インサート成形方法、インサート部品及びインサート成形品
【課題】インサート部品の金型内セット作業が容易で、しかも、金型内にセットされた端子の保持・安定性が高いインサート成形方法等を提供する。
【解決手段】バスバー2と出力端子3がジョイント部4を介して一体に形成され、且つ、ジョイント部4が上型のコマからの押圧力を受けると押し曲げられて切断されるインサート部品5を、下型にセットし、下型と上型間を型締めし、この型締め過程で、上型がジョイント部4を押し曲げつつ切断し、型締めされた双方の下型及び上型内に溶融樹脂を充填することでインサート成形品を成形した。
【解決手段】バスバー2と出力端子3がジョイント部4を介して一体に形成され、且つ、ジョイント部4が上型のコマからの押圧力を受けると押し曲げられて切断されるインサート部品5を、下型にセットし、下型と上型間を型締めし、この型締め過程で、上型がジョイント部4を押し曲げつつ切断し、型締めされた双方の下型及び上型内に溶融樹脂を充填することでインサート成形品を成形した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インサート成形方法、これに用いるインサート部品、及び、インサート成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には電流センサが開示されている。電流センサは、測定電流を流すバスバーと、計測した電流値を出力等するための出力端子と、バスバーと複数の出力端子を電気的に非接触な位置でそれぞれ固定する樹脂ケースとを備えている。そして、特許文献1では成形後の樹脂ケースにバスバー及び複数の出力端子を組み付けているが、バスバーと複数の出力端子とをインサート部品としてインサート成形することにより樹脂ケースを作製することもできる。つまり、インサート成形によってバスバーと複数の出力端子を一体とする樹脂ケースを作製する。以下、従来例のインサート成形方法によって、バスバーと複数の出力端子を一体とする樹脂ケースを作製する場合を説明する。
【0003】
図12及び図13には、従来のインサート成形方法によって作成されたインサート成形品Bが示されている。図12及び図13において、インサート成形品Bは、樹脂ケース50と、これに一体形成されたバスバー53及び複数の出力端子54とから構成されている。
【0004】
樹脂ケース50は、基板収容室51aを有するケース本体51と、このケース本体51の下面より突設されたコネクタハウジング52とを備えている。
【0005】
バスバー53は、その中央箇所が樹脂ケース50に埋設され、これにより樹脂ケース50に固定されている。バスバー53の両端側は、樹脂ケース50より露出されており、一対の露出箇所を利用して一対の通電用端子が接続される。バスバー53の中央箇所の両側端には、切欠部53b(図16に示す)がそれぞれ形成されている。バスバー53の中央箇所には、端子貫通孔53c(図16に示す)が開口されている。
【0006】
複数本の出力端子54は、その中央箇所が樹脂ケース50に埋設され、これにより樹脂ケース50に固定されている。各出力端子54の上端側は樹脂ケース50の基板収容室51a内に立設され、出力端子54の下端側はコネクタハウジング52内に突出されている。
【0007】
次に、インサート成形に使用する金型装置について説明する。金型装置は、下型60と上型(図示せず)を有する。下型60は、図14に示すように、樹脂ケース50のケース本体51の下半分とコネクタハウジング52の全体とに対応する外形形状を有する下方キャビティ室61とこの両側に配置されたバスバー支持凹部62とを有する。下方キャビティ室61には、複数の端子支持部63が設けられている。
【0008】
上型(図示せず)は、樹脂ケース50のケース本体51の上半分に対応する外形形状を有する上方キャビティ室(図示せず)を有する。上方キャビティ室(図示せず)の上面には複数の端子逃げ孔(図示せず)が開口されている。
【0009】
次に、この金型装置を用いたインサート成形方法を説明する。先ず、図15に示すように、下型60の複数の端子支持部63に出力端子54をそれぞれセットする。次に、図16に示すように、下型60のバスバー支持凹部62にバスバー53をセットする。ここで、バスバー53の端子貫通孔53cに複数本の出力端子54が入り込むようにしてバスバー53をセットする。これにより、バスバー53と各出力端子54との間には樹脂成形後に樹脂層が介在されて絶縁が確保される。
【0010】
次に、下型60と上型(図示せず)間を型締めする。すると、複数の出力端子54の上方側が上型(図示せず)の端子逃げ孔(図示せず)に入り込む。下型60と上型(図示せず)間を型締めした状態で、下方キャビティ室61と上方キャビティ室(図示せず)に溶融樹脂を充填し、充填した溶融樹脂の固化後に下型60と上型(図示せず)間を型開きする。このようなインサート成形により、図17に示すように、インサート成形品B(バスバー53と複数の出力端子54を一体とする樹脂ケース50)が作製される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−150654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、前記従来例のインサート成形方法では、互いに電気的に接触しないように配置する必要があるバスバー53と各出力端子54をそれぞれ別個に下型60にセットしなければならないため、インサート部品のセット作業に時間がかかり、面倒である。
【0013】
又、各出力端子54は、小さな部品であるため、図18に示すように、下型60内での姿勢が不安定で傾斜し易い。出力端子54が型締めされる前に傾斜すると、インサート成形自体ができなかったり、仮にインサート成形されても不良品が作製されるため、歩留まりが悪くなる。
【0014】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、インサート部品の金型内セット作業が容易で、しかも、金型内にセットされたインサート部品の保持・安定性が高いインサート成形方法、これに用いるインサート部品、及び、インサート成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1の発明は、第1導体と第2導体がジョイント部を介して一体に形成され、且つ、前記ジョイント部が金型のコマからの押圧力を受けると押し曲げられて切断されるインサート部品を、一方の金型にセットし、一方の前記金型と他方の金型間を型締めし、この型締め過程で、他方の金型のコマが前記ジョイント部を押し曲げつつ切断し、型締めされた双方の前記金型内に溶融樹脂を充填することでインサート成形品を成形したことを特徴とするインサート成形方法である。
【0016】
請求項2の発明は、第1導体と第2導体がジョイント部を介して一体に形成され、且つ、前記ジョイント部が金型のコマからの押圧力を受けると押し曲げられて切断されるよう構成されたことを特徴とするインサート部品である。
【0017】
請求項3の発明は、第1導体と第2導体がジョイント部を介して一体に形成され、且つ、前記ジョイント部が金型のコマからの押圧力を受けると押し曲げられて切断されるインサート部品を用いてインサート成形されたことを特徴とするインサート成形品である。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によれば、第1導体と第2導体が一体となった部品をインサート部品として使用するため、インサート部品の金型内セット作業が容易である。一方の金型内にセットされた第2導体は、型締めされる直前まで第1導体と一体であるため、金型内での保持・安定性が高く、適正なインサート成形が行われる可能性が高く、歩留まりが向上する。
【0019】
また、インサート部品のジョイント部は、型締め過程で押し曲げられて切断されるため、第1導体と第2導体は電気的に接触しないように配置できる。又、第2導体には、その押し曲げられたジョイント切断片が一体となって付設され、ジョイント切断片が成形後に樹脂層内に食い込むため、成形後の第2導体の強度が向上する。
【0020】
請求項2の発明によれば、インサート成形品をインサート成形によって作製する際に、請求項1の発明と同様の効果が得られる。
【0021】
請求項3の発明によれば、インサート成形のインサート部品に使用することにより、請求項1の発明と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態を示し、インサート成形品の斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態を示し、インサート成形品の断面図である。
【図3】本発明の一実施形態を示し、インサート部品の折り曲げ・潰し加工前の斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態を示し、インサート部品の斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態を示し、インサート部品の出力端子及びジョイント部の要部斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態を示し、下型の斜視図である。
【図7】本発明の一実施形態を示し、下型にインサート部品をセットした状態を示す斜視図である。
【図8】本発明の一実施形態を示し、上型を閉じる手前の状態を示す破断斜視図である。
【図9】本発明の一実施形態を示し、上型を下型に閉じた状態を示す破断斜視図であ
【図10】本発明の一実施形態を示し、上型のコマがジョイント部を押し曲げつつ切断した状態を示す要部断面図である。
【図11】本発明の一実施形態を示し、充填樹脂の固化後に開けた下型の斜視図である。
【図12】従来例を示し、インサート成形品の斜視図である。
【図13】従来例を示し、インサート成形品の断面図である。
【図14】従来例を示し、下型の斜視図である。
【図15】従来例を示し、下型に出力端子をセットした状態を示す斜視図である。
【図16】従来例を示し、下型にバスバーをセットした状態を示す斜視図である。
【図17】従来例を示し、充填樹脂の固化後に開けた下型の斜視図である。
【図18】従来例を示し、下型に支持された出力端子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
図1〜図11は本発明の一実施形態を示し、図1はインサート成形品Aの斜視図、図2はインサート成形品Aの断面図、図3はインサート部品5の折り曲げ・潰し加工前の斜視図、図4はインサート部品5の斜視図、図5はインサート部品5の出力端子3及びジョイント部4の要部斜視図、図6は下型20の斜視図、図7〜図11はそれぞれインサート成形過程を示す斜視図である。
【0025】
図1及び図2において、インサート成形品Aは、電流センサ用の部品であり、樹脂ケース1と、樹脂ケース1に一体形成された第1導体であるバスバー2と複数の第2導体である出力端子3とから構成されている。
【0026】
樹脂ケース1は、ケース本体11と、このケース本体11の下面より突設されたコネクタハウジング12とを備えている。ケース本体11には、上面側が開口された基板収容室11aが設けられている。この基板収容室11aには、電流計測素子(例えばホール素子)を備えた配線板(図示せず)が収容される。電流計測素子(図示せず)は、バスバー2に通電される電流値を計測する。ケース本体11には、シールド部材収容溝11bが形成されている。シールド部材収容溝11bには、外部磁界を遮蔽するシールド部材(図示せず)が収容される。
【0027】
バスバー2は、ストレート状の導電金属製プレートである。バスバー2は、その中央箇所が樹脂ケース1に埋設されている。これにより、バスバー2は、樹脂ケース1に固定されている。バスバー2の両端側は、樹脂ケース1のケース本体11より露出されている。バスバー2の両端側の露出箇所には、取付孔2aが形成されている。この両方の取付孔2aを用いて、バスバー2に電流を通電するための一対の電流供給端子(図示せず)に接続される。バスバー2の中央箇所の両側端には、切欠部2b(図7に示す)がそれぞれ形成されている。バスバー2の中央箇所には、出力端子3及びジョイント部4を形成するための使用したスペース(図示せず)が開口されている。
【0028】
複数本の出力端子3は、それぞれ中間部分でクランク状に折曲された導電金属製ロッドである。各出力端子3は、その中央箇所が樹脂ケース1に埋設されている。これにより、各出力端子3は、樹脂ケース1に固定されている。各出力端子3の上端側は樹脂ケース1の基板収容室11a内に立設され、出力端子3の下端側はコネクタハウジング12内に突出されている。
【0029】
次に、インサート成形品A(バスバー2と出力端子3を一体形成した樹脂ケース1)をインサート成形する際に用いるインサート部品5について説明する。インサート部品5は、図2に示すインサート中間部品5Aを経て作製される。インサート中間部品5Aは、フラットなマザープレート(図示せず)を図2に示すような所定形状に打ち抜くことにより作製される。インサート中間部品5Aは、バスバー2と複数の出力端子3とこれらを連結するジョイント部4からなるフラットなプレートである。このインサート中間部品5Aに折り曲げ加工と潰し加工を施すことによって図3に示すインサート部品5が作製される。図4に詳しく示すように、折り曲げ加工では、各出力端子3の2箇所を上下逆方向に折り曲げる。潰し加工では、バスバー2から複数の出力端子3を離し、且つ、各出力端子3同士も互いに離することができるジョイント部4のポイントを潰して溝部4a(肉薄箇所)を形成する。
【0030】
次に、インサート成形に使用する金型装置について説明する。金型装置は、一方の金型である下型20と他方の金型である上型30を有する。下型20は、図6に示すように、樹脂ケース1のケース本体11の下半分とコネクタハウジング12の全体とに対応する外形形状を有する下方キャビティ室21とこの両側に配置されたバスバー支持凹部22とを有する。下方キャビティ室21には、複数の端子支持部23が設けられている。
【0031】
上型30(図8及び図9に示す)は、樹脂ケース1のケース本体11の上半分に対応する外形形状を有する上方キャビティ室31を有する。上方キャビティ室31の上面には複数の端子逃げ孔(図示せず)が開口されている。又、上型30には、複数の刃状のコマ32が下方に向かって突設されている。複数のコマ32は、インサート部品5のジョイント部4の溝部4aに対応する位置に設けられている。
【0032】
次に、インサート成形品A(バスバー2と出力端子3を一体形成した樹脂ケース1)のインサート成形手順を説明する。先ず、図7に示すように、下型20にインサート部品5をセットする。インサート部品5は、そのバスバー2をバスバー支持凹部22に配置し、その複数の出力端子3の下端側を複数の端子支持部23に支持する。
【0033】
次に、図8及び図9に示すように、下型20と上型30間を型締めする。すると、複数の出力端子3の上方側が上型30の端子逃げ孔(図示せず)に入り込み、バスバー2の上面が上型30に押さえられる。又、図10に示すように、型締め過程で、上型30の各コマ32がインサート部品5の溝部4aに突き当たり、ジョイント部4が押し曲げられ、最終的に溝部4aの箇所で切断される。これにより、バスバー2と複数の出力端子3の間、及び、各出力端子3の間が互いに接触することなく離間位置で配置される。各出力端子3には、押し曲げられたジョイント切断片4bが一体となって付設されることになる。
【0034】
下型20と上型30間を型締めした状態で、下方キャビティ室21と上方キャビティ室31に溶融樹脂を充填し、充填した溶融樹脂の固化後に下型20と上型30間を型開きする。このインサート成形により、図11に示すように、インサート成形品A(バスバー2と複数の出力端子3を一体とする樹脂ケース1)が作製される。
【0035】
以上、説明したように、バスバー2と複数の出力端子3がジョイント部4を介して一体に形成され、且つ、ジョイント部4が金型30のコマ32からの押圧力を受けると押し曲げられて切断されるインサート部品5を、下型20にセットし、下型20と上型30間を型締めし、この型締め過程で、上型30のコマ32がジョイント部4を押し曲げつつ切断し、型締めされた双方金型20,30内に溶融樹脂を充填することで樹脂ケース1を成形した。従って、バスバー2と出力端子3が一体となった部品をインサート部品5として使用するため、インサート部品5の金型内セット作業が容易である。一方の金型20,30内にセットされた各出力端子3は、型締めされる直前までバスバー2と一体であるため、金型20,30内での保持・安定性が高く、適正なインサート成形が行われる可能性が高く、歩留まりが向上する。
【0036】
また、インサート部品Aのジョイント部4は、型締め過程で押し曲げられて切断されるため、バスバー2と各出力端子3はそれぞれ電気的に接触しないように配置できる。又、各出力端子3には、その折り曲げられたジョイント切断片4bが一体となって付設され、ジョイント切断片4bが成形後に樹脂層内に食い込むため、成形後の各出力端子3の強度が向上する。特に、小さな部品である出力端子3は、単に出力端子3の一部を樹脂層に埋設しても強固に固定されない可能性があるが、本発明によればこのような問題点を解消できる。
【0037】
インサート部品5は、バスバー2と、出力端子3と、バスバー2と出力端子3との間を連結し、且つ、上型30のコマ32の押圧力を受けると押し曲げられて切断されるジョイント部4とが一体に形成された部品である。従って、このインサート部品5を用いてインサート成形することにより、前記と同様の効果が得られる。
【0038】
インサート成形品Aは、バスバー2と出力端子3がジョイント部4を介して一体に形成され、且つ、ジョイント部4が上型30のコマ32からの押圧力を受けると押し曲げられて切断されるインサート部品5を用いてインサート成形された。従って、インサート成形のインサート部品5に使用することにより、前記と同様の効果が得られる。
【0039】
尚、前記実施形態によれば、インサート成形品A及びインサート部品5は、電流センサの部品である場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。又、第1導体がバスバー2であり、第2導体が複数の出力端子3である場合について説明したが、本発明は成形後に互いに離間させる必要がある複数種類の導体をインサート部品とするものに適用できる。
【符号の説明】
【0040】
A インサート成形品
1 樹脂ケース
2 バスバー(第1導体)
3 出力端子(第2導体)
4 ジョイント部
5 インサート部品
20 下型(一方の金型)
30 上型(他方の金型)
32 コマ
【技術分野】
【0001】
本発明は、インサート成形方法、これに用いるインサート部品、及び、インサート成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には電流センサが開示されている。電流センサは、測定電流を流すバスバーと、計測した電流値を出力等するための出力端子と、バスバーと複数の出力端子を電気的に非接触な位置でそれぞれ固定する樹脂ケースとを備えている。そして、特許文献1では成形後の樹脂ケースにバスバー及び複数の出力端子を組み付けているが、バスバーと複数の出力端子とをインサート部品としてインサート成形することにより樹脂ケースを作製することもできる。つまり、インサート成形によってバスバーと複数の出力端子を一体とする樹脂ケースを作製する。以下、従来例のインサート成形方法によって、バスバーと複数の出力端子を一体とする樹脂ケースを作製する場合を説明する。
【0003】
図12及び図13には、従来のインサート成形方法によって作成されたインサート成形品Bが示されている。図12及び図13において、インサート成形品Bは、樹脂ケース50と、これに一体形成されたバスバー53及び複数の出力端子54とから構成されている。
【0004】
樹脂ケース50は、基板収容室51aを有するケース本体51と、このケース本体51の下面より突設されたコネクタハウジング52とを備えている。
【0005】
バスバー53は、その中央箇所が樹脂ケース50に埋設され、これにより樹脂ケース50に固定されている。バスバー53の両端側は、樹脂ケース50より露出されており、一対の露出箇所を利用して一対の通電用端子が接続される。バスバー53の中央箇所の両側端には、切欠部53b(図16に示す)がそれぞれ形成されている。バスバー53の中央箇所には、端子貫通孔53c(図16に示す)が開口されている。
【0006】
複数本の出力端子54は、その中央箇所が樹脂ケース50に埋設され、これにより樹脂ケース50に固定されている。各出力端子54の上端側は樹脂ケース50の基板収容室51a内に立設され、出力端子54の下端側はコネクタハウジング52内に突出されている。
【0007】
次に、インサート成形に使用する金型装置について説明する。金型装置は、下型60と上型(図示せず)を有する。下型60は、図14に示すように、樹脂ケース50のケース本体51の下半分とコネクタハウジング52の全体とに対応する外形形状を有する下方キャビティ室61とこの両側に配置されたバスバー支持凹部62とを有する。下方キャビティ室61には、複数の端子支持部63が設けられている。
【0008】
上型(図示せず)は、樹脂ケース50のケース本体51の上半分に対応する外形形状を有する上方キャビティ室(図示せず)を有する。上方キャビティ室(図示せず)の上面には複数の端子逃げ孔(図示せず)が開口されている。
【0009】
次に、この金型装置を用いたインサート成形方法を説明する。先ず、図15に示すように、下型60の複数の端子支持部63に出力端子54をそれぞれセットする。次に、図16に示すように、下型60のバスバー支持凹部62にバスバー53をセットする。ここで、バスバー53の端子貫通孔53cに複数本の出力端子54が入り込むようにしてバスバー53をセットする。これにより、バスバー53と各出力端子54との間には樹脂成形後に樹脂層が介在されて絶縁が確保される。
【0010】
次に、下型60と上型(図示せず)間を型締めする。すると、複数の出力端子54の上方側が上型(図示せず)の端子逃げ孔(図示せず)に入り込む。下型60と上型(図示せず)間を型締めした状態で、下方キャビティ室61と上方キャビティ室(図示せず)に溶融樹脂を充填し、充填した溶融樹脂の固化後に下型60と上型(図示せず)間を型開きする。このようなインサート成形により、図17に示すように、インサート成形品B(バスバー53と複数の出力端子54を一体とする樹脂ケース50)が作製される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−150654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、前記従来例のインサート成形方法では、互いに電気的に接触しないように配置する必要があるバスバー53と各出力端子54をそれぞれ別個に下型60にセットしなければならないため、インサート部品のセット作業に時間がかかり、面倒である。
【0013】
又、各出力端子54は、小さな部品であるため、図18に示すように、下型60内での姿勢が不安定で傾斜し易い。出力端子54が型締めされる前に傾斜すると、インサート成形自体ができなかったり、仮にインサート成形されても不良品が作製されるため、歩留まりが悪くなる。
【0014】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、インサート部品の金型内セット作業が容易で、しかも、金型内にセットされたインサート部品の保持・安定性が高いインサート成形方法、これに用いるインサート部品、及び、インサート成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1の発明は、第1導体と第2導体がジョイント部を介して一体に形成され、且つ、前記ジョイント部が金型のコマからの押圧力を受けると押し曲げられて切断されるインサート部品を、一方の金型にセットし、一方の前記金型と他方の金型間を型締めし、この型締め過程で、他方の金型のコマが前記ジョイント部を押し曲げつつ切断し、型締めされた双方の前記金型内に溶融樹脂を充填することでインサート成形品を成形したことを特徴とするインサート成形方法である。
【0016】
請求項2の発明は、第1導体と第2導体がジョイント部を介して一体に形成され、且つ、前記ジョイント部が金型のコマからの押圧力を受けると押し曲げられて切断されるよう構成されたことを特徴とするインサート部品である。
【0017】
請求項3の発明は、第1導体と第2導体がジョイント部を介して一体に形成され、且つ、前記ジョイント部が金型のコマからの押圧力を受けると押し曲げられて切断されるインサート部品を用いてインサート成形されたことを特徴とするインサート成形品である。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によれば、第1導体と第2導体が一体となった部品をインサート部品として使用するため、インサート部品の金型内セット作業が容易である。一方の金型内にセットされた第2導体は、型締めされる直前まで第1導体と一体であるため、金型内での保持・安定性が高く、適正なインサート成形が行われる可能性が高く、歩留まりが向上する。
【0019】
また、インサート部品のジョイント部は、型締め過程で押し曲げられて切断されるため、第1導体と第2導体は電気的に接触しないように配置できる。又、第2導体には、その押し曲げられたジョイント切断片が一体となって付設され、ジョイント切断片が成形後に樹脂層内に食い込むため、成形後の第2導体の強度が向上する。
【0020】
請求項2の発明によれば、インサート成形品をインサート成形によって作製する際に、請求項1の発明と同様の効果が得られる。
【0021】
請求項3の発明によれば、インサート成形のインサート部品に使用することにより、請求項1の発明と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態を示し、インサート成形品の斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態を示し、インサート成形品の断面図である。
【図3】本発明の一実施形態を示し、インサート部品の折り曲げ・潰し加工前の斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態を示し、インサート部品の斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態を示し、インサート部品の出力端子及びジョイント部の要部斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態を示し、下型の斜視図である。
【図7】本発明の一実施形態を示し、下型にインサート部品をセットした状態を示す斜視図である。
【図8】本発明の一実施形態を示し、上型を閉じる手前の状態を示す破断斜視図である。
【図9】本発明の一実施形態を示し、上型を下型に閉じた状態を示す破断斜視図であ
【図10】本発明の一実施形態を示し、上型のコマがジョイント部を押し曲げつつ切断した状態を示す要部断面図である。
【図11】本発明の一実施形態を示し、充填樹脂の固化後に開けた下型の斜視図である。
【図12】従来例を示し、インサート成形品の斜視図である。
【図13】従来例を示し、インサート成形品の断面図である。
【図14】従来例を示し、下型の斜視図である。
【図15】従来例を示し、下型に出力端子をセットした状態を示す斜視図である。
【図16】従来例を示し、下型にバスバーをセットした状態を示す斜視図である。
【図17】従来例を示し、充填樹脂の固化後に開けた下型の斜視図である。
【図18】従来例を示し、下型に支持された出力端子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
図1〜図11は本発明の一実施形態を示し、図1はインサート成形品Aの斜視図、図2はインサート成形品Aの断面図、図3はインサート部品5の折り曲げ・潰し加工前の斜視図、図4はインサート部品5の斜視図、図5はインサート部品5の出力端子3及びジョイント部4の要部斜視図、図6は下型20の斜視図、図7〜図11はそれぞれインサート成形過程を示す斜視図である。
【0025】
図1及び図2において、インサート成形品Aは、電流センサ用の部品であり、樹脂ケース1と、樹脂ケース1に一体形成された第1導体であるバスバー2と複数の第2導体である出力端子3とから構成されている。
【0026】
樹脂ケース1は、ケース本体11と、このケース本体11の下面より突設されたコネクタハウジング12とを備えている。ケース本体11には、上面側が開口された基板収容室11aが設けられている。この基板収容室11aには、電流計測素子(例えばホール素子)を備えた配線板(図示せず)が収容される。電流計測素子(図示せず)は、バスバー2に通電される電流値を計測する。ケース本体11には、シールド部材収容溝11bが形成されている。シールド部材収容溝11bには、外部磁界を遮蔽するシールド部材(図示せず)が収容される。
【0027】
バスバー2は、ストレート状の導電金属製プレートである。バスバー2は、その中央箇所が樹脂ケース1に埋設されている。これにより、バスバー2は、樹脂ケース1に固定されている。バスバー2の両端側は、樹脂ケース1のケース本体11より露出されている。バスバー2の両端側の露出箇所には、取付孔2aが形成されている。この両方の取付孔2aを用いて、バスバー2に電流を通電するための一対の電流供給端子(図示せず)に接続される。バスバー2の中央箇所の両側端には、切欠部2b(図7に示す)がそれぞれ形成されている。バスバー2の中央箇所には、出力端子3及びジョイント部4を形成するための使用したスペース(図示せず)が開口されている。
【0028】
複数本の出力端子3は、それぞれ中間部分でクランク状に折曲された導電金属製ロッドである。各出力端子3は、その中央箇所が樹脂ケース1に埋設されている。これにより、各出力端子3は、樹脂ケース1に固定されている。各出力端子3の上端側は樹脂ケース1の基板収容室11a内に立設され、出力端子3の下端側はコネクタハウジング12内に突出されている。
【0029】
次に、インサート成形品A(バスバー2と出力端子3を一体形成した樹脂ケース1)をインサート成形する際に用いるインサート部品5について説明する。インサート部品5は、図2に示すインサート中間部品5Aを経て作製される。インサート中間部品5Aは、フラットなマザープレート(図示せず)を図2に示すような所定形状に打ち抜くことにより作製される。インサート中間部品5Aは、バスバー2と複数の出力端子3とこれらを連結するジョイント部4からなるフラットなプレートである。このインサート中間部品5Aに折り曲げ加工と潰し加工を施すことによって図3に示すインサート部品5が作製される。図4に詳しく示すように、折り曲げ加工では、各出力端子3の2箇所を上下逆方向に折り曲げる。潰し加工では、バスバー2から複数の出力端子3を離し、且つ、各出力端子3同士も互いに離することができるジョイント部4のポイントを潰して溝部4a(肉薄箇所)を形成する。
【0030】
次に、インサート成形に使用する金型装置について説明する。金型装置は、一方の金型である下型20と他方の金型である上型30を有する。下型20は、図6に示すように、樹脂ケース1のケース本体11の下半分とコネクタハウジング12の全体とに対応する外形形状を有する下方キャビティ室21とこの両側に配置されたバスバー支持凹部22とを有する。下方キャビティ室21には、複数の端子支持部23が設けられている。
【0031】
上型30(図8及び図9に示す)は、樹脂ケース1のケース本体11の上半分に対応する外形形状を有する上方キャビティ室31を有する。上方キャビティ室31の上面には複数の端子逃げ孔(図示せず)が開口されている。又、上型30には、複数の刃状のコマ32が下方に向かって突設されている。複数のコマ32は、インサート部品5のジョイント部4の溝部4aに対応する位置に設けられている。
【0032】
次に、インサート成形品A(バスバー2と出力端子3を一体形成した樹脂ケース1)のインサート成形手順を説明する。先ず、図7に示すように、下型20にインサート部品5をセットする。インサート部品5は、そのバスバー2をバスバー支持凹部22に配置し、その複数の出力端子3の下端側を複数の端子支持部23に支持する。
【0033】
次に、図8及び図9に示すように、下型20と上型30間を型締めする。すると、複数の出力端子3の上方側が上型30の端子逃げ孔(図示せず)に入り込み、バスバー2の上面が上型30に押さえられる。又、図10に示すように、型締め過程で、上型30の各コマ32がインサート部品5の溝部4aに突き当たり、ジョイント部4が押し曲げられ、最終的に溝部4aの箇所で切断される。これにより、バスバー2と複数の出力端子3の間、及び、各出力端子3の間が互いに接触することなく離間位置で配置される。各出力端子3には、押し曲げられたジョイント切断片4bが一体となって付設されることになる。
【0034】
下型20と上型30間を型締めした状態で、下方キャビティ室21と上方キャビティ室31に溶融樹脂を充填し、充填した溶融樹脂の固化後に下型20と上型30間を型開きする。このインサート成形により、図11に示すように、インサート成形品A(バスバー2と複数の出力端子3を一体とする樹脂ケース1)が作製される。
【0035】
以上、説明したように、バスバー2と複数の出力端子3がジョイント部4を介して一体に形成され、且つ、ジョイント部4が金型30のコマ32からの押圧力を受けると押し曲げられて切断されるインサート部品5を、下型20にセットし、下型20と上型30間を型締めし、この型締め過程で、上型30のコマ32がジョイント部4を押し曲げつつ切断し、型締めされた双方金型20,30内に溶融樹脂を充填することで樹脂ケース1を成形した。従って、バスバー2と出力端子3が一体となった部品をインサート部品5として使用するため、インサート部品5の金型内セット作業が容易である。一方の金型20,30内にセットされた各出力端子3は、型締めされる直前までバスバー2と一体であるため、金型20,30内での保持・安定性が高く、適正なインサート成形が行われる可能性が高く、歩留まりが向上する。
【0036】
また、インサート部品Aのジョイント部4は、型締め過程で押し曲げられて切断されるため、バスバー2と各出力端子3はそれぞれ電気的に接触しないように配置できる。又、各出力端子3には、その折り曲げられたジョイント切断片4bが一体となって付設され、ジョイント切断片4bが成形後に樹脂層内に食い込むため、成形後の各出力端子3の強度が向上する。特に、小さな部品である出力端子3は、単に出力端子3の一部を樹脂層に埋設しても強固に固定されない可能性があるが、本発明によればこのような問題点を解消できる。
【0037】
インサート部品5は、バスバー2と、出力端子3と、バスバー2と出力端子3との間を連結し、且つ、上型30のコマ32の押圧力を受けると押し曲げられて切断されるジョイント部4とが一体に形成された部品である。従って、このインサート部品5を用いてインサート成形することにより、前記と同様の効果が得られる。
【0038】
インサート成形品Aは、バスバー2と出力端子3がジョイント部4を介して一体に形成され、且つ、ジョイント部4が上型30のコマ32からの押圧力を受けると押し曲げられて切断されるインサート部品5を用いてインサート成形された。従って、インサート成形のインサート部品5に使用することにより、前記と同様の効果が得られる。
【0039】
尚、前記実施形態によれば、インサート成形品A及びインサート部品5は、電流センサの部品である場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。又、第1導体がバスバー2であり、第2導体が複数の出力端子3である場合について説明したが、本発明は成形後に互いに離間させる必要がある複数種類の導体をインサート部品とするものに適用できる。
【符号の説明】
【0040】
A インサート成形品
1 樹脂ケース
2 バスバー(第1導体)
3 出力端子(第2導体)
4 ジョイント部
5 インサート部品
20 下型(一方の金型)
30 上型(他方の金型)
32 コマ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導体と第2導体がジョイント部を介して一体に形成され、且つ、前記ジョイント部が金型のコマからの押圧力を受けると押し曲げられて切断されるインサート部品を、一方の金型にセットし、一方の前記金型と他方の金型間を型締めし、この型締め過程で、他方の金型のコマが前記ジョイント部を押し曲げつつ切断し、型締めされた双方の前記金型内に溶融樹脂を充填することでインサート成形品を成形したことを特徴とするインサート成形方法。
【請求項2】
第1導体と第2導体がジョイント部を介して一体に形成され、且つ、前記ジョイント部が金型のコマからの押圧力を受けると押し曲げられて切断されるよう構成されたことを特徴とするインサート部品。
【請求項3】
第1導体と第2導体がジョイント部を介して一体に形成され、且つ、前記ジョイント部が金型のコマからの押圧力を受けると押し曲げられて切断されるインサート部品を用いてインサート成形されたことを特徴とするインサート成形品。
【請求項1】
第1導体と第2導体がジョイント部を介して一体に形成され、且つ、前記ジョイント部が金型のコマからの押圧力を受けると押し曲げられて切断されるインサート部品を、一方の金型にセットし、一方の前記金型と他方の金型間を型締めし、この型締め過程で、他方の金型のコマが前記ジョイント部を押し曲げつつ切断し、型締めされた双方の前記金型内に溶融樹脂を充填することでインサート成形品を成形したことを特徴とするインサート成形方法。
【請求項2】
第1導体と第2導体がジョイント部を介して一体に形成され、且つ、前記ジョイント部が金型のコマからの押圧力を受けると押し曲げられて切断されるよう構成されたことを特徴とするインサート部品。
【請求項3】
第1導体と第2導体がジョイント部を介して一体に形成され、且つ、前記ジョイント部が金型のコマからの押圧力を受けると押し曲げられて切断されるインサート部品を用いてインサート成形されたことを特徴とするインサート成形品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−131477(P2011−131477A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292414(P2009−292414)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】
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