説明

インジェクション成形スポイト及びその製造方法

【課題】低価格で、さらにバリのない安定した品質のインジェクション成形スポイトを提供する
【解決手段】上記課題を解決するために、本発明は、インジェクション成形されたプラスチック製のスポイトであって、液体を吸引及び吐出する口を一端に有する管部と、前記管部の他端に連設され押圧され自己回復する内部空洞の操作部とからなり、前記操作部の他端を溶着して密封したシール部を備えることを特徴とするインジェクション形成スポイトの構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インジェクション成形されたプラスチック製のスポイト及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスポイトは、図4に示すように、ブロー成形(中空成形ともいう)されている。ブロー成形とは、プラスチックの加工法の一種で、ペットボトルなどの中空の製品を成形するときに用いられる成形方法である。
【0003】
中空製品のブロー成形は、ペレット状のプラスチック原料をブロー成形機で溶かして、先ずパイプ状のパリソン16と呼ばれる形状に成形する。上から吐出したパリソン16を製品の外側のみ(製品型15cの空洞、スポイト形状の点線部)が彫られている前後金型15a、15bからなるブロー金型15で挟み込む。その後製品型15cの空洞にエアを吹き込み、パリソン16を膨らませ製品の形状に成形する。そして、ブロー金型15内で冷却されたものがブロー成形製品となる。
【0004】
ブロー成形で成形したスポイトを図5に示す。ブロー成形スポイト11は、プラスチック樹脂を上述のようにブロー金型15で挟みこみ、エアで膨らませて成形して、液体を吸引及び吐出する口12aを一端に有する管部12と、管部12の他端に連設され押圧され自己回復する内部空洞の操作部13とからなる。操作部13の後端部13aはブロー成形時に密封されている。例えば、形状は特殊であるが、特許文献1にブロー成形されるスポイトが公開されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2006−271747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ブロー成形の場合は、パリソン16を用いるため、その制限から1の金型で多数個の製品を成形することができず、生産性が悪い。さらに、必ずバリ14と言われる不要部分がつき、取り除く工程が必要になる。また、ブロー金型15内でエアによる成形のため肉厚が一定しない。
【0007】
従って、ブロー成形スポイト11は、製品コストが高い上、品質が一定でない。特に、試薬などを計量する場合には肉厚が一定しないこと、先端にもバリ14が発生し、それをカットする工程を行わないと吐出量が安定せず、また、吐出時に試薬と共にバリ14が取れる可能性がある点問題であった。
【0008】
そこで、本発明は、低価格で、さらにバリのない安定した品質のインジェクション成形スポイトを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するために、
(1)
インジェクション成形されたプラスチック製のスポイトであって、液体を吸引及び吐出する口を一端に有する管部と、前記管部の他端に連設され押圧され自己回復する内部空洞の操作部とからなり、前記操作部の他端を溶着して密封したシール部を備えることを特徴とするインジェクション形成スポイトの構成とした。
(2)
前記シール部が、操作部側を間欠的にシールした第一シールと、反操作部側を密着シールした第二シールと、からなることを特徴とする(1)に記載のインジェクション成形スポイトの構成とした。
(3)
前記シール部が、第一シールと第二シールの形状を刻印した金型によって、1度のプレスで熱シールされたことを特徴とする(1)又は(2)に記載のインジェクション成形スポイトの構成とした。
(4)
前記熱シールが、超音波溶着であることを特徴とする(1)〜(3)の何れかに記載のインジェクション成形スポイトの構成とした。
(5)
液体を吸引及び吐出する口を一端に有する管部と、前記管部の他端に連設され押圧され自己回復する内部空洞の操作部とからなるスポイトのインジェクション成形による製造方法であって、スポイトの端部が開口した形状にインジェクション成形されたインジェクション成形品の端部を溶着してシール部を形成する工程と、前記シール部分から後方を切除する工程と、からなることを特徴とするインジェクション成形スポイトの製造方法の構成とした。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、インジェクション成形であるので、バリの発生がなく、肉厚が一定で、1の金型で多数個生産が可能である。従って、製品コストを低く抑え、品質が高く安定したスポイトを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明であるインジェクション成形スポイトのインジェクション成形工程の模式図である。
【図2】インジェクション成形工程後の加工工程のフローである。
【図3】本発明であるインジェクション成形スポイトの断面模式図である。
【図4】従来のブロー成形スポイトのブロー成形工程の模式図である。
【図5】従来のブロー成形の正面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本願発明について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
図1、2に示すように、プラスチック製のインジェクション成形スポイト1は、先ず、内金型5aと外金型5bとからなるインジェクション金型5を用いて、インジェクション成形する工程で、管部2と管部2に連設した端部が開口した筒部3aからなるインジェクション成形品1aを成形する。
【0014】
ここで、インジェクション成形とは、射出成形とも言われるもので、加熱溶融させた樹脂材料をインジェクション金型5内に射出注入し、冷却・固化させることよって、インジェクション成形品1aを成形する成形手法である。
【0015】
本発明では、従来から行われている一般的なインジェクション手法を採用することできる。一般に、インジェクション成形は、型締め、射出、保圧、冷却、型開き、製品の取出しの各工程が順に行われる。このサイクルの繰り返すことで、インジェクション成形品1aを連続的に生産する。
【0016】
インジェクション装置は、型締ユニットと射出ユニット9からなり、型締ユニットはインジェクション金型5の開閉、突き出し(エジェクター)を行う装置で、射出ユニット9は樹脂を加熱溶融させインジェクション金型5内へ射出する装置である。
【0017】
インジェクション金型5は、材料樹脂を目的の形状にするため、溶融した樹脂が射出注入される金属製の型で、幾つかの孔(図示省略)が空いており、温水や油、ヒーター等で温度管理される。溶融した樹脂はスプルー8からインジェクション金型5内に入り、ランナー7(分岐)、ゲート6を経て金型本体5c(キャビティ)内に充填される。
【0018】
その後、冷却工程を経て、金型本体5cが開き成形機のエジェクタロッドに金型のエジェクタプレートが押されてインジェクション成形品1aが突き出される。このようなインジェクション成形では、複数の金型本体5cがランナー7で結ばれ、インジェクション成形品1aが同時に複数個成形できるようになっており、生産性が高い。
【0019】
本発明の金型本体5cは、スポイトの端部が開口した形状に溝を形成するため、金型本体5cをスポイトの外形の空洞が彫られた外金型5bと、その空洞内に挿入されるスポイト内部形状をした内金型5aとからなる。そして、内外金型5a、5bの隙間に樹脂が充填され、端部が開口したインジェクション成形品1aが成形される。
【0020】
なお、インジェクション成形では、溶融樹脂が流れ込むスプルー8、金型本体5cへ導くランナー7とインジェクション成形品1a(製品部分)が連なって形成される。従って、インジェクション成形品1aを得るため、スプルー8、ランナー7部は切除される。得られたインジェクション成形品1aを図2(A)に示す。
【0021】
インジェクション成形品1aは、図2(A)に示すように、筒部3aの反管部2側端部が開口3bしている。そこで、図2(B)に示すように、筒部3aを密封するため筒部3aを熱等で溶着してシール部4を形成する工程を行い、シール密封品1bを得る。
【0022】
シール部4を形成することにより、筒部3aが密封され、操作部3が形成される。続いて図2(C)に示すように、シール部4より後方部(除去部3c)は不要であるので、切除する工程を経て、インジェクション成形スポイト1が得られる。図3にインジェクション成形スポイト1の断面模式図を示した。
【0023】
インジェクション成形スポイト1は、図2、3に示すように、液体を吸引及び吐出する口2aを一端に有する管部2と、管部2の他端に連設され内部空洞の操作部3とからなる。そして、操作部3の他端である後端部3dを溶着して密封したシール部4を備える。
【0024】
インジェクション成形スポイト1の素材としては、プラスチック樹脂、例えば、ポリエチレン等が好適である。厚さは、操作部3が押圧、自己回復できる範囲であればよい。例えば、0.4mm〜0.8mmであればよい。
【0025】
操作部3は、内部空洞で、押圧することで内部空気を口2aから吐き出し、液体中に口2aを入れて押圧を解除することで、操作部3が基の形状に復元(自己回復)するとともに、液体を管部2及び操作部3の内部に吸引させる。再度操作部3を押圧することで内部に吸引された液体が吐出する。
【0026】
シール部4は、図3に示すように、操作部3側には、隙間4cを設けて間欠的にシールした第一シール4aを配置し、反操作部3側を隙間なく密着シールした第二シール4bを配置することが望ましい。このような密着度合いの異なる2つのシールを施すことにより、操作部3内部の溶着部にバリがほとんど発生しない。
【0027】
他方、第二シール4bである密着シールだけ施すと内部にバリが発生し、操作部3の内体積が一定にならず、使用中にバリがとれ、操作部3の押圧時に吐出することがある。また、第一シール4aである間欠的なシールだけでは当然に、吸引もままならず、吸引できたとしても操作部3に吸引された内容物が漏れ出てスポイトとして機能しない。
【0028】
第一シール4aの形態は、ここに例示した斜線状に複数のシール部分と隙間4cを設けたものに限定されることなく、ドット状、その他形状であってもよい。第二シール4bと操作部3の内部空洞との間に、バリを発生させない緩やかシールを施せればよい。
【0029】
そして、第一、第二シール4a、4bは、第一シール4aと第二シール4bの形状を刻印した金型によって、1度のプレスで熱シールすると、生産性がよく、一層バリの発生が抑制されるため望ましい。
【0030】
さらに、熱シールを超音波溶着で行うとさらに好ましい。超音波溶着は、15〜50キロヘルツ程度の超音波振動を圧力とともにシール部4に加え、生じる摩擦熱で接合する溶着方法である。
【0031】
シール部4を超音波溶着することで、シール部4を形成する金型の温度制御が必要ない上、形成されたシール部4が安定して密封シールされる。
【0032】
なお、素材として塩化ビニルを採用する場合には、高周波溶着も利用できる。高周波エネルギーの電界作用によって、樹脂部材そのものを内部から発熱させ、溶着させる方法である。物理的な振動がない金型で挟みこむので表面の仕上がりが綺麗になる。
【符号の説明】
【0033】
1 インジェクション成形スポイト
1a インジェクション成形品
1b シール密封品
2 管部
2a 口
3 操作部
3a 筒部
3b 開口
3c 除去部
3d 後端部
4 シール部
4a 第一シール
4b 第二シール
5 インジェクション金型
5a 内金型
5b 外金型
6 ゲート
7 ランナー
8 スプルー
9 射出ユニット
11 ブロー成形スポイト
12 管部
12a 口
13 操作部
13a 後端部
14 バリ
15 ブロー金型
15a 前金型
15b 後金型
15c 製品型
16 パリソン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インジェクション成形されたプラスチック製のスポイトであって、
液体を吸引及び吐出する口を一端に有する管部と、前記管部の他端に連設され押圧され自己回復する内部空洞の操作部とからなり、
前記操作部の他端を溶着して密封したシール部を備えることを特徴とするインジェクション形成スポイト。
【請求項2】
前記シール部が、操作部側を間欠的にシールした第一シールと、反操作部側を密着シールした第二シールと、からなることを特徴とする請求項1に記載のインジェクション成形スポイト。
【請求項3】
前記シール部が、第一シールと第二シールの形状を刻印した金型によって、1度のプレスで熱シールされたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のインジェクション成形スポイト。
【請求項4】
前記熱シールが、超音波溶着であることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のインジェクション成形スポイト。
【請求項5】
液体を吸引及び吐出する口を一端に有する管部と、前記管部の他端に連設され押圧され自己回復する内部空洞の操作部とからなるスポイトのインジェクション成形による製造方法であって、
スポイトの端部が開口した形状にインジェクション成形されたインジェクション成形品の端部を溶着してシール部を形成する工程と、前記シール部分から後方を切除する工程と、からなることを特徴とするインジェクション成形スポイトの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−28056(P2013−28056A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165237(P2011−165237)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(393032125)油化電子株式会社 (36)
【Fターム(参考)】