インホイール型モータ内蔵センサ付き車輪用軸受装置
【課題】駆動輪の回転状態を正確に検出することができ、電気モータや車両を精度良く制御するのに効果的なインホイール型モータ内蔵センサ付き車輪用軸受装置を提供する。
【解決手段】インホイール型モータ内蔵センサ付き車輪用軸受装置は、駆動輪70のハブを回転自在に支持する車輪用軸受Aと、駆動輪70の回転駆動源となる電気モータBと、この電気モータBと車輪用軸受Aとの間に介在する減速機Cとを備える。減速機Cの出力軸37の回転を検出する回転検出装置101を設ける。
【解決手段】インホイール型モータ内蔵センサ付き車輪用軸受装置は、駆動輪70のハブを回転自在に支持する車輪用軸受Aと、駆動輪70の回転駆動源となる電気モータBと、この電気モータBと車輪用軸受Aとの間に介在する減速機Cとを備える。減速機Cの出力軸37の回転を検出する回転検出装置101を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車輪用軸受と減速機と電気モータとを組み合わせたインホイール型モータ内蔵車輪用軸受装置において、駆動輪の回転を検出する回転検出装置を設置したインホイール型モータ内蔵センサ付き車輪用軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車輪用軸受と減速機と電気モータとブレーキとを組み合わせたインホイール型モータ内蔵車輪用軸受装置を採用した電気自動車における走行安定性の制御技術として、車輪用軸受、電気モータ、減速機、ブレーキのうちの少なくとも一つの構成要素の状態から、駆動輪と路面の接地点から直交する3軸方向の力を測定するセンサを設けたものが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−74135号公報
【特許文献2】特開2008−249353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したインホイール型モータ内蔵車輪用軸受装置において、電気モータには制御用の回転検出装置が設置されているが、電気モータの出力は減速機を介して車輪用軸受に伝達されるため、電気モータの回転特性は駆動輪とは異なったものとなる。このため、駆動輪側から減速機を通して電気モータに伝達されるトルクは、電気モータのロータに正確に伝わりにくく、前記回転検出装置の検出信号に駆動輪側のトルクが反映されにくい。逆に、この場合の回転検出装置の検出信号は、電気モータの回転ムラが大きく反映されたものとなる。
【0005】
したがって、電気モータに設置された回転検出装置の検出信号を用いて駆動輪の回転を観測しようとした場合には、正確な回転状態を検出するのが難しい。
【0006】
また、駆動輪の回転を観測するのに、一般的な従来の車輪用回転検出装置を設置した場合、この回転検出装置の分解能が駆動輪の1回転あたり40〜50パルス程度であるため、回転検出能力が不足し精密な回転検出を行えない。そこで、インホイール型モータ内蔵車輪用軸受装置を採用した電気自動車において、電気モータや車両の制御を精度良く行うためには、駆動輪の回転状態を正確に検出する機能が必要である。
【0007】
なお、回転検出装置として、磁気エンコーダと逓倍機能を有するセンサとを組み合わせることで高い分解能で回転検出を行い、また逓倍回路の誤差をキャンセルして回転速度を検出できるようにしたものが提案されているが(特許文献2)、このような回転検出装置をインホイール型モータ内蔵車輪用軸受装置に用いた例はない。
【0008】
この発明の目的は、駆動輪の回転状態を正確に検出することができ、電気モータや車両を精度良く制御するのに効果的なインホイール型モータ内蔵センサ付き車輪用軸受装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明のインホイール型モータ内蔵センサ付き車輪用軸受装置は、駆動輪のハブを回転自在に支持する車輪用軸受と、前記駆動輪の回転駆動源となる電気モータと、この電気モータと前記車輪用軸受との間に介在する減速機とを備えるインホイール型モータ内蔵車輪用軸受装置において、前記減速機の出力軸の回転を検出する回転検出装置を設けたことを特徴とする。
この構成によると、減速機の出力軸の回転を検出する回転検出装置を設けたため、駆動輪の回転状態を正確に検出することができる。そのため、路面の状態や駆動輪と路面の接地状態を正確に推測することができ、電気モータや車両を精度良く制御するのに効果的となる。
【0010】
この発明において、前記回転検出装置は、前記車輪用軸受の回転側軌道輪またはこの回転側軌道輪と一体の部材に設けられ円周方向に並ぶ複数の被検出極が等配されたエンコーダと、前記車輪用軸受の静止側軌道輪またはこの静止側軌道輪と一体の部材に設けられ前記エンコーダの被検出極を検出してパルスを発生するセンサと、このセンサの発生するパルスを逓倍して逓倍パルスを生成する逓倍手段とを有するものとするのが望ましい。
この構成の場合、センサの発生するパルスを逓倍手段で逓倍して逓倍パルスを生成するので、高い分解能で駆動輪の回転検出を行うことができる。
【0011】
この発明において、前記回転検出装置は、前記逓倍手段が逓倍パルスを発生する毎に、その逓倍パルスから過去に逓倍数分の逓倍パルスを発生した区間における前記エンコーダの平均速度を検出する速度検出手段を有するものとしても良い。この構成の場合、逓倍回路の誤差をキャンセルして回転速度を検出できるので、高精度に駆動輪の回転速度を検出できる。
【0012】
この発明において、前記回転検出装置の検出する回転速度の変動を演算して、前記駆動輪と路面の接地状態に関する情報を出力する接地状態検出手段を有するものとしても良い。
この構成の場合、路面の状態や駆動輪と路面の接地状態をより正確に推測することができる。また、接地状態検出手段で得られた情報を車両や電気モータの制御に利用することにより、安全性や経済性を向上させることが可能となる。
【0013】
この発明において、前記駆動輪のハブに制動力を与えるブレーキを設け、前記接地状態検出手段は、前記回転速度の変動の演算に加え、前記電気モータの駆動トルクおよび前記ブレーキに作用するブレーキ力の推定値または測定値を用いて前記接地状態に関する情報を出力するものとしても良い。
この構成の場合、接地状態検出手段で演算された回転速度変動がどのような駆動状態で発生しているかを、電気モータの駆動トルクおよび前記ブレーキに作用するブレーキ力から判断することができる。これにより、路面状態などの推定精度を向上させることができる。
【0014】
この発明において、前記回転検出装置からの出力ケーブルと、前記電気モータからの出力ケーブルとを1つにまとめて外部に取り出すようにしても良い。この構成の場合、回転検出装置の出力ケーブルと電気モータの出力ケーブルを1箇所からまとめて外部に取り出せるので、ケーブルの取り回しが容易となり、信頼性も向上する。
【0015】
この発明において、前記回転検出装置のエンコーダを、前記車輪用軸受における複列の転走面間に設けても良い。
【0016】
この発明において、前記回転検出装置のエンコーダを、前記車輪用軸受におけるインボード側端に設けても良い。
【0017】
この発明において、前記回転検出装置のエンコーダを、前記車輪用軸受における静止側軌道輪と回転側軌道輪の間に形成される環状空間のインボード側端を密閉するシール部材の一部として設けても良い。
【0018】
この発明において、前記回転検出装置のエンコーダを前記減速機の出力軸に設けても良い。
【0019】
この発明において、前記電気モータの電流値を測定する電流センサを設け、この電流センサの出力から前記駆動輪と路面の接地点に作用する進行方向の力を推定する荷重推定手段を設けると良い。
駆動輪と路面の接地点に作用する進行方向の力の大きさによって電気モータに流れる電流量が異なるため、予め上記作用力と電流量の関係を実験やシミュレーションにて求めておくことにより、上記作用力の大きさを算出することができる。荷重推定手段は、このように実験やシミュレーションにより予め求めて設定しておいた作用力と電流量の関係から、電流センサの出力により、駆動輪と路面の接地点に作用する進行方向の力を算出する。この方法で進行方向の作用力を求めることにより、同作用力を精度良く検出することができる。
【0020】
この発明において、前記駆動輪のハブに制動力を与えるブレーキと、このブレーキに作用するブレーキ力を測定するブレーキ力センサを設け、このブレーキ力センサの出力から前記駆動輪と路面の接地点に作用する進行方向の力を推定する荷重推定手段を設けると良い。
駆動輪と路面の接地点に作用する進行方向の力の大きさによってブレーキに作用するブレーキ力(すなわち制動力)の大きさが異なるため、予め上記作用力とブレーキ力の関係を実験やシミュレーションにて求めておくことにより、上記作用力の大きさを算出することができる。荷重推定手段は、このように実験やシミュレーションにより予め求めて設定しておいた作用力とブレーキ力の関係から、ブレーキ力センサの出力により、駆動輪と路面の接地点に作用する進行方向の力を算出する。この方法で進行方向の作用力を求めることにより、同作用力を精度良く検出することができる。
【0021】
この発明において、前記車輪用軸受の静止側軌道輪にこの軌道輪の歪みを測定する歪みセンサを設け、この歪みセンサの出力から前記駆動輪と路面の接地点に作用する互いに直交する3軸方向の力のうち少なくとも1軸方向の力を推定する荷重推定手段を設けても良い。
駆動輪と路面の接地点に作用する駆動輪の軸方向の力の大きさによって静止側軌道輪の軸方向歪みの変化が異なるため、予め上記作用力と軸方向歪みの関係を実験やシミュレーションにて求めておくことにより、上記作用力の大きさを算出することができる。荷重推定手段は、このように実験やシミュレーションにより予め求めて設定しておいた作用力と軸方向歪みの関係から、軸方向歪みセンサの出力により、駆動輪と路面の接地点に作用する駆動輪の軸方向の力を算出する。この方法で軸方向の作用力を求めることにより、同作用力を精度良く検出することができる。
【0022】
この発明において、前記車輪用軸受の静止側軌道輪にこの軌道輪の歪みを測定する少なくとも3つ以上の歪みセンサを設け、これらの歪みセンサの出力から前記駆動輪と路面の接地点に作用する互いに直交する3軸方向の力を推定する荷重推定手段を設けても良い。
【発明の効果】
【0023】
この発明のインホイール型モータ内蔵センサ付き車輪用軸受装置は、駆動輪のハブを回転自在に支持する車輪用軸受と、前記駆動輪の回転駆動源となる電気モータと、この電気モータと前記車輪用軸受との間に介在する減速機とを備えるインホイール型モータ内蔵車輪用軸受装置において、前記減速機の出力軸の回転を検出する回転検出装置を設けたため、駆動輪の回転状態を正確に検出することができ、電気モータや車両を精度良く制御するのに効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明の一実施形態にかかるインホイール型モータ内蔵センサ付き車輪用軸受装置の概要図である。
【図2】同車輪用軸受装置の車輪用軸受および減速機の断面図である。
【図3】図2のIII −III 断面図である。
【図4】図3の要部を拡大して示す断面図である。
【図5】同車輪用軸受装置のブレーキの断面図である。
【図6】同車輪用軸受装置に設けられる回転検出装置の概略構成を示すブロック図である。
【図7】(A)は同回転検出装置におけるエンコーダの一構成例を示す半部断面図、(B)は同エンコーダの斜視図である。
【図8】(A)は同回転検出装置におけるエンコーダの他の構成例を示す半部断面図、(B)は同エンコーダの斜視図である。
【図9】同回転検出装置における速度検出手段の構成を示すブロック図である。
【図10】同速度検出手段におけるパルス発生時刻記憶手段および速度算出手段の構成を示すブロック図である。
【図11】速度算出手段における差分演算部の動作説明図である。
【図12】速度算出手段により得られる速度の変化と従来例の方法により得られる速度の変化とを比較して示すグラフである。
【図13】全逓倍パルスを使用して得られる検出速度のプロットと、逓倍パルスを使用しない場合に得られる検出速度のプロットとを比較して示すグラフである。
【図14】車輪用軸受装置の制御系のブロック図である。
【図15】同車輪用軸受装置の軸方向歪みセンサの取付部を拡大した断面図である。
【図16】車輪用軸受の外方部材と軸方向歪みセンサ用センサユニットとを示す正面図である。
【図17】(A)は同センサユニットの平面図、(B)はその側面図である。
【図18】同車輪用軸受装置の径方向歪みセンサの取付部を拡大した断面図である。
【図19】車輪用軸受の外方部材と径方向歪みセンサ用センサユニットとを示す正面図である。
【図20】(A)は同センサユニットの平面図、(B)はその底面図である。
【図21】異なる制御系のブロック図である。
【図22】さらに異なる制御系のブロック図である。
【図23】この発明の他の実施形態にかかるインホイール型モータ内蔵センサ付き車輪用軸受装置における車輪用軸受および減速機の断面図である。
【図24】この発明のさらに他の実施形態にかかるインホイール型モータ内蔵センサ付き車輪用軸受装置における回転検出装置の取付部の拡大断面図である。
【図25】この発明のさらに他の実施形態にかかるインホイール型モータ内蔵センサ付き車輪用軸受装置における回転検出装置の取付部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1ないし図9はこの発明の一実施形態を示す。まず、図1と共にこの実施形態の概要について説明する。このインホイール型モータ内蔵センサ付き車輪用軸受装置は、駆動輪70のハブを回転自在に支持する車輪用軸受Aと、回転駆動源としての電気モータBと、この電気モータBの回転を減速してハブに伝達する減速機Cと、ハブに制動力を与えるブレーキDとを、駆動輪70の中心軸O上に配置したものである。ここで言っていることは、必ずしも各構成要素が中心軸O上に位置するということではなく、各構成要素が中心軸Oに対して機能的に作用しているということである。なお、この明細書において、車両に取付けた状態で車両の車幅方向の外側寄りとなる側をアウトボード側と呼び、車両の中央寄りとなる側をインボード側と呼ぶ。
【0026】
図2に示すように、車輪用軸受Aは、内周に複列の転走面3を形成した外方部材1と、これら各転走面3に対向する転走面4を形成した内方部材2と、これら外方部材1および内方部材2の転走面3,4間に介在した複列の転動体5とで構成される。この車輪用軸受Aは、複列のアンギュラ玉軸受型とされていて、転動体5はボールからなり、各列毎に保持器6で保持されている。上記転走面3,4は断面円弧状であり、各転走面3,4は接触角が背面合わせとなるように形成されている。外方部材1と内方部材2との間の軸受空間のアウトボード側端およびインボード側端は、シール部材7,8でそれぞれシールされている。
【0027】
外方部材1は静止側軌道輪となるものであって、減速機Cのケーシング33に取付けるフランジ1aを外周に有し、全体が一体の部品とされている。フランジ1aには、周方向の複数箇所にボルト挿通孔14が設けられている。外方部材1は、フランジ1aのボルト挿通孔14に挿通した取付ボルト15を前記ケーシング33のネジ孔33aに螺合させることにより、前記ケーシング33に取付けられる。
【0028】
内方部材2は回転側軌道輪となるものであって、駆動輪70およびブレーキ輪46の取付用のハブフランジ9aを有するハブ輪9と、このハブ輪9の軸部9bのインボード側端の外周に嵌合した内輪10とでなる。これらハブ輪9および内輪10に、前記各列の転走面4が形成されている。ハブ輪9のインボード側端の外周には段差を持って小径となる内輪嵌合面12が設けられ、この内輪嵌合面12に内輪10が嵌合している。ハブ輪10の中心には貫通孔11が設けられている。ハブフランジ9aには、周方向複数箇所にハブボルト16の圧入孔17が設けられている。ハブ輪9のハブフランジ9aの根元部付近には、駆動輪70およびブレーキ輪46を案内する円筒状のパイロット部13がアウトボード側に突出している。このパイロット部13の内周には、前記貫通孔11のアウトボード側端を塞ぐキャップ18が取付けられている。なお、ハブ輪9は、特許請求の範囲で言うハブに該当する。
【0029】
電気モータBは、図1のように、筒状のケーシング22に固定したステータ23と出力軸24に取付けたロータ25との間にラジアルギャップを設けたラジアルギャップ型のものである。出力軸24は、2つの軸受26でケーシング22に支持されている。
【0030】
図2および図3に示すように、減速機Cはサイクロイド減速機として構成されている。すなわち、この減速機Cは、外形がなだらかな波状のトロコイド曲線で形成された2枚の曲線板34a,34bを、それぞれ軸受35を介して入力軸32の各偏心部32a,32bに装着し、ケーシング33のイボード側壁とアウトボード側壁の間に差し渡した複数の外ピン36で、各曲線板34a,34bの偏心運動を外周側で案内するとともに、ハブ輪10の貫通孔11にスプライン嵌合されて一体に回転する出力軸37に取付けた複数の内ピン38を、各曲線板34a,34bの内部に設けた複数の貫通孔39に嵌挿挿入したものである。入力軸32は、電気モータBの出力軸24とスプライン結合されて一体に回転するようになっている。なお、入力軸32は出力軸37の内径面と軸受40で支持されている。また、曲線板34a,34bの外形となるトロコイド曲線はサイクロイド曲線であることが好ましいが、その他のトロコイド曲線であっても良い。上記の「サイクロイド減速機」は、トロコイド減速機を含めて称している。
【0031】
電気モータBの出力軸24が回転すると、これと一体回転する入力軸32に取付けられた各曲線板34a,34bが偏心運動を行う。この各曲線板34a,34bの偏心運動が、内ピン38と貫通孔39との係合によって、車輪のハブである内方部材2に回転運動として伝達される。出力軸24の回転に対して内方部材2の回転は減速されたものとなる。例えば、1段のサイクロイド減速機で1/10以上の減速比を得ることができる。
【0032】
前記2枚の曲線板34a,34bは、互いに偏心運動が打ち消されるように180°位相をずらして入力軸32の各偏心部32a,32bに装着され、各偏心部32a,32bの両側には、各曲線板34a,34bの偏心運動による振動を打ち消すように、各偏心部32a,32bの偏心方向と逆方向へ偏心させたカウンターウエイト41が装着されている。
【0033】
図4に示すように、前記各外ピン36と内ピン38には軸受42,43が装着され、これらの軸受42,43の外輪42a,43aが、それぞれ各曲線板34a,34bの外周と各貫通孔39の内周とに転接するようになっている。したがって、外ピン36と各曲線板34a,34bの外周との接触抵抗、および内ピン38と各貫通孔39の内周との接触抵抗を低減し、各曲線板34a,34bの偏心運動をスムーズに内方部材2に回転運動として伝達することができる。
【0034】
図5に示すように、ブレーキDは、駆動輪70と共にハブフランジ9aに取付けられたブレーキ輪46およびこのブレーキ輪46に摩擦接触可能なブレーキパッド47を有する作動部48と、ブレーキパッド47を作動させる駆動部49とを有し、この駆動部49の駆動源としてブレーキ用電気モータ50を用いた電動ブレーキとされている。ブレーキ輪46はブレーキディスクからなる。ブレーキパッド47は、ブレーキ輪46を挟み付けるように一対設けられている。片方のブレーキパッド47は、ブレーキフレーム51に固定され、もう片方のブレーキパッド47は、ブレーキフレーム51に直線的に進退自在に設置された進退部材52に取付けられている。進退部材52の進退可能方向はブレーキ輪46に対面する方向である。進退部材52は、ブレーキフレーム51に対して回り止めされている。
【0035】
駆動部49は、上記ブレーキ用電気モータ50と、この電気モータ50の回転出力を往復直線運動に変換してブレーキパッド47に制動力として伝えるボールねじ53とを有し、電気モータ50の出力は減速伝達機構58を介してボールねじ53に伝達される。ボールねじ53は、ねじ軸54が軸受57を介してブレーキフレーム51に回転のみ自在に支持され、ナット55が上記進退部材52に固定されている。進退部材52とナット55とは、互いに一体の部材であっても良い。
【0036】
ボールねじ53は、ねじ軸54およびナット55と、これらねじ軸54の外周面およびナット55の内周面に対向して形成されたねじ溝間に介在する複数のボール56とを有する。ナット55には、ねじ軸54とナット55の間に介在するボール56を無端の経路で循環させる循環手段(図示せず)を有している。循環手段は、リターンチューブやガイドプレートを用いた外部循環形式のものであっても、エンドチャップや駒を用いた内部循環形式のものであっても良い。また、このボールねじ53は、短い距離を往復動作させるものであるため、上記循環手段を有しない形式のもの、例えばねじ軸54とナット55間の複数のボール56をリテナ(図示せず)で保持したリテナ式のものであっても良い。
【0037】
減速伝達機構58は、ブレーキ用電気モータ50の回転をボールねじ53のねじ軸54に減速して伝える機構であり、ギヤ列で構成されている。減速伝達機構58は、この例では、電気モータ50の出力軸に設けられたギヤ59、およびねじ軸54に設けられて上記ギヤ59に噛み合うギヤ60からなる。減速伝達機構58は、この他に、例えばウォームおよびウォームホイル(図示せず)からなるものとしても良い。
【0038】
このブレーキDは、ブレーキペダル等の操作部材61の操作に従い上記電気モータ50を制御する操作部62を有する。この操作部62には、アンチロック制御手段65が設けられている。操作部62は、上記操作部材61と、この操作部材61の動作量および動作方向を検出可能なセンサ64と、このセンサ64の検出信号に応答して電気モータ50を制御する制御装置63とでなり、この制御装置63に上記アンチロック制御手段65が設けられている。制御装置63は、モータ制御信号を生成する手段およびそのモータ制御信号によりモータ電流を制御可能なモータ駆動回路(いずれも図示せず)を有している。
【0039】
アンチロック制御手段65は、操作部材61の操作による制動時に、駆動輪70の回転に応じて電気モータ50による制動力を調整することで、駆動輪70の回転ロックを防止する手段である。アンチロック制御手段65は、上記制動時に、駆動輪70の回転速度を検出し、検出速度から駆動輪70の回転ロックまたはその兆候が検出されると、電気モータ50の駆動電流を低下させ、または一時的に逆回転出力を発生するなどして、制動力、つまりブレーキパッド47の締め付け力を調整する処理を行う。駆動輪70の回転速度の検出には、後述する回転検出装置101の出力が利用される。
【0040】
図1に示すように、車輪用軸受Aのハブフランジ9aには、前記ブレーキ輪46と共に駆動輪70が取付けられる。駆動輪70は、ホイール71の周囲にタイヤ72を設けたものである。ハブフランジ9aとホイール71との間にブレーキ輪46を挟み込んだ状態で、ハブフランジ9aの圧入孔17に圧入したハブボルト16をホイール71に螺着させることで、駆動輪70およびブレーキ輪46がハブフランジ9aに固定される。
【0041】
図6は、上記回転検出装置101の概略構成を示すブロック図である。この回転検出装置1は、円周方向に並ぶ複数の被検出極が等配されたリング状のエンコーダ102と、このエンコーダ102の前記被検出極を検出してパルスaを発生するセンサ103と、このセンサ103の発生するパルスaを設定された逓倍数Nに逓倍して逓倍パルスbを生成する逓倍手段104と、この逓倍手段104から生成される逓倍パルスbに基づきエンコーダ102の回転速度を検出する速度検出手段105とを備える。
【0042】
エンコーダ102は、図2の車輪用軸受Aにおける内方部材2の外周面の複列の転走面4,4間に、その軸心に対して同心となるように嵌合状態に設置されている。センサ103は、図2に示す例では前記エンコーダ102に対して微小のギャップを介して径方向(ラジアル方向)に対向するように、車輪用軸受Aにおける外方部材1側に設けられる。
【0043】
エンコーダ102は、ラジアルタイプである図2の例では、図7(A),(B)に半部断面図および斜視図で示すように、被検出極として周面の円周方向に複数の磁極対(磁極NとSの対)102aを等配位置に並べて着磁させたリング状の磁気エンコーダからなる。図2では、芯金120の外周に、ゴム磁石、プラスチック磁石等の多極磁石121を設けてエンコーダ102が構成されている。
【0044】
図7のエンコーダ102の構成例は、周面に磁極対102aを着磁させたラジアルタイプであるが、エンコーダ102は図8(A),(B)に半部断面図および斜視図で示すアキシアルタイプのものであっても良い。図8の構成例では、例えは断面をL字形としたリング状の芯金112の円筒部112aの一端から外径側に延びるフランジ部112bの側面の円周方向に、複数の磁極対102aを等配位置に並べて着磁させている。この場合、センサ103は、エンコーダ102の着磁面に対向するように軸方向に向けて配置される。
なお、前記センサ103と前記逓倍手段104が、複数の整列させられた磁気検出素子(図示せず)で構成され、それら複数の磁気検出素子の出力を演算して生成された内部信号に基づいて、あらかじめ定められた逓倍数の出力を生成するものであってもよい。
【0045】
回転検出装置101における上記エンコーダ102を除く構成部はセンサ側ユニット111として一体に構成される。センサ側ユニット111は、図2の例では、車輪用軸受Aの外方部材1に、両転動体5,5間で径方向に貫通させたセンサ取付孔87に挿通して取付けられ、ユニット111の先端に配置されるセンサ103が、上記エンコーダ102にラジアル方向にギャップを介して対向させられる。センサ取付孔87は、例えば断面形状が円形の貫通孔である。センサ取付孔87の内周面とセンサ側ユニット111との間は、Oリング等の接触シールや、接着剤あるいはねじ等で密封固定する。
【0046】
回転検出装置101のセンサ側ユニット111は、センサ取付孔87にほぼ嵌合する外径の軸状の挿入部111aと、非挿入部である頭部111bとを有し、頭部111bは外方部材1の外周面に接して配置される。頭部111bから出力ケーブル122が引き出されている。出力ケーブル122は、図1のように、電気モータBの出力ケーブル100や図示しない他のケーブルとともに1つにまとめられて、1箇所から外部に取り出される。これにより、出力ケーブル100,122の取り回しが容易となって、信頼性も向上する。
【0047】
速度検出手段105は、前記逓倍手段104が逓倍パルスbを発生する毎に、その発生した逓倍パルスbの過去の逓倍数N分の逓倍パルスbを発生した区間におけるエンコーダ102の平均回転速度を順次検出する。この場合に、速度検出手段105は、逓倍手段104から出力される逓倍情報cを用いて上記回転速度の検出を行う。逓倍情報cとは、設定されている逓倍数の状態など、速度検出手段105が演算に必要とする逓倍手段104の動作状態の情報である。前記速度検出手段105は、具体的には図9に示すように、パルス生成時刻記憶手段106と、タイマ107と、速度算出手段108とを有する。
【0048】
パルス生成時刻記憶手段106は、前記逓倍数N分の逓倍パルスbの生成時刻を記憶する記憶エリアを有する。このパルス生成時刻記憶手段106の記憶エリアの一構成例を図10に示す。同図において、時刻t1 ,t2 ,…,tN-1 ,tN は連続するN個分の逓倍パルスbの生成時刻である。パルス生成時刻記憶手段106は、先入れ先出し形式で最新の逓倍数N個分の時刻を記憶するキュー等の記憶手段であり、最も古い記憶内容が消去されるように、記憶エリア列における順次隣の記憶エリアに記憶内容を移し、空となった先頭の記憶エリアに最新の時刻を入力する。
タイマ107は、逓倍パルスbが発生する都度、その生成時刻(具体的には逓倍パルスの立ち上がり時の時刻)を計時して前記パルス生成時刻記憶手段106に記憶させる。このとき、上記のように、パルス生成時刻記憶手段106の記憶内容が、最新の逓倍数N分の逓倍パルスbの生成時刻となるように更新する。
なお、ここで言う「タイマ107」は、本来のタイマの機能も持つ計時部と、この計時部で計時した時刻をパルス生成時刻記憶手段106に入力する入力処理部とを含む計時・入力処理手段を言う。
【0049】
速度算出手段108では、前記パルス生成時刻記憶手段106に最新の逓倍パルスの生成時刻が記憶されると同時に、図10に示すように、前記最新の逓倍パルスbの生成時刻とパルス生成時刻記憶手段106に記憶された逓倍数N分だけ過去の逓倍パルスbの生成時刻との差分を差分演算部108aで計算し、この差分を用いて前記平均回転速度を平均速度演算部108bで算出する。
例えば、連続して生成される逓倍パルスbの出力波形を示す図11において、最新の逓倍パルスbの生成時刻tN がパルス生成時刻記憶手段106に記憶されると同時に、速度算出手段108では、前記生成時刻tN と逓倍数N分だけ過去の逓倍パルスbの生成時刻t1 との差分(tN −t1 )を差分演算部108aで計算し、この差分を用いて、平均回転速度(角速度)vを
v=Δθ/(tN −t1 )
として平均速度演算部108bで算出する。ただし、Δθは、前記エンコーダ102における1磁極対102a分の周回角度である。すなわち、前記エンコーダ102の磁極対102a(図7,図8)の数をmとすると、Δθは
Δθ=360°/m
として求められる値である。
同様に、次の逓倍パルスbの生成時刻tN+1 がパルス生成時刻記憶手段106に記憶されると、速度算出手段108では、その生成時刻tN+1 と逓倍数N分だけ過去の逓倍パルスの生成時刻t2 との差分(tN+1 −t2 )を差分演算部108aで計算し、平均回転速度vを
v=Δθ/(tN+1 −t2 )
として平均速度演算部108bで算出する。
【0050】
逓倍手段104で生成する逓倍パルスbには、図11のようにピッチ誤差があるが、この誤差パターンは、エンコーダ102における磁極対102a毎に繰り返される再現性のある特性を持つ。したがって、上記したように、磁極対102aの周回角度Δθを、センサ103の発生するパルスaを逓倍して生成されるN個分の逓倍パルスaの区間(例えばtN −t1 )で割り算して回転角度vを検出すると、ピッチ誤差によるばらつきが平均化されて、図12にAで示すように検出速度の誤差を小さく抑えることができる。しかも、逓倍パルスbの生成に同期して速度検出が行われるので、検出分解能も高めることができる。
これに対して、図11における逓倍パルスbの一つ一つのパルスピッチに相当する回転角度Δθi と、前記パルスピッチの時間間隔Tとから、速度vを
v=Δθi /T
として算出した場合、図12にBで示すように検出速度の誤差の変動が大きい。
【0051】
また、この実施形態の回転検出装置101では、図6に示すように、前記逓倍手段104で生成した逓倍パルスを回転パルスとして出力する回転パルス出力手段109と、前記速度検出手段105で検出した平均回転速度を速度信号として出力する速度信号出力手段110とを有する。速度信号出力手段110からの速度信号は、回転パルス出力手段109からの回転パルスの出力と同期して出力される。このように回転パルスと速度信号との両方が出力されると、この回転検出装置101が搭載されるインホイール型モータ内蔵センサ付き車輪用軸受装置での処理回路を省略または簡略化できてコンパクト化が可能となる。
【0052】
図6の構成において、センサ103、逓倍手段104、および速度検出手段105を、共通のセンサチップに集積するか、または共通の基板に設けて一体化しても良い。このように構成した場合、1つのセンサチップあるいは基板から回転パルスと速度信号が出力されるため、回転検出装置101のコンパクト化が可能で、信号処理回路を省略することができる。
【0053】
このように、この回転検出装置101では、センサ3の発生するパルスaを逓倍した逓倍パルスbを全て使用して速度検出を行うので、図13に×印で示すように速度検出のレートつまり速度検出のサンプリング回数を増やすことができ、その検出速度vを利用したアンチロック制御手段65での電気モータ50の制御や、インホイール型モータ内蔵センサ付き車輪用軸受装置自体の電気モータBの制御などにおいて制御の応答性を高めることができる。また、細かな速度変動を高精度に検出することができる。なお、同図において、▲印は、逓倍パルスbを使用しない場合、つまりセンサ103の発生するパルスaだけを使用して速度検出を行う場合の検出速度vの変化を示す。
【0054】
この車輪用軸受装置は、電気モータBのケーシング22の外周部に取付けたサスペンション73を介して車体( 図示せず) に固定される。サスペンション73には、駆動輪70と路面の接地点に作用する力を減衰して車体に伝える減衰手段74が設けられている。この減衰手段74は、ダンパ、ショックアブソーバ等からなる。減衰手段74は、電動で作動させて減衰の程度を変化させられるようになっている。
【0055】
駆動輪70と路面の接地点に作用する力は、互いに直交する進行方向の力Fxと、駆動輪の軸方向の力Fyと、鉛直方向の力Fzとが複合されたものである。車輪用軸受装置には、これら3軸方向の力をそれぞれ個別に測定するセンサが設けられている。進行方向の力Fxは、電気モータBの電流値Iを検出する電流センサ80の出力から求められる。駆動輪の軸方向の力Fyは、車輪用軸受Aの静止側軌道輪である外方部材1の軸方向歪みεyを検出する軸方向歪みセンサ81(図1)の出力から求められる。鉛直方向の力Fzは、車輪用軸受Aの静止側軌道輪である外方部材1の径方向歪みεzを検出する径方向歪みセンサ82(図1)の出力から求められる。
【0056】
図14に示すように、前記回転検出装置101は接地状態検出手段90に接続されている。接地状態検出手段90は、回転検出装置101の検出する回転速度の変動を演算して、駆動輪70と路面の接地状態に関する情報を出力する手段であり、例えば自動車の電気制御ユニット(ECU)85に設けられている。この接地状態検出手段90は、前記各センサ80,81,82の出力を処理する荷重推定手段83および異常判定手段84を有する。荷重推定手段83は、前記各センサ80、81,82の出力から駆動輪70の接地点に作用する力を推定する。接地状態検出手段90は、車輪用軸受装置ごとに設けた回路基板等の電子回路装置(図示せず)に組み込んだものであっても良い。電気制御ユニット85の出力側には、電気モータB、ブレーキCの電気モータ50、およびサスペンションDの減衰手段74が接続されている。
【0057】
接地状態検出手段90には、前記回転検出装置101のほか、電気モータBの駆動トルクを検出するトルクセンサ130やブレーキDに作用するブレーキ力(すなわち制動力)を検出するブレーキ力センサ88も接続されていて、前記回転速度の変動のほか、電気モータBの駆動トルクおよびブレーキ力の推定値または測定値も用いて、接地状態に関する情報を出力するようにされている。
【0058】
駆動輪70と路面の接地点に作用する進行方向の力の大きさによって電気モータBに流れる電流量が異なるため、予め上記作用力と電流量の関係を実験やシミュレーションにて求めておくことにより、上記作用力の大きさを算出することができる。荷重推定手段83は、このように実験やシミュレーションにより予め求めて設定しておいた作用力と電流量の関係から、電気モータ50の出力により、駆動輪と路面の接地点に作用する進行方向の力を算出する。
【0059】
また、駆動輪70と路面の接地点に作用する駆動輪70の軸方向の力の大きさによって静止側軌道輪である外方部材1の軸方向歪みが異なるため、予め上記作用力と軸方向歪みの関係を実験やシミュレーションにて求めておくことにより、上記作用力の大きさを算出することができる。荷重推定手段83は、このように実験やシミュレーションにより予め求めて設定しておいた作用力と軸方向歪みの関係から、軸方向歪みセンサ81の出力により、駆動輪と路面の接地点に作用する駆動輪70の軸方向の力を算出する。
【0060】
また、駆動輪70と路面の接地点に作用する鉛直方向の力の大きさによって静止側軌道輪である外方部材1の径方向歪みの変化が異なるため、予め上記作用力と径方向歪みの関係を実験やシミュレーションにて求めておくことにより、上記作用力の大きさを算出することができる。荷重推定手段83は、このように実験やシミュレーションにより予め求めて設定しておいた作用力と径方向歪みの関係から、径方向歪みセンサ82の出力により、駆動輪と路面の接地点に作用する鉛直方向の力を算出する。
【0061】
このように、接地状態検出手段90では、駆動輪70の回転速度の変動を演算し、路面の状態や駆動輪70と路面の接地状態に関する情報を出力するようにしているので、路面の状態や接地状態をより正確に推測することができる。このようにして得られる各種情報を、電気モータBの制御や車両の姿勢制御に利用することにより安全性や経済性を向上させることができる。例えば、車両の旋回が円滑に行われるように、前記情報を電気モータBに出力して左右の駆動輪70の回転速度を制御する。制動時に駆動輪70のロックが生じないように、ブレーキDの電気モータ50に前記情報を出力して制動を制御する。旋回時に車体が左右に大きく傾いたり、加速時や制動時に車体が前後に大きく傾いたりするのを防止するために、サスペンション73の減衰手段74に前記情報を出力してサスペンション制御を行う。また、異常判定手段84は、前記3軸方向の力が許容値を超えたと判断される場合に、異常信号を出力する。この異常信号も、自動車の車両制御に使用することができる。さらに、リアルタイムで駆動輪70と路面間の作用力を出力すると、よりきめ細かな姿勢制御が可能となる。
【0062】
さらに、接地状態検出手段90では、駆動輪70の回転速度変動のほか、電気モータMの駆動トルクおよびブレーキDに作用するブレーキ力の推定値または測定値も用いて、接地状態に関する情報を出力するようにしているので、得られる回転速度変動がどのような駆動状態で発生しているかを判断することができる。これにより、路面の状態や接地状態の推定精度を向上させることができる。例えば、駆動トルクの大きさに応じて、前記荷重推定手段83での計算パラメータを変更するマッピング方法変更手段を設けることにより、より正確な荷重を推定することができる。
【0063】
軸方向歪みセンサ81は、例えば図15ないし図17に示すように設置する。すなわち、センサ取付部材92に軸方向歪みセンサ81を取付けてセンサユニット91とし、このセンサユニット91を車輪用軸受Aの外方部材1の外周部に固定する。センサ取付部材92は、外方部材1のねじ孔14の近傍に接触固定される第1の接触固定部92aと、外方部材1の外周面に接触固定される第2の接触固定部92bとを有している。また、センサ取付部材92は、前記第1の接触固定部92aを含む径方向に沿った径方向部位92cと、前記第2の接触固定部92bを含む軸方向に沿った軸方向部位92dとでL字の形状に構成されている。径方向部位92cは、軸方向部位92dに比べ、剛性が低くなるよう肉厚を薄くしてある。軸方向歪みセンサ81は、この剛性の低い径方向部位92cに取付けられている。
【0064】
上記センサユニット91は、センサ取付部材92の第1および第2の接触固定部92a,92bにより、両接触固定部92a,92bが外方部材1の周方向に対して同位相の位置となるように、外方部材1の外周部に固定される。第1および第2の接触固定部92a,92bを周方向において同位相とすると、センサ取付部材92の長さを短くすることができるため、センサユニット91の設置が容易である。軸方向歪みセンサ81は、センサ取付部材92に例えば接着剤を用いて固定される。
【0065】
センサ取付部材92は、外方部材1への固定により塑性変形を起こさない形状や材質とされている。また、センサ取付部材92は、車輪用軸受Aに予想される最大の荷重が印加された場合でも、塑性変形を起こさない形状とする必要がある。上記の想定される最大の力は、車両故障につながらない走行において想定される最大の力である。センサ取付部材92に塑性変形が生じると、外方部材1の変形がセンサ取付部材92に正確に伝わらず、歪みの測定に影響を及ぼすためである。
【0066】
センサ取付部材92は、例えばプレス加工により製作することができる。センサ取付部材92をプレス加工品とすると、コストダウンが可能になる。
また、センサ取付部材92は、金属粉末射出成形による焼結金属品としてもよい。金属粉末射出成形は、金属、金属間化合物等の成形技術の一つであり、金属粉末をバインダーと混練する工程、この混練物を用いて射出成型する工程、成形体の脱脂処理を行なう工程、成形体の焼結を行なう工程を含む。この金属粉末射出成形によれば、一般の粉末冶金に比べて焼結密度の高い焼結体が得られ、焼結金属品を高い寸法精度で製作することができ、また機械的強度も高いという利点がある。
【0067】
軸方向歪みセンサ81としては、種々のものを使用することができる。例えば、軸方向歪みセンサ81が金属箔ストレインゲージで構成されている場合、この金属箔ストレインゲージの耐久性を考慮すると、車輪用軸受に予想される最大の荷重が印加された場合でも、センサ取付部材92における軸方向歪みセンサ81の取付部分の歪み量が1500マイクロストレイン以下であることが好ましい。同様の理由から、軸方向歪みセンサ81が半導体ストレインゲージで構成されている場合は、同歪み量が1000マイクロストレイン以下であることが好ましい。また、軸方向歪みセンサ81が厚膜式センサで構成されている場合は、同歪み量が1500マイクロストレイン以下であることが好ましい。
【0068】
センサ取付部材92およびこのセンサ取付部材92に取付けた軸方向歪みセンサ81からなるセンサユニット91を外方部材1に取付ける構成としたため、軸方向荷重検出用のセンサをコンパクトに設置できる。センサ取付部材92は外方部材1に取付けられる簡易な部品であるため、これに軸方向歪みセンサ81を取付けることで、量産性に優れたものとでき、コスト低下が図れる。
【0069】
駆動輪70と路面の接地点に作用する軸方向の力により駆動輪70のハブである内方部材2に荷重が印加されると、転動体5を介して外方部材1が変形し、その変形は外方部材1に取付けられたセンサ取付部材92に伝わり、センサ取付部材92が変形する。そのセンサ取付部材92の歪みを軸方向歪みセンサ81により測定する。この際、センサ取付部材92の径方向部位92cは外方部材1のフランジ1aの変形に従って変形する。この実施形態の場合、外方部材1と比べ前記径方向部位92cは剛性が低く、かつセンサ取付部材92は剛性の低い径方向部位92cと剛性の高い軸方向部位92dとで構成されたL字形をしているため、径方向部位92cと軸方向部位92dとの間である径方向部位92c側の角部92e付近に歪みが集中し、外方部材1よりも大きな歪みとなって現れる。すなわち、径方向部位92cと軸方向部位92dとの間で発生する歪みは、フランジ1aの基端のR部1bの歪みを転写かつ拡大したものとなる。この歪みを軸方向歪みセンサ81で測定するため、外方部材1の歪みを感度良く検出でき、歪み測定精度が高くなる。また、この高精度で測定された軸方向歪みにより、駆動輪70と路面の接地点に作用する軸方向の力を算出するため、算出される軸方向の力も精度の高いものとなる。
【0070】
径方向歪みセンサ82は、例えば図18ないし図20に示すように設置する。すなわち、センサ取付部材94に径方向歪みセンサ82を取付けてセンサユニット93とし、このセンサユニット93を減速機Cのケーシング33のアウトボード側面に固定する。センサ取付部材94は先端が鉤状に屈曲した細長い部材で、このセンサ取付部材94の先端に変位センサからなる径方向歪みセンサ82が取付けられている。センサ取付部材94の基部は、ケーシング33へ取付けるための接触固定部94aとなっている。
【0071】
センサ取付部材94の接触固定部94aを接着剤等でケーシング33のアウトボード側面に固定することにより、センサユニット93がケーシング33に取付けられる。この実施形態の場合、径方向歪みセンサ82は例えば渦電流式等の非接触型の変位センサであり、径方向歪みセンサ82は、外方部材1の外周面の径方向の変位を測定するように、外方部材1の外周面に対して所定の間隔を開けてセンサユニット93に取り付けられている。径方向歪みセンサ82を対向させる外方部材1の軸方向位置は、例えばアウトボード側列の転走面3の付近、または転走面3よりもアウトボード側の位置とされる。外方部材1における転走面3よりもアウトボード側の部分は、他の部分に比べて荷重に対する径方向の変形が比較的大きくなる。センサ取付部材94は、センサユニット93をケーシング33に取付けた状態において、外力によって変形しない剛性をもつ材質で構成されている。
【0072】
径方向歪みセンサ82用の変位センサとしては、渦電流式の他に、磁気式、光学式、超音波式、接触式等のセンサや、あるいはこれら以外の形式の変位を検出可能なセンサを用いることができる。各種条件に合わせて、適当なセンサを選択すれば良い。
【0073】
センサ取付部材94およびこのセンサ取付部材94に取付けた径方向歪みセンサ82からなるセンサユニット93を外方部材1に取付ける構成としたため、鉛直方向荷重検出用のセンサをコンパクトに設置できる。センサ取付部材94は外方部材1に取付けられる簡易な部品であるため、これに径方向歪みセンサ82を取付けることで、量産性に優れたものとでき、コスト低下が図れる。
【0074】
駆動輪70と路面の接地点に作用する鉛直方向の力により駆動輪70のハブである内方部材2に荷重が印加されると、転動体5を介して外方部材1が変形し、その変形による外方部材1の径方向の変位を、減速機Cのケーシング33のアウトボード側に取付けられたセンサ取付部材94に設けた径方向歪みセンサ82により測定する。この際、測定対象となる外方部材1の外周面は周囲と比較して径方向に大きく変位する部位であるため、外方部材1の径方向変位を感度良く測定できる。また、この高精度で測定された径方向歪みにより、駆動輪70と路面の接地点に作用する鉛直方向の力を算出するため、算出される鉛直方向の力も精度の高いものとなる。
【0075】
この実施形態において、前記回転検出装置101から出力される逓倍パルスを分周する分周回路を電気モータBのユニット内に設け、回転検出装置101で得られる高分解能の回転信号を従来のABS(アンチロックブレーキシステム)制御装置で用いられる分解能に合わせた回転信号に変換するようにしても良い。この場合、回転検出装置101で得られる高分解能の回転信号を電気モータBの制御に利用でき、既存の車両制御装置をそのまま利用することができる。
【0076】
この実施形態では、軸方向歪みセンサ81および径方向歪みセンサ82で外方部材1の軸方向歪みおよび径方向歪みを測定する場合につき説明したが、軸方向歪みセンサ81および径方向歪みセンサ82で車輪用軸受Aの他の構成部品、例えば内方部材2の軸方向歪みおよび径方向歪みを測定するようにしても良い。
また、この実施形態では、内方部材がハブの一部を構成する第3世代型の車輪用軸受Aとしたが、内方部材と車輪のハブとが互いに独立した第1または第2世代型の車輪用軸受としても良い。さらに、各世代形式のテーパころタイプである車輪用軸受としても良い。
【0077】
例えば、この車輪用軸受装置を自動車の4輪に設け、4輪を独立して電気モータBで駆動する場合、それぞれの駆動輪70の回転数を上記した回転検出装置101で検出して車両姿勢を安定させるアルゴリズムを構築する。
【0078】
この車輪用軸受装置は、ブレーキDが電気モータ50でブレーキパッド47を移動させる電動ブレーキであるため、油圧式のブレーキで発生する油漏れによる環境汚染を回避することができる。また、電動ブレーキであるため、ブレーキパッド47の移動量を素早く調整することができ、旋回時における左右の駆動輪70の回転速度制御の応答性を向上させられる。
【0079】
また、この車輪用軸受装置は、サスペンション73の減衰手段74を電動で作動させるため、サスペンション制御の応答性を向上させることができ、車両姿勢を安定させられる。
【0080】
上記実施形態の制御系は、駆動輪70と路面の接地点に作用する進行方向の力Fxを、電気モータBの電流値Iを検出する電流センサ80の出力から求めるようにしたが、図21に示すように、進行方向の力Fxを、ブレーキDのブレーキパッド47に作用するブレーキ力εdを検出するブレーキ力センサ88の出力から求めるようにしてもよい。
【0081】
駆動輪70と路面の接地点に作用する進行方向の力の大きさによってブレーキDのブレーキパッド47に作用するブレーキ力の大きさが異なるため、予め上記作用力とブレーキ力の関係を実験やシミュレーションにて求めておくことにより、上記作用力の大きさを算出することができる。推定手段83は、このように実験やシミュレーションにより予め求めて設定しておいた作用力とブレーキ力の関係から、駆動輪70と路面の接地点に作用する進行方向の力を算出する。
【0082】
また、図22に示すように、駆動輪70と路面の接地点に作用する進行方向の力Fxを、電気モータBの電流値Iを検出する電流センサ80の出力、およびブレーキDのブレーキパッド47に作用するブレーキ力εdを検出するブレーキ力センサ88の出力の両方を比較対照して求めるようにすると、進行方向の力Fxの検出精度を向上させられる。
【0083】
ブレーキDが油圧式である場合には、例えばブレーキパッドに押付力を付与したときに荷重を受ける部材、例えばブレーキキャリパに歪みセンサを取付け、この歪みセンサの出力から駆動輪と路面の接地点に作用する進行方向の力を求めることができる。
【0084】
以上の説明では、駆動輪70と路面に作用する3軸方向の力を測定するセンサ80,81,82の出力から、電気モータBの駆動、ブレーキDの作動、サスペンション73の作動を制御するものとしたが、ステアリング装置からの信号も含めて上記各制御を行うと、実際の走行に即した制御を行う上でさらに望ましいものとなる。
また、この発明の車輪用軸受装置は、自動車の車輪の全てに設けても良く、あるいは一部の車輪だけに設けても良い。
【0085】
図23は、この発明の他の実施形態を示す。この実施形態では、図1〜図22に示したインホイール型モータ内蔵センサ付き車輪用軸受装置において、回転検出装置101のエンコーダ102を、減速機Cの出力軸37の外周に設けている。この場合のエンコーダ102は、図8に示したものと同様のアキシアルタイプのものであって、断面をL字形としたリング状の芯金112の円筒部112aの一端から外径側に延びるフランジ部112bの側面の円周方向に、複数の磁極対102aを等配位置に並べて着磁させている。その芯金112の円筒部112aを出力軸37の外周面に圧入することで、エンコーダ102がその磁極対102aを有する側面をアウトボード側に向けた姿勢で減速機Cの出力軸37の外周に取付けられる。センサ103を内蔵したセンサ側ユニット111は、減速機Cのケーシング33のアウトボード側端において径方向に貫通させたセンサ取付孔123に挿通して取付けられ、ユニット111の先端に配置されるセンサ103が、上記エンコーダ102の磁極対102aを有する側面に対してラジアル方向にギャップを介して対向させられる。ここでも、センサ取付孔123の内周面とセンサ側ユニット111との間は、Oリング等の接触シールや、接着剤あるいはねじ等で密封固定される。その他の構成は先の実施形態の場合と同様である。
【0086】
図24は、この発明のさらに他の実施形態を示す。この実施形態では、図23に示したインホイール型モータ内蔵センサ付き車輪用軸受装置において、回転検出装置101のエンコーダ102を、車輪用軸受Aにおける外方部材1と内方部材2の間に形成される環状空間のインボード側端を密閉するシール部材8の一部として設けている。すなわち、この場合のシール部材8は、アキシアルタイプのエンコーダ102と、このエンコーダ102をスリンガとしてこれに摺接する別のシール板124とでなる。エンコーダ102は内方部材2の内輪10の外周面に取付けられる。この場合、エンコーダ102の磁極対102aを有する側面はインボード側を向くように配置される。センサ側ユニット111が減速機Cのケーシング33のアウトボード側端において径方向に貫通させたセンサ取付孔123に挿通して取付けられ、ユニット111の先端に配置されるセンサ103が、上記エンコーダ102の磁極対102aを有する側面に対してラジアル方向にギャップを介して対向させられることは、図23の実施形態の場合と同様である。
前記シール板124は、外方部材1の内周面に圧入される円筒部124aおよびこの円筒部124aのアウトボード側端から内径側へ延びるフランジ部124bからなる断面L字状で環状の部材であって、エンコーダ102の芯金フランジ部112bに摺接するサイドリップ125aと、芯金円筒部112aに摺接するラジアルリップ125b,125cとを一体に有する。これらリップ125a〜125cは、シール板124に加硫接着された弾性部材125の一部として設けられている。このシール板124の円筒部124aとエンコーダ102の芯金フランジ部112bとは僅かな径方向隙間を持って対峙させ、その隙間でラビリンスシールを構成している。その他の構成は図1〜図22に示した実施形態の場合と同様である。
【0087】
このように、この実施形態では、車輪用軸受Aの内方部材1のインボード側端に設けるエンコーダ102を、インボード側のシール部材8の一部として設けているので、車輪用軸受Aのインボード側端における密封性を阻害することなく、回転検出装置101を車輪用軸受Aのインボード側端に取付けることができる。
【0088】
図25は、この発明のさらに他の実施形態を示す。この実施形態では、図2に示したインホイール型モータ内蔵センサ付き車輪用軸受装置において、回転検出装置101のエンコーダ102を、減速機Cの出力軸37の外周面に取り付け、センサ側ユニット111を減速機Cのケーシング33のアウトボード側端に設けている。の他の構成は図1〜図22に示した実施形態の場合と同様である。
【0089】
なお、前記各実施形態は、いずれもハブが、車輪用軸受の内方部材等の構成部品となるハブ輪9からなる場合につき説明したが、車輪用軸受とは別に設けられたハブを用いた車輪用軸受装置にもこの発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0090】
1…外方部材(静止側軌道輪)
2…内方部材(回転側駆動輪)
3,4…転走面
8…シール部材
9…ハブ輪(ハブ)
37…減速機の出力軸
70…駆動輪
80…電流センサ
81…軸方向歪みセンサ
82…径方向歪みセンサ
83…荷重推定手段
88…ブレーキ力センサ
90…接地状態検出手段
100…電気モータの出力ケーブル
101…回転検出装置
102…エンコーダ
102a…磁極対
103…センサ
104…逓倍手段
105…速度検出手段
122…回転検出装置の出力ケーブル
【技術分野】
【0001】
この発明は、車輪用軸受と減速機と電気モータとを組み合わせたインホイール型モータ内蔵車輪用軸受装置において、駆動輪の回転を検出する回転検出装置を設置したインホイール型モータ内蔵センサ付き車輪用軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車輪用軸受と減速機と電気モータとブレーキとを組み合わせたインホイール型モータ内蔵車輪用軸受装置を採用した電気自動車における走行安定性の制御技術として、車輪用軸受、電気モータ、減速機、ブレーキのうちの少なくとも一つの構成要素の状態から、駆動輪と路面の接地点から直交する3軸方向の力を測定するセンサを設けたものが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−74135号公報
【特許文献2】特開2008−249353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したインホイール型モータ内蔵車輪用軸受装置において、電気モータには制御用の回転検出装置が設置されているが、電気モータの出力は減速機を介して車輪用軸受に伝達されるため、電気モータの回転特性は駆動輪とは異なったものとなる。このため、駆動輪側から減速機を通して電気モータに伝達されるトルクは、電気モータのロータに正確に伝わりにくく、前記回転検出装置の検出信号に駆動輪側のトルクが反映されにくい。逆に、この場合の回転検出装置の検出信号は、電気モータの回転ムラが大きく反映されたものとなる。
【0005】
したがって、電気モータに設置された回転検出装置の検出信号を用いて駆動輪の回転を観測しようとした場合には、正確な回転状態を検出するのが難しい。
【0006】
また、駆動輪の回転を観測するのに、一般的な従来の車輪用回転検出装置を設置した場合、この回転検出装置の分解能が駆動輪の1回転あたり40〜50パルス程度であるため、回転検出能力が不足し精密な回転検出を行えない。そこで、インホイール型モータ内蔵車輪用軸受装置を採用した電気自動車において、電気モータや車両の制御を精度良く行うためには、駆動輪の回転状態を正確に検出する機能が必要である。
【0007】
なお、回転検出装置として、磁気エンコーダと逓倍機能を有するセンサとを組み合わせることで高い分解能で回転検出を行い、また逓倍回路の誤差をキャンセルして回転速度を検出できるようにしたものが提案されているが(特許文献2)、このような回転検出装置をインホイール型モータ内蔵車輪用軸受装置に用いた例はない。
【0008】
この発明の目的は、駆動輪の回転状態を正確に検出することができ、電気モータや車両を精度良く制御するのに効果的なインホイール型モータ内蔵センサ付き車輪用軸受装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明のインホイール型モータ内蔵センサ付き車輪用軸受装置は、駆動輪のハブを回転自在に支持する車輪用軸受と、前記駆動輪の回転駆動源となる電気モータと、この電気モータと前記車輪用軸受との間に介在する減速機とを備えるインホイール型モータ内蔵車輪用軸受装置において、前記減速機の出力軸の回転を検出する回転検出装置を設けたことを特徴とする。
この構成によると、減速機の出力軸の回転を検出する回転検出装置を設けたため、駆動輪の回転状態を正確に検出することができる。そのため、路面の状態や駆動輪と路面の接地状態を正確に推測することができ、電気モータや車両を精度良く制御するのに効果的となる。
【0010】
この発明において、前記回転検出装置は、前記車輪用軸受の回転側軌道輪またはこの回転側軌道輪と一体の部材に設けられ円周方向に並ぶ複数の被検出極が等配されたエンコーダと、前記車輪用軸受の静止側軌道輪またはこの静止側軌道輪と一体の部材に設けられ前記エンコーダの被検出極を検出してパルスを発生するセンサと、このセンサの発生するパルスを逓倍して逓倍パルスを生成する逓倍手段とを有するものとするのが望ましい。
この構成の場合、センサの発生するパルスを逓倍手段で逓倍して逓倍パルスを生成するので、高い分解能で駆動輪の回転検出を行うことができる。
【0011】
この発明において、前記回転検出装置は、前記逓倍手段が逓倍パルスを発生する毎に、その逓倍パルスから過去に逓倍数分の逓倍パルスを発生した区間における前記エンコーダの平均速度を検出する速度検出手段を有するものとしても良い。この構成の場合、逓倍回路の誤差をキャンセルして回転速度を検出できるので、高精度に駆動輪の回転速度を検出できる。
【0012】
この発明において、前記回転検出装置の検出する回転速度の変動を演算して、前記駆動輪と路面の接地状態に関する情報を出力する接地状態検出手段を有するものとしても良い。
この構成の場合、路面の状態や駆動輪と路面の接地状態をより正確に推測することができる。また、接地状態検出手段で得られた情報を車両や電気モータの制御に利用することにより、安全性や経済性を向上させることが可能となる。
【0013】
この発明において、前記駆動輪のハブに制動力を与えるブレーキを設け、前記接地状態検出手段は、前記回転速度の変動の演算に加え、前記電気モータの駆動トルクおよび前記ブレーキに作用するブレーキ力の推定値または測定値を用いて前記接地状態に関する情報を出力するものとしても良い。
この構成の場合、接地状態検出手段で演算された回転速度変動がどのような駆動状態で発生しているかを、電気モータの駆動トルクおよび前記ブレーキに作用するブレーキ力から判断することができる。これにより、路面状態などの推定精度を向上させることができる。
【0014】
この発明において、前記回転検出装置からの出力ケーブルと、前記電気モータからの出力ケーブルとを1つにまとめて外部に取り出すようにしても良い。この構成の場合、回転検出装置の出力ケーブルと電気モータの出力ケーブルを1箇所からまとめて外部に取り出せるので、ケーブルの取り回しが容易となり、信頼性も向上する。
【0015】
この発明において、前記回転検出装置のエンコーダを、前記車輪用軸受における複列の転走面間に設けても良い。
【0016】
この発明において、前記回転検出装置のエンコーダを、前記車輪用軸受におけるインボード側端に設けても良い。
【0017】
この発明において、前記回転検出装置のエンコーダを、前記車輪用軸受における静止側軌道輪と回転側軌道輪の間に形成される環状空間のインボード側端を密閉するシール部材の一部として設けても良い。
【0018】
この発明において、前記回転検出装置のエンコーダを前記減速機の出力軸に設けても良い。
【0019】
この発明において、前記電気モータの電流値を測定する電流センサを設け、この電流センサの出力から前記駆動輪と路面の接地点に作用する進行方向の力を推定する荷重推定手段を設けると良い。
駆動輪と路面の接地点に作用する進行方向の力の大きさによって電気モータに流れる電流量が異なるため、予め上記作用力と電流量の関係を実験やシミュレーションにて求めておくことにより、上記作用力の大きさを算出することができる。荷重推定手段は、このように実験やシミュレーションにより予め求めて設定しておいた作用力と電流量の関係から、電流センサの出力により、駆動輪と路面の接地点に作用する進行方向の力を算出する。この方法で進行方向の作用力を求めることにより、同作用力を精度良く検出することができる。
【0020】
この発明において、前記駆動輪のハブに制動力を与えるブレーキと、このブレーキに作用するブレーキ力を測定するブレーキ力センサを設け、このブレーキ力センサの出力から前記駆動輪と路面の接地点に作用する進行方向の力を推定する荷重推定手段を設けると良い。
駆動輪と路面の接地点に作用する進行方向の力の大きさによってブレーキに作用するブレーキ力(すなわち制動力)の大きさが異なるため、予め上記作用力とブレーキ力の関係を実験やシミュレーションにて求めておくことにより、上記作用力の大きさを算出することができる。荷重推定手段は、このように実験やシミュレーションにより予め求めて設定しておいた作用力とブレーキ力の関係から、ブレーキ力センサの出力により、駆動輪と路面の接地点に作用する進行方向の力を算出する。この方法で進行方向の作用力を求めることにより、同作用力を精度良く検出することができる。
【0021】
この発明において、前記車輪用軸受の静止側軌道輪にこの軌道輪の歪みを測定する歪みセンサを設け、この歪みセンサの出力から前記駆動輪と路面の接地点に作用する互いに直交する3軸方向の力のうち少なくとも1軸方向の力を推定する荷重推定手段を設けても良い。
駆動輪と路面の接地点に作用する駆動輪の軸方向の力の大きさによって静止側軌道輪の軸方向歪みの変化が異なるため、予め上記作用力と軸方向歪みの関係を実験やシミュレーションにて求めておくことにより、上記作用力の大きさを算出することができる。荷重推定手段は、このように実験やシミュレーションにより予め求めて設定しておいた作用力と軸方向歪みの関係から、軸方向歪みセンサの出力により、駆動輪と路面の接地点に作用する駆動輪の軸方向の力を算出する。この方法で軸方向の作用力を求めることにより、同作用力を精度良く検出することができる。
【0022】
この発明において、前記車輪用軸受の静止側軌道輪にこの軌道輪の歪みを測定する少なくとも3つ以上の歪みセンサを設け、これらの歪みセンサの出力から前記駆動輪と路面の接地点に作用する互いに直交する3軸方向の力を推定する荷重推定手段を設けても良い。
【発明の効果】
【0023】
この発明のインホイール型モータ内蔵センサ付き車輪用軸受装置は、駆動輪のハブを回転自在に支持する車輪用軸受と、前記駆動輪の回転駆動源となる電気モータと、この電気モータと前記車輪用軸受との間に介在する減速機とを備えるインホイール型モータ内蔵車輪用軸受装置において、前記減速機の出力軸の回転を検出する回転検出装置を設けたため、駆動輪の回転状態を正確に検出することができ、電気モータや車両を精度良く制御するのに効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明の一実施形態にかかるインホイール型モータ内蔵センサ付き車輪用軸受装置の概要図である。
【図2】同車輪用軸受装置の車輪用軸受および減速機の断面図である。
【図3】図2のIII −III 断面図である。
【図4】図3の要部を拡大して示す断面図である。
【図5】同車輪用軸受装置のブレーキの断面図である。
【図6】同車輪用軸受装置に設けられる回転検出装置の概略構成を示すブロック図である。
【図7】(A)は同回転検出装置におけるエンコーダの一構成例を示す半部断面図、(B)は同エンコーダの斜視図である。
【図8】(A)は同回転検出装置におけるエンコーダの他の構成例を示す半部断面図、(B)は同エンコーダの斜視図である。
【図9】同回転検出装置における速度検出手段の構成を示すブロック図である。
【図10】同速度検出手段におけるパルス発生時刻記憶手段および速度算出手段の構成を示すブロック図である。
【図11】速度算出手段における差分演算部の動作説明図である。
【図12】速度算出手段により得られる速度の変化と従来例の方法により得られる速度の変化とを比較して示すグラフである。
【図13】全逓倍パルスを使用して得られる検出速度のプロットと、逓倍パルスを使用しない場合に得られる検出速度のプロットとを比較して示すグラフである。
【図14】車輪用軸受装置の制御系のブロック図である。
【図15】同車輪用軸受装置の軸方向歪みセンサの取付部を拡大した断面図である。
【図16】車輪用軸受の外方部材と軸方向歪みセンサ用センサユニットとを示す正面図である。
【図17】(A)は同センサユニットの平面図、(B)はその側面図である。
【図18】同車輪用軸受装置の径方向歪みセンサの取付部を拡大した断面図である。
【図19】車輪用軸受の外方部材と径方向歪みセンサ用センサユニットとを示す正面図である。
【図20】(A)は同センサユニットの平面図、(B)はその底面図である。
【図21】異なる制御系のブロック図である。
【図22】さらに異なる制御系のブロック図である。
【図23】この発明の他の実施形態にかかるインホイール型モータ内蔵センサ付き車輪用軸受装置における車輪用軸受および減速機の断面図である。
【図24】この発明のさらに他の実施形態にかかるインホイール型モータ内蔵センサ付き車輪用軸受装置における回転検出装置の取付部の拡大断面図である。
【図25】この発明のさらに他の実施形態にかかるインホイール型モータ内蔵センサ付き車輪用軸受装置における回転検出装置の取付部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1ないし図9はこの発明の一実施形態を示す。まず、図1と共にこの実施形態の概要について説明する。このインホイール型モータ内蔵センサ付き車輪用軸受装置は、駆動輪70のハブを回転自在に支持する車輪用軸受Aと、回転駆動源としての電気モータBと、この電気モータBの回転を減速してハブに伝達する減速機Cと、ハブに制動力を与えるブレーキDとを、駆動輪70の中心軸O上に配置したものである。ここで言っていることは、必ずしも各構成要素が中心軸O上に位置するということではなく、各構成要素が中心軸Oに対して機能的に作用しているということである。なお、この明細書において、車両に取付けた状態で車両の車幅方向の外側寄りとなる側をアウトボード側と呼び、車両の中央寄りとなる側をインボード側と呼ぶ。
【0026】
図2に示すように、車輪用軸受Aは、内周に複列の転走面3を形成した外方部材1と、これら各転走面3に対向する転走面4を形成した内方部材2と、これら外方部材1および内方部材2の転走面3,4間に介在した複列の転動体5とで構成される。この車輪用軸受Aは、複列のアンギュラ玉軸受型とされていて、転動体5はボールからなり、各列毎に保持器6で保持されている。上記転走面3,4は断面円弧状であり、各転走面3,4は接触角が背面合わせとなるように形成されている。外方部材1と内方部材2との間の軸受空間のアウトボード側端およびインボード側端は、シール部材7,8でそれぞれシールされている。
【0027】
外方部材1は静止側軌道輪となるものであって、減速機Cのケーシング33に取付けるフランジ1aを外周に有し、全体が一体の部品とされている。フランジ1aには、周方向の複数箇所にボルト挿通孔14が設けられている。外方部材1は、フランジ1aのボルト挿通孔14に挿通した取付ボルト15を前記ケーシング33のネジ孔33aに螺合させることにより、前記ケーシング33に取付けられる。
【0028】
内方部材2は回転側軌道輪となるものであって、駆動輪70およびブレーキ輪46の取付用のハブフランジ9aを有するハブ輪9と、このハブ輪9の軸部9bのインボード側端の外周に嵌合した内輪10とでなる。これらハブ輪9および内輪10に、前記各列の転走面4が形成されている。ハブ輪9のインボード側端の外周には段差を持って小径となる内輪嵌合面12が設けられ、この内輪嵌合面12に内輪10が嵌合している。ハブ輪10の中心には貫通孔11が設けられている。ハブフランジ9aには、周方向複数箇所にハブボルト16の圧入孔17が設けられている。ハブ輪9のハブフランジ9aの根元部付近には、駆動輪70およびブレーキ輪46を案内する円筒状のパイロット部13がアウトボード側に突出している。このパイロット部13の内周には、前記貫通孔11のアウトボード側端を塞ぐキャップ18が取付けられている。なお、ハブ輪9は、特許請求の範囲で言うハブに該当する。
【0029】
電気モータBは、図1のように、筒状のケーシング22に固定したステータ23と出力軸24に取付けたロータ25との間にラジアルギャップを設けたラジアルギャップ型のものである。出力軸24は、2つの軸受26でケーシング22に支持されている。
【0030】
図2および図3に示すように、減速機Cはサイクロイド減速機として構成されている。すなわち、この減速機Cは、外形がなだらかな波状のトロコイド曲線で形成された2枚の曲線板34a,34bを、それぞれ軸受35を介して入力軸32の各偏心部32a,32bに装着し、ケーシング33のイボード側壁とアウトボード側壁の間に差し渡した複数の外ピン36で、各曲線板34a,34bの偏心運動を外周側で案内するとともに、ハブ輪10の貫通孔11にスプライン嵌合されて一体に回転する出力軸37に取付けた複数の内ピン38を、各曲線板34a,34bの内部に設けた複数の貫通孔39に嵌挿挿入したものである。入力軸32は、電気モータBの出力軸24とスプライン結合されて一体に回転するようになっている。なお、入力軸32は出力軸37の内径面と軸受40で支持されている。また、曲線板34a,34bの外形となるトロコイド曲線はサイクロイド曲線であることが好ましいが、その他のトロコイド曲線であっても良い。上記の「サイクロイド減速機」は、トロコイド減速機を含めて称している。
【0031】
電気モータBの出力軸24が回転すると、これと一体回転する入力軸32に取付けられた各曲線板34a,34bが偏心運動を行う。この各曲線板34a,34bの偏心運動が、内ピン38と貫通孔39との係合によって、車輪のハブである内方部材2に回転運動として伝達される。出力軸24の回転に対して内方部材2の回転は減速されたものとなる。例えば、1段のサイクロイド減速機で1/10以上の減速比を得ることができる。
【0032】
前記2枚の曲線板34a,34bは、互いに偏心運動が打ち消されるように180°位相をずらして入力軸32の各偏心部32a,32bに装着され、各偏心部32a,32bの両側には、各曲線板34a,34bの偏心運動による振動を打ち消すように、各偏心部32a,32bの偏心方向と逆方向へ偏心させたカウンターウエイト41が装着されている。
【0033】
図4に示すように、前記各外ピン36と内ピン38には軸受42,43が装着され、これらの軸受42,43の外輪42a,43aが、それぞれ各曲線板34a,34bの外周と各貫通孔39の内周とに転接するようになっている。したがって、外ピン36と各曲線板34a,34bの外周との接触抵抗、および内ピン38と各貫通孔39の内周との接触抵抗を低減し、各曲線板34a,34bの偏心運動をスムーズに内方部材2に回転運動として伝達することができる。
【0034】
図5に示すように、ブレーキDは、駆動輪70と共にハブフランジ9aに取付けられたブレーキ輪46およびこのブレーキ輪46に摩擦接触可能なブレーキパッド47を有する作動部48と、ブレーキパッド47を作動させる駆動部49とを有し、この駆動部49の駆動源としてブレーキ用電気モータ50を用いた電動ブレーキとされている。ブレーキ輪46はブレーキディスクからなる。ブレーキパッド47は、ブレーキ輪46を挟み付けるように一対設けられている。片方のブレーキパッド47は、ブレーキフレーム51に固定され、もう片方のブレーキパッド47は、ブレーキフレーム51に直線的に進退自在に設置された進退部材52に取付けられている。進退部材52の進退可能方向はブレーキ輪46に対面する方向である。進退部材52は、ブレーキフレーム51に対して回り止めされている。
【0035】
駆動部49は、上記ブレーキ用電気モータ50と、この電気モータ50の回転出力を往復直線運動に変換してブレーキパッド47に制動力として伝えるボールねじ53とを有し、電気モータ50の出力は減速伝達機構58を介してボールねじ53に伝達される。ボールねじ53は、ねじ軸54が軸受57を介してブレーキフレーム51に回転のみ自在に支持され、ナット55が上記進退部材52に固定されている。進退部材52とナット55とは、互いに一体の部材であっても良い。
【0036】
ボールねじ53は、ねじ軸54およびナット55と、これらねじ軸54の外周面およびナット55の内周面に対向して形成されたねじ溝間に介在する複数のボール56とを有する。ナット55には、ねじ軸54とナット55の間に介在するボール56を無端の経路で循環させる循環手段(図示せず)を有している。循環手段は、リターンチューブやガイドプレートを用いた外部循環形式のものであっても、エンドチャップや駒を用いた内部循環形式のものであっても良い。また、このボールねじ53は、短い距離を往復動作させるものであるため、上記循環手段を有しない形式のもの、例えばねじ軸54とナット55間の複数のボール56をリテナ(図示せず)で保持したリテナ式のものであっても良い。
【0037】
減速伝達機構58は、ブレーキ用電気モータ50の回転をボールねじ53のねじ軸54に減速して伝える機構であり、ギヤ列で構成されている。減速伝達機構58は、この例では、電気モータ50の出力軸に設けられたギヤ59、およびねじ軸54に設けられて上記ギヤ59に噛み合うギヤ60からなる。減速伝達機構58は、この他に、例えばウォームおよびウォームホイル(図示せず)からなるものとしても良い。
【0038】
このブレーキDは、ブレーキペダル等の操作部材61の操作に従い上記電気モータ50を制御する操作部62を有する。この操作部62には、アンチロック制御手段65が設けられている。操作部62は、上記操作部材61と、この操作部材61の動作量および動作方向を検出可能なセンサ64と、このセンサ64の検出信号に応答して電気モータ50を制御する制御装置63とでなり、この制御装置63に上記アンチロック制御手段65が設けられている。制御装置63は、モータ制御信号を生成する手段およびそのモータ制御信号によりモータ電流を制御可能なモータ駆動回路(いずれも図示せず)を有している。
【0039】
アンチロック制御手段65は、操作部材61の操作による制動時に、駆動輪70の回転に応じて電気モータ50による制動力を調整することで、駆動輪70の回転ロックを防止する手段である。アンチロック制御手段65は、上記制動時に、駆動輪70の回転速度を検出し、検出速度から駆動輪70の回転ロックまたはその兆候が検出されると、電気モータ50の駆動電流を低下させ、または一時的に逆回転出力を発生するなどして、制動力、つまりブレーキパッド47の締め付け力を調整する処理を行う。駆動輪70の回転速度の検出には、後述する回転検出装置101の出力が利用される。
【0040】
図1に示すように、車輪用軸受Aのハブフランジ9aには、前記ブレーキ輪46と共に駆動輪70が取付けられる。駆動輪70は、ホイール71の周囲にタイヤ72を設けたものである。ハブフランジ9aとホイール71との間にブレーキ輪46を挟み込んだ状態で、ハブフランジ9aの圧入孔17に圧入したハブボルト16をホイール71に螺着させることで、駆動輪70およびブレーキ輪46がハブフランジ9aに固定される。
【0041】
図6は、上記回転検出装置101の概略構成を示すブロック図である。この回転検出装置1は、円周方向に並ぶ複数の被検出極が等配されたリング状のエンコーダ102と、このエンコーダ102の前記被検出極を検出してパルスaを発生するセンサ103と、このセンサ103の発生するパルスaを設定された逓倍数Nに逓倍して逓倍パルスbを生成する逓倍手段104と、この逓倍手段104から生成される逓倍パルスbに基づきエンコーダ102の回転速度を検出する速度検出手段105とを備える。
【0042】
エンコーダ102は、図2の車輪用軸受Aにおける内方部材2の外周面の複列の転走面4,4間に、その軸心に対して同心となるように嵌合状態に設置されている。センサ103は、図2に示す例では前記エンコーダ102に対して微小のギャップを介して径方向(ラジアル方向)に対向するように、車輪用軸受Aにおける外方部材1側に設けられる。
【0043】
エンコーダ102は、ラジアルタイプである図2の例では、図7(A),(B)に半部断面図および斜視図で示すように、被検出極として周面の円周方向に複数の磁極対(磁極NとSの対)102aを等配位置に並べて着磁させたリング状の磁気エンコーダからなる。図2では、芯金120の外周に、ゴム磁石、プラスチック磁石等の多極磁石121を設けてエンコーダ102が構成されている。
【0044】
図7のエンコーダ102の構成例は、周面に磁極対102aを着磁させたラジアルタイプであるが、エンコーダ102は図8(A),(B)に半部断面図および斜視図で示すアキシアルタイプのものであっても良い。図8の構成例では、例えは断面をL字形としたリング状の芯金112の円筒部112aの一端から外径側に延びるフランジ部112bの側面の円周方向に、複数の磁極対102aを等配位置に並べて着磁させている。この場合、センサ103は、エンコーダ102の着磁面に対向するように軸方向に向けて配置される。
なお、前記センサ103と前記逓倍手段104が、複数の整列させられた磁気検出素子(図示せず)で構成され、それら複数の磁気検出素子の出力を演算して生成された内部信号に基づいて、あらかじめ定められた逓倍数の出力を生成するものであってもよい。
【0045】
回転検出装置101における上記エンコーダ102を除く構成部はセンサ側ユニット111として一体に構成される。センサ側ユニット111は、図2の例では、車輪用軸受Aの外方部材1に、両転動体5,5間で径方向に貫通させたセンサ取付孔87に挿通して取付けられ、ユニット111の先端に配置されるセンサ103が、上記エンコーダ102にラジアル方向にギャップを介して対向させられる。センサ取付孔87は、例えば断面形状が円形の貫通孔である。センサ取付孔87の内周面とセンサ側ユニット111との間は、Oリング等の接触シールや、接着剤あるいはねじ等で密封固定する。
【0046】
回転検出装置101のセンサ側ユニット111は、センサ取付孔87にほぼ嵌合する外径の軸状の挿入部111aと、非挿入部である頭部111bとを有し、頭部111bは外方部材1の外周面に接して配置される。頭部111bから出力ケーブル122が引き出されている。出力ケーブル122は、図1のように、電気モータBの出力ケーブル100や図示しない他のケーブルとともに1つにまとめられて、1箇所から外部に取り出される。これにより、出力ケーブル100,122の取り回しが容易となって、信頼性も向上する。
【0047】
速度検出手段105は、前記逓倍手段104が逓倍パルスbを発生する毎に、その発生した逓倍パルスbの過去の逓倍数N分の逓倍パルスbを発生した区間におけるエンコーダ102の平均回転速度を順次検出する。この場合に、速度検出手段105は、逓倍手段104から出力される逓倍情報cを用いて上記回転速度の検出を行う。逓倍情報cとは、設定されている逓倍数の状態など、速度検出手段105が演算に必要とする逓倍手段104の動作状態の情報である。前記速度検出手段105は、具体的には図9に示すように、パルス生成時刻記憶手段106と、タイマ107と、速度算出手段108とを有する。
【0048】
パルス生成時刻記憶手段106は、前記逓倍数N分の逓倍パルスbの生成時刻を記憶する記憶エリアを有する。このパルス生成時刻記憶手段106の記憶エリアの一構成例を図10に示す。同図において、時刻t1 ,t2 ,…,tN-1 ,tN は連続するN個分の逓倍パルスbの生成時刻である。パルス生成時刻記憶手段106は、先入れ先出し形式で最新の逓倍数N個分の時刻を記憶するキュー等の記憶手段であり、最も古い記憶内容が消去されるように、記憶エリア列における順次隣の記憶エリアに記憶内容を移し、空となった先頭の記憶エリアに最新の時刻を入力する。
タイマ107は、逓倍パルスbが発生する都度、その生成時刻(具体的には逓倍パルスの立ち上がり時の時刻)を計時して前記パルス生成時刻記憶手段106に記憶させる。このとき、上記のように、パルス生成時刻記憶手段106の記憶内容が、最新の逓倍数N分の逓倍パルスbの生成時刻となるように更新する。
なお、ここで言う「タイマ107」は、本来のタイマの機能も持つ計時部と、この計時部で計時した時刻をパルス生成時刻記憶手段106に入力する入力処理部とを含む計時・入力処理手段を言う。
【0049】
速度算出手段108では、前記パルス生成時刻記憶手段106に最新の逓倍パルスの生成時刻が記憶されると同時に、図10に示すように、前記最新の逓倍パルスbの生成時刻とパルス生成時刻記憶手段106に記憶された逓倍数N分だけ過去の逓倍パルスbの生成時刻との差分を差分演算部108aで計算し、この差分を用いて前記平均回転速度を平均速度演算部108bで算出する。
例えば、連続して生成される逓倍パルスbの出力波形を示す図11において、最新の逓倍パルスbの生成時刻tN がパルス生成時刻記憶手段106に記憶されると同時に、速度算出手段108では、前記生成時刻tN と逓倍数N分だけ過去の逓倍パルスbの生成時刻t1 との差分(tN −t1 )を差分演算部108aで計算し、この差分を用いて、平均回転速度(角速度)vを
v=Δθ/(tN −t1 )
として平均速度演算部108bで算出する。ただし、Δθは、前記エンコーダ102における1磁極対102a分の周回角度である。すなわち、前記エンコーダ102の磁極対102a(図7,図8)の数をmとすると、Δθは
Δθ=360°/m
として求められる値である。
同様に、次の逓倍パルスbの生成時刻tN+1 がパルス生成時刻記憶手段106に記憶されると、速度算出手段108では、その生成時刻tN+1 と逓倍数N分だけ過去の逓倍パルスの生成時刻t2 との差分(tN+1 −t2 )を差分演算部108aで計算し、平均回転速度vを
v=Δθ/(tN+1 −t2 )
として平均速度演算部108bで算出する。
【0050】
逓倍手段104で生成する逓倍パルスbには、図11のようにピッチ誤差があるが、この誤差パターンは、エンコーダ102における磁極対102a毎に繰り返される再現性のある特性を持つ。したがって、上記したように、磁極対102aの周回角度Δθを、センサ103の発生するパルスaを逓倍して生成されるN個分の逓倍パルスaの区間(例えばtN −t1 )で割り算して回転角度vを検出すると、ピッチ誤差によるばらつきが平均化されて、図12にAで示すように検出速度の誤差を小さく抑えることができる。しかも、逓倍パルスbの生成に同期して速度検出が行われるので、検出分解能も高めることができる。
これに対して、図11における逓倍パルスbの一つ一つのパルスピッチに相当する回転角度Δθi と、前記パルスピッチの時間間隔Tとから、速度vを
v=Δθi /T
として算出した場合、図12にBで示すように検出速度の誤差の変動が大きい。
【0051】
また、この実施形態の回転検出装置101では、図6に示すように、前記逓倍手段104で生成した逓倍パルスを回転パルスとして出力する回転パルス出力手段109と、前記速度検出手段105で検出した平均回転速度を速度信号として出力する速度信号出力手段110とを有する。速度信号出力手段110からの速度信号は、回転パルス出力手段109からの回転パルスの出力と同期して出力される。このように回転パルスと速度信号との両方が出力されると、この回転検出装置101が搭載されるインホイール型モータ内蔵センサ付き車輪用軸受装置での処理回路を省略または簡略化できてコンパクト化が可能となる。
【0052】
図6の構成において、センサ103、逓倍手段104、および速度検出手段105を、共通のセンサチップに集積するか、または共通の基板に設けて一体化しても良い。このように構成した場合、1つのセンサチップあるいは基板から回転パルスと速度信号が出力されるため、回転検出装置101のコンパクト化が可能で、信号処理回路を省略することができる。
【0053】
このように、この回転検出装置101では、センサ3の発生するパルスaを逓倍した逓倍パルスbを全て使用して速度検出を行うので、図13に×印で示すように速度検出のレートつまり速度検出のサンプリング回数を増やすことができ、その検出速度vを利用したアンチロック制御手段65での電気モータ50の制御や、インホイール型モータ内蔵センサ付き車輪用軸受装置自体の電気モータBの制御などにおいて制御の応答性を高めることができる。また、細かな速度変動を高精度に検出することができる。なお、同図において、▲印は、逓倍パルスbを使用しない場合、つまりセンサ103の発生するパルスaだけを使用して速度検出を行う場合の検出速度vの変化を示す。
【0054】
この車輪用軸受装置は、電気モータBのケーシング22の外周部に取付けたサスペンション73を介して車体( 図示せず) に固定される。サスペンション73には、駆動輪70と路面の接地点に作用する力を減衰して車体に伝える減衰手段74が設けられている。この減衰手段74は、ダンパ、ショックアブソーバ等からなる。減衰手段74は、電動で作動させて減衰の程度を変化させられるようになっている。
【0055】
駆動輪70と路面の接地点に作用する力は、互いに直交する進行方向の力Fxと、駆動輪の軸方向の力Fyと、鉛直方向の力Fzとが複合されたものである。車輪用軸受装置には、これら3軸方向の力をそれぞれ個別に測定するセンサが設けられている。進行方向の力Fxは、電気モータBの電流値Iを検出する電流センサ80の出力から求められる。駆動輪の軸方向の力Fyは、車輪用軸受Aの静止側軌道輪である外方部材1の軸方向歪みεyを検出する軸方向歪みセンサ81(図1)の出力から求められる。鉛直方向の力Fzは、車輪用軸受Aの静止側軌道輪である外方部材1の径方向歪みεzを検出する径方向歪みセンサ82(図1)の出力から求められる。
【0056】
図14に示すように、前記回転検出装置101は接地状態検出手段90に接続されている。接地状態検出手段90は、回転検出装置101の検出する回転速度の変動を演算して、駆動輪70と路面の接地状態に関する情報を出力する手段であり、例えば自動車の電気制御ユニット(ECU)85に設けられている。この接地状態検出手段90は、前記各センサ80,81,82の出力を処理する荷重推定手段83および異常判定手段84を有する。荷重推定手段83は、前記各センサ80、81,82の出力から駆動輪70の接地点に作用する力を推定する。接地状態検出手段90は、車輪用軸受装置ごとに設けた回路基板等の電子回路装置(図示せず)に組み込んだものであっても良い。電気制御ユニット85の出力側には、電気モータB、ブレーキCの電気モータ50、およびサスペンションDの減衰手段74が接続されている。
【0057】
接地状態検出手段90には、前記回転検出装置101のほか、電気モータBの駆動トルクを検出するトルクセンサ130やブレーキDに作用するブレーキ力(すなわち制動力)を検出するブレーキ力センサ88も接続されていて、前記回転速度の変動のほか、電気モータBの駆動トルクおよびブレーキ力の推定値または測定値も用いて、接地状態に関する情報を出力するようにされている。
【0058】
駆動輪70と路面の接地点に作用する進行方向の力の大きさによって電気モータBに流れる電流量が異なるため、予め上記作用力と電流量の関係を実験やシミュレーションにて求めておくことにより、上記作用力の大きさを算出することができる。荷重推定手段83は、このように実験やシミュレーションにより予め求めて設定しておいた作用力と電流量の関係から、電気モータ50の出力により、駆動輪と路面の接地点に作用する進行方向の力を算出する。
【0059】
また、駆動輪70と路面の接地点に作用する駆動輪70の軸方向の力の大きさによって静止側軌道輪である外方部材1の軸方向歪みが異なるため、予め上記作用力と軸方向歪みの関係を実験やシミュレーションにて求めておくことにより、上記作用力の大きさを算出することができる。荷重推定手段83は、このように実験やシミュレーションにより予め求めて設定しておいた作用力と軸方向歪みの関係から、軸方向歪みセンサ81の出力により、駆動輪と路面の接地点に作用する駆動輪70の軸方向の力を算出する。
【0060】
また、駆動輪70と路面の接地点に作用する鉛直方向の力の大きさによって静止側軌道輪である外方部材1の径方向歪みの変化が異なるため、予め上記作用力と径方向歪みの関係を実験やシミュレーションにて求めておくことにより、上記作用力の大きさを算出することができる。荷重推定手段83は、このように実験やシミュレーションにより予め求めて設定しておいた作用力と径方向歪みの関係から、径方向歪みセンサ82の出力により、駆動輪と路面の接地点に作用する鉛直方向の力を算出する。
【0061】
このように、接地状態検出手段90では、駆動輪70の回転速度の変動を演算し、路面の状態や駆動輪70と路面の接地状態に関する情報を出力するようにしているので、路面の状態や接地状態をより正確に推測することができる。このようにして得られる各種情報を、電気モータBの制御や車両の姿勢制御に利用することにより安全性や経済性を向上させることができる。例えば、車両の旋回が円滑に行われるように、前記情報を電気モータBに出力して左右の駆動輪70の回転速度を制御する。制動時に駆動輪70のロックが生じないように、ブレーキDの電気モータ50に前記情報を出力して制動を制御する。旋回時に車体が左右に大きく傾いたり、加速時や制動時に車体が前後に大きく傾いたりするのを防止するために、サスペンション73の減衰手段74に前記情報を出力してサスペンション制御を行う。また、異常判定手段84は、前記3軸方向の力が許容値を超えたと判断される場合に、異常信号を出力する。この異常信号も、自動車の車両制御に使用することができる。さらに、リアルタイムで駆動輪70と路面間の作用力を出力すると、よりきめ細かな姿勢制御が可能となる。
【0062】
さらに、接地状態検出手段90では、駆動輪70の回転速度変動のほか、電気モータMの駆動トルクおよびブレーキDに作用するブレーキ力の推定値または測定値も用いて、接地状態に関する情報を出力するようにしているので、得られる回転速度変動がどのような駆動状態で発生しているかを判断することができる。これにより、路面の状態や接地状態の推定精度を向上させることができる。例えば、駆動トルクの大きさに応じて、前記荷重推定手段83での計算パラメータを変更するマッピング方法変更手段を設けることにより、より正確な荷重を推定することができる。
【0063】
軸方向歪みセンサ81は、例えば図15ないし図17に示すように設置する。すなわち、センサ取付部材92に軸方向歪みセンサ81を取付けてセンサユニット91とし、このセンサユニット91を車輪用軸受Aの外方部材1の外周部に固定する。センサ取付部材92は、外方部材1のねじ孔14の近傍に接触固定される第1の接触固定部92aと、外方部材1の外周面に接触固定される第2の接触固定部92bとを有している。また、センサ取付部材92は、前記第1の接触固定部92aを含む径方向に沿った径方向部位92cと、前記第2の接触固定部92bを含む軸方向に沿った軸方向部位92dとでL字の形状に構成されている。径方向部位92cは、軸方向部位92dに比べ、剛性が低くなるよう肉厚を薄くしてある。軸方向歪みセンサ81は、この剛性の低い径方向部位92cに取付けられている。
【0064】
上記センサユニット91は、センサ取付部材92の第1および第2の接触固定部92a,92bにより、両接触固定部92a,92bが外方部材1の周方向に対して同位相の位置となるように、外方部材1の外周部に固定される。第1および第2の接触固定部92a,92bを周方向において同位相とすると、センサ取付部材92の長さを短くすることができるため、センサユニット91の設置が容易である。軸方向歪みセンサ81は、センサ取付部材92に例えば接着剤を用いて固定される。
【0065】
センサ取付部材92は、外方部材1への固定により塑性変形を起こさない形状や材質とされている。また、センサ取付部材92は、車輪用軸受Aに予想される最大の荷重が印加された場合でも、塑性変形を起こさない形状とする必要がある。上記の想定される最大の力は、車両故障につながらない走行において想定される最大の力である。センサ取付部材92に塑性変形が生じると、外方部材1の変形がセンサ取付部材92に正確に伝わらず、歪みの測定に影響を及ぼすためである。
【0066】
センサ取付部材92は、例えばプレス加工により製作することができる。センサ取付部材92をプレス加工品とすると、コストダウンが可能になる。
また、センサ取付部材92は、金属粉末射出成形による焼結金属品としてもよい。金属粉末射出成形は、金属、金属間化合物等の成形技術の一つであり、金属粉末をバインダーと混練する工程、この混練物を用いて射出成型する工程、成形体の脱脂処理を行なう工程、成形体の焼結を行なう工程を含む。この金属粉末射出成形によれば、一般の粉末冶金に比べて焼結密度の高い焼結体が得られ、焼結金属品を高い寸法精度で製作することができ、また機械的強度も高いという利点がある。
【0067】
軸方向歪みセンサ81としては、種々のものを使用することができる。例えば、軸方向歪みセンサ81が金属箔ストレインゲージで構成されている場合、この金属箔ストレインゲージの耐久性を考慮すると、車輪用軸受に予想される最大の荷重が印加された場合でも、センサ取付部材92における軸方向歪みセンサ81の取付部分の歪み量が1500マイクロストレイン以下であることが好ましい。同様の理由から、軸方向歪みセンサ81が半導体ストレインゲージで構成されている場合は、同歪み量が1000マイクロストレイン以下であることが好ましい。また、軸方向歪みセンサ81が厚膜式センサで構成されている場合は、同歪み量が1500マイクロストレイン以下であることが好ましい。
【0068】
センサ取付部材92およびこのセンサ取付部材92に取付けた軸方向歪みセンサ81からなるセンサユニット91を外方部材1に取付ける構成としたため、軸方向荷重検出用のセンサをコンパクトに設置できる。センサ取付部材92は外方部材1に取付けられる簡易な部品であるため、これに軸方向歪みセンサ81を取付けることで、量産性に優れたものとでき、コスト低下が図れる。
【0069】
駆動輪70と路面の接地点に作用する軸方向の力により駆動輪70のハブである内方部材2に荷重が印加されると、転動体5を介して外方部材1が変形し、その変形は外方部材1に取付けられたセンサ取付部材92に伝わり、センサ取付部材92が変形する。そのセンサ取付部材92の歪みを軸方向歪みセンサ81により測定する。この際、センサ取付部材92の径方向部位92cは外方部材1のフランジ1aの変形に従って変形する。この実施形態の場合、外方部材1と比べ前記径方向部位92cは剛性が低く、かつセンサ取付部材92は剛性の低い径方向部位92cと剛性の高い軸方向部位92dとで構成されたL字形をしているため、径方向部位92cと軸方向部位92dとの間である径方向部位92c側の角部92e付近に歪みが集中し、外方部材1よりも大きな歪みとなって現れる。すなわち、径方向部位92cと軸方向部位92dとの間で発生する歪みは、フランジ1aの基端のR部1bの歪みを転写かつ拡大したものとなる。この歪みを軸方向歪みセンサ81で測定するため、外方部材1の歪みを感度良く検出でき、歪み測定精度が高くなる。また、この高精度で測定された軸方向歪みにより、駆動輪70と路面の接地点に作用する軸方向の力を算出するため、算出される軸方向の力も精度の高いものとなる。
【0070】
径方向歪みセンサ82は、例えば図18ないし図20に示すように設置する。すなわち、センサ取付部材94に径方向歪みセンサ82を取付けてセンサユニット93とし、このセンサユニット93を減速機Cのケーシング33のアウトボード側面に固定する。センサ取付部材94は先端が鉤状に屈曲した細長い部材で、このセンサ取付部材94の先端に変位センサからなる径方向歪みセンサ82が取付けられている。センサ取付部材94の基部は、ケーシング33へ取付けるための接触固定部94aとなっている。
【0071】
センサ取付部材94の接触固定部94aを接着剤等でケーシング33のアウトボード側面に固定することにより、センサユニット93がケーシング33に取付けられる。この実施形態の場合、径方向歪みセンサ82は例えば渦電流式等の非接触型の変位センサであり、径方向歪みセンサ82は、外方部材1の外周面の径方向の変位を測定するように、外方部材1の外周面に対して所定の間隔を開けてセンサユニット93に取り付けられている。径方向歪みセンサ82を対向させる外方部材1の軸方向位置は、例えばアウトボード側列の転走面3の付近、または転走面3よりもアウトボード側の位置とされる。外方部材1における転走面3よりもアウトボード側の部分は、他の部分に比べて荷重に対する径方向の変形が比較的大きくなる。センサ取付部材94は、センサユニット93をケーシング33に取付けた状態において、外力によって変形しない剛性をもつ材質で構成されている。
【0072】
径方向歪みセンサ82用の変位センサとしては、渦電流式の他に、磁気式、光学式、超音波式、接触式等のセンサや、あるいはこれら以外の形式の変位を検出可能なセンサを用いることができる。各種条件に合わせて、適当なセンサを選択すれば良い。
【0073】
センサ取付部材94およびこのセンサ取付部材94に取付けた径方向歪みセンサ82からなるセンサユニット93を外方部材1に取付ける構成としたため、鉛直方向荷重検出用のセンサをコンパクトに設置できる。センサ取付部材94は外方部材1に取付けられる簡易な部品であるため、これに径方向歪みセンサ82を取付けることで、量産性に優れたものとでき、コスト低下が図れる。
【0074】
駆動輪70と路面の接地点に作用する鉛直方向の力により駆動輪70のハブである内方部材2に荷重が印加されると、転動体5を介して外方部材1が変形し、その変形による外方部材1の径方向の変位を、減速機Cのケーシング33のアウトボード側に取付けられたセンサ取付部材94に設けた径方向歪みセンサ82により測定する。この際、測定対象となる外方部材1の外周面は周囲と比較して径方向に大きく変位する部位であるため、外方部材1の径方向変位を感度良く測定できる。また、この高精度で測定された径方向歪みにより、駆動輪70と路面の接地点に作用する鉛直方向の力を算出するため、算出される鉛直方向の力も精度の高いものとなる。
【0075】
この実施形態において、前記回転検出装置101から出力される逓倍パルスを分周する分周回路を電気モータBのユニット内に設け、回転検出装置101で得られる高分解能の回転信号を従来のABS(アンチロックブレーキシステム)制御装置で用いられる分解能に合わせた回転信号に変換するようにしても良い。この場合、回転検出装置101で得られる高分解能の回転信号を電気モータBの制御に利用でき、既存の車両制御装置をそのまま利用することができる。
【0076】
この実施形態では、軸方向歪みセンサ81および径方向歪みセンサ82で外方部材1の軸方向歪みおよび径方向歪みを測定する場合につき説明したが、軸方向歪みセンサ81および径方向歪みセンサ82で車輪用軸受Aの他の構成部品、例えば内方部材2の軸方向歪みおよび径方向歪みを測定するようにしても良い。
また、この実施形態では、内方部材がハブの一部を構成する第3世代型の車輪用軸受Aとしたが、内方部材と車輪のハブとが互いに独立した第1または第2世代型の車輪用軸受としても良い。さらに、各世代形式のテーパころタイプである車輪用軸受としても良い。
【0077】
例えば、この車輪用軸受装置を自動車の4輪に設け、4輪を独立して電気モータBで駆動する場合、それぞれの駆動輪70の回転数を上記した回転検出装置101で検出して車両姿勢を安定させるアルゴリズムを構築する。
【0078】
この車輪用軸受装置は、ブレーキDが電気モータ50でブレーキパッド47を移動させる電動ブレーキであるため、油圧式のブレーキで発生する油漏れによる環境汚染を回避することができる。また、電動ブレーキであるため、ブレーキパッド47の移動量を素早く調整することができ、旋回時における左右の駆動輪70の回転速度制御の応答性を向上させられる。
【0079】
また、この車輪用軸受装置は、サスペンション73の減衰手段74を電動で作動させるため、サスペンション制御の応答性を向上させることができ、車両姿勢を安定させられる。
【0080】
上記実施形態の制御系は、駆動輪70と路面の接地点に作用する進行方向の力Fxを、電気モータBの電流値Iを検出する電流センサ80の出力から求めるようにしたが、図21に示すように、進行方向の力Fxを、ブレーキDのブレーキパッド47に作用するブレーキ力εdを検出するブレーキ力センサ88の出力から求めるようにしてもよい。
【0081】
駆動輪70と路面の接地点に作用する進行方向の力の大きさによってブレーキDのブレーキパッド47に作用するブレーキ力の大きさが異なるため、予め上記作用力とブレーキ力の関係を実験やシミュレーションにて求めておくことにより、上記作用力の大きさを算出することができる。推定手段83は、このように実験やシミュレーションにより予め求めて設定しておいた作用力とブレーキ力の関係から、駆動輪70と路面の接地点に作用する進行方向の力を算出する。
【0082】
また、図22に示すように、駆動輪70と路面の接地点に作用する進行方向の力Fxを、電気モータBの電流値Iを検出する電流センサ80の出力、およびブレーキDのブレーキパッド47に作用するブレーキ力εdを検出するブレーキ力センサ88の出力の両方を比較対照して求めるようにすると、進行方向の力Fxの検出精度を向上させられる。
【0083】
ブレーキDが油圧式である場合には、例えばブレーキパッドに押付力を付与したときに荷重を受ける部材、例えばブレーキキャリパに歪みセンサを取付け、この歪みセンサの出力から駆動輪と路面の接地点に作用する進行方向の力を求めることができる。
【0084】
以上の説明では、駆動輪70と路面に作用する3軸方向の力を測定するセンサ80,81,82の出力から、電気モータBの駆動、ブレーキDの作動、サスペンション73の作動を制御するものとしたが、ステアリング装置からの信号も含めて上記各制御を行うと、実際の走行に即した制御を行う上でさらに望ましいものとなる。
また、この発明の車輪用軸受装置は、自動車の車輪の全てに設けても良く、あるいは一部の車輪だけに設けても良い。
【0085】
図23は、この発明の他の実施形態を示す。この実施形態では、図1〜図22に示したインホイール型モータ内蔵センサ付き車輪用軸受装置において、回転検出装置101のエンコーダ102を、減速機Cの出力軸37の外周に設けている。この場合のエンコーダ102は、図8に示したものと同様のアキシアルタイプのものであって、断面をL字形としたリング状の芯金112の円筒部112aの一端から外径側に延びるフランジ部112bの側面の円周方向に、複数の磁極対102aを等配位置に並べて着磁させている。その芯金112の円筒部112aを出力軸37の外周面に圧入することで、エンコーダ102がその磁極対102aを有する側面をアウトボード側に向けた姿勢で減速機Cの出力軸37の外周に取付けられる。センサ103を内蔵したセンサ側ユニット111は、減速機Cのケーシング33のアウトボード側端において径方向に貫通させたセンサ取付孔123に挿通して取付けられ、ユニット111の先端に配置されるセンサ103が、上記エンコーダ102の磁極対102aを有する側面に対してラジアル方向にギャップを介して対向させられる。ここでも、センサ取付孔123の内周面とセンサ側ユニット111との間は、Oリング等の接触シールや、接着剤あるいはねじ等で密封固定される。その他の構成は先の実施形態の場合と同様である。
【0086】
図24は、この発明のさらに他の実施形態を示す。この実施形態では、図23に示したインホイール型モータ内蔵センサ付き車輪用軸受装置において、回転検出装置101のエンコーダ102を、車輪用軸受Aにおける外方部材1と内方部材2の間に形成される環状空間のインボード側端を密閉するシール部材8の一部として設けている。すなわち、この場合のシール部材8は、アキシアルタイプのエンコーダ102と、このエンコーダ102をスリンガとしてこれに摺接する別のシール板124とでなる。エンコーダ102は内方部材2の内輪10の外周面に取付けられる。この場合、エンコーダ102の磁極対102aを有する側面はインボード側を向くように配置される。センサ側ユニット111が減速機Cのケーシング33のアウトボード側端において径方向に貫通させたセンサ取付孔123に挿通して取付けられ、ユニット111の先端に配置されるセンサ103が、上記エンコーダ102の磁極対102aを有する側面に対してラジアル方向にギャップを介して対向させられることは、図23の実施形態の場合と同様である。
前記シール板124は、外方部材1の内周面に圧入される円筒部124aおよびこの円筒部124aのアウトボード側端から内径側へ延びるフランジ部124bからなる断面L字状で環状の部材であって、エンコーダ102の芯金フランジ部112bに摺接するサイドリップ125aと、芯金円筒部112aに摺接するラジアルリップ125b,125cとを一体に有する。これらリップ125a〜125cは、シール板124に加硫接着された弾性部材125の一部として設けられている。このシール板124の円筒部124aとエンコーダ102の芯金フランジ部112bとは僅かな径方向隙間を持って対峙させ、その隙間でラビリンスシールを構成している。その他の構成は図1〜図22に示した実施形態の場合と同様である。
【0087】
このように、この実施形態では、車輪用軸受Aの内方部材1のインボード側端に設けるエンコーダ102を、インボード側のシール部材8の一部として設けているので、車輪用軸受Aのインボード側端における密封性を阻害することなく、回転検出装置101を車輪用軸受Aのインボード側端に取付けることができる。
【0088】
図25は、この発明のさらに他の実施形態を示す。この実施形態では、図2に示したインホイール型モータ内蔵センサ付き車輪用軸受装置において、回転検出装置101のエンコーダ102を、減速機Cの出力軸37の外周面に取り付け、センサ側ユニット111を減速機Cのケーシング33のアウトボード側端に設けている。の他の構成は図1〜図22に示した実施形態の場合と同様である。
【0089】
なお、前記各実施形態は、いずれもハブが、車輪用軸受の内方部材等の構成部品となるハブ輪9からなる場合につき説明したが、車輪用軸受とは別に設けられたハブを用いた車輪用軸受装置にもこの発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0090】
1…外方部材(静止側軌道輪)
2…内方部材(回転側駆動輪)
3,4…転走面
8…シール部材
9…ハブ輪(ハブ)
37…減速機の出力軸
70…駆動輪
80…電流センサ
81…軸方向歪みセンサ
82…径方向歪みセンサ
83…荷重推定手段
88…ブレーキ力センサ
90…接地状態検出手段
100…電気モータの出力ケーブル
101…回転検出装置
102…エンコーダ
102a…磁極対
103…センサ
104…逓倍手段
105…速度検出手段
122…回転検出装置の出力ケーブル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動輪のハブを回転自在に支持する車輪用軸受と、前記駆動輪の回転駆動源となる電気モータと、この電気モータと前記車輪用軸受との間に介在する減速機とを備えるインホイール型モータ内蔵車輪用軸受装置において、
前記減速機の出力軸の回転を検出する回転検出装置を設けたことを特徴とするインホイール型モータ内蔵センサ付き車輪用軸受装置。
【請求項2】
請求項1において、前記回転検出装置は、前記車輪用軸受の回転側軌道輪またはこの回転側軌道輪と一体の部材に設けられ円周方向に並ぶ複数の被検出極が等配されたエンコーダと、前記車輪用軸受の静止側軌道輪またはこの静止側軌道輪と一体の部材に設けられ前記エンコーダの被検出極を検出してパルスを発生するセンサと、このセンサの発生するパルスを逓倍して逓倍パルスを生成する逓倍手段とを有するインホイール型モータ内蔵センサ付き車輪用軸受装置。
【請求項3】
請求項2において、前記回転検出装置は、前記逓倍手段が逓倍パルスを発生する毎に、その逓倍パルスから過去に逓倍数分の逓倍パルスを発生した区間における前記エンコーダの平均速度を検出する速度検出手段を有するインホイール型モータ内蔵センサ付き車輪用軸受装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、前記回転検出装置の検出する回転速度の変動を演算して、前記駆動輪と路面の接地状態に関する情報を出力する接地状態検出手段を有するインホイール型モータ内蔵センサ付き車輪用軸受装置。
【請求項5】
請求項4において、前記駆動輪のハブに制動力を与えるブレーキを設け、前記接地状態検出手段は、前記回転速度の変動の演算に加えて、前記電気モータの駆動トルクおよび前記ブレーキに作用するブレーキ力の推定値または測定値を用いて前記接地状態に関する情報を出力するインホイール型モータ内蔵センサ付き車輪用軸受装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、前記回転検出装置からの出力ケーブルと、前記電気モータの制御ユニットからの出力ケーブルとを1つにまとめたインホイール型モータ内蔵センサ付き車輪用軸受装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項において、前記回転検出装置のエンコーダを、前記車輪用軸受における複列の転走面間に設けたインホイール型モータ内蔵センサ付き車輪用軸受装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項において、前記回転検出装置のエンコーダを、前記車輪用軸受におけるインボード側端に設けたインホイール型モータ内蔵センサ付き車輪用軸受装置。
【請求項9】
請求項8において、前記回転検出装置のエンコーダを、前記車輪用軸受における静止側軌道輪と回転側軌道輪の間に形成される環状空間のインボード側端を密閉するシール部材の一部として設けたインホイール型モータ内蔵センサ付き車輪用軸受装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項において、前記回転検出装置のエンコーダを前記減速機の出力軸に設けたインホイール型モータ内蔵センサ付き車輪用軸受装置。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のいずれか1項において、前記電気モータの電流値を測定する電流センサを設け、この電流センサの出力から前記駆動輪と路面の接地点に作用する進行方向の力を推定する荷重推定手段を設けたインホイール型モータ内蔵センサ付き車輪用軸受装置。
【請求項12】
請求項1ないし請求項10のいずれか1項において、前記駆動輪のハブに制動力を与えるブレーキと、このブレーキに作用するブレーキ力を測定するブレーキ力センサを設け、このブレーキ力センサの出力から前記駆動輪と路面の接地点に作用する進行方向の力を推定する荷重推定手段を設けたインホイール型モータ内臓センサ付き車輪用軸受装置。
【請求項13】
請求項1ないし請求項10のいずれか1項において、前記車輪用軸受の静止側軌道輪にこの軌道輪の歪みを測定する歪みセンサを設け、この歪みセンサの出力から前記駆動輪と路面の接地点に作用する互いに直交する3軸方向の力のうち少なくとも1軸方向の力を推定する荷重推定手段を設けたインホイール型モータ内蔵センサ付き車輪用軸受装置。
【請求項14】
請求項1ないし請求項10のいずれか1項において、前記車輪用軸受の静止側軌道輪にこの軌道輪の歪みを測定する少なくとも3つ以上の歪みセンサを設け、これら歪みセンサの出力から前記駆動輪と路面の接地点に作用する互いに直交する3軸方向の力を推定する荷重推定手段を設けたインホイール型モータ内蔵センサ付き車輪用軸受装置。
【請求項1】
駆動輪のハブを回転自在に支持する車輪用軸受と、前記駆動輪の回転駆動源となる電気モータと、この電気モータと前記車輪用軸受との間に介在する減速機とを備えるインホイール型モータ内蔵車輪用軸受装置において、
前記減速機の出力軸の回転を検出する回転検出装置を設けたことを特徴とするインホイール型モータ内蔵センサ付き車輪用軸受装置。
【請求項2】
請求項1において、前記回転検出装置は、前記車輪用軸受の回転側軌道輪またはこの回転側軌道輪と一体の部材に設けられ円周方向に並ぶ複数の被検出極が等配されたエンコーダと、前記車輪用軸受の静止側軌道輪またはこの静止側軌道輪と一体の部材に設けられ前記エンコーダの被検出極を検出してパルスを発生するセンサと、このセンサの発生するパルスを逓倍して逓倍パルスを生成する逓倍手段とを有するインホイール型モータ内蔵センサ付き車輪用軸受装置。
【請求項3】
請求項2において、前記回転検出装置は、前記逓倍手段が逓倍パルスを発生する毎に、その逓倍パルスから過去に逓倍数分の逓倍パルスを発生した区間における前記エンコーダの平均速度を検出する速度検出手段を有するインホイール型モータ内蔵センサ付き車輪用軸受装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、前記回転検出装置の検出する回転速度の変動を演算して、前記駆動輪と路面の接地状態に関する情報を出力する接地状態検出手段を有するインホイール型モータ内蔵センサ付き車輪用軸受装置。
【請求項5】
請求項4において、前記駆動輪のハブに制動力を与えるブレーキを設け、前記接地状態検出手段は、前記回転速度の変動の演算に加えて、前記電気モータの駆動トルクおよび前記ブレーキに作用するブレーキ力の推定値または測定値を用いて前記接地状態に関する情報を出力するインホイール型モータ内蔵センサ付き車輪用軸受装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、前記回転検出装置からの出力ケーブルと、前記電気モータの制御ユニットからの出力ケーブルとを1つにまとめたインホイール型モータ内蔵センサ付き車輪用軸受装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項において、前記回転検出装置のエンコーダを、前記車輪用軸受における複列の転走面間に設けたインホイール型モータ内蔵センサ付き車輪用軸受装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項において、前記回転検出装置のエンコーダを、前記車輪用軸受におけるインボード側端に設けたインホイール型モータ内蔵センサ付き車輪用軸受装置。
【請求項9】
請求項8において、前記回転検出装置のエンコーダを、前記車輪用軸受における静止側軌道輪と回転側軌道輪の間に形成される環状空間のインボード側端を密閉するシール部材の一部として設けたインホイール型モータ内蔵センサ付き車輪用軸受装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項において、前記回転検出装置のエンコーダを前記減速機の出力軸に設けたインホイール型モータ内蔵センサ付き車輪用軸受装置。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のいずれか1項において、前記電気モータの電流値を測定する電流センサを設け、この電流センサの出力から前記駆動輪と路面の接地点に作用する進行方向の力を推定する荷重推定手段を設けたインホイール型モータ内蔵センサ付き車輪用軸受装置。
【請求項12】
請求項1ないし請求項10のいずれか1項において、前記駆動輪のハブに制動力を与えるブレーキと、このブレーキに作用するブレーキ力を測定するブレーキ力センサを設け、このブレーキ力センサの出力から前記駆動輪と路面の接地点に作用する進行方向の力を推定する荷重推定手段を設けたインホイール型モータ内臓センサ付き車輪用軸受装置。
【請求項13】
請求項1ないし請求項10のいずれか1項において、前記車輪用軸受の静止側軌道輪にこの軌道輪の歪みを測定する歪みセンサを設け、この歪みセンサの出力から前記駆動輪と路面の接地点に作用する互いに直交する3軸方向の力のうち少なくとも1軸方向の力を推定する荷重推定手段を設けたインホイール型モータ内蔵センサ付き車輪用軸受装置。
【請求項14】
請求項1ないし請求項10のいずれか1項において、前記車輪用軸受の静止側軌道輪にこの軌道輪の歪みを測定する少なくとも3つ以上の歪みセンサを設け、これら歪みセンサの出力から前記駆動輪と路面の接地点に作用する互いに直交する3軸方向の力を推定する荷重推定手段を設けたインホイール型モータ内蔵センサ付き車輪用軸受装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2011−126476(P2011−126476A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−288914(P2009−288914)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】
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