説明

インプリント装置

【課題】離型時に型表面に付着したままの薄板状の被成形体を容易且つ速やかに剥離でき、スループットの向上を図ることのできるインプリント装置を提供すること。
【解決手段】表面にパターンが形成された型1と樹脂製の薄板状の被成形体2とを相対的に移動させて被成形体2の表面に型1を押し付け、パターンを被成形体2の表面に転写する転写手段5と、転写後に型1表面に付着した被成形体2を離型させる離型手段8とを有し、離型手段8は、表面に粘着領域を有する長尺テープ81と、該長尺テープ81の裏面を支持する支持部材85とを備え、被成形体2の離型時に、型1と離型手段8とを相対的に近接移動させ、長尺テープ81表面の粘着領域を、型1表面に付着している被成形体2の裏面に接触させて長尺テープ81表面の粘着領域に被成形体2を保持させた後、型1と離型手段8とを相対的に離間移動させ、被成形体2を型1表面から剥離させるインプリント装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型表面に形成された微細形状のパターンを被成形体に転写するインプリント装置に関し、詳しくは、パターンが転写された被成形体を連続的に離型させることができるインプリント装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光ディスク等の量産技術に利用されているプレス加工技術を発展させ、その解像度をより高めたナノインプリント技術が注目を浴びている。ナノインプリント技術は、電子線描画装置等を用いてSi等の基板の表面に所望の微細形状をパターニングし、それをエッチングすることによって型を作成し、その型表面の微細形状を被成形体に転写するものであり、10nmレベルのナノ構造体でも安価に生産でき、且つ高アスペクトパターンの転写も可能であることから、半導体素子や光素子あるいはナノ構造材料形成への応用展開が試みられている。
【0003】
かかるナノインプリント技術には、被成形体として熱可塑性樹脂を用い、転写時に昇温することによって型表面のパターンを転写する熱式ナノインプリント、被成形体として光硬化樹脂を用い、型表面を光硬化樹脂に押し付けて変形させた後、紫外線を照射して樹脂を硬化させることによりパターンを転写させる光ナノインプリント等が提案されている。
【0004】
ところで、ナノインプリント技術における課題の一つにスループットの向上がある。型表面の微細形状が転写された被成形体を速く大量に製造することが問われているためである。特に、このスループットを向上させるためには、転写完了後の離型工程において、微細形状が転写された被成形体を型表面から素早く離型させることが必要である。
【0005】
従来、特許文献1には、離型時に型に高周波や超音波等によって微振動を加えることにより、被成形体を離型させる際の容易化を図る技術が提案されている。
【0006】
また、特許文献2には、ウエハ上の紫外線硬化樹脂をナノインプリントによってパターニングする半導体集積回路の製造において、型内部にアクチュエータを設け、離型時にアクチュエータを作動させることにより、離型開始点を意図的に形成することで離型動作を高速化させる技術が提案されている。
【特許文献1】特開2007−19451号公報
【特許文献2】特開2007−81048号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
被成形体として例えば光学素子である構造性複屈折を利用した波長板のような薄板状の樹脂成形品を製造する場合、特許文献2に開示のようなウエハ上に被成形体樹脂をパターニングする半導体集積回路を製造する場合と異なり、被成形体を固定する手段を持たない場合がある。
【0008】
この場合、離型時に型を被成形体から移動させても、被成形体は型表面に付着したままとなり、自然に離型できない。このため、被成形体を型表面から強制的に剥離させる工程が必要となる。
【0009】
しかし、特許文献1に開示のように、型に微振動を加える程度では被成形体を型表面から速やかに剥離することができない問題がある。これは、転写される微細形状が多数の深い溝状のパターンである場合、型と被成形体との間に大きな摩擦力及び凝着力が働くため、被成形体の剥離が一層困難となる。
【0010】
また、特許文献2に開示の技術では、離型時に離型開始点を形成することはできるが、型を被成形体から離すように上昇させても、被成形体が何ら固定されていない場合では、被成形体は依然として型表面に付着したままの状態であることに変わりはなく、型表面から被成形体を速やかに剥離できず、やはりスループットの向上を図ることができない問題がある。
【0011】
そこで、本発明は、離型時に型表面に付着したままの状態にある薄板状の被成形体を容易且つ速やかに剥離することができ、スループットの向上を図ることのできるインプリント装置を提供することを課題とする。
【0012】
本発明の他の課題は、以下の記載により明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
【0014】
請求項1記載の発明は、表面にパターンが形成された型と樹脂製の薄板状の被成形体とを相対的に移動させることにより前記被成形体の表面に前記型を押し付け、前記型表面のパターンを前記被成形体の表面に転写する転写手段と、転写後に前記型表面に付着したままの状態の前記被成形体を離型させる離型手段とを有するインプリント装置であって、前記離型手段は、表面に粘着領域を有する長尺テープと、該長尺テープの裏面を支持する支持部材とを備え、前記被成形体の離型時に、前記型と前記離型手段とを相対的に近接移動させることにより、前記長尺テープ表面の粘着領域を、前記型表面に付着している前記被成形体の裏面に接触させて前記長尺テープ表面の粘着領域に前記被成形体を保持させた後、前記型と前記離型手段とを相対的に離間移動させることにより、前記被成形体を前記型表面から剥離させることを特徴とするインプリント装置である。
【0015】
請求項2記載の発明は、前記離型手段は、前記長尺テープ表面の粘着領域を、前記被成形体の転写領域外の裏面に接触させることを特徴とする請求項1記載のインプリント装置である。
【0016】
請求項3記載の発明は、前記長尺テープの幅は、前記被成形体の外形寸法よりも大きいことを特徴とする請求項1又は2記載のインプリント装置である。
【0017】
請求項4記載の発明は、前記長尺テープの粘着領域は、前記長尺テープの長さ方向に沿って、前記被成形体の外形寸法よりも長い一定間隔で設けられていることを特徴とする請求項1、2又は3記載のインプリント装置である。
【0018】
請求項5記載の発明は、前記長尺テープの粘着領域は、前記長尺テープの長さ方向に沿って細幅状に設けられていることを特徴とする請求項1、2又は3記載のインプリント装置である。
【0019】
請求項6記載の発明は、前記支持部材は、前記長尺テープ表面の粘着領域を上方に山型に突出させるように該長尺テープの裏面を支持し、前記山型の頂点において前記被成形体との接触部を形成することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のインプリント装置である。
【0020】
請求項7記載の発明は、前記支持部材は、前記長尺テープの表面を前記被成形体の裏面に接触させた際の衝撃を緩衝する緩衝手段を備えることを特徴とする請求項6記載のインプリント装置である。
【0021】
請求項8記載の発明は、前記離型手段は、前記長尺テープをロール状に巻回したテープロールと、前記テープロールから前記長尺テープを送り出す送り出し手段を備え、前記被成形体を前記型表面から剥離させた後、前記送り出し手段を動作させて前記長尺テープを所定距離送り出すことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のインプリント装置である。
【0022】
請求項9記載の発明は、前記離型手段は、前記テープロールと前記送り出し手段との間に位置する前記長尺テープに所定の張力を付与する張力付与手段を備えることを特徴とする請求項8記載のインプリント装置である。
【0023】
請求項10記載の発明は、前記離型手段は、前記被成形体を保持した前記長尺テープを裁断する裁断手段を備えることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のインプリント装置である。
【0024】
請求項11記載の発明は、前記離型手段は、前記型の下方の離型動作位置と、前記型の下方から外れた退避位置との間を移動可能に設けられていることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のインプリント装置である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、離型時に型表面に付着したままの状態にある薄板状の被成形体を容易且つ速やかに剥離することができ、スループットの向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0027】
図1は本発明に係るインプリント装置の一例を示す概略図である。図中、1は金型、2は金型1によって押圧される被成形体である。
【0028】
金型1は、図示しないプレス用モータの駆動によって、基台3から立設された支持柱4、4に沿って昇降可能に設けられたプレス機5の下端に取り付けられている。
【0029】
金型1の表面(図示下面)には、被成形体2に転写すべきnmオーダーの微細形状のパターンが形成されている。金型1に用いられる材質としては、例えばSi、SiO、SiC、Ni、NiP、Al合金、ステンレス鋼等を用いることができる。中でも、半導体製造加工法や電鋳等の微細加工法の適用容易性の点で、Si、SiO、Ni、NiPが好ましい。
【0030】
被成形体2は、基台3に設けられたステージ6上の載置台61の上面に載置されている。ステージ6は、図示しないステージ用モータの駆動によって、基台3に敷設されたガイドレール7に沿って図示左右方向に水平移動可能に設けられている。
【0031】
ここでは、被成形体2として熱可塑性樹脂を用い、転写時に昇温することによって金型1の表面に形成されたnmオーダーの微細形状パターンを転写する熱式ナノインプリント方法を例示している。従って、金型1内部もしくはその近傍には図示しないヒーターが設けられており、金型1を所定温度に加温することができるようになっている。
【0032】
被成形体2は、図7に示すように、金型1の表面に形成されているパターン領域11よりも大きな面積を有する薄板状の熱可塑性樹脂からなる。ここでは平面視円形状の被成形体2を例示しているが、必ずしも円形状のものに限定されるわけではない。この被成形体2は、載置台61の上面に固定されることなく載置されている。
【0033】
同じくステージ6上には、転写後に金型1の表面に付着したままの状態にある被成形体2を剥離して強制的に離型させるための離型装置8が、載置台61の横に並設されている。
【0034】
この離型装置8の詳細を図2に示す。離型装置8には、離型時に、金型1の表面に付着している被成形体2に接触して保持するための長尺テープ81を有している。長尺テープ81は、被成形体2と接触する表面に粘着剤からなる粘着層81aを備えている。
【0035】
この粘着層81aに用いられる粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤等が挙げられる。中でも、粘着力に優れる点でアクリル系粘着剤が好ましい。
【0036】
また、粘着層81aの粘着力は、被成形体2をその粘着力によって保持した後に被成形体2を金型1から剥離させる際、金型1と被成形体2との間に働く摩擦力よりも大きく、被成形体2を長尺テープ81の表面に粘着させたまま金型1から剥離させることができ、金型1から剥離した後は被成形体2を長尺テープ81から容易に剥離できる程度の粘着力を有している必要がある。
【0037】
長尺テープ81は、この粘着層81aが外面側となるようにテープロール82に巻回され、先端側が、一対の送り出しローラ83、84の間に挟持されて、テープロール82から図示右方向に送り出されるようになっている。
【0038】
長尺テープ81には粘着層81aの表面に該粘着層81aを保護するための剥離紙層を有していてもよく、この場合は、テープロール82から繰り出された直後の長尺テープ81から剥離紙層を剥離して巻き取るための図示しない剥離紙巻き取りローラを備えることが好ましい。
【0039】
長尺テープ81を挟持する一対の送り出しローラ83、84は、一方の送り出しローラ83が図示しない送り出しモータの駆動によって回転する駆動ローラとされ、他方の送り出しローラ84が従動ローラとされている。
【0040】
一対の送り出しローラ83、84のうち、少なくとも長尺テープ1の粘着層81a側に位置する送り出しローラ83は、長尺テープ81の幅方向に間隔をおいて配置される一対のローラ83a、83aと、これらローラ83a、83a間を連結するローラ軸83bによって構成されている。
【0041】
長尺テープ81の幅L1は、図3に示すように、被成形体2の外径寸法L2よりも大きく形成されており、各ローラ83a、83aは、長尺テープ81の表面に保持された被成形体2の両側にそれぞれ位置する側縁部81b、81bに当接するようになっている。従って、送り出しローラ83は、長尺テープ81の送り出し時、長尺テープ81の表面に保持されている被成形体2を跨ぐ格好になっている。
【0042】
テープロール82と送り出しローラ83、84との間には、これらの間に位置する長尺テープ81の裏面を支持する支持部材85が、長尺テープ81を上方に向けて山型に突き上げるように突設されている。これにより、長尺テープ81は、テープロール82から支持部材85の先端を経由し、送り出しローラ83、84間に亘って、支持部材85を頂点とする山型に形成されるように架け渡されている。
【0043】
支持部材85は、長尺テープ81と同幅又はそれ以上の幅を有しており、合成樹脂、金属、ゴム等によって形成することができる。特に、被成形体2との当接時の衝撃を和らげるため、少なくとも先端側が軟質ゴム等の弾性体によって形成されていることが好ましい。その先端は、長尺テープ81の送り出し方向に沿ってなだらかな円弧面を形成しており、この支持部材85の先端によって突き上げられた長尺テープ81の表面の粘着領域が、離型時に被成形体2に接触する接触部81cとされる。
【0044】
この支持部材85は、離型装置8の上部に形成された収容室86内に上下移動可能に収容されており、バネ87によって常時上方に付勢されている。このため、支持部材85によって形成される長尺テープ81の接触部81cが金型1の表面に付着されている被成形体2に当接した際、バネ87が緩衝機能を果たし、被成形体2に与える衝撃を緩和するようになっている。
【0045】
なお、テープロール82は、送り出し停止時、図示しないテープロール用モータによって、長尺テープ81の送り出し方向と逆方向(図中反時計方向)となるように所定の回転トルクが付与されるようになっている。また、送り出しローラ83、84は、図示しない送り出しモータが停止している間は、長尺テープ81の送り出し方向と逆方向に回転不能となるように設けられている。このため、送り出しローラ83、84が停止している状態で、テープロール用モータがテープロール82に所定の回転トルクを付与することにより、長尺テープ81に所定の張力を付与するようになっている。
【0046】
送り出しローラ83、84の出口側には、長尺テープ81を裁断するためのカッター88が設けられており、図示しない裁断用モータが駆動することにより、送り出された長尺テープ81を所定長さに裁断するようになっている。
【0047】
次に、図4及び図5を参照しながら、かかるインプリント装置における転写工程及び離型工程の動作について説明する。
【0048】
転写工程では、載置台61の上面に被成形体2が載置されたステージ6が、プレス機5の下端に取り付けられている金型1の真下に被成形体2が位置するように移動して配置される。このとき、ステージ6上の離型装置8は、金型1の下方から外れた退避位置にある(図4(a))。
【0049】
次いで、プレス用モータの駆動によりプレス機5が下動して金型1を下降させ、その表面に形成されている微細形状のパターンを被成形体2に所定の押圧力で押し付ける。
【0050】
このときの金型1は、ヒーターが駆動制御されることによって加温されており、被成形体2を押圧すると共に被成形体2をガラス転移温度以上の温度となるように加熱する。この状態を所定時間維持することにより被成形体2を軟化溶融させ、金型1に形成されたパターンに合わせて被成形体2の表面を変形させる。
【0051】
この後、押圧状態を維持したまま、ヒーターへの通電を停止することで被成形体2を冷却させて硬化させ、金型1のパターンを被成形体2に転写する(図4(b))。
【0052】
転写後、プレス機5を上動させて金型1を上昇させると、被成形体2は載置台61上に載置されているだけで何ら固定されていないため、金型1と被成形体2との間に働く摩擦力によって、上昇した金型1の表面に被成形体2が付着したままの状態となる(図4(c))。
【0053】
離型工程では、ステージ用モータが駆動制御されることにより、ステージ6が水平方向に移動し、載置台61を金型1の真下から外れる位置に移動させる一方、退避位置にあった離型装置8を金型1の真下に位置するように移動させて離型動作位置に配置させる(図5(a))。
【0054】
この離型動作位置とは、離型装置8における長尺テープ81の接触部81cが、金型1の表面に付着している被成形体2の真下となる位置であり、特に、長尺テープ81の接触部81cが、被成形体2の転写領域外21の真下となる位置であることが好ましい。
【0055】
被成形体2は、図6及び図7に示すように、金型1に形成されたパターン領域11よりも大径に形成されているため、被成形体2の転写領域外21は、転写時に金型1のパターン領域11と接触せず、該パターン領域11の外側の金型1の表面と接触する領域であり、図7中の斜線で示すように、被成形体2の外縁側に金型1のパターン領域11を囲うようにドーナツ状に有している。
【0056】
長尺テープ81の接触部81cを、この被成形体2の転写領域外21の真下に配置させ、離型時に、図6に示すように、この転写領域外21の裏面に接触させるようにすることで、被成形体2に転写されたパターンの保護を図ることができる。長尺テープ81の接触部81cは、この被成形体2の転写領域外21の裏面における一部に当接させればよい。
【0057】
離型装置8を離型動作位置に配置させた後、プレス機5を下降させて金型1と離型装置8とを相対的に近接移動させると、図6に示すように、長尺テープ81の接触部81cが被成形体2の転写領域外21の裏面に当接し、被成形体2を粘着層81aに粘着させる。この状態で、プレス機5を上動させて金型1を上昇させると、金型1に付着していた被成形体2は、金型1との間の摩擦力よりも長尺テープ81の粘着層81aの粘着力が勝ることによって金型1から剥離し、粘着層81aによって長尺テープ81の表面に保持される(図5(b))。
【0058】
金型1に付着している被成形体2を剥離させる時の離型速度(ここでは金型1の上昇速度)は、一定であることが好ましい。薄板状の被成形体2は、離型速度が乱れると、被成形体2にしわや歪みが生じるおそれがある。離型速度を一定にすることによってこのような問題を回避することができる。
【0059】
被成形体2を金型1から剥離させた後、送り出しローラ83を駆動させて長尺テープ81を所定距離送り出し、支持部材85上に新たな長尺テープ81の粘着層81aを配置させ、次の離型工程に備える(図5(c))。長尺テープ81の送り出し距離は、少なくとも被成形体2の外径寸法以上となる距離である。
【0060】
この後、ステージ6を移動して離型装置8を金型1の下方から外れた退避位置まで移動させ、次の転写工程に備える(図4(a))。
【0061】
このようにして、表面に粘着領域を有する長尺テープ81を有する離型装置8を用い、金型1と離型装置8とを相対的に近接移動及び離間移動させることによって、転写後に金型1の表面に付着したままの被成形体2を容易且つ速やかに離型させることができる。離型後の被成形体2は、長尺テープ81の粘着層81aに保持されたままとなるため、ばらばらになることがなく、保管、管理も容易となる。
【0062】
また、長尺テープ81の幅は、被成形体2の外径寸法よりも大きいので、離型後の被成形体2の裏面を保護することができる。
【0063】
更に、離型装置8は、離型後に長尺テープ81を所定距離送り出すことによって新たな粘着領域によって接触部81cを形成することができるので、連続して被成形体2の離型を行うことができ、被成形体2を1枚離型する毎に、次の離型に備えるために被成形体2を離型装置8から逐一取り出す等の面倒な作業の必要がない。
【0064】
送り出された長尺テープ81は、カッター88を動作させることによって裁断される。長尺テープ81は被成形体2毎に個別に裁断することもできるが、複数回の離型工程毎に裁断することも好ましい。複数枚の被成形体2毎に長尺テープ81を裁断することにより、一枚の長尺テープ81に複数枚の被成形体2を保持させておくことができ、複数枚の被成形体2を一括して取り扱うことができるようになり、保管、管理を更に容易化することができる。
【0065】
図4及び図5に示した転写工程及び離型工程では、各工程中は載置台61及び離型装置8を設けたステージ6を不動にして、プレス機5側を上下動させることによって金型1を昇降させるようにしたが、転写時の金型1と被成形体2を載置した載置台61との間の接離動作及び離型時の金型1と離型装置8の長尺テープ81との間の接離動作は、いずれも相対的であればよく、金型1を不動にしてステージ6側を上下動させることによって転写工程及び離型工程を行うものとしてもよい。
【0066】
また、離型工程では、長尺テープ81の送り出し動作を停止させた状態で被成形体2を金型1から剥離させるようにしたが、図6に示すように、長尺テープ81の接触部81cによって、被成形体2における長尺テープ81の送り出し方向に沿う方向の後端部22を当接して保持し、被成形体2を金型1から剥離させる場合、金型1に対する離間動作にリンクさせて、送り出しローラ83を動作させて長尺テープ81を送り出すように動作制御すること、及び/又は、ステージ6を長尺テープ81の送り出し方向に沿う方向と同じ方向に水平移動させるように動作制御することも好ましい。
【0067】
金型1に付着している被成形体2をその後端部22から剥離させる場合の自然な剥離動作は、被成形体2の後端部22が、被成形体2と金型1とが剥離し始める剥離開始点を中心として円弧を描くように徐々に剥離していくことになるのに対し、金型1を離型装置8から単に真上に上昇させる場合の被成形体2の剥離動作は、被成形体2の後端部22が金型1から真下に直線的に離間するようになるため、両者の動作は必ずしも一致しない。しかし、このように金型1に対する離間動作にリンクさせて長尺テープ81を送り出すように動作制御する、及び/又は、ステージ6を長尺テープ81の送り出し方向に沿う方向と同じ方向に水平移動させるように動作制御することによって、被成形体2の剥離動作を自然な剥離動作に近づけることができ、離型時に被成形体2に対して無理な力を与えることなく剥離させることができる。
【0068】
離型装置8における長尺テープ81の表面の粘着領域は、必ずしも全面に形成されている必要はなく、長尺テープ81の表面に部分的に設けられていてもよい。この場合、離型時には、この粘着領域が形成されている部位を支持部材85の先端に位置させて接触部81cとする。
【0069】
このように粘着領域を部分的に設ける場合、長尺テープ81の長さ方向に沿って一定間隔で設けることができる。図8は、長尺テープ81の長さ方向に沿って一定間隔で設けた態様の一例を示しており、長尺テープ81の幅方向に延びる細幅状の粘着層81dをL3の間隔で設けている。この間隔L3は、被成形体2の外径寸法L2よりも長い間隔である。
【0070】
このような長尺テープ81によれば、離型時に支持部材85の先端に各粘着層81dを位置させて接触部81cとし、被成形体2を粘着させて保持すれば、長尺テープ81に複数枚の被成形体2を保持させることができると共に、被成形体2は細幅状の粘着層81dによって部分的に保持されているだけであるため、被成形体2を長尺テープ81から剥離する場合の剥離作業も容易となる。
【0071】
各粘着層81dを支持部材85の先端に位置させるように長尺テープ81の送り出しを制御するには、各粘着層81dの間隔に対応するように送り出しローラ83の駆動量(回転量又は回転時間)を制御する方法の他に、図示しない検出センサを用いて粘着層81dを検出することによって、送り出しローラ83の駆動を制御する方法を採用することができる。
【0072】
また、粘着領域を部分的に設ける場合、長尺テープ81の長さ方向に沿って設けることもできる。図9は、長尺テープ81の長さ方向に沿って細幅状に粘着層81eを設けた態様の一例を示しており、長尺テープ81の幅よりも十分に細幅状の粘着層81eを長尺テープ81の長さ方向に亘って設けている。
【0073】
粘着層81eは1本あればよく、その1本の粘着層81eが、被成形体2の転写領域外21に対応させて、長尺テープ81の幅方向の一方端部寄りに片寄って設けられている。
【0074】
このような長尺テープ81も、長尺テープ81に複数枚の被成形体2を保持させることができると共に、被成形体2は細幅状の粘着層81dによって保持されているだけであるため、被成形体2を長尺テープ81から剥離する場合の剥離作業も容易である。
【0075】
なお、図9に示す長尺テープ81の場合、長尺テープ81の幅方向の端部寄りの位置で被成形体2を保持することになるので、被成形体2の転写領域外21において粘着層81eと被成形体2との接触面積を広く取るため、離型時の長尺テープ81の接触部81cは、図10に示すように、金型1に付着している被成形体2の中心X付近と接触することが好ましい。
【0076】
また、この場合の支持部材85の先端形状は、図11に示すように、長尺テープ81の粘着層81eの裏面は支持するが、被成形体2の転写領域を避けるように、転写領域に相当する中央部に凹部85aが形成されていることが好ましい。これにより、支持部材85を被成形体2のほぼ中央部に当接させても、被成形体2に転写されたパターンに相当する部分は凹部85aによって当接を避けることができるので、転写されたパターンの保護を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明に係るインプリント装置の一例を示す概略図
【図2】離型装置の一例を示す概略図
【図3】送り出しローラの概略構成を示す斜視図
【図4】(a)〜(c)はインプリント装置の転写工程を示す図
【図5】(a)〜(c)はインプリント装置の離型工程を示す図
【図6】被成形体に長尺テープが接触した状態を示す側面図
【図7】被成形体が付着した状態の金型表面の平面図
【図8】長尺テープの粘着領域の他の態様を示す平面図
【図9】長尺テープの粘着領域の更に他の態様を示す平面図
【図10】被成形体の中心付近に長尺テープが接触した状態を示す側面図
【図11】支持部材の他の態様を示す斜視図
【符号の説明】
【0078】
1:金型
11:パターン領域
2:被成形体
21:転写領域外
22:後端部
3:基台
4:支持柱
5:プレス機
6:ステージ
61:載置台
7:ガイドレール
8:離型装置
81:長尺テープ
81a:粘着層
81b:側縁部
81c:接触部
81d:粘着層
81e:粘着層
82:テープロール
83:送り出しローラ
83a:ローラ
83b:ローラ軸
84:送り出しローラ
85:支持部材
85a:凹部
86:収容室
87:バネ
88:カッター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にパターンが形成された型と樹脂製の薄板状の被成形体とを相対的に移動させることにより前記被成形体の表面に前記型を押し付け、前記型表面のパターンを前記被成形体の表面に転写する転写手段と、転写後に前記型表面に付着したままの状態の前記被成形体を離型させる離型手段とを有するインプリント装置であって、
前記離型手段は、表面に粘着領域を有する長尺テープと、該長尺テープの裏面を支持する支持部材とを備え、
前記被成形体の離型時に、前記型と前記離型手段とを相対的に近接移動させることにより、前記長尺テープ表面の粘着領域を、前記型表面に付着している前記被成形体の裏面に接触させて前記長尺テープ表面の粘着領域に前記被成形体を保持させた後、前記型と前記離型手段とを相対的に離間移動させることにより、前記被成形体を前記型表面から剥離させることを特徴とするインプリント装置。
【請求項2】
前記離型手段は、前記長尺テープ表面の粘着領域を、前記被成形体の転写領域外の裏面に接触させることを特徴とする請求項1記載のインプリント装置。
【請求項3】
前記長尺テープの幅は、前記被成形体の外形寸法よりも大きいことを特徴とする請求項1又は2記載のインプリント装置。
【請求項4】
前記長尺テープの粘着領域は、前記長尺テープの長さ方向に沿って、前記被成形体の外形寸法よりも長い一定間隔で設けられていることを特徴とする請求項1、2又は3記載のインプリント装置。
【請求項5】
前記長尺テープの粘着領域は、前記長尺テープの長さ方向に沿って細幅状に設けられていることを特徴とする請求項1、2又は3記載のインプリント装置。
【請求項6】
前記支持部材は、前記長尺テープ表面の粘着領域を上方に山型に突出させるように該長尺テープの裏面を支持し、前記山型の頂点において前記被成形体との接触部を形成することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のインプリント装置。
【請求項7】
前記支持部材は、前記長尺テープの表面を前記被成形体の裏面に接触させた際の衝撃を緩衝する緩衝手段を備えることを特徴とする請求項6記載のインプリント装置。
【請求項8】
前記離型手段は、前記長尺テープをロール状に巻回したテープロールと、前記テープロールから前記長尺テープを送り出す送り出し手段を備え、前記被成形体を前記型表面から剥離させた後、前記送り出し手段を動作させて前記長尺テープを所定距離送り出すことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のインプリント装置。
【請求項9】
前記離型手段は、前記テープロールと前記送り出し手段との間に位置する前記長尺テープに所定の張力を付与する張力付与手段を備えることを特徴とする請求項8記載のインプリント装置。
【請求項10】
前記離型手段は、前記被成形体を保持した前記長尺テープを裁断する裁断手段を備えることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のインプリント装置。
【請求項11】
前記離型手段は、前記型の下方の離型動作位置と、前記型の下方から外れた退避位置との間を移動可能に設けられていることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のインプリント装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−284822(P2008−284822A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−133465(P2007−133465)
【出願日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】