説明

インサート部品溶着成形方法

【課題】 インサート部品の厚み方向周縁部に未溶着部分が発生することなく、ブロー成形体にインサート部品が確実に溶着するインサート部品溶着成形方法を提供する。
【解決手段】 金型7内にセットしたインサート部品3にブロー成形体を溶着するインサート部品溶着成形方法であって、金型7の成形面7aをインサート部品3の被溶着部の表面6dより高くして、インサート部品3の厚み方向周縁部6bの全面とブロー成形体のパリソン11とを隙間なく溶着状態にする。パリソン11とインサート部品3の厚み方向周縁部6bとの溶着部近傍に、金型7の成形面7aの一部となる高熱伝導材製の予熱板8を配設すると共に、この予熱板8と金型7との間に断熱板9を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車の燃料タンクなどのブロー成形体に各種インサート部品を溶着するインサート部品溶着成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のインサート部品溶着成形方法としては、インサート部品の溶着部位に鍔状に設けた溶着座の周縁部を傾斜角度で面取りすることにより、その溶着座をブロー成形体(燃料タンク)の成形時に展開中のパリソンに密着させ溶着する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特願2003−236920号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のインサート部品溶着成形方法においては、燃料タンクのブロー成形時にインサート部品を金型へセットし、金型閉め時にパリソンをインサート部品の溶着座に密着させ溶着させている。
しかし、図7に示すように、インサート部品100の厚み方向周縁部に立壁101があり、パリソン102と溶着しない箇所103が存在する場合がある。また、インサート部品の厚み方向周縁部の溶着を向上させるため、インサート部品の予熱温度や予熱板温度を夫々高めに温度設定するとインサート部品が溶けて成型不良になってしまう。
【0005】
本発明は、従来の技術が有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、インサート部品の厚み方向周縁部に未溶着部分が発生することなく、ブロー成形体にインサート部品が確実に溶着するインサート部品溶着成形方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく請求項1に係る発明は、金型内にセットしたインサート部品にブロー成形体を溶着するインサート部品溶着成形方法であって、前記金型の成形面を前記インサート部品の被溶着部の表面より高くして、前記インサート部品の厚み方向周縁部の全面と前記ブロー成形体のパリソンとを隙間なく溶着状態にするものである。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1記載のインサート部品溶着成形方法において、前記パリソンが前記インサート部品の厚み方向周縁部に対してオーバハング(被り)状態で溶着するものである。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2記載のインサート部品溶着成形方法において、前記パリソンと前記インサート部品の厚み方向周縁部との溶着部近傍に、前記金型の成形面の一部となる高熱伝導材製の予熱板を配設すると共に、この予熱板と前記金型との間に断熱板を設けたものである。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項3記載のインサート部品溶着成形方法において、前記予熱板には傾斜面による段差が形成され、この傾斜面による段差により前記パリソンが前記インサート部品の厚み方向周縁部に対してオーバハング状態になるものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、インサート部品の厚み方向周縁部にブロー成形体との未溶着部分が発生することなく、ブロー成形体にインサート部品の厚み方向周縁部を確実に溶着することができる。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、パリソンがインサート部品の厚み方向周縁部に対してオーバハング状態で溶着するため、ブロー成形体がインサート部品の周縁部を包み込むようになり、ブロー成形体にインサート部品を確実に溶着することができる。
【0012】
請求項3に係る発明によれば、熱伝導の優れた予熱板と温度低下を抑える断熱板により、インサート部品のブロー成形体への溶着を確実なものとすることができる。
【0013】
請求項4に係る発明によれば、予熱板の傾斜面による段差により、パリソンがインサート部品の厚み方向周縁部に対してオーバハング状態になるため、ブロー成形体がインサート部品の周縁部を包み込むようになり、ブロー成形体にインサート部品を確実に溶着することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。ここで、図1は本発明に係るインサート部品溶着成形方法を適用した自動二輪車用燃料タンクの斜視図、図2は給油口本体の側面図、図3は本発明に係るインサート部品溶着成形方法の第1実施の形態を実施する金型構造の概要断面図、図4は第1実施の形態の作用説明図、図5は本発明に係るインサート部品溶着成形方法の第2実施の形態を実施する金型構造の概要断面図、図6は第2実施の形態の作用説明図である。
【0015】
本発明に係るインサート部品溶着成形方法を適用した自動二輪車用燃料タンク1は、図1に示すように、タンク本体2の頂にインサート部品である給油口本体3を溶着している。給油口本体3には、キャップ4が着脱自在に螺合する。5はタンク本体2を車体フレームに取り付けるためのブラケットで、給油口本体3と同様にタンク本体2のブロー成形時にタンク本体2となるパリソンに溶着される。
【0016】
給油口本体3は、図2に示すように、略円筒形状の樹脂製品で、基端部に鍔部6が形成され、外周面にキャップ4と螺合するねじ部3aが形成されている。また、鍔部6の裏面6aには、その厚み方向周縁部6bに近づくに従って薄くなるようにテーパ部6cが形成されている。
【0017】
本発明に係るインサート部品溶着成形方法の第1実施の形態は、図3に示すように、金型7の成形面7aの一部として配設した予熱板8に給油口本体3をセットする。予熱板8は鍔部6の表面6dと密接するように配設されている。予熱板8には角度θの傾斜面8aによる高さHの段差10が形成され、傾斜面8aは鍔部6の厚み方向周縁部6bから立ち上がっている(例えば、角度θ=45°、段差の高さH=1mm)。また、金型7と予熱板8の間には温度低下を抑えるための断熱板9が配設されている。
【0018】
次いで、図4に示すように、金型7内のキャビティに熱可塑性樹脂の予備成形体であるパリソン11を押し込み、パリソン11内に所定圧のエア12を吹き込む(ブロー成形)。すると、パリソン11が膨らみ、金型7の成形面7a、予熱板8の傾斜面8aや鍔部6の裏面6aなどに押し付けられる。そして、パリソン11が鍔部6の厚み方向周縁部6bからテーパ部6c、そして裏面6aにかけて、タンク本体2となるパリソン11と鍔部6が完全な溶着状態になる。
【0019】
このように、パリソン11が鍔部6の厚み方向周縁部6bと未溶着部を形成することなく完全な溶着状態になるので、溶着強度(引っ張り強度)の向上、衝撃強度(低温落下衝撃)の向上などを図ることができる。
【0020】
本発明に係るインサート部品溶着成形方法の第2実施の形態は、図5に示すように、金型7の成形面7aの一部として配設した予熱板8に給油口本体3をセットする。予熱板8は鍔部6の表面6dと密接するように配設されている。予熱板8には角度θの傾斜面8aによる高さHの段差10が形成され、傾斜面8aは鍔部6の厚み方向周縁部6bから距離Dだけ給油口本体3の中心軸側から立ち上がっている(例えば、角度θ=45°、段差の高さH=1mm、距離D=0.5mm)。また、金型7と予熱板8の間には温度低下を抑えるための断熱板9が配設されている。
【0021】
次いで、図6に示すように、金型7内のキャビティに熱可塑性樹脂の予備成形体であるパリソン11を押し込み、パリソン11内に所定圧のエア12を吹き込む(ブロー成形)。すると、パリソン11が膨らみ、金型7の成形面7a、予熱板8の傾斜面8aや鍔部6の裏面6aなどに押し付けられる。そして、パリソン11が鍔部6の厚み方向周縁部6bに対しオーバハング状態になって被り部11aが形成され、鍔部6の厚み方向周縁部6b近傍の表面6d、厚み方向周縁部6bからテーパ部6c、そして裏面6aにかけて、タンク本体2となるパリソン11と鍔部6が完全な溶着状態になる。
【0022】
このように、パリソン11が鍔部6の厚み方向周縁部6bに対しオーバハング状態になって被り部11aが形成されると共に、鍔部6の厚み方向周縁部6bとパリソン11とが未溶着部を形成することなく完全な溶着状態になるので、溶着強度(引っ張り強度)の向上、衝撃強度(低温落下衝撃)の向上などを図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明によれば、インサート部品の厚み方向周縁部にブロー成形体との未溶着部分を生じさせることなく、ブロー成形体にインサート部品を確実に溶着させることができるインサート部品溶着成形方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係るインサート部品溶着成形方法を適用した自動二輪車用燃料タンクの斜視図
【図2】給油口本体の側面図
【図3】本発明に係るインサート部品溶着成形方法の第1実施の形態を実施する金型構造の概要断面図
【図4】第1実施の形態の作用説明図
【図5】本発明に係るインサート部品溶着成形方法の第2実施の形態を実施する金型構造の概要断面図
【図6】第2実施の形態の作用説明図
【図7】従来の技術における溶着部の断面図
【符号の説明】
【0025】
1…自動二輪車用燃料タンク、2…タンク本体(ブロー成形体)、3…給油口本体(インサート部品)、3a…ねじ部、4…キャップ、6…鍔部、6a…裏面、6b…厚み方向周縁部、6c…テーパ部、6d…表面、7…金型、7a…成形面、8…予熱板、8a…傾斜面、9…断熱板、10…段差、11…パリソン、11a…被り部、12…エア。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型内にセットしたインサート部品にブロー成形体を溶着するインサート部品溶着成形方法であって、前記金型の成形面を前記インサート部品の被溶着部の表面より高くして、前記インサート部品の厚み方向周縁部の全面と前記ブロー成形体のパリソンとを隙間なく溶着状態にすることを特徴とするインサート部品溶着成形方法。
【請求項2】
請求項1記載のインサート部品溶着成形方法において、前記パリソンが前記インサート部品の厚み方向周縁部に対してオーバハング状態で溶着することを特徴とするインサート部品溶着成形方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のインサート部品溶着成形方法において、前記パリソンと前記インサート部品の厚み方向周縁部との溶着部近傍に、前記金型の成形面の一部となる高熱伝導材製の予熱板を配設すると共に、この予熱板と前記金型との間に断熱板を設けたことを特徴とするインサート部品溶着成形方法。
【請求項4】
請求項3記載のインサート部品溶着成形方法において、前記予熱板には傾斜面による段差が形成され、この傾斜面による段差により前記パリソンが前記インサート部品の厚み方向周縁部に対してオーバハング状態になることを特徴とするインサート部品溶着成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−274429(P2009−274429A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−176964(P2008−176964)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】