インスリン抵抗性疾患の治療
本発明は、インスリン抵抗性疾患の治療に関する。具体的には、本発明は、IL−17、例えば、IL−17Aおよび/もしくはIL−17Fアンタゴニスト、例えば、抗IL−17Aおよび/もしくはIL−17Fおよび/もしくはIL−17Rc抗体、または抗体フラグメントの投与による、インスリン抵抗性疾患の治療に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インスリン抵抗性疾患の治療に関する。具体的には、本発明は、IL−17、例えば、IL−17Aおよび/もしくはIL−17Fアンタゴニスト、例えば、抗IL−17Aおよび/もしくはIL−17Fおよび/もしくはIL−17Rc抗体、または抗体フラグメントの投与による、インスリン抵抗性疾患の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
IL−17ファミリー
インターロイキン17A(IL−17A)は、上皮、内皮、および線維芽細胞を刺激して、IL−6、IL−8、G−CSF、およびMCP−1を含む他の炎症性サイトカインおよびケモカインを産生する、T細胞由来の炎症促進性分子である(Yao,Z.et al.,J.Immunol.,122(12):5483−5486(1995)、Yao,Z.et al,Immunity,3(6):811−821(1995)、Fossiez,F.,et al.,J.Exp.Med.,183(6):2593−2603(1996)、Kennedy,J.,et al.,J.Interferon Cytokine Res.,16(8):611−7(1996)、Cai,X.Y.,et al.,Immunol.Lett,62(1):51−8(1998)、Jovanovic,D.V.,et al.,J.Immunol.,160(7):3513−21(1998)、Laan,M.,et al.,J.Immunol.,162(4):2347−52(1999)、Linden,A.,et al.,Eur Respir J,15(5):973−7(2000)、およびAggarwal,S.and Gurney,A.L.,J Leukoc Biol.71(1):1−8(2002)を参照)。またIL−17は、TNF−αおよびIL−1βを含む他のサイトカインと相乗作用して、ケモカイン発現をさらに誘導する(Chabaud,M.,et al.,J.Immunol.161(1):409−14(1998))。IL−17Aは、様々な種類の細胞上で多面的な生物活性を呈する。IL−17Aは、ICAM−1表面発現、T細胞の増殖、ならびにCD34+ヒト前駆細胞の好中球への成長および分化を誘導する能力も有する。IL−17Aは、骨代謝にも関与するとされ、活性化T細胞およびTNF−α産物の存在を特徴とする病的状態、例えば、リウマチ関節炎および骨インプラントの緩みにおいて重要な役割を果たすことが示唆されている(Van Bezooijen et al.,J.Bone Miner.Res.,14:1513−1521(1999))。関節リウマチ患者から得られる滑膜組織の活性化T細胞は、健常者または変形性関節症患者から得られるものよりも多量のIL−17Aを分泌することが認められた(Chabaud et al.,Arthritis Rheum.,42:963−970(1999))。この炎症促進性サイトカインが、関節リウマチの滑膜炎に積極的に関与することが示唆された。その炎症を促進する役割とは別に、IL−17Aは、さらに別の機序によって、関節リウマチの病理に関与すると見られる。例えば、IL−17Aは、骨芽細胞において破骨細胞分化因子(ODF)mRNAの発現を誘発することが示された(Kotake et al.,J.Clin.Invest.,103:1345−1352(1999))。ODFは、前駆細胞の、骨吸収に関与する細胞である破骨細胞への分化を刺激する。IL−17Aのレベルは、関節リウマチ患者の滑膜液中で著しく増加するため、IL−17Aにより誘導された破骨細胞形成は、関節リウマチにおける骨吸収に極めて重要な役割を果たすと見られる。IL−17Aは、多発性硬化症(Matusevicius et al.,Mult.Scler.,5:101−104(1999)、Kurasawa,K.,et al.,Arthritis Rheu 43(11):2455−63(2000))、ならびに乾癬(Teunissen,M.B.,et al.,J Invest Dermatol 111(4):645−9(1998)、Albanesi,C.,et al.,J Invest Dermatol 115(1):81−7(2000)、およびHomey,B.,et al.,J.Immunol.164(12:6621−32(2000))等の特定の他の自己免疫疾患において主要な役割を果たすとも考えられる。
【0003】
IL−17Aはさらに、細胞内シグナル伝達によって、ヒトマクロファージにおけるCa2+の流入および[cAMP]iの還元を刺激することが示されている(Jovanovic et al,J.Immunol.,160:3513(1998))。IL−17Aで処理された線維芽細胞は、NFκBの活性化を誘導するが(Yao et al.,Immunity,3:811(1995),Jovanovic et al.,上記)、それで処理されたマクロファージは、NF−κBおよびマイトジェン活性化タンパク質キナーゼを活性化する(Shalom−Barek et al,J.Biol.Chem.,273:27467(1998))。さらに、IL−17Aは、骨および軟骨の成長に関与する、哺乳類サイトカイン様因子7と配列相同性も共有する。IL−17Aポリペプチドが配列相同性を共有する他のタンパク質は、ヒト胚性インターロイキン関連因子(EDIRF)およびインターロイキン20である。
【0004】
IL−17Aの広範な効果と一致して、IL−17Aの細胞表面受容体は、多くの組織および細胞型において広く発現することが見出された(Yao et al.,Cytokine,2:794(1997))。ヒトIL−17A受容体(IL−R)のアミノ酸配列(866アミノ酸)は、単一膜貫通ドメインおよび長い525アミノ酸細胞内ドメインを有するタンパク質を予測するが、受容体配列は固有であり、サイトカイン/成長因子受容体ファミリーからの受容体のうちのいずれかのそれと類似していない。他の知られているタンパク質に対するIL−17A自体の類似性の欠如に加えて、これは、IL−17Aおよびその受容体が、シグナル伝達タンパク質および受容体の新規ファミリーの一部であり得ることを示す。IL−17A活性は、その固有の細胞表面受容体に対する結合を通して媒介されることが示されており(本明細書ではヒトIL−17Rと表される)、以前の研究は、T細胞を可溶型のIL−17A受容体ポリペプチドと接触させることは、PHA、コンカナバリンAおよび抗TCRモノクローナル抗体によって誘導されるT細胞の増殖およびIL−2の産生を阻害したことが示された(Yao et al.,J.Immunol.,155:5483−5486(1995))。そのようなものとして、知られているサイトカイン受容体、特にIL−17A受容体に対して相同性を有する、新規ポリペプチドを識別および特性化することに高い関心がある。
【0005】
インターロイキン17Aは、現在、サイトカインの新生ファミリーの原型メンバーとして認識されている。ヒトおよび他の脊椎動物ゲノムの大規模なシークエンシングは、明らかにIL−17Aに関連するタンパク質をコードする追加の遺伝子の存在を明らかにし、したがって、サイトカインの新規ファミリーを画定する。ヒトおよびマウスにおいて、IL−17ファミリーの少なくとも6メンバーが存在し、IL−17A、IL−17B、IL−17C、IL−17D、IL−17EおよびIL−17Fならびに新規受容体IL−17RH1、IL−17RH2、IL−17RH3およびIL−17RH4を含む(2001年6月28日に公開されたWO01/46420を参照)。1つのそのようなIL−17メンバー(IL−17Fと表される)は、ヒトIL−17受容体(IL−17R)に結合することが証明された(Yao et al.,Cytokine,9(11):794−800(1997))。初期特性化は、IL−17Aと同様に、これらの新規に識別された分子のうちのいくつかが、免疫機能を調整する能力を有することを示唆した。これらの因子のうちのいくつかに対して識別された強力な炎症作用および主要なヒト疾患との新たな関連性は、これらのタンパク質が、炎症過程において重要な役割を有し得ること、および治療介入の機会を提供し得ることを示唆する。
【0006】
ヒトIL−17Fをコードする遺伝子は、IL−17Aに隣接して位置付けられる(Hymowitz,S.G.,et al.,Embo J,20(19):5332−41(2001))。IL−17AおよびIL−17Fは、約44%のアミノ酸同一性を共有するが、IL−17ファミリーの他のメンバーは、より制限された15−27%のアミノ酸同一性を共有し、IL−17AおよびIL−17Fが、IL−17ファミリー内で個別のサブグループを形成することを示唆している(Starnes,T.,et al.,J Immunol.167(8):4137−40(2001)、Aggarwal,S.and Gurney,A.L.,J.Leukoc Biol,71(1):1−8(2002))。IL−17Fは、IL−17Aと同様の生物活性を有すると考えられ、幅広い多様な細胞からのIL−6、IL−8、およびG−CSFの産生を促進することができる。IL−17Aと同様に、軟骨基質の放出を誘導し、新しい軟骨基質の合成を阻害することができる(2002年11月28日に公開された第US2002−0177188−A1号を参照)。したがって、IL−17Aと同様に、IL−17Fは、潜在的に、炎症性疾患の病理に寄与し得る。IL−17AおよびIL−17Fはいずれも、インターロイキン23(IL−23)の作用によって、T細胞中で誘導されることが報告された(Aggarwal,S.,et al.,J.Biol.Chem.,278(3):1910−4(2003))。より具体的に、IL−17AおよびIL−17Fはいずれも、ヒト疾患のヒトおよびマウスモデルにおいて、多様な炎症性および自己免疫疾患の進行および病理に寄与する薬剤として関与している。実際に、IL−17Aおよびそれ程ではないにせよIL−17Fは、炎症反応を誘起するエフェクタサイトカインとして関与し、それによって、多発性硬化症(MS)関節リウマチ(RA)、および炎症性腸疾患(IBD)を含む多数の自己炎症性(自己免疫)疾患に寄与する。この系統は、Th17と呼ばれ、これらの細胞の数は、ヒト自己免疫疾患のマウスモデルにおいて、疾患の進行および重篤度と明らかに相関する。炎症性疾患におけるIL−17AおよびIL−17Fの関与は明らかであると思われるが(例えば、Kolls,J.K.,A.Linden.
Immunity 21:467−476(2004)を参照)、これらのサイトカインの標的細胞は、IL−17Fの受容体が識別されていないという事実に部分的に起因して、識別されていない。IL−17Aは、IL−17RAに対する親和性を有する。ヒトIL−17RAのアミノ酸配列は、NCBI GenBank受入番号NP_055154.3に基づいて入手可能である。今日では、IL−17RA(IL−17Rh1、IL−17Rc、IL−17RD、およびIL−17RE)に対する配列相同性に基づいて、IL−17Rファミリーにおいて、少なくとも4つの追加の受容体が識別されており、特に、IL−17Rcは、IL−17RAとの物理的関連性が示され、IL−17R複合体における機能成分であり得ることを示唆している(Toy,D.et al.,J.Immunol.177:36−39(2006))。最近では、IL−17Rcが、IL−17AおよびIL−17F両方の受容体であることが報告された(Presnell,et al.,J.Immunol.179(8):5462−73(2007))。
【0007】
炎症および肥満症
肥満に関する我々の理解において最近の重要な進展は、炎症および糖尿病が、慢性の軽度炎症の状態によって特性化されるという概念の出現である。この見解の根拠は、炎症のいくつかのマーカー、炎症性サイトカインおよび急性期タンパク質両方の高い血中濃度が、肥満において上昇することであり、これらのマーカーは、IL−6、TNFα系、C反応性タンパク質(CRP)およびハプトグロビンを含む。しかしながら、全身性か、または局所性かの炎症自体の部位に関する意味は不明である。
【0008】
所定用量のインスリンに対して予測される生物学的反応よりも小さいと定義されるインスリン抵抗性は、肥満の普遍的な関連要因である。実際に、肥満の病理的帰結の多くは、インスリン抵抗性を伴うと考えられる。これらには、高血圧、高脂質血症、および最も注目すべきは、非インスリン依存性糖尿病(NIDDM)が挙げられる。大部分のNIDDM患者は肥満であり、NIDDMの進行における中心的かつ初期の成分は、インスリン抵抗性である(Moller et al.,New Eng.J.Med.,325:938(1991))。この疾患の初期中のインスリン受容体の下方制御に加えて、後受容体の異常が、インスリン抵抗の経過中に進行することが証明された(Olefsky et al.,in Diabetes Mellitus,Rifkin and Porte,Jr.,Eds.(Elsevier Science Publishing Co.,Inc.,New York,ed.4,1990),pp.121−153)。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、少なくとも部分的に、IL−17ファミリーメンバー、具体的にIL−17AおよびIL−17Fが、肥満、インスリン抵抗、および肥満と関連付けられる他の疾患、例えば、高脂質血症および代謝症候群において役割を果たすこと、およびIL−17アンタゴニスト、特にIL−17AおよびIL−17Fアンタゴニストを使用して、これらの状態を治療することができるという発見に基づく。
【0010】
一態様において、本発明は、哺乳類において、インスリン抵抗性疾患を治療する方法に関し、有効量のIL−17Aおよび/またはIL−17Fアンタゴニストを、それを必要とする哺乳類に投与することを含む。
【0011】
別の態様において、本発明は、薬学的に許容される賦形剤との混和物中に、IL−17Aおよび/またはIL−17Fアンタゴニストを含む、インスリン抵抗性疾患の治療のための薬学的組成物に関する。
【0012】
さらなる態様において、本発明は、インスリン抵抗性疾患の治療におけるIL−17Aおよび/またはIL−17Fアンタゴニストの使用に関する。
【0013】
さらに別の態様において、本発明は、インスリン抵抗性疾患を治療するためのキットに関し、該キットは、(a)IL−17Aおよび/またはIL−17Fアンタゴニストを含む容器と、(b)該抗体を投与して、該疾患を治療するためのラベルまたは説明書と、を含む。
【0014】
すべての態様において、一実施形態では、疾患は、非インスリン依存性糖尿病(NIDDM)、肥満、卵巣アンドロゲン過剰、および高血圧から成る群から選択される。別の実施形態において、疾患は、NIDDMまたは肥満である。
【0015】
さらなる実施形態において、哺乳類はヒトであり、かつ、投与は全身性である。
【0016】
さらに別の実施形態において、IL−17Aおよび/またはIL−17Fアンタゴニストは、抗体またはそのフラグメントであり、例えば、抗体は、抗IL−17A、抗IL−17F、抗IL−17A/F、抗IL−17Rcおよび抗IL−17RA抗体、またはそれらのフラグメントから成る群から選択される。
【0017】
好ましくは、抗体は、モノクローナル抗体であり、キメラ、ヒト化、またはヒト抗体、二重特異性、多特異性、または交差反応性抗体を含む。
【0018】
さらに別の実施形態において、方法は、有効量のインスリン抵抗性治療薬、例えば、インスリン、IGF−1、またはスルホニル尿素の投与を含む。
【0019】
さらなる実施形態において、方法は、該インスリン抵抗性疾患を治療することができる、有効量の追加薬剤、例えば、Dickkopf−5(Dkk−5)の投与を含む。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】天然配列ヒトIL−17A cDNAのヌクレオチド配列(配列番号1)を示す図である。
【図2】図1に示される配列番号1のコード配列に由来する天然配列ヒトIL−17Aのアミノ酸配列(配列番号2)を示す図である。
【図3】天然配列ヒトIL−17F cDNAのヌクレオチド配列(配列番号3)を示す図である。
【図4】図3に示される配列番号3のコード配列に由来する天然配列ヒトIL−17Fのアミノ酸配列(配列番号4)を示す図である。
【図5】図5は、天然配列ヒトIL−17受容体C(IL−17Rc)ポリペプチドをコードし、「DNA164625−2890」と表されるクローンとしても知られる、ヌクレオチド配列(配列番号5)を示す図である。
【図6】図6は、天然配列ヒトIL−17Rcポリペプチドのアミノ酸配列(配列番号6)を示す図である(IL−17RH2受容体としても知られる)。
【図7】IL−17Rc KOマウスを使用した高脂肪食(HFD)モデル研究の実験計画を示す図である。
【図8】IL−17Rc KOマウスを使用した高脂肪食(HFD)モデル研究の8週目の結果を示す図sである。
【図9A】対照群および高脂肪食群における野生型およびIL−17Rc KOマウスの血糖値を示す図である。IL−17Rc KOマウスは、高脂肪食(HFD)誘導性インスリン抵抗に耐性がある。
【図9B】対照群および高脂肪食群における野生型およびIL−17Rc KOマウスの血糖値を示す図である。IL−17Rc KOマウスは、高脂肪食(HFD)誘導性インスリン抵抗に耐性がある。
【図10】10週目の曲線下面積を示す図である。
【図11】体重結果を示す図である。
【図12】抗IL−17および抗IL−17F mAbがインスリン抵抗性HFDモデルに及ぼす影響を示す図である。
【図13】9週間の投与期間後のグルコース負荷試験(GTT)を示す図である。
【図14】プラスミドDNAの注入に続くグルコース負荷試験(GTT)によるIL−17Aの異所性発現。IL−17の過剰発現がGTTにより評価されたインスリン耐性状態に及ぼす影響を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
A. 定義
用語「IL−17」は、概して、IL−17A、IL−17、IL−17B、IL−17C、IL−17D、IL−17E、IL−17F、およびIL−17A/Fを含む、IL−17ファミリーのメンバーを指すように使用される。好適なIL−17は、本明細書において、IL−17A、IL−17F、およびIL−17A/Fである。
【0022】
「天然配列IL−17ポリペプチド」は、自然に由来する対応IL−17ポリペプチドと同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。そのような天然配列IL−17ポリペプチドは、自然から単離され得るか、または組み換えまたは合成手段によって産生され得る。用語「天然配列IL−17ポリペプチド」は、特定のIL−17ポリペプチドの自然発生する切断または分泌形態(例えば、細胞外ドメイン配列)、自然発生する異型(例えば、選択的にスプライスされた形態)、およびポリペプチドの自然発生する対立遺伝子多型を包含する。本発明の様々な実施形態において、本明細書に開示される天然配列IL−17ポリペプチドは、図2および図4(配列番号2および4)に示される完全長アミノ酸配列を含む、成熟または完全長天然配列ヒトIL−17A、IL−17F、およびIL−17A/Fポリペプチドである。開始および停止コドンは、図面において太字および下線付きで示される。
【0023】
用語「天然配列IL−17Rcポリペプチド」または「天然配列IL−17Rc」は、自然に由来する対応IL−17Rcポリペプチドと同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを指す。そのような天然配列IL−17Rcポリペプチドは、自然から単離され得るか、または組み換えまたは合成手段によって産生され得る。用語「天然配列IL−17Rcポリペプチド」は、特に、特定のIL−17Rcポリペプチドの自然発生する切断または分泌形態、自然発生する異型(例えば、選択的にスプライスされた形態)、およびポリペプチドの自然発生する対立遺伝子多型を包含する。本発明の様々な実施形態において、本明細書に開示される天然配列IL−17Rcポリペプチドは、図6(配列番号6)に示される完全長アミノ酸配列を含む、完全長天然配列ヒトIL−17Rcである。
【0024】
「単離された」は、本明細書に開示される様々なポリペプチドを説明するために使用される場合、その自然環境の成分から識別および分離ならびに/または回復されたポリペプチドを意味する。その自然環境の汚染物質成分は、典型的に、ポリペプチドの診断または治療用途を干渉するであろう物質であり、酵素、ホルモン、および他のタンパク性または非タンパク性溶質を含み得る。好適な実施形態において、ポリペプチドは、(1)回転カップシークエネータの使用によって、N末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るために十分な程度、または(2)非還元または還元条件下で、クマシーブルーまたは好ましくは銀染色を使用して、SDS−PAGEによって均一になるまで精製される。IL−17ポリペプチド自然環境の少なくとも1つの成分が存在しないため、単離されたポリペプチドは、組み換え細胞内の原位置にポリペプチドを含む。しかしながら、通常、単離されたポリペプチドは、少なくとも1つの精製ステップによって調製される。
【0025】
本明細書で使用される、「肥満」は、哺乳動物が、体重(kg)/身長2(メートル)として計算されるか、または少なくとも25.9である、体格指数(BMI)を有する状態を指す。通常、正常体重の個人は、19.9〜25.9未満のBMIを有する。インスリン抵抗性と関連付けられる肥満は、特にこの定義に含まれる。
【0026】
「インスリン抵抗」または「インスリン抵抗疾患」あるいは「インスリン抵抗活性」は、外因性インスリンの作用に対する末梢組織の正常な代謝反応の不全(不感受性)によって生じる疾患、状態、または障害であり、すなわち、インスリンの存在が、正常以下の生物反応をもたらす状態である。臨床用語において、インスリン抵抗は、正常または上昇したインスリン値に対して、正常または上昇した血糖値が持続する場合に存在する。本質的に、それはグリコーゲン合成の阻害を表し、これによって基礎またはインスリン刺激によるグリコーゲン合成のいずれか、または両方が、正常値よりも低下する。2型糖尿病に存在する高血糖は、明らかに、インスリンに対する末梢組織の感受性を回復するのに十分な食事または体重減少によって好転し得る場合が多いという事実によって証明されるように、インスリン抵抗は、2型糖尿病において主要な役割を果たす。用語は、異常な耐糖能、ならびにインスリン抵抗が主な役割を果たす多くの疾患、例えば、肥満、真性糖尿病、卵巣アンドロゲン過剰、および高血圧を含む。
【0027】
「真性糖尿病」は、慢性的な高血糖の状態、すなわち、インスリン作用の相対的または絶対的欠如の結果として起こる血中の糖が過剰になることを指す。真性糖尿病には、I型またはインスリン依存性真性糖尿病(IDDM)、II型または非インスリン依存性真性糖尿病(NIDDM)、およびA型インスリン抵抗の3つの基本型があるが、A型は比較的希である。I型またはII型糖尿病のいずれかのある患者は、多様な機序を通して、外因性インスリンの効果に不感受性となり得る。A型インスリン抵抗は、インスリン受容体遺伝子の変異、または糖代謝に重要な作用の後受容体部位の欠陥のいずれかによって生じる。糖尿病対象は、医師によって容易に認識され得、高血糖、耐糖能障害、グリコシル化ヘモグロビン、およびいくつかの例において、外傷または疾病と関連付けられるケトアシドーシスを特徴とする。
【0028】
「非インスリン依存性真性糖尿病」または「NIDDM」は、II型糖尿病を指す。NIDDM患者は、絶食時に異常に高い血糖濃度を有し、食後またはグルコース負荷試験として知られる診断試験後に糖の細胞摂取が遅延する。NIDDMは、認められている基準に基づいて診断される(American Diabetes Association,Physician’s Guide to Insulin−Dependent(Type I)Diabetes,1988、American Diabetes Association,Physician’s Guide to Non−Insulin−Dependent(Type II)Diabetes,1988)。
【0029】
本明細書に定義されるように、疾患として治療される糖尿病の症状および合併症は、高血糖、不十分な血糖管理、ケトアシドーシス、インスリン耐性、上昇した成長ホルモン値、上昇したグリコシル化ヘモグロビンおよび進行性グリコシル化最終産生物(AGE)の値、曙現象、不十分な脂質プロファイル、血管疾患(例えば、アテローム性動脈硬化)、微小血管疾患、網膜疾患(例えば、増殖性糖尿病網膜症)、腎疾患、神経障害、妊娠合併症(例えば、未完熟終了および出生異常)等を含む。治療の定義において、例えば、インスリン感受性の増加、血糖管理を維持しながらインスリン用量の減少、HbA1cの減少、血糖管理の改善、血管、腎臓、神経、網膜、および他の糖尿病合併症の低減、「曙現象」の回避または低減、脂質プロファイルの改善、妊娠合併症の低減、およびケトアシドーシスの低減等の終点が含まれる。
【0030】
本明細書で使用される、「治療組成物」または「組成物」は、Dkk−5および薬学的に許容される担体、例えば、水、ミネラル、タンパク質、および当業者に知られている他の賦形剤を含むものとして定義される。
【0031】
治療の目的で、用語「哺乳動物」は、哺乳動物として分類される任意の動物を指し、ヒト、齧歯動物、競技用、動物園、愛玩、および家畜または農場動物、例えば、イヌ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、および非ヒト霊長類、例えば、サルを含むが、これらに限定されない。好ましくは、齧歯動物はマウスまたはラットである。好ましくは、哺乳動物はヒトであり、本明細書では患者とも呼ばれる。
【0032】
本明細書で使用される、「治療」は、インスリン抵抗、真性糖尿病、高インスリン血症、低インスリン血症、または肥満を含むが、これらに限定されない、本発明に従って標的とされる疾患または状態のうちのいずれかに対抗する目的で、哺乳動物の管理およびケアを説明し、症状または合併症の発症を回避するか、または標的とされる疾患または状態を排除するための投与を含む。
【0033】
本発明の目的で、インスリン抵抗を低下させるための有益または所望の臨床「治療」結果は、インスリン抵抗と関連付けられる症状の緩和、インスリン抵抗の症状の程度の縮小、インスリン抵抗の症状の安定化(すなわち、非悪化)(例えば、インスリン必要量の減少)、膵細胞障害を回避するためのインスリン感受性および/またはインスリン分泌の増加、およびインスリン抵抗の進行、例えば、糖尿病の進行の遅延または減速を含むが、これらに限定されない。
【0034】
肥満に関して、「治療」は、概して、哺乳動物のBMIを約25.9未満に低下させること、および体重を少なくとも6ヶ月間維持することを指す。治療は、哺乳動物による食物またはカロリー摂取の低下を適切にもたらす。さらに、この文脈において治療は、治療が肥満状態の発症に先立って投与される場合に、肥満の発生を回避することを指す。治療は、肥満哺乳動物における脂質生成、すなわち、ヒトおよび動物肥満の主要な特徴の1つである、脂肪細胞中の脂質の過剰蓄積の阻害および/または完全な抑制、ならびに総体重の減少を含む。
【0035】
「治療を必要とする」者は、既に疾患を有している哺乳動物、ならびに疾患が回避される哺乳動物を含む、疾患を有し易い哺乳動物を含む。
【0036】
「インスリン抵抗治療薬」は、インスリン抵抗を治療するために使用される、例えば、Dickkopf−5(Dkk−5)等のIL−17のアンタゴニスト以外の薬剤(例えば、米国出願公開第2005/0170440号を参照)、および血糖降下薬である。そのような治療薬の例として、インスリン(1つまたは複数の異なるインスリン)、小分子インスリン等のインスリン模倣体、例えば、L−783,281、インスリン類似体(例えば、HUMALOG(登録商標)インスリン(Eli Lilly Co.)、LysB28インスリン、ProB29インスリン、もしくはAspB21インスリンもしくは例えば、米国特許第5,149,777号および第5,514,646号に記載されるもの、またはそれらの生理活性フラグメント、インスリン関連ペプチド(C−ペプチド、GLP−1、インスリン様成長因子−I(IGE−1)、もしくはIGF−1/IGFBP−3複合体)またはそれらの類似体もしくはフラグメント、エルゴセット、プラムリンチド、レプチン、BAY−27−9955、T−1095、インスリン受容体チロシンキナーゼ阻害剤に対するアンタゴニスト、TNF−α機能に対するアンタゴニスト、成長ホルモン放出剤、アミリンまたはアミリンに対する抗体、インスリン増感剤、例えば、米国特許第5,753,681号に記載されるもの、例えば、トログリタゾン、ピオグリタゾン、エングリタゾン、および関連化合物を含むグリタゾンファミリーの化合物、リナロール単独またはビタミンE含有(米国特許第6,187,333号)、インスリン分泌増強剤、例えば、ナテグリニド(AY−4166)、カルシウム(2S)−2−ベンジル−3−(シス−ヘキサヒドロ−2−イソインドリニルカルボニル)プロピオン酸二水和物(ミチグリニド、KAD−1229)、およびレパグリニド、スルホニル尿素薬、例えば、アセトヘキサミド、クロロプロパミド、トラザミド、トルブタミド、グリクロピラミド、およびそのアンモニウム塩、グリベンクラミド、グリボムリド、グリクラジド、1−ブチル−3−メタニル尿素、カルブタミド、グリピジド、グリキドン、グリソキセピド、グリブチアゾール、グリブゾール、グリヘキサミド、グリミジン、グリピンアミド、フェンブタミド、トルシクルミド、グリメピリド等、ビグアニド(例えば、フェンフォルミン、メトフ
ォルミン、ブフォルミン等)、α−グルコシダーゼ阻害剤(例えば、アカルボース、ボグリボース、ミグリトール、エミグリテート等)、および膵臓移植または自己免疫試薬としてのそのような非典型的治療が挙げられる。
【0037】
「減量剤」は、肥満の治療または予防に有用な分子を指す。そのような分子には、例えば、ホルモン(カテコールアミン、グルカゴン、ACTH、およびIGF−1と結合される成長ホルモン)、Obタンパク質、クロフィブラート、ハロゲン化物、シンコカイン、クロルプロマジン、マジンドールおよびフェネチルアミンの誘導体などのノルアドレナリン神経伝達物質に作用する食欲抑制薬、例えば、フェニルプロパノールアミン、ジエチルプロピオン、フェンテルミン、フェンジメトラジン、ベンズフェタミン、アンフェタミン、メタンフェタミン、およびフェンメトラジン等、セロトニン神経伝達物質に作用する薬物、例えば、フェンフルアミン、トリプトファン、5−ヒドロキシトリプトファン、フルオキセチン、およびセルトラリン、中枢作用性薬、例えば、ナロキソン、ニューロペプチド−Y、ガラニン、コルチコトロピン放出ホルモン、およびコレシストキニン、コリン作動性アゴニスト、例えば、ピリドスチグミン、スフィンゴリピド、例えば、リソスフィンゴリピドまたはその誘導体、熱発生薬、例えば、甲状腺ホルモン、エフェンドリン、β−アドレナリン作動薬、酵素阻害剤などの胃腸管に作用する薬物、例えば、テトラヒドロリポスタチン、消化の悪い食べ物、例えば、ポリエステルスクロース、および胃内容排出阻害剤、例えば、トレオ−クロロクエン酸またはその誘導体、β−アドレナリン作動アゴニスト、例えば、イソプロテレノールおよびヨヒンビン、ヨヒンビンのβ−アドレナリン作動様効果を増加させるアミノフィリン、例えば、クロニジン単独または成長ホルモン放出ペプチドと組み合わされるα2−アドレナリン遮断薬、腸吸収を干渉する薬物、例えば、メトフォルミンおよびフェンフォルミン等のビグアニド、バルクフィルタ、例えば、メチルセルロース、代謝遮断薬、例えば、ヒドロキシクエン酸塩、プロゲステロン、コレシストキニンアゴニスト、ケト酸を模倣する小分子、コルチコトロピン放出ホルモンに対するアゴニスト、体脂肪の蓄積を低減するエルゴット関連プロラクチン阻害化合物(1988年11月8日に発行された米国特許第4,783,469号)、β−3アゴニスト、ブロモクリプチン、オピオイドペプチドに対するアンタゴニスト、ニューロペプチドYに対するアンタゴニスト、グルココルチコイド受容体アンタゴニスト、成長ホルモンアゴニスト
、それらの組み合わせ等が挙げられる。
【0038】
本明細書で使用される「インスリン」は、インスリン作用を有する任意およびすべての物質を指し、例えば、ウシまたはブタ膵臓から抽出される動物インスリン、ブタ膵臓から抽出されたインスリンから酵素的に合成される半合成ヒトインスリン、および通常、大腸菌または酵母菌等を使用する遺伝子工学技術によって合成されるヒトインスリンによって例示される。さらに、インスリンは、約0.45〜0.9(w/w)%の亜鉛、塩化亜鉛、硫酸プロタミン、およびインスリンから産生されるプロタミン−インスリン−亜鉛等を含有するインスリン−亜鉛複合体を含み得る。インスリンは、そのフラグメントまたは誘導体の形態、例えば、INS−1であってもよい。インスリンは、インスリン様物質、例えば、L83281およびインスリンアゴニストを含んでもよい。インスリンは、超即効作用型、即効作用型、二面作用型、中間作用型、長時間作用型等の多様な種類で入手可能であるが、これらの種類は、患者の状態に従って適切に選択され得る。
【0039】
本明細書で使用される、「治療組成物」は、IL−17(IL−17AおよびIL−17Fアンタゴニストを含む)アンタゴニストおよび薬学的に許容される担体、例えば、水、ミネラル、タンパク質、および当業者に知られている他の賦形剤を含むものとして定義される。
【0040】
表現「アンタゴニスト」、「IL−17(Aおよび/またはF)に対するアンタゴニスト」、「IL−17(Aおよび/またはF)アンタゴニスト」等は、本発明の範囲内で、治療される適応症に応じて、何らかの手段によって、IL−17、例えば、IL−17Aおよび/またはIL−17Fの機能を干渉するか、またはIL−17、(例えば、IL−17Aおよび/またはF)の関連活性を遮断または中和する、任意の分子を含むことを意味する。IL−17(IL−17およびIL−17Fを含む)と1つまたは複数のその受容体との間の相互作用を回避し得る。そのような薬剤は、様々な方法でこの効果を達成する。例えば、IL−17活性を「中和する」アンタゴニストのクラスは、十分な親和性および特異性を有する、IL−17またはIL−17の受容体に結合し、以下に定義されるように、IL−17を干渉する。IL−17を「結合する」抗体、またはIL−17の受容体(例えば、IL−17Rc)は、IL−17またはIL−17受容体を発現する細胞を標的とする際に、抗体が治療薬として有用となるように、十分な親和性を有する抗原を結合できるものである。用語「IL−17アンタゴニスト」は、IL−17A、IL−17F、およびIL−17A/Fアンタゴニストのいずれか、およびすべてを指すように使用される。
【0041】
このアンタゴニスト群には、例えば、IL−17またはその部分に対して配向され、IL−17と反応性のある抗体、またはIL−17Aおよび/もしくはIL−17FおよびIL−17Rcに対する抗体を特異的に含む、IL−17受容体もしくはその部分が含まれる。用語は、IL−17Aおよび/もしくはIL−17Fの過剰産生を干渉するか、または少なくとも1つのIL−17(例えば、IL−17Aおよび/もしくはIL−17F)受容体、例えば、IL−17Rcに拮抗する、任意の薬剤も含む。そのようなアンタゴニストは、薬剤の機能を担体タンパク質と組み合わせて治療薬の血清半減期を増加させるか、または異種間耐性を付与するために有用なキメラハイブリッドの形態であってもよい。したがって、そのようなアンタゴニストの例には、生体有機分子(例えば、ペプチド模倣体)、抗体、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、糖ペプチド、糖脂質、多糖、オリゴ糖、核酸、薬物およびそれらの代謝物、転写および翻訳制御配列等が挙げられる。好適な実施形態において、アンタゴニストは、IL−17Aおよび/またはIL−17Fに結合し、受容体、好ましくはIL−17Rcとのその相互作用を回避する、所望の特性を有する抗体である。
【0042】
用語「抗体」は、広義に使用され、所望の生物活性または免疫活性を呈する限り、例えば、単一抗IL−17A/Fまたは抗IL17Aもしくは抗IL−17Fモノクローナル抗体(アゴニスト、アンタゴニスト、および中和抗体を含む)、ポリエピトープ特異性を有する対応する抗体組成物、ポリクローナル抗体、単鎖抗体、および抗体フラグメント(以下を参照)を特異的に網羅する。
【0043】
基本4鎖抗体単位は、2つの同一軽鎖(L)および2つの同一重鎖(H)で構成されるヘテロ四量体糖タンパク質である(IgM抗体は、J鎖と呼ばれる追加ポリペプチドとともに5つの基本ヘテロ四量体単位で構成され、したがって、10抗原結合部位を含むが、分泌されたIgA抗体は、ポリマー化して、J鎖とともに2〜5の基本4鎖単位を含む、多価集団を形成することができる)。IgGの場合、4鎖単位は、概して、約150,000ダルトンである。各L鎖は、1つの共有ジスルフィド結合によってH鎖に結合されるが、2つのH鎖は、H鎖のアイソタイプに応じて、1つまたは複数のジスルフィド結合によって相互に結合される。各HおよびL鎖は、規則的間隔の鎖間ジスルフィド橋も有する。各H鎖は、N末端において、αおよびγ鎖のそれぞれに対して可変ドメイン(VH)に続いて3つの定常ドメイン(CH)、μおよびεアイソタイプに対して4つのCHドメインを有する。各L鎖は、N末端において可変ドメイン(VL)を有し、その他端において定常ドメイン(CL)が続く。VLは、VHと整列され、CLは、重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)と整列される。特定のアミノ酸残基は、軽鎖および重鎖可変ドメインの間にインターフェースを形成すると考えられる。VHおよびVLの対は、一緒に単一の抗原結合部位を形成する。異なるクラスの抗体の構造および特性については、例えば、Basic and Clinical Immunology,8th edition,Daniel P.Stites,Abba I.Terr and Tristram G.Parslow(eds.),Appleton & Lange,Norwalk,Conn.,1994,page 71 and Chapter 6を参照されたい。
【0044】
任意の脊椎動物種からのL鎖は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、κおよびλと呼ばれる2つの明らかに異なる型のうちの1つに割り当てられ得る。それらの重鎖の定常ドメイン(CH)のアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは、異なるクラスまたはアイソタイプに割り当てられ得る。これらは、それぞれα、δ、ε、γおよびμと指定される重鎖を有する、免疫グロブリンの5つのクラスIgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMである。γおよびαクラスは、CH配列および機能の比較的マイナーな差異に基づいて、さらにサブクラスに分割され、例えば、ヒトは、以下のサブクラスIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2を発現する。
【0045】
用語「可変」は、抗体間で、可変ドメインの特定のセグメントが、配列において広範囲に異なるという事実を指す。Vドメインは、抗原結合を媒介し、その特定抗原に対する特定抗体の特異性を定義する。しかしながら、変動性は、可変領域の110アミノ酸範囲に渡って均一に分散されない。代わりに、V領域は、それぞれ9〜12アミノ酸長である「超可変領域」と呼ばれる、極度変動性の短い領域によって分離される、15〜30アミノ酸のフレームワーク領域(FR)と呼ばれる比較的不変のストレッチで構成される。天然の重鎖および軽鎖の可変ドメインは、それぞれ4つのFRを含み、ループ結合を形成し、いくつかの例においてはβシート構造の一部を形成する、3つの超可変領域によって結合される、主にβシート構造を適合する。各鎖の超可変領域は、FRによって、他の鎖からの超可変領域と一緒に近接して保持され、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)を参照)。定常ドメインは、抗原への抗体の結合に直接関与しないが、様々なエフェクタ機能、例えば、抗体依存細胞性細胞毒性(ADCC)における抗体の関与を呈する。
【0046】
用語「超可変領域」は、本明細書において使用されるとき、抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、概して、「補体性決定領域」または「CDR」からのアミノ産残基を含む(例えば、VL中に残基約24−34(L1)、50−56(L2)、および89−97(L3)およびVH中に約1−35(H1)、50−65(H2)、および95−102(H3)、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))および/または「超可変ループ」からのそれらの残基(例えば、VL中に残基26−32(L1)、50−52(L2)、および91−96(L3)およびVH中に26−32(H1)、53−55(H2)および96−101(H3)、Chothia and Lesk J.Mol.Biol.196:901−917(1987))。
【0047】
本明細書で使用される、用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体、すなわち、少量で存在し得る自然発生する変異の可能性を除いて同一である集団を含む個別の抗体を指す。モノクローナル抗体は、極めて特異的であり、単一の抗原部位に対して配向されている。さらに、異なる決定因子(エピトープ)に対して配向される異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一決定因子に対して配向される。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、それらが他の抗体によって汚染されずに合成され得る点で有利である。そのようなモノクローナル抗体は、通常、標的を結合する可変領域を含む抗体を含み、抗体は、複数の抗体から抗体を選択することを含む過程によって得られる。例えば、選択過程は、複数のクローン、例えば、ハイブリドーマクローン、ファージクローン、または組み換えDNAクローンのプールから固有のクローンを選択することであり得る。選択された抗体は、例えば、標的に対する親和性を向上させ、抗体をヒト化し、細胞培養におけるその産生を高め、インビボでのその免疫原性を低下させ、多特異性抗体を形成する等のためにさらに変更することができること、および変更された可変領域配列を含む抗体は、本発明のモノクローナル抗体でもあることを理解されたい。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体調製物は、通常、それらが他の免疫グロブリンによって汚染されないという点で有利である。修飾語「モノクローナル」は、実質的に均質な抗体集団から得られるものとして抗体の特徴を示し、任意の特定方法による抗体の産生を必要とすると解釈されるものではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法(例えば、Kohler et al.,Nature,256:495(1975)、Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.1988)、Hammerling et al.,in:Monoclonal Antibodies and T−Cell Hybridomas 563−681,(Elsevier,N.Y.,1981)を参照)、組み換えDNA
法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照)、ファージ表示技術(例えば、Clackson et al.,Nature,352:624−628(1991)、Marks et al.,J.Mol.Biol.,222:581−597(1991)、Sidhu et al.,J.Mol.Biol.338(2):299−310(2004)、Lee et al.,J.Mol.Biol.340(5):1073−1093(2004)、Fellouse,Proc.Nat.Acad.Sci.USA 101(34):12467−12472(2004)、およびLee et al.J.Immunol Methods 284(1−2):119−132(2004)を参照)、およびヒト免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン座または遺伝子の一部またはすべてを有する動物からヒトまたはヒト様抗体を産生するための技術(例えば、国際特許第WO98/24893号、第WO/9634096号、第WO/9633735号、および第WO/9110741号、Jakobovits et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:2551(1993)、Jakobovits et al.,Nature,362:255−258(1993)、Bruggemann et al.,Year in Immuno.,7:33(1993)、米国特許第5,545,806号、第5,569,825号、第5,591,669号(すべてGenPharm)、第5,545,807号、第WO97/17852号、米国特許第5,545,807号、第5,545,806号、第5,569,825号、第5,625,126号、第5,633,425号、および第5,661,016号、およびMarks et al.,Bio/Technology,10:779−783(1992)、Lonberg et al.,Nature,368:856−859(1994)、Morrison,Nature,368:812−813(1994)、Fishwild et al.,Nature Biotechnology,14:845−851(1996)、Neuberger,Nature Biotechnology,14:826(1996)、およびLonberg and
Huszar,Intern.Rev.Immunol.,13:65−93(1995)を参照)を含む、多様な技術によって形成されてもよい。
【0048】
本明細書において、モノクローナル抗体は、「キメラ抗体」を含み、重鎖および/もしくは軽鎖の一部分は、特定の種に由来するか、もしくは特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体内の対応する配列に一致するか、または相同するが、1つまたは複数の鎖の残りは、所望の生物活性を呈する限り、別の種に由来するか、もしくは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体内の対応配列、ならびにそのような抗体のフラグメントに一致するか、または相同する(米国特許第4,816,567号、およびMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851−6855(1984)を参照)。本明細書において関心対象のキメラ抗体は、非ヒト霊長類に由来する可変ドメイン抗原結合配列を含む、「霊長類化」抗体(例えば、旧世界ザル、類人猿等)、およびヒト定常領域配列を含む。
【0049】
「正常な」抗体は、抗原結合部位ならびにCLおよび少なくとも重鎖定常ドメイン、CH1、CH2、およびCH3を含むものである。定常ドメインは、天然配列定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列定常ドメイン)またはそのアミノ酸配列変異型であり得る。好ましくは、正常な抗体は、1つまたは複数のエフェクタ機能を有する。
【0050】
「抗体フラグメント」は、正常な抗体の一部分、好ましくは、正常な抗体の抗原結合または可変領域を含む。抗体フラグメントの例には、Fab、Fab′、F(ab′)2、およびFvフラグメント、二重特異性抗体、線形抗体(米国特許第5,641,870号、実施例2、Zapata et al.,Protein Eng.8(10):1057−1062[1995]を参照)、単鎖抗体分子、および抗体フラグメントから形成される多特異性抗体が挙げられる。好適な実施形態において、フラグメントは「機能的」であり、すなわち、対応する正常な抗体が、標的IL−17AおよびIL−17Fポリペプチドに結合する能力を定性的に維持し、正常な抗体が、IL−17A/F生物活性または機能も阻害する場合は、そのような特性も同様に定性的に維持する。定性的維持は、同種の活性が維持されるが、結合親和性および/または活性の程度が異なり得ることを意味する。
【0051】
抗体のパパイン消化は、「Fab」フラグメントおよび残基「Fc」フラグメントと呼ばれる2つの同一抗原結合フラグメントを産生し、名称は容易に結晶化する能力を反映している。Fabフラグメントは、H鎖の可変領域ドメイン(VH)を伴う全体L鎖、および1つの重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)で構成される。各Fabフラグメントは、抗原結合に関して一価であり、すなわち、単一の抗原結合部位を有する。抗体のペプシン処理は、二価抗原結合活性を有する2つのジスルフィド結合されたFabフラグメントにほぼ対応しながら、依然として抗原を架橋することができる、単一の大きいF(ab′)2フラグメントをもたらす。Fab′フラグメントは、抗体ヒンジ領域からの1つまたは複数のシステインを含むCH1ドメインのカルボキシ末端において、追加のいくつかの残基を有することにより、Fabフラグメントとは異なる。Fab′−SHは、本明細書においてFab′の名称であり、定常ドメインのシステイン残基は、遊離チオール基を含む。F(ab′)2抗体フラグメントは、本来、それらの間にヒンジシステインを有する、Fab′フラグメントの対として産生された。抗体フラグメントの他の化学的結合も知られている。
【0052】
Fcフラグメントは、ジスルフィドによって一緒に保持される両方のH鎖のカルボキシ末端部分を含む。抗体のエフェクタ機能は、Fc領域内の配列によって決定され、この領域は、特定型の細胞上で見出されるFc受容体(FcR)によって認識される部分でもある。
【0053】
「Fv」は、完全な抗原認識および結合部位を含有する、最小抗体フラグメントである。このフラグメントは、堅固な非共有会合にある、1つの重鎖および1つの軽鎖可変領域ドメインの二量体で構成される。これら2つのドメインの折り畳みから、抗原結合のためのアミノ酸残基に寄与し、抗体に対する抗原結合特異性を付与する、6つの超可変ループ(HおよびL鎖からそれぞれ3ループ)が生じる。しかしながら、単一可変ドメイン(または抗原に特異的な3つのCDRのみを含むFvの半分)であっても、抗原を認識および結合する能力を有するが、全体結合部位よりも親和性が低い。
【0054】
「sFv」または「scFv」とも省略される「単鎖Fv」は、単一ポリペプチド鎖に結合されるVHおよびVL抗体ドメインを含む、抗体フラグメントである。好ましくは、sFvポリペプチドは、sFvに抗原結合のための所望の構造を形成させることができる、VHおよびVLドメインの間にポリペプチドリンカをさらに含む。sFvの概説については、以下、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,Springer−Verlag,New York,pp.269−315(1994)、Borrebaeck 1995を参照されたい。
【0055】
用語「二重特異性抗体」は、Vドメインの鎖内ではなく鎖間対合が達成され、二価フラグメント、すなわち、2つの抗原結合部位を有するフラグメントを生じるように、VHおよびVLドメインの間に短いリンカー(約5〜10残基)を備えた(前述の)sFvフラグメントを構成することによって調製される、小抗体フラグメントを指す。二重特異性抗体は、2つの「交差」sFvフラグメントのヘテロ二量体であり、2つの抗体のVHおよびVLドメインは、異なるポリペプチド鎖上に存在する。二重特異性抗体は、例えば、欧州特許第EP404,097号、国際特許第WO93/11161号、およびHollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444−6448(1993)においてより完全に説明されている。
【0056】
非ヒト(例えば、齧歯動物)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト抗体に由来する最小配列を含有するキメラ抗体である。大部分の場合、ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリン(受容体抗体)であり、受容体の超可変領域からの残基は、マウス、ラット、ウサギ、または所望の抗体特異性、親和性、および能力を有する非ヒト霊長類等の非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域からの残基によって置換される。いくつかの例において、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)は、対応する非ヒト残基によって置換される。さらに、ヒト化抗体は、受容体抗体またはドナー抗体において見出されない残基を含んでもよい。これらの修飾は、抗体性能をさらに改善するために行う。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、および通常2つの可変ドメインの実質的にすべてを含み、超可変ループのすべてまたは実質的にすべては、非ヒト免疫グロブリンのそれらに対応し、FRのすべてまたは実質的にすべては、ヒト免疫グロブリン配列のそれである。ヒト化抗体は、任意で、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分、通常、ヒト免疫グロブリンのそれを含む。さらなる詳細については、Jones et al.,Nature 321:522−525(1986)、Riechmann et al.,Nature 332:323−329(1988)、およびPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593−596(1992)を参照されたい。
【0057】
用語「多特異的抗体」は、広意義で使用され、重鎖可変ドメイン(VH)および軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体を特異的に網羅し、VHVL単位は、ポリエピトープ特異性を有する(すなわち、1つの生物分子上で2つの異なるエピトープに結合するか、または異なる生物分子上で各エピトープに結合することができる)。そのような多特異的抗体には、完全長抗体、2つ以上のVLおよびVHドメインを有する抗体、Fab、Fv、dsFv、scFv、二重特異性抗体、二重特異性抗体、および三重特異性抗体等の抗体フラグメント、共役的または非共役的に結合された抗体フラグメントが挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
「ポリエピトープ特異性」は、同一または異なる1つまたは複数の標的上で2つ以上の異なるエピトープに特異的に結合する能力を指す。
【0059】
「単特異的」は、1つのエピトープのみに結合する能力を指す。一実施形態に従って、IgG1形態の多特異的抗体は、5μM〜0.001pM、3μM〜0.001pM、1μM〜0.001pM、0.5μM〜0.001pM、または0.1μM〜0.001pMの親和性を有する各エピトープに結合する。
【0060】
「交差反応性抗体」は、複数の抗原上で同一または類似のエピトープを認識する抗体である。したがって、本発明の交差反応性抗体は、IL−17AおよびIL−17Fの両方に存在する同一または類似のエピトープを認識する。特定の実施形態において、交差反応性抗体は、同一または本質的に同一のパラトープを使用して、IL−17AおよびIL−17Fの両方に結合する。好ましくは、交差反応性抗体は、本明細書において、IL−17AおよびIL−17F機能(活性)も両方遮断する。
【0061】
用語「パラトープ」は、本明細書において、標的抗原に結合する抗体の一部を指すように使用される。
【0062】
「種依存性抗体」、例えば、哺乳動物抗IL−17A/F抗体は、第1の哺乳動物種からの抗原に対して、第2の哺乳動物種からの抗原の相同体に対して有するよりも強い結合親和性を有する抗体である。通常、種依存性抗体は、ヒト抗原に「特異的に結合する」(すなわち、わずか約1x10−7M、好ましくはわずか約1x10−8M、および最も好ましくはわずか約1x10−9Mの結合親和性(Kd)値を有する)が、第2の非ヒト哺乳動物種からの抗原の相同体に対して、ヒト抗原に対するその結合親和性よりも、少なくとも約50倍、もしくは少なくとも約500倍、または少なくとも約1000倍弱い結合親和性を有する。種依存性抗体は、上述されるように、様々な種類の抗体のうちのいずれかであり得るが、好ましくは、ヒト化またはヒト抗体である。
【0063】
関心対象の抗原を「結合する」抗体は、抗原を発現する細胞または組織を標的する際に、抗体が診断および/または治療薬として有用であるために十分な親和性を有する抗原を結合し、他のタンパク質と有意に相互反応しないものである。そのような実施形態において、「非標的」タンパク質に対する抗体の結合の程度は、蛍光活性化細胞選別(FACS)分析または放射性免疫沈降(RIA)によって決定されるように、その特定標的タンパク質への抗体の結合の約10%未満となる。標的分子への抗体の結合に関して、用語「特異的結合」もしくは「特異的に結合する」または特定のポリペプチドもしくは特定のポリペプチド標的上のエピトープ「に特異的である」は、非特異的相互作用とはある程度異なる結合を意味する。特異的結合は、例えば、対照分子の結合と比較して、概して、結合活性を有しない類似構造の分子である、分子の結合を決定することによって測定され得る。例えば、特異的結合は、標的に類似する対照分子との競合、例えば、過剰の非標識標的によって決定され得る。この場合、特異的結合は、プローブへの標識標的の結合が、過剰な非標識標的によって競合的に阻害される場合に示される。本明細書で使用される、用語「特異的結合」、または「特異的に結合する」、もしくは特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド標的上のエピトープ「に特異的な」は、例えば、少なくとも約10−4M、代替的に少なくとも約10−5M、代替的に少なくとも約10−6M、代替的に少なくとも約10−7M、代替的に少なくとも約10−8M、代替的に少なくとも約10−9M、代替的に少なくとも約10−10M、代替的に少なくとも約10−11M、代替的に少なくとも約10−12M、またはそれ以上の標的に対するKdを有する分子によって示され得る。一実施形態において、用語「特異的結合」は、分子が、任意の他のポリペプチドまたはポリペプチドエピトープに実質的に結合することなく、特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド上のエピトープに結合する、結合を指す。好適な実施形態において、特異的結合親和性は、少なくとも約10−10Mである。
【0064】
抗体「エフェクタ機能」は、抗体のFc領域(天然配列Fc領域またはアミノ酸配列異型Fc領域)に起因する、それらの生物活性を指し、抗体のアイソタイプによって異なる。抗体効果または機能の例には、C1q結合および補体依存性細胞毒性、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介細胞毒性(ADCC)、食作用、細胞表面受容体の下方制御(例えば、B細胞受容体)、およびB細胞活性化が挙げられる。
【0065】
「抗体依存性細胞媒介細胞毒性」または「ADCC」は、特定の細胞毒性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、およびマクロファージ)上に存在する、Fc受容体(FcR)上に結合される分泌Igが、これらの細胞毒性エフェクタ細胞を、抗原を有する標的細胞に特異的に結合させて、実質的に細胞毒性を有する標的細胞を殺傷することができる、細胞毒性の形態を指す。抗体は、細胞毒性細胞を「作動可能にする」ため、そのような殺傷に確実に必要とされる。ADCCを媒介するための主要な細胞、NK細胞は、FcγRIIIのみを発現するが、単球は、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIを発現する。造血細胞上のFcR発現は、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.9:457−92(1991)の464ページ、表3に要約されている。関心対象の分子のADCC活性を評価するために、インビトロADCC検定は、米国特許第5,500,362号または第5,821,337号に記載されるように行われてもよい。そのような検定に有用なエフェクタ細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。代替または追加的に、関心対象の分子のADCC活性は、Clynes et al.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.95:652−656(1998)に開示されるように、インビボで、例えば、動物モデルにおいて評価されてもよい。
【0066】
「Fc受容体」または「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を説明する。好適なFcRは、天然配列ヒトFcRである。さらに、好適なFcRは、IgG抗体(γ受容体)を結合するものであり、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIサブクラスの受容体を含み、これらの受容体の対立遺伝子多型および選択的にスプライスされた形態を含む。FcγRII受容体は、主にその細胞質ドメインにおいて異なる類似のアミノ酸配列を有する、FcγRIIA(「活性化受容体」)およびFcγRIIB(「阻害受容体」)を含む。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメインに、免疫受容体チロシン系活性化モチーフ(ITAM)を含有する。阻害受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメインに、免疫受容体チロシン系阻害モチーフ(ITIM)を含有する(Daeron,Annu.Rev.Immunol.15:203−234(1997)のレビューMを参照)。FcRsは、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.9:457−492(1991)、Capel et al.,Immunomethods 4:25−34(1994)、およびde Haas et al.,J.Lab.Clin.Med.126:330−41(1995)において概説されている。今後識別されるものを含む他のFcRsは、本明細書において、用語「FcR」によって包含される。用語は、胎児への母体IgGの移行に関与する、新生児受容体も含む(Guyer et al.,J.Immunol.117:587(1976)およびKim et al.,J.Immunol.24:249(1994))。
【0067】
「ヒトエフェクタ細胞」は、1つまたは複数のFcRを発現し、エフェクタ機能を行う白血球である。好ましくは、細胞は、少なくともFcγRIIIを発現し、かつ、ADCCエフェクタ機能を行う。ADCCを媒介するヒト白血球の例には、末梢血単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞毒性T細胞、および好中球が挙げられ、PBMCおよびNK細胞が好適である。エフェクタ細胞は、天然供給源、例えば、血液から単離されてもよい。
【0068】
「補体依存性細胞毒性」または「CDC」は、補体の存在下における標的細胞の溶解を指す。古典的補体経路の活性化は、補体系(C1q)の第1の成分を、それらの同種抗原に結合される(適切なサブクラスの)抗体に結合することによって開始される。補体の活性化を評価するために、CDC検定を、例えば、Gazzano−Santoro et al.,Immunol.Methods 202:163(1996)に記載されるように行ってもよい。
【0069】
用語「中和する」および「活性を中和する」は、本明細書において、例えば、任意の機序によって、IL−17(例えば、IL−17Aおよび/もしくはIL−17F)の活性を遮断、回避、低減、反作用するか、または無効にすることを意味するように使用される。したがって、アンタゴニストは、IL−17の活性に必要な結合イベントを回避し得る。
【0070】
「中和抗体」は、IL−17(IL−17Aおよび/もしくはIL−17Fを含む)のエフェクタ機能を遮断するか、または有意に低減させることができると本明細書に定義されるように、抗体分子を意味する。例えば、中和抗体は、IL−17(例えば、IL−17Aおよび/もしくはIL−17F)の活性を阻害または低減して、IL−17受容体、例えば、IL−17Rcと相互作用し得る。代替的に、中和抗体は、IL−17の能力を阻害または低減して、IL−17受容体シグナル伝達経路を遮断し得る。また中和抗体は、IL−17活性の免疫測定法において、IL−17に免疫特異的に結合し得る。インビトロおよびインビボ状況において、その機能的活性を維持することは、本発明の「中和抗体」の特徴である。
【0071】
B. 詳細な説明
1. 治療用途
インスリン抵抗は、インスリンの存在が、正常以下の生物反応をもたらす状態である。臨床用語において、インスリン抵抗は、正常または上昇したインスリン値に対して、正常または上昇した血糖値が持続する場合に存在する。本質的に、それはグリコーゲン合成の阻害を表し、これによって基礎またはインスリン刺激によるグリコーゲン合成のいずれか、または両方が、正常値よりも低下する。2型糖尿病に存在する高血糖は、明らかに、インスリンに対する末梢組織の感受性を回復するのに十分な食事または体重減少によって好転し得る場合があるという事実によって証明されるように、インスリン抵抗は、2型糖尿病において主要な役割を果たす。
【0072】
本発明は、IL−17Aおよび/もしくはIL−17Fアンタゴニストの投与によるインスリン抵抗または2型糖尿病の治療に関する。前述されるように、IL−17Aおよび/もしくはIL−17Fアンタゴニストは、治療されている適応症に応じて、なんらかの手段によって、IL−17Aおよび/もしくはIL−17Fの機能を干渉するか、またはIL−17Aおよび/もしくはIL−17Fの関連活性を遮断または中和する、任意の分子であり得る。IL−17Aおよび/またはIL−17Fと、1つまたは複数のその受容体、特にIL−17Rcの間の相互作用を回避し得る。そのような薬剤は、様々な方法でこの効果を達成する。例えば、IL−17Aおよび/もしくはIL−17Fの活性を中和するアンタゴニストのクラスは、IL−17Aおよび/もしくはIL−17FまたはIL−17Aおよび/もしくはIL−17Fの受容体、特にIL−17Rcに結合し、IL−17Aおよび/またはIL−17Fを干渉するための十分な親和性および特異性を有する。
【0073】
2. 投与および製剤
IL−17アンタゴニストは、任意の適切な経路によって投与されてもよく、静脈内(IV)、筋肉内(IM)、皮下(SC)、および腹腔内(IP)、ならびに経皮、口腔、舌下、直腸内、鼻腔内、および吸入経路であるが、これらに限定されない非経口投与経路を含む。IV、IM、SC、およびIP投与は、ボーラスまたは持続注射によって行われてもよく、SCの場合は、徐放性埋め込み型装置によって行われてもよく、ポンプ、徐放製剤、および機械装置を含むが、これらに限定されない。好ましくは、投与は全身性である。
【0074】
IL−17アンタゴニストの投与のための特に好適な一方法は、特に、定量注入器、例えば、ポンプを使用する皮下注射による。そのようなポンプは、再利用または使い捨て可能であり、埋め込みまたは外部搭載可能であり得る。この目的で通常用いられる薬物注入ポンプは、例えば、米国特許第5,637,095号、第5,569,186号、および第5,527,307号に開示されるポンプを含む。組成物は、そのような装置から連続的または断続的に投与され得る。
【0075】
保管に適したIL−17アンタゴニストの治療製剤は、所望の純度を有するアンタゴニストと、薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤との混合物を(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980))、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で含む。許容される担体、賦形剤、または安定剤は、用いられる用量および濃度において、受容者に非毒性であり、リン酸、クエン酸、および他の有機酸等の緩衝液、アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤、保存剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチル、もしくはベンジルアルコール、アルキルパラベン、例えば、メチルもしくはプロピルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3−ベンタノール、およびm−クレゾール)、低分子量(約10残基未満)ポリペプチド、タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリン、親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン、アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリシン、単糖、二糖、およびグルコース、マンノース、またはデキストリンを含む他の炭水化物、キレート剤、例えば、EDTA、糖類、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロース、もしくはソルビトール、塩形成対イオン、例えば、ナトリウム、金属複合体(例えば、Zn−タンパク質複合体)、および/もしくは非イオン性界面活性剤、例えば、TWEENT(商標)、PLURONICS(商標)、またはポリエチレングリコール(PEG)を含む。好適な凍結乾燥された抗IL−17抗体製剤は、第WO97/04801号に記載されている。これらの組成物は、好ましくは、可溶性形態で、活性アンタゴニストの約0.1〜90重量%、より一般的には、約10〜30重量%を含有するIL−17に対するアンタゴニストを含む。
【0076】
活性成分は、例えば、コアセルベーション技術または界面ポリマー化によって調製される、マイクロカプセル、例えば、それぞれヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセルおよびポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセル、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミン小球体、マイクロエマルション、ナノ粒子、およびナノカプセル)、またはマクロエマルションにそれぞれ捕捉されてもよい。そのような技術は、上記Remington’s Pharmaceutical Sciencesに開示されている。
【0077】
IL−17Aおよび/またはIL−17Fアンタゴニスト、例えば、本明細書に開示される抗IL−17抗体は、免疫リポソームとして製剤されてもよい。抗体を含有するリポソームは、例えば、Epstein et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82:3688(1985)、Hwang et al.,Proc.Natl Acad.Sci.USA,77:4030(1980)、米国特許第4,485,045号ならびに第4,544,545号、および1997年10月23日に公開された国際特許第WO97/38731号に記載されるように、該技術分野において知られている方法によって調製される。拡張された循環時間を有するリポソームは、米国特許第5,013,556号に開示されている。
【0078】
特に有用なリポソームは、逆相蒸発法によってホスファチジルコリン、コレステロール、およびPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG−PE)を含む脂質組成物を用いて生成され得る。リポソームは、定義された孔径のフィルタを通して押し出され、所望の直径を有するリポソームを生じる。本発明の抗体のFab′フラグメントは、Martin et al.,J.Biol.Chem.,257:286−288(1982)に記載されるように、ジスルフィド交換反応を介してリポソームと共役され得る。
【0079】
徐放性調製物が調製されてもよい。徐放性調製物の適切な例には、抗体を含有する固形疎水性ポリマーの半透過性基質が挙げられ、この基質は、成形品の形態であり、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルである。徐放性基質の例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸およびyエチル−L−グルタミン酸塩のコポリマー、非分解性エチレン−酢酸ビニル、分解性乳酸−グリコール酸コポリマー、例えば、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸−グリコール酸コポリマーおよび酢酸ロイプロリドで構成される注射用ミクロスフェア)、およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシブチル酸が挙げられる。
【0080】
特定のアンタゴニストのいずれかは、担体タンパク質に結合されて、治療用アンタゴニストの血清半減期を増加させ得る。例えば、本明細書に記載されるような可溶性免疫グロブリンキメラは、米国特許第5,116,964号に記載されるように、それぞれ特定のIL−17アンタゴニストまたはそのアンタゴニスト部分に対して得ることができる。免疫グロブリンキメラは、IgG結合タンパク質A−セファロースクロマトグラフィを通して容易に精製される。キメラは、随伴性の高親和性および血清半減期を有する免疫グロブリン様二量体を形成する能力を有する。
【0081】
インビボ投与に使用される製剤は、滅菌されなければならない。これは、滅菌ろ過膜を通すろ過によって容易に達成される。
【0082】
本明細書における製剤は、治療される特定の適応症に必要な複数の活性成分、好ましくは、相互に悪影響を及ぼさない補体活性を有するものを含んでもよい。またそのような活性成分は、治療される哺乳動物に個別に投与され得る。
【0083】
例えば、それらの適応症に対するインスリン抵抗治療薬をさらに提供することが望ましい場合がある。さらに、食事および体重減少に応答しない2型糖尿病は、IL−17アンタゴニストとともに、スルホニル尿素による治療に応答し得る。スルホニル尿素薬のクラスは、アセトヘキサミド、クロロプロパミド、トラザミド、トルブタミド、グリベンクラミンド、グリボムリド、グリクラジド、グリピジド、グリキドン、およびグリミジンを含む。この目的の他の薬剤は、自己免疫試薬、インスリン増感剤、例えば、グリタゾン系の化合物、米国特許第5,753,681号に記載されるもの、例えば、トログリタゾン、ピオグリタゾン、エングリタゾン、および関連化合物、インスリン受容体チロシンキナーゼ阻害剤に対するアンタゴニスト(米国特許第5,939,269号および第5,939,269号)、IGF−1/IGFBP−3複合体(米国特許第6,040,292号)、TNF−α機能に対するアンタゴニスト(米国特許第6,015,558号)、成長ホルモン放出剤(米国特許第5,939,387号)、およびアミリンに対する抗体(米国特許第5,942,227号)を含む。使用され得る他の化合物は、インスリン(1つまたは複数の異なるインスリン)、インスリン模倣体、例えば、小分子インスリン、上記のようなインスリン類似体もしくはその生理活性フラグメント、上記のようなインスリン関連ペプチド、またはその類似他体もしくはフラグメントを含む。薬剤は、上記の定義においてさらに特定される。
【0084】
低インスリン血症を治療するために、例えば、インスリンは、IL−17に対するアンタゴニストと一緒に投与され得るか、または別個に投与されてもよい。
【0085】
そのような追加分子は、適切に存在するか、または意図される目的に有効な量、通常、それらがIL−17に対するアンタゴニストなしに単独で投与される場合に使用される量未満で、併せて投与される。それらが一緒に製剤化される場合、例えば、適応症の種類、対象、対象の年齢および体重、現在の臨床状態、投与回数、投与形態、投与方法等に従って決定される量で製剤され得る。例えば、併用薬は、好ましくは、本明細書において、IL−17に対するアンタゴニストの1重量部分に対して、約0.0001〜10,000重量部分の比で使用される。
【0086】
IL−17に対するアンタゴニストをインスリンと併用することは、インスリン単独を投与するときの用量と比較して、インスリン用量の低減を可能にする。したがって、いずれもインスリンの大量投与に伴う問題となり得る、血管合併症および低血糖誘導のリスクが低い。成人糖尿病患者にインスリンを投与する場合(体重約50kg)、例えば、1日当りの用量は、通常、約10〜100U(単位)、好ましくは、10〜80Uであるが、これは、医師によって決定されるように、それ未満でもよい。同一種の患者にインスリン分泌増強剤を投与する場合、例えば、1日当りの用量は、好ましくは、約0.1〜1000mg、より好ましくは、約1〜100mgである。同一種の患者にビグアニドを投与する場合、例えば、1日当りの用量は、好ましくは約10〜2500mg、より好ましくは、約100〜1000mgである。同一種の患者にグルコシダーゼ阻害剤を投与する場合、例えば、1日当りの用量は、好ましくは、約0.1〜400mg、より好ましくは、約0.6〜300mgである。そのような患者に対するエルゴセット、プラムリンチド、レプチン、BAY−27−9955、またはT−1095の投与は、好ましくは、約0.1〜2500mg、より好ましくは、約0.5〜1000mgの用量で行われ得る。上記用量のすべては、1日に1回から数回投与され得る。
【0087】
IL−17アンタゴニストは、膵臓移植等のインスリン抵抗に適した非薬物治療と併せて投与されてもよい。
【0088】
インスリン抵抗または低インスリン血症の哺乳動物に投与されるアンタゴニストの用量は、哺乳動物の状態、アンタゴニストの種類、適応症の種類、および選択される投与経路を含む、関連状況に照らして、医師によって決定される。用量は、好ましくは、任意の有意な程度の体重増加をもたらさないために十分低いレベルであり、医師は、そのレベルを決定することができる。ヒト2型糖尿病の治療に対して承認されたグリタゾン(ロシグリタゾン/アバンジアおよびピオグリタゾン/アクトス)は、ある程度の体重増加をもたらすが、それらの治療指数によって有益であることが証明されているため、副作用があるにも関わらず、それらは使用されている。本明細書に提示される用量範囲は、いかなる方法においても本発明の範囲を制限することを意図しない。本明細書における目的で、低インスリン血症およびインスリン抵抗に「治療上有効な」量は、上記因子によって決定されるが、概して、約0.01〜100mg/kg体重/日である。好適な用量は、約0.1〜50mg/kg/日、より好ましくは、約0.1〜25mg/kg/日である。なおもさらに好ましくは、IL−17アンタゴニストは、毎日投与され、ヒトに対する静脈内または筋肉内用量は、約0.3〜10mg/kg体重/日、より好ましくは、約0.5〜5mg/kgである。皮下投与の場合、用量は、静脈内または筋肉内投与される治療当量よりも多いことが好ましい。好ましくは、ヒトに対する1日の皮下投与量は、両適応症に対して、約0.3〜20mg/kg、より好ましくは、約0.5〜5mg/kgである。
【0089】
本発明は、多様な投与計画を検討する。本発明は、連続的な投与計画を包含し、IL−17アンタゴニストは、実質的な中断なしに規則的に(用量および投与形態に応じて、1日1回、1週間に1回、または1ヶ月に1回)投与される。好適な連続投与計画は、IL−17アンタゴニストが各日に注入される毎日の持続注入、およびIL−17アンタゴニストが少なくとも1日1回、ボーラス注入もしくは吸入または鼻腔内経路によって投与される、連続ボーラス投与を含む。本発明は、断続的投与計画も含む。断続的投与計画の正確なパラメータは、製剤、送達方法、および治療される哺乳動物の臨床ニーズに従って異なる。例えば、IL−17アンタゴニストが注入によって投与される場合、投与計画は、第1の投与期間に続いて、第2の期間を含み得、第1の期間よりも多いか、等しいか、または少ないIL−17アンタゴニストが投与されない。
【0090】
投与がボーラス注入、特に徐放製剤のボーラス注入による場合、投与計画は、連続的であってもよく、IL−17アンタゴニストは、各日投与されるか、または上述されるように、断続的であり得、第1および第2の期間を有する。
【0091】
任意の方法による連続的および断続的投与計画は、例えば、第1の期間の開始時に低用量であるが第1の期間の最後までに増加する、第1の期間中、最初は高用量であるが減少する、最初は低用量であるが、ピークレベルに増加し、次に第1の期間の最後に向かって減少するように、用量が第1の期間を通して調整される、投与計画、およびそれらの任意の組み合わせも含む。
【0092】
IL−17アンタゴニストの投与がインスリン抵抗に及ぼす影響は、該技術分野において知られている多様な検定によって測定され得る。最も一般的に、糖尿病の影響の軽減は、(血糖値の連続試験によって測定されるように)血糖管理の改善、良好な血糖管理を維持するためのインスリン要件の低減、グリコシル化ヘモグロビンの低下、進行性グリコシル化最終生成物(AGE)の血中濃度の減少、「曙現象」の低下、ケトアシドーシスの低下、および脂質プロファイルの改善をもたらす。代替的に、IL−17アンタゴニストの投与は、血糖値の低下、インスリン要件の低減、グリコシル化ヘモグロビンおよび血中AGEの低下、血管、腎臓、神経、および網膜合併症の低下、妊娠合併症の低下、および脂質プロファイルの増加によって示されるように、糖尿病の症状の安定化をもたらし得る。
【0093】
IL−17アンタゴニストの血糖降下作用は、投与前および後の対象における静脈血血漿中のグルコースまたはHb(ヘモグロビン)A1c濃度を決定し、次に、得られた濃度を投与前と投与後とで比較することによって評価することができる。HbA1cは、グリコシル化ヘモグロビンを意味し、血糖濃度に対応して徐々に産生される。したがって、HbA1cは、糖尿病患者における急速な血糖値の変化に容易に影響されない血糖管理の指数として重要であると考えられる。
【0094】
低インスリン血症を治療する証拠は、例えば、患者におけるインスリンの血中濃度の増加によって示される。
【0095】
筋肉修復および再生のための用量は、患者の状態、所望される筋肉修復の特定型等に応じて、通常、約0.01〜100mg/kg体重、より好ましくは、1〜10mg/kgである。投与計画は、この領域の医師によって使用される標準的計画に従う。筋肉修復または再生の証拠は、該技術分野においてよく知られている様々な測定試験によって示され、筋肉細胞の増殖および分化のための検定およびポリメラーゼ連鎖反応試験を含む(例えば、定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応を使用して、ウサギ骨格筋肉を治癒する際に、筋芽細胞および線維芽細胞に由来する遺伝子産生物のmRNA値の変化の分析を提供する、Best et al.,J.Orthop.Res.,19:565−572(2001)を参照)。
【0096】
3. 製造品およびキット
本発明は、インスリン抵抗および低インスリン血症の治療のため、および筋肉の修復および再生のためのキットも提供する。本発明のキットは、IL−17アンタゴニスト、好ましくは抗体の1つまたは複数の容器を、インスリン抵抗または低インスリン血症の治療のため、またはインスリン抵抗と関連付けられる任意の他の標的疾患のためのIL−17アンタゴニストの使用および用量に関する一式の説明書、一般に書面での説明書とともに含む。キットに含まれる説明書は、一般に、インスリン抵抗または低インスリン血症等の標的疾患の治療のための用量、投与計画、および投与経路に関する情報を含む。IL−17アンタゴニストの容器は、ユニット用量、バルクパッケージ(例えば、複数投与パッケージ)、またはサブユニット用量であり得る。
【0097】
製造品は、容器および容器に関するか、または関連付けられるラベルまたはパッケージ挿入物を含む。適切な容器は、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ等を含む。容器は、ガラスまたはプラスチック等の多様な物質から形成されてもよい。容器は、状態を治療するために有効な組成物を保持し、滅菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、皮下注射針によって穿孔可能なストッパーを有する点滴バッグまたはバイアルであってもよい)。組成物中の少なくとも1つの活性剤は、本発明のIL−17アンタゴニストである。ラベルまたはパッケージ挿入物は、組成物が特定の状態を治療するために使用されることを示す。ラベルまたはパッケージ挿入物は、抗体組成物を患者に投与するための説明書をさらに含む。本明細書に記載される複合治療を含む製造品およびキットも検討される。
【0098】
パッケージ挿入物は、適応症、用途、用量、投与、禁忌に関する情報、および/またはそのような治療薬品の使用に関する警告を含む、治療薬品の商用パッケージに習慣的に含まれる説明書を指す。
【0099】
追加として、製造品は、薬学的に許容される緩衝液、例えば、注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝食塩水、リンガー液およびデキストロース液を含む、第2の容器をさらに含んでもよい。他の緩衝液、希釈液、フィルタ、針、およびシリンジを含む、商用およびユーザの見地から望ましい他の物質をさらに含んでもよい。
【0100】
4. 抗体の調製
モノクローナル抗体
モノクローナル抗体は、Kohler et al.,Nature,256:495(1975)によって最初に記載されたハイブリドーマ法を使用して形成され得るか、または組み換えDNA法によって形成されてもよい(米国特許第4,816,567号)。ハイブリドーマ法において、マウスまたは他の適切な宿主動物、例えば、ハムスターまたはマカクザルは、本明細書において上述されるように免疫付与され、免疫付与に使用されるタンパク質に特異的に結合する抗体を産生するか、または産生することができるリンパ球を溶出する。代替的に、リンパ球は、インビトロで免疫付与され得る。リンパ球は、次に、適切な融合剤、例えば、ポリエチレングリコールを使用して、骨髄腫細胞と融合され、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,pp.59−103(Academic Press,1986))。
【0101】
そのように調製されたハイブリドーマ細胞は、好ましくは、非融合の親骨髄腫細胞の成長または生存を阻害する、1つまたは複数の物質を含有する、適切な培地において播種および成長される。例えば、親骨髄腫細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠失する場合、ハイブリドーマの培地は、通常、ヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジン(HAT媒体)を含み、これらの物質は、HGPRT欠損細胞の成長を回避する。
【0102】
好適な骨髄腫細胞は、十分に融合し、選択された抗体産生細胞によって抗体の安定した高レベル産生を支持し、HAT媒体等の媒体に感受性のあるものである。これらの中で、好適な骨髄腫細胞株は、マウス骨髄種細胞株、例えば、Salk Institute Cell Distribution Center,San Diego,Calif.USAから入手可能なMOPC−21およびMPC−11マウス腫瘍に由来するもの、およびAmerican Type Culture Collection,Rockville,Md.USAから入手可能なSP−2またはX63−Ag8−653細胞に由来するものである。ヒト骨髄腫およびマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞株は、ヒトモノクローナル抗体の産生についても説明されている(Kozbor,J.Immunol.,133:3001(1984)、Brodeur et al,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51−63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987))。
【0103】
ハイブリドーマ細胞が成長している培地は、抗原に対して配向されるモノクローナル抗体の産生について検定される。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降またはインビトロ結合検定、例えば放射免疫測定(RIA)または酵素結合免疫吸着測定(ELISA)によって決定される。
【0104】
所望の特異性、親和性、および/または活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞が識別された後、希釈手順を限定することによって、クローンをサブクローン化し、標準的な方法によって成長されてもよい(Goding,MonoclonalAntibodies:Principles and Practice,pp.59−103(Academic Press,1986))。この目的のための適切な培地は、例えば、D−MEMまたはRPMI−1640倍地を含む。さらに、ハイブリドーマ細胞は、動物における腹水腫瘍として、インビボで成長され得る。
【0105】
サブクローンによって分泌されるモノクローナル抗体は、従来の免疫グロブリン精製手順、例えば、タンパク質A−セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィ、ゲル電気泳動、透析、または親和性クロマトグラフィによって、培地、腹水、または血清から適切に分離される。
【0106】
モノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して、容易に単離および配列決定される(例えば、モノクローナル抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)。ハイブリドーマ細胞は、そのようなDNAの好適な供給源としての役割を果たす。一旦単離されると、DNAは、発現ベクターに置かれてもよく、次に、そうでなければ免疫グロブリンタンパク質を産生しない、大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または骨髄腫細胞等の宿主細胞にトランスフェクトされて、組み換え宿主細胞中のモノクローナル抗体の合成物を得る。抗体の組み換え産生は、以下でさらに詳細に説明される。
【0107】
さらなる実施形態において、抗体または抗体フラグメントは、McCafferty et al.,Nature,348:552−554(1990)に記載される技術を使用して生成される抗体ファージライブラリから単離され得る。
【0108】
Clackson et al.,Nature,352:624−628(1991)およびMarks et al.,J.Mol.Biol.,222:581−597(1991)は、それぞれファージライブラリを使用するマウスおよびヒト抗体の単離について説明する。後次の発行物は、鎖シャッフルによるヒト抗体の高親和性(nM範囲)の産生(Marks et al.,Bio/Technology,10:779−783(1992))、ならびに極めて大きいファージライブラリを構成するための方法としての組み合わせ感染およびインビボ組み換えについて説明している(Waterhouse et al.,Nuc.Acids.Res.,21:2265−2266(1993))。したがって、これらの技術は、モノクローナル抗体の単離に対する伝統的なモノクローナル抗体ハイブリドーマ技術の実行可能な代替案である。
【0109】
DNAは、例えば、同種マウス配列の代わりに、ヒト重鎖および軽鎖定常ドメインのコード配列を置き換えることによって(米国特許第4,816,567号、Morrison,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851(1984))または非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列のすべてまたは一部を免疫グロブリンコード配列に共有結合することによって修飾されてもよい。
【0110】
通常、そのような非免疫グロブリンポリペプチドは、抗体の定常ドメインと置換されるか、またはそれらは、抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインと置換されて、抗原に対して特異性を有する1つの抗原結合部位および異なる抗原に対して特異性を有する別の抗原結合部位を含むキメラ二価抗体を形成する。
【0111】
ヒト化およびヒト抗体
ヒト化抗体は、非ヒトである供給源からそれに導入される、1つまたは複数のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、典型的に、「インポート」可変ドメインから取られる、「インポート」残基と称される場合が多い。ヒト化は、本質的に、Winterおよび共働者の方法に従って(Jones et al.,Nature,321:522−525(1986)、Riechmann et al.,Nature,332:323−327(1988)、Verhoeyen et al.,Science,239:1534−1536(1988))、齧歯動物CDRまたはCDR配列をヒト抗体の対応する配列と置換することによって行われる。したがって、そのような「ヒト化」抗体は、キメラ抗体であり(米国特許第4,816,567号)、実質的に正常ではないヒト可変ドメインは、非ヒト種からの対応する配列によって置換された。実際に、ヒト化抗体は、通常、ヒト抗体であり、いくつかのCDR残基および恐らくいくつかのFR残基は、齧歯動物抗体における類似体部位からの残基によって置換される。
【0112】
ヒト化抗体を形成する際に使用されるヒト可変ドメインの選択は、軽鎖および重鎖のいずれも、抗原性を低下させるために極めて重要である。いわゆる「最適な」方法に従って、齧歯動物抗体の可変ドメインの配列は、知られているヒト可変ドメイン配列の全体ライブラリに対してスクリーニングされる。齧歯動物のそれに最も近いヒト配列は、次に、ヒト化抗体のヒトフレームワーク(FR)として認められる(Sims et al.,J.Immunol.,151:2296(1993)、Chothia et al.,J.Mol.Biol.,196:901(1987))。別の方法は、軽鎖または重鎖の特定亜群のすべてのヒト抗体のコンセンサス配列に由来する、特定のフレームワークを使用する。同一のフレームワークを、いくつかの異なるヒト化抗体に使用してもよい(Carter et al.,Proc.Natl.Acad Sci.USA,89:4285(1992)、Presta et al.,J.Immnol.,151:2623(1993))。
【0113】
抗原に対する高い親和性の保持および他の好ましい生物特性によって抗体をヒト化することがさらに重要である。この目的を達成するために、好適な方法に従って、ヒト化抗体は、親およびヒト化配列の3次元モデルを使用し、親配列および様々な概念的ヒト化生成物の分析の過程によって調製される。3次元免疫グロブリンモデルは、一般に入手可能であり、当業者によく知られている。選択される候補免疫グロブリン配列の潜在的な3次元立体配座構造を説明および表示する、コンピュータプログラムが入手可能である。この表示の検査は、候補免疫グロブリン配列の機能における残基の推定される役割の分析、すなわち、候補免疫グロブリンがその抗原に結合する能力に影響する残基の分析を許可する。このようにして、FR残基は、受容体およびインポート配列から選択および結合して、所望の抗体特性、例えば、標的抗原の親和性の増加が達成されるようにすることができる。一般に、CDR残基は、抗原結合への影響に直接およびほぼ実質的に関与する。
【0114】
代替的に、ここで、免疫化の際に、内因性免疫グロブリン産生の不在下で、ヒト抗体の完全レパートリーを産生することができる、トランスジェニック動物(例えば、マウス)を産生することが可能である。例えば、キメラおよび生殖細胞変異マウスにおける抗体重鎖結合領域(J.sub.H)遺伝子のホモ接合体欠失は、内因性抗体産生の完全な阻害をもたらすことが説明されている。そのような生殖細胞変異マウスにおけるヒト生殖細胞遺伝子配列の導入は、抗原投与時にヒト抗体の産生をもたらす。例えば、Jakobovits et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:2551(1993)、Jakobovits et al.,Nature,362:255−258(1993)、Bruggermann et al.,Year in Immuno.,7:33(1993)、およびDuchosal et al.Nature 355:258(1992)を参照されたい。ヒト交抗体は、ファージ表示ライブラリにも由来し得る(Hoogenboom et al,J.Mol.Biol.,227:381(1991)、Marks et al,J.MoL Biol.,222:581−597(1991)、Vaughan et al.Nature Biotech 14:309(1996))。抗体ファージ表示ライブラリからのヒト抗体の生成は、以下でさらに説明される。
【0115】
抗体フラグメント
抗体フラグメントの産生に対して、様々な技術が開発されている。伝統的に、これらのフラグメントは、正常な抗体のタンパク質分解消化を介して生成された(例えば、Morimoto et al.,Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107−117(1992)およびBrennan et al.,Science,229:81(1985)を参照)。しかしながら、これらのフラグメントは、現在、組み換え宿主細胞によって直接産生され得る。例えば、抗体フラグメントは、上述される抗体ファージライブラリから単離され得る。代替的に、Fab′−SHフラグメントは、大腸菌から直接回復され、化学的に結合されてF(ab′)2フラグメントを形成することができる(Carter et al.,Bio/Technology 10:163−167(1992))。以下の実施例に記載される別の実施形態において、F(ab′)2は、ロイシンジッパーGCN4を使用して形成され、F(ab′)2分子の集合を促進する。別のアプローチに従って、F(ab′)2フラグメントは、組み換え宿主細胞培養から直接単離され得る。抗体フラグメントの産生のための他の技術は、熟練した実践者に明らかとなるであろう。他の実施形態において、選択された抗体は、単鎖Fvフラグメント(scFv)である。国際特許第WO93/16185号を参照されたい。
【0116】
多特異的抗体
多特異的抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープに対して結合特異性を有し、エピトープは、通常、異なる抗原に由来する。そのような分子は、通常、2つの異なるエピトープ(すなわち、二重特異性抗体、BsAb)を結合するに過ぎないが、追加の特異性を有する抗体、例えば、三重特異性抗体は、本明細書において使用される場合、この表現に包含される。二重特異性抗体を形成するための方法は、当業者に知られている。完全長二重特異性抗体の伝統的産生は、2つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖対の共発現に基づき、2つの鎖は、異なる特異性を有する(Millstein et al.,Nature,305:537−539(1983))。免疫グロブリン重鎖および軽鎖のランダム分類に起因して、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10個の異なる抗体分子の潜在的な混合物を産生し、それらのうちの1つのみが適切な二重特異性構造を有する。通常、親和性クロマトグラフィステップによって行われる適切な分子の精製は、むしろ面倒であり、生産収率は低い。同様の手順は、国際特許第WO93/08829号、およびTraunecker et al.,EMBO J.,10:3655−3659(1991)に開示される。異なるアプローチに従って、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗体−抗原結合部位)は、免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合される。融合は、好ましくは、ヒンジ、CH2、およびCH3領域の少なくとも一部を含む、免疫グロブリン重鎖定常ドメインを用いる。融合の少なくとも1つに存在する、軽鎖結合に必要な部位を含む、第1の重鎖定常領域(CH1)を有することが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合、および必要に応じて免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAは、個別の発現ベクターに挿入され、適切な宿主有機体に共トランスフェクトされる。これは、実施形態において、組成物中で使用される3つのポリペプチド鎖の不均等率が最適な収率を提供する場合に、3つのポリペプチドフラグメントの相互比率を調整する際に優れた柔軟性を提供する。しかしながら、少なくとも2つのポリペプチド鎖の等比の発現が高い収率をもたらす場合、または比率が特に重要でない場合、1つの発現ベクターに2つまたは3つのポリペプチド鎖すべてのコード配列を挿入することが可能である。
【0117】
本アプローチの好適な実施形態において、二重特異性抗体は、一方のアームに第1の結合特異性を有するハイブリッド免疫グロブリン重鎖、および他方のアームにハイブリッド免疫グロブリン重鎖−軽鎖対(第2の結合特異性を提供する)で構成される。二重特異性分子の半分のみにおける免疫グロブリン軽鎖の存在が、容易な分離方法を提供するため、この非対称構造は、望ましくない免疫グロブリン鎖の結合からの所望の二重特異性化合物の分離を促進することが分かった。このアプローチは、国際特許第WO94/04690号に開示される。二重特異性抗体の生成に関するさらなる詳細は、例えば、Suresh et al.,Methods in Enzymology,121:210(1986)を参照されたい。
【0118】
国際特許第WO96/27011号に記載される別のアプローチに従って、抗体分子対の間のインターフェースを操作して、組み換え細胞培養から回復される、ヘテロ二量体のパーセンテージを最大化することができる。好適なインターフェースは、抗体定常ドメインのCH3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法において、第1の抗体分子のインターフェースからの1つまたは複数の小アミノ酸側鎖は、より大きい側鎖(例えば、チロシンまたはトリプトファン)と置換される。大側鎖と同一または類似する大きさの相補「空洞」は、大アミノ酸側鎖を小さいもの(例えば、アラニンまたはトレオニン)と置換することによって、第2の抗体分子のインターフェース上で形成される。これは、ホモ二量体等の他の望ましくない最終生成物に関してヘテロ二量体の収率を増加させるための機序を提供する。
【0119】
二重特異性抗体は、架橋または「ヘテロ共役」抗体を含む。例えば、ヘテロ共役における抗体の1つはアビジンに結合され、もう1つはビオチンに結合され得る。そのような抗体は、例えば、望ましくない細胞に対する標的免疫系細胞(米国特許第4,676,980号)、およびHIV感染の治療(国際特許第WO91/00360号、第WO92/200373号)に対して提案されている。ヘテロ共役抗体は、任意の便利な架橋方法を使用して形成されてもよい。適切な架橋剤は、当業者によく知られており、多数の架橋技術とともに、米国特許第4,676,980号に開示される。
【0120】
二重特異性抗体を抗体フラグメントから生成する技術も文献に記載されている。例えば、二重特異性抗体は、化学結合を使用して調製することができる。Brennan et al.,Science 229:81(1985)は、正常な抗体がタンパク質分解により開裂されて、F(ab′)2を生成する手順を説明している。これらのフラグメントは、ジチオール錯化剤亜ヒ酸ナトリウムの存在下で還元され、隣接ジチオールを安定化し、分子間ジスルフィド形成を回避する。生成されるFab′フラグメントは、次に、チオニトロベンゾエート(TNB)誘導体に変換される。Fab′−TNB誘導体の1つは、次に、メルカプトエチルアミンで還元することによってFab′−チオールに再変換され、等モル量の他のFab′−TNB誘導体と混合されて、二重特異性抗体を形成する。産生される二重特異性抗体は、酵素の選択的固定のための薬剤として使用され得る。
【0121】
Fab′−SHフラグメントは、大腸菌から直接回復することもでき、化学的に結合されて、二重特異性抗体を形成し得る。Shalaby et al.,J.Exp.Med.,175:217−225(1992)は、完全にヒト化した二重特異性抗体F(ab′)2分子の産生を説明している。各Fab′フラグメントは、大腸菌から個別に分泌され、二重特異性抗体を形成するように、インビトロで化学結合を方向づけるように供される。
【0122】
二重特異性抗体フラグメントを組み換え細胞培養から直接形成および単離するための様々な技術も説明されている。例えば、二重特異性抗体は、ロイシンジッパーを使用して産生されている(Kostelny et al.,J.Immunol.,148(5):1547−1553(1992))。FosおよびJunタンパク質からのロイシンジッパーペプチドは、遺伝子融合によって、2つの異なる抗体のFab′部分に結合された。抗体ホモ二量体は、ヒンジ領域において還元されて単量体を形成し、次に、再酸化されて抗体ヘテロ二量体を形成する。この方法は、抗体ホモ二量体の産生に利用することもできる。Hollinger et al.,Proc.Nati.Acad.Sci.USA,90:6444−6448(1993)によって説明される「二重特異性抗体」技術は、二重特異性抗体フラグメントを形成するための代替機序を提供した。フラグメントは、短すぎて同一鎖上の2つのドメイン間を対にできないリンカーによって、軽鎖可変ドメイン(VL)に結合される、重鎖可変ドメイン(VH)を含む。したがって、1つのフラグメントのVHおよびVLドメインは、別のフラグメントの相補VLおよびVHドメインと強制的に対になり、それによって、2つの抗原結合部位を形成する。単鎖Fv(sFv)二量体の使用によって、二重特異性抗体フラグメントを形成するための別の戦略も報告されている。Gruber et al,J.Immunol,152:5368(1994)を参照されたい。
【0123】
2つより多い原子価を有する抗体が検討される。例えば、三重特異性抗体を調製することができる(Tuft et al.J.Immunol.147:60(1991))。
【0124】
エフェクタ機能工学
抗体の有効性を強化するように、エフェクタ機能に関して本発明の抗体を修飾することが望ましい場合がある。例えば、1つまたは複数のシステイン残基は、Fc領域に導入されてもよく、それによって、この領域における鎖間ジスルフィド結合形成を可能にする。したがって、生成されるホモ二量体は、内在化能力を向上させ、および/または相補媒介性細胞殺傷および抗体依存性細胞性細胞毒性(ADCC)を高める場合がある。Caron et al.,J.Exp Med.176:1191−1195(1992)およびShopes,B.J.Immunol.148:2918−2922(1992)を参照されたい。強化された抗腫瘍活性を有するホモ二量抗体は、Wolff et al.Cancer Research 53:2560−2565(1993)に記載されるように、ヘテロ二官能性架橋剤を使用して調製されてもよい。代替的に、二重Fc領域を有する抗体を操作することができ、それによって、相補溶解およびADCC能力を強化し得る。Stevenson et al Anti−Cancer Drug Design 3:219−230(1989)を参照されたい。
【0125】
抗体−温存受容体結合エピトープ融合
本発明の特定の実施形態において、正常な抗体よりも、抗体フラグメントを使用することが望ましい場合がある。この場合、その血清半減期を増加させるために、抗体フラグメントを修飾することが望ましい場合がある。これは、例えば、温存受容体結合エピトープを抗体フラグメントに組み込むことによって達成されてもよい(例えば、抗体フラグメントにおける適切な領域の変異またはエピトープを、次に末端または中間のいずれかにおいて、抗体フラグメントに融合されるペプチドタグに組み込むことによって、例えば、DNAまたはペプチド合成によって)。
【0126】
温存受容体結合エピトープは、好ましくは、Fcドメインの1つまたは複数のループからの1つまたは複数のアミノ酸残基が、抗体フラグメントの類似部分に転移される領域を構成する。さらにより好ましくは、Fcドメインの1つまたは2つのループからの3つ以上の残基が転移される。さらにより好ましくは、エピトープは、Fc領域(例えば、IgG)のCH2ドメインから取られ、抗体のCH1、CH3、もしくはV.sub.H領域、または複数のそのような領域に転移される。代替的に、エピトープは、Fc領域のCH2ドメインから取られ、抗体フラグメントのCL領域もしくはVL領域、または両方に転移される。
【0127】
他の抗体の共有結合修飾
抗体の共有結合修飾は、本発明の範囲内に含まれる。それらは、化学合成によって、または該当する場合は、抗体の酵素または化学開裂によって形成され得る。抗体の他の種の共有結合修飾は、抗体の標的アミノ酸残基を、選択された側鎖またはNもしくはC末端残基と反応することができる、有機誘導体化剤と反応させることによって、分子に導入される。共有結合修飾の例は、米国特許第5,534,615号に記載され、特に、参照することにより本明細書に組み込まれる。好適な種の抗体の共有結合修飾は、第4,640,835号、第4,496,689号、第4,301,144号、第4,670,417号、第4,791,192号、または第4,179,337号に記載される方法で、抗体を多様な非タンパク質性ポリマー、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、またはポリオキシアルキレンのうちの1つに結合することを含む。
【0128】
合成抗体ファージライブラリからの抗体の生成
好適な実施形態において、本発明は、固有のファージ表示アプローチを使用して、新規の抗体を生成および選択するための方法を提供する。アプローチは、単一のフレームワークテンプレート、可変ドメイン内の十分な多様性の設計、多様な可変ドメインを有するポリペプチドの表示、抗原を標的とするために高い親和性を有する候補抗体の選択、および選択された抗体の単離に基づく、合成抗体ファージライブラリの生成を伴う。
【0129】
ファージディスプレイ方法の詳細は、例えば、2003年12月11日に公開された第WO03/102157号において見出され、その開示全体は、参照することにより本明細書に明示的に組み込まれる。
【0130】
一態様において、本発明で使用される抗体ライブラリは、抗体可変ドメインの少なくとも1つのCDRにおいて、溶媒接触可能および/または多様性に富む位置を変異させることによって生成され得る。CDRの一部またはすべてを、本明細書に提供される方法を使用して変異させることができる。いくつかの実施形態において、CDRH1、CDRH2、およびCDRH3における位置を変異させて単一ライブラリを形成するか、もしくはCDRL3およびCDRH3における位置を変異させて単一ライブラリを形成するか、またはCDRL3ならびにCDRH1、CDRH2およびCDRH3における位置を変異させて単一ライブラリを形成することによって、多様な抗体ライブラリを生成することが好ましい場合がある。
【0131】
抗体可変ドメインのライブラリは、例えば、溶媒接触可能および/または多様性に富むCDRH1、CDRH2、およびCDRH3の位置に変異を有して生成され得る。別のライブラリは、CDRL1、CDRL2、およびCDRL3において変異を有して生成され得る。これらのライブラリは、所望の親和性の結合体を生成するように、相互に併用することもできる。例えば、標的抗原に結合するための重鎖ライブラリの選択を1回または複数回行った後、軽鎖ライブラリは、さらなる選択のために重鎖結合体の集団に置換されて、結合体の親和性を高め得る。
【0132】
好ましくは、ライブラリは、元のアミノ酸を重鎖配列の可変領域のCDRH3領域における可変アミノ酸と置換することによって形成される。得られるライブラリは、多数の抗体配列を含むことができ、配列多様性は、主に、重鎖配列のCDRH3領域にある。
【0133】
一態様において、ライブラリは、ヒト化抗体4D5配列、またはヒト化抗体4D5配列のフレームワークアミノ酸の配列の文脈において形成される。好ましくは、ライブラリは、重鎖の少なくとも残基95〜100aを、DVKコドンセットによりコードされたアミノ酸と置換することによって形成され、DVKコドンセットは、これらの位置のすべてに対する一式の可変アミノ酸をコードするように使用される。これらの置換を形成するために有用なオリゴヌクレオチドの実施例は、配列(DVK)7を含む。いくつかの実施形態において、ライブラリは、残基95〜100aを、DVKおよびNNKコドンセットの両方によってコードされるアミノ酸と置換することによって形成される。これらの置換を形成するために有用なオリゴヌクレオチドセットの例は、配列(DVK)6(NNK)を含む。別の実施形態において、ライブラリは、少なくとも残基95〜100aを、DVKおよびNNKコドンセットの両方によってコードされるアミノ酸と置換することによって形成される。これらの置換に有用なオリゴヌクレオチドセットの例は、配列(DVK)5(NNK)を含む。これらの置換に有用なオリゴヌクレオチドセットの別の例は、配列(NNK)6を含む。適切なオリゴヌクレオチド配列の他の例は、本明細書に記載される基準に従って、当業者によって決定され得る。
【0134】
別の実施形態において、高親和性結合体を単離し、多様なエピトープの結合体を単離するように、異なるCDRH3設計が利用される。このライブラリで生成されるCDRH3の長さの範囲には、11〜13アミノ酸であるが、これとは異なる長さも生成され得る。H3多様性は、NNK、DVK、およびNVKコドンセットを使用することによって拡張され得ると同時に、Nおよび/またはC末端において多様性はさらに限定される。
【0135】
多様性は、CDRH1およびCDRH2においても生成され得る。CDR−H1およびH2多様性の設計は、以前の設計よりも自然多様性により密接に適合された多様性に焦点を当てた修飾に関して記載されるように、模倣天然抗体レパートリーに対する標的方法に従う。
【0136】
CDRH3の多様性の場合、異なる長さのH3を用いて、複数のライブラリが個別に構成され、次に、結合されて、抗原を標的とするために結合体に対して選択され得る。複数のライブラリは、前述および本明細書において以下に記載されるように、固相担体選択および溶液分類方法を使用してプールおよび分類され得る。複数の分類方法を用いてもよい。例えば、1つの変異は、個体に結合される標的に関する分類、次に、融合ポリペプチド(例えば、抗gDタグ)上に存在し得るタグの分類、および次に固体に結合される標的に関する別の分類を伴う。代替的に、ライブラリは、固体表面に結合される標的に関して最初に分類され得、次に、溶出した結合体は、標的抗原の漸減濃度を有する液相結合を使用して分類される。異なる分類方法の組み合わせを利用すると、高度に発現した配列の選択の最小化を提供し、多数の異なる高親和性クローンの選択を提供する。
【0137】
標的抗原の高親和性結合体は、ライブラリから単離され得る。H1/H2領域の多様性を限定することは、縮退を約104〜105倍減少させ、さらなるH3多様性を可能にし、より高い親和性結合体を提供する。CDRH3において異なる種の多様性を有するライブラリを利用すること(例えば、DVKまたはNVTを利用すること)は、標的抗原の異なるエピトープに結合し得る結合体の単離を提供する。
【0138】
上述されるように、プールされたライブラリから単離された結合体の親和性は、軽鎖において制限された多様性を提供することによってさらに向上し得ることが発見された。軽鎖の多様性は、本実施形態において、以下のように生成される。CDRL1において、アミノ酸28位がRDTによってコードされる。アミノ酸29位がRKTによってコードされる。アミノ酸30位が、RVWによってコードされる。アミノ酸31位がANWによってコードされる。アミノ酸32位がTHTによってコードされる。任意で、アミノ酸33位がCTGによってコードされる。CDRL2において、アミノ酸50位が、KBGによってコードされる。アミノ酸53位が、AVCによってコードされる。および任意で、アミノ酸55位が、GMAによってコードされる。CDRL3において、アミノ酸91位が、TMTもしくはSRTまたは両方によってコードされる。アミノ酸92位が、DMCによってコードされる。アミノ酸93位が、RVTによってコードされる。アミノ酸94位が、NHTによってコードされる。およびアミノ酸96位が、TWTもしくはYKGまたは両方によってコードされる。
【0139】
別の実施形態において、CDRH1、CDRH2、およびCDRH3領域において多様性を有する1つまたは複数のライブラリが生成される。この実施形態において、CDRH3の多様性は、多様なH3領域の長さを使用し、主にコドンセットXYZおよびNNKまたはNNSを使用して生成される。ライブラリは、個別のオリゴヌクレオチドを使用して形成およびプールされ得るか、またはオリゴヌクレオチドは、プールされてライブラリのサブセットを形成し得る。本実施形態のライブラリは、固体に結合される標的に対して分類され得る。複数の分類から単離されるクローンは、ELISA検定を使用して、特異性および親和性をスクリーニングすることができる。特異性に関して、クローンは、所望の標的抗原ならびに非標的抗原に対してスクリーニングされ得る。標的抗原に対するそれらの結合体は、次に、溶液結合競合ELISA検定またはスポット競合検定において、親和性をスクリーニングすることができる。高親和性結合体は、上述されるように調製される、XYZコドンセットを利用して、ライブラリから単離され得る。これらの結合体は、細胞培養において、抗体または抗原結合フラグメントとして、高い収率で容易に産生され得る。
【0140】
いくつかの実施形態において、CDRH3領域の長さにおいて優れた多様性を有するライブラリを生成することが望ましい場合がある。例えば、約7〜19アミノ酸の範囲のCDRH3領域を有するライブラリを生成することが望ましい場合がある。
【0141】
これらの実施形態のライブラリから単離された高親和性結合体は、細菌および真核細胞培養において、高い収率で容易に産生される。ベクターは、gDタグ、ウイルス外被タンパク質成分配列等の配列を容易に除去し、および/または定常領域配列に追加して、高い収率の完全長の抗体または抗原結合フラグメントの産生を提供するように設計され得る。
【0142】
CDRH3において変異を有するライブラリは、他のCDRの変異型、例えば、CDRL1、CDRL2、CDRL3、CDRH1および/またはCDRH2を含むライブラリと結合され得る。したがって、例えば、一実施形態において、CDRH3ライブラリは、既定のコドンセットを使用して、28、29、30、31、および/または32位において、可変アミノ酸を有するヒト化4D5抗体配列の文脈において形成される、CDRL3ライブラリと結合される。別の実施形態において、CDRH3に対する変異を有するライブラリは、可変CDRH1および/またはCDRH2重鎖可変ドメインを含むライブラリと結合され得る。一実施形態において、CDRH1ライブラリは、28、30、31、32および33位において、可変アミノ酸を有するヒト化抗体4D5配列を用いて形成される。CDRH2ライブラリは、既定のコドンセットを使用して、50、52、53、54、56および58位において、可変アミノ酸を有するヒト化抗体4D5の配列を用いて形成され得る。
【0143】
前述の記載は、当業者が本発明を実践するために十分であると考えられる。以下の実施襟は、単なる例証目的で提供され、いかなる方法においても本発明の範囲を制限することを意図しない。実際に、本発明の様々な修正は、本明細書に示され、記載されるものに加えて、前述の記載から当業者に明らかとなり、添付の請求項の範囲内に含まれる。
【0144】
実施例において参照され市販の試薬は、他に指定のない限り、製造者の指示に従って使用した。以下の実施齢において、明細書全体を通して、ATCC受入番号によって識別されるそれらの細胞の供給源は、American Type Culture Collection,Manassas,VAである。他に指定のない限り、本発明は、組み換えDNA技術の標準手順、例えば、本明細書において上述されるもの、および以下のテキストに記載されるものを使用する。Sambrook et al.,上記、Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology(Green Publishing Associates and Wiley Interscience,N.Y.,1989)、Innis et al.,PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications(Academic Press,Inc.N.Y.,1990)、Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Press:Cold Spring Harbor,1988)、Gait,Oligonucleotide Synthesis(IRL Press:Oxford,1984)、Freshney,Animal Cell Culture,1987、Coligan et al.,Current Protocols in Immunology,1991を使用する。
【0145】
本発明のさらなる詳細は、以下の非限定的な実施例において提供される。
【0146】
開示全体で引用されるすべての参照文献は、それら全体を参照することにより本明細書に明示的に組み込まれる。
【0147】
実施例1
糖尿病およびインスリン抵抗におけるIL−17ファミリーメンバーの役割
IL−17Rc KOマウスおよび高脂質食モデルの研究
8週齢の雄IL−17Rc(UNQ6118.KO.lex)ノックアウトおよび同腹子野生型(WT)対照マウスに、普通のキャベツ食または60%高脂質食(HFD)のいずれかを与えた。
【0148】
1群:高脂質食のIL−17Rcノックアウト(KO)マウス(5匹)
2群:高脂質食のIL−17Rc、WT同腹子対照(5匹)
3群:普通食のIL−17Rc KOマウス(3匹)
4群:普通食のIL−17Rc WT同腹子対照(3匹)
【0149】
実験計画は、図7に示される。
【0150】
マウスは、グルコース負荷試験(GTT)に供され、それらのインスリン抵抗状態に到達した。
【0151】
GTTは、以下の方法を使用して行った。
【0152】
血糖値およびインスリン測定:血液試料は、伏在静脈出血によって採取し、グルコメータを使用して、即時に糖濃度を分析した(Lifescan,USA製OneTouch Glucometer)。血清インスリンは、ELISA方法を使用して測定した。
【0153】
グルコース負荷試験(GTT):一晩の絶食(14時間)後の朝、午前9:00に動物を試験した。血糖値は、各動物の1.5mg/体重gでグルコースを腹腔内注射する前、ならびにグルコース投与後30、60、120および150分後に、伏在静脈出血から得られた試料上で測定した。値は、グルコースのmg/dLとして計算した。
【0154】
GTTは、ベースライン(高脂質食を与えられる前)、ならびに高脂質食後8週、10週、12週、および14週の群に対して行った。普通のキャベツ食を与えられたマウスは、対照群として使用した。残りの条件は、ノックアウトおよび野生型(WT)同腹子対照マウスにおいて同様とした。
【0155】
動物のGTT総体重に加えて、空腹時血清インスリンおよびグルコース値を毎週監視した。
【0156】
結果は、図8〜11に示される。
【0157】
IL−17Rc WT同腹子対照マウスは、有意な体重増を示し、かつ、インスリン抵抗発現型を発現させたが、IL−17Rcノックアウトマウスは、それらのWT同腹子対照よりも有意に細く、はるかに良好にグルコースをクリアした。高脂質食を12週間よりも長く与えた後であっても、ノックアウトマウスは、体重が増加しなかった。両群は、同様の空腹時循環インスリン値を示した。対照食を与えた群において、KOマウスとWTマウスとの間に有意差は認められなかった。
【0158】
IL−17Rc KOマウスを使用する上述の実験に加えて、2つの個別の研究を行い、糖尿病およびインスリン抵抗における炎症促進性サイトカインIl−17AおよびIL−17Fの役割を検討した。
【0159】
実施例2
抗IL−17および抗IL−17F mAbがインスリン抵抗高脂質食モデルマウスに及ぼす影響
本研究の目的は、予防的および確立されたインスリン抵抗モデルにおける抗IL−17および抗IL−17F mAbの有用性を調査すること、およびmuTNFRII−Fcの治療効果と比較することである。
【0160】
実験計画および群:
1群:100μL生理食塩水中6mg/kgのブタクサ、腹腔内に3回/週を10週間(n=10)。
2群:100μL生理食塩水中4mg/kgのMuTNFRII−IgG2a、3回/週を10週間(n=10)。
3群:100μL生理食塩水中6mg/kgのMuAnti−IL−17、腹腔内に3回/週を10週間(n=10)。
4群:100μL生理食塩水中6mg/kgのMuAnti−IL−17+MuAnti−IL−17F mAb、腹腔内に3回/週を10週間(n=10)。
5群:18週および24週において、MuTNFRII−Fc 4mg/kg=6mg/kgのMuAnti−IL−176+6mg/kgのMuAnti−IL17FmAb(10匹)。
【0161】
すべての群に、高脂質食を与えた。マウスのインスリン抵抗状態を評価するために、HFDおよび抗体投与から2週間後毎に、グルコース負荷試験(GTT)を行った。
【0162】
プロトコルは、図12に例証される。抗IL−17Aおよび抗IL−17F MAbが投与の9週間後の糖耐能に及ぼす影響は、図13に示される。
【0163】
実施例3
IL−17の過剰発現がGTTにより評価されるインスリン抵抗状態に及ぼす影響
研究は、正常および高脂質食を与えられたマウスにおける天然マウスIL−17AおよびIL−17Fタンパク質の発現のためのプラスミドDNAの流体力学的尾静脈(HTV)注射に基づいて、インスリン抵抗におけるその役割を研究するために、マウスにおいて高レベルの炎症促進性サイトカインマウスIL−17AおよびIL−17Fを発現させた。
【0164】
1群:プラスミドなし
2群:pRKベクター単独
3群:pRK−IL−17A
4群:pRK−IL−17F
【0165】
各群内で、様々な時点(DNA摂取後0時間、2時間、6時間、24時間、および72時間)に5つのマウス亜群に注射して血液を採取し、血清中の循環サイトカイン値を測定した。一旦これが確立されると、IL−17AおよびIL−17Fは、高脂質食(HFD)マウスにおいて過剰発現し、インスリン抵抗状態の変化に到達した。
【0166】
尾静脈注射実験:
1)DNA構成(pRKベクターまたはpRK−IL−17AおよびpRK−IL−17F)を生理食塩水中で(リンガー液が好ましい)、50μg/マウス/注射の最終用量をもたらす濃度に希釈した。
2)各マウスの尾静脈に、生理食塩水またはリンガー液中にDNAを含有する約1.6mlの溶液を経静脈的に注射した。
3)用量は、ボーラス静脈内注射(尾静脈)として、最大DNA摂取のために4〜5秒(最大8秒)をかけて投与した。
【0167】
結果は、図14に示される。A)8週齢のc57BL/6マウスに、50μgのプラスミドDNA(pRK−IL−17A)またはpRKベクターを単独で注射した。48時間後、血清を両群から採取し、血清中のIl−17値をELISAによって測定した。B)3つのマウス群を一晩絶食させ、腹腔内GTTに供し、グルコース注射後の時間とともに結果をプロットする(*p>0.05)。
【0168】
本発明は、特定の実施形態であると考えられるものを参照して説明されたが、本発明は、そのような実施形態に限定されないことを理解されたい。反対に、本発明は、付属の請求項の精神および範囲内に含まれる、様々な修飾および相当物を網羅することが意図される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、インスリン抵抗性疾患の治療に関する。具体的には、本発明は、IL−17、例えば、IL−17Aおよび/もしくはIL−17Fアンタゴニスト、例えば、抗IL−17Aおよび/もしくはIL−17Fおよび/もしくはIL−17Rc抗体、または抗体フラグメントの投与による、インスリン抵抗性疾患の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
IL−17ファミリー
インターロイキン17A(IL−17A)は、上皮、内皮、および線維芽細胞を刺激して、IL−6、IL−8、G−CSF、およびMCP−1を含む他の炎症性サイトカインおよびケモカインを産生する、T細胞由来の炎症促進性分子である(Yao,Z.et al.,J.Immunol.,122(12):5483−5486(1995)、Yao,Z.et al,Immunity,3(6):811−821(1995)、Fossiez,F.,et al.,J.Exp.Med.,183(6):2593−2603(1996)、Kennedy,J.,et al.,J.Interferon Cytokine Res.,16(8):611−7(1996)、Cai,X.Y.,et al.,Immunol.Lett,62(1):51−8(1998)、Jovanovic,D.V.,et al.,J.Immunol.,160(7):3513−21(1998)、Laan,M.,et al.,J.Immunol.,162(4):2347−52(1999)、Linden,A.,et al.,Eur Respir J,15(5):973−7(2000)、およびAggarwal,S.and Gurney,A.L.,J Leukoc Biol.71(1):1−8(2002)を参照)。またIL−17は、TNF−αおよびIL−1βを含む他のサイトカインと相乗作用して、ケモカイン発現をさらに誘導する(Chabaud,M.,et al.,J.Immunol.161(1):409−14(1998))。IL−17Aは、様々な種類の細胞上で多面的な生物活性を呈する。IL−17Aは、ICAM−1表面発現、T細胞の増殖、ならびにCD34+ヒト前駆細胞の好中球への成長および分化を誘導する能力も有する。IL−17Aは、骨代謝にも関与するとされ、活性化T細胞およびTNF−α産物の存在を特徴とする病的状態、例えば、リウマチ関節炎および骨インプラントの緩みにおいて重要な役割を果たすことが示唆されている(Van Bezooijen et al.,J.Bone Miner.Res.,14:1513−1521(1999))。関節リウマチ患者から得られる滑膜組織の活性化T細胞は、健常者または変形性関節症患者から得られるものよりも多量のIL−17Aを分泌することが認められた(Chabaud et al.,Arthritis Rheum.,42:963−970(1999))。この炎症促進性サイトカインが、関節リウマチの滑膜炎に積極的に関与することが示唆された。その炎症を促進する役割とは別に、IL−17Aは、さらに別の機序によって、関節リウマチの病理に関与すると見られる。例えば、IL−17Aは、骨芽細胞において破骨細胞分化因子(ODF)mRNAの発現を誘発することが示された(Kotake et al.,J.Clin.Invest.,103:1345−1352(1999))。ODFは、前駆細胞の、骨吸収に関与する細胞である破骨細胞への分化を刺激する。IL−17Aのレベルは、関節リウマチ患者の滑膜液中で著しく増加するため、IL−17Aにより誘導された破骨細胞形成は、関節リウマチにおける骨吸収に極めて重要な役割を果たすと見られる。IL−17Aは、多発性硬化症(Matusevicius et al.,Mult.Scler.,5:101−104(1999)、Kurasawa,K.,et al.,Arthritis Rheu 43(11):2455−63(2000))、ならびに乾癬(Teunissen,M.B.,et al.,J Invest Dermatol 111(4):645−9(1998)、Albanesi,C.,et al.,J Invest Dermatol 115(1):81−7(2000)、およびHomey,B.,et al.,J.Immunol.164(12:6621−32(2000))等の特定の他の自己免疫疾患において主要な役割を果たすとも考えられる。
【0003】
IL−17Aはさらに、細胞内シグナル伝達によって、ヒトマクロファージにおけるCa2+の流入および[cAMP]iの還元を刺激することが示されている(Jovanovic et al,J.Immunol.,160:3513(1998))。IL−17Aで処理された線維芽細胞は、NFκBの活性化を誘導するが(Yao et al.,Immunity,3:811(1995),Jovanovic et al.,上記)、それで処理されたマクロファージは、NF−κBおよびマイトジェン活性化タンパク質キナーゼを活性化する(Shalom−Barek et al,J.Biol.Chem.,273:27467(1998))。さらに、IL−17Aは、骨および軟骨の成長に関与する、哺乳類サイトカイン様因子7と配列相同性も共有する。IL−17Aポリペプチドが配列相同性を共有する他のタンパク質は、ヒト胚性インターロイキン関連因子(EDIRF)およびインターロイキン20である。
【0004】
IL−17Aの広範な効果と一致して、IL−17Aの細胞表面受容体は、多くの組織および細胞型において広く発現することが見出された(Yao et al.,Cytokine,2:794(1997))。ヒトIL−17A受容体(IL−R)のアミノ酸配列(866アミノ酸)は、単一膜貫通ドメインおよび長い525アミノ酸細胞内ドメインを有するタンパク質を予測するが、受容体配列は固有であり、サイトカイン/成長因子受容体ファミリーからの受容体のうちのいずれかのそれと類似していない。他の知られているタンパク質に対するIL−17A自体の類似性の欠如に加えて、これは、IL−17Aおよびその受容体が、シグナル伝達タンパク質および受容体の新規ファミリーの一部であり得ることを示す。IL−17A活性は、その固有の細胞表面受容体に対する結合を通して媒介されることが示されており(本明細書ではヒトIL−17Rと表される)、以前の研究は、T細胞を可溶型のIL−17A受容体ポリペプチドと接触させることは、PHA、コンカナバリンAおよび抗TCRモノクローナル抗体によって誘導されるT細胞の増殖およびIL−2の産生を阻害したことが示された(Yao et al.,J.Immunol.,155:5483−5486(1995))。そのようなものとして、知られているサイトカイン受容体、特にIL−17A受容体に対して相同性を有する、新規ポリペプチドを識別および特性化することに高い関心がある。
【0005】
インターロイキン17Aは、現在、サイトカインの新生ファミリーの原型メンバーとして認識されている。ヒトおよび他の脊椎動物ゲノムの大規模なシークエンシングは、明らかにIL−17Aに関連するタンパク質をコードする追加の遺伝子の存在を明らかにし、したがって、サイトカインの新規ファミリーを画定する。ヒトおよびマウスにおいて、IL−17ファミリーの少なくとも6メンバーが存在し、IL−17A、IL−17B、IL−17C、IL−17D、IL−17EおよびIL−17Fならびに新規受容体IL−17RH1、IL−17RH2、IL−17RH3およびIL−17RH4を含む(2001年6月28日に公開されたWO01/46420を参照)。1つのそのようなIL−17メンバー(IL−17Fと表される)は、ヒトIL−17受容体(IL−17R)に結合することが証明された(Yao et al.,Cytokine,9(11):794−800(1997))。初期特性化は、IL−17Aと同様に、これらの新規に識別された分子のうちのいくつかが、免疫機能を調整する能力を有することを示唆した。これらの因子のうちのいくつかに対して識別された強力な炎症作用および主要なヒト疾患との新たな関連性は、これらのタンパク質が、炎症過程において重要な役割を有し得ること、および治療介入の機会を提供し得ることを示唆する。
【0006】
ヒトIL−17Fをコードする遺伝子は、IL−17Aに隣接して位置付けられる(Hymowitz,S.G.,et al.,Embo J,20(19):5332−41(2001))。IL−17AおよびIL−17Fは、約44%のアミノ酸同一性を共有するが、IL−17ファミリーの他のメンバーは、より制限された15−27%のアミノ酸同一性を共有し、IL−17AおよびIL−17Fが、IL−17ファミリー内で個別のサブグループを形成することを示唆している(Starnes,T.,et al.,J Immunol.167(8):4137−40(2001)、Aggarwal,S.and Gurney,A.L.,J.Leukoc Biol,71(1):1−8(2002))。IL−17Fは、IL−17Aと同様の生物活性を有すると考えられ、幅広い多様な細胞からのIL−6、IL−8、およびG−CSFの産生を促進することができる。IL−17Aと同様に、軟骨基質の放出を誘導し、新しい軟骨基質の合成を阻害することができる(2002年11月28日に公開された第US2002−0177188−A1号を参照)。したがって、IL−17Aと同様に、IL−17Fは、潜在的に、炎症性疾患の病理に寄与し得る。IL−17AおよびIL−17Fはいずれも、インターロイキン23(IL−23)の作用によって、T細胞中で誘導されることが報告された(Aggarwal,S.,et al.,J.Biol.Chem.,278(3):1910−4(2003))。より具体的に、IL−17AおよびIL−17Fはいずれも、ヒト疾患のヒトおよびマウスモデルにおいて、多様な炎症性および自己免疫疾患の進行および病理に寄与する薬剤として関与している。実際に、IL−17Aおよびそれ程ではないにせよIL−17Fは、炎症反応を誘起するエフェクタサイトカインとして関与し、それによって、多発性硬化症(MS)関節リウマチ(RA)、および炎症性腸疾患(IBD)を含む多数の自己炎症性(自己免疫)疾患に寄与する。この系統は、Th17と呼ばれ、これらの細胞の数は、ヒト自己免疫疾患のマウスモデルにおいて、疾患の進行および重篤度と明らかに相関する。炎症性疾患におけるIL−17AおよびIL−17Fの関与は明らかであると思われるが(例えば、Kolls,J.K.,A.Linden.
Immunity 21:467−476(2004)を参照)、これらのサイトカインの標的細胞は、IL−17Fの受容体が識別されていないという事実に部分的に起因して、識別されていない。IL−17Aは、IL−17RAに対する親和性を有する。ヒトIL−17RAのアミノ酸配列は、NCBI GenBank受入番号NP_055154.3に基づいて入手可能である。今日では、IL−17RA(IL−17Rh1、IL−17Rc、IL−17RD、およびIL−17RE)に対する配列相同性に基づいて、IL−17Rファミリーにおいて、少なくとも4つの追加の受容体が識別されており、特に、IL−17Rcは、IL−17RAとの物理的関連性が示され、IL−17R複合体における機能成分であり得ることを示唆している(Toy,D.et al.,J.Immunol.177:36−39(2006))。最近では、IL−17Rcが、IL−17AおよびIL−17F両方の受容体であることが報告された(Presnell,et al.,J.Immunol.179(8):5462−73(2007))。
【0007】
炎症および肥満症
肥満に関する我々の理解において最近の重要な進展は、炎症および糖尿病が、慢性の軽度炎症の状態によって特性化されるという概念の出現である。この見解の根拠は、炎症のいくつかのマーカー、炎症性サイトカインおよび急性期タンパク質両方の高い血中濃度が、肥満において上昇することであり、これらのマーカーは、IL−6、TNFα系、C反応性タンパク質(CRP)およびハプトグロビンを含む。しかしながら、全身性か、または局所性かの炎症自体の部位に関する意味は不明である。
【0008】
所定用量のインスリンに対して予測される生物学的反応よりも小さいと定義されるインスリン抵抗性は、肥満の普遍的な関連要因である。実際に、肥満の病理的帰結の多くは、インスリン抵抗性を伴うと考えられる。これらには、高血圧、高脂質血症、および最も注目すべきは、非インスリン依存性糖尿病(NIDDM)が挙げられる。大部分のNIDDM患者は肥満であり、NIDDMの進行における中心的かつ初期の成分は、インスリン抵抗性である(Moller et al.,New Eng.J.Med.,325:938(1991))。この疾患の初期中のインスリン受容体の下方制御に加えて、後受容体の異常が、インスリン抵抗の経過中に進行することが証明された(Olefsky et al.,in Diabetes Mellitus,Rifkin and Porte,Jr.,Eds.(Elsevier Science Publishing Co.,Inc.,New York,ed.4,1990),pp.121−153)。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、少なくとも部分的に、IL−17ファミリーメンバー、具体的にIL−17AおよびIL−17Fが、肥満、インスリン抵抗、および肥満と関連付けられる他の疾患、例えば、高脂質血症および代謝症候群において役割を果たすこと、およびIL−17アンタゴニスト、特にIL−17AおよびIL−17Fアンタゴニストを使用して、これらの状態を治療することができるという発見に基づく。
【0010】
一態様において、本発明は、哺乳類において、インスリン抵抗性疾患を治療する方法に関し、有効量のIL−17Aおよび/またはIL−17Fアンタゴニストを、それを必要とする哺乳類に投与することを含む。
【0011】
別の態様において、本発明は、薬学的に許容される賦形剤との混和物中に、IL−17Aおよび/またはIL−17Fアンタゴニストを含む、インスリン抵抗性疾患の治療のための薬学的組成物に関する。
【0012】
さらなる態様において、本発明は、インスリン抵抗性疾患の治療におけるIL−17Aおよび/またはIL−17Fアンタゴニストの使用に関する。
【0013】
さらに別の態様において、本発明は、インスリン抵抗性疾患を治療するためのキットに関し、該キットは、(a)IL−17Aおよび/またはIL−17Fアンタゴニストを含む容器と、(b)該抗体を投与して、該疾患を治療するためのラベルまたは説明書と、を含む。
【0014】
すべての態様において、一実施形態では、疾患は、非インスリン依存性糖尿病(NIDDM)、肥満、卵巣アンドロゲン過剰、および高血圧から成る群から選択される。別の実施形態において、疾患は、NIDDMまたは肥満である。
【0015】
さらなる実施形態において、哺乳類はヒトであり、かつ、投与は全身性である。
【0016】
さらに別の実施形態において、IL−17Aおよび/またはIL−17Fアンタゴニストは、抗体またはそのフラグメントであり、例えば、抗体は、抗IL−17A、抗IL−17F、抗IL−17A/F、抗IL−17Rcおよび抗IL−17RA抗体、またはそれらのフラグメントから成る群から選択される。
【0017】
好ましくは、抗体は、モノクローナル抗体であり、キメラ、ヒト化、またはヒト抗体、二重特異性、多特異性、または交差反応性抗体を含む。
【0018】
さらに別の実施形態において、方法は、有効量のインスリン抵抗性治療薬、例えば、インスリン、IGF−1、またはスルホニル尿素の投与を含む。
【0019】
さらなる実施形態において、方法は、該インスリン抵抗性疾患を治療することができる、有効量の追加薬剤、例えば、Dickkopf−5(Dkk−5)の投与を含む。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】天然配列ヒトIL−17A cDNAのヌクレオチド配列(配列番号1)を示す図である。
【図2】図1に示される配列番号1のコード配列に由来する天然配列ヒトIL−17Aのアミノ酸配列(配列番号2)を示す図である。
【図3】天然配列ヒトIL−17F cDNAのヌクレオチド配列(配列番号3)を示す図である。
【図4】図3に示される配列番号3のコード配列に由来する天然配列ヒトIL−17Fのアミノ酸配列(配列番号4)を示す図である。
【図5】図5は、天然配列ヒトIL−17受容体C(IL−17Rc)ポリペプチドをコードし、「DNA164625−2890」と表されるクローンとしても知られる、ヌクレオチド配列(配列番号5)を示す図である。
【図6】図6は、天然配列ヒトIL−17Rcポリペプチドのアミノ酸配列(配列番号6)を示す図である(IL−17RH2受容体としても知られる)。
【図7】IL−17Rc KOマウスを使用した高脂肪食(HFD)モデル研究の実験計画を示す図である。
【図8】IL−17Rc KOマウスを使用した高脂肪食(HFD)モデル研究の8週目の結果を示す図sである。
【図9A】対照群および高脂肪食群における野生型およびIL−17Rc KOマウスの血糖値を示す図である。IL−17Rc KOマウスは、高脂肪食(HFD)誘導性インスリン抵抗に耐性がある。
【図9B】対照群および高脂肪食群における野生型およびIL−17Rc KOマウスの血糖値を示す図である。IL−17Rc KOマウスは、高脂肪食(HFD)誘導性インスリン抵抗に耐性がある。
【図10】10週目の曲線下面積を示す図である。
【図11】体重結果を示す図である。
【図12】抗IL−17および抗IL−17F mAbがインスリン抵抗性HFDモデルに及ぼす影響を示す図である。
【図13】9週間の投与期間後のグルコース負荷試験(GTT)を示す図である。
【図14】プラスミドDNAの注入に続くグルコース負荷試験(GTT)によるIL−17Aの異所性発現。IL−17の過剰発現がGTTにより評価されたインスリン耐性状態に及ぼす影響を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
A. 定義
用語「IL−17」は、概して、IL−17A、IL−17、IL−17B、IL−17C、IL−17D、IL−17E、IL−17F、およびIL−17A/Fを含む、IL−17ファミリーのメンバーを指すように使用される。好適なIL−17は、本明細書において、IL−17A、IL−17F、およびIL−17A/Fである。
【0022】
「天然配列IL−17ポリペプチド」は、自然に由来する対応IL−17ポリペプチドと同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。そのような天然配列IL−17ポリペプチドは、自然から単離され得るか、または組み換えまたは合成手段によって産生され得る。用語「天然配列IL−17ポリペプチド」は、特定のIL−17ポリペプチドの自然発生する切断または分泌形態(例えば、細胞外ドメイン配列)、自然発生する異型(例えば、選択的にスプライスされた形態)、およびポリペプチドの自然発生する対立遺伝子多型を包含する。本発明の様々な実施形態において、本明細書に開示される天然配列IL−17ポリペプチドは、図2および図4(配列番号2および4)に示される完全長アミノ酸配列を含む、成熟または完全長天然配列ヒトIL−17A、IL−17F、およびIL−17A/Fポリペプチドである。開始および停止コドンは、図面において太字および下線付きで示される。
【0023】
用語「天然配列IL−17Rcポリペプチド」または「天然配列IL−17Rc」は、自然に由来する対応IL−17Rcポリペプチドと同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを指す。そのような天然配列IL−17Rcポリペプチドは、自然から単離され得るか、または組み換えまたは合成手段によって産生され得る。用語「天然配列IL−17Rcポリペプチド」は、特に、特定のIL−17Rcポリペプチドの自然発生する切断または分泌形態、自然発生する異型(例えば、選択的にスプライスされた形態)、およびポリペプチドの自然発生する対立遺伝子多型を包含する。本発明の様々な実施形態において、本明細書に開示される天然配列IL−17Rcポリペプチドは、図6(配列番号6)に示される完全長アミノ酸配列を含む、完全長天然配列ヒトIL−17Rcである。
【0024】
「単離された」は、本明細書に開示される様々なポリペプチドを説明するために使用される場合、その自然環境の成分から識別および分離ならびに/または回復されたポリペプチドを意味する。その自然環境の汚染物質成分は、典型的に、ポリペプチドの診断または治療用途を干渉するであろう物質であり、酵素、ホルモン、および他のタンパク性または非タンパク性溶質を含み得る。好適な実施形態において、ポリペプチドは、(1)回転カップシークエネータの使用によって、N末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るために十分な程度、または(2)非還元または還元条件下で、クマシーブルーまたは好ましくは銀染色を使用して、SDS−PAGEによって均一になるまで精製される。IL−17ポリペプチド自然環境の少なくとも1つの成分が存在しないため、単離されたポリペプチドは、組み換え細胞内の原位置にポリペプチドを含む。しかしながら、通常、単離されたポリペプチドは、少なくとも1つの精製ステップによって調製される。
【0025】
本明細書で使用される、「肥満」は、哺乳動物が、体重(kg)/身長2(メートル)として計算されるか、または少なくとも25.9である、体格指数(BMI)を有する状態を指す。通常、正常体重の個人は、19.9〜25.9未満のBMIを有する。インスリン抵抗性と関連付けられる肥満は、特にこの定義に含まれる。
【0026】
「インスリン抵抗」または「インスリン抵抗疾患」あるいは「インスリン抵抗活性」は、外因性インスリンの作用に対する末梢組織の正常な代謝反応の不全(不感受性)によって生じる疾患、状態、または障害であり、すなわち、インスリンの存在が、正常以下の生物反応をもたらす状態である。臨床用語において、インスリン抵抗は、正常または上昇したインスリン値に対して、正常または上昇した血糖値が持続する場合に存在する。本質的に、それはグリコーゲン合成の阻害を表し、これによって基礎またはインスリン刺激によるグリコーゲン合成のいずれか、または両方が、正常値よりも低下する。2型糖尿病に存在する高血糖は、明らかに、インスリンに対する末梢組織の感受性を回復するのに十分な食事または体重減少によって好転し得る場合が多いという事実によって証明されるように、インスリン抵抗は、2型糖尿病において主要な役割を果たす。用語は、異常な耐糖能、ならびにインスリン抵抗が主な役割を果たす多くの疾患、例えば、肥満、真性糖尿病、卵巣アンドロゲン過剰、および高血圧を含む。
【0027】
「真性糖尿病」は、慢性的な高血糖の状態、すなわち、インスリン作用の相対的または絶対的欠如の結果として起こる血中の糖が過剰になることを指す。真性糖尿病には、I型またはインスリン依存性真性糖尿病(IDDM)、II型または非インスリン依存性真性糖尿病(NIDDM)、およびA型インスリン抵抗の3つの基本型があるが、A型は比較的希である。I型またはII型糖尿病のいずれかのある患者は、多様な機序を通して、外因性インスリンの効果に不感受性となり得る。A型インスリン抵抗は、インスリン受容体遺伝子の変異、または糖代謝に重要な作用の後受容体部位の欠陥のいずれかによって生じる。糖尿病対象は、医師によって容易に認識され得、高血糖、耐糖能障害、グリコシル化ヘモグロビン、およびいくつかの例において、外傷または疾病と関連付けられるケトアシドーシスを特徴とする。
【0028】
「非インスリン依存性真性糖尿病」または「NIDDM」は、II型糖尿病を指す。NIDDM患者は、絶食時に異常に高い血糖濃度を有し、食後またはグルコース負荷試験として知られる診断試験後に糖の細胞摂取が遅延する。NIDDMは、認められている基準に基づいて診断される(American Diabetes Association,Physician’s Guide to Insulin−Dependent(Type I)Diabetes,1988、American Diabetes Association,Physician’s Guide to Non−Insulin−Dependent(Type II)Diabetes,1988)。
【0029】
本明細書に定義されるように、疾患として治療される糖尿病の症状および合併症は、高血糖、不十分な血糖管理、ケトアシドーシス、インスリン耐性、上昇した成長ホルモン値、上昇したグリコシル化ヘモグロビンおよび進行性グリコシル化最終産生物(AGE)の値、曙現象、不十分な脂質プロファイル、血管疾患(例えば、アテローム性動脈硬化)、微小血管疾患、網膜疾患(例えば、増殖性糖尿病網膜症)、腎疾患、神経障害、妊娠合併症(例えば、未完熟終了および出生異常)等を含む。治療の定義において、例えば、インスリン感受性の増加、血糖管理を維持しながらインスリン用量の減少、HbA1cの減少、血糖管理の改善、血管、腎臓、神経、網膜、および他の糖尿病合併症の低減、「曙現象」の回避または低減、脂質プロファイルの改善、妊娠合併症の低減、およびケトアシドーシスの低減等の終点が含まれる。
【0030】
本明細書で使用される、「治療組成物」または「組成物」は、Dkk−5および薬学的に許容される担体、例えば、水、ミネラル、タンパク質、および当業者に知られている他の賦形剤を含むものとして定義される。
【0031】
治療の目的で、用語「哺乳動物」は、哺乳動物として分類される任意の動物を指し、ヒト、齧歯動物、競技用、動物園、愛玩、および家畜または農場動物、例えば、イヌ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、および非ヒト霊長類、例えば、サルを含むが、これらに限定されない。好ましくは、齧歯動物はマウスまたはラットである。好ましくは、哺乳動物はヒトであり、本明細書では患者とも呼ばれる。
【0032】
本明細書で使用される、「治療」は、インスリン抵抗、真性糖尿病、高インスリン血症、低インスリン血症、または肥満を含むが、これらに限定されない、本発明に従って標的とされる疾患または状態のうちのいずれかに対抗する目的で、哺乳動物の管理およびケアを説明し、症状または合併症の発症を回避するか、または標的とされる疾患または状態を排除するための投与を含む。
【0033】
本発明の目的で、インスリン抵抗を低下させるための有益または所望の臨床「治療」結果は、インスリン抵抗と関連付けられる症状の緩和、インスリン抵抗の症状の程度の縮小、インスリン抵抗の症状の安定化(すなわち、非悪化)(例えば、インスリン必要量の減少)、膵細胞障害を回避するためのインスリン感受性および/またはインスリン分泌の増加、およびインスリン抵抗の進行、例えば、糖尿病の進行の遅延または減速を含むが、これらに限定されない。
【0034】
肥満に関して、「治療」は、概して、哺乳動物のBMIを約25.9未満に低下させること、および体重を少なくとも6ヶ月間維持することを指す。治療は、哺乳動物による食物またはカロリー摂取の低下を適切にもたらす。さらに、この文脈において治療は、治療が肥満状態の発症に先立って投与される場合に、肥満の発生を回避することを指す。治療は、肥満哺乳動物における脂質生成、すなわち、ヒトおよび動物肥満の主要な特徴の1つである、脂肪細胞中の脂質の過剰蓄積の阻害および/または完全な抑制、ならびに総体重の減少を含む。
【0035】
「治療を必要とする」者は、既に疾患を有している哺乳動物、ならびに疾患が回避される哺乳動物を含む、疾患を有し易い哺乳動物を含む。
【0036】
「インスリン抵抗治療薬」は、インスリン抵抗を治療するために使用される、例えば、Dickkopf−5(Dkk−5)等のIL−17のアンタゴニスト以外の薬剤(例えば、米国出願公開第2005/0170440号を参照)、および血糖降下薬である。そのような治療薬の例として、インスリン(1つまたは複数の異なるインスリン)、小分子インスリン等のインスリン模倣体、例えば、L−783,281、インスリン類似体(例えば、HUMALOG(登録商標)インスリン(Eli Lilly Co.)、LysB28インスリン、ProB29インスリン、もしくはAspB21インスリンもしくは例えば、米国特許第5,149,777号および第5,514,646号に記載されるもの、またはそれらの生理活性フラグメント、インスリン関連ペプチド(C−ペプチド、GLP−1、インスリン様成長因子−I(IGE−1)、もしくはIGF−1/IGFBP−3複合体)またはそれらの類似体もしくはフラグメント、エルゴセット、プラムリンチド、レプチン、BAY−27−9955、T−1095、インスリン受容体チロシンキナーゼ阻害剤に対するアンタゴニスト、TNF−α機能に対するアンタゴニスト、成長ホルモン放出剤、アミリンまたはアミリンに対する抗体、インスリン増感剤、例えば、米国特許第5,753,681号に記載されるもの、例えば、トログリタゾン、ピオグリタゾン、エングリタゾン、および関連化合物を含むグリタゾンファミリーの化合物、リナロール単独またはビタミンE含有(米国特許第6,187,333号)、インスリン分泌増強剤、例えば、ナテグリニド(AY−4166)、カルシウム(2S)−2−ベンジル−3−(シス−ヘキサヒドロ−2−イソインドリニルカルボニル)プロピオン酸二水和物(ミチグリニド、KAD−1229)、およびレパグリニド、スルホニル尿素薬、例えば、アセトヘキサミド、クロロプロパミド、トラザミド、トルブタミド、グリクロピラミド、およびそのアンモニウム塩、グリベンクラミド、グリボムリド、グリクラジド、1−ブチル−3−メタニル尿素、カルブタミド、グリピジド、グリキドン、グリソキセピド、グリブチアゾール、グリブゾール、グリヘキサミド、グリミジン、グリピンアミド、フェンブタミド、トルシクルミド、グリメピリド等、ビグアニド(例えば、フェンフォルミン、メトフ
ォルミン、ブフォルミン等)、α−グルコシダーゼ阻害剤(例えば、アカルボース、ボグリボース、ミグリトール、エミグリテート等)、および膵臓移植または自己免疫試薬としてのそのような非典型的治療が挙げられる。
【0037】
「減量剤」は、肥満の治療または予防に有用な分子を指す。そのような分子には、例えば、ホルモン(カテコールアミン、グルカゴン、ACTH、およびIGF−1と結合される成長ホルモン)、Obタンパク質、クロフィブラート、ハロゲン化物、シンコカイン、クロルプロマジン、マジンドールおよびフェネチルアミンの誘導体などのノルアドレナリン神経伝達物質に作用する食欲抑制薬、例えば、フェニルプロパノールアミン、ジエチルプロピオン、フェンテルミン、フェンジメトラジン、ベンズフェタミン、アンフェタミン、メタンフェタミン、およびフェンメトラジン等、セロトニン神経伝達物質に作用する薬物、例えば、フェンフルアミン、トリプトファン、5−ヒドロキシトリプトファン、フルオキセチン、およびセルトラリン、中枢作用性薬、例えば、ナロキソン、ニューロペプチド−Y、ガラニン、コルチコトロピン放出ホルモン、およびコレシストキニン、コリン作動性アゴニスト、例えば、ピリドスチグミン、スフィンゴリピド、例えば、リソスフィンゴリピドまたはその誘導体、熱発生薬、例えば、甲状腺ホルモン、エフェンドリン、β−アドレナリン作動薬、酵素阻害剤などの胃腸管に作用する薬物、例えば、テトラヒドロリポスタチン、消化の悪い食べ物、例えば、ポリエステルスクロース、および胃内容排出阻害剤、例えば、トレオ−クロロクエン酸またはその誘導体、β−アドレナリン作動アゴニスト、例えば、イソプロテレノールおよびヨヒンビン、ヨヒンビンのβ−アドレナリン作動様効果を増加させるアミノフィリン、例えば、クロニジン単独または成長ホルモン放出ペプチドと組み合わされるα2−アドレナリン遮断薬、腸吸収を干渉する薬物、例えば、メトフォルミンおよびフェンフォルミン等のビグアニド、バルクフィルタ、例えば、メチルセルロース、代謝遮断薬、例えば、ヒドロキシクエン酸塩、プロゲステロン、コレシストキニンアゴニスト、ケト酸を模倣する小分子、コルチコトロピン放出ホルモンに対するアゴニスト、体脂肪の蓄積を低減するエルゴット関連プロラクチン阻害化合物(1988年11月8日に発行された米国特許第4,783,469号)、β−3アゴニスト、ブロモクリプチン、オピオイドペプチドに対するアンタゴニスト、ニューロペプチドYに対するアンタゴニスト、グルココルチコイド受容体アンタゴニスト、成長ホルモンアゴニスト
、それらの組み合わせ等が挙げられる。
【0038】
本明細書で使用される「インスリン」は、インスリン作用を有する任意およびすべての物質を指し、例えば、ウシまたはブタ膵臓から抽出される動物インスリン、ブタ膵臓から抽出されたインスリンから酵素的に合成される半合成ヒトインスリン、および通常、大腸菌または酵母菌等を使用する遺伝子工学技術によって合成されるヒトインスリンによって例示される。さらに、インスリンは、約0.45〜0.9(w/w)%の亜鉛、塩化亜鉛、硫酸プロタミン、およびインスリンから産生されるプロタミン−インスリン−亜鉛等を含有するインスリン−亜鉛複合体を含み得る。インスリンは、そのフラグメントまたは誘導体の形態、例えば、INS−1であってもよい。インスリンは、インスリン様物質、例えば、L83281およびインスリンアゴニストを含んでもよい。インスリンは、超即効作用型、即効作用型、二面作用型、中間作用型、長時間作用型等の多様な種類で入手可能であるが、これらの種類は、患者の状態に従って適切に選択され得る。
【0039】
本明細書で使用される、「治療組成物」は、IL−17(IL−17AおよびIL−17Fアンタゴニストを含む)アンタゴニストおよび薬学的に許容される担体、例えば、水、ミネラル、タンパク質、および当業者に知られている他の賦形剤を含むものとして定義される。
【0040】
表現「アンタゴニスト」、「IL−17(Aおよび/またはF)に対するアンタゴニスト」、「IL−17(Aおよび/またはF)アンタゴニスト」等は、本発明の範囲内で、治療される適応症に応じて、何らかの手段によって、IL−17、例えば、IL−17Aおよび/またはIL−17Fの機能を干渉するか、またはIL−17、(例えば、IL−17Aおよび/またはF)の関連活性を遮断または中和する、任意の分子を含むことを意味する。IL−17(IL−17およびIL−17Fを含む)と1つまたは複数のその受容体との間の相互作用を回避し得る。そのような薬剤は、様々な方法でこの効果を達成する。例えば、IL−17活性を「中和する」アンタゴニストのクラスは、十分な親和性および特異性を有する、IL−17またはIL−17の受容体に結合し、以下に定義されるように、IL−17を干渉する。IL−17を「結合する」抗体、またはIL−17の受容体(例えば、IL−17Rc)は、IL−17またはIL−17受容体を発現する細胞を標的とする際に、抗体が治療薬として有用となるように、十分な親和性を有する抗原を結合できるものである。用語「IL−17アンタゴニスト」は、IL−17A、IL−17F、およびIL−17A/Fアンタゴニストのいずれか、およびすべてを指すように使用される。
【0041】
このアンタゴニスト群には、例えば、IL−17またはその部分に対して配向され、IL−17と反応性のある抗体、またはIL−17Aおよび/もしくはIL−17FおよびIL−17Rcに対する抗体を特異的に含む、IL−17受容体もしくはその部分が含まれる。用語は、IL−17Aおよび/もしくはIL−17Fの過剰産生を干渉するか、または少なくとも1つのIL−17(例えば、IL−17Aおよび/もしくはIL−17F)受容体、例えば、IL−17Rcに拮抗する、任意の薬剤も含む。そのようなアンタゴニストは、薬剤の機能を担体タンパク質と組み合わせて治療薬の血清半減期を増加させるか、または異種間耐性を付与するために有用なキメラハイブリッドの形態であってもよい。したがって、そのようなアンタゴニストの例には、生体有機分子(例えば、ペプチド模倣体)、抗体、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、糖ペプチド、糖脂質、多糖、オリゴ糖、核酸、薬物およびそれらの代謝物、転写および翻訳制御配列等が挙げられる。好適な実施形態において、アンタゴニストは、IL−17Aおよび/またはIL−17Fに結合し、受容体、好ましくはIL−17Rcとのその相互作用を回避する、所望の特性を有する抗体である。
【0042】
用語「抗体」は、広義に使用され、所望の生物活性または免疫活性を呈する限り、例えば、単一抗IL−17A/Fまたは抗IL17Aもしくは抗IL−17Fモノクローナル抗体(アゴニスト、アンタゴニスト、および中和抗体を含む)、ポリエピトープ特異性を有する対応する抗体組成物、ポリクローナル抗体、単鎖抗体、および抗体フラグメント(以下を参照)を特異的に網羅する。
【0043】
基本4鎖抗体単位は、2つの同一軽鎖(L)および2つの同一重鎖(H)で構成されるヘテロ四量体糖タンパク質である(IgM抗体は、J鎖と呼ばれる追加ポリペプチドとともに5つの基本ヘテロ四量体単位で構成され、したがって、10抗原結合部位を含むが、分泌されたIgA抗体は、ポリマー化して、J鎖とともに2〜5の基本4鎖単位を含む、多価集団を形成することができる)。IgGの場合、4鎖単位は、概して、約150,000ダルトンである。各L鎖は、1つの共有ジスルフィド結合によってH鎖に結合されるが、2つのH鎖は、H鎖のアイソタイプに応じて、1つまたは複数のジスルフィド結合によって相互に結合される。各HおよびL鎖は、規則的間隔の鎖間ジスルフィド橋も有する。各H鎖は、N末端において、αおよびγ鎖のそれぞれに対して可変ドメイン(VH)に続いて3つの定常ドメイン(CH)、μおよびεアイソタイプに対して4つのCHドメインを有する。各L鎖は、N末端において可変ドメイン(VL)を有し、その他端において定常ドメイン(CL)が続く。VLは、VHと整列され、CLは、重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)と整列される。特定のアミノ酸残基は、軽鎖および重鎖可変ドメインの間にインターフェースを形成すると考えられる。VHおよびVLの対は、一緒に単一の抗原結合部位を形成する。異なるクラスの抗体の構造および特性については、例えば、Basic and Clinical Immunology,8th edition,Daniel P.Stites,Abba I.Terr and Tristram G.Parslow(eds.),Appleton & Lange,Norwalk,Conn.,1994,page 71 and Chapter 6を参照されたい。
【0044】
任意の脊椎動物種からのL鎖は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、κおよびλと呼ばれる2つの明らかに異なる型のうちの1つに割り当てられ得る。それらの重鎖の定常ドメイン(CH)のアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは、異なるクラスまたはアイソタイプに割り当てられ得る。これらは、それぞれα、δ、ε、γおよびμと指定される重鎖を有する、免疫グロブリンの5つのクラスIgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMである。γおよびαクラスは、CH配列および機能の比較的マイナーな差異に基づいて、さらにサブクラスに分割され、例えば、ヒトは、以下のサブクラスIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2を発現する。
【0045】
用語「可変」は、抗体間で、可変ドメインの特定のセグメントが、配列において広範囲に異なるという事実を指す。Vドメインは、抗原結合を媒介し、その特定抗原に対する特定抗体の特異性を定義する。しかしながら、変動性は、可変領域の110アミノ酸範囲に渡って均一に分散されない。代わりに、V領域は、それぞれ9〜12アミノ酸長である「超可変領域」と呼ばれる、極度変動性の短い領域によって分離される、15〜30アミノ酸のフレームワーク領域(FR)と呼ばれる比較的不変のストレッチで構成される。天然の重鎖および軽鎖の可変ドメインは、それぞれ4つのFRを含み、ループ結合を形成し、いくつかの例においてはβシート構造の一部を形成する、3つの超可変領域によって結合される、主にβシート構造を適合する。各鎖の超可変領域は、FRによって、他の鎖からの超可変領域と一緒に近接して保持され、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)を参照)。定常ドメインは、抗原への抗体の結合に直接関与しないが、様々なエフェクタ機能、例えば、抗体依存細胞性細胞毒性(ADCC)における抗体の関与を呈する。
【0046】
用語「超可変領域」は、本明細書において使用されるとき、抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、概して、「補体性決定領域」または「CDR」からのアミノ産残基を含む(例えば、VL中に残基約24−34(L1)、50−56(L2)、および89−97(L3)およびVH中に約1−35(H1)、50−65(H2)、および95−102(H3)、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))および/または「超可変ループ」からのそれらの残基(例えば、VL中に残基26−32(L1)、50−52(L2)、および91−96(L3)およびVH中に26−32(H1)、53−55(H2)および96−101(H3)、Chothia and Lesk J.Mol.Biol.196:901−917(1987))。
【0047】
本明細書で使用される、用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体、すなわち、少量で存在し得る自然発生する変異の可能性を除いて同一である集団を含む個別の抗体を指す。モノクローナル抗体は、極めて特異的であり、単一の抗原部位に対して配向されている。さらに、異なる決定因子(エピトープ)に対して配向される異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一決定因子に対して配向される。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、それらが他の抗体によって汚染されずに合成され得る点で有利である。そのようなモノクローナル抗体は、通常、標的を結合する可変領域を含む抗体を含み、抗体は、複数の抗体から抗体を選択することを含む過程によって得られる。例えば、選択過程は、複数のクローン、例えば、ハイブリドーマクローン、ファージクローン、または組み換えDNAクローンのプールから固有のクローンを選択することであり得る。選択された抗体は、例えば、標的に対する親和性を向上させ、抗体をヒト化し、細胞培養におけるその産生を高め、インビボでのその免疫原性を低下させ、多特異性抗体を形成する等のためにさらに変更することができること、および変更された可変領域配列を含む抗体は、本発明のモノクローナル抗体でもあることを理解されたい。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体調製物は、通常、それらが他の免疫グロブリンによって汚染されないという点で有利である。修飾語「モノクローナル」は、実質的に均質な抗体集団から得られるものとして抗体の特徴を示し、任意の特定方法による抗体の産生を必要とすると解釈されるものではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法(例えば、Kohler et al.,Nature,256:495(1975)、Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.1988)、Hammerling et al.,in:Monoclonal Antibodies and T−Cell Hybridomas 563−681,(Elsevier,N.Y.,1981)を参照)、組み換えDNA
法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照)、ファージ表示技術(例えば、Clackson et al.,Nature,352:624−628(1991)、Marks et al.,J.Mol.Biol.,222:581−597(1991)、Sidhu et al.,J.Mol.Biol.338(2):299−310(2004)、Lee et al.,J.Mol.Biol.340(5):1073−1093(2004)、Fellouse,Proc.Nat.Acad.Sci.USA 101(34):12467−12472(2004)、およびLee et al.J.Immunol Methods 284(1−2):119−132(2004)を参照)、およびヒト免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン座または遺伝子の一部またはすべてを有する動物からヒトまたはヒト様抗体を産生するための技術(例えば、国際特許第WO98/24893号、第WO/9634096号、第WO/9633735号、および第WO/9110741号、Jakobovits et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:2551(1993)、Jakobovits et al.,Nature,362:255−258(1993)、Bruggemann et al.,Year in Immuno.,7:33(1993)、米国特許第5,545,806号、第5,569,825号、第5,591,669号(すべてGenPharm)、第5,545,807号、第WO97/17852号、米国特許第5,545,807号、第5,545,806号、第5,569,825号、第5,625,126号、第5,633,425号、および第5,661,016号、およびMarks et al.,Bio/Technology,10:779−783(1992)、Lonberg et al.,Nature,368:856−859(1994)、Morrison,Nature,368:812−813(1994)、Fishwild et al.,Nature Biotechnology,14:845−851(1996)、Neuberger,Nature Biotechnology,14:826(1996)、およびLonberg and
Huszar,Intern.Rev.Immunol.,13:65−93(1995)を参照)を含む、多様な技術によって形成されてもよい。
【0048】
本明細書において、モノクローナル抗体は、「キメラ抗体」を含み、重鎖および/もしくは軽鎖の一部分は、特定の種に由来するか、もしくは特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体内の対応する配列に一致するか、または相同するが、1つまたは複数の鎖の残りは、所望の生物活性を呈する限り、別の種に由来するか、もしくは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体内の対応配列、ならびにそのような抗体のフラグメントに一致するか、または相同する(米国特許第4,816,567号、およびMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851−6855(1984)を参照)。本明細書において関心対象のキメラ抗体は、非ヒト霊長類に由来する可変ドメイン抗原結合配列を含む、「霊長類化」抗体(例えば、旧世界ザル、類人猿等)、およびヒト定常領域配列を含む。
【0049】
「正常な」抗体は、抗原結合部位ならびにCLおよび少なくとも重鎖定常ドメイン、CH1、CH2、およびCH3を含むものである。定常ドメインは、天然配列定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列定常ドメイン)またはそのアミノ酸配列変異型であり得る。好ましくは、正常な抗体は、1つまたは複数のエフェクタ機能を有する。
【0050】
「抗体フラグメント」は、正常な抗体の一部分、好ましくは、正常な抗体の抗原結合または可変領域を含む。抗体フラグメントの例には、Fab、Fab′、F(ab′)2、およびFvフラグメント、二重特異性抗体、線形抗体(米国特許第5,641,870号、実施例2、Zapata et al.,Protein Eng.8(10):1057−1062[1995]を参照)、単鎖抗体分子、および抗体フラグメントから形成される多特異性抗体が挙げられる。好適な実施形態において、フラグメントは「機能的」であり、すなわち、対応する正常な抗体が、標的IL−17AおよびIL−17Fポリペプチドに結合する能力を定性的に維持し、正常な抗体が、IL−17A/F生物活性または機能も阻害する場合は、そのような特性も同様に定性的に維持する。定性的維持は、同種の活性が維持されるが、結合親和性および/または活性の程度が異なり得ることを意味する。
【0051】
抗体のパパイン消化は、「Fab」フラグメントおよび残基「Fc」フラグメントと呼ばれる2つの同一抗原結合フラグメントを産生し、名称は容易に結晶化する能力を反映している。Fabフラグメントは、H鎖の可変領域ドメイン(VH)を伴う全体L鎖、および1つの重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)で構成される。各Fabフラグメントは、抗原結合に関して一価であり、すなわち、単一の抗原結合部位を有する。抗体のペプシン処理は、二価抗原結合活性を有する2つのジスルフィド結合されたFabフラグメントにほぼ対応しながら、依然として抗原を架橋することができる、単一の大きいF(ab′)2フラグメントをもたらす。Fab′フラグメントは、抗体ヒンジ領域からの1つまたは複数のシステインを含むCH1ドメインのカルボキシ末端において、追加のいくつかの残基を有することにより、Fabフラグメントとは異なる。Fab′−SHは、本明細書においてFab′の名称であり、定常ドメインのシステイン残基は、遊離チオール基を含む。F(ab′)2抗体フラグメントは、本来、それらの間にヒンジシステインを有する、Fab′フラグメントの対として産生された。抗体フラグメントの他の化学的結合も知られている。
【0052】
Fcフラグメントは、ジスルフィドによって一緒に保持される両方のH鎖のカルボキシ末端部分を含む。抗体のエフェクタ機能は、Fc領域内の配列によって決定され、この領域は、特定型の細胞上で見出されるFc受容体(FcR)によって認識される部分でもある。
【0053】
「Fv」は、完全な抗原認識および結合部位を含有する、最小抗体フラグメントである。このフラグメントは、堅固な非共有会合にある、1つの重鎖および1つの軽鎖可変領域ドメインの二量体で構成される。これら2つのドメインの折り畳みから、抗原結合のためのアミノ酸残基に寄与し、抗体に対する抗原結合特異性を付与する、6つの超可変ループ(HおよびL鎖からそれぞれ3ループ)が生じる。しかしながら、単一可変ドメイン(または抗原に特異的な3つのCDRのみを含むFvの半分)であっても、抗原を認識および結合する能力を有するが、全体結合部位よりも親和性が低い。
【0054】
「sFv」または「scFv」とも省略される「単鎖Fv」は、単一ポリペプチド鎖に結合されるVHおよびVL抗体ドメインを含む、抗体フラグメントである。好ましくは、sFvポリペプチドは、sFvに抗原結合のための所望の構造を形成させることができる、VHおよびVLドメインの間にポリペプチドリンカをさらに含む。sFvの概説については、以下、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,Springer−Verlag,New York,pp.269−315(1994)、Borrebaeck 1995を参照されたい。
【0055】
用語「二重特異性抗体」は、Vドメインの鎖内ではなく鎖間対合が達成され、二価フラグメント、すなわち、2つの抗原結合部位を有するフラグメントを生じるように、VHおよびVLドメインの間に短いリンカー(約5〜10残基)を備えた(前述の)sFvフラグメントを構成することによって調製される、小抗体フラグメントを指す。二重特異性抗体は、2つの「交差」sFvフラグメントのヘテロ二量体であり、2つの抗体のVHおよびVLドメインは、異なるポリペプチド鎖上に存在する。二重特異性抗体は、例えば、欧州特許第EP404,097号、国際特許第WO93/11161号、およびHollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444−6448(1993)においてより完全に説明されている。
【0056】
非ヒト(例えば、齧歯動物)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト抗体に由来する最小配列を含有するキメラ抗体である。大部分の場合、ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリン(受容体抗体)であり、受容体の超可変領域からの残基は、マウス、ラット、ウサギ、または所望の抗体特異性、親和性、および能力を有する非ヒト霊長類等の非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域からの残基によって置換される。いくつかの例において、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)は、対応する非ヒト残基によって置換される。さらに、ヒト化抗体は、受容体抗体またはドナー抗体において見出されない残基を含んでもよい。これらの修飾は、抗体性能をさらに改善するために行う。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、および通常2つの可変ドメインの実質的にすべてを含み、超可変ループのすべてまたは実質的にすべては、非ヒト免疫グロブリンのそれらに対応し、FRのすべてまたは実質的にすべては、ヒト免疫グロブリン配列のそれである。ヒト化抗体は、任意で、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分、通常、ヒト免疫グロブリンのそれを含む。さらなる詳細については、Jones et al.,Nature 321:522−525(1986)、Riechmann et al.,Nature 332:323−329(1988)、およびPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593−596(1992)を参照されたい。
【0057】
用語「多特異的抗体」は、広意義で使用され、重鎖可変ドメイン(VH)および軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体を特異的に網羅し、VHVL単位は、ポリエピトープ特異性を有する(すなわち、1つの生物分子上で2つの異なるエピトープに結合するか、または異なる生物分子上で各エピトープに結合することができる)。そのような多特異的抗体には、完全長抗体、2つ以上のVLおよびVHドメインを有する抗体、Fab、Fv、dsFv、scFv、二重特異性抗体、二重特異性抗体、および三重特異性抗体等の抗体フラグメント、共役的または非共役的に結合された抗体フラグメントが挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
「ポリエピトープ特異性」は、同一または異なる1つまたは複数の標的上で2つ以上の異なるエピトープに特異的に結合する能力を指す。
【0059】
「単特異的」は、1つのエピトープのみに結合する能力を指す。一実施形態に従って、IgG1形態の多特異的抗体は、5μM〜0.001pM、3μM〜0.001pM、1μM〜0.001pM、0.5μM〜0.001pM、または0.1μM〜0.001pMの親和性を有する各エピトープに結合する。
【0060】
「交差反応性抗体」は、複数の抗原上で同一または類似のエピトープを認識する抗体である。したがって、本発明の交差反応性抗体は、IL−17AおよびIL−17Fの両方に存在する同一または類似のエピトープを認識する。特定の実施形態において、交差反応性抗体は、同一または本質的に同一のパラトープを使用して、IL−17AおよびIL−17Fの両方に結合する。好ましくは、交差反応性抗体は、本明細書において、IL−17AおよびIL−17F機能(活性)も両方遮断する。
【0061】
用語「パラトープ」は、本明細書において、標的抗原に結合する抗体の一部を指すように使用される。
【0062】
「種依存性抗体」、例えば、哺乳動物抗IL−17A/F抗体は、第1の哺乳動物種からの抗原に対して、第2の哺乳動物種からの抗原の相同体に対して有するよりも強い結合親和性を有する抗体である。通常、種依存性抗体は、ヒト抗原に「特異的に結合する」(すなわち、わずか約1x10−7M、好ましくはわずか約1x10−8M、および最も好ましくはわずか約1x10−9Mの結合親和性(Kd)値を有する)が、第2の非ヒト哺乳動物種からの抗原の相同体に対して、ヒト抗原に対するその結合親和性よりも、少なくとも約50倍、もしくは少なくとも約500倍、または少なくとも約1000倍弱い結合親和性を有する。種依存性抗体は、上述されるように、様々な種類の抗体のうちのいずれかであり得るが、好ましくは、ヒト化またはヒト抗体である。
【0063】
関心対象の抗原を「結合する」抗体は、抗原を発現する細胞または組織を標的する際に、抗体が診断および/または治療薬として有用であるために十分な親和性を有する抗原を結合し、他のタンパク質と有意に相互反応しないものである。そのような実施形態において、「非標的」タンパク質に対する抗体の結合の程度は、蛍光活性化細胞選別(FACS)分析または放射性免疫沈降(RIA)によって決定されるように、その特定標的タンパク質への抗体の結合の約10%未満となる。標的分子への抗体の結合に関して、用語「特異的結合」もしくは「特異的に結合する」または特定のポリペプチドもしくは特定のポリペプチド標的上のエピトープ「に特異的である」は、非特異的相互作用とはある程度異なる結合を意味する。特異的結合は、例えば、対照分子の結合と比較して、概して、結合活性を有しない類似構造の分子である、分子の結合を決定することによって測定され得る。例えば、特異的結合は、標的に類似する対照分子との競合、例えば、過剰の非標識標的によって決定され得る。この場合、特異的結合は、プローブへの標識標的の結合が、過剰な非標識標的によって競合的に阻害される場合に示される。本明細書で使用される、用語「特異的結合」、または「特異的に結合する」、もしくは特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド標的上のエピトープ「に特異的な」は、例えば、少なくとも約10−4M、代替的に少なくとも約10−5M、代替的に少なくとも約10−6M、代替的に少なくとも約10−7M、代替的に少なくとも約10−8M、代替的に少なくとも約10−9M、代替的に少なくとも約10−10M、代替的に少なくとも約10−11M、代替的に少なくとも約10−12M、またはそれ以上の標的に対するKdを有する分子によって示され得る。一実施形態において、用語「特異的結合」は、分子が、任意の他のポリペプチドまたはポリペプチドエピトープに実質的に結合することなく、特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド上のエピトープに結合する、結合を指す。好適な実施形態において、特異的結合親和性は、少なくとも約10−10Mである。
【0064】
抗体「エフェクタ機能」は、抗体のFc領域(天然配列Fc領域またはアミノ酸配列異型Fc領域)に起因する、それらの生物活性を指し、抗体のアイソタイプによって異なる。抗体効果または機能の例には、C1q結合および補体依存性細胞毒性、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介細胞毒性(ADCC)、食作用、細胞表面受容体の下方制御(例えば、B細胞受容体)、およびB細胞活性化が挙げられる。
【0065】
「抗体依存性細胞媒介細胞毒性」または「ADCC」は、特定の細胞毒性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、およびマクロファージ)上に存在する、Fc受容体(FcR)上に結合される分泌Igが、これらの細胞毒性エフェクタ細胞を、抗原を有する標的細胞に特異的に結合させて、実質的に細胞毒性を有する標的細胞を殺傷することができる、細胞毒性の形態を指す。抗体は、細胞毒性細胞を「作動可能にする」ため、そのような殺傷に確実に必要とされる。ADCCを媒介するための主要な細胞、NK細胞は、FcγRIIIのみを発現するが、単球は、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIを発現する。造血細胞上のFcR発現は、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.9:457−92(1991)の464ページ、表3に要約されている。関心対象の分子のADCC活性を評価するために、インビトロADCC検定は、米国特許第5,500,362号または第5,821,337号に記載されるように行われてもよい。そのような検定に有用なエフェクタ細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。代替または追加的に、関心対象の分子のADCC活性は、Clynes et al.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.95:652−656(1998)に開示されるように、インビボで、例えば、動物モデルにおいて評価されてもよい。
【0066】
「Fc受容体」または「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を説明する。好適なFcRは、天然配列ヒトFcRである。さらに、好適なFcRは、IgG抗体(γ受容体)を結合するものであり、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIサブクラスの受容体を含み、これらの受容体の対立遺伝子多型および選択的にスプライスされた形態を含む。FcγRII受容体は、主にその細胞質ドメインにおいて異なる類似のアミノ酸配列を有する、FcγRIIA(「活性化受容体」)およびFcγRIIB(「阻害受容体」)を含む。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメインに、免疫受容体チロシン系活性化モチーフ(ITAM)を含有する。阻害受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメインに、免疫受容体チロシン系阻害モチーフ(ITIM)を含有する(Daeron,Annu.Rev.Immunol.15:203−234(1997)のレビューMを参照)。FcRsは、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.9:457−492(1991)、Capel et al.,Immunomethods 4:25−34(1994)、およびde Haas et al.,J.Lab.Clin.Med.126:330−41(1995)において概説されている。今後識別されるものを含む他のFcRsは、本明細書において、用語「FcR」によって包含される。用語は、胎児への母体IgGの移行に関与する、新生児受容体も含む(Guyer et al.,J.Immunol.117:587(1976)およびKim et al.,J.Immunol.24:249(1994))。
【0067】
「ヒトエフェクタ細胞」は、1つまたは複数のFcRを発現し、エフェクタ機能を行う白血球である。好ましくは、細胞は、少なくともFcγRIIIを発現し、かつ、ADCCエフェクタ機能を行う。ADCCを媒介するヒト白血球の例には、末梢血単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞毒性T細胞、および好中球が挙げられ、PBMCおよびNK細胞が好適である。エフェクタ細胞は、天然供給源、例えば、血液から単離されてもよい。
【0068】
「補体依存性細胞毒性」または「CDC」は、補体の存在下における標的細胞の溶解を指す。古典的補体経路の活性化は、補体系(C1q)の第1の成分を、それらの同種抗原に結合される(適切なサブクラスの)抗体に結合することによって開始される。補体の活性化を評価するために、CDC検定を、例えば、Gazzano−Santoro et al.,Immunol.Methods 202:163(1996)に記載されるように行ってもよい。
【0069】
用語「中和する」および「活性を中和する」は、本明細書において、例えば、任意の機序によって、IL−17(例えば、IL−17Aおよび/もしくはIL−17F)の活性を遮断、回避、低減、反作用するか、または無効にすることを意味するように使用される。したがって、アンタゴニストは、IL−17の活性に必要な結合イベントを回避し得る。
【0070】
「中和抗体」は、IL−17(IL−17Aおよび/もしくはIL−17Fを含む)のエフェクタ機能を遮断するか、または有意に低減させることができると本明細書に定義されるように、抗体分子を意味する。例えば、中和抗体は、IL−17(例えば、IL−17Aおよび/もしくはIL−17F)の活性を阻害または低減して、IL−17受容体、例えば、IL−17Rcと相互作用し得る。代替的に、中和抗体は、IL−17の能力を阻害または低減して、IL−17受容体シグナル伝達経路を遮断し得る。また中和抗体は、IL−17活性の免疫測定法において、IL−17に免疫特異的に結合し得る。インビトロおよびインビボ状況において、その機能的活性を維持することは、本発明の「中和抗体」の特徴である。
【0071】
B. 詳細な説明
1. 治療用途
インスリン抵抗は、インスリンの存在が、正常以下の生物反応をもたらす状態である。臨床用語において、インスリン抵抗は、正常または上昇したインスリン値に対して、正常または上昇した血糖値が持続する場合に存在する。本質的に、それはグリコーゲン合成の阻害を表し、これによって基礎またはインスリン刺激によるグリコーゲン合成のいずれか、または両方が、正常値よりも低下する。2型糖尿病に存在する高血糖は、明らかに、インスリンに対する末梢組織の感受性を回復するのに十分な食事または体重減少によって好転し得る場合があるという事実によって証明されるように、インスリン抵抗は、2型糖尿病において主要な役割を果たす。
【0072】
本発明は、IL−17Aおよび/もしくはIL−17Fアンタゴニストの投与によるインスリン抵抗または2型糖尿病の治療に関する。前述されるように、IL−17Aおよび/もしくはIL−17Fアンタゴニストは、治療されている適応症に応じて、なんらかの手段によって、IL−17Aおよび/もしくはIL−17Fの機能を干渉するか、またはIL−17Aおよび/もしくはIL−17Fの関連活性を遮断または中和する、任意の分子であり得る。IL−17Aおよび/またはIL−17Fと、1つまたは複数のその受容体、特にIL−17Rcの間の相互作用を回避し得る。そのような薬剤は、様々な方法でこの効果を達成する。例えば、IL−17Aおよび/もしくはIL−17Fの活性を中和するアンタゴニストのクラスは、IL−17Aおよび/もしくはIL−17FまたはIL−17Aおよび/もしくはIL−17Fの受容体、特にIL−17Rcに結合し、IL−17Aおよび/またはIL−17Fを干渉するための十分な親和性および特異性を有する。
【0073】
2. 投与および製剤
IL−17アンタゴニストは、任意の適切な経路によって投与されてもよく、静脈内(IV)、筋肉内(IM)、皮下(SC)、および腹腔内(IP)、ならびに経皮、口腔、舌下、直腸内、鼻腔内、および吸入経路であるが、これらに限定されない非経口投与経路を含む。IV、IM、SC、およびIP投与は、ボーラスまたは持続注射によって行われてもよく、SCの場合は、徐放性埋め込み型装置によって行われてもよく、ポンプ、徐放製剤、および機械装置を含むが、これらに限定されない。好ましくは、投与は全身性である。
【0074】
IL−17アンタゴニストの投与のための特に好適な一方法は、特に、定量注入器、例えば、ポンプを使用する皮下注射による。そのようなポンプは、再利用または使い捨て可能であり、埋め込みまたは外部搭載可能であり得る。この目的で通常用いられる薬物注入ポンプは、例えば、米国特許第5,637,095号、第5,569,186号、および第5,527,307号に開示されるポンプを含む。組成物は、そのような装置から連続的または断続的に投与され得る。
【0075】
保管に適したIL−17アンタゴニストの治療製剤は、所望の純度を有するアンタゴニストと、薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤との混合物を(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980))、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で含む。許容される担体、賦形剤、または安定剤は、用いられる用量および濃度において、受容者に非毒性であり、リン酸、クエン酸、および他の有機酸等の緩衝液、アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤、保存剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチル、もしくはベンジルアルコール、アルキルパラベン、例えば、メチルもしくはプロピルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3−ベンタノール、およびm−クレゾール)、低分子量(約10残基未満)ポリペプチド、タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリン、親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン、アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリシン、単糖、二糖、およびグルコース、マンノース、またはデキストリンを含む他の炭水化物、キレート剤、例えば、EDTA、糖類、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロース、もしくはソルビトール、塩形成対イオン、例えば、ナトリウム、金属複合体(例えば、Zn−タンパク質複合体)、および/もしくは非イオン性界面活性剤、例えば、TWEENT(商標)、PLURONICS(商標)、またはポリエチレングリコール(PEG)を含む。好適な凍結乾燥された抗IL−17抗体製剤は、第WO97/04801号に記載されている。これらの組成物は、好ましくは、可溶性形態で、活性アンタゴニストの約0.1〜90重量%、より一般的には、約10〜30重量%を含有するIL−17に対するアンタゴニストを含む。
【0076】
活性成分は、例えば、コアセルベーション技術または界面ポリマー化によって調製される、マイクロカプセル、例えば、それぞれヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセルおよびポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセル、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミン小球体、マイクロエマルション、ナノ粒子、およびナノカプセル)、またはマクロエマルションにそれぞれ捕捉されてもよい。そのような技術は、上記Remington’s Pharmaceutical Sciencesに開示されている。
【0077】
IL−17Aおよび/またはIL−17Fアンタゴニスト、例えば、本明細書に開示される抗IL−17抗体は、免疫リポソームとして製剤されてもよい。抗体を含有するリポソームは、例えば、Epstein et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82:3688(1985)、Hwang et al.,Proc.Natl Acad.Sci.USA,77:4030(1980)、米国特許第4,485,045号ならびに第4,544,545号、および1997年10月23日に公開された国際特許第WO97/38731号に記載されるように、該技術分野において知られている方法によって調製される。拡張された循環時間を有するリポソームは、米国特許第5,013,556号に開示されている。
【0078】
特に有用なリポソームは、逆相蒸発法によってホスファチジルコリン、コレステロール、およびPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG−PE)を含む脂質組成物を用いて生成され得る。リポソームは、定義された孔径のフィルタを通して押し出され、所望の直径を有するリポソームを生じる。本発明の抗体のFab′フラグメントは、Martin et al.,J.Biol.Chem.,257:286−288(1982)に記載されるように、ジスルフィド交換反応を介してリポソームと共役され得る。
【0079】
徐放性調製物が調製されてもよい。徐放性調製物の適切な例には、抗体を含有する固形疎水性ポリマーの半透過性基質が挙げられ、この基質は、成形品の形態であり、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルである。徐放性基質の例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸およびyエチル−L−グルタミン酸塩のコポリマー、非分解性エチレン−酢酸ビニル、分解性乳酸−グリコール酸コポリマー、例えば、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸−グリコール酸コポリマーおよび酢酸ロイプロリドで構成される注射用ミクロスフェア)、およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシブチル酸が挙げられる。
【0080】
特定のアンタゴニストのいずれかは、担体タンパク質に結合されて、治療用アンタゴニストの血清半減期を増加させ得る。例えば、本明細書に記載されるような可溶性免疫グロブリンキメラは、米国特許第5,116,964号に記載されるように、それぞれ特定のIL−17アンタゴニストまたはそのアンタゴニスト部分に対して得ることができる。免疫グロブリンキメラは、IgG結合タンパク質A−セファロースクロマトグラフィを通して容易に精製される。キメラは、随伴性の高親和性および血清半減期を有する免疫グロブリン様二量体を形成する能力を有する。
【0081】
インビボ投与に使用される製剤は、滅菌されなければならない。これは、滅菌ろ過膜を通すろ過によって容易に達成される。
【0082】
本明細書における製剤は、治療される特定の適応症に必要な複数の活性成分、好ましくは、相互に悪影響を及ぼさない補体活性を有するものを含んでもよい。またそのような活性成分は、治療される哺乳動物に個別に投与され得る。
【0083】
例えば、それらの適応症に対するインスリン抵抗治療薬をさらに提供することが望ましい場合がある。さらに、食事および体重減少に応答しない2型糖尿病は、IL−17アンタゴニストとともに、スルホニル尿素による治療に応答し得る。スルホニル尿素薬のクラスは、アセトヘキサミド、クロロプロパミド、トラザミド、トルブタミド、グリベンクラミンド、グリボムリド、グリクラジド、グリピジド、グリキドン、およびグリミジンを含む。この目的の他の薬剤は、自己免疫試薬、インスリン増感剤、例えば、グリタゾン系の化合物、米国特許第5,753,681号に記載されるもの、例えば、トログリタゾン、ピオグリタゾン、エングリタゾン、および関連化合物、インスリン受容体チロシンキナーゼ阻害剤に対するアンタゴニスト(米国特許第5,939,269号および第5,939,269号)、IGF−1/IGFBP−3複合体(米国特許第6,040,292号)、TNF−α機能に対するアンタゴニスト(米国特許第6,015,558号)、成長ホルモン放出剤(米国特許第5,939,387号)、およびアミリンに対する抗体(米国特許第5,942,227号)を含む。使用され得る他の化合物は、インスリン(1つまたは複数の異なるインスリン)、インスリン模倣体、例えば、小分子インスリン、上記のようなインスリン類似体もしくはその生理活性フラグメント、上記のようなインスリン関連ペプチド、またはその類似他体もしくはフラグメントを含む。薬剤は、上記の定義においてさらに特定される。
【0084】
低インスリン血症を治療するために、例えば、インスリンは、IL−17に対するアンタゴニストと一緒に投与され得るか、または別個に投与されてもよい。
【0085】
そのような追加分子は、適切に存在するか、または意図される目的に有効な量、通常、それらがIL−17に対するアンタゴニストなしに単独で投与される場合に使用される量未満で、併せて投与される。それらが一緒に製剤化される場合、例えば、適応症の種類、対象、対象の年齢および体重、現在の臨床状態、投与回数、投与形態、投与方法等に従って決定される量で製剤され得る。例えば、併用薬は、好ましくは、本明細書において、IL−17に対するアンタゴニストの1重量部分に対して、約0.0001〜10,000重量部分の比で使用される。
【0086】
IL−17に対するアンタゴニストをインスリンと併用することは、インスリン単独を投与するときの用量と比較して、インスリン用量の低減を可能にする。したがって、いずれもインスリンの大量投与に伴う問題となり得る、血管合併症および低血糖誘導のリスクが低い。成人糖尿病患者にインスリンを投与する場合(体重約50kg)、例えば、1日当りの用量は、通常、約10〜100U(単位)、好ましくは、10〜80Uであるが、これは、医師によって決定されるように、それ未満でもよい。同一種の患者にインスリン分泌増強剤を投与する場合、例えば、1日当りの用量は、好ましくは、約0.1〜1000mg、より好ましくは、約1〜100mgである。同一種の患者にビグアニドを投与する場合、例えば、1日当りの用量は、好ましくは約10〜2500mg、より好ましくは、約100〜1000mgである。同一種の患者にグルコシダーゼ阻害剤を投与する場合、例えば、1日当りの用量は、好ましくは、約0.1〜400mg、より好ましくは、約0.6〜300mgである。そのような患者に対するエルゴセット、プラムリンチド、レプチン、BAY−27−9955、またはT−1095の投与は、好ましくは、約0.1〜2500mg、より好ましくは、約0.5〜1000mgの用量で行われ得る。上記用量のすべては、1日に1回から数回投与され得る。
【0087】
IL−17アンタゴニストは、膵臓移植等のインスリン抵抗に適した非薬物治療と併せて投与されてもよい。
【0088】
インスリン抵抗または低インスリン血症の哺乳動物に投与されるアンタゴニストの用量は、哺乳動物の状態、アンタゴニストの種類、適応症の種類、および選択される投与経路を含む、関連状況に照らして、医師によって決定される。用量は、好ましくは、任意の有意な程度の体重増加をもたらさないために十分低いレベルであり、医師は、そのレベルを決定することができる。ヒト2型糖尿病の治療に対して承認されたグリタゾン(ロシグリタゾン/アバンジアおよびピオグリタゾン/アクトス)は、ある程度の体重増加をもたらすが、それらの治療指数によって有益であることが証明されているため、副作用があるにも関わらず、それらは使用されている。本明細書に提示される用量範囲は、いかなる方法においても本発明の範囲を制限することを意図しない。本明細書における目的で、低インスリン血症およびインスリン抵抗に「治療上有効な」量は、上記因子によって決定されるが、概して、約0.01〜100mg/kg体重/日である。好適な用量は、約0.1〜50mg/kg/日、より好ましくは、約0.1〜25mg/kg/日である。なおもさらに好ましくは、IL−17アンタゴニストは、毎日投与され、ヒトに対する静脈内または筋肉内用量は、約0.3〜10mg/kg体重/日、より好ましくは、約0.5〜5mg/kgである。皮下投与の場合、用量は、静脈内または筋肉内投与される治療当量よりも多いことが好ましい。好ましくは、ヒトに対する1日の皮下投与量は、両適応症に対して、約0.3〜20mg/kg、より好ましくは、約0.5〜5mg/kgである。
【0089】
本発明は、多様な投与計画を検討する。本発明は、連続的な投与計画を包含し、IL−17アンタゴニストは、実質的な中断なしに規則的に(用量および投与形態に応じて、1日1回、1週間に1回、または1ヶ月に1回)投与される。好適な連続投与計画は、IL−17アンタゴニストが各日に注入される毎日の持続注入、およびIL−17アンタゴニストが少なくとも1日1回、ボーラス注入もしくは吸入または鼻腔内経路によって投与される、連続ボーラス投与を含む。本発明は、断続的投与計画も含む。断続的投与計画の正確なパラメータは、製剤、送達方法、および治療される哺乳動物の臨床ニーズに従って異なる。例えば、IL−17アンタゴニストが注入によって投与される場合、投与計画は、第1の投与期間に続いて、第2の期間を含み得、第1の期間よりも多いか、等しいか、または少ないIL−17アンタゴニストが投与されない。
【0090】
投与がボーラス注入、特に徐放製剤のボーラス注入による場合、投与計画は、連続的であってもよく、IL−17アンタゴニストは、各日投与されるか、または上述されるように、断続的であり得、第1および第2の期間を有する。
【0091】
任意の方法による連続的および断続的投与計画は、例えば、第1の期間の開始時に低用量であるが第1の期間の最後までに増加する、第1の期間中、最初は高用量であるが減少する、最初は低用量であるが、ピークレベルに増加し、次に第1の期間の最後に向かって減少するように、用量が第1の期間を通して調整される、投与計画、およびそれらの任意の組み合わせも含む。
【0092】
IL−17アンタゴニストの投与がインスリン抵抗に及ぼす影響は、該技術分野において知られている多様な検定によって測定され得る。最も一般的に、糖尿病の影響の軽減は、(血糖値の連続試験によって測定されるように)血糖管理の改善、良好な血糖管理を維持するためのインスリン要件の低減、グリコシル化ヘモグロビンの低下、進行性グリコシル化最終生成物(AGE)の血中濃度の減少、「曙現象」の低下、ケトアシドーシスの低下、および脂質プロファイルの改善をもたらす。代替的に、IL−17アンタゴニストの投与は、血糖値の低下、インスリン要件の低減、グリコシル化ヘモグロビンおよび血中AGEの低下、血管、腎臓、神経、および網膜合併症の低下、妊娠合併症の低下、および脂質プロファイルの増加によって示されるように、糖尿病の症状の安定化をもたらし得る。
【0093】
IL−17アンタゴニストの血糖降下作用は、投与前および後の対象における静脈血血漿中のグルコースまたはHb(ヘモグロビン)A1c濃度を決定し、次に、得られた濃度を投与前と投与後とで比較することによって評価することができる。HbA1cは、グリコシル化ヘモグロビンを意味し、血糖濃度に対応して徐々に産生される。したがって、HbA1cは、糖尿病患者における急速な血糖値の変化に容易に影響されない血糖管理の指数として重要であると考えられる。
【0094】
低インスリン血症を治療する証拠は、例えば、患者におけるインスリンの血中濃度の増加によって示される。
【0095】
筋肉修復および再生のための用量は、患者の状態、所望される筋肉修復の特定型等に応じて、通常、約0.01〜100mg/kg体重、より好ましくは、1〜10mg/kgである。投与計画は、この領域の医師によって使用される標準的計画に従う。筋肉修復または再生の証拠は、該技術分野においてよく知られている様々な測定試験によって示され、筋肉細胞の増殖および分化のための検定およびポリメラーゼ連鎖反応試験を含む(例えば、定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応を使用して、ウサギ骨格筋肉を治癒する際に、筋芽細胞および線維芽細胞に由来する遺伝子産生物のmRNA値の変化の分析を提供する、Best et al.,J.Orthop.Res.,19:565−572(2001)を参照)。
【0096】
3. 製造品およびキット
本発明は、インスリン抵抗および低インスリン血症の治療のため、および筋肉の修復および再生のためのキットも提供する。本発明のキットは、IL−17アンタゴニスト、好ましくは抗体の1つまたは複数の容器を、インスリン抵抗または低インスリン血症の治療のため、またはインスリン抵抗と関連付けられる任意の他の標的疾患のためのIL−17アンタゴニストの使用および用量に関する一式の説明書、一般に書面での説明書とともに含む。キットに含まれる説明書は、一般に、インスリン抵抗または低インスリン血症等の標的疾患の治療のための用量、投与計画、および投与経路に関する情報を含む。IL−17アンタゴニストの容器は、ユニット用量、バルクパッケージ(例えば、複数投与パッケージ)、またはサブユニット用量であり得る。
【0097】
製造品は、容器および容器に関するか、または関連付けられるラベルまたはパッケージ挿入物を含む。適切な容器は、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ等を含む。容器は、ガラスまたはプラスチック等の多様な物質から形成されてもよい。容器は、状態を治療するために有効な組成物を保持し、滅菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、皮下注射針によって穿孔可能なストッパーを有する点滴バッグまたはバイアルであってもよい)。組成物中の少なくとも1つの活性剤は、本発明のIL−17アンタゴニストである。ラベルまたはパッケージ挿入物は、組成物が特定の状態を治療するために使用されることを示す。ラベルまたはパッケージ挿入物は、抗体組成物を患者に投与するための説明書をさらに含む。本明細書に記載される複合治療を含む製造品およびキットも検討される。
【0098】
パッケージ挿入物は、適応症、用途、用量、投与、禁忌に関する情報、および/またはそのような治療薬品の使用に関する警告を含む、治療薬品の商用パッケージに習慣的に含まれる説明書を指す。
【0099】
追加として、製造品は、薬学的に許容される緩衝液、例えば、注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝食塩水、リンガー液およびデキストロース液を含む、第2の容器をさらに含んでもよい。他の緩衝液、希釈液、フィルタ、針、およびシリンジを含む、商用およびユーザの見地から望ましい他の物質をさらに含んでもよい。
【0100】
4. 抗体の調製
モノクローナル抗体
モノクローナル抗体は、Kohler et al.,Nature,256:495(1975)によって最初に記載されたハイブリドーマ法を使用して形成され得るか、または組み換えDNA法によって形成されてもよい(米国特許第4,816,567号)。ハイブリドーマ法において、マウスまたは他の適切な宿主動物、例えば、ハムスターまたはマカクザルは、本明細書において上述されるように免疫付与され、免疫付与に使用されるタンパク質に特異的に結合する抗体を産生するか、または産生することができるリンパ球を溶出する。代替的に、リンパ球は、インビトロで免疫付与され得る。リンパ球は、次に、適切な融合剤、例えば、ポリエチレングリコールを使用して、骨髄腫細胞と融合され、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,pp.59−103(Academic Press,1986))。
【0101】
そのように調製されたハイブリドーマ細胞は、好ましくは、非融合の親骨髄腫細胞の成長または生存を阻害する、1つまたは複数の物質を含有する、適切な培地において播種および成長される。例えば、親骨髄腫細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠失する場合、ハイブリドーマの培地は、通常、ヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジン(HAT媒体)を含み、これらの物質は、HGPRT欠損細胞の成長を回避する。
【0102】
好適な骨髄腫細胞は、十分に融合し、選択された抗体産生細胞によって抗体の安定した高レベル産生を支持し、HAT媒体等の媒体に感受性のあるものである。これらの中で、好適な骨髄腫細胞株は、マウス骨髄種細胞株、例えば、Salk Institute Cell Distribution Center,San Diego,Calif.USAから入手可能なMOPC−21およびMPC−11マウス腫瘍に由来するもの、およびAmerican Type Culture Collection,Rockville,Md.USAから入手可能なSP−2またはX63−Ag8−653細胞に由来するものである。ヒト骨髄腫およびマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞株は、ヒトモノクローナル抗体の産生についても説明されている(Kozbor,J.Immunol.,133:3001(1984)、Brodeur et al,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51−63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987))。
【0103】
ハイブリドーマ細胞が成長している培地は、抗原に対して配向されるモノクローナル抗体の産生について検定される。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降またはインビトロ結合検定、例えば放射免疫測定(RIA)または酵素結合免疫吸着測定(ELISA)によって決定される。
【0104】
所望の特異性、親和性、および/または活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞が識別された後、希釈手順を限定することによって、クローンをサブクローン化し、標準的な方法によって成長されてもよい(Goding,MonoclonalAntibodies:Principles and Practice,pp.59−103(Academic Press,1986))。この目的のための適切な培地は、例えば、D−MEMまたはRPMI−1640倍地を含む。さらに、ハイブリドーマ細胞は、動物における腹水腫瘍として、インビボで成長され得る。
【0105】
サブクローンによって分泌されるモノクローナル抗体は、従来の免疫グロブリン精製手順、例えば、タンパク質A−セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィ、ゲル電気泳動、透析、または親和性クロマトグラフィによって、培地、腹水、または血清から適切に分離される。
【0106】
モノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して、容易に単離および配列決定される(例えば、モノクローナル抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)。ハイブリドーマ細胞は、そのようなDNAの好適な供給源としての役割を果たす。一旦単離されると、DNAは、発現ベクターに置かれてもよく、次に、そうでなければ免疫グロブリンタンパク質を産生しない、大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または骨髄腫細胞等の宿主細胞にトランスフェクトされて、組み換え宿主細胞中のモノクローナル抗体の合成物を得る。抗体の組み換え産生は、以下でさらに詳細に説明される。
【0107】
さらなる実施形態において、抗体または抗体フラグメントは、McCafferty et al.,Nature,348:552−554(1990)に記載される技術を使用して生成される抗体ファージライブラリから単離され得る。
【0108】
Clackson et al.,Nature,352:624−628(1991)およびMarks et al.,J.Mol.Biol.,222:581−597(1991)は、それぞれファージライブラリを使用するマウスおよびヒト抗体の単離について説明する。後次の発行物は、鎖シャッフルによるヒト抗体の高親和性(nM範囲)の産生(Marks et al.,Bio/Technology,10:779−783(1992))、ならびに極めて大きいファージライブラリを構成するための方法としての組み合わせ感染およびインビボ組み換えについて説明している(Waterhouse et al.,Nuc.Acids.Res.,21:2265−2266(1993))。したがって、これらの技術は、モノクローナル抗体の単離に対する伝統的なモノクローナル抗体ハイブリドーマ技術の実行可能な代替案である。
【0109】
DNAは、例えば、同種マウス配列の代わりに、ヒト重鎖および軽鎖定常ドメインのコード配列を置き換えることによって(米国特許第4,816,567号、Morrison,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851(1984))または非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列のすべてまたは一部を免疫グロブリンコード配列に共有結合することによって修飾されてもよい。
【0110】
通常、そのような非免疫グロブリンポリペプチドは、抗体の定常ドメインと置換されるか、またはそれらは、抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインと置換されて、抗原に対して特異性を有する1つの抗原結合部位および異なる抗原に対して特異性を有する別の抗原結合部位を含むキメラ二価抗体を形成する。
【0111】
ヒト化およびヒト抗体
ヒト化抗体は、非ヒトである供給源からそれに導入される、1つまたは複数のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、典型的に、「インポート」可変ドメインから取られる、「インポート」残基と称される場合が多い。ヒト化は、本質的に、Winterおよび共働者の方法に従って(Jones et al.,Nature,321:522−525(1986)、Riechmann et al.,Nature,332:323−327(1988)、Verhoeyen et al.,Science,239:1534−1536(1988))、齧歯動物CDRまたはCDR配列をヒト抗体の対応する配列と置換することによって行われる。したがって、そのような「ヒト化」抗体は、キメラ抗体であり(米国特許第4,816,567号)、実質的に正常ではないヒト可変ドメインは、非ヒト種からの対応する配列によって置換された。実際に、ヒト化抗体は、通常、ヒト抗体であり、いくつかのCDR残基および恐らくいくつかのFR残基は、齧歯動物抗体における類似体部位からの残基によって置換される。
【0112】
ヒト化抗体を形成する際に使用されるヒト可変ドメインの選択は、軽鎖および重鎖のいずれも、抗原性を低下させるために極めて重要である。いわゆる「最適な」方法に従って、齧歯動物抗体の可変ドメインの配列は、知られているヒト可変ドメイン配列の全体ライブラリに対してスクリーニングされる。齧歯動物のそれに最も近いヒト配列は、次に、ヒト化抗体のヒトフレームワーク(FR)として認められる(Sims et al.,J.Immunol.,151:2296(1993)、Chothia et al.,J.Mol.Biol.,196:901(1987))。別の方法は、軽鎖または重鎖の特定亜群のすべてのヒト抗体のコンセンサス配列に由来する、特定のフレームワークを使用する。同一のフレームワークを、いくつかの異なるヒト化抗体に使用してもよい(Carter et al.,Proc.Natl.Acad Sci.USA,89:4285(1992)、Presta et al.,J.Immnol.,151:2623(1993))。
【0113】
抗原に対する高い親和性の保持および他の好ましい生物特性によって抗体をヒト化することがさらに重要である。この目的を達成するために、好適な方法に従って、ヒト化抗体は、親およびヒト化配列の3次元モデルを使用し、親配列および様々な概念的ヒト化生成物の分析の過程によって調製される。3次元免疫グロブリンモデルは、一般に入手可能であり、当業者によく知られている。選択される候補免疫グロブリン配列の潜在的な3次元立体配座構造を説明および表示する、コンピュータプログラムが入手可能である。この表示の検査は、候補免疫グロブリン配列の機能における残基の推定される役割の分析、すなわち、候補免疫グロブリンがその抗原に結合する能力に影響する残基の分析を許可する。このようにして、FR残基は、受容体およびインポート配列から選択および結合して、所望の抗体特性、例えば、標的抗原の親和性の増加が達成されるようにすることができる。一般に、CDR残基は、抗原結合への影響に直接およびほぼ実質的に関与する。
【0114】
代替的に、ここで、免疫化の際に、内因性免疫グロブリン産生の不在下で、ヒト抗体の完全レパートリーを産生することができる、トランスジェニック動物(例えば、マウス)を産生することが可能である。例えば、キメラおよび生殖細胞変異マウスにおける抗体重鎖結合領域(J.sub.H)遺伝子のホモ接合体欠失は、内因性抗体産生の完全な阻害をもたらすことが説明されている。そのような生殖細胞変異マウスにおけるヒト生殖細胞遺伝子配列の導入は、抗原投与時にヒト抗体の産生をもたらす。例えば、Jakobovits et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:2551(1993)、Jakobovits et al.,Nature,362:255−258(1993)、Bruggermann et al.,Year in Immuno.,7:33(1993)、およびDuchosal et al.Nature 355:258(1992)を参照されたい。ヒト交抗体は、ファージ表示ライブラリにも由来し得る(Hoogenboom et al,J.Mol.Biol.,227:381(1991)、Marks et al,J.MoL Biol.,222:581−597(1991)、Vaughan et al.Nature Biotech 14:309(1996))。抗体ファージ表示ライブラリからのヒト抗体の生成は、以下でさらに説明される。
【0115】
抗体フラグメント
抗体フラグメントの産生に対して、様々な技術が開発されている。伝統的に、これらのフラグメントは、正常な抗体のタンパク質分解消化を介して生成された(例えば、Morimoto et al.,Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107−117(1992)およびBrennan et al.,Science,229:81(1985)を参照)。しかしながら、これらのフラグメントは、現在、組み換え宿主細胞によって直接産生され得る。例えば、抗体フラグメントは、上述される抗体ファージライブラリから単離され得る。代替的に、Fab′−SHフラグメントは、大腸菌から直接回復され、化学的に結合されてF(ab′)2フラグメントを形成することができる(Carter et al.,Bio/Technology 10:163−167(1992))。以下の実施例に記載される別の実施形態において、F(ab′)2は、ロイシンジッパーGCN4を使用して形成され、F(ab′)2分子の集合を促進する。別のアプローチに従って、F(ab′)2フラグメントは、組み換え宿主細胞培養から直接単離され得る。抗体フラグメントの産生のための他の技術は、熟練した実践者に明らかとなるであろう。他の実施形態において、選択された抗体は、単鎖Fvフラグメント(scFv)である。国際特許第WO93/16185号を参照されたい。
【0116】
多特異的抗体
多特異的抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープに対して結合特異性を有し、エピトープは、通常、異なる抗原に由来する。そのような分子は、通常、2つの異なるエピトープ(すなわち、二重特異性抗体、BsAb)を結合するに過ぎないが、追加の特異性を有する抗体、例えば、三重特異性抗体は、本明細書において使用される場合、この表現に包含される。二重特異性抗体を形成するための方法は、当業者に知られている。完全長二重特異性抗体の伝統的産生は、2つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖対の共発現に基づき、2つの鎖は、異なる特異性を有する(Millstein et al.,Nature,305:537−539(1983))。免疫グロブリン重鎖および軽鎖のランダム分類に起因して、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10個の異なる抗体分子の潜在的な混合物を産生し、それらのうちの1つのみが適切な二重特異性構造を有する。通常、親和性クロマトグラフィステップによって行われる適切な分子の精製は、むしろ面倒であり、生産収率は低い。同様の手順は、国際特許第WO93/08829号、およびTraunecker et al.,EMBO J.,10:3655−3659(1991)に開示される。異なるアプローチに従って、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗体−抗原結合部位)は、免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合される。融合は、好ましくは、ヒンジ、CH2、およびCH3領域の少なくとも一部を含む、免疫グロブリン重鎖定常ドメインを用いる。融合の少なくとも1つに存在する、軽鎖結合に必要な部位を含む、第1の重鎖定常領域(CH1)を有することが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合、および必要に応じて免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAは、個別の発現ベクターに挿入され、適切な宿主有機体に共トランスフェクトされる。これは、実施形態において、組成物中で使用される3つのポリペプチド鎖の不均等率が最適な収率を提供する場合に、3つのポリペプチドフラグメントの相互比率を調整する際に優れた柔軟性を提供する。しかしながら、少なくとも2つのポリペプチド鎖の等比の発現が高い収率をもたらす場合、または比率が特に重要でない場合、1つの発現ベクターに2つまたは3つのポリペプチド鎖すべてのコード配列を挿入することが可能である。
【0117】
本アプローチの好適な実施形態において、二重特異性抗体は、一方のアームに第1の結合特異性を有するハイブリッド免疫グロブリン重鎖、および他方のアームにハイブリッド免疫グロブリン重鎖−軽鎖対(第2の結合特異性を提供する)で構成される。二重特異性分子の半分のみにおける免疫グロブリン軽鎖の存在が、容易な分離方法を提供するため、この非対称構造は、望ましくない免疫グロブリン鎖の結合からの所望の二重特異性化合物の分離を促進することが分かった。このアプローチは、国際特許第WO94/04690号に開示される。二重特異性抗体の生成に関するさらなる詳細は、例えば、Suresh et al.,Methods in Enzymology,121:210(1986)を参照されたい。
【0118】
国際特許第WO96/27011号に記載される別のアプローチに従って、抗体分子対の間のインターフェースを操作して、組み換え細胞培養から回復される、ヘテロ二量体のパーセンテージを最大化することができる。好適なインターフェースは、抗体定常ドメインのCH3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法において、第1の抗体分子のインターフェースからの1つまたは複数の小アミノ酸側鎖は、より大きい側鎖(例えば、チロシンまたはトリプトファン)と置換される。大側鎖と同一または類似する大きさの相補「空洞」は、大アミノ酸側鎖を小さいもの(例えば、アラニンまたはトレオニン)と置換することによって、第2の抗体分子のインターフェース上で形成される。これは、ホモ二量体等の他の望ましくない最終生成物に関してヘテロ二量体の収率を増加させるための機序を提供する。
【0119】
二重特異性抗体は、架橋または「ヘテロ共役」抗体を含む。例えば、ヘテロ共役における抗体の1つはアビジンに結合され、もう1つはビオチンに結合され得る。そのような抗体は、例えば、望ましくない細胞に対する標的免疫系細胞(米国特許第4,676,980号)、およびHIV感染の治療(国際特許第WO91/00360号、第WO92/200373号)に対して提案されている。ヘテロ共役抗体は、任意の便利な架橋方法を使用して形成されてもよい。適切な架橋剤は、当業者によく知られており、多数の架橋技術とともに、米国特許第4,676,980号に開示される。
【0120】
二重特異性抗体を抗体フラグメントから生成する技術も文献に記載されている。例えば、二重特異性抗体は、化学結合を使用して調製することができる。Brennan et al.,Science 229:81(1985)は、正常な抗体がタンパク質分解により開裂されて、F(ab′)2を生成する手順を説明している。これらのフラグメントは、ジチオール錯化剤亜ヒ酸ナトリウムの存在下で還元され、隣接ジチオールを安定化し、分子間ジスルフィド形成を回避する。生成されるFab′フラグメントは、次に、チオニトロベンゾエート(TNB)誘導体に変換される。Fab′−TNB誘導体の1つは、次に、メルカプトエチルアミンで還元することによってFab′−チオールに再変換され、等モル量の他のFab′−TNB誘導体と混合されて、二重特異性抗体を形成する。産生される二重特異性抗体は、酵素の選択的固定のための薬剤として使用され得る。
【0121】
Fab′−SHフラグメントは、大腸菌から直接回復することもでき、化学的に結合されて、二重特異性抗体を形成し得る。Shalaby et al.,J.Exp.Med.,175:217−225(1992)は、完全にヒト化した二重特異性抗体F(ab′)2分子の産生を説明している。各Fab′フラグメントは、大腸菌から個別に分泌され、二重特異性抗体を形成するように、インビトロで化学結合を方向づけるように供される。
【0122】
二重特異性抗体フラグメントを組み換え細胞培養から直接形成および単離するための様々な技術も説明されている。例えば、二重特異性抗体は、ロイシンジッパーを使用して産生されている(Kostelny et al.,J.Immunol.,148(5):1547−1553(1992))。FosおよびJunタンパク質からのロイシンジッパーペプチドは、遺伝子融合によって、2つの異なる抗体のFab′部分に結合された。抗体ホモ二量体は、ヒンジ領域において還元されて単量体を形成し、次に、再酸化されて抗体ヘテロ二量体を形成する。この方法は、抗体ホモ二量体の産生に利用することもできる。Hollinger et al.,Proc.Nati.Acad.Sci.USA,90:6444−6448(1993)によって説明される「二重特異性抗体」技術は、二重特異性抗体フラグメントを形成するための代替機序を提供した。フラグメントは、短すぎて同一鎖上の2つのドメイン間を対にできないリンカーによって、軽鎖可変ドメイン(VL)に結合される、重鎖可変ドメイン(VH)を含む。したがって、1つのフラグメントのVHおよびVLドメインは、別のフラグメントの相補VLおよびVHドメインと強制的に対になり、それによって、2つの抗原結合部位を形成する。単鎖Fv(sFv)二量体の使用によって、二重特異性抗体フラグメントを形成するための別の戦略も報告されている。Gruber et al,J.Immunol,152:5368(1994)を参照されたい。
【0123】
2つより多い原子価を有する抗体が検討される。例えば、三重特異性抗体を調製することができる(Tuft et al.J.Immunol.147:60(1991))。
【0124】
エフェクタ機能工学
抗体の有効性を強化するように、エフェクタ機能に関して本発明の抗体を修飾することが望ましい場合がある。例えば、1つまたは複数のシステイン残基は、Fc領域に導入されてもよく、それによって、この領域における鎖間ジスルフィド結合形成を可能にする。したがって、生成されるホモ二量体は、内在化能力を向上させ、および/または相補媒介性細胞殺傷および抗体依存性細胞性細胞毒性(ADCC)を高める場合がある。Caron et al.,J.Exp Med.176:1191−1195(1992)およびShopes,B.J.Immunol.148:2918−2922(1992)を参照されたい。強化された抗腫瘍活性を有するホモ二量抗体は、Wolff et al.Cancer Research 53:2560−2565(1993)に記載されるように、ヘテロ二官能性架橋剤を使用して調製されてもよい。代替的に、二重Fc領域を有する抗体を操作することができ、それによって、相補溶解およびADCC能力を強化し得る。Stevenson et al Anti−Cancer Drug Design 3:219−230(1989)を参照されたい。
【0125】
抗体−温存受容体結合エピトープ融合
本発明の特定の実施形態において、正常な抗体よりも、抗体フラグメントを使用することが望ましい場合がある。この場合、その血清半減期を増加させるために、抗体フラグメントを修飾することが望ましい場合がある。これは、例えば、温存受容体結合エピトープを抗体フラグメントに組み込むことによって達成されてもよい(例えば、抗体フラグメントにおける適切な領域の変異またはエピトープを、次に末端または中間のいずれかにおいて、抗体フラグメントに融合されるペプチドタグに組み込むことによって、例えば、DNAまたはペプチド合成によって)。
【0126】
温存受容体結合エピトープは、好ましくは、Fcドメインの1つまたは複数のループからの1つまたは複数のアミノ酸残基が、抗体フラグメントの類似部分に転移される領域を構成する。さらにより好ましくは、Fcドメインの1つまたは2つのループからの3つ以上の残基が転移される。さらにより好ましくは、エピトープは、Fc領域(例えば、IgG)のCH2ドメインから取られ、抗体のCH1、CH3、もしくはV.sub.H領域、または複数のそのような領域に転移される。代替的に、エピトープは、Fc領域のCH2ドメインから取られ、抗体フラグメントのCL領域もしくはVL領域、または両方に転移される。
【0127】
他の抗体の共有結合修飾
抗体の共有結合修飾は、本発明の範囲内に含まれる。それらは、化学合成によって、または該当する場合は、抗体の酵素または化学開裂によって形成され得る。抗体の他の種の共有結合修飾は、抗体の標的アミノ酸残基を、選択された側鎖またはNもしくはC末端残基と反応することができる、有機誘導体化剤と反応させることによって、分子に導入される。共有結合修飾の例は、米国特許第5,534,615号に記載され、特に、参照することにより本明細書に組み込まれる。好適な種の抗体の共有結合修飾は、第4,640,835号、第4,496,689号、第4,301,144号、第4,670,417号、第4,791,192号、または第4,179,337号に記載される方法で、抗体を多様な非タンパク質性ポリマー、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、またはポリオキシアルキレンのうちの1つに結合することを含む。
【0128】
合成抗体ファージライブラリからの抗体の生成
好適な実施形態において、本発明は、固有のファージ表示アプローチを使用して、新規の抗体を生成および選択するための方法を提供する。アプローチは、単一のフレームワークテンプレート、可変ドメイン内の十分な多様性の設計、多様な可変ドメインを有するポリペプチドの表示、抗原を標的とするために高い親和性を有する候補抗体の選択、および選択された抗体の単離に基づく、合成抗体ファージライブラリの生成を伴う。
【0129】
ファージディスプレイ方法の詳細は、例えば、2003年12月11日に公開された第WO03/102157号において見出され、その開示全体は、参照することにより本明細書に明示的に組み込まれる。
【0130】
一態様において、本発明で使用される抗体ライブラリは、抗体可変ドメインの少なくとも1つのCDRにおいて、溶媒接触可能および/または多様性に富む位置を変異させることによって生成され得る。CDRの一部またはすべてを、本明細書に提供される方法を使用して変異させることができる。いくつかの実施形態において、CDRH1、CDRH2、およびCDRH3における位置を変異させて単一ライブラリを形成するか、もしくはCDRL3およびCDRH3における位置を変異させて単一ライブラリを形成するか、またはCDRL3ならびにCDRH1、CDRH2およびCDRH3における位置を変異させて単一ライブラリを形成することによって、多様な抗体ライブラリを生成することが好ましい場合がある。
【0131】
抗体可変ドメインのライブラリは、例えば、溶媒接触可能および/または多様性に富むCDRH1、CDRH2、およびCDRH3の位置に変異を有して生成され得る。別のライブラリは、CDRL1、CDRL2、およびCDRL3において変異を有して生成され得る。これらのライブラリは、所望の親和性の結合体を生成するように、相互に併用することもできる。例えば、標的抗原に結合するための重鎖ライブラリの選択を1回または複数回行った後、軽鎖ライブラリは、さらなる選択のために重鎖結合体の集団に置換されて、結合体の親和性を高め得る。
【0132】
好ましくは、ライブラリは、元のアミノ酸を重鎖配列の可変領域のCDRH3領域における可変アミノ酸と置換することによって形成される。得られるライブラリは、多数の抗体配列を含むことができ、配列多様性は、主に、重鎖配列のCDRH3領域にある。
【0133】
一態様において、ライブラリは、ヒト化抗体4D5配列、またはヒト化抗体4D5配列のフレームワークアミノ酸の配列の文脈において形成される。好ましくは、ライブラリは、重鎖の少なくとも残基95〜100aを、DVKコドンセットによりコードされたアミノ酸と置換することによって形成され、DVKコドンセットは、これらの位置のすべてに対する一式の可変アミノ酸をコードするように使用される。これらの置換を形成するために有用なオリゴヌクレオチドの実施例は、配列(DVK)7を含む。いくつかの実施形態において、ライブラリは、残基95〜100aを、DVKおよびNNKコドンセットの両方によってコードされるアミノ酸と置換することによって形成される。これらの置換を形成するために有用なオリゴヌクレオチドセットの例は、配列(DVK)6(NNK)を含む。別の実施形態において、ライブラリは、少なくとも残基95〜100aを、DVKおよびNNKコドンセットの両方によってコードされるアミノ酸と置換することによって形成される。これらの置換に有用なオリゴヌクレオチドセットの例は、配列(DVK)5(NNK)を含む。これらの置換に有用なオリゴヌクレオチドセットの別の例は、配列(NNK)6を含む。適切なオリゴヌクレオチド配列の他の例は、本明細書に記載される基準に従って、当業者によって決定され得る。
【0134】
別の実施形態において、高親和性結合体を単離し、多様なエピトープの結合体を単離するように、異なるCDRH3設計が利用される。このライブラリで生成されるCDRH3の長さの範囲には、11〜13アミノ酸であるが、これとは異なる長さも生成され得る。H3多様性は、NNK、DVK、およびNVKコドンセットを使用することによって拡張され得ると同時に、Nおよび/またはC末端において多様性はさらに限定される。
【0135】
多様性は、CDRH1およびCDRH2においても生成され得る。CDR−H1およびH2多様性の設計は、以前の設計よりも自然多様性により密接に適合された多様性に焦点を当てた修飾に関して記載されるように、模倣天然抗体レパートリーに対する標的方法に従う。
【0136】
CDRH3の多様性の場合、異なる長さのH3を用いて、複数のライブラリが個別に構成され、次に、結合されて、抗原を標的とするために結合体に対して選択され得る。複数のライブラリは、前述および本明細書において以下に記載されるように、固相担体選択および溶液分類方法を使用してプールおよび分類され得る。複数の分類方法を用いてもよい。例えば、1つの変異は、個体に結合される標的に関する分類、次に、融合ポリペプチド(例えば、抗gDタグ)上に存在し得るタグの分類、および次に固体に結合される標的に関する別の分類を伴う。代替的に、ライブラリは、固体表面に結合される標的に関して最初に分類され得、次に、溶出した結合体は、標的抗原の漸減濃度を有する液相結合を使用して分類される。異なる分類方法の組み合わせを利用すると、高度に発現した配列の選択の最小化を提供し、多数の異なる高親和性クローンの選択を提供する。
【0137】
標的抗原の高親和性結合体は、ライブラリから単離され得る。H1/H2領域の多様性を限定することは、縮退を約104〜105倍減少させ、さらなるH3多様性を可能にし、より高い親和性結合体を提供する。CDRH3において異なる種の多様性を有するライブラリを利用すること(例えば、DVKまたはNVTを利用すること)は、標的抗原の異なるエピトープに結合し得る結合体の単離を提供する。
【0138】
上述されるように、プールされたライブラリから単離された結合体の親和性は、軽鎖において制限された多様性を提供することによってさらに向上し得ることが発見された。軽鎖の多様性は、本実施形態において、以下のように生成される。CDRL1において、アミノ酸28位がRDTによってコードされる。アミノ酸29位がRKTによってコードされる。アミノ酸30位が、RVWによってコードされる。アミノ酸31位がANWによってコードされる。アミノ酸32位がTHTによってコードされる。任意で、アミノ酸33位がCTGによってコードされる。CDRL2において、アミノ酸50位が、KBGによってコードされる。アミノ酸53位が、AVCによってコードされる。および任意で、アミノ酸55位が、GMAによってコードされる。CDRL3において、アミノ酸91位が、TMTもしくはSRTまたは両方によってコードされる。アミノ酸92位が、DMCによってコードされる。アミノ酸93位が、RVTによってコードされる。アミノ酸94位が、NHTによってコードされる。およびアミノ酸96位が、TWTもしくはYKGまたは両方によってコードされる。
【0139】
別の実施形態において、CDRH1、CDRH2、およびCDRH3領域において多様性を有する1つまたは複数のライブラリが生成される。この実施形態において、CDRH3の多様性は、多様なH3領域の長さを使用し、主にコドンセットXYZおよびNNKまたはNNSを使用して生成される。ライブラリは、個別のオリゴヌクレオチドを使用して形成およびプールされ得るか、またはオリゴヌクレオチドは、プールされてライブラリのサブセットを形成し得る。本実施形態のライブラリは、固体に結合される標的に対して分類され得る。複数の分類から単離されるクローンは、ELISA検定を使用して、特異性および親和性をスクリーニングすることができる。特異性に関して、クローンは、所望の標的抗原ならびに非標的抗原に対してスクリーニングされ得る。標的抗原に対するそれらの結合体は、次に、溶液結合競合ELISA検定またはスポット競合検定において、親和性をスクリーニングすることができる。高親和性結合体は、上述されるように調製される、XYZコドンセットを利用して、ライブラリから単離され得る。これらの結合体は、細胞培養において、抗体または抗原結合フラグメントとして、高い収率で容易に産生され得る。
【0140】
いくつかの実施形態において、CDRH3領域の長さにおいて優れた多様性を有するライブラリを生成することが望ましい場合がある。例えば、約7〜19アミノ酸の範囲のCDRH3領域を有するライブラリを生成することが望ましい場合がある。
【0141】
これらの実施形態のライブラリから単離された高親和性結合体は、細菌および真核細胞培養において、高い収率で容易に産生される。ベクターは、gDタグ、ウイルス外被タンパク質成分配列等の配列を容易に除去し、および/または定常領域配列に追加して、高い収率の完全長の抗体または抗原結合フラグメントの産生を提供するように設計され得る。
【0142】
CDRH3において変異を有するライブラリは、他のCDRの変異型、例えば、CDRL1、CDRL2、CDRL3、CDRH1および/またはCDRH2を含むライブラリと結合され得る。したがって、例えば、一実施形態において、CDRH3ライブラリは、既定のコドンセットを使用して、28、29、30、31、および/または32位において、可変アミノ酸を有するヒト化4D5抗体配列の文脈において形成される、CDRL3ライブラリと結合される。別の実施形態において、CDRH3に対する変異を有するライブラリは、可変CDRH1および/またはCDRH2重鎖可変ドメインを含むライブラリと結合され得る。一実施形態において、CDRH1ライブラリは、28、30、31、32および33位において、可変アミノ酸を有するヒト化抗体4D5配列を用いて形成される。CDRH2ライブラリは、既定のコドンセットを使用して、50、52、53、54、56および58位において、可変アミノ酸を有するヒト化抗体4D5の配列を用いて形成され得る。
【0143】
前述の記載は、当業者が本発明を実践するために十分であると考えられる。以下の実施襟は、単なる例証目的で提供され、いかなる方法においても本発明の範囲を制限することを意図しない。実際に、本発明の様々な修正は、本明細書に示され、記載されるものに加えて、前述の記載から当業者に明らかとなり、添付の請求項の範囲内に含まれる。
【0144】
実施例において参照され市販の試薬は、他に指定のない限り、製造者の指示に従って使用した。以下の実施齢において、明細書全体を通して、ATCC受入番号によって識別されるそれらの細胞の供給源は、American Type Culture Collection,Manassas,VAである。他に指定のない限り、本発明は、組み換えDNA技術の標準手順、例えば、本明細書において上述されるもの、および以下のテキストに記載されるものを使用する。Sambrook et al.,上記、Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology(Green Publishing Associates and Wiley Interscience,N.Y.,1989)、Innis et al.,PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications(Academic Press,Inc.N.Y.,1990)、Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Press:Cold Spring Harbor,1988)、Gait,Oligonucleotide Synthesis(IRL Press:Oxford,1984)、Freshney,Animal Cell Culture,1987、Coligan et al.,Current Protocols in Immunology,1991を使用する。
【0145】
本発明のさらなる詳細は、以下の非限定的な実施例において提供される。
【0146】
開示全体で引用されるすべての参照文献は、それら全体を参照することにより本明細書に明示的に組み込まれる。
【0147】
実施例1
糖尿病およびインスリン抵抗におけるIL−17ファミリーメンバーの役割
IL−17Rc KOマウスおよび高脂質食モデルの研究
8週齢の雄IL−17Rc(UNQ6118.KO.lex)ノックアウトおよび同腹子野生型(WT)対照マウスに、普通のキャベツ食または60%高脂質食(HFD)のいずれかを与えた。
【0148】
1群:高脂質食のIL−17Rcノックアウト(KO)マウス(5匹)
2群:高脂質食のIL−17Rc、WT同腹子対照(5匹)
3群:普通食のIL−17Rc KOマウス(3匹)
4群:普通食のIL−17Rc WT同腹子対照(3匹)
【0149】
実験計画は、図7に示される。
【0150】
マウスは、グルコース負荷試験(GTT)に供され、それらのインスリン抵抗状態に到達した。
【0151】
GTTは、以下の方法を使用して行った。
【0152】
血糖値およびインスリン測定:血液試料は、伏在静脈出血によって採取し、グルコメータを使用して、即時に糖濃度を分析した(Lifescan,USA製OneTouch Glucometer)。血清インスリンは、ELISA方法を使用して測定した。
【0153】
グルコース負荷試験(GTT):一晩の絶食(14時間)後の朝、午前9:00に動物を試験した。血糖値は、各動物の1.5mg/体重gでグルコースを腹腔内注射する前、ならびにグルコース投与後30、60、120および150分後に、伏在静脈出血から得られた試料上で測定した。値は、グルコースのmg/dLとして計算した。
【0154】
GTTは、ベースライン(高脂質食を与えられる前)、ならびに高脂質食後8週、10週、12週、および14週の群に対して行った。普通のキャベツ食を与えられたマウスは、対照群として使用した。残りの条件は、ノックアウトおよび野生型(WT)同腹子対照マウスにおいて同様とした。
【0155】
動物のGTT総体重に加えて、空腹時血清インスリンおよびグルコース値を毎週監視した。
【0156】
結果は、図8〜11に示される。
【0157】
IL−17Rc WT同腹子対照マウスは、有意な体重増を示し、かつ、インスリン抵抗発現型を発現させたが、IL−17Rcノックアウトマウスは、それらのWT同腹子対照よりも有意に細く、はるかに良好にグルコースをクリアした。高脂質食を12週間よりも長く与えた後であっても、ノックアウトマウスは、体重が増加しなかった。両群は、同様の空腹時循環インスリン値を示した。対照食を与えた群において、KOマウスとWTマウスとの間に有意差は認められなかった。
【0158】
IL−17Rc KOマウスを使用する上述の実験に加えて、2つの個別の研究を行い、糖尿病およびインスリン抵抗における炎症促進性サイトカインIl−17AおよびIL−17Fの役割を検討した。
【0159】
実施例2
抗IL−17および抗IL−17F mAbがインスリン抵抗高脂質食モデルマウスに及ぼす影響
本研究の目的は、予防的および確立されたインスリン抵抗モデルにおける抗IL−17および抗IL−17F mAbの有用性を調査すること、およびmuTNFRII−Fcの治療効果と比較することである。
【0160】
実験計画および群:
1群:100μL生理食塩水中6mg/kgのブタクサ、腹腔内に3回/週を10週間(n=10)。
2群:100μL生理食塩水中4mg/kgのMuTNFRII−IgG2a、3回/週を10週間(n=10)。
3群:100μL生理食塩水中6mg/kgのMuAnti−IL−17、腹腔内に3回/週を10週間(n=10)。
4群:100μL生理食塩水中6mg/kgのMuAnti−IL−17+MuAnti−IL−17F mAb、腹腔内に3回/週を10週間(n=10)。
5群:18週および24週において、MuTNFRII−Fc 4mg/kg=6mg/kgのMuAnti−IL−176+6mg/kgのMuAnti−IL17FmAb(10匹)。
【0161】
すべての群に、高脂質食を与えた。マウスのインスリン抵抗状態を評価するために、HFDおよび抗体投与から2週間後毎に、グルコース負荷試験(GTT)を行った。
【0162】
プロトコルは、図12に例証される。抗IL−17Aおよび抗IL−17F MAbが投与の9週間後の糖耐能に及ぼす影響は、図13に示される。
【0163】
実施例3
IL−17の過剰発現がGTTにより評価されるインスリン抵抗状態に及ぼす影響
研究は、正常および高脂質食を与えられたマウスにおける天然マウスIL−17AおよびIL−17Fタンパク質の発現のためのプラスミドDNAの流体力学的尾静脈(HTV)注射に基づいて、インスリン抵抗におけるその役割を研究するために、マウスにおいて高レベルの炎症促進性サイトカインマウスIL−17AおよびIL−17Fを発現させた。
【0164】
1群:プラスミドなし
2群:pRKベクター単独
3群:pRK−IL−17A
4群:pRK−IL−17F
【0165】
各群内で、様々な時点(DNA摂取後0時間、2時間、6時間、24時間、および72時間)に5つのマウス亜群に注射して血液を採取し、血清中の循環サイトカイン値を測定した。一旦これが確立されると、IL−17AおよびIL−17Fは、高脂質食(HFD)マウスにおいて過剰発現し、インスリン抵抗状態の変化に到達した。
【0166】
尾静脈注射実験:
1)DNA構成(pRKベクターまたはpRK−IL−17AおよびpRK−IL−17F)を生理食塩水中で(リンガー液が好ましい)、50μg/マウス/注射の最終用量をもたらす濃度に希釈した。
2)各マウスの尾静脈に、生理食塩水またはリンガー液中にDNAを含有する約1.6mlの溶液を経静脈的に注射した。
3)用量は、ボーラス静脈内注射(尾静脈)として、最大DNA摂取のために4〜5秒(最大8秒)をかけて投与した。
【0167】
結果は、図14に示される。A)8週齢のc57BL/6マウスに、50μgのプラスミドDNA(pRK−IL−17A)またはpRKベクターを単独で注射した。48時間後、血清を両群から採取し、血清中のIl−17値をELISAによって測定した。B)3つのマウス群を一晩絶食させ、腹腔内GTTに供し、グルコース注射後の時間とともに結果をプロットする(*p>0.05)。
【0168】
本発明は、特定の実施形態であると考えられるものを参照して説明されたが、本発明は、そのような実施形態に限定されないことを理解されたい。反対に、本発明は、付属の請求項の精神および範囲内に含まれる、様々な修飾および相当物を網羅することが意図される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物においてインスリン抵抗性疾患を治療する方法であって、それを必要とする哺乳動物に有効量のIL−17Aおよび/またはIL−17Fアンタゴニストを投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記疾患は、非インスリン依存性真性糖尿病(NIDDM)、肥満、卵巣アンドロゲン過剰、および高血圧から成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記疾患は、NIDDMまたは肥満である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記哺乳動物は、ヒトであり、かつ、前記投与は全身性である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記IL−17Aおよび/またはIL−17Fアンタゴニストは、抗体またはそのフラグメントである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記抗体は、抗IL−17A、抗IL−17F、抗IL−17A/F、抗IL−17Rc、および抗IL−17RA抗体から成る群から選択される抗体である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記抗体は、モノクローナル抗体である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記抗体は、キメラ、ヒト化、またはヒト抗体である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記抗体は、二重特異性、多特異性、または交差反応性抗体である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
有効量のインスリン抵抗性治療薬を投与することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記インスリン抵抗性治療薬は、インスリン、IGF−1、またはスルホニル尿素である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記インスリン抵抗性疾患を治療することができる、有効量のさらなる薬剤をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記さらなる薬剤は、Dickkopf−5(Dkk−5)である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
薬学的に許容される賦形剤と混合した、IL−17Aおよび/またはIL−17Fアンタゴニストを含む、インスリン抵抗性疾患の治療のための薬学的組成物。
【請求項15】
前記IL−17Aおよび/またはIL−17Fアンタゴニストは、抗体またはそのフラグメントである、請求項14に記載の薬学的組成物。
【請求項16】
前記抗体は、抗IL−17A、抗IL−17F、抗IL−17A/F、抗IL−17Rcおよび抗IL−17RA抗体から成る群から選択される抗体である、請求項15に記載の薬学的組成物。
【請求項17】
前記抗体は、モノクローナル抗体である、請求項16に記載の薬学的組成物。
【請求項18】
前記抗体は、キメラ、ヒト化、またはヒト抗体である、請求項17に記載の薬学的組成物。
【請求項19】
前記抗体は、二重特異性、多特異性、または交差反応性抗体である、請求項18に記載の薬学的組成物。
【請求項20】
インスリン抵抗性疾患の治療のための薬剤の調製における、IL−17Aおよび/またはIL−17Fアンタゴニストの使用。
【請求項21】
インスリン抵抗性疾患を治療するためのキットであって、(a)IL−17Aおよび/またはIL−17Fアンタゴニストを含む容器と、(b)前記抗体を投与して前記疾患を治療するためのラベルまたは説明書を備える、キット。
【請求項1】
哺乳動物においてインスリン抵抗性疾患を治療する方法であって、それを必要とする哺乳動物に有効量のIL−17Aおよび/またはIL−17Fアンタゴニストを投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記疾患は、非インスリン依存性真性糖尿病(NIDDM)、肥満、卵巣アンドロゲン過剰、および高血圧から成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記疾患は、NIDDMまたは肥満である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記哺乳動物は、ヒトであり、かつ、前記投与は全身性である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記IL−17Aおよび/またはIL−17Fアンタゴニストは、抗体またはそのフラグメントである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記抗体は、抗IL−17A、抗IL−17F、抗IL−17A/F、抗IL−17Rc、および抗IL−17RA抗体から成る群から選択される抗体である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記抗体は、モノクローナル抗体である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記抗体は、キメラ、ヒト化、またはヒト抗体である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記抗体は、二重特異性、多特異性、または交差反応性抗体である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
有効量のインスリン抵抗性治療薬を投与することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記インスリン抵抗性治療薬は、インスリン、IGF−1、またはスルホニル尿素である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記インスリン抵抗性疾患を治療することができる、有効量のさらなる薬剤をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記さらなる薬剤は、Dickkopf−5(Dkk−5)である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
薬学的に許容される賦形剤と混合した、IL−17Aおよび/またはIL−17Fアンタゴニストを含む、インスリン抵抗性疾患の治療のための薬学的組成物。
【請求項15】
前記IL−17Aおよび/またはIL−17Fアンタゴニストは、抗体またはそのフラグメントである、請求項14に記載の薬学的組成物。
【請求項16】
前記抗体は、抗IL−17A、抗IL−17F、抗IL−17A/F、抗IL−17Rcおよび抗IL−17RA抗体から成る群から選択される抗体である、請求項15に記載の薬学的組成物。
【請求項17】
前記抗体は、モノクローナル抗体である、請求項16に記載の薬学的組成物。
【請求項18】
前記抗体は、キメラ、ヒト化、またはヒト抗体である、請求項17に記載の薬学的組成物。
【請求項19】
前記抗体は、二重特異性、多特異性、または交差反応性抗体である、請求項18に記載の薬学的組成物。
【請求項20】
インスリン抵抗性疾患の治療のための薬剤の調製における、IL−17Aおよび/またはIL−17Fアンタゴニストの使用。
【請求項21】
インスリン抵抗性疾患を治療するためのキットであって、(a)IL−17Aおよび/またはIL−17Fアンタゴニストを含む容器と、(b)前記抗体を投与して前記疾患を治療するためのラベルまたは説明書を備える、キット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2012−522788(P2012−522788A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503632(P2012−503632)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/029280
【国際公開番号】WO2010/114859
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(509012625)ジェネンテック, インコーポレイテッド (357)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/029280
【国際公開番号】WO2010/114859
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(509012625)ジェネンテック, インコーポレイテッド (357)
【Fターム(参考)】
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