説明

インサートシート及びその製造方法

【課題】本発明は、インサートシート及びその製造方法に関するものである。
【解決手段】本発明のフィルムは、各種インサート成形物又は射出成形物に適用され、優れた金属質感などの外観効果を示すことができ、さらに、表面物性、成形性、耐スクラッチ性、耐衝撃性、耐熱性、耐摩耗性、耐薬品性及び耐光性などの諸般物性をいずれも優秀に維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インサートシート及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インサートシート(又はインサートフィルム)は、インサート成形又は射出成形などで成形物の表面に適用され、各種装飾効果を出すことのできるフィルム又はシートである。インサートシートの例には、射出同時加飾シートのように、インサート又は射出成形と同時に、成形物の表面に装飾層を与えることのできる成形同時加飾シートが含まれる。インサートシートは、例えば、各種自動車用内装材又は家電製品のケースなどに適用され、センターファシア、ウィンドウスイッチ又はコンソールボックスなどの自動車インテリア、ミラーハウジング、サイドモルディング又はバンパーキャップなどの自動車外装材、携帯電話又はノートブックコンピュータなどの各種電子製品や家電製品のハウジングなどの多様な用途に適用されている。
【0003】
一般に、インサートシートには、グラビア印刷などの多様な工法で各種模様を有しながら金属質感を具現できる装飾層を形成してきた。しかし、前記のような既存の方式で形成された装飾層の場合、その効果が実際の金属(例えば、クロム及びステンレスなど)に比べて大きく低下し、人為的な感じを与えるという問題があった(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
そのため、最近は、真空蒸着などの金属蒸着技術を通して、フィルムに多様な金属質感を具現する方法が試みられている。しかし、真空蒸着方式で形成された金属蒸着層の場合、被着体である合成樹脂基材との接着性が低下し、シートの耐久性などが悪化するという問題がある。また、既存の方式の場合、シートの表面耐久性及び成形性などの物性及び金属蒸着層の均一性が低下し、インサートシートが成形に適用される場合などに蒸着層に亀裂が発生するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−001444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、インサートシート及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、一面にヘアライン層が形成されている透明フィルムと、前記透明フィルムのヘアライン層上に形成されている金属蒸着層と、前記金属蒸着層上に形成された支持シートとを含むインサートシートを提供する。
【0008】
本発明は、前記課題を解決するための他の手段として、透明フィルムの一面にヘアライン層を形成する第1の段階と、前記第1の段階で形成されたヘアライン層の表面に金属蒸着層を形成する第2の段階と、前記第2の段階で形成された金属蒸着層上に支持シートを形成する第3の段階とを含むインサートシートの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、裏面にヘアライン層が形成された透明フィルムと、前記ヘアライン層上に形成された金属蒸着層とを含むインサートシート及びその製造方法が提供される。本発明のインサートシートは、ヘアライン層が透明フィルムの裏面に形成され、優れた表面物性、耐久性及び成形性を示すことができる。また、本発明では、必要に応じて金属蒸着層の形成時にスパッタリング工法を適用することによって、素材の制限なしに多様な金属を含む蒸着層を製造することができる。また、本発明によると、金属蒸着層の均一な形成及び薄膜の蒸着層の形成が可能であり、透明フィルムとの密着性に優れ、成形時に亀裂が発生しない金属蒸着層を提供することができる。その結果、本発明のフィルムは、各種インサート成形物又は射出成形物に適用され、優れた金属質感などの外観効果を示すことができ、表面物性、成形性、耐スクラッチ性、耐衝撃性、耐熱性、耐摩耗性、耐薬品性及び耐光性などの諸般物性をいずれも優秀に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の多様な態様に係るインサートシートの断面図である。
【図2】本発明の多様な態様に係るインサートシートの断面図である。
【図3】本発明の多様な態様に係るインサートシートの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、一面にヘアライン層が形成されている透明フィルムと、前記透明フィルムのヘアライン層上に形成されている金属蒸着層と、前記金属蒸着層上に形成された支持シートとを含むインサートシートに関するものである。
【0012】
以下、本発明のインサートシートについて詳細に説明する。
【0013】
本発明のインサートシートは、インサート成形又は射出成形などに適用され、成形物の表面で装飾効果を与えることができる。また、本発明のインサートシートは、例えば、成形同時加飾工法に適用され、インサート又は射出成形と同時に、成形物の表面に装飾層を与える成形同時加飾フィルムなどとして使用することができる。
【0014】
本発明の一態様で、前記インサートシートは、例えば、添付の図1に示した構造を有することができる。すなわち、本発明のインサートシート1は、下部から順次形成された支持シート14、金属蒸着層13、ヘアライン層12及び透明フィルム11を含むことができる。図1に示すように、本発明のインサートシート1では、装飾効果を出すことのできるヘアライン層(以下、「インサイドヘアライン層」と称する場合がある。)12が透明フィルム11の裏面に形成されている。ここで、透明フィルムの裏面とは、インサートシートが成形物に適用された場合、成形物の外部に向かう透明フィルムの面の反対面を意味する。本発明では、このようなヘアライン層を透明フィルムの裏面に形成することによって、表面物性、表面耐久性、耐スクラッチ性、耐摩耗性、耐化学性及び耐光性などに優れるとともに、優れた金属質感などを示すことのできるインサートシートを提供することができる。
【0015】
本発明で使用可能な透明フィルムの具体的な種類は、この分野で広く使用されるものであって、透明性を有するフィルムであれば特別に制限されない。本発明では、例えば、前記透明フィルムとして、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム又はポリメチルメタクリレートフィルムを使用することができる。前記のような透明フィルムは、例えば、対応する熱可塑性樹脂などを添加剤などとブレンディングして原料を製造した後、これを押出、プレス又はキャスティング工程などに適用して製造することができる。
【0016】
本発明において、前記透明フィルムの厚さは、例えば、約5μm〜500μmの範囲である。本発明において、透明フィルムの厚さが過度に薄くなると、ヘアライン層を形成しにくくなったり、機械的強度が低下するおそれがあり、場合に応じては、後述する表面処理層の形成時にフィルムに熱変形が生じるおそれがある。また、前記透明フィルムの厚さが過度に厚くなると、フィルムの成形性や巻き取り加工性などが低下するおそれがある。しかし、前記透明フィルムの厚さは、本発明の一例示に過ぎない。すなわち、本発明では、インサートシートが適用される用途又は具現しようとするヘアラインパターンなどを考慮し、前記透明フィルムの厚さを調節することもできる。
【0017】
本発明のインサートシートは、前記透明フィルムの一面に形成されたヘアライン層を含む。本発明で使用する用語である「ヘアライン」は、透明フィルム上に形成された所定深さ及び幅を有する非常に細い線(スクラッチ)を意味し、「ヘアライン層」は、前記のようなヘアラインで形成された多様なパターンを意味する。前記ヘアラインの深さ、幅及び形成個数などは特別に制限されず、具現しようとするパターンを考慮して適宜制御することができる。本発明では、、前記ヘアラインは、例えば、深さが0.1μm〜1.0μmで、平均幅が0μmを超えて、5μm以下の範囲で形成することができる。
【0018】
本発明において、前記ヘアライン層は、最終的なインサートシートでは透明フィルムの表面の反対面、すなわち、裏面に形成される。本発明で使用する用語である「透明フィルムの表面」は、本発明のインサートシートが成形物に適用された場合、外部に向かう透明フィルムの面を意味し、「透明フィルムの裏面」は、前記表面の反対面、すなわち、成形物に適用したときに成形物と向かい合う面を意味する。
【0019】
このように、ヘアライン層が透明フィルムの裏面に形成されることによって、成形物に適用したときに触覚的に屈曲を感じることができないので、インサートシートの表面物性を向上させることができ、さらに、表面耐久性、耐スクラッチ性、耐摩耗性、耐化学性及び耐光性などの特性も向上させることができる。
【0020】
本発明において、前記ヘアライン層は、例えば、髪の毛模様、羽毛模様、糸雲模様、櫛の歯模様、波模様及び枝模様からなる群から選択された一つ以上の模様で形成されている。しかし、前記ヘアラインパターンは、本発明の一つの例示に過ぎなく、本発明では、目的によって前記模様を多様に変更することができる。
【0021】
本発明において、透明フィルムにヘアライン層を形成する方法は特別に制限されず、この分野で一般的に適用される工法でヘアライン層を形成することができる。本発明では、例えば、微細な研磨部材が形成された研磨材(例えば、織物)を使用し、透明フィルムの表面を目的とするヘアラインの模様に沿ってスクラッチ加工することによってヘアライン層を形成することができる。
【0022】
本発明のインサートシートは、前記ヘアライン層上に形成された金属蒸着層を含む。本発明において、前記金属蒸着層は、透明フィルム上に形成されたヘアライン層の表面に対して各種蒸着法、例えば、真空蒸着法又はスパッタリング法を使用して形成することができる。前記真空蒸着法とは、真空状態で物質(金属)を加熱して蒸着させた後、その蒸発物質を被蒸着体の表面に導入して蒸着層を形成する方法である。また、スパッタリング工法とは、真空中に不活性ガス(例えば、アルゴンガス)を導入しながら基板とターゲット(例えば、金属)との間に電圧を加え、イオン化させた不活性ガスをターゲットに衝突させ、跳ね返されたターゲット物質で基板に蒸着膜を形成する方法である。スパッタリング工法では、真空が維持されたチャンバー内に不活性ガスを注入した後、プラズマを発生させ、ターゲットからスパッタアウトされた原子又は分子が基板上に到達することによって蒸着膜を形成する。本発明では、前記のような多様な方式のうちスパッタリング工法を使用して金属蒸着層を形成することが望ましい。すなわち、本発明において、前記金属蒸着層は、スパッタリング金属蒸着層であってもよい。スパッタリング工法は、適用可能な素材が比較的低い融点を有するアルミニウムなどのみに制限される真空蒸着法と比べて、多様な素材を使用できるという利点を有する。また、スパッタリング工法の場合、薄膜の蒸着膜を形成しながらも、全体的に均一な金属蒸着層を形成することができる。また、スパッタリング工法を適用する場合、被蒸着体であるヘアライン層にプライマーなどの別途の表面処理を行わない状態で、被蒸着体に対する密着力の優れた蒸着層を形成することができ、さらに、インサートシートがインサート又は射出成形などに適用される過程でも、蒸着層上に亀裂などの欠陥が発生することを防止することができる。
【0023】
本発明において、前記金属蒸着層は、ステンレス、アルミニウム、クロム、ニッケル、スズ及び銅からなる群から選択された一つ以上を含むことができる。また、本発明において、前記金属蒸着層の厚さは特別に制限されず、目的とする効果を考慮して選択することができる。本発明では、例えば、前記金属蒸着層の厚さを50Å〜500Å、100Å〜500Å又は200Å〜500Åの範囲内で制御することができる。
【0024】
本発明のインサートシートに含まれる支持シートの種類は、特別に制限されない。すなわち、本発明では、この分野で公知となった支持シートとしては、熱的流動性に優れ、インサート又は射出工程過程又はその後に高熱によって下部樹脂が現れ、黒く焼く現象であるゲートバーン(gate burn)現象を誘発しないものであれば、如何なる種類のものも使用することができる。
【0025】
本発明では、例えば、支持シートとして、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS;Acrylonitrile Butadiene Styrene)シート、ポリ塩化ビニル(PVC;polyvinylchloride)シート又はエチレンビニルアセテート(EVA;ethylene vinyl acetate)樹脂シートを使用することができ、場合に応じては、上述したもののうち2個以上のフィルムの積層フィルムを使用することができる。
【0026】
本発明において、前記支持シートは、その厚さが100μm〜10,000μmである。本発明において、支持シートの厚さが100μm未満であると、インサートシートの成形性が低下したり、成形過程でゲートバーン現象が発生するおそれがあり、支持シートの厚さが10,000μmを超えると、巻き取り加工性などが低下するおそれがある。しかし、前記支持シートの厚さは本発明の一つの例示に過ぎなく、本発明では、必要に応じて前記支持シートの厚さを多様に変更することができる。
【0027】
本発明の一態様では、図2に示すように、前記支持シート14が接着層Aを媒介にして金属蒸着層13に付着されることがある。
【0028】
この場合、使用可能な接着層の種類は特別に制限されず、この分野で公知となっている各種ポリエステル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ポリアミド系接着剤、エチレンビニルアセテート系接着剤又はアクリル系接着剤を使用することができる。
【0029】
本発明では、前記支持シート及び金属蒸着層の接着時に溶剤型接着剤(又は溶剤含浸型接着剤)又はフィルム型接着剤を使用することができる。
【0030】
本発明で溶剤型接着剤を使用する場合、上述した各接着性樹脂を適切な溶剤に含浸して接着剤を製造した後、これをグラビアコーティング方式などで金属蒸着層にコーティングし、再び支持シートと合着する工程を経ることができる。
【0031】
また、本発明でフィルム型接着剤を使用する場合は、上述した各接着性樹脂を含む接着剤を押出工程などに適用してフィルム状接着剤を製造し、これを金属蒸着層又は支持シートにラミネートする方法を適用することができる。
【0032】
本発明のインサートシートに接着層が含まれる場合、その厚さは0.1μm〜500μmである。本発明において、接着層の厚さが0.1μm未満であると、着色フィルムなどの追加的なフィルムの接着時に、支持フィルムと金属蒸着層との界面接着力が低下するおそれがあり、接着層の厚さが500μmを超えると、ブロッキング現象の発生によって巻き取り加工性などが低下するおそれがある。
【0033】
また、本発明のインサートシートは、図3に示すように、前記透明フィルムの表面、すなわち、透明フィルム11においてヘアライン層12が形成された面の反対面に形成される表面処理層15を追加で含むことができ、このような表面処理層を通してフィルムの成形性及び表面物性などをより改善することができる。また、前記表面処理層は、インサートシートの耐久性及び延伸率特性を改善する役割をすることもできる。
【0034】
このような表面処理層は、この分野で知られた表面処理素材を使用して構成することができる。具体的には、前記表面処理層は、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂及びフッ素系樹脂からなる群から選択された一つ以上を含むことができ、望ましくはアクリル樹脂を含むことができるが、これに制限されるものではない。前記各樹脂の具体的な種類は特別に制限されず、この分野で公知となっている表面処理素材から発明の目的を考慮して適宜選択することができる。
【0035】
本発明において、前記のような素材を使用して表面処理層を形成する方法は、特別に制限されない。本発明では、例えば、前記各樹脂成分及びその他添加剤を適正な溶媒に溶解及び分散させてコーティング液を製造し、これを透明フィルムにバーコーターなどの手段でコーティングした後、乾燥させる方法で表面処理層を形成することができる。
【0036】
本発明において、前記コーティング液は、上述した各樹脂成分の他に硬化剤を含み、必要に応じては消光剤を適宜含むことができる。この場合、使用される硬化剤の種類は特別に制限されず、使用される樹脂及びその樹脂に含まれる架橋性官能基の種類を考慮して適宜選択することができ、具体的には、各種イソシアネート系硬化剤又はアミン系硬化剤を使用することができる。また、前記消光剤は、表面処理層に耐光性を与えることのできる成分であって、その具体的な種類も特別に制限されず、この分野で公知となっている一般的な成分を使用することができる。
【0037】
本発明の一態様で、前記コーティング液は、例えば、前記樹脂成分を80重量部〜130重量部、硬化剤を0.01重量部〜80重量部含むことができ、消光剤が含まれる場合、その含量は、前記樹脂成分又は硬化剤の含量に対比して約0.01重量部〜15重量部の量である。また、前記コーティング液は、樹脂成分を基準にして約10重量%〜80重量%の固形分含量を有するように調製することができる。特に、本発明でアクリル系樹脂を使用して表面処理層を形成する場合、前記コーティング液は、アクリル系樹脂を100重量部、硬化剤(例えば、イソシアネート系硬化剤)を0.5重量部〜5重量部含むことができ、必要に応じては前記アクリル系樹脂又は硬化剤の含量を基準にして0.5重量部〜10重量部の消光剤を追加で含むことができ、その固形分含量は、アクリル系樹脂を基準にして約30重量%〜50重量%の範囲である。しかし、前記コーティング液の組成は本発明の一例示に過ぎなく、本発明では、目的とする物性を考慮して前記組成を調節することができる。
【0038】
本発明のインサートシートが表面処理層を含む場合、その厚さは約0.5μm〜30μmの範囲である。表面処理層の厚さが0.5μm未満であると、表面処理層の形成による効果が微々たるものになるおそれがあり、表面処理層の厚さが30μmを超えると、成形性や延伸率特性が低下するおそれがある。
【0039】
また、本発明は、透明フィルムの一面にヘアライン層を形成する第1の段階と、第1の段階で形成されたヘアライン層の表面に金属蒸着層を形成する第2の段階と、第2の段階で形成された金属蒸着層上に支持シートを形成する第3の段階とを含むインサートシートの製造方法に関するものである。
【0040】
本発明の第1の段階において、ヘアライン層を形成する方法は特別に制限されず、上述したように、透明フィルムの一面を通常の研磨材で研磨する過程を通してヘアライン層を製造することができる。
【0041】
本発明で研磨紙などの研磨材を使用して前記ヘアライン層を形成するとき、前記研磨材のメッシュ(研磨部材(網)の大きさ:mesh)は、約200〜2,000メッシュの範囲であってもよい。研磨材のメッシュを前記範囲で制御することによって、ヘアラインパターンは、優れた質感を示すことのできる範囲の線数及び深度を有することができる。しかし、前記研磨材のメッシュは、本発明の一つの例示に過ぎなく、本発明では、目的とする効果を考慮して前記メッシュの範囲を自由に制御することができる。
【0042】
本発明では、上述した方法の他にも、この分野でヘアライン層の形成のために公知となっている多様な方法を制限なく適用して前記ヘアライン層を形成することができる。
【0043】
本発明の第2の段階は、前記のように形成されたヘアライン層上に金属を蒸着し、金属蒸着層を形成する段階である。このような金属蒸着層は、上述したように、真空蒸着又はスパッタリング工法を通して形成することができ、このうちスパッタリング工法を使用して形成することが望ましい。しかし、本発明でアルミニウム又は銅などのように比較的低い融点を有する金属で蒸着層を形成しようとする場合は、真空蒸着工法を適用することができる。
【0044】
一方、前記真空蒸着又はスパッタリング工法の具体的な条件は特別に制限されず、使用される金属素材などを考慮して適宜選択することができる。
【0045】
本発明の第3の段階は、前記のような方式で形成された金属蒸着層に支持シートを付着する段階である。このとき、前記支持シートを付着する方法は特別に制限されず、例えば、この分野で公知となっている通常の熱合板工法を使用して付着することができる。また、代案としては、上述したように、金属蒸着層の表面に適切な溶剤型接着層(又は溶剤含浸型接着層)又はフィルム型接着層を形成し、これに前記支持シートを積層した後、加熱して合紙する方式で支持シートを付着することもできる。
【0046】
また、本発明のインサートシートの製造方法は、透明フィルム上に表面処理層を形成する段階を追加で行うこともできる。前記表面処理層は、透明フィルムにおいてヘアライン層が形成された面、又はヘアライン層が形成される面の反対面に形成される。このような表面処理層を形成する方法は特別に制限されず、上述したようなコーティング液を塗布及び乾燥処理して表面処理層を製造することができる。また、前記過程でコーティング液の配合、塗布及び乾燥工程の具体的な方法又は条件は特別に制限されず、目的によって適宜制御することができる。また、表面処理層を形成する段階は、透明フィルム上にヘアライン層が形成される前又はヘアライン層が形成された後、金属蒸着層が形成される前又は金属蒸着層が形成された後、支持シートが形成される前又は支持シートが形成された後のうち適切な時期に行うことができ、その遂行時期は特別に制限されない。本発明では、例えば、前記表面処理層の形成段階を、透明フィルムにヘアライン層及び金属蒸着層が順次形成され、支持シートを付着する前の段階で行うことができる。
【0047】
以下、本発明に係る実施例を通して本発明をより詳細に説明するが、本発明の範囲が下記で提示した実施例に限定されることはない。
【0048】
実施例1.
【0049】
透明フィルムとして、ポリブチレンテレフタレートフィルムの裏面に研磨紙を使用して髪の毛模様のヘアライン層を形成した。続いて、前記ヘアライン層の表面にスパッタリングで銅蒸着層を形成した。その後、前記蒸着層上に、イソシアネート系硬化剤及びアクリル系樹脂をメチルエチルケトンに溶解させた接着コーティング液を塗布し、接着層を形成した。その後、前記透明フィルムにおいてヘアライン層が形成された面の反対面に、メチルエチルケトンにアクリル樹脂を100重量部、イソシアネート硬化剤を2重量部溶解させたコーティング液(固形分含量:35重量%)を塗布及び乾燥し、表面処理層を形成した。その後、前記金属蒸着層上に形成された接着層上にEVA樹脂フィルムを積層した後、加熱及び合紙してインサートシートを製造した。
【0050】
実施例2.
【0051】
透明フィルムとして、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:50μm、SL80C、SKC Co.,Ltd.の製品)の一面に研磨紙(600メッシュ)で髪の毛模様のヘアライン層を形成した。このとき、ヘアライン層は、平均線数は120ラインで、深度は約0.2μmであった。その後、前記ヘアライン層の上部にステンレス304をスパッタリングし、0.85OD(Optical Density)の厚さで金属薄膜を形成した。続いて、前記金属蒸着層の上部に、メチルエチルケトンにポリエステル樹脂を100重量部、イソシアネート硬化剤を0.6重量部溶解させた接着コーティング液(固形分含量:35重量%)を塗布し、厚さが0.2μmである接着層を形成した。続いて、前記透明フィルムでヘアライン層が形成された面の反対面に、メチルエチルケトンにアクリル樹脂を100重量部、イソシアネート硬化剤を2重量部溶解させたコーティング液(固形分含量:35重量%)を塗布及び乾燥して熱硬化させることによって、厚さが約10μmである表面処理層を形成した。続いて、前記接着層に厚さが500μmであるABSフィルム(MA221、LG Chemical Co.,の製品)を積層した後、加熱及び合紙してインサートシートを製造した。
【0052】
製造されたフィルムに対して、下記で提示した条件で外観、耐スクラッチ性、耐衝撃性、耐熱性、耐摩耗性、耐薬品性及び耐日焼け止めクリーム性を測定し、その結果を下記の表1に整理して記載した。
【0053】
1.外観評価
【0054】
フィルムの外観を肉眼で観察し、膨らみ、剥離又は気泡などが発生した場合を×で、発生しない場合を○で評価した。
【0055】
2.耐スクラッチ性評価
【0056】
フィルムの耐スクラッチ性は、JIS K 6718に規定されたサファイア実験を通して評価した(合格基準:3.5級以上)。
【0057】
3.耐衝撃性評価
【0058】
耐衝撃性は、錘(12.7mm、0.5Kgf)を20cmの高さでインサートシートに落下させて評価した。落下後、フィルムに剥離又は割れなどが発生した場合を×で、発生しない場合を○で評価した。
【0059】
4.耐熱性評価
【0060】
インサートシートの耐熱性は、製造されたフィルムを80℃の温度で300時間放置した後で評価した。放置後、初期付着性が維持される場合を○で、維持されない場合を×で評価した。
【0061】
5.耐摩耗性評価
【0062】
耐摩耗性は、荷重が1.0Kgfである摩擦部材を使用し、60RPMの摩擦速度で乾式又は湿式摩擦試験を行って評価した。乾式摩擦試験を10,000回通過し、湿式摩擦試験を10,000回以上通過した場合を○で、乾式摩擦試験を10,000回通過できないか、湿式摩擦試験を10,000回以上通過できない場合を×で評価した。
【0063】
6.耐薬品性評価
【0064】
ガソリン、エンジンオイル、ワックス、グリース、ガラス洗浄剤及びエチルアルコールをインサートシートに適用したとき、変色、退色、膨潤及び割れが発生しない場合を○で、上述した現象のうち一つ以上が発生した場合を×で評価した。
【0065】
7.耐摩耗性評価
【0066】
インサートシートに0.2gの日焼け止めクリームを塗布し、80℃の温度で1時間放置した後、スクラッチを引き起こしたとき、スクラッチによる剥離が発生しない場合を○で、発生する場合を×で評価した。
【0067】
【表1】

【0068】
前記表1の結果から確認できるように、本発明に係るインサートシートは、外観、耐スクラッチ性、耐衝撃性、耐熱性、耐摩耗性、耐薬品性及び耐日焼け止めクリーム性などのようなインサートシートで要求される諸般物性をいずれも優秀に維持することができる。
【符号の説明】
【0069】
1:インサートシート、11:透明フィルム、12:ヘアライン層、13:金属蒸着層、14:支持シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面にヘアライン層が形成されている透明フィルムと、前記透明フィルムのヘアライン層上に形成されている金属蒸着層と、前記金属蒸着層上に形成された支持シートと、を含むインサートシート。
【請求項2】
前記透明フィルムは、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム又はポリメチルメタクリレートフィルムである、請求項1に記載のインサートシート。
【請求項3】
前記透明フィルムの厚さは5μm〜500μmである、請求項1に記載のインサートシート。
【請求項4】
前記ヘアライン層は、髪の毛模様、羽毛模様、糸雲模様、櫛の歯模様、波模様及び枝模様からなる群から選択された一つ以上の模様で形成されている、請求項1に記載のインサートシート。
【請求項5】
前記ヘアラインは、深さが0.1μm〜1.0μmで、平均幅が0μmを超えて、5μm以下である、請求項1に記載のインサートシート。
【請求項6】
前記金属蒸着層はスパッタリング金属蒸着層である、請求項1に記載のインサートシート。
【請求項7】
前記金属蒸着層は、ステンレス、アルミニウム、クロム、ニッケル、スズ及び銅からなる群から選択された一つ以上を含む、請求項1に記載のインサートシート。
【請求項8】
前記金属蒸着層は、厚さが50Å〜500Åである、請求項1に記載のインサートシート。
【請求項9】
前記支持シートは、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体シート、ポリ塩化ビニルシート又はエチレンビニルアセテート樹脂シートである、請求項1に記載のインサートシート。
【請求項10】
前記支持シートの厚さは100μm〜10,000μmである、請求項1に記載のインサートシート。
【請求項11】
前記支持シートは、接着層を媒介にして前記金属蒸着層に付着されている、請求項1に記載のインサートシート。
【請求項12】
前記接着層は、ポリエステル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ポリアミド系接着剤、エチレンビニルアセテート系接着剤又はアクリル系接着剤を含む、請求項11に記載のインサートシート。
【請求項13】
前記透明フィルムにおいて前記ヘアライン層が形成された面の反対面に形成される表面処理層をさらに含む、請求項1に記載のインサートシート。
【請求項14】
前記表面処理層の厚さは0.5μm〜30μmである、請求項13に記載のインサートシート。
【請求項15】
前記表面処理層は、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂及びフッ素系樹脂からなる群から選択された一つ以上を含む、請求項13に記載のインサートシート。
【請求項16】
透明フィルムの一面にヘアライン層を形成し、前記の形成されたヘアライン層の表面に金属蒸着層を形成し、前記の形成された金属蒸着層上に支持シートを形成することを含むインサートシートの製造方法。
【請求項17】
前記金属蒸着層をスパッタリング工法で形成する、請求項16に記載のインサートシートの製造方法。
【請求項18】
前記透明フィルム上に表面処理層を形成することをさらに行う、請求項16に記載のインサートシートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−502828(P2012−502828A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−528928(P2011−528928)
【出願日】平成21年9月23日(2009.9.23)
【国際出願番号】PCT/KR2009/005411
【国際公開番号】WO2010/036015
【国際公開日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(509286787)エルジー・ハウシス・リミテッド (49)
【氏名又は名称原語表記】LG HAUSYS,LTD.
【住所又は居所原語表記】20,Yoido−dong,youngdungpo−gu,Seoul150−721,Republic of Korea
【Fターム(参考)】