説明

インスリン様増殖因子に特異的な結合タンパク質およびその使用

IGF−Iに対する交差反応性を持って、IGF−IIに対して向けられる抗体などの結合タンパク質、およびこうした抗体の使用を記載する。特に、IGF−Iに対する交差反応性を持って、IGF−IIに対して向けられる完全ヒト・モノクローナル抗体を開示する。重鎖および軽鎖免疫グロブリン分子をコードするヌクレオチド配列、および該分子を含むアミノ酸配列、特に、フレームワーク領域および/または相補性決定領域(CDR)に渡る、特にFR1〜FR4またはCDR1〜CDR3の隣接重鎖および軽鎖配列に対応する配列もまた、論じる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連出願に対するクロスリファレンス
[0001]本出願は、35U.S.C.§119のもとに、各々、その全体が本明細書に援用される、米国仮出願第60/750,085号、2005年12月13日出願;米国仮出願第60/750,772号、2005年12月14日出願;米国仮出願第60/774,747号、2005年2月17日出願;および米国仮出願第60/808,183号、2006年5月24日出願に優先権を請求する。
【0002】
発明の背景
発明の分野
[0002]本発明は、インスリン様増殖因子−1(IGF−I)に対する交差反応性を持って、インスリン様増殖因子−2(IGF−II)に結合する結合タンパク質、およびこうした結合タンパク質の使用に関する。より具体的には、本発明は、IGF−Iに対する交差反応性を持つ、IGF−IIに対して向けられるモノクローナル抗体、およびこれらの抗体の使用に関する。本発明の側面はまた、こうした抗体を発現しているハイブリドーマまたは他の細胞株にも関する。
【0003】
関連技術の説明
[0003]インスリン様増殖因子IGF−IおよびIGF−IIは、細胞増殖、生存、分化および形質転換を制御する際に関与する小さいポリペプチドである。IGFは、主に、特異的細胞表面受容体、IGF−I受容体(IGF−IR)と相互作用し、そして多様な細胞内シグナル伝達カスケードを活性化することによって、多様な作用を発揮する。IGFは、大部分、IGF結合タンパク質(IGFBP−1〜6)に結合して、血清中を循環する。IGF−IRとIGFの相互作用は、IGFBPによって制御され、そしてIGFは、IGFBPから遊離(大部分、IGFBPのタンパク質分解による)してからでないと、IGF−IRに結合できない。IGF−Iはまた、IGF−IRおよびインスリン受容体(IR)サブユニットで構成されるハイブリッド受容体にも結合可能である。IGF−IIは、インスリン受容体の「A」アイソフォームに結合することが示されている。
【0004】
[0004]悪性形質転換には、細胞増殖、分化、アポトーシス、および形質転換などの多様なプロセスの不均衡が関与する。IGF−IおよびIGF−IIは、広範囲の状態の病態生理に関連付けられてきており、そして受容体、IGF−IRによって仲介される分裂促進特性および抗アポトーシス特性のため、腫瘍生成において役割を果たすと考えられる。LeRoithおよびRoberts, Cancer Lett. 195:127−137(2003)。
【0005】
[0005]IGF−Iは、下垂体成長ホルモンの制御調節下で、肝臓によって産生される増殖因子として発見され、そして元来は、ソマトメジン−Cと称された。Salmonら, J. Lab. Clin. Med. 49:825−826(1957)。IGF−IおよびIGF−IIはどちらも遍在性に発現され、そしてインスリン受容体(IR)に構造的にそして機能的に関連する膜貫通チロシンキナーゼであるIGF−IRとの相互作用を通じて、内分泌、傍分泌、および自己分泌増殖因子として作用する。IGF−Iは、主に、IGF−IRを活性化することによって機能し、一方、IGF−IIは、IGF−IRまたはIR−Aアイソフォームのいずれかを通じて、作用可能である。LeRoithおよびRoberts, Cancer Lett. 195:127−137(2003)。さらに、IGF−IおよびIGF−II両方とIGF結合タンパク質の相互作用は、IGFの半減期および生物学的利用能、ならびにいくつかの場合は、受容体とこれらの直接相互作用にも影響を及ぼしうる。Rajaramら, Endocr. Rev. 18:801−831(1997)。
【0006】
[0006]IGF−Iは、細胞増殖、分化、およびアポトーシスに長期の影響を有する。培養骨肉腫および乳癌細胞における実験によって、IGF−Iが強力な分裂促進剤であり、そしてDNA合成を増加させることによって、そしてG期からS期への細胞周期の進行を加速させるサイクリンD1の発現を刺激することによって、その分裂促進作用を発揮することが示唆された。Furlanettoら, Mol. Endocrinol. 8:510−517(1994); Dufournyら, J. Biol. Chem. 272:311663−31171(1997)。膵臓癌細胞におけるサイクリンD1発現の抑制は、IGF−Iの分裂促進効果を消滅させた。Kornmannら, J. Clin. Invest. 101:344−352(1998)。細胞周期進行を刺激するのに加えて、IGF−Iはまた、アポトーシスを阻害する。IGF−Iは、Bclタンパク質の発現を刺激し、そしてBaxの発現を抑制し、Bcl/Baxヘテロ二量体の相対量の増加を生じて、それによってアポトーシス経路の開始を遮断することが示された。Minshallら, J. Immunol. 159:1225−1232(1997); Parrizasら, Endocrinology 138:1355−1358(1997); Wangら, Endocrinology 139:1354−1360(1998)。
【0007】
[0007]IGF−I同様、IGF−IIもまた、分裂促進作用および抗アポトーシス作用を有し、そして細胞増殖および分化を制御する。IGF−Iと比較して、高濃度のIGF−IIが血清中を循環する。高血清IGF−II濃度は、結腸直腸癌の患者で見られており、進行した疾患ではより高い濃度に向かう傾向があった。Renehanら, Br. J. Cancer 83:1344−1350。さらに、大部分の原発性腫瘍および形質転換細胞株は、IGF−II mRNAおよびタンパク質を過剰発現する。WernerおよびLeRoith Adv. Cancer Res. 68:183−223(1996)。結腸癌におけるIGF−IIの過剰発現は、悪性表現型と関連し、そして結腸直腸発癌において、IGF−II遺伝子のインプリンティング喪失(アレル特異的発現の喪失)が重要でありうる。Michellら, Br. J. Cancer 76:60−66(1997); Takanoら, Oncology 59:210−216(2000)。転移する強い傾向を持つ癌細胞は、転移能が低い細胞よりも、4倍高いIGF−II発現レベルを有する。Guerraら, Int. J. Cancer 65:812−820(1996)。
【0008】
[0008]研究および臨床研究は、癌の発展、維持および進行におけるIGFファミリーメンバーの役割を明らかにしてきている。多くの癌細胞が、IGF−IRおよび/またはIGFリガンドを過剰発現することが示されてきている。例えば、IGF−IおよびIGF−IIは、肉腫、白血病、ならびに前立腺、乳房、肺、結腸、胃、食道、肝臓、膵臓、腎臓、甲状腺、脳、卵巣、および子宮の癌を含む、非常に多様な癌細胞株の強い分裂促進剤である。Macaulayら, Br. J. Cancer 65:311−320(1992); Okuら, Anticancer Res. 11:1591−1595(1991); LeRoithら, Ann. Intern. Med. 122:54−59(1995); Yaginumaら, Oncology 54:502−507(1997); Singhら, Endocrinology 137:1764−1774(1996); Frostadら, Eur. J. Haematol 62:191−198(1999)。IGF−Iを悪性結腸癌細胞に投与すると、これらはサイトカイン誘導性アポトーシスに抵抗性になった。Remacle−Bonnetら, Cancer Res. 60:2007−2017(2000)。
【0009】
[0009]癌におけるIGFの役割はまた、高レベルの循環IGF−Iおよび低レベルのIGFBP−3が、いくつかの一般的な癌(前立腺、乳房、結腸直腸および肺)の発展のリスクの増加と関連することを示す、疫学的研究によっても裏付けられる。Mantzorosら, Br. J. Cancer 76:1115−1118(1997); Hankinsonら, Lancet 351:1393−1396(1998); Maら, J. Natl. Cancer Inst. 91:620−625(1999); Karasikら, J. Clin. Endocrinol Metab. 78:271−276(1994)。これらの結果によって、IGF−IおよびIGF−IIが強力な分裂促進シグナルおよび抗アポトーシスシグナルとして作用し、そしてその過剰発現が、いくつかの種類の癌の患者における劣った予後と相関することが示唆される。
【0010】
[0010]ノックアウトマウスモデルを用いたいくつかの研究によって、腫瘍増殖におけるIGFの役割がさらに確立されてきた。組織特異的条件的遺伝子欠失のための技術の開発に伴って、肝臓IGF−I不全(LID)のマウスモデルが開発された。igf1遺伝子の肝臓特異的欠失によって、IGF−I mRNAの発現が抑制され、そして循環IGF−Iレベルの劇的な減少が引き起こされた。Yakarら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:7324−7329(1999)。乳房腫瘍をLIDマウスで誘導すると、減少した循環IGF−1レベルによって、癌発展、増殖、および転移に、有意な減少が生じ、一方、循環IGF−1レベルの増加は、腫瘍増殖増進と関連した。Wuら, Cancer Res. 63:4384−4388(2003)。
【0011】
[0011]IGF−IR発現および/またはシグナル伝達の阻害が、in vitroおよびin vivo両方で、腫瘍増殖の阻害を導くことを、いくつかの論文が報告した。IGFシグナル伝達の阻害が、化学療法剤に対する腫瘍細胞の感受性を増加させることもまた示された。腫瘍細胞において、IGF−IRシグナル伝達経路を阻害するため、多様な戦略(アンチセンス・オリゴヌクレオチド、可溶性受容体、阻害性ペプチド、優性ネガティブ受容体突然変異体、キナーゼ活性を阻害する小分子、および抗hIGF−IR抗体)が開発されてきている。1つのアプローチは、小分子阻害剤を用いて、IGF−IRのキナーゼ活性をターゲティングしてきている。近年、IGF−IRを選択的に阻害可能な小分子キナーゼ阻害剤として、2つの化合物が同定された。Garcia−Echeverriaら, Cancer Cell 5:231−239(2004); Mitsiadesら, Cancer Cell 5:221−230(2004)。IGF−IRキナーゼ活性の阻害は、IGF−Iが仲介する、MCF−7ヒト乳癌細胞の軟寒天における生存およびコロニー形成を抑制した。Garcia−Echeverriaら, Cancer Cell 5:231−239(2004)。IGF−IRキナーゼ阻害剤を、腫瘍異種移植片を所持するマウスに投与すると、腫瘍異種移植片におけるIGF−IRシグナル伝達が阻害され、そしてIGF−IRが駆動する線維肉種の増殖が有意に減少した。Garcia−Echeverriaら, Cancer Cell 5:231−239(2004)。血液学的悪性腫瘍、特に多発性骨髄腫に対して、類似の効果が観察された。多発性骨髄腫細胞において、小分子IGF−IRキナーゼ阻害剤は、インスリン受容体に比較した際、IGF−1Rに対して、>16倍、より高い強度を示し、そして細胞増殖および生存を阻害するのに同様に有効であった。Mitsiadesら, Cancer Cell 5:221−230(2004)。同じ化合物をマウスに腹腔内注射し、そしてこの化合物は、多発性骨髄腫細胞増殖を阻害し、そしてマウスの生存を増進した。Mitsiadesら, Cancer Cell 5:221−230(2004)。療法用量以下の他の化学療法剤と組み合わせると、IGF−IRキナーゼ活性の阻害は、腫瘍負荷を相乗的に減少させた。Mitsiadesら, Cancer Cell 5:221−230(2004)。
【0012】
[0012]IGFシグナル伝達を阻害する別のアプローチは、受容体IGF−IRに対して向けられる中和抗体の開発であった。多様なグループが、受容体のIGF−I刺激性自己リン酸化を阻害し、受容体内在化および分解を誘導し、そして多様なヒト癌細胞株の増殖および生存を減少させる、IGF−IRに対する抗体を開発してきた。Haileyら, Mol Cancer Ther. 1:1349−1353(2002); Maloneyら, Cancer Res. 63:5073−5083(2003); Beniniら, Clin. Cancer Res. 7:1790−1797(2001); Burtrumら, Cancer Res. 63:8912−8921(2003)。さらに、異種移植片腫瘍モデルにおいて、IGF−IR遮断は、in vivoで、乳房、腎臓および膵臓の腫瘍の有意な増殖阻害を生じた。Burtrumら, Cancer Res. 63:8912−8921(2003); Maloneyら, Cancer Res. 63:5073−5083(2003)。キメラヒト化IGF−IR抗体を利用する実験で、類似の結果が得られ、in vitroで、そして腫瘍異種移植片において、乳癌細胞の増殖が阻害された。Sachdevら, Cancer Res. 63:627−635(2003)。他のヒト化IGF−IR抗体は、IGF−I誘導性チロシンリン酸化を遮断し、そしてin vivoでもまた、乳房腫瘍および非小細胞肺腫瘍の増殖を阻害した。Cohenら, Clin. Cancer Res. 11:2063−2073(2005); Goetschら, Int. J. Cancer 113:316−328(2005)。
【0013】
[0013]IGF−Iレベルの増加はまた、末端肥大症および巨人症を含む、いくつかの非癌性病的状態とも関連し(Barkan, Cleveland Clin. J. Med. 65:343, 347−349, 1998)、一方、異常なIGF−I/IGF−II受容体機能が、乾癬(Wraightら, Nat. Biotech. 18:521−526, 2000)、アテローム性動脈硬化症および血管形成術後の血管の平滑筋再狭窄(Bayes−Genisら, Circ. Res. 86: 125−130, 2000)に関連付けられてきている。増加したIGF−Iレベルは、糖尿病、または微小血管増殖などの糖尿病に関連する合併症に関連付けられてきている(Smithら, Nat. Med. 5:1390−1395, 1999)。
【0014】
[0014]IGF−IおよびIGF−IIに対する抗体が、当該技術分野に開示されてきている。例えば、Goyaら, Cancer Res. 64:6252−6258(2004); Miyamotoら, Clin. Cancer Res. 11:3494−3502(2005)を参照されたい。さらに、WO 05/18671、WO 05/28515およびWO 03/93317を参照されたい。
【0015】
概要
[0015]本発明の態様は、インスリン様増殖因子に特異的に結合し、そして腫瘍増殖を減少させる結合タンパク質に関する。1つの態様において、結合タンパク質は、インスリン様増殖因子に特異的に結合し、そして腫瘍増殖を減少させる、完全ヒト・モノクローナル抗体、またはその結合断片である。これを達成可能な機構には、IGF−I/IIの有効濃度を減少させる、受容体IGF−IRへのIGF−I/IIの結合の阻害、IGF−I/IIが誘導するIGF−IRシグナル伝達の阻害、またはIGF−I/IIのクリアランスの増加のいずれかが含まれることも可能であり、そしてこれらに限定されない。
【0016】
[0016]したがって、いくつかの態様は、インスリン様増殖因子I(IGF−I)に対する交差反応性を持って、インスリン様増殖因子−II(IGF−II)に優先的に結合し、そしてIGF−IおよびIGF−II活性を中和する、完全ヒト単離特異的結合タンパク質を提供する。特定の側面において、結合タンパク質は、IGF−Iに対するより、少なくとも2.5倍高いアフィニティーでIGF−IIに結合する。他の側面において、結合タンパク質は、IGF−Iに対するより、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも7倍、少なくとも10倍、少なくとも50倍、少なくとも60倍、少なくとも100倍または少なくとも150倍高いアフィニティーでIGF−IIに結合する。
【0017】
[0017]いくつかの態様において、特異的結合タンパク質は、IGF−1Rを異所性に発現しているNIH3T3細胞において、IGF−I依存性IGF−I受容体リン酸化の阻害に関して、15nM以下のEC50を有する。いくつかの側面において、特異的結合タンパク質は、IGF−1Rを異所性に発現しているNIH3T3細胞において、IGF−I依存性IGF−I受容体リン酸化の阻害に関して、15nM以下、10nM以下、または8nM以下のEC50を有する。
【0018】
[0018]いくつかの態様において、特異的結合タンパク質は、IGF−1Rを異所性に発現しているNIH3T3細胞において、IGF−II依存性IGF−I受容体リン酸化の阻害に関して、5nM以下、4nM以下、または3nM以下のEC50を有する。
【0019】
[0019]他の態様において、特異的結合タンパク質は、25nM以下、20nM以下、15nM以下、または10nM以下のEC50で、組換えhIGF−IRを発現するNIH3T3細胞のIGF−II依存性増殖の70%より多くを阻害する。
【0020】
[0020]他の態様において、特異的結合タンパク質は、40nM以下、30nM以下、または25nM以下のEC50で、組換えhIGF−IRを発現するNIH3T3細胞のIGF−I依存性増殖の70%より多くを阻害する。
【0021】
[0021]特定の態様において、特異的結合タンパク質は、配列番号2、配列番号6、配列番号10、配列番号14および配列番号18からなる群より選択される可変重鎖配列を含み、そして配列番号4、配列番号8、配列番号12および配列番号16からなる群より選択される可変軽鎖配列を含む、モノクローナル抗体との結合に関して競合する。
【0022】
[0022]本発明の1つの態様は、500ピコモル濃度(pM)未満のKdで、IGF−Iに結合する、完全ヒト抗体である。より好ましくは、抗体は、450ピコモル濃度(pM)未満のKdで結合する。より好ましくは、抗体は、410ピコモル濃度(pM)未満のKdで結合する。より好ましくは、抗体は、350pM未満のKで結合する。さらにより好ましくは、抗体は、300pM未満のKで結合する。アフィニティーおよび/またはアビディティー測定は、本明細書に記載するように、BIACORE(登録商標)によって測定可能である。
【0023】
[0023]本発明のさらに別の態様は、175ピコモル濃度(pM)未満のKで、IGF−IIに結合する、完全ヒト・モノクローナル抗体である。より好ましくは、抗体は、100ピコモル濃度(pM)未満のKdで結合する。より好ましくは、抗体は、50ピコモル濃度(pM)未満のKdで結合する。より好ましくは、抗体は、5ピコモル濃度(pM)未満のKdで結合する。さらにより好ましくは、抗体は、2pM未満のKで結合する。
【0024】
[0024]特定の態様において、特異的結合タンパク質は、完全ヒト・モノクローナル抗体または完全ヒト・モノクローナル抗体の結合断片である。結合断片には、Fab、Fab’またはF(ab’)およびFvなどの断片が含まれうる。
【0025】
[0025]本発明の1つの態様は、以下により詳細に論じるように、IGF−I/IIに特異的に結合する、完全ヒト・モノクローナル抗体7.251.3(ATCC寄託番号PTA−7422)、7.34.1(ATCC寄託番号PTA−7423)および7.159.2(ATCC寄託番号PTA−7424)を含む。
【0026】
[0026]いくつかの態様において、インスリン様増殖因子−I(IGF−I)に対する交差反応性を持って、インスリン様増殖因子−II(IGF−II)に結合する、特異的結合タンパク質またはその結合断片には、配列番号6の配列を有する重鎖ポリペプチド、および配列番号8の配列を有する軽鎖ポリペプチドが含まれてもよい。
【0027】
[0027]特異的結合タンパク質には、配列番号10の配列を有する重鎖ポリペプチド、および配列番号12の配列を有する軽鎖ポリペプチドが含まれてもよい。
[0028]本発明の特異的結合タンパク質には、配列番号14の配列を有する重鎖ポリペプチド、および配列番号16の配列を有する軽鎖ポリペプチドが含まれてもよい。
【0028】
[0029]特定の態様において、特異的結合タンパク質を、薬学的に許容されうるキャリアーと混合してもよい。
[0030]別の態様には、本明細書記載の特異的結合タンパク質のいずれかをコードする単離核酸分子、特異的結合タンパク質をコードする単離核酸分子を有するベクター、またはこうした核酸分子およびベクターのいずれかで形質転換された宿主細胞が含まれる。
【0029】
[0031]特定の態様において、IGF−IIまたはIGF−Iタンパク質がインスリン増殖因子結合タンパク質に結合している際には、インスリン様増殖因子−I(IGF−I)に対する交差反応性を持って、インスリン様増殖因子−II(IGF−II)に結合する、特異的結合タンパク質またはその結合断片は、IGF−IIまたはIGF−Iタンパク質に特異的に結合しない。
【0030】
[0032]さらなる態様には、患者試料における、インスリン様増殖因子−II(IGF−II)およびインスリン様増殖因子I(IGF−I)のレベルを測定する方法が含まれる。これらの方法には、患者試料を提供し;該試料と、インスリン様増殖因子−I(IGF−I)に対する交差反応性を持って、インスリン様増殖因子−II(IGF−II)に結合する、特異的結合タンパク質またはその結合断片を接触させ;そして前記試料中のIGF−IおよびIGF−IIレベルを測定する工程が含まれてもよい。いくつかの側面において、患者試料は血液である。
【0031】
[0033]さらなる態様には、哺乳動物において、悪性腫瘍を治療する方法が含まれる。これらの方法には、悪性腫瘍の治療が必要な哺乳動物を選択し;そしてインスリン様増殖因子−I(IGF−I)に対する交差反応性を持って、インスリン様増殖因子−II(IGF−II)に結合する、特異的結合タンパク質またはその結合断片の療法的有効用量を該哺乳動物に投与する工程が含まれてもよい。いくつかの側面において、動物はヒトである。いくつかの側面において、結合タンパク質は、完全ヒト・モノクローナル抗体であり、そしてmAb 7.251.3(ATCC寄託番号PTA−7422)、mAb 7.34.1(ATCC寄託番号PTA−7423)、およびmAb 7.159.2(ATCC寄託番号PTA−7424)からなる群より選択される。
【0032】
[0034]治療可能な疾患には、黒色腫、非小細胞肺癌、神経膠腫、肝細胞(肝臓)癌、甲状腺腫瘍、胃癌、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、肺癌、膠芽細胞腫、子宮内膜癌、腎臓癌、結腸癌、膵臓癌、および扁平上皮癌が含まれうる。
【0033】
[0035]さらなる態様には、哺乳動物において、増殖因子依存性疾患を治療する方法が含まれる。これらの方法には、増殖因子依存性疾患の治療が必要な哺乳動物を選択し;そしてインスリン様増殖因子−I(IGF−I)に対する交差反応性を持って、インスリン様増殖因子−II(IGF−II)に結合する、特異的結合タンパク質またはその結合断片の療法的有効用量を前記哺乳動物に投与する工程が含まれる。いくつかの側面において、哺乳動物はヒトであってもよい。いくつかの側面において、結合タンパク質は、完全ヒト・モノクローナル抗体であり、そしてmAb 7.251.3(ATCC寄託番号PTA−7422)、mAb 7.34.1(ATCC寄託番号PTA−7423)、およびmAb 7.159.2(ATCC寄託番号PTA−7424)からなる群より選択される。
【0034】
[0036]治療可能な増殖因子依存性疾患には、骨粗鬆症、糖尿病、および心臓血管疾患が含まれうる。他の治療可能な疾患状態には、末端肥大症および巨人症、乾癬、アテローム性動脈硬化症および血管の平滑筋再狭窄、ならびに糖尿病が含まれる。
【0035】
[0037]さらなる態様には、インスリン様増殖因子−I(IGF−I)に対する交差反応性を持って、インスリン様増殖因子−II(IGF−II)に結合する、完全ヒト・モノクローナル抗体またはその結合断片、および療法剤を含む、コンジュゲートが含まれる。いくつかの側面において、療法剤は、毒素、放射性同位体、または薬学的組成物であってもよい。
【0036】
[0038]他の態様において、本発明は、インスリン様増殖因子−I(IGF−I)に対する交差反応性を持って、インスリン様増殖因子−II(IGF−II)に結合し、そして「Ser Tyr Tyr Trp Ser」(配列番号21)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(CDR1);「Tyr Phe Phe Tyr Ser Gly Tyr Thr Asn Tyr Asn Pro Ser Leu Lys Ser」(配列番号22)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域2(CDR2);および「Ile Thr Gly Thr Thr Lys Gly Gly Met Asp Val」(配列番号23)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域3(CDR3)を含む、完全ヒト・モノクローナル抗体またはその結合断片を提供する。
【0037】
[0039]さらなる態様には、「Thr Gly Ser Ser Ser Asn Ile Gly Ala Gly Tyr Asp Val His」(配列番号24)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(CDR1)を有する完全ヒト・モノクローナル抗体またはその結合断片が含まれる。本明細書の抗体はまた、「Gly Asn Asn Asn Arg Pro Ser」(配列番号25)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域2(CDR2);および「Gln Ser Phe Asp Ser Ser Leu Ser Gly Ser Val」(配列番号26)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域3(CDR3)も含んでもよい。
【0038】
[0040]他の態様において、本発明は、インスリン様増殖因子−I(IGF−I)に対する交差反応性を持って、インスリン様増殖因子−II(IGF−II)に結合し、そして「Ser Tyr Tyr Trp Ser」(配列番号27)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(CDR1);「Tyr Phe Phe Tyr Ser Gly Tyr Thr Asn Tyr Asn Pro Ser Leu Lys Ser」(配列番号28)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域2(CDR2);および「Ile Thr Gly Thr Thr Lys Gly Gly Met Asp Val」(配列番号29)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域3(CDR3)を含む、完全ヒト・モノクローナル抗体またはその結合断片を提供する。
【0039】
[0041]さらなる態様には、「Thr Gly Arg Ser Ser Asn Ile Gly Ala Gly Tyr Asp Val His」(配列番号30)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(CDR1);「Gly Asn Ser Asn Arg Pro Ser」(配列番号31)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域2(CDR2);および「Gln Ser Tyr Asp Ser Ser Leu Ser Gly Ser Val」(配列番号32)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域3(CDR3)を有する、完全ヒト・モノクローナル抗体またはその結合断片が含まれる。
【0040】
[0042]他の態様において、本発明は、インスリン様増殖因子−I(IGF−I)に対する交差反応性を持って、インスリン様増殖因子−II(IGF−II)に結合し、そして「Ser Tyr Asp Ile Asn」(配列番号33)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(CDR1);「Trp Met Asn Pro Asn Ser Gly Asn Thr Gly Tyr Ala Gln Lys Phe Gln Gly」(配列番号34)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域2(CDR2);および「Asp Pro Tyr Tyr Tyr Tyr Tyr Gly Met Asp Val」(配列番号35)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域3(CDR3)を含む、完全ヒト・モノクローナル抗体またはその結合断片を提供する。
【0041】
[0043]さらなる態様には、「Ser Gly Ser Ser Ser Asn Ile Glu Asn Asn His Val Ser」(配列番号36)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(CDR1);「Asp Asn Asn Lys Arg Pro Ser」(配列番号37)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域2(CDR2);および「Glu Thr Trp Asp Thr Ser Leu Ser Ala Gly Arg Val」(配列番号38)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域3(CDR3)を有する、完全ヒト・モノクローナル抗体またはその結合断片が含まれる。
【0042】
[0044]他の態様において、本発明は、インスリン様増殖因子−I(IGF−I)に対する交差反応性を持って、インスリン様増殖因子−II(IGF−II)に結合し、そして「Ser Ser Ser Tyr Tyr Trp Gly」(配列番号81)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(CDR1);「Gly Ile Tyr Tyr Ser Gly Ser Thr Tyr Tyr Asn Pro Ser Leu Lys Ser」(配列番号82)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域2(CDR2);および「Gln Arg Gly His Ser Ser Gly Trp Trp Tyr Phe Asp Leu」(配列番号83)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域3(CDR3)を含む、完全ヒト・モノクローナル抗体またはその結合断片を提供する。
【0043】
[0045]さらなる態様には、「Arg Ala Ser Gln Gly Ile Ser Ser Tyr Leu Ala」(配列番号84)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(CDR1);「Ala Ala Ser Ser Leu Gln Ser」(配列番号85)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域2(CDR2);および「Gln Gln Ala Asn Asn Phe Pro Phe Thr」(配列番号86)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域3(CDR3)を有する、完全ヒト・モノクローナル抗体またはその結合断片が含まれる。
【0044】
[0046]他の態様において、本発明は、インスリン様増殖因子−I(IGF−I)に対する交差反応性を持って、インスリン様増殖因子−II(IGF−II)に結合し、そして「Ser Ser Ser Asn Tyr Trp Gly」(配列番号87)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(CDR1);「Gly Ile Tyr Tyr Ser Gly Ser Thr Tyr Tyr Asn Pro Ser Leu Arg Ser」(配列番号88)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域2(CDR2);および「Gln Arg Gly His Ser Ser Gly Trp Trp Tyr Phe Asp Leu」(配列番号89)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域3(CDR3)を含む、完全ヒト・モノクローナル抗体またはその結合断片を提供する。
【0045】
[0047]さらなる態様には、「Arg Ala Ser Arg Gly Ile Ser Ser Trp Leu Ala」(配列番号90)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(CDR1);「Thr Ala Ser Ser Leu Gln Ser」(配列番号91)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域2(CDR2);および「Gln Gln Ala Asn Ser Phe Pro Phe Thr」(配列番号92)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域3(CDR3)を有する、完全ヒト・モノクローナル抗体またはその結合断片が含まれる。
【0046】
[0048]いくつかの態様は、悪性腫瘍の治療のための薬剤の調製における、本明細書記載の特異的結合タンパク質の使用を提供する。いくつかの側面において、特異的結合タンパク質は、完全ヒト・モノクローナル抗体であってもよい。特定の側面において、結合タンパク質は、mAb 7.251.3(ATCC寄託番号PTA−7422)またはmAb 7.34.1(ATCC寄託番号PTA−7423)またはmAb 7.159.2(ATCC寄託番号PTA−7424)である。いくつかの側面において、薬剤は、抗体、化学療法剤、および放射性薬剤からなる群より選択される第二の抗新生物剤と組み合わせた使用のためのものである。いくつかの側面において、薬剤は、慣用的な手術、骨髄幹細胞移植または末梢幹細胞移植と組み合わせたかまたはこれらに続く使用のためのものである。
【0047】
[0049]悪性腫瘍は、例えば、黒色腫、非小細胞肺癌、神経膠腫、肝細胞(肝臓)癌、甲状腺腫瘍、胃癌、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、肺癌、膠芽細胞腫、子宮内膜癌、腎臓癌、結腸癌、膵臓癌、および扁平上皮癌であってもよい。
【0048】
[0050]他の態様は、増殖因子依存性疾患の治療のための薬剤の調製における、本明細書記載の特異的結合タンパク質の使用を提供する。いくつかの側面において、特異的結合タンパク質は、完全ヒト・モノクローナル抗体であり、そしてmAb 7.251.3(ATCC寄託番号PTA−7422)、mAb 7.34.1(ATCC寄託番号PTA−7423)およびmAb 7.159.2(ATCC寄託番号PTA−7424)からなる群より選択可能である。
【0049】
[0051]増殖因子依存性疾患は、例えば、骨粗鬆症、糖尿病、および心臓血管疾患からなる群より選択される。
[0052]好ましくは、抗体は、表11に示す配列の1以上を持つ相補性決定領域(CDR)を有する重鎖アミノ酸配列を含む。例えば、抗体は、表11に示す配列の1以上のCDR1、CDR2、またはCDR3、あるいはその組み合わせを有する重鎖アミノ酸配列を含んでもよい。一般の当業者が、CDR決定を容易に達成可能であることが注目される。例えば、Kabatら, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第5版, NIH Publication 91−3242, メリーランド州ベセスダ(1991), vols. 1−3を参照されたい。
【0050】
[0053]本明細書記載の本発明の態様は、IGF−I/IIに結合し、そしてIGF−I/II機能に影響を及ぼす、モノクローナル抗体に関する。他の態様は、IGF−I/IIに対する高い結合アフィニティー、in vitroおよびin vivoでIGF−I/IIを中和する能力、ならびにIGF−I/IIが誘導する細胞増殖を阻害する能力を含めて、療法的展望から望ましい特性を持つ完全ヒト抗IGF−I/II抗体および抗IGF−I/II抗体調製物に関する。
【0051】
詳細な説明
[0057]本明細書記載の本発明の態様は、IGF−Iに対する交差反応性を持ち、IGF−IIに特異的に結合する(本明細書において、「IGFI/II」と称する)結合タンパク質に関する。いくつかの態様において、結合タンパク質は、抗体、またはその結合断片であり、そしてIGF−Iに対する交差反応性を持って、IGF−IIに結合し、そしてこれらの受容体、IGF−IRへのこれらのタンパク質の結合を阻害する。本発明の他の態様には、療法的に有用であり、そして両方のインスリン様増殖因子に結合する、完全ヒト中和抗IGF−I/II抗体および抗体調製物が含まれる。こうした抗IGF−I/II抗体調製物は、好ましくは、IGF−I/IIに対する強い結合アフィニティー、in vitroでIGF−I/IIを中和する能力、およびin vivoでIGF−I/IIが誘導する細胞増殖を阻害する能力を含めた、望ましい療法特性を有する。
【0052】
[0058]本発明の態様にはまた、抗IGF−I/II抗体の単離結合断片も含まれる。好ましくは、結合断片は、完全ヒト抗IGF−I/II抗体から得られる。典型的な断片には、以下により詳細に記載されるような、Fv、Fab’または他の周知の抗体断片が含まれる。本発明の態様にはまた、IGF−I/IIに対する完全ヒト抗体を発現する細胞も含まれる。細胞の例には、ハイブリドーマ、または組換え的に生成された細胞、例えばIGF−I/IIに対する抗体を産生するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞が含まれる。
【0053】
[0059]さらに、本発明の態様には、疾患を治療するためにこれらの抗体を用いる方法が含まれる。抗IGF−I/II抗体は、IGF−I/IIが仲介するIGF−I/IIシグナル伝達を防止し、それによって細胞増殖を阻害するために有用である。この阻害の作用機構には、IGF−I/IIがIGF−IRに結合する有効な濃度を低下させる、IGF−I/IIのその受容体、IGF−IRへの結合の阻害、IGF−I/IIが誘導するIGF−IRシグナル伝達の阻害、またはIGF−I/IIのクリアランスの増進のいずれかが含まれることも可能である。この阻害機構を通じて治療可能な疾患には、限定されるわけではないが、新生物疾患、例えば、黒色腫、非小細胞肺癌、神経膠腫、肝細胞(肝臓)癌、婦人科腫瘍、頭部および頸部の癌、食道癌、膠芽細胞腫、ならびに甲状腺、胃、前立腺、乳房、卵巣、膀胱、肺、子宮、腎臓、結腸、および膵臓、唾液腺、および結腸直腸の癌および腫瘍が含まれる。
【0054】
[0060]本発明の他の態様には、生物学的試料において、IGF−I/IIの量を特異的に測定するための診断アッセイが含まれる。アッセイキットには、こうした抗体を検出するのに必要な標識とともに、抗IGF−I/II抗体が含まれてもよい。これらの診断アッセイは、限定されるわけではないが、新生物疾患、例えば、黒色腫、非小細胞肺癌、神経膠腫、肝細胞(肝臓)癌、婦人科腫瘍、頭部および頸部の癌、食道癌、膠芽細胞腫、ならびに甲状腺、胃、前立腺、乳房、卵巣、膀胱、肺、子宮、腎臓、結腸、および膵臓、唾液腺、および結腸直腸の癌を含む、増殖因子関連疾患に関するスクリーニングに有用である。他の非新生物疾患状態には、末端肥大症および巨人症、乾癬、骨粗鬆症、アテローム性動脈硬化症、および血管の平滑筋再狭窄、ならびに糖尿病が含まれることも可能である。
【0055】
[0061]抗IGF−I/II抗体に関するさらなる態様、特徴等を、以下のさらなる詳細に提供する。
配列表
[0062]本発明の態様には、以下の表1に列挙する特異的抗IGF−I/II抗体が含まれる。この表は、対応する重鎖および軽鎖遺伝子の配列番号とともに、各抗IGF−I/II抗体の同定番号を報告する。さらに、各重鎖および軽鎖が由来する生殖系列配列もまた、以下の表1に提供する。
【0056】
[0063]各抗体には、1つまたは2つの小数点によって分離された2つまたは3つのいずれかの数字を含む、同定番号が与えられている。いくつかの場合、1つの抗体のいくつかのクローンを調製した。クローンは、親配列と同一の核酸およびアミノ酸配列を有するが、第二の小数点の右側の数字によって示されるクローン番号を伴って、別個に列挙されることもありうる。したがって、例えば、抗体7.159.2の核酸およびアミノ酸配列は、抗体7.159.1の配列と同一である。
【0057】
[0064]配列表中の配列を比較することによってわかるように、配列番号39〜58には、翻訳されないシグナルペプチド、および配列決定された重鎖または軽鎖各々の定常ドメイン領域が含まれるため、配列番号1〜20は、配列番号39〜58とは異なる。
【0058】
表I
【0059】
【表1−1】

【0060】
【表1−2】

【0061】
定義
[0065]別に定義しない限り、本明細書に用いる科学的用語および技術的用語は、一般の当業者に通常理解される意味を有するものとする。さらに、文脈によって別に必要とされない限り、単数形は複数形を含み、そして複数形は単数形を含むものとする。一般的に、本明細書に記載する細胞および組織培養、分子生物学、ならびにタンパク質およびオリゴまたはポリヌクレオチド化学およびハイブリダイゼーションと関連して利用する用語、およびこれらの技術は、当該技術分野に周知であり、そして一般的に用いられるものである。
【0062】
[0066]組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、ならびに組織培養および形質転換には、標準的技術を用いる(例えばエレクトロポレーション、リポフェクション)。製造者の指定にしたがい、または当該技術分野で一般的に達成されるように、または本明細書に記載するように、酵素反応および精製技術を行う。当該技術分野に周知の慣用法にしたがって、そして本明細書全体で引用し、そして論じる、多様な一般的なおよびより具体的な参考文献に記載されるように、一般的に、前述の技術および方法を行う。例えば、本明細書に援用される、Sambrookら Molecular Cloning: A Laboratory Manual(第3版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(2001))を参照されたい。本明細書に記載する分析化学、合成有機化学、ならびに医学的および薬学的化学と関連して利用する用語、ならびにこれらの実験法および技術は、当該技術分野に周知であり、そして一般的に用いられるものである。化学合成、化学分析、薬学的調製、配合、および送達、ならびに患者の治療には、標準的技術を用いる。
【0063】
[0067]本開示にしたがって利用した際、以下の用語は、別に示さない限り、以下の意味を有すると理解されるものとする:
[0068]用語「IGF−I」は、インスリン様増殖因子−I分子を指し、そして用語「IGF−II」は、インスリン様増殖因子−II分子を指す。用語「IGF−I/II」は、両方のインスリン様増殖因子−Iおよび−II分子を指し、そしてIGF−Iに対する交差反応性を持つ、IGF−IIに対する優先的な結合に関する。したがって、IGF−I/IIに結合する抗体は、IGF−IIに優先的に結合するが、IGF−Iと交差反応し、IGF−Iに対するより、高いアフィニティーで、IGF−IIに結合するであろう。例えば、抗体は、IGF−Iに対するより2.5倍高いアフィニティーでIGF−IIに結合可能である。特定の態様において、抗体は、IGF−Iに対するより、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、または少なくとも150倍高いアフィニティーで結合可能である。
【0064】
[0069]用語「中和」は、抗体を指す場合、抗体が、ターゲット抗原の活性を排除するか、または有意に減少させる能力に関する。したがって、「中和」抗IGF−I/II抗体は、IGF−I/IIの活性を排除するかまたは有意に減少させることが可能である。中和IGF−I/II抗体は、例えば、その受容体IGF−IRに対するIGF−I/IIの結合を遮断することによって作用可能である。この結合を遮断することによって、IGF−IRが仲介するシグナル伝達は、有意に、または完全に、排除される。理想的には、IGF−I/IIに対する中和抗体は、細胞増殖を阻害する。
【0065】
[0070]用語「単離ポリヌクレオチド」は、本明細書において、天然に存在する環境から単離されているポリヌクレオチドを意味するものとする。こうしたポリヌクレオチオドは、ゲノム、cDNA、または合成であってもよい。単離ポリヌクレオチドは、好ましくは、天然に会合しているポリヌクレオチドのすべてまたは一部と会合していない。単離ポリヌクレオチドは、天然には連結されていない別のポリヌクレオチドと機能可能であるように連結されていてもよい。さらに、単離ポリヌクレオチドは、好ましくは、より大きな配列の一部として、天然に存在しない。
【0066】
[0071]本明細書に称される用語「単離タンパク質」は、天然存在環境から単離されているタンパク質を意味する。こうしたタンパク質は、ゲノムDNA、cDNA、組換えDNA、組換えRNA、または合成起源、あるいはその組み合わせに由来してもよく、その起源のため、または派生供給源のため、「単離タンパク質」は、(1)天然に見られるタンパク質と会合せず、(2)同じ供給源由来の他のタンパク質を含まず、例えばネズミ・タンパク質を含まず、(3)異なる種由来の細胞によって発現され、または(4)天然には存在しない。
【0067】
[0072]用語「ポリペプチド」は、本明細書において、ポリペプチド配列の天然タンパク質、断片または類似体を指す、一般的な用語として用いられる。したがって、天然タンパク質、断片、および類似体は、ポリペプチド属の種である。本発明にしたがった、好ましいポリペプチドは、ヒト重鎖免疫グロブリン分子およびヒト・カッパ軽鎖免疫グロブリン分子、ならびにカッパまたはラムダ軽鎖免疫グロブリン分子などの軽鎖免疫グロブリン分子とともに、重鎖免疫グロブリンを含む組み合わせ、およびその逆によって形成される抗体分子、ならびにその断片および類似体を含む。本発明にしたがった、好ましいポリペプチドはまた、単に、ヒト重鎖免疫グロブリン分子またはその断片も含んでもよい。
【0068】
[0073]用語「天然存在」は、本明細書において、対象に適用した際、対象が天然で見られうるという事実を指す。例えば、天然供給源から単離可能であり、そして人間によって、実験室において、または別の方式で、意図的に修飾されていない、生物(ウイルスを含む)中に存在するポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列は、天然存在である。
【0069】
[0074]用語「機能可能であるように連結された」は、本明細書において、その意図される方式で機能することが可能にされた関係にある、そのように記載された構成要素の位置を指す。例えば、コード配列に「機能可能であるように連結された」制御配列は、コード配列の発現が、制御配列と適合する条件下で達成される方式で連結されている。
【0070】
[0075]用語「ポリヌクレオチド」は、本明細書において、リボヌクレオチドもしくはデオキシヌクレオチドのいずれか、またはいずれかの種類のヌクレオチドの修飾型、あるいはRNA−DNAへテロ二重鎖の、少なくとも長さ10塩基のヌクレオチドのポリマー型を意味する。この用語には、DNAの一本鎖および二本鎖型が含まれる。
【0071】
[0076]本明細書で称される用語「オリゴヌクレオチド」には、天然存在、および非天然存在連結によって一緒に連結された、天然存在および修飾ヌクレオチドが含まれる。オリゴヌクレオチドは、一般的に200塩基以下の長さを含む、ポリヌクレオチド・サブセットである。好ましくは、オリゴヌクレオチドは、長さ10〜60塩基、そして最も好ましくは、長さ12、13、14、15、16、17、18、19、または20〜40塩基である。オリゴヌクレオチドは、通常、例えばプローブ用に、一本鎖であるが;オリゴヌクレオチドは、例えば遺伝子突然変異体の構築で使用するため、二本鎖であってもよい。オリゴヌクレオチドは、センスまたはアンチセンス・オリゴヌクレオチドのいずれかであってもよい。
【0072】
[0077]本明細書で称される用語「天然存在ヌクレオチド」には、デオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドが含まれる。本明細書で称される用語「修飾ヌクレオチド」には、修飾されたまたは置換された糖基等を含むヌクレオチドが含まれる。本明細書で称される用語「オリゴヌクレオチド連結」には、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホルアニラデート、ホスホロアミデート等のオリゴヌクレオチド連結が含まれる。例えば、その開示が本明細書に援用される、LaPlancheら Nucl. Acids Res. 14:9081(1986); Stecら J. Am. Chem. Soc. 106:6077(1984); Steinら Nucl. Acids Res. 16:3209(1988); Zonら Anti−Cancer Drug Design 6:539(1991); Zonら Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach, pp. 87−108(F. Eckstein監修, Oxford University Press, Oxford England(1991)); Stecら、米国特許第5,151,510号; UhlmannおよびPeyman Chemical Reviews 90:543(1990)を参照されたい。所望の場合、オリゴヌクレオチドには、検出のための標識が含まれてもよい。
【0073】
[0078]本明細書で称される用語「選択的にハイブリダイズする」は、検出可能にそして特異的に結合することを意味する。ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチドおよびその断片は、非特異的核酸への検出可能な結合の認識しうる量を最小限にするハイブリダイゼーションおよび洗浄条件下で、核酸鎖に選択的にハイブリダイズする。高ストリンジェンシー条件を用いて、当該技術分野に知られ、そして本明細書に論じるような選択的ハイブリダイゼーション条件を達成してもよい。一般的に、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、または抗体断片および目的の核酸配列の間の核酸配列相同性は、少なくとも80%であろうし、そしてより典型的には、少なくとも85%、90%、95%、99%、および100%の増加する相同性を持つ。
【0074】
[0079]2つのアミノ酸配列間に部分的なまたは完全な同一性がある場合、これらの配列は「相同」である。例えば、85%の相同性は、2つの配列を最大マッチングになるように並列させた場合、85%のアミノ酸が同一であることを意味する。マッチングを最大にする際、ギャップ(マッチングさせている2つの配列のいずれかにおけるもの)が許可され;5以下のギャップ長が好ましく、2以下がより好ましい。あるいは、そして好ましくは、突然変異データマトリックスおよび6以上のギャップペナルティを伴い、プログラムALIGNを用いて、5(標準偏差単位)よりも高い並列スコアを有するならば、本明細書でこの用語を用いた場合、2つのタンパク質配列(または少なくとも長さ約30アミノ酸のそれに由来するポリペプチド配列)は相同である。Dayhoff, M.O., Atlas of Protein Sequence and Structure中, pp. 101−110(第5巻, National Biomedical Research Foundation(1972))およびこの巻の補遺2、pp. 1−10を参照されたい。2つの配列またはその部分は、より好ましくは、これらのアミノ酸が、ALIGNプログラムを用いて最適に並列された際、50%以上同一であるならば、相同である。2つのオルソロガス配列内に、相同性が異なる領域がありうることを認識しなければならない。例えば、マウスおよびヒトのオルソログの機能部位は、非機能領域より高い度合いの相同性を有しうる。
【0075】
[0080]用語「に対応する」は、本明細書において、ポリヌクレオチド配列が、参照ポリヌクレオチド配列のすべてまたは一部に相同である(すなわち、厳密に進化的に関連せずに、同一である)か、あるいはポリペプチド配列が参照ポリペプチド配列と同一であることを意味する。
【0076】
[0081]対照的に、用語「に相補的」は、本明細書において、相補配列が、参照ポリヌクレオチド配列のすべてまたは一部に相同であることを意味する。例えば、ヌクレオチド配列「TATAC」は、参照配列「TATAC」に対応し、そして参照配列「GTATA」に相補的である。
【0077】
[0082]以下の用語を用いて、2以上のポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の配列関係を記載する:「参照配列」、「比較ウィンドウ」、「配列同一性」、「配列同一性パーセント」、および「実質的同一性」。「参照配列」は、配列比較の基礎として用いる、定義された配列である。参照配列は、例えば、配列表に提供する全長cDNAまたは遺伝子配列のセグメントとして、より大きい配列のサブセットであってもよいし、あるいは完全cDNAまたは遺伝子配列を含んでもよい。一般的に、参照配列は、少なくとも長さ18ヌクレオチドまたは6アミノ酸、しばしば、少なくとも長さ24ヌクレオチドまたは8アミノ酸、そしてしばしば、少なくとも長さ48ヌクレオチドまたは16アミノ酸である。2つのポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列は、各々、(1)2つの分子間で類似の配列(すなわち完全ポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列の一部)を含む可能性もあり、そして(2)2つのポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列間で多様な配列をさらに含む可能性もあるため、2つ(またはそれより多く)の分子間の配列比較は、典型的には、配列類似性の局所領域を同定し、そして比較する、「比較ウインドウ」に渡って、2つの分子の配列を比較することによって行われる。「比較ウィンドウ」は、本明細書において、ポリヌクレオチド配列またはアミノ酸配列を、少なくとも18の隣接ヌクレオチドまたは6アミノ酸配列の参照配列と比較し、そして2つの配列の最適並列のため、参照配列(付加または欠失を含まない)に比較した際に、比較ウィンドウ中のポリヌクレオチド配列の部分が、20パーセント以下の付加、欠失、置換等(すなわちギャップ)を含んでもよい、少なくとも約18の隣接ヌクレオチド位または約6アミノ酸の概念上のセグメントを指す。比較ウィンドウを並列させるための配列の最適並列は、SmithおよびWaterman Adv. Appl. Math. 2:482(1981)の局所相同性アルゴリズムによって、NeedlemanおよびWunsch J. Mol. Biol. 48:443(1970)の相同性並列アルゴリズムによって、PearsonおよびLipman Proc. Natl. Acad. Sci.(U.S.A.) 85:2444(1988)の類似性に関する検索法によって、これらのアルゴリズムのコンピュータ化実行(Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0(Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, Wis.)のGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA、GENEWORKSTMまたはMACVECTOR(登録商標)ソフトウェアパッケージ)によって、または検査によって、行ってもよく、そして多様な方法によって生成された最適な並列(すなわち比較ウィンドウに渡って最高の相同性パーセントを生じるもの)を選択する。
【0078】
[0083]用語「配列同一性」は、2つのポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列が、比較ウィンドウに渡って同一である(すなわちヌクレオチドごとまたは残基ごとに基づいて)ことを意味する。用語「配列同一性パーセント」は、2つの最適に並列された配列を、比較ウィンドウに渡って比較し、同一核酸塩基(例えばA、T、C、G、U、またはI)またはアミノ酸残基が両方の配列に生じる位の数を決定して、マッチした位の数を得て、マッチした位の数を比較ウィンドウ中の位の総数(すなわちウィンドウサイズ)によって割り、そして結果に100を乗じて、配列同一性パーセントを得ることによって、計算される。用語「実質的同一性」は、本明細書において、ポリヌクレオチドまたはアミノ酸が、少なくとも18ヌクレオチド(6アミノ酸)位の比較ウィンドウに渡って、しばしば、少なくとも24〜48ヌクレオチド(8〜16アミノ酸)位のウィンドウに渡って、参照配列に比較した際、少なくとも85パーセントの配列同一性、好ましくは少なくとも90〜95パーセントの配列同一性、より好ましくは少なくとも99パーセントの配列同一性を有する配列を含み、比較ウィンドウに渡って、全部で参照配列の20パーセント以下の欠失または付加を含んでもよい配列に、参照配列を比較することによって、配列同一性パーセントを計算する、ポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列の特徴を意味する。参照配列はより大きい配列のサブセットであってもよい。
【0079】
[0084]本明細書において、20の慣用的なアミノ酸およびその略語は、慣用的な用法にしたがう。本明細書に援用される、Immunology− A Synthesis(第2版, E.S. GolubおよびD.R. Gren監修, Sinauer Associates, マサチューセッツ州サンダーランド(1991))を参照されたい。20の慣用的アミノ酸の立体異性体(例えばD−アミノ酸)、α,α−二置換アミノ酸などの非天然アミノ酸、N−アルキルアミノ酸、乳酸、および他の非慣用的アミノ酸もまた、本発明のポリペプチドに適した構成要素でありうる。非慣用的なアミノ酸の例には:4−ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタメート、ε−N,N,N−トリメチルリジン、ε−N−アセチルリジン、O−ホスホセリン、N−アセチルセリン、N−ホルミルメチオニン、3−メチルヒスチジン、5−ヒドロキシリジン、σ−N−メチルアルギニン、ならびに他の類似のアミノ酸およびイミノ酸(例えば4−ヒドロキシプロリン)が含まれる。本明細書で用いるポリペプチド表記法において、標準的な用法および慣例にしたがって、左側はアミノ末端方向であり、そして右側はカルボキシ末端方向である。
【0080】
[0085]同様に、別に明記しない限り、一本鎖ポリヌクレオチド配列の左側は5’端であり;二本鎖ポリヌクレオチド配列の左側は5’方向と称される。新生RNA転写物の5’から3’付加の方向は、転写方向と称され;RNAと同じ配列を有し、そしてRNA転写物の5’端の5’であるDNA鎖上の配列領域は、「上流配列」と称され;RNAと同じ配列を有し、そしてRNA転写物の3’端の3’であるDNA鎖上の配列領域は、「下流配列」と称される。
【0081】
[0086]ポリペプチドに適用した際、用語「実質的同一性」は、2つのペプチド配列が、デフォルトギャップ加重を用いて、プログラムGAPまたはBESTFITによるなどで、最適に並列された際、少なくとも80パーセントの配列同一性、好ましくは少なくとも90パーセントの配列同一性、より好ましくは少なくとも95パーセントの配列同一性、そして最も好ましくは少なくとも99パーセントの配列同一性を共有することを意味する。好ましくは、同一でない残基位は、保存的アミノ酸置換によって異なる。保存的アミノ酸置換は、類似の側鎖を有する残基の互換性を指す。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸群は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンであり;脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸群は、セリンおよびスレオニンであり;アミド含有側鎖を有するアミノ酸群は、アスパラギンおよびグルタミンであり;芳香族側鎖を有するアミノ酸群は、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンであり;塩基性側鎖を有するアミノ酸群は、リジン、アルギニン、およびヒスチジンであり;そしてイオウ含有側鎖を有するアミノ酸群は、システインおよびメチオニンである。好ましい保存的アミノ酸置換群は:バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リジン−アルギニン、アラニン−バリン、グルタミン酸−アスパラギン酸、およびアスパラギン−グルタミンである。
【0082】
[0087]本明細書に論じるように、抗体または免疫グロブリン分子のアミノ酸配列における重要でない変動は、アミノ酸配列中のこうした変動が、本明細書記載の抗体または免疫グロブリン分子に対する、少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、90%、95%、そして最も好ましくは99%の配列同一性を維持するならば、本発明に含まれると意図される。特に、保存的アミノ酸置換が意図される。保存的置換は、関連側鎖を有するアミノ酸ファミリー内で起こるものである。遺伝的にコードされるアミノ酸は、一般的に、ファミリーに分けられる:(1)酸性=アスパラギン酸、グルタミン酸;(2)塩基性=リジン、アルギニン、ヒスチジン;(3)非極性=アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン;および(4)非荷電極性=グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシン。より好ましいファミリーは:セリンおよびスレオニンは、脂肪族ヒドロキシファミリーであり;アスパラギンおよびグルタミンは、アミド含有ファミリーであり;アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンは、脂肪族ファミリーであり;そしてフェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンは、芳香族ファミリーである。例えば、イソロイシンまたはバリンでのロイシン、グルタミン酸でのアスパラギン酸、セリンでのスレオニンの単一の置換、あるいは構造的に関連するアミノ酸でのアミノ酸の類似の置換は、特に、その置換がフレームワーク部位内のアミノ酸を伴わない場合、生じる分子の結合機能または特性に大きな影響を及ぼさないであろうと予測することは妥当である。アミノ酸変化によって、機能するペプチドが生じるかどうかは、ポリペプチド誘導体の比活性をアッセイすることによって、容易に決定可能である。アッセイは、本明細書に詳細に記載される。抗体または免疫グロブリン分子の断片または類似体は、一般の当業者によって容易に調製可能である。断片または類似体の好ましいアミノ末端およびカルボキシ末端は、機能ドメインの境界近くに存在する。構造ドメインおよび機能ドメインは、公的または私的な配列データベースに、ヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列データを比較することによって、同定可能である。好ましくは、コンピュータ化比較法を用いて、既知の構造および/または機能の他のタンパク質に存在する配列モチーフまたは予測されるタンパク質コンホメーションドメインを同定する。既知の三次元構造にフォールディングするタンパク質配列を同定する方法が知られる。Bowieら Science 253:164 (1991)。したがって、前述の例は、当業者が、本明細書記載の抗体に一致して、構造ドメインおよび機能ドメインを定義するのに使用可能な、配列モチーフおよび構造コンホメーションを認識可能であることを示す。
【0083】
[0088]好ましいアミノ酸置換は:(1)タンパク質分解に対する感受性を減少させ、(2)酸化に対する感受性を減少させ、(3)タンパク質複合体を形成するため、結合アフィニティーを改変し、(4)結合アフィニティーを改変し、そして(5)他の物理化学特性または機能特性を与えるかあるいはこうした類似体のこうした特性を修正するものである。類似体には、天然存在ペプチド配列以外の配列の多様な突然変異タンパク質が含まれうる。例えば、単数または多数のアミノ酸置換(好ましくは、保存的アミノ酸置換)を天然存在配列において(好ましくは、分子間接触を形成するドメイン(単数または複数)外のポリペプチドの部分において)行うことも可能である。保存的アミノ酸置換は、親配列の構造特徴を実質的に変化させてはならない(例えば置換アミノ酸は、親配列に存在するらせんを破壊するか、または親配列を特徴付ける他の種類の二次構造を破壊する傾向があってはならない)。当該技術分野に認識されるポリペプチド二次構造および三次構造の例が、Proteins, Structures and Molecular Principles(Creighton監修, W.H. Freeman and Company, ニューヨーク(1984)); Introduction to Protein Structure(C. BrandenおよびJ. Tooze監修, Garland Publishing, ニューヨーク州ニューヨーク(1991));およびThorntonら Nature 354:105(1991)に記載され、これらは各々、本明細書に援用される。
【0084】
[0089]用語「ポリペプチド断片」は、本明細書において、アミノ末端および/またはカルボキシ末端欠失を有するが、残っているアミノ酸配列が、例えば、全長cDNA配列から推定される天然存在配列中の対応する位と同一であるポリペプチドを指す。断片は、典型的には、少なくとも長さ5、6、8、または10アミノ酸、好ましくは少なくとも長さ14アミノ酸、より好ましくは少なくとも長さ20アミノ酸、通常、少なくとも長さ50アミノ酸、そしてさらにより好ましくは少なくとも長さ70アミノ酸である。用語「類似体」は、本明細書において、推定されるアミノ酸配列の一部に実質的な同一性を有し、そして以下の特性の少なくとも1つを有する、少なくとも25アミノ酸のセグメントで構成されるポリペプチドを指す:(1)適切な結合条件下での、IGF−I/IIに対する特異的な結合、(2)適切なIGF−I/II結合を遮断する能力、または(3)IGF−I/II活性を阻害する能力。典型的には、ポリペプチド類似体は、天然存在配列に関して保存的アミノ酸置換(または付加または欠失)を含む。類似体は、典型的には、少なくとも長さ20アミノ酸、好ましくは少なくとも長さ50アミノ酸以上であり、そしてしばしば、全長天然存在ポリペプチドと同じくらい長いことも可能である。
【0085】
[0090]ペプチド類似体は、一般的に、薬学産業において、テンプレート・ペプチドのものと類似の特性を持つ、非ペプチド薬剤として用いられる。これらの種類の非ペプチド化合物は、「ペプチド模倣体」(「peptide mimetics」または「peptidomimetics」)と称される。本明細書に援用される、Fauchere, J. Adv. Drug Res. 15:29(1986); VeberおよびFreidinger TINS p.392(1985);およびEvansら J. Med. Chem. 30:1229(1987)。こうした化合物は、しばしば、コンピュータ化分子モデリングの補助で開発される。療法的に有用なペプチドに構造的に類似のペプチド模倣体を用いて、同等の療法効果または予防効果を生じることも可能である。一般的に、ペプチド模倣体は、ヒト抗体などの模範(paradigm)ポリペプチド(すなわち生化学的特性または薬理学的活性を有するポリペプチド)に構造的に類似であるが、当該技術分野に周知の方法によって:−−CHNH−−、−−CHS−−、−−CH−CH−−、−−CH=CH−(シスおよびトランス)、−−COCH−−、−−CH(OH)CH−−、および−−CHSO−−からなる群より選択される連結により、場合によって置換された1以上のペプチド連結を有する。コンセンサス配列の1以上のアミノ酸を、同じ種類のD−アミノ酸(例えばL−リジンの代わりにD−リジン)で体系的に置換して、より安定なペプチドを生成することも可能である。さらに、コンセンサス配列または実質的に同一なコンセンサス配列変動を含む、制約された(constrained)ペプチドを、当該技術分野に知られる方法(本明細書に援用される、RizoおよびGierasch Ann. Rev. Biochem. 61:387(1992))によって生成することも可能であり;これは例えば、ペプチドを環状化する、分子内ジスルフィド架橋を形成可能な内部システイン残基を付加することによる。
【0086】
[0091]本明細書において、用語「抗体」は、抗原の抗原性決定基の特徴に相補的な内部表面形状および電荷分布を持つ三次元結合空間を有するポリペプチド鎖のフォールディングから形成される、少なくとも1つの結合ドメインで構成されるポリペプチドまたはポリペプチド群を指す。抗体は、典型的には四量体型を有し、2つの同一のポリペプチド鎖対を含み、各々の対は、1つの「軽」鎖および1つの「重」鎖を有する。各軽鎖/重鎖対の可変領域は、抗体結合部位を形成する。
【0087】
[0092]抗体の「結合断片」は、組換えDNA技術によって、あるいは損なわれていない(intact)抗体の酵素的または化学的切断によって産生される。結合断片には、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv、および一本鎖抗体が含まれる。「二重特異性」または「二官能性」抗体以外の抗体は、同一の各結合部位を有すると理解される。抗体は、過剰な抗体が、少なくとも約20%、40%、60%、または80%、そしてより一般的には約85%(in vitro競合結合アッセイで測定した際)を超えて、対抗受容体に結合する受容体の量を減少させる場合、対抗受容体に対する受容体の付着を、実質的に阻害する。
【0088】
[0093]本明細書において、「結合タンパク質」または「特異的結合タンパク質」は、ターゲット分子に特異的に結合するタンパク質である。抗体、および抗体の結合断片は、結合タンパク質である。
【0089】
[0094]用語「エピトープ」には、免疫グロブリンまたはT細胞受容体に特異的に結合可能ないかなるタンパク質決定基も含まれる。エピトープ決定基は、通常、アミノ酸または糖側鎖などの分子の化学的活性表面群からなり、そして常にではないが、特定の三次元構造特性とともに、特定の電荷特性を有することも可能である。抗体は、解離定数が≦1μM、好ましくは≦100nM、そして最も好ましくは≦10nMである場合、抗原に特異的に結合すると言われる。
【0090】
[0095]用語「剤」は、本明細書において、化学的化合物、化学的化合物の混合物、生物学的巨大分子、または生物学的物質から作製される抽出物を意味する。
[0096]IGF−I/IIポリペプチドに関する「活性である」または「活性」は、天然IGF−I/IIポリペプチドの生物学的または免疫学的活性を有するIGF−I/IIポリペプチドの部分を指す。「生物学的」は、本明細書で用いた際、天然IGF−I/IIポリペプチドの活性から生じる生物学的機能を指す。好ましいIGF−I/II生物学的活性には、例えば、IGF−I/II誘導性細胞増殖が含まれる。
【0091】
[0097]「哺乳動物」は、本明細書で用いた際、哺乳動物と見なされるいかなる動物も指す。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
[0098]酵素、パパインでの抗体の消化は、「Fab」断片としても知られる、2つの同一の抗原結合断片、および抗原結合活性を持たないが、結晶化する能力を有する「Fc」断片を生じる。酵素、ペプシンでの抗体の消化は、抗体分子の2つのアームが連結されたままであり、そして2つの抗原結合部位を含む、F(ab’)断片を生じる。F(ab’)断片は、抗原を架橋する能力を有する。
【0092】
[0099]「Fv」は、本明細書で用いた際、抗原認識部位および抗原結合部位の両方を保持する抗体の最少断片を指す。
[0100]「Fab」は、本明細書で用いた際、軽鎖の定常ドメインおよび重鎖のCH1ドメインを含む抗体断片を指す。
【0093】
[0101]用語「mAb」は、モノクローナル抗体を指す。
[0102]「リポソーム」は、本明細書で用いた際、本発明のIGF−I/IIポリペプチド、またはこうしたIGF−I/IIポリペプチドに対する抗体を含んでもよい薬剤を哺乳動物に送達するのに有用でありうる小胞を指す。
【0094】
[0103]「標識」または「標識された」は、本明細書において、ポリペプチドに対する検出可能部分、例えば放射標識、蛍光標識、酵素標識、化学発光標識基またはビオチニル基の付加を指す。放射性同位体または放射性核種には、H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131Iが含まれてもよく、蛍光標識には、ローダミン、ランタニド、リンまたはFITCが含まれてもよく、そして酵素標識には、西洋ワサビ(horseradish)ペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼが含まれてもよい。
【0095】
[0104]用語「薬学的剤または薬剤」は、本明細書において、患者に適切に投与された際、所望の療法効果を誘導可能な化学的化合物または組成物を指す。本明細書の他の化学用語は、The McGraw−Hill Dictionary of Chemical Terms(Parker, S.監修, McGraw−Hill, サンフランシスコ(1985)(本明細書に援用される)に例示されるように、当該技術分野における慣用的用法にしたがって用いられる。
【0096】
[0105]本明細書において、「実質的に純粋な」は、対象種が、存在する主な種である(すなわちモル濃度に基づいて、組成物中の他の個々の種いずれよりもより豊富である)ことを意味し、そして好ましくは、実質的に純粋な分画は、対象種が、存在するすべての巨大分子種の少なくとも約50パーセント(モル濃度に基づいて)を構成する組成物である。一般的に、実質的に純粋な組成物は、組成物中に存在するすべての巨大分子種の約80%より多くを構成し、より好ましくは、約85%、90%、95%、および99%より多くを構成するであろう。最も好ましくは、対象種は、本質的に均質に精製され(慣用的検出法によって、組成物中に混入種が検出不能である)、ここで組成物は本質的に単一の巨大分子種からなる。
【0097】
[0106]用語「患者」には、ヒトおよび獣医学的被験体が含まれる。
ヒト抗体および抗体のヒト化
[0107]ヒト抗体は、ネズミまたはラットの可変および/または定常領域を所持する抗体に付随する問題のいくつかを回避する。こうしたネズミまたはラット由来タンパク質の存在は、抗体の迅速なクリアランスを導く可能性もあるし、あるいは患者によって抗体に対する免疫応答が生成されるのを導く可能性もある。ネズミまたはラット由来抗体の利用を回避するため、げっ歯類、他の哺乳動物または動物が完全ヒト抗体を産生するように、げっ歯類、他の哺乳動物または動物内に、機能するヒト抗体遺伝子座を導入することによって、完全ヒト抗体を生成してもよい。
【0098】
[0108]完全ヒト抗体を生成するための1つの方法は、ヒト重鎖遺伝子座およびカッパ軽鎖遺伝子座の、1000kbまでであるが、1000kb未満である大きさの生殖系列設定断片を含有するように操作されている、マウスのXenoMouse(登録商標)系統の使用を通じる。Mendezら Nature Genetics 15:146−156(1997)、ならびにGreenおよびJakobovits J. Exp. Med. 188:483−495(1998)。XenoMouse(登録商標)系統は、Abgenix, Inc.(カリフォルニア州フレモント)より入手可能である。
【0099】
[0109]マウスのXenoMouse(登録商標)系統の産生は、米国特許出願第07/466,008号、1990年1月12日出願、第07/610,515号、1990年11月8日出願、第07/919,297号、1992年7月24日出願、第07/922,649号、1992年7月30日出願、第08/031,801号、1993年3月15日出願、第08/112,848号、1993年8月27日出願、第08/234,145号、1994年4月28日出願、第08/376,279号、1995年1月20日出願、第08/430,938号、1995年4月27日出願、第08/464,584号、1995年6月5日出願、第08/464,582号、1995年6月5日出願、第08/463,191号、1995年6月5日出願、第08/462,837号、1995年6月5日出願、第08/486,853号、1995年6月5日出願、第08/486,857号、1995年6月5日出願、第08/486,859号、1995年6月5日出願、第08/462,513号、1995年6月5日出願、第08/724,752号、1996年10月2日出願、第08/759,620号、1996年12月3日出願、米国公報第2003/0093820号、2001年11月30日出願、ならびに米国特許第6,162,963号、第6,150,584号、第6,114,598号、第6,075,181号、および第5,939,598号、および日本国特許第3 068 180 B2号、第3 068 506 B2号、および第3 068 507 B2号にさらに論じられ、そして描写される。欧州特許第EP 0 463 151 B1号、1996年6月12日付与公表(grant published)、国際特許出願第WO 94/02602号、1994年2月3日公表、国際特許出願第WO 96/34096号、1996年10月31日公表、第WO 98/24893号、1998年6月11日公表、第WO 00/76310号、2000年12月21日公表もまた、参照されたい。上記引用特許、出願、および参考文献各々の開示は、その全体が本明細書に援用される。
【0100】
[0110]別のアプローチにおいて、GenPharm International, Inc.を含む他のグループは、「ミニ遺伝子座」アプローチを利用した。ミニ遺伝子座アプローチでは、Ig遺伝子座由来の片(個々の遺伝子)の包含を通じて、外因性Ig遺伝子座を模倣する。したがって、1以上のV遺伝子、1以上のD遺伝子、1以上のJ遺伝子、mu定常領域、および通常は第二の定常領域(好ましくはガンマ定常領域)を、動物内に挿入するための構築物になるように形成する。このアプローチは、Suraniらに対する米国特許第5,545,807号、ならびに各々、LonbergおよびKayに対する米国特許第5,545,806号、第5,625,825号、第5,625,126号、第5,633,425号、第5,661,016号、第5,770,429号、第5,789,650号、第5,814,318号、第5,877,397号、第5,874,299号、および第6,255,458号、KrimpenfortおよびBernsに対する米国特許第5,591,669号および第6,023,010号、Bernsらに対する米国特許第5,612,205号、第5,721,367号、および第5,789,215号、ならびにChoiおよびDunnに対する米国特許第5,643,763号、ならびにGenPharm International、米国特許出願第07/574,748号、1990年8月29日出願、第07/575,962号、1990年8月31日出願、第07/810,279号、1991年12月17日出願、第07/853,408号、1992年3月18日出願、第07/904,068号、1992年6月23日出願、第07/990,860号、1992年12月16日出願、第08/053,131号、1993年4月26日出願、第08/096,762号、1993年7月22日出願、第08/155,301号、1993年11月18日出願、第08/161,739号、1993年12月3日出願、第08/165,699号、1993年12月10日出願、第08/209,741号、1994年3月9日出願に記載され、これらの開示は本明細書に援用される。その開示が全体として本明細書に援用される、欧州特許第0 546 073 B1号、国際特許出願第WO 92/03918号、第WO 92/22645号、第WO 92/22647号、第WO 92/22670号、第WO 93/12227号、第WO 94/00569号、第WO 94/25585号、第WO 96/14436号、第WO 97/13852号、および第WO 98/24884号、ならびに米国特許第5,981,175号もまた、参照されたい。その開示が全体として本明細書に援用される、Taylorら、1992、Chenら、1993、Tuaillonら、1993、Choiら、1993、Lonbergら(1994)、Taylorら(1994)、およびTuaillonら(1995)、Fishwildら(1996)もさらに参照されたい。
【0101】
[0111]キリンもまた、微小細胞(microcell)融合を通じて、染色体の大きな片、または全染色体が導入されているマウスからのヒト抗体の生成を立証した。その開示が本明細書に援用される、欧州特許出願第773 288号および第843 961号を参照されたい。さらに、キリンのTcマウスとMedarexのミニ遺伝子座(Humab)マウスの交雑育種の結果である、KMTMマウスが生成された。これらのマウスは、キリン・マウスのヒトIgHトランス染色体(transchromosome)およびGenpharmマウスのカッパ鎖導入遺伝子を所持する(Ishidaら, Cloning Stem Cells, (2002)4:91−102)。
【0102】
[0112]ヒト抗体はまた、in vitro法によっても得られうる。適切な例には、限定されるわけではないが、ファージディスプレイ(CAT、Morphosys、Dyax、Biosite/Medarex、Xoma、Symphogen、Alexion(以前のProliferon)、Affimed)リボソームディスプレイ(CAT)、酵母ディスプレイ等が含まれる。
【0103】
抗体の調製
[0113]本明細書記載の抗体は、以下に記載するように、XenoMouse(登録商標)技術の利用を通じて調製された。その結果、こうしたマウスは、ヒト免疫グロブリン分子および抗体を産生可能であり、そしてネズミ免疫グロブリン分子および抗体の産生は欠損している。これを達成するために利用される技術は、本明細書の背景セクションに開示する特許、出願、および参考文献に開示される。しかし、特に、マウスのトランスジェニック産生および該マウスからの抗体の産生の好ましい態様が、米国特許出願08/759,620号、1996年12月3日出願、ならびに国際特許出願第WO 98/24893号、1998年6月11日出願、および第WO 00/76310号、2000年12月21日出願に開示され、これらの開示は、本明細書に援用される。その開示が本明細書に援用される、Mendezら Nature Genetics 15:146−156(1997)もまた参照されたい。
【0104】
[0114]こうした技術の使用を通じて、多様な抗原に対する完全ヒト・モノクローナル抗体を産生した。本質的に、マウスのXenoMouse(登録商標)系統を、目的の抗原(例えばIGF−I/II)で免疫し、リンパ系細胞(B細胞など)を過剰免疫(hyper−immunized)マウスから回収し、そして回収したリンパ球を骨髄腫型細胞株と融合させて、不死ハイブリドーマ細胞株を調製する。これらのハイブリドーマ細胞株をスクリーニングし、そして選択して、目的の抗原に特異的な抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を同定する。本明細書に提供するのは、IGF−I/IIに特異的な抗体を産生する多数のハイブリドーマ細胞株の産生法である。さらに、本明細書に提供するのは、こうした抗体の重鎖および軽鎖のヌクレオチドおよびアミノ酸配列分析を含む、こうした細胞株によって産生される抗体の性質決定である。
【0105】
[0115]あるいは、骨髄腫細胞に融合させてハイブリドーマを産生する代わりに、B細胞を直接アッセイしてもよい。例えば、CD19+ B細胞を過剰免疫XenoMouse(登録商標)マウスから単離し、そして増殖させ、そして抗体分泌形質細胞に分化させてもよい。次いで、細胞上清由来の抗体を、IGF−I/II免疫原に対する反応性に関して、ELISAによってスクリーニングする。また、上清を、IGF−I/IIの断片に対する免疫反応性に関してスクリーニングして、IGF−I/II上の機能的に関心が持たれるドメインに対する結合に関して、異なる抗体をさらにマッピングしてもよい。また、他の関連ヒト・ケモカインに対して、そしてIGF−I/IIのラット、マウス、およびカニクイザル(cynomolgus monkey)などの非ヒト霊長類のオルソログに対して、抗体をスクリーニングしてもよく、後者は、種交差反応性を決定するためである。個々のウェルまたはプールしたウェルのいずれかからハイブリドーマを作製する融合を含む多様な方法によって、あるいはEBVでの感染または既知の不死化遺伝子によるトランスフェクション、そしてその後の適切な培地中でのプレーティングによって、目的の抗体を含有するウェル由来のB細胞を、不死化してもよい。あるいは、次いで、IGF−I/II特異的溶血プラークアッセイ(Babcookら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:7843−48(1996))を用いて、望ましい特異性を持つ抗体を分泌する単一の形質細胞を単離する。溶解のターゲットとされる細胞は、好ましくは、IGF−I/II抗原でコーティングされたヒツジ赤血球細胞(SRBC)である。
【0106】
[0116]目的の免疫グロブリンおよび補体を分泌する形質細胞を含有するB細胞培養の存在下で、プラークの形成は、目的の形質細胞を取り巻くヒツジ赤血球の、IGF−I/IIが仲介する特異的溶解を示す。プラーク中心の単一の抗原特異的形質細胞を単離してもよく、そして抗体の特異性をコードする遺伝的情報を、単一の形質細胞から単離する。逆転写後のPCR(RT−PCR)を用いて、抗体の重鎖および軽鎖の可変領域をコードするDNAをクローニングしてもよい。次いで、こうしたクローニングされたDNAを、適切な発現ベクター、好ましくは、pcDNAなどのベクターカセット、より好ましくは免疫グロブリン重鎖および軽鎖の定常ドメインを含有するpcDNAベクターに、さらに挿入してもよい。次いで、生成したベクターを、宿主細胞、例えばHEK293細胞、CHO細胞内にトランスフェクションし、そして転写を誘導するか、形質転換体を選択するか、または所望の配列をコードする遺伝子を増幅するのに適するように修飾した、慣用的な栄養培地中で培養してもよい。
【0107】
[0117]一般的に、融合ハイブリドーマによって産生される抗体は、完全ヒト・カッパまたはラムダ軽鎖を含むヒトIgG2重鎖であった。本明細書に記載する抗体は、ヒトIgG4重鎖ならびにIgG2重鎖を所持する。抗体はまた、IgG1を含む他のヒト・アイソタイプのものであってもよい。抗体は、高いアフィニティーを所持し、固相および溶液相技術によって測定した際、典型的には約10−6〜約10−12Mまたはそれ未満のKdを所持する。IGF−I/IIの活性を阻害するには、少なくとも10−11MのKDを所持する抗体が好ましい。
【0108】
[0118]認識されるであろうように、ハイブリドーマ細胞株以外の細胞株で、抗IGF−I/II抗体を発現させてもよい。特定の抗体をコードする配列を用いて、適切な哺乳動物宿主細胞を形質転換してもよい。形質転換は、例えばウイルスにおける(またはウイルスベクター内への)ポリヌクレオチドのパッケージング、およびウイルス(またはベクター)での宿主細胞の形質導入を含む、宿主細胞内へのポリヌクレオチドの導入のために知られる任意の方法によっても、または米国特許第4,399,216号、第4,912,040号、第4,740,461号、および第4,959,455号(これらの特許は本明細書に援用される)に例示されるように、当該技術分野に知られるトランスフェクション法によってもよい。用いる形質転換法は、形質転換しようとする宿主に応じる。哺乳動物細胞内に異種ポリヌクレオチドを導入するための方法は、当該技術分野に周知であり、そしてこれには、デキストラン仲介トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレン仲介トランスフェクション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、リポソーム中のポリヌクレオチド(単数または複数)の被包、および核内へのDNAの直接マイクロインジェクションが含まれる。
【0109】
[0119]発現の宿主として利用可能な哺乳動物細胞株は当該技術分野に周知であり、そしてアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)から入手可能な多くの不死化細胞株が含まれ、限定されるわけではないが、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えばHep G2)、ヒト上皮腎293細胞、およびいくつかの他の細胞株が含まれる。どの細胞株が高発現レベルを有し、そして恒常的なIGF−I/II結合特性を持つ抗体を産生するかを決定することによって、特に好ましい細胞株を選択することも可能である。
【0110】
[0120]抗IGF−I/II抗体は、患者試料におけるIGF−I/IIの検出に有用であり、そしてしたがって、本明細書に記載するような疾患状態の診断として有用である。さらに、IGF−I/II活性を有意に中和する能力(以下の実施例に立証するようなもの)に基づいて、抗IGF−I/II抗体は、IGF−I/II発現から生じる症状および状態を治療する際に療法効果を有する。特定の態様において、本明細書の抗体および方法は、IGF−I/IIが誘導する細胞増殖から生じる症状の治療に関する。さらなる態様は、本明細書記載の抗体および方法を用いて、新生物疾患、例えば、黒色腫、非小細胞肺癌、神経膠腫、肝細胞(肝臓)癌、甲状腺腫瘍、胃癌、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、肺癌、膠芽細胞腫、子宮内膜癌、腎臓癌、結腸癌、婦人科腫瘍、頭部および頸部の癌、食道癌、および膵臓癌を含む疾患を治療することを伴う。他の非新生物疾患状態には、末端肥大症および巨人症、乾癬、骨粗鬆症、アテローム性動脈硬化症および血管の平滑筋再狭窄、ならびに糖尿病が含まれてもよい。
【0111】
療法的投与および配合
[0121]本発明の態様には、疾患に対する治療として有用な抗IGF−I/II抗体の無菌薬学的配合物が含まれる。こうした配合物は、受容体IGF−IRに対するIGF−I/IIの結合を阻害し、それによって、例えば、血清または組織IGF−I/IIが異常に上昇している病的状態を有効に治療するであろう。抗IGF−I/II抗体は、好ましくは、IGF−I/IIを強力に中和する適切なアフィニティーを有し、そして好ましくは、ヒトにおける低頻度の投薬を可能にする、適切な作用期間を有する。作用期間延長は、皮下または筋内注射などの別の非経口投与経路による、より頻繁でなく、そしてより好適な投薬スケジュールを可能にするであろう。
【0112】
[0122]例えば、抗体の凍結乾燥および再構成の前または後に、無菌ろ過膜を通じたろ過によって、無菌配合物を生成してもよい。抗体は、通常、凍結乾燥型で、または溶液中で、保存されるであろう。療法抗体組成物は、一般的に、無菌アクセスポートを有する容器、例えば静脈内溶液バッグ、または皮下注射針によって貫通可能な栓などの、配合物の回収を可能にするアダプターを有するバイアルに入れられる。
【0113】
[0123]抗体投与経路は、既知の方法にしたがって、例えば、静脈内、腹腔内、脳内、筋内、眼内、動脈内、クモ膜下腔内、吸入または病巣内経路によって注射または注入するか、あるいは以下に示すような持続放出系による。抗体は、好ましくは、注入によって、またはボーラス注射によって、連続投与される。
【0114】
[0124]療法的に使用しようとする抗体の有効量は、例えば、療法目的、投与経路、および患者の状態に応じるであろう。したがって、最適療法効果を得るために、治療専門家が、必要に応じて、投薬量を用量設定し、そして投与経路を修飾することが好ましい。典型的には、臨床医は、望ましい効果を達成する投薬量に達するまで、抗体を投与するであろう。この療法の進行は、慣用的アッセイによって、または本明細書記載のアッセイによって、容易に監視される。
【0115】
[0125]本明細書に記載するような抗体は、薬学的に許容されうるキャリアーと混合して調製可能である。この療法組成物を、静脈内投与してもよいし、あるいは好ましくは液体または粉末エアロゾル(凍結乾燥)として、鼻または肺を通じて投与してもよい。組成物はまた、所望に応じて、非経口投与してもまたは皮下投与してもよい。全身投与する場合、療法組成物は、無菌、発熱物質不含であり、そしてpH、等張性、および安定性を十分顧慮して、非経口的に許容されうる溶液中になければならない。これらの条件は、当業者に知られる。簡潔には、所望の度合いの純度を有する化合物を、生理学的に許容されうるキャリアー、賦形剤、または安定化剤と混合することによって、保存または投与のために、本明細書記載の化合物の投薬配合物を調製する。こうした物質は、使用する投薬量および濃度で、レシピエントに対して毒性でなく、そしてこうした物質には、TRIS HCl、リン酸、クエン酸、酢酸、および他の有機酸塩などの緩衝剤;アスコルビン酸などの酸化防止剤;ポリアルギニンなどの低分子量(約10残基未満)ペプチド、血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸、またはアルギニンなどのアミノ酸;単糖、二糖、およびセルロースもしくはその誘導体、グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;マンニトールまたはソルビトールなどの糖アルコール;TWEEN、PLURONICSまたはポリエチレングリコールなどのナトリウムおよび/または非イオン性界面活性剤などの対イオンが含まれる。
【0116】
[0126]Remington: The Science and Practice of Pharmacy(第20版, Lippincott Williams & Wilkens Publishers(2003))に記載されるように、慣用的薬学的実施にしたがって、注射用の無菌組成物を配合してもよい。例えば、水、あるいはゴマ油、ピーナツ油または綿実油のような天然存在植物油、あるいはオレイン酸エチル等のような合成脂肪性ビヒクルなどのビヒクル中での活性化合物の溶解または懸濁が望ましい可能性もある。許容される薬学的実施にしたがって、緩衝剤、保存剤、酸化防止剤等を取り込んでもよい。
【0117】
[0127]持続放出調製物の適切な例には、ポリペプチドを含有する固形疎水性ポリマーの半透性マトリックスが含まれ、こうしたマトリックスは、成形された物品、フィルムまたはマイクロカプセルの形である。持続放出マトリックスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、Langerら, J. Biomed Mater. Res., (1981)15:167−277およびLanger, Chem. Tech., (1982)12:98−105に記載されるようなポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号、EP 58,481)、L−グルタミン酸およびガンマエチル−L−グルタメートのコポリマー(Sidmanら, Biopolymers, (1983)22:547−556)、分解不能酢酸エチレンビニル(Langerら、上記)、分解可能乳酸−グリコール酸コポリマー、例えばLUPRON DepotTM(乳酸−グリコール酸コポリマー、および酢酸ロイプロリドで構成される注射可能微小球体)、およびポリ−(D)−3−ヒドロキシ酪酸(EP 133,988)が含まれる。
【0118】
[0128]酢酸エチレンビニルおよび乳酸−グリコール酸などのポリマーは、100日間に渡って分子の放出を可能にする一方、特定のヒドロゲルは、より短い期間でタンパク質を放出する。被包されたタンパク質が、体内に長期間残ると、37℃で湿気に曝露された結果として、変性するかまたは凝集し、生物学的活性の喪失およびもしかすると免疫原性の変化を生じる可能性もある。関与する機構に応じて、タンパク質安定化のための合理的戦略を考案してもよい。例えば、凝集機構が、ジスルフィド交換を通じた分子間S−S結合形成であることが発見されたならば、スルフィドリル残基を修飾し、酸性溶液から凍結乾燥させ、水分含量を調節し、適切な添加剤を用い、そして特定のポリマーマトリックス組成を発展させることによって、安定化を達成してもよい。
【0119】
[0129]持続放出組成物にはまた、結晶を懸濁中に維持することが可能な適切な配合物中に懸濁された抗体の結晶の調製物も含まれる。これらの調製物は、皮下または腹腔内注射されると、持続放出効果を生じうる。他の組成物にはまた、リポソームに捕捉された抗体も含まれる。こうした抗体を含有するリポソームは:それ自体知られる方法によって調製される:米国特許第DE 3,218,121号; Epsteinら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, (1985)82:3688−3692; Hwangら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, (1980)77:4030−4034; EP 52,322; EP 36,676; EP 88,046; EP 143,949; 142,641;日本国特許出願第83−118008号;米国特許第4,485,045号および第4,544,545号;ならびにEP 102,324。
【0120】
[0130]所定の患者に対する抗体配合物の投薬量は、疾患の重症度および種類、体重、性別、食餌、投与時間および経路、他の薬剤および他の関連する臨床要因を含む、薬剤作用を修飾することが知られる多様な要因を考慮して、主治医によって決定されるであろう。in vitro法またはin vivo法のいずれかによって、療法的有効投薬量を決定してもよい。
【0121】
[0131]療法的に使用しようとする、本明細書記載の抗体の有効量は、例えば、療法目的、投与経路、および患者の状態に応じるであろう。したがって、治療専門家が、投薬量を用量設定し、そして最適療法効果を得るために、必要に応じて、投与経路を修飾することが好ましい。典型的な1日投薬量は、上述の要因に応じて、約0.001mg/kg〜100mg/kgまでの範囲、またはそれより多くてもよい。典型的には、臨床医は、望ましい効果を達成する投薬量に達するまで、療法抗体を投与するであろう。この療法の進行は、慣用的アッセイによって、または本明細書記載のアッセイによって、容易に監視される。
【0122】
[0132]本明細書の組成物および方法にしたがった、療法実体の投与は、改善された輸送、送達、耐性等を提供するために、配合物内に取り込まれる、適切なキャリアー、賦形剤、および他の剤とともに投与されるであろうことが認識されるであろう。これらの配合物には、例えば、粉末、ペースト、軟膏、ゼリー、ワックス、油、脂質、脂質(陽イオン性または陰イオン性)含有小胞(LipofectinTMなど)、DNAコンジュゲート、無水吸収ペースト、水中油および油中水エマルジョン、エマルジョン・カルボワックス(多様な分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、およびカルボワックス含有半固体混合物が含まれる。前述の混合物のいずれも、配合物中の活性成分が配合によって不活化されず、そして配合物が投与経路に生理学的に適合し、そして耐性であるならば、本発明にしたがった治療および療法において適切でありうる。薬学的化学者に周知の配合物、賦形剤、およびキャリアーに関連するさらなる情報に関しては、Baldrick P. “Pharmaceutical excipient development: the need for preclinical guidance” Regul. Toxicol. Pharmacol. 32(2):210−8(2000), Wang W. “Lyophilization and development of solid protein pharmaceuticals.” Int. J. Pharm. 203(1−2):1−60(2000), Charman WN “Lipids, lipophilic drugs, and oral drug delivery−some emerging concepts.” J Pharm Sci .89(8):967−78(2000), Powellら “Compendium of excipients for parenteral formulations” PDA J Pharm Sci Technol. 52:238−311(1998)、およびこれら文献中の引用文献もまた、参照されたい。
【0123】
他の療法剤の設計および生成
[0133]本発明にしたがって、そしてIGF−I/IIに関する、本明細書で産生し、そして性質決定する抗体の活性に基づいて、他の療法様式の設計を容易にし、そして当業者に開示する。こうした様式には、限定されるわけではないが、進化した抗体療法剤、例えば、二重特異性抗体、免疫毒素、放射標識療法、および一本鎖抗体Vドメイン、V領域骨格以外に基づく抗体様結合剤、ペプチド療法剤の生成、遺伝子治療、特にイントラボディ、アンチセンス療法、および小分子が含まれる。
【0124】
[0134]進化した抗体療法剤の生成と関連して、補体結合が望ましい特質である場合、例えば、二重特異性、免疫毒素、または放射標識の使用を通じて、細胞殺傷のための補体に対する依存性を回避することも可能でありうる。
【0125】
[0135]例えば、(i)一方はIGF−I/IIに対する特異性を持ち、そして他方は第二の分子に対する特異性を持ち、ともにコンジュゲート化されている、2つの抗体、(ii)IGF−I/IIに対して特異的な1つの鎖、および第二の分子に対して特異的な第二の鎖を有する、単一抗体、または(iii)IGF−I/IIおよび他の分子の両方に対する特異性を有する一本鎖抗体を含む、二重特異性抗体を生成してもよい。こうした二重特異性抗体は、周知である技術を用いて生成可能であり;例えば(i)および(ii)に関連して、例えば、Fangerら Immunol Methods 4:72−81(1994)、ならびにWrightおよびHarris、上記を、そして(iii)に関連して、例えば、Trauneckerら Int. J. Cancer(Suppl.)7:51−52(1992)を参照されたい。どちらの場合も、所望に応じて、第二の特異性を作製してもよい。例えば、限定されるわけではないが、CD16またはCD64(例えばDeoら 18:127(1997)を参照されたい)、あるいはCD89(例えばValeriusら Blood 90:4485−4492(1997))を含む、重鎖活性化受容体に対して、第二の特異性を作製してもよい。
【0126】
[0136]当業者に周知の技術を利用して、免疫毒素として作用するように、抗体を修飾することもまた可能である。例えば、Vitetta Immunol Today 14:252(1993)を参照されたい。また、米国特許第5,194,594号も参照されたい。放射標識抗体の調製と関連して、当該技術分野に周知の技術を利用して、こうした修飾抗体を容易に調製可能である。例えば、Junghansら Cancer Chemotherapy and Biotherapy中 655−686(第2版, ChafnerおよびLongo監修, Lippincott Raven(1996))を参照されたい。また、米国特許第4,681,581号、第4,735,210号、第5,101,827号、第5,102,990号(RE 35,500)、第5,648,471号、および第5,697,902号もまた参照されたい。免疫毒素および放射標識分子は各々、所望のマルチマー酵素サブユニット・オリゴマー化ドメインを発現する細胞を殺す可能性があるであろう。いくつかの態様において、薬学的に許容されうるキャリアーまたは希釈剤と会合した抗体の有効量を含む、薬学的組成物を提供する。
【0127】
[0137]いくつかの態様において、抗IGF−I/II抗体は、剤(例えば放射性同位体、薬学的組成物、または毒素)に連結される。好ましくは、こうした抗体を疾患の治療に用いてもよく、こうした疾患は、IGF−I/IIを発現している細胞、またはIGF−I/IIを過剰発現している細胞に関連していてもよい。例えば、薬剤が、抗有糸分裂剤、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗血管形成剤、アポトーシス剤、アルカロイド剤、COX−2剤、および抗生物質剤、ならびにその組み合わせの群より選択される薬学的特性を所持することが意図される。ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、スルホン酸アルキル、ニトロソ尿素、トリアゼン、葉酸類似体、アントラサイクリン、タキサン、COX−2阻害剤、ピリミジン類似体、プリン類似体、代謝拮抗剤、抗生物質、酵素、エピポドフィロトキシン、白金配位錯体、ビンカアルカロイド、置換尿素、メチルヒドラジン誘導体、副腎皮質抑制剤、アンタゴニスト、エンドスタチン、タキソール、カンプトテシン、オキサリプラチン、ドキソルビシン、およびその類似体、ならびにその組み合わせからなる群より薬剤を選択可能である。
【0128】
[0138]毒素の例には、さらに、ゲロニン、シュードモナス属(Pseudomonas)外毒素(PE)、PE40、PE38、ジフテリア毒素、リシン、リシン、アブリン、アルファ毒素、サポリン、リボヌクレアーゼ(RNアーゼ)、DNアーゼI、スタフィロコッカス属(Staphylococcal)エンテロトキシン−A、ヤマゴボウ(pokeweed)抗ウイルスタンパク質、ゲロニン、シュードモナス属内毒素、ならびにその誘導体、組み合わせおよび修飾が含まれる。
【0129】
[0139]放射性同位体の例には、位置決定および/または療法に使用可能なガンマ放出体、陽電子放出体、およびX線放出体、ならびに療法に使用可能なベータ放出体およびアルファ放出体が含まれる。診断、予後および病期決定に有用と先に示した放射性同位体もまた、療法に有用である。抗癌剤または抗白血病剤の限定されない例には、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ダウノルビシン(ダウノマイシン)、イダルビシン、デトルビシン(detorubicin)、カルミノマイシン(carminomycin)、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)などのアントラサイクリン、ならびにそのモルホリノおよび置換誘導体、組み合わせおよび修飾が含まれる。典型的な薬学的剤には、シスプラチン、タキソール、カリケアマイシン、ビンクリスチン、シタラビン(Ara−C)、シクロホスファミド、プレドニゾン、ダウノルビシン、イダルビシン、フルダラビン、クロラムブシル、インターフェロン・アルファ、ヒドロキシ尿素、テモゾロミド、サリドマイド、およびブレオマイシン、ならびにその誘導体、組み合わせおよび修飾が含まれる。好ましくは、抗癌剤または抗白血病剤は、ドキソルビシン、モルホリノドキソルビシン、またはモルホリノダウノルビシンである。
【0130】
[0140]当業者に認識されるであろうように、上記態様において、アフィニティー値が重要でありうるが、抗体の特定の機能に応じて、他の因子が同様にまたはより重要である可能性もある。例えば、免疫毒素(抗体と会合した毒素)に関して、ターゲットへの抗体の結合作用が有用である可能性もある;が、いくつかの態様において、望ましい最終結果は、細胞内への毒素の内在化である。こうしたものとして、高い割合の内在化を伴う抗体が、これらの状況において、望ましい可能性もある。したがって、1つの態様において、内在化の高い効率を持つ抗体が意図される。高い効率の内在化は、内在化抗体パーセントとして測定可能であり、そして低い値から100%まででありうる。例えば、多様な態様において、0.1〜5、5〜10、10〜20、20〜30、30〜40、40〜45、45〜50、50〜60、60〜70、70〜80、80〜90、90〜99、および99〜100%が高い効率でありうる。当業者に認識されるであろうように、望ましい効率は、例えば会合する剤、領域に投与可能な抗体の量、抗体−剤複合体の副作用、治療すべき問題の種類(例えば癌の種類)および重症度に応じて、異なる態様で異なりうる。
【0131】
[0141]他の態様において、本明細書に開示する抗体は、IGF−I/IIの発現の変化と関連して、疾患または障害に関してスクリーニングするため、哺乳動物組織または細胞におけるIGF−I/II発現の検出のためのアッセイキットを提供する。キットは、IGF−I/IIに結合する抗体、および存在する場合、抗原と抗体の反応を示すための手段を含む。
【0132】
[0142]いくつかの態様において、製品は、抗IGF−I/II抗体を含有する組成物、および該組成物がIGF−I/II発現によって仲介される疾患を治療するのに使用可能であることを示す添付文書または表示を含む、容器を含んで、提供される。好ましくは、哺乳動物、そしてより好ましくは、ヒトに、抗IGF−I/II抗体を投与する。
【0133】
併用
[0143]本明細書において先に定義する抗IGF−I/II抗体を、単一療法として適用してもよいし、または本発明の化合物に加えて、慣用的な手術または放射療法または化学療法を伴ってもよい。こうした化学療法には、1以上の以下のカテゴリーの抗腫瘍剤が含まれてもよい:
(i)内科的腫瘍学で用いられるような、抗増殖/抗新生物薬剤およびその組み合わせ、例えばアルキル化剤(例えばシスプラチン、カルボプラチン、シクロホスファミド、ナイトロジェンマスタード、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、およびニトロソ尿素);代謝拮抗剤(例えば、5−フルオロウラシルおよびテガフールのようなフルオロピリミジンなどの抗葉酸剤、ラルチトレキセド、メトトレキセート、シトシンアラビノシドおよびヒドロキシ尿素);抗腫瘍抗生物質(例えばアドリアマイシン、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダウノマイシン、エピルビシン、イダルビシン、マイトマイシン−C、ダクチノマイシンおよびミトラマイシンのようなアントラサイクリン);抗有糸分裂剤(例えばビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシンおよびビノレルビンのようなビンカアルカロイド、ならびにタキソールおよびタキソテールのようなタキソイド);およびトポイソメラーゼ阻害剤(例えばエトポシドおよびテニポシドのようなエピポドフィロトキシン、アムサクリン、トポテカンおよびカンプトテシン);
(ii)細胞増殖抑制剤、例えば抗エストロゲン剤(例えばタモキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェンおよびヨードキシフェン)、エストロゲン受容体下方制御剤(例えばフルベストラント)、抗アンドロゲン剤(例えばビカルタミド、フルタミド、ニルタミドおよび酢酸シプロテロン)、LHRHアンタゴニストまたはLHRHアゴニスト(例えばゴセレリン、リュープロレリンおよびブセレリン)、プロゲストゲン(例えば酢酸メゲストロール)、アロマターゼ阻害剤(例えばアナストロゾール、レトロゾール、ボラゾール(vorazole)およびエキセメスタン)および5αレダクターゼの阻害剤、例えばフィナステリド;
(iii)癌細胞浸潤を阻害する剤(例えばマリマスタットのようなメタロプロテイナーゼ阻害剤、およびウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子受容体機能の阻害剤);
(iv)増殖因子機能の阻害剤、例えばこうした阻害剤には、増殖因子抗体、増殖因子受容体抗体(例えば抗erbb2抗体、トラスツズマブ[ハーセプチンTM]および抗erbb1抗体、セツキシマブ[C225])、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、MEK阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤およびセリン/スレオニンキナーゼ阻害剤、例えば上皮増殖因子ファミリーの阻害剤(例えばEGFRファミリー・チロシンキナーゼ阻害剤、例えば−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−7−メトキシ−6−(3−モルホリノプロポキシ)キナゾリン−4−アミン(ゲフィチニブ、AZD1839)、−(3−エチニルフェニル)−6,7−ビス(2−メトキシエトキシ)キナゾリン−4−アミン(エルロチニブ、OSI−774)および6−アクリルアミド−−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−7−(3−モルホリノプロポキシ)キナゾリン−4−アミン(CI 1033)))、例えば血小板由来増殖因子ファミリーの阻害剤および例えば肝細胞増殖因子ファミリーの阻害剤が含まれる;
(v)抗血管形成剤、例えば血管内皮増殖因子の効果を阻害するもの(例えば抗血管内皮細胞増殖因子抗体、ベバシズマブ[アバスチンTM]、国際特許出願WO 97/22596、WO 97/30035、WO 97/32856およびWO 98/13354に開示するものなどの化合物)および他の機構によって作用する化合物(例えば、インテグリンαvβ3機能の阻害剤であるリノミド(linomide)、アンジオスタチン、ならびにアンジオポエチン、例えばアンジオポエチン1およびアンジオポエチン2の作用の阻害剤);
(vi)血管損傷剤、例えばコンブレタスタチンA4および国際特許出願WO 99/02166、WO00/40529、WO 00/41669、WO01/92224、WO02/04434およびWO02/08213に開示される化合物;
(vii)アンチセンス療法、例えばISIS 2503などの上に列挙するターゲットに対して向けられるもの、抗rasアンチセンス;
(viii)異常なp53、あるいは異常なBRCA1またはBRCA2などの異常な遺伝子を置換するアプローチ、シトシンデアミナーゼ、チミジンキナーゼまたは細菌ニトロレダクターゼ酵素を用いるものなどのGDEPT(遺伝子指向性酵素プロドラッグ療法)アプローチ、および多剤耐性遺伝子治療などの化学療法または放射療法に対する患者耐性を増加させるアプローチを含む、遺伝子治療アプローチ;
(ix)例えば、患者腫瘍細胞の免疫原性を増加させるex−vivoおよびin−vivoアプローチ、例えばインターロイキン2、インターロイキン4または顆粒球−マクロファージ・コロニー刺激因子などのサイトカインでのトランスフェクション、T細胞アネルギーを減少させるアプローチ、サイトカインでトランスフェクションした樹状細胞などのトランスフェクションした免疫細胞を用いたアプローチ、サイトカインでトランスフェクションした腫瘍細胞株を用いたアプローチおよび抗イディオタイプ抗体を用いたアプローチを含む、免疫療法アプローチ;
(x)例えばCDK阻害剤(例えばフラボピリドール)および細胞周期チェックポイントの他の阻害剤(例えばチェックポイントキナーゼ);オーロラキナーゼ、ならびに有糸分裂および細胞質分裂制御に関与する他のキナーゼ(例えば有糸分裂キネシン)の阻害剤;およびヒストンデアセチラーゼ阻害剤を含む、細胞周期阻害剤;
(xi)エンドセリンAアンタゴニスト、エンドセリンBアンタゴニスト、ならびにエンドセリンAおよびBアンタゴニストを含む、エンドセリンアンタゴニスト;例えばZD4054およびZD1611(WO 96 40681)、アトラセンタンおよびYM598;ならびに
(xii)生物学的療法剤療法アプローチ、例えば、受容体リガンドを隔離するか、受容体へのリガンド結合を遮断するか、または受容体シグナル伝達を減少させる(例えば受容体分解増進または発現レベル低下のため)かいずれかの、ペプチドまたはタンパク質(例えば抗体または可溶性外部受容体ドメイン構築物)を用いるもの。
【0134】
[0144]治療の個々の構成要素を同時に、連続してまたは別個に投与することによって、こうした共同の治療を達成してもよい。こうした組み合わせ産物は、本明細書において上述する投薬量範囲内の本発明の化合物、および認可された投薬量範囲内の他の薬学的活性剤を使用する。
【0135】
実施例
[0145]以下の実施例は、行う実験および達成される結果を含めて、例示目的のみのために提供され、そして本明細書の解説を制限するとは見なされないものとする。
【0136】
実施例1
免疫および用量設定
免疫
[0146]R&D Systems, Inc.から得た組換えヒトIGF−IおよびIGF−II(ミネソタ州ミネアポリス、それぞれ、カタログ番号291−G1および292−G2)を抗原として用いた。XenoMouse(登録商標)マウス(XenoMouse系統XMG2およびXMG4(3C−1系統)、Abgenix, Inc.、カリフォルニア州フレモント)を連続して免疫することによって、IGF−I/IIに対するモノクローナル抗体を発展させた。すべての注射に関して、足蹠経路を介して、XenoMouse動物を免疫した。各注射の総体積は、マウスあたり50μlであり、足蹠あたり25μlであった。各群で、総数10匹のマウスを免疫した。表2に詳述するように、IGF−IまたはIGF−IIのみ、あるいはキャリアーとしてのキーホールリンペット(Keyhole Limpet)ヘモシアニン(KLH)抗原にコンジュゲート化したIGF−IまたはIGF−IIを、各々、マウスあたり10μg注射した。第一の注射は、ダルベッコのPBS(DPBS)中で構成し、そして1:1 v/vでTitermax Goldアジュバント(SIGMAカタログ番号T2684、ロット番号K1599)と混合した。次いで、マウスあたり25μgのAdju−Phos(リン酸アルミニウムゲル、カタログ番号1452−250、バッチ番号8937、HCI Biosector)および10μg CpG(15μlのImmunEasy Mouseアジュバント、カタログ番号303101;ロット番号11553042;Qiagen)と混合した、総数8〜11回のさらなる追加免疫を、27〜38日間の期間に渡って投与し、その後、アジュバントなしに、発熱物質不含DPBS中の10μgの抗原で最終追加免疫した。組み合わせ免疫(IGF−IおよびIGF−IIの両方で動物を免疫する)には、第二の抗原を、最後の2回の追加免疫中に投与した。
【0137】
表2.免疫要約
【0138】
【表2】

【0139】
実施例2
リンパ球回収、B細胞単離、融合およびハイブリドーマの生成
[0147]免疫したマウスを頸椎脱臼によって屠殺し、そして流入領域リンパ節を採取し、そして各コホートからプールした。DMEM中ですりつぶすことによって、リンパ系細胞を解離させて、組織から細胞を遊離させ、そして細胞をDMEM中に懸濁した。細胞を計数し、そして1億個のリンパ球あたり0.9mlのDMEMを細胞ペレットに添加して、細胞を穏やかにしかし完全に再懸濁した。1億個の細胞あたり、100μlのCD90+磁気ビーズを用いて、磁気ビーズと細胞を4℃で15分間インキュベーションすることによって、細胞を標識した。最大10陽性細胞(または最大2x10総細胞)を含有する磁気標識細胞懸濁物をLS+カラム上に装填し、そしてカラムをDMEMで洗浄した。総流出物をCD90陰性分画(これらの細胞の大部分は、B細胞と期待された)として収集した。
【0140】
[0148]上記由来の洗浄した濃縮B細胞およびATCCから購入した、非分泌性骨髄腫P3X63Ag8.653細胞、カタログ番号CRL 1580(Kearneyら, J. Immunol. 123, 1979, 1548−1550)を1:1の比で混合することによって、融合を行った。800xgの遠心分離によって、細胞混合物を穏やかにペレットにした。上清を完全に除去した後、2〜4mlのプロナーゼ溶液(CalBiochem、カタログ番号53702;PBS中、0.5mg/ml)で2分を超えずに、細胞を処理した。次いで、3〜5mlのFBSを添加して、酵素活性を停止し、そしてエレクトロ細胞融合溶液(ECFS、0.3Mスクロース、Sigma、カタログ番号S7903、0.1mM酢酸マグネシウム、Sigma、カタログ番号M2545、0.1mM酢酸カルシウム、Sigma、カタログ番号C4705)を用いて、懸濁物を40ml総体積に調整した。遠心分離後に上清を除去し、そして40ml ECFS中に細胞を再懸濁した。この洗浄工程を反復し、そして再び、細胞をECFS中に再懸濁して、2x10細胞/mlの濃度にした。
【0141】
[0149]融合生成装置(モデルECM2001、Genetronic, Inc.、カリフォルニア州サンディエゴ)を用いて、エレクトロ細胞融合を行った。用いた融合チャンバーサイズは2.0mlであり、以下の装置設定を用いた:
[0150]調節条件:電圧:50V、時間:50秒。
【0142】
[0151]電圧:3000V、時間:30μ秒で膜破壊
[0152]融合後保持時間:3秒
[0153]ECF後、細胞懸濁物を、無菌条件下で、融合チャンバーから注意深く取り除き、そしてL−グルタミン、pen/strep、OPI(オキサロ酢酸、ピルビン酸、ウシ・インスリン)(すべてSigma)およびIL−6(Boehringer Mannheim)を補充した、同体積のハイブリドーマ培地(DMEM、JRH Biosciences)、15%FBS(Hyclone)を含有する無菌試験管に移した。細胞を37℃で15〜30分間インキュベーションし、そして次いで、400xg(1000rpm)で5分間遠心分離した。小体積のハイブリドーマ選択培地(0.5xHAを補充したハイブリドーマ培地(Sigma、カタログ番号A9666))中に細胞を穏やかに再懸濁し、そして96ウェルプレートあたり、総数5x10 B細胞およびウェルあたり200μlの最終プレーティングに基づいて、さらなるハイブリドーマ選択培地を用いて、体積を適切に調整した。細胞を穏やかに混合し、そして96ウェルプレート内にピペッティングし、そして増殖を可能にした。第7日または第10日、培地の半分を取り除き、そして細胞にハイブリドーマ選択培地を再供給した。
【0143】
実施例3
ELISAによる候補抗体の選択
[0154]培養14日後、IGF−I/II特異的モノクローナル抗体に関して、ハイブリドーマ上清をスクリーニングした。ELISAプレート(Fisher、カタログ番号12−565−136)をコーティング緩衝液(0.1M炭酸緩衝液、pH9.6、NaHCO 8.4g/l)中のヒトIGF−IまたはIGF−II(2μg/ml)50μg/ウェルでコーティングし、次いで、4℃で一晩、インキュベーションした。インキュベーション後、プレートを洗浄緩衝液(PBS中の0.05%Tween 20)で3回洗浄した。200μl/ウェルのブロッキング緩衝液(1xPBS中の0.5%BSA、0.1%Tween 20、0.01%チメロサール)を添加し、そしてプレートを室温で1時間インキュベーションした。インキュベーション後、プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄した。50μl/ウェルのハイブリドーマ上清、ならびに陽性および陰性対照を添加し、そしてプレートを室温で2時間インキュベーションした。
【0144】
[0155]インキュベーション後、プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄した。100μl/ウェルの検出抗体ヤギ抗huIgGFc−HRP(Caltag、カタログ番号H10507)を添加し、そしてプレートを室温で1時間インキュベーションした。第二のスクリーニングにおいて、第一のスクリーニング中の陽性を2セット中でスクリーニングし、IgGおよびIgカッパ両方に関して完全にヒト組成であることを立証するため、一方はヒトIgG(重鎖)検出に関して、そして他方はヒトIgカッパ軽鎖検出に関して(ヤギ抗hIgカッパ−HRP(Southern Biotechnology、カタログ番号2060−05))、スクリーニングした。インキュベーション後、プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄した。100μl/ウェルのTMB(BioFX Lab. カタログ番号TMSK−0100−01)を添加し、そしてプレートを約10分間発色させた(陰性対照ウェルがわずかに呈色し始めるまで)。次いで、50μl/ウェルの停止溶液(TMB停止溶液(BioFX Lab. カタログ番号STPR−0100−01))を添加し、そして450nmのELISAプレート読取装置上で、プレートを読み取った。表3に示すように、IGF−Iおよび−IIに対する抗体を含有する総数1,233ウェルがあった。
【0145】
[0156]インスリンと交差反応するものを排除するため、ELISAによって、インスリンに対する結合に関して、ELISAアッセイで結合したすべての抗体を対比スクリーニングした。ELISAプレート(Fisher、カタログ番号12−565−136)をコーティング緩衝液(0.1M炭酸緩衝液、pH9.6、NaHCO 8.4g/l)中の組換えインスリン(濃度:1μg/ml;Sigma、カタログ番号I2643)50μl/ウェルでコーティングし、次いで4℃で一晩インキュベーションした。表3に詳述するように、元来の1233の抗体から、総数1,122の抗体が、インスリンと交差反応した。
【0146】
表3.スクリーニング要約
【0147】
【表3】

【0148】
[0157]最後に、次いで、対比スクリーニングで選択した抗体をELISAによって試験して、マウスIGF−IおよびIGF−IIタンパク質に対する結合を確認した。総数683ハイブリドーマ系統が、マウスIGF−I/IIとの交差反応を有すると同定された。したがって、これらのハイブリドーマ系統は、ヒトIGF−I、ヒトIGF−II、マウスIGF−IおよびマウスIGF−IIに結合するが、ヒト・インスリンに結合しない抗体を発現した。
【0149】
実施例4
IGF−IRに対するIGF−IおよびIGF−II結合の阻害
[0158]この研究の目的は、IGF−IR受容体に対するIGF−IおよびIGF−II結合の阻害によって決定されるような、中和活性に関して、ハイブリドーマ上清段階での683の抗IGF−I/IIヒトIgG2およびIgG4抗体をスクリーニングすることであった。したがって、以下に記載するように、ヒトIGF−IR受容体を過剰発現するNIH3T3細胞を用いて、受容体/リガンド結合アッセイを行った。
【0150】
[0159]簡潔には、マルチスクリーンフィルタープレート(MultiScreen 0.65μM 96ウェルPVDF、Millipore、カタログ番号MADV N0B 10)を、200μl/ウェルのブロッキング緩衝液(0.02%NaNとともに10%BSAを含有するPBS)で、4℃で一晩ブロッキングした。100μCi/mlおよび50nMの[125I]標識IGF(Amersham Life Sciencesカタログ番号IM172(IGF−I)またはIM238(IGF−II))を、結合緩衝液(0.02%NaNとともに2%BSAを含有するPBS)中で適切な濃度(IGF−Iに関しては最終70pM、そしてIGF−IIに関しては最終200pM)に希釈した。ブロッキング緩衝液でコーティングしたフィルタープレートを200μlのPBSで1回洗浄し、そして50μlの抗IGF−I/II Ab上清(結合緩衝液中で、25%最終体積に希釈)を、MultiScreenプレート中、25μlの[125I]−IGFと氷上で30〜60分間プレインキュベーションした。hIGF−IRを安定して発現している集密以下(subconfluent)のNIH3T3マウス線維芽細胞(AstraZenecaから得た)をトリプシンで採取し、そして冷結合緩衝液中に、6x10/mlで再懸濁し、そして25μlの細胞をプレートに添加して、氷上で2時間インキュベーションした。200μlの冷PBSでプレートを4回洗浄し、そして一晩乾燥させた。25μl/ウェルのシンチラント(SuperMixカクテル、Wallac/Perkin Elmerカタログ番号1200−439)を添加し、そしてMicrobeta Trilux読取装置(Wallac)を用いて、プレートを読み取った。
【0151】
[0160]スクリーニングプレートあたり、以下の対照を用いた:抗体なし(総IGF結合)、50μg/ml(非特異的バックグラウンド)および0.075〜0.5μg/ml(中和抗体のおよそのEC50値)の対照中和抗IGF−I(#05−172、Upstate)または抗IGF−II(#MAB292、R&D Systems)mAb、ならびに0.5μg/mlの濃度(中和抗体のおよそのEC50値)のアイソタイプ一致対照ヒトIgG2(PK16.3.1、Abgenix、ロット番号360−154)またはIgG4(108.2.1、Abgenix、ロット番号718−53A)mAb。スクリーニングアッセイあたり、1つのプレートに、対照中和抗体およびアイソタイプ一致対照ヒト抗体のさらなる用量設定を添加した(50μg/ml(333.3nM)からの1/10連続希釈)。25%最終体積で、抗KLHヒトIgG2またはIgG4消耗(exhaust)上清を補充した、結合緩衝液中で、抗体を含むまたは含まないすべての対照を調製した。
【0152】
[0161]阻害パーセントを以下のように決定した:
阻害%=([(総125I−IGF結合の平均CPM)−(抗体の存在下での125I−IGF結合の平均CPM)]/[(総125I−IGF結合の平均CPM)−(過剰な対照中和抗体の存在下での125I−IGF結合の平均CPM)])x100
[0162]過剰な非放射性IGFと同等であることが見出された、過剰な対照中和抗IGF Ab(50μg/ml、333.3nM)を伴う細胞のCPMとして、非特異的バックグラウンドを決定した(総CPMの10%以下)。
【0153】
[0163]放射標識リガンドの入手可能性の問題から、抗IGF−I/II上清スクリーニングを、アイソタイプによって分けた。表4に示すように、IgG2アイソタイプの抗IGF−I/II抗体由来の上清(総数293)を、まず、放射標識IGF−Iに対してスクリーニングした。このスクリーニングに、まず、40%阻害のカットオフを適用し(すなわち40%以上を阻害するハイブリドーマ系統を選択し)、そしてIGF−IIに対する続くスクリーニングのため、111のヒットを選択した。111のヒットのうち、総数91の系統が、50%カットオフで、受容体に対するIGF−II結合を阻害することが見出された。IGF−IおよびIGF−II活性両方を50%中和する上清を取ることによって、総数71の最終ヒットを選択した。
【0154】
[0164]IgG4アイソタイプを発現するすべての上清(総数390)を、まず、放射標識IGF−IIに対してスクリーニングし、そして50%阻害のカットオフでの232のヒットを、続いて、IGF−Iに対してスクリーニングした。総数90の系統が、50%カットオフで、受容体に対するIGF−I結合を阻害可能であった。IgG2(71)およびIgG4(90)に対するヒットを合わせた後、IGF−IおよびIGF−IIを50%以上阻害する、総数161の系統が得られた。
【0155】
[0165]結論として、683の元来の上清から、IGF−IまたはIGF−IIいずれかを用いた最初のスクリーニングから、343(111のIgG2および232のIgG4、50.2%)を選択した。50%阻害の全体のカットオフ基準で、IGF−IRに対するIGF−IおよびIGF−II結合の両方を遮断可能な、総数161の最終ヒットが得られた(元来の系統の23.6%)。
【0156】
表4.抗IGF−I/II消耗上清スクリーニング要約(50%カットオフ)
【0157】
【表4】

【0158】
実施例5
高抗原ELISAおよび限定抗原ELISA
[0166]実施例4で選択した161のハイブリドーマ系統の間の相対的アフィニティー、ならびに各系統の上清中の抗体濃度を決定するため、高抗原(HA)および限定抗原(LA)ELISAアッセイを行った。HA定量化アッセイでは、高い抗原濃度および一晩インキュベーションが、抗体アフィニティーの効果を限定し、各試料中に存在する抗原特異的抗体の相対量の定量化を可能にする。LAアッセイにおける低抗原濃度は、抗体濃度の効果を限定し、そして相対アフィニティーに基づいた、抗体のランク付けを生じる。
【0159】
高抗原定量化アッセイ
[0167]ELISAプレートを、比較的多量の500ng/ml(67nM)のIGF−IまたはIGF−II抗原(R&D Systems, Inc.、ミネソタ州ミネアポリス、それぞれ、カタログ番号291−G1および292−G2)のいずれかでコーティングした。抗体含有ハイブリドーマ上清を、1:50〜1:12200の希釈範囲に渡って用量設定した。既知のIGF特異的抗体の対照(R&D Systems, Inc.、ミネソタ州ミネアポリス、それぞれ、カタログ番号MAB291およびMAB292)を用いて、アッセイの直線範囲を定義した。次いで、直線範囲内のデータを用いて、各用量設定試料中のIGF特異的抗体の相対的濃度を得た。
【0160】
限定抗原アッセイ
[0168]マイクロタイタープレートに低濃度の抗原をコーティングした。50マイクロリットル(50μl)のIGF−IまたはIGF−IIを、1%スキムミルク/1xPBS pH7.4/0.5%アジド中、64、32、16、8、4、および2ng/ml(8.5nM〜0.26nMの範囲に渡る)で、各ウェルに添加した。プレートを30分間インキュベーションした。
【0161】
[0169]プレートを水で4回(4X)洗浄し、そして1%スキムミルク/1xPBS pH7.4/0.5%アジドで1:25に希釈した試験抗体を含有するハイブリドーマ上清50μlをウェルに添加した。プレートをプラスチックラップまたはパラフィンフィルムで固く包み、そして室温で振盪しながら一晩インキュベーションした。
【0162】
[0170]翌日、すべてのプレートを5回(5X)洗浄し、そして1%ミルク、1xPBS pH7.4中、0.5μg/mlの濃度で、50μlのヤギ抗ヒトIgG Fc HRPポリクローナル抗体を各ウェルに添加した。プレートを室温で1時間インキュベーションした。
【0163】
[0171]プレートを少なくとも5回洗浄した(水道水で5x)。50マイクロリットル(50μl)のHPR基質TMBを各ウェルに添加し、そしてプレートを30分間インキュベーションした。50μlの1Mリン酸を各ウェルに添加することによって、HRP−TMB反応を停止した。プレートの各ウェルに関して、450nmで、光学密度(吸光度)を測定した。
【0164】
データ分析
[0172]試験抗体のOD値を平均し、そして範囲を計算した。最高シグナルおよび許容しうる低い標準偏差を持つ抗体を、参照抗体よりも、抗原に対する高いアフィニティーを有する抗体として選択した。
【0165】
[0173]次いで、分析を行って、中和(実施例4)、強度(HA ELISAおよびリガンド結合の高い阻害によって決定されるような抗体低濃度)、アフィニティー(LA ELISA)のいずれか、または3つの基準すべてに基づいて、上位の抗体を選択した。この分析から、25の抗体のリストを生成した。IGF−IおよびIGF−II結合の平均阻害%、ならびにIGF−IおよびIGF−II両方に対するアフィニティーに基づく別個の分析によって、25の抗体の第二のリストを生成した。16の抗体が両方のリストに共通しており、40の抗体の最終リストが生じた。これらの40の抗体のLAおよびHA結果を表5に要約する。これらの40の系統をクローニングのために選択し、このうち33のクローニングに成功した。
【0166】
表5.上位40の抗体に関する高抗原および限定抗原ELISAの結果
【0167】
【表5−1】

【0168】
【表5−2】

【0169】
実施例6
IGFBP−3に結合したIGF−IおよびIGF−IIに対する抗体の結合
[0174]IGF−Iおよび−IIは、大部分、IGF結合タンパク質(IGFBP)に結合して、血清中を循環する。1つの目的は、抗IGF抗体のin vivo枯渇を回避するために、IGFBPとの複合体中にあるIGFを認識しない抗体を同定することであった。IGF−IまたはIGF−IIがIGFBP−3と複合体形成している際のこれらの増殖因子を認識する抗体の性質決定のため、以下のアッセイ形式を開発した。具体的には、このアッセイは、IGF/抗IGF抗体複合体中のIGFが、IGFBP−3に結合する能力を試験した。
【0170】
抗体が仲介する、IGFBP−3によるIGF捕捉の遮断
[0175]前述の実施例由来のIGF−IまたはIGF−IIおよびIGF特異的抗体の間で複合体があらかじめ形成されているアッセイを開発した。AlphaScreenアッセイ技術(PerkinElmer)を用いて、これらの複合体が、IGFBP−3に結合する能力を試験した。384ウェルプレートにおいて、10μlの1:20希釈したハイブリドーマ上清を、10μlの3nMビオチン化IGF−IまたはIGF−IIと混合して、そして室温で2時間インキュベーションした。ストレプトアビジンでコーティングしたAlphaScreenドナービーズおよびIGFBP−3にカップリングしたAlphaScreenアクセプタービーズ(ハイブリドーマ上清の1/60最終希釈に対して、混合物10μl)を添加し、そしてインキュベーションをさらに1時間続けた。次いで、Packard Fusionプレート読取装置中で、試料を読み取った。
【0171】
[0176]商業的に入手可能な抗IGFモノクローナル抗体M23(Cell Sciences)、05−172(Upstate)およびMAB291(R&D Systems)は、低ng/ml〜100ng/mlの範囲のIC50値で、IGFBPに対するIGFの結合を阻害する、異なる能力を示した。IGFBP−3に対するIGF−I結合の阻害は、最大10μg/mlの無関係なマウスIgGおよびヒトIgGではまったく観察されず、抗IGF−I効果が特異的であることが示唆された。商業的に入手可能なモノクローナル抗体05−166(Upstate)およびMAB292(R&D)は、IGF−II/IGFBP−3相互作用の阻害に関して、アフィニティーの有意な相違を示した。これらの実験は、抗IGF mAbが、IGFBP−3へのIGFの結合を遮断可能であることを示し、ハイブリドーマ系統由来の精製抗体をスクリーニングするために使用可能なアッセイを提供した。次の工程は、アッセイシグナルに対する、消耗したハイブリドーマ培地の影響を評価することであった。
【0172】
[0177]ハイブリドーマ培地および抗KLHハイブリドーマ消耗上清の連続希釈をアッセイ系で試験した。IGFI/IIとのプレインキュベーションのための調製中、ハイブリドーマ上清を1:10に希釈した際(アッセイ中の最終希釈は1:60であった)、アッセイ結果には、培地の影響はほぼなかった。これらのデータに基づいて、IGFとのプレインキュベーションのため、ハイブリドーマ上清を希釈し、アッセイにおける好ましい1/60希釈の最終希釈を提供した。
【0173】
[0178]IGF−IおよびIGF−II結合に関して陽性である683の消耗上清を、IGFBP−3に対するIGFの結合を阻害する能力に関して調べた。IGF−Iに対する50%を超える阻害およびIGF−IIに対する60%を超える阻害をカットオフ基準として用いた。これらのカットオフを用いたスクリーニングの要約結果を表6に示す。
【0174】
表6.スクリーニングにおいて同定された陽性ヒットの数
【0175】
【表6】

【0176】
[0179]AlphaScreenアッセイを用いたIGFBP競合アッセイによって、683の試験した上清の中で、IGFBP−3に対するIGF−I結合を阻害する87の試料、およびIGFBP−3に対するIGF−II結合を阻害する129の試料が同定された。51の試料がIGF−IおよびIGF−IIの二重競合を示した。しかし、IGFおよびIGFBP複合体が、大部分、あらかじめ形成されているであろう、in vivoでの抗体の機能または振る舞いをより注意深く再現するため、実施例8に記載するようなさらなるアッセイを行った。
【0177】
実施例7
BIACORE分析を用いた抗IGF−IおよびIGF−II抗体アフィニティーの決定(低解像度スクリーニング)
34の精製モノクローナル抗体の低解像度スクリーニング
[0180]標識不含表面プラズモン共鳴(SPR)、またはBiacoreを利用して、抗原に対する抗体アフィニティーを測定した。この目的のため、ルーチンのアミン・カップリングを用いて、CM5 Biacoreチップ上の高密度ヤギ抗ヒト抗体表面を調製した。100μg/ml BSAを含有するHBS−P泳動緩衝液中、すべてのmAbをおよそ20μg/mlに希釈した。mAbベースラインを安定化させるため、30秒間の接触時間を用いて、10μl/分で、各mAbを別個の表面上に捕捉した。
【0178】
[0181]IGF−Iを23℃で120秒間、すべての表面上に335.3nMで注入し、その後、流速100μl/分を用いて、5分間解離させた。上述のHBS−P泳動緩衝液中で、試料を調製した。すべての捕捉/注入周期後、146mMリン酸(pH1.5)の1回15秒間のパルスで、表面を再生した。114.7nM IGF−IIを用いて、各抗体に関して、同じ捕捉/注入周期を反復した。対照フローセル由来のシグナルを減じ、そして各抗原注入直前に注入した緩衝液のベースライン・ドリフトを減じることによって、34のmAbに関するドリフト補正した結合データを用意した。CLAMPを用いて、1:1相互作用モデルにデータを広範囲で適合させて、結合動力学を決定した(David G. MyszkaおよびThomas Morton(1998)“CLAMP(c): a biosensor kinetic data analysis program,” TIBS 23, 149−150)。データを適合させる際に、物質移動係数を用いた。25℃でのIGF−IおよびIGF−IIの結合の動力学分析結果を以下の表7に列挙する。最高から最低のアフィニティーに、mAbをランク付けした。
【0179】
表7.34のモノクローナル抗体のIGF−IおよびIGF−II低解像度BIACOREスクリーニング
【0180】
【表7−1】

【0181】
【表7−2】

【0182】
IGF−I結合データ
[0182]大部分のmAbは、1:1モデルに適度によく適合する。mAb 4.90.2および4.141.1は、非常に複雑なデータによって、特徴付けられた。1:1モデル適合からは、意味がある動力学定数が概算不能であったため、表7中、これらのmAbにアスタリスクをつけて列挙した。後者の解離速度(off−rate)相は、これらのmAbの両方に関して非常に遅いようであり(少なくとも1x10−5−1)、このことから、これらの2つのmAbは、療法化合物として有用となりうる。
【0183】
IGF−II結合データ
[0183]大部分のmAbは、1:1モデルに適度によく適合する。kを適切に概算するのに十分な崩壊データがないため、mAb7.159.2に関する解離速度を、1x10−5−1で一定に保持した。
【0184】
[0184]本実施例において、低解像度Biacore研究を半定量的ランク付けアプローチとして設計する。個々のmAbの特徴的な速度定数およびアフィニティーに関して、より正確な情報を得るため、実施例8に記載するように、高解像度Biacore研究を行った。
【0185】
実施例8
BIACORE分析を用いた、抗IGF−IおよびIGF−II抗体アフィニティーの決定(高解像度スクリーニング)
[0185]高解像度Biacore分析を行って、抗原に対する抗体アフィニティーをさらに測定した。mAb 7.159.2、7.234.2、7.34.1、7.251.3、および7.160.2を各々捕捉し、そしてIGF−IおよびIGF−II抗原を各々、ある濃度範囲に渡って注入した。生じた結合定数を、表8に列挙する。
【0186】
表8.低および高解像度BIACORE分析によって決定した抗IGF抗体アフィニティー
【0187】
【表8】

【0188】
[0186]したがって、本発明の態様には、IGF−IIに優先的に結合するが、IGF−Iと交差反応し、IGF−IIに対する結合が、IGF−Iに対するより高いアフィニティーである抗体が含まれうる。例えば、抗体は、IGF−Iに対するより、2.5倍高いアフィニティーでIGF−IIに結合可能である。特定の態様において、抗体は、IGF−Iに対するより、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、または少なくとも150倍、高いアフィニティーでIGF−IIに結合可能である。
【0189】
あらかじめ形成されたIGF−I/GFBP−3複合体のスクリーニング
[0187]実施例6に記載するIGFBP競合アッセイによって、683の試験した上清の中で、IGFBP−3に対するIGF−I結合を阻害する87の試料、およびIGFBP−3に対するIGF−II結合を阻害する129の試料が同定された。51の試料が、IGF−IおよびIGF−IIの二重競合を示した。しかし、IGFおよびIGFBP複合体が、大部分、あらかじめ形成されているであろう、in vivoでの抗体の機能または振る舞いをより注意深く再現するため、選択した抗体に対して、以下のBiacoreアッセイを行った。
【0190】
[0188]6つの選択した抗体をスクリーニングして、これらがIGFBPとの複合体中のIGF−IまたはIGF−IIに結合するかどうかを決定した。Biacore 2000装置で、ルーチンのアミン・カップリングを用い、2つのCM5 Biacoreチップ上で、高い表面容量(5,400〜12,800RU)まで、6つの選択したmAbすべて(7.159.2、7.146.3、7.34.1、7.251.3、7.58.3、および無関係の対照抗体ABX−MA1)を共有固定した。各CM5チップ上の1つのフローセルを活性化し、そして対照表面として使用するため、ブロッキングした(mAbをまったく固定しなかった)。
【0191】
[0189]次に、IGF−IおよびIGFBP−3をHepes緩衝生理食塩水pH7.4、0.005%P−20、100μg/ml BSA(HBS−P)中でともに混合して、それぞれ、193nMおよび454nMの最終溶液を作製した。IGF−IIおよびIGFBP−3をともに混合して、それぞれ、192nMおよび455nMの最終溶液を作製した。これらの条件下で、IGF−IおよびIGF−IIは、IGFBP−3と99.97%、複合体形成した。これらの条件下で、数分以内に平衡に到達した。複合体形成したIGF−I/IGFBP−3およびIGF−II/IGFBP−3の溶液を、40μl/分および23℃で、多様なmAb表面上に180秒間流し、そして120秒間、解離を追跡した。次いで、複合体形成していないIGF−IおよびIGF−IIを、それぞれ、193nMおよび192nMで、各表面上に流し、そしてIGFBP−3を454nMで各表面上に流した。10mMグリシン、pH2.0の20秒間のパルスで、表面を再生した。
【0192】
[0190]固定したmAbを含む表面由来の結合シグナルから、バルクの屈折率変化およびブランク表面に対する分析物のいかなる非特異的結合シグナルも減じることによって、プログラムScrubberを用いて、センサーグラムをプロセシングした。ブランク補正減算後、特定のフローセル上の緩衝液注入に関して、平均センサーグラムを減じることによって、センサーグラムの2回目の参照処理を行った。この「二重参照」は、特定のフローセル上に存在するいかなるシステムエラーに関しても、mAb結合センサーグラムを補正した。
【0193】
[0191]複合体形成したおよび複合体形成していないIGF−I/IGFBP−3およびIGF−II/IGFBP−3は、結合した抗体にかなり弱く結合し、非特異的結合相互作用の大まかな概算は、陰性対照ABX−MA1を含めた、6つのmAbすべてに関して、K>1μMであった(表9を参照されたい)。しかし、ABX−MA1を用いると、IGF−I/II結合は弱く、そしてこれらの3つの分析物すべてで、非特異的結合相互作用が起こっていることが示された。一見したところ、IGF/IGFBP−3複合体は、IGFBP−3単独よりも、これらのmAbすべてにわずかにより強く結合するようである。しかし、IGF−I、IGF−IIおよびIGBP−3はどちらも、両方が一緒に結合した際、これらのmAb自体に非特異的に結合するようであるため、これが、さらに「より粘着性の」非特異的結合タンパク質複合体を生じ、このことは、複合体に関する、より高い結合シグナルを説明する。IGF−I/II/IGFBP−3複合体およびIGFBP−3は、対照表面に有意に結合し、このこともまた、これらの2つのタンパク質の非特異性を示す。しかし、以下のセンサーグラムでは、上述のように、データプロセシング中、最初の参照中に、このバックグラウンド結合を減じる。
【0194】
[0192]この実験は、試料のうち51が、IGFBP3に対するIGF−I/IIの結合を阻害することが先に示された(実施例6)が、抗体がまた、in vivoでIGF/IGFBP複合体に結合可能であることを示唆する。
【0195】
表9.6つのmAbに対するIGF−I/IGFBP−3およびIGF−II/IGFBP−3結合に関する結合要約
【0196】
【表9】

【0197】
+、mAbに対するIGF−IまたはIGF−IIに比較してわずかな結合
++、mAbに対するIGF−IまたはIGF−IIに比較して中程度の結合
+++、mAbに対するIGF−IまたはIGF−II結合に比較して強い結合
これらの評価は、これらの相互作用に関するKを示さない。
【0198】
実施例9
BIACORE分析を用いた抗インスリン抗体アフィニティーの決定(低解像度スクリーニング)
[0193]ヒト・インスリンに対するmAbのアフィニティーを測定することによって、IGF−I/IIに対する抗体の交差反応性をさらに調べた。IGF−I/II抗体をCM5 Biacoreチップに固定し、そして結合速度(on−rate)および解離速度を決定するため、溶液中のインスリンを注入した。この実験中、7.234.2、7.34.1、7.159.2、7.160.2、および7.251.3を含む、5つのmAbを試験した。泳動緩衝液中、502nMに希釈したインスリンを、すべての捕捉表面上に注入した。
【0199】
[0194]502nMインスリンで、mAbのいずれに対しても、インスリン結合はまったく観察されなかった。これらの結果は、インスリンとIGF−I/II mAbの見かけの交差反応性がまったくないことを示唆した。
【0200】
実施例10
抗体のビニング
[0195]エピトープ・ビニングを行って、抗IGF−I/II抗体のいずれが、互いに交差競合するか、そしてしたがってIGF−I/II上の同じエピトープに結合する可能性があるかを決定した。ビニング法は、米国特許出願20030175760に記載され、Jiaら, J. Immunol. Methods, (2004) 288:91−98にも記載され、どちらもその全体が本明細書に援用される。簡潔には、Luminexウェブサイト上に提供されるタンパク質カップリングプロトコルにしたがって、Luminexビーズをマウス抗huIgG(Pharmingen #555784)とカップリングした。ビーズを光から保護しながら、以下の方法を用いて、未知の一次抗体にカップリングするために、あらかじめカップリングしたビーズを調製した。未知の上清各々に関して、個々の試験管を用いた。以下の式を用いて、必要な上清の体積を計算した:(nX2+10)x50μl(式中、n=試料総数)。このアッセイ中、0.1μg/mlの濃度を用いた。ビーズストックを穏やかにボルテックスし、そして上清中で希釈して、ウェルあたり50μl中、2500の各ビーズまたは0.5X10ビーズ/mlの濃度にした。
【0201】
[0196]暗所中、室温で一晩、振盪装置上で、試料をインキュベーションした。
[0197]ウェルあたり200μlの洗浄緩衝液を添加し、次いで、この緩衝液を吸引することによって、フィルタープレートをあらかじめ湿らせた。50μlの各ビーズをフィルタープレートの各ウェルに添加した。100μl/ウェルの洗浄緩衝液を添加して、そして吸引することによって、試料を一度洗浄した。抗原および対照を50μl/ウェルでフィルタープレートに添加した。プレートを覆い、振盪装置上で、暗所で1時間インキュベーションし、そして次いで、試料を3回洗浄した。次いで、50μl/ウェルで、未知の二次抗体を添加した。一次抗体に関しては、0.1μg/mlの濃度を用いた。次いで、プレートを暗所中、室温で2時間、振盪装置上でインキュベーションし、そして次いで、試料を3回洗浄した。50μl/ウェルの1:500希釈したビオチン化マウス抗ヒトIgG(Pharmingen #555785)を添加し、そして試料を室温で振盪しながら、暗所中、1時間インキュベーションした。
【0202】
[0198]試料を3回洗浄した。1:1000希釈の50μl/ウェルのストレプトアビジン−PEを添加し、そして室温で振盪しながら、暗所中、15分間インキュベーションした。Luminex 100上で、2回の洗浄周期を実行した後、試料を3回洗浄した。各ウェル中の内容物を80μlのブロッキング緩衝液中に再懸濁した。試料を数回ピペッティングして注意深く混合し、ビーズを再懸濁した。次いで、Luminex 100上で試料を分析した。結果を以下の表10に示す。
【0203】
表10.機能アッセイにおいて陽性である上位34のIGF−I/II抗体に関するビン
【0204】
【表10】

【0205】
実施例11
抗IGF−I/II抗体の構造分析
[0199]いくつかの抗体の可変重鎖および可変軽鎖を配列決定して、DNA配列を決定した。各ガンマ鎖およびカッパ鎖の組み合わせに関して、ヌクレオチドおよびアミノ酸配列とともに、配列リスト中に、抗IGF−I/II抗体に関する完全配列情報を提供する。可変重鎖配列を分析して、VHファミリー、D領域配列およびJ領域配列を決定した。次いで、配列を翻訳して、一次アミノ酸配列を決定し、そして生殖系列VH、DおよびJ領域配列に比較して、体細胞超変異を評価した。
【0206】
[0200]生殖系列遺伝子に対するこれらの抗体の配列の並列を以下の表に示す。表11は、抗体重鎖領域を、その同族(cognate)生殖系列重鎖領域に比較した表である。表12は、抗体カッパ軽鎖領域を、その同族生殖系列軽鎖領域に比較した表である。生殖系列からの突然変異を、新規アミノ酸として示す。
【0207】
[0201]免疫グロブリン鎖の可変(V)領域は、多数の生殖系列DNAセグメントによってコードされ、これは、B細胞発生中、連結されて、機能する可変領域になる(VDJまたはV)。IGF−I/IIに対する抗体応答の分子および遺伝子多様性を詳細に研究した。これらのアッセイは、抗IGF−I/II抗体に特異的ないくつかの点を明らかにした。
【0208】
[0202]IGF−I/IIに特異的な5つの個々の抗体の分析の結果、抗体が3つの異なる生殖系列VH遺伝子に由来し、このうち4つがVH4ファミリーに由来し、2つの抗体がVH4−39遺伝子セグメントに由来すると決定された。表11および12は、この分析の結果を示す。
【0209】
[0203]各ハイブリドーマから収集したシスタークローンの間で、アミノ酸配列が同一であることを認識すべきである。例えば、mAb7.159.2の重鎖および軽鎖配列は、mAb7.159.1に関して表11および12に示す配列と同一である。
【0210】
[0204]本発明の抗体の重鎖CDR1は、表11に開示するような配列を有する。表11に開示するCDR1は、Kabatの定義のものである。あるいは、FR1配列の最後の5残基を含むように、別の定義を用いて、CDR1を定義してもよい。例えば、抗体7.159.1に関しては、FR1配列は、QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKAS(配列番号93)であり、そしてCDR1配列は、GYTFTSYDIN(配列番号94)であり;抗体7.158.1に関しては、FR1配列は、QLQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVS(配列番号95)であり、そしてCDR1配列は、GGSIRSSSYYWG(配列番号96)であり;抗体7.234.1に関しては、FR1配列は、QLQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVS(配列番号97)であり、そしてCDR1配列は、GGSINSSSNYWG(配列番号98)であり;抗体7.34.1に関しては、FR1配列は、QVQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVS(配列番号99)であり、そしてCDR1配列は、GGSISSYYWS(配列番号100)であり;そして抗体7.251.3に関しては、FR1配列は、QVQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVS(配列番号101)であり、そしてCDR1配列は、GGSISSYYWS(配列番号102)である。
【0211】
[0205]特定の抗体が、アミノ酸レベルで、それぞれの生殖系列配列と異なる場合、抗体配列を突然変異させて生殖系列配列に戻してもよいこともまた、認識すべきである。こうした修正突然変異は、標準的分子生物学的技術を用いて、1つ、2つ、3つまたはそれより多い位で、あるいは突然変異した位のいかなる組み合わせで起こることも可能である。限定されない例として、表12は、mAb 7.34.1の軽鎖配列(配列番号12)が、FR1領域中のProからAlaの突然変異(突然変異1)を通じて、そしてFR2領域中のPheからLeuの突然変異(突然変異2)を通じて、対応する生殖系列配列(配列番号80)と異なることを示す。したがって、mAb 7.34.1の軽鎖をコードするアミノ酸配列またはヌクレオチド配列を修飾して、突然変異1を変化させて、突然変異1の部位で、生殖系列配列を生じてもよい。さらに、mAb 7.34.1の軽鎖をコードするアミノ酸またはヌクレオチド配列を修飾して、突然変異2を変化させて、突然変異2の部位で、生殖系列配列を生じてもよい。さらになお、mAb 7.34.1の軽鎖をコードするアミノ酸またはヌクレオチド配列を修飾して、突然変異1および突然変異2の両方を変化させて、突然変異1および突然変異2の両方の部位で、生殖系列配列を生じてもよい。
【0212】
表11.重鎖分析
【0213】
【表11】

【0214】
ハッチ(hatch)記号(#)は、生殖系列中のスペースを示し、そして表に示す抗体配列との適切な並列を示すために用いられる。
**上記表に示す生殖系列配列は、並列目的のためであり、そして各個々の抗体領域は、in vivoで、免疫グロブリン生殖系列DNAセグメントの可変領域内のそれ自身の位置に存在することを認識すべきである。
【0215】
表12.軽鎖分析
【0216】
【表12】

【0217】
ハッチ記号(#)は、生殖系列中のスペースを示し、そして表に示す抗体配列との適切な並列を示すために用いられる。
**上記表に示す生殖系列配列は、並列目的のためであり、そして各個々の抗体領域は、in vivoで、免疫グロブリン生殖系列DNAセグメントの可変領域内のそれ自身の位置に存在することを認識すべきである。
【0218】
実施例12
NIH3T3細胞で異所性に発現されたhIGF−IRの、IGF−IおよびIGF−II誘導性リン酸化の阻害
[0206]IGFリガンドは、IGF−IR受容体中の受容体チロシンキナーゼ活性を活性化することによって増殖および抗アポトーシス機能を発揮する。抗IGF−I/II抗体が、IGF−IRのIGF誘導性リン酸化を阻害する能力に関して評価するため、異所性にhIGF−IRを発現しているNIH3T3細胞を以下のアッセイで用いた。
【0219】
[0207]ヒトIGF−IRを異所性に発現しているNIH3T3細胞を、ウェルあたり10,000細胞の密度で96ウェルプレート中に植え付け、そして飢餓培地(炭でストリップ処理(stripped)した1%FBS)中で一晩インキュベーションした。翌日、増殖培地を廃棄し、ウェルをPBSで穏やかに2回洗浄し、そして100μlの血清不含培地(0%FBS)を添加して細胞を飢餓させた。多様な抗体濃度と37℃で60分間プレインキュベーションした、IGF−1(10nM)またはIGF−II(10nM)のいずれかを含有し、0.05%BSAを含む、100μlの血清不含培地を、1〜2時間後に、3つ組で細胞に添加した。37℃で10分間、刺激を起こすのを可能にし、刺激後、培地を取り除き、そして100μlのPBS/3%BSA中の3.7%ホルムアルデヒドを各ウェルに添加し、そして室温で20分間インキュベーションした。次いで、細胞をPBSで2X洗浄し、そして100μlの透過化緩衝液(3%BSA/PBS中の0.1%Triton−X)を各ウェルに添加した。これを室温で10分間インキュベーションするのを可能にし、廃棄し、そして100μlのPBS/3%BSA中の0.6%過酸化水素を添加して、いかなる内因性ペルオキシダーゼ活性も不活性化した。20分間の室温インキュベーション後、細胞をPBS/0.1%Tween−20で3X洗浄し、そして100μlのPBS/0.1%Tween−20中の10%FBSを室温で1時間添加することによって、ブロッキングした。次いで、ブロッキング緩衝液を取り除き、そして1μg/mlの50μl抗ホスホIGFIR抗体(カタログ番号44−804、BioSource)を、10%FBS/PBS−T中の各ウェルに添加した。2時間の室温インキュベーション後、細胞を、各洗浄の間、5分間浸して、PBSTで3X洗浄した。洗浄後、ブロッキング緩衝液中で1:250に希釈した50μl/ウェルのヤギ抗ウサギIgGFc−HRP二次抗体を各ウェルに添加した。1時間の室温インキュベーション後、前のように、細胞をPBSTで5分間、3X洗浄し、そして軽く叩いて乾燥させた。次いで、50μlのECL試薬(DuoLux)を添加し、そしてRLUを直ちに読み取った。
【0220】
[0208]32の抗体系統をスクリーニングし、そして各抗原に関して、2つの独立のアッセイを行った。上位10の抗体に関する結果を以下の表13に要約する。
表13.NIH3T3細胞におけるIGF依存性IGF−IRリン酸化の阻害の要約
【0221】
【表13】

【0222】
これらのアッセイは、IGF−IおよびIGF−IIに関するmAb KDが与えられれば、抗原限定条件下で行うことも可能であった。
実施例13
hIGF−IRでトランスフェクションしたNIH3T3細胞のIGF−IおよびIGF−II誘導性増殖の阻害
[0209]上に論じるように、IGF−I/II抗体を中和するための基準の1つは、IGF誘導性増殖を阻害する能力である。IGF誘導性増殖を阻害する能力に関して抗体を評価するため、hIGF−IRを異所性に発現しているNIH3T3細胞を以下のアッセイに用いた。
【0223】
[0210]hIGF−IRを異所性に発現しているNIH3T3細胞を、ウェルあたり5000細胞の密度で、96ウェルプレート中に植え付け、そして飢餓培地(炭でストリップ処理した1%FBS)中で一晩培養した。翌日、増殖培地を廃棄し、ウェルを血清不含培地で穏やかに2回洗浄し、そして100μlの血清不含培地を添加して細胞を飢餓させた。多様な抗体濃度と37℃で30分間プレインキュベーションした、15ng/ml IGFIまたは50ng/ml IGFIIを含有する100μlの飢餓培地を、2つ組または3つ組で細胞に添加した。20時間インキュベーションした後、細胞をBrdUで2時間パルス処理し、そしてRocheの細胞増殖ELISAキット(Roche、カタログ番号1 647 229)を用いて、取り込み(増殖)の度合いを定量化した。
【0224】
[0211]総数32の抗体系統をスクリーニングし、そして各抗原に関して、2つまたは3つの独立のアッセイを行った。上位10の抗体に関する結果を以下の表14に要約する。
【0225】
表14.NIH3T3/hIGF−IR細胞のIGF依存性増殖の阻害の要約
【0226】
【表14】

【0227】
これらのアッセイは、IGF−IおよびIGF−IIに関するmAb KDが与えられれば、抗原限定条件下で行うことも可能であった。
実施例14
BxPC3ヒト膵臓腫瘍細胞で発現されるhIGF−IRのIGF−IおよびIGF−II誘導性リン酸化の阻害
[0212]IGF−I/IIは、IGF−IR受容体において、受容体チロシンキナーゼ活性を活性化することによって、増殖および抗アポトーシス機能を発揮する。抗体がIGF−IRのIGF誘導性リン酸化を阻害する能力を評価するため、内因性hIGF−IRを発現するBxPC3ヒト膵臓腫瘍細胞を以下のアッセイに用いた。
【0228】
[0213]BxPC3細胞をウェルあたり55,000細胞の密度で96ウェルプレート中に植え付け、そして通常の増殖培地中で一晩インキュベーションした。翌日、増殖培地を廃棄し、ウェルを血清不含培地で穏やかに2回洗浄し、そして100μlの血清不含培地を添加して細胞を飢餓させた。24時間後、培地を廃棄し、そして細胞を血清不含培地で穏やかに1回洗浄した。IGF−I(20ng/ml)またはIGF−II(75ng/ml)のいずれかを含有し、0.05%BSAを含む血清不含培地を、多様な抗体濃度と37℃で30分間プレインキュベーションして、そして次いで、100μlを3つ組で細胞に添加した。プレートを37℃で15分間インキュベーションし、そして続いて冷PBSでリンスした。100μlの溶解緩衝液をウェルに添加し、そしてプレートを4℃で30分間インキュベーションした。溶解物を2000rpm、4℃で10分間回転して落とし、そして上清を収集した。Duosetヒト・リンIGF−IR ELISAキット(R&D Systems、カタログ番号DYC1770)を用いて、IGF−IRリン酸化を定量化した。
【0229】
[0214]10の抗体系統をスクリーニングし、そして各抗原に関して、2つの独立のアッセイを行った。結果を以下の表15に要約する。
表15.IGF依存性IGF−IRリン酸化の阻害の要約
【0230】
【表15】

【0231】
最後の3つの抗体に関しては333nM。
N.D.:未決定
実施例15
BxPC3ヒト膵臓腫瘍細胞のIGF−IおよびIGF−II誘導性増殖の阻害
[0215]上に論じるように、中和IGF抗体の基準の1つは、IGF誘導性増殖を阻害する能力である。IGF誘導性増殖を阻害する能力に関して、抗体を評価するため、内因性hIGF−IRを発現するBxPC3ヒト膵臓腫瘍細胞を以下のアッセイに用いた。
【0232】
[0216]BxPC3細胞をウェルあたり2000細胞の密度で96ウェルプレート中に植え付け、そして通常の増殖培地中で一晩培養した。翌日、増殖培地を廃棄し、ウェルを血清不含培地で穏やかに2回洗浄し、そして10μg/mlトランスフェリンおよび0.1%BSAを含む100μlの血清不含培地(アッセイ培地)を添加して細胞を飢餓させた。24時間後、培地を廃棄し、細胞を血清不含培地で穏やかに1回洗浄し、そして多様な抗体濃度と37℃で30分間プレインキュベーションした、20ng/ml IGFを含有する100μlのアッセイ培地を、2つ組または3つ組で細胞に添加した。プレートを3日間インキュベーションし、そしてCellTiter−Glo試薬(Promega)を用いて増殖を定量化した。
【0233】
[0127]10の抗体系統をスクリーニングし、そして各抗原に関して、2つまたは3つの独立アッセイを行った。結果を以下の表16に要約する。以下の機能データおよび実施例14からのデータに基づいて、4つの最適抗体を選択した。高いアッセイ変動性が観察されたため、IGF−I誘導性増殖アッセイデータを選択基準から排除した。
【0234】
表16.BxPC3ヒト膵臓腫瘍細胞のIGF依存性増殖の阻害の要約
【0235】
【表16】

【0236】
最後の3つの抗体に関しては333nM。
N.D.:未決定
実施例16
マウスIGF−I、IGF−IIおよびインスリンとの交差反応性の決定
[0218]1つの目的は、IGF−IおよびIGF−IIに特異的であるが、インスリンとの交差反応性をまったく持たない抗体を開発することであった。動物において、後の実験を行うため、抗体はまた、ネズミIGF−I/IIと交差反応しなくてはならないが、ネズミ・インスリンとは交差反応してはならない。したがって、ELISAアッセイを行って、選択した抗体が、ネズミIGFまたはインスリンと交差反応可能であるかどうかを決定した。
【0237】
[0219]表17に示すように、ELISAによって、マウスまたはラット・インスリンとの交差反応性に関して、上位10の抗体のうち5つを試験した。これらの抗体は、陰性対照抗体PK16.3.1に匹敵して、そして陽性対照抗ラット・インスリン抗体と対照的に、マウスまたはラット・インスリンとの交差反応性をまったく持たないことが、ELISAによって示された。
【0238】
表17.マウス・インスリンとの交差反応性
【0239】
【表17】

【0240】
実施例17
NIH3T3細胞で異所性に発現されたヒトIGF−IRのマウスIGF−IおよびIGF−II誘導性リン酸化の阻害
[0220]マウスIGF−IおよびIGF−IIと交差反応性を持つモノクローナル抗体が、IGF−IRのIGF誘導性リン酸化を阻害する度合いを決定するため、これらの抗体を、さらに試験した。hIGF−IR受容体を異所性に発現しているNIH3T3細胞を用いて、先に記載したように、このアッセイを実行した。このアッセイの結果を表18に要約する。
【0241】
[0221]ヒトIGF−IRを異所性に発現しているNIH3T3細胞を、ウェルあたり10,000細胞の密度で96ウェルプレート中に植え付け、そして飢餓培地(炭でストリップ処理した1%FBS)中で一晩インキュベーションした。翌日、増殖培地を廃棄し、ウェルをPBSで穏やかに2回洗浄し、そして100μlの血清不含培地(0%FBS)を添加して細胞を飢餓させた。多様な抗体濃度と37℃で60分間プレインキュベーションした、マウスIGF−1(10nM)またはIGF−II(10nM)(R&D Systemsm, Inc.、ミネソタ州ミネアポリス、それぞれ、カタログ番号791−MGおよび792−MG)のいずれかを含有し、0.05%BSAを含む、100μlの血清不含培地を、1〜2時間後に、3つ組で細胞に添加した。37℃で10分間、刺激を起こすのを可能にし、刺激後、培地を取り除き、そして100μlのPBS/3%BSA中の3.7%ホルムアルデヒドを各ウェルに添加し、そして室温で20分間インキュベーションした。次いで、細胞をPBSで2X洗浄し、そして100μlの透過化緩衝液(3%BSA/PBS中の0.1%Triton−X)を各ウェルに添加した。これを室温で10分間インキュベーションするのを可能にし、廃棄し、そして100μlのPBS/3%BSA中の0.6%過酸化水素を添加して、いかなる内因性ペルオキシダーゼ活性も不活性化した。20分間の室温インキュベーション後、細胞をPBS/0.1%Tween−20で3X洗浄し、そして100μlのPBS/0.1%Tween−20中の10%FBSを室温で1時間添加することによって、ブロッキングした。次いで、ブロッキング緩衝液を取り除き、そして1μg/mlの50μl抗ホスホIGFIR抗体(カタログ番号44−804、BioSource)を、10%FBS/PBS−T中の各ウェルに添加した。2時間の室温インキュベーション後、細胞を、各洗浄の間、5分間浸して、PBSTで3X洗浄した。洗浄後、ブロッキング緩衝液中で1:250に希釈した50μl/ウェルのヤギ抗ウサギIgGFc−HRP二次抗体を各ウェルに添加した。1時間の室温インキュベーション後、前のように、細胞をPBSTで5分間、3X洗浄し、そして軽く叩いて乾燥させた。次いで、50μlのECL試薬(DuoLux)を添加し、そしてRLUを直ちに読み取った。
【0242】
表18.hIGF−IRのマウスIGF誘導性リン酸化の阻害
【0243】
【表18】

【0244】
実施例18
ヌードマウスにおける、IGF−IIおよびIGF−1Rを発現しているNIH3T3細胞のin vivoの増殖阻害
[0222]in vivoでIGF−II誘導性増殖を阻害する能力に関して抗体を評価するため、以下の実験を行った。
【0245】
[0223]6〜8週齢の雌ヌードマウス(Charles River Laboratories、米国マサチューセッツ州ウィルミントンによって供給)に、5x10のClone 32細胞(ヒトIGF−IIおよびヒトIGF−1Rを異所性に過剰発現しているNIH3T3細胞)を皮下移植した。総接種体積330μl中、PBS中に細胞を懸濁した。モノクローナル抗体7.159.2、7.34.1および7.251.3での処置前に、腫瘍を100〜200mmに増殖させた。PBS中に懸濁した5または50mg/kgの抗体またはIgG2アイソタイプ対照抗体を、第22日から、9または12匹のマウスのランダム化した群に、4週間に渡って、毎週、腹腔内投与した。第22日から、11匹のマウスのさらなる群に、ビヒクル対照としてPBSを、4週間に渡って、毎週、腹腔内投与した。腫瘍サイズおよび体重を週2〜3回測定した。結果を図1および2に要約する。
【0246】
[0224]有意な腫瘍増殖阻害が観察され(図1を参照されたい)、いかなる群にも有意な体重喪失は起きなかった(図2を参照されたい)。抗体7.159.2、7.34.1および7.251.3は、5および50mg/kg/週で、Clone 32腫瘍の増殖を有意に阻害した(図1を参照されたい)。
【0247】
実施例19
ヌードマウスにおける、IGF−IおよびIGF−1Rを発現しているNIH3T3細胞のin vivoの増殖阻害
[0225]先の実施例では、抗体は、in vivoでIGF−II誘導性増殖を阻害することが示された。in vivoでIGF−I誘導性増殖を阻害する能力に関して抗体を評価するため、以下の実験を行った。
【0248】
[0226]雌ヌードマウス(AstraZenecaより供給される、Swiss nu/nuマウス系統に由来するAlderley Park系統)の左わき腹に、5x10生存P12細胞[ヒトIGF−IおよびヒトIGF−1Rを異所性に過剰発現しているNIH3T3細胞(Pietrzkowskiら, Cell Growth & Differentiation, 3, 199−205, 1992)]を皮下移植した。総接種体積0.1ml中、PBS中に細胞を懸濁した。同じスケジュールで、マウスあたり1.0mgのmAb 7.159.2、または等体積のPBSビヒクル(0.3ml)のいずれかを、NIH3T3細胞を移植した日から、週2回、動物2群(各々、n=10)に投与した。すべての用量を、i.p.経路を介して、腹腔内投与した。動物の体重を毎日測定し、そして腫瘍がひとたび確立されたら、ノギスを用いて、毎週2回、腫瘍測定を行った。卵形と仮定して、ノギス測定値から、すべての測定可能な腫瘍の体積を計算した。結果を図3に要約する。
【0249】
[0227]図3に示すように、1.0mg抗体/マウスの週2回のi.p.投与後、mAb 7.159.2で、有意な腫瘍増殖阻害が観察された。動物群のいずれでも、有意な体重喪失は観察されなかった。
【0250】
実施例20
ヒト患者における腫瘍細胞増殖の阻害
[0228]膵臓癌と診断されたヒト癌患者群をランダム化して治療群にする。各患者群を、本明細書記載のmAb 7.159.2、7.34.1または7.251.3の毎週の静脈内注射で治療する。各患者に、50mg/kg〜2,250mg/kgの範囲の抗体有効量を、4〜8週間投薬する。対照群には、標準的な化学療法措置のみを投与する。
【0251】
[0229]治療措置中および措置後、定期的に、核磁気共鳴画像法(MRI)によって腫瘍負荷を評価する。mAb 7.159.2、7.34.1または7.251.3での毎週の抗体治療を受けた患者は、抗体治療を受けていない患者に比較して、腫瘍サイズの有意な減少を示すことが見出される。何人かの治療患者では、腫瘍はもはや検出不能である。対照的に、対照群では腫瘍サイズは増加するか、または実質的に不変のままである。
【0252】
実施例21
ヒト患者における腫瘍細胞増殖の阻害
[0230]ヒト患者が悪性腫瘍と診断されている。この患者を、mAb 7.159.2の毎週の静脈内注射で8週間治療する。治療措置中および措置後、定期的に、核磁気共鳴画像法(MRI)によって腫瘍負荷を評価する。腫瘍サイズの有意な減少が見られる。
【0253】
実施例22
ヒト患者における末端肥大症の治療
[0231]成人男性が末端肥大症と診断されている。この患者を、mAb 7.34.1の週2回の(bi−weekly)の静脈内注射で、2年間に渡って治療する。その結果、患者は、末端肥大症の症状の有意な減少を経験する。
【0254】
実施例23
ヒト患者における乾癬の治療
[0232]成人女性が重度の乾癬と診断されている。この患者を、mAb 7.251.3の週2回の静脈内注射で、3年間に渡って治療する。その結果、患者は、乾癬の症状の有意な減少を経験する。
【0255】
実施例24
ヒト患者における骨粗鬆症の治療
[0233]成人女性が骨粗鬆症と診断されている。この患者を、mAb 7.159.2の週2回の静脈内注射で、1年間に渡って治療する。その結果、骨密度喪失の有意な減少がある。
【0256】
実施例25
ヒト患者におけるアテローム性動脈硬化症の治療
[0234]成人男性がアテローム性動脈硬化症と診断されている。この患者を、mAb 7.34.1の週2回の静脈内注射で、1年間に渡って治療する。その結果、患者は、狭心症などの、アテローム性動脈硬化症の症状の減少を経験する。
【0257】
実施例26
ヒト患者における再狭窄の治療
[0235]遮断された動脈を緩和するため、成人男性が血管形成術を受ける。血管形成術後、この患者を、mAb 7.251.3の週2回の静脈内注射で、1年間に渡って治療する。その結果、患者は、治療した動脈の再狭窄を経験しない。
【0258】
実施例27
ヒト患者における糖尿病の治療
[0236]成人女性が糖尿病と診断されている。この患者を、mAb 7.159.2の週2回の静脈内注射で、1年間に渡って治療する。その結果、糖尿病の症状が減少する。
【0259】
配列
[0237]サブクローニングされたハイブリドーマの配列を決定して、可変重鎖および可変軽鎖遺伝子両方に関して、ヌクレオチドおよびアミノ酸レベル両方で、一次構造を決定した。表1に列挙するような、IGF−IおよびIGF−IIに対するモノクローナル抗体の可変領域のヌクレオチドおよびポリペプチド配列を、配列表に提供する。
【0260】
参照による援用
[0238]特許、特許出願、論文、教科書等を含む、本明細書に引用するすべての参考文献、および該文献に引用される参考文献は、すでにそうでない度合いまで、その全体が本明細書に援用される。
【0261】
同等物
[0239]前述の記載した明細書は、当業者が本発明を実施可能となるのに十分であると見なされる。前述の説明および実施例は、本発明の特定の好ましい態様を詳述し、そして発明者らが意図する最適の様式を記載する。しかし、前述の記述がテキスト中でいかに詳細であるかに関わらず、本発明を多くの方式で実施してもよく、そして本発明は付随する請求項およびその任意の同等物にしたがって解釈されるべきであることが認識されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0262】
【図1】[0054]図1は、IgG2およびPBS対照に比較した、mAb 7.159.2、7.34.1、7.251.3を用いた、IGF−IIおよびIGF−IRを発現しているNIH3T3細胞(Clone 32細胞)のヌードマウスにおける異種移植片腫瘍増殖の阻害を示すグラフである。平均腫瘍体積をy軸上に示し、そして移植後の時間をx軸上に示す。
【図2】[0055]図2は、IgG2およびPBS対照に比較した、mAb 7.159.2、7.34.1、7.251.3で処置した、Clone 32異種移植片マウスにおける体重を示すグラフである。平均体重をy軸上に示し、そして移植後の時間をx軸上に示す。
【図3】[0056]図3は、PBS対照に比較した、mAb 7.159.2を用いた、IGF−IおよびIGF−IRを発現しているNIH3T3細胞(P12細胞)のヌードマウスにおける異種移植片腫瘍増殖の阻害を示すグラフである。平均腫瘍体積をy軸上に示し、そして移植後の時間(日付で示す)をx軸上に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インスリン様増殖因子I(IGF−I)に対する交差反応性を持って、インスリン様増殖因子−II(IGF−II)に優先的に結合し、そしてIGF−IおよびIGF−II活性を中和する、完全ヒト単離特異的結合タンパク質。
【請求項2】
IGF−Iに対するより、少なくとも2.5倍高いアフィニティーでIGF−IIに結合する、請求項1の特異的結合タンパク質。
【請求項3】
IGF−1Rを異所性に発現しているNIH3T3細胞において、IGF−I依存性IGF−I受容体リン酸化の阻害に関して、15nM以下のEC50を有する、請求項1の特異的結合タンパク質。
【請求項4】
IGF−1Rを異所性に発現しているNIH3T3細胞において、IGF−II依存性IGF−I受容体リン酸化の阻害に関して、5nM以下のEC50を有する、請求項1の特異的結合タンパク質。
【請求項5】
25nM以下のEC50で、組換えhIGF−IRを発現するNIH3T3細胞のIGF−II依存性増殖の70%より多くを阻害する、請求項1の特異的結合タンパク質。
【請求項6】
40nM以下のEC50で、組換えhIGF−IRを発現するNIH3T3細胞のIGF−I依存性増殖の70%より多くを阻害する、請求項1の特異的結合タンパク質。
【請求項7】
配列番号2、配列番号6、配列番号10、配列番号14および配列番号18からなる群より選択される可変重鎖配列を含むモノクローナル抗体との結合に関して競合する、請求項1の特異的結合タンパク質。
【請求項8】
前記モノクローナル抗体が、配列番号4、配列番号8、配列番号12および配列番号16からなる群より選択される可変軽鎖配列を含む、請求項7の特異的結合タンパク質。
【請求項9】
4nM未満のKで、IGF−Iに結合する、請求項1〜8のいずれか1項の特異的結合タンパク質。
【請求項10】
650pM未満のKで、IGF−Iに結合する、請求項1〜8のいずれか1項の特異的結合タンパク質。
【請求項11】
300pM未満のKで、IGF−IIに結合する、請求項1〜8のいずれか1項の特異的結合タンパク質。
【請求項12】
完全ヒト・モノクローナル抗体である、請求項1〜8のいずれか1項の特異的結合タンパク質。
【請求項13】
完全ヒト・モノクローナル抗体の結合断片である、請求項1〜8のいずれか1項の特異的結合タンパク質。
【請求項14】
前記結合断片が、Fab、Fab’またはF(ab’)およびFvからなる群より選択される、請求項13の特異的結合タンパク質。
【請求項15】
モノクローナル抗体7.251.3(ATCC寄託番号PTA−7422)である、請求項1〜8のいずれか1項の特異的結合タンパク質。
【請求項16】
モノクローナル抗体7.34.1(ATCC寄託番号PTA−7423)である、請求項1〜8のいずれか1項の特異的結合タンパク質。
【請求項17】
モノクローナル抗体7.159.2(ATCC寄託番号PTA−7424)である、請求項1〜8のいずれか1項の特異的結合タンパク質。
【請求項18】
配列番号6の配列を有する重鎖ポリペプチドを含む、請求項1〜8のいずれか1項の特異的結合タンパク質。
【請求項19】
配列番号8の配列を有する軽鎖ポリペプチドを含む、請求項1〜8のいずれか1項の特異的結合タンパク質。
【請求項20】
配列番号10の配列を有する重鎖ポリペプチドを含む、請求項1〜8のいずれか1項の特異的結合タンパク質。
【請求項21】
配列番号12の配列を有する軽鎖ポリペプチドを含む、請求項1〜8のいずれか1項の特異的結合タンパク質。
【請求項22】
配列番号14の配列を有する重鎖ポリペプチドを含む、請求項1〜8のいずれか1項の特異的結合タンパク質。
【請求項23】
配列番号16の配列を有する軽鎖ポリペプチドを含む、請求項1〜8のいずれか1項の特異的結合タンパク質。
【請求項24】
薬学的に許容されうるキャリアーと混合された、請求項1〜8のいずれか1項の特異的結合タンパク質。
【請求項25】
請求項1の特異的結合タンパク質をコードする核酸分子。
【請求項26】
請求項25の核酸分子を含むベクター。
【請求項27】
請求項26のベクターを含む宿主細胞。
【請求項28】
IGF−IIまたはIGF−Iタンパク質がインスリン増殖因子結合タンパク質に結合している際には、前記抗体がIGF−IIまたはIGF−Iタンパク質に特異的に結合しない、請求項12のヒト・モノクローナル抗体。
【請求項29】
患者試料における、インスリン様増殖因子−II(IGF−II)およびインスリン様増殖因子I(IGF−I)のレベルを測定する方法であって:
患者試料を提供し;
前記試料と請求項1の結合タンパク質を接触させ;そして
前記試料中のIGF−IおよびIGF−IIレベルを測定する
工程を含む、前記方法。
【請求項30】
患者試料が血液である、請求項29記載の方法。
【請求項31】
悪性腫瘍の治療のための薬剤の調製における請求項1〜8のいずれか1項の特異的結合タンパク質の使用。
【請求項32】
前記結合タンパク質が、完全ヒト・モノクローナル抗体である、請求項31の使用。
【請求項33】
前記悪性腫瘍が:黒色腫、非小細胞肺癌、神経膠腫、肝細胞(肝臓)癌、甲状腺腫瘍、胃癌、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、肺癌、膠芽細胞腫、子宮内膜癌、腎臓癌、結腸癌、膵臓癌、および扁平上皮癌からなる群より選択される、請求項31の使用。
【請求項34】
結合タンパク質が、mAb 7.251.3(ATCC寄託番号PTA−7422)またはmAb 7.34.1(ATCC寄託番号PTA−7423)またはmAb 7.159.2(ATCC寄託番号PTA−7424)である、請求項32の使用。
【請求項35】
前記薬剤が、抗体、化学療法剤、および放射性薬剤からなる群より選択される第二の抗新生物剤と組み合わせた使用のためのものである、請求項31の使用。
【請求項36】
前記薬剤が、慣用的な手術、骨髄幹細胞移植または末梢幹細胞移植と組み合わせたかまたはこれらに続く使用のためのものである、請求項31の使用。
【請求項37】
増殖因子依存性疾患の治療のための薬剤の調製における、請求項1〜8のいずれか1項の特異的結合タンパク質の使用。
【請求項38】
前記結合タンパク質が、完全ヒト・モノクローナル抗体である、請求項37の使用。
【請求項39】
抗体が、mAb 7.251.3(ATCC寄託番号PTA−7422)、mAb 7.34.1(ATCC寄託番号PTA−7423)、およびmAb 7.159.2(ATCC寄託番号PTA−7424)からなる群より選択される、請求項38の使用。
【請求項40】
増殖因子依存性疾患が:骨粗鬆症、糖尿病、および心臓血管疾患からなる群より選択される、請求項37の使用。
【請求項41】
哺乳動物において、悪性腫瘍を治療する方法であって:
悪性腫瘍の治療が必要な哺乳動物を選択し;そして
請求項1の特異的結合タンパク質の療法的有効用量を前記哺乳動物に投与する
工程を含む、前記方法。
【請求項42】
前記動物がヒトである、請求項41の方法。
【請求項43】
前記結合タンパク質が、完全ヒト・モノクローナル抗体である、請求項41の方法。
【請求項44】
前記悪性腫瘍が:黒色腫、非小細胞肺癌、神経膠腫、肝細胞(肝臓)癌、甲状腺腫瘍、胃癌、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、肺癌、膠芽細胞腫、子宮内膜癌、腎臓癌、結腸癌、膵臓癌、および扁平上皮癌からなる群より選択される、請求項41の方法。
【請求項45】
結合タンパク質が、mAb 7.251.3(ATCC寄託番号PTA−7422)、mAb 7.34.1(ATCC寄託番号PTA−7423)、およびmAb 7.159.2(ATCC寄託番号PTA−7424)からなる群より選択される、請求項41の方法。
【請求項46】
哺乳動物において、増殖因子依存性疾患を治療する方法であって:
増殖因子依存性疾患の治療が必要な哺乳動物を選択し;そして
請求項1の特異的結合タンパク質の療法的有効用量を前記哺乳動物に投与する
工程を含む、前記方法。
【請求項47】
前記哺乳動物がヒトである、請求項46の方法。
【請求項48】
前記結合タンパク質が、完全ヒト・モノクローナル抗体である、請求項46の方法。
【請求項49】
抗体が、mAb 7.251.3(ATCC寄託番号PTA−7422)、mAb 7.34.1(ATCC寄託番号PTA−7423)、およびmAb 7.159.2(ATCC寄託番号PTA−7424)からなる群より選択される、請求項46の方法。
【請求項50】
増殖因子依存性疾患が:骨粗鬆症、糖尿病、および心臓血管疾患からなる群より選択される、請求項46の方法。
【請求項51】
請求項12の抗体またはその結合断片および療法剤を含む、コンジュゲート。
【請求項52】
療法剤が毒素である、請求項51のコンジュゲート。
【請求項53】
療法剤が放射性同位体である、請求項51のコンジュゲート。
【請求項54】
療法剤が薬学的組成物である、請求項51のコンジュゲート。
【請求項55】
前記結合タンパク質、またはその結合断片が:
「Ser Tyr Tyr Trp Ser」(配列番号21)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(CDR1);
「Tyr Phe Phe Tyr Ser Gly Tyr Thr Asn Tyr Asn Pro Ser Leu Lys Ser」(配列番号22)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域2(CDR2);
「Ile Thr Gly Thr Thr Lys Gly Gly Met Asp Val」(配列番号23)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域3(CDR3);
「Thr Gly Ser Ser Ser Asn Ile Gly Ala Gly Tyr Asp Val His」(配列番号24)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(CDR1);
「Gly Asn Asn Asn Arg Pro Ser」(配列番号25)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域2(CDR2);および
「Gln Ser Phe Asp Ser Ser Leu Ser Gly Ser Val」(配列番号26)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域3(CDR3)
を含む、請求項1〜8のいずれか1項の特異的結合タンパク質。
【請求項56】
前記結合タンパク質、またはその結合断片が:
「Ser Tyr Tyr Trp Ser」(配列番号27)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(CDR1);
「Tyr Phe Phe Tyr Ser Gly Tyr Thr Asn Tyr Asn Pro Ser Leu Lys Ser」(配列番号28)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域2(CDR2);
「Ile Thr Gly Thr Thr Lys Gly Gly Met Asp Val」(配列番号29)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域3(CDR3);
「Thr Gly Arg Ser Ser Asn Ile Gly Ala Gly Tyr Asp Val His」(配列番号30)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(CDR1);
「Gly Asn Ser Asn Arg Pro Ser」(配列番号31)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域2(CDR2);および
「Gln Ser Tyr Asp Ser Ser Leu Ser Gly Ser Val」(配列番号32)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域3(CDR3)
を含む、請求項1〜8のいずれか1項の特異的結合タンパク質。
【請求項57】
前記結合タンパク質、またはその結合断片が:
「Ser Tyr Asp Ile Asn」(配列番号33)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(CDR1);
「Trp Met Asn Pro Asn Ser Gly Asn Thr Gly Tyr Ala Gln Lys Phe Gln Gly」(配列番号34)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域2(CDR2);
「Asp Pro Tyr Tyr Tyr Tyr Tyr Gly Met Asp Val」(配列番号35)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域3(CDR3);
「Ser Gly Ser Ser Ser Asn Ile Glu Asn Asn His Val Ser」(配列番号36)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(CDR1);
「Asp Asn Asn Lys Arg Pro Ser」(配列番号37)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域2(CDR2);および
「Glu Thr Trp Asp Thr Ser Leu Ser Ala Gly Arg Val」(配列番号38)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域3(CDR3)
を含む、請求項1〜8のいずれか1項の特異的結合タンパク質。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−519711(P2009−519711A)
【公表日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−545698(P2008−545698)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【国際出願番号】PCT/US2006/047059
【国際公開番号】WO2007/070432
【国際公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(300022641)アストラゼネカ アクチボラグ (581)
【Fターム(参考)】