説明

インストルメントパネルへのガーニッシュの取付け構造

【課題】 ガーニッシュの表面側にボルト類等の固定部材が露出することなく美観が向上され、且つガーニッシュを高精度で容易かつ確実に取付け可能であるインストルメントパネルへのガーニッシュの取付け構造を提供する。
【解決手段】 インストルメントパネル(1)に配設された車載機器の周囲を覆うガーニッシュ(2)の取付け構造において、前記インストルメントパネルの前記ガーニッシュに隣接した部位に収納用凹部(31)が配設され、前記ガーニッシュの前記収納用凹部に隣接した裏面には、前記収納用凹部の裏面に至る固定用片部(23)が延設されており、前記固定用片部と前記収納用凹部裏面との重合部分に穿設された固定孔(24、34)に、前記収納用凹部の内部から締結部材(4)が挿通され、該締結部材により前記ガーニッシュが前記収納用凹部裏面に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インストルメントパネルへのガーニッシュの取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等のインストルメントパネルには、オーディオ機器や空調操作部など種々の機器(以下、車載機器という)が配置されるが、これらの車載機器は、一般に、メンテナンスや交換が可能なように取外し可能な状態で固定されるとともに、それらの取付け部の周囲の合わせ部は、室内の外観を良好に維持するために、インストルメントパネル本体と別体のガーニッシュで覆われている。したがって、このガーニッシュもインストルメントパネル本体に取外し可能に設けられており、車載機器の取外しに先立ちガーニッシュを取り外すことで、車載機器の取付け部が露見するように構成されている。
【0003】
このようなガーニッシュは、樹脂材を用いた成形品で構成されるが、比較的大きな開口部を有しているため、成型後に変形しやすい傾向がある。そこで、特許文献1では、センターガーニッシュを取り付けるインストルメントパネル本体およびヒーターコントロールレバーガーニッシュに複数のリブを立設し、これらのリブにセンターガーニッシュの周縁を引っ掛けて、該センターガーニッシュを取り付けることにより、ガーニッシュの変形を防止し、且つ精度良くインストルメントパネルに取り付けるようにしている。
【0004】
このような取付け構造は、ガーニッシュの変形防止に有効である反面、ガーニッシュを複数のボルト類を用いてインストルメントパネルに取り付ける構造であるため、ボルト類を、締結作業に支障がない範囲で、乗員側から視認され難い位置に配置する必要がある。しかし上記ガーニッシュは、インストルメントパネルの最表面に位置した部材であるため、ボルト類を視認されないように配置するのは必ずしも容易ではなく、インストルメントパネル周りの美観を損ねる一因となっていた。
【0005】
【特許文献1】特開平5−201274号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、ガーニッシュの表面側にボルト類等の固定部材が露出することなく美観が向上され、且つガーニッシュを高精度で容易かつ確実に取付け可能であるインストルメントパネルへのガーニッシュの取付け構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記従来技術の有する課題を解決することを目的として、本発明は、インストルメントパネルに配設された車載機器の周囲を覆うガーニッシュの取付け構造において、前記インストルメントパネルの前記ガーニッシュに隣接した部位に収納用凹部が配設され、前記ガーニッシュの前記収納用凹部に隣接した裏面には、前記収納用凹部の裏面に至る固定用片部が延設されており、前記固定用片部と前記収納用凹部裏面との重合部分に穿設された固定孔に、前記収納用凹部の内部から締結部材が挿通され、該締結部材により前記ガーニッシュが前記収納用凹部裏面に固定されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の好適な態様においては、前記収納用凹部が、前記インストルメントパネルの、前記車載機器上方に位置した上面部に配設され、前記固定用片部が前記ガーニッシュの上縁部に配設されている。また、前記収納用凹部の固定孔が、前記収納用凹部の、運転席側から見て陰面となる壁部または該壁部に近接した底部に穿設されている。さらに、前記収納用凹部が、開閉可能な蓋を備えている。また、前記収納用凹部が、前記インストルメントパネルと別体で構成されていても良い。
【0009】
本発明の他の態様では、前記インストルメントパネルの前記収納用凹部に隣接した部位に、前記固定用片部が挿通可能なスリットが穿設され、該スリットに前記固定用片部が挿通した状態で、該固定用片部の前記固定孔に前記締結部材が挿通され、前記ガーニッシュが前記収納用凹部裏面に固定されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、締結部材が収納用凹部の内部に配置され、車室の乗員側から視認され難いため、美観を良好に維持できるとともに、ガーニッシュの取外し作業を容易に行なうことができ、かつ、ガーニッシュをインストルメントパネルに確実に且つ強固に固定できる。さらに、前記締結部材が、ガーニッシュの他の既存の固定部材である係止爪に対して交差する方向に挿入されるため、ガーニッシュに衝撃が作用した場合でも、締結部材および係止爪が抜脱し難い利点がある。
【0011】
また、前記収納用凹部が、前記インストルメントパネルの、前記車載機器上方に位置した上面部に配設され、前記固定用片部が前記ガーニッシュの上縁部に配設されている場合に、前記収納用凹部の固定孔が、前記収納用凹部の、運転席側から見て陰面となる壁部または該壁部に近接した底部に穿設されていれば、収納用凹部に蓋がない場合にも締結部材が視認され難く、キャップ等、締結部材を覆うための部品が不要となる。さらに、前記収納用凹部が、開閉可能な蓋を備えている態様では、前記収納用凹部の固定孔の配置に係わらず、締結部材が視認され難く、キャップ等、締結部材を覆うための部品が不要であるとともに、前記固定孔を締結作業が行ないやすい位置に配設可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明を実施した自動車のインストルメントパネル1を示す斜視図である。図において、インストルメントパネル1の車幅方向中央には、空調の吹出し口11、ナビゲーションシステムの表示画面12、空調の操作ダイヤル13等の車載機器が配置され、これらの部品の取付け部位の周囲を囲むように、枠状のガーニッシュ2が取り付けられている。
【0013】
ガーニッシュ2は、図2に示すように、ともに略U字形状をなすアッパーガーニッシュ21とロアーガーニッシュ22とに上下2分割されており、それぞれの意匠面の裏面には、図3に示すような係止爪(クリップ)21a,22aが適宜間隔を有して複数並設され、該各係止爪21a,22aを、前記インストルメントパネル1の表面に穿設された各スリット1aに差し込むことにより、アッパーガーニッシュ21およびロアーガーニッシュ22は該インストルメントパネル1に固定される。
【0014】
これら係止爪21a,22aによる固定は、クリップの弾性を利用した係止によるものであるため、ガーニッシュ2には、その固定を確実にするために、締結部材4による固定機構が併設されている。すなわち、アッパーガーニッシュ21の上端部に位置した車幅方向に延在する部分の中央部には、意匠面の裏面側から収納部3に向けて、固定用片部23が延設されており、該固定用片部23の先端部には、該固定用片部23を上下に貫通する固定孔24が穿設されている。
【0015】
収納部3は、図1及び図4に示すように、アッパーガーニッシュ21の前方に隣接したインストルメントパネル1の上面に配設され、インストルメントパネル1と別体のアッパーボックス31と、その上面開口部に開閉可能に設けたリッド32とで構成されている。アッパーボックス31は、比較的浅めの収納用凹部30と、その周囲に、インストルメントパネル1の上面と共通の意匠面を形成する周縁部33とで構成され、リッド32は、収納用凹部30の車両前後方向前方側に設けた軸32aに回動自在に支持されている。
【0016】
アッパーボックス31は、図5に示すように、車両前後方向の前端部および後端部に設けた係止片31a、31bをインストルメントパネル1に係止するとともに、両側部においてスクリュー31cを螺合することにより、インストルメントパネル1に固定されている。そして、図4に示すように、アッパーボックス31の収納用凹部30底面の、アッパーガーニッシュ21寄りの部位には、アッパーガーニッシュ21の固定用片部23をクリップ等の締結部材4で固定するための固定孔34が穿設されている。
【0017】
また、図4および図5に示すように、アッパーボックス31が設置されるインストルメントパネル1上面には凹溝14が形成されている。この凹溝14とアッパーボックス31とにより形成されるスリット(14)に、アッパーガーニッシュ21の固定用片部23を挿入するとともに、先述した係止爪21aをインストルメントパネル1のスリット1aに差し込んで、アッパーガーニッシュ21をインストルメントパネル1に固定(仮固定)した状態では、アッパーガーニッシュ21の固定用片部23が、アッパーボックス31の下面に重なり、固定用片部23の固定孔24と、アッパーボックス31の固定孔34との位置が一致するようになっている。この状態で、締結部材4を、アッパーボックス31の内部から固定孔34および固定孔24に挿入して締結すれば、固定用片部23がアッパーボックス31に対して固定される。
【0018】
このような取付け状態において、アッパーガーニッシュ21は、固定用片部23の固定孔24に、前記各係止爪21aの挿入方向と交差する方向に締結部材4が挿通されることによって確実に固定され、アッパーガーニッシュ21に衝撃が作用した場合でも、締結部材4および各係止爪21aの抜脱を回避できる。
【0019】
上記締結部材4を締結する固定孔34は、車両前後方向の後方側に設置されているので、車室内の乗員からの死角となり、締結部材4が見え難くなるので、締結部材4のためのキャップ類が不要となる。また、図示例の固定用片部23は、アッパーガーニッシュ21の中央に位置するとともに平板状に形成されているため、この固定用片部23に、射出成形時におけるゲートを設定すると、ゲート周辺に発生する外観不良がアッパーガーニッシュ21の意匠面に現れなくなり、アッパーガーニッシュ21の外観を向上する上で有利である。
【0020】
また、オーディオ機器やナビゲーションシステムのメンテナンス等のために、これらの機器を取り外す場合には、リッド32を開けば、アッパーボックス31の内部の締結部材4に直ちにアクセスでき、工具を用いて締結部材4を外すことで、アッパーガーニッシュ21を容易に取り外すことができ、従来のようにキャップ類を取り外す作業が不要となり、メンテナンスの作業性が向上する。
【0021】
上記実施形態では、締結部材4に主としてクリップを用いる場合について述べたが、締結部材4としては、クリップ以外に、ボルトやスクリューなどの螺合部材を用いることもできる。図6に示す例では、締結部材4にスクリューを用い、インストルメントパネル1の凹溝14部分に挟着したスピードナット44に螺合するようにしている。
【0022】
また、上記実施形態では、収納部3を構成するアッパーボックス31が、インストルメントパネル1と別体の場合を示したが、図7に示す実施形態は、収納部3をインストルメントパネル1に一体に形成する場合を示しており、この例では、インストルメントパネル1に設けたスリット15に、アッパーガーニッシュ21の固定用片部23を挿通した状態で、固定孔34、24に締結部材4(クリップ)を挿通することで、アッパーガーニッシュ21を収納部3の下面に直接固定可能である。さらに、インストルメントパネル1の凹溝14にも固定孔を設けておき、それぞれ別体で構成されたアッパーガーニッシュ21とアッパーボックス31とを、締結部材4で同時にインストルメントパネル1に固定するように構成しても良い。
【0023】
以上、本発明の一実施形態について述べたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。また、本発明は、ガーニッシュ2(21)の設置範囲にある全ての車載機器が取外し可能である場合に限定されるものではなく、恒久的に車両に固定されている機器や他の部材が含まれていても良い。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明実施形態に係るガーニッシュの取付け構造を実施したインストルメントパネルを示す斜視図である。
【図2】本発明実施形態に係るガーニッシュの分解状態を示す斜視図である。
【図3】(a)は図2のX矢視図、(b)は(a)のB−B断面図である。
【図4】図1のA−A断面図である。
【図5】本発明実施形態に係るガーニッシュの取付け過程を示す斜視図である。
【図6】本発明の別の実施形態に係る図1のA−A断面図である。
【図7】本発明のさらに別の実施形態に係る図1のA−A断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 インストルメントパネル
1a スリット
14 凹溝
15 スリット
2 ガーニッシュ
3 収納部
4 締結部材
21 アッパーガーニッシュ
21a、22a 係止爪(クリップ)
22 ロアーガーニッシュ
23 固定用片部
24、34 固定孔
30 収納用凹部
31 アッパーボックス
32 リッド(蓋)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インストルメントパネルに配設された車載機器の周囲を覆うガーニッシュの取付け構造において、前記インストルメントパネルの前記ガーニッシュに隣接した部位に収納用凹部が配設され、前記ガーニッシュの前記収納用凹部に隣接した裏面には、前記収納用凹部の裏面に至る固定用片部が延設されており、前記固定用片部と前記収納用凹部裏面との重合部分に穿設された固定孔に、前記収納用凹部の内部から締結部材が挿通され、該締結部材により前記ガーニッシュが前記収納用凹部裏面に固定されていることを特徴とするインストルメントパネルへのガーニッシュの取付け構造。
【請求項2】
前記収納用凹部が、前記インストルメントパネルの、前記車載機器上方に位置した上面部に配設され、前記固定用片部が前記ガーニッシュの上縁部に配設されていることを特徴とする請求項1に記載のインストルメントパネルへのガーニッシュの取付け構造。
【請求項3】
前記収納用凹部の固定孔が、前記収納用凹部の、運転席側から見て陰面となる壁部または該壁部に近接した底部に穿設されていることを特徴とする請求項2に記載のインストルメントパネルへのガーニッシュの取付け構造。
【請求項4】
前記収納用凹部が、開閉可能な蓋を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載のインストルメントパネルへのガーニッシュの取付け構造。
【請求項5】
前記収納用凹部が、前記インストルメントパネルと別体で構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のインストルメントパネルへのガーニッシュの取付け構造。
【請求項6】
前記インストルメントパネルの前記収納用凹部に隣接した部位に、前記固定用片部が挿通可能なスリットが穿設され、該スリットに前記固定用片部が挿通した状態で、該固定用片部の前記固定孔に前記締結部材が挿通され、前記ガーニッシュが前記収納用凹部裏面に固定されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のインストルメントパネルへのガーニッシュの取付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−189175(P2008−189175A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−26606(P2007−26606)
【出願日】平成19年2月6日(2007.2.6)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】