インプラント展開配置装置
【課題】新規なインプラント展開配置装置を提供する。
【解決手段】装置100は拘束部材102を有しており、同拘束部材が潰されたインプラント106を潰れた状態に維持することによってインプラントを哺乳類の身体の所望部位まで狭小な通路を通して送達できるようにするものである。インプラントが所望部位に届けられると、上記拘束部材が解放されてインプラントはその拡張状態に広げられる。好ましい実施態様では、上記拘束部材は潰されたインプラントの少なくとも一部を包囲するシート材を含んでいる。また、上記拘束部材の複数の部分は、例えば糸状部材104によって解放可能に結合される。
【解決手段】装置100は拘束部材102を有しており、同拘束部材が潰されたインプラント106を潰れた状態に維持することによってインプラントを哺乳類の身体の所望部位まで狭小な通路を通して送達できるようにするものである。インプラントが所望部位に届けられると、上記拘束部材が解放されてインプラントはその拡張状態に広げられる。好ましい実施態様では、上記拘束部材は潰されたインプラントの少なくとも一部を包囲するシート材を含んでいる。また、上記拘束部材の複数の部分は、例えば糸状部材104によって解放可能に結合される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に身体内の管及び通路を治療するためのインプラントに関する。本発明は、特にインプラント展開配置(deployment)装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血管の動脈瘤又は疾病によって厚く又は薄くなった管壁の治療又は分離は、血管移植片を用いる外科的バイパス術によって慣例的に行われている。この方法の短所は、手術に関連する罹患率及び死亡率、手術後の回復時間が長いこと、並びに移植片又は処置の限界のために必要となる高い発生率での反復的介入にある。
【0003】
疾病によって厚くなった管は、機械的に管を開いた状態に保持するステントにより、さほど侵襲せずに処置することができる。場合によっては、ステントは、バルーン式血管形成術の後に又は付随して使用できる。またステントは、移植片に関連付けて従来説明されている。この場合の移植片は、管を流れる血液に対し略円滑な接触領域を提供するように意図される。
【0004】
一般に、ステント又はステント移植片を、所望位置に位置決めできるように正確に展開配置する(deploy)ことが重要である。血管内のステント又はステント移植片の展開配置(deployment)は、2ステッププロセスとして要約することができる。第1のステップは、血管系内でステントを所望位置に移動させることである。ステント又はステント移植片は、自己拡張式又はバルーン拡張可能なものであることができる。いずれの場合も、インプラントは一般的に、比較的狭い管腔を通した搬送を容易にするように、潰された状態で送られる。第2のステップは、ステント又はステント移植片をその最終形状に「固定」して、所望位置に移植され続けるようにするある方法を含んでいる。
【0005】
自己拡張式又はバルーン拡張可能なステント及びステント移植片を搬送するための幾つかの技術が知られている。自己拡張式のステント又はステント移植片の場合は、典型的には拘束機構を用いて、搬送の間、ステント又はステント移植片を潰された状態に保持する。所望の移植部位でステント又はステント移植片が拡張して管壁に係合するように拘束機構は後で除去される。バルーン拡張可能なステント又はステント移植片の場合は、典型的には拘束機構が、搬送の間拡張可能な装置を潰された状態に保持する。この潰された装置内には、膨脹可能なバルーンが一緒に配置されている。拘束機構は、バルーンの膨脹が可能となるように後で取り外され、バルーンの膨張によりステント又はステント移植片が拡張されて管壁に係合するようにする。一般に、管状鞘や、フィラメント若しくは糸の形であり得る締結要素が、潰された装置を拘束するものとして説明されている。
【0006】
リンデマンら (Lindemann et al.)による特許文献1は、管状鞘を通して展開配置されるバルーン拡張可能なステント移植片を開示している。ステント移植片は、潰された状態で管に沿って送り進められて適正位置に達し、そこで鞘が取り除かれて、ステント移植片内でのバルーンの膨脹が可能になる。バルーンがステント移植片を最終的な状態に拡張させた後、バルーンは抜気されて管状鞘内に引き戻される。リンデマンらの開示するもう1つの展開配置方法は、管状鞘を使用せずに、ステント移植片とバルーンとに巻き付けられる「糸」を用いるものである。この糸は、バルーンの膨脹が必要なときには取り除くことができる。
【0007】
ピンチュク (Pinchuk)による特許文献2は、「鞘」を通してバルーン拡張カテーテルによって展開配置される螺旋状に巻かれたスプリングステントを開示している。この鞘は、ステント及びバルーンカテーテルを略圧縮された状態に保持する。ステント及びバルーンが管腔に沿って適正位置に送り進められると、鞘が取り除かれる。そこでバルーンは膨らまされ、抜気され、ステントを最終移植位置に残して取り出される。
【0008】
シンノット (Sinnott)による特許文献3は、引きちぎって除去可能な無孔の鞘によって移植される多孔質の血管移植片を開示している。移植片が所望位置に送り進められると、その領域に血液循環が回復し、血液が多孔質移植片の内側で凝固できるようになる。凝固の5分後に、無孔質鞘を、切断又は紐状体を引っ張ることにより除去できる。紐状体を引っ張ると、鞘が引き裂かれて引き抜かれる。
【0009】
ラウら (Lau et al.)による特許文献4は、拡張時に好ましくは自己固定する拡張可能なステントを開示している。ステントは、バルーンカテーテルのような膨脹可能部材を覆って配置され、ガイドワイヤに連結される単層又は2層の鞘によって被覆されている。鞘、ステント及び膨脹可能部材からなる組立体が所望位置に送り進められると、ガイドワイヤを遠位方向へ移動させることにより鞘が除去される。ステントから鞘を引き外した状態で、膨脹可能部材を作用させてステントをその最終状態に拡張させることができる。
【0010】
ウィンストンら (Winston et al.) による特許文献5は、血管移植片が鞘により一対のステント上に圧縮状態に保持されている組立体を開示している。それらのステントは、スプール上に巻き付けられた柔軟シートの形態を呈する。スプールが血管内の適正位置に挿入された後、鞘が取り除かれ、ステントが解放されて移植片を管壁に押し付ける。
【0011】
ストレッカー (Strecker) による特許文献6は、解放可能な鞘によって半径方向に圧縮された状態に保持される拡張可能な人工器官を開示している。鞘は、はぎ取り可能な網状物であってもよく、網状物が制御可能に解放されるときに、圧縮された人工器官が拡張可能となる。
【0012】
前述の各種機構は概して、幾つかの構成部品を有し、そのために作業がより複雑になる可能性がある。さらに、これら機構の寸法及び機械的特性が、小さな管内でのインプラントの搬送可能性を制限するものと考えられる。搬送の正確さもまた、上述したように検討課題である。
【0013】
従来の入れ子式ステント鞘(telescoping stent sheath)の直径は、展開配置の時に鞘を押し棒上を引いてステントから引き取る際に、搬送カテーテルとの不適当な摩擦の一因となり得る。これにより、展開配置の正確さを制御することが困難となる場合がある。搬送カテーテルを通してステントを押すために使用される押し棒は、典型的に約100cmまでの長さを有するが、やはりカテーテルに対する不適当な摩擦の一因になり得る。この問題は、血管系内でカテーテルがその経路に沿って曲がる場合にさらに悪化し得る。また、鞘が引込められる際に、鞘がステントの位置を変えてしまう可能性がある。
【0014】
【特許文献1】米国特許第 4,878,906号明細書
【特許文献2】米国特許第 5,019,090号明細書
【特許文献3】米国特許第 5,246,452号明細書
【特許文献4】米国特許第 5,344,426号明細書
【特許文献5】米国特許第 5,366,473号明細書
【特許文献6】米国特許第 5,405,378号明細書
【発明の開示】
【0015】
本発明は一般に、ステント又はステント移植片のようなインプラントのための搬送装置を含むものである。搬送装置は一般的には、潰されたステント又はステント移植片等の潰されたインプラントの少なくとも一部分の周囲を覆うシート材を具備する。シート材は、潰された部材の少なくとも一部分の周囲に広がるときに、管状部材を構成することができる。この装置はさらに、インプラントを、哺乳類の身体の所望部位に搬送する間、潰された状態に維持するために、シート材の複数部分を互いに結合する結合部材を含んでいても良い。この構造により、糸状の拘束部材と比較して、潰されたステントと管腔との間に円滑な接触面を得ることができる。
【0016】
本発明の他の態様によれば、シート材は、搬送組立体に対して構造上の剛性又は横断面形状に関して著しい影響を与えない薄い材料から構成できる。この構成は、外装又はガイドカテーテルの必要性をも排除でき、比較的離れた部位にしかも狭小で曲りくねった血管系を通して装置を搬送する外科医の能力を向上させると考えられる。さらにシート材は、解放後にステントと共に所望部位に残すことができるように、移植可能な材料から構成できる。
【0017】
本発明の他の実施態様によれば、ステントとステントに結合される拘束部材とを具備する組立体が提供される。ステントは、潰された状態と拡張された状態とを有し、拘束部材は、ステントが潰れた状態にあるときに、ステントの少なくとも一部分に巻き付けられるようになっているシート材を具備する。シート材の複数部分は、互いに結合されて、シート材を、潰れた状態のステントの少なくとも一部分に巻き付けた形態に維持するようになっている。このように、1つの形態において、シート材の複数部分は互いに解放可能に結合され、それによりシート材がステントを潰れた状態に維持する。
【0018】
本発明の他の態様によれば、互いに結合できるシート材の複数部分は、フィラメント又は糸状の部材によって結合できる。例えば、結合部材の延長部分であっても良い引抜線によって離れた場所から引き抜くことによって糸状結合部材を除去した後にステントを拡張することが出来る(或いは自己拡張式ステントを用いている場合には拡張可能である)。引抜線はまた、糸状の小断面形状を有し得るから、引抜線を通すカテーテルとの摩擦が最小限になる。このような構成は、展開配置の正確さをさらに促進するものと考えられる。
【0019】
本発明の他の態様によれば、複数の拘束部材を使用できる。或いは、複数の結合部材を用いて、1つ以上の拘束部材の複数の部分を結合することができる。これら構成は、展開配置に要する時間を短縮でき、インプラントを展開配置する際に流体の流れがインプラントの位置を乱す可能性のある時間を削減できる。
【0020】
本発明の他の態様によれば、組立体はステントとステントに結合される拘束部材とを有する。ステントは、潰された状態と拡張された状態とを有し、ステントが潰れた状態と拡張状態との間を移行するとき、相対的に移動する第1及び第2部分を有する。拘束部材は、ステントが潰れた状態にあるとき、ステントの少なくとも一部分に巻き付けられるようになっているシート材を有する。シート材の複数部分は、互いに結合されて、シート材を、潰れた状態のステントの少なくとも一部分に巻き付けた形態に維持するようになっている。この組立体はさらに、拘束部材に結合される第1部分と、ステントの第1及び第2部分の一方に結合される第2部分とを有する部材を備えている。
【0021】
本発明の他の態様によれば、拘束部材によって潰れた状態に拘束されていた拡張可能なステントが解放され、拘束部材がステントを配置した管腔の壁に押し付けられる。拘束部材がその部位に残されるので、(例えば自己拡張式インプラントを半径方向拘束鞘の端部から押し出して鞘を引込める等の)他の技術に比べて、展開配置のステップの数を削減することができる。
【0022】
本発明の他の態様によれば、ステントの搬送の準備方法は、潰されたステントを、管の形態であっても良いシート材内に拘束すること、及び管の複数の側縁部を結合することを含んで構成されている。
【0023】
本発明の他の態様によれば、拡張可能なステント(又はステント移植片)は、テーパ付き部材を通してステントを管状拘束部材に引き込むことにより、略円筒状又は管状の拘束状態に潰される。
【0024】
以上、従来技術の幾つかの欠点及び本発明の利点を簡単に説明した。本発明の他の特徴、利点及び実施態様は、以下の説明、添付図面及び添付した請求の範囲から、当業者に明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
類似要素を同一参照符号で示してある図面を詳細に参照すると、ステント又はステント移植片のようなインプラント又は装置を哺乳類の血管系内の所望部位に搬送する搬送装置が、本発明の原理に従って図示されている。本発明の搬送装置は、一般的には拘束部材と結合部材(単数又は複数)とを有する。拘束部材は、潰された又は圧縮されたインプラントの少なくとも一部分を囲むのに適するように構成される。結合部材は、拘束部材の複数部分を互いに解放可能に結合して、インプラントを潰された状態又は圧縮された状態に維持する。
【0026】
図1〜図4に、本発明に従って構成されたインプラント搬送装置が示されている。搬送装置(100)は通常、図示したようなシート材の形をした拘束部材(102)と、この拘束部材の一部分を相互に解放可能に結合する結合部材(104)とを有する。拘束部材の結合部分は、図と異なってもよいが好ましくは、例えば自己拡張式ステント移植片(106)等のようなインプラントを図1及び図2に示した潰された状態又は圧縮された状態に維持するように選択される。図1及び図2では、拘束部材(102)はチューブ形態で示されている。図示の実施態様では、結合部材(104)はフィラメント又は糸状(thread-like) 要素として示されており、それは拘束部材(102)が、ステント移植片(106)がその拡張状態に拡張するような形態に配置を変えることを防止する。
【0027】
インプラントは、拘束部材(102)内への配置に適した任意の方法で潰されて良い。例えば、後に詳述するがインプラントは拘束部材(102)内に設置される前に、畳まれるか又は半径方向に押し潰されても良い。図9〜図11に示したように、拘束部材(102)とステント移植片(106)とを有する搬送組立体(108)は比較的小さい断面積を有し、そのことが、自然状態の管腔直径がステント移植片(106)の拡張直径より小さい可能性のある部位への搬送組立体の管腔内搬送を容易にする。
【0028】
図3及び図4Aに、ステント移植片(106)及び拘束部材(102)が、結合部材(104)の除去後の展開配置状態で示されている。拘束部材(102)はステント移植片(106)に固定され、これら二つの構成要素は所望の展開配置部位で拡張した後も取り付けられたままになるようにしても良い。拘束部材とステント移植片との間の取り付けは、管内の流体の流れを乱す可能性のある展開配置後における拘束部材とステント移植片との間の大きな移動を防止するようになされるのが好ましい。図4A及び図4Bを参照すると、拘束部材(102)をステント移植片(106)に固定して取り付けるのに、複数の縫合糸(110)が用いられても良い。より詳細には、縫合糸は図4Aに示したように、拘束部材を通ってステントの一部分を取り巻くループを形成する。なお図4Bに縫合糸(110)の配置の一例を示したが、他の配置を用いてもよい。
【0029】
拘束部材(102)を別の構成で用いてもよいが、好ましい構成では、図4Bに示したように一定幅を有する略矩形のものである。例えば、後述するように拘束部材がモジュール式分岐ステントと共に用いられる場合にも、拘束部材は図4Bに示した構成と同様の矩形の構成であっても良い。或いは拘束部材は、異なる直径の領域(胴及び脚)に合うように配設された異なる大きさの二つの矩形部分を有していても良く、又は固定されているときにインプラントを潰された状態に維持するような別の構成でもよい。図4Bを再び参照すると、拘束部材は、この部材の両端(114)の間に延びる両側縁部(112)を有するように記載されても良い。両側縁部に沿って複数のアイレット(116)が配置され、これらアイレットに結合部材(104)が通される、又は縫うように通されても良い。アイレットは貫通孔(118)であり、これら貫通孔(118)は均一な直径の孔を開ける装置又はレーザドリルのような他の手段により形成されても良い。或いは、これらアイレットは、側縁部(112)に取り付けられ得るループ(120)によって、又は当業者に明らかな他の手段によって形成してもよい。
【0030】
負荷がかかったときに結合部材(104)が拘束部材(102)を裂いてしまう可能性を最小限にする、又は排除するために、側縁部(112)に構造上の補強を施すことが更に望ましい。補強側縁部は、直径の小さい縫合糸のような補強部材(122)を取囲んで拘束部材(102)の一部分を折り重ねることにより形成されても良く、補強部材(122)は二層のシート材の間で熱接着されても良い。この構造では、両側縁部(112)に沿った材料の比較的小断面形状のビードが、引き裂けが広がる可能性及び拘束部材(102)が突発的にはずれる可能性を排除する又は最小限にする。直径が小さい補強部材(122)としての縫合糸は、例えばePTFE(延伸膨張PTFE)で構成されていても良い。
【0031】
拘束部材(102)が、潰された自己拡張式ステント移植片を拘束すると、例えば、ステント移植片が搬送形態にあるときには、潰されたステント移植片(106)の蓄積されたばねエネルギから生じる力が拘束部材(102)に作用する。したがって本発明の他の態様によれば、拘束部材(102)は、耐クリープ性があり且つ長い間延びることなく必要な荷重に耐えられる材料を含んでいても良い。拘束部材(102)は例えば、熱接着可能な薄いシートの形で適切な耐クリープ性、可撓性及び生体適合性があると考えられるePTFEを含んでいても良い。また、ポリエチレンテレフタレート(DACRON(登録商標)又はMYLAR(登録商標))のようなポリエーテルや、KEVLAR(登録商標)のようなポリアラミドを含む、他の物質を用いてもよい。
【0032】
糸状の結合部材(104)も又、ePTFEを含んでいても良い。結合部材(104)には、ポリエチレンテレフタレート(DACRON(登録商標)又はMYLAR(登録商標))のようなポリエーテルや、KEVLAR(登録商標)のようなポリアラミドや、ニチノール、ステンレス鋼、金のような金属ワイヤの縫合糸を用いても良い。結合部材(104)は後述するように、遠隔操作式の引張線を形成するように、単純に延長されてもよい。或いは、ステンレス鋼からなるような金属製の引張線を、ePTFEからなるような非金属製の結合部材(104)に結合してもよい。この結合は、金属製の引張ラインの端をそれ自体の上に折り返してアイレットを形成し、結合部材をこのアイレットに通して結び目によりアイレットに固定して結合することによって行われても良い。
【0033】
なお拘束部材の幅は、図4Aに示した平らな状態にあるときには、好ましくはインプラントの直径より小さい。典型的には拘束部材の幅は約40mmより小さく(装置が胸部大動脈用の寸法の場合は典型的に約25mm〜40mm)、管腔がより狭小な他の用途では一般的に約15mm以下である。シート材は好ましくは0.010インチ(0.254mm)より薄く、さらに好ましくは0.005インチ(0.127mm)以下である。さらに、拘束部材の長さは好ましくはインプラントと同じかそれより短い。
【0034】
本発明によれば、インプラントの拡張中に拘束部材を引込めるための引込み組立体を提供し、拘束部材の長さがインプラントの長さと略等しいか又はそれより短く維持されるようにしても良い。インプラントの拡張可能な部分は、半径方向に拡張するので、軸線方向には僅かばかり短くなる可能性がある。このことにより、このような状況においてあるタイプの引込み組立体を用いなければ、インプラントの端部で拘束部材がはみだす可能性がある。引込み組立体は、拡張後に、拘束部材がインプラントを越えて延びてしまう危険性、並びにインプラントにより形成される流路及びこの流路を通る流体の流れに干渉してしまう危険性を、最小限にするか、又は排除する。
【0035】
図5A〜図5Dに、本発明の原理に従って構成された引込み組立体又は引込み機構が示されている。図5Aでは、引込み組立体(340)は生体適合性のあるフィラメント(342)を有する。このフィラメントは、図示したように拘束部材の一端に隣接した取付部分(348)で、拘束部材(102)に縫われ、結ばれ、又は他の方法で固定された部分を有する。フィラメント(342)は、ステント(126)の第一又は末端の螺旋状巻回(helical turn)を形成する部材の真下を通り、そして第一の巻回以外の第二、第三又は他の螺旋状巻回の一部分、例えば第二の巻回の頂点又は曲げ部分(344)のような一部分に対し、その下方にループを形成するか、或いは他の方法で摺動可能に取り付けられる。フィラメント(342)の他方の端部はさらに、結ぶか又は他の方法により、取付部分(348)又は頂点若しくは曲げ部分(344)から周方向に間隔を開けたステントの部分、例えば同じ螺旋状巻回の頂点又は曲げ部分(346)に固定される。好ましくはフィラメント(342)は、図5Aに示したように第二の螺旋状巻回の頂点部分(344)にかけられ、頂点部分(344)に隣接する頂点部分(346)に結ばれる。
【0036】
図5Aは圧縮状態にあるステントを示す。上述したように、ステントが拡張したときには、ステント部材は図5Bに示したようにステントを半径方向に拡張させるように拡張する。ステントが拡張すると頂点部分(344)と(346)の間の距離が増大し、フィラメント(342)はこの拡張された条件下で、柔軟ではあるが非伸張性であるので、取付部分(348)と頂点部分(344)との間の距離は必然的に減少する。このため図5Bに示したように、拘束部材(102)の端部はステント(126)に対して縮む。したがって本実施態様では、拘束部材の長手方向の軸線に沿った引込みは隣接する頂点間の距離が増大することにより生じる。拘束部材の一方の端部での一つの引込み機構を示したが、拘束部材の他方の端部において同様に構成され且つ配設される他の引込み機構を使用することもできる。
【0037】
図5C及び図5Dは引込み組立体の別の実施態様を示す。この引込み組立体の図は(図5A及び図5Bと同様に)、略円筒形の移植片とステントとの間の位置から半径方向外方へ見た図である。フィラメントの一方の端部が拘束部材に固定され、フィラメントの他方の端部がステントの拡張中に周方向に移動するステントの一部に固定されていた上述した図に対して、本実施態様ではフィラメントの他方の端部は、ステントが拡張するとステントの長手方向軸線に略平行(すなわち軸線方向)に移動するステントの一部に固定される。本実施態様では、ステント部材(126’)(図示したように形成され得るアイレット又はループを有する点でステント(126)とは異なる)の端部の螺旋の少なくとも1つの頂点部分(364)は、大半の頂点部分(366)より短い。しかしながら、図5A及び図5Bに示したように頂点部分を形成してもよい。フィラメント(362)は一方の端部で頂点部分(364)に結ばれるか又は他の方法で固定され、他方の端部で拘束部材(102)の一方の端部に結ばれるか又は他の方法で固定される。図5Dに示したように、ステントが半径方向に拡張する際、内側に配置された頂点部分(364)は、ステントの最後の巻回又は最も外側に配置された巻回に設けられた完全な高さを有する(full height) 頂点部分(366)より大きく長手方向又は軸線方向に引き込められる。この比較的大きな引込みは、拘束部材の端が頂点部分(366)に対して引込められるようにフィラメントを介して直接伝達される。上述したように拘束部材の他方の端部で同様の構成の別の引込み機構を用いてもよい。
【0038】
再び図3を参照すると、本発明で開示する搬送装置と共に用いることのできる一つのステント移植片構造が示されている。ステント移植片(106)は、壁厚が薄いチューブ又は移植片部材(124)と、自己拡張式ステントでもよいステント部材(126)と、ステント部材(126)と移植片部材(124)とを互いに結合するリボン又はテープ部材(128)とを包括的に有する。ステント部材(126)と移植片部材(124)とは互いに熱接着されても良く、従ってテープ部材(128)と移植片部材(124)との間のステント部材(126)の各部分でシールが行なわれる。ステント移植片(106)の機械特性は、例えば、材料の選択、ステント部材の構造的パターンの変更、テープ部材(128)及び移植片部材(124)の厚さの変更、テープ部材とステント部材及び移植片部材との接触パターンの変更により、変更しても良い。
【0039】
図3に示したように、テープ部材(128)は波状のステント部材(126)の螺旋状の巻回を辿るようにステント部材(126)の一部のみを覆っていてもよい。この構造では、ステント部材の複数の領域は、例えばステント移植片が非圧縮状態にあるときに、テープ部材と接触(interface with)しない。このことは、ステント移植片が曲げや圧縮を受けたときにステント部材(126)とテープ部材(128)との間に発生する剪断応力を低減し、これにより移植片部材(124)若しくはテープ部材(128)を破断してしまう危険性又はステント部材(126)と移植片部材(124)とが剥がれ(delamination)てしまう危険性を低減できる点で有利であると思われる。
【0040】
また、好ましくはテープ部材(128)は、ステント部材(126)及び移植片部材(124)と接触するために、縫合糸のようなフィラメント又は糸状構造に比べて概して広い面又は平坦な面を有する。このことは、テープ部材(128)と移植片部材(124)との間における潜在的接合面の面積を増大し、ステント移植片の構造的一体性を高める。また接合表面積が増大されると、テープ部材(128)の厚みを容易に最小の厚みにできる。図示した概して平坦なリボンの形のテープ部材が望ましい結果をもたらすことが判っている。
【0041】
波形のピーク間の幅が約1.905mm(0.075インチ)であるステント部材には、0.635mm(0.025インチ)、1.270mm(0.050インチ)及び1.905mm(0.075インチ)の幅のテープ部材を適用することが適切な結果をもたらすと思われる。しかしながら、概してテープ部材の帯幅を広げるほど、ステント移植片の可撓性が低下することが判っている。可撓性を最適なものとするには、テープ部材の幅が波形のピーク間で測定したステント部材の波形の幅の約4分の1から4分の3であるのが好ましい可能性がある(幅の約3分の1から3分の2がより好ましい可能性もある)ことが判っている。またテープ部材の一方の側縁を頂点に隣接して配置することにより、頂点の安定性(securement)を大幅に犠牲にすることなくテープ部材の幅を狭くできることが判っている。またテープ部材の幅を変えること(例えばステント移植片の長さ方向に沿ってテープの幅を変えること)により、他の構造的な特性を調節することができる。また幅を広げることにより、潜在的に半径方向の剛性(stiffness) 及び破裂圧(burst pressure)を増大し、そして装置の有孔度(porosity)を減少することができる。また帯幅を広げることにより、結合部材(coupling member) の巻回の間で移植片部材に皺ができることを低減できる。
【0042】
また移植片部材の終端部分をステント部材にしっかりと止めるために、テープ部材(又はその別々の小片)でステント移植片の終端部分を包囲してもよい。
【0043】
図6A及び図6Bは、本願で説明する搬送装置と共に用いることができる他のステント移植片構造を示している。図6Aを参照すると、ステント移植片(200)は、ステント移植片(200)が隣接する巻回のステントの波形部を結合するフィラメントを有することを除いて、上記ステント移植片(106)と同じである。フィラメント(202)は、ステント部材の波形部の間を通され、又はこれらの間を編み合わせ(interwoven)、こうして通された螺旋形状を呈する(すなわちこれは第2の螺旋を形成する)。この形状は、PCT国際公開公報第95/26695号(国際出願番号PCT/US95/04000号)に記載されており、この文献の全てが参考として本出願に組み入れられている。図6Bに示したステント移植片(300)は、フィラメント(302)がステント部材の同じ螺旋の巻回の波形部の間を編み合わせていることを除いて、図6Aに示したステント移植片と同じである。
【0044】
これらフィラメント(202,302)は同じ構造であり、任意の適切なフィラメント状の材料、すなわち血液に適合するフィラメント状の材料又は生物学的に適合するフィラメント状の材料であって、ステントが撓むことはできるが畳んだときにステントを変形しない程度に十分な可撓性を有するフィラメント状の材料であってもよい。連結具(linkage) は、単式又は複式のストランドワイヤ(strand wire) (プラチナ、プラチナ/タングステン、金、パラジウム、タンタル、ステンレス鋼等)であってもよいが、生物学的に適合するポリマー系フィラメントを用いるのがより好ましい。例えば当業者には明らかなように、可撓性のある連結具(link)の端の部分をステントの周りに巻き、最後の巻回の初めの点で可撓性のある連結具を結びつけて、可撓性のある連結具をステント移植片(200,300)の両端に結び付けてもよい。
【0045】
経皮的に搬送されたステント移植片は、搬送の為に必要であった小さな直径から、大きな展開配置される直径まで拡張しなければならない。これら装置の直径が、これら装置を入れる体の管腔の大きさに応じて変化するのは明らかである。例えば本発明のステントの大きさは、2.0mmの直径(神経学的な用途)から40mmの直径(大動脈内への配置)の範囲であって良い。約2.0mmから6.5mm(あるいは10.0mm)の範囲が望ましいと思われる。一般的には2:1又はこれ以上の拡張率が必要である。これらのステントは、より大きな直径のステント用に5:1までの拡張率をとることができる。本発明のステント移植片で用いる典型的な拡張率は、典型的には約2:1から約4:1の範囲であるが、本発明はこれに限定されない。またステント材料の厚さ又は太さが、ステントの大きさ(又は直径)及び畳まれたステントの最終的に必要な降伏強さ(yield strength)に応じて変わるのは明らかである。さらにこれらの値は、選択された構造材料に依存する。これら種々の場合に用いられるワイヤは、典型的には例えばニチノールのような高強度の合金及び高強度のバネステンレス鋼であり、その直径は約0.051mm(0.002インチ)から0.127mm(0.005インチ)である。比較的大きなステントに対して適切なステント用ワイヤの直径は幾分か大きくても良く、例えば0.127mmから0.508mm(0.005から0.020インチ)である。またフラットストック金属ステント(flat stock metallic stents)では、通常は約0.051mmから0.127mm(0.002インチから0.005インチ)の厚みで十分である。比較的大きなステントに関しては、ステントフラットストック(stent flat stock)に適切な厚みは幾分か厚くてもよく、例えば0.127mmから0.508mm(0.005から0.020インチ)である。
【0046】
図3に示したステント移植片を製造するための好適な方法を示す目的で、以下の実施例を挙げる。しかしながら本実施例は本発明を制限するものではない。ピンが配置されたマンドレルの周りにステント部材のワイヤが螺旋状に巻かれ、螺旋構造と波形とが同時に形成され得る。ステント部材がマンドレル上に保持されつつ約20分間に亘り約238℃(460°F)まで加熱され、ステント部材がその形状を保持するようにする。ワイヤの寸法及び材料は、用途に応じて大きく異なっても良い。以下は、6mmの直径の管腔(vessel lumen)に適応するように構成されたステント移植片用の構造の実施例である。ステント部材は、直径が約0.178mm(0.007インチ)のニチノール製のワイヤ(50.8atomic%のNi)を具備する。本実施例の場合、ワイヤは正弦波状の波形を有するように形成され、各波形の幅はピーク間で測定して約2.54mm(0.100インチ)であり、螺旋はインチ当たり約10巻きのピッチで形成される。螺旋の内径(拘束されていないとき)は約6.8mmである。(図6A及び図6Bに示したように用いられているときのフィラメントの直径は約0.152mm(0.006インチ)とすることができる。)
本実施例では、移植片部材は多孔性の延伸膨張ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であり、一方、テープ部材はFEPをコーティングした延伸膨張PTFEである。テープ部材は(図示実施態様に示したように)平坦なリボンの形をしており、これは図3に示したようにステント/移植片部材の周りに配置される。FEPをコーティングしたテープ部材又はリボンの側面は、それ自身を移植片部材にしっかりと止めるために移植片部材に対面する。以下で詳述するがテープ及び移植片部材の材料が溶け込み、そしてそれら自身で接合できるように中間のステント移植片構造が加熱される。
【0047】
テープ部材を形成するために用いられるFEPコートした多孔性の延伸膨張PTFEフィルムは、
(a)好ましくはFEPフィルム又は他の熱可塑性ポリマーのフィルムである別の層に多孔性のPTFEフィルムを接触する工程と、
(b)前記工程(a)において得られた組成物(composition) を熱可塑性ポリマーの融点以上の温度に加熱する工程と、
(c)前記熱可塑性ポリマーの融点以上の温度を維持しつつ前記工程(b)で加熱された組成物を延伸する(stretch) 工程と、
(d)前記工程(c)の生成物を冷却する工程と、
を具備するプロセスにより作製される。
【0048】
またこのコーティングされたフィルムを作製するのに、FEPに加えて熱可塑性フルオロポリマーを含む他の熱可塑性ポリマーを用いることができる。多孔性の延伸膨張PTFEフィルム上にコーティングされる接着剤は、主に延伸の量及び速度、延伸中における温度、並びに延伸前の接着剤の厚みに応じて、連続的(非多孔性)または非連続的(多孔性)とすることができる。
【0049】
この実施例を構成するに際して、薄壁の延伸膨張PTFE移植片の厚さは約0.1mm(0.004インチ)であり、その密度は約0.5g/ccであった。多孔性の延伸膨張PTFEの微細構造は、約25μmの長さのフィブリル(fibrils) を含んでいた。3cmの長さの本移植片材料が、移植片の内径に等しい直径のマンドレル上に配置された。次いで約3cmの長さのニチノール製のステント部材が、薄壁移植片の中央を覆うように注意深く取り付けられた。
【0050】
次いでステント部材に、上述したFEPコーティングフィルムからなるテープ結合部材が提供された。図3に示したようにテープ部材はステント部材の外面周りに螺旋状に巻かれた。テープ部材のFEPコーティング側面が内方を向き、そしてステント部材の外面に接触するようにテープ部材が向けられた。このテープ表面はステント部材の開口を通って露出された薄壁の移植片部材の外方を向いた表面に露出された。螺旋状に巻かれたリボンの微細構造の単一軸線方向を向いたフィブリルが、ステントの外面周りで螺旋状に配列されている。
【0051】
15分間に亘り315℃に設定された炉内にマンドレル組立体が配置され、その後、フィルムが巻かれたマンドレルが炉から取り出され、冷却された。略大気温度まで冷却し、続いて、マンドレルが結果として得られたステント移植片から取り外された。加えられた熱量は、多孔性の延伸膨張PTFEフィルム上のFEPコーティングを溶かし、これにより移植片部材と結合部材とを互いに接着せしめるのに適切であった。したがって移植片部材は、ステント部材の隣接するワイヤ間の開口を通って螺旋状に巻かれたテープ部材の内面に接着的に接合された。管腔(luminal) カバー及び外側カバー(移植片部材及びテープ部材)とステント部材とを合わせた厚みは約0.4mmであった。
【0052】
なお本発明を図示したステント移植片の実施例を参照して説明したが、図示したものとは構造的に異なる他の装置、ステント又はステント移植片と組み合わせて、本発明を用いることもできることが理解されるべきである。例えば後に詳述する分岐したステント又はステント移植片と組み合わせて、本願で説明する搬送装置を用いることができる。さらに自己拡張式ステント移植片を説明したが、本願で説明する搬送装置と組み合わせて、バルーン拡張可能なステント移植片を用いることができる。これらステント移植片は、潰れた自己拡張式ステントに蓄えられるばねエネルギとは対照的に、これらステント移植片を拡張状態に拡張するバルーンを必要とする。
【0053】
図7A〜Cを参照して、糸状の結合部材(104)と合わせて用いることのできる一つのスリップノット(slip knot) 構造を説明する。説明を判り易くする為、インプラントを配置していない状態で拘束部材(102)が示されている。図7Aは、解放前の状態又は展開配置前の状態にあるスリップノットを示している。一連のノット即ち結び目は概して拘束部材(102)の表面と同じ高さにあり、インプラントの搬送中の好ましい構造の形状に殆んど変化を与えることはない。図7Bは、チェーンノット(chain knot)(130)がどのように形成され得るかを示すために、糸状の結合部材(104)が緩められた状態にある図7Aの組立体を示している。図7Cは図7A又は図7Bの組立体の解放を略図的に示している。図示したステッチは、糸の一端を引っ張ることで解放可能で、それによって円筒形又はチューブ形の拘束部材を解放し、装置が展開配置されることになる。この特別なステッチはチェーンステッチと呼ばれているが、1本のニードル及び1本の糸で形成することができる。チェーンステッチは一連のループ又はスリップノットであり、これらスリップノットは、一つのスリップノットが次のスリップノットを解放するのを防止するように互いを通ってループ状とされている。一つのスリップノットを解放するために糸が引っ張られるときには次のスリップノットが解放され、さらに次のスリップノットを解放する。このプロセスは糸を引っ張る間、糸全体が拘束部材から引張りだされるまで続く。
【0054】
図7A〜図7Cを参照すると、糸状結合部材(104)の結ばれていない部分又はリード(132)が参照矢印(134)で示した方向に引っ張られると、連続した各チェーンノット(130)が隣接する次のノット即ち結び目を解放する。好適な実施態様では結合部材(104)のチェーンノット(130)は、以下で詳述するが図10Aに示したように搬送カテーテルの遠位部分から離れる方向に潰れたインプラントを漸進的に解放するように配設される。
【0055】
図8Aから図8Fを参照すると、その中に潰れた又は圧縮されたインプラントを備えた拘束部材を具備する組立体を作製する方法が実施例として示されている。図8Aは拘束部材(102)を示しており、ここでは拘束部材の側縁が互いに解放可能に結合され、その左側の端部はテーパ状となった機械的な拡張器(dilator) (402)により拡張される。次いで図8B及び図8Cに示したように、小さな漏斗状部材(funnel)(404)が拘束部材(102)内に挿入される。次いで小さな漏斗状部材(404)と拘束部材(102)とが引張フレーム(410)上に取り付けられ、図8Dに示したように大きな漏斗状部材(406)が小さな漏斗状部材(404)内に嵌合される。ステント移植片の一端に縫い付けられた牽引又は引張糸(408)が、大きな漏斗状部材(406)、小さな漏斗状部材(404)及びテーパ付きマンドレル(416)を備えた拘束部材(102)を通って引っ張られる。図8Fに示したように引張糸(408)は、引張(tension) ネジ(414)上に配置された縛りつけ柱(412)に締結され、次いで引張ネジ(414)により引張られる。次いでステント移植片(106)が引張られ、大きな漏斗状部材(406)及び小さな漏斗状部材(404)を通って拘束部材(102)内へと順次、潰される。側縁が互いに結合された拘束部材(102)内へとステント移植片(106)が半径方向に潰されると、引張糸(408)が取り外され得る。なお別の構成要素の導入をしやすくするために、拘束されたインプラント内にマンドレル(416)が挿入可能である。好適な実施態様では、複管腔(multilumen)搬送カテーテル(136)(図9〜図11参照)が圧縮されたステント移植片(106)の中央を通って導入され、半径方向に拘束されたステント移植片を所望の管腔内部位に搬送するのに用いられる。
【0056】
なおステントがニチノールで作製されたときに、ステントを圧縮しやすいように漏斗状部材を冷やし(chill) てもよい。すなわちステントがニチノールで作製されるときには、漏斗状部材を0°C以下又はニチノールがマルテンサイト状態となる遷移温度(Mf )以下に冷却してもよい。さらにステント移植片を初めに畳み、次いで漏斗状部材を通して拘束部材内に引張ることによりその外形(profile) を小さくすることもできる。冷却は、テトラフルオロエタンのような冷却ガスでステント移植片を噴霧浸漬(spray soaking) することにより達成可能である。MicroCare 社(Conn)で製造されているマイクロダスト(Micro-Dust :商標名)ドライ回路散布器が適切な結果をもたらす。好ましくは液体のような流体をステント移植片上に放出するために、噴霧キャニスタが逆さまに保持される。
【0057】
図9〜図11を参照してインプラントを展開配置する方法を説明する。概してインプラントは、径が小さくなった形(例えば図1参照)に組み立てられた後に、典型的には血管系を通して本願で説明する搬送装置と共に経皮的に搬送される。所望の搬送場所においてインプラントは拘束部材から解放され、したがって搬送場所における管腔壁に対してインプラントが拡張することができ、又は拡張されることができる。ステント又はステント移植片を有する他の装置、例えばバルーン拡張可能なステントを用いることもできるが、拘束状態が解かれたときに予め定められた最終形状(final geometry)に完全に自身を拡張することができる自己拡張式ステント移植片を参照して以下の実施例を説明する。特に図1及び図7A〜図7Cに示した搬送装置と図3に示したステント移植片構造とを用いて以下の実施例を説明する。
【0058】
図9A及び図9Bを参照すると、拘束部材(102)内に閉じ込められた潰されたステント移植片(106)を有するインプラント搬送組立体が示され、このステント移植片は複管腔搬送カテーテル(136)の遠位部分を包囲する。診察医が適切なサイズの装置を選択する。一般的には、所望の展開配置部位における管腔の直径より約20%ほど大きい拡張直径を有するステント移植片が選択される。
【0059】
好ましくは搬送カテーテルは複管腔カテーテルである。複管腔搬送カテーテル(136)の近位部分はハブ(140)に結合され、このハブは案内ワイヤ(142)用の案内ワイヤポート(143)と、糸状結合部材(104)のリード(132)に結合された展開配置ノブ(144)とを有する。したがってノブ(144)が引込められたときに拘束部材(102)が解放され、ステント移植片が拡張する。またハブ(140)は従来の技術にあるような洗浄ポート(flushing port) (146)を有していても良い。ステント移植片(106)は近位障壁(148)と遠位障壁(150)とにより展開配置前に軸線方向において所定位置に保持され、これら障壁は拘束されたステント移植片の近位部分及び遠位部分それぞれに隣接して複管腔搬送カテーテル(136)周りに配置される。近位障壁(148)及び遠位障壁(150)は、拘束されたステント移植片の軸線方向の動きを抑制するために複管腔搬送カテーテル(136)にしっかりと固定され得る。好ましくは障壁は、ステント移植片又は拘束部材に当接するように配置される。結合部材(104)のリード(132)は近位障壁(148)内の開口(152)を通され、この開口は結合部材のリード(132)が展開配置ノブ(144)に結合可能であるように複管腔搬送カテーテル(136)内の管腔に連通されている。図9A及び図9Bは、管(154)を通って所望の場所に向かうカテーテル(136)と拘束されたインプラントとの前進を示している。図10A及び図10Bを参照すると、拘束されたステント移植片が所望の場所(156)に到達すると、展開配置ノブ(144)が引込まされ、結合部材(104)が拘束部材から取り外されるのにつれて、ステント移植片が漸進的に図示したように拡張する。好ましくは結合部材は、ステント移植片の遠位端部から近位端部に向かう方向(すなわちカテーテルの先端からカテーテルのハブに向かう方向)にステント移植片の拡張を促すように配設される。図11A及び図11Bは、結合部材及びカテーテルが取り外された後に最終移植位置(final implantation position) にあるステント移植片(106)及び拘束部材(102)とを示している。別の実施態様では図9Cに示したように複数の拘束部材が用いられ得る。複数の結合部材(104)が同時に解放される場合には、インプラント展開配置時間が短縮され得る。
【0060】
バルーン拡張可能なステント移植片を展開配置する方法は、結合部材(104)がアイレット(116)から引込められた後に、ステント移植片内に搬送前に配置されているバルーンが、ステント移植片(106)を拡張するために膨張され、次いでカテーテル(136)を通って取り出すために収縮されることを除いて、上述した方法と同じとすることができる。
【0061】
本発明の他の実施態様によると、複数方向(multidirectional)の結合部材の解放、又は複数(multiple)の結合部材を使用できる。これらの構成は、1つの単方向(unidirectional)結合部材を使用するときよりも、インプラントのさらに迅速な展開配置を容易にする。図12A〜図12Dは、本発明の原理による拘束されたインプラントの複数方向式展開配置を略図的に示す。ここでは、結合部材配列は、インプラントを好ましくは軸線方向中央であるその中間部分からインプラントの両端部に向かって外側に解放するように設けられる。特別な結合部材構造はこれらの略図には示していないが、一つの適切な結合構造が図13に示されている。図13では、複数のリード(132)が開口(152)を通っており、図9Aに示して前述したように展開配置ノブ(144)に結合される。
【0062】
図12Aを参照すると、複管腔搬送カテーテル(136)の遠位端部分に位置決めされている拘束されたステント移植片が、動脈瘤(158)内での展開配置のために管(154)を介して前進されている。拘束部材(102)の軸線方向中間地点は、動脈瘤嚢(aneurysmal sac)の中心に位置決めされるのが好ましい。結合部材配列の紐解き作用(unlacing)は構造物の中間から、拘束部材(102)とステント移植片(106)との近位端と遠位端とに向かって伝播する(propagate )ので、図12Bと図12Cとに示すように、ステント移植片(106)は軸線方向の中間部分から両端部に向かって次第に拡張する。図13の配列が使用されるとき、このことは図13に示すリード(132)を同時に引っ張ることで達成され得る。図12Dに示すように拘束部材が十分に解放されかつステント移植片が十分に展開配置されると、ステント移植片の近位の部分と遠位の部分とが動脈瘤の近位の首部と遠位の首部に対して位置決めされるようにステント移植片の寸法が選択される。次いで、複管腔搬送カテーテルが引込められる。
【0063】
図面から明らかなように、有利なことに、この実施態様は、拘束部材の解放時に、動脈瘤嚢を介する流体流れが実質的に遮られない状態に維持されることを可能にしている。例えば、動脈瘤の首部領域が最小限に遮られて示されている図12Cに示す展開配置時点ではステント移植片の端部はまだ拘束されている。さらに、有利なことには、拘束部材のこの同時且つ複数方向解放作用により、図9から図11に示すような単一の単方向解放機構と比較して、インプラントが展開配置されるときに管内の流体流れがインプラントの位置を乱す可能性のある時間が削減される。
【0064】
図13を参照すると、複数結合部材構成が示されている。図示された配列は、二つの紐組み(lacing)構成(151)、(153)を有する。糸状結合部材(104)のリード(132)の配置を除くと、紐組み構成(153)は紐組み構成(151)の鏡像構成である。従って、説明を単純にするため、紐組み構成の一つだけを説明する。紐組み構成(153)を参照すると、紐組み構成(153)が、参照番号(504)で全体として示される二つの付加的なスリップノットと、タック又はループの配列(506)とをさらに有することを除いて、紐組み構成(153)は図7A〜図7Cに示される構成と同一である。付加的なスリップノットは拘束部材内に編み込まれておらず図面から明らかであるように、リード(132)が矢印方向(134)に引張られる時に、結合部材解放用の遅れ機構を提供する。従って、リード(132)を不注意で引張っても、拘束部材からの結合部材の解放が即座に開始されはしない。タック配列は単に、図示されるような種々の間隔でステッチの下にリード(132)からのたるみを押し込むことを含み、それにより、付加的なスリップノット(504)が搬送通路から引張られるようにしても良い。さらに、タック又はループの配列(506)はスリップノットの解放用の付加的な遅れ機構を提供する。
【0065】
議論されたように、上述された搬送装置は他のインプラント又は装置と共に使用され得る。例えば、これらの搬送装置は、以下で説明される分岐した装置(bifurcated devices)と一緒に使用することが出来る。
【0066】
図14A〜図14Dのモジュール式ステント移植片は概して、本体(700)と対側脚部(contralateral leg )(730)という二つの主要な構成要素を有しており、それぞれが一般に、上述の説明によるステント部材に取り付けられた移植片部材を有する。本体(700)は概して、別個の全体的構造を有するいくつかの部分を有する。遠位の胴部分(708)は、本体(700)の遠位端部(702)で始まり分岐ポイント(728)まで続く単一管腔構造を有する。分岐ポイント(728)は、遠位の胴部分(708)の単一管腔が内部の二つの流れ管腔へと分岐する人工器官内の場所である。
【0067】
中間の部分(710)は分岐ポイント(728)で始まり、収容穴(704)へと続く。中間の部分(710)では、ステント移植片は内部の移植片構造を有し、この内部移植片構造は、管状の単一管腔のステント構造により取り囲まれる二つの管腔へと分岐される。最後に、近位の部分(712)は、ステント部材と移植片部材との両方の単一管腔構造であって、同側脚部穴(706)で終了する同側脚部(726)を有する。
【0068】
中間の部分(710)の移植片部材は単一管腔の遠位の胴部分(708)を同側脚部(726)と内部雌型収容管腔(703)とに分岐させる。収容管腔(703)は収容穴(704)で終了する。収容穴(704)と収容管腔(703)とは対側脚部(730)の搬送と取付とに対応している。以下図23を参照してさらに明らかにするように、対側脚部(730)の遠位端(734)での移植片材料はスカラップ形とされるのが好ましい。
【0069】
収容穴(704)は収容穴の実質上の周辺部分周りをワイヤ構造により支持され、それにより、収容穴(704)が展開配置後に開いた状態で保持されるようにする。好ましい実施態様においては、収容穴(704)を支持するワイヤ構造は独立ワイヤリング(714)である。
【0070】
独立ワイヤリング(714)は中間の部分(710)の収容穴(704)の全体的領域に位置する。独立ワイヤリング(714)は、収容穴(704)における移植片材料が対側脚部(730)の遠位端(734)を収容するように開いた位置で支持されることを確実にする。このような支持がない場合には、中間の部分(710)内で収容管腔(703)の領域にある分岐した移植片部材が、その内側周辺部において十分なステントの支持を有しないために、本体(700)が搬送された後に収容穴(704)が確実に開くことが許されない。収容管腔(703)の領域にある内側移植片周辺部(785)に内側のステント支持部が存在しないことを示す図18において、このことはさらに良好に理解される。
【0071】
独立ワイヤリング(714)は、上述された他のステント移植片部分と同一の材料から構成され得る。独立ワイヤリング(714)は、自己拡張性であるのが好ましい。好ましい実施態様においては、独立ワイヤリングは波形ワイヤステント材料からなる単一の巻回を具備し、この波形ワイヤステント材料は少なくとも一つのテープの層により取り囲まれる。この少なくとも一つのテープの層は収容穴(704)に熱結合される。あるいは、独立ワイヤリング(714)は本体(700)の最後の巻回として形成することが出来る。
【0072】
移植時に、放射線不透過性マーカ(radiopaque marker)が収容穴(704)を見えるようにするのに使用できる。そのようなマーカは、独立ワイヤリング(714)に隣接した放射線不透過性ワイヤを含むことができる。そのようなマーカは、哺乳動物の体内で本体(700)を展開配置した後に収容穴(704)の位置を認識するのをさらに容易にする。
【0073】
図14Cにおける断面図に示されるように中間ステント部分(710)のこの構成は、単一管腔のステント部材と、分岐した移植片部材とにより特徴付けられ、別個の脚状ステントを有する構成に比べ、圧縮された形状はさらに小さくなり、製造も簡単になる。圧縮されたプロフィールは、当該部分に存在するステント及び移植片材料の物理量によって主として決定される。この構成では、通常は分岐した移植片部分の内側周辺部を支持するステント材料が省略され、この領域で圧縮するステント材料を少なくする。本体(700)は上述されるように搬送のために圧縮されるので、圧縮されたプロフィールは、分岐した移植片の部分に亙って、分岐したステントの部分を有する構造の場合よりもかなり小さい。
【0074】
分岐した流れを生成することが可能となるのに加え、分岐したステントの部分がないので製造は単純化される。例えば、分岐したステントの部分を一体として巻くことはさらに複雑なプロセスである。同様に、別々の円筒形ステント構造を巻き、分岐ステント構造を形成するためにそれらの円筒形ステント構造を連結することは複雑で、かつ最終的には信頼性が低い場合がある。中間の部分(710)によって、本体(700)をカバーするステント部材全体を単一の波形ワイヤ(undulating wire)で形成されるのが可能となり、この単一の波形ワイヤは複数の螺旋巻回状に配置される。その結果、分岐ステント移植片装置は製造が単純で、かつ容易に圧縮可能で、かつ展開配置時に確実に拡張するようになる。
【0075】
中間ステント部分(710)の他の構成が図14Dに示されている。中間ステント部分(710’)は、凹領域(indented region)(727)によって特徴付けられる形状を有する。分岐した移植片部材の間にある領域が、その中央領域で支持されない状態でいることを除くと、この形状は概ね8の字形である。この構成は、尚も単一管腔のステント構成であって、そのために減少されたプロフィールと製造の簡略化という多くの利点を保持し、またその周囲のより多くの部分で支持を強化された分岐した移植片部材を提供する。更に、凹領域(727)は外力が作用しても外方にはじける傾向が少ない。
【0076】
上述されるように、本体(700)と対側脚部(730)とが圧縮された状態で、体内の分岐場所まで搬送されるようになる。この目的のため、本体(700)には、上述されるように構成された拘束部材(722)が備え付けられるのが好ましい。同様に、対側脚部(730)は、取り付けられた拘束部材(732)を有する。典型的にはこれら拘束部材はその全長にわたって間隔を空けて移植片材料に縫合される。
【0077】
図15は、動脈瘤(758)を患っている分岐した身体の血管内の分岐部位で展開配置した後の、組み立てられた分岐ステント移植片(740)を示す。図に示すように人工器官は、腹部大動脈 (abdominal aortic artery)(752)が左方腸骨動脈 (left iliac artery)(756)と右方腸骨動脈(754)とに分岐する場所に位置決めされ得る。インプラントの種々の特徴がより明瞭に示されるように、拘束部材は図15には図示していない。
【0078】
組み立てられた分岐ステント移植片(740)は、本体(700)と対側脚部(730)とから構成される。対側脚部(730)の遠位端(734)は、本体(700)の収容脚部穴(704)及び雌型収容管腔(703)に挿入されている。
【0079】
これらの形式の任意のステント又はステント移植片の展開配置において最良の結果を得るために、これらのステント又はステント移植片が、軸線方向の剛性、可撓性及びねじれ抵抗性などの適切な構造的特性を有することが必要である。分岐部位を治療するために必要とされるような複雑な構造では、一方を最適化することで他方にマイナスの影響が出ることがあるため、所望の構造的特性を得ることはますます困難である。
【0080】
例えば、ステント又はステント移植片の全体的な(global)軸線方向剛性についての最適化を図ると、必然的に、装置の可撓性が極めて少なくなり、結果としてねじりに対する抵抗性を減じ、体の脈管構造(vasculature )の自然な曲がり又は湾曲部に適応する能力を減少させる。反対に、軸線方向の剛性が少く高い可撓性を有する装置は正確に展開配置するのが困難であって、所望の位置で装置を固定する助けとならない。
【0081】
これらの制約を念頭に、構造的特性を変えて構成されたセグメントを有する分岐ステント移植片が、改良された展開配置能力を呈し、ねじりの影響をうけにくく、好ましくは、展開配置後に所望の位置を維持する傾向があり、その一方で、身体の動きに適応する十分な可撓性を有することが可能であることがわかっている。正確な所望の構造的特性は、人工器官が展開配置される位置に依存する。
【0082】
これらの理由により、分岐ステント又はステント移植片は、互いに異なる構造的特性を有する少なくとも二つのセグメントで構成されるのが好ましい。例えば、図14Aでは、近位の部分(712)を腸骨動脈の形状寸法に適応するさらに高い可撓性を有するように構成することができ、その一方、一定の長さの遠位の部分(708)と中間の部分(710)とを、展開配置及び位置的安定性の改善のためにさらに高い軸線方向の剛性を伴って構成することができる。
【0083】
異なる構造的特性を有するいくつかのセグメントを有することがさらに望ましい可能性がある。従って、組み立てられたステント移植片(740)の本体(700)と対側脚部(730)とが、隣接するセグメントと異なる構造的特性を備えて構成されるセグメントを有する。図15に示す一つの好ましい実施態様では、本体(700)が、異なる構造的特性を備えて構成される四つの異なるセグメントを有する。遠位のセグメント(742)は、より可撓性のある、近位に隣接するセグメント(744)よりも高い軸線方向剛性を有するよう構成される。近位の部分(748)は、遠位に隣接するセグメント(746)の可撓性よりもさらに高い可撓性を有するよう構成される。同様に、対側脚部(730)は、軸線方向により高い剛性のある遠位のセグメント(750)とより可撓性のある近位のセグメント(749)とを有する。
【0084】
ステント又はステント移植片要素の構造的特性を変更するいくつかの方法がある。ステント移植片セグメントの構造的特性を選択的に変更する一つの方法は、そのセグメントに対し、異なる物理的寸法を有するテープ部材を使用することである。そのようなテープ部材は、図3のテープ部材(128)を参照して前述されている。例えば、剛性を増減する事が望ましいセグメントに於て、前述の好ましい寸法からテープ部材の幅、厚さ、又は間隔を増加させてもよい。例えば、幅広のテープを狭い間隔で巻いて使用すると、この部分で剛性が高まる。
【0085】
ステント又はステント移植片セグメントの構造的特性を選択的に変更する他の方法が図14Aと図15とに示される。延ばされた支柱部(718)、(719)がステント移植片セグメントの軸線方向剛性を増大させるよう使用され得る。延ばされた支柱部は、波形ワイヤの一つの巻回の頂点を、隣接する巻回の頂点に接触するまで延ばすことによって形成される。延ばされた支柱部と隣接するステントの巻回の頂点との間のこの接触は軸線方向剛性を高める。好ましい実施態様では、テープの層(図示しない)が装置の周りに螺旋パターンで適用され、この螺旋パターンは延ばされた支柱部の各頂点を覆う。この付加的なテープの層は支柱部の対を一体的に保持する。
【0086】
図14Aを参照すると、第一の螺旋状ステント巻回(720)と第二の螺旋状ステント巻回(721)とが頂点を有するほぼ波形形状を有する。ステント巻回(720)の延ばされた支柱部(718)は、真下に位置するステント巻回(721)の頂点に近いか又は接触する頂点を有して形成される。延ばされた支柱部(719)は、下の巻回内の頂点と接触するように、ステント巻回(721)の頂点を直接下に延ばすことにより同様に形成される。このパターンは、毎回、一つの波づつ延ばされた支柱部をずらして続けられる。その結果、装置の長さに亘って延ばされた支柱部の螺旋パターンが形成される。当然のことながら、延ばされた支柱部は、上述された螺旋構成以外のパターンで配置されることもできる。
【0087】
いくつかのこれらのパターンを一つのセグメントに用いることができ、又、軸線方向剛性を増大するように、延ばされた支柱部のパターンを他のセグメントで使用することもできる。好ましくは、本体(700)の前述した遠位に隣接するセグメント(746)と、対側脚部の軸線方向剛性を有する遠位セグメント(750)とが、図15に示されるように延ばされた支柱部を有して構成される。
【0088】
図15を参照すると、遠位端(702)は、目的の動脈、この場合は腹部大動脈の動脈部の内径に正確に適合するように寸法決めされ得る。典型的には、人工器官は、目的となる管の内部よりもわずかに大きい非拘束時の直径を有するように構成される。
【0089】
組み立てられた分岐ステント移植片(740)の同側脚部及び対側脚部は一般に、遠位端(702)の寸法に関係なくそれらの遠位端において同一の寸法であり、腸骨動脈の内径にほぼ対応する直径にテーパがかかっているテーパ付き部分(724)、(738)を有する。このようなテーパ付き部分(724)、(738)は、優れたフローダイナミクスを生じる傾向があるため、直径が急変するより望ましい。
【0090】
展開配置後、組み立てられた分岐ステント移植片(740)は、このような主要動脈内での比較的高い流体圧力と流量にさらされる際、特に回復後に体が再び動くことが可能となったときに、装置が移動したり、外れたりしないように、動脈瘤(758)の各側で、健康な管の管腔と十分な接触を確立する必要がある。さらに、遠位端(702)、同側脚部穴(706)、又は対側脚部の近位端(736)における漏出がないように十分な接触が形成される必要がある。
【0091】
ステント又はステント移植片の外面がそれ自体を管腔壁に固定する固定又は位置保持機能が、管壁に対する装置の封止作用を助勢し、かつ展開配置位置を維持するために与えられ得る。例えば、図14A及び図15に示すようなアンカ(716)が本体(700)に設けられ、かつ対側脚部(730)にも設けられる。頂端のステント部分(717)がある角度をなして外側に向けられるのが好ましい。この広がったステント部分は、頂端のステント部分(717)が、展開配置の際に力を受けて管壁と干渉するように半径方向に拡張させられると、アンカ(716)を管壁へ押しつけるように作用する。
【0092】
アンカ(716)の好ましい構成は図17に示される。この構成は、上方のステント巻回(762)から、隣接する下方のステント巻回(764)の頂点の下側に延びる二つのワイヤを有する。次いで、ステントワイヤの二つの端部(760、761)は外側に曲げられて移植片材料(768)から遠ざかる。延ばされた支柱部が、第三のステント巻回(765)に至るまで、隣接する下方のステント巻回(764)の下側を延びることを除いては、延ばされた支柱部(771)は、前述の方法で各アンカに隣接して形成される。人工器官が管壁内へ広がる時に受ける曲げ力の付加の下で、この延ばされた支柱部配列はアンカ(716)に対しての支持作用を提供し、かつワイヤ(760、761)内に生ずる応力を低くする。延ばされた支柱部(771)は、より広い範囲の支持を与えることによって、アンカの領域におけるステント移植片構造の局所的な変形を最小化する。
【0093】
アンカ(716’)の他の構成が図16に示される。アンカ(716’)の端部が図示のような「U字状」構成に接続されたままであることを除いて、アンカ(716’)は同様に形成される。アンカ(716’)はステント移植片のどの位置にも形成できる。最も好ましくは、アンカは頂端のステント部(717)の周りに等間隔に離間されたパターンで形成される(図14A)。
【0094】
上述したアンカの使用が図面に示されるステント移植片との組み合わせに限定されず、実際、上述したアンカを同様な機能を必要とする分岐していない又はステントのみの構成に使用できることは明らかである。
【0095】
また、管壁におけるシール作用は又、シール機構として図17に示される他の構成により高めることが出来る。シール機構を、上述したあらゆるインプラントを含むあらゆる形式のインプラントと共に用いることができる。例示のために、図14の分岐インプラントを参照してシール機構が示される。このシール機構は図16及び図17に詳細に示されるようなシール部材(772)を具備する。以下に説明するシール機構を、上述したあらゆるインプラントと共に用いることができる。
【0096】
図16及び図17に示される変更態様におけるシール部材(772)の好ましい一構成は、上述の図1および図3を参照して説明したようなステント移植片管状部材を構成するのに用いられるテープ部材の好ましい構成と同様である。
【0097】
一般的に、上述した図面に様々に示されるテープ部材(128)のためのものと同様に、薄壁ePTFEテープがシール部材(772)のために用いられる。シール部材(772)のために用いられるテープは、上述したステント及び移植片部材を接合するためのテープ部材(128)上も含んでステント移植片の外表面に接着される。シール部材(772)は、いずれの外表面にシール部材が接着されるのが望ましいかに応じて、テープ部材(128)の外表面又は移植片部材(124)の外表面を対象とする類似の材料からなる内表面を有する。
【0098】
第1の袖口端部(cuff end)(767)はステント移植片の外表面に接合され、第2の袖口端部(769)は、未接着フランジを形成してステント移植片周囲流れに対する一方向弁として機能するようにするために、接合されない。シール部材に可変内表面を提供して加熱時に第1の袖口端部(767)の領域の表面のみがステント移植片の外表面に接合されるようにすることにより、シール部材(772)をこのようにしてその長さ方向に沿い選択的に接着することができる。例えば、第2の袖口端部(769)の領域ではなく、第1の袖口端部(767)の領域において、シール部材(772)の内表面にFEPライナを設けることができる。この場合、均一なFEP製外表面を有するステント移植片の外表面と接触するときに、第1の袖口端部(767)のみがその上に熱固着され得る。
【0099】
或いは、シール部材(772)が例えばFEPからなる均一な内表面を有するようにしてもよく、シール部材(772)の熱接合が望まれる領域内のテープ部材(128)上又は移植片部材(124)上に例えばFEPからなる選択的部分を有する可変外表面を設けてもよい。更に、シール部材(772)は均一な表面を有していてもよく、テープ部材(128)及び移植片部材(124)上に位置決めされてテープ部材(128)と移植片部材(124)の外表面間の可変性により第1の袖口端部(767)がこれら表面上に選択的に接着されるようにしてもよい。
【0100】
シール部材(772)の別の構成として、この要素として用いられ得るテープの特定の壁厚さを、望ましくはできるだけ薄くしてこの部材のためのフランジ式一方向弁機能を機能的に提供するようにすべきである。これは、シール部材(772)がステント移植片の他のステント及び移植片構成要素の外表面上にあるので、シール部材(772)が組立体全体のプロフィールを画定する特徴があると考えられているからである。従って、特定の構成において、シール部材(772)は図1及び図3を参照して説明したステント移植片を組み立てるのに用いられるテープ部材よりも薄い壁であることが望ましい可能性がある。
【0101】
更に、シール部材(772)をその下にあるステント移植片の外表面に接着するための上述された特定の構成及び関連する方法を参照すると、シール部材(772)のための所望の構成及び熱固着技術が、あるポリマが類似のポリマと接触(meet)する(例えばFEPがFEPと接触する)場合には適当な条件下で加熱することにより選択的な熱接合が可能である、という理論を前提としていることは当業者には当然ながら自明である。当業者に明らかなように、シール部材を所定の管状部材の外表面に固定するためにあらゆる適当な手段を用いてもよい。
【0102】
更に、複数の周方向支柱部空間がステント部材の支柱部間に設けられる。これら空間が移植片部材の外表面周りの及びステント移植片の外側に沿った漏洩流の通路を提供する可能性があると考えられている。しかしながら、第2の袖口端部(769)はこのような漏洩流をそのフランジの下方において捕捉し、第1の袖口端部(767)がこのステント移植片の外表面に固定されるので漏洩流はステント移植片の外表面に沿って進行し得ない。言い換えると、ステント移植片上の及び動脈瘤への流れが閉塞される。
【0103】
更に、図15に示されるようにアンカ(716)を腹部大動脈の壁内に固定したときに、アンカ(716)のところの及びそれに隣接した本体(700)の部分が動脈壁から離される可能性があることが確認されている。この作用により本体(700)の外表面と動脈壁とが互いに離間し、この離間作用により漏洩流通路が形成されると考えられている。シール部材(772)のフランジはこの流れを捕捉して動脈瘤(758)内に進入するのを閉塞する。
【0104】
管腔壁との良好な接触を維持することに加えて、ステント移植片の要素は、互いに十分に接触して別体のモジュールが取付けられ続けると共に、それらの係合界面において漏れが生じないようにしなければならない。図18に示されるステント移植片は、本体(700)の収容管腔(703)と対側脚部(730)との間の界面において、漏れがなく、かつ位置的に安定なシールが有効になるように構成されたいくつかの重要な特徴を示している。
【0105】
図18は、組み立てられたステント移植片の部分断面図を示している。対側脚部(730)が本体(700)の収容管腔(703)内に挿入されている。この断面図は、本体(700)が本体移植片部材(780)及び本体ステント部材(782)を含むことを明瞭に示している。対側脚部(730)は、対側移植片部材(784)及び対側ステント部材(786)を有する。
【0106】
対側脚部(730)と収容管腔(703)との間の界面において、組立体は延長シール領域(790)を提供する。好ましくは延長シール領域(790)は、対側脚部(730)の外径と収容管腔(703)の内径との間の全体として円筒状の摩擦しまり嵌めからなる。即ち、自己拡張性の対側脚部(730)の自然又は静止外径は、収容管腔(703)の自然内径よりも大きい。従って、干渉により形成される力は二つの要素をシールするよう作用すると共に、二つの要素の動きを妨げる。
【0107】
上述した形式の円筒状延長シール領域は多くの利点を有する。まず、延長シール領域(790)内のステント及び移植片構造を、容易に製造される比較的簡単な全体として円筒状要素から形成することが可能となる。延長シール領域(790)が長い部分に亙って広がるので、必然的に要素間でシール効果を有する大きな表面領域を有することになる。典型的にはこの大きなシール領域では、ステント構造の複数の巻回が干渉し、従ってシール関係で係合される。
【0108】
好ましい一実施態様において、延長シール領域の長さは収容管腔(703)の直径の半分よりも長く、更に好ましくはこの長さは収容管腔(703)の直径よりも長く、最も好ましくは収容管腔(703)の直径の2倍よりも長い。
【0109】
単純化された形状の製造公差は容易に制御されかつ延長シール領域(790)の係合が極めて大きいので、モジュール要素間に高い信頼性を有する接続部が形成される。そうであっても、干渉作用が高められた一つ又はそれ以上の局所化領域を形成してシール性能及び位置的安定性を高めるのが望ましい可能性がある。
【0110】
干渉作用の局所化領域は様々な方法で形成することができる。好ましい実施態様では、直径の小さい環状リングが収容管腔内に形成されている。このように局所的に直径が小さくされると、局所化領域内の対側脚部の外径との干渉作用が大きくなり、一方、収容管腔と係合している残りの部分は上述した通常の摩擦しまり嵌めとなる。
【0111】
局所的に小さな直径を形成する一つの方法が、延長シール領域(790)の部分断面図を示す図20に示されている。収容管腔(703)の移植片部材(780)とステント部材(782)との間に固定リング(798)を配置することにより、直径が小さくされた領域(799)が形成される。固定リングは、任意の重合体又はワイヤ材料から形成することができ、好ましくは収容管腔が開放位置まで自己拡張するのを妨げない材料から形成される。最も好ましくは、この材料は縫合糸材料、典型的にはePTFEである。
【0112】
或いは図21及び図22に示されるように、移植片部材(780)の一部を収容管腔(703)内に戻るよう折り畳むことにより、直径が小さい局所化領域を形成してもよい。図21では、環状リング(802)周りに移植片部材(780)の折り畳まれたフラップ(808)を形成することにより直径の小さい領域(806)が形成される。図示されるようにフラップは大体の位置(804)において適所に熱固着される。図22では、同様な方法で、しかしながら固定リングを一切設けることなく、直径を小さくした領域(809)がフラップ(808)から形成されて大体の位置(807)で熱固着される。これらの方法を用いた局所化された干渉作用はより大きな領域を占める傾向にあり、フラップ(808)は更に可撓性を有する部材を提供して対側脚部(730)の外径に対しシールする。
【0113】
ステント移植片要素間の良好なシールを確保する更に別の一態様は、対側脚部要素(810)の遠位端においてスカラップ形のステント移植片構成を用いることを伴なう。このスカラップ形構造を形成するために、ステントの最終巻回においてステント部材の頂点間の移植片材料が除去される。例えば、第1の頂点(814)と隣接する頂点(816)との間から移植片材料を除去する(又は切断してその下に折り畳む)ことにより、図23に示すように、スカラップ部(812)を形成してもよい。
【0114】
スカラップ形構成を用いることの利点が図24A〜図25Bに示されている。図24Aは完全に拡張したスカラップ形構成でない対側脚部(730)の断面図を示している。第1の頂点(822)及び隣接する頂点(824)は、これらの間の領域に連続する移植片材料(784)を有する。頂点(822)及び隣接する頂点(824)が共に矢印(820)の方向に移動されると、移植片材料(784)は図24Bに示されるような、潜在的な漏れ通路であるか、又はトロンボゲン物質が堆積する潜在的な場所である湾曲部又はしわ(818)を形成する。一方、図25A及び図25Bに示されるスカラップ形構造は、第1の頂点(814)と隣接する頂点(816)との間に移植片材料がなく、従って共に移動されたときに移植片材料のしわを形成しない。
【0115】
ステント移植片がその完全な直径まで拡張できないときに、上述のしわ(818)が形成される場合がある。例えば、収容管腔又は管壁の内径が、完全に拡張したステント移植片の外径よりも小さいことは極めて一般的である。このような事情から、スカラップ形構造を本体又は対側脚部の任意の終端開口において選択的に使用し得ることは明らかである。好ましくは本体(700)の遠位端(702)は、図14A及び図14Bに示されるようにこのスカラップ形構造を有する。
【0116】
これまでの記載では概して、移植片部材を含むステント移植片を参照してきた。このような直線状ステント移植片の構成が前述のように詳細に説明されているが、分岐移植片部材の構成が図26、図27A及び図27Bに示される。上述の本体(700)の構成に適した分岐移植片部材は通常、二つの移植片部材、即ち同側のテーパ付き移植片(840)と、対側のテーパ付き移植片(842)とから形成される。分離された対側脚部移植片(844)は直線状又はテーパ付きのセクションであり、上記最初の部分で説明された原理により形成され得る。
【0117】
同側のテーパ付き移植片(840)は、テーパにより離間された三つのセクションを有する。頂部セクション(846)、中間セクション(848)、及び底部セクション(850)である。本体要素移植片(854)は同側のテーパ付き移植片(840)の頂部セクション(846)を対側のテーパ付き移植片(842)の頂部セクション(847)に熱接合することにより形成される。この熱接合は共通の隔膜(856)を形成し、この隔膜(856)は好ましい実施態様においてその後に除去されて滑らかな分岐部を形成する。隔膜材料を除去することにより、隔膜の遍在により生じ得る流体流れの乱れ又は遮断が阻止される。このような遍在は流体圧力により生じ、隔膜をゆるめるか又はもはや緊張されないようにステント移植片を半径方向に圧縮すると更に悪化する。
【0118】
別の実施態様では、移植片セクションを図27A及び図27Bに示す方法で形成することができる。本実施態様によると、本体要素移植片(867)は二つの部品から形成される。管状移植片セクション(860)は「U字形状」に折り曲げられる。頂部穴(864)が「U字形状」の頂部を切り欠くことにより形成される。上方移植片セクション(862)が管状移植片セクション(860)の頂部穴(864)上に配置される。二つの部品は接合界面(866)において互いに接合される。好ましくは、所望の形状及び滑らかな内部を得るために二つの移植片部品は内部マンドレル(図示しない)に支持されつつ熱接合される。しかしながら、十分に漏れがないシールを提供するあらゆる方法によって、上方移植片セクション(862)を接合界面(866)で管状移植片セクション(860)に取り付けることができる。例えば、要素を一体的に縫合してもよいし、又は接着剤により接合してもよい。
【0119】
使用時、モジュール式分岐ステント移植片は典型的には身体の血管系を介して経皮的に搬送される。好ましくは、詳細に上述した拘束部材により人工器官が搬送される。図28A〜図28Eは、経皮的カテーテル組立体を用いて拘束部材(902)を備えた分岐ステント移植片の展開配置の様子を図によって示している。図28Aを参照すると、複管腔カテーテル組立体(928)が身体管腔の選択された位置に挿入されている。分岐ステント移植片の本体(700)は、案内ワイヤ(926)及び案内ワイヤ管腔(929)の周りに、拘束部材(902)及び結合部材(906)によって圧縮状態で保持される。展開配置に先立って、潰された本体(700)は遠位障壁(930)及び近位障壁(932)により軸線方向に所定位置に保持される。遠位障壁(930)及び近位障壁(932)は典型的には案内ワイヤ管腔(929)に固定される。結合部材(906)は拘束部材(902)の複数のアイレット(920)を通ってチェーンノットを形成し、複管腔カテーテル(928)内に延びている。
【0120】
図28Aは、遠位に配置された本体(700)及び拘束部材(902)を備えた複管腔カテーテル(928)を一般的には主要脈管の分岐部である移植位置へ進行させる様子を示している。展開配置時に外科医が本体(700)を整列させて、同側脚部(726)が分岐管の一方の枝内に延びるようにすると共に、収容穴(704)及び収容管腔(703)が対側脚部(730)を収容するように分岐管の他方の枝と一線に並ぶようにするのが重要である。
【0121】
この整列作用を容易にする一つの方法は、放射線不透過性マーカを設けて、展開配置又は拘束部材(902)からの解放に先立って、本体(700)の回転位置を外科医が容易に判断し得るようにすることである。好ましい実施態様において、長いマーカ(934)が圧縮された組立体の対側に配置され、短いマーカ(936)が同側に配置される。好ましくは、これらマーカは圧縮に先立ってステントに配置される。しかしその代わりに、これらマーカを拘束部材の一部とすることも可能である。異なる長さのマーカを有することにより、外科医が分岐管に対する同側脚部と収容管腔の両方の向きを特定することが可能となる。
【0122】
組立体が移植のために適切に整列されかつ位置決めされると、結合部材(906)が引かれて拘束部材(902)がインプラントを、典型的には遠位端から、解放し始める。好ましい実施態様において、拘束部材(902)は図示される側に配置される。というのは、拘束部材(902)が収容管腔(703)の展開配置をほとんど妨害しそうもないからである。
【0123】
図28Bは、結合部材(906)が拘束部材(902)の複数のアイレット(920)を介してカテーテル組立体(928)内に引込められるにつれて、半径方向に拡張する本体(700)を示している。好ましい実施態様においては、拘束部材(902)は本体の長さに沿って複数の縫合糸により本体(700)に固定され、移植される人工器官と拘束部材(902)間の長手方向のあらゆる相対移動が阻止される。選択的に、拘束部材はさきに詳述したような引込み又は引張り機構を使用することができる。
【0124】
図28Cは、案内ワイヤ(926)及びカテーテル組立体(928)が引込められた後における、管の分岐部の最終移植位置での本体(700)及び拘束部材(902)を示している。
【0125】
図28Dは、拘束部材(942)を用いて対側収容穴まで搬送されている対側脚部(730)を示している。対側脚部(730)を位置決めしかつ解放する手順は、本体(700)の分岐点(728)に対する位置が適切であることを確実にするために、放射線不透過性マーカが使用され得る点を除いて、ほぼ円筒状のステント移植片の移植についての前述の内容と同様である。
【0126】
放射線不透過性マーカを配置して、例えば収容穴(704)、対側脚部(730)の遠位端(734)、及び本体(700)の分岐点(728)の位置を表示するようにしてもよい。これらマーカは、対側脚部が収容穴(704)内に入り込むときに対側脚部の位置を表示するよう機能し、分岐点(728)から始まる収容管腔(703)に対する対側脚部の最終的な位置を表示するように機能する。図19に示される好ましい実施態様においては、放射線不透過性ワイヤを収容管腔の周辺部周りの移植片部材(780)に熱接合するか又は埋め込むことができる。このような放射線不透過性ワイヤを別の場所、例えば対側脚部管腔、同側脚部管腔、又は本体(700)の遠位端における管腔等において用いることもできる。
【0127】
図28Eは、最終移植状態にある組み立てられた分岐ステント移植片を示しており、対側脚部が本体(700)の収容管腔内に拡張すると共にこの収容管腔と係合している。
【0128】
図29A〜図29Dは、展開配置される同じステント又はステント移植片を図で示しているが、このステント又はステント移植片が、結合部材(906)が引込められると拘束部材(902)が中心から外側に解放される点で異なる。これにより、端部解放式のような遠位端に対してではなく、管の分岐点に対しての更に正確な位置決めが行われ得る。
【0129】
例示のための実施態様を参照して本発明を開示してきたが、この記載は限定的な意味に解釈されることを意図するものではない。様々な変更、及び例示的実施態様の組み合わせだけでなく本発明の他の実施態様も、当業者には本明細書の記載から明らかである。従って、添付した請求の範囲がこのようなあらゆる変更及び実施態様を包含することを意図するものである。
【0130】
本明細書に記載されている文献及び特許の開示内容は参考として本願に組入れられている。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】図1は、本発明の原理に基づく潰された状態に拘束された哺乳類用インプラントの斜視図である。
【図2】図2は、図1の拘束されたインプラントの端面図である。
【図3】図3は、拘束が解放され且つインプラントが拡張した状態にある図1の組立体の斜視図である。
【図4A】図4Aは、図3の組立体の端面図である。
【図4B】図4Bは、図4Aの拘束部材の底面図である。
【図5A】図5Aは、非作動状態にある本発明の別の実施態様の拘束部材の引込み機構を示す。
【図5B】図5Bは、作動状態にある図5Aの引込み機構を示す。
【図5C】図5Cは、非作動状態にある本発明の更に別の実施態様の拘束部材の引込み機構を示す。
【図5D】図5Dは、作動状態にある図5Cの引込み機構を示す。
【図6A】図6Aは、図1の拘束部材に接続されたインプラントの別の実施態様の斜視図である。
【図6B】図6Bは、図1の拘束部材に接続されたインプラントの更に他の実施態様の斜視図である。
【図7A】図7Aは、図1の拘束部材と結合部材とを示し且つ拘束部材から結合部材を外すための引張り方向を示す。
【図7B】図7Bは、本発明の一実施態様で用いられるチェーンノットを示すために、結合部材が緩められた図7Aの組立体を示す。
【図7C】図7Cは、結合部材が図示した方向へ引っ張られる間における図7A又は図7Bの組立体の解放を示した図である。
【図8A】図8Aは、管腔内搬送に先立ち、本発明に従って拘束部材に拡張可能ステント移植片を入れる手順を示す一連の図の1つである。
【図8B】図8Bは、管腔内搬送に先立ち、本発明に従って拘束部材に拡張可能ステント移植片を入れる手順を示す一連の図の1つである。
【図8C】図8Cは、管腔内搬送に先立ち、本発明に従って拘束部材に拡張可能ステント移植片を入れる手順を示す一連の図の1つである。
【図8D】図8Dは、管腔内搬送に先立ち、本発明に従って拘束部材に拡張可能ステント移植片を入れる手順を示す一連の図の1つである。
【図8E】図8Eは、管腔内搬送に先立ち、本発明に従って拘束部材に拡張可能ステント移植片を入れる手順を示す一連の図の1つである。
【図8F】図8Fは、管腔内搬送に先立ち、本発明に従って拘束部材に拡張可能ステント移植片を入れる手順を示す一連の図の1つである。
【図9A】図9Aは、結合部材が図7A〜図7Cに示したように構成された状態において、本発明に従い、拘束されたインプラントが哺乳類の体内管腔の所望の部位へ搬送されるのを示している図である。
【図9B】図9Bは、図9Aの線9B−9Bに沿った断面図である。
【図9C】図9Cは、図9Aとは別の複合拘束部材の構成を示す。
【図10A】図10Aは、図9Aに図示されたインプラント組立体の部分的な展開配置を示す図であり、図示した案内ワイヤの遠位端から離れる方向(すなわち図示されたハブに向かう方向)へ進行する拡張を示す。
【図10B】図10Bは、図10Aの線10B−10Bに沿った断面図である。
【図11A】図11Aは、図9Aに図示したインプラント組立体の完全な展開配置を示す図である。
【図11B】図11Bは、図11Aの線11B−11Bに沿った断面図である。
【図12A】図12Aは、本発明の別の実施態様における拘束されたインプラントの展開配置を示した一連の図の1つであり、ここでは結合部材がインプラントの中央部からインプラントの端部に向かって解放するように構成されている。
【図12B】図12Bは、本発明の別の実施態様における拘束されたインプラントの展開配置を示した一連の図の1つであり、ここでは結合部材がインプラントの中央部からインプラントの端部に向かって解放するように構成されている。
【図12C】図12Cは、本発明の別の実施態様における拘束されたインプラントの展開配置を示した一連の図の1つであり、ここでは結合部材がインプラントの中央部からインプラントの端部に向かって解放するように構成されている。
【図12D】図12Dは、本発明の別の実施態様における拘束されたインプラントの展開配置を示した一連の図の1つであり、ここでは結合部材がインプラントの中央部からインプラントの端部に向かって解放するように構成されている。
【図13】図13には図12Aから図12Dに示した展開配置のための一つの結合部材の構成が図示されている。
【図14A】図14Aは、図示された搬送装置と共に用いられる分岐ステント移植片の斜視図である。
【図14B】図14Bは、図14Aの分岐ステント移植片の上面図である。
【図14C】図14Cは、図14Aにある断面線14C−14Cに沿った断面図である。
【図14D】図14Dは、別の実施態様の図14Aにある断面線14D−14Dに沿った断面図である。
【図15】図15は、体の血管内の分岐部分に配置された組み立てられた図14Aの分岐ステント移植片の正面図である。
【図16】図16は、ステントの固定頂点の一つの構造の破断拡大斜視図である。
【図17】図17は、ステントの固定頂点の好ましい構造の破断拡大斜視図である。
【図18】図18は、図14Bの断面線18−18に沿ったステント移植片の断面図である。
【図19】図19は、図14Aの断面線19−19に沿ったステント移植片の断面図である。
【図20】図20は、小さな直径の局所領域を有する、図18に示された対側脚部接続部分の拡大部分断面図である。
【図21】図21は、収容管腔の更に別の構造の拡大部分断面図である。
【図22】図22は、収容管腔の更に別の構造の拡大部分断面図である。
【図23】図23は、対側脚部要素の遠位端領域の別のスカラップ構造の部分斜視図である。
【図24A】図24Aは、図14Aの断面線24A−24Aに沿った断面図であり、自由状態を示す。
【図24B】図24Bは、図14Aの断面線24A−24Aに沿った断面図であり、拘束状態を示す。
【図25A】図25Aは、図23の断面線25A−25Aに沿った断面図であり、自由状態を示す。
【図25B】図25Bは、図23の断面線25A−25Aに沿った断面図であり、拘束状態を示す。
【図26A】図26Aは、組み立て前の移植片構成要素の正面図である。
【図26B】図26Bは、図26Aの移植片を組み立てたときの正面図である。
【図26C】図26Cは、図26Aの移植片を組み立てたときの上面図である。
【図27A】図27Aは、別の構造の移植片要素の組み立てられていない構成要素の正面図である。
【図27B】図27Bは、図27Aの別の構造の組み立てられた移植片要素の正面図である。
【図28A】図28Aは、分岐ステント移植片の展開配置を示す一連の図の1つである。
【図28B】図28Bは、分岐ステント移植片の展開配置を示す一連の図の1つである。
【図28C】図28Cは、分岐ステント移植片の展開配置を示す一連の図の1つである。
【図28D】図28Dは、分岐ステント移植片の展開配置を示す一連の図の1つである。
【図28E】図28Eは、分岐ステント移植片の展開配置を示す一連の図の1つである。
【図29A】図29Aは別の搬送装置を用いた分岐ステント移植片の展開配置を示す一連の図の1つである。
【図29B】図29Bは別の搬送装置を用いた分岐ステント移植片の展開配置を示す一連の図の1つである。
【図29C】図29Cは別の搬送装置を用いた分岐ステント移植片の展開配置を示す一連の図の1つである。
【図29D】図29Dは別の搬送装置を用いた分岐ステント移植片の展開配置を示す一連の図の1つである。
【符号の説明】
【0132】
100 搬送装置
102 拘束部材
104 結合部材
106 ステント移植片
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に身体内の管及び通路を治療するためのインプラントに関する。本発明は、特にインプラント展開配置(deployment)装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血管の動脈瘤又は疾病によって厚く又は薄くなった管壁の治療又は分離は、血管移植片を用いる外科的バイパス術によって慣例的に行われている。この方法の短所は、手術に関連する罹患率及び死亡率、手術後の回復時間が長いこと、並びに移植片又は処置の限界のために必要となる高い発生率での反復的介入にある。
【0003】
疾病によって厚くなった管は、機械的に管を開いた状態に保持するステントにより、さほど侵襲せずに処置することができる。場合によっては、ステントは、バルーン式血管形成術の後に又は付随して使用できる。またステントは、移植片に関連付けて従来説明されている。この場合の移植片は、管を流れる血液に対し略円滑な接触領域を提供するように意図される。
【0004】
一般に、ステント又はステント移植片を、所望位置に位置決めできるように正確に展開配置する(deploy)ことが重要である。血管内のステント又はステント移植片の展開配置(deployment)は、2ステッププロセスとして要約することができる。第1のステップは、血管系内でステントを所望位置に移動させることである。ステント又はステント移植片は、自己拡張式又はバルーン拡張可能なものであることができる。いずれの場合も、インプラントは一般的に、比較的狭い管腔を通した搬送を容易にするように、潰された状態で送られる。第2のステップは、ステント又はステント移植片をその最終形状に「固定」して、所望位置に移植され続けるようにするある方法を含んでいる。
【0005】
自己拡張式又はバルーン拡張可能なステント及びステント移植片を搬送するための幾つかの技術が知られている。自己拡張式のステント又はステント移植片の場合は、典型的には拘束機構を用いて、搬送の間、ステント又はステント移植片を潰された状態に保持する。所望の移植部位でステント又はステント移植片が拡張して管壁に係合するように拘束機構は後で除去される。バルーン拡張可能なステント又はステント移植片の場合は、典型的には拘束機構が、搬送の間拡張可能な装置を潰された状態に保持する。この潰された装置内には、膨脹可能なバルーンが一緒に配置されている。拘束機構は、バルーンの膨脹が可能となるように後で取り外され、バルーンの膨張によりステント又はステント移植片が拡張されて管壁に係合するようにする。一般に、管状鞘や、フィラメント若しくは糸の形であり得る締結要素が、潰された装置を拘束するものとして説明されている。
【0006】
リンデマンら (Lindemann et al.)による特許文献1は、管状鞘を通して展開配置されるバルーン拡張可能なステント移植片を開示している。ステント移植片は、潰された状態で管に沿って送り進められて適正位置に達し、そこで鞘が取り除かれて、ステント移植片内でのバルーンの膨脹が可能になる。バルーンがステント移植片を最終的な状態に拡張させた後、バルーンは抜気されて管状鞘内に引き戻される。リンデマンらの開示するもう1つの展開配置方法は、管状鞘を使用せずに、ステント移植片とバルーンとに巻き付けられる「糸」を用いるものである。この糸は、バルーンの膨脹が必要なときには取り除くことができる。
【0007】
ピンチュク (Pinchuk)による特許文献2は、「鞘」を通してバルーン拡張カテーテルによって展開配置される螺旋状に巻かれたスプリングステントを開示している。この鞘は、ステント及びバルーンカテーテルを略圧縮された状態に保持する。ステント及びバルーンが管腔に沿って適正位置に送り進められると、鞘が取り除かれる。そこでバルーンは膨らまされ、抜気され、ステントを最終移植位置に残して取り出される。
【0008】
シンノット (Sinnott)による特許文献3は、引きちぎって除去可能な無孔の鞘によって移植される多孔質の血管移植片を開示している。移植片が所望位置に送り進められると、その領域に血液循環が回復し、血液が多孔質移植片の内側で凝固できるようになる。凝固の5分後に、無孔質鞘を、切断又は紐状体を引っ張ることにより除去できる。紐状体を引っ張ると、鞘が引き裂かれて引き抜かれる。
【0009】
ラウら (Lau et al.)による特許文献4は、拡張時に好ましくは自己固定する拡張可能なステントを開示している。ステントは、バルーンカテーテルのような膨脹可能部材を覆って配置され、ガイドワイヤに連結される単層又は2層の鞘によって被覆されている。鞘、ステント及び膨脹可能部材からなる組立体が所望位置に送り進められると、ガイドワイヤを遠位方向へ移動させることにより鞘が除去される。ステントから鞘を引き外した状態で、膨脹可能部材を作用させてステントをその最終状態に拡張させることができる。
【0010】
ウィンストンら (Winston et al.) による特許文献5は、血管移植片が鞘により一対のステント上に圧縮状態に保持されている組立体を開示している。それらのステントは、スプール上に巻き付けられた柔軟シートの形態を呈する。スプールが血管内の適正位置に挿入された後、鞘が取り除かれ、ステントが解放されて移植片を管壁に押し付ける。
【0011】
ストレッカー (Strecker) による特許文献6は、解放可能な鞘によって半径方向に圧縮された状態に保持される拡張可能な人工器官を開示している。鞘は、はぎ取り可能な網状物であってもよく、網状物が制御可能に解放されるときに、圧縮された人工器官が拡張可能となる。
【0012】
前述の各種機構は概して、幾つかの構成部品を有し、そのために作業がより複雑になる可能性がある。さらに、これら機構の寸法及び機械的特性が、小さな管内でのインプラントの搬送可能性を制限するものと考えられる。搬送の正確さもまた、上述したように検討課題である。
【0013】
従来の入れ子式ステント鞘(telescoping stent sheath)の直径は、展開配置の時に鞘を押し棒上を引いてステントから引き取る際に、搬送カテーテルとの不適当な摩擦の一因となり得る。これにより、展開配置の正確さを制御することが困難となる場合がある。搬送カテーテルを通してステントを押すために使用される押し棒は、典型的に約100cmまでの長さを有するが、やはりカテーテルに対する不適当な摩擦の一因になり得る。この問題は、血管系内でカテーテルがその経路に沿って曲がる場合にさらに悪化し得る。また、鞘が引込められる際に、鞘がステントの位置を変えてしまう可能性がある。
【0014】
【特許文献1】米国特許第 4,878,906号明細書
【特許文献2】米国特許第 5,019,090号明細書
【特許文献3】米国特許第 5,246,452号明細書
【特許文献4】米国特許第 5,344,426号明細書
【特許文献5】米国特許第 5,366,473号明細書
【特許文献6】米国特許第 5,405,378号明細書
【発明の開示】
【0015】
本発明は一般に、ステント又はステント移植片のようなインプラントのための搬送装置を含むものである。搬送装置は一般的には、潰されたステント又はステント移植片等の潰されたインプラントの少なくとも一部分の周囲を覆うシート材を具備する。シート材は、潰された部材の少なくとも一部分の周囲に広がるときに、管状部材を構成することができる。この装置はさらに、インプラントを、哺乳類の身体の所望部位に搬送する間、潰された状態に維持するために、シート材の複数部分を互いに結合する結合部材を含んでいても良い。この構造により、糸状の拘束部材と比較して、潰されたステントと管腔との間に円滑な接触面を得ることができる。
【0016】
本発明の他の態様によれば、シート材は、搬送組立体に対して構造上の剛性又は横断面形状に関して著しい影響を与えない薄い材料から構成できる。この構成は、外装又はガイドカテーテルの必要性をも排除でき、比較的離れた部位にしかも狭小で曲りくねった血管系を通して装置を搬送する外科医の能力を向上させると考えられる。さらにシート材は、解放後にステントと共に所望部位に残すことができるように、移植可能な材料から構成できる。
【0017】
本発明の他の実施態様によれば、ステントとステントに結合される拘束部材とを具備する組立体が提供される。ステントは、潰された状態と拡張された状態とを有し、拘束部材は、ステントが潰れた状態にあるときに、ステントの少なくとも一部分に巻き付けられるようになっているシート材を具備する。シート材の複数部分は、互いに結合されて、シート材を、潰れた状態のステントの少なくとも一部分に巻き付けた形態に維持するようになっている。このように、1つの形態において、シート材の複数部分は互いに解放可能に結合され、それによりシート材がステントを潰れた状態に維持する。
【0018】
本発明の他の態様によれば、互いに結合できるシート材の複数部分は、フィラメント又は糸状の部材によって結合できる。例えば、結合部材の延長部分であっても良い引抜線によって離れた場所から引き抜くことによって糸状結合部材を除去した後にステントを拡張することが出来る(或いは自己拡張式ステントを用いている場合には拡張可能である)。引抜線はまた、糸状の小断面形状を有し得るから、引抜線を通すカテーテルとの摩擦が最小限になる。このような構成は、展開配置の正確さをさらに促進するものと考えられる。
【0019】
本発明の他の態様によれば、複数の拘束部材を使用できる。或いは、複数の結合部材を用いて、1つ以上の拘束部材の複数の部分を結合することができる。これら構成は、展開配置に要する時間を短縮でき、インプラントを展開配置する際に流体の流れがインプラントの位置を乱す可能性のある時間を削減できる。
【0020】
本発明の他の態様によれば、組立体はステントとステントに結合される拘束部材とを有する。ステントは、潰された状態と拡張された状態とを有し、ステントが潰れた状態と拡張状態との間を移行するとき、相対的に移動する第1及び第2部分を有する。拘束部材は、ステントが潰れた状態にあるとき、ステントの少なくとも一部分に巻き付けられるようになっているシート材を有する。シート材の複数部分は、互いに結合されて、シート材を、潰れた状態のステントの少なくとも一部分に巻き付けた形態に維持するようになっている。この組立体はさらに、拘束部材に結合される第1部分と、ステントの第1及び第2部分の一方に結合される第2部分とを有する部材を備えている。
【0021】
本発明の他の態様によれば、拘束部材によって潰れた状態に拘束されていた拡張可能なステントが解放され、拘束部材がステントを配置した管腔の壁に押し付けられる。拘束部材がその部位に残されるので、(例えば自己拡張式インプラントを半径方向拘束鞘の端部から押し出して鞘を引込める等の)他の技術に比べて、展開配置のステップの数を削減することができる。
【0022】
本発明の他の態様によれば、ステントの搬送の準備方法は、潰されたステントを、管の形態であっても良いシート材内に拘束すること、及び管の複数の側縁部を結合することを含んで構成されている。
【0023】
本発明の他の態様によれば、拡張可能なステント(又はステント移植片)は、テーパ付き部材を通してステントを管状拘束部材に引き込むことにより、略円筒状又は管状の拘束状態に潰される。
【0024】
以上、従来技術の幾つかの欠点及び本発明の利点を簡単に説明した。本発明の他の特徴、利点及び実施態様は、以下の説明、添付図面及び添付した請求の範囲から、当業者に明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
類似要素を同一参照符号で示してある図面を詳細に参照すると、ステント又はステント移植片のようなインプラント又は装置を哺乳類の血管系内の所望部位に搬送する搬送装置が、本発明の原理に従って図示されている。本発明の搬送装置は、一般的には拘束部材と結合部材(単数又は複数)とを有する。拘束部材は、潰された又は圧縮されたインプラントの少なくとも一部分を囲むのに適するように構成される。結合部材は、拘束部材の複数部分を互いに解放可能に結合して、インプラントを潰された状態又は圧縮された状態に維持する。
【0026】
図1〜図4に、本発明に従って構成されたインプラント搬送装置が示されている。搬送装置(100)は通常、図示したようなシート材の形をした拘束部材(102)と、この拘束部材の一部分を相互に解放可能に結合する結合部材(104)とを有する。拘束部材の結合部分は、図と異なってもよいが好ましくは、例えば自己拡張式ステント移植片(106)等のようなインプラントを図1及び図2に示した潰された状態又は圧縮された状態に維持するように選択される。図1及び図2では、拘束部材(102)はチューブ形態で示されている。図示の実施態様では、結合部材(104)はフィラメント又は糸状(thread-like) 要素として示されており、それは拘束部材(102)が、ステント移植片(106)がその拡張状態に拡張するような形態に配置を変えることを防止する。
【0027】
インプラントは、拘束部材(102)内への配置に適した任意の方法で潰されて良い。例えば、後に詳述するがインプラントは拘束部材(102)内に設置される前に、畳まれるか又は半径方向に押し潰されても良い。図9〜図11に示したように、拘束部材(102)とステント移植片(106)とを有する搬送組立体(108)は比較的小さい断面積を有し、そのことが、自然状態の管腔直径がステント移植片(106)の拡張直径より小さい可能性のある部位への搬送組立体の管腔内搬送を容易にする。
【0028】
図3及び図4Aに、ステント移植片(106)及び拘束部材(102)が、結合部材(104)の除去後の展開配置状態で示されている。拘束部材(102)はステント移植片(106)に固定され、これら二つの構成要素は所望の展開配置部位で拡張した後も取り付けられたままになるようにしても良い。拘束部材とステント移植片との間の取り付けは、管内の流体の流れを乱す可能性のある展開配置後における拘束部材とステント移植片との間の大きな移動を防止するようになされるのが好ましい。図4A及び図4Bを参照すると、拘束部材(102)をステント移植片(106)に固定して取り付けるのに、複数の縫合糸(110)が用いられても良い。より詳細には、縫合糸は図4Aに示したように、拘束部材を通ってステントの一部分を取り巻くループを形成する。なお図4Bに縫合糸(110)の配置の一例を示したが、他の配置を用いてもよい。
【0029】
拘束部材(102)を別の構成で用いてもよいが、好ましい構成では、図4Bに示したように一定幅を有する略矩形のものである。例えば、後述するように拘束部材がモジュール式分岐ステントと共に用いられる場合にも、拘束部材は図4Bに示した構成と同様の矩形の構成であっても良い。或いは拘束部材は、異なる直径の領域(胴及び脚)に合うように配設された異なる大きさの二つの矩形部分を有していても良く、又は固定されているときにインプラントを潰された状態に維持するような別の構成でもよい。図4Bを再び参照すると、拘束部材は、この部材の両端(114)の間に延びる両側縁部(112)を有するように記載されても良い。両側縁部に沿って複数のアイレット(116)が配置され、これらアイレットに結合部材(104)が通される、又は縫うように通されても良い。アイレットは貫通孔(118)であり、これら貫通孔(118)は均一な直径の孔を開ける装置又はレーザドリルのような他の手段により形成されても良い。或いは、これらアイレットは、側縁部(112)に取り付けられ得るループ(120)によって、又は当業者に明らかな他の手段によって形成してもよい。
【0030】
負荷がかかったときに結合部材(104)が拘束部材(102)を裂いてしまう可能性を最小限にする、又は排除するために、側縁部(112)に構造上の補強を施すことが更に望ましい。補強側縁部は、直径の小さい縫合糸のような補強部材(122)を取囲んで拘束部材(102)の一部分を折り重ねることにより形成されても良く、補強部材(122)は二層のシート材の間で熱接着されても良い。この構造では、両側縁部(112)に沿った材料の比較的小断面形状のビードが、引き裂けが広がる可能性及び拘束部材(102)が突発的にはずれる可能性を排除する又は最小限にする。直径が小さい補強部材(122)としての縫合糸は、例えばePTFE(延伸膨張PTFE)で構成されていても良い。
【0031】
拘束部材(102)が、潰された自己拡張式ステント移植片を拘束すると、例えば、ステント移植片が搬送形態にあるときには、潰されたステント移植片(106)の蓄積されたばねエネルギから生じる力が拘束部材(102)に作用する。したがって本発明の他の態様によれば、拘束部材(102)は、耐クリープ性があり且つ長い間延びることなく必要な荷重に耐えられる材料を含んでいても良い。拘束部材(102)は例えば、熱接着可能な薄いシートの形で適切な耐クリープ性、可撓性及び生体適合性があると考えられるePTFEを含んでいても良い。また、ポリエチレンテレフタレート(DACRON(登録商標)又はMYLAR(登録商標))のようなポリエーテルや、KEVLAR(登録商標)のようなポリアラミドを含む、他の物質を用いてもよい。
【0032】
糸状の結合部材(104)も又、ePTFEを含んでいても良い。結合部材(104)には、ポリエチレンテレフタレート(DACRON(登録商標)又はMYLAR(登録商標))のようなポリエーテルや、KEVLAR(登録商標)のようなポリアラミドや、ニチノール、ステンレス鋼、金のような金属ワイヤの縫合糸を用いても良い。結合部材(104)は後述するように、遠隔操作式の引張線を形成するように、単純に延長されてもよい。或いは、ステンレス鋼からなるような金属製の引張線を、ePTFEからなるような非金属製の結合部材(104)に結合してもよい。この結合は、金属製の引張ラインの端をそれ自体の上に折り返してアイレットを形成し、結合部材をこのアイレットに通して結び目によりアイレットに固定して結合することによって行われても良い。
【0033】
なお拘束部材の幅は、図4Aに示した平らな状態にあるときには、好ましくはインプラントの直径より小さい。典型的には拘束部材の幅は約40mmより小さく(装置が胸部大動脈用の寸法の場合は典型的に約25mm〜40mm)、管腔がより狭小な他の用途では一般的に約15mm以下である。シート材は好ましくは0.010インチ(0.254mm)より薄く、さらに好ましくは0.005インチ(0.127mm)以下である。さらに、拘束部材の長さは好ましくはインプラントと同じかそれより短い。
【0034】
本発明によれば、インプラントの拡張中に拘束部材を引込めるための引込み組立体を提供し、拘束部材の長さがインプラントの長さと略等しいか又はそれより短く維持されるようにしても良い。インプラントの拡張可能な部分は、半径方向に拡張するので、軸線方向には僅かばかり短くなる可能性がある。このことにより、このような状況においてあるタイプの引込み組立体を用いなければ、インプラントの端部で拘束部材がはみだす可能性がある。引込み組立体は、拡張後に、拘束部材がインプラントを越えて延びてしまう危険性、並びにインプラントにより形成される流路及びこの流路を通る流体の流れに干渉してしまう危険性を、最小限にするか、又は排除する。
【0035】
図5A〜図5Dに、本発明の原理に従って構成された引込み組立体又は引込み機構が示されている。図5Aでは、引込み組立体(340)は生体適合性のあるフィラメント(342)を有する。このフィラメントは、図示したように拘束部材の一端に隣接した取付部分(348)で、拘束部材(102)に縫われ、結ばれ、又は他の方法で固定された部分を有する。フィラメント(342)は、ステント(126)の第一又は末端の螺旋状巻回(helical turn)を形成する部材の真下を通り、そして第一の巻回以外の第二、第三又は他の螺旋状巻回の一部分、例えば第二の巻回の頂点又は曲げ部分(344)のような一部分に対し、その下方にループを形成するか、或いは他の方法で摺動可能に取り付けられる。フィラメント(342)の他方の端部はさらに、結ぶか又は他の方法により、取付部分(348)又は頂点若しくは曲げ部分(344)から周方向に間隔を開けたステントの部分、例えば同じ螺旋状巻回の頂点又は曲げ部分(346)に固定される。好ましくはフィラメント(342)は、図5Aに示したように第二の螺旋状巻回の頂点部分(344)にかけられ、頂点部分(344)に隣接する頂点部分(346)に結ばれる。
【0036】
図5Aは圧縮状態にあるステントを示す。上述したように、ステントが拡張したときには、ステント部材は図5Bに示したようにステントを半径方向に拡張させるように拡張する。ステントが拡張すると頂点部分(344)と(346)の間の距離が増大し、フィラメント(342)はこの拡張された条件下で、柔軟ではあるが非伸張性であるので、取付部分(348)と頂点部分(344)との間の距離は必然的に減少する。このため図5Bに示したように、拘束部材(102)の端部はステント(126)に対して縮む。したがって本実施態様では、拘束部材の長手方向の軸線に沿った引込みは隣接する頂点間の距離が増大することにより生じる。拘束部材の一方の端部での一つの引込み機構を示したが、拘束部材の他方の端部において同様に構成され且つ配設される他の引込み機構を使用することもできる。
【0037】
図5C及び図5Dは引込み組立体の別の実施態様を示す。この引込み組立体の図は(図5A及び図5Bと同様に)、略円筒形の移植片とステントとの間の位置から半径方向外方へ見た図である。フィラメントの一方の端部が拘束部材に固定され、フィラメントの他方の端部がステントの拡張中に周方向に移動するステントの一部に固定されていた上述した図に対して、本実施態様ではフィラメントの他方の端部は、ステントが拡張するとステントの長手方向軸線に略平行(すなわち軸線方向)に移動するステントの一部に固定される。本実施態様では、ステント部材(126’)(図示したように形成され得るアイレット又はループを有する点でステント(126)とは異なる)の端部の螺旋の少なくとも1つの頂点部分(364)は、大半の頂点部分(366)より短い。しかしながら、図5A及び図5Bに示したように頂点部分を形成してもよい。フィラメント(362)は一方の端部で頂点部分(364)に結ばれるか又は他の方法で固定され、他方の端部で拘束部材(102)の一方の端部に結ばれるか又は他の方法で固定される。図5Dに示したように、ステントが半径方向に拡張する際、内側に配置された頂点部分(364)は、ステントの最後の巻回又は最も外側に配置された巻回に設けられた完全な高さを有する(full height) 頂点部分(366)より大きく長手方向又は軸線方向に引き込められる。この比較的大きな引込みは、拘束部材の端が頂点部分(366)に対して引込められるようにフィラメントを介して直接伝達される。上述したように拘束部材の他方の端部で同様の構成の別の引込み機構を用いてもよい。
【0038】
再び図3を参照すると、本発明で開示する搬送装置と共に用いることのできる一つのステント移植片構造が示されている。ステント移植片(106)は、壁厚が薄いチューブ又は移植片部材(124)と、自己拡張式ステントでもよいステント部材(126)と、ステント部材(126)と移植片部材(124)とを互いに結合するリボン又はテープ部材(128)とを包括的に有する。ステント部材(126)と移植片部材(124)とは互いに熱接着されても良く、従ってテープ部材(128)と移植片部材(124)との間のステント部材(126)の各部分でシールが行なわれる。ステント移植片(106)の機械特性は、例えば、材料の選択、ステント部材の構造的パターンの変更、テープ部材(128)及び移植片部材(124)の厚さの変更、テープ部材とステント部材及び移植片部材との接触パターンの変更により、変更しても良い。
【0039】
図3に示したように、テープ部材(128)は波状のステント部材(126)の螺旋状の巻回を辿るようにステント部材(126)の一部のみを覆っていてもよい。この構造では、ステント部材の複数の領域は、例えばステント移植片が非圧縮状態にあるときに、テープ部材と接触(interface with)しない。このことは、ステント移植片が曲げや圧縮を受けたときにステント部材(126)とテープ部材(128)との間に発生する剪断応力を低減し、これにより移植片部材(124)若しくはテープ部材(128)を破断してしまう危険性又はステント部材(126)と移植片部材(124)とが剥がれ(delamination)てしまう危険性を低減できる点で有利であると思われる。
【0040】
また、好ましくはテープ部材(128)は、ステント部材(126)及び移植片部材(124)と接触するために、縫合糸のようなフィラメント又は糸状構造に比べて概して広い面又は平坦な面を有する。このことは、テープ部材(128)と移植片部材(124)との間における潜在的接合面の面積を増大し、ステント移植片の構造的一体性を高める。また接合表面積が増大されると、テープ部材(128)の厚みを容易に最小の厚みにできる。図示した概して平坦なリボンの形のテープ部材が望ましい結果をもたらすことが判っている。
【0041】
波形のピーク間の幅が約1.905mm(0.075インチ)であるステント部材には、0.635mm(0.025インチ)、1.270mm(0.050インチ)及び1.905mm(0.075インチ)の幅のテープ部材を適用することが適切な結果をもたらすと思われる。しかしながら、概してテープ部材の帯幅を広げるほど、ステント移植片の可撓性が低下することが判っている。可撓性を最適なものとするには、テープ部材の幅が波形のピーク間で測定したステント部材の波形の幅の約4分の1から4分の3であるのが好ましい可能性がある(幅の約3分の1から3分の2がより好ましい可能性もある)ことが判っている。またテープ部材の一方の側縁を頂点に隣接して配置することにより、頂点の安定性(securement)を大幅に犠牲にすることなくテープ部材の幅を狭くできることが判っている。またテープ部材の幅を変えること(例えばステント移植片の長さ方向に沿ってテープの幅を変えること)により、他の構造的な特性を調節することができる。また幅を広げることにより、潜在的に半径方向の剛性(stiffness) 及び破裂圧(burst pressure)を増大し、そして装置の有孔度(porosity)を減少することができる。また帯幅を広げることにより、結合部材(coupling member) の巻回の間で移植片部材に皺ができることを低減できる。
【0042】
また移植片部材の終端部分をステント部材にしっかりと止めるために、テープ部材(又はその別々の小片)でステント移植片の終端部分を包囲してもよい。
【0043】
図6A及び図6Bは、本願で説明する搬送装置と共に用いることができる他のステント移植片構造を示している。図6Aを参照すると、ステント移植片(200)は、ステント移植片(200)が隣接する巻回のステントの波形部を結合するフィラメントを有することを除いて、上記ステント移植片(106)と同じである。フィラメント(202)は、ステント部材の波形部の間を通され、又はこれらの間を編み合わせ(interwoven)、こうして通された螺旋形状を呈する(すなわちこれは第2の螺旋を形成する)。この形状は、PCT国際公開公報第95/26695号(国際出願番号PCT/US95/04000号)に記載されており、この文献の全てが参考として本出願に組み入れられている。図6Bに示したステント移植片(300)は、フィラメント(302)がステント部材の同じ螺旋の巻回の波形部の間を編み合わせていることを除いて、図6Aに示したステント移植片と同じである。
【0044】
これらフィラメント(202,302)は同じ構造であり、任意の適切なフィラメント状の材料、すなわち血液に適合するフィラメント状の材料又は生物学的に適合するフィラメント状の材料であって、ステントが撓むことはできるが畳んだときにステントを変形しない程度に十分な可撓性を有するフィラメント状の材料であってもよい。連結具(linkage) は、単式又は複式のストランドワイヤ(strand wire) (プラチナ、プラチナ/タングステン、金、パラジウム、タンタル、ステンレス鋼等)であってもよいが、生物学的に適合するポリマー系フィラメントを用いるのがより好ましい。例えば当業者には明らかなように、可撓性のある連結具(link)の端の部分をステントの周りに巻き、最後の巻回の初めの点で可撓性のある連結具を結びつけて、可撓性のある連結具をステント移植片(200,300)の両端に結び付けてもよい。
【0045】
経皮的に搬送されたステント移植片は、搬送の為に必要であった小さな直径から、大きな展開配置される直径まで拡張しなければならない。これら装置の直径が、これら装置を入れる体の管腔の大きさに応じて変化するのは明らかである。例えば本発明のステントの大きさは、2.0mmの直径(神経学的な用途)から40mmの直径(大動脈内への配置)の範囲であって良い。約2.0mmから6.5mm(あるいは10.0mm)の範囲が望ましいと思われる。一般的には2:1又はこれ以上の拡張率が必要である。これらのステントは、より大きな直径のステント用に5:1までの拡張率をとることができる。本発明のステント移植片で用いる典型的な拡張率は、典型的には約2:1から約4:1の範囲であるが、本発明はこれに限定されない。またステント材料の厚さ又は太さが、ステントの大きさ(又は直径)及び畳まれたステントの最終的に必要な降伏強さ(yield strength)に応じて変わるのは明らかである。さらにこれらの値は、選択された構造材料に依存する。これら種々の場合に用いられるワイヤは、典型的には例えばニチノールのような高強度の合金及び高強度のバネステンレス鋼であり、その直径は約0.051mm(0.002インチ)から0.127mm(0.005インチ)である。比較的大きなステントに対して適切なステント用ワイヤの直径は幾分か大きくても良く、例えば0.127mmから0.508mm(0.005から0.020インチ)である。またフラットストック金属ステント(flat stock metallic stents)では、通常は約0.051mmから0.127mm(0.002インチから0.005インチ)の厚みで十分である。比較的大きなステントに関しては、ステントフラットストック(stent flat stock)に適切な厚みは幾分か厚くてもよく、例えば0.127mmから0.508mm(0.005から0.020インチ)である。
【0046】
図3に示したステント移植片を製造するための好適な方法を示す目的で、以下の実施例を挙げる。しかしながら本実施例は本発明を制限するものではない。ピンが配置されたマンドレルの周りにステント部材のワイヤが螺旋状に巻かれ、螺旋構造と波形とが同時に形成され得る。ステント部材がマンドレル上に保持されつつ約20分間に亘り約238℃(460°F)まで加熱され、ステント部材がその形状を保持するようにする。ワイヤの寸法及び材料は、用途に応じて大きく異なっても良い。以下は、6mmの直径の管腔(vessel lumen)に適応するように構成されたステント移植片用の構造の実施例である。ステント部材は、直径が約0.178mm(0.007インチ)のニチノール製のワイヤ(50.8atomic%のNi)を具備する。本実施例の場合、ワイヤは正弦波状の波形を有するように形成され、各波形の幅はピーク間で測定して約2.54mm(0.100インチ)であり、螺旋はインチ当たり約10巻きのピッチで形成される。螺旋の内径(拘束されていないとき)は約6.8mmである。(図6A及び図6Bに示したように用いられているときのフィラメントの直径は約0.152mm(0.006インチ)とすることができる。)
本実施例では、移植片部材は多孔性の延伸膨張ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であり、一方、テープ部材はFEPをコーティングした延伸膨張PTFEである。テープ部材は(図示実施態様に示したように)平坦なリボンの形をしており、これは図3に示したようにステント/移植片部材の周りに配置される。FEPをコーティングしたテープ部材又はリボンの側面は、それ自身を移植片部材にしっかりと止めるために移植片部材に対面する。以下で詳述するがテープ及び移植片部材の材料が溶け込み、そしてそれら自身で接合できるように中間のステント移植片構造が加熱される。
【0047】
テープ部材を形成するために用いられるFEPコートした多孔性の延伸膨張PTFEフィルムは、
(a)好ましくはFEPフィルム又は他の熱可塑性ポリマーのフィルムである別の層に多孔性のPTFEフィルムを接触する工程と、
(b)前記工程(a)において得られた組成物(composition) を熱可塑性ポリマーの融点以上の温度に加熱する工程と、
(c)前記熱可塑性ポリマーの融点以上の温度を維持しつつ前記工程(b)で加熱された組成物を延伸する(stretch) 工程と、
(d)前記工程(c)の生成物を冷却する工程と、
を具備するプロセスにより作製される。
【0048】
またこのコーティングされたフィルムを作製するのに、FEPに加えて熱可塑性フルオロポリマーを含む他の熱可塑性ポリマーを用いることができる。多孔性の延伸膨張PTFEフィルム上にコーティングされる接着剤は、主に延伸の量及び速度、延伸中における温度、並びに延伸前の接着剤の厚みに応じて、連続的(非多孔性)または非連続的(多孔性)とすることができる。
【0049】
この実施例を構成するに際して、薄壁の延伸膨張PTFE移植片の厚さは約0.1mm(0.004インチ)であり、その密度は約0.5g/ccであった。多孔性の延伸膨張PTFEの微細構造は、約25μmの長さのフィブリル(fibrils) を含んでいた。3cmの長さの本移植片材料が、移植片の内径に等しい直径のマンドレル上に配置された。次いで約3cmの長さのニチノール製のステント部材が、薄壁移植片の中央を覆うように注意深く取り付けられた。
【0050】
次いでステント部材に、上述したFEPコーティングフィルムからなるテープ結合部材が提供された。図3に示したようにテープ部材はステント部材の外面周りに螺旋状に巻かれた。テープ部材のFEPコーティング側面が内方を向き、そしてステント部材の外面に接触するようにテープ部材が向けられた。このテープ表面はステント部材の開口を通って露出された薄壁の移植片部材の外方を向いた表面に露出された。螺旋状に巻かれたリボンの微細構造の単一軸線方向を向いたフィブリルが、ステントの外面周りで螺旋状に配列されている。
【0051】
15分間に亘り315℃に設定された炉内にマンドレル組立体が配置され、その後、フィルムが巻かれたマンドレルが炉から取り出され、冷却された。略大気温度まで冷却し、続いて、マンドレルが結果として得られたステント移植片から取り外された。加えられた熱量は、多孔性の延伸膨張PTFEフィルム上のFEPコーティングを溶かし、これにより移植片部材と結合部材とを互いに接着せしめるのに適切であった。したがって移植片部材は、ステント部材の隣接するワイヤ間の開口を通って螺旋状に巻かれたテープ部材の内面に接着的に接合された。管腔(luminal) カバー及び外側カバー(移植片部材及びテープ部材)とステント部材とを合わせた厚みは約0.4mmであった。
【0052】
なお本発明を図示したステント移植片の実施例を参照して説明したが、図示したものとは構造的に異なる他の装置、ステント又はステント移植片と組み合わせて、本発明を用いることもできることが理解されるべきである。例えば後に詳述する分岐したステント又はステント移植片と組み合わせて、本願で説明する搬送装置を用いることができる。さらに自己拡張式ステント移植片を説明したが、本願で説明する搬送装置と組み合わせて、バルーン拡張可能なステント移植片を用いることができる。これらステント移植片は、潰れた自己拡張式ステントに蓄えられるばねエネルギとは対照的に、これらステント移植片を拡張状態に拡張するバルーンを必要とする。
【0053】
図7A〜Cを参照して、糸状の結合部材(104)と合わせて用いることのできる一つのスリップノット(slip knot) 構造を説明する。説明を判り易くする為、インプラントを配置していない状態で拘束部材(102)が示されている。図7Aは、解放前の状態又は展開配置前の状態にあるスリップノットを示している。一連のノット即ち結び目は概して拘束部材(102)の表面と同じ高さにあり、インプラントの搬送中の好ましい構造の形状に殆んど変化を与えることはない。図7Bは、チェーンノット(chain knot)(130)がどのように形成され得るかを示すために、糸状の結合部材(104)が緩められた状態にある図7Aの組立体を示している。図7Cは図7A又は図7Bの組立体の解放を略図的に示している。図示したステッチは、糸の一端を引っ張ることで解放可能で、それによって円筒形又はチューブ形の拘束部材を解放し、装置が展開配置されることになる。この特別なステッチはチェーンステッチと呼ばれているが、1本のニードル及び1本の糸で形成することができる。チェーンステッチは一連のループ又はスリップノットであり、これらスリップノットは、一つのスリップノットが次のスリップノットを解放するのを防止するように互いを通ってループ状とされている。一つのスリップノットを解放するために糸が引っ張られるときには次のスリップノットが解放され、さらに次のスリップノットを解放する。このプロセスは糸を引っ張る間、糸全体が拘束部材から引張りだされるまで続く。
【0054】
図7A〜図7Cを参照すると、糸状結合部材(104)の結ばれていない部分又はリード(132)が参照矢印(134)で示した方向に引っ張られると、連続した各チェーンノット(130)が隣接する次のノット即ち結び目を解放する。好適な実施態様では結合部材(104)のチェーンノット(130)は、以下で詳述するが図10Aに示したように搬送カテーテルの遠位部分から離れる方向に潰れたインプラントを漸進的に解放するように配設される。
【0055】
図8Aから図8Fを参照すると、その中に潰れた又は圧縮されたインプラントを備えた拘束部材を具備する組立体を作製する方法が実施例として示されている。図8Aは拘束部材(102)を示しており、ここでは拘束部材の側縁が互いに解放可能に結合され、その左側の端部はテーパ状となった機械的な拡張器(dilator) (402)により拡張される。次いで図8B及び図8Cに示したように、小さな漏斗状部材(funnel)(404)が拘束部材(102)内に挿入される。次いで小さな漏斗状部材(404)と拘束部材(102)とが引張フレーム(410)上に取り付けられ、図8Dに示したように大きな漏斗状部材(406)が小さな漏斗状部材(404)内に嵌合される。ステント移植片の一端に縫い付けられた牽引又は引張糸(408)が、大きな漏斗状部材(406)、小さな漏斗状部材(404)及びテーパ付きマンドレル(416)を備えた拘束部材(102)を通って引っ張られる。図8Fに示したように引張糸(408)は、引張(tension) ネジ(414)上に配置された縛りつけ柱(412)に締結され、次いで引張ネジ(414)により引張られる。次いでステント移植片(106)が引張られ、大きな漏斗状部材(406)及び小さな漏斗状部材(404)を通って拘束部材(102)内へと順次、潰される。側縁が互いに結合された拘束部材(102)内へとステント移植片(106)が半径方向に潰されると、引張糸(408)が取り外され得る。なお別の構成要素の導入をしやすくするために、拘束されたインプラント内にマンドレル(416)が挿入可能である。好適な実施態様では、複管腔(multilumen)搬送カテーテル(136)(図9〜図11参照)が圧縮されたステント移植片(106)の中央を通って導入され、半径方向に拘束されたステント移植片を所望の管腔内部位に搬送するのに用いられる。
【0056】
なおステントがニチノールで作製されたときに、ステントを圧縮しやすいように漏斗状部材を冷やし(chill) てもよい。すなわちステントがニチノールで作製されるときには、漏斗状部材を0°C以下又はニチノールがマルテンサイト状態となる遷移温度(Mf )以下に冷却してもよい。さらにステント移植片を初めに畳み、次いで漏斗状部材を通して拘束部材内に引張ることによりその外形(profile) を小さくすることもできる。冷却は、テトラフルオロエタンのような冷却ガスでステント移植片を噴霧浸漬(spray soaking) することにより達成可能である。MicroCare 社(Conn)で製造されているマイクロダスト(Micro-Dust :商標名)ドライ回路散布器が適切な結果をもたらす。好ましくは液体のような流体をステント移植片上に放出するために、噴霧キャニスタが逆さまに保持される。
【0057】
図9〜図11を参照してインプラントを展開配置する方法を説明する。概してインプラントは、径が小さくなった形(例えば図1参照)に組み立てられた後に、典型的には血管系を通して本願で説明する搬送装置と共に経皮的に搬送される。所望の搬送場所においてインプラントは拘束部材から解放され、したがって搬送場所における管腔壁に対してインプラントが拡張することができ、又は拡張されることができる。ステント又はステント移植片を有する他の装置、例えばバルーン拡張可能なステントを用いることもできるが、拘束状態が解かれたときに予め定められた最終形状(final geometry)に完全に自身を拡張することができる自己拡張式ステント移植片を参照して以下の実施例を説明する。特に図1及び図7A〜図7Cに示した搬送装置と図3に示したステント移植片構造とを用いて以下の実施例を説明する。
【0058】
図9A及び図9Bを参照すると、拘束部材(102)内に閉じ込められた潰されたステント移植片(106)を有するインプラント搬送組立体が示され、このステント移植片は複管腔搬送カテーテル(136)の遠位部分を包囲する。診察医が適切なサイズの装置を選択する。一般的には、所望の展開配置部位における管腔の直径より約20%ほど大きい拡張直径を有するステント移植片が選択される。
【0059】
好ましくは搬送カテーテルは複管腔カテーテルである。複管腔搬送カテーテル(136)の近位部分はハブ(140)に結合され、このハブは案内ワイヤ(142)用の案内ワイヤポート(143)と、糸状結合部材(104)のリード(132)に結合された展開配置ノブ(144)とを有する。したがってノブ(144)が引込められたときに拘束部材(102)が解放され、ステント移植片が拡張する。またハブ(140)は従来の技術にあるような洗浄ポート(flushing port) (146)を有していても良い。ステント移植片(106)は近位障壁(148)と遠位障壁(150)とにより展開配置前に軸線方向において所定位置に保持され、これら障壁は拘束されたステント移植片の近位部分及び遠位部分それぞれに隣接して複管腔搬送カテーテル(136)周りに配置される。近位障壁(148)及び遠位障壁(150)は、拘束されたステント移植片の軸線方向の動きを抑制するために複管腔搬送カテーテル(136)にしっかりと固定され得る。好ましくは障壁は、ステント移植片又は拘束部材に当接するように配置される。結合部材(104)のリード(132)は近位障壁(148)内の開口(152)を通され、この開口は結合部材のリード(132)が展開配置ノブ(144)に結合可能であるように複管腔搬送カテーテル(136)内の管腔に連通されている。図9A及び図9Bは、管(154)を通って所望の場所に向かうカテーテル(136)と拘束されたインプラントとの前進を示している。図10A及び図10Bを参照すると、拘束されたステント移植片が所望の場所(156)に到達すると、展開配置ノブ(144)が引込まされ、結合部材(104)が拘束部材から取り外されるのにつれて、ステント移植片が漸進的に図示したように拡張する。好ましくは結合部材は、ステント移植片の遠位端部から近位端部に向かう方向(すなわちカテーテルの先端からカテーテルのハブに向かう方向)にステント移植片の拡張を促すように配設される。図11A及び図11Bは、結合部材及びカテーテルが取り外された後に最終移植位置(final implantation position) にあるステント移植片(106)及び拘束部材(102)とを示している。別の実施態様では図9Cに示したように複数の拘束部材が用いられ得る。複数の結合部材(104)が同時に解放される場合には、インプラント展開配置時間が短縮され得る。
【0060】
バルーン拡張可能なステント移植片を展開配置する方法は、結合部材(104)がアイレット(116)から引込められた後に、ステント移植片内に搬送前に配置されているバルーンが、ステント移植片(106)を拡張するために膨張され、次いでカテーテル(136)を通って取り出すために収縮されることを除いて、上述した方法と同じとすることができる。
【0061】
本発明の他の実施態様によると、複数方向(multidirectional)の結合部材の解放、又は複数(multiple)の結合部材を使用できる。これらの構成は、1つの単方向(unidirectional)結合部材を使用するときよりも、インプラントのさらに迅速な展開配置を容易にする。図12A〜図12Dは、本発明の原理による拘束されたインプラントの複数方向式展開配置を略図的に示す。ここでは、結合部材配列は、インプラントを好ましくは軸線方向中央であるその中間部分からインプラントの両端部に向かって外側に解放するように設けられる。特別な結合部材構造はこれらの略図には示していないが、一つの適切な結合構造が図13に示されている。図13では、複数のリード(132)が開口(152)を通っており、図9Aに示して前述したように展開配置ノブ(144)に結合される。
【0062】
図12Aを参照すると、複管腔搬送カテーテル(136)の遠位端部分に位置決めされている拘束されたステント移植片が、動脈瘤(158)内での展開配置のために管(154)を介して前進されている。拘束部材(102)の軸線方向中間地点は、動脈瘤嚢(aneurysmal sac)の中心に位置決めされるのが好ましい。結合部材配列の紐解き作用(unlacing)は構造物の中間から、拘束部材(102)とステント移植片(106)との近位端と遠位端とに向かって伝播する(propagate )ので、図12Bと図12Cとに示すように、ステント移植片(106)は軸線方向の中間部分から両端部に向かって次第に拡張する。図13の配列が使用されるとき、このことは図13に示すリード(132)を同時に引っ張ることで達成され得る。図12Dに示すように拘束部材が十分に解放されかつステント移植片が十分に展開配置されると、ステント移植片の近位の部分と遠位の部分とが動脈瘤の近位の首部と遠位の首部に対して位置決めされるようにステント移植片の寸法が選択される。次いで、複管腔搬送カテーテルが引込められる。
【0063】
図面から明らかなように、有利なことに、この実施態様は、拘束部材の解放時に、動脈瘤嚢を介する流体流れが実質的に遮られない状態に維持されることを可能にしている。例えば、動脈瘤の首部領域が最小限に遮られて示されている図12Cに示す展開配置時点ではステント移植片の端部はまだ拘束されている。さらに、有利なことには、拘束部材のこの同時且つ複数方向解放作用により、図9から図11に示すような単一の単方向解放機構と比較して、インプラントが展開配置されるときに管内の流体流れがインプラントの位置を乱す可能性のある時間が削減される。
【0064】
図13を参照すると、複数結合部材構成が示されている。図示された配列は、二つの紐組み(lacing)構成(151)、(153)を有する。糸状結合部材(104)のリード(132)の配置を除くと、紐組み構成(153)は紐組み構成(151)の鏡像構成である。従って、説明を単純にするため、紐組み構成の一つだけを説明する。紐組み構成(153)を参照すると、紐組み構成(153)が、参照番号(504)で全体として示される二つの付加的なスリップノットと、タック又はループの配列(506)とをさらに有することを除いて、紐組み構成(153)は図7A〜図7Cに示される構成と同一である。付加的なスリップノットは拘束部材内に編み込まれておらず図面から明らかであるように、リード(132)が矢印方向(134)に引張られる時に、結合部材解放用の遅れ機構を提供する。従って、リード(132)を不注意で引張っても、拘束部材からの結合部材の解放が即座に開始されはしない。タック配列は単に、図示されるような種々の間隔でステッチの下にリード(132)からのたるみを押し込むことを含み、それにより、付加的なスリップノット(504)が搬送通路から引張られるようにしても良い。さらに、タック又はループの配列(506)はスリップノットの解放用の付加的な遅れ機構を提供する。
【0065】
議論されたように、上述された搬送装置は他のインプラント又は装置と共に使用され得る。例えば、これらの搬送装置は、以下で説明される分岐した装置(bifurcated devices)と一緒に使用することが出来る。
【0066】
図14A〜図14Dのモジュール式ステント移植片は概して、本体(700)と対側脚部(contralateral leg )(730)という二つの主要な構成要素を有しており、それぞれが一般に、上述の説明によるステント部材に取り付けられた移植片部材を有する。本体(700)は概して、別個の全体的構造を有するいくつかの部分を有する。遠位の胴部分(708)は、本体(700)の遠位端部(702)で始まり分岐ポイント(728)まで続く単一管腔構造を有する。分岐ポイント(728)は、遠位の胴部分(708)の単一管腔が内部の二つの流れ管腔へと分岐する人工器官内の場所である。
【0067】
中間の部分(710)は分岐ポイント(728)で始まり、収容穴(704)へと続く。中間の部分(710)では、ステント移植片は内部の移植片構造を有し、この内部移植片構造は、管状の単一管腔のステント構造により取り囲まれる二つの管腔へと分岐される。最後に、近位の部分(712)は、ステント部材と移植片部材との両方の単一管腔構造であって、同側脚部穴(706)で終了する同側脚部(726)を有する。
【0068】
中間の部分(710)の移植片部材は単一管腔の遠位の胴部分(708)を同側脚部(726)と内部雌型収容管腔(703)とに分岐させる。収容管腔(703)は収容穴(704)で終了する。収容穴(704)と収容管腔(703)とは対側脚部(730)の搬送と取付とに対応している。以下図23を参照してさらに明らかにするように、対側脚部(730)の遠位端(734)での移植片材料はスカラップ形とされるのが好ましい。
【0069】
収容穴(704)は収容穴の実質上の周辺部分周りをワイヤ構造により支持され、それにより、収容穴(704)が展開配置後に開いた状態で保持されるようにする。好ましい実施態様においては、収容穴(704)を支持するワイヤ構造は独立ワイヤリング(714)である。
【0070】
独立ワイヤリング(714)は中間の部分(710)の収容穴(704)の全体的領域に位置する。独立ワイヤリング(714)は、収容穴(704)における移植片材料が対側脚部(730)の遠位端(734)を収容するように開いた位置で支持されることを確実にする。このような支持がない場合には、中間の部分(710)内で収容管腔(703)の領域にある分岐した移植片部材が、その内側周辺部において十分なステントの支持を有しないために、本体(700)が搬送された後に収容穴(704)が確実に開くことが許されない。収容管腔(703)の領域にある内側移植片周辺部(785)に内側のステント支持部が存在しないことを示す図18において、このことはさらに良好に理解される。
【0071】
独立ワイヤリング(714)は、上述された他のステント移植片部分と同一の材料から構成され得る。独立ワイヤリング(714)は、自己拡張性であるのが好ましい。好ましい実施態様においては、独立ワイヤリングは波形ワイヤステント材料からなる単一の巻回を具備し、この波形ワイヤステント材料は少なくとも一つのテープの層により取り囲まれる。この少なくとも一つのテープの層は収容穴(704)に熱結合される。あるいは、独立ワイヤリング(714)は本体(700)の最後の巻回として形成することが出来る。
【0072】
移植時に、放射線不透過性マーカ(radiopaque marker)が収容穴(704)を見えるようにするのに使用できる。そのようなマーカは、独立ワイヤリング(714)に隣接した放射線不透過性ワイヤを含むことができる。そのようなマーカは、哺乳動物の体内で本体(700)を展開配置した後に収容穴(704)の位置を認識するのをさらに容易にする。
【0073】
図14Cにおける断面図に示されるように中間ステント部分(710)のこの構成は、単一管腔のステント部材と、分岐した移植片部材とにより特徴付けられ、別個の脚状ステントを有する構成に比べ、圧縮された形状はさらに小さくなり、製造も簡単になる。圧縮されたプロフィールは、当該部分に存在するステント及び移植片材料の物理量によって主として決定される。この構成では、通常は分岐した移植片部分の内側周辺部を支持するステント材料が省略され、この領域で圧縮するステント材料を少なくする。本体(700)は上述されるように搬送のために圧縮されるので、圧縮されたプロフィールは、分岐した移植片の部分に亙って、分岐したステントの部分を有する構造の場合よりもかなり小さい。
【0074】
分岐した流れを生成することが可能となるのに加え、分岐したステントの部分がないので製造は単純化される。例えば、分岐したステントの部分を一体として巻くことはさらに複雑なプロセスである。同様に、別々の円筒形ステント構造を巻き、分岐ステント構造を形成するためにそれらの円筒形ステント構造を連結することは複雑で、かつ最終的には信頼性が低い場合がある。中間の部分(710)によって、本体(700)をカバーするステント部材全体を単一の波形ワイヤ(undulating wire)で形成されるのが可能となり、この単一の波形ワイヤは複数の螺旋巻回状に配置される。その結果、分岐ステント移植片装置は製造が単純で、かつ容易に圧縮可能で、かつ展開配置時に確実に拡張するようになる。
【0075】
中間ステント部分(710)の他の構成が図14Dに示されている。中間ステント部分(710’)は、凹領域(indented region)(727)によって特徴付けられる形状を有する。分岐した移植片部材の間にある領域が、その中央領域で支持されない状態でいることを除くと、この形状は概ね8の字形である。この構成は、尚も単一管腔のステント構成であって、そのために減少されたプロフィールと製造の簡略化という多くの利点を保持し、またその周囲のより多くの部分で支持を強化された分岐した移植片部材を提供する。更に、凹領域(727)は外力が作用しても外方にはじける傾向が少ない。
【0076】
上述されるように、本体(700)と対側脚部(730)とが圧縮された状態で、体内の分岐場所まで搬送されるようになる。この目的のため、本体(700)には、上述されるように構成された拘束部材(722)が備え付けられるのが好ましい。同様に、対側脚部(730)は、取り付けられた拘束部材(732)を有する。典型的にはこれら拘束部材はその全長にわたって間隔を空けて移植片材料に縫合される。
【0077】
図15は、動脈瘤(758)を患っている分岐した身体の血管内の分岐部位で展開配置した後の、組み立てられた分岐ステント移植片(740)を示す。図に示すように人工器官は、腹部大動脈 (abdominal aortic artery)(752)が左方腸骨動脈 (left iliac artery)(756)と右方腸骨動脈(754)とに分岐する場所に位置決めされ得る。インプラントの種々の特徴がより明瞭に示されるように、拘束部材は図15には図示していない。
【0078】
組み立てられた分岐ステント移植片(740)は、本体(700)と対側脚部(730)とから構成される。対側脚部(730)の遠位端(734)は、本体(700)の収容脚部穴(704)及び雌型収容管腔(703)に挿入されている。
【0079】
これらの形式の任意のステント又はステント移植片の展開配置において最良の結果を得るために、これらのステント又はステント移植片が、軸線方向の剛性、可撓性及びねじれ抵抗性などの適切な構造的特性を有することが必要である。分岐部位を治療するために必要とされるような複雑な構造では、一方を最適化することで他方にマイナスの影響が出ることがあるため、所望の構造的特性を得ることはますます困難である。
【0080】
例えば、ステント又はステント移植片の全体的な(global)軸線方向剛性についての最適化を図ると、必然的に、装置の可撓性が極めて少なくなり、結果としてねじりに対する抵抗性を減じ、体の脈管構造(vasculature )の自然な曲がり又は湾曲部に適応する能力を減少させる。反対に、軸線方向の剛性が少く高い可撓性を有する装置は正確に展開配置するのが困難であって、所望の位置で装置を固定する助けとならない。
【0081】
これらの制約を念頭に、構造的特性を変えて構成されたセグメントを有する分岐ステント移植片が、改良された展開配置能力を呈し、ねじりの影響をうけにくく、好ましくは、展開配置後に所望の位置を維持する傾向があり、その一方で、身体の動きに適応する十分な可撓性を有することが可能であることがわかっている。正確な所望の構造的特性は、人工器官が展開配置される位置に依存する。
【0082】
これらの理由により、分岐ステント又はステント移植片は、互いに異なる構造的特性を有する少なくとも二つのセグメントで構成されるのが好ましい。例えば、図14Aでは、近位の部分(712)を腸骨動脈の形状寸法に適応するさらに高い可撓性を有するように構成することができ、その一方、一定の長さの遠位の部分(708)と中間の部分(710)とを、展開配置及び位置的安定性の改善のためにさらに高い軸線方向の剛性を伴って構成することができる。
【0083】
異なる構造的特性を有するいくつかのセグメントを有することがさらに望ましい可能性がある。従って、組み立てられたステント移植片(740)の本体(700)と対側脚部(730)とが、隣接するセグメントと異なる構造的特性を備えて構成されるセグメントを有する。図15に示す一つの好ましい実施態様では、本体(700)が、異なる構造的特性を備えて構成される四つの異なるセグメントを有する。遠位のセグメント(742)は、より可撓性のある、近位に隣接するセグメント(744)よりも高い軸線方向剛性を有するよう構成される。近位の部分(748)は、遠位に隣接するセグメント(746)の可撓性よりもさらに高い可撓性を有するよう構成される。同様に、対側脚部(730)は、軸線方向により高い剛性のある遠位のセグメント(750)とより可撓性のある近位のセグメント(749)とを有する。
【0084】
ステント又はステント移植片要素の構造的特性を変更するいくつかの方法がある。ステント移植片セグメントの構造的特性を選択的に変更する一つの方法は、そのセグメントに対し、異なる物理的寸法を有するテープ部材を使用することである。そのようなテープ部材は、図3のテープ部材(128)を参照して前述されている。例えば、剛性を増減する事が望ましいセグメントに於て、前述の好ましい寸法からテープ部材の幅、厚さ、又は間隔を増加させてもよい。例えば、幅広のテープを狭い間隔で巻いて使用すると、この部分で剛性が高まる。
【0085】
ステント又はステント移植片セグメントの構造的特性を選択的に変更する他の方法が図14Aと図15とに示される。延ばされた支柱部(718)、(719)がステント移植片セグメントの軸線方向剛性を増大させるよう使用され得る。延ばされた支柱部は、波形ワイヤの一つの巻回の頂点を、隣接する巻回の頂点に接触するまで延ばすことによって形成される。延ばされた支柱部と隣接するステントの巻回の頂点との間のこの接触は軸線方向剛性を高める。好ましい実施態様では、テープの層(図示しない)が装置の周りに螺旋パターンで適用され、この螺旋パターンは延ばされた支柱部の各頂点を覆う。この付加的なテープの層は支柱部の対を一体的に保持する。
【0086】
図14Aを参照すると、第一の螺旋状ステント巻回(720)と第二の螺旋状ステント巻回(721)とが頂点を有するほぼ波形形状を有する。ステント巻回(720)の延ばされた支柱部(718)は、真下に位置するステント巻回(721)の頂点に近いか又は接触する頂点を有して形成される。延ばされた支柱部(719)は、下の巻回内の頂点と接触するように、ステント巻回(721)の頂点を直接下に延ばすことにより同様に形成される。このパターンは、毎回、一つの波づつ延ばされた支柱部をずらして続けられる。その結果、装置の長さに亘って延ばされた支柱部の螺旋パターンが形成される。当然のことながら、延ばされた支柱部は、上述された螺旋構成以外のパターンで配置されることもできる。
【0087】
いくつかのこれらのパターンを一つのセグメントに用いることができ、又、軸線方向剛性を増大するように、延ばされた支柱部のパターンを他のセグメントで使用することもできる。好ましくは、本体(700)の前述した遠位に隣接するセグメント(746)と、対側脚部の軸線方向剛性を有する遠位セグメント(750)とが、図15に示されるように延ばされた支柱部を有して構成される。
【0088】
図15を参照すると、遠位端(702)は、目的の動脈、この場合は腹部大動脈の動脈部の内径に正確に適合するように寸法決めされ得る。典型的には、人工器官は、目的となる管の内部よりもわずかに大きい非拘束時の直径を有するように構成される。
【0089】
組み立てられた分岐ステント移植片(740)の同側脚部及び対側脚部は一般に、遠位端(702)の寸法に関係なくそれらの遠位端において同一の寸法であり、腸骨動脈の内径にほぼ対応する直径にテーパがかかっているテーパ付き部分(724)、(738)を有する。このようなテーパ付き部分(724)、(738)は、優れたフローダイナミクスを生じる傾向があるため、直径が急変するより望ましい。
【0090】
展開配置後、組み立てられた分岐ステント移植片(740)は、このような主要動脈内での比較的高い流体圧力と流量にさらされる際、特に回復後に体が再び動くことが可能となったときに、装置が移動したり、外れたりしないように、動脈瘤(758)の各側で、健康な管の管腔と十分な接触を確立する必要がある。さらに、遠位端(702)、同側脚部穴(706)、又は対側脚部の近位端(736)における漏出がないように十分な接触が形成される必要がある。
【0091】
ステント又はステント移植片の外面がそれ自体を管腔壁に固定する固定又は位置保持機能が、管壁に対する装置の封止作用を助勢し、かつ展開配置位置を維持するために与えられ得る。例えば、図14A及び図15に示すようなアンカ(716)が本体(700)に設けられ、かつ対側脚部(730)にも設けられる。頂端のステント部分(717)がある角度をなして外側に向けられるのが好ましい。この広がったステント部分は、頂端のステント部分(717)が、展開配置の際に力を受けて管壁と干渉するように半径方向に拡張させられると、アンカ(716)を管壁へ押しつけるように作用する。
【0092】
アンカ(716)の好ましい構成は図17に示される。この構成は、上方のステント巻回(762)から、隣接する下方のステント巻回(764)の頂点の下側に延びる二つのワイヤを有する。次いで、ステントワイヤの二つの端部(760、761)は外側に曲げられて移植片材料(768)から遠ざかる。延ばされた支柱部が、第三のステント巻回(765)に至るまで、隣接する下方のステント巻回(764)の下側を延びることを除いては、延ばされた支柱部(771)は、前述の方法で各アンカに隣接して形成される。人工器官が管壁内へ広がる時に受ける曲げ力の付加の下で、この延ばされた支柱部配列はアンカ(716)に対しての支持作用を提供し、かつワイヤ(760、761)内に生ずる応力を低くする。延ばされた支柱部(771)は、より広い範囲の支持を与えることによって、アンカの領域におけるステント移植片構造の局所的な変形を最小化する。
【0093】
アンカ(716’)の他の構成が図16に示される。アンカ(716’)の端部が図示のような「U字状」構成に接続されたままであることを除いて、アンカ(716’)は同様に形成される。アンカ(716’)はステント移植片のどの位置にも形成できる。最も好ましくは、アンカは頂端のステント部(717)の周りに等間隔に離間されたパターンで形成される(図14A)。
【0094】
上述したアンカの使用が図面に示されるステント移植片との組み合わせに限定されず、実際、上述したアンカを同様な機能を必要とする分岐していない又はステントのみの構成に使用できることは明らかである。
【0095】
また、管壁におけるシール作用は又、シール機構として図17に示される他の構成により高めることが出来る。シール機構を、上述したあらゆるインプラントを含むあらゆる形式のインプラントと共に用いることができる。例示のために、図14の分岐インプラントを参照してシール機構が示される。このシール機構は図16及び図17に詳細に示されるようなシール部材(772)を具備する。以下に説明するシール機構を、上述したあらゆるインプラントと共に用いることができる。
【0096】
図16及び図17に示される変更態様におけるシール部材(772)の好ましい一構成は、上述の図1および図3を参照して説明したようなステント移植片管状部材を構成するのに用いられるテープ部材の好ましい構成と同様である。
【0097】
一般的に、上述した図面に様々に示されるテープ部材(128)のためのものと同様に、薄壁ePTFEテープがシール部材(772)のために用いられる。シール部材(772)のために用いられるテープは、上述したステント及び移植片部材を接合するためのテープ部材(128)上も含んでステント移植片の外表面に接着される。シール部材(772)は、いずれの外表面にシール部材が接着されるのが望ましいかに応じて、テープ部材(128)の外表面又は移植片部材(124)の外表面を対象とする類似の材料からなる内表面を有する。
【0098】
第1の袖口端部(cuff end)(767)はステント移植片の外表面に接合され、第2の袖口端部(769)は、未接着フランジを形成してステント移植片周囲流れに対する一方向弁として機能するようにするために、接合されない。シール部材に可変内表面を提供して加熱時に第1の袖口端部(767)の領域の表面のみがステント移植片の外表面に接合されるようにすることにより、シール部材(772)をこのようにしてその長さ方向に沿い選択的に接着することができる。例えば、第2の袖口端部(769)の領域ではなく、第1の袖口端部(767)の領域において、シール部材(772)の内表面にFEPライナを設けることができる。この場合、均一なFEP製外表面を有するステント移植片の外表面と接触するときに、第1の袖口端部(767)のみがその上に熱固着され得る。
【0099】
或いは、シール部材(772)が例えばFEPからなる均一な内表面を有するようにしてもよく、シール部材(772)の熱接合が望まれる領域内のテープ部材(128)上又は移植片部材(124)上に例えばFEPからなる選択的部分を有する可変外表面を設けてもよい。更に、シール部材(772)は均一な表面を有していてもよく、テープ部材(128)及び移植片部材(124)上に位置決めされてテープ部材(128)と移植片部材(124)の外表面間の可変性により第1の袖口端部(767)がこれら表面上に選択的に接着されるようにしてもよい。
【0100】
シール部材(772)の別の構成として、この要素として用いられ得るテープの特定の壁厚さを、望ましくはできるだけ薄くしてこの部材のためのフランジ式一方向弁機能を機能的に提供するようにすべきである。これは、シール部材(772)がステント移植片の他のステント及び移植片構成要素の外表面上にあるので、シール部材(772)が組立体全体のプロフィールを画定する特徴があると考えられているからである。従って、特定の構成において、シール部材(772)は図1及び図3を参照して説明したステント移植片を組み立てるのに用いられるテープ部材よりも薄い壁であることが望ましい可能性がある。
【0101】
更に、シール部材(772)をその下にあるステント移植片の外表面に接着するための上述された特定の構成及び関連する方法を参照すると、シール部材(772)のための所望の構成及び熱固着技術が、あるポリマが類似のポリマと接触(meet)する(例えばFEPがFEPと接触する)場合には適当な条件下で加熱することにより選択的な熱接合が可能である、という理論を前提としていることは当業者には当然ながら自明である。当業者に明らかなように、シール部材を所定の管状部材の外表面に固定するためにあらゆる適当な手段を用いてもよい。
【0102】
更に、複数の周方向支柱部空間がステント部材の支柱部間に設けられる。これら空間が移植片部材の外表面周りの及びステント移植片の外側に沿った漏洩流の通路を提供する可能性があると考えられている。しかしながら、第2の袖口端部(769)はこのような漏洩流をそのフランジの下方において捕捉し、第1の袖口端部(767)がこのステント移植片の外表面に固定されるので漏洩流はステント移植片の外表面に沿って進行し得ない。言い換えると、ステント移植片上の及び動脈瘤への流れが閉塞される。
【0103】
更に、図15に示されるようにアンカ(716)を腹部大動脈の壁内に固定したときに、アンカ(716)のところの及びそれに隣接した本体(700)の部分が動脈壁から離される可能性があることが確認されている。この作用により本体(700)の外表面と動脈壁とが互いに離間し、この離間作用により漏洩流通路が形成されると考えられている。シール部材(772)のフランジはこの流れを捕捉して動脈瘤(758)内に進入するのを閉塞する。
【0104】
管腔壁との良好な接触を維持することに加えて、ステント移植片の要素は、互いに十分に接触して別体のモジュールが取付けられ続けると共に、それらの係合界面において漏れが生じないようにしなければならない。図18に示されるステント移植片は、本体(700)の収容管腔(703)と対側脚部(730)との間の界面において、漏れがなく、かつ位置的に安定なシールが有効になるように構成されたいくつかの重要な特徴を示している。
【0105】
図18は、組み立てられたステント移植片の部分断面図を示している。対側脚部(730)が本体(700)の収容管腔(703)内に挿入されている。この断面図は、本体(700)が本体移植片部材(780)及び本体ステント部材(782)を含むことを明瞭に示している。対側脚部(730)は、対側移植片部材(784)及び対側ステント部材(786)を有する。
【0106】
対側脚部(730)と収容管腔(703)との間の界面において、組立体は延長シール領域(790)を提供する。好ましくは延長シール領域(790)は、対側脚部(730)の外径と収容管腔(703)の内径との間の全体として円筒状の摩擦しまり嵌めからなる。即ち、自己拡張性の対側脚部(730)の自然又は静止外径は、収容管腔(703)の自然内径よりも大きい。従って、干渉により形成される力は二つの要素をシールするよう作用すると共に、二つの要素の動きを妨げる。
【0107】
上述した形式の円筒状延長シール領域は多くの利点を有する。まず、延長シール領域(790)内のステント及び移植片構造を、容易に製造される比較的簡単な全体として円筒状要素から形成することが可能となる。延長シール領域(790)が長い部分に亙って広がるので、必然的に要素間でシール効果を有する大きな表面領域を有することになる。典型的にはこの大きなシール領域では、ステント構造の複数の巻回が干渉し、従ってシール関係で係合される。
【0108】
好ましい一実施態様において、延長シール領域の長さは収容管腔(703)の直径の半分よりも長く、更に好ましくはこの長さは収容管腔(703)の直径よりも長く、最も好ましくは収容管腔(703)の直径の2倍よりも長い。
【0109】
単純化された形状の製造公差は容易に制御されかつ延長シール領域(790)の係合が極めて大きいので、モジュール要素間に高い信頼性を有する接続部が形成される。そうであっても、干渉作用が高められた一つ又はそれ以上の局所化領域を形成してシール性能及び位置的安定性を高めるのが望ましい可能性がある。
【0110】
干渉作用の局所化領域は様々な方法で形成することができる。好ましい実施態様では、直径の小さい環状リングが収容管腔内に形成されている。このように局所的に直径が小さくされると、局所化領域内の対側脚部の外径との干渉作用が大きくなり、一方、収容管腔と係合している残りの部分は上述した通常の摩擦しまり嵌めとなる。
【0111】
局所的に小さな直径を形成する一つの方法が、延長シール領域(790)の部分断面図を示す図20に示されている。収容管腔(703)の移植片部材(780)とステント部材(782)との間に固定リング(798)を配置することにより、直径が小さくされた領域(799)が形成される。固定リングは、任意の重合体又はワイヤ材料から形成することができ、好ましくは収容管腔が開放位置まで自己拡張するのを妨げない材料から形成される。最も好ましくは、この材料は縫合糸材料、典型的にはePTFEである。
【0112】
或いは図21及び図22に示されるように、移植片部材(780)の一部を収容管腔(703)内に戻るよう折り畳むことにより、直径が小さい局所化領域を形成してもよい。図21では、環状リング(802)周りに移植片部材(780)の折り畳まれたフラップ(808)を形成することにより直径の小さい領域(806)が形成される。図示されるようにフラップは大体の位置(804)において適所に熱固着される。図22では、同様な方法で、しかしながら固定リングを一切設けることなく、直径を小さくした領域(809)がフラップ(808)から形成されて大体の位置(807)で熱固着される。これらの方法を用いた局所化された干渉作用はより大きな領域を占める傾向にあり、フラップ(808)は更に可撓性を有する部材を提供して対側脚部(730)の外径に対しシールする。
【0113】
ステント移植片要素間の良好なシールを確保する更に別の一態様は、対側脚部要素(810)の遠位端においてスカラップ形のステント移植片構成を用いることを伴なう。このスカラップ形構造を形成するために、ステントの最終巻回においてステント部材の頂点間の移植片材料が除去される。例えば、第1の頂点(814)と隣接する頂点(816)との間から移植片材料を除去する(又は切断してその下に折り畳む)ことにより、図23に示すように、スカラップ部(812)を形成してもよい。
【0114】
スカラップ形構成を用いることの利点が図24A〜図25Bに示されている。図24Aは完全に拡張したスカラップ形構成でない対側脚部(730)の断面図を示している。第1の頂点(822)及び隣接する頂点(824)は、これらの間の領域に連続する移植片材料(784)を有する。頂点(822)及び隣接する頂点(824)が共に矢印(820)の方向に移動されると、移植片材料(784)は図24Bに示されるような、潜在的な漏れ通路であるか、又はトロンボゲン物質が堆積する潜在的な場所である湾曲部又はしわ(818)を形成する。一方、図25A及び図25Bに示されるスカラップ形構造は、第1の頂点(814)と隣接する頂点(816)との間に移植片材料がなく、従って共に移動されたときに移植片材料のしわを形成しない。
【0115】
ステント移植片がその完全な直径まで拡張できないときに、上述のしわ(818)が形成される場合がある。例えば、収容管腔又は管壁の内径が、完全に拡張したステント移植片の外径よりも小さいことは極めて一般的である。このような事情から、スカラップ形構造を本体又は対側脚部の任意の終端開口において選択的に使用し得ることは明らかである。好ましくは本体(700)の遠位端(702)は、図14A及び図14Bに示されるようにこのスカラップ形構造を有する。
【0116】
これまでの記載では概して、移植片部材を含むステント移植片を参照してきた。このような直線状ステント移植片の構成が前述のように詳細に説明されているが、分岐移植片部材の構成が図26、図27A及び図27Bに示される。上述の本体(700)の構成に適した分岐移植片部材は通常、二つの移植片部材、即ち同側のテーパ付き移植片(840)と、対側のテーパ付き移植片(842)とから形成される。分離された対側脚部移植片(844)は直線状又はテーパ付きのセクションであり、上記最初の部分で説明された原理により形成され得る。
【0117】
同側のテーパ付き移植片(840)は、テーパにより離間された三つのセクションを有する。頂部セクション(846)、中間セクション(848)、及び底部セクション(850)である。本体要素移植片(854)は同側のテーパ付き移植片(840)の頂部セクション(846)を対側のテーパ付き移植片(842)の頂部セクション(847)に熱接合することにより形成される。この熱接合は共通の隔膜(856)を形成し、この隔膜(856)は好ましい実施態様においてその後に除去されて滑らかな分岐部を形成する。隔膜材料を除去することにより、隔膜の遍在により生じ得る流体流れの乱れ又は遮断が阻止される。このような遍在は流体圧力により生じ、隔膜をゆるめるか又はもはや緊張されないようにステント移植片を半径方向に圧縮すると更に悪化する。
【0118】
別の実施態様では、移植片セクションを図27A及び図27Bに示す方法で形成することができる。本実施態様によると、本体要素移植片(867)は二つの部品から形成される。管状移植片セクション(860)は「U字形状」に折り曲げられる。頂部穴(864)が「U字形状」の頂部を切り欠くことにより形成される。上方移植片セクション(862)が管状移植片セクション(860)の頂部穴(864)上に配置される。二つの部品は接合界面(866)において互いに接合される。好ましくは、所望の形状及び滑らかな内部を得るために二つの移植片部品は内部マンドレル(図示しない)に支持されつつ熱接合される。しかしながら、十分に漏れがないシールを提供するあらゆる方法によって、上方移植片セクション(862)を接合界面(866)で管状移植片セクション(860)に取り付けることができる。例えば、要素を一体的に縫合してもよいし、又は接着剤により接合してもよい。
【0119】
使用時、モジュール式分岐ステント移植片は典型的には身体の血管系を介して経皮的に搬送される。好ましくは、詳細に上述した拘束部材により人工器官が搬送される。図28A〜図28Eは、経皮的カテーテル組立体を用いて拘束部材(902)を備えた分岐ステント移植片の展開配置の様子を図によって示している。図28Aを参照すると、複管腔カテーテル組立体(928)が身体管腔の選択された位置に挿入されている。分岐ステント移植片の本体(700)は、案内ワイヤ(926)及び案内ワイヤ管腔(929)の周りに、拘束部材(902)及び結合部材(906)によって圧縮状態で保持される。展開配置に先立って、潰された本体(700)は遠位障壁(930)及び近位障壁(932)により軸線方向に所定位置に保持される。遠位障壁(930)及び近位障壁(932)は典型的には案内ワイヤ管腔(929)に固定される。結合部材(906)は拘束部材(902)の複数のアイレット(920)を通ってチェーンノットを形成し、複管腔カテーテル(928)内に延びている。
【0120】
図28Aは、遠位に配置された本体(700)及び拘束部材(902)を備えた複管腔カテーテル(928)を一般的には主要脈管の分岐部である移植位置へ進行させる様子を示している。展開配置時に外科医が本体(700)を整列させて、同側脚部(726)が分岐管の一方の枝内に延びるようにすると共に、収容穴(704)及び収容管腔(703)が対側脚部(730)を収容するように分岐管の他方の枝と一線に並ぶようにするのが重要である。
【0121】
この整列作用を容易にする一つの方法は、放射線不透過性マーカを設けて、展開配置又は拘束部材(902)からの解放に先立って、本体(700)の回転位置を外科医が容易に判断し得るようにすることである。好ましい実施態様において、長いマーカ(934)が圧縮された組立体の対側に配置され、短いマーカ(936)が同側に配置される。好ましくは、これらマーカは圧縮に先立ってステントに配置される。しかしその代わりに、これらマーカを拘束部材の一部とすることも可能である。異なる長さのマーカを有することにより、外科医が分岐管に対する同側脚部と収容管腔の両方の向きを特定することが可能となる。
【0122】
組立体が移植のために適切に整列されかつ位置決めされると、結合部材(906)が引かれて拘束部材(902)がインプラントを、典型的には遠位端から、解放し始める。好ましい実施態様において、拘束部材(902)は図示される側に配置される。というのは、拘束部材(902)が収容管腔(703)の展開配置をほとんど妨害しそうもないからである。
【0123】
図28Bは、結合部材(906)が拘束部材(902)の複数のアイレット(920)を介してカテーテル組立体(928)内に引込められるにつれて、半径方向に拡張する本体(700)を示している。好ましい実施態様においては、拘束部材(902)は本体の長さに沿って複数の縫合糸により本体(700)に固定され、移植される人工器官と拘束部材(902)間の長手方向のあらゆる相対移動が阻止される。選択的に、拘束部材はさきに詳述したような引込み又は引張り機構を使用することができる。
【0124】
図28Cは、案内ワイヤ(926)及びカテーテル組立体(928)が引込められた後における、管の分岐部の最終移植位置での本体(700)及び拘束部材(902)を示している。
【0125】
図28Dは、拘束部材(942)を用いて対側収容穴まで搬送されている対側脚部(730)を示している。対側脚部(730)を位置決めしかつ解放する手順は、本体(700)の分岐点(728)に対する位置が適切であることを確実にするために、放射線不透過性マーカが使用され得る点を除いて、ほぼ円筒状のステント移植片の移植についての前述の内容と同様である。
【0126】
放射線不透過性マーカを配置して、例えば収容穴(704)、対側脚部(730)の遠位端(734)、及び本体(700)の分岐点(728)の位置を表示するようにしてもよい。これらマーカは、対側脚部が収容穴(704)内に入り込むときに対側脚部の位置を表示するよう機能し、分岐点(728)から始まる収容管腔(703)に対する対側脚部の最終的な位置を表示するように機能する。図19に示される好ましい実施態様においては、放射線不透過性ワイヤを収容管腔の周辺部周りの移植片部材(780)に熱接合するか又は埋め込むことができる。このような放射線不透過性ワイヤを別の場所、例えば対側脚部管腔、同側脚部管腔、又は本体(700)の遠位端における管腔等において用いることもできる。
【0127】
図28Eは、最終移植状態にある組み立てられた分岐ステント移植片を示しており、対側脚部が本体(700)の収容管腔内に拡張すると共にこの収容管腔と係合している。
【0128】
図29A〜図29Dは、展開配置される同じステント又はステント移植片を図で示しているが、このステント又はステント移植片が、結合部材(906)が引込められると拘束部材(902)が中心から外側に解放される点で異なる。これにより、端部解放式のような遠位端に対してではなく、管の分岐点に対しての更に正確な位置決めが行われ得る。
【0129】
例示のための実施態様を参照して本発明を開示してきたが、この記載は限定的な意味に解釈されることを意図するものではない。様々な変更、及び例示的実施態様の組み合わせだけでなく本発明の他の実施態様も、当業者には本明細書の記載から明らかである。従って、添付した請求の範囲がこのようなあらゆる変更及び実施態様を包含することを意図するものである。
【0130】
本明細書に記載されている文献及び特許の開示内容は参考として本願に組入れられている。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】図1は、本発明の原理に基づく潰された状態に拘束された哺乳類用インプラントの斜視図である。
【図2】図2は、図1の拘束されたインプラントの端面図である。
【図3】図3は、拘束が解放され且つインプラントが拡張した状態にある図1の組立体の斜視図である。
【図4A】図4Aは、図3の組立体の端面図である。
【図4B】図4Bは、図4Aの拘束部材の底面図である。
【図5A】図5Aは、非作動状態にある本発明の別の実施態様の拘束部材の引込み機構を示す。
【図5B】図5Bは、作動状態にある図5Aの引込み機構を示す。
【図5C】図5Cは、非作動状態にある本発明の更に別の実施態様の拘束部材の引込み機構を示す。
【図5D】図5Dは、作動状態にある図5Cの引込み機構を示す。
【図6A】図6Aは、図1の拘束部材に接続されたインプラントの別の実施態様の斜視図である。
【図6B】図6Bは、図1の拘束部材に接続されたインプラントの更に他の実施態様の斜視図である。
【図7A】図7Aは、図1の拘束部材と結合部材とを示し且つ拘束部材から結合部材を外すための引張り方向を示す。
【図7B】図7Bは、本発明の一実施態様で用いられるチェーンノットを示すために、結合部材が緩められた図7Aの組立体を示す。
【図7C】図7Cは、結合部材が図示した方向へ引っ張られる間における図7A又は図7Bの組立体の解放を示した図である。
【図8A】図8Aは、管腔内搬送に先立ち、本発明に従って拘束部材に拡張可能ステント移植片を入れる手順を示す一連の図の1つである。
【図8B】図8Bは、管腔内搬送に先立ち、本発明に従って拘束部材に拡張可能ステント移植片を入れる手順を示す一連の図の1つである。
【図8C】図8Cは、管腔内搬送に先立ち、本発明に従って拘束部材に拡張可能ステント移植片を入れる手順を示す一連の図の1つである。
【図8D】図8Dは、管腔内搬送に先立ち、本発明に従って拘束部材に拡張可能ステント移植片を入れる手順を示す一連の図の1つである。
【図8E】図8Eは、管腔内搬送に先立ち、本発明に従って拘束部材に拡張可能ステント移植片を入れる手順を示す一連の図の1つである。
【図8F】図8Fは、管腔内搬送に先立ち、本発明に従って拘束部材に拡張可能ステント移植片を入れる手順を示す一連の図の1つである。
【図9A】図9Aは、結合部材が図7A〜図7Cに示したように構成された状態において、本発明に従い、拘束されたインプラントが哺乳類の体内管腔の所望の部位へ搬送されるのを示している図である。
【図9B】図9Bは、図9Aの線9B−9Bに沿った断面図である。
【図9C】図9Cは、図9Aとは別の複合拘束部材の構成を示す。
【図10A】図10Aは、図9Aに図示されたインプラント組立体の部分的な展開配置を示す図であり、図示した案内ワイヤの遠位端から離れる方向(すなわち図示されたハブに向かう方向)へ進行する拡張を示す。
【図10B】図10Bは、図10Aの線10B−10Bに沿った断面図である。
【図11A】図11Aは、図9Aに図示したインプラント組立体の完全な展開配置を示す図である。
【図11B】図11Bは、図11Aの線11B−11Bに沿った断面図である。
【図12A】図12Aは、本発明の別の実施態様における拘束されたインプラントの展開配置を示した一連の図の1つであり、ここでは結合部材がインプラントの中央部からインプラントの端部に向かって解放するように構成されている。
【図12B】図12Bは、本発明の別の実施態様における拘束されたインプラントの展開配置を示した一連の図の1つであり、ここでは結合部材がインプラントの中央部からインプラントの端部に向かって解放するように構成されている。
【図12C】図12Cは、本発明の別の実施態様における拘束されたインプラントの展開配置を示した一連の図の1つであり、ここでは結合部材がインプラントの中央部からインプラントの端部に向かって解放するように構成されている。
【図12D】図12Dは、本発明の別の実施態様における拘束されたインプラントの展開配置を示した一連の図の1つであり、ここでは結合部材がインプラントの中央部からインプラントの端部に向かって解放するように構成されている。
【図13】図13には図12Aから図12Dに示した展開配置のための一つの結合部材の構成が図示されている。
【図14A】図14Aは、図示された搬送装置と共に用いられる分岐ステント移植片の斜視図である。
【図14B】図14Bは、図14Aの分岐ステント移植片の上面図である。
【図14C】図14Cは、図14Aにある断面線14C−14Cに沿った断面図である。
【図14D】図14Dは、別の実施態様の図14Aにある断面線14D−14Dに沿った断面図である。
【図15】図15は、体の血管内の分岐部分に配置された組み立てられた図14Aの分岐ステント移植片の正面図である。
【図16】図16は、ステントの固定頂点の一つの構造の破断拡大斜視図である。
【図17】図17は、ステントの固定頂点の好ましい構造の破断拡大斜視図である。
【図18】図18は、図14Bの断面線18−18に沿ったステント移植片の断面図である。
【図19】図19は、図14Aの断面線19−19に沿ったステント移植片の断面図である。
【図20】図20は、小さな直径の局所領域を有する、図18に示された対側脚部接続部分の拡大部分断面図である。
【図21】図21は、収容管腔の更に別の構造の拡大部分断面図である。
【図22】図22は、収容管腔の更に別の構造の拡大部分断面図である。
【図23】図23は、対側脚部要素の遠位端領域の別のスカラップ構造の部分斜視図である。
【図24A】図24Aは、図14Aの断面線24A−24Aに沿った断面図であり、自由状態を示す。
【図24B】図24Bは、図14Aの断面線24A−24Aに沿った断面図であり、拘束状態を示す。
【図25A】図25Aは、図23の断面線25A−25Aに沿った断面図であり、自由状態を示す。
【図25B】図25Bは、図23の断面線25A−25Aに沿った断面図であり、拘束状態を示す。
【図26A】図26Aは、組み立て前の移植片構成要素の正面図である。
【図26B】図26Bは、図26Aの移植片を組み立てたときの正面図である。
【図26C】図26Cは、図26Aの移植片を組み立てたときの上面図である。
【図27A】図27Aは、別の構造の移植片要素の組み立てられていない構成要素の正面図である。
【図27B】図27Bは、図27Aの別の構造の組み立てられた移植片要素の正面図である。
【図28A】図28Aは、分岐ステント移植片の展開配置を示す一連の図の1つである。
【図28B】図28Bは、分岐ステント移植片の展開配置を示す一連の図の1つである。
【図28C】図28Cは、分岐ステント移植片の展開配置を示す一連の図の1つである。
【図28D】図28Dは、分岐ステント移植片の展開配置を示す一連の図の1つである。
【図28E】図28Eは、分岐ステント移植片の展開配置を示す一連の図の1つである。
【図29A】図29Aは別の搬送装置を用いた分岐ステント移植片の展開配置を示す一連の図の1つである。
【図29B】図29Bは別の搬送装置を用いた分岐ステント移植片の展開配置を示す一連の図の1つである。
【図29C】図29Cは別の搬送装置を用いた分岐ステント移植片の展開配置を示す一連の図の1つである。
【図29D】図29Dは別の搬送装置を用いた分岐ステント移植片の展開配置を示す一連の図の1つである。
【符号の説明】
【0132】
100 搬送装置
102 拘束部材
104 結合部材
106 ステント移植片
【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡張可能なインプラントを潰された状態に一時的に拘束して展開部位へ送給する送給装置であって、拡張可能なインプラントを取り巻くように構成されて、該インプラントを、哺乳類の身体管腔を通して送給する間、潰れ状態に維持するシート材と、該シート材の複数部分を互いに連結して、該インプラントを該潰れ状態に維持する連結部材とを具備する装置。
【請求項2】
前記シート材が長さ及び幅を有し、該幅が約40mm未満である請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記シート材が、複数の端部と、それら端部の間に延びる複数の側縁部と、それら側縁部の各々に沿って配置される鳩目とを備える請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記鳩目が前記シート材に形成される穴からなる請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記シート材に連結されるループを備え、該ループが前記鳩目を構成する請求項3に記載の装置。
【請求項6】
補強部材をさらに備え、該補強部材が、1つの前記鳩目と、該鳩目を配置した前記側縁部の外縁との間に配置される請求項3に記載の装置。
【請求項7】
前記連結部材が、前記鳩目に通されるようになっている糸からなる請求項3に記載の装置。
【請求項8】
少なくとも1つの前記側縁部が、前記シート材の複数の重ね合わせ部分を具備し、前記補強部材が、それら重ね合わせ部分の間に配置される請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記インプラントがステントからなる請求項1に記載の装置。
【請求項10】
ステントと該ステントに連結される拘束部材とを具備する組立体であって、該ステントは潰れ状態と拡張状態とを有し、該拘束部材は、該ステントが該潰れ状態にあるときに、該ステントの少なくとも一部分に巻き付けられるようになっているシート材を具備し、該シート材の複数部分が、互いに連結されて、該シート材を、潰れ状態の該ステントの少なくとも一部分に巻き付けた形態に維持するようになっている組立体。
【請求項11】
前記拘束部材が前記ステントに固定的に取り付けられる請求項10に記載の組立体。
【請求項12】
前記拘束部材が前記ステントに固定的に取り付けられ、それらの間の相対移動が実質的に防止されるようになっている請求項10に記載の組立体。
【請求項13】
前記シート材が長さ、幅及び厚みを有し、前記ステントが前記拡張状態にあるときに、該幅が該ステントの一部分の直径よりも小さくなっている請求項10に記載の組立体。
【請求項14】
前記シート材が、約40mm未満である幅を有する請求項10に記載の組立体。
【請求項15】
前記拘束部材の、その長手軸線に沿って測った長さが、前記ステントの、その長手軸線に沿って測った長さに等しいかそれよりも短くなっている請求項10に記載の組立体。
【請求項16】
前記複数部分を互いに解放可能に連結する独立した部材をさらに備える請求項10に記載の組立体。
【請求項17】
前記シート材が、複数の端部とそれら端部の間に延びる複数の側縁部とを備え、それら側縁部が互いに解放可能に連結される請求項10に記載の組立体。
【請求項18】
前記側縁部の間の連結を解放する手段をさらに備える請求項17に記載の組立体。
【請求項19】
前記側縁部の間の連結を多方向に解放する手段をさらに備える請求項17に記載の組立体。
【請求項20】
前記シート材が、複数の端部と、それら端部の間に延びる複数の側縁部と、それら側縁部の各々に沿って配置される少なくとも1つの鳩目とを備える請求項10に記載の組立体。
【請求項21】
前記鳩目が前記シート材に形成される穴からなる請求項20に記載の組立体。
【請求項22】
前記鳩目が前記シート材に連結されるループからなる請求項20に記載の組立体。
【請求項23】
複数の前記鳩目を互いに解放可能に連結する部材をさらに備える請求項20に記載の組立体。
【請求項24】
各側縁部が多数の鳩目を有し、前記装置がさらに、それら鳩目に通される糸を備える請求項20に記載の組立体。
【請求項25】
前記鳩目に通される多数の糸を備える請求項24に記載の組立体。
【請求項26】
各側縁部が多数の鳩目を有し、前記装置がさらに、それら鳩目に通されるワイヤを備える請求項20に記載の組立体。
【請求項27】
前記鳩目に通される多数のワイヤを備える請求項26に記載の組立体。
【請求項28】
補強部材をさらに備え、該補強部材が、少なくとも1つの前記鳩目と、該鳩目を配置した前記側縁部の外縁との間に配置される請求項20に記載の組立体。
【請求項29】
少なくとも1つの前記側縁部が、前記シート材の複数の重ね合わせ部分を具備し、前記補強部材が、それら重ね合わせ部分の間に配置される請求項28に記載の組立体。
【請求項30】
前記シート材に沿って前記側縁部の間を測定した距離が、前記ステントが前記拡張状態にあるときの該ステントの直径よりも短くなっている請求項20に記載の組立体。
【請求項31】
多数の前記拘束部材を備える請求項10に記載の組立体。
【請求項32】
前記ステントが、前記拡張状態にあるときに略円筒形である請求項10に記載の組立体。
【請求項33】
前記ステントが、前記拡張状態にあるときに二股形状を有する請求項10に記載の組立体。
【請求項34】
前記シート材が、人の患者の体内への移植に適合する請求項10に記載の組立体。
【請求項35】
ステントとシート材とを具備する組立体であって、該ステントは潰れ状態と拡張状態とを有し、該ステントは、該潰れ状態にあるときに、その少なくとも一部分に該シート材を巻き付けており、該シート材は、複数の端部とそれら端部の間に延びる複数の側縁部とを備え、それら側縁部が互いに連結されてなる組立体。
【請求項36】
独立した連結部材をさらに備え、該連結部材が複数の前記側縁部を互いに連結する請求項35に記載の組立体。
【請求項37】
前記シート材が、略管状の形状で配置されて、前記ステントを前記潰れ状態に維持する請求項35に記載の組立体。
【請求項38】
前記シート材が、人の患者の体内への移植に適合する請求項35に記載の組立体。
【請求項39】
ステントと該ステントに連結される拘束部材とを具備する組立体であって、該ステントは潰れ状態と拡張状態とを有し、該ステントは、該ステントが該潰れ状態と該拡張状態との間を移行するときに相対的に移動する第1及び第2部分を備え、該拘束部材は、該ステントが該潰れ状態にあるときに、該ステントの少なくとも一部分に巻き付けられるようになっているシート材を具備し、該シート材の複数部分が、互いに連結されて、該シート材を、潰れ状態にある該ステントの少なくとも一部分に巻き付けた形態に維持し、さらに、該拘束部材に連結される第1部分と、該ステントの第1及び第2部分の一方に連結される第2部分とを有する部材を備える組立体。
【請求項40】
前記ステントの第1部分と第2部分との周方向相対位置が、該ステントが前記潰れ状態と前記拡張状態との間を移行するときに変化する請求項39に記載の組立体。
【請求項41】
前記ステントの第1部分と第2部分との軸線方向位置が、該ステントが前記潰れ状態と前記拡張状態との間を移行するときに軸線方向へ変化する請求項40に記載の組立体。
【請求項42】
拡張可能なステントを哺乳類の身体内の所望の内部管腔部位に送給する方法であって、
(a) 拘束部材によって潰れ状態に拘束される拡張可能なステントを、壁を有する管腔内に配置し、
(b) 前記拘束部材を解放し、
(c) 前記拘束部材を前記壁に向かって適所に押し付ける、
各ステップを具備する方法。
【請求項43】
前記ステントが自己拡張式ステントであり、自己拡張して前記拘束部材を前記壁に向かって適所に押し付けることができる請求項42に記載の方法。
【請求項44】
哺乳類の身体内の所望部位に送給するための準備をステントに施す方法であって、
潰されたステントを、複数の側縁部を有するシート材内に拘束し、
前記複数の側縁部を互いに連結する、
各ステップを具備する方法。
【請求項45】
前記連結ステップは、前記複数の側縁部を、それら側縁部の間の連結を同時に解放できるように、多数の要素により連結することを含む請求項44に記載の方法。
【請求項46】
拡張可能なステントを略管状の拘束部材内に潰して入れる方法であって、
(a) 拡張可能なステントを、該ステントを径方向に潰すテーパ状構造に通して引っ張り、
(b) 前記ステントを略管状の拘束部材に引き込む、
各ステップを具備する方法。
【請求項47】
前記ステントの一部分を、前記ステップ(a) の前に折り畳む請求項46に記載の方法。
【請求項1】
拡張可能なインプラントを潰された状態に一時的に拘束して展開部位へ送給する送給装置であって、拡張可能なインプラントを取り巻くように構成されて、該インプラントを、哺乳類の身体管腔を通して送給する間、潰れ状態に維持するシート材と、該シート材の複数部分を互いに連結して、該インプラントを該潰れ状態に維持する連結部材とを具備する装置。
【請求項2】
前記シート材が長さ及び幅を有し、該幅が約40mm未満である請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記シート材が、複数の端部と、それら端部の間に延びる複数の側縁部と、それら側縁部の各々に沿って配置される鳩目とを備える請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記鳩目が前記シート材に形成される穴からなる請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記シート材に連結されるループを備え、該ループが前記鳩目を構成する請求項3に記載の装置。
【請求項6】
補強部材をさらに備え、該補強部材が、1つの前記鳩目と、該鳩目を配置した前記側縁部の外縁との間に配置される請求項3に記載の装置。
【請求項7】
前記連結部材が、前記鳩目に通されるようになっている糸からなる請求項3に記載の装置。
【請求項8】
少なくとも1つの前記側縁部が、前記シート材の複数の重ね合わせ部分を具備し、前記補強部材が、それら重ね合わせ部分の間に配置される請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記インプラントがステントからなる請求項1に記載の装置。
【請求項10】
ステントと該ステントに連結される拘束部材とを具備する組立体であって、該ステントは潰れ状態と拡張状態とを有し、該拘束部材は、該ステントが該潰れ状態にあるときに、該ステントの少なくとも一部分に巻き付けられるようになっているシート材を具備し、該シート材の複数部分が、互いに連結されて、該シート材を、潰れ状態の該ステントの少なくとも一部分に巻き付けた形態に維持するようになっている組立体。
【請求項11】
前記拘束部材が前記ステントに固定的に取り付けられる請求項10に記載の組立体。
【請求項12】
前記拘束部材が前記ステントに固定的に取り付けられ、それらの間の相対移動が実質的に防止されるようになっている請求項10に記載の組立体。
【請求項13】
前記シート材が長さ、幅及び厚みを有し、前記ステントが前記拡張状態にあるときに、該幅が該ステントの一部分の直径よりも小さくなっている請求項10に記載の組立体。
【請求項14】
前記シート材が、約40mm未満である幅を有する請求項10に記載の組立体。
【請求項15】
前記拘束部材の、その長手軸線に沿って測った長さが、前記ステントの、その長手軸線に沿って測った長さに等しいかそれよりも短くなっている請求項10に記載の組立体。
【請求項16】
前記複数部分を互いに解放可能に連結する独立した部材をさらに備える請求項10に記載の組立体。
【請求項17】
前記シート材が、複数の端部とそれら端部の間に延びる複数の側縁部とを備え、それら側縁部が互いに解放可能に連結される請求項10に記載の組立体。
【請求項18】
前記側縁部の間の連結を解放する手段をさらに備える請求項17に記載の組立体。
【請求項19】
前記側縁部の間の連結を多方向に解放する手段をさらに備える請求項17に記載の組立体。
【請求項20】
前記シート材が、複数の端部と、それら端部の間に延びる複数の側縁部と、それら側縁部の各々に沿って配置される少なくとも1つの鳩目とを備える請求項10に記載の組立体。
【請求項21】
前記鳩目が前記シート材に形成される穴からなる請求項20に記載の組立体。
【請求項22】
前記鳩目が前記シート材に連結されるループからなる請求項20に記載の組立体。
【請求項23】
複数の前記鳩目を互いに解放可能に連結する部材をさらに備える請求項20に記載の組立体。
【請求項24】
各側縁部が多数の鳩目を有し、前記装置がさらに、それら鳩目に通される糸を備える請求項20に記載の組立体。
【請求項25】
前記鳩目に通される多数の糸を備える請求項24に記載の組立体。
【請求項26】
各側縁部が多数の鳩目を有し、前記装置がさらに、それら鳩目に通されるワイヤを備える請求項20に記載の組立体。
【請求項27】
前記鳩目に通される多数のワイヤを備える請求項26に記載の組立体。
【請求項28】
補強部材をさらに備え、該補強部材が、少なくとも1つの前記鳩目と、該鳩目を配置した前記側縁部の外縁との間に配置される請求項20に記載の組立体。
【請求項29】
少なくとも1つの前記側縁部が、前記シート材の複数の重ね合わせ部分を具備し、前記補強部材が、それら重ね合わせ部分の間に配置される請求項28に記載の組立体。
【請求項30】
前記シート材に沿って前記側縁部の間を測定した距離が、前記ステントが前記拡張状態にあるときの該ステントの直径よりも短くなっている請求項20に記載の組立体。
【請求項31】
多数の前記拘束部材を備える請求項10に記載の組立体。
【請求項32】
前記ステントが、前記拡張状態にあるときに略円筒形である請求項10に記載の組立体。
【請求項33】
前記ステントが、前記拡張状態にあるときに二股形状を有する請求項10に記載の組立体。
【請求項34】
前記シート材が、人の患者の体内への移植に適合する請求項10に記載の組立体。
【請求項35】
ステントとシート材とを具備する組立体であって、該ステントは潰れ状態と拡張状態とを有し、該ステントは、該潰れ状態にあるときに、その少なくとも一部分に該シート材を巻き付けており、該シート材は、複数の端部とそれら端部の間に延びる複数の側縁部とを備え、それら側縁部が互いに連結されてなる組立体。
【請求項36】
独立した連結部材をさらに備え、該連結部材が複数の前記側縁部を互いに連結する請求項35に記載の組立体。
【請求項37】
前記シート材が、略管状の形状で配置されて、前記ステントを前記潰れ状態に維持する請求項35に記載の組立体。
【請求項38】
前記シート材が、人の患者の体内への移植に適合する請求項35に記載の組立体。
【請求項39】
ステントと該ステントに連結される拘束部材とを具備する組立体であって、該ステントは潰れ状態と拡張状態とを有し、該ステントは、該ステントが該潰れ状態と該拡張状態との間を移行するときに相対的に移動する第1及び第2部分を備え、該拘束部材は、該ステントが該潰れ状態にあるときに、該ステントの少なくとも一部分に巻き付けられるようになっているシート材を具備し、該シート材の複数部分が、互いに連結されて、該シート材を、潰れ状態にある該ステントの少なくとも一部分に巻き付けた形態に維持し、さらに、該拘束部材に連結される第1部分と、該ステントの第1及び第2部分の一方に連結される第2部分とを有する部材を備える組立体。
【請求項40】
前記ステントの第1部分と第2部分との周方向相対位置が、該ステントが前記潰れ状態と前記拡張状態との間を移行するときに変化する請求項39に記載の組立体。
【請求項41】
前記ステントの第1部分と第2部分との軸線方向位置が、該ステントが前記潰れ状態と前記拡張状態との間を移行するときに軸線方向へ変化する請求項40に記載の組立体。
【請求項42】
拡張可能なステントを哺乳類の身体内の所望の内部管腔部位に送給する方法であって、
(a) 拘束部材によって潰れ状態に拘束される拡張可能なステントを、壁を有する管腔内に配置し、
(b) 前記拘束部材を解放し、
(c) 前記拘束部材を前記壁に向かって適所に押し付ける、
各ステップを具備する方法。
【請求項43】
前記ステントが自己拡張式ステントであり、自己拡張して前記拘束部材を前記壁に向かって適所に押し付けることができる請求項42に記載の方法。
【請求項44】
哺乳類の身体内の所望部位に送給するための準備をステントに施す方法であって、
潰されたステントを、複数の側縁部を有するシート材内に拘束し、
前記複数の側縁部を互いに連結する、
各ステップを具備する方法。
【請求項45】
前記連結ステップは、前記複数の側縁部を、それら側縁部の間の連結を同時に解放できるように、多数の要素により連結することを含む請求項44に記載の方法。
【請求項46】
拡張可能なステントを略管状の拘束部材内に潰して入れる方法であって、
(a) 拡張可能なステントを、該ステントを径方向に潰すテーパ状構造に通して引っ張り、
(b) 前記ステントを略管状の拘束部材に引き込む、
各ステップを具備する方法。
【請求項47】
前記ステントの一部分を、前記ステップ(a) の前に折り畳む請求項46に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図8F】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図14D】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24A】
【図24B】
【図25A】
【図25B】
【図26A】
【図26B】
【図26C】
【図27A】
【図27B】
【図28A】
【図28B】
【図28C】
【図28D】
【図28E】
【図29A】
【図29B】
【図29C】
【図29D】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図8F】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図14D】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24A】
【図24B】
【図25A】
【図25B】
【図26A】
【図26B】
【図26C】
【図27A】
【図27B】
【図28A】
【図28B】
【図28C】
【図28D】
【図28E】
【図29A】
【図29B】
【図29C】
【図29D】
【公開番号】特開2009−106761(P2009−106761A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−297237(P2008−297237)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【分割の表示】特願平10−528755の分割
【原出願日】平成9年12月9日(1997.12.9)
【出願人】(598123677)ゴア エンタープライズ ホールディングス,インコーポレイティド (279)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【分割の表示】特願平10−528755の分割
【原出願日】平成9年12月9日(1997.12.9)
【出願人】(598123677)ゴア エンタープライズ ホールディングス,インコーポレイティド (279)
【Fターム(参考)】
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