説明

インプリント装置及び物品の製造方法

【課題】基板を保持するステージの位置決め精度の点で有利な技術を提供する。
【解決手段】基板上の樹脂とモールドとを接触させた状態で当該樹脂を硬化させ、硬化した樹脂から前記モールドを剥離することで前記基板上にパターンを転写するインプリント装置であって、前記基板を保持して移動する第1のステージと、前記第1のステージに保持された前記基板の周囲を取り囲むように配置される第1の板部材と、前記第1のステージとは別体で構成され、前記第1の板部材を保持して移動する第2のステージと、前記モールドと前記基板及び前記第1の板部材との間の空間にガスを供給する供給口と、前記空間に供給された前記ガスを回収する回収口とを含むガス機構と、前記第1のステージの移動に追従して前記第2のステージが移動するように前記第1のステージ及び前記第2のステージを制御する制御部と、を有することを特徴とするインプリント装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント装置及び物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細化が進むにつれて、基板上の樹脂とモールドとを互いに押し付けて、モールドに形成された微細な凹凸パターンに対応する樹脂のパターンを基板上に形成する微細加工技術が注目されている。かかる技術は、インプリント技術と呼ばれ、数ナノメートルオーダーの微細な凹凸構造体を基板上に形成(転写)することができる。
【0003】
インプリント技術では、未硬化樹脂を硬化させる樹脂硬化法の1つとして光硬化法が知られている。光硬化法は、一般的に、塗布工程と、充填工程と、位置決め工程と、露光工程と、離型工程とを含む。塗布工程では、基板上に樹脂(未硬化樹脂)を塗布(供給)する。充填工程では、基板上の樹脂とモールドとを接触させてモールドのパターンに樹脂を充填する。位置決め工程では、基板とモールドとの位置決めを行う。露光工程では、モールドを介して紫外線を照射して樹脂を硬化させる。離型工程では、モールドを樹脂(硬化樹脂)から離型(剥離)する。
【0004】
インプリント技術を用いたインプリント装置では、充填工程の際に、モールドのパターンに空気などが残存していると、未充填欠陥(樹脂が充填されないこと)が発生してしまう。このような未充填欠陥の発生を防止するために、モールドと基板との間の空間に、樹脂に対する溶解性が高いガス(溶解性ガス)を供給する技術が提案されている(特許文献1及び2参照)。一方、溶解性ガスがモールドの周辺部に漏洩した場合には、基板を保持する基板ステージの位置決めに用いられているレーザ干渉計の測長光路の屈折率を変動させてしまう(測長誤差の要因となる)ため、基板ステージの位置決め精度が著しく低下する。例えば、溶解性ガスとして、空気との屈折率差が大きいヘリウムガスを用いると、数ppmの空間濃度であってもナノメートルオーダーでステージの位置決め誤差が生じる場合がある。そこで、従来のインプリント装置は、溶解性ガスの漏洩を防止するために、モールドと基板との間の空間に供給された溶解性ガスを回収する回収口と、かかる回収口に対向して基板ステージに保持される対向面(板部材)とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/72757号明細書
【特許文献2】特開2009−81421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
溶解性ガスをモールドの周辺部に漏洩させることなく、回収口から回収するためには、回収口と対向面との間の間隔を一定間隔に維持する必要がある。また、インプリント装置の生産性の観点から、1つの基板に対してインプリント処理(塗布工程、充填工程、位置決め工程、露光工程及び離型工程)を行っている期間は、溶解性ガスを供給し続けることが要求される。従って、基板ステージが移動している期間も常に回収口と対向面との間の間隔を一定間隔に維持する必要があり、基板ステージの移動量を加味すると、溶解性ガスの供給領域をカバーするためには非常に大きな対向面が必要となる。
【0007】
しかしながら、このように大きな対向面を基板ステージが保持していると、基板ステージの加速又は減速によって対向面が振動し、基板ステージの停止時に残留する対向面の振動に起因して基板ステージの位置決め精度が著しく低下してしまう。
【0008】
本発明は、このような従来技術の課題に鑑みてなされ、基板を保持するステージの位置決め精度の点で有利な技術を提供することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としてのインプリント装置は、基板上の樹脂とモールドとを接触させた状態で当該樹脂を硬化させ、硬化した樹脂から前記モールドを剥離することで前記基板上にパターンを転写するインプリント装置であって、前記基板を保持して移動する第1のステージと、前記第1のステージに保持された前記基板の周囲を取り囲むように配置される第1の板部材と、前記第1のステージとは別体で構成され、前記第1の板部材を保持して移動する第2のステージと、前記モールドと前記基板及び前記第1の板部材との間の空間にガスを供給する供給口と、前記空間に供給された前記ガスを回収する回収口とを含むガス機構と、前記第1のステージの移動に追従して前記第2のステージが移動するように前記第1のステージ及び前記第2のステージを制御する制御部と、を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の更なる目的又はその他の側面は、以下、添付図面を参照して説明される好ましい実施形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、例えば、基板を保持するステージの位置決め精度の点で有利な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一側面としてのインプリント装置の構成を示す概略図である。
【図2】インプリント装置におけるモールドと基板との間の空間の近傍を示す図である。
【図3】本発明の一側面としてのインプリント装置の構成を示す概略図である。
【図4】本発明の一側面としてのインプリント装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の一側面としてのインプリント装置1の構成を示す概略図である。インプリント装置1は、基板上の樹脂とモールドとを接触させた状態で樹脂を硬化させ、硬化した樹脂からモールドを剥離することで基板上にモールドのパターン(凹凸パターン)を転写するインプリント処理を行う加工装置である。ここでは、図1に示すように、モールドに対する紫外線の照射軸に平行な方向にZ軸を定義し、Z軸に垂直な平面内で基板が移動する方向にX軸を定義し、X軸に直交する方向にY軸を定義する。
【0015】
インプリント装置1は、照明系101と、モールド102を保持するモールドヘッド103と、ウエハなどの基板104を保持する微動ステージ105と、微動ステージ105を支持する粗動ステージ106と、計測部(第1の計測部)107とを有する。更に、インプリント装置1は、樹脂供給部108と、ガス機構109と、第1の板部材110と、板部材ステージ(第2のステージ)111と、計測部(第2の計測部)112と、制御部113とを有する。また、本実施形態において、微動ステージ105及び粗動ステージ106は、基板104を保持してX軸方向及びY軸方向に移動する基板ステージ(第1のステージ)を構成する。
【0016】
照明系101は、インプリント処理の際に(基板104に供給された樹脂とモールド102とを接触させた状態において)、モールド102を介して、基板104の上の樹脂に紫外線を照射する。照明系101は、光源と、光源から射出された光(紫外線)をインプリント処理に適した光に調整するための複数の光学素子とを含む。
【0017】
モールド102は、矩形形状を有し、基板104にパターン(例えば、回路パターンなどの凹凸パターン)を転写するためのパターン部102aを基板側の面(基板104に対向する面)の中央部に有する。パターン部102aの表面は、基板104の上の樹脂との密着性を高めるために、高平面度に加工されている。モールド102は、照明系101からの紫外線を透過する材料(例えば、石英など)で構成される。
【0018】
モールドヘッド103は、モールド102を真空吸引力又は静電気力によって保持及び固定する保持装置である。モールドヘッド103は、モールド102をZ軸方向に駆動する機構を含み、基板104の上の樹脂(未硬化樹脂)にモールド102を適切な力で押印し(押し付け)、基板104の上の樹脂(硬化樹脂)からモールド102を剥離(離型)する機能を有する。また、モールドヘッド103には、モールド102を介して、基板104の上のアライメントマークを観察する観察系が設けられている。
【0019】
粗動ステージ106は、微動ステージ105を非接触で支持し、XY平面内において、微動ステージ105よりも長いストロークで移動する。但し、本実施形態では、粗動ステージ106が微動ステージ105を非接触で支持することは必須ではなく、粗動ステージ106と微動ステージ105とが物理的に接触していてもよい。
【0020】
微動ステージ105及び粗動ステージ106で構成される基板ステージは、搬送機構によって搬送されてきた基板104を受け取り、かかる基板104を保持する。微動ステージ105及び粗動ステージ106のそれぞれは、XY平面内を移動するためのアクチュエータを有する。基板104は、微動ステージ105に設けられたチャックに吸引されることで平面に矯正され、微動ステージ105及び粗動ステージ106と一体的にXY平面内を移動する。基板ステージは、本実施形態では、XY平面内を移動するように構成されている。但し、インプリント処理で要求されるナノメートルオーダーの位置決め精度を実現するために、XY平面内だけではなく、Z軸方向、Z軸回り、X軸回り、Y軸回りに移動するように基板ステージを構成してもよい。
【0021】
計測部107は、本実施形態では、2周波ヘテロダイン方式のレーザ干渉計で構成され、微動ステージ105の位置を計測する。計測部107は、本実施形態では、微動ステージ105の位置を計測することで基板ステージの位置を計測しているが、微動ステージ105及び粗動ステージ106のそれぞれの位置を計測する計測部を設けて基板ステージの位置を計測してもよい。また、計測部107は、レーザ干渉計に限定されるものではなく、エンコーダ、静電容量センサ、光学センサ、レーザ変位計などであってもよい。
【0022】
樹脂供給部108は、液状の光硬化型の樹脂(インプリント材)を滴下するノズルを含むディスペンサヘッドで構成され、基板104に樹脂を供給する機能を有する。樹脂供給部108を構成するディスペンサヘッドは、例えば、ノズルをライン状に配列したラインノズルである。樹脂供給部108は、ピエゾジェット方式やマイクロソレノイド方式などを採用し、基板104に1pL(ピコリットル)程度の非常に微小な容積の樹脂を供給することができる。樹脂供給部108から樹脂を供給しながら基板ステージを移動(スキャン移動やステップ移動)させることで、基板104の上(ショット領域)に樹脂を塗布することが可能となる。
【0023】
ガス機構109は、モールド102と基板104及び第1の板部材110との間の空間SP1を、基板104に供給された樹脂に対する溶解性が高いガス(溶解性ガス)で置換する機能を有する。ガス機構109は、基板104の上の樹脂とモールド102とを接触させたときに(充填工程において)、パターン部102に空気などが残存して未充填欠陥が発生することを防止(低減)する。ガス機構109は、空間SP1に溶解性ガスを供給する供給口109aと、空間SP1に供給された溶解性ガスを回収する回収口109bとを含む。また、ガス機構109は、溶解性ガスの供給や回収を制御するための制御弁や流量調整バルブなどを含む。
【0024】
供給口109aは、例えば、複数の穴を有するノズルで構成され、モールド102よりも基板側に出っ張らないように、且つ、供給口109aから供給される溶解性ガスがモールド102のパターン部102aに向かうように、モールド102aの近傍に配置される。回収口109bは、モールド102を基準として供給口109aよりも外側に、且つ、供給口109aを取り囲むように配置される。回収口109bは、負圧源に接続され、負圧力による気体吸引で、周辺の空気と共に溶解性ガス(特に、空間SP1の近傍に漏洩する溶解性ガス)を回収する。回収口109bは、溶解性ガスを効率的に回収できればよく、例えば、複数の穴を有するノズルや複数の溝を有するノズルなどで構成される。
【0025】
第1の板部材110は、モールド102と対向し、微動ステージ105に保持された基板104の周囲を取り囲むように配置される。第1の板部材110は、本実施形態では、微動ステージ105に保持された基板104の表面と基板104の外側の領域とをほぼ同一面にする。第1の板部材110は、ガス機構109(供給口109a)から空間SP1に供給される溶解性ガスが空間SP1から漏洩すること(特に、計測部107の近傍に漏洩すること)を防止するために配置される。
【0026】
板部材ステージ111は、微動ステージ105及び粗動ステージ106で構成される基板ステージとは別体で構成され、第1の板部材110を保持する。板部材ステージ111は、XY平面内を移動するためのアクチュエータを有する。第1の板部材110は、板部材ステージ111に保持された状態で、板部材ステージ111と一体的にXY平面内を移動する。
【0027】
計測部112は、本実施形態では、2周波ヘテロダイン方式のレーザ干渉計で構成され、板部材ステージ111の位置を計測する。但し、計測部112は、レーザ干渉計に限定されるものではなく、板部材110の位置を計測することができればよい。例えば、計測部112は、エンコーダ、磁歪センサ、超音波距離センサ、静電容量センサなどであってもよい。
【0028】
制御部113は、CPUやメモリなどを含み、インプリント装置1の全体(動作)を制御する。例えば、制御部113は、計測部107の計測結果(基板ステージの位置)に基づいて基板ステージの移動を制御し、計測部112の計測結果(板部材ステージ111の位置)に基づいて板部材ステージ111の移動を制御する。その際、制御部113は、基板ステージの移動に追従して(同期して)板部材ステージ111が移動するように、即ち、基板ステージと板部材ステージ111との距離が一定の距離を維持するように基板ステージ及び板部材ステージ111を制御する。
【0029】
インプリント装置1の動作(インプリント処理)について説明する。まず、基板ステージが搬送機構から基板104を受け取ると、かかる基板104を微動ステージ105に保持すると共に、ガス機構109の供給口109aから空間SP1に溶解性ガスを供給する。また、空間SP1から漏洩する溶解性ガスをガス機構109の回収口109bから回収する。この際、回収口109bと基板104及び第1の板部材110との間の間隔は一定間隔(0.1mmから2mm程度)に維持され、回収口109bは、溶解性ガスを効率的に回収することができる。具体的には、回収口109bは、その内側で溶解性ガスを吸引し、その外側で空気を吸引する。このように、基板104の周囲には、板部材ステージ111に保持された第1の板部材110が配置されているため、空間SP1に供給された溶解性ガスが空間SP1から漏洩することを防止することができる。また、ガス機構109による溶解性ガスの供給及び回収は、1つの基板104に対するインプリント処理が終了するまで継続される。
【0030】
次に、基板104の上の対象ショット領域(これからモールド102のパターンを転写するショット領域)が樹脂供給部108の下(樹脂供給位置)に位置するように基板ステージを移動させ、基板104の上の対象ショット領域に樹脂を供給(塗布)する。このとき、第1の板部材110を保持する板部材ステージ111は、基板ステージの移動に追従して移動するため、回収口109bと基板104及び第1の板部材110との間の間隔は一定間隔に維持される。従って、空間SP1に供給された溶解性ガスが空間SP1から漏洩することを防止することができる。
【0031】
次いで、基板104の上の対象ショット領域がモールド102の下(押印位置)に位置するように基板ステージを移動させ、対象ショット領域に供給された樹脂とモールド102とを接触させる。また、基板104(の対象ショット領域)とモールド102との位置決めを行う。このときも、第1の板部材110を保持する板部材ステージ111は、基板ステージの移動に追従して移動するため、回収口109bと基板104及び第1の板部材110との間の間隔は一定間隔に維持される。従って、空間SP1に供給された溶解性ガスが空間SP1から漏洩することを防止することができる。
【0032】
次に、基板104の上の樹脂とモールド102とを接触させた状態において、照明系101から、モールド102を介して、基板104の上の樹脂に紫外線を照射して樹脂を硬化させる。次いで、基板104の上の硬化した樹脂からモールド102を剥離する。これにより、基板104の上の対象ショット領域にモールド102のパターンが転写される。
【0033】
このような動作を基板104の上の全てのショット領域に対して行って、基板104の上の全てのショット領域にモールド102のパターンを転写する。そして、基板ステージに保持されている基板104(即ち、インプリント処理が終了した基板104)を搬送機構に渡すと共に、ガス機構109による空間SP1への溶解性ガスの供給を停止する。具体的には、ガス機構109の供給口109aからの溶解性ガスの供給を停止し、空間SP1に供給された溶解性ガスをガス機構109の回収口109bから回収する。
【0034】
上述したように、回収口109bと基板104及び第1の板部材110との間の間隔を一定間隔に常に維持するためには、第1の板部材110は、ガス機構109から供給される溶解性ガスの供給領域を常にカバーする大きさを有する必要がある。換言すれば、第1の板部材110は、基板ステージが基板104を受け取ってから基板104を渡すまでの期間に、板部材ステージ111によって位置決めされる全ての位置において、溶解性ガスの供給領域をカバーする大きさを有する必要がある。これにより、第1の板部材110は大型化することになり、ステージの加速又は減速によって振動しやすくなる。但し、本実施形態では、第1の板部材110は、基板ステージとは別体で構成された板部材ステージ111に保持されているため、第1の板部材110が振動しやすくなったとしても、基板ステージの位置決め精度に影響を与えることはない。また、上述したように、基板ステージの位置決めに用いられる計測部107の近傍に溶解性ガスが漏洩することも防止されているため、計測部107の近傍の屈折率が変動することもなく、基板ステージを高精度に位置決めすることができる。従って、インプリント装置1では、基板104を樹脂供給位置や押印位置に高精度に位置決めすることができると共に、基板104とモールド102との位置決めを高精度に行うことができる。
【0035】
<第2の実施形態>
インプリント装置1は、図2に示すように、第2の板部材114を更に有してもよい。第2の板部材114は、モールド102と対向し、微動ステージ105(基板ステージ)に保持された基板104の周囲を取り囲むように基板104と第1の板部材110との間に配置される。第2の板部材114は、本実施形態では、微動ステージ105に保持された基板104の表面及び第1の板部材110と、基板104と第1の板部材110との間の領域とをほぼ同一面にする。また、第2の板部材114は、微動ステージ105(基板ステージ)に保持される。
【0036】
第1の板部材110と第2の板部材114との間には、第1の板部材110と第2の板部材114とを接触させずに、基板104のモールド側の空間(空間SP1)と、その空間とは反対側の空間SP2とを分離する分離部115を設けるとよい。分離部115は、例えば、第1の板部材110から延在し、第2の板部材114側の先端に凸部を有する部材115a、及び、第2の板部材114から延在し、第1の板部材110側の先端に凹部を有する部材115bで構成される。部材115aの凸部と部材115bの凹部とは、非接触に嵌め合わされる。このように、分離部115を設けることで、空間SP1に供給された溶解性ガスが第1の板部材110と第2の板部材114との間から空間SP2、即ち、計測部107の近傍に漏洩することを防止することができる。
【0037】
本実施形態では、微動ステージ105が第2の板部材114を保持するため、微動ステージ105の重量が増加することになる。従って、第2の板部材114の大きさを第1の板部材110の大きさよりも十分に小さくし、第2の板部材114による微動ステージ105の重量の増加を無視できる程度にするとよい。
【0038】
<第3の実施形態>
第1の板部材110は、板部材ステージ111ではなく、図3に示すように、粗動ステージ106に保持させることも可能である。微動ステージ105は、粗動ステージ106に取り付けられた自重キャンセル機能を有するリニアモーターによって、粗動ステージ106に物理的に接触することなく、浮上状態で支持される。本実施形態では、微動ステージ105は、計測部(第1の計測部)107の計測結果に基づいて制御される。一方、粗動ステージ106は、レーザ干渉計などで構成され、粗動ステージ106の位置を計測する計測部(第2の計測部)118の計測結果に基づいて制御される。従って、粗動ステージ106は、微動ステージ105とは別体で構成されているとみなすことができる。
【0039】
本実施形態では、第1の板部材110が粗動ステージ106に保持されているため、ステージの加速又は減速による第1の板部材110の振動は、主に、粗動ステージ106に影響する。但し、微動ステージ105は粗動ステージ106に非接触で支持されているため、第1の板部材110の振動が微動ステージ105に直接影響することはない。従って、微動ステージ105の位置決め精度が第1の板部材110の振動によって低下することはなく、微動ステージ105に保持された基板104を樹脂供給位置や押印位置に高精度に位置決めすることができる。
【0040】
また、本実施形態では、粗動ステージ106の位置を計測部118によって直接計測している。但し、微動ステージ105と粗動ステージ106との相対位置を計測する計測部を設け、かかる計測部の計測結果に基づいて微動ステージ105及び粗動ステージ106のそれぞれを制御してもよい。
【0041】
<第4の実施形態>
インプリント装置1のメンテナンス時や微動ステージ105に設けられたチャックの交換時には、モールド102や基板104の近傍に配置されている第1の板部材110が障害となる場合がある。このような場合には、図4に示すように、第1の板部材110をステージ(粗動ステージ106又は板部材ステージ111)に着脱する着脱機構120を設ければよい。着脱機構120は、例えば、着脱アームなどで構成され、第1の板部材110をステージに保持させ、且つ、第1の板部材110をステージから取り外す機能を有する。具体的には、着脱機構120を構成する着脱アームの下に第1の板部材110が位置するように、第1の板部材110を保持するステージを移動させる。そして、着脱アームによって第1の板部材110をZ軸方向に持ち上げ、第1の板部材110をステージから取り外してモールド102や基板104の近傍から遠ざける。これにより、インプリント装置1のメンテナンスやチャックの交換を行うスペースを確保することができ、それらの作業を容易に行うことが可能となる。
【0042】
<第5の実施形態>
上述したように、インプリント装置1は、基板104を樹脂供給位置や押印位置に高精度に位置決めすることができると共に、基板104とモールド102との位置決めを高精度に行うことができる。従って、インプリント装置1は、高い生産性で高品位なデバイス(半導体デバイス、液晶表示素子など)を製造することができる。物品としてのデバイスの製造方法は、インプリント装置1を用いて基板(ウエハ、ガラスプレート、フィルム状基板等)にパターンを転写(形成)するステップを含む。かかる製造方法は、パターンが転写された基板をエッチングするステップを更に含む。なお、かかる製造方法は、パターンドットメディア(記録媒体)や光学素子などの他の物品を製造する場合には、エッチングステップの代わりに、パターンが転写された基板を加工する他の加工ステップを含む。
【0043】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の樹脂とモールドとを接触させた状態で当該樹脂を硬化させ、硬化した樹脂から前記モールドを剥離することで前記基板上にパターンを転写するインプリント装置であって、
前記基板を保持して移動する第1のステージと、
前記第1のステージに保持された前記基板の周囲を取り囲むように配置される第1の板部材と、
前記第1のステージとは別体で構成され、前記第1の板部材を保持して移動する第2のステージと、
前記モールドと前記基板及び前記第1の板部材との間の空間にガスを供給する供給口と、前記空間に供給された前記ガスを回収する回収口とを含むガス機構と、
前記第1のステージの移動に追従して前記第2のステージが移動するように前記第1のステージ及び前記第2のステージを制御する制御部と、
を有することを特徴とするインプリント装置。
【請求項2】
前記第1の板部材は、前記第1のステージが前記基板を搬送する搬送機構から前記基板を受け取ってから前記搬送機構に前記基板を渡すまでの期間に前記第1の板部材が位置決めされる全ての位置において、前記供給口から前記空間への前記ガスの供給領域をカバーする大きさを有することを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項3】
前記第1のステージの位置を計測する第1の計測部と、
前記第2のステージの位置を計測する第2の計測部と、
を更に有し、
前記制御部は、前記第1の計測部の計測結果に基づいて前記第1のステージの移動を制御し、前記第2の計測部の計測結果に基づいて前記第2のステージの移動を制御することを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項4】
前記第1のステージは、微動ステージであり、
前記第2のステージは、前記微動ステージを非接触で支持する粗動ステージであることを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項5】
前記第1のステージに保持された前記基板の周囲を取り囲むように前記基板と前記第1の板部材との間に配置される第2の板部材を更に有し、
前記第2の板部材は、前記第1のステージに保持されていることを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項6】
前記第1の板部材と前記第2の板部材とを接触させずに、前記基板の前記モールド側の空間と、前記基板の前記モールド側の空間とは反対側の空間とを分離する分離部を更に有することを特徴とする請求項5に記載のインプリント装置。
【請求項7】
前記第2のステージに前記第1の板部材を保持させ、且つ、前記第2のステージに保持された前記第1の板部材を前記第2のステージから取り外す着脱機構を更に有することを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のうちいずれか1項に記載のインプリント装置を用いて樹脂のパターンを基板に形成するステップと、
前記パターンが形成された基板を加工するステップと、
を有することを特徴とする物品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−174809(P2012−174809A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33863(P2011−33863)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】