説明

インクジェット記録装置

【課題】 記録ヘッドとプラテンとの間の紙間調整をプラテン全域で簡便に高精度で行うことができ、厚さが異なる被記録材に対しても適正な紙間調整をプラテン全域で容易に行うことができるインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】 被記録材1を支持するプラテン40を、記録ヘッド3の走査方向に分割されてそれぞれが独立して記録ヘッドに対して接離する方向に移動可能な複数の部分プラテン4で構成する。各部分プラテンは、ガイドシャフト7の方向に移動する位置決め手段2aにより記録ヘッドから所定距離の位置に位置決めされ、プラテン保持機構6により保持される。プラテン保持機構により保持された各部分プラテンを位置決め手段により位置決めすることにより紙間調整を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像情報に基づいて記録ヘッドから被記録材へインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、複写機、ファクシミリなど、画像情報に基づいて被記録材に画像を記録する記録装置の一つとして、記録ヘッドから用紙やプラスチックシート等の被記録材へインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置がある。インクジェット記録装置においては、記録ヘッドのノズル面と被記録材を支持するプラテンとの距離(以降、紙間距離と称する)を適正値に保つことが重要である。インク滴の付着による画素ドットを高精度に配置して高品位の画像を出力するには、被記録材の記録面と記録ヘッドのノズル面との距離(以降、ヘッド紙間)は接触しない範囲でできるだけ小さく、かつ記録ヘッドの走査方向において一定であることが望ましい。また、被記録材の種類や周囲の環境によって、ヘッド紙間の最適値は異なる。そこで、インクジェット記録装置では、記録ヘッドをプラテンに対して近接または離間する方向に移動可能とし、記録の条件に応じて紙間距離を変化させる機能が設けられている。
【0003】
インクジェット記録装置では、装置の組立工程において、記録ヘッドの走査方向で紙間距離を一定に保つための調整を行っている。また、紙間距離を一定に保つためには、記録ヘッドの走査を案内するガイドレールに対してプラテンが平行になるように調整することも必要である。しかし、1メートルを超える幅の被記録材を使用する大型の記録装置においては、プラテンを支持する筐体部材が自重で変形することがある。このため、ガイドレールとプラテンの位置を調整するだけでなく、走査する記録ヘッドとプラテンとの平行度を高精度に調整する必要がある。
【0004】
筐体部材の変形を抑制するために、筐体の材質にアルミ合金の押し出し材を用いて剛性を高めている装置がある。しかし、これでは、板金部材を組合せて筐体を構成する場合に比べてコストが数倍程度も高くなってしまう。そこで、プラテン面を上下に移動させることで平面度を高精度に調整することが行われている。調整の方法としては、プラテンを支持する筐体を他の部材に対して突張って変形させる方法や、プラテンを支持筐体に対して自由な位置に取り付けられる構成にする方法などが用いられている。
【0005】
また、特許文献1には、平面度の調整ではなく、記録ヘッドからプラテンまでの距離が所定距離になるようにプラテンを加工するインクジェット記録装置の製造方法が提案されている。さらに、輸送時の振動衝撃や急激な温湿度の変化、経年変化などで調整済みの紙間距離が微妙に変化してしまうことがある。そこで、特許文献2には、プラテンと記録ヘッドとの相対的傾きを求めて記憶し、記憶されたデータを用いて、プラテンの傾き測定時に算出されたギャップを補正する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−200800
【特許文献2】特開平08−058165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、プラテン面を上下に移動させて紙間距離の調整を行うには、紙間距離を測定してからプラテン面を移動させ、再び紙間距離を測定する作業を規格の精度を満足するまで繰り返さなければならず、非常に手間がかかる。また、紙間距離の測定には特殊な測定器具を使用するので、組立を行う工場以外での再調整は事実上不可能であり、市場のサービスマンでは調整箇所に関わる部品の交換を必要とする修理ができないという問題がある。
【0008】
本発明はこのような技術的課題に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、記録ヘッドとプラテンとの間の紙間調整をプラテン全域で簡便に高精度で行うことができ、厚さが異なる被記録材に対しても適正な紙間調整をプラテン全域で容易に行うことができるインクジェット記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るインクジェット記録装置は、インクを吐出して被記録材に画像を記録する記録ヘッドと、前記記録ヘッドを搭載して移動するキャリアと、前記キャリアの移動を案内するガイドシャフトと、前記記録ヘッドと対向する位置で被記録材を支持するプラテンと、を備え、前記プラテンは前記記録ヘッドの走査方向に分割されてそれぞれが独立して前記記録ヘッドに対して接離する方向に移動可能な複数の部分プラテンで構成され、前記各部分プラテンは、前記ガイドシャフトの方向に移動する位置決め手段により前記記録ヘッドから所定距離の位置に位置決めするとともに、プラテン保持機構により保持することができ、前記プラテン保持機構により前記各部分プラテンを保持した状態で前記位置決め手段により前記各部分プラテンを位置決めすることにより紙間調整を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、記録ヘッドとプラテンとの間の紙間調整をプラテン全域で簡便に高精度で行うことができ、厚さが異なる被記録材に対しても適正な紙間調整をプラテン全域で容易に行うことができるインクジェット記録装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】一実施形態に係わるインクジェット記録装置の斜視図
【図2】一実施形態に係るインクジェット記録装置の縦断面図
【図3】プラテンとプラテン保持機構の斜視図
【図4】プラテン保持機構の分解斜視図
【図5】リンクによるプラテン保持機構の作動を示す図であり、(a)はプラテンを保持した状態の斜視図、(b)はプラテンを開放したときの斜視図
【図6】紙間距離を調整するときのインクジェット記録装置の縦断面図
【図7】プラテンに対する記録ヘッドの位置関係を示し、(a)は標準記録ポジションを示す縦断面図、(b)は紙間調整ポジションを示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を具体的に説明する。なお、各図面を通して同一符号は同一または対応部分を示すものである。図1は一実施形態に係わるインクジェット記録装置の斜視図であり、図2は一実施形態に係るインクジェット記録装置の縦断面図である。ガイドシャフト7およびガイドレール8に案内されて被記録材1の幅方向に往復移動するキャリア2が配されている。キャリア2にはインクを吐出して画像を記録する記録ヘッド3が搭載されている。記録ヘッド3と対向する位置には、被記録材1を支持するプラテン40が配されている。
【0013】
プラテン40の搬送上流側には、駆動ローラである搬送ローラ9と従動ローラであるピンチローラ10とからなる搬送ローラ対が配されている。記録ヘッド3の被記録材1と対向するノズル面3aには、複数のノズルが所定の配置で形成されている。記録ヘッド3は、画像情報に基づいて複数のノズルから選択的にインクを吐出することで被記録材1に画像を記録していく。記録動作においては、キヤリア2の移動に同期して記録ヘッド3の各ノズルから被記録材1へインクを吐出することで、1ライン分の画像が形成される。1ライン分の記録が終了すると被記録材1を搬送ローラ対9、10により所定ピッチだけ搬送した後、次の1ライン分の画像を形成する。このように1ライン分の記録と所定ピッチの搬送を交互に繰り返すことで、被記録材1の全体の記録が行われる。
【0014】
記録装置には、CPU、メモリおよびI/O回路等を有するコントローラからなる制御手段50が設けられている。この制御手段50は、内部メモリに予め格納された制御プログラムに従い、駆動モータや各種装置の動作を制御する。これにより、被記録材1の給送および搬送の動作を制御するとともに、画像情報に基づいて記録ヘッド3を制御することにより、被記録材に画像を記録していく。制御手段50は、後述する紙間調整の動作を制御する他、装置全体の動作やそのタイミングを制御している。
【0015】
プラテン40は被記録材1の幅方向、つまり記録ヘッド3の走査方向に分割された複数の部分プラテン4で構成されている。各部分プラテン4は、それぞれ独立して、記録ヘッド3に対して接離(接近、離間)する方向に移動可能に構成されている。図3は複数の部分プラテンからなるプラテン40と各部分プラテンに対応して設けられた複数のプラテン保持機構6を示す斜視図である。図4は図3中のリンク24で作動可能に連結されたプラテン保持機構6の分解斜視図である。図5はリンク24で各プラテン保持機構6を作動させる状態を示し、図5(a)は各部分プラテン4を保持した状態の斜視図であり、図5(b)は各部分プラテン4を開放したときの斜視図である。図6は記録ヘッド3と各部分プラテン4との距離(紙間距離)を調整するときの装置の縦断面図である。図7はプラテン40に対する記録ヘッド3の位置関係を示し、図7(a)は標準の紙間距離における標準記録ポジションを示す縦断面図であり、図7(b)はキャリアの位置決め手段をプラテン40に当接させることで適正な紙間距離を設定するための紙間調整ポジションを示す縦断面図である。
【0016】
キャリア2は、記録ヘッド3のノズル面3aと各部分プラテン4との間の距離(紙間距離)が所定の設定値(標準紙間距離C)となる標準記録ポジションに位置している。被記録材1の種類(材質や厚みなどの種類)に応じて最適なヘッド紙間(ノズル面3aと被記録材1との距離)で記録を行うための紙間距離を得るために、キャリア2は上下位置調整可能に装着されている。本実施形態では、ガイドシャフト7は不図示のカム駆動によって上下位置調整可能であり、ガイドシャフト7の高さ位置を調整してキャリア2の上下位置を調整することにより、記録ヘッド3と各部分プラテン4との紙間距離を図7(a)に示す標準紙間距離Cから変化させることができる。
【0017】
各部分プラテン4の幅は記録ヘッド3の走査方向の幅より小さく、好ましくはノズル面3aの走査方向の幅より小さい寸法になっている。キャリア2の下端部には各部分プラテン4と当接可能な位置決め手段としての当接部2aが設けられている。当接部2aの下端(当接面)はノズル面3aより所定距離A(図7)だけ下側に位置している。また、各部分プラテン4は、それぞれ独立して、押付け手段であるばね5によりキャリア2に近接する方向に押圧(付勢)されている。各部分プラテン4は、シャーシ11に装着された複数のプラテン保持機構6によって、キャリア2に設けられた当接部(位置決め手段)2aにより規定された位置に保持されている。各プラテン保持機構6に設けられた摩擦部材21を各部分プラテン4の保持リブ4aに当接させることにより、その間の摩擦力によって保持されている。そこで、各プラテン保持機構6は、各部分プラテンの保持リブ4aと当接する摩擦部材21を有する摩擦部材アーム22がシャーシ11に固定された摩擦部材アームガイド23に沿って移動可能なように取り付けられている。つまり、各摩擦部材21は摩擦部材アーム22の内側に固定されており、各摩擦部材アーム22はシャーシ11に固定されたアームガイド23に形成された案内溝25に沿って移動可能に取り付けられている。
【0018】
以上により、各部分プラテン4は、ガイドシャフト7に沿って移動するキャリア2に設けられた位置決め手段2aにより、記録ヘッド3のノズル面3aから所定距離の位置に位置決めすることができる。また、各部分プラテン4は、それぞれのプラテン保持機構6により所定位置に摩擦力によって保持可能に構成されている。そして、各部分プラテン4は、プラテン保持機構6により各部分プラテン4を保持した状態でガイドシャフト7に沿って移動する当接部2aによって、それぞれの上下位置を位置決めすることができる構成となっている。
【0019】
図3に示すように、シャーシ11に固定された複数のアームガイド23に沿って移動可能に支持されたリンク24が設けられている。そして、図5(a)および図5(b)に示すように、各プラテン保持機構6は、リンク24により作動可能に連結されており、リンク24によって記録ヘッド3の走査方向(矢印P方向およびその逆方向)に所定距離だけ移動させることができる。また、各プラテン保持機構6は、記録ヘッドの走査方向への移動に伴って、それぞれの部分プラテン4の保持リブ4aに対して当接、離間する方向(矢印Q方向およびその逆方向)に移動可能に案内支持されている。
【0020】
具体的には、アームガイド23には、摩擦部材アーム22を部分プラテン4と当接離間する方向に移動させるための案内溝25が設けられている。各プラテン保持機構6が移動すると、それぞれの摩擦部材アーム22が案内溝25に沿って移動することで、各摩擦部材アーム22に固定された摩擦部材21が各部分プラテンの保持リブ4aに対し当接・離間する方向に移動する。各摩擦部材21は各部分プラテン4を摩擦力で保持する摩擦保持手段を構成している。摩擦部材21が部分プラテン4の保持リブ4aと当接しているときは、リンク24は不図示のリンク支持部材により移動しないように保持されている。
【0021】
また、各プラテン保持機構6には、部分プラテン4を当接部2aに当接する方向に押圧(付勢)する押圧手段としてのばね5が設けられている。従って、リンク24の移動方向を自動制御したり、手動操作することにより、各プラテン保持機構6を介して、各部分プラテン4を一定位置に摩擦力で保持する状態と、摩擦力を開放してばね5により記録ヘッド3へ向けて移動させる状態とに切替えることができる。各部分プラテン4は、当接部2aにより所定位置まで押し下げられ、各摩擦部材21が当接することで所定位置に保持される。そして、各部分プラテン4は、リンク24の作動により摩擦部材21を離間させることで、押し付け手段としてのばね5の押圧力により紙間調整前の位置(位置決め初期の位置)に戻される。
【0022】
次に、紙間調整(紙間距離の調整)のための構成および動作について説明する。この紙間調整の動作は制御手段50によって制御される。紙間調整の前には、各部分プラテン4は、ばね5により上方へ押圧(付勢)されることで、図7(a)に示す標準紙間ポジションまたはそれより高い位置決め初期の位置にある。図5(a)に示すようにリンク24を矢印P方向に移動させると、摩擦部材21が部分プラテン4の保持リブ4aから離れる方向に移動し、各部分プラテン4を保持する摩擦力が消滅する。このため、各部分プラテン4は、ばね5の付勢力により押圧され、図5(b)に示すようにキャリア2に最も接近する位置にセットされる。一方、リンク24を矢印Pと逆方向に移動させて各摩擦部材21を各部分プラテン4の保持リブ4aに当接させることにより、摩擦部材21の摩擦力によって各部分プラテン4を図5(b)の上昇位置に保持する。
【0023】
ガイドシャフト7に案内支持されたキャリア2の最下端部には、各部分プラテン4の上面に当接可能な位置決め手段としての当接部2aが設けられている。そこで、図5(b)の状態において、当接部2aを有するキャリア2をガイドシャフト7に沿って移動させると、当接部2aもガイドシャフト7の方向に移動する。そして、当接部2aが各部分プラテン4の上面に当接することで、各部分プラテン4は摩擦保持力に抗して順次押し下げられる。これにより、各部分プラテン4は、保持部材21との間の摩擦力により、適正な紙間距離を有する適正高さ位置に保持される。全ての部分プラテン4を適正高さ位置に押し下げることにより、プラテン40の全域のプラテン面の高さ調整作業が終了する。
【0024】
各部分プラテン4と当接可能な当接部2aはキャリア2の下端部に設けられており、ガイドシャフト7は不図示のカム機構を動作させることにより上下位置を調整可能である。そこで、ガイドシャフト7をカム駆動により下降させ、キャリア2を図6および図7(b)に示すような紙間調整ポジションに移動させる。この紙間調整ポジションは、図7に示すように、ガイドシャフト7が標準記録ポジションから移動した距離Bと、記録ヘッド3のノズル面3aからキャリア2の当接部2aの下端までの距離Aとの和(合算値)Cが標準紙間距離となる位置に設定されている。このときの当接部2aはノズル面3aよりも下にあるため、各部分プラテン4が記録ヘッド3と接触することはない。
【0025】
図7(b)の紙間調整ポジションにセットした状態から紙間調整の操作を開始する。紙間調整は図6および図7(b)に示す紙間調整ポジションを基準にして行われる。その場合、被記録材1の厚さや紙質などに応じて、実際のインク滴の飛翔距離であるノズル面3aと被記録材1との距離(ヘッド紙間)を適正値に調整する必要がある。従って、実際の紙間距離の調整作業においては、使用する被記録材に対して適正なヘッド紙間を設定しておき、ヘッド紙間と標準紙間距離Cとの差を考慮した分調整量を加減した調整操作が行われる。また、位置決め手段(当接部)2aによる各部分プラテン4の位置決めは、被記録材がプラテン40上に支持された状態で行うことも可能である。かかる方法によれば、使用する被記録材の上から当接部2aにより各部分プラテン4を押し下げる工程を採ることにより、被記録材の厚みや紙質等に応じた最適な紙間距離の調整を自動的に行うことができる。
【0026】
紙間調整の操作を開始する手段としては、例えば、記録装置の操作パネルのボタンを操作する方法が採られる。まず、操作パネルから入力された指示により、各プラテン保持機構6に連結されたリンク24をソレノイドやモーターなどで駆動することにより、各プラテン保持機構6の摩擦保持を解除(開放)し、それから調整を行う。紙間調整を開始する別の方法としては、例えば、リンクの一部にフォトセンサなどをオン・オフするフラグを設けておき、フォトセンサのオン・オフの切替えがあった場合に各部分プラテン4が調整状態となったと判断する方法を採ることができる。この判断に基づいて、自動的に調整動作を開始することができる。このように、操作部やホスト(PC等)からのオペレーションによりユーザが所望のときの操作することで、常に記録ヘッド3のノズル面3aとプラテン40のプラテン面との距離(ヘッド紙間)を最適な値に設定することができる。
【0027】
なお、部分プラテン4は樹脂材料を成形した部品を使用することが多く、部品単体の平面度が紙間距離に直接影響する。各部分プラテン4の被記録材幅方向の寸法が小さいほど、プラテン40の全体の平面度の精度を高くすることができるが、調整する部品点数は増加することになる。本実施形態に係る調整機構においては、紙間距離を測定することなく調整を行うことが可能である。そのため、プラテン40を記録ヘッド3と同程度、もしくは記録ヘッド3やノズル面3aの幅より小さい幅の部分プラテン4に細かく分割することで、紙間距離の精度を向上させる場合でも、調整にかかる手間を少なくすることができる。さらに、紙間距離の調整を簡便にする手段として、部分プラテン4に当接させる当接部2aをコロ等の従動回転体で構成する方法がある。かかる手段によれば、キャリア2と部分プラテン4との摩擦抵抗を大幅に減少させることでキャリア2を小さい力で移動させることができ、調整作業をさらに簡便にすることができる。
【0028】
以上説明した実施形態によれば、紙間調整(紙間距離の調整)を行う際に紙間距離の測定が不要となり、調整に要する時間を短縮することができる。これに伴い特殊な測定器具が不要となり、再調整作業が容易になる。また、調整作業が簡便になる結果として、プラテンを細かく分割して紙間距離を高精度に調整することができ、記録画像の品位向上を図ることができる。さらに、厚さの異なった被記録材に対しても適正な紙間距離を通紙領域全体で得ることが可能となる。なお、本発明は、記録ヘッド3で使用するインク色の数やノズル面3aの数はどに関わりなく同様に適用可能である。また、被記録材1としては、一定サイズのカットシートや長尺のロール紙のいずれでも良く、その材質は、紙、プラスチックシート、印画紙、布など、画像形成が可能であれば、種々の材質のものを使用できる。
【符号の説明】
【0029】
1 被記録材
2 キャリア
2a 位置決め手段(当接部)
3 記録ヘッド
4 部分プラテン
5 押圧手段(ばね)
6 プラテン保持機構
7 ガイドシャフト
21 摩擦保持手段(摩擦部材)
23 アームガイド
24 リンク
25 案内溝
40 プラテン
50 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出して被記録材に画像を記録する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドを搭載して移動するキャリアと、
前記キャリアの移動を案内するガイドシャフトと、
前記記録ヘッドと対向する位置で被記録材を支持するプラテンと、
を備え、
前記プラテンは前記記録ヘッドの走査方向に分割されてそれぞれが独立して前記記録ヘッドに対して接離する方向に移動可能な複数の部分プラテンで構成され、
前記各部分プラテンは、前記ガイドシャフトの方向に移動する位置決め手段により前記記録ヘッドから所定距離の位置に位置決めするとともに、プラテン保持機構により保持することができ、
前記プラテン保持機構により前記各部分プラテンを保持した状態で前記位置決め手段により前記各部分プラテンを位置決めすることにより紙間調整を行うことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記各部分プラテンの幅は記録ヘッドの走査方向の幅より小さいことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記各部分プラテンの幅は記録ヘッドのノズル面の走査方向の幅より小さいことを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記位置決め手段は前記キャリアに設けられていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記部分プラテンを前記位置決め手段に当接する方向に押圧する押付け手段と、前記部分プラテンを摩擦力で保持する摩擦保持手段とを有し、
前記部分プラテンは、前記位置決め手段により押し下げられ、前記摩擦保持手段が当接することで保持され、
前記部分プラテンは、前記摩擦保持手段を離間させることで、前記押付け手段により紙間調整前の位置に戻されることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記各部分プラテンのプラテン保持機構は、リンクにより連結され、前記リンクの移動により前記各部分プラテンとの当接もしくは離間を同時に行うことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記位置決め手段による前記各部分プラテンの位置決めは、被記録材が前記プラテン上に支持された状態で行われることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−110844(P2011−110844A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270066(P2009−270066)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】