説明

インプリント法

【課題】離型性を向上させるために、表面処理が可能で、かつ、良好なナノメーターオーダーのパターン形成に有用な、レジストの薄膜化が可能な、インプリント法を提供すること。
【解決手段】所定のパターンの凹凸面を有するモールドと、表面にレジスト膜が形成された基板とを、前記凹凸面とレジスト膜とが対向するように重ね合わせ、前記モールドの凹凸面の凹凸形状を前記レジスト膜に転写するインプリント方法において、前記レジスト膜は、非晶質カーボン膜であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイス、光導波路や回折格子等の光学部品、ハードディスクやDVD等の記録デバイス、DNA分析等のバイオチップ、拡散版や導光版などのディスプレイの製造において、パターン形成方法として用いられるインプリント法、特に、極微細パターン形成方法として用いられるナノインプリント法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、半導体デバイスの製造プロセスなど、微細加工が要求されるパターンの形成には、光学的にパターンを転写する方法が用いられてきた。その例として、ガラスなどの透明基板上に部分的にクロム等の不透明材料からなるパターンを形成したフォトマスクを作成し、これを、表面にレジストを塗布した半導体基板(以後、感応基板と呼ぶ)上に直接的に或いは間接的に載せ、フォトマスクの背面から光を照射して光の透過部分のレジストを選択的に感光させることにより、フォトマスクのパターンを感応基板に転写することが行われていた。この技術を一般にフォトリソグラフィー法と呼んでいる。
【0003】
また、現在の半導体テバイスの製造プロセスにおいては、光学的にマスクパターンを縮小して半導体基板上にパターンを転写する方法が主流となっている。
【0004】
しかしながら、これらのパターン形成方法は、形成するパターンのサイズや形状が露光する光の波長に大きく依存する。例えば、昨今の先端的な半導体デバイスの製造においては、フォトリソグラフィーに用いる露光波長は150nm以上であるのに対し、最小裕幅は65nm以下であり、光の回折現象による解像限界に達している。
【0005】
レジストの解像度を増すために、近接効果補正(OPC : Optical Proximity Correction)や位相シフトマスク、変形照明等の超解像技術を用いてはいるものの、マスクパターンを半導体基板上に忠実に転写することが困難となっている。
【0006】
更に、縮小投影露光の場合には、基板の水平方向のみならず垂直方向にも位置合わせ精度が要求されるため、フォトマスク及び半導体基板の精密ステージ制御(X、Y、Z、θ)などが必要となり、装置のコストが高くなるという欠点があった。
【0007】
半導体デバイスの製造のみならず、ディスプレイや記録メディア、バイオチップ、光デバイスなどの様々な分野でのパターン形成においても、フォトリソグラフィ法を用いている限り、これらの光の回折現象によるパターンボケや複雑な機構を必要とする装置コストの問題は同様に存在し、マスクパターンを忠実に転写することは困難であった。
【0008】
このような背景から、S. Y. Chouらは、インプリント法(もしくはナノインプリント法)と呼ばれる非常に簡易であるが大量生産に向き、従来の方法よりも格段に微細なパターンを忠実に転写可能な技術を提案している(例えば、非特許文献1及び非特許文献2参照)。ちなみに、インプリント法とナノインプリント法に厳密な区別はないが、一般的に、半導体デバイスや回折格子などの製造に用いられるようなナノメーターオーダーのものをナノインプリント法と呼び、マイクロメーターオーダーのものをインプリント法と呼ぶことが多い。以後、特に明記しない限り、両方を含めてインプリント法と記す。
【0009】
S. Y. Chou らが提案している従来のインプリント法について、図3を用いて説明する。まず、表面にシリコン酸化膜を形成したシリコン基板31を用意し、シリコン基板上のシリコン酸化膜をパターニングして、図3(a)に示すように、最終的に半導体基板等に転写すべきパターンのネガポジ反転像に対応するシリコン酸化膜パターン32を形成する。シリコン酸化膜のパターニングには、例えば、通常の電子ビームリソグラフィー技術を用いることができる。このように、半導体基板等の表面に転写すべきパターンのネガポジ反転像に対応する凹凸形状を有するモールド30を形成する(図3(a))。
【0010】
次いで、パターンを形成しようとするシリコン基板33上に、PMMAなどの熱可塑性の高分子材料からなるレジストを塗布し、レジスト層34を形成する(図3(b)。そして、レジスト層34を形成したシリコン基板33をレジストのガラス転移温度(Tg)以上(約120〜200℃程度)に加熱し、レジスト層34を軟化させる。
【0011】
次に、シリコン基板33のレジスト層34の塗布面側にモールド30の凹凸面側が対向するように、モールド30とシリコン基板34とを重ね合わせ、およそ5〜20MPa程度の圧力で圧着する(図3(c))。
【0012】
その後、モールド30をシリコン基板33に圧着した状態で、温度をレジストのガラス転移温度以下(約10℃以下)まで降温して、レジスト層34を硬化させ、モールド30を脱着する。
【0013】
これにより、シリコン基板33上のレジスト層34には、モールド30の凹凸パターンに対応するパターンが形成される(図3(d))。このとき、シリコン基板33上には、モールド30の凸部に相当する部分35が薄い残膜として残るため、酸素ガスによる反応性イオンエッチング(RIE)によりこれを除去する(図3(e))。
【0014】
このようにして、インプリント技術を用いたレジストパターンの形成が行われている。この方法は、昇温、冷却過程の熱サイクルを伴うため、熱インプリント法と呼ばれる。
【0015】
このようなインプリント法あるいはナノインプリント法においては、モールドと基板上に生成したレジスト等の樹脂パターンとの剥離性は極めて重要である。インプリント法において、プレスした後、モールドと樹脂を引き離す場合、モールドと樹脂の付着や摩擦により、部分的に樹脂が変形したり、モールドとともに剥離する現象が見られる。この現象を図4に示す。図4(a)に示すように、モールド40とシリコン基板43とを重ね合わせて圧着した状態から、モールド40からシリコン基板43を剥離すると、図4(b)に示すようにレジスト44がシリコン基板43から剥離されてしまったり、図4(c)に示すように、レジスト44の凸部45がモールド40の凹部内に捕捉されて充填されたり、図4(d)に示すように、レジスト44の凸部の角部46が欠けてモールド40の凹部内に付着したりする。これは、モールド40又はレジスト44を構成する樹脂の表面エネルギーが大きい(=疎水性が弱い=接触角が小さい)ためである。
【0016】
基板43からの樹脂の剥離を避けるために、表面エネルギーの小さいフッ素ポリマーを剥離剤としてモールド40の表面に形成し、モールド40と基板43上の樹脂との剥離性を向上させる方法がある(図5)(例えば、非特許文献2及び非特許文献3参照)。一般的な剥離剤としては、モールド表面のシリコン酸化膜のOH基にシランカップリング剤の溶液を作用させることで、表面エネルギーの小さい膜(これを離型層と呼ぶ)をモールド表面に形成している(例えば、特許文献1参照)。
【0017】
この方法によると、まずモールド50(図5(a))を離型剤としてフッ素樹脂含有シランカップリング溶液51に数分間浸漬したのち(図5(b))、温度30〜150℃、湿度85%以上の恒温恒湿槽52内に10分〜1日程度放置することで(図5(c))、モールド50と離型剤の反応が進行する。
【0018】
最後に、フッ素系不活性溶剤やアルコールや精製水などでリンスすると、モールド50の表面に化学的に結合した離型層53が形成される(図5(d))。この離型層53によりモールド50と樹脂との付着力を低下させることが出来る。
【0019】
また、上記とは別の離型処理方法として、モールドをプラズマ処理することによって、離型層をモールド表面に形成する方法も提案されている(例えば、特許文献2参照)。これによると、真空チャンバー61内にCHF、C、CH、CHFなどのF原子を含むガスを原料に用いてプラズマを発生させ、その中にモールド60を置くことで(図6(b))、モールド60の表面に、フッ素原子を含む離型層(表面処理層)62を形成する(図6(c))。この方法によると、上記の離型処理方法よりもモールド60と樹脂の離型性が良好であるとされている。
【非特許文献1】Appl. Phys. Lett.,vol.67, p.3314(1995)
【非特許文献2】ナノインプリント技術徹底解説 Electric Journa1 2004年11月22日発行 P20-38
【非特許文献3】J. Photopolym. Sci. Techno., Vol. 14(2001)pp. 457-462
【特許文献1】特開2002−283354号公報
【特許文献2】特開2003−77807号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
従来のインプリント法に用いられているレジストは、フォトリソグラフィーあるいは電子線リソグラフィーに利用されているレジストと同様で、熱可塑性の感光性高分子材料である。従って、レジストが高分子材料からなるため、表面化学修飾は困難であり、レジスト表面のフッ素化処理等を行い、離型性を向上させる機能を持たせることは困難であった。
【0021】
さらに、ナノメーターオーダーの極微細パターンを形成するためには、デバイス形成の際のエッチングのアスペクト比を考慮すると、レジスト層の厚みはできるだけ薄いことが望まれる。しかしながら、このようなレジスト材料は、通常スピンコート法により基板上に塗布されるため、数100nm以下の薄い膜厚の形成は困難であった。
【0022】
また一方、モールド表面に離型層を形成したとしても、この離型層は耐久性が低いという問題がある。繰り返しインプリントを行うと、離型層がモールド表面から徐々に剥がれ、モールドと樹脂の離型性が低下してしまう。熱インプリントや光インプリント等のインプリント条件にもよるが、一般には、10〜100回程度でモールドと樹脂の離型性は低下し、樹脂がモールドに付着してしまう。このような樹脂の付着は、転写パターンの欠陥となってしまい、モールドパターンに忠実な転写パターンを得ることが出来ない。また、パターンの溝に樹脂が充填されたままのモールドは、モールドパターンの欠陥となるため、その後、繰り返しインプリントに用いることが出来ない。
【0023】
本発明は、このような事情の下になされ、表面処理が可能であるとともに、良好なナノメーターオーダーのパターン形成に有用であり、かつレジストの薄膜化が可能なインプリント法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記課題を解決するため、本発明は、所定のパターンの凹凸面を有するモールドと、表面にレジスト膜が形成された基板とを、前記凹凸面とレジスト膜とが対向するように重ね合わせ、前記モールドの凹凸面の凹凸形状を前記レジスト膜に転写するインプリント方法において、前記レジスト膜は、非晶質カーボン膜であることを特徴とするインプリント法を提供する。
【0025】
以上のように構成される本発明のインプリント法において、非晶質カーボン膜として水素化非晶質カーボン膜を用いることができる。非晶質カーボン膜は、炭化水素ガスを原料とするプラズマ化学気相成長法により成膜することができる。
【0026】
また、非晶質カーボン膜の表面は、フッ素原子で終端されていることが望ましい。このような、表面がフッ素原子で終端されている非晶質カーボン膜は、非晶質カーボン膜の表面をフッ素プラズマ処理することにより得ることができる。
【0027】
フッ素プラズマ処理は、CF、C、C、C、CHF、CH、CHF、F、BF、NF、ClF、PF、SF、SiFのいずれかのガス、もしくはいずれかを含む混合ガスを用いて行うことができる。
【0028】
また、プラズマ処理は、誘導結合(ICP)型、容量結合(CCP)型、表面波(SWP.)型、電子サイクロトロン共鳴(ECR)型、及びヘリコン波(HWP)型からなる群から選ばれたプラズマ発生方式のプラズマ処理により行うことができる。
【0029】
本発明のインプリント法は、具体的には、以上のインプリント法において、モールドと基板を重ね合わせる前に膜を加熱し、重ね合わせた後にモールドと基板を加圧し、レジスト膜を冷却し、モールドを基板から剥離することを特徴とする。
【0030】
また、モールドを基板から剥離した後、凹凸面を酸素プラズマにより処理することが望ましい。
【発明の効果】
【0031】
本発明によると、レジスト膜が非晶質カーボン膜により構成されているため、レジストパターンの大幅な薄膜化が可能となり、ナノオーダーのパターンを高精度で作製することができる。また、非晶質カーボン膜の膜中の水素量を制御することにより、インプリント条件およびRIEの選択比を制御することができ、プロセスの許容度を向上することができる。更に、非晶質カーボン膜の表面にフッ素プラズマ処理を施すことにより、モールドの離型層の耐久性が向上し、繰り返し行うインプリントプロセスでも、樹脂のモールドヘの付着の発生を大幅に抑制することが出来る。更にまた、樹脂の付着に起因するモールドのパターン破壊の発生も大幅に低減することが可能となる。
【0032】
よって、本発明によると、転写パターン欠陥の低減、モールドの長寿命化も可能となり、インプリント法における良好な転写パターンの形成と大幅なコストダウンが期待出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0034】
図1は、本発明の一実施形態に係るインプリント法を工程順に示す断面図である。
【0035】
まず、図1(a)に示すように、基板の表面に所望の転写パターンを作製したモールド10を準備する。ここで、モールド材料としては、シリコン、ニッケル、クロム、鉄、タンタル、アルミニウム、タングステンなどの金属、及びそれらの酸化物、窒化物、炭化物からなる広範囲の材料を用いることができる。また、転写パターンの作製には、従来のリソグラフィー法、例えばフォトリソグラフィー、電子ビームリソグラフィー等を用いることができる、
一方、図1(b)に示すように、基板11上にインプリント用のレジストとして非晶質カーボン膜12を成膜する。このように、レジストとして非晶質カーボン膜12を用いることで、従来の高分子材料では達成できなかった、100 nm以下の膜厚への薄膜化が可能となる。その結果、特にナノオーダーヘのリソグラフィーヘの適応が容易となる。
【0036】
ここで、非晶質カーボン膜12とは、主成分が炭素からなり、結晶性をもたない膜である。一般的には、水素を数10%以上含む膜が知られているが、本発明に使用可能な非晶質カーボン膜には、より水素含有量が多いポリマーライクカーボンや、より水素含有量が少ないダイヤモンドライクカーボンも含まれる。
【0037】
また、電子デバイスや硬質被膜用途の非晶質カーボン膜では、窒素やシリコンなどのドーパントを微量含有する膜も知られている。特に、窒素などをドーピングした場合、水素含有量や膜密度も同時に変化することが一般的であるため、炭素及び水素以外の物質を含む膜も含めて、ここでは非晶質カーボン膜12と規定する。
【0038】
非晶質カーボン膜12は、膜中に水素を含む水素化非晶質カーボン膜であることが望ましい。水素を含むことにより膜が軟質になる。特に、水素の含有量が多い場合、ポリマーライクカーボンとなり、非常に軟質の膜となり、より小さなエネルギー条件でインプリントを行うことができる。一方、水素の含有量が少ない場合、ダイヤモンドライクカーボンとなって、非常に硬質な膜となり、RIEにおいてマスクとして用いる際のエッチングレートが低減し、その結果、より高いエッチング選択比を得ることができる。
【0039】
すなわち、非晶質カーボン膜12中の水素の含有量を可変することにより、インプリント条件とパターン精度の関係を容易に制御することができるという利点がある。
【0040】
非晶質カーボン膜は、炭化水素を原料とするプラズマ化学気相成長法を用いて形成することが望ましい。原料の炭化水素としては、メタン、エチレン、アセチレンなどが使用できる。また、通常、希釈ガスとして水素を同時に導入することも可能である。特に、水素を多く含む膜を作製する場合には、多くの水素ガスを導入する。一方、水素含有量の少ない膜を作製するためには、導入する水素ガスの量を減らすとともに、基板にバイアスをかけることが有効である。プラズマ化学気相成長法では、このように原料ガスの組成比を制御することにより、膜中の水素の含有量等の膜組成を容易に制御することができる。
【0041】
プラズマ化学気相成長法のプラズマ励起方法としては、高周波(RF)、マイクロ波(MW)、電子サイクロトロン共鳴(ECR)、表面波(SW)等を用いることができる。
【0042】
また、図1(c)に示すように、非晶質カーボン膜12を形成したのち、フッ素を含む原料ガスを用いてプラズマ処理をすることで、非晶質カーボン膜12の表面をフッ素化して、離型層13を形成することが望ましい。
【0043】
レジストとして従来の高分子材料を用いた場合には、フッ素化プラズマ処理を施すと高分子表面が分解してしまい、フッ素化表面を得ることはできない。これに対し、本発明のように、レジストとして非晶質カーボン膜12を用いた場合には、炭素のネットワークが閉じていない、すなわち非晶質であり、炭素がダングリングボンドを有するか、あるいは水素終端構造をもつため、表面のフッ素化が可能となる。
【0044】
さらに、レジストとして利用する非晶質カーボン膜12の表面にフッ素終端構造を形成することで、モールドに対する離型層13として機能させることができる。これは、C−Fの結合エネルギーの方が非常に大きいためである。
【0045】
フッ素プラズマ処理に用いる材料ガスとしては、CF、C、C、C、CHF、CH、CHF、F、BF、NF、ClF、PF、SF、SiFのいずれかのガス、もしくはいずれかを含む混合ガスを用いることができる。
【0046】
フッ素プラズマ処理装置のプラズマ発生方式は、誘導結合(ICP)型、容量結合(CCP)型、表面波(SWP)型、電子サイクロトロン共鳴(ECR)型、ヘリコン波(HWP)型のいずれかを用いることができる。
【0047】
続いて、非晶質カーボン謨12を成膜した基板11を約12 0〜300℃程度に加熱し、次いで、モールドの凹凸面側が対向するモールド10と非晶質カーボン膜12が成膜された基板11とを重ね合わせ、およそ5〜2 0MPa程度の圧力で圧着する(図1(d))。
【0048】
次いで、モールド10を基板11に圧着した状態で温度を約100℃以下まで降温して、モールドを剥離する。これにより、基板11上の非晶質カーボン膜12には、モールド10の凹凸パターンに対応するパターンが形成される。
【0049】
さらに、図1(e)に示すように、基板11上には、モールド10の凸部に相当する部分が薄い残膜14として残るため、酸素ガスによるRIEによりこれを除去し、レジストパターン15が形成される。
【0050】
以下に、本発明に係る実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。
【0051】
実施例
本発明においては、インプリントの方法やモールド材料は限定されないが、本実施例では、熱インプリント用のシリコンモールドを製造した。本実施例に係るモールドの製造方法を図2(a)〜(e)に示す。
【0052】
モールドの元となる基板として、4インチシリコンウエハ21を用意した(図2(a))。この基板21に電子線レジスト22(ZEP520/日本ゼオン社製)を200nmの膜厚にコートし(図2(b)、電子線描画装置にて100〜400nmのラインパターンを描画し、次いで有機現像によりレジストパターン23を形成した(図2(c))。このときの条件は、描画時のドーズを100μC/cm、現像時間を2分とした。
【0053】
次いで、ICPドライエッチング装置を用いたSiドライエッチングによって深さ50nmのSiパターンを形成した(図2(d))。Siエッチングの条件は、C流量:30sccm、O流量:50sccm、Ar流量:50sccm、圧力:2Pa、ICPパワー:500W、RIEパワー:130Wとした。
【0054】
最後にOプラズマアッシング(条件:O流量:500sccm、圧力:30Pa,RFパワー:1000W)によってレジスト23パターンを剥離し、Siモールド24を作製した(図2(e))。
【0055】
次に、本発明のインプリント法を、図1(a)〜(f)を参照して説明する。
【0056】
まず、シリコン基板11上に、非晶質カーボン膜12を高周波(RF)プラズマ化学気相成長法(PECVD)により成膜した。(図1(b))成膜条件は、メタン流量:20sccm、反応圧力:10mTorr、RFパワー:300Wとした。また、基板加熱なしで、成膜中の基板温度は150℃以下であった。このようにして得た非晶質カーボン膜12の膜厚は、50nmであった。
【0057】
次いで、ドライエッチング装置を用いてフッ素プラズマ処理により非晶質カーボン膜12の表面に離型層13を形成した(図1(c))。プラズマ処理の条件は、CFガス流量:35sccm、反応圧力30mTorr、周波パワー30W、処理時間5分とした。
【0058】
非晶質カーボン膜12上にフッ素プラズマ処理を施した表面構造を、X線光電子分(XPS)により解析したところ、C−F構造が確認でき、一方、酸素は全く検出されなかった。また、上記CFに変わり、C、C、C、CHF、CH、CHF、F、BF、NF、ClF、PF、SF、SiFのいずれかのガス、もしくはいずれかを含む混合ガスを用いても同様の構造が形成できることも確認できた。
【0059】
続いて、図1(d)に示すように、非晶質カーボン膜12を成膜した基板11を200℃に加熱し、次いで、モールドの凹凸面側が対向するようにモールド10と非晶質カーボン膜12が成膜された基板11とを重ね合わせ、およそ20MPa程度の圧力で圧着した。
【0060】
次いで、モールド10を基板11に圧着した状態で温度を100℃まで降温した後、図1(e)に示すように、モールド10を剥がした。これにより、基板11上の非晶質カーボン膜12には、モールド10の凹凸パターンに対応するパターンが形成できた。
【0061】
さらに、図1(f)に示すように、基板11上には、モールド10の凸部に相当する部分が薄い残膜14として残るため、酸素ガスによるRIEによりこれを除去し、非晶質カーボン材料からなるレジストパターン15が形成できた。
【0062】
上記のプロセスで作製した非晶質カーボン膜からなるレジストパターン15を用いて、下地のシリコンをRIEにより加工したところ、選択比10以上で、100nm以下のナノメートルオーダーのパターンが形成できることがわかった。
【0063】
また、上記のプロセスを用いて、Siモールド10の離型性を評価した。即ち、熱インプリントを繰り返し実施し、モールド10の離型性の低下とモールドパターンの耐久性を調べた。1回の熱インプリント条件は、基板11及びモールド10の加熱温度:200℃、プレス圧力:20MPa、プレス保持時間:1分、基板冷却温度:30℃とした。
【0064】
モールドの離型性の低下を評価する方法として、この条件の熱インプリントを最大200回繰り返して、転写パターンがモールドに付着し始める回数を調べた。また、モールドパターンの耐久性を評価する方法として、モールド破壊が発生する回数を調べた。
【0065】
その結果、SIモールドは、200回の熱インプリントでも非晶質カーボンの付着は発生しなかった。また、Siモールドパターンの耐久性についても、200回以上繰り返してもモールドパターンの破壊は発生しなかった。このことから、本発明のインプリント法では、モールドパターンの耐久性も良好であることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の一実施形態に係るインプリント法を工程順に示す断面図。
【図2】本発明の一実施形態に係るインプリント法に用いるモールドの製造工程を示す断面図。
【図3】従来のインプリント法を工程順に示す断面図。
【図4】インプリント法におけるモールドの離型時のパターン破壊を示す断面図。
【図5】従来のウェット処理による離型処理方法を工程順に示す断面図。
【図6】従来のフッ素プラズマ処理による離型処理方法を工程順に示す断面図。
【符号の説明】
【0067】
10,30,40,50,60…モールド、11,33,43…基板、12 ・・・非晶質カーボン膜、13,53,62…離型層、14,35…残膜、15…レジストパターン、21・‥シリコン基板、22…レジスト、23…パターン、24…Siモールド、31,43…シリコン基板、32…シリコン酸化膜パターン、34,44…レジスト層、45…レジストの凸部、51…シランカップリング溶液、52…恒温恒湿槽、61…真空チャンバー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のパターンの凹凸面を有するモールドと、表面にレジスト膜が形成された基板とを、前記凹凸面とレジスト膜とが対向するように重ね合わせ、前記モールドの凹凸面の凹凸形状を前記レジスト膜に転写するインプリント方法において、前記レジスト膜は、非晶質カーボン膜であることを特徴とするインプリント法、
【請求項2】
前記非晶質カーボン膜が水素化非晶質カーボン膜であることを特徴とする請求項1に記載のインプリント法。
【請求項3】
前記非晶質カーボン膜は、炭化水素ガスを原料とするプラズマ化学気相成長法により成膜されたことを特徴とする請求項1又は2に記載のインプリント法。
【請求項4】
前記非晶質カーボン膜の表面が、フッ素原子で終端されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のインプリント法。
【請求項5】
前記非晶質カーボン膜の表面が、フッ素プラズマ処理されることによりフッ素原子で終端されていることを特徴とする請求項4に記載のインプリント法。
【請求項6】
前記フッ素プラズマ処理は、CF、C、C、C、CHF、CH、CHF、F、BF、NF、ClF、PF、SF、及びSiFからなる群から選択された少なくとも1種を含むガスを用いて行われることを特徴とする請求項5に記載のインプリント法。
【請求項7】
前記プラズマ処理は、誘導結合(ICP)型、容量結合(CCP)型、表面波(SWP.)型、電子サイクロトロン共鳴(ECR)型、及びヘリコン波(HWP)型からなる群から選ばれたプラズマ発生方式のプラズマ処理により行われることを特徴とする請求項5又は6に記載のインプリント法。
【請求項8】
前記モールドと基板を重ね合わせる前に前記レジスト膜を加熱し、重ね合わせた後に、前記モールドを基板に押圧し、前記レジスト膜を冷却し、前記モールドを基板から剥離することを特徴とする請求項1〜7に記載のインプリント法。
【請求項9】
前記モールドを基板から剥離した後、前記モールドの凹凸面を酸素プラズマにより処理することを特徴とする請求項8に記載のインプリント法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−253544(P2007−253544A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−83453(P2006−83453)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】