説明

インターフェロンα変異体およびそのポリエチレングリコール誘導体

IFN−α変異体が、既存のIFN−αにおいて85位または86位におけるTyrをCysに置換することによって得られる。高いインビトロ抗ウイルス活性および延長されたインビボ半減期を有するそれらのポリエチレングリコール誘導体もまた提供され、この場合、ポリエチレングリコール成分がIFN−α変異体のフリーCys残基に共有結合により結合する。IFN−α変異体のPEG誘導体の調製方法、および、そのような誘導体を含む医療用組成物もまた提供される。試験結果は、本発明のIFN−α変異体は、調製することが容易であり、また、高い活性を有することを示した。ゆえに、それらのポリエチレングリコール誘導体は、体内における延長された寿命、および、低いクリアランス速度を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IFN−α変異体およびそのポリエチレングリコール誘導体の調製方法および使用に関連する。具体的には、本発明は、部位特異的変異誘発技術を使用するα−インターフェロンの部位特異的変異誘発、これにより、INF−αにおいて85位または86位におけるTyrをCysに置換すること、および、その部位をポリエチレングリコールと共有結合により結合することを含む方法に関連する。本発明はまた、インターフェロンを、Cysを使用して特異的に修飾する方法、インターフェロンα変異体のポリエチレングリコール誘導体の抽出および精製、ならびに、ガンおよび炎症性疾患におけるその使用に関連する。
【背景技術】
【0002】
インターフェロンは、広いスペクトルの抗ウイルス性、抗細胞増殖および免疫調節を有する重要な家族性サイトカインの1つのタイプである。哺乳動物のインターフェロンは、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、インターフェロンωなどに分けることができ、この場合、INF−αはさらに、10を超える種類のサブタイプに分けることができる。実際の臨床研究によれば、αタイプのインターフェロンが重要な抗ウイルス性および抗腫瘍性の薬物である。現在、主に、rhIFNα1b、rhIFNα2aおよびrhIFNα2bが中国では最も広く臨床において使用される。
【0003】
加えて、研究では、ヒトIFN−αのI型ファミリーは、20を超える遺伝子をそのメンバーとして有し、それらのほとんどが機能的なタンパク質をコードし、また、約90%の相同性をヌクレオチドレベルで相互に関して有することが示されている。かなりの数のインターフェロン誘導体またはインターフェロンアナログが遺伝子工学によって作製され得る。現在、最も注目すべきものがInfergen(INFERGEN(登録商標)、IFN−Con1)であり、これは、13種類のα型インターフェロンの遺伝子配列相同性に基づいてAmgen(合衆国企業)によって設計され、インターフェロンα2bの5倍〜10倍大きい抗ウイルス活性によるC型肝炎の処置のために1997年に米国食品医薬品局によってリストに収載されることが承認された完全に新規なタンパク質工学薬物である。中国特許出願公開CN1511849A(出願人:BEIJING TRI−PRIME GENETIC ENGINEERING CO.,LTD)は、インビトロでの相同的組換え法によって得られ、活性および安定性においてInfergenよりも大きな利点を有する様々なインターフェロンαファミリー分子を開示した。
【0004】
しかしながら、インターフェロンα1b、インターフェロンα2a、インターフェロンα2bまたはInfergenを問わず、タンパク質薬物として、これらはすべてが、不良な安定性、大きい血漿クリアランス、短いインビボ半減期、抗原抗体反応を生じやすいことなどのために、臨床処置では制限される。様々な遺伝子工学技術により、組換えタンパク質の大規模な合成が可能になり、また、異種のタンパク質によって誘導される免疫原性問題が大きく解決され、しかし、急速な血漿クリアランスおよび低い生物学的利用能のような不都合な点は依然として克服することができない。そのような不都合な点の結果が下記の通りである。インターフェロンの頻繁な注射が、血漿における効果的な治療濃度を達成するために要求され、そのうえ、それぞれの注射の後で、血中濃度のより大きな変動が、薬物濃度の頂上値および谷値の形成とともに引き起こされ、従って、このことは、処置費用、ならびに、薬物投与の不便さおよび有害な反応の危険性を増大させる可能性がある。そのため、様々な試みが、タンパク質薬物の効力を高めるための様々な薬物送達技術(Drug Delivery Technology)を取り入れるために行われている。現在、薬物送達技術の中で、最も広く研究されているのが、ペグ化技術(PEGNOLOGY)である。
【0005】
タンパク質のペグ化技術が、タンパク質型薬物のインビボでの薬物動態学特性を改善するためにこの10年で新たに開発される。この技術では、活性化されたポリエチレングリコール分子[ポリ(エチレングリコール)、PEG]がタンパク質分子の表面に結合させられ、従って、これにより、タンパク質の立体構造が影響を受け、最終的には、タンパク質の様々な生化学的性質における変化、例えば、増大した化学的安定性、プロテアーゼ加水分解に対する抵抗性の改善された能力、免疫原性および毒性の低下または消失、延長されたインビボ半減期、ならびに、低下した血漿クリアランスなどが引き起こされる。
【0006】
PEG成分は、エチレンモノマーの重合によって得られる不活性な長い鎖の両親媒性分子である。現在、広範囲の様々なPEG分子が利用可能である。活性化されたPEGの活性な官能基を処理分子の特別な位置(例えば、アミン、チオールまたは他の求核性物質)に連結することができる。ほとんどの場合、PEG誘導体の共有結合性の結合を、リシンのアミノ基およびペプチド分子のN末端を修飾部位として使用することによって達成することができ、この場合、それぞれの連結部分により、異なるイソ型が決定される。薬物の研究開発プロセスの期間中、PEGのイソ型分布は非常に重要である。製造物の生物学的活性が特定のイソ型分布混合物との密接な関係を有するので、製造物は分布要求に従って規定されなければならない。PEGのイソ型分布が、製造プロセスを変更すること、および、比例的ロフティング(lofting)を含めて、薬物開発プロセス全体の期間中において一貫していることが証明されなければならない。実際の製造では、PEGのイソ型分布により、多大の困難が製造物のプロセス制御および品質評価にもたらされる。
【0007】
上記の問題は部位特異的なペグ化によって回避することができる。ますますの関心が、特定のタンパク質部位をペグ化することに注がれている。これは、特定のタンパク質部位をペグ化することにより、非常に特異的なペグ化製造物を得ることができ、また、修飾された製造物の純度を効果的に制御することができ、このことはプロセスをより簡略にし、また、評価することがはるかにより容易な製造物をもたらすからである。タンパク質の非常に選択的なペグ化を分子内のシステイン(Cys)部位の使用によって行うことができる。フリーのスルフヒドリルを有するタンパク質はほとんんどなく、しかし、スルフヒドリルは、タンパク質の立体構造を維持するための重要な共有結合性の結合である。この部位における化学的修飾は、多くの場合、より大きな損傷を分子構造に引き起こし、従って、タンパク質の活性を失わせる。遺伝子工学を使用する手段により、この目的を達成することができる。タンパク質またはペプチドが異なれば、構造および性質が異なること、ならびに、何が導入され得るか、および、PEG修飾剤がどこに導入され得るかに留意することは価値がある。遺伝子工学手段によって人為的に増やされたCysは分子内のミスマッチまたは分子間の組合せを引き起こし、このことは、分子の不安定性、または、正規でないポリマーの形成の原因となる。この点で、包括的な配列分析および分子構造の正確なシミュレーションは、ある考えを提供する。
【0008】
配列分析により、インターフェロンα2a、インターフェロンα2bおよびIFN−con1を含めて、大多数のIFN−α分子が4個のシステインを有し、この場合、ジスルフィド結合が、1位におけるCysと、99位におけるCysとの間、および、29位におけるCysと、139位におけるCysとの間で形成されて存在することが見出された。本発明者は、この特徴もまた維持したインビトロでの相同的組換えによる新しいタイプのインターフェロン(MIFN)が得られる。IFN−α1bおよびそれ以外のαファミリーインターフェロンは構造において明白に異なっており、前者は、第5のCysを、正常なジスルフィド結合を形成する上記の4つのCysとは離れた86位に有する。小試験では、インターフェロンの部位特異的ペグ化がこの部位の使用によって実施できることが見出された。従って、この特徴との組合せで、他のIFN−αのペグ化は、同じ結果をもたらすことが予想される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】中国特許出願公開CN1511849A(出願人:BEIJING TRI−PRIME GENETIC ENGINEERING CO.,LTD)
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】付属3XC「インターフェロンの生物学的活性の測定」(「中華人民共和国薬局方」の2005年版)
【発明の概要】
【0011】
本発明の目的は、インターフェロン−α変異体を提供することである。そのアミノ酸配列の85位または86位におけるアミノ酸が、大きい生物学的活性だけでなく、良好な安定性、水溶性、病原性に対する抵抗性のような利点を有するポリエチレングリコール誘導体を形成するためにポリエチレングリコールと結合させることができるCysに変異させられる。
【0012】
IFN−αの85位または86位は通常、チロシン(Tyr)であり、このチロシン(Tyr)は、比較的保存された区域に位置している。本発明により、αインターフェロンが、TyrをCysに変異することによって改変され、また、一連のポリエチレングリコール誘導体を生じさせるためにポリエチレングリコールと反応する一連の変異体が得られる。
【0013】
本発明の技術的解決策が、現在一般に使用されているαインターフェロンの下記の4つのタイプによってさらに例示される。
【0014】
MIFNCys86、IFN−Con1Cys86、IFNα−2aCys85およびIFNα−2bCys85(アミノ酸配列は、付属の配列番号1〜配列番号4を参照のこと)が、4つの既存のインターフェロン(MIFN、IFN−Con1、IFNα−2aおよびIFNα−2b)の部位特異的変異誘発、および、86位におけるアミノ酸をCysに置換すること(MIFNおよびIFN−Con1)、または、85位におけるアミノ酸をCysに置換すること(IFNα−2aおよびIFNα−2b)によって得られる。タンパク質をコードする組換えプラスミドが、目的の遺伝子をそれぞれ組換え、得られた組換え遺伝子をインビトロ部位特異的変異誘発技術の使用によって発現ベクターpET−23bに挿入することによって得られる。別個に、これら4つのレコン(recon)は大腸菌BL21(DE3)レシピエト細胞において効率的および安定的に発現する。発現産物は封入体の形態で存在し、発現量は総細菌タンパク質の30%超を占める。疎水性相互作用クロマトグラフィー、DEAEアニオン交換クロマトグラフィーおよびS−100ゲル排除クロマトグラフィーを連続して使用する精製の後、高い純度を有するMIFNCys86およびIFN−Con1Cys86が得られる。そして、DEAEアニオン交換クロマトグラフィー、モノクローナル抗体アフィニティークロマトグラフィーおよびS−100ゲル排除クロマトグラフィーを使用する精製の後、高い純度を有するIFNα−2aCys85およびIFNα−2bCys85が得られる。
【0015】
本発明において記載される変異体が、たとえ、IFN−αの85位または86位におけるTryをCysに変異することによって得られるとしても、しかし、IFN−αの鎖の長さは完全には一致していないので、本明細書におけるTyrは、変異の場所を例示するためだけであることが当業者には理解されなければならない。当業者は、IFN−αに対する様々な改変を行うことができる。例えば、当業者はいくつかの部位を変異させることができ、従って、既存のαインターフェロンとは異なり、しかし、既存のαインターフェロンに関して同じ機能または類似する機能を有するアミノ酸配列を得ることができる。しかしながら、上記の得られた配列は、本発明において記載される対応する部位での変異および改変を行うことができ、改善された成績を得ることができる。従って、本発明のIFN−α変異体もまた、これらの配列を含む。
【0016】
本発明は様々なインターフェロン−α変異体ポリエチレングリコール誘導体を提供し、この場合、ポリエチレングリコールは直鎖であってもよく、分枝構造を同様に有することができる。IFN−α変異体が5000ダルトン〜40000ダルトンのそのようなPEGによりペグ化され、結果は、ペグ化されたタンパク質の半減期が、増大したPEG分子量とともに様々な程度に延びたことを示した。
【0017】
本発明はまた、インターフェロン−α変異体ポリエチレングリコール誘導体の調製方法および精製方法を提供する。
【0018】
最後に、本発明はインターフェロン−α変異体ポリエチレングリコール誘導体のインビトロでの薬力学および薬物動態学の試験方法および結果を提供し、これらは、インターフェロン−α変異体ポリエチレングリコール誘導体が、免疫調節障害(例えば、腫瘍疾患または感染性疾患など)の処置または防止のために使用されたとき、より良好な技術的パラメーターを有することを示している。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】「MIFNCys86の遺伝子の構築および増幅」(実施例1A)における2ラウンドのPCR生成物のアガロース電気泳動図を示す。レーン1はDNAマーカーを表し、レーン2は1回目のラウンドのPCR反応系における反応系1の生成物を表し、レーン3は1回目のラウンドのPCRにおける反応系2の生成物を表し、レーン4は2回目のラウンドのPCR生成物を表す。
【図2】陽性クローンを「MIFNCys86組換えプラスミドの構築、形質転換および同定」(実施例2A)におけるテンプレートとするPCR生成物のアガロース電気泳動図を示す。レーン1はDNAマーカーを表し、レーン2〜レーン8は単一コロニーのPCR生成物をそれぞれ表し、この場合、2、4、5、6、7、8が陽性クローンである。
【図3】4つの変異型組換えプラスミド(実施例2A〜実施例2D)のNdeI/EcoRI二重消化の電気泳動図を示す。レーン1はDNAマーカーを表し、レーン2はプラスミドベクターpET−23bを表し、レーン3、レーン7は、NdeI/EcoRIによる消化の前および後におけるMIFNCys86の組換えプラスミドをそれぞれ表し、レーン4、レーン8は、NdeI/EcoRIによる消化の前および後におけるIFN−Con1Cys86の組換えプラスミドをそれぞれ表し、レーン5、レーン9は、NdeI/EcoRIによる消化の前および後におけるIFNα−2aCys85の組換えプラスミドをそれぞれ表し、レーン6、レーン10は、NdeI/EcoRIによる消化の前および後におけるIFNα−2bCys85の組換えプラスミドをそれぞれ表す。
【図4】精製されたMIFNCys86、IFN−Con1Cys86、IFNα−2aCys85およびIFNα−2bCys85のSDS−PAGEダイアグラムを示す(実施例3A〜実施例3D)。レーン1はタンパク質マーカーを表し、レーン2、レーン3、レーン4、レーン5は、精製されたMIFNCys86、IFN−Con1Cys86、IFNα−2aCys85およびIFNα−2bCys85を表す。
【図5】PEG−MAL(20KD)との、MIFNCys86、IFN−Con1Cys86、IFNα−2aCys85およびIFNα−2bCys85によって行われた連結反応のSDS−PAGEダイアグラムを示す(実施例4)。レーン1はタンパク質マーカーを表し、レーン2、レーン3、レーン4、レーン5は、PEG−MAL(20KD)との、MIFNCys86、IFN−Con1Cys86、IFNα−2aCys85およびIFNα−2bCys85によって行われた連結反応の生成物をそれぞれ表す。
【図6】PEG−MAL(40KD)との、MIFNCys86、IFN−Con1Cys86、IFNα−2aCys85およびIFNα−2bCys85によって行われた連結反応のSDS−PAGEダイアグラムを示す(実施例4)。レーン1はタンパク質マーカーを表し、レーン2、レーン3、レーン4、レーン5は、PEG−MAL(40KD)との、MIFNCys86、IFN−Con1Cys86、IFNα−2aCys85およびIFNα−2bCys85によって行われた連結反応の生成物をそれぞれ表す。
【図7】インターフェロン−α変異体の4種類の精製されたPEG−MAL(20KD)誘導体のSDS−PAGEダイアグラムを示す(実施例5)。レーン1はタンパク質マーカーを表し、レーン2、レーン3、レーン4、レーン5は、mPEG(20KD)−MIFNCys86、mPEG(20KD)−IFN−Con1Cys86、mPEG(20KD)−IFNα−2aCys85およびmPEG(20KD)−IFNα−2bCys85をそれぞれ表す。
【図8】インターフェロン−α変異体の4種類の精製されたPEG−MAL(40KD)誘導体のSDS−PAGEダイアグラムを示す(実施例5)。レーン1はタンパク質マーカーを表し、レーン2、レーン3、レーン4、レーン5は、mPEG(40KD)−MIFNCys86、mPEG(40KD)−IFN−Con1Cys86、mPEG(40KD)−IFNα−2aCys85およびmPEG(40KD)−IFNα−2bCys85をそれぞれ表す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明が具体的な実施例との組合せでさらに例示される。これらの実施例は、本発明の保護範囲を限定することなく本発明を説明するために意図されるだけであることを理解しなければならない。
【0021】
具体的に定義されない限り、本明細書中で使用される用語は、関連した技術分野において広く知られている用語に対応する。標準的な化学記号および省略記号が、完全な名称と交換可能に使用され得る。例えば、「PEG」および「ポリエチレングリコール」は同じ意味を有し、「インターフェロンα」、「IFN−α」および「αインターフェロン」もまた、同じ意味を有する。
【0022】
別途詳しく記されない限り、本明細書中で使用され、しかし、明示的には例示されない技術および方法、または、簡略的に例示される技術および方法は、この技術分野で従来から使用される技術および方法を示しており、この技術分野で使用される広く知られている技術および方法に従って実施することができる。キットの適用が、製造者または供給者によって提供される説明書に従って行われる。
【0023】
本発明において、MIFN、INF−Con1、IFNα−2aおよびIFNα−2bを含む4つのタンパク質のアナログを、アミノ酸の機能的に等価な分子の置換、付加または欠失によって得ることができる。例えば、類似する性質を有する1つまたは複数のアミノ酸残基を元の配列における対応するアミノ酸残基に代わって使用すること、従って、元のタンパク質配列を変化させて、サイレントな変化を形成することが、この技術分野では広く知られている。
【0024】
本発明において、ポリエチレングリコール誘導体におけるポリエチレングリコール成分が直鎖構造または分岐構造を有し得ることが当業者には広く知られている。前記ポリエチレングリコール誘導体は、スルフヒドリル反応を行うことができ、また、システイン残基のスルフヒドリルと反応することができるペグ化された試薬であり、これらには、マレイミド−PEG、ビニルスルホン−PEG、ヨードアセトアミド−PEGおよびn−ピリジルジスルフィド−PEGなどが含まれ、好ましくはマレイミド−PEGである。約5000ダルトン、10000ダルトン、12000ダルトン、20000ダルトン、30000ダルトンおよび40,000ダルトンの分子量を有するPEGによる4つのIFN−α変異体のペグ化を行い、PEG−インターフェロンの誘導体をそれぞれ得ることが、本発明において試みられている。得られたデータは、ペグ化されたタンパク質の半減期が、PEGの分子量が大きくなるとともに様々な程度に増大したことを示した。本発明の実施例では、PEG化されたインターフェロン誘導体の作製、精製方法、ならびに、薬力学試験および薬物動態学試験が、低分子量体および高分子量体を代表するものとして20000ダルトンおよび40000ダルトンの分子量を有するペグ化された試薬をそれぞれ使用して具体的に例示される。
【0025】
好ましい実施例において、PEG試薬は、Nektar TherapeuticsおよびBEIJING JenKem Technology CO.,LTD.によって提供されるmPEG−MAL[これはまた、PEG−MAL(20KD)として記載される]またはmPEG−MAL[これはまた、PEG−MAL(40KD)として記載される]であり、時には、本明細書中で使用されるようにmPEG−MALおよびmPEG−MALは一般に、PEG−MALまたはPEGと略記される。
【0026】
本発明において、MIFN、INF−Con1、IFNα−2aおよびIFNα−2bを含む4つのαインターフェロンの工学細菌が、BEIJING TRI−PRIME GENETIC ENGINEERING CO.,LTDによって提供された。対応する細菌の名称は、BL21(DE3)/pET23b−MIFN、BL21(DE3)/pET23b−INF−Con1、BL21(DE3)/pET23b−IFNα−2aおよびBL21(DE3)/pET23b−IFNα−2bであった。
【0027】
実施例1A MIFNCys86をコードする遺伝子の構築および増幅
PCRインビトロ部位特異的変異誘発技術(PCR−SDM)を使用して、部位特異的変異誘発を重複伸長によって行うことができた。部位特異的変異誘発技術は成熟しており、確定した手順を有した。特定の試験に従って調節することができたことは、プライマーの位置長さ、および、PCR反応条件であった。実際、本発明の保護範囲に含まれた、部位特異的変異誘発の目的を達成することができた様々な組合せが存在した。本実施例は好ましい実施形態を示す(同様に、実施例1B〜実施例1Dもまた、好ましい実施形態を示す)。2対のプライマーを設計した。上流側プライマーP1はT7プロモータープライマー(taatacgactcactataggg)であり、P3の配列はggaaaaattctgcaccgaactgtであった;下流側プライマーP2はT7ターミネータープライマー(gctagttattgctcagcgg)であり、P4の配列はacagttcggtgcagaatttttccであった。変異部位がP3およびP4に含まれた。
【0028】
MIFNのプラスミドをテンプレートとして抽出した。1回目のラウンドのPCRでは、2つの反応系が含まれた。反応系1は、プライマーP1、プライマーP4を含み、これらにより、変異部位およびその上流側DNA配列が増幅された。反応系2は、プライマーP2、プライマーP3を含み、これらにより、変異部位およびその下流側DNA配列が増幅された。反応条件は下記の通りであった:94℃/4分、94℃/1分、その後、55℃/2分、72℃/2分、合計で30サイクル。2回目のラウンドのPCRは重複伸長PCRであり、この場合、1回目のラウンドのPCR生成物をテンプレートとして選び、P1、P2をPCR増幅のためのプライマーとして選んだ。反応条件は下記の通りであった:94℃/4分、94℃/1分、その後、56℃/2分、72℃/2分、合計で30サイクル。図1は、これら2ラウンドのPCR生成物のアガロース電気泳動図を示す。
【0029】
2回目のラウンドのPCRの生成物をアガロース電気泳動によってアッセイした。約720bpを有する選ばれたDNAフラグメントをNdeI/EcoRIにより二重消化した後、約500bpを有する目的のDNAフラグメントを、保存のために電気泳動を使用して回収した。
【0030】
実施例1B IFN−Con1Cys86をコードする遺伝子の構築および増幅
2対のプライマーを設計した。上流側プライマーP1はT7プロモータープライマー(taatacgactcactataggg)であり、P3の配列はggataaattctgcaccgaactgtであり、下流側プライマーP2はT7ターミネータープライマー(gctagttattgctcagcgg)であり、P4の配列はacagttcggtgcagaatttatccであった。変異部位がP3およびP4に含まれた。
【0031】
PCR手順は、1回目のラウンドのPCRの反応テンプレートがIFN−Con1のプラスミドであったことを除いて、実施例1Aと同様とした。2回目のラウンドのPCRの生成物をアガロース電気泳動によってアッセイした。約720bpを有する選ばれたDNAフラグメントをNdeI/EcoRIにより二重消化した後、約500bpを有する目的のDNAフラグメントを、保存のために電気泳動を使用して回収した。
【0032】
実施例1C IFNα−2aCys85をコードする遺伝子の構築および増幅
プライマーの設計は実施例1Bと同様とした。PCR手順は、1回目のラウンドのPCRの反応テンプレートがIFNα−2aのプラスミドであったことを除いて、実施例1Aと同様とした。2回目のラウンドのPCRの生成物をアガロース電気泳動によってアッセイした。約720bpを有する選ばれたDNAフラグメントをNdeI/EcoRIにより二重消化した後、約500bpを有する目的のDNAフラグメントを、保存のために電気泳動を使用して回収した。
【0033】
実施例1D IFNα−2bCys85をコードする遺伝子の構築および増幅
プライマーの設計は実施例1Bと同様とした。PCR手順は、1回目のラウンドのPCRの反応テンプレートがIFNα−2bのプラスミドであったことを除いて、実施例1Aと同様とした。2回目のラウンドのPCRの生成物をアガロース電気泳動によってアッセイした。約720bpを有する選ばれたDNAフラグメントをNdeI/EcoRIにより二重消化した後、約500bpを有する目的のDNAフラグメントを、保存のために電気泳動を使用して回収した。
【0034】
実施例2A MIFNCys86の組換えプラスミドの構築、形質転換および同定
プラスミドの構築および形質転換において、組換えプラスミドの構築を、多くの種類の制限酵素を使用し、また、連結反応の変更可能な条件を採用することによって完了することができた。本実施例では、研究室で一般に使用されるJM109およびDH5αが宿主細胞として選ばれた。このことは、他の宿主を形質転換のために使用することを排除しなかった。科学の原理、利便性および効率に基づいて、本実施例に示される組換えプラスミドの構築、形質転換および同定の実施形態が好ましかった(同様に、2B〜2Dに示される実施形態が好ましかった)。
【0035】
NdeI/EcoRIによる二重消化の後、プラスミドベクターpET−23bをアガロースゲル電気泳動によって回収し、実施例1Aにおける最後の回収から得られる目的のDNAフラグメントと連結した。連結反応条件:2xRapid緩衝液、4μl〜5μl;T4DNAリガーゼ、1μl;標的フラグメント、1μl〜2μl;ベクター、3μl;4℃で一晩の連結。
【0036】
JM109コンピテント細胞またはDH5αコンピテント細胞を調製し、上述の連結生成物により形質転換し、ベンジルアンモニア平板に被覆し、37℃で一晩培養した。
【0037】
単一コロニーをテンプレートとして選ぶ。実施例1において示されるプライマーP1、プライマーP2を、PCR増幅のために使用し、PCR生成物のアガロース電気泳動の後(電気泳動図が図2に示される)、特定のバンドが陽性クローンについては約720bpにおいて生じた。少量の陽性クローンの培養、それらからのプラスミドの抽出およびNdeI/EcoRIによる二重消化の後、特定のバンドが約3kbおよび500bpにおいてそれぞれ生じた(アガロース電気泳動図が図3に示された)。このことは、予想されたことと一致しており、組換えプラスミドの構築の成功を予備的に例示する。その配列をさらに確認するために、自動シーケンサーABI377を、T7をユニバーサルプライマーとして用いる配列決定を行うために使用した。結果は、得られた配列が目的の配列と一致していたことを示した。
【0038】
実施例2B IFN−Con1Cys86の組換えプラスミドの構築、形質転換および同定
本実施例において連結される遺伝子フラグメントは、実施例1Bにおいて回収された目的の遺伝子フラグメントであった。連結、形質転換および同定の操作で使用された技術および方法は、実施例2Aにおいて使用された技術および方法と同じであった。NdeI/EcoRI消化の同定のための電気泳動図を図3に示した。同様に、その配列をさらに確認するために、自動シーケンサーABI377を、T7をユニバーサルプライマーとして用いる配列決定を行うために使用した。結果は、得られた配列が目的の配列と一致していることを示した。
【0039】
実施例2C IFNα−2aCys85の組換えプラスミドの構築、形質転換および同定
本実施例において連結される遺伝子フラグメントは、実施例1Cにおいて回収された目的の遺伝子フラグメントであった。連結、形質転換および同定の操作で使用された技術および方法は、実施例2Aにおいて使用された技術および方法と同じであった。NdeI/EcoRI消化の同定のための電気泳動図を図3に示した。同様に、その配列をさらに確認するために、自動シーケンサーABI377を、T7をユニバーサルプライマーとして用いる配列決定を行うために使用した。結果は、得られた配列が目的の配列と一致していることを示した。
【0040】
実施例2D IFNα−2bCys85の組換えプラスミドの構築、形質転換および同定
本実施例において連結される遺伝子フラグメントは、実施例1Dにおいて回収された目的の遺伝子フラグメントであった。連結、形質転換および同定の操作で使用された技術および方法は、実施例2Aにおいて使用された技術および方法と同じであった。NdeI/EcoRI消化の同定のための電気泳動図を図3に示した。同様に、その配列をさらに確認するために、自動シーケンサーABI377を、T7をユニバーサルプライマーとして用いる配列決定を行うために使用した。結果は、得られた配列が目的の配列と一致していることを示した。
【0041】
実施例3A MIFNCys86の発現および精製
実施例2Aから得られる組換えプラスミドをE.coli BL21(DE3)または他の好適な宿主に形質転換し、その後、誘導発現を行った。E.coli BL21(DE3)を宿主とする発現MIFNCys86は、主として封入体の形態で存在し、総細菌タンパク質の30%〜50%を占めた。
【0042】
粗精製:集めた細菌をTEとともに溶解した。超音波処理後、封入体を集め、その後、6mol/L〜8mol/LのGu・HClまたは尿素により溶解し、室温で一晩撹拌するか、または、4℃で一晩保ち、0.05mol/L〜0.2mol/Lのホウ酸(pH8.0〜10.5)溶液により復元した。復元溶液を4℃で一晩保った。4℃での遠心分離の後、上清を集めた。これは、ほぼ純粋なMIFNCys86であった。
【0043】
精密精製:疎水性クロマトグラフィー、DEAEアニオン交換クロマトグラフィーおよびS−100ゲル排除クロマトグラフィーを含む3工程の精製プロセスを連続して用いた。詳細な工程は下記の通りであった。復元溶液を、10%〜30%の(NHSOを含有する溶液に希釈し、Phenyl Sepharoseクロマトグラフィーカラムに負荷し、2カラム体積の10%〜30%の(NHSOにより洗浄し、その後、15%〜35%のグリコールエチレンにより溶出し、その後、集められた溶出ピーク成分を溶液A(10mmol/L〜80mmol/LのTris−HCl、pH7.5〜10.5)により完全に透析した。透析された溶出液を、溶液Aで完全に平衡化されたDEAE Sepharose FFクロマトグラフィーカラムに負荷し、その後、溶液B(0.2mol/L〜0.4mol/LのNaClを含有する溶液A)により溶出し、溶出ピークを集めた。そして、DEAE Sepharose FFイオン交換クロマトグラフィーの溶出ピーク分画物を、溶液C(20mmol/L〜40mmol/LのPB+20mmol/L〜40mmol/LのNaCl、Ph6.5〜7.5)で完全に平衡化されたSephacryl S−100クロマトグラフィーカラムに完全に負荷し、溶液Cにより洗浄し、その後、溶出ピークを集めた。上記精製手順の後、得られたMIFNCys86は、95%を超える純度を有していた(SDS−PAGEダイアグラムを図4に示した)。
【0044】
実施例3B IFN−Con1Cys86の発現および精製
実施例2Bから得られる組換えプラスミドをE.coli BL21(DE3)または他の好適な宿主に形質転換し、その後、誘導発現を行った。E.coli BL21(DE3)を宿主とする発現IFN−Con1Cys86は、主として封入体の形態で存在し、総細菌タンパク質の30%〜50%を占めた。
【0045】
本実施例における精製方法は、実施例3Aにおいて使用された精製方法と同じであった。得られたIFN−Con1Cys86は、95%を超える純度を有していた(SDS−PAGEダイアグラムを図4に示した)。
【0046】
実施例3C IFNα−2aCys85の発現および精製
実施例2Cから得られる組換えプラスミドをE.coli BL21(DE3)または他の好適な宿主に形質転換し、その後、誘導発現を行った。E.coli BL21(DE3)を宿主とする発現IFNα−Con1Cys86は、主として封入体の形態で存在し、総細菌タンパク質の30%〜50%を占めた。
【0047】
粗精製:本実施例における粗精製方法は、実施例3Aにおいて使用された方法と同じであった。
【0048】
精密精製:疎水性クロマトグラフィー、DEAEアニオン交換クロマトグラフィーおよびS−100ゲル排除クロマトグラフィーを含む3工程の精製プロセスを連続して用いた。詳細な工程は下記の通りであった。復元溶液を30mmol/LのTris−HCl(pH8.0)により10倍希釈し、その後、DEAE Sepharose FFイオン交換クロマトグラフィーカラムに負荷し、0.3mol/LのNaClを含有する30mmol/LのTris−HCl(pH7.0)溶液により溶出し、その後、溶出ピークを集めた。そして、上記工程からの溶出サンプルをPBS(pH7.0)により3倍希釈し、その後、IFNα−2aモノクローナル抗体アフィニティークロマトグラフィーカラムに負荷し、100mmol/LのNaClを含有する0.3mol/LのGly溶液(pH2.5)により溶出し、その後、溶出ピークを集めた。その後、上記工程からの溶出サンプルを、Sephacryl S−100クロマトグラフィーカラムに負荷し、PBS(pH7.0)により溶出した。得られたIFNα−2aCys85は、95%を超える純度を有していた(SDS−PAGEダイアグラムを図4に示した)。
【0049】
実施例3D IFNα−2bCys85の発現および精製
実施例2Dから得られる組換えプラスミドをE.coli BL21(DE3)または他の好適な宿主に形質転換し、その後、誘導発現を行った。E.coli BL21(DE3)を宿主とする発現IFNα−2bCys85は、主として封入体の形態で存在し、総細菌タンパク質の30%〜50%を占めた。
【0050】
粗精製:本実施例における粗精製方法は、実施例3Aにおいて使用された方法と同じであった。
【0051】
精密精製:疎水性クロマトグラフィー、DEAEアニオン交換クロマトグラフィーおよびS−100ゲル排除クロマトグラフィーを含む3工程の精製プロセスを連続して用いた。具体的な工程は下記の通りであった。復元溶液を30mmol/LのTris−HCl(pH8.0)により10倍希釈し、その後、DEAE Sepharose FFイオン交換クロマトグラフィーカラムに負荷し、0.3mol/LのNaClを含有する30mmol/LのTris−HCl(pH7.0)溶液により溶出し、その後、溶出ピークを集めた。そして、上記工程からの溶出サンプルをPBS(pH7.0)により3倍希釈し、その後、IFNα−2bモノクローナル抗体アフィニティークロマトグラフィーカラムに負荷し、100mmol/LのNaClを含有する0.3mol/LのGly溶液により溶出し、その後、溶出ピークを集めた。その後、上記工程からの溶出サンプルを、Sephacryl S−100クロマトグラフィーカラムに負荷し、PBS(pH7.0)により溶出した。得られたIFNα−2bCys85は、95%を超える純度を有していた(SDS−PAGEダイアグラムを図4に示した)。
【0052】
実施例4 MIFNCys86、IFN−Con1Cys86、IFNα−2aCys85およびIFNα−2bCys85のPEGカップリング
本発明において、インターフェロンαの4つの変異体を、様々な分子量を有するPEGとカップリングすることができた。好ましい実施例において、PEGには、およそ20KDおよび40KDの分子量をそれぞれ有するmPEG−MALおよびmPEG−MALが含まれた。
【0053】
1)MIFNCys86、IFN−Con1Cys86、IFNα−2aCys85およびIFNα−2bCys85の濃縮
上記4つのインターフェロンα誘導体は、DEAE Sepharose FFクロマトグラフィーカラムによってそれぞれ濃縮することができる。具体的な方法は下記の通りであった。実施例3A〜実施例3Dのいずれか1つから得られる精製されたタンパク質サンプルを10mmol/L〜80mmol/LのTris−HCl(pH7.5〜8.5)の溶液により2倍以上希釈し、DEAEクロマトグラフィーカラムに負荷し、20mmol/LのPB緩衝液(pH7.6)+300mmol/LのNaClにより溶出して、目的タンパク質の濃縮された溶液を得た。
【0054】
2)MIFNCys86、IFN−Con1Cys86、IFNα−2aCys85およびIFNα−2bCys85のmPEG−MALとのカップリング
MIFNCys86、IFN−Con1Cys86、IFNα−2aCys85およびIFNα−2bCys85をmPEG(20KD)−MALとカップリングした。従って、モノペグ化された誘導体はそれぞれ、下記のように記述される。mPEG(20KD)−MIFNCys86、mPEG(20KD)−IFN−Con1Cys86、mPEG(20KD)−IFNα−2aCys85およびmPEG(20KD)−IFNα−2bCys85
【0055】
MIFNCys86、IFN−Con1Cys86、IFNα−2aCys85およびIFNα−2bCys85をmPEG(40KD)−MALとカップリングした。従って、モノペグ化された誘導体はそれぞれ、下記のように記述される:mPEG(40KD)−MIFNCys86、mPEG(40KD)−IFN−Con1Cys86、mPEG(40KD)−IFNα−2aCys85およびmPEG(40KD)−IFNα−2bCys85
【0056】
このカップリング反応は、下記のような具体的工程を有した。
適量の濃縮された溶液を本発明の工程1)から取り、タンパク質濃度について8mg/ml〜12mg/mlに調節した。PEG粉末を1:1のモル比により加え、PEG粉末が溶解し得るように穏やかに振とうし、その後、4℃で一晩反応した。すなわち、反応時間は10時間を超えることが望ましい。SDS−PAGEにより、(図5〜図6に示されるように)カップリング反応の程度が検出された。
【0057】
実施例5 インターフェロン−α変異体の誘導体の精製
ペグ化生成物を、DEAE Sepharose Fast Flowイオン交換クロマトグラフィーによって精製した。具体的な条件は下記の通りであった。反応液を、25mmolのpH8.0のTris緩衝液系を使用して20倍〜30倍希釈し、その後、平衡化されたDEAEカラムに3ml/分〜4ml/分の流速により負荷し、ベースライン平衡に達した後、25mMのpH8.0のTrisにおける80mMのNaCl濃度により溶出して、目的タンパク質の溶出ピークを得た。得られた組換えタンパク質の最終純度は95%を超えていた(SDS−PAGEダイアグラムを図7〜図8に示した)。
【0058】
実施例6 4種類のインターフェロンα、それらの変異体およびそれらの変異体のポリエチレングリコール誘導体のインビトロ抗ウイルス活性の測定
WISH−VSVシステムを使用する細胞変性効果阻害アッセイを、インビトロでのインターフェロン抗ウイルス活性を求めるために採用した(これは、先行技術分野において一般に広く知られている方法であった)。具体的な参考文献が付属3XC「インターフェロンの生物学的活性の測定」(「中華人民共和国薬局方」の2005年版)に示された。
【0059】
本実施例では、16のインターフェロン(または誘導体)のインビトロ抗ウイルス活性について測定された。これらには、詳しくは、下記が含まれた。
4種類のインターフェロンα:MIFN、IFN−Con1、IFNα−2aおよびIFNα−2b、および
INF−αの4種類の変異体:MIFNCys86、IFN−Con1Cys86、IFNα−2aCys85およびIFNα−2bCys85(これらは本発明において実施例3A〜実施例3Dによって調製された)。
同様にまた、8種類のポリエチレングリコール誘導体が存在した。
mPEG(20KD)−MIFNCys86、mPEG(20KD)−IFN−Con1Cys86、mPEG(20KD)−IFNα−2aCys85、mPEG(20KD)−IFNα−2bCys85、mPEG(40KD)−MIFNCys86、mPEG(40KD)−IFN−Con1Cys86、mPEG(40KD)−IFNα−2aCys85およびmPEG(40KD)−IFNα−2bCys85(これらは本発明において実施例5によって調製された)。
【0060】
それらのインビトロ抗ウイルス活性アッセイ結果を下記の表1〜表4に示した。
【表1】

【0061】
【表2】

【0062】
【表3】

【0063】
【表4】

【0064】
実施例7 ラットの薬物動態学研究
表5に示される薬物動態学スキームによって、12のインターフェロン(または誘導体)をインビトロ抗ウイルス活性について測定した。これらには、詳しくは、下記が含まれた。
INF−αの4種類の変異体:MIFNCys86、IFN−Con1Cys86、IFNα−2aCys85およびIFNα−2bCys85(これらは本発明において実施例3A〜実施例3Dによって調製された)、および
8種類のポリエチレングリコール誘導体:mPEG(20KD)−MIFNCys86、mPEG(20KD)−IFN−Con1Cys86、mPEG(20KD)−IFNα−2aCys85、mPEG(20KD)−IFNα−2bCys85、mPEG(40KD)−MIFNCys86、mPEG(40KD)−IFN−Con1Cys86、mPEG(40KD)−IFNα−2aCys85およびmPEG(40KD)−IFNα−2bCys85(これらは本発明において実施例5によって調製された)。
【表5】

【0065】
上記の試験スキームにおいて、血液サンプルをラットの眼周囲から集め、その後、遠心分離して血清を集めた。血清サンプルにおけるインターフェロンの含有量をCPE法(WISH/VSVシステム)によって求めた。
【表6】

【0066】
SDラットにおけるMIFNCys86およびそのPEG誘導体の代謝が一次吸収のコンパートメントモデルと一致していたことが、3P87ソフトウエアによるフィッティングの後で見出された。ペグ化はMIFNCys86の薬物動態学特性を著しく改善することができた。MIFNCys86と比較した場合、mPEG−MIFNCys86は、吸収の半減期、ピーク時間、および、排出半減期が著しく延長され、薬物時間曲線下面積が著しく増大し、クリアランス速度が著しく低下した。ペグ化が体内におけるMIFNCys86の平均寿命を延ばすことができ、また、クリアランス速度を減少させることができたことを認めることができる。
【0067】
同じ結果が、IFN−Con1Cys86およびそのPEG誘導体、IFNα−2aCys85およびそのPEG誘導体、IFNα−2bCys85およびそのPEG誘導体の薬物動態学試験において見出された。すなわち、非修飾体と比較した場合、ペグ化されたインターフェロンは、吸収の半減期、ピーク時間および排出半減期が著しく延長され、薬物時間曲線下面積が著しく増大し、クリアランス速度が著しく低下した。
【0068】
それにより、ペグ化が体内におけるMIFNCys86の平均寿命を延ばすことができ、また、クリアランス速度を減少させることができることを証明することができる。
【0069】
現時点において、本発明が、相当に詳しい記載とともに実施されてきた。好ましい実施例は、ある種の改変および改善が、本発明の保護範囲から逸脱することなく、記載されるような発明に対して行われ得るので、本発明を例示することができるのみであり、しかし、本発明を限定することはできない。
【産業上の利用可能性】
【0070】
動物実験では、本発明のインターフェロン変異体のポリエチレングリコール誘導体は体内におけるインターフェロンの平均寿命を延ばすことができ、また、クリアランス速度を減少させることができ、また、実質的に高い抗ウイルス活性を有したことが示された。従って、本発明において記載される方法、または、当業者には広く知られている方法に従って、本発明は、本発明のインターフェロン変異体を調製するために実施することができ、その後、本発明のインターフェロン変異体はさらに、ポリエチレングリコールに対して共有結合により結合され、免疫調節疾患(例えば、腫瘍疾患または感染性疾患など)の防止および処置のための薬物に開発される。
【0071】
配列リストが添付される:
アミノ酸およびヌクレオチドの配列リストが添付されていますので、参照願いたい。この場合、IFN−Con1、IFNα−2aおよびIFNα−2bのヌクレオチド配列は公知であり、具体的な実施例では、対応する部位のコドンのみがtgcに変異させられる。従って、IFN−Con1Cys86、IFNα−2aCys85およびIFNα−2bCys85のDNA配列は本発明において添付されていない。
配列番号1はMIFNCys86のアミノ酸配列を示す。
配列番号2はIFN−Con1Cys86のアミノ酸配列を示す。
配列番号3はIFNα−2aCys85のアミノ酸配列を示す。
配列番号4はIFNα−2bCys85アミノ酸配列を示す。
配列番号5はMIFNCys86のDNA配列を示す。
配列番号6〜配列番号9はプライマーP1〜プライマーP4のヌクレオチド配列をそれぞれ示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターフェロン−αのアミノ酸配列の85位または86位におけるTyrがCysに変異させられることを特徴とするインターフェロン−α変異体。
【請求項2】
配列番号1〜配列番号4のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載のインターフェロン−α変異体。
【請求項3】
請求項1または2に記載される前記インターフェロン−α変異体をコードするヌクレオチド配列。
【請求項4】
請求項1または2に記載される前記インターフェロン−α変異体のポリエチレングリコール誘導体。
【請求項5】
PEG試薬により、インターフェロン−α変異体の85位または86位におけるCysの部位が修飾されることを特徴とする、請求項4に記載のインターフェロン−α変異体のポリエチレングリコール誘導体。
【請求項6】
ポリエチレングリコールスルフヒドリル修飾剤をインターフェロン−α変異体の85位または86位におけるCysの部位と反応することによって得られ、ただし、前記ポリエチレングリコールスルフヒドリル修飾剤が、マレイミド−PEG、ビニルスルホン−PEG、ヨードアセトアミド−PEGおよびn−ピリジルジスルフィド−PEGから選択される、請求項4または5に記載のインターフェロン−α変異体のポリエチレングリコール誘導体。
【請求項7】
PEG試薬の平均分子量が5,000ダルトン〜60,000ダルトンであることを特徴とする、請求項4または5に記載のインターフェロン−α変異体のポリエチレングリコール誘導体。
【請求項8】
下記の工程:
a)インターフェロン−α変異体の高濃度溶液を調製する工程;
b)ポリエチレングリコールを工程a)において記載されるインターフェロン−α変異体とカップリングする工程;
c)インターフェロン−α変異体のポリエチレングリコール誘導体を精製および抽出する工程
を含む、インターフェロン−α変異体のポリエチレングリコール誘導体の調製方法。
【請求項9】
請求項4〜7のいずれか一項に記載されるインターフェロン−α変異体のポリエチレングリコール誘導体を含む薬物組成物。
【請求項10】
ウイルス感染症または腫瘍を処置または防止するための、請求項9に記載される前記薬物組成物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−513333(P2010−513333A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541739(P2009−541739)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【国際出願番号】PCT/CN2007/003711
【国際公開番号】WO2008/074230
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(509174635)北京三元基因工程有限公司 (1)
【出願人】(509174646)ベイジン バイオ‐テック デベロップメント カンパニー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】