説明

インフルエンザウイルスH5亜型からのヘマグルチニンに特異的なモノクローナル抗体およびそれらの使用

トリインフルエンザウイルスのK5亜型のヘマグルチニン糖タンパク質の三次元エピトープに特異的であるモノクローナル抗体および関連する結合タンパク質を提供する。その抗体は、標本中のH5亜型AIVの検出および処置のために用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トリインフルエンザウイルス(”AIV”)の検出および処置のための抗体および関連する結合タンパク質に関する。より詳細には、この発明は、AIVの高病原性H5亜型の検出および処置に有用なモノクローナル抗体および関連する結合タンパク質に、ならびに動物およびヒトにおけるAIV感染症の診断、監視および処置のための方法および製品に関する。
【背景技術】
【0002】
H5N1トリインフルエンザウイルスは、次のインフルエンザの世界的流行(pandemic)の原因になる可能性がある。インフルエンザA感染の例年の大発生は進行中の公衆衛生の脅威であり、ヒトがそれに対してほとんど免疫を持たず、結果として破壊的な世界的流行をもたらす新規のインフルエンザ株が周期的に発生する可能性がある。H1N1インフルエンザウイルスにより引き起こされた1918年のスペイン風邪(”Spanish flu”)の世界的流行は、世界中で4000万人を超える人々を殺した。H1N1の起源は直接トリからヒトへ至った可能性があり、またはそれは中間宿主、例えばブタもしくは別のまだ同定されていない動物宿主における潜伏(incubation)を含んでいた可能性がある(1)(参考文献一覧は開示の最後に提供する)。それぞれH2N2およびH3N2インフルエンザウイルスにより引き起こされた1957年の世界的流行および1968年の世界的流行は、両方とも、一方、または両方のヒトに適応したウイルス表面タンパク質がトリインフルエンザ株からのタンパク質により置き換えられた再集合(reassortments)に由来していたようである(2)。
【0003】
H5N1ウイルスは、肉食動物を含む前例のない範囲の宿主に感染する能力を有している。AIV H5N1がヒトに感染する最初に確認された例は、1997年に起きた。高病原性H5N1感染症が家禽およびヒトの両方において発生した。これがトリインフルエンザウイルスのトリからヒトへの直接の伝染が見つかった最初の時であった。その後、世界保健機構(WHO)によると、ヒトのH5N1の症例の総数は2003年に起きた東南アジアにおける最初の大発生以来281件に達しており、169件の死亡を伴っている。インドネシアは、2005年の6月にH5N1ウイルスにより引き起こされたトリインフルエンザのその最初のヒトの症例を報告した。現在までに、それは2007年における症例を報告している唯一の国であり、2007年3月現在で確認されたヒトの症例は81件で、その内の63件が死に至った。
【0004】
インフルエンザウイルスはそれらの核タンパク質およびマトリックスタンパク質の抗原特異性に従って分類される。これらのウイルスは主にA、BおよびC血清型に類別され、タイプAは8個のRNA分節を有し、それは10個のウイルスタンパク質をコードしている。全ての既知のタイプAインフルエンザウイルスは鳥類に由来していた。このカテゴリーのウイルスは他の種、例えばウマ、ブタ、フクロウおよびアザラシに感染することができ、ヒトにも同様に脅威を与えている(23)。インフルエンザAウイルスはさらにエンベロープの糖タンパク質、ヘマグルチニン類(”HA類”)、H1〜H16、およびノイラミニダーゼ類(”NA類”)、N1〜N9(24、25、26)の抗原性の性質によって亜型へと分けられる。HAタンパク質のHA1−HA2接合部におけるタンパク質分解による切断はトリの株における病原性と関連しており、この切断部位周辺の疎水性アミノ酸の存在はH5亜型に特徴的であると信じられている。加えて、HAタンパク質は宿主細胞のシアロシド受容体への付着およびそれに続く膜融合による侵入を仲介していると信じられており(27)、HAタンパク質は中和抗体のための主要な標的として機能していると考えられている(26)。
【0005】
急性呼吸器疾患の大発生の間の検査は、インフルエンザがその原因かどうかを決定することができる。インフルエンザの季節の間、インフルエンザと矛盾しない呼吸器の疾病を示す選択された患者の検査は、インフルエンザが特定の患者集団の中に存在するかどうかを確証するのを助け、医療提供者が呼吸器の疾病を診断および処置するために彼らの臨床判断をどのように使うかを決定するのを助けることができる。迅速なインフルエンザ検査は、抗ウイルス薬物療法を使うかどうかの決定における助けとなる。一部の検査、例えばウイルス培養、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)および血清検査は決まりきった方法であるが、結果が臨床家を助けるのに時宜を得た方式で得られない可能性がある(3)。現在、一般に用いられている迅速な診断検査法のほとんどはモノクローナル抗体を基にした免疫アッセイである(3、4、5)。免疫蛍光法(蛍光抗体染色)は迅速なインフルエンザ診断検査法の選べる手段であり、それは多くの病院の実験室で用いることができ、一般に2〜4時間で検査結果を出すことができる。とりわけ、特異的なモノクローナル抗体の生成は、ほとんどの一般に用いられている迅速、高感度で費用効果のある診断法の基礎となっている。
【0006】
地域的に異なる亜系列(sublineages)の同定は、H5N1ウイルスが地理的に幅広く、大きな遺伝的および抗原性の多様性を有していることを示した。インドネシアからの全てのウイルスがH5N1遺伝子型Zウイルスの異なる亜系列を形成していることを示す系統発生的分析は、この大発生が単一の導入に由来し、それが国中くまなく広がっていることを示唆している(14、15)。インドネシアインフルエンザ分離株を特異的に認識する利用可能なモノクローナル抗体があれば非常に有用であろう。さらに、ベトナムおよびシンガポールインフルエンザ分離株にも及ぶ利用可能なそのmAb類があれば有用であろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明の目的は、AIVのH5亜型に、特にH5インドネシアAIV分離株に特異的に結合するモノクローナル抗体(”mAb類”)および関連する結合タンパク質を提供することである。モノクローナル抗体反応の特異性は、有効な診断試薬のための基礎を提供する。それらに由来するmAb類および結合タンパク質は、療法薬としても有用である可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に従って、H5亜型のヘマグルチニン糖タンパク質の三次元(conformational)エピトープに特異的なモノクローナル抗体および関連する結合タンパク質を提供する。三次元エピトープを標的とするmAb類は、前処理されていない組織、例えば凍結された組織標本ならびに他の生物学的組織および流体においてウイルスを検出するのに有用である。特に、3B1と名付けられたmAbは、インドネシアからの25種類の既知のH5 AIV分離株全てからのH5N1ヘマグルチニンを標的とする。3E8と名付けられた第2のmAbは、これらのAIV分離株の1種類を除く全てからのH5N1ヘマグルチニンを標的とする。mAb 3B1はH5N2およびH5N1/PR8にも結合する。
【0009】
従って、この発明は、実質的にmAb 3B1または3E8のそれらのような三次元H5亜型ヘマグルチニンエピトープへの免疫学的結合特性を有する結合タンパク質を含む。
別の観点において、本発明は、標本においてH5亜型AIVを検出するための方法であって、AIVの、実質的にmAb 3B1または3E8の免疫学的結合特性を有するmAbまたは結合タンパク質との結合を検出することを含む方法を含む。特に、本発明は、その結合タンパク質を利用する免疫蛍光アッセイ、免疫組織化学的アッセイおよびELISA法に関する。本発明はさらに、さらに加えてウイルス試料と、実質的にN1亜型AIVのノイラミニダーゼ糖タンパク質に結合するmAbの免疫学的結合特性を有する結合タンパク質との結合を検出することにより標本中のH5亜型AIVがH5N1であることを確かめるための方法を含む。
【0010】
別の観点において、本発明は、実質的にmAb 3B1または3E8の免疫学的結合特性を有する結合タンパク質を含むAIVの検出のためのキットに関する。そのキットはさらに、実質的にN1亜型AIVのノイラミニダーゼ糖タンパク質に結合するmAbの免疫学的結合特性を有する結合タンパク質を含むことができる。
【0011】
本発明はさらに、H5 AIV株、例えばH5N1 AIV株に感染した対象を処置する方法であって、その対象に有効量の実質的にmAb 3B1または3E8の免疫学的結合特性を有する1種類以上の組み換えモノクローナル抗体または結合タンパク質またはそれらの断片を投与することを含む方法に関する。その組み換え抗体または抗体断片は、mAb類3B1または3E8の可変領域を含むが恒常領域を含まないのが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1A〜1Dは、AIV H5N1に感染したMDCK細胞をウイルス感染無しのMDCK細胞に対して比較した代表的なIFA画像である。図1Aは、MDCK細胞においてH5N1が検出されている画像である。図1Bでは、紫外線と通常の光の合併が、感染していない細胞と比較した、ウイルスに感染した個々の細胞を示した。図1Cに示したように、ウイルス感染の無いMDCK細胞には蛍光シグナルは無い。図1Dは、図1Cと同じ細胞における紫外線と通常の光の合併を示す。
【図2】図2Aおよび2Bは、MDCK細胞における、モノクローナル抗体のインフルエンザウイルスの中和活性を示す。図2Aでは、MDCK細胞はモノクローナル抗体がH5N1ウイルス感染を中和した後FITC蛍光で染色された。図2Bでは、MDCK細胞はモノクローナル抗体のH5N1ウイルス感染の中和無しにFITC蛍光で染色された。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、AIVのH5亜型のヘマグルチニンエンベロープ糖タンパク質に特異的に結合するmAb類および関連する抗原結合タンパク質に向けられている。特に、そのmAbまたは関連する抗原結合タンパク質は、次のものの免疫学的結合特性を有する:2007年3月20日にアメリカ培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection)(ATCC)に寄託され、受け入れ番号PTA−8247を割り当てられた、ハイブリドーマ3B1により産生されるmAb 3B1、または2007年7月10日にATCCに寄託され、受け入れ番号PTA−8527を割り当てられた、ハイブリドーマ3E8により産生されるmAb 3E8。本発明はさらに、これらのハイブリドーマを包含し、本発明のmAb類および結合タンパク質の継続的な源を提供する。本発明はさらに、H5亜型AIVの感染の検出および診断のための方法ならびに本発明のmAb類または結合タンパク質を含むアッセイキットに関する。好ましい態様において、本発明はさらに、H5亜型AIVの感染がH5N1亜型AIVの感染であることを確かめるための方法およびその決定をするためのアッセイキットに関する。その診断法は、mAb 3B1または3E8の免疫学的結合特性を有するmAbまたは関連する抗原結合タンパク質の、N1亜型AIVのノイラミニダーゼ糖タンパク質を認識するmAbまたは関連する抗原結合タンパク質と組み合わせた使用を含むことができる。全て、または本質的に全てのインドネシアからのH5N1分離株からのノイラミニダーゼの三次元エピトープに結合する1種類のmAbは、2007年7月10日にATCCに寄託され、受け入れ番号PTA−8526を割り当てられた、mAb 6C6である。キットは、H5亜型ヘマグルチニン糖タンパク質に結合する本発明のmAbまたは結合タンパク質およびN1亜型ノイラミニダーゼ糖タンパク質に結合するmAbまたは結合タンパク質を含むことができる。
【0014】
本発明はさらに、有効量の本発明の1種類以上の抗体または関連する結合タンパク質の可変領域を含む抗体断片または組み替え抗体の投与により、H5AIV株に感染した対象を処置する方法に関する。特に、この態様において、対象はAIVのH5N1亜型のインドネシア分離株に感染している。この発明の抗体は、起こり得るインフルエンザの大発生の到来の際に予防策として対象に投与することもできる。この場合、投与される有効量の抗体は、H5 AIV感染症を処置するのに用いられる量の約半分である。
【0015】
様々な用語が本明細書で用いられ、それは下記の意味を有する:
mAbまたは関連する結合タンパク質の”免疫学的結合特性”という用語は、その文法形式の全てにおいて、mAbまたは結合タンパク質のその抗原に対する特異性、親和性および交叉反応性を指す。
【0016】
用語”三次元エピトープ”は、H5亜型ヘマグルチニン糖タンパク質の中に、その未変性の三次元の形で存在する、mAbまたは関連する結合タンパク質の結合部位を指す。
用語”結合タンパク質”は、本発明のmAbまたは本発明のmAbの免疫学的結合特性を有するmAbの抗原結合部位を含むタンパク質を指し、下記で記述するそれらを含む。
【0017】
本発明は好都合なことに、動物をAIV亜型H5N1のインドネシア分離株で免疫することによりmAb 3B1の結合特性を有するモノクローナル抗体を調製する、または動物をAIV亜型H5N1のインドネシア分離株で免疫することによりmAb 3E8の結合特性を有するモノクローナル抗体を調製するための方法を提供する。あらゆるその抗原は、望まれる免疫学的結合特性を有する抗体を生じさせるための免疫原として用いることができる。その抗体には、mAb 3B1または3E8の抗原結合配列を含むモノクローナル抗体、キメラ抗体、単鎖抗体、Fab断片、およびタンパク質が含まれるが、それらに限定されない。
【0018】
本発明のmAb類は、培養中の連続継代性細胞株(continuous cell lines in culture)による抗体分子の産生を提供するあらゆる技法により産生することができる。その方法には、元は1975年にKohlerおよびMilsteinにより開発されたハイブリドーマの技法(Nature 256:495-497)、さらにトリオーマの技法、ヒトB細胞ハイブリドーマの技法(Kozbor et al., 1983, Immunology Today 4:72)、およびヒトモノクローナル抗体を産生するためのEBV−ハイブリドーマの技法(Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy Alan R. Liss, Inc., pp. 77-96(1985)における)が含まれるが、それらに限定されない。ヒトの抗体を用いることができ、それはヒトのハイブリドーマを用いることにより(Cote et al., 1983, Proc. Nat ’l. Acad. Sci. U.S.A., 80:2026-2030)、またはインビトロでヒトB細胞をEBVウイルスを用いて形質転換することにより(Cole et al., 1985, Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, pp. 77-96における)得ることができる。さらに、本発明のマウス抗体分子、例えばmAb 3B1または3E8からの配列を導入して適切な生物学的活性を有するヒト抗体分子からの遺伝子と一緒にすることによる”キメラ抗体”または”ヒト化抗体”の産生のために開発された技法(Morrison et al., 1984, J. Bacteriol. 159-870; Neuberger et al., 1984, Nature 312:604-608; Takeda et al., 1985, Nature 314:452-454)を用いることができる。キメラ抗体は、ヒトのFc部分およびマウス(または他のヒト以外)のFv部分を含む抗体である。ヒト化抗体は、マウス(または他のヒト以外)の相補性決定領域(CDR)がヒト抗体の中に組み込まれた抗体である。キメラおよびヒト化抗体は共にモノクローナルである。そのヒトまたはヒト化キメラ抗体は、ヒトの疾患または障害のインビボ診断または療法における使用に好ましい。
【0019】
本発明に従って、単鎖抗体の産生に関して記述された技法(米国特許第4,946,778号)を、本発明の単鎖抗体を提供するように適合させることができる。本発明の追加の態様は、Fab発現ライブラリーの構築に関して記述された技法(Huse et al., 1989, Science 246: 1275-1281)を利用して、本発明の抗体、またはその誘導体、もしくは類似体に望ましい特異性を有するモノクローナルFab断片の迅速かつ容易な同定を可能とする。
【0020】
抗体分子のイディオタイプを含む抗体断片は既知の技法により生成することができる。例えば、その断片は次のものを含むがそれらに限定されない:抗体分子のペプシン消化により生成することができるF(ab’)断片;F(ab’)断片のジスルフィド架橋を還元することにより生成することができるFab’断片、ならびに抗体分子をパパインおよび還元剤で処理することにより生成することができるFab断片。その抗体断片は、本発明のポリクローナルまたはモノクローナル抗体のいずれから生成することもできる。
【0021】
抗体の産生において、望ましい抗体のスクリーニングは当分野で既知の技法、例えば放射性免疫アッセイ、ELISA(酸素結合免疫吸着アッセイ)、”サンドイッチ”免疫アッセイ、免疫放射定量アッセイ、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、インサイチュ免疫アッセイ(例えば金コロイド、酵素または放射性同位体標識を用いる)、ウェスタンブロット、沈降反応、凝集アッセイ(例えばゲル凝集アッセイ、血球凝集アッセイ)、免疫蛍光アッセイおよび免疫電気泳動アッセイ等により成し遂げることができる。1態様において、抗体の結合は一次抗体上の標識を検出することにより検出される。別の態様において、一次抗体は二次抗体または他の試薬の一次抗体への結合を検出することにより検出される。さらに別の態様において、二次抗体は標識されている。免疫アッセイにおいて結合を検出するための手段は当分野で既知であり、本発明の範囲内である。
【0022】
前述の抗体を、AIVのH5亜型の検出または位置測定に関して当分野で既知の方法、例えば、ウェスタンブロッティング、ELISA、放射性免疫アッセイ、免疫蛍光アッセイ、免疫組織化学的アッセイ、および同様のものにおいて用いることができる。本明細書で開示される技法は、AIVのH5亜型の質的および定量的測定に、ならびにそのウイルスに感染した動物またはヒトの診断および監視に適用することができる。
【0023】
本発明には、AIVのH5亜型の質的および/または定量的測定のためのアッセイおよび検査キットも含まれる。そのアッセイ系および検査キットは、例えば放射性原子、蛍光性の基または酵素を用いた標識、本発明のmAbもしくは関連する結合タンパク質への、またはその結合パートナーへの標識のカップリングにより調製される標識された構成要素を含んでいてよい。そのアッセイまたは検査キットは、さらに使用のための免疫アッセイの技法の技術者に周知の試薬、希釈剤および説明書を含んでいてよい。
【0024】
本発明の特定の態様において、そのキットは、選択された方法、例えば”競合的”、サンドウィッチ””、”DASP”および同様のものに依存して、少なくとも本発明のmAbまたは関連する結合タンパク質、生物学的試料中のAIVへのそのmAbまたは関連する結合タンパク質の免疫特異的結合の検出のための手段、および使用のための説明書を含むであろう。キットは陽性および陰性対照を含んでいてもよい。それらは自動化された分析器または自動化された免疫組織化学的スライド染色機器と共に使用されるように設計されてもよい。
【0025】
本発明のアッセイキットはさらに二次抗体または結合タンパク質を含んでいてよく、それは標識してよく、または固体支持体への付着のために提供して(または固体支持体に付着させて)よい。その抗体または結合タンパク質は、例えば、AIVに結合するものであってよい。その二次抗体または結合タンパク質は、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体であってよい。
【0026】
H5亜型ヘマグルチニンタンパク質に対するモノクローナル抗体は、動物をAIVまたはH5タンパク質またはそれらの断片で免疫することにより調製してよい。好ましい方法には、H5亜型HA1遺伝子の増幅とそれに続く遺伝子の発現、H5亜型組み換えタンパク質の回収および精製ならびに精製したタンパク質の免疫原としての使用が含まれる。例えば、H5N1 AIVを、ニワトリ胚にそのウイルスの利用可能な株を接種することにより増殖させ、続いてウイルスRNAを分離する。HA1遺伝子を逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)により増幅し、次いでバキュロウイルスベクターの中にクローン化することができ、それを昆虫細胞中でH5タンパク質を発現させるために用いる。そのように生成されたタンパク質を、次いでマウスまたは他のハイブリドーマの生成に適した種を免疫するのに用いることができる。
【0027】
ハイブリドーマを、H5タンパク質に特異的に結合することができ、それらを他のAIV亜型から識別する高親和性mAb類を産生するそれらの能力に関してスクリーニングする。本発明に従って、ウイルス中和能力を有する抗体はH5亜型ヘマグルチニンタンパク質中の三次元エピトープを認識することができることが見出だされた。この発見は、それぞれの中和mAbの存在下でのメイディン・ダービー・イヌ腎臓(MDCK)細胞またはニワトリ胚における1〜2回の選択の後の、ウイルスの回避変異体の発生の結果であった。HA1遺伝子をこれらの中和回避変異体からRT−PCRによりクローニングし、配列決定して点変異を同定した。このグループの抗体において、mAb類3B1および3E8において2種類の中和エピトープが見つかった。中和回避能力は血球凝集阻害アッセイを用いて確認した。
【0028】
HA1は338アミノ酸を含む。タンパク質上の線状エピトープの分布を研究するためには、切り詰めた(truncated)、および変異導入した断片を、mAb類との結合に関して、例えばウェスタンブロットまたは類似の技法により試験するのが好都合である。線状エピトープは、変性したH5亜型タンパク質、例えばホルマリン固定された組織において生じる変性したH5亜型タンパク質の、免疫組織化学的染色法を用いた検出において優れた性能を示すmAb類の結合標的として同定することができる。H5亜型mAb類のこの方式でのマッピングは、感染性H5N1 AIVのさらなる研究およびより有効な臨床診断のためのプラットホームを提供する。
【0029】
本発明はまた、AIVのH5亜型のヘマグルチニン分子の抗原構造のよりよい理解を提供した。本発明のmAb類および関連する結合タンパク質は、凍結切片および生物学的標本においてこの高病原性ウイルスを検出するための手段を提供する。
【0030】
mAb類3B1および3E8は凍結組織切片に対して非常に有効であるが、ホルマリン固定された組織中の抗原は検出しない。エピトープマッピングによって、モノクローナル抗体3B1および3E8はH5N1ウイルスの三次元エピトープを標的としていることが明らかになった。これらの抗体は、組織切片への事前の処理無しでこれらのウイルス抗原に結合し、認識することができた。
【0031】
この発明は、H5亜型AIVを検出するための便利で非常に特異的かつ感度の高い手段を提供する。その手段の1つはELISA形式である。mAb 3B1および3E8のそれぞれは捕捉抗体として、単独または組み合わせで用いることができる。単独で用いられるなら、選択された抗体を捕捉抗体として用いることができ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)とコンジュゲートしたその同じ抗体を検出抗体として用いることができる。
【0032】
H5ウイルスを検出するための他の免疫学的方法には、例えばドットブロットおよびインサイチュハイブリダイゼーション形式が含まれる。
この発明の好ましいELISA検査は、H5N1トリインフルエンザウイルスに感染しているインドネシアの家禽およびヒトからのHA抗原を検出することが可能であり、これはトリおよびヒト両方のH5感染症の検出に本発明が有用であることを示す。
【0033】
この発明のH5亜型mAb類は、診断の手段として他の一般に行われている方法に対して利点を有する。第1に、そのmAb類は高感染性H5亜型AIVに高度に特異的である。その高度に特異的なモノクローナル抗体は、トリインフルエンザの診断の分野における画期的躍進を表す。本発明の前に、全て、またはほぼ全てのインドネシアH5N1ウイルスを検出することができるモノクローナル抗体は報告されていなかった。本発明のモノクローナル抗体は、この2年間以内にインドネシアにおいて集められたH5N1ウイルスの全て、または本質的に全てを認識することができる。加えて、これらのmAb類は、H5 AIVの検出に安全かつ便利な診断アプローチを提供する。凍結切片のスライドは、極低温で長期間保管することができ、感染症のさらなる診断および監視を容易にする。その抗体は診断のために、および処置のための組み換え抗体の調製のために有用であり、そのようなものとして、可能性のあるインフルエンザの世界的流行の抑制における非常に有用な手段であろう。
【0034】
本発明の別の態様は、H5トリインフルエンザの中和回避変異体に関する。用語”中和回避変異体”は、H5ウイルスにおいて抗原連続変異を引き起こし、中和エピトープに影響を及ぼす、ヘマグルチニンをコードする遺伝子における点変異により高められた(raised)変異ウイルスを指す。中和回避変異体は、その親ウイルスを中和するのに有効な特定のモノクローナル抗体による中和を逃れることができる。回避変異体の手動のスクリーニングでは、親ウイルスを特定の中和抗体と共に保温し、宿主、例えばMDCK細胞またはニワトリ胚の中に接種する。2〜3回のスクリーニングの後、その中和mAbに関する回避変異体をクローニングし、HA1遺伝子の配列決定を行う。変異したアミノ酸は親ウイルスの配列とのアラインメントにより決定され、変異した部位は中和mAbにより認識される中和エピトープを構成するアミノ酸の1個を示す。
【0035】
本発明において、3B1回避変異体はH5N1 AIV(A/インドネシア/CDC669/2006 (H5N1))(GenBank受け入れ番号CY014481; GenBank GI # 113497155)から、3B1中和モノクローナル抗体により生じる。3E8回避変異体はH5N1 AIVの同じ株から3E8中和抗体により生じる。変異部位を下記の実施例3、表4にリストする。
【0036】
中和回避変異体は、それらが親ウイルスに特異的に結合する特定の中和抗体ではもはや認識することができない点においてそれらの親ウイルスと異なる。これゆえに、これらの変異体は上記の教えに従う新規モノクローナル抗体の産生のためにマウスを免疫するのに用いることができる。新規mAb類の中から、変異したエピトープを正確に認識するモノクローナル抗体を選別することができ、次いでそれを用いて親ウイルス以外のトリインフルエンザウイルスへの相補的監視(complementary surveillance)を提供することができる。この過程を数世代通して繰り返すことにより、さらなる回避変異体を見つけることができ、さらなる中和抗体を得ることができる。これらの抗体を本発明の方法において用いることができる。
【0037】
本発明の別の態様において、本発明の抗体および関連する結合タンパク質は、H5 AIV感染症、特にAIVのH5N1亜型からの感染症を患う対象を処置するために投与することができる。本発明の抗体および関連する結合タンパク質は、インフルエンザの世界的流行または世界的流行の前兆の場合に予防措置として対象に投与することもできる。抗体および関連する結合タンパク質は、1回量で、または繰り返しの投与で、場合により放出が遅い形で投与することができる。投与は処置される対象の体におけるその作用部位に抗体を到達させることのできるあらゆる手段により、例えば静脈内に、筋肉内に、皮内に、経口で、または鼻に、なされることができる。通常は、抗体は医薬的に許容できる希釈剤またはキャリヤー、例えば無菌の水溶液中で投与され、組成物はさらに1種類以上の安定化剤、抗原性補強剤、可溶化剤、緩衝液等を含むことができる。厳密な投与の方法、組成物および個別の投与量は、治療の時に、対象の個々の必要性に依存して、対象の年齢、体重、全身の健康、ならびに彼のまたは彼女の症状の性質および程度、さらに与える処置の頻度のような要素を考慮して決定され、調整されるであろう。一般に、抗体がH5 AIV感染症を患う患者を処置するために投与される場合、投与される抗体の投与量は、約0.1mg/kg〜約1mg/kg体重の範囲内である。通常、予防措置として投与される場合、投与量は約半分、すなわち約0.05mg/kg〜約0.5mg/kg体重の範囲内に低減される。
【0038】
本発明の単一の組み換え抗体または結合タンパク質を療法上の目的のために投与することができ、または2種類以上の組み合わせを投与することができる。もし1世代以上の中和回避変異体に対する抗体が産生された場合、その抗体および上記の3B1および/または3E8抗体を治療用の抗体のカクテルとして投与することができる。
【0039】
下記の実施例を、本発明を実行する好ましい方式を説明するために提供する。本発明は実施例の詳細に限定されるのではなく、添付した特許請求の範囲の全範囲と等しい。
【実施例】
【0040】
実施例1
ハイブリドーマの生成
H5N1/PR8以外の全ての生きたH5N1インフルエンザウイルスをインドネシアから得た。H5N1/PR8は疾病対策センター(米国)から得た。それは非病原性組み換えウイルスであり、それはベトナムでヒトに感染したAIV H5N1ウイルス(A/ベトナム/1203/2004)のHAおよびNA遺伝子を含む。H5N2(A/ニワトリ/シンガポール/98)およびH7N1(A/ニワトリ/シンガポール/94)を、シンガポールの農産食品&家畜管理局(AVA)から得た。これらのウイルスストックを用いて9〜11日齢の発育鶏卵(Chew’s Poultry Farm,シンガポール)に感染させ、2世代複製させた。次いで尿膜腔液を吸出し、ヘマグルチニンアッセイ(HA)を用いてウイルスの力価を測定した。不活化したH5N1(A/ガチョウ/広東/97)をRNA抽出のために用いて、RT−PCRによりHA1遺伝子を増幅した。メイディン・ダービー腎臓細胞(MDCK, ATCC CCL34)細胞は、10%FBSを含むDMEM培地中で、37℃、5%COにおいて増殖させた。
【0041】
ウイルスの精製は、ウイルスを含む尿膜腔液を10,000rpmで30分間遠心分離して破片を除去し、続いて上清を40,000rpmで3時間超遠心することにより実施した。ウイルスのペレットをPBS中で懸濁した。
【0042】
モノクローナル抗体を、透明になった流体から、プロテインA親和性カラム(Sigma Aldrich;米国ミズーリ州セントルイス)およびImmunopure(登録商標) IgM purification kit(Pierce Biotechnology;米国イリノイ州ロックフォード)を用いて、製造者の説明書に従って精製した。抗体の濃度を、ND−1000分光光度計(NanoDrop Technologies;米国デラウェア州ウィルミントン)を用いることにより測定した。
【0043】
BALB/cマウスを、0.2mlの体積中の、オイルアジュバントMontanide ISA563(Seppic,フランス)と一緒の不活化したA/インドネシア/ニワトリ/H5N1のトリインフルエンザウイルスを用いて免疫した。腹腔内注射を0、14、28および42日目において行った。De St. GrothおよびScheidiggerが記述したように、免疫したマウスからの脾細胞および骨髄腫細胞(SP2/0)を集めて融合させてハイブリドーマを生成した(16)。ピポキサンチン−アミノプテリン−チミジン(HAT)培地を用いた選択の後、14日後に有意な増殖を示しているハイブリドーマからの培地を、免疫蛍光アッセイ(IFA)により、A/インドネシア/ニワトリ/H5N1に感染したMDCK細胞に対する特異的な抗体の存在に関して検査した。選択されたハイブリドーマを限界希釈によりクローニングし、再同定し、二度目のクローニングを行い、IFAにより再検査した。一度確立されると、ハイブリドーマ株は組織培養で増殖され、将来の使用のために液体N中で凍結された。
【0044】
実施例2
IFAによるmAb類のスクリーニング
免疫蛍光アッセイを用いて、抗体と抗原標的の間の相互作用を確かめた。96ウェルプレートにおいて、インフルエンザウイルス分離株A/インドネシア/ニワトリ/H5N1で一夜感染させたMDCK細胞をPBS−T(PBS中0.05% Tween−20、pH 7.4)ですすいだ。細胞を、あらかじめ冷却した100%エタノール中でそれらを10分間保温することにより固定した。細胞をPBS−Tで3回洗浄し、次いで1%BSA、PBS−T中で30分間保温して抗体の非特異的な結合を遮断した。次いでそれらを96ウェルプレートのウェル中で100μlのハイブリドーマ培養液と共に室温で2時間、または4℃で一夜保温した。細胞をPBS−Tで洗浄し、1%BSA、PBS−T中1:100希釈の二次抗体、蛍光標識したヤギ/ウサギ抗マウス抗体(DakoCytomation,米国)と共に室温で60分間保温した。ウェルをPBS−Tで洗浄した。PBS−Tを除去し、PBS中50%グリセロールを添加した。蛍光シグナルを、顕微鏡下で紫外線を用いてチェックした。
【0045】
感染していないMDCK細胞を、陰性対照として用いた。不活化したH5N1ウイルスで免疫したマウスからの血清を陽性抗体対照として用いた。それぞれのハイブリドーマの上清と共に保温したMDCK細胞を対照と比較することにより、陽性の染色結果を与えるハイブリドーマの上清を、限界希釈によるクローニングのために選択した。安定したmAb産生ハイブリドーマをこの手順により得た。
【0046】
mAb3B1と名づけられた抗体は、全ての25種類のインドネシアからの分離株からのH5N1ヘマグルチニンに結合することが分かった。mAb 3E8は、それらの分離株の1種類、A/インドネシア/CDC594/2006(H5N1)を除く全てに結合することが分かった。mAb 3B1は、H5N1/PR8およびH5N2を用いたIFAにおいても陽性であった。これらのmAb類と反応するAIV株を、実施例の節の最後の表6においてリストする。
【0047】
代表的なIFA画像を図1に示す。
実施例3
H5およびN1亜型mAb類の特性づけ
mAb類のアイソタイプ同定。mouse mAb isotyping kit(Amersham Bioscience,イギリス)を用いてアイソタイプ同定を実施した(データは示していない)。mAb 3B1および3E8は両方ともIgMであると決定された。
【0048】
血球凝集阻害試験(HI)。一定量の血球凝集(HA)抗原を微量定量プレート(NUNC)中のそれぞれのウェルに添加した。次いで検査する抗体を1番目のウェル中に入れ、系列希釈した。プレートを1時間保温し、次いでニワトリの赤血球(RBC)をそれぞれのウェルに添加した。もし抗体が検査血清中に存在したならば、RBCはHA抗原と共に凝集しなかったであろう。HI陰性のウェルは、ウェルの底を覆う凝集したRBCの広がったシートを有したであろう。HI陽性のウェルは、凝集していないRBCの十分に境界を定められたボタン(well−circumscribed button)を有したであろう。
【0049】
培養液中のmAb 3B1は、様々なインドネシアのH5N1分離株について、およびH5N2について、16から32まで、ならびにH5N1/PR8についてわずか約2のHI活性を有していた。mAb 3E8はインドネシア分離株CDC594、H5N2またはH5N1/PR8についてHIを有していなかったが、全ての他のインドネシアH5N1分離株について16〜32の範囲内のHIを有していた。
【0050】
ウイルスマイクロ中和アッセイ。MDCK細胞を、50%組織培養感染量(TCID50)の決定に用いた。2倍系列希釈した抗体を96ウェル細胞培養プレートに入れた。希釈した抗体を、インフルエンザウイルスを100TCIS50/ウェルで含む等体積の希釈液と混合した。5%COの湿気のある雰囲気中で37℃において2時間保温した後、1.5×10/mlのMDCK細胞100μlをそれぞれのウェルに添加した。プレートを37℃および5%COにおいて18時間保温した。単層をPBSで洗浄し、100%エタノール中で10分間固定した。ウイルスタンパク質の存在を、インフルエンザH5N1に対するマウス血清を用いるELISAにより検出した。
【0051】
ELISAを室温で実施した。固定されたプレートをPBS−T(0.05%Tween20を含むPBS)で3回洗浄した。1%ウシ血清アルブミンを含むPBS−T中で1/500希釈したマウス血清抗体をそれぞれのウェルに添加し、室温で1時間保温した。プレートを洗浄緩衝液中で4回洗浄し、1/2000希釈したホースラディッシュペルオキシダーゼ標識ヤギ抗マウス免疫グロブリン(DakoCytomation)100μlをそれぞれのウェルに添加した。プレートを室温で1時間保温し、次いで洗浄緩衝液で6回洗浄した。100μlの新しく調製した基質(0.03%過ホウ酸ナトリウムを含むpH5.0の0.05Mリン酸クエン酸緩衝液20mlにつき10mgのo−フェニレンジアミン二塩酸塩)をそれぞれのウェルに添加し、プレートを室温でおおよそ5分間保温した。反応を50μlの2N硫酸で停止した。吸光度を490nmにおいて(A490)、自動化されたプレート分光光度計(Mitenyi Biotec)を用いて測定した。
【0052】
表1
【0053】
【表1】

【0054】
表2
【0055】
【表2】

【0056】
表1および表2は、mAb3B1およびmAb 3E8が感染したMDCK細胞においてH5N1分離株を中和したことを示す。モノクローナル抗体の存在下で、ELISAの読みの結果は、抗体の非存在下のそれらと比較しておおよそ2分の1減少しており、これは感染したMDCK細胞上でウイルス粒子が中和されていたことを示唆している。
【0057】
ELISAの読みが高いバックグラウンドを有していた一方でIFAは視認できるので、モノクローナル抗体の中和能力を確証するため、IFAの検出法によりMDCK細胞上で中和試験を行った。mAb 3B1は全てのH5N1分離株の感染を中和することができ、一方でmAb 3E8は594を除く全ての分離株を中和することができた。これらの結果はIFAおよびHIの試験結果と一致していた。
【0058】
図2Aおよび2Bは、AIVに感染したMDCK細胞上でのmAbの中和活性を図説している。図2Aおよび2Bはそれぞれ、mABのウイルス感染の中和の後に、およびmAbの中和無しで、FITC蛍光で染色したMDCK細胞を示している。
【0059】
MDCK細胞上での、およびニワトリ胚中でのウイルス中和の力価測定(Titration)。MDCK細胞および10日齢の胚を、それぞれ50%組織培養感染量(TCID50)および50%胚感染量(EID50)の測定のために用いた。MDCK細胞(2x10/ml)を、70%〜90%コンフルエンスまで増殖させた。ニワトリ胚を、10−1から10−8までの一連の希釈比を用いてそれぞれのウイルスに感染させ、その後の尿膜腔液を、TCID50およびEID50に関して検査した。次いでそのウイルスを、それらの対数期(ウイルス感染に最も感受性が高い)にあるMDCK細胞および10日齢のニワトリ胚の両方に感染させるのに用いた。感染していないMDCK細胞および尿膜腔液を陰性対照として用いた。細胞を35℃で培養し、CPEを観察した。ReedおよびMuenchの数学的技法(17)を用いて、感染価をTCID50/100μlおよび1000EID50/200μlとして表し、それぞれのウイルスを、それぞれ50μlおよび100μl中に100TCID50および500EID50を有するようにそれぞれ希釈した。系列希釈したmAb類3B1および3E8は、終濃度100TCID50および500EID50のウイルス(例えばA/インドネシア/DCD669/H5N1)に感染したMDCK細胞および胚を中和することができた。表3参照。表3における数は、感染したMDCK細胞およびニワトリ胚中でウイルスの終濃度100TCID50および500EID50において、mAbがウイルスをなお検出および中和することができた最も高いH5N1ウイルスの希釈率を表している。
【0060】
表3
【0061】
【表3】

【0062】
エピトープマッピング
1.線状エピトープまたは三次元エピトープの決定。ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)およびウェスタンブロッティングを用いてモノクローナル抗体の線上エピトープを同定した。SDS−PAGEおよびウェスタンブロッティングは、Ausubel et al.により記述された(18)ように実施した。GSTタグを有する、H5N1からの組み換えHA1を発現させ、10%SDS−PAGEで処理した。組み換えHA1は約32kDであり、発現したGSTタグを有するHA1は約57kDである。タンパク質試料を試料緩衝液と混合することによりタンパク質試料を調製し、100℃で5分間加熱した。短時間の遠心分離の後、全細胞溶解産物をロードした。SDS−PAGEにより分離されたタンパク質を、クマシーブルー(0.25%クーマシーブリリアントブルーR−250、40%メタノールおよび10%氷酢酸)での30分間の染色により可視化し、次いで脱染溶液(40%メタノールおよび10%氷酢酸)中で一夜脱染した。ウェスタンブロットのため、Transblot Cell(Bio−Rad)を用いてタンパク質をゲルからニトロセルロース膜に転写した。電気転写(electrotransfer)の後、膜をPBS−T中5%脱脂乳でブロッキングし、上記のドットブロットと同じ方式で処理した。膜を、0.05%Tween−20を含むPBS(PBS−t)中5%脱脂乳(Bio−Rad,カナダ)で60分間ブロッキングした。ブロッキングの後、希釈していないmAb類を含むハイブリドーマ培養液を膜と一緒に60分間保温し、PBS−Tで洗浄し、次いでヤギ抗マウスホースラディッシュペルオキシダーゼコンジュゲート抗体(1:2000希釈)(DakoCytomation)と一緒に60分間保温した。膜を洗浄し、次いでECL Western blotting detection reagent(Amersham Biosciences)を用いて現像し、KODAK Scientific imaging film(KODAK BioMAX 米国ミシシッピ州)に感光させた。
【0063】
mAb 3B1またはmAb 3E8のどちらも組み換えHA1と反応せず、それはこれらのmAb類のエピトープが三次元であることを示していた。
2.H5亜型mAb類の回避変異体の選択および三次元/中和エピトープのマッピング。親ウイルスA/インドネシア/CDC669/2006(H5N1)の10倍系列希釈液を等体積のmAbと混合した。室温で1時間保温した後、混合物を200μg/mlのTPCK処理トリプシン(Sigma)および0.001% DEAE−デキストラン(Sigma)を含むDMEM培地中のMDCK細胞の単層の上に接種した。35℃において7日間の後、ウイルス上清を集めてさらなる選択を行った。回避変異体をクローニングし、RNA抽出のために集めた。mAbによる中和に対する耐性の原因である点変異を、親ウイルスとの配列アラインメントにより決定した。変異体ウイルスがmAbによる中和を逃れることを可能にするこの変異の能力を、中和アッセイおよびヘマグルチニン阻害アッセイにより確かめた。
【0064】
中和mAb 3E8を用いて回避変異体を選択した。回避変異体をクローニングし、RNA抽出のために集めた。配列によると、点変異はHA配列(GenBankで入手可能な配列;GenBank受け入れ番号CY014481;GenBank GI # 113497155)のヌクレオチド614において起きている。ヌクレオチド614”G”は”A,”に変わっており、それは結果としてアミノ酸205におけるアルギニンからリシンへの変異をもたらす。その変異は、変異体ウイルスがmAb 3E8からの抗体による中和を逃れることを可能にし、それは中和アッセイおよびヘマグルチニン阻害アッセイにより確かめられる。この結果は、mAb 3E8がヘマグルチニン上のアミノ酸205を含むエピトープを標的としていることを示した。mAb 3B1に関して同じ方法を用いて別の中和回避変異体を同定した。結果を表4に示し、それはAIV(A/インドネシア/CDC669/H5N1)のヘマグルチニン分子上のmAb中和エピトープの位置を示す。
【0065】
表4
【0066】
【表4】

【0067】
表4.MAb類によるAIV(A/インドネシア/CDC669/H5N1)のヘマグルチニン分子上の中和エピトープの位置決定。
予防および療法。MDCK細胞およびニワトリ胚上でのH5N1に対する中和能力に基づいて、mAb 3B1およびmAb 3E8は予防のために用いることができる。抗ヘマグルチニンモノクローナル抗体の可変領域、例えばFabも、療法的な活性を有する可能性がある(21、22)。mAb 3B1およびmAb 3E8からの組み換え抗体は、予防的および療法的効力の両方を有する可能性がある。
【0068】
下記のように、mAb 3B1の可変領域を含む組み換え抗体を発現させ、HI試験において用いた:
ヒトIgG1に関する発現ベクターの設計は、Jostock et al.(28)により記述されたそれを基にした 合成分泌リーダーおよびpIREs(Clontech)からの脳心筋炎ウイルス(encephalomyocarditis virus)の内部リボソーム進入部位(IRES)を用いて多重クローニング部位、mycタグおよび恒常領域を置き換え、カッパ軽鎖(クローンID 6279986)およびIgG1重鎖(クローンID 6281248)をコードするcDNAクローン(I.M.A.G.E. Consortium cDNAクローン[Lennon, G., et al. (29)])を増幅させて挿入させた。
【0069】
mAb 3B1の可変領域をコードするcDNAを単離するため、ハイブリドーマ細胞からmRNAを調製し、ランダムヘキサヌクレオチドを用いたファーストストランドcDNA(first strand cDNA)の合成に用いた。次いで全cDNAを、マウスscFv組み換え抗体ファージシステム(Amersham Biosciences,ニュージャージー州ピスカタウェイ)のプライマーおよびプロトコルを用いて可変重および軽鎖の両方を増幅させるための反応における鋳型として用いて、得られた生成物を配列決定のためにpCR−Script(Stratagene)の中にクローニングした。可変領域特異的プライマーを用いて重および軽鎖の可変領域の両方を増幅させて、上記の構築された発現ベクターの中にクローニングした。得られたコンストラクトの発現は、マウスの可変領域およびヒトの恒常領域を含むキメラ抗体を生じさせた。
【0070】
Freestyle(登録商標)293 expression system(Invitrogen,カリフォルニア州カールスバッド)を用いてキメラ抗体を発現させ、規定無血清培地中で産生された抗体を得た。キメラIgG1をコードするコンストラクトを293−F細胞の中に、293 fectin(Invitrogen)の使用により形質移入した。形質移入の120時間後に上清を集め、タンパク質をprotein A sepharoseビーズ(Amersham Biosciences)を用いて精製した。IgGの純度をSDS−PAGE分析を用いて確かめた。
【0071】
ヒトのIgG1恒常領域およびmAB3B1からのマウスの可変領域を有する精製したキメラ抗体をHIおよびH5N1において試験した。HI活性を下の表5に示した:
表5
精製した組み換えmAb 3B1のHI活性試験
【0072】
【表5】

【0073】
mAb 3B1からの可変領域を有するキメラ抗体は、AIV H5N1に対する親和性を維持している。元のマウスの抗体の利点に加え、ヒトの恒常領域を有するIgG1亜型のキメラ抗体は、H5亜型AIV感染に対する療法的処置のためにヒトに投与することができる。
【0074】
実施例4
N−1亜型に対するmAb 6C6およびH5亜型に対するmAb 3B1または3E8の組み合わせを用いる、H5N1亜型AIVの同定のための抗原捕捉ELISA(AC−ELISA)
H5ウイルスを含む試料は、mAb 3B1またはmAb 3E8およびmAb 6C6の組み合わせの使用により、H5N1であると確かめることができる。AC−ELISAはH5N1ウイルスを検出するために設計されている。mAb 3B1または3E8を、96ウェルプレート(U96 MaxiSorp NUNC−immuno plate)中における100μl PBS中の0.5μg/ウェルで、4℃において一夜保温する。プレートをPBS−Tですすいだ後、コートしたプレートを1%ウシ血清アルブミン(BSA)で、室温において1時間ブロッキングする。次いでブロッキング溶液を除去し、100μl中20HA単位でPBS中で希釈した不活化したH5N1分離株をそれぞれのウェルに添加し、2時間保温する。プレートを洗浄緩衝液PBS−Tで4回洗浄し、100μlの1/500希釈したホースラディッシュペルオキシダーゼ標識mAb 6C6をそれぞれのウェルに添加する。プレートをさらに室温で1時間保温し、次いで洗浄緩衝液で6回洗浄する。100μlの新しく調製した基質(0.03%過ホウ酸ナトリウムを含むpH5.0の0.05Mリン酸クエン酸緩衝液20mlにつき10mgのo−フェニレンジアミン二塩酸塩)をそれぞれのウェルに添加し、プレートを室温でおおよそ5分間保温する。反応を50μlの2N硫酸で停止する。吸光度を490nmにおいて(A490)、自動化されたプレート分光光度計(Mitenyi Biotec)を用いて測定する。有意なA490の読みは、そのウイルスが亜型H5N1であることを示す。H5N1 AIVを含む試料は、mAb 3B1または3E8およびmAb 6C6を別々に用いて同定することができるが、抗体を組み合わせて用いることは、より少ないウイルス試料を用いる決定を提供する。
【0075】
補遺
表6
IFAによりmAb 3B1およびmAb 3E8を試験するのに用いられたトリインフルエンザウイルスA分離株
【0076】
【表6−1】

【0077】
【表6−2】

【0078】
注釈:”+”は陽性を意味し、”−”は陰性を示す。
参考文献
【0079】
【化1】

【0080】
【化2】

【0081】
【化3】

【0082】
【化4】

【0083】
【化5】

【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図1D】

【図2A】

【図2B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリインフルエンザウイルスのH5亜型のエンベロープ糖タンパク質の三次元エピトープに特異的に結合する結合タンパク質であって、実質的にモノクローナル抗体3B1または3E8の免疫学的結合特性を有する結合タンパク質。
【請求項2】
モノクローナル抗体、単鎖抗体、抗体断片、キメラ抗体またはヒト化抗体である、請求項1に記載の結合タンパク質。
【請求項3】
モノクローナル抗体である、請求項1に記載の結合タンパク質。
【請求項4】
アメリカ培養細胞系統保存機関に受け入れ番号PTA−8247で寄託されたハイブリドーマ3B1により産生されるモノクローナル抗体3B1。
【請求項5】
アメリカ培養細胞系統保存機関に受け入れ番号PTA−8527で寄託されたハイブリドーマ3E8により産生されるモノクローナル抗体3E8。
【請求項6】
生物学的標本においてH5亜型トリインフルエンザウイルスを検出するための方法であって、標本を、トリインフルエンザウイルスのH5亜型のエンベロープ糖タンパク質の三次元エピトープに特異的に結合する結合タンパク質と接触させることを含み、その結合タンパク質が実質的にモノクローナル抗体3B1または3E8の免疫学的結合特性を有する方法。
【請求項7】
結合タンパク質がモノクローナル抗体、単鎖抗体、抗体断片、キメラ抗体またはヒト化抗体である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
結合タンパク質がモノクローナル抗体である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
モノクローナル抗体がアメリカ培養細胞系統保存機関に受け入れ番号PTA−8247で寄託されたハイブリドーマ3B1により産生される抗体3B1である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
モノクローナル抗体がアメリカ培養細胞系統保存機関に受け入れ番号PTA−8527で寄託されたハイブリドーマ3E8により産生される抗体3E8である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
請求項6に記載の方法であって、標本をトリインフルエンザウイルスのH5亜型のエンベロープ糖タンパク質に特異的に結合する第2の結合タンパク質と接触させることを含み、第1の結合タンパク質が捕捉結合タンパク質であり、第2の結合タンパク質が、検出可能な要素を含む、またはそれにコンジュゲートした検出結合タンパク質である方法。
【請求項12】
第1および第2結合タンパク質の少なくとも一方がモノクローナル抗体である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
第1および第2結合タンパク質がモノクローナル抗体である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
第1結合タンパク質が固体表面上に固定される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
第2結合タンパク質が放射性原子を含む、蛍光性の分子にコンジュゲートしている、または酵素にコンジュゲートしている、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
生物学的標本においてH5N1亜型トリインフルエンザウイルスを検出するための方法であって、標本を、トリインフルエンザウイルスのH5亜型のエンベロープ糖タンパク質の三次元エピトープに結合する第1の結合タンパク質と、およびトリインフルエンザウイルスのN1亜型のノイラミニダーゼ糖タンパク質に結合する第2の結合タンパク質と接触させることを含み、その第1の結合タンパク質が実質的にモノクローナル抗体3B8または3E1の免疫学的結合特性を有し、その第2の結合タンパク質が実質的にモノクローナル抗体6C6の免疫学的結合特性を有する方法。
【請求項17】
生物学的標本においてH5亜型トリインフルエンザウイルスを検出するためのキットであって、トリインフルエンザウイルスのH5亜型のエンベロープ糖タンパク質の三次元エピトープに特異的に結合する結合タンパク質を、その結合タンパク質のそのエンベロープ糖タンパク質への結合を検出するための試薬と共に含み、その結合タンパク質が実質的にモノクローナル抗体3B8または3E1の免疫学的結合特性を有するキット。
【請求項18】
請求項17に記載のキットであって、トリインフルエンザウイルスのH5亜型のエンベロープ糖タンパク質に特異的に結合する第2の結合タンパク質を含み、第1の結合タンパク質が捕捉結合タンパク質であり、第2の結合タンパク質が、検出可能な要素を含む、またはそれにコンジュゲートした検出結合タンパク質であるキット。
【請求項19】
第1および第2結合タンパク質の少なくとも一方がモノクローナル抗体である、請求項18に記載のキット。
【請求項20】
第1および第2結合タンパク質がモノクローナル抗体である、請求項18に記載のキット。
【請求項21】
第1結合タンパク質が固体表面上に固定される、請求項18に記載のキット。
【請求項22】
第2結合タンパク質が放射性原子を含む、蛍光性の分子にコンジュゲートしている、または酵素にコンジュゲートしている、請求項18に記載のキット。
【請求項23】
請求項17に記載のキットであって、さらにトリインフルエンザウイルスのN1亜型のノイラミニダーゼ糖タンパク質の三次元エピトープに結合する結合タンパク質を含み、その結合タンパク質が実質的にモノクローナル抗体6C6の免疫学的結合特性を有するキット。
【請求項24】
H5亜型トリインフルエンザウイルスに感染した対象を処理する方法であって、その対照に有効量の、トリインフルエンザウイルスのH5亜型のエンベロープ糖タンパク質の三次元エピトープに特異的に結合し、実質的にモノクローナル抗体3B1または3E8の免疫学的結合特性を有する結合タンパク質を投与することを含む方法。
【請求項25】
結合タンパク質が組み替えモノクローナル抗体、単鎖抗体、抗体断片、キメラ抗体またはヒト化抗体である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
結合タンパク質がmAb 3B1の可変領域を含む組み替えモノクローナル抗体である、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
結合タンパク質がmAb 3E8の可変領域を含む組み替えモノクローナル抗体である、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
トリインフルエンザウイルスA/インドネシア/CDC669/2006(H5N1)株の中和回避変異体であって、モノクローナル抗体3B1により認識されるその株のHA配列のエピトープの内部に、変異ウイルスをその抗体により中和できなくなるような変異を含む中和回避変異体。
【請求項29】
その変異がアミノ酸171におけるものである、請求項28に記載の中和回避変異体。
【請求項30】
トリインフルエンザウイルス株A/インドネシア/CDC669/2006(H5N1)の中和回避変異体であって、モノクローナル抗体3E8により認識されるその株のHA配列のエピトープの内部に、変異ウイルスをその抗体により中和できなくなるような変異を含む中和回避変異体。
【請求項31】
その変異がアミノ酸205におけるものである、請求項30に記載の中和回避変異体。

【公表番号】特表2010−539161(P2010−539161A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524822(P2010−524822)
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【国際出願番号】PCT/SG2008/000313
【国際公開番号】WO2009/035412
【国際公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(509312422)テマセック・ライフ・サイエンシズ・ラボラトリー・リミテッド (3)
【出願人】(510069674)ナショナル・インスティテュート・オブ・ヘルス・リサーチ・アンド・デベロップメント(エヌアイエイチアールディー)−ミニストリー・オブ・ヘルス・オブ・ザ・リパブリック・オブ・インドネシア (1)
【Fターム(参考)】