説明

インクジェット記録装置

【課題】廃液タンクの交換を不要とする、または交換周期を延ばすために実施する廃インクの加熱をより低消費電力で行う。
【解決手段】ノズルからインク滴を吐出して記録紙に記録を行う画像記録部109と、画像記録部109を移動させる主走査モータ9と、主走査モータ9を駆動するモータ駆動部111と、ノズルから吐出される廃インクを収容する廃液タンク113と、廃インクを加熱する発熱ヒータ114と、主走査モータ9をモータ駆動部111と発熱ヒータ114とのいずれかに電気的に接続するスイッチ115と、画像記録部109が移動している状態から減速または停止の状態となったときに、スイッチ115に主走査モータ9と発熱ヒータ114とを接続させるシステム制御部200と、を備え、発熱ヒータ114は、主走査モータ9からの回生電力で廃インクを加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置では、印刷開始前またはユーザーの指定により、適宜印字ヘッドのクリーニング動作が行われている。これはインクジェット特有の動作であり、印字ヘッドの目詰まり解消のために行うインクの強制的な吸引排出処理である。この処理に使われたインクは印字に使われず、廃インクとなり廃インク捕集部へ排出される。廃インクが溜まると廃インク捕集部を交換しなければならない。廃インク捕集部の交換頻度を少なくするために、廃インク捕集部の廃インクを、印刷物乾燥用の熱源から得た熱により加熱して、廃インクの蒸発、乾燥が促進されるようにした技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、廃インク捕集部をより小型とし、かつ、交換周期を長くするために、廃インク捕集部に捕集した廃インクを加熱する技術が提案されている。特許文献1では、熱量や乾燥時間の優位性から、印刷物乾燥熱源の熱を利用する構成が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1などの従来の廃インク加熱手段では、インクジェット記録装置内に印刷物乾燥用の熱源を持たなければならず、その熱源を使って廃インクを加熱するための電力が、印刷物乾燥用以外に必要となることがあった。すなわち、より大きな消費電力が必要となるという問題があった。また使用するインクによっては、印刷物乾燥機能が不要なインクジェット記録装置も存在するため、廃インクの乾燥のための熱源を別に用意しなければならず、そのための消費電力が余計にかかるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、廃インク捕集部の交換を不要とする、または交換周期を延ばすために実施する廃インクの加熱を、より低消費電力で行うことができるインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、ノズルからインク滴を吐出して記録紙に記録を行う記録手段と、前記記録手段を移動させるモータと、前記モータを駆動する駆動手段と、前記ノズルから吐出される廃インクを収容する収容手段と、前記廃インクを加熱する加熱手段と、前記モータを前記駆動手段と前記加熱手段とのいずれかに電気的に接続する第1切換手段と、前記記録手段が移動している状態から減速または停止の状態となったときに、前記第1切換手段に前記モータと前記加熱手段とを接続させる制御手段と、を備え、前記加熱手段は、前記モータからの回生電力で前記廃インクを加熱すること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、廃インク捕集部の交換を不要とする、または交換周期を延ばすために実施する廃インクの加熱を、より低消費電力で行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本実施形態にかかるインクジェット記録装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】図2は、インクジェット記録装置の機能構成例を示すブロック図である。
【図3】図3は、主走査モータについて説明する図である。
【図4】図4は、主走査モータから発生する電力について説明する図である。
【図5】図5は、主走査モータから発生する電力について説明する図である。
【図6】図6は、発熱ヒータへの電力供給経路について説明する図である。
【図7】図7は、廃液タンクについて説明する図である。
【図8】図8は、スイッチの制御手順の一例を示すフローチャートである。
【図9】図9は、廃インク量が所定量を越えたときの制御手順を示すフローチャ−トである。
【図10】図10は、廃インク量が所定量を越えたときの制御手順の他の例を示すフローチャ−トである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかるインクジェット記録装置の一実施形態を詳細に説明する。
【0010】
図1は、本実施形態にかかるインクジェット記録装置100の構成例を示すブロック図である。図1に示すように、インクジェット記録装置100は、例えばシリアル型インクジェット記録装置であり、後述の各部を支持する本体フレーム70を備えている。インクジェット記録装置100の内部にはガイドロッド1および副ガイド2が掛け渡され、これらのガイドロッド1および副ガイド2に、キャリッジ5が矢印A方向(主走査方向)に動作可能なように保持される。キャリッジ5はタイミングベルト10と接続しており、主走査モータ9と駆動プーリ28によってタイミングベルト10を駆動させることで主走査方向Aを往復移動する。タイミングベルト10には加圧コロ12によって張力が掛けられており、たるむことなくキャリッジ5を駆動させることができる。
【0011】
記録紙となる印字媒体150はキャリッジ5が往復移動する下部を矢印B方向(副走査方向)へ間欠的に搬送される。キャリッジ5に搭載された記録ヘッドからインクが吐出されることにより、所定の画像が形成される。
【0012】
またインクジェット記録装置100は、インクを供給するカートリッジ60と記録ヘッドをクリーニングする維持機構26とを備えている。
【0013】
キャリッジ5内には、エンコーダセンサ(図示せず)が配置されている。エンコーダセンサは、主走査方向に掛け渡されたエンコーダシートを連続的に読み取ることで、主走査方向位置を検知しながら駆動される。
【0014】
図2は、インクジェット記録装置100の機能構成例を示すブロック図である。図2に示すように、インクジェット記録装置100は、システム制御部200と、操作部101と、表示部102と、音声出力部103と、ネットワークI/F(インタフェース)部104と、回線網I/F部105と、電力供給部106と、蓄電部107と、充電量検出部108と、画像記録部109と、主走査位置検出部110と、モータ駆動部111と、廃液量検出部112と、廃液タンク113と、発熱ヒータ114と、スイッチ115〜118と、を備えている。
【0015】
システム制御部200は、CPU、ROM、およびRAM等から構成され、インクジェット記録装置100が動作するための基本プログラムに基づきインクジェット記録装置100各部を制御して所定の動作を実行する。
【0016】
操作部101は、各種操作キーを備え操作者が各種操作を行う構成部である。表示部102は、インクジェット記録装置100の操作方法や動作状態を表示したり、操作者へのメッセージを表示する。音声出力部103は、操作者へのメッセージを音声出力する。
【0017】
ネットワークI/F部104は、インクジェット記録装置100をローカルエリアネットワーク(LAN)等のネットワークに接続したり、USB等により外部のコンピュータに接続したりする。これによりインクジェット記録装置100は、他の情報処理端末と情報の送受信を行うことができる。
【0018】
回線網I/F部105は、インクジェット記録装置100を電話回線網に接続する。これによりインクジェット記録装置100は電話回線を介して、外部の情報処理端末と情報の送受信を行うことができる。
【0019】
電力供給部106は、商用電源からの電力を所定の電圧に変換し、インクジェット記録装置100の各部に必要な電力を供給する。蓄電部107は、主走査モータ9の減速または停止時のモータの慣性による回転で生じる電力を蓄える。充電量検出部108は、蓄電部107に蓄えられた充電量を検出する。
【0020】
記録手段としての画像記録部109は、キャリッジ5内の記録ヘッドやペンプロッタであり、画像情報を印字媒体150に印字出力(記録)する。主走査位置検出部110は、画像記録部109の主走査上の位置を検出する。
【0021】
モータ駆動部111は、モータドライバであり、主走査モータ9へ駆動電力を供給し、主走査モータ9の回転開始や停止を制御したり、回転方向を切り換えたりして、主走査モータ9の駆動を制御する駆動手段として機能する。
【0022】
廃液量検出部112は、廃液タンク113内に溜まっている廃インクの量を検出する。廃液タンク113は、記録ヘッドのクリーニング動作等で吐出した廃インクを溜めておく収容手段として機能する。
【0023】
発熱ヒータ114は、廃液タンク113に接続され、廃液タンク113内の廃インクを加熱し、蒸発および乾燥を促進する加熱手段として機能する。
【0024】
スイッチ115は、主走査モータ9を、モータ駆動時はモータ駆動部111側に接続し、画像領域外でのモータの減速または停止時はスイッチ116側に接続する(第1切換手段)。スイッチ116は、主走査モータ9からの電力を、蓄電部107に送るか発熱ヒータ114へ送るかを切り換える(第2切換手段)。スイッチ117は、蓄電部107から発熱ヒータ114へ電力を供給するか否かを切り換える(第3切換手段)。スイッチ118は、電力供給部106から発熱ヒータ114へ電力を供給するか否かを切り換える(第4切換手段)。
【0025】
主走査モータ9は、回転することによりタイミングベルト10(図1)を駆動させ、キャリッジ5(図1)を主走査方向に往復移動させる。
【0026】
図3は、主走査モータ9について説明する図である。主走査モータ9は、例えばDC(Direct Current)モータであり、図3のように電流を流すことにより回転駆動する。DCモータは、当該DCモータを駆動制御するためのインタフェースを備える。接続するモータドライバ(モータ駆動部111)により当該インタフェースを介して回転開始、停止、回転速度および回転方向等が制御される。
【0027】
図4および図5は、主走査モータ9から発生する電力について説明する図である。図4は、主走査モータ9がモータ駆動部111側に接続されているときの図である。この場合、主走査モータ9はモータ駆動部111によって駆動制御される。このとき、モータ駆動部111から主走査モータ9へ、矢印の方向に電力が供給される。
【0028】
図5は、主走査モータ9がモータ駆動部111側から切り離され、発熱ヒータ114側に接続されているときの図である。画像記録部109が主走査方向の往復動作中に、画像領域内から画像領域外に移動すると、主走査モータ9はモータ駆動部111側から切り離され、発熱ヒータ114側に接続される。主走査モータ9は減速または停止するが、その際、慣性による回転で電力(回生電力)を発生する。発生した電力は主走査モータ9から発熱ヒータ114へ、矢印の方向に供給される。
【0029】
図6は、発熱ヒータ114への電力供給経路について説明する図である。図6で、主走査モータ9駆動時は、モータ駆動部111から主走査モータ9へ電力が供給される。画像記録領域外での主走査モータ9の減速または停止時には、スイッチ115がスイッチ116側に切り換えられる。これにより、主走査モータ9の慣性による回転で生じる電力が蓄電部107または発熱ヒータ114へ送られる。
【0030】
画像記録部109が画像領域外であるか否かは、主走査位置検出部110によって検出される。画像記録部109が画像領域内から画像領域外に移動すると、システム制御部200は、スイッチ115を、スイッチ116側に切り換える。画像記録部109の停止後、システム制御部200は、再びスイッチ115をモータ駆動部111側に切り換え、主走査モータ9を駆動する。
【0031】
スイッチ116は、通常は蓄電部107側に接続している。これにより、主走査モータ9で生じる電力は蓄電部107に蓄えられる。
【0032】
廃液タンク113の廃液量検出部112が、廃インク量が予め定められた第1閾値を越えていることを検出すると、システム制御部200は、スイッチ116を発熱ヒータ114側へ切り換え、主走査モータ9で生じる電力により発熱ヒータ114を加熱する。このように廃インクの量によって、電力の供給経路を変えることにより、余剰電力を有効活用する。
【0033】
廃インク量がわずかですぐに削減する必要がない場合は、主走査モータ9からの余剰電力を充電しておき、電力が必要な場合に備える。廃インク量が増えてきて廃インクを少しずつでも削減させたいときには、主走査モータ9からの余剰電力で発熱ヒータ114を加熱し、廃インクを乾燥させ削減する。このとき発熱ヒータ114の加熱に商用電源からの電力は消費されない。
【0034】
廃液量検出部112が、廃インク量が予め定められた第2閾値を越えていることを検出すると、画像記録動作にかかわらず、システム制御部200は、即座にスイッチ117をオンして、蓄電部107から発熱ヒータ114へ、蓄えておいた電力を送り続け発熱ヒータ114を加熱する。これにより、商用電力を消費することなく、画像記録動作にかかわらず、随時連続して溜まっている廃インクの乾燥が促進される。システム制御部200は、予め定められた規定期間、発熱ヒータ114の加熱を行なった後、スイッチ117をオフする。加熱時間を制限することにより、廃液タンク113の過度の温度上昇を防ぐとともに、蓄電部107に蓄えられている電力の消費を抑えることができる。
【0035】
廃液量検出部112が、廃インク量が第2閾値を越えていることを検出したときに、充電量検出部108で検出された蓄電部107に蓄えられている電力量(充電量)が予め定められた充電量の閾値(充電量閾値)以下である場合、システム制御部200は、記録動作にかかわらず、即座にスイッチ118をオンして、電力供給部106から発熱ヒータ114へ電力を送り続け発熱ヒータ114を加熱する。これにより、蓄電部107の充電量が、廃インクを削減するのに対し充分でない場合でも、確実に廃インクを削減することができる。また、電力供給部106からの電力供給量は、主走査モータ9からの電力供給量、および、蓄電部107からの電力供給量よりはるかに大きいので、その電力量により即座に廃インクの削減が促進される。廃インクが充分削減される時間加熱を行なった後、システム制御部200は、スイッチ118をオフする。
【0036】
記録動作にかかわらず、廃液量検出部112で廃インク量が予め定められた第3閾値を越えていることを検出すると、システム制御部200は、即座にスイッチ118をオンして、電力供給部106から発熱ヒータ114へ電力を送り続け発熱ヒータ114を加熱する。電力供給部106からの電力供給量は、主走査モータ9からの電力供給量、および、蓄電部107からの電力供給量よりはるかに大きいので、その電力量により即座に廃インクの削減が促進される。また、廃インク量が多くなっても廃液タンク113が廃インクで満杯になることを防ぐことができる。廃インクが充分削減される時間加熱を行なった後、システム制御部200は、スイッチ118をオフする。
【0037】
図7は、廃液タンク113について説明する図である。廃液タンク113は、例えば廃インクの液面位置を検出することにより廃インクの量を検出する廃液量検出部112を備えている。廃液タンク113には、廃インク量が第1閾値になっていることを示す液面位置、第2閾値になっていることを示す液面位置、第3閾値になっていることを示す液面位置が設定される。廃液量検出部112は、廃インクが各液面位置になったことを検出して、システム制御部200へ伝える。図7では、第1閾値、第2閾値、および、第3閾値が、それぞれ廃液タンク満杯時の30%、50%、および、70%の廃インク量を示す例が示されている。
【0038】
図8は、スイッチ115とスイッチ116の制御手順の一例を示すフローチャートである。
【0039】
初期状態では、システム制御部200は、スイッチ115をモータ駆動部111側、スイッチ116を蓄電部107側、スイッチ117をオフ、スイッチ118をオフに設定する(ステップS1)。
【0040】
システム制御部200が画像記録を開始すると(ステップS2)、モータ駆動部111からスイッチ115を介して主走査モータ9へ電力を供給され画像記録部109が主走査方向に移動する。
【0041】
例えば、画像記録部109が印字媒体150の領域から外れると、主走査位置検出部110がそれを検出してシステム制御部200へ伝える。システム制御部200は、このように主走査位置検出部110から通知される情報により、画像記録部109が画像記録領域外に移動したか否かを判断する(ステップS3)。画像記録部109が画像記録領域外に移動していない場合は(ステップS3:No)、移動するまで処理を繰り返す。
【0042】
画像記録部109が画像記録領域外に移動した場合(ステップS3:Yes)、システム制御部200は、スイッチ115を、スイッチ116側に切り換え、主走査モータ9を減速または停止させる(ステップS4)。システム制御部200は、廃インク量が第1閾値より大きいか否かを判断する(ステップS5)。廃インク量が第1閾値以下の場合(ステップS5:No)、上述のようにスイッチ116が蓄電部107に接続されているため、主走査モータ9の慣性による回転で生じる電力が蓄電部107へ送られ、蓄電部107に電力が充電される(ステップS8)。
【0043】
廃インク量が第1閾値より大きい場合(ステップS5:Yes)、システム制御部200は、スイッチ116を発熱ヒータ114側に切り換える(ステップS6)。これにより、主走査モータ9からの電力が発熱ヒータ114へ送られ、発熱ヒータ114が加熱される(ステップS7)。
【0044】
なお、主走査位置検出部110が画像記録部109の停止を検出すると、システム制御部200は、スイッチ115をモータ駆動部111側に切り換え、画像記録部109を主走査方向に駆動する(図8には図示せず)。
【0045】
このように、廃インク量が小さく、廃インクをすぐに乾燥させる必要がない場合は、主走査モータ9からの余剰電力を蓄えておく。そして、廃インク量が増加し、廃インクを乾燥させたほうがよい場合には、主走査モータ9からの余剰電力で廃インクの乾燥を促進する。これにより、廃インク量の状態により余剰電力を有効に活用して、電力の消費を抑えながら廃インク捕集部(廃液タンク113)の交換を不要にすることが可能となる。
【0046】
図9は、廃インク量が所定量を越えたときの制御手順を示すフローチャ−トである。
【0047】
初期状態では、システム制御部200は、スイッチ115をモータ駆動部111側、スイッチ116を蓄電部107側、スイッチ117をオフ、スイッチ118をオフに設定する(ステップS11)。
【0048】
システム制御部200は、廃液量検出部112からの情報により、廃インク量が第3閾値を超えたか否かを判断する(ステップS12)。廃液量検出部112で、廃液タンク113内の廃インク量が第3閾値を越えていることが検出された場合(ステップS12:Yes)、システム制御部200は、画像記録動作にかかわらず、スイッチ118をオンする(ステップS13)。スイッチ118がオンすると、電力供給部106から発熱ヒータ114に電力が供給され、廃インクが加熱される(ステップS14)。
【0049】
電力供給部106から発熱ヒータ114に供給される電力量は、主走査モータ9からの電力量や蓄電部107からの電力量よりはるかに大きく、廃インクの乾燥をより早めることができる。
【0050】
システム制御部200は、予め定められた規定期間加熱後に廃液量検出部112で検出された廃インク量と予め定められた第4閾値とを比較し、廃インク量が第4閾値以下となったか否かを判断する(ステップS15)。このとき廃インク量が第4閾値以下になっていれば(ステップS15:Yes)、システム制御部200は、廃インクの乾燥促進動作が正常に行われたと判断し、スイッチ118をオフにする(ステップS16)。
【0051】
廃インク量が第4閾値以下になっていなければ(ステップS15:No)、システム制御部200は、異常が発生したと判断し、ただちにスイッチ118をオフして(ステップS17)、表示部102に異常であることを表示する(ステップS18)。また、システム制御部200は、異常であることを音声出力部103から音声出力する(ステップS19)。また、システム制御部200は、異常であることを、ネットワーク網や公衆回線を介してサービス管理会社および管理者用のコンピュータなどの所定の通知先へ伝える(ステップS20)。
【0052】
ステップS12で廃インク量が第3閾値を越えていない場合は(ステップS12:No)、システム制御部200は、廃液量検出部112からの情報により、廃インク量が第2閾値を超えたか否かを判断する(ステップS21)。超えていない場合(ステップS21:No)、ステップS12に戻り処理を繰り返す。
【0053】
廃液量検出部112で廃液タンク113内の廃インク量が、第2閾値を越えていることが検出された場合(ステップS21:Yes)、システム制御部200は、充電量検出部108により検出された蓄電部107の充電量が充電量の閾値(充電量閾値)を超えたか否かを判断する(ステップS22)。充電量が充電量閾値以下である場合(ステップS22:No)は、システム制御部200は、蓄電部107からの電力供給が困難と判断し、画像記録動作にかかわらず、スイッチ118をオンする(ステップS13)。
【0054】
蓄電部107の充電量が充電量閾値を越えていれば(ステップS22:Yes)、画像記録動作にかかわらず、システム制御部200はスイッチ117をオンする(ステップS23)。スイッチ117がオンにされると、蓄電部107から発熱ヒータ114に電力が供給され、廃インクが加熱される(ステップS24)。
【0055】
システム制御部200は、加熱後所定時間が経過したか否かを判断し(ステップS25)、経過していない場合は(ステップS25:No)、経過するまで加熱を継続する。所定時間の加熱の後(ステップS25:Yes)、システム制御部200は、スイッチ117をオフにして加熱を停止する(ステップS26)。
【0056】
図10は、廃インク量が所定量を越えたときの制御手順の他の例を示すフローチャ−トである。図10は、図8のフローチャートと図9のフローチャートとの関係の一例を示している。
【0057】
図10では、廃インク量が第2閾値を超えていない場合(ステップS21:No)、システム制御部200が、画像記録動作中か否かを判断する処理(ステップS31)が追加される。その他の処理は、図8のステップS3〜ステップS8、および、図9のステップS11〜ステップS26と同様であるため、同一の符号を付し説明を省略する。
【0058】
ステップS31で画像記録動作中ではないと判断された場合は(ステップS31:No)、ステップS12に戻り処理が繰り返される。画像記録動作中の場合(ステップS31:Yes)、ステップS3に遷移し、図8のステップS3以降の処理と同様の処理が実行される。
【0059】
このように、廃液タンク113内に廃インクが溜まってきたら、電力消費を発生させずに、画像記録動作にかかわらず随時連続して廃インクの乾燥を促進し廃インク量を削減して、廃液タンク113の交換を不要にすることができる。
【0060】
また、蓄電部107の充電量が足りない場合は、電力供給部106から発熱ヒータ114に電力が供給されるため、溜まっている廃インクの削減を確実に実行できる。また、廃インク量が過大となった場合は、蓄電部107の充電量および画像記録動作にかかわらず、電力供給部106から発熱ヒータ114に電力が供給される。これにより、随時即座に連続して廃インクの乾燥を促進し、廃インク量を削減して、廃インク量が満杯になることを防止できる。
【0061】
また、所定時間の加熱によっても廃インク量が低下しない場合には、異常が発生したと判断して通知する。このため、ユーザーおよびサービス管理会社等が、インクジェット記録装置100に異常が生じたことをすぐに認識できる。そして、ユーザーおよびサービス管理会社は、インクジェット記録装置100の状況確認および修理を即座に行うことが可能となる。
【0062】
なお、異常を通知するための図9および図10のステップS18〜ステップS20の各処理は、全て行ってもよいし、これらのうちいずれか1つまたはいずれか2つを行うように構成してもよい。
【0063】
以上のように、本実施形態のインクジェット記録装置100によれば、画像記録領域外におけるモータの減速または停止時に発生する電力を、加熱手段や蓄電手段に供給し、この電力を使用して廃インクの加熱を行い、廃インクの蒸発および乾燥を促進させることができる。これにより、廃液タンクの交換を不要にすることや、交換周期を延ばすために実施する廃インクの蒸発および乾燥を、より低消費電力で行うことができる。
【符号の説明】
【0064】
100 インクジェット記録装置
101 操作部
102 表示部
103 音声出力部
104 ネットワークI/F部
105 回線網I/F部
106 電力供給部
107 蓄電部
108 充電量検出部
109 画像記録部
110 主走査位置検出部
111 モータ駆動部
112 廃液量検出部
113 廃液タンク
114 発熱ヒータ
115〜118 スイッチ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0065】
【特許文献1】特開2002−211007号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルからインク滴を吐出して記録紙に記録を行う記録手段と、
前記記録手段を移動させるモータと、
前記モータを駆動する駆動手段と、
前記ノズルから吐出される廃インクを収容する収容手段と、
前記廃インクを加熱する加熱手段と、
前記モータを前記駆動手段と前記加熱手段とのいずれかに電気的に接続する第1切換手段と、
前記記録手段が移動している状態から減速または停止の状態となったときに、前記第1切換手段に前記モータと前記加熱手段とを接続させる制御手段と、を備え、
前記加熱手段は、前記モータからの回生電力で前記廃インクを加熱すること、
を特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
電力を蓄積する蓄電手段と、
前記収容手段に収容された前記廃インクの量を検出するインク量検出手段と、
前記第1切換手段を前記加熱手段と前記蓄電手段とのいずれかに電気的に接続する第2切換手段と、をさらに備え、
前記制御手段は、さらに、前記廃インクの量が予め定められた第1閾値より大きい場合に、前記第2切換手段に前記第1切換手段と前記加熱手段とを接続させ、前記廃インクの量が第1閾値以下の場合に、前記第2切換手段に前記第1切換手段と前記蓄電手段とを接続させること、
を特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記蓄電手段と前記加熱手段とを接続するか否かを切り換える第3切換手段をさらに備え、
前記制御手段は、さらに、前記廃インクの量が予め定められた第2閾値より大きい場合に、前記第3切換手段に前記蓄電手段と前記加熱手段とを接続させること、
を特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記インクジェット記録装置の各部に電力を供給する電力供給手段と、
前記蓄電手段の充電量を検出する充電量検出手段と、
前記電力供給手段と前記加熱手段とを接続するか否かを切り換える第4切換手段と、をさらに備え、
前記制御手段は、さらに、前記廃インクの量が予め定められた第2閾値より大きく、かつ、前記充電量が予め定められた充電量閾値以下である場合に、前記第4切換手段に前記電力供給手段と前記加熱手段とを接続させること、
を特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記廃インクの量が前記第2閾値より大きい予め定められた第3閾値を超えた場合に、前記第4切換手段に前記電力供給手段と前記加熱手段とを接続させること、
を特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記廃インクを予め定められた規定期間加熱した後の前記廃インクの量が、予め定められた第4閾値以下に減少しない場合に、前記廃インクの加熱を停止し、異常の発生を通知すること、
を特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記制御手段は、表示部への表示、および、音声出力部への音声出力の少なくとも一方により、異常の発生を通知すること、
を特徴とする請求項6に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記制御手段は、予め定められた通知先に対して異常の発生を表すメッセージを送信すること、
を特徴とする請求項6に記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−121229(P2012−121229A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273753(P2010−273753)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】