説明

インプラント及びその製造方法、特にその表面の改質

表面の、少なくとも骨及び/又は組織に接触する領域を構造化したセラミックインプラントの製造方法を記載する。本方法は、成形及び焼結後のセラミックインプラントの構造化すべき領域の、I:表面を、対応する金属に還元し、II:続いて、実質的に金属の表面に構造化表面処理を施し、III:構造化された表面を酸化する。さらに、この方法により表面にトポロジー的構造を設けたインプラントについて記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面の、少なくとも骨及び/又は組織に触れる領域が構造化されたセラミックインプラントの製造方法に関する。また、この方法を用いてその表面にトポロジー的構造を設けたインプラントについて記載し主張する。
【背景技術】
【0002】
多年にわたり、多くのインプラントが、代替材料又は構成材料として人体に導入されてきた。いわゆる骨インプラント、つまり、例えば、関節インプラント、脊椎インプラント、歯科インプラントといった少なくとも部分的に骨に導入されるようなインプラントの分野では、金属又はセラミックからなるインプラントに焦点が置かれてきた。どちらの材料を使用するかは、要求される材料の特性及び患者の好みによる。
【0003】
インプラントが骨及び/又は隣接組織にしっかりと組み込まれるようにするため、通常、インプラントの表面を改質するか、又はインプラントの表面にコーティングを施す。表面を改質する場合、これには、組織又は骨にインプラントが固着(build an anchor)できるように、例えば規定の微小範囲内の粗さといったトポロジー的構造を表面に設けることが含まれる。コーティングを施す場合、これには、インプラントの組み込みを促進又は活性化するコーティング、例えば、隣接組織を刺激し固着又は組み込みプロセスを促進する活性物質を表面に設けることが含まれる。
【0004】
インプラントに関しては、構造化された、つまりでこぼこの表面を製造するさまざまな方法がある。一方で、これは、研磨ブラスト処理、例えば規定の粒径(メッシュ)の砂を用いたブラスティングによって行うことができる。他方、これは、化学的処理、例えば表面を部分的に攻撃して溶解又は改質することによって行うことができる。金属インプラントの場合、例えば、特許文献1は、必要であればサンドブラストによる予備処理の後、インプラントを濃酸にさらすという方法を記載している。セラミックインプラントの場合、例えば、特許文献2は、表面をアルカリ溶液で処理する方法を記載している。
【0005】
一般的に、構造を形成するための表面処理に対しては、使用するベース材料(金属/セラミック)により様々な方法が知られており、これらの様々な方法は、インプラントの表面に様々な構造を生み出す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】EP 0388576
【特許文献2】WO 00/37121
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、セラミックインプラントの表面を構造化するための別の方法を提供することである。本方法は、可能な限り多目的に使え、製造パラメータの調整により、できる限り多様なトポロジーを作ることができるべきである。従って、本発明は、表面の、少なくとも骨及び/又は組織に触れる領域を構造化したセラミックインプラントの製造方法の改良、及び対応するインプラント、特に歯科インプラントに関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、成形し、場合により既に焼結した後で、セラミックインプラントの構造化すべき領域の、
−I 表面を、対応する金属に還元し、
−II 続いて、実質的に金属の表面に、構造化表面処理を施し、
−III 構造化された表面を酸化する
という事実によって達成される。
【0009】
言い換えると、本発明の主要な態様の1つは、意外にも、まず、セラミックインプラントの表面領域を金属の状態に還元する(酸化状態0)ことが可能で、次に、この最上の金属層の表面を構造化するために、金属インプラントの領域で公知な全ての方法を実施することができ、こうして構造化された金属表面をもう一度酸化し戻すことができるという発見である。このようにして、金属表面を構造化するための多くの公知の方法を工程IIで使用でき、例えば文献から利用できる。しかしながら、その後、工程IIIの結果として、工程IIを用いてのみ金属インプラントを処理する場合と同様の構造を得ることができるが、多くの方法においては、全く同じ構造というわけではなく、つまりは新規な構造化が表面に施される。
【0010】
提案する方法の1つの重要な利点は、金属表面の構造化の豊富な知識をセラミックインプラントの構造化に少なくとも一部転用できることにある。そのため、工程II(適当であれば、予備又は後の構造化と組み合わせて)で選択される方法に応じて、及びパラメータの設定に応じて、ほぼ任意の所望する程度、セラミックインプラントの表面の適切な構造化を生み出すことができる。
【0011】
提案する方法の1つの重要な利点は、セラミックインプラントの表面が、インプラントの材料を用いて作られ(いわばそのままの構造)、コーティング工程の補助を用いないことである。通常、コーティング工程は、コーティングの付着を伴う問題の原因となるが、ここで提案する新規の方法ではこの問題を完全に排除できる。何故なら、例えば、工程Iでセラミック材料に滑らかな境界面を有する従来の層が形成されず、代わりに、強く刻み目の入った表面改質が形成され、加工される材料の強度及び孔隙率に合った、それにより方法の各段階において密接な結合を確実にするからである。
【0012】
従って、セラミック表面(通常ZrO、及びZrOとAlとの混合物)は、まず、規定の環境において金属に還元される。得られた金属表面を、エッチング工程又は他の方法により構造化する。構造化された金属表面を、規定の環境で酸化する。この結果、所望する構造化されたセラミックインプラント表面が得られる。
【0013】
提案する方法の第1の実施形態は、成形及び/又は焼結前及び/又はその間に、セラミックインプラントが既に表面の構造化を受けていることを特徴とする(例えば、素地(green body)の表面の構造化、又はスペーサを用いた成形用鋳型の構造化又はコーティング)。
【0014】
あるいは、又は加えて、成形及び/又は焼結後であるが工程I〜IIIでの処理の前に、セラミックインプラントが既に表面構造化されてしまっていることも可能である。
【0015】
言い換えれば、セラミックインプラントの表面の予備的な構造化は、例えば、焼結前の素地の表面構造化によって行うこともできる。しかしながら、成形段階で、内部を構造化した又はスペーサを有する鋳型を用いて行うこともできる。同様に、焼結させたセラミックインプラントの表面構造化により行うこともできる(焼結させたセラミックインプラントに既に付加的な研磨処理又は他の処理を施すこともできる)。これら記載した表面の構造化は、二者択一的に又は一緒に使用することができる。通常、この方法での構造化は、好ましくは、研磨ブラスト等の機械的処理、及び/又は酸での処理、アルカリ溶液での処理、溶解塩での処理等の化学的処理が含まれる。化学的処理の条件は、工程IIについて以下で述べるものと類似である。
【0016】
素地の表面及び焼結インプラントの表面の構造化ともに、好ましくは、単独の研磨ブラスト剤か、又はさらに良いのは、異なる粒度分布を有する2つの研磨ブラスト剤の混合物及び/又は異なる材料の混合物である。従って、他の好ましい実施形態によると、研磨ブラスト処理は、例えば、異なる平均(mean)粒径の2つの研磨ブラスト剤を用いて同時及び/又は連続処理する研磨ブラスト処理であってもよい。従って、研磨ブラスト剤は、好ましくは、80〜180メッシュの範囲の粗い粒径の研磨ブラスト剤部分(proportion)と、300〜450メッシュの範囲の小さい粒径部分を有する混合物で、砂及び/又は果物の種子等の有機材料であってよい。これに関しては、細砂及び粗い果実の種子が特に好ましい。異なる粒度分布を有する2つの研磨ブラスト剤の混合物を用いることにより二峰性の孔隙率分布を形成し、つまりミクロ構造が重なったマクロ構造を生む。インプラントの組み込み挙動に関し、このような表面構造は、工程I〜IIIでの後にある処理(downstream treatment)と組み合わせると非常に有利である。
【0017】
他の好ましい実施形態は、工程Iでの還元が還元ガス雰囲気下、好ましくは水素雰囲気下で行われることを特徴とする。このガス雰囲気下での還元は、好ましくは、通常500℃を超える、好ましくは800℃を超える、特に好ましくは1000℃〜1400℃の範囲の高温で実施される。さらに、還元ガス雰囲気下での処理は、好ましくは少なくとも10分間、好ましくは少なくとも30分間、特に好ましくは40分〜20時間の範囲で実施される。
【0018】
あるいは、又は加えて、工程Iでの還元は、グラファイトを用いて行われ、好ましくは焼結の状況下で、特に好ましくは、グラファイトの存在下での熱間静水圧プレス(HIP)として実施することが可能である。グラファイトは、特にHIP工程において、好ましくは、500℃を超える、好ましくは1000℃を超える、特に好ましくは1200℃〜1800℃の範囲の温度で、還元剤として用いられる。グラファイトを用いる還元は、好ましくは、少なくとも10分間、好ましくは少なくとも30分間、特に好ましくは40分から20時間の範囲で行われる。好ましくは、200バールを超える、好ましくは500バールを超える、特に好ましくは800バールから1500バールの範囲の圧力でなされる。
【0019】
別の実施形態によると、工程IIにおいて、実質的に金属の表面の、構造化されるべき領域には、酸、特に濃酸を用いた処理が施される。酸での処理は、好ましくは、強酸の混合物を用いて、例えば塩酸及び/又は硫酸及び/又は硝酸の混合物を用いて行われる。例えば、(約30%濃度)塩酸50%及び(約95〜97%濃度)硫酸25%の混合物を、好ましくは使用する。一般的に、酸での処理は、好ましくは、80℃を超える温度、特に好ましくは100℃を超える温度で行われ、例えば120℃で行われる。酸での処理は、できれば、少なくとも60分間、特に好ましくは少なくとも100分間、好ましくは110〜400分間の範囲で行われる。
【0020】
あるいは、又は加えて、工程IIにおいて、実質的に金属の表面の、構造化されるべき領域は、溶融塩中で処理される。これは、好ましくは、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属塩化物及び/又は水酸化物を用いて施される。好ましくは、水酸化リチウム及び水酸化ナトリウムの混合物(好ましくは、1:2から2:1の割合の)を用いて施される。溶融塩での処理は、好ましくは、80℃を超える温度で、特に好ましくは100℃を超える温度で行われる。溶融塩での処理は、好ましくは、少なくとも20分間、特に好ましくは少なくとも40分間、好ましくは80〜400分間の範囲で行われる。
【0021】
本発明の他の好ましい実施形態は、工程IIIにおいて、表面構造化されたインプラントが、酸化ガス雰囲気下、好ましくは大気中で、800℃を超える、好ましくは1000℃を超える、特に好ましくは1000℃〜1500℃の範囲の温度にて保持されることを特徴とする。この酸化雰囲気下での処理は、好ましくは、少なくとも60分間、好ましくは少なくとも100分間、特に好ましくは120〜600分間の範囲で行われる。例えば酸酸化、プラズマ酸化等他の酸化方法もまた使用でき、これらの方法のうちどれが、特定の種類のセラミックに特に適しているかは、当業者によって行われる試験により突き止められる。
【0022】
好ましい実施形態によると、本方法は、金属酸化物ベースの、特にアルミナベースの、及び/又はジルコニアベースの、及び/又は窒化ケイ素ベースの、特に好ましくはイットリア安定化正方晶ジルコニア多結晶体(Y−TZP)ベースのセラミックインプラントの構造化のために使用される。
【0023】
さらに、本発明は、上記の方法により製造可能又は製造される、セラミックインプラント、特に歯科インプラントに関する。本インプラントは、好ましくは、ジルコニアベース、特に好ましくはイットリア安定化正方晶ジルコニア多結晶体(Y−TZP)ベースである。
【0024】
さらに、本発明は、インプラント、特に歯科インプラントの表面の、少なくとも骨及び/又は歯肉に触れる領域を構造化するための、上記方法の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明を、実施形態に基づき、図を参照して、以下、より詳細に説明する。図は全て、以下詳細に記載する実施例の表面の走査型電子顕微鏡(SEM)の画像を示す。装置は、ライカ・ケンブリッジS−360走査型電子顕微鏡である。画像は全て、高真空、20kVの高電圧にて撮影した。まず第一に、試料をPVC法で約10nmの金を用いてスパッタリングした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
様々な構造の多様性を例示するために、多くの異なる表面構造化を行った。主に、水素及びグラファイトを用いて還元し、酸及び溶融塩を用いて金属表面の処理を行った。結果として生じる成形体が表面構造化を有するように、一部の例では素地を予め(already)構造化し、又は焼結用の鋳型の表面を構造化した。結果として生じる構造がいかに多様的であるかを示すため、温度、処理期間等のパラメータを変化させた。他に特に規定がなければ、研磨ブラスト処理で用いる研磨ブラスト剤は、上記粒径を有するアルミナAlである。
【0027】
インプラントの表面の粗さ測定は、各場合において、ねじ谷底(thread root)で測定した。装置、方法及び測定パラメータ:共焦点顕微鏡3次元。白色光顕微鏡CLA(色収差) ALTI SURF 500。光プローブレンジ:300μm。方位分解能: <2μm。Z分解能 10nm。カット−オフ=32μmを有するガウシアンフィルタ、Sz、Sds及びSScパラメータはEUR15178Nレポートにより定義する。RKパラメータについてはISO13565。全てμmで測定した。
【0028】
手順1: 水素でのセラミック表面の還元、酸を用いた金属化表面のエッチング
実施例1:
長さ10mm、直径4mmの円筒形歯科インプラントの形の素地を、イットリア安定化ジルコニア粉末から射出成形した(Y−TZP、CIM法)。素地はサンドブラストしなかった。射出及び焼結後、部分の表面をH雰囲気、1200℃にて60分間還元した(工程I)。このようにして金属化された表面を、酸混合物((32%濃度)HCl50%/(95〜97%濃度)HSO25%)を用いて、140℃にて120分間エッチングした(工程II)。得られた酸化前のインプラントの構造化された表面を、図1aに示す。このようにして構造化された表面を、1350℃にて140分間酸化した(工程III)。得られた酸化されたインプラントの構造化された表面を図1bに示す。測定した粗さ値は以下の通りであった。
【表1】

【0029】
実施例2:
長さ10mm、直径4mmの円筒形歯科インプラントの形の素地を、イットリア安定化ジルコニア粉末から射出成形した(Y−TZP、CIM法)。素地はサンドブラストしなかった。射出及び焼結後、部分の表面をH雰囲気、1200℃にて60分間還元した。このようにして金属化された表面を、酸混合物((32%濃度)HCl50%/(95〜97%濃度)HSO25%)を用いて、140℃にて120分間エッチングした。このようにして構造化された表面を、1200℃にて140分間酸化した。得られたインプラントの構造化された表面を図2a及び2bに示す。測定した粗さ値は以下の通りであった。
【表2】

【0030】
実施例3:
長さ10mm、直径4mmの円筒形歯科インプラントの形の素地を、イットリア安定化ジルコニア粉末から射出成形した(Y−TZP、CIM法)。素地はサンドブラストしなかった。しかしながら、素地が射出後マクロ構造を有するように、射出器具を侵食作用により改質した。その後、射出した素地の表面を、H雰囲気、1200℃にて60分間還元した。このようにして金属化された表面を、酸混合物((32%濃度)HCl50%/(95〜97%濃度)HSO25%)を用いて、110℃にて300分間エッチングした。このようにして構造化された表面を、1200℃にて140分間酸化した。得られたインプラントの構造化された表面を図3に示す。測定した粗さ値は以下の通りであった。
【表3】

【0031】
実施例4:
長さ10mm、直径4mmの円筒形歯科インプラントの形の素地を、イットリア安定化ジルコニア粉末から射出成形した(Y−TZP、CIM法)。素地が射出後マクロ構造を有するように、射出器具を侵食作用により改質した。素地をさらに、120メッシュの粒径のAlを用いてブラスト処理した。その後、射出及び焼結させた部分の表面を、H雰囲気、1200℃にて60分間還元した。このようにして金属化された表面を、酸混合物((32%濃度)HCl50%/(95〜97%濃度)HSO25%)を用いて、110℃にて300分間エッチングした。このようにして構造化された表面を、1200℃にて140分間酸化した。得られたインプラントの構造化された表面を図4に示す。測定した粗さ値は以下の通りであった。
【表4】

【0032】
実施例5:
長さ10mm、直径4mmの円筒形歯科インプラントの形の素地を、イットリア安定化ジルコニア粉末から射出成形した(Y−TZP、CIM法)。素地が射出後マクロ構造を有するように、射出器具を侵食作用により改質した。素地をさらに、360メッシュの粒径のAlを用いてブラスト処理した。その後、射出及び焼結させた部分の表面を、H雰囲気、1200℃にて60分間還元した。このようにして金属化された表面を、酸混合物((32%濃度)HCl50%/(95〜97%濃度)HSO25%)を用いて、110℃にて120分間エッチングした。このようにして構造化された表面を、1200℃にて140分間酸化した。得られたインプラントの構造化された表面を図5に示す。測定した粗さ値は以下の通りであった。
【表5】

【0033】
実施例6:
長さ10mm、直径4mmの円筒形歯科インプラントの形の素地を、イットリア安定化ジルコニア粉末から射出成形した(Y−TZP、CIM法)。素地が射出後マクロ構造を有するように、射出器具を侵食作用により改質した。素地をさらに、360メッシュの粒径のAlを用いてブラスト処理した。その後、射出及び焼結させた部分の表面を、H雰囲気、1200℃にて60分間還元した。このようにして金属化された表面を、酸混合物((32%濃度)HCl50%/(95〜97%濃度)HSO25%)を用いて、110℃にて60分間エッチングした。このようにして構造化された表面を、1200℃にて140分間酸化した。得られたインプラントの構造化された表面を図6に示す。測定した粗さ値は以下の通りであった。
【表6】

【0034】
実施例7:
長さ10mm、直径4mmの円筒形歯科インプラントの形の素地を、イットリア安定化ジルコニア粉末から射出成形した(Y−TZP、CIM法)。素地が射出後マクロ構造を有するように、射出器具を侵食作用により改質した。素地をさらに、360メッシュの粒径のAlを用いてブラスト処理した。その後、射出及び焼結させた部分の表面を、H雰囲気、1200℃にて60分間還元した。このようにして金属化された表面を、酸混合物((32%濃度)HCl50%/(95〜97%濃度)HSO25%)を用いて、110℃にて300分間エッチングした。このようにして構造化された表面を、1200℃にて140分間酸化した。得られたインプラントの構造化された表面を図7に示す。測定した粗さ値は以下の通りであった。
【表7】

【0035】
実施例8:
長さ10mm、直径4mmの円筒形歯科インプラントの形の素地を、イットリア安定化ジルコニア粉末から射出成形した(Y−TZP、CIM法)。素地が射出後マクロ構造を有するように、射出器具を侵食作用により改質した。素地をさらに、360メッシュの粒径のAlを用いてブラスト処理した。その後、射出及び焼結させた部分の表面を、H雰囲気、1200℃にて60分間還元した。このようにして金属化された表面を、酸混合物((32%濃度)HCl50%/(95〜97%濃度)HSO25%)を用いて、110℃にて120分間エッチングした。このようにして構造化された表面を、1200℃にて140分間酸化した。得られたインプラントの構造化された表面を図8に示す。測定した粗さ値は以下の通りであった。
【表8】

【0036】
実施例9:
長さ10mm、直径4mmの円筒形歯科インプラントの形の素地を、イットリア安定化ジルコニア粉末から射出成形した(Y−TZP、CIM法)。素地が射出後マクロ構造を有するように、射出器具を侵食作用により改質した。素地をさらに、120メッシュ及び360メッシュの粒径を混ぜたAlを用いてブラスト処理した。その後、射出及び焼結させた部分の表面を、H雰囲気、1200℃にて60分間還元した。このようにして金属化された表面を、酸混合物((32%濃度)HCl50%/(95〜97%濃度)HSO25%)を用いて、110℃にて60分間エッチングした。このようにして構造化された表面を、1200℃にて140分間酸化した。得られたインプラントの構造化された表面を図9に示す。測定した粗さ値は以下の通りであった。
【表9】

【0037】
手順2: HIP工程中、グラファイトを用いてセラミック表面を還元、溶融塩を用いた金属化表面のエッチング
実施例10:
長さ10mm、直径4mmの円筒形歯科インプラントの形の素地を、イットリア安定化ジルコニア粉末から射出成形した(Y−TZP、CIM法)。素地が射出後マクロ構造を有するように、射出器具を侵食作用により改質した。素地をさらに、120メッシュ及び360メッシュの粒径を混ぜたAlを用いてブラスト処理した。その後、射出及び焼結させた部分の表面を、1400℃、1000バールにて60分間、HIP工程でグラファイトを用いて還元した。このようにして金属化された表面を、溶融塩(LiOH50%/NaOH50%)を用いて、200℃にて30分間エッチングした。得られた、なお未酸化のインプラントの構造化された表面を、10aに示す。このようにして構造化された表面を、1000℃にて140分間酸化した。得られたインプラントの構造化された表面を、図10bに示す。測定した粗さ値は以下の通りであった。
【表10】

【0038】
手順3: HIP工程中、グラファイトを用いてセラミック表面を還元、酸を用いて金属化された表面をエッチング
実施例11:
長さ10mm、直径4mmの円筒形歯科インプラントの形の素地を、イットリア安定化ジルコニア粉末から射出成形した(Y−TZP、CIM法)。素地が射出後マクロ構造を有するように、射出器具を侵食作用により改質した。素地をさらに、120メッシュ及び360メッシュの粒径を混ぜたAlを用いてブラスト処理した。その後、射出及び焼結させた部分の表面を、1400℃、1000バールにて60分間、HIP工程でグラファイトを用いて還元した。このようにして金属化された表面を、酸混合物((32%濃度)HCl50%/(95〜97%濃度)HSO25%)を用いて、110℃にて30分間エッチングした。このようにして構造化された表面を、1200℃にて140分間酸化した。得られたインプラントの構造化された表面を、図11に示す。測定した粗さ値は以下の通りであった。
【表11】

【0039】
実施例12:
長さ10mm、直径4mmの円筒形歯科インプラントの形の素地を、イットリア安定化ジルコニア粉末から射出成形した(Y−TZP、CIM法)。素地が射出後マクロ構造を有するように、射出器具を侵食作用により改質した。素地をさらに、360メッシュの粒径のAlを用いてブラスト処理した。その後、射出及び焼結させた部分の表面を、1400℃、1000バールにて60分間、HIP工程でグラファイトを用いて還元した。このようにして金属化された表面を、酸混合物((32%濃度)HCl50%/(95〜97%濃度)HSO25%)を用いて、110℃にて20分間エッチングした。このようにして構造化された表面を、1200℃にて140分間酸化した。得られたインプラントの構造化された表面を、図12に示す。測定した粗さ値は以下の通りであった。
【表12】

【0040】
実施例13:
長さ10mm、直径4mmの円筒形歯科インプラントの形の素地を、イットリア安定化ジルコニア粉末から射出成形した(Y−TZP、CIM法)。素地が射出後マクロ構造を有するように、射出器具を侵食作用により改質した。素地をさらに、360メッシュの粒径のAlを用いてブラスト処理した。その後、射出及び焼結させた部分の表面を、1400℃、1000バールにて60分間、HIP工程でグラファイトを用いて還元した。このようにして金属化された表面を、酸混合物((32%濃度)HCl50%/(95〜97%濃度)HSO25%)を用いて、110℃にて30分間エッチングした。このようにして構造化された表面を、1200℃にて140分間酸化した。得られたインプラントの構造化された表面を、図13に示す。測定した粗さ値は以下の通りであった。
【表13】

【0041】
実施例14:
長さ10mm、直径4mmの円筒形歯科インプラントの形の素地を、イットリア安定化ジルコニア粉末から射出成形した(Y−TZP、CIM法)。素地が射出後マクロ構造を有するように、射出器具を侵食作用により改質した。素地をさらに、120メッシュの粒径のAlを用いてブラスト処理した。その後、射出及び焼結させた部分の表面を、1400℃、1000バールにて60分間、HIP工程でグラファイトを用いて還元した。このようにして金属化された表面を、酸混合物((32%濃度)HCl50%/(95〜97%濃度)HSO25%)を用いて、110℃にて120分間エッチングした。このようにして構造化された表面を、1200℃にて140分間酸化した。得られたインプラントの構造化された表面を、図14に示す。測定した粗さ値は以下の通りであった。
【表14】

【0042】
実施例15:
長さ10mm、直径4mmの円筒形歯科インプラントの形の素地を、イットリア安定化ジルコニア粉末から射出成形した(Y−TZP、CIM法)。素地が射出後マクロ構造を有するように、射出器具を侵食作用により改質した。素地をさらに、120メッシュ及び360メッシュの粒径を混ぜたAlを用いてブラスト処理した。その後、射出及び焼結させた部分の表面を、1400℃、1000バールにて60分間、HIP工程でグラファイトを用いて還元した。このようにして金属化された表面を、酸混合物((32%濃度)HCl50%/(95〜97%濃度)HSO25%)を用いて、110℃にて300分間エッチングした。このようにして構造化された表面を、1200℃にて140分間酸化した。得られたインプラントの構造化された表面を、図15に示す。測定した粗さ値は以下の通りであった。
【表15】

【0043】
実施例16:
長さ10mm、直径4mmの円筒形歯科インプラントの形の素地を、イットリア安定化ジルコニア粉末から射出成形した(Y−TZP、CIM法)。素地が射出後マクロ構造を有するように、射出器具を侵食作用により改質した。素地をさらに、120メッシュの粒径のAlを用いてブラスト処理した。その後、射出及び焼結させた部分の表面を、1400℃、1000バールにて60分間、HIP工程でグラファイトを用いて還元した。このようにして金属化された表面を、酸混合物((32%濃度)HCl50%/(95〜97%濃度)HSO25%)を用いて、110℃にて300分間エッチングした。このようにして構造化された表面を、1200℃にて140分間酸化した。得られたインプラントの構造化された表面を、図16に示す。測定した粗さ値は以下の通りであった。
【表16】

【0044】
実施例17:
長さ10mm、直径4mmの円筒形歯科インプラントの形の素地を、イットリア安定化ジルコニア粉末から射出成形した(Y−TZP、CIM法)。素地が射出後マクロ構造を有するように、射出器具を侵食作用により改質した。素地をさらに、360メッシュの粒径のAlを用いてブラスト処理した。その後、射出及び焼結させた部分の表面を、1400℃、1000バールにて60分間、HIP工程でグラファイトを用いて還元した。このようにして金属化された表面を、酸混合物((32%濃度)HCl50%/(95〜97%濃度)HSO25%)を用いて、110℃にて210分間エッチングした。このようにして構造化された表面を、1200℃にて140分間酸化した。得られたインプラントの構造化された表面を、図17に示す。測定した粗さ値は以下の通りであった。
【表17】

【0045】
実施例18:
長さ10mm、直径4mmの円筒形歯科インプラントの形の素地を、イットリア安定化ジルコニア粉末から射出成形した(Y−TZP、CIM法)。素地が射出後マクロ構造を有するように、射出器具を侵食作用により改質した。素地をさらに、360メッシュの粒径のAlを用いてブラスト処理した。その後、射出及び焼結させた部分の表面を、1400℃、1000バールにて60分間、HIP工程でグラファイトを用いて還元した。このようにして金属化された表面を、酸混合物((32%濃度)HCl50%/(95〜97%濃度)HSO25%)を用いて、110℃にて300分間エッチングした。このようにして構造化された表面を、1200℃にて140分間酸化した。得られたインプラントの構造化された表面を、図18に示す。測定した粗さ値は以下の通りであった。
【表18】

【図1a)】

【図1b)】

【図2a)】

【図2b)】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10a)】

【図10b)】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
本発明は、表面の、少なくとも骨及び/又は組織に触れる領域を構造化したセラミックインプラントを製造する方法であって、
成形した後で、セラミックインプラントの構造化すべき領域において、
−I 表面を、対応する金属に還元し、
−II 続いて、実質的に金属の表面に、構造化表面処理を施し、
−III 構造化された表面を酸化する
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記セラミックインプラントが、工程Iの前に焼結されるか、
及び/又は成形及び場合により焼結される前に、及び/又は、成形及び場合により焼結された後であるが工程I〜IIIで処理される前に、表面の構造化が既に施されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記セラミックインプラントの表面の予備構造化は、焼結前に素地の表面の構造化によって、及び/又は成形工程において内部が構造化された又はスペーサを有する鋳型を用いることによって、及び/又は焼結されたセラミックインプラントの表面構造化によってなされ、前記構造化は好ましくは研磨ブラスト等の機械的処理により、及び/又は酸での処理、アルカリ溶液での処理、溶融塩での処理等の化学的処理によりもたらされることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記研磨ブラスト処理は、異なる平均(mean)粒径、好ましくは、80〜180メッシュの範囲の粗い粒径部分(proportion)と、300〜450メッシュの範囲の小さい粒径部分を有する、2つの研磨ブラスト剤を用いた同時及び/又は連続した処理を有する研磨ブラスト処理であり、前記研磨ブラスト剤は、砂及び/又は果物の種子等の有機材料であってよいことを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記工程Iでの還元は、還元ガス雰囲気下、好ましくは水素雰囲気下で、好ましくは、500℃を超える、好ましくは800℃を超える、特に好ましくは1000℃〜1400℃の範囲の温度にて行われ、及び/又は、好ましくは少なくとも10分間、好ましくは少なくとも30分間、特に好ましくは40分〜20時間の範囲で行われることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記工程Iでの還元は、好ましくは焼結の状況下で、特に好ましくは、熱間静水圧プレス(HIP)として、グラファイトを用いて行われ、前記グラファイトは、好ましくは還元剤として、500℃を超える、好ましくは1000℃を超える、特に好ましくは1200℃〜1800℃の範囲の温度で、及び/又は、好ましくは、少なくとも10分間、好ましくは少なくとも30分間、特に好ましくは40分から20時間の範囲で、及び/又は、200バールを超える、好ましくは500バールを超える、特に好ましくは800バールから1500バールの範囲の圧力で用いられることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
工程IIにおいて、前記実質的に金属の表面の、構造化されるべき領域は、酸、特に濃酸を用いて、特に好ましくは塩酸及び/又は硫酸及び/又は硝酸の混合物を用いて処理され、前記酸を用いた処理が、好ましくは、80℃を超える温度で、特に好ましくは100℃を超える温度で、好ましくは少なくとも60分間、特に好ましくは少なくとも100分間、好ましくは110〜400分間の範囲で実施されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
工程IIにおいて、前記実質的に金属の表面の、構造化されるべき領域は、溶融塩で処理され、特に、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属塩化物及び/又は水酸化物を用いて処理され、前記溶融塩での処理は、特に好ましくは80℃を超える温度で、特に好ましくは100℃を超える温度で行われ、好ましくは、少なくとも20分間、特に好ましくは少なくとも40分間、好ましくは80〜400分間の範囲で行われることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程IIIにおいて、前記表面構造化したインプラントが、酸化ガス雰囲気下、好ましくは大気中で、800℃を超える、好ましくは1000℃を超える、特に好ましくは1000℃〜1500℃の範囲の温度にて、少なくとも60分間、好ましくは少なくとも100分間、特に好ましくは120〜600分の範囲で保持されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記インプラントは、金属酸化物ベースの、好ましくはアルミナベースの、及び/又はジルコニアベースの、及び/又は窒化ケイ素ベースの、特に好ましくはイットリア安定化正方晶ジルコニア多結晶体(Y−TZP)ベースのセラミックインプラントであることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法によって製造可能、又は製造されるセラミックインプラント、特に歯科インプラント。
【請求項12】
ジルコニアベースの、特に好ましくはイットリア安定化正方晶ジルコニア多結晶体(Y−TZP)ベースのインプラントであることを特徴とする、請求項11に記載のセラミックインプラント。
【請求項13】
インプラント、好ましくは歯科インプラントの表面の、少なくとも骨及び/又は歯肉に触れる領域を構造化するための、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法の使用。


【公表番号】特表2011−508617(P2011−508617A)
【公表日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538306(P2010−538306)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【国際出願番号】PCT/CH2008/000527
【国際公開番号】WO2009/079805
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(507399715)トーメン メディカル アーゲー (6)
【Fターム(参考)】