説明

インターホン装置

【課題】人物がインターホン子機の近傍で不審な動きをしている場合に、的確に検知して警報を発報するとともに、猫等の動物の動きによる誤動作を防ぐ。
【解決手段】人物を撮像するカメラと、人物と人物以外の物体を識別する識別部と、識別部で識別した人物の移動を追跡する追跡部と、前記追跡部で追跡した人物を対象とし、禁止区域への移動等の人物位置を検知して作動する報知部とを備え、人物のみを対象として警報動作を行うようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人物を識別するインターホン装置に係り、特に識別した人物の移動を追跡するシステムが組み込まれているインターホン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人物検出において、特許文献1のような方法で画像内の人物を検出する技術、及び特許文献2のような方法で検出した人物を選択して、その人物にズームし録画する機能を持つインターホン装置があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−181220号公報
【特許文献2】特開2010−81160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらの技術では、インターホン装置で人物を検出し、利用者の操作により人物の動きを確認する機能までは自動で行なうことができるが、その人物の行動を追跡し、異常状態を自律的に把握するような機能は実装されていなかった。
【0005】
本発明では、検出した人物の移動を追跡し、移動方向、移動形態が異常である場合に報知することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するため、本発明の第1の態様であるインターホン装置は、人物と人物以外の物体を識別する識別部を搭載し、識別した人物の移動を追跡する追跡部を搭載する。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、人物と人物以外を識別し、識別した人物に対して移動追跡を行うため、移動方向が分かる。また、移動方向の先に禁止区域があれば、禁止区域に入ることを検知して報知することができる。
【0008】
請求項2の発明によれば、人物と人物以外を識別し、識別した人物に対して移動追跡を行うため、移動方向が分かる。また、移動方向が不定で、画面内をうろついているようであれば不審な行動と見なし、不審人物として報知することができる。
【0009】
請求項3の発明によれば、人物と人物以外を識別し、識別した人物に対して移動追跡を行うため、移動方向が分かる。また、その移動方向が、例えば一定方向への移動しかあり得ない場所で逆方向へ移動している等、異常であることを検知して報知することができる。
【0010】
請求項4の発明によれば、呼出操作を行なうことにより、異常であることの検知を抑止できるため、誤報を防止することができる。
【0011】
請求項5の発明によれば、玄関子機のカメラを使用して認識を行なうため、追加のカメラが不要となり、低コストで本発明を実施することができる。
【0012】
請求項6の発明によれば、ナースコールに本機能を含むことにより、病院等の介護施設においても本発明を実施することができる。
【0013】
請求項7の発明によれば、親機各部の動作をCPUに含むため、低コストで本発明を実施することができる。
【0014】
請求項8の発明によれば、親機の通話に使用している音響部を警報動作に使用するため、低コストで本発明を実施することができる。
【0015】
請求項9の発明によれば、子機からも警報を報知することにより、不審者を直ちに追い払うことができ、居住者の安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1はインターホン装置の一例を示す構成図である。
【図2】図2はインターホン装置の一例を示すブロック図である。
【図3】図3はインターホン装置の他の例を示す構成図である。
【図4】図4はインターホン装置の他の例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のインターホン装置を適用した最良の実施の形態例について、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明の実施例によるインターホン装置の一例を示すシステム構成図であり、居室親機2には玄関子機1が接続されている。
図2は、本発明の実施例によるインターホン装置の一例を示すブロック図である。
玄関子機1は、当該玄関子機前面に設置されて玄関先の来訪者を撮像するカメラ101と、居住者と会話するための子機音響部103と、居室親機2を呼び出すための呼出ボタン102と、居室親機2と通信するための子機I/F104で構成されている。
居室親機2は、来訪者と会話するための親機音響部207と、玄関子機1から送られてきた映像信号を表示するモニタ204と、撮像された映像より人物と人物以外を識別する識別部201と、識別した人物の移動を追跡する第1〜第3の追跡部202(202a,202b,202c)と、移動追跡した人物の移動が異常である場合に報知する報知部203と、居室親機2の各部を制御するCPU205と、玄関子機1と通信するための親機I/F208で構成されている。
以下、動作について説明する。
【0019】
玄関子機1に備えられたカメラ101は常時作動しており、連続して玄関の画像を撮像している。撮像された画像は玄関子機1の子機I/F104から居室親機2の識別部201に伝送される。識別部201は人物の有無を識別する。なお、識別部201における、人物とその他の物体との区別を可能とする詳細な動作については省略するが、先行技術としては、一例として、特許文献1である特開2009−181220号公報に記載の方法を使用することができる。
識別部201が人物を識別すると、第1の追跡部202aに識別情報を伝送する。第1の追跡部202aは、識別された人物に対して追跡を行い、その移動方向、移動の経緯を情報として記憶する。
なお、識別部201における、人物とその他の物体との区別を可能とする技術、及び第1〜第3の追跡部202(202a,202b,202c)における、識別された人物に対して追跡を行う技術としては、特許文献1である特開2009−181220号公報に記載の方法を使用することができるため、人物の識別、及び移動方向、移動の経緯の特定のための詳細な動作については省略する。
【0020】
第1の追跡部202aは、例えば識別された人物が、通常の人物が移動しない裏口方向へ移動しようとしたことを認識すると、報知部203に対して異常方向への移動を行なっている人物が存在することを通報する。通報を受けた報知部203は、モニタ204に警報表示を行なうとともに、親機音響部207で警報音を鳴動させて居室親機近傍に警報を報知するとともに、玄関子機1の子機音響部103で警報音を鳴動させて入ってはいけない場所への移動を行なっている人物を威嚇する。これにより、玄関近傍の人物が誤って入ってはいけない場所に移動したりすることを防ぐとともに、人物以外の例えば猫、タヌキ等が移動した時には報知部203が作動しないことから、誤報を防ぐことができる。
【0021】
第2の追跡部202bの動作として、例えば識別された人物が、玄関近傍で左右に歩き回って侵入経路を捜索するなど、通常の訪問者ではあり得ないほどのうろつきをしたことを認識すると、報知部203に対してうろつきを行なっている人物が存在することを通報する。通報を受けた報知部203は、モニタ204に警報表示を行なうとともに、親機音響部207で警報音を鳴動させて居室親機近傍に警報を報知するとともに、玄関子機1の子機音響部103で警報音を鳴動させてうろつきを行なっている人物を威嚇する。これにより、玄関近傍で人物がうろつくことを防ぐとともに、人物以外の例えば猫、タヌキ等がうろついた時には報知部203が作動しないことから、誤報を防ぐことができる。
【0022】
第3の追跡部202cの動作として、例えば識別された人物が、玄関子機1に接近した後、侵入経路の発見に失敗したために玄関子機1を操作せずに立ち去ろうとしたなど、通常の訪問者ではあり得ない方向への移動をしたことを認識すると、報知部203に対して移動方向が異常である人物が存在することを通報する。通報を受けた報知部203は、モニタ204に警報表示を行なうとともに、親機音響部207で警報音を鳴動させて居室親機近傍に警報を報知するとともに、玄関子機1の子機音響部103で警報音を鳴動させて移動方向が異常である人物を威嚇する。これにより、玄関近傍の人物を早急に逃亡させて再訪を防ぐとともに、人物以外の例えば猫、タヌキ等が移動していた時には報知部203が作動しないことから、誤報を防ぐことができる。
【0023】
また、第1〜第3の追跡部202(202a,202b,202c)は、記述したような人物の不審な移動を検知し、上述の如く報知動作を行なった後、呼出ボタン102が押された場合には、この人物が通常に居住者と会話する意思があると認識し、モニタ204、親機音響部207、子機音響部103で警報表示を行なっていた場合には警報表示を停止し、また、呼出ボタン102が押された後、識別部201が人物を識別しなくなるまで第1〜第3の追跡部202(202a,202b,202c)の動作を停止する。
【0024】
なお、他の方法として、識別部201による検知に代えて、呼出及び通話の何れかが終了後、図示しないタイマによって一定時間は第1〜第3の追跡部202(202a,202b,202c)の動作を停止することもできる。
さらに、上記実施例では、第1〜第3の追跡部202(202a,202b,202c)が報知動作を行なった後、呼出ボタン102が押された場合について説明したが、第1〜第3の追跡部202(202a,202b,202c)が報知動作を行なう前に呼出ボタン102が押された場合にも、識別部201が人物を識別しなくなるまで第1〜第3の追跡部202(202a,202b,202c)が動作を停止することによって誤報を防止することができる。
【実施例2】
【0025】
図3は、本発明の第2の実施例によるインターホン装置の一例を示すシステム構成図であり、ナースコール親機12にはナースコール子機11とカメラ13が接続されている。
図4は、本発明の第2の実施例によるインターホン装置の一例を示すブロック図である。
【0026】
ナースコール子機11は、看護師等の介護者と会話するための子機音響部103と、ナースコール親機12を呼び出すための呼出ボタン102と、ナースコール親機12と通信するための子機I/F104で構成されている。
ナースコール親機12は、患者と会話するための親機音響部207と、カメラ13から送られてきた映像信号を表示するモニタ204と、撮像された映像より人物と人物以外を識別する識別部201と、識別した人物の移動を追跡する第1の追跡部202aと、移動追跡した人物の移動が異常である場合に報知する報知部203と、ナースコール親機12の各部を制御するCPU205と、ナースコール子機11と通信するための親機I/F208で構成されている。
カメラ13は常時作動しており、連続して病室や廊下の画像を撮像している。
カメラ13によって撮像された画像はナースコール親機12の識別部201に伝送される。識別部201は人物の有無を識別する。
識別部201が人物を識別すると、第1の追跡部202aに識別情報を伝送する。第1の追跡部202aは、識別された人物に対して追跡を行い、その移動方向、移動の経緯を情報として記憶する。
第1の追跡部202aは、例えば識別された人物が、通常の人物が移動しない非常口方向へ移動しようとしたことを認識すると、報知部203に対して異常方向への移動を行なっている人物が存在することを通報する。通報を受けた報知部203は、モニタ204に警報表示を行なうとともに、親機音響部207で警報音を鳴動させてナースコール親機近傍に警報を報知する。これにより、病室や廊下近傍の人物が誤って入ってはいけない場所に移動したりすることを防ぐとともに、人物以外の例えばカーテンが揺れた時には報知部203が作動しないことから、誤報を防ぐことができる。
【0027】
第2の追跡部202bの動作として、例えば識別された人物が、病室や廊下近傍で左右に歩き回って徘徊するなど、通常の患者ではあり得ないほどのうろつきをしたことを認識すると、報知部203に対してうろつきを行なっている人物が存在することを通報する。通報を受けた報知部203は、モニタ204に警報表示を行なうとともに、親機音響部207で警報音を鳴動させてナースコール親機近傍に警報を報知する。これにより、病室や廊下近傍でうろついた人物を的確に保護することができるとともに、人物以外の例えばカーテンが揺れた時には報知部203が作動しないことから、誤報を防ぐことができる。
【0028】
第3の追跡部202cの動作として、例えば識別された人物が、廊下の突き当たりに接近した後、何もせずに元来た通路を立ち去ろうとしたなど、通常の訪問者ではあり得ない方向への移動をしたことを認識すると、報知部203に対して移動方向が異常である人物が存在することを通報する。通報を受けた報知部203は、モニタ204に警報表示を行なうとともに、親機音響部207で警報音を鳴動させてナースコール親機近傍に警報を報知する。これにより、病室や廊下近傍でうろついた人物を的確に保護することができるとともに、人物以外の例えばカーテンが揺れた時には報知部203が作動しないことから、誤報を防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
なお、第1及び第2の実施例では、識別部201、第1〜第3の追跡部202(202a,202b,202c)、報知部203については居室親機2あるいはナースコール親機12に独立して備えられているが、識別部201、第1〜第3の追跡部202(202a,202b,202c)、報知部203をCPU205に内蔵しても同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0030】
1・・・・玄関子機
101・・・カメラ
102・・・呼出ボタン
103・・・子機音響部
104・・・子機I/F
2・・・・居室親機
201・・・識別部
202a・・・第1の追跡部
202b・・・第2の追跡部
202c・・・第3の追跡部
203・・・報知部
204・・・モニタ
205・・・CPU
207・・・親機音響部
208・・・親機I/F
11・・・ナースコール子機
12・・・ナースコール親機
13・・・カメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人物を撮像するカメラ(101,13)と、人物と人物以外の物体を識別する識別部(201)と、前記識別部で識別した人物の移動を追跡して禁止区域への移動等の人物位置を検知する第1の追跡部(202a)と、前記追跡部で追跡した人物を対象として作動する報知部(203)とを備えたことを特徴とするインターホン装置。
【請求項2】
人物を撮像するカメラ(101,13)と、人物と人物以外の物体を識別する識別部(201)と、前記識別部で識別した人物の移動を追跡して、その移動が不定方向である等の動作形態異常であると判断する第2の追跡部(202b)と、前記追跡部で追跡した人物を対象として作動する報知部(203)とを備えたことを特徴とするインターホン装置。
【請求項3】
人物を撮像するカメラ(101,13)と、人物と人物以外の物体を識別する識別部(201)と、前記識別部で識別した人物の行動を追跡して、その移動方向が本来ありえない方向に向かう等の移動方向異常であると判断する第3の追跡部(202c)と、前記追跡部で追跡した人物を対象として作動する報知部(203)とを備えたことを特徴とするインターホン装置。
【請求項4】
前記カメラから送られてきた映像信号を表示するモニタ(204)と、子機から呼出された時に来訪者と会話するための親機音響部(207)とを有する居室親機(2)と、
前記居室親機を呼び出すための呼出ボタン(102)と、居住者と会話するための子機音響部(103)とを有する玄関子機(1)を備え、
前記居室親機は、前記呼出ボタンが押下されたら前記報知部の報知動作を停止するCPU(205)を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3何れか1項記載のインターホン装置。
【請求項5】
前記カメラは、前記玄関子機の前面に備えることを特徴とする請求項4記載のインターホン装置。
【請求項6】
前記カメラから送られてきた映像信号を表示するモニタ(214)と、子機から呼出された時に患者と会話するための親機音響部(217)とを有する、病院や介護施設等の介護者の近傍に設置されるナースコール親機(12)と、
前記ナースコール親機を呼び出すために病室に設置された呼出ボタン(112)と、介護者と会話するための子機音響部(113)とを有するナースコール子機(11)を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3何れか1項記載のインターホン装置。
【請求項7】
前記識別部及び前記追跡部は、前記CPUに内蔵して備えることを特徴とする請求項1乃至請求項6何れか1項記載のインターホン装置。
【請求項8】
前記親機音響部は、前記報知部からの指示により警報報知動作を行なうことを特徴とする請求項1乃至請求項7何れか1項記載のインターホン装置。
【請求項9】
前記子機は、前記親機と通話するとともに、報知部作動時に警告音を鳴動する子機音響部(103,113)を有することを特徴とする請求項1乃至請求項7何れか1項記載のインターホン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−74954(P2012−74954A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218803(P2010−218803)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000100908)アイホン株式会社 (777)
【Fターム(参考)】