説明

インプリント装置及びデバイスの製造方法

【課題】原版と基板とを高精度に位置合わせしながらインプリント処理を行う。
【解決手段】インプリント装置1は、基板側マークと原版側マークとを検出することによってショット領域と原版との位置ずれ量を計測する第1スコープ13と制御器9とを備える。前記制御器は、基板上の複数のショット領域のうちの2以上のショット領域のそれぞれについて、予め取得されたショット領域の配列のデータに基づいて位置決めされた各ショット領域に塗布された樹脂に前記原版を接触させた状態で、前記第1スコープにより前記各ショット領域と前記原版との位置ずれ量を計測し、前記2以上のショット領域で計測された前記位置ずれ量を統計処理しその結果を用いて前記配列のデータを補正し、前記2以上のショット領域以外のショット領域のそれぞれについて、前記補正された配列のデータに基づいて前記原版に対して位置決めしながらインプリント処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント装置及びデバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの微細化が進み、半導体デバイスの製造方法として、基板に樹脂を塗布し、樹脂に原版を押し付けた状態で樹脂を硬化させるインプリント技術が使われるようになった。インプリント技術の一つとして、光硬化法がある。光硬化法を適用したインプリント装置では、初めに、基板上のパターンを形成する領域(以下ショット領域と呼ぶ)に光硬化樹脂を塗布する。次に、原版を保持して駆動する機構により、基板と原版のアライメント補正を行う。次に、樹脂に原版を押し付ける。そして、紫外線を照射することによって樹脂を硬化させたうえで原版を離型する。これにより、基板上に樹脂のパターンが形成される。
【0003】
特許文献1に記載の光硬化法のインプリント装置は、基板上に既に形成したパターンと原版との位置ずれ計測に、ダイバイダイ方式を採用していた。ダイバイダイ方式では、ショット領域毎の原版の押し付け時に、基板と原版とに構成されたマークを計測スコープで同時観察し、位置ずれ量を計測して補正する。しかしながら、ダイバイダイ方式では、下地層の膜減りなどのプロセス要因によるマークの位置ずれを把握できないため、正しく位置合わせができない場合がある。
【0004】
これに対し投影光学系を介して原版のパターンを基板に転写するフォトリソグラフィ技術を利用した従来の露光装置ではグローバルアライメント方式が主流となっている。グローバルアライメント方式は、代表的な数ショット領域(以下、サンプルショットと呼ぶ)のマークを計測し、それをもとに統計処理して、グローバル補正値を求める。そして、グローバル補正値を基に全ショット領域を同一指標で位置合わせする。グローバルアライメント方式では、同一指標で位置合わせしているため、後工程で数ショット領域を抜き取り検査することで、そのウエハの全ショット領域の良否判断が可能となり、生産性の向上に繋がる。また、サンプルショットを適正に選択することにより、プロセス要因による異常なマークずれの影響を回避できるため、重ね合わせ精度の安定性向上に繋がる。特許文献2には、TTM(Through The Mask)スコープを用いて原版(テンプレート)とウエハとを30μmの間隔をおいて両者の位置ずれを計測するインプリント装置が記載されている。特許文献2には、原版とウエハとの位置決めは、ダイバイダイアライメント方式およびグローバルアライメント方式のいずれでもよいと記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4185941号公報
【特許文献2】特開2005−108975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
インプリント装置においても、従来の露光装置と同様プロセス要因による異常なマークずれの影響を回避するために、グローバルアライメント方式による補正が有用であると考えられる。しかし、特許文献2に記載のインプリント装置では、TTMスコープを用いてサンプルショットの位置を計測する場合に原版は基板に対して30μmの間隔で離されて、原版は基板に対して押し付けられえていない状態にある。一方、インプリント処理が行われる場合、原版は樹脂を介して基板に押し付けられた状態にある。すなわち、サンプルショットの位置計測時とインプリント処理時とでは、基板と原版とのZ方向の相対位置関係が異なる。基板と原版とのZ方向の相対位置が変化すると、変化量に応じて、原版の位置ずれや、TTMスコープの計測誤差が発生する。例えば、原版が基板に接触しない状態でTTMスコープにより計測された計測値に基づいて基板と原版をアライメント補正しても、原版保持体の駆動時に駆動誤差があると、原版を基板に対して接触する際に原版のX方向及びY方向における位置ずれが発生する。また、基板と原版のZ方向の距離(以下ギャップとよぶ)が変化すると、基板と原版に描画されているアライメントマークの距離も変化する。TTMスコープの取り付け誤差により、テレセントリック性が発生していると、アライメントマークの距離に応じてTTMスコープ計測時に計測誤差が発生する。
【0007】
上記の問題を解決するためには、TTMスコープ計測時における基板と原版との相対位置をできる限りインプリント処理時と同じにすることが望まれる。しかし、TTMスコープ計測時に基板と原版の相対位置をインプリント処理時と同じにしようとすると、基板と原版とが接触して、基板と原版に描画されたパターンを破損してしまう可能性がある。
【0008】
本発明は、原版と基板とを高精度に位置合わせしながらインプリント処理を行うのに有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1つの側面は、基板に塗布された樹脂と原版のパターン面とを接触させて該樹脂を硬化させるインプリント処理を前記基板の複数のショット領域のそれぞれに行うインプリント装置であって、原版側マークが形成された原版を保持する支持体と、各ショット領域に基板側マークが形成された基板を保持する基板ステージと、前記支持体に保持された前記原版の上方に配置され、前記基板側マークと前記原版側マークとを前記原版を介して検出することによってショット領域と前記原版との位置ずれ量を計測する第1スコープと、前記樹脂を硬化させる硬化機構と、制御器と、を備え、前記制御器は、前記複数のショット領域のうちの2以上のショット領域のそれぞれについて、予め取得された前記複数のショット領域の配列のデータに基づいて位置決めされた各ショット領域に塗布された前記樹脂に前記原版を接触させた状態で、前記第1スコープにより前記各ショット領域と前記原版との位置ずれ量を計測し、前記2以上のショット領域で計測された前記位置ずれ量を統計処理して前記複数のショット領域それぞれにおける前記原版との位置ずれ量を算出し、前記複数のショット領域の配列のデータを前記算出された位置ずれ量を用いて補正し、前記2以上のショット領域以外のショット領域のそれぞれについて、前記補正された配列のデータに基づいて各ショット領域を前記原版に対して位置決めしながらインプリント処理を実行する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、原版と基板とを高精度に位置合わせしながらインプリント処理を行うのに有利な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のインプリント装置を表す図である。
【図2】第1実施形態でのインプリント装置の動作を表すフローチャートである。
【図3】インプリント処理の様子を表す図である。
【図4】第1実施形態でのTTMスコープ計測ショットと非TTMスコープ計測ショットの配置の一例を表す図である。
【図5】第2実施形態でのインプリント装置の動作を表すフローチャートである。
【図6】第2実施形態でのOAスコープ計測ショットとTTMスコープ計測ショットと非TTMスコープ計測ショットの配置の一例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。図1は光硬化法を使用したインプリント装置の構成の一例を表す図である。インプリント装置1は、基板(ウエハ)に塗布された樹脂と原版(マスク)のパターン面とを接触させて該樹脂を硬化させるインプリント処理を基板の複数のショット領域のそれぞれに行う、例えば半導体デバイスの製造工程に使用される装置である。なお、以下の図において、原版に対する紫外線の照射軸に平行にZ軸を取り、Z軸に垂直な平面内で後述のマスクに対して、ウエハが移動する方向にX軸を取り、該X軸に直交する方向にY軸を取って説明する。
【0013】
インプリント装置1は、照明系2、マスク(原版)3、マウントヘッド4、ウエハ(基板)5、ウエハステージ6、塗布機構7、マスク搬送系8、制御器9及びOA(Off-Axis)スコープ14を備える。照明系2は、インプリント処理の際に、マスク3に対して紫外線10を照射して樹脂を硬化させる硬化機構を構成している。照明系2は、光源と、該光源から射出された紫外線をインプリント処理に適切な光に調整するための複数の光学素子から構成される。
【0014】
マスク3は、ウエハ側の面に所定の凹凸パターンが3次元状に形成された型である。マウントヘッド4は、マスク3を保持し固定するための支持体である。このマウントヘッド4は、倍率補正機構11と、吸着力や静電気によりマスク3を引き付けて保持するマスクチャック12と、TTM(Through The Mask)スコープ13とを備える。倍率補正機構11は、マスク3に圧力を加えることにより、マスク3に形成された凹凸パターンを所望の形状に補正する。
【0015】
TTMスコープ13は、マウントヘッド4に支持されてマスク3の上方に配置され、ウエハ5の各ショット領域に形成された基板側マークと、マスク3に形成された原版側マークとをマスク3を観察するための光学系と撮像系を有するスコープ(第1スコープ)である。本実施形態では、TTMスコープ13は、マウントヘッド4に支持されている。TTMスコープ13が、基板側マークと原版側マークとをマスク3を介して検出することによって、ウエハ5上のショット領域とマスク3とのX方向及びY方向における位置ずれ量を計測することができる。OAスコープ(第2スコープ)14は、マウントヘッド4から水平方向に離れて配置され、基板側マークを検出することによってウエハ5上のショット領域のX方向及びY方向の位置を計測することができる。OAスコープ14は、TTMスコープ13と比べて、空間的な制約が少なく、ウエハ5上の描画パターンに応じた観察光の波長の切り替えなどのプロセス対応機能をTTMスコープ13よりも多く有することができる。
【0016】
マウントヘッド4は、マスクチャック12を駆動するための、不図示のマスクチャック駆動機構を備える。マスクチャック駆動機構は、ウエハ5上に塗布された樹脂にマスク3を接触させるために、マスクチャック12をZ軸方向に駆動する駆動系である。樹脂を硬化させた後、マスクチャック12をZ方向に駆動し、ウエハ5をマスク3から引き離す。樹脂にマスク3を押し付けて接触させる押印動作及びウエハ5をマスク3から引き離す離型動作は、マスク3をZ方向に駆動することで実現してもよいが、ウエハステージ(基板ステージ)6をZ方向に駆動することで実現してもよい。ウエハステージ6は、ウエハ5を真空吸着により保持し、かつ、XY平面内を自由に移動可能なウエハ5の保持機構である。塗布機構7は、ウエハ5上に未硬化の樹脂を塗布する。樹脂は、照明系2から紫外線10を受光することにより硬化する光硬化性の樹脂である。マスク搬送系8は、マスク3を搬送し、マスクチャック12にマスク3を設置する。
【0017】
制御器9は、インプリント装置1の各構成ユニットの動作及びセンサ値などの取得を行う。制御器9は、インプリント装置1の各ユニットに回線により接続された、記憶部を有する不図示のコンピュータ又はシーケンサなどで構成される。制御器9は、予め取得した複数のショット領域の配列のデータをTTMスコープ13により計測された2以上のショット領域とマスク3との位置ずれ量、又は、OAスコープ14により計測された2以上のショット領域の位置を用いて補正する。そして、制御器9は、補正された配列のデータに基づいて、各ショット領域をマスク3に対して位置決めしながらインプリント処理を実行する。本実施形態では、制御器9をインプリント装置1内に構成したが、インプリント装置1とは別の場所に設置し、遠隔で制御する構成としても良い。
【0018】
〔第1実施形態〕
図2を参照しながらインプリント装置1の動作を説明する。この動作は、制御器9によって制御される。まず、S101で、マスク3がマスク搬送系8によってマスクチャック12に搬送され、位置決めされて、マスクチャック12によって保持される。S102で、ウエハ5が不図示の搬送機構によってウエハステージ6に搬送されてロードされ、不図示のウエハチャックにより保持される。S103で、制御器9は、ウエハステージ6をX方向及びY方向に駆動して、TTMスコープ13により計測されるショット領域(計測ショット)を塗布機構7の下へ移動し、塗布機構7から射出された光硬化性の樹脂を計測ショットに塗布する。TTMスコープによる計測ショットは、ウエハ5に形成された複数のショット領域のうちの2以上のショット領域である。図3(a)はウエハ5上に塗布された樹脂31を表す図である。塗布された樹脂31はウエハ5上面から高さ数十μm〜数百μmの液滴となる。図3(a)では、光硬化性の樹脂31が4滴のみ図示されているが、実際には数千〜数百万の液滴がウエハ5面上に塗布される。
【0019】
S104で、制御器9は、予め取得されたウエハ5上の複数のショット領域の配列のデータに基づいてウエハステージ6をX方向及びY方向に駆動して、計測ショットをマスク3の下に位置決めする。S105で、制御器9がマスク3を下降させることによって、マスク3がウエハ5上の樹脂31に接触させられる。制御器9は、マスク3を下降させる代わりに、ウエハステージ6を上昇することによって、マスク3を樹脂31に押し付けて接触させてもよい。マスク3の接触前において、樹脂31は、ウエハ5上面からの高さが数十μm〜数千μmの液滴である。したがって、マスク3下面とウエハ5上面のギャップが数十μm〜数千μmとなったとき、マスク3と樹脂31が接触し始める。押し付けの荷重は、例えば、マウントヘッド4に内蔵された不図示の荷重センサを使って制御されうる。マスク3を押し付けるとき、ウエハ5には樹脂31が塗布されているため、マスク3とウエハ5とが直接干渉することはない。
【0020】
S106で、制御器9は、原版側マーク32と基板側マーク33とをTTMスコープ13で観察して、樹脂31にマスク3を接触させた状態で2つのマークの位置ずれ量すなわちショット領域とマスク3との位置ずれ量を計測する。図3(b)は、マスク3を樹脂31に接触させた状態で、TTMスコープ13により、原版側マーク32と基板側マーク33との位置ずれ量を計測する様子を表す図である。マスク3には原版側マーク32が形成されている。一方、ウエハ5には基板側マーク33が形成されている。マスク3が樹脂31に押し付けられた状態では、マスク3とウエハ5とのギャップは数nm〜数百nmである。マスク3とウエハ5のギャップが数nm〜数百nmと小さいため、TTMスコープ13による位置ずれ量の計測誤差を小さくすることができる。
【0021】
S107で、制御器9は、S106で計測した、ショット領域とマスク3との位置ずれ量に基づいてショット領域とマスク3との相対位置を、倍率補正機構11とウエハステージ6とによって補正する。具体的には、倍率補正機構11により、マスク3の形状が補正され、ウエハステージ6でショット領域の位置が補正される。S106で計測されたマスク3とショット領域との位置ずれ量は計測ショットごとに別々であるので、計測ショットに対しては、それぞれ別々の指標でアライメント補正を行う、いわゆるダイバイダイのアライメント補正がなされる。S108で、制御器9は、照明系2を使ってマスク3を介して樹脂31に紫外線を照射することにより、樹脂を硬化させる。
【0022】
S109で、制御器9は、マスク3を上昇させることによって、マスク3から硬化した樹脂31を引き離す。ここで、制御器9は、マウントヘッド4を上昇させる代わりに、ウエハステージ6を下降することによって、樹脂31からマスク3を引き離してもよい。図3(c)は、離型後のマスク3、ウエハ5、樹脂31の様子を示した図である。離型後には、ウエハ5上に3次元の凹凸パターンが光硬化された樹脂31で形成されている。
【0023】
S110で、制御器9は、計測ショットに対する計測処理及びインプリント処理が全て終了したか判断し、次の計測ショットが有る場合には、S103へ戻り、次の計測ショットについて計測処理及びインプリント処理を行う。次の計測ショットが無い場合には、S111へ進む。S111で、制御器9は、S106で計測された2以上の計測ショットにおける位置ずれ量を統計処理して、複数のショット領域それぞれにおけるマスク3との位置ずれ量を算出し、算出された位置ずれ量を用いてショット領域の配列のデータを補正する。つまり、制御器9は、TTMスコープ13によって位置ずれ量を計測する計測ショットをグローバルアライメント方式のサンプルショットとしている。
【0024】
S112以降で、制御器9は、TTMスコープにより計測された2以上のショット領域以外のショット領域(非計測ショット)のそれぞれについて、前記補正された配列のデータに基づいてマスク3に対して位置決めしながらインプリント処理を実行する。S112で、制御器9は、非計測ショットに対して塗布機構7を用いてS103と同様に光硬化性の樹脂31を塗布する。S113で、制御器9は、非計測ショットをマスク3の下へ移動する。S114で、制御器9は、S105と同様にマスク3をウエハ5上の樹脂31に押し付ける。
【0025】
S115で、制御器9は、S111で補正された配列のデータに基づいて、倍率補正機構11とウエハステージ6とによって非計測ショットをマスク3に対して位置決めする。非計測ショットに対して、同一指標のいわゆるグローバルライメント補正を行う。本実施形態では、補正された配列のデータに基づいて非計測ショットを位置決めするS115の工程を、マスク3をウエハ5上の樹脂31に押し付ける工程(S114)の後に行っている。しかし、S114の工程とS115の工程との順序を入れ替え、補正された配列のデータに基づいて非計測ショットを位置決めした後でマスク3をウエハ5上の樹脂31に押し付けてもよい。
【0026】
S116では、S108と同様に照明系2によって非計測ショット上の樹脂31が硬化させられる。S117で、S109と同様にマスク3が硬化した樹脂31から引き離される。S118で、制御器9は、非計測ショットのインプリント処理が全て終了したか判断し、次の非計測ショットが有る場合には、S112へ戻り、次の非計測ショットについてインプリント処理を行う。次の非計測ショットが無い場合には、処理が終了する。
【0027】
図4(a)は、ウエハ5上のTTMスコープで計測される計測ショットの配置の一例である。斜線が付されたウエハ5上のショット領域41が計測ショットを示す。計測ショット41については、S103〜S110で、計測処理とインプリント処理の双方が行われる。図4(b)は、ウエハ5上の非計測ショットの配置の一例である。黒塗りされたショット領域42が非計測ショットを示す。非計測ショット42に対して、計測ショットの計測処理及びインプリント処理がなされた後のS112〜S118で、インプリント処理が行われる。
【0028】
インプリント装置1でインプリント処理がなされたウエハ5に対して後行程で検査が行われる。ウエハ5上の非計測ショットは、グローバル補正値を基に同一指標のアライメント補正が行われているため、後行程で抜き取り検査を行う。一方、計測ショットは、それぞれ、別々の指標のダイバイダイアライメント補正が行われているため、非計測ショットの抜き取り検査とは別の検査を行ってもよい。
【0029】
〔第2実施形態〕
第2実施形態におけるインプリント装置1の動作の基本的な流れは第1実施形態と同一である。異なるのは、第2実施形態では、ウエハ5上の一部のショット領域についてOAスコープ14を使用してショット領域の位置を計測することを追加する点である。ここではこれらの詳細のみを説明する。図5を参照しながらインプリント装置1の動作を説明する。基本的な動作は図2のフローチャートのS101〜S118と同じである。S201〜S202は、S101〜S102と同様である。
【0030】
S203で、制御器9は、予め取得されたウエハ5上の複数のショット領域の配列のデータに基づいてウエハステージ6をX方向及びY方向に駆動して、OAスコープ14により計測されるショット領域)をOAスコープ14の下に移動する。OAスコープ14により計測されるショット領域をOAスコープ計測ショットと呼ぶこととする。S204で、制御器9は、OAスコープ14により基板側マークを検出することによってOAスコープ計測ショットのX方向及びY方向における位置を計測する。OAスコープ計測ショットは、第1実施形態の計測ショットである、TTMスコープにより計測される計測ショットと異なり、計測時に計測されるショット領域上に樹脂が塗布されていない。
【0031】
S205で、制御器9は、OAスコープ計測ショットの計測処理が全て終了したか判断し、次のOAスコープ計測ショットが有る場合には、S203へ戻り、次のOAスコープ計測ショットについての計測処理を行う。次のOAスコープ計測ショットが無い場合には、S206へ進む。OAスコープ計測ショットのうちの少なくとも1つのショット領域について、TTMスコープ13によりショット領域とマスク3との位置ずれ量を計測する計測処理とインプリント処理とを行う。S206〜S213は、S103〜S110と同様である。
【0032】
S214で、制御器9は、S204で計測された2以上のOAスコープ計測ショットの位置を統計処理して複数のショット領域それぞれにおける位置ずれ量を算出し、算出された位置ずれ量を用いて予め取得されたショット領域の配列のデータを補正する。また、制御器9は、少なくとも1つのショット領域について、OAスコープ14により計測されたショット領域の位置と、TTMスコープ13により計測されたショット領域とマスク3との位置ずれ量とに基づいてベースラインの補正値を算出する。ベースラインは、OAスコープ14とマスク3との距離である。そして、制御器9は、ショット領域の補正された配列のデータにベースラインの補正値を加算して、グローバルアライメント補正値を算出する。つまり、制御器9は、TTMスコープ13により計測されるショット領域をベースライン補正値を取得するための計測用ショットとし、OAスコープ14により計測されるOAスコープ計測ショットをグローバルアライメント方式のサンプルショットとしている。
【0033】
TTMスコープ13による計測処理及びインプリント処理がなされるショット領域以外のショット領域に対してアライメント補正を行いながらインプリント処理を繰り返すS215〜S221は、S112〜S118と同様である。本実施形態では、補正された配列のデータに基づいて非計測ショットを位置決めするS218の工程を、マスク3をウエハ5上の樹脂31に押し付ける工程(S217)の後に行っている。しかし、S217の工程とS218の工程との順序を入れ替え、補正された配列のデータに基づいて非計測ショットを位置決めした後でマスク3をウエハ5上の樹脂31に押し付けてもよい。
【0034】
図6(a)は、ウエハ5上のOAスコープ14により計測されるOAスコープ計測ショットの配置の一例である。ウエハ5上の横線色のショット領域61がOAスコープ計測ショットを示す。OAスコープ計測ショット61について、S203〜S205の計測処理がなされる。図6(b)は、ウエハ5上のOAスコープ14により計測処理に加えてTTMスコープ13による計測処理及びインプリント処理がなされるショット領域の配置の一例である。ウエハ5上の斜線色のショット領域62がTTMスコープ13による計測処理もがなされるショット領域を示す。TTMスコープ13による計測がなされるショット領域62について、S206〜S213で、TTMスコープ13による計測処理とインプリント処理とが行われる。図6(b)では、TTMスコープ13により計測されるショット領域62は1つのショット領域であるが、複数のショット領域であってもよい。
【0035】
図6(c)は、ウエハ5上のTTMスコープ13により計測されなかった非TTMスコープ計測ショットの配置の一例である。ウエハ5上の黒塗りのショット63が非TTMスコープ計測ショットを示す。非TTMスコープ計測ショット63に対して、ショット62に対する計測処理及びインプリント処理の後、S215〜S221で、インプリント処理が行われる。第1実施形態と同様に、インプリント処理が完了されたウエハ5は後工程で検査が行われる。
【0036】
以上述べたように、樹脂31を塗布してウエハ5とマスク3の干渉を回避しつつ、両者間のギャップを狭くした状態で、TTMスコープ13によりウエハ5とマスク3との位置ずれ量を計測し、前記計測結果を用いてグローバルアライメント補正値を算出する。これにより、インプリント装置1でTTMスコープ13による計測誤差を小さくしつつ、グローバルアライメント方式によるアライメント補正を行うことができる。また、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0037】
[デバイスの製造方法]
物品としてのデバイス(半導体集積回路素子、液晶表示素子等)の製造方法は、上述したインプリント装置1を用いて基板(ウエハ、ガラスプレート、フィルム状基板)にパターンを転写(形成)する工程を含む。さらに、該製造方法は、パターンを転写された基板をエッチングする工程を含みうる。なお、パターンドメディア(記録媒体)や光学素子などの他の物品を製造する場合には、該製造方法は、エッチングの代わりに、パターンを転写された基板を加工する他の処理を含みうる。以上、本発明の実施の形態を説明してきたが、本発明はこれらの実施の形態に限定されず、その要旨の範囲内において様々な変形及び変更が可能である。
【0038】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に塗布された樹脂と原版のパターン面とを接触させて該樹脂を硬化させるインプリント処理を前記基板の複数のショット領域のそれぞれに行うインプリント装置であって、
原版側マークが形成された原版を保持する支持体と、
各ショット領域に基板側マークが形成された基板を保持する基板ステージと、
前記支持体に保持された前記原版の上方に配置され、前記基板側マークと前記原版側マークとを前記原版を介して検出することによってショット領域と前記原版との位置ずれ量を計測する第1スコープと、
前記樹脂を硬化させる硬化機構と、
制御器と、
を備え、
前記制御器は、
前記複数のショット領域のうちの2以上のショット領域のそれぞれについて、予め取得された前記複数のショット領域の配列のデータに基づいて位置決めされた各ショット領域に塗布された前記樹脂に前記原版を接触させた状態で、前記第1スコープにより前記各ショット領域と前記原版との位置ずれ量を計測し、
前記2以上のショット領域で計測された前記位置ずれ量を統計処理して前記複数のショット領域それぞれにおける前記原版との位置ずれ量を算出し、前記複数のショット領域の配列のデータを前記算出された位置ずれ量を用いて補正し、
前記2以上のショット領域以外のショット領域のそれぞれについて、前記補正された配列のデータに基づいて各ショット領域を前記原版に対して位置決めしながらインプリント処理を実行する、
ことを特徴とするインプリント装置。
【請求項2】
基板に塗布された樹脂と原版のパターン面とを接触させて該樹脂を硬化させるインプリント処理を前記基板の複数のショット領域のそれぞれに行うインプリント装置であって、
原版側マークが形成された原版を保持する支持体と、
各ショット領域に基板側マークが形成された基板を保持する基板ステージと、
前記支持体に保持された前記原版の上方に配置され、前記基板側マークと前記原版側マークとを前記原版を介して検出することによってショット領域と前記原版との位置ずれ量を計測する第1スコープと、
前記支持体から水平方向に離れて配置され、前記基板側マークを検出することによってショット領域の位置を計測する第2スコープと、
前記樹脂を硬化させる硬化機構と、
制御器と、
を備え、
前記制御器は、
前記複数のショット領域のうちの2以上のショット領域のそれぞれについて、予め取得された前記複数のショット領域の配列のデータに基づいて位置決めされ前記樹脂が塗布されていない状態にある各ショット領域の前記基板側マークを前記第2スコープにより検出することによって、前記各ショット領域の位置を計測し、
前記2以上のショット領域のうちの少なくとも1つのショット領域について、前記配列のデータに基づいて位置決めされた各ショット領域に塗布された前記樹脂に前記原版を接触させた状態で、前記第1スコープにより前記各ショット領域と前記原版との位置ずれ量を計測し、
前記計測された2以上のショット領域の位置を統計処理して前記複数のショット領域それぞれにおける位置ずれ量を算出し、前記配列のデータを前記算出された位置ずれ量を用いて補正し、
前記少なくとも1つのショット領域について前記第2スコープにより計測された位置と前記第1スコープにより計測された位置ずれ量とに基づいて前記第2スコープと前記原版との距離である前記第2スコープのベースラインの補正値を算出し、
前記少なくとも1つのショット領域以外のショット領域のそれぞれについて、前記補正された配列のデータと前記算出されたベースラインの補正値に基づいて各ショット領域を前記原版に対して位置決めしながらインプリント処理を実行する、
ことを特徴とするインプリント装置。
【請求項3】
前記制御器は、前記2以上のショット領域のそれぞれについて、前記計測された位置ずれ量に基づいて前記各ショット領域と前記原版との相対位置を補正し、前記硬化機構により前記樹脂を硬化させる、ことを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項4】
前記制御器は、前記少なくとも1つのショット領域について、前記計測された位置ずれ量に基づいて前記各ショット領域と前記原版との相対位置を補正し、前記硬化機構により前記樹脂を硬化させる、ことを特徴とする請求項2に記載のインプリント装置。
【請求項5】
デバイスを製造する方法であって、
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のインプリント装置を用いてインプリント処理を基板に対して行う工程と、
前記工程で前記インプリント処理の行われた基板を加工してデバイスを製造する工程と、
を含むことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−178470(P2012−178470A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40840(P2011−40840)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】