説明

インジケータ装置

【課題】 視覚に障害や特性を有する者であっても、表示部を確実に視認できるインジケータ装置の提供である。
【解決手段】 車両用のメータ表示器100の各表示部4を光輝表示させる光源2に多色LEDを使用し、この多色LEDを単色で又は選択された複数の色を混ぜた混色で発光させる。これにより、メータ表示器100の各表示部4を、色覚に特性を有する者にとって最も視認容易な発色状態に調整することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に車両のインストゥルメントパネルに設けられ、メータ等の表示部を光輝表示するインジケータ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本明細書では、車両(例えば、自動車)に使用されるインジケータ装置の一例であるメータ表示器について説明する。車両のインストゥルメントパネルには、スピードメータやタコメータ等のメータ類や、各種の標識を表示するインジケータ装置が取り付けられている。運転者が車両を運転するために、キースイッチやランプスイッチをオンにしたりすると、メータ類や標識(以下、これらを総称して「表示部」と記載する。)が点灯し、重要度に応じて所定の色で光輝表示される。例えば、エンジン異常やブレーキ等の警告標識は赤色で光輝表示され、それ以外の標識は緑色又は黄色で表示される。そして、車両の運転者は、常にこれらの表示部を視認しながら運転を行っている。
【0003】
ここで、運転者が、白内障患者や色覚特性者のように視覚(「視力」及び「色覚」を含むものとする。)に障害や特性を有する者であったりすると、表示部を正確に視認することが困難になる場合が生ずる。例えば、運転者が色覚特性者であって赤色と緑色の弁別が困難な場合、運転者が重要度を知覚しないおそれがある。これにより、車両の的確な運転が阻害されてしまう。
【0004】
上記した不具合を解消するため、例えば特許文献1に開示される技術が公開されている。
【特許文献1】特開2004−32652号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した事情に鑑み、視覚に障害や特性を有する者であっても、表示部を確実に視認できるインジケータ装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0006】
上記した課題を解決するための本発明は、
インジケータパネルの背面側に配置された光源を発光させることにより、前記インジケータパネルに設けられた表示部から光を透過させ、前記表示部を光輝表示させるインジケータ装置において、
前記光源は、複数色から選択された単色又はそれらの混色を発光可能であり、
前記光源が、視覚に障害や特性を有する使用者にとって視認容易な色で発光するように調整されることにより、前記使用者が前記インジケータパネルに設けられた表示部を視認容易となるようにしたことを特徴としている。
【0007】
本発明に係るインジケータ装置は、上記したように構成されていて、インジケータパネルの表示部が単色又はそれらの混色で光輝表示される。このため、その発色状態を、視覚に障害や特性を有する使用者にとって視認容易な色に調整することにより、使用者が前記インジケータパネルに設けられた表示部を視認容易となる。
【0008】
また、液晶より成るインジケータパネルを備えたインジケータ装置であって、
前記インジケータパネルに設けられた表示部が、視覚に障害や特性を有する使用者にとって視認容易な色で発光するように調整されることにより、前記使用者が前記インジケータパネルに設けられた表示部を視認容易となるようにしたことを特徴としている。
【0009】
表示部が液晶より成るため、その発色状態の調整が容易である。また、表示部の大きさを大きくしたり、小さくしたりすることが容易にできるため、高齢者等の視力に障害を有する者にとって視認容易とすることができる。
【0010】
運転者の色覚の特性を判定する色覚特性判定手段を備え、該色覚特性判定手段による判定結果に基づいて前記光源の発光色が調整されるようにしてもよい。
【0011】
更に、調整後の発光状態が保存されるようにしてもよい。これにより、視覚に異常や特性を有する者と有しない者とが共用して使用することができる。
【0012】
前記インジケータパネルを、車両のインストゥルメントパネルとしてもよい。これにより、視覚に異常や特性を有する者であっても、より的確に車両を運転することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施例について説明する。図1はインジケータ装置の構成を示すブロック図、図2は第1実施例のメータ表示器100の正面図、図3は図2のX−X線断面図である。
【実施例1】
【0014】
最初に、第1実施例のインジケータ装置の構成について説明する。図1に示されるように、本実施例のインジケータ装置は、運転者の色覚特性を判定する色覚特性判定手段1と、色覚特性判定手段1での判定結果に基づいて光源2の発光量を制御する表示制御部3とを備えている。表示制御部3は、色覚特性判定手段1の判定結果に基づいて自動で光源2の発光量を調整し、表示部4を所定の色で光輝表示させる。表示制御部3に、光源2の発光量を微調整するための手動スイッチ5を接続してもよい。この場合、手動スイッチ5によって光源2の発光量が調整されるため、色覚特性判定手段1はなくてもよい。
【0015】
次に、本実施例のインジケータ装置の具体例である車両用のメータ表示器100について説明する。図2に示されるように、本実施例のメータ表示器100は、透光性を有する樹脂板より成る表示板6に表示部4(メータ類や標識)が設けられている。本実施例のメータ表示器100の表示部4は、スピードメータ7の文字盤7a、タコメータ8の文字盤8a、燃料表示メータ9の文字盤9a及び水温表示メータ10の文字盤10aである。スピードメータ7の下方には、左から充電警告灯11、エンジン警告灯12、ブレーキ警告灯13及び油圧警告灯14が設けられている。表示板6の上部には、左右のウインカーランプ15,16が設けられていて、それらの下方には、現在のシフトポジションを点灯して示す「P」、「R」、「N」、「D」、「S」の各文字17が設けられている。更に、それらの下方には、時計18が設けられている。タコメータ8の下方には、オドメータ19とトリップメータ20が設けられている。
【0016】
図3に示されるように、表示板6において、これらの表示部4は透口となっているとともに、表示部4以外の部分は黒色に塗られている。表示板6の背面側には光源2が配置されていて、光源2が発光したとき、表示部4が光輝表示される。本実施例のメータ表示器100の場合、スピードメータ7の文字盤7aは白色に光輝表示され、左右のウインカーランプ15,16、オドメータ19及びトリップメータ20は黄色に光輝表示され、シフトポジションを示す文字17及び時計18は緑色に光輝表示され、各警告灯11〜14は赤色で光輝表示される。表示板6の下方には、表示部4を選択するための切替ボタン21と、選択された表示部4の各表示色(「赤」、「緑」、「青」)を調整するための3つのスライドスイッチ22〜24とが設けられている。これにより、表示部の表示色(光源2の発光色)を調整可能である(後述)。
【0017】
本実施例のメータ表示器100における光源2は、LED(Light Emitting Diode)より成るものである。ここで、従来のメータ表示器の場合、光源2は単色のLEDであり、その発光色を変えることは不可能であった。しかし、本実施例のメータ表示器100の場合、光源2は多色LED(例えば、「赤」、「緑」、「青」の各LED単体を1つのケース体に封入したもの)である。そして、各LED単体の発光量を制御することにより、各LED単体を単独で発光させることだけでなく、各LED単体の発光色を混在させて発光させることが可能である。例えば、「赤」のLED単体と「緑」のLED単体を発光させ、「青」のLED単体を発光させないことにより、光源2を「橙」で発光させることができる。これに更に、「青」のLED単体を少量だけ発光させることにより、光源2を「青みがかった薄い橙」で発光させることができる。なお、図3において、25はスピードメータ7の指針であり、26は、指針25を回動させるためのステッピングモータである。
【0018】
上記した各表示部4の光源2におけるLED単体の発光量は、表示板6の下部に設けられたスライドスイッチ22〜24を操作することによって調整可能である。また、各表示部4の光源2は、表示板6の右下部に設けられた切替ボタン21を押すことによって、順次切り替えることができる。
【0019】
ここで、色覚特性者における色の知覚状況について説明する。図4に示されるように、色覚正常者にとって上から「赤」、「緑」、「青」、「白」と知覚されるとき、第1色覚特性者(赤色を主に感知する者)には、上から「黒」、「黄」、「青」、「白」と知覚される。また、第2色覚特性者(緑色を主に感知する者)には、上から「茶」、「黄」、「青」、「白」と知覚される。即ち、色覚特性者は、色覚正常者が「赤」と知覚している色を、「黒」又は「茶」と知覚していると考えられる。このため、第1色覚特性者にとって、赤色で光輝表示されている各警告灯11〜14が黒色に知覚されてしまい、表示板6の背景色である黒色と混同してしまうおそれがある。第1及び第2の色覚特性者は、いずれも男性の場合20人に1人、女性の場合500人に1人の割合で存在するとされている(例えば、http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%89%B2%E8%A6%9A%E7%95%B0%E5%B8%B8を参照)。
【0020】
本実施例のメータ表示器100では、各スライドスイッチ22〜24を操作することにより、手動で光源2の発光色を調整することができる。即ち、運転者が、図2の図面視における左側のスライドスイッチ22をいずれかの方向に移動すると、光源2における「赤」のLED単体の発光量の増減を行うことができる。同様にして、中央のスライドスイッチ23をいずれかの方向に移動すると、光源2における「緑」のLED単体の発光量の増減を行うことができ、右側のスライドスイッチ23をいずれかの方向に移動すると、光源2における「青」のLED単体の発光量の増減を行うことができる。これにより、運転者が色覚特性者であっても、当該運転者にとって最適な発色状態(最も視認容易な発色状態)が選択される。なお、発光量の調整を行う表示部4の光源2は、切替ボタン21を順次押すことにより、選択できる。
【0021】
本実施例のメータ表示器100の作用を、図5のフローチャートを参照しながら説明する。運転者が車両のキースイッチをオンにしたとき、メータ表示器100の各表示部4は、デフォルトの発色状態で表示されている(ステップS1)。「デフォルトの発色状態」とは、色覚正常者にとって知覚が容易な色である。そして、運転者が色覚特性者である場合、色覚特性判定手段1(図1参照)で色覚特性を判定する(ステップS2)。本実施例の色覚特性判定手段1は、例えばカーナビゲーション装置のディスプレイ(図示せず)に石原式色覚検査表又はそれと同等の機能を有する色覚特性検査表を表示させて、運転者の色覚特性を判定するものである。これにより、運転者に色覚特性がなければ(ステップS3でのNo)、メータ表示器100の各表示部4をデフォルトの発色状態として終了する。もし、運転者に色覚特性があれば(ステップS3でのYes)、メータ表示器100の各表示部4における光源2の発光色を調整する(ステップS4)。この調整は、色覚特性の判定結果に基づいて、表示制御部3(図1参照)が自動で行う形態であっても、運転者が各スライドスイッチ22〜24を移動させて手動で調整する形態のいずれであってもよい。これにより、メータ表示器100の各表示部4の発色が調整され、色覚特性を有する運転者にとって最適な発色状態で表示される(ステップS5)。
【0022】
そして、プリセット手段(図示せず)を用いて、この発色状態を保存するようにしてもよい。これにより、運転者が色覚正常者の場合にはメータ表示器100の各表示部4がデフォルトカラーで表示され、運転者が色覚特性者の場合にはメータ表示器100の各表示部4がプリセットされた調整後の発色状態で表示される。そして、色覚特性者が運転を行う場合、プリセット手段を操作するだけで、メータ表示器100の各表示部4が調整後の発色状態で表示される。これにより、1台の車両のメータ表示器100を、色覚正常者と色覚特性者の双方が、それぞれに知覚し易い状態で発色させることが容易になる。
【0023】
また、色覚正常者である運転者が、自身の好みに合わせて各表示部4の発色状態を調整してもよい。例えば、運転者の年齢、性別や運転目的(ビジネス用途や娯楽用途)に応じて発色状態を調整し、その発色状態を保存させておくこともできる。
【0024】
本明細書では、色覚に特性を有する者が運転者である場合について説明したが、視力に障害を有する者(例えば、白内障患者)の場合であっても同様に、自身に最適な発光状態に調整することができる。
【実施例2】
【0025】
そして、図6に示される第2実施例のメータ表示器200のように、発色調整のスライドスイッチ27を1つとすることができる。これにより、発色状態の調整が容易になる。
【実施例3】
【0026】
更に、図7に示される第3実施例のメータ表示器300のように、発色調整のスライドスイッチ22〜24,27と切替ボタン21をなくすことができる。第3実施例のメータ表示器300は、前述したように、例えばカーナビゲーション装置のディスプレイ(図示せず)に石原式色覚検査表又はそれと同等の機能を有する色覚特性検査表を表示させて、運転者の色覚特性の判定を行い、その結果によって自動で表示板6の発色状態を調整するものである。
【実施例4】
【0027】
次に、図2及び図3を流用しながら、第4実施例のメータ表示器400について説明する。上記した第1実施例のメータ表示器100の場合、光源2の発光色を調整可能としている。これに対して、第4実施例のメータ表示器400では、表示板6が液晶ディスプレイとなっていて、すべての表示部4が液晶によって表示されている。そして、第1実施例のメータ表示器100の場合と同様に、切替ボタン21によって選択された各表示部4の発光色は、各スライドスイッチ22〜24を操作することによって調整可能である。また、各表示部4のフォントを変更することにより、それらを大きくしたり小さくしたりすることができる。これにより、特に視力に障害を有する者が運転者である場合に、各表示部4の視認性を良好にすることができる。また、液晶ディスプレイの場合であっても、第2及び第3実施例のメータ表示器200,300と同様に、スライドスイッチ22〜24,27の数を少なくしたり、なくしたりすることも可能である。
【0028】
本明細書では、インジケータ装置が車両用のメータ表示器100〜400である場合について説明した。しかし、車両以外のインジケータ装置(例えば、家電製品のスイッチ類)であってもよいのはもちろんである。
【0029】
近時の車両のカーナビゲーション装置のディスプレイでは、夜間(ライトのスイッチがオンにされたとき)、ディスプレイの発光状態を調整する技術が公知である。本実施例のメータ表示器100〜400の表示板6においても同様に、ライトのスイッチのオン・オフと連動させて、表示板6の発光状態(明るさ、コントラスト等)を自動で調整するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】インジケータ装置の構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施例のメータ表示器100の正面図である。
【図3】図2のX−X線断面図である。
【図4】色覚正常者と色覚特性者との知覚状態の差を示す図である。
【図5】第1実施例のメータ表示器100の作用を示すフローチャートである。
【図6】第2実施例のメータ表示器200の正面図である。
【図7】第3実施例のメータ表示器300の正面図である。
【符号の説明】
【0031】
100〜400 メータ表示器(インジケータ装置)
1 色覚特性判定手段
2 光源
4 表示部
6 表示板(インジケータパネル)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インジケータパネルの背面側に配置された光源を発光させることにより、前記インジケータパネルに設けられた表示部から光を透過させ、前記表示部を光輝表示させるインジケータ装置において、
前記光源は、複数色から選択された単色又はそれらの混色を発光可能であり、
前記光源が、視覚に障害や特性を有する使用者にとって視認容易な色で発光するように調整されることにより、前記使用者が前記インジケータパネルに設けられた表示部を視認容易となるようにしたことを特徴とするインジケータ装置。
【請求項2】
液晶より成るインジケータパネルを備えたインジケータ装置であって、
前記インジケータパネルに設けられた表示部が、視覚に障害や特性を有する使用者にとって視認容易な色で発光するように調整されることにより、前記使用者が前記インジケータパネルに設けられた表示部を視認容易となるようにしたことを特徴とするインジケータ装置。
【請求項3】
前記表示部の大きさが調整可能であることを特徴とする請求項2に記載のインジケータ装置。
【請求項4】
運転者の色覚の特性を判定する色覚特性判定手段を備え、該色覚特性判定手段による判定結果に基づいて前記光源の発光色が調整されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のインジケータ装置。
【請求項5】
調整後の発光状態が保存されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のインジケータ装置。
【請求項6】
前記インジケータパネルは、車両のインストゥルメントパネルであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のインジケータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−8555(P2010−8555A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−165790(P2008−165790)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】