インプリント方法およびその装置
【課題】効率よくナノインプリント加工を行い得る方法およびその装置を提供する。
【解決手段】室温インプリント用レジストを塗工した基板と転写面に凹凸パターンを形成したモールドを、組み込み冶具中にセットするアライメント工程、モールドのパターン面を基板のレジスト面に押し付けるプレス工程、モールドを基板から引き離し、基板、モールドおよび組み込み冶具に分離する分離工程を少なくとも有し、前記各工程が、1つの工程をその中で実施する独立ユニット内にて実施され、アライメント工程から分離工程まではモールドと基板とを組み込み治具で対にしてユニット間を搬送する搬送工程を各ユニット間に設けることを特徴とするインプリント方法、及び、上記アライメント工程をその中で実施するアライメントユニット、上記プレス工程をその中で実施するプレスユニット、上記分離工程をその中で実施する分離ユニットを少なくとも有し、上記搬送工程を実施する搬送手段を備えてなることを特徴とするインプリント装置。
【解決手段】室温インプリント用レジストを塗工した基板と転写面に凹凸パターンを形成したモールドを、組み込み冶具中にセットするアライメント工程、モールドのパターン面を基板のレジスト面に押し付けるプレス工程、モールドを基板から引き離し、基板、モールドおよび組み込み冶具に分離する分離工程を少なくとも有し、前記各工程が、1つの工程をその中で実施する独立ユニット内にて実施され、アライメント工程から分離工程まではモールドと基板とを組み込み治具で対にしてユニット間を搬送する搬送工程を各ユニット間に設けることを特徴とするインプリント方法、及び、上記アライメント工程をその中で実施するアライメントユニット、上記プレス工程をその中で実施するプレスユニット、上記分離工程をその中で実施する分離ユニットを少なくとも有し、上記搬送工程を実施する搬送手段を備えてなることを特徴とするインプリント装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント方法およびその装置に関する。インプリント方法は、モールドの成形面に形成された非常に微細な凹凸を基板に塗布された樹脂に押し付け、成形面の形状を樹脂に転写する方法である。
【背景技術】
【0002】
近年、ハードディスクドライブは大容量化の傾向にあり、磁気記録媒体の高記録密度化が進んでいる。記録密度の増加に伴うトラック密度の上昇に伴い、データ書き込み時、ヘッドギャップの側面から生じる漏れ磁界により、隣接するトラック間の領域にサイドフリンジと呼称される余計な記録がなされ、雑音の原因となって再生信号のS/Nを低下させることとなる。
【0003】
このような不具合を回避するため、例えば特許文献1では隣接する記録トラックの間に溝を設けたディスクリートトラック方式の磁気記録媒体を提案している。このディスクリートトラック方式の磁気記録媒体は、隣接するトラック間を分離したものであり、上述したサイドフリンジの問題を回避することができる。一方、さらなる高記録密度を企図してディスク上にそれぞれが1bitとなるようなドットを形成するようなパターンドメディアも提案されている。
【0004】
ディスクリートトラック媒体およびパターンドメディア共、ディスク上に微細パターンを形成するものであり、これらのパターニングはインプリント法によって行われることが多い。このインプリント法は、微細パターンが成形面に形成されたモールドを原型とし、樹脂を塗布した基板の表面に微細パターンの転写を行うものであり、熱可塑性樹脂を用いた熱インプリント法と、光硬化型樹脂を用いた光インプリント法とが知られている。特に、ナノメートル単位の微細パターンを形成するためのインプリントは、ナノインプリントとも呼称されている。
【0005】
熱インプリント法においては、一般的に、次のようなプロセスでレジストパターンが形成される。まずステージ上に基板を載置し、その表面に熱可塑性樹脂や熱硬化型樹脂を塗布しておく。次に基板および成形パターンが形成されたモールドをガラス転移温度(Tg)以上に加熱して、レジストを塗布した基板の表面にモールドを所定の荷重にて押し付け、この状態にて所定時間保持し、モールドのパターンを基板のレジストに転写する。その後、レジストのTgより低い温度までモールドおよび基板を冷却し、モールドを基板から離型する。このようにして、モールドの成形面に形成された凹形状に対応した凸形状が熱可塑性樹脂や熱硬化型樹脂に転写された基板をステージから取り出す。
【0006】
特許文献3には、インプリント装置を基板設置ユニット、樹脂塗布ユニット、被転写体とスタンパの位置合わせ、加圧、剥離を行う加工ユニットの3つのユニットで構成する例を示している。この例では、搬送ロボットを中央に置き、前記3つのユニットは搬送ロボットを中心とした円周の位置に配置している。
【0007】
また、最近、SOG(spin-on-glass)などを用いた室温ナノインプリントと呼ばれる方法もある(例えば、特許文献2参照)。この方法では、室温で溶剤が揮発し硬化する前に型押しし、硬化後に型を取り外すことで、モールドのパターンをレジストに転写することができる。そのため、加熱−冷却工程が不要で、作業性の向上がはかれる。
【0008】
【特許文献1】特開2005−56535号公報
【特許文献2】特開2005−108351号公報
【特許文献3】特開2006−326927号公報
【特許文献4】特開2005−286222号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
現在、一般的に知られたナノインプリントは、一つの装置内の同一個所で、モールドのパターンを基板に所定位置に合わせるアライメント工程、モールドおよび基板を加熱する加熱工程、モールドのパターン面を基板に塗工したレジスト面に押し付けるプレス工程、モールドおよび基板を冷却する冷却工程、モールドを基板から引き離す離型工程からなるナノインプリント工程の全てを行っている。
【0010】
すなわち、これまでは、電子ビーム露光で作製した高価な原版からなるモールドを用いていたこともあり、1つのモールドを用いて、基板1枚ずつに一連のナノインプリント工程を施してきたともいえる。
【0011】
しかしながら、ディスクリートトラック媒体およびパターンドメディアにおいては、1時間あたり300枚以上のタクトタイムが要求されており、一つの装置内で一連のナノインプリント工程を全て行っていては間に合わない。
【0012】
特許文献3のインプリント装置においても、基板設置ユニットで基板を設置し、基板を樹脂塗布ユニットに移して感光性樹脂を塗布し、これを加工ユニットに移して被転写体とスタンパの位置合わせ、加圧、剥離を行い、再度基板設置ユニットに移して加工済みの基板を取り出す装置となっているが、搬送ロボットを中心とした円周の位置に各ユニットが配置され、この搬送ロボットで各ユニット間を搬送しているため、このユニットのいずれかに基板がある間は他の基板を投入することができないものであり、一つの装置内で一連のナノインプリント工程を全て行っているのと同じである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
近年、我々は、非常に高価な原版となるモールドから、安価に多数の複製モールドを作製することができるようになってきた。(例えば、特許文献4参照。)その複製モールドを多数使うことで、モールドと基板を対にして工程ごとに流れ作業で行うことができるようになった。
【0014】
本発明はこれらの状況に鑑み、なされたもので、本発明の目的は、効率よくナノインプリント加工を行い得る方法およびその装置を提供することにある。
【0015】
すなわち、本発明のインプリント方法は、転写面に凹凸パターンを形成したモールドを用いて、インプリント用のレジストを塗工した基板のレジスト面に所定のパターンを形成する室温インプリント方法であり、
前記レジストを塗工した基板とモールドを、基板のレジスト面とモールドの凹凸面が重なるように組み込み冶具中にセットするアライメント工程、モールドのパターン面を基板のレジスト面に押し付けるプレス工程、モールドを基板から引き離し、基板、モールドおよび組み込み冶具に分離する分離工程を有し、前記各工程が、1つの工程をその中で実施する独立ユニット内にて実施され、アライメント工程から分離工程まではモールドと基板とを組み込み治具で対にしてユニット間を搬送する搬送工程を各ユニット間に設けることを特徴とする。
【0016】
また、本発明のインプリント装置は、上記インプリント方法を実施するための装置であって、前記レジストを塗工した基板とモールドを、基板のレジスト面とモールドの凹凸面が重なるように組み込み冶具中にセットするアライメント工程をその中で実施するアライメントユニット、モールドのパターン面を基板のレジスト面に押し付けるプレス工程をその中で実施するプレスユニット、モールドを基板から引き離し、基板、モールドおよび組み込み冶具に分離する分離工程をその中で実施する分離ユニットを少なくとも有し、前記各ユニット間をモールドと基板とを組み込み冶具で対にして搬送する搬送手段を備えてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ディスクリートトラック媒体およびパターンドメディアなどの作製において、一連のインプリント工程を流れ作業的に行ってゆくことにより、早いタクトタイムで効率よくインプリント加工を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
まず、本発明のインプリント方法について説明する。本発明のインプリント方法においては、転写面に凹凸パターンを形成したモールドと、室温インプリント用レジストを塗工した基板とを用い、基板のレジスト面に所定のパターンを形成する。このモールドは高価な原版となるモールドそのものを用いるのではなく、この原版から複製した多数の複製モールドを用いる。
【0019】
本発明のインプリント方法は、モールドのパターンを基板の所定位置に合わせるアライメント工程、モールドのパターン面を基板に塗工したレジスト面に押付けるプレス工程、モールドを基板から引き離し、基板、モールドおよび組み込み冶具に分離する分離工程を少なくとも有する。
【0020】
本発明においてはレジストとして室温インプリント用レジストを用い、室温においてプレスを行う室温インプリント法を採用している。ここで室温とは、0℃以上、50℃以下の温度であることを意味する。この室温インプリント用レジストとしては、ゾル−ゲル系材料が用いられ、シロキサンを溶媒に溶かしたSOG(spin-on-glass)が好ましく用いられる。SOGに用いられるシロキサンとしてはシリカガラス、アルキルシロキサンポリマー、アルキルシルセスキオキサンポリマー、水素化シルセスキオキサンポリマー、水素化アルキルシルセスキオキサンポリマーを挙げることができ、溶媒としてはメタノール、エタノールなどのアルコール類、アセチルアセトンなどのケトン類、低級アルキルエステルなどのエステル類を挙げることができる。
【0021】
このインプリント方法においては、インプリント方法における各工程が、1つの工程をその中で実施する独立ユニット内にて実施される。また、アライメント工程から分離工程まではモールドと基板とを組み込み治具で対にしてユニット間を搬送する搬送工程を各ユニット間に設ける。ユニット数が3つ以上で搬送工程が複数ある場合、それぞれの搬送工程は独立に駆動できる。これにより、各ユニットでの加工所要時間を考慮して次々とモールドと基板をユニットに送り込むことで流れ作業によりインプリントを行うことができるので、早いタクトタイムで効率よくインプリント加工を行うことができる。
【0022】
また、本発明のインプリント方法においては、プレス工程を減圧下で行うことが好ましい。プレス工程を減圧下で行うことは、プレス工程の前に減圧工程を設け、プレス工程の後に大気開放工程を設けることで達成できる。プレス時の気圧は10〜5000Pa、より好ましくは100〜1000Paとすることが好ましい。減圧にすることで溶媒を揮散させることができ、ボイド欠陥をなくすことができる。
【0023】
次に、図面を参照しながら本発明のインプリント装置につき説明する。
【0024】
まず、本発明の装置構成が図1に示す構成である場合を例にとり、各ユニットの構成につき説明する。
【0025】
図1は本発明の装置構成の一例を示す模式図である。
【0026】
図1の装置構成では、室温インプリント用のレジストを塗工した基板とモールドを、基板のレジスト面とモールドの凹凸面が重なるように組み込み冶具中にセットするアライメント工程をその中で実施するアライメントユニット、基板のレジスト面に所定のパターン形状を形作るためにモールドのパターン面を基板のレジスト面に押し付けるプレス工程を実施するためのプレスユニット、モールドを基板から引き離し、基板、モールドおよび組み込み冶具に分離する分離工程をその中で実施する分離ユニットが設けられており、アライメントユニットとプレスユニットの間、プレスユニットと分離ユニットの間にはそれぞれ搬送手段が設けられている。アライメントユニットに室温インプリント用レジストを塗工した基板、基板のレジスト面に所定のパターン形状を形作るためのモールド、基板のレジスト面とモールドの凹凸面が重なるように組み込むための組み込み冶具を投入する手段がアライメントユニットに付属して設けられており、分離ユニットからレジスト面にパターンが形成された基板、前記モールドおよび前記組み込み治具を別個に取り出す手段が分離ユニットに付属して設けられている。
【0027】
アライメントユニットにおける装置構成の一例を図6に示す。このアライメント装置は基板及びモールドを把持する外周把持ハンドと、アライメントピンを備える組み込み治具と、外周把持ハンドで把持された基板とモールドを組み込み冶具中の指定の位置にまで移動させるスライダーと、基板、モールドをアライメントピンに差し込むための上下稼動シリンダーと、基板、モールドがアライメントピンにセットされたことを確認するためのセンサーとを備える。アライメントユニットではカセットから取り出した基板を、外周把持ハンドで、スライダーを使って精密金型(組み込み冶具)中の指定位置に移動させ、上下稼動シリンダーで基板を下げてアライメントピンに差し込む。その後、ハンドを上げ、ハンドを戻す。次に反対側から同じようにしてモールドを組み込む。基板、モールドが、アライメントピンに図7に示すように正しくセットされたかどうかは、例えば、光反射型のセンサーで確認する。
【0028】
プレスユニットは、図8に示すようにプレス機と、プレス機の中にセットされる精密金型(ダイセット)とプレス後に精密金型をロックする固定アームを備えており、精密金型は斜めにプレスされることがないように、上下面のプレス台座にガイドピンとガイドブッシュが組み込まれている。
【0029】
また、上面のプレス台座およびガイドブッシュボードの間にはその中央部(基板、モールドの中心部の穴に対応する位置)にばねが設けられている。プレスユニットに導入されたモールドと基板のセットは基板とモールドの外周把持具をつけたまま、精密金型の下面のプレス台座上の金型下面板と金型上面板の間に装着され(図8(a))、プレス機により0.1〜10MPa程度の圧力が加えられる。プレス機により圧力を加えた状態で精密金型に固定アームを取り付け、固定アームのねじを締め付けることで固定アームで精密金型をロックした後(図8(b))、溶媒を揮散させてパターンをインプリントさせ、分離ユニットに搬送する。精密金型の上下面のプレス台座にガイドピンとガイドブッシュを組み込むことによりパターン面に垂直に加圧するのでモールドの微細パターンを破壊することなく、レジストに微細パターンを正確に転写することができる。
【0030】
分離ユニットにおける分離の手順を図10に示す。分離ユニットでは、(a)精密金型の固定アームのねじを緩め、(b)固定アームを取り外す。次いで、(c)モールドの外周把持具を金型上面板に、基板の外周把持具を金型下面板に取り付ける。その状態を図11に示す。次いで、図10に示すように、(d)金型の上面板を持ち上げて、(e)モールドと基板を剥離する。金型上面板はその上面がガイドブッシュボードの下面に固定されており、ガイドブッシュボードがガイドピンにより上下方向にしか動けないため、モールドと基板はパターン面に垂直に離型する。次にモールドと基板の外周把持具をそれぞれ精密金型から取り外し、外周把持具から基板とモールドをそれぞれ取り外し、取り出す。精密金型はプレスユニットに搬送される。
【0031】
搬送手段としてはコンベアベルト、台車など種々の方式の手段を用いることができる。搬送は、先に述べた説明から明らかなように外周把持具あるいは精密金型により固定された状態でおこなわれる。
【0032】
この装置構成を用いたインプリントは、以下のようにして行われる。まず、レジストを塗工した基板、モールド、組み込み冶具をアライメントユニットに投入し、組み込み冶具に基板とモールドを組み合わせ、モールドと基板のアライメントも行う。なお、両面にパターンを形成する場合は、基板の表裏2面にモールドを組み込んでもよい。次いで、基板とモールドを組み込んだ組み込み冶具を、プレスユニットに搬送し、モールドを基板に所定の圧力で押し付ける。次いで、基板とモールドを組み込んだ組み込み冶具を、分離ユニットに搬送し、モールドを基板から引き離すとともに組み込み冶具から取り外し、レジストにパターニングされた基板と、モールド、組み込み冶具を取り出す。
【0033】
アライメントユニットから組み込み治具に組み込まれた基板とモールドをプレスユニットに搬送した後のアライメントユニットには、それぞれのユニットでの工程処理の所要時間を考慮した適切なタイミングで次の基板とモールド、組み込み治具が投入される。以下、基板とモールドが次の工程に進むにつれ、あいたユニットには同様にして次の基板とモールドが搬送されてゆき、モールドと基板を対にして工程ごとに流れ作業で行われる。
【0034】
また、装置は大掛かりになるが、アライメントユニット投入から分離ユニットでの搬出までの一連の作業を、一連の装置内でクリーンブース下で行うことで大気中のパーティクルの混入を少なくすることができ、パーティクルに伴うパターンの欠陥、パーティクル噛み込みによるモールドスタンパーの破損を防ぐことができる。
【0035】
また、本発明のインプリント装置は、各ユニットのタクトタイムに応じて、タクトタイムの長いユニットを2つ以上並列して設けてもよい。このような装置構成の1例を図2に示す。ここでは、プレス工程が、組み込み工程や分離工程に比べて2倍程度の時間がかかる場合の例として、装置構成を示したものであり、プレスユニットを2台並列に並べたものを示す。この例で説明すると、アライメントが終了して組み込みユニットに組み込まれたモールドと基板がアライメントユニットからプレスユニットに搬送され、そこで、プレスが行われる。一方、アライメントユニットには次のモールドと基板のセットが送り込まれアライメントが行われる。このアライメントが終了してもアライメントユニットよりプレスユニットのタクトタイムが長いので、プレスユニットでの加工が終了していない。そこでアライメントが終了して組み込みユニットに組み込まれたモールドと基板のセットをもう一方のプレスユニットに送り込んで加工することにより最も長いプレスユニットのタクトタイムに縛られることなくより効率的にインプリント加工を行うことができる。この並列設置型のインプリント装置としては、図2に示す例に限定されるものではなく、各工程の必要時間に応じて、各種の組合せをすることができる。
【0036】
本発明のインプリント装置は、図3に示すように、アライメントユニットとプレスユニットの間に減圧ユニットを、プレスユニットと分離ユニットの間に大気開放ユニットを設けてなることが好ましい。
【0037】
一般的に転写したパターン形状においてボイド欠陥が発生する場合は、真空下でプレスすることが効果的である。ボイド欠陥の発生のしやすさは、レジストの種類、用いる溶剤の種類、プレス時の圧力、パターンの形状などで異なるが、一般的には真空下でプレスすることで、ボイド発生による欠陥を低減することができる。
【0038】
ただし、真空下でプレスするためには、真空引きおよび大気開放の為の時間が必要である。このような場合、これまでの装置では、プレス部で真空引きや大気開放を行うものであった。そのための工程時間が必要であり、量産化には不向きであった。それに対して、図3のように、減圧ユニットおよび大気開放ユニットを設けることにより、全体のタクトタイムを損なうことなく、ボイド欠陥の少ないものを得ることができる。また、大気開放にかかる時間によっては、大気開放ユニットはなくてもかまわない。
【0039】
また、従来の方法では、ナノインプリント装置の中に、モールド、組み込み冶具が固定されており、この固定されたモールドにレジストを塗布した基板をセットして組み込み治具で固定してナノインプリントを行っていた。そして、モールドや組み込み治具が汚れた場合、モールドや組み込み治具をナノインプリント装置から取り外してクリーニングする必要があり、取り外しおよびクリーニング後の取り付けに時間がかかるために頻繁にクリーニングすることができなかった。そのため、レジストが貼りついた状態やパーティクルをかみこんだモールドを使い続けたり、内径を合わせる為のピンが磨耗したり、かみ合わせの悪くなった組み込み冶具を使い続けることがあった。
【0040】
このような問題を解消するために、本発明のインプリント装置は、分離ユニットで基板および組み込み治具から分離されたモールドをクリーニングする工程をその中で行うモールドクリーニングユニット、モールドクリーニングユニットでクリーニングされたモールドの表面に離型膜を形成する離型処理工程をその中で実施する離型処理ユニット、離型処理ユニットで離型処理を終わったモールドの状態を検査して、使用可能なモールドと廃棄すべきモールドに分別し、廃棄すべきモールドが発生した場合はこれを廃棄して代わりに新規モールドを導入して、前記使用可能なモールドまたは新規モールドを搬送手段を介してアライメントユニットに投入する検査工程をその中で実施するモールド検査ユニットを設けてもよい。
【0041】
この装置によれば、分離ユニットで基板および組み込み治具から分離されたモールドは、クリーニング工程、離型処理工程、検査工程を経て、再使用可能なモールドは再度、基板との組み込み工程に戻り、検査の結果再使用に耐えないと判断されたモールドは廃棄され、代わりに新規のモールドが基板との組み込み工程に投入されることになる。
【0042】
モールドクリーニングユニットでのクリーニングの具体例としては、例えば以下のような操作を行ってもよい。即ち、モールドクリーニングとして3段階の洗浄を行ってもよい。まず、モールド両面をエアガンでエアーブローし、次に、例えばイソプロピルアルコールのような揮発性溶媒中に漬けて、メガソニック(1MHz)で超音波洗浄を行い、引き上げ乾燥する。最後に、UVオゾン洗浄装置で、ドライ洗浄を行う。
【0043】
離型処理ユニットでは、モールドを離型剤(例えば、ダイキン化成品販売株式会社のオプツールHD−2100)の液中にディップし、引き上げる。その後、例えば、24℃40%RHのCRボックス中で10分乾燥させ、60℃90%RHの恒温恒湿中に30分放置する。最後に、例えば、ダイキン化成品販売株式会社のZV溶剤などのリンス液中にディップし、引き上げることで、リンスするという操作を採用することができる。
【0044】
モールド検査ユニットでは、レジストの残渣やパーティクルがないことを確認する。検査は、例えば、ビジョンサイテック社のMicro-MAX、VMX-3100-Modelを使って画像を取り込み、そのままでは、サーボ部分のパターンも含んでいるので、サーボ部分のパターンを画像処理で取り除き、レジストの残渣やパーティクルの欠陥部分のみを表示させることで検査を行うことができる。
【0045】
また、本発明のインプリント装置は、分離ユニットで基板および組み込み治具から分離された組み込み冶具をクリーニングする工程をその中で行う冶具クリーニングユニット、冶具クリーニングユニットでクリーニングされた冶具の状態を検査して、使用可能な冶具と廃棄すべき冶具に分別し、廃棄すべき冶具が発生した場合はこれを廃棄して代わりに新規冶具を導入して、前記使用可能な冶具または新規冶具を搬送手段を介してアライメントユニットに投入する検査工程をその中で実施する冶具検査ユニットを設けてもよい。この装置によれば、分離ユニットで基板および組み込み治具から分離された治具は、クリーニング工程、離型処理工程、検査工程を経て、再使用可能な治具は再度、基板との組み込み工程に戻り、検査の結果再使用に耐えないと判断された治具は廃棄され、代わりに新規の治具が基板との組み込み工程に投入されることになる。
【0046】
冶具クリーニングユニットでは、例えば、左右にエアーの噴出し口を設けたエアシャワー中で、4、5秒間エアーを吹き付けるエアーブローでクリーニングしてもよい。
【0047】
冶具検査ユニットでは、例えば、ビジョンサイテック社のMicro-MAX、VMX-3100-Modelを使って基板とモールドが接する面板表面の傷やパーティクルがないことを確認する。
【0048】
このような本発明の装置を図4に模式的に示す。
【0049】
このような工程を組合せることにより、モールドや組み込み冶具をリサイクルすることができ、廃棄物を極力押さえ、より安価に製品を作成することができる。
【0050】
なお、本発明のインプリント方法およびインプリント装置は基板の両面にレジストパターンを形成する場合にも適用できるものである。即ち、両面にレジストを塗布した基板を用い、基板の両面にそれぞれモールドをセットして組み込み治具に組み込んで上記工程を実施すれば基板の両面にレジストパターンを形成できることは明らかである。
【実施例】
【0051】
本発明によるインプリント装置をハードディスクの製造に応用した実施形態について詳細に説明するが、本発明はこのような実施形態のみに限らず、本発明の精神に帰属する他の任意の形態にも応用することができる。
【0052】
<実施例1>
本実施例におけるインプリント装置は、図1に示すように、アライメントユニット、プレスユニット、分離ユニットの3ゾーンに分かれており、それぞれのユニット間を組み込み冶具でモールドと基板を対にさせた状態で搬送させてインプリントプロセスを行うものである。
【0053】
まず、アライメントユニットでは、基板およびモールドをカセットから取り出し、ピンに差し込むことで基板とモールドのアライメントを行った。
【0054】
即ち、転写面に凹凸パターンを形成したモールドと、表面にSOGレジストを塗工した基板をおのおの25枚ずつ入れたカセットをアライメントユニットに投入した。
【0055】
アライメントユニットにおいて、基板およびモールドをカセットから取り出し、基板およびモールドの中心部に設けられた穴を組み込み冶具のピンに差し込んでセットすることで、基板とモールドの内径中心を合わせて組み込んだ。ここでは、モールドとして、φ75mmで0.3mm厚さのNi電鋳製モールドを用いた。モールドには、外径φ47mm、内径φ17mmの範囲に、表面にピッチ150nm、パターン深さ50nmの同心円パターンを形成したものを用いた。また、レジストを塗工した基板としては、中心にφ12mmの穴を持ち外径φ48mmである磁気記録媒体の表面に100nm厚さの東京応化製のスピンオングラス(SOG)レジスト、型番T−7をスピンコーターで塗工したものを用いた。
【0056】
この工程では、モールドと基板を対にして組み込んだ組み込み冶具を、10秒毎に次のプレスユニットに搬送することができた。
【0057】
次に、モールドと基板を対にして組み込んだ組み込み冶具をアライメントユニットからプレスユニットへ搬送した。
【0058】
次に、プレス部にて、モールドのパターン面を基板に塗工したレジスト面にプレス圧力20MPaで押し付け、そのまま5秒間保持した。このことで、レジストをモールドのパターンへ流動させながら、基板表面のうねりをモールド表面のうねりに倣わせ、面内で均一なレジストパターンを得るようにした。ここでは、搬送されてからプレス板を押し付けて100MPaに加圧保持し、組み込み冶具を、次の工程へ搬送するまでの一連の工程は10秒以内で行うことができた。
【0059】
次に、組み込み冶具により対にして組み込まれ、プレスされたモールドと基板を分離ユニットへ搬送した。
【0060】
分離ユニットで、それぞれパターン形成面に垂直に保ちながら、基板とモールドを組み込み冶具のピンから引き離すことでモールドを基板から引き離し、組み込み冶具、基板、モールドをそれぞれ分離ユニットから取り出した。
【0061】
このようにして、流れ作業により各工程に割り振られたユニット内で一連のプロセスを行うことで、10秒/枚のスループットでパターニングされた基板を生産することができた。
【0062】
なお、本実施例ではアライメントユニット投入から分離ユニットでの搬出までの一連の作業を、クリーンブース内で行った。これにより、大気中のパーティクルの混入を少なくすることができた。
【0063】
<実施例2>
実施例1では、モールドのパターンは、外径φ47mm、内径φ17mmの範囲に、表面にピッチ100nm、パターン深さ50nmの同心円パターンを形成したものを用いたが、それに対して、実施例2ではパターンピッチ100nm、パターン深さ60nmのモールドを用いた。基板、レジストも実施例1で用いたと同様のものを用いた。
【0064】
図1に示す構成の装置を用いて実施例1と同様にしてインプリントしたところ、形成したレジストパターンはパターン高さが45nmしか形成できていなかった。そこで、プレス時間を12秒にしたところ、レジストパターンのパターン高さ60nmで形成することができた。しかしながら、この場合、プレス部での時間が10秒以上になってしまうため、全体のスループットを落とすこととなった。
【0065】
そこで、本実施例では、図2のように、プレスユニットを2ユニット並列に設けた装置構成とし、アライメントユニットから出たモールド・基板・組み込み治具のセットを並列に設けたプレスユニットに交互に搬送してプレスを行うことで、全体のスループットを落とすことなく、所望のパターン高さのインプリント品を得ることができた。
【0066】
<実施例3>
実施例1では、モールドのパターンは、外径φ47mm、内径φ17mmの範囲に、表面にピッチ100nm、パターン深さ50nmの同心円パターンを形成したものを用いたのに対して、実施例3ではパターンピッチ60nm、パターン深さ40nmのモールドを用いた。基板、レジストも実施例1で用いたと同様のものを用いた。
【0067】
モールド以外は同じ条件で実施例1と同様にインプリントした場合には、形成したレジストパターンの各所にボイド欠陥が発生してしまった。
【0068】
ボイド欠陥発生を防止するため、図1に示す装置構成において、プレスユニット内で減圧および大気開放を行うことを試みたが、大気圧から500Paの真空にするのに約5秒かかるため、プレスユニットでの工程時間が10秒以上になってしまい全体のスループットを遅らせてしまう結果になった。
【0069】
そこで、本実施例では、図3に示すように、プレスユニットの前に減圧ユニット、プレスユニットの後に大気開放ユニットを設けた。具体的には、基板とモールドを組み込んだ組み込み冶具を減圧ユニット中を搬送し、減圧ユニット内を真空ポンプにより、約5秒で大気圧から500Paに減圧した。次に、あらかじめ500Paの真空にしてあるプレス部に、大気開放することなく、基板とモールドを組み込んだ組み込み冶具をプレスユニットに搬送した。この状態、即ち、500Paの真空下でプレスを行った。次に、大気開放することなく、基板とモールドを組み込んだ組み込み冶具を大気開放ユニットに搬送した。プレスユニットとの間を遮断した後、大気開放ユニットで、大気圧に戻した。
【0070】
こうすることで、プレスを500Paの真空下で行うことにより、形成したレジストパターンにおいてボイド欠陥をなくすことができた。
【0071】
このような装置構成を用いて、各工程に割り振られたユニットで流れ作業で一連のプロセスを行うことにより、10秒/枚のスループットでパターニングされた基板を生産することができた。
【0072】
<実施例4>
従来のモールド、組み込み冶具を固定したインプリント装置の問題点を解消する装置として、実施例1と同様にしてインプリントを行うとともに、本実施例においては、図4に示すように、分離ユニットで分離されたモールドをモールドクリーニングユニット内に搬送し、モールド両面をエアガンでエアーブローし、次に、イソプロピルアルコール中に漬けて、メガソニック(1MHz)で超音波洗浄を行い、引き上げ乾燥し、最後に、UVオゾン洗浄装置で、ドライ洗浄を行った。次いで、離型処理ユニットとしてダイキン化成品販売株式会社の量産用ナノインコーターNIM-0703typeSAを用い、モールドクリーニングユニットでクリーニングされたモールドを離型処理ユニット内に搬送し、このモールドを離型剤(ダイキン化成品販売株式会社のオプツールHD−2100)の液中にディップし、引き上げた。その後、24℃40%RHのCRボックス中で10分乾燥させ、60℃90%RHの恒温恒湿中に30分放置した後、最後に、ダイキン化成品販売株式会社のZV溶剤中にディップし、引き上げることで、リンスし、モールド表面に離型膜を形成した。
【0073】
離型処理ユニットで離型処理を終わったモールドをモールド検査ユニットに搬送し、モールドの状態をビジョンサイテック社のMicro-MAX、VMX-3100-Modelを使って検査して、使用可能なモールドと廃棄すべきモールドに分別し、廃棄すべきモールドが発生した場合はこれを廃棄して代わりに新規モールドを導入して、前記使用可能なモールドまたは新規モールドを搬送手段を介してアライメントユニットに投入した。さらに、分離ユニットで分離された組み込み冶具を冶具クリーニングユニット二搬送し、左右にエアーの噴出し口を設けたエアシャワー中で、4、5秒間エアーを吹き付けるエアーブローによりクリーニングした。冶具クリーニングユニットでクリーニングされた冶具を冶具検査ユニットに搬送し、冶具の状態を検査して、使用可能な冶具と廃棄すべき冶具に分別し、廃棄すべき冶具が発生した場合はこれを廃棄して代わりに新規冶具を導入して、前記使用可能な冶具または新規冶具を搬送手段を介してアライメントユニットに投入した。
【0074】
モールド、レジストを塗布した基板、組み込み治具は実施例1で用いたと同様のものを用い、アライメントユニットから分離ユニットまでの操作は実施例1と同様にして流れ作業により各工程に割り振られたユニット内で一連のプロセスを行うことで、10秒/枚のスループットでパターニングされた基板を生産することができた。モールドは分離からアライメントユニットへの投入までトータル1時間でリサイクルできるので、モールド25枚入りカセットを10カセット処理できる恒温恒湿槽を3台並列処理することで、また、組み込み治具は分離からアライメントユニットへの投入までトータル30秒でリサイクルできるので、組み込み治具を3列並列に設けることにより、所定時間経過後はいずれのルートも流れ作業で実施できた。
【0075】
図4に示す装置を用いてインプリントするとともに、1回ずつモールドおよび組み込み治具をクリーニングおよび検査してリサイクルすることで、上記のような従来技術で生じる欠陥を未然に防ぐことができた。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施例1の装置構成を示す図である。
【図2】本発明の実施例2の装置構成を示す図である。
【図3】本発明の実施例3の装置構成を示す図である。
【図4】本発明の実施例4の装置構成を示す図である。
【図5】ローダーユニットにおける基板とモールドの交互重ね合わせを説明する図である。
【図6】アライメント装置の一例を示す図である。
【図7】アライメントピンに基板とモールドをセットした状態を示す図である。
【図8】プレス機の中に設置された精密金型((a)プレス前の状態および(b)プレス後、固定アームでロックされた状態)を示す側面図である。
【図9】精密金型に基板とモールドを組み込んだ部分の拡大側面図である。
【図10】離型ユニットにおける離型の手順を示す図である。
【図11】基板/モールドの外周把持具を金型上下面板に取り付けた状態を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント方法およびその装置に関する。インプリント方法は、モールドの成形面に形成された非常に微細な凹凸を基板に塗布された樹脂に押し付け、成形面の形状を樹脂に転写する方法である。
【背景技術】
【0002】
近年、ハードディスクドライブは大容量化の傾向にあり、磁気記録媒体の高記録密度化が進んでいる。記録密度の増加に伴うトラック密度の上昇に伴い、データ書き込み時、ヘッドギャップの側面から生じる漏れ磁界により、隣接するトラック間の領域にサイドフリンジと呼称される余計な記録がなされ、雑音の原因となって再生信号のS/Nを低下させることとなる。
【0003】
このような不具合を回避するため、例えば特許文献1では隣接する記録トラックの間に溝を設けたディスクリートトラック方式の磁気記録媒体を提案している。このディスクリートトラック方式の磁気記録媒体は、隣接するトラック間を分離したものであり、上述したサイドフリンジの問題を回避することができる。一方、さらなる高記録密度を企図してディスク上にそれぞれが1bitとなるようなドットを形成するようなパターンドメディアも提案されている。
【0004】
ディスクリートトラック媒体およびパターンドメディア共、ディスク上に微細パターンを形成するものであり、これらのパターニングはインプリント法によって行われることが多い。このインプリント法は、微細パターンが成形面に形成されたモールドを原型とし、樹脂を塗布した基板の表面に微細パターンの転写を行うものであり、熱可塑性樹脂を用いた熱インプリント法と、光硬化型樹脂を用いた光インプリント法とが知られている。特に、ナノメートル単位の微細パターンを形成するためのインプリントは、ナノインプリントとも呼称されている。
【0005】
熱インプリント法においては、一般的に、次のようなプロセスでレジストパターンが形成される。まずステージ上に基板を載置し、その表面に熱可塑性樹脂や熱硬化型樹脂を塗布しておく。次に基板および成形パターンが形成されたモールドをガラス転移温度(Tg)以上に加熱して、レジストを塗布した基板の表面にモールドを所定の荷重にて押し付け、この状態にて所定時間保持し、モールドのパターンを基板のレジストに転写する。その後、レジストのTgより低い温度までモールドおよび基板を冷却し、モールドを基板から離型する。このようにして、モールドの成形面に形成された凹形状に対応した凸形状が熱可塑性樹脂や熱硬化型樹脂に転写された基板をステージから取り出す。
【0006】
特許文献3には、インプリント装置を基板設置ユニット、樹脂塗布ユニット、被転写体とスタンパの位置合わせ、加圧、剥離を行う加工ユニットの3つのユニットで構成する例を示している。この例では、搬送ロボットを中央に置き、前記3つのユニットは搬送ロボットを中心とした円周の位置に配置している。
【0007】
また、最近、SOG(spin-on-glass)などを用いた室温ナノインプリントと呼ばれる方法もある(例えば、特許文献2参照)。この方法では、室温で溶剤が揮発し硬化する前に型押しし、硬化後に型を取り外すことで、モールドのパターンをレジストに転写することができる。そのため、加熱−冷却工程が不要で、作業性の向上がはかれる。
【0008】
【特許文献1】特開2005−56535号公報
【特許文献2】特開2005−108351号公報
【特許文献3】特開2006−326927号公報
【特許文献4】特開2005−286222号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
現在、一般的に知られたナノインプリントは、一つの装置内の同一個所で、モールドのパターンを基板に所定位置に合わせるアライメント工程、モールドおよび基板を加熱する加熱工程、モールドのパターン面を基板に塗工したレジスト面に押し付けるプレス工程、モールドおよび基板を冷却する冷却工程、モールドを基板から引き離す離型工程からなるナノインプリント工程の全てを行っている。
【0010】
すなわち、これまでは、電子ビーム露光で作製した高価な原版からなるモールドを用いていたこともあり、1つのモールドを用いて、基板1枚ずつに一連のナノインプリント工程を施してきたともいえる。
【0011】
しかしながら、ディスクリートトラック媒体およびパターンドメディアにおいては、1時間あたり300枚以上のタクトタイムが要求されており、一つの装置内で一連のナノインプリント工程を全て行っていては間に合わない。
【0012】
特許文献3のインプリント装置においても、基板設置ユニットで基板を設置し、基板を樹脂塗布ユニットに移して感光性樹脂を塗布し、これを加工ユニットに移して被転写体とスタンパの位置合わせ、加圧、剥離を行い、再度基板設置ユニットに移して加工済みの基板を取り出す装置となっているが、搬送ロボットを中心とした円周の位置に各ユニットが配置され、この搬送ロボットで各ユニット間を搬送しているため、このユニットのいずれかに基板がある間は他の基板を投入することができないものであり、一つの装置内で一連のナノインプリント工程を全て行っているのと同じである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
近年、我々は、非常に高価な原版となるモールドから、安価に多数の複製モールドを作製することができるようになってきた。(例えば、特許文献4参照。)その複製モールドを多数使うことで、モールドと基板を対にして工程ごとに流れ作業で行うことができるようになった。
【0014】
本発明はこれらの状況に鑑み、なされたもので、本発明の目的は、効率よくナノインプリント加工を行い得る方法およびその装置を提供することにある。
【0015】
すなわち、本発明のインプリント方法は、転写面に凹凸パターンを形成したモールドを用いて、インプリント用のレジストを塗工した基板のレジスト面に所定のパターンを形成する室温インプリント方法であり、
前記レジストを塗工した基板とモールドを、基板のレジスト面とモールドの凹凸面が重なるように組み込み冶具中にセットするアライメント工程、モールドのパターン面を基板のレジスト面に押し付けるプレス工程、モールドを基板から引き離し、基板、モールドおよび組み込み冶具に分離する分離工程を有し、前記各工程が、1つの工程をその中で実施する独立ユニット内にて実施され、アライメント工程から分離工程まではモールドと基板とを組み込み治具で対にしてユニット間を搬送する搬送工程を各ユニット間に設けることを特徴とする。
【0016】
また、本発明のインプリント装置は、上記インプリント方法を実施するための装置であって、前記レジストを塗工した基板とモールドを、基板のレジスト面とモールドの凹凸面が重なるように組み込み冶具中にセットするアライメント工程をその中で実施するアライメントユニット、モールドのパターン面を基板のレジスト面に押し付けるプレス工程をその中で実施するプレスユニット、モールドを基板から引き離し、基板、モールドおよび組み込み冶具に分離する分離工程をその中で実施する分離ユニットを少なくとも有し、前記各ユニット間をモールドと基板とを組み込み冶具で対にして搬送する搬送手段を備えてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ディスクリートトラック媒体およびパターンドメディアなどの作製において、一連のインプリント工程を流れ作業的に行ってゆくことにより、早いタクトタイムで効率よくインプリント加工を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
まず、本発明のインプリント方法について説明する。本発明のインプリント方法においては、転写面に凹凸パターンを形成したモールドと、室温インプリント用レジストを塗工した基板とを用い、基板のレジスト面に所定のパターンを形成する。このモールドは高価な原版となるモールドそのものを用いるのではなく、この原版から複製した多数の複製モールドを用いる。
【0019】
本発明のインプリント方法は、モールドのパターンを基板の所定位置に合わせるアライメント工程、モールドのパターン面を基板に塗工したレジスト面に押付けるプレス工程、モールドを基板から引き離し、基板、モールドおよび組み込み冶具に分離する分離工程を少なくとも有する。
【0020】
本発明においてはレジストとして室温インプリント用レジストを用い、室温においてプレスを行う室温インプリント法を採用している。ここで室温とは、0℃以上、50℃以下の温度であることを意味する。この室温インプリント用レジストとしては、ゾル−ゲル系材料が用いられ、シロキサンを溶媒に溶かしたSOG(spin-on-glass)が好ましく用いられる。SOGに用いられるシロキサンとしてはシリカガラス、アルキルシロキサンポリマー、アルキルシルセスキオキサンポリマー、水素化シルセスキオキサンポリマー、水素化アルキルシルセスキオキサンポリマーを挙げることができ、溶媒としてはメタノール、エタノールなどのアルコール類、アセチルアセトンなどのケトン類、低級アルキルエステルなどのエステル類を挙げることができる。
【0021】
このインプリント方法においては、インプリント方法における各工程が、1つの工程をその中で実施する独立ユニット内にて実施される。また、アライメント工程から分離工程まではモールドと基板とを組み込み治具で対にしてユニット間を搬送する搬送工程を各ユニット間に設ける。ユニット数が3つ以上で搬送工程が複数ある場合、それぞれの搬送工程は独立に駆動できる。これにより、各ユニットでの加工所要時間を考慮して次々とモールドと基板をユニットに送り込むことで流れ作業によりインプリントを行うことができるので、早いタクトタイムで効率よくインプリント加工を行うことができる。
【0022】
また、本発明のインプリント方法においては、プレス工程を減圧下で行うことが好ましい。プレス工程を減圧下で行うことは、プレス工程の前に減圧工程を設け、プレス工程の後に大気開放工程を設けることで達成できる。プレス時の気圧は10〜5000Pa、より好ましくは100〜1000Paとすることが好ましい。減圧にすることで溶媒を揮散させることができ、ボイド欠陥をなくすことができる。
【0023】
次に、図面を参照しながら本発明のインプリント装置につき説明する。
【0024】
まず、本発明の装置構成が図1に示す構成である場合を例にとり、各ユニットの構成につき説明する。
【0025】
図1は本発明の装置構成の一例を示す模式図である。
【0026】
図1の装置構成では、室温インプリント用のレジストを塗工した基板とモールドを、基板のレジスト面とモールドの凹凸面が重なるように組み込み冶具中にセットするアライメント工程をその中で実施するアライメントユニット、基板のレジスト面に所定のパターン形状を形作るためにモールドのパターン面を基板のレジスト面に押し付けるプレス工程を実施するためのプレスユニット、モールドを基板から引き離し、基板、モールドおよび組み込み冶具に分離する分離工程をその中で実施する分離ユニットが設けられており、アライメントユニットとプレスユニットの間、プレスユニットと分離ユニットの間にはそれぞれ搬送手段が設けられている。アライメントユニットに室温インプリント用レジストを塗工した基板、基板のレジスト面に所定のパターン形状を形作るためのモールド、基板のレジスト面とモールドの凹凸面が重なるように組み込むための組み込み冶具を投入する手段がアライメントユニットに付属して設けられており、分離ユニットからレジスト面にパターンが形成された基板、前記モールドおよび前記組み込み治具を別個に取り出す手段が分離ユニットに付属して設けられている。
【0027】
アライメントユニットにおける装置構成の一例を図6に示す。このアライメント装置は基板及びモールドを把持する外周把持ハンドと、アライメントピンを備える組み込み治具と、外周把持ハンドで把持された基板とモールドを組み込み冶具中の指定の位置にまで移動させるスライダーと、基板、モールドをアライメントピンに差し込むための上下稼動シリンダーと、基板、モールドがアライメントピンにセットされたことを確認するためのセンサーとを備える。アライメントユニットではカセットから取り出した基板を、外周把持ハンドで、スライダーを使って精密金型(組み込み冶具)中の指定位置に移動させ、上下稼動シリンダーで基板を下げてアライメントピンに差し込む。その後、ハンドを上げ、ハンドを戻す。次に反対側から同じようにしてモールドを組み込む。基板、モールドが、アライメントピンに図7に示すように正しくセットされたかどうかは、例えば、光反射型のセンサーで確認する。
【0028】
プレスユニットは、図8に示すようにプレス機と、プレス機の中にセットされる精密金型(ダイセット)とプレス後に精密金型をロックする固定アームを備えており、精密金型は斜めにプレスされることがないように、上下面のプレス台座にガイドピンとガイドブッシュが組み込まれている。
【0029】
また、上面のプレス台座およびガイドブッシュボードの間にはその中央部(基板、モールドの中心部の穴に対応する位置)にばねが設けられている。プレスユニットに導入されたモールドと基板のセットは基板とモールドの外周把持具をつけたまま、精密金型の下面のプレス台座上の金型下面板と金型上面板の間に装着され(図8(a))、プレス機により0.1〜10MPa程度の圧力が加えられる。プレス機により圧力を加えた状態で精密金型に固定アームを取り付け、固定アームのねじを締め付けることで固定アームで精密金型をロックした後(図8(b))、溶媒を揮散させてパターンをインプリントさせ、分離ユニットに搬送する。精密金型の上下面のプレス台座にガイドピンとガイドブッシュを組み込むことによりパターン面に垂直に加圧するのでモールドの微細パターンを破壊することなく、レジストに微細パターンを正確に転写することができる。
【0030】
分離ユニットにおける分離の手順を図10に示す。分離ユニットでは、(a)精密金型の固定アームのねじを緩め、(b)固定アームを取り外す。次いで、(c)モールドの外周把持具を金型上面板に、基板の外周把持具を金型下面板に取り付ける。その状態を図11に示す。次いで、図10に示すように、(d)金型の上面板を持ち上げて、(e)モールドと基板を剥離する。金型上面板はその上面がガイドブッシュボードの下面に固定されており、ガイドブッシュボードがガイドピンにより上下方向にしか動けないため、モールドと基板はパターン面に垂直に離型する。次にモールドと基板の外周把持具をそれぞれ精密金型から取り外し、外周把持具から基板とモールドをそれぞれ取り外し、取り出す。精密金型はプレスユニットに搬送される。
【0031】
搬送手段としてはコンベアベルト、台車など種々の方式の手段を用いることができる。搬送は、先に述べた説明から明らかなように外周把持具あるいは精密金型により固定された状態でおこなわれる。
【0032】
この装置構成を用いたインプリントは、以下のようにして行われる。まず、レジストを塗工した基板、モールド、組み込み冶具をアライメントユニットに投入し、組み込み冶具に基板とモールドを組み合わせ、モールドと基板のアライメントも行う。なお、両面にパターンを形成する場合は、基板の表裏2面にモールドを組み込んでもよい。次いで、基板とモールドを組み込んだ組み込み冶具を、プレスユニットに搬送し、モールドを基板に所定の圧力で押し付ける。次いで、基板とモールドを組み込んだ組み込み冶具を、分離ユニットに搬送し、モールドを基板から引き離すとともに組み込み冶具から取り外し、レジストにパターニングされた基板と、モールド、組み込み冶具を取り出す。
【0033】
アライメントユニットから組み込み治具に組み込まれた基板とモールドをプレスユニットに搬送した後のアライメントユニットには、それぞれのユニットでの工程処理の所要時間を考慮した適切なタイミングで次の基板とモールド、組み込み治具が投入される。以下、基板とモールドが次の工程に進むにつれ、あいたユニットには同様にして次の基板とモールドが搬送されてゆき、モールドと基板を対にして工程ごとに流れ作業で行われる。
【0034】
また、装置は大掛かりになるが、アライメントユニット投入から分離ユニットでの搬出までの一連の作業を、一連の装置内でクリーンブース下で行うことで大気中のパーティクルの混入を少なくすることができ、パーティクルに伴うパターンの欠陥、パーティクル噛み込みによるモールドスタンパーの破損を防ぐことができる。
【0035】
また、本発明のインプリント装置は、各ユニットのタクトタイムに応じて、タクトタイムの長いユニットを2つ以上並列して設けてもよい。このような装置構成の1例を図2に示す。ここでは、プレス工程が、組み込み工程や分離工程に比べて2倍程度の時間がかかる場合の例として、装置構成を示したものであり、プレスユニットを2台並列に並べたものを示す。この例で説明すると、アライメントが終了して組み込みユニットに組み込まれたモールドと基板がアライメントユニットからプレスユニットに搬送され、そこで、プレスが行われる。一方、アライメントユニットには次のモールドと基板のセットが送り込まれアライメントが行われる。このアライメントが終了してもアライメントユニットよりプレスユニットのタクトタイムが長いので、プレスユニットでの加工が終了していない。そこでアライメントが終了して組み込みユニットに組み込まれたモールドと基板のセットをもう一方のプレスユニットに送り込んで加工することにより最も長いプレスユニットのタクトタイムに縛られることなくより効率的にインプリント加工を行うことができる。この並列設置型のインプリント装置としては、図2に示す例に限定されるものではなく、各工程の必要時間に応じて、各種の組合せをすることができる。
【0036】
本発明のインプリント装置は、図3に示すように、アライメントユニットとプレスユニットの間に減圧ユニットを、プレスユニットと分離ユニットの間に大気開放ユニットを設けてなることが好ましい。
【0037】
一般的に転写したパターン形状においてボイド欠陥が発生する場合は、真空下でプレスすることが効果的である。ボイド欠陥の発生のしやすさは、レジストの種類、用いる溶剤の種類、プレス時の圧力、パターンの形状などで異なるが、一般的には真空下でプレスすることで、ボイド発生による欠陥を低減することができる。
【0038】
ただし、真空下でプレスするためには、真空引きおよび大気開放の為の時間が必要である。このような場合、これまでの装置では、プレス部で真空引きや大気開放を行うものであった。そのための工程時間が必要であり、量産化には不向きであった。それに対して、図3のように、減圧ユニットおよび大気開放ユニットを設けることにより、全体のタクトタイムを損なうことなく、ボイド欠陥の少ないものを得ることができる。また、大気開放にかかる時間によっては、大気開放ユニットはなくてもかまわない。
【0039】
また、従来の方法では、ナノインプリント装置の中に、モールド、組み込み冶具が固定されており、この固定されたモールドにレジストを塗布した基板をセットして組み込み治具で固定してナノインプリントを行っていた。そして、モールドや組み込み治具が汚れた場合、モールドや組み込み治具をナノインプリント装置から取り外してクリーニングする必要があり、取り外しおよびクリーニング後の取り付けに時間がかかるために頻繁にクリーニングすることができなかった。そのため、レジストが貼りついた状態やパーティクルをかみこんだモールドを使い続けたり、内径を合わせる為のピンが磨耗したり、かみ合わせの悪くなった組み込み冶具を使い続けることがあった。
【0040】
このような問題を解消するために、本発明のインプリント装置は、分離ユニットで基板および組み込み治具から分離されたモールドをクリーニングする工程をその中で行うモールドクリーニングユニット、モールドクリーニングユニットでクリーニングされたモールドの表面に離型膜を形成する離型処理工程をその中で実施する離型処理ユニット、離型処理ユニットで離型処理を終わったモールドの状態を検査して、使用可能なモールドと廃棄すべきモールドに分別し、廃棄すべきモールドが発生した場合はこれを廃棄して代わりに新規モールドを導入して、前記使用可能なモールドまたは新規モールドを搬送手段を介してアライメントユニットに投入する検査工程をその中で実施するモールド検査ユニットを設けてもよい。
【0041】
この装置によれば、分離ユニットで基板および組み込み治具から分離されたモールドは、クリーニング工程、離型処理工程、検査工程を経て、再使用可能なモールドは再度、基板との組み込み工程に戻り、検査の結果再使用に耐えないと判断されたモールドは廃棄され、代わりに新規のモールドが基板との組み込み工程に投入されることになる。
【0042】
モールドクリーニングユニットでのクリーニングの具体例としては、例えば以下のような操作を行ってもよい。即ち、モールドクリーニングとして3段階の洗浄を行ってもよい。まず、モールド両面をエアガンでエアーブローし、次に、例えばイソプロピルアルコールのような揮発性溶媒中に漬けて、メガソニック(1MHz)で超音波洗浄を行い、引き上げ乾燥する。最後に、UVオゾン洗浄装置で、ドライ洗浄を行う。
【0043】
離型処理ユニットでは、モールドを離型剤(例えば、ダイキン化成品販売株式会社のオプツールHD−2100)の液中にディップし、引き上げる。その後、例えば、24℃40%RHのCRボックス中で10分乾燥させ、60℃90%RHの恒温恒湿中に30分放置する。最後に、例えば、ダイキン化成品販売株式会社のZV溶剤などのリンス液中にディップし、引き上げることで、リンスするという操作を採用することができる。
【0044】
モールド検査ユニットでは、レジストの残渣やパーティクルがないことを確認する。検査は、例えば、ビジョンサイテック社のMicro-MAX、VMX-3100-Modelを使って画像を取り込み、そのままでは、サーボ部分のパターンも含んでいるので、サーボ部分のパターンを画像処理で取り除き、レジストの残渣やパーティクルの欠陥部分のみを表示させることで検査を行うことができる。
【0045】
また、本発明のインプリント装置は、分離ユニットで基板および組み込み治具から分離された組み込み冶具をクリーニングする工程をその中で行う冶具クリーニングユニット、冶具クリーニングユニットでクリーニングされた冶具の状態を検査して、使用可能な冶具と廃棄すべき冶具に分別し、廃棄すべき冶具が発生した場合はこれを廃棄して代わりに新規冶具を導入して、前記使用可能な冶具または新規冶具を搬送手段を介してアライメントユニットに投入する検査工程をその中で実施する冶具検査ユニットを設けてもよい。この装置によれば、分離ユニットで基板および組み込み治具から分離された治具は、クリーニング工程、離型処理工程、検査工程を経て、再使用可能な治具は再度、基板との組み込み工程に戻り、検査の結果再使用に耐えないと判断された治具は廃棄され、代わりに新規の治具が基板との組み込み工程に投入されることになる。
【0046】
冶具クリーニングユニットでは、例えば、左右にエアーの噴出し口を設けたエアシャワー中で、4、5秒間エアーを吹き付けるエアーブローでクリーニングしてもよい。
【0047】
冶具検査ユニットでは、例えば、ビジョンサイテック社のMicro-MAX、VMX-3100-Modelを使って基板とモールドが接する面板表面の傷やパーティクルがないことを確認する。
【0048】
このような本発明の装置を図4に模式的に示す。
【0049】
このような工程を組合せることにより、モールドや組み込み冶具をリサイクルすることができ、廃棄物を極力押さえ、より安価に製品を作成することができる。
【0050】
なお、本発明のインプリント方法およびインプリント装置は基板の両面にレジストパターンを形成する場合にも適用できるものである。即ち、両面にレジストを塗布した基板を用い、基板の両面にそれぞれモールドをセットして組み込み治具に組み込んで上記工程を実施すれば基板の両面にレジストパターンを形成できることは明らかである。
【実施例】
【0051】
本発明によるインプリント装置をハードディスクの製造に応用した実施形態について詳細に説明するが、本発明はこのような実施形態のみに限らず、本発明の精神に帰属する他の任意の形態にも応用することができる。
【0052】
<実施例1>
本実施例におけるインプリント装置は、図1に示すように、アライメントユニット、プレスユニット、分離ユニットの3ゾーンに分かれており、それぞれのユニット間を組み込み冶具でモールドと基板を対にさせた状態で搬送させてインプリントプロセスを行うものである。
【0053】
まず、アライメントユニットでは、基板およびモールドをカセットから取り出し、ピンに差し込むことで基板とモールドのアライメントを行った。
【0054】
即ち、転写面に凹凸パターンを形成したモールドと、表面にSOGレジストを塗工した基板をおのおの25枚ずつ入れたカセットをアライメントユニットに投入した。
【0055】
アライメントユニットにおいて、基板およびモールドをカセットから取り出し、基板およびモールドの中心部に設けられた穴を組み込み冶具のピンに差し込んでセットすることで、基板とモールドの内径中心を合わせて組み込んだ。ここでは、モールドとして、φ75mmで0.3mm厚さのNi電鋳製モールドを用いた。モールドには、外径φ47mm、内径φ17mmの範囲に、表面にピッチ150nm、パターン深さ50nmの同心円パターンを形成したものを用いた。また、レジストを塗工した基板としては、中心にφ12mmの穴を持ち外径φ48mmである磁気記録媒体の表面に100nm厚さの東京応化製のスピンオングラス(SOG)レジスト、型番T−7をスピンコーターで塗工したものを用いた。
【0056】
この工程では、モールドと基板を対にして組み込んだ組み込み冶具を、10秒毎に次のプレスユニットに搬送することができた。
【0057】
次に、モールドと基板を対にして組み込んだ組み込み冶具をアライメントユニットからプレスユニットへ搬送した。
【0058】
次に、プレス部にて、モールドのパターン面を基板に塗工したレジスト面にプレス圧力20MPaで押し付け、そのまま5秒間保持した。このことで、レジストをモールドのパターンへ流動させながら、基板表面のうねりをモールド表面のうねりに倣わせ、面内で均一なレジストパターンを得るようにした。ここでは、搬送されてからプレス板を押し付けて100MPaに加圧保持し、組み込み冶具を、次の工程へ搬送するまでの一連の工程は10秒以内で行うことができた。
【0059】
次に、組み込み冶具により対にして組み込まれ、プレスされたモールドと基板を分離ユニットへ搬送した。
【0060】
分離ユニットで、それぞれパターン形成面に垂直に保ちながら、基板とモールドを組み込み冶具のピンから引き離すことでモールドを基板から引き離し、組み込み冶具、基板、モールドをそれぞれ分離ユニットから取り出した。
【0061】
このようにして、流れ作業により各工程に割り振られたユニット内で一連のプロセスを行うことで、10秒/枚のスループットでパターニングされた基板を生産することができた。
【0062】
なお、本実施例ではアライメントユニット投入から分離ユニットでの搬出までの一連の作業を、クリーンブース内で行った。これにより、大気中のパーティクルの混入を少なくすることができた。
【0063】
<実施例2>
実施例1では、モールドのパターンは、外径φ47mm、内径φ17mmの範囲に、表面にピッチ100nm、パターン深さ50nmの同心円パターンを形成したものを用いたが、それに対して、実施例2ではパターンピッチ100nm、パターン深さ60nmのモールドを用いた。基板、レジストも実施例1で用いたと同様のものを用いた。
【0064】
図1に示す構成の装置を用いて実施例1と同様にしてインプリントしたところ、形成したレジストパターンはパターン高さが45nmしか形成できていなかった。そこで、プレス時間を12秒にしたところ、レジストパターンのパターン高さ60nmで形成することができた。しかしながら、この場合、プレス部での時間が10秒以上になってしまうため、全体のスループットを落とすこととなった。
【0065】
そこで、本実施例では、図2のように、プレスユニットを2ユニット並列に設けた装置構成とし、アライメントユニットから出たモールド・基板・組み込み治具のセットを並列に設けたプレスユニットに交互に搬送してプレスを行うことで、全体のスループットを落とすことなく、所望のパターン高さのインプリント品を得ることができた。
【0066】
<実施例3>
実施例1では、モールドのパターンは、外径φ47mm、内径φ17mmの範囲に、表面にピッチ100nm、パターン深さ50nmの同心円パターンを形成したものを用いたのに対して、実施例3ではパターンピッチ60nm、パターン深さ40nmのモールドを用いた。基板、レジストも実施例1で用いたと同様のものを用いた。
【0067】
モールド以外は同じ条件で実施例1と同様にインプリントした場合には、形成したレジストパターンの各所にボイド欠陥が発生してしまった。
【0068】
ボイド欠陥発生を防止するため、図1に示す装置構成において、プレスユニット内で減圧および大気開放を行うことを試みたが、大気圧から500Paの真空にするのに約5秒かかるため、プレスユニットでの工程時間が10秒以上になってしまい全体のスループットを遅らせてしまう結果になった。
【0069】
そこで、本実施例では、図3に示すように、プレスユニットの前に減圧ユニット、プレスユニットの後に大気開放ユニットを設けた。具体的には、基板とモールドを組み込んだ組み込み冶具を減圧ユニット中を搬送し、減圧ユニット内を真空ポンプにより、約5秒で大気圧から500Paに減圧した。次に、あらかじめ500Paの真空にしてあるプレス部に、大気開放することなく、基板とモールドを組み込んだ組み込み冶具をプレスユニットに搬送した。この状態、即ち、500Paの真空下でプレスを行った。次に、大気開放することなく、基板とモールドを組み込んだ組み込み冶具を大気開放ユニットに搬送した。プレスユニットとの間を遮断した後、大気開放ユニットで、大気圧に戻した。
【0070】
こうすることで、プレスを500Paの真空下で行うことにより、形成したレジストパターンにおいてボイド欠陥をなくすことができた。
【0071】
このような装置構成を用いて、各工程に割り振られたユニットで流れ作業で一連のプロセスを行うことにより、10秒/枚のスループットでパターニングされた基板を生産することができた。
【0072】
<実施例4>
従来のモールド、組み込み冶具を固定したインプリント装置の問題点を解消する装置として、実施例1と同様にしてインプリントを行うとともに、本実施例においては、図4に示すように、分離ユニットで分離されたモールドをモールドクリーニングユニット内に搬送し、モールド両面をエアガンでエアーブローし、次に、イソプロピルアルコール中に漬けて、メガソニック(1MHz)で超音波洗浄を行い、引き上げ乾燥し、最後に、UVオゾン洗浄装置で、ドライ洗浄を行った。次いで、離型処理ユニットとしてダイキン化成品販売株式会社の量産用ナノインコーターNIM-0703typeSAを用い、モールドクリーニングユニットでクリーニングされたモールドを離型処理ユニット内に搬送し、このモールドを離型剤(ダイキン化成品販売株式会社のオプツールHD−2100)の液中にディップし、引き上げた。その後、24℃40%RHのCRボックス中で10分乾燥させ、60℃90%RHの恒温恒湿中に30分放置した後、最後に、ダイキン化成品販売株式会社のZV溶剤中にディップし、引き上げることで、リンスし、モールド表面に離型膜を形成した。
【0073】
離型処理ユニットで離型処理を終わったモールドをモールド検査ユニットに搬送し、モールドの状態をビジョンサイテック社のMicro-MAX、VMX-3100-Modelを使って検査して、使用可能なモールドと廃棄すべきモールドに分別し、廃棄すべきモールドが発生した場合はこれを廃棄して代わりに新規モールドを導入して、前記使用可能なモールドまたは新規モールドを搬送手段を介してアライメントユニットに投入した。さらに、分離ユニットで分離された組み込み冶具を冶具クリーニングユニット二搬送し、左右にエアーの噴出し口を設けたエアシャワー中で、4、5秒間エアーを吹き付けるエアーブローによりクリーニングした。冶具クリーニングユニットでクリーニングされた冶具を冶具検査ユニットに搬送し、冶具の状態を検査して、使用可能な冶具と廃棄すべき冶具に分別し、廃棄すべき冶具が発生した場合はこれを廃棄して代わりに新規冶具を導入して、前記使用可能な冶具または新規冶具を搬送手段を介してアライメントユニットに投入した。
【0074】
モールド、レジストを塗布した基板、組み込み治具は実施例1で用いたと同様のものを用い、アライメントユニットから分離ユニットまでの操作は実施例1と同様にして流れ作業により各工程に割り振られたユニット内で一連のプロセスを行うことで、10秒/枚のスループットでパターニングされた基板を生産することができた。モールドは分離からアライメントユニットへの投入までトータル1時間でリサイクルできるので、モールド25枚入りカセットを10カセット処理できる恒温恒湿槽を3台並列処理することで、また、組み込み治具は分離からアライメントユニットへの投入までトータル30秒でリサイクルできるので、組み込み治具を3列並列に設けることにより、所定時間経過後はいずれのルートも流れ作業で実施できた。
【0075】
図4に示す装置を用いてインプリントするとともに、1回ずつモールドおよび組み込み治具をクリーニングおよび検査してリサイクルすることで、上記のような従来技術で生じる欠陥を未然に防ぐことができた。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施例1の装置構成を示す図である。
【図2】本発明の実施例2の装置構成を示す図である。
【図3】本発明の実施例3の装置構成を示す図である。
【図4】本発明の実施例4の装置構成を示す図である。
【図5】ローダーユニットにおける基板とモールドの交互重ね合わせを説明する図である。
【図6】アライメント装置の一例を示す図である。
【図7】アライメントピンに基板とモールドをセットした状態を示す図である。
【図8】プレス機の中に設置された精密金型((a)プレス前の状態および(b)プレス後、固定アームでロックされた状態)を示す側面図である。
【図9】精密金型に基板とモールドを組み込んだ部分の拡大側面図である。
【図10】離型ユニットにおける離型の手順を示す図である。
【図11】基板/モールドの外周把持具を金型上下面板に取り付けた状態を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写面に凹凸パターンを形成したモールドを用いて、室温において、インプリント用のレジストを塗工した基板のレジスト面に所定のパターンを形成する室温インプリント方法であり、
前記レジストを塗工した基板とモールドを、基板のレジスト面とモールドの凹凸面が重なるように組み込み冶具中にセットするアライメント工程、モールドのパターン面を基板のレジスト面に押し付けるプレス工程、モールドを基板から引き離し、基板、モールドおよび組み込み冶具に分離する分離工程を少なくとも有し、前記各工程が、1つの工程をその中で実施する独立ユニット内にて実施され、アライメント工程から分離工程まではモールドと基板とを組み込み治具で対にしてユニット間を搬送する搬送工程を各ユニット間に設けることを特徴とするインプリント方法。
【請求項2】
プレス工程を減圧下で行うことを特徴とする請求項1記載のインプリント方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のインプリント方法を実施するための装置であって、前記レジストを塗工した基板とモールドを、基板のレジスト面とモールドの凹凸面が重なるように組み込み冶具中にセットするアライメント工程をその中で実施するアライメントユニット、モールドのパターン面を基板のレジスト面に押し付けるプレス工程をその中で実施するプレスユニット、モールドを基板から引き離し、基板、モールドおよび組み込み冶具に分離する分離工程をその中で実施する分離ユニットを少なくとも有し、前記各ユニット間をモールドと基板とを組み込み冶具で対にして搬送する搬送手段を備えてなることを特徴とするインプリント装置。
【請求項4】
前記ユニットのうち、1つ以上のユニットにおいて、同じ工程を実施する装置が2つ以上並列して設けてられてなることを特徴とする請求項3記載のインプリント装置。
【請求項5】
アライメントユニットとプレスユニットの間に減圧ユニットを、プレスユニットと分離ユニットの間に大気開放ユニットを設けてなることを特徴とする請求項3または4記載のインプリント装置。
【請求項6】
分離ユニット内で基板から分離されたモールドをクリーニングするモールドクリーニング工程をその中で実施するモールドクリーニングユニットと、モールドに離型剤を塗布する離型処理工程をその中で実施する離型処理ユニットと、離型処理を終わったモールドの状態を検査して、使用可能なモールドと廃棄すべきモールドに分別し、廃棄すべきモールドが発生した場合はこれを廃棄して代わりに新規モールドを導入して、前記使用可能なモールドまたは新規モールドを搬送手段を介してアライメントユニットに投入する検査工程をその中で実施する検査ユニットを有することを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項7】
分離ユニット内で分離された組み込み治具をクリーニングする冶具クリーニング工程をその中で実施する冶具クリーニングユニットと、クリーニングの終わった冶具の状態を検査して、使用可能な冶具と廃棄すべき冶具に分別し、廃棄すべき冶具が発生した場合はこれを廃棄して代わりに新規組み込み冶具を導入して、前記使用可能な組み込み治具または新規組み込み治具を搬送手段を介してアライメントユニットに投入する検査工程をその中で実施する検査ユニットを有することを特徴とする請求項3〜6のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項1】
転写面に凹凸パターンを形成したモールドを用いて、室温において、インプリント用のレジストを塗工した基板のレジスト面に所定のパターンを形成する室温インプリント方法であり、
前記レジストを塗工した基板とモールドを、基板のレジスト面とモールドの凹凸面が重なるように組み込み冶具中にセットするアライメント工程、モールドのパターン面を基板のレジスト面に押し付けるプレス工程、モールドを基板から引き離し、基板、モールドおよび組み込み冶具に分離する分離工程を少なくとも有し、前記各工程が、1つの工程をその中で実施する独立ユニット内にて実施され、アライメント工程から分離工程まではモールドと基板とを組み込み治具で対にしてユニット間を搬送する搬送工程を各ユニット間に設けることを特徴とするインプリント方法。
【請求項2】
プレス工程を減圧下で行うことを特徴とする請求項1記載のインプリント方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のインプリント方法を実施するための装置であって、前記レジストを塗工した基板とモールドを、基板のレジスト面とモールドの凹凸面が重なるように組み込み冶具中にセットするアライメント工程をその中で実施するアライメントユニット、モールドのパターン面を基板のレジスト面に押し付けるプレス工程をその中で実施するプレスユニット、モールドを基板から引き離し、基板、モールドおよび組み込み冶具に分離する分離工程をその中で実施する分離ユニットを少なくとも有し、前記各ユニット間をモールドと基板とを組み込み冶具で対にして搬送する搬送手段を備えてなることを特徴とするインプリント装置。
【請求項4】
前記ユニットのうち、1つ以上のユニットにおいて、同じ工程を実施する装置が2つ以上並列して設けてられてなることを特徴とする請求項3記載のインプリント装置。
【請求項5】
アライメントユニットとプレスユニットの間に減圧ユニットを、プレスユニットと分離ユニットの間に大気開放ユニットを設けてなることを特徴とする請求項3または4記載のインプリント装置。
【請求項6】
分離ユニット内で基板から分離されたモールドをクリーニングするモールドクリーニング工程をその中で実施するモールドクリーニングユニットと、モールドに離型剤を塗布する離型処理工程をその中で実施する離型処理ユニットと、離型処理を終わったモールドの状態を検査して、使用可能なモールドと廃棄すべきモールドに分別し、廃棄すべきモールドが発生した場合はこれを廃棄して代わりに新規モールドを導入して、前記使用可能なモールドまたは新規モールドを搬送手段を介してアライメントユニットに投入する検査工程をその中で実施する検査ユニットを有することを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項7】
分離ユニット内で分離された組み込み治具をクリーニングする冶具クリーニング工程をその中で実施する冶具クリーニングユニットと、クリーニングの終わった冶具の状態を検査して、使用可能な冶具と廃棄すべき冶具に分別し、廃棄すべき冶具が発生した場合はこれを廃棄して代わりに新規組み込み冶具を導入して、前記使用可能な組み込み治具または新規組み込み治具を搬送手段を介してアライメントユニットに投入する検査工程をその中で実施する検査ユニットを有することを特徴とする請求項3〜6のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−262351(P2009−262351A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−111763(P2008−111763)
【出願日】平成20年4月22日(2008.4.22)
【出願人】(503361248)富士電機デバイステクノロジー株式会社 (1,023)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月22日(2008.4.22)
【出願人】(503361248)富士電機デバイステクノロジー株式会社 (1,023)
【Fターム(参考)】
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