説明

インクタンク及びインクジェット記録装置

【課題】 インク袋を使用したインクタンクから供給されるインクの記録ヘッドによる吐出安定性を、より簡便な構成で確保する。
【解決手段】 インクカートリッジ20は、記録ヘッド12の上方に配置される。インクカートリッジ20には、ノズル内圧を負圧に維持するための負圧発生部材28が収納される負圧発生室26と、この負圧発生室26に補給されるインクを貯留する貯留室25が設けられている。貯留室25内のインクはインク袋37に収納されている。このインク袋37の口は、補給口27aに取り付けられており、この補給口27を通じて、負圧発生室26内にインクが送り込まれる。負圧発生室26の上部には、インク減少に伴って大気を導入する第1大気導入口41が設けられており、貯留室25の上部には、インク減少に伴って大気を導入する第2大気導入口47が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク吐出方式の記録ヘッドへ供給するインクを収納するインクタンク及びこのインクタンクを用いたインクジェット記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクを吐出する吐出口が設けられたインク吐出方式の記録ヘッドを備え、この記録ヘッドからインクを液滴として吐出しこれを用紙に付着させて画像を記録する、いわゆるインクジェット記録装置が知られている。インクジェット記録装置には、インクを収納するインクタンクが設けられており、このインクタンクから記録ヘッドへインクが供給される。記録ヘッドは、例えば、吐出口が形成されたノズルと、ピエゾ素子によって駆動される振動板とを備えており、振動板の振動による圧力変化を利用して、インクタンクからインクをノズルへ吸引して吐出口から噴射する。
【0003】
インクは消耗品であるため、その補充の便宜を考慮して、インクタンクは、インクジェット記録装置に交換可能に取り付けられるカートリッジタイプのものが多い。このカートリッジタイプのインクタンク(以下、インクカートリッジという)は、インクが使い切られて空になると、インクが充填された新しいインクカートリッジに交換される。インクカートリッジが取り付けられるカートリッジ装着部には、記録ヘッドへインクを供給するためのインク供給針が配置されており、インクカートリッジとノズルとは、前記インク供給針を含むインク供給路によって接続される。
【0004】
このインクカートリッジとして、インクが封入される可撓性のインク袋と、このインク袋を保護するケースとからなるインクカートリッジを使用したインクジェット記録装置が知られている(下記特許文献1)。大気がインクと接触すると、気体がインクに溶解してインク内に気泡が発生したり、酸素とインクに含まれる成分とが反応してインクの変質が生じる。そこで、インクと大気との接触を避けるために、インク袋を使用したインクカートリッジが利用される。
【0005】
また、インクは記録ヘッドのノズルから吐出されるが、インクの荷重によってノズル先端からインク漏れが生じないように、ノズル内部の圧力(以下、ノズル内圧という)は大気に対して負圧にされる。上記インクカートリッジが記録ヘッドよりも上方にある場合には、そのままでは、インクカートリッジ内のインクの荷重によってノズル内圧が加圧されて負圧を維持できなくなってしまうため、下記特許文献1記載のインクジェット記録装置では、インク袋とケースとの間の隙間空間を吸引ポンプによって負圧にすることにより、ノズル内圧を負圧に維持するようにしている。
【0006】
このノズル内圧は、インク袋内のインク残量が減少すると、負圧が大きくなり、これにより吐出量が減少して印画濃度が低下してしまう。そこで、下記特許文献1記載のインクジェット記録装置では、ノズル内圧を測定する圧力センサを設けて、その測定値に応じて前記吸引ポンプの吸引量を調節することにより、ノズル内圧が規定範囲に維持されるように制御している。これにより、記録ヘッドの吐出安定性が確保される。
【特許文献1】特開2003−300331号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、吸引ポンプによりインク袋を収容するケース内圧を調節して、ノズル内圧を負圧に保つ方法は、装置構成が複雑化する傾向があるため、そうした懸念の無いより簡便な方法が望まれていた。
【0008】
本発明の目的は、インク袋を使用したインクタンクからインク供給を受ける記録ヘッドの吐出安定性を、より簡便な構成で確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のインクタンクは、インクを吐出するノズルを有する吐出方式の記録ヘッドへ供給するインクを収納するインク収納室が形成されたケースと、このケースの底部に設けられ前記記録ヘッドの吸引によって前記インク収納室からインク供給路へインクを取り出すインク取出部とを備えており、前記インク収納室には、毛管力によって、インクを吸収して保持するとともに前記インク取出部を介して接続される前記ノズルの内圧を負圧に保つ負圧発生部材を収納する負圧発生室と、この負圧発生室と隔壁によって仕切られており、前記負圧発生室に補給するインクが貯留される貯留室と、前記貯留室から前記負圧発生室へインクを補給するための補給路とが設けられたインクタンクにおいて、前記負圧発生室内のインクの減少に応じて前記負圧発生室内に大気を導入する第1大気導入口と、前記貯留室内に配置され、前記貯留室に貯留されるインクを収容する気密性の袋体と、この袋体に設けられ前記袋体内のインクを外部へ流出させるインク流出口とからなり、このインク流出口が前記補給路へ接続されたインク袋と、前記インク袋内のインクの減少に応じて前記貯留室内に大気を導入する第2大気導入口とを備えたことを特徴とする。
【0010】
前記ケースは、前記インク収納室の上方を開放する上部開口が形成されたケース本体と、このケース本体の上部に取り付けられ前記上部開口を閉じる上蓋とからなり、前記第1及び第2の各大気導入口は、前記上蓋に設けられることが好ましい。
【0011】
前記インク袋は、略水平方向に沿った複数の折り目が形成された蛇腹状をしており、その内部のインクの減少に応じて、前記折り目に従って折り畳まれることが好ましい。
【0012】
前記補給路は、前記補給路を閉じて前記貯留室から前記負圧発生室へのインクの補給を阻止する閉じ状態と、前記補給路を開放して前記貯留室から前記負圧発生室へのインクの補給を許容する開き状態との間で切り替え可能であることが好ましい。
【0013】
前記補給路の開閉状態の切り替えは、前記補給路上に配置された補給路開閉機構によって行われることが好ましい。
【0014】
前記補給路開閉機構は、前記補給路を開閉するバルブと、このバルブを駆動するアクチュエーターからなり、前記ケースには、それらのうち少なくとも前記バルブが設けられることが好ましい。
【0015】
前記補給路開閉機構は、前記開き状態のときに、前記インク袋内からインクを吸引して前記負圧発生室へ強制的に送り込むポンプであることが好ましい。前記ポンプはマイクロポンプであり、これを前記ケースに設けることが好ましい。
【0016】
前記インク取出部には、前記インク収納室から取り出されるインクを濾過するフイルタが設けられていることが好ましい。
【0017】
前記インク取出部には、前記ノズルへ通じるインク供給路を構成する中空状のインク供給針が差し込まれる多孔質部材が設けられることが好ましい。
【0018】
本発明のインクジェット記録装置は、インクをノズルから吐出して画像を記録する吐出方式の記録ヘッドを備え、この記録ヘッドよりも高い位置に配置されたインクタンクから前記記録ヘッドへ前記インクが供給されるインクジェット記録装置において、前記インクタンクは、毛管力によってインクを吸収して保持するとともに前記ノズルの内圧を負圧に保つ負圧発生部材を収納する負圧発生室と、この負圧発生室と隔壁によって仕切られており、前記負圧発生室に補給するインクが貯留される貯留室と、前記貯留室から前記負圧発生室へインクを補給するための補給路とを備えており、この補給路上に配置され、前記補給路を閉じて前記貯留室から前記負圧発生室へのインクの補給を阻止する閉じ状態と、前記補給路を開いて前記貯留室から前記負圧発生室へのインクの補給を許容する開き状態との間で前記補給路の開閉状態を切り替える補給路開閉機構を、制御する制御手段を備えたことを特徴とする。
【0019】
前記インクタンクは、前記記録ヘッドが設けられた本体に着脱自在にセットされることが好ましい。
【0020】
前記制御手段は、前記記録ヘッドのインク吐出量に基づいて、それに見合った量のインクが前記負圧発生室に補給されるように、前記補給路開閉機構を制御することが好ましい。
【0021】
前記制御手段は、前記インク吐出量を検出する吐出量検出手段と、検出されたインク吐出量に基づいて、前記インク袋内のインクの液面高さである袋内液面高さを算出する袋内液面高さ算出部と、算出した袋内液面高さに基づいて前記補給路を通過するインクの単位時間流量を算出する単位時間流量算出部とを備えており、この単位時間流量に基づいて、前記インク吐出量に見合った適切な補給量を得るための前記補給路の開き時間を求めることが好ましい。
【0022】
前記インク収納室内のインク温度を測定する温度センサと、測定したインク温度に基づいてインク粘度を算出する粘度算出部とが設けられており、前記単位時間流量算出部は、前記インク粘度を加味して前記単位時間流量を算出することが好ましい。
【0023】
前記負圧発生室内のインクの液面高さである負圧室内液面高さが、予め決められた基準レベル以下になったことを検知する負圧室液面高さ検知手段が設けられており、前記制御手段は、前記負圧室内液面高さが前記基準レベル以下になったときに、前記補給路開閉機構を制御して所定量のインクを補給する補給処理を実行することが好ましい。
【0024】
前記補給処理を実行した後、前記負圧室内液面高さが前記基準レベルを上回らない場合にインク切れと判定するインク切れ判定手段を設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、インクを貯留するインク袋を設けたインクタンクに、負圧発生部材を収納する負圧発生室を設けたから、記録ヘッドの吐出安定性を、より簡便な構成で確保することができる。さらに、インク袋から負圧発生部材への補給路に開閉機構を設けることで、ノズル内圧変動を抑制するようにしたので、吐出安定性をさらに向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1に示すインクジェット記録装置10は、記録媒体である用紙11に対してインクを吐出して付着させることにより画像を記録する記録ヘッド12を備えている。記録ヘッド12は、インクを吐出する吐出口が形成された複数のノズル12aを備えており、これら複数のノズル12aの吐出口が配列された吐出面が用紙11の記録面と対面するように配置される。記録ヘッド12は、用紙11の幅方向(主走査方向X)に移動自在なキャリッジ13に取り付けられており、キャリッジ13の底面に形成された開口から前記吐出面が露呈される。記録ヘッド12は、キャリッジ13の移動に伴って用紙11の幅方向に沿って往復動しながら、画像をライン記録する。この記録ヘッド12が1往復動する毎に、図示しない搬送ローラによって用紙11が副走査方向Yへ、記録ヘッド12の1往復動による記録幅分送られる。こうした動作が繰り返されて、1画面分の画像が記録される。
【0027】
キャリッジ13は、ガイド棒14a,14bにスライド自在に取り付けられており、ベルト16と1対のプーリ17とからなるベルト機構18によって駆動される。キャリッジ13には、記録ヘッド12の上方に、例えば、Y,M,C,Kの4色のインクがそれぞれ収納された4つのインクカートリッジ20が着脱自在に取り付けられる。
【0028】
キャリッジ13には、各インクカートリッジ20が差し込まれる複数のスロットが形成されている。これら各スロットには、記録ヘッド12へインクを送り込むインク供給路となる中空状のインク供給針36(図2参照)が設けられており、スロットへインクカートリッジ20が差し込まれると、インクカートリッジ20の底部に設けられたインク取出部31(図2参照)にインク供給針36が突き刺さる。インクカートリッジ20に収納されたインクは、このインク供給針36を通じて記録ヘッド12へ供給される。記録ヘッド12には、各ノズル12aに対応して圧力室と、ピエゾ素子によって駆動される振動板が設けられており、この振動板の振動による圧力室の体積変化により、インクカートリッジ20内のインクがノズル12aへ吸引され、吐出口から噴射される。
【0029】
図2に示すように、インクカートリッジ20は、インクを収納するケース21を備えている。ケース21は、インクを収納するインク収納室24が形成されたケース本体22と、このケース本体22の上部開口を閉じる上蓋23とからなる。上蓋23は、例えば、ケース本体22にインクを充填した後、上部開口からのインク漏れが生じないようにケース本体22に溶着される。ケース本体22は、例えば、透明なプラスチックで形成されており、ケース21内のインクの残量を目視で確認できるようになっている。
【0030】
インク収納室24は、毛管力によって、インクを吸収して保持するとともに負圧を発生してノズル12aの内圧を負圧に維持する負圧発生部材28を収納する負圧発生室26と、この負圧発生室26へ補給するインクを貯留する貯留室25とからなる。負圧発生室26と、貯留室25とは、隔壁27によって仕切られている。
【0031】
図3に示すように、ケース本体22は、本体部22aと、この本体部22aの下部に取り付けられ、インク収納室24の下部開口を閉じる底蓋22bとからなる。隔壁27には、インク収納室24の床面付近に、貯留室25から負圧発生室26へインクを補給する補給路を構成する補給口27aが一体に形成されている。補給口27aは、貯留室25に向けて管状に突出している。底蓋22b及び隔壁27は、溶着によって本体部22aに取り付けられる。
【0032】
負圧発生室26の床面には、負圧発生室26内のインクをケース本体22外へ排出する排出口26aが形成されている。この排出口26aは、その下方へ延びる排出管29とともに、インク取出部31を構成する。排出管29内には、インクを濾過するフイルタ33と、インク供給針36が差し込まれる多孔質部材34が設けられる。多孔質部材34は、フイルタ33を通過したインクを吸収し、インク供給針36へ導く。
【0033】
負圧発生部材28は、毛管力を発生する微細な空隙を含むスポンジ状の部材である。具体的には、ウレタンフォームなどを発泡させた発泡材料やフエルトなどの繊維材料などの多孔質材料が使用される。インクカートリッジ20がキャリッジ13に装着されると、負圧発生室26は、その下方に配置された記録ヘッド12のノズル12aと供給路を通じて連通する。負圧発生部材28は、毛管力による吸引力を発生して、ノズル12aの内圧を負圧に維持する。これにより、ノズル12aの吐出口付近でインクのメニスカスが形成され、吐出口から不用意にインクが漏れ出ないようにしている。
【0034】
フイルタ33及び多孔質部材34は、負圧発生部材28と同様に、毛管力を発生するスポンジ状の部材で形成される。このフイルタ33の上面は負圧発生部材28の底面と圧接し、フイルタ33の底面は、多孔質部材34の上面と圧接する。フイルタ33及び多孔質部材34は、その毛管力によって、負圧発生部材28からインクを吸収して保持する。インクカートリッジ20をキャリッジ13に取り付けると、キャリッジ13のスロットに設けられたインク供給針36が、多孔質部材34に突き刺さる。これにより、インク供給針36を介して、インク収納室24から記録ヘッド12のノズルへ至るインク供給路が形成される。
【0035】
記録ヘッド12は、負圧発生室26のインクの負圧に抗する吸引力を発生して、負圧発生室26からインクを吸引してノズルの吐出口から噴射する。こうして負圧発生室26内のインクが消費されて減少する。貯留室25は、この負圧発生室26内のインク減少分を補給するインクを貯留する。
【0036】
貯留室25には、貯留するインクを収容するインク袋37が収納される。インク袋37は、気密性を有する材料で形成された袋体38と、この袋体38の下方に設けられインクを流出させるインク流出口39とからなる。インク流出口39は、補給口27aの突出部分の開放端を包み込むようにして取り付けられ、その開放端の外周とインク流出口39の内周を溶着することによって隔壁27に固定される。
【0037】
インク袋37は、内部のインクを気密に収納してインクを外気と遮断する。これにより、インク袋37内部のインクに空気が溶け込んで溶存気体量が増加することが抑制される。インク内の溶存気体量が増えると、気泡が発生したり、酸素との化学反応により変質が生じ、吐出不良の原因となる。インク袋37にインクを収容することで、こうした不具合を抑制することができる。また、溶存気体量の増加を抑制することで、インクの保存環境が良好に保たれるのでインクの保存期間を長期化することが可能となり、インクカートリッジ20のインク収容量の大容量化にも寄与する。
【0038】
また、袋体38は、可撓性を有する材料で形成されており、インクの減少に伴って収縮する。袋体38には、略水平方向に沿って蛇腹状の折り目38aが形成されている。こうした折り目38aを形成することにより、インク袋37が、その内部のインク残量の減少に伴って、その上面が略水平状態を保ちつつ鉛直方向に下降して、折り畳まれる。これにより、インク減少の際に、袋体38が無秩序に萎んでその姿勢が乱れることがない。こうすると、インク袋37の収縮時における内部のインクの流動量が減少するとともに、インクの液面変位を比較的連続的にすることができる。インク袋37は、補給口27a及び負圧発生室26を通じてノズル12aに連通しているため、インク袋37内のインク重量は、ノズル12aに対して正圧として作用する。インクの流動やインクの液面変位を連続的にすると、その正圧の変動が少なくなり、ノズル12aの内圧変動も抑制されるため、吐出安定性が向上する。
【0039】
上蓋23には、負圧発生室26に対応する位置に配置され、負圧発生室26内のインクの減少に伴って負圧発生室26内に大気を導入する第1大気導入口41と、貯留室25に対応する位置に配置され、インク袋37内のインクの減少に伴って、貯留室25内に大気を導入する第2大気導入口47とが設けられている。
【0040】
また、上蓋23の上面には、曲がりくねった溝42が形成されている。この溝42の一端42aは、第1大気導入口41と接続されており、そこから他端42bに向かう経路上には液溜め部43が設けられている。この溝42のうち、他端42b以外の部分は、その上方がシール45によって覆われて、他端42bだけが外部に露呈される。この溝42は、負圧発生室26内のインクが第1大気導入口41から漏れ出た場合に、そのインクを液溜め部43に導いて、ケース21の外部へのインク漏れを防止する。大気は、他端42bから進入して第1大気導入口41に導かれる。
【0041】
また、上蓋23の下面には、下方に突出する複数のリブ46が設けられている。各リブ46は、負圧発生室26に対応する位置に配置されている。各リブ46は、上蓋23がケース本体22に取り付けられると、負圧発生室26内に進入して、負圧発生部材28の上面と当接して、その底面を負圧発生室26の床面に押しつける。そして、負圧発生部材28を押さえつけてその位置決めを行うことで、負圧発生部材28と上蓋23との間に空間を確保する。これにより、負圧発生部材28が位置ずれして第1大気導入口41を塞ぐことを防止している。
【0042】
上記構成による作用について、図4を参照しながら説明する。インクカートリッジ20は、インクジェット記録装置10に装着されると、インク供給針36がインク取出部31に接続され、インクカートリッジ20から記録ヘッド12へのインク供給路が確立される。インクカートリッジ20には、負圧発生室26が設けられているので、これによりノズル12aの内圧が負圧に維持される。このため、ノズル12aの吐出口から不用意にインクが漏れ出ることはない。従来のように、負圧を発生させるために吸引ポンプを用いることが不要であるため、構成が簡単である。また、貯留室25内のインク49は、インク袋37に収容されているため、インク49内の溶存気体量の増加が抑制される。これにより、記録ヘッド12の吐出安定性も確保される。
【0043】
プリント指示がなされて、記録ヘッド12が記録を開始すると、インク供給針36を通じて負圧発生室26からインクを吸引する。このインク吸引によって負圧発生室26の圧力が減少して、第1大気導入口41から負圧発生室26に大気が導入されるとともに、補給口27aを通じてインク袋37から負圧発生室26にインクが補給される。こうしてインクが消費されると、図4(A)に示す満タンの状態から、図4(B)に示すように、インク袋37内のインク49の残量が減少する。インク袋37内のインク49の減少によって袋体38が萎むと、貯留室25内の圧力が減少するので、第2大気導入口47から貯留室25内に大気が取り込まれる。インク袋37は、蛇腹状になっているので、姿勢が大きく乱れることなく萎む。このため、インク減少に伴うノズル内圧変動が抑制される。
【0044】
図5に示すフローチャートを参照しながら、このインクカートリッジ20の組み立て手順を説明する。まず、隔壁27の補給口27aにインク袋37のインク流出口38を取り付けて、溶着により固定する。インク袋37が取り付けられた隔壁27と底蓋22bとを本体部22aに取り付けて、それらを溶着により固定して、ケース本体22を組み立てる。このケース本体22の組み立て時に、インク取出部31にフイルタ33や多孔質部材34が取り付けられる。ケース本体22の組み立て後、上部開口から負圧発生室26に負圧発生部材28を収納する。この後、ケース本体22に上蓋23を取り付けて、溶着により固定する。
【0045】
こうしてケース21が組み立てられた後、インク取出部31を通じてケース21内にインクが充填される。インク充填が終了した後、上蓋23の上面にシール45が貼り付けられる。さらに、第1大気導入口41及び第2大気導入口47がシール等によって封止される。こうした手順でインクカートリッジ20が組み立てられて出荷される。なお、第2大気導入口47をシール等によって封止して、出荷してもよい。これら第1及び第2の各大気導入口41,47は、製造時にシールなどによって封止されるが、使用時には、シールが剥がされて封止が解除される。
【0046】
図6に示すフローチャートを参照しながら、インクカートリッジ20のインク充填手順を説明する。インク充填を行う際には、まず、インク袋37内の残存空気を排出する。残存空気の排出の際には、第1大気導入口41をシール51などの封止部材によって封止する。さらに、排出経路を確保するために、インク取出部31に、中空状の排出針52を差し込む。そして、第2大気導入口47に加圧ポンプ53を接続し、貯留室25を大気圧の数倍(例えば、2〜3倍)の圧力で加圧する。これにより、インク袋37が収縮して、インク袋37内の空気が、補給口27a,負圧発生室26及び排出針52を通じて排出される。新品のケース21にインクを充填する場合には、インク袋37にインクが残留していることはないが、ケース21をリユースしたりリサイクルする場合には、インク袋37には、空気以外にもインクなどの残留物が残っている場合がある。そのような場合には、空気とともにそうした残留物もインク取出部31から排出される。
【0047】
インク袋37の残存空気を排出した後、充填用のインクを貯蔵するタンク55に接続されたインク充填ポンプ56をインク取出部31に接続してインク充填を行う。インクカートリッジ20は、負圧発生室26と貯留室25の2室構造になっており、負圧発生室26には、負圧発生部材28が収納されている。負圧発生部材28がインクをまったく吸収していない初期状態でインクを浸透させる際のインクの流動抵抗は大きいため、インク取出部31からインクを注入すると、より流動抵抗の低い補給口27aを通じてインク袋37に流れやすい。そのため、インク充填を行う際には、貯留室25を加圧した状態で第2大気導入口47をシール57などの封止部材で封止して貯留室25を密閉することにより、インク取出部31から注入したインクがインク袋37へ流入することを阻止する。この状態で、第1大気導入口41の封止を解除して、インク充填ポンプ56を始動してインク充填を開始する。貯留室25は加圧されているので、インク充填ポンプ56から注入されたインクは、インク袋37に流入することなく、負圧発生部材28に浸透しながら負圧発生室26に充填される。
【0048】
負圧発生室26にインク49が所定量(例えば、約1/2)充填された時点で、いったんインク充填ポンプ56を停止する。そして、第1大気導入口41を封止するとともに、第2大気導入口47の封止を解除して開放する。この後、インク充填ポンプ56を再始動して、インクの注入を再開する。第2大気導入口47が開放されたことで、貯留室25内の圧力が減圧されるので、注入されたインクは補給口27aを通じてインク袋37内に流れ込む。負圧発生部材28にはすでにインクが吸収されているので、初期状態と比較してインクの流動抵抗は低下しているため、負圧発生部材28にもインクの吸収が進む。こうして、負圧発生室26及び貯留室25が満タンになるまでインクが充填される。インクが満タンになった後、インク充填ポンプ56を取り外すとともに、貯留室25の第2大気導入口47を封止してインク充填が完了する。
【0049】
上記第1実施形態のインクカートリッジ20は、負圧発生室26と貯留室25とが常時連通しているので、貯留室25から負圧発生室26へのインクの流入が常に可能な状態となっている。ノズル内圧を負圧に維持するためには、負圧発生室26が発生する負圧よりも、貯留室25のインク重量に起因する正圧を小さくしておかなければならない。そのため、負圧発生室26及び貯留室25のインク容量には、そうした関係を維持するための制約が生じる。
【0050】
図7に示すインクカートリッジ61は、隔壁65で分割される貯留室62と負圧発生室63とを繋ぐ補給路64上に、その補給路64を閉じて貯留室62から負圧発生室63へのインク49の補給を阻止する閉じ状態と、補給路64を開放して貯留室62から負圧発生室63へのインク49の補給を許容する開き状態との間で切り替え可能な補給路開閉機構を構成するバルブ機構66を設けている。このようなバルブ機構66を設けることで、貯留室62のインク重量に起因する正圧がノズル12aに対して常時作用することを阻止することができるので、第1実施形態で生じる負圧発生室と貯留室のインク容量の制約を解消することができるので、貯留室62内のインク容量を、負圧発生室63のインク容量と比較して、大きくすることが可能となる。
【0051】
負圧発生室63は、負圧発生部材67を収納しなければならないため、その分、インク容量が減少するので、容積に対するインク収容量であるインク収納率が貯留室62と比較して低い。このため、バルブ機構66を設けたことにより、負圧発生室63よりも、貯留室62を大きく(例えば、高さを高く)することが可能となり、ケース68全体としてインク収納率を向上させることができる。
【0052】
バルブ機構66によって負圧発生室63と貯留室62とを遮断すると、ノズル内圧は、負圧発生室63内のインク量によって決まる。したがって、この負圧発生室63内のインク量が大きく変動することがないように、貯留室62内のインク袋69からのインク補給量をインク消費量に応じて適切に制御すれば、ノズル内圧変動を抑えることができる。
【0053】
コントローラ71は、インクジェット記録装置10の各部を制御する。コントローラ71は、フレームメモリ72から読み出した画像データに基づいて、ヘッド駆動部73を制御する。記録ヘッド12は、ヘッド駆動部73によって駆動され、画像データに応じてノズル12aからインクを吐出する。コントローラ71には、吐出回数カウンタ74が設けられており、各ノズル12aの吐出回数をカウントする。ノズル12aの1回の吐出量は決まっているので、これによりインク吐出量が求められる。コントローラ71は、タイマ76で時間を計測して所定時間経過する毎にインク吐出量を求める。
【0054】
なお、本例では、インク吐出回数をカウントしてインク吐出量を検出するようにしているが、コントローラ71が画像データに基づいてインク吐出量を予測してインク吐出量を検出するようにしてもよい。
【0055】
バルブ制御部78は、バルブ機構66を制御する。バルブ制御部78は、前記インク吐出量に見合った分の補給量を算出し、インク袋69から負圧発生室63に算出した補給量が補給されるように、バルブ機構66の開閉時間を制御する。
【0056】
図8及び図9に示すように、バルブ機構66は、補給路64が形成された補給路ユニット81と、この補給路64上に配置されこれを開閉するバルブ82と、このバルブ82を駆動するアクチュエータ83とからなる。補給路64は、インク袋69に接続される管状の導入路64a,円形のチャンバ64b,このチャンバ64bの底面に形成された第1開口64c,この第1開口64cと略直交する姿勢で形成され、隔壁65に形成された第2開口64dからなる。ケース68の底部は、第1及び第2の各開口64c,64dに対応する位置に開口が形成されており、この開口を塞ぐようにバルブ82が取り付けられている。
【0057】
バルブ82は、例えば、ゴムなどで形成された弾性膜であり、開き状態では、実線で示すように、第1及び第2の各開口64c,64dをそれぞれ開放し、第1開口64cから第2開口64dへのインクの流入を許容する。このバルブ82は、アクチュエータ83の押圧部83cによって下方か押圧されると、二点鎖線で示すように弾性変形して、閉じ状態に移行する。閉じ状態では、バルブ82は、各開口64c,64dを塞いで、第1開口64cから第2開口64dへのインクの流入を遮断する。こうしてバルブ82によって補給路64が開き状態と閉じ状態との間で切り替えられる。アクチュエータ83は、例えば、その本体83bに、コイルと鉄芯とからなるソレノイドが収容されており、このソレノイドに給電することによってバルブ82を駆動する。
【0058】
補給路64の単位時間流量は、最も流路抵抗が大きい導入路64aの流路長Lとその管径Dに応じて決まるとともに、図10のグラフに示すように、インク袋69内のインク液面高さH1と正比例する。すなわち、補給路64の単位時間流量をQ、インク密度をρ、インク粘度をμ、重力加速度をgとすると、単位時間流量Qは、以下の式によって求められる。
Q=ρ×g×H1×(π×D4)/(128×μ×L)・・・・・式1
【0059】
この式1からわかるように、インク液面高さH1が高いときは、単位時間流量Qも大きくなるので、同じ補給量を得るためのバルブ82の開き時間は、インク液面高さH1が低いときよりも、短くなる。実験によれば、インク粘度μを一定とした場合に、インク液面高さH1が50mmのときと、11mmのときとを比較すると、H1=50mmのときは圧力が約4.5倍になり、バルブ開き時間は、約1/4になるという結果を得ている。
【0060】
コントローラ71には、不揮発性メモリとして、例えば、EEPROM85が接続されている。EEPROM85には、インク液面高さH1が記憶されている。製造時には、ここにインク袋69が満タンのときのインク液面高さH1の値が記憶されている。この値は、インク消費に伴って更新される。コントローラ71は、このインク液面高さH1が所定値を下回った場合にインク切れ(残量切れ)を判定し、表示器89にその旨を表示してユーザーに警告する。バルブ制御部78は、コントローラ71を通じて、インク液面高さH1をEEPROM85から読み出す。
【0061】
バルブ制御部78は、上記式1に基づいて、単位時間流量Qを求め、インク吐出量に応じたバルブ82の開き時間を算出する。なお、こうした演算式に基づいて算出する代わりに、LUT(ルックアップテーブル)をメモリに記憶して単位時間流量Qを求めるようにしてもよい。
【0062】
また、図11に示すように、インク粘度μは、インク温度Thに反比例する。すなわち、インク温度Thが低いほど、インク粘度μは高くなる。実験によれば、インク温度Thが35℃から15℃に下降すると、インク粘度μは約2倍になる。これにより、単位時間流量Qが半減するため、バルブ82の開き時間は約2倍となる。インクジェット記録装置10には、インクカートリッジ20のインク温度を測定する温度センサ86が設けられている。温度センサ86は、例えば、キャリッジに設けられる。バルブ制御部78は、コントローラ71を介して温度センサ86が測定したインク温度を読み出して、インク粘度μを求める。
【0063】
図12及び図13のフローチャートを参照しながら、インクカートリッジ61を用いた場合のプリント手順を説明する。プリント指示がなされると、コントローラ71は、EEPROM85からインク液面高さH1を読み出して、インク切れか否かを判定する。インク液面高さH1が所定値以下の場合には、インク切れと判定して、表示器78を通じて警告を発する。インク切れでない場合には、1画面分の画像のプリントを開始する。記録ヘッド12は、画像データに基づいて駆動され、インクを吐出する。プリント開始時には、補給路64は閉じられているので、インク袋69内のインク残量に関わらず、安定したインク吐出が行われる。
【0064】
インク吐出を開始した後、所定時間が経過すると、コントローラ71は、インク吐出量に応じた補給を開始することをバルブ制御部78に指令する。バルブ制御部78は、これに基づいて、補給路64の単位時間流量Qを算出する。図13に示すように、バルブ制御部78は、温度センサから温度を読み出して、インク粘度μを算出するとともに、EEPROM85から読み出したインク液面高さH1を読み出して、上記式1に従って、単位時間流量Qを求める。
【0065】
バルブ制御部78は、この単位時間流量Qに基づいて、コントローラ71が算出した補給量(インク吐出量)を得るためのバルブ開き時間を求める。アクチュエータ83が、バルブ82を開き状態にすると、補給路64が開かれる。これにより、インク袋69から負圧発生室63にインクが流れ込む。バルブ82は、算出されたバルブ開き時間だけ開かれた後、閉じられる。これにより、インク吐出量に見合った分だけ、負圧発生室63にインクが補充される。このように補給量を制御するので、負圧発生室63のインク量の変動が抑制され、ノズル内圧の変動が少なくなり、吐出安定性が確保される。
【0066】
コントローラ71は、補充によって変化したインク液面高さH1により、EEPROM85のインク液面高さH1の値を更新する。こうした手順が1画面分のプリントが終了するまで繰り返される。
【0067】
なお、本例では、バルブ機構の一部(バルブ)をインクカートリッジに設け、アクチュエータをインクジェット記録装置に設けた例で説明したが、アクチュエータをインクカートリッジに設けてもよい。
【0068】
図14に示すインクカートリッジ91には、負圧発生室63内のインクの液面高さH2が、予め決められた基準レベル以下になったことを検知する水位センサ92が設けられている。インクジェット記録装置は、この水位センサ92によってインク液面高さH2を検知して、それが基準レベル以下になったときに、インク袋69から負圧発生室63へのインク補給を行う。これにより、負圧発生室63内のインク量を所定のレベルに保たれるので、ノズル内圧の変動が抑制されて、吐出安定性が確保される。水位センサ92は、例えば、導電性を有する一対の金属片からなる。各金属片は、インクの高さ方向に沿って上下に並べて配列されている。各金属片がインク中にある場合には、各金属片間がインクを介して導通する。インクの液面高さH2が下降して、一方の金属片よりも下がると、各金属片間の導通が絶たれる。これにより、インクの液面高さH2が基準レベル以下になったことが検知される。
【0069】
このインクカートリッジ91の補給路94を開閉する補給路開閉機構としては、バルブ機構の代わりに吸引ポンプ96が使用される。吸引ポンプ96は、バルブ機構とは異なり、インク袋69内のインクを吸引して強制的に負圧発生室63に送り込むことができるので、インク袋69内の残留インク量を低減させることができる。
【0070】
コントローラ71は、ポンプ駆動部97を通じて吸引ポンプ96を制御する。吸引ポンプ96を作動させると、補給路94が開き状態となり、停止させると、補給路94が閉じ状態となる。吸引ポンプ96の動作時間によって補給路94の開き時間が決まる。吸引ポンプ96は、インクカートリッジ91のケースに取り付けてもよいし、インクジェット記録装置に設けてもよい。このうち、特に、インクカートリッジ91に設ける場合には、小型のマイクロポンプを使用することが好ましい。
【0071】
図15のフローチャートに示すように、プリント指示がなされると、1画面のプリントが開始される。記録ヘッド12は、画像データに基づいてインクを吐出する。タイマ76よって時間経過が計測され、所定時間が経過する毎に、コントローラ71は、インク吐出量に応じた吸引ポンプ96による補給処理を実行するか否かを判定する。コントローラ71は、水位センサ92を通じて、インク液面高さH2を調べ、それが基準レベルを上回っている場合には、補給処理を実行せずに記録を継続する。他方、インク液面高さH2が基準レベル以下である場合には、吸引ポンプ96を所定時間作動させて、補給処理を実行して、インク補給を行う。このインク補給量は、例えば、インク吐出量の5倍程度など、単位時間に計測したインク吐出量を基準に算出される。
【0072】
このインク補給後、再度、インク液面高さH2を調べて、それが基準レベルを上回ったことを確認して記録を継続する。こうして1画面分の記録を行う。1回の補給処理を行っても、インク液面高さH2が基準レベル以下の場合には、再度、補給処理を実行する。コントローラ71は、こうした補給処理を数回行っても、インク液面高さH2が基準レベルを超えない場合には、インク袋69内のインク残量が無くなったと判定して、その旨を表示器78に表示して警告する。
【0073】
上記第2及び第3の実施形態の各インクカートリッジ61,91の組み立て手順は、第1実施形態のインクカートリッジ21の組み立て手順とほぼ同様であり、バルブ,吸引ポンプ,水位センサなど追加されたパーツの取り付け工程が適宜追加される。
【0074】
インク充填については、バルブや吸引ポンプによる補給路開閉機構を設けた場合には、これらを適宜開閉させることにより行われる。すなわち、補給路を通じて残存空気を排出する工程及びインク袋へインクを送り込む工程では、補給路が開かれる。また、インク袋へインクを送り込む前に、負圧発生室へインクを注入する工程では、補給路が閉じられる。
【0075】
なお、上記実施形態では、インクタンクと記録ヘッドとが分離可能に別体で構成されたインクカートリッジの例で説明したが、インクタンクと記録ヘッドとを一体に構成してもよい。また、インクタンクを、インクジェット記録装置に着脱自在に装着されるインクカートリッジの例で説明したが、着脱自在でなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】インクジェット記録装置の概略構成を示す説明図である。
【図2】インクカートリッジの分解斜視図である。
【図3】ケース本体の分解斜視図である。
【図4】インクカートリッジの断面図である。
【図5】インクカートリッジの組み立て手順を示すフローチャートである。
【図6】インク充填方法を示すフローチャートである。
【図7】補給路開閉機構を設けたインクカートリッジの説明図である。
【図8】バルブ機構の説明図である。
【図9】補給路の斜視図である。
【図10】補給路の単位時間流量とインク液面高さの関係を示すグラフである。
【図11】インク粘度と温度の関係を示すグラフである。
【図12】図7に示すインクカートリッジのプリント手順を示すフローチャートである。
【図13】補給路の単位時間流量の算出手順を示すフローチャートである。
【図14】水位センサを設けたインクカートリッジの説明図である。
【図15】図14に示すインクカートリッジのプリント手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0077】
10 インクジェット記録装置
11 用紙
12 記録ヘッド
12a ノズル
13 キャリッジ
20,61,91 インクカートリッジ
21 ケース
22 ケース本体
25 貯留室
26 負圧発生室
27 隔壁
27a,64,94 補給路
28 負圧発生部材
31 インク取出部
36 インク供給針
37 インク袋
41 第1大気導入口
47 第2大気導入口
66 バルブ機構
71 コントローラ
78 バルブ制御部
82 バルブ
83 アクチュエータ
92 水位センサ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するノズルを有する吐出方式の記録ヘッドへ供給するインクを収納するインク収納室が形成されたケースと、このケースの底部に設けられ前記記録ヘッドの吸引によって前記インク収納室からインク供給路へインクを取り出すインク取出部とを備えており、前記インク収納室には、毛管力によって、インクを吸収して保持するとともに前記インク取出部を介して接続される前記ノズルの内圧を負圧に保つ負圧発生部材を収納する負圧発生室と、この負圧発生室と隔壁によって仕切られており、前記負圧発生室に補給するインクが貯留される貯留室と、前記貯留室から前記負圧発生室へインクを補給するための補給路とが設けられたインクタンクにおいて、
前記負圧発生室内のインクの減少に応じて前記負圧発生室内に大気を導入する第1大気導入口と、
前記貯留室内に配置され、前記貯留室に貯留されるインクを収容する気密性の袋体と、この袋体に設けられ前記袋体内のインクを外部へ流出させるインク流出口とからなり、このインク流出口が前記補給路へ接続されたインク袋と、
前記インク袋内のインクの減少に応じて前記貯留室内に大気を導入する第2大気導入口とを備えたことを特徴とするインクタンク。
【請求項2】
前記ケースは、前記インク収納室の上方を開放する上部開口が形成されたケース本体と、このケース本体の上部に取り付けられ前記上部開口を閉じる上蓋とからなり、前記第1及び第2の各大気導入口は、前記上蓋に設けられることを特徴とする請求項1記載のインクタンク。
【請求項3】
前記インク袋は、略水平方向に沿った複数の折り目が形成された蛇腹状をしており、その内部のインクの減少に応じて、前記折り目に従って折り畳まれることを特徴とする請求項1又は2記載のインクタンク。
【請求項4】
前記補給路は、前記補給路を閉じて前記貯留室から前記負圧発生室へのインクの補給を阻止する閉じ状態と、前記補給路を開放して前記貯留室から前記負圧発生室へのインクの補給を許容する開き状態との間で切り替え可能であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載のインクタンク。
【請求項5】
前記補給路の開閉状態の切り替えは、前記補給路上に配置された補給路開閉機構によって行われることを特徴とする請求項4記載のインクタンク。
【請求項6】
前記補給路開閉機構は、前記補給路を開閉するバルブと、このバルブを駆動するアクチュエーターからなり、前記ケースには、それらのうち少なくとも前記バルブが設けられることを特徴とする請求項5記載のインクタンク。
【請求項7】
前記補給路開閉機構は、前記開き状態のときに、前記インク袋内からインクを吸引して前記負圧発生室へ強制的に送り込むポンプであることを特徴とする請求項5記載のインクタンク。
【請求項8】
前記ポンプはマイクロポンプであり、これを前記ケースに設けたことを特徴とする請求項7記載のインクタンク。
【請求項9】
前記インク取出部には、前記インク収納室から取り出されるインクを濾過するフイルタが設けられていることを特徴とする請求項1〜8いずれか記載のインクタンク。
【請求項10】
前記インク取出部には、前記ノズルへ通じるインク供給路を構成する中空状のインク供給針が差し込まれる多孔質部材が設けられることを特徴とする請求項1〜9いずれか記載のインクタンク。
【請求項11】
インクをノズルから吐出して画像を記録する吐出方式の記録ヘッドを備え、この記録ヘッドよりも高い位置に配置されたインクタンクから前記記録ヘッドへ前記インクが供給されるインクジェット記録装置において、
前記インクタンクは、毛管力によってインクを吸収して保持するとともに前記ノズルの内圧を負圧に保つ負圧発生部材を収納する負圧発生室と、この負圧発生室と隔壁によって仕切られており、前記負圧発生室に補給するインクが貯留される貯留室と、前記貯留室から前記負圧発生室へインクを補給するための補給路とを備えており、この補給路上に配置され、前記補給路を閉じて前記貯留室から前記負圧発生室へのインクの補給を阻止する閉じ状態と、前記補給路を開いて前記貯留室から前記負圧発生室へのインクの補給を許容する開き状態との間で前記補給路の開閉状態を切り替える補給路開閉機構を、制御する制御手段を備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項12】
前記インクタンクは、前記記録ヘッドが設けられた本体に着脱自在にセットされることを特徴とする請求項11記載のインクジェット記録装置。
【請求項13】
前記記録ヘッドのインク吐出量を検出する吐出量検出手段を設け、前記制御手段は、前記インク吐出量に見合った量のインクが前記負圧発生室に補給されるように、前記補給路開閉機構を制御することを特徴とする請求項11又は12記載のインクジェット記録装置。
【請求項14】
前記吐出量検出手段は、前記記録ヘッドのインク吐出回数をカウントして前記インク吐出量を検出することを特徴とする請求項13記載のインクジェット記録装置。
【請求項15】
前記吐出量検出手段は、画像データに基づいて前記記録ヘッドのインク吐出量を予測して検出することを特徴とする請求項13記載のインクジェット記録装置。
【請求項16】
前記制御手段は、前記インク吐出量に基づいて前記インク袋内のインクの液面高さである袋内液面高さを算出する袋内液面高さ算出部と、算出した袋内液面高さに基づいて前記補給路を通過するインクの単位時間流量を算出する単位時間流量算出部とを備えており、この単位時間流量に基づいて、前記インク吐出量に見合った適切な補給量を得るための前記補給路の開き時間を求めることを特徴とする請求項13〜15いずれか記載のインクジェット記録装置。
【請求項17】
前記インク収納室内のインク温度を測定する温度センサと、測定したインク温度に基づいてインク粘度を算出する粘度算出部とが設けられており、前記単位時間流量算出部は、前記インク粘度を加味して前記単位時間流量を算出することを特徴とする請求項16記載のインクジェット記録装置。
【請求項18】
前記負圧発生室内のインクの液面高さである負圧室内液面高さが、予め決められた基準レベル以下になったことを検知する負圧室液面高さ検知手段が設けられており、前記制御手段は、前記負圧室内液面高さが前記基準レベル以下になったときに、前記補給路開閉機構を制御して所定量のインクを補給する補給処理を実行することを特徴とする請求項11記載のインクジェット記録装置。
【請求項19】
前記補給処理を実行した後、前記負圧室内液面高さが前記基準レベルを上回らない場合にインク切れと判定するインク切れ判定手段を設けたことを特徴とする請求項18記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−7902(P2007−7902A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−188848(P2005−188848)
【出願日】平成17年6月28日(2005.6.28)
【出願人】(000005201)富士フイルムホールディングス株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】