説明

インシュレーター

【課題】複雑な形状への加工が容易なインシュレーターを提供する。
【解決手段】2枚の金属メッシュの間に、厚さ0.1mmの薄板材を挟み込んだものによりインシュレーターを形成する。こうしたインシュレーターでは、形状凍結に必要な剛性、強度が金属メッシュにより確保されるため、間に挟み込まれる薄板材は非常に薄くすることができる。そして金属メッシュは、縮小拡大変形が容易にでき、プレス加工等による複雑な形状への加工を容易に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮熱や遮音のために設けられるインシュレーターに関する。
【背景技術】
【0002】
車載等のエンジンには、その排気系の排気マニホールドや排気管等からの放熱による周辺部品の熱害を防止するため、それらの排気系部品を遮熱板であるヒートインシュレーターで覆うようにしている。またヒートインシュレーターは、排気系部品のNV(Noise, Vibration)対策のためにも、設けられることがある。
【0003】
従来、こうしたヒートインシュレーターとして、特許文献1に記載のものが知られている。図6に示すように、同文献に記載のヒートインシュレーターは、金属基板10と、その上面に配置された、無機質繊維からなる吸音材11と、その上面に配置されて、金属基板10にスポット溶接で固定された金網12とを備えている。そして金属基板10と金網12との間に挟み込むことで、吸音材11を固定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−267018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、プレス加工等による形状の形成は、ヒートインシュレーターの板厚が薄い方が容易であり、複雑な形状の成形が可能となる。しかしながら、形状を維持するには、ある程度の剛性、強度が必要であり、ヒートインシュレーターの薄肉化には、自ずと限界があった。上記従来のヒートインシュレーターでは、その形状の維持は、金属基板10によりなされており、その剛性を確保するため、金属基板10の板厚はある程度に厚くする必要がある。
【0006】
なお、こうした問題は、遮熱を行うヒートインシュレーターだけでなく、専ら遮音を行うために設けられる遮音用のインシュレーター(遮音板)においても概ね共通したものとなっている。
【0007】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、複雑な形状への加工が容易なインシュレーターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、インシュレーターとしての請求項1に記載の発明は、2枚の金属メッシュの間に、薄板材を挟み込んだものによりインシュレーターを形成するようにしている。
【0009】
上記構成では、形状凍結に必要な剛性、強度を金属メッシュにより確保するため、間に挟み込む薄板材は非常に薄くすることができる。そして金属メッシュは、縮小拡大変形が容易にでき、プレス加工等による複雑な形状への加工を容易に行うことができる。したがって上記構成によれば、複雑な形状への加工を容易とすることができる。
【0010】
こうしたインシュレーターでは、2枚の金属メッシュにより形状凍結に必要な剛性、強度が確保されるため、薄板材としては、請求項2に記載のような厚さが0.1mm以下とされたものでも使用が可能である。また薄板材の材料としては、例えば請求項3に記載のようなアルミ合金を使用可能である。
【0011】
また金属メッシュとしては、請求項4に記載のような金属線材を編み込んで形成されたもの(金網)や、請求項5に記載のようなパンチングメタル、或いは請求項6に記載のようなラスメタルなどを使用可能である。
【0012】
ちなみに、こうしたインシュレーターは、例えば請求項7によるような、エンジンの排気系を覆うように設けられるものとしてその具現が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係るインシュレーターの斜視構造を示す斜視図。
【図2】同実施形態のインシュレーターの表面の拡大図。
【図3】図2のIII−III線に沿った断面構造を示す断面図。
【図4】金属メッシュの他の実施態様を示す平面図。
【図5】同じく金属メッシュの他の実施態様を示す平面図。
【図6】従来のインシュレーターの平面構造を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のインシュレーターを具体化した一実施形態を、図1〜図3を参照して詳細に説明する。なお本実施の形態は、車載エンジンの排気系(排気マニホールド、排気管、触媒コンバーター)の遮熱を行うヒートインシュレーター(遮熱板)として本発明を具体化した場合を説明する。
【0015】
図1に、本実施の形態のインシュレーターの斜視構造を示す。このインシュレーターは、排気マニホールド全体を覆うように構成されており、取り付け用のボルトやセンサーを通す複数の穴が形成されている。
【0016】
図2は、こうしたインシュレーターの表面を拡大して示したものである。また図3は、図2のIII−III線に沿ったインシュレーターの断面構造を示したものである。
これらの図に示すように、このインシュレーターは、厚さ0.1mmのアルミ合金製の薄板材1と、その上面及び裏面に配設された2枚の金属メッシュ2からなっている。金属メッシュ2は、SUS、アルミメッキ鋼のような熱や腐食に強い金属の線材を格子状に編み込んで形成されている。
【0017】
こうしたインシュレーターは、次の手順で製造されている。
1.まず、平面状の金属メッシュ2の上に平面状の薄板材1を置き、更にその上にもう一枚の金属メッシュ2を置く。
2.次にプレスにより、インシュレーターの形状に加工する。
3.続いてパンチにより余分な部分を切り抜いた後、インシュレーターの外縁部を折り曲げて、薄板材1及び金属メッシュ2を散けないように固定する。
4.最後に、ボルト穴の周囲を補強するゴーズワイヤーなどの補強材をスポット溶接などで取り付ける。
【0018】
以上の本実施の形態のインシュレーターによれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施の形態では、2枚の金属メッシュ2の間に、薄板材1を挟み込んだものによりインシュレーターを形成するようにしている。こうしたインシュレーターでは、形状凍結に必要な剛性、強度が金属メッシュ2により確保されるため、間に挟み込まれる薄板材1は非常に薄くすることができる。そして金属メッシュは、縮小拡大変形が容易にでき、プレス加工等による複雑な形状への加工を容易に行うことができる。したがって本実施の形態によれば、複雑な形状への加工を容易とすることができる。
【0019】
(2)本実施の形態では、SUS、アルミメッキ鋼などの金属により形成されたメッシュ材を用いているため、インシュレーターに十分な強度を持たせることができ、その形状の凍結が可能となる。
【0020】
(3)排気系から放射される熱線をアルミ合金製の薄板材1により遮断することができる。
(4)アルミ合金製の薄板材1に強度を持たせる必要はないため、縮み成形による折れ皺の形成を許容することができる。そのため、大幅な縮み成形を要する複雑な形状への成形が可能となる。
【0021】
(5)アルミ合金製の板材に比して安価な線材を用いているため、製造コストを抑えることができる。
(6)振動が伝達されると、金属メッシュ2を構成する線材同士が擦り合い、摩擦により振動エレルギーを吸収するため、良好なNV性能を得ることができる。
【0022】
なお、上記実施の形態は、以下のように変更して実施することもできる。
・上記実施の形態では、金属メッシュ2として、金属製の線材を折り込んで形成した金網を用いるようにしていたが、金属メッシュ2としては、メッシュ状に形成されたものであれば、任意のものを使用可能である。例えば、パンチ等により板素材に多数の穴を開けることで形成された、図4のようなパンチングメタルや、切れ目を入れた板素材を引き延ばすことで菱形模様の金網状に形成された、図5に示すようなラスメタルなども、金属メッシュとして使用することができる。
【0023】
・上記実施の形態では、薄板材1として厚さ0.1mmのアルミ合金製の薄板を用いるようにしていた。成形性を考えた場合、遮熱性や遮音性を十分確保できる限りにおいて、薄板材1を薄くすることが望ましい。そのため、望ましい薄板材1の厚さは、0.1mm以下となっている。もっとも、十分な成形性が確保できるのであれば、遮熱性や遮音性の確保のために、薄板材1の厚さを0.1mmよりも厚くしても良い。
【0024】
・上記実施の形態では、薄板材1の材料としてアルミ合金を使用していたが、耐熱性や耐腐食性を十分に備えるものであれば、他の材料を使用しても良い。例えば耐熱樹脂なども、薄板材1の材料として用いることが可能である。
【0025】
・上記実施の形態では、車載エンジンの排気系の遮熱を行うヒートインシュレーターとして本発明を具体化した場合を説明したが、本発明のインシュレーターは、それ以外の用途にも用いることができる。また遮熱のためではなく、専ら遮音板のために用いられるインシュレーター(遮音板)にも、本発明を適用することは可能である。
【符号の説明】
【0026】
1…薄板材、2…金属メッシュ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚の金属メッシュの間に、薄板材を挟み込んだものによりインシュレーターを形成する
ことを特徴とするインシュレーター。
【請求項2】
前記薄板材の厚さが0.1mm以下とされてなる
請求項1に記載のインシュレーター。
【請求項3】
前記薄板材は、アルミ合金により形成されてなる
請求項1又は2に記載のインシュレーター。
【請求項4】
前記金属メッシュは、金属製の線材を編み込んで形成されてなる
請求項1〜3のいずれか1項に記載のインシュレーター。
【請求項5】
前記金属メッシュは、パンチングメタルにより形成されてなる
請求項1〜3のいずれか1項に記載のインシュレーター。
【請求項6】
前記金属メッシュは、ラスメタルにより形成されてなる
請求項1〜3のいずれか1項に記載のインシュレーター。
【請求項7】
当該インシュレーターは、エンジンの排気系を覆うように設けられるものである
請求項1〜6のいずれか1項に記載のインシュレーター。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【公開番号】特開2011−252461(P2011−252461A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128013(P2010−128013)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(508217249)國本工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】