、図10の(f)に示す例では、奇数AL幅の微振動パルスでメニスカスを大きく微振動させた1AL後に、偶数AL幅の微振動パルスで再度微振動させ、残留する圧力波をキャンセルしてから吐出するので、デキャップ特性の改善効果が大きく、且つ安定した吐出が可能である。
【0168】
なお、微振動パルスの最後にパルス幅(2n)ALの矩形波が印加される場合は、その1AL後に吐出パルスを印加することが好ましい。その理由は、微振動パルスによる残留圧力波のキャンセルは必ずしも完全ではないため、微振動パルスの1AL後に吐出パルスを印加すると、残留した圧力波と吐出パルスによる圧力波とが逆位相となり、残留圧力波の吐出への影響を最小にすることができるためである。
【0169】
特に、図10の(f)に示すように、微振動パルスがパルス幅1ALと2ALの矩形波を含むものとすると、短時間にメニスカスを効率良く微振動させることができるために、特にデキャップ現象の激しい系で、メニスカス微振動直後にインク吐出を行うような高周波駆動時において、画像記録速度をあまり低下させることなく全ての画素でメニスカスを微振動させることができるために好ましい態様である。
【0170】
なお、微振動パルス中にパルス幅が(2n)ALの矩形波が2つ以上含まれる場合、それぞれでnが異なっていてもよく、また、微振動パルスが、パルス幅が(2n)ALの矩形波を少なくとも1つ含む2以上の複数の微振動パルスを有している場合、先の矩形波と後の矩形波との間隔はALの整数倍とすると、メニスカスを効率的に微振動させることができるために好ましい。
【0171】
以上のように、パルス幅が(2n)ALの矩形波を少なくとも1つ含む微振動パルスが好ましいが、図10の(b)、(d)、(e)に示すように、奇数AL幅の微振動パルスのみで構成しても良い。
【0172】
また、前述のように微振動パルスとしては、インクチャネルの容積を膨張させ一定時間後に元に戻す第1のパルスとインクチャネルの容積を収縮させ一定時間後に元に戻す第2のパルスとを組み合わせた両極のパルスでもよい。
【0173】
また、吐出パルス、微振動パルスは、図10の(i)に示すようような台形波や、三角波など何でも良くパルスの波形は特に限定されない。
【0174】
(第4の実施形態例)
第1から第3の実施形態例では、記録ヘッドの圧力発生手段は、隣接するチャネル間の隔壁を形成し、且つ電界を印加することによりせん断モードで変形する圧電材料により構成されるものを例に挙げて説明したが、これに限らず、記録ヘッドのインクチャネルの圧力を変化させる機能を与えるものであればどのような構成であってもよい。
【0175】
また、圧力発生手段としては、電気−機械変換手段(シングルキャビティ型、ダブルキャビティ型、ベンダー型、ピストン型、せん断モード型等)、電気−熱変換手段(サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)など何れの圧力発生手段を用いても構わないが、好ましくは、電気−機械変換手段を用いたヘッドが微振動させる際のメニスカス制御が容易になる点で好ましい。
【0176】
また、本発明のインクジェット記録装置で用いるインクジェット記録ヘッド(以下、記録ヘッドあるいはヘッドともいう)はオンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。
【0177】
第1から第3の実施形態例では、記録ヘッド2のインクチャネルの容積を変化させる電気・機械変換手段である、インクチャネル同士の隔壁を形成し、かつせん断モードで変形する圧電材料を駆動することで、画像記録のためのインク滴の吐出、ノズル内のインクメニスカスの微振動及びインクリフレッシュのためのインク滴の吐出動作の各動作を行うことにより、同じ電気・機械変換手段で上記の全ての動作を行う機能を有する本発明における好適例を用いて説明した。
【0178】
即ち、以上の各形態例では、ノズルからインク滴を吐出させるための手段とノズルからインク滴を吐出させずにインクメニスカスを微振動させるための手段とが共通する場合であるが、これに限らず、ノズルからインク滴を吐出させずにインクメニスカスを微振動させるための構成を、ノズルからインク滴を吐出させるための構成とは別の構成として付加的に設けるようにしてもよい。例えば上記のように、圧力発生手段として電気−熱変換手段を用い、インク滴の吐出を、インクの加熱時に発生する気泡のエネルギーを利用して行うインクジェット記録装置の記録ヘッドにおいて、ノズルからインク滴を吐出させずにインクメニスカスを微振動させるために、記録ヘッドのインクチャネルの容積を変化させるように例えばインクチャネルの外側に設けられる電気・機械変換手段と、この電気・機械変換手段に駆動パルスを印加する駆動信号発生部とを、インク滴の吐出とは別に付加的に設けるようにしてもよい。このような電気・機械変換手段としては圧電材料が挙げられる。
【実施例】
【0179】
以下、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、実施例中で「%」は、特に断りのない限り質量%を表す。
【0180】
(実施例)
〈高分子化合物の合成〉
グリシジルメタクリレート56g、p−ヒドロキシベンズアルデヒド48g、ピリジン2g、及びN−ニトロソ−フェニルヒドロキシアミンアンモニウム塩1gを反応容器に入れ、80℃の湯浴中で8時間攪拌した。
【0181】
次に、重合度300、ケン化率88%のポリ酢酸ビニルケン化物45gをイオン交換水225gに分散した後、この溶液にリン酸4.5gと上記反応で得られたp−(3−メタクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)ベンズアルデヒドをPVAに対して変性率が3モル%になる様に加え、90℃で6時間攪拌した。得られた溶液を室温まで冷却した後、塩基性イオン交換樹脂30gを加え1時間攪拌した。その後イオン交換樹脂を濾過し、ここに光重合開始剤として、イルガキュア2959(チバスペシャリティケミカルズ社製)を15%水溶液100gに対して0.1gの割合で混合しその後イオン交換水にて希釈して10%の高分子化合物水溶液を得た。
【0182】
なお、必要に応じてポリ酢酸ビニルケン化物の重合度、ケン化度を変え、p−(3−メタクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)ベンズアルデヒドの仕込量を変えて変性率を調整した。
【0183】
〔インクの作製〕
下記の様にして染料タイプのインクセット1を作製した。
【0184】
インクセット1の作製
以下によりインク、及びインクセット1を作製した。
【0185】
C.I.アシッドレッド35 5部
10%の高分子化合物水溶液 30部
グリセリン 7部
ジエチレングリコール 15部
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 2部
オルフィンe1010(日信化学社製) 0.2部
以上にイオン交換水を加え全量を100部とし、マゼンダインクを得た。
【0186】
マゼンタインクのC.I.アシッドレッド35の代わりにC.I.ダイレクトブラック19を用い同様にしてブラックインクを得た。
【0187】
〔顔料分散液の調製〕
(マゼンタ顔料分散液の調製)
以下の各添加剤を混合し、0.5mmのジルコニアビーズを体積率で50%充填したサンドグラインダーを用いて分散し、マゼンタ顔料の含有量が10%のマゼンダ顔料分散液を調製した。このマゼンタ顔料分散液に含まれるマゼンタ顔料粒子の平均粒径は83nmであった。なお、粒径測定はマルバーン社製ゼータサイザ1000HSにより行った。
【0188】
C.I.ピグメントレッド122 10部
ジョンクリル61(アクリルスチレン系樹脂分散剤、ジョンソン社製) 3部
グリセリン 15部
イオン交換水 72部
(ブラック顔料分散液の調製)
Cabot社製のカーボンブラック自己分散物cabo−jet300をイオン交換水で希釈して、カーボンブラック含有量が10%のブラック顔料分散液を調製した。得られたブラック顔料分散液に含まれるカーボンブラック粒子の平均粒径は153nmであった。なお、粒径測定はマルバーン社製ゼータサイザ1000HSにより行った。
【0189】
インクセット2の作製
以下によりインク、及びインクセット2を作製した。
【0190】
マゼンタ顔料分散液 30部
10%の高分子化合物水溶液 30部
グリセリン 7部
ジエチレングリコール 15部
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 2部
オルフィンe1010(日信化学社製) 0.2部
以上にイオン交換水を加え全量を100部とし、マゼンダインクを得た。
【0191】
マゼンタ顔料分散液の代わりにブラック顔料分散液を用い同様にしてブラックインクを得た。
【0192】
(比較例)
インクセット3の作製
インクセット1において、高分子化合物の10%水溶液の代わりに水を用いた以外は同様にしてインクセット3を得た。
【0193】
インクセット4の作製
インクセット2において、高分子化合物の10%水溶液の代わりに水を用いた以外は同様にしてインクセット4を得た。
【0194】
(フェザリングの評価)
図2に示すノズル口径25μm、駆動周波数8kHz、ノズル数256、ノズル密度180dpi(以下、dpiは1インチ(2.54cm)当たりのドット数を表す。)であるシェアモード型記録ヘッド2を用い、各チャネルを図4に示したように3群に分け、図10(c)に示す微振動パルス及び吐出パルスを用いて、以下の条件で3サイクル駆動を行った。なお、微振動パルスは全ての画素に印加した。
【0195】
条件 ヘッド:AL=5.0μs
駆動電圧比:Von/Voff=2/1
最大記録密度720×720dpiの図1のインクジェット記録装置を使用し、上質紙(コニカミノルタビジネステクノロジー社製 First Class紙)に巾250μm、長さ5cmの黒細線をプリントし、目視観察し、下記の基準に従ってフェザリングの評価を行った。
【0196】
なお、各インクを連続吐出し、着弾した後0.1秒後に、120W/cmメタルハライドランプ(日本電池社製 MAL 400NL 電源電力3kW・hr)を照射した。
【0197】
◎:滲みにより線が太ることも無く細線が再現されている
○:滲みにより線が太ることはないが5箇所未満、紙繊維に沿ったインク滲みが観測される
△:滲みにより線が太ることはないが、10箇所未満、紙繊維に沿ったインク滲みが観測される
×:滲みにより線が若干太り、紙繊維に沿ったインク滲みも10箇所以上観測される
××:滲みによる線太りが激しく、紙繊維に沿ったインク滲みも20箇所以上観測される
このうち、×、××は製品として問題があるレベルである。
【0198】
(ビーディングの評価)
図2に示すノズル口径25μm、駆動周波数8kHz、ノズル数256、ノズル密度180dpi(以下、dpiは1インチ(2.54cm)当たりのドット数を表す。)であるシェアモード型記録ヘッド2を用い、各チャネルを図4に示したように3群に分け、図10(c)に示す微振動パルス及び吐出パルスを用いて、以下の条件で3サイクル駆動を行った。なお、微振動パルスは全ての画素に印加した。
【0199】
条件 ヘッド:AL=5.0μs
駆動電圧比:Von/Voff=2/1
最大記録密度720×720dpiの図1のインクジェット記録装置を使用し、アート紙(王子製紙製 NKアート金藤N)に10cm×10cmのマゼンダベタをプリント及び目視観察し、下記の基準に従ってビーディング耐性の評価を行った。
【0200】
なお、各インクを連続吐出し、着弾した後0.1秒後に、120W/cmメタルハライドランプ(日本電池社製 MAL 400NL、電源電力3kW・hr)を照射した。
【0201】
◎:均一な画像である
○:よく見るとわかるまだら状のノイズが5箇所未満存在する
△:よく見るとわかるまだら状のノイズが10箇所未満存在する
×:はっきりとしたまだら状のノイズが10箇所以上存在する
××:まだら状のノイズが20箇所以上存在する
このうち、×、××は製品として問題があるレベルである。
【0202】
(カラーブリード耐性の評価)
図2に示すノズル口径25μm、駆動周波数8kHz、ノズル数256、ノズル密度180dpi(以下、dpiは1インチ(2.54cm)当たりのドット数を表す。)であるシェアモード型記録ヘッド2を用い、各チャネルを図4に示したように3群に分け、図10(c)に示す微振動パルス及び吐出パルスを用いて、以下の条件で3サイクル駆動を行った。なお、微振動パルスは全ての画素に印加した。
【0203】
条件 ヘッド:AL=5.0μs
駆動電圧比:Von/Voff=2/1
最大記録密度720×720dpiの図1のインクジェット記録装置を使用し、上記シェアモード型記録ヘッド2を2個(黒用とマゼンタ用)キャリッジ5に搭載して、アート紙(王子製紙製 NKアート金藤N)にマゼンダベタ地の上に巾100μmの黒細線をプリントした後、目視観察し、下記の基準に従ってカラーブリード耐性の評価を行った。
【0204】
なお、各インクを連続吐出し、着弾した後0.1秒後に、120W/cmメタルハライドランプ(日本電池社製 MAL 400NL、電源電力3kW・hr)を照射した。
【0205】
◎:細線とベタの境界線がはっきりしている
○:わずかに境界がにじんでいる箇所があるが、実用上問題のない品質である
△:境界部ににじみが認められるが、実用上許容限界内の品質である
×:境界部で明らかなにじみの発生が認められ、線幅が1.5倍ほどとなり、実用上問題となる品質である
××:細線とベタ部の境界が不明瞭な品質であり、ブリード耐性が極めて乏しい
〔光沢感〕
図2に示すノズル口径25μm、駆動周波数8kHz、ノズル数256、ノズル密度180dpi(以下、dpiは1インチ(2.54cm)当たりのドット数を表す。)であるシェアモード型記録ヘッド2を用い、各チャネルを図4に示したように3群に分け、図10(c)に示す微振動パルス及び吐出パルスを用いて、以下の条件で3サイクル駆動を行った。なお、微振動パルスは全ての画素に印加した。
【0206】
条件 ヘッド:AL=5.0μs
駆動電圧比:Von/Voff=2/1
最大記録密度720×720dpiの図1のインクジェット記録装置を使用し、アート紙(王子製紙製 NKアート金剛N)に10cm×10cmの黒ベタをプリントし、目視観察し、下記の基準に従って光沢感の評価を行った。
【0207】
なお、各インクを連続吐出し、着弾した後0.1秒後に、120W/cmメタルハライドランプ(日本電池社製 MAL 400NL 電源電力3kW・hr)を照射した。
【0208】
◎:記録面と下地の光沢度差がほとんど無く自然である。
【0209】
○:記録面と下地の光沢度が少し異なるが、許容できるレベル。
【0210】
△:記録面と下地の光沢度が少し異なることが目視で観察でき、かつ記録面の光沢度が著しく下地より高い。
【0211】
×:記録面と下地の光沢度がはっきり異なることが目視で観察でき、かつ記録面の光沢度が著しく下地より高い。
【0212】
××:記録面と下地の光沢度がはっきり異なることが目視で観察でき、かつ記録面の光沢度が著しく下地より低い。
【0213】
〔濃度〕
図2に示すノズル口径25μm、駆動周波数8kHz、ノズル数256、ノズル密度180dpi(以下、dpiは1インチ(2.54cm)当たりのドット数を表す。)であるシェアモード型記録ヘッド2を用い、各チャネルを図4に示したように3群に分け、図10(c)に示す微振動パルス及び吐出パルスを用いて、以下の条件で3サイクル駆動を行った。なお、微振動パルスは全ての画素に印加した。
【0214】
条件 ヘッド:AL=5.0μs
駆動電圧比:Von/Voff=2/1
最大記録密度720×720dpiの図1のインクジェット記録装置を使用し、上質紙(コニカミノルタビジネステクノロジー社製FirstClass紙)に10cm×10cmの黒ベタをプリントし、黒濃度をX−Rite濃測計により測定し以下の基準に沿って評価した。
【0215】
なお、各インクを連続吐出し、着弾した後0.1秒後に、120W/cmメタルハライドランプ(日本電池社製 MAL 400NL 電源電力3kW・hr)を照射した。
【0216】
◎:黒濃度1.5以上
○:黒濃度1.4以上1.5未満
△:黒濃度1.2以上1.4未満
×:黒濃度0.8以上1.2未満
××:黒濃度0.8未満
以上により得られた結果を、表1に示す。
【0217】
【表1】

【0218】
表1より、染料系、顔料系の何れにおいても、本発明の試料は、記録メディアの種類に依存することなく、優れた印字性能を示し、かつ優れた耐久性を示すことが分かる。
【0219】
(出射安定性の評価1)
図2に示すノズル口径25μm、駆動周波数6〜8kHz、ノズル数256、ノズル密度180dpi(以下、dpiは1インチ(2.54cm)当たりのドット数を表す。)であるシェアモード型記録ヘッド2を用い、各チャネルを図4に示したように3群に分け、図10(a)〜(f)に示す微振動パルス及び吐出パルスを用いて、以下の条件で3サイクル駆動を行った。
【0220】
このときの出射安定性及びデキャップ特性改善効果を下記の方法で測定した結果を表2に示す。
条件 ヘッド:AL=5.0μs
インク:インクセット2のブラック顔料
駆動電圧比:Von/Voff=2/1
出射安定性の測定方法
それぞれの微振動パルス印加条件において、電位差Von、Voffを変化させることによりインク滴の飛翔速度を上げていき、飛翔状態を観察した。吐出方向の曲がりやサテライトの飛散などが起こらない飛翔速度の上限を安定出射速度上限と定めた。
【0221】
出射安定性の評価基準
○:8m/s≦安定出射速度上限
△:6m/s≦安定出射速度上限<8m/s
×:安定出射速度上限<6m/s
デキャップ特性の測定方法
それぞれの微振動パルス印加条件において、定常駆動時のインク滴の飛翔速度が6m/sとなる電圧に駆動電圧を固定(Von/Voff=2/1)し、吐出間隔を広げながらインクを吐出した時の初発速度の変化を測定した。そのときの速度変化が小さい程、大きな改善効果ありと認められる。
【0222】
【表2】

【0223】
表2に示す通り、微振動パルスを印加することにより、デキャップ特性改善効果が確認できた。また、パルス幅がALの奇数倍である矩形波のみからなる微振動パルスを印加した場合には、出射安定性がやや不十分であるが、パルス幅がALの偶数倍である矩形波を含む微振動パルスを印加した場合には、メニスカスを微振動させた直後でも安定した吐出が可能となる。また、インクセット2のマゼンタインク及びインクセット1のインクについてもほぼ同様の結果が得られた。
【0224】
(デキャップ特性の評価)
出射安定性の評価1の場合と同様のシェアモードタイプの記録ヘッドの各チャネルを3群に分け、図10(c)に示す微振動パルス及び吐出パルスを用いて、以下の条件で3サイクル駆動を行い、低温・低湿環境におけるデキャップ特性の改善効果と駆動電圧について評価した。
【0225】
デキャップ特性は任意の1ノズルについて、下記の方法を用いて測定した。その結果を図12及び表3に示す。
条件 ヘッド:AL=5.0μs
インク:インクセット2のブラック顔料
駆動電圧比:Von/Voff=2/1
環境:11℃、35%RH
デキャップ特性の測定方法
非印字画素及び印字画素に微振動パルスを印加しない条件と、全ての画素に図10(c)の微振動パルスを印加した条件について、駆動電圧を変化させながら20発目の飛翔速度を測定した(Von/Voff=2/1に固定)。飛翔速度が6m/sになるときの駆動電圧(Von)を表3に示す。
【0226】
この定常駆動時の飛翔速度が6m/sとなる電圧に駆動電圧を固定し、吐出間隔を広げながらインクを吐出した時の初発速度の変化を測定した。そのときの速度変化が小さい程、大きな改善効果ありと認められる。
【0227】
【表3】

【0228】
表3の実施例6に示す通り、吐出前に微振動パルスを印加すると、低温・低湿環境のデキャップ現象の防止に有効であることが確認された。全ての画素に微振動パルスを印加するため、画像記録領域内端部のみ吐出等のパターンでも、安定した液滴形成が可能となる。また、吐出前のメニスカスを微振動させることで、駆動効率向上(駆動電圧低下)の効果も得られる。また、インクセット2のマゼンタインク及びインクセット1のインクについてもほぼ同様の結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0229】
【図1】インクジェット記録装置の概略構成を示す図
【図2】(a)は記録ヘッドの一例を示す概観斜視図、(b)は断面図
【図3】(a)〜(c)は記録ヘッドのインク吐出時の作動を示す図
【図4】(a)〜(c)は記録ヘッドの時分割動作の説明図
【図5】A、B、Cの各組のチャネルに印加されるパルス波形のタイミングチャート
【図6】正電圧のみを用いた場合のパルス波形のタイミングチャート
【図7】全ての印字画素に対するメニスカス微振動時のA、B、Cの各組のチャネルに印加されるパルス波形のタイミングチャート
【図8】非印字画素に対するメニスカス微振動時のA、B、Cの各組のチャネルに印加されるパルス波形のタイミングチャート
【図9】微振動パルスおよび吐出パルスがA組、B組、C組のチャネルに選択的に印加される例を示すタイミングチャート
【図10】(a)〜(k)はそれぞれ微振動パルス及び吐出パルスのパルス波形を示す図
【図11】ノズル先端からのメニスカスの押し出し量を説明する図
【図12】デキャップ特性測定結果を示すグラフ
【符号の説明】
【0230】
1 インクジェット記録装置
2 記録ヘッド
21 インクチューブ
22 ノズル形成部材
23 ノズル
24 カバープレート
25 インク供給口
26 基板
27 隔壁
28 チャネル
3 搬送機構
31 搬送ローラ
32 搬送ローラ対
33 搬送モータ
4 ガイドレール
5 キャリッジ
6 フレキシケーブル
7、8 インク受け器
100 駆動信号発生部
P 記録媒体
PS 記録面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録ヘッドのノズルよりインク滴を吐出させて画像記録を行うインクジェット記録装置であって、インクは、少なくとも色剤と、水と、親水性主鎖に複数の側鎖を有し、活性エネルギー線を照射することにより、側鎖間で架橋結合可能な高分子化合物と、を含有するものであり、インク滴の非吐出時に、ノズル内のインクメニスカスをノズルからインク滴を吐出させない程度に微振動させることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記高分子化合物をインク全質量に対して、0.8〜5.0質量%含有することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記親水性主鎖がポリ酢酸ビニルのケン化物であり、かつケン化度が77〜99%、重合度が200〜4000であることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記親水性主鎖に対する前記側鎖の変性率が0.8モル%以上4モル%以下であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記記録ヘッドのインクチャネルの音響的共振周期の1/2をALとした時、記録ヘッドの圧力発生手段に対してパルス幅が(2n)AL(nは1以上の整数)の矩形波を少なくとも1つ含む微振動パルスを印加することにより前記微振動させることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記微振動パルスは、パルス幅が2ALの矩形波を含むことを特徴とする請求項5に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記微振動パルスは、パルス幅が1ALと2ALの矩形波を含むことを特徴とする請求項5に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記微振動パルスは、インク滴を吐出させる吐出パルスに先立って印加されることを特徴とする請求項5乃至7の何れか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記(2n)ALの矩形波は、前記微振動パルスの少なくとも最後に印加されることを特徴とする請求項5乃至8の何れか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
前記最後に印加される(2n)ALの矩形波の1AL後に、吐出パルスを印加することを特徴とする請求項9に記載のインクジェット記録装置。
【請求項11】
インク滴を吐出させる吐出パルスは、インクチャネルの容積を膨張させ1AL後に元に戻す矩形波からなる第1のパルスと、インクチャネルの容積を収縮させ一定時間後に元に戻す矩形波からなる第2のパルスとを含み、第1のパルスの電圧Vonが第2のパルスの電圧Voffよりも大きいことを特徴とする請求項5乃至10の何れか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項12】
前記微振動パルスは、インクチャネルの容積を収縮させた後に元に戻す矩形波からなり、前記吐出パルスの第2のパルスの電圧Voffと同電圧であることを特徴とする請求項11に記載のインクジェット記録装置。
【請求項13】
前記圧力発生手段は、前記吐出パルス又は前記微振動パルスの印加により前記インクチャネルの容積を変化させる電気・機械変換手段であることを特徴とする請求項5〜12の何れか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項14】
前記電気・機械変換手段は、隣接するインクチャネル間の隔壁の少なくとも一部を形成し、且つ電圧を印加することによりせん断モードで変形する圧電材料により構成されることを特徴とする請求項13に記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−90688(P2007−90688A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−283905(P2005−283905)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】