説明

インモールド転写用フィルム

【課題】 十分に平坦な表面を備え、高精彩な表面加工および印刷が可能なインモールド転写用フィルムを提供する。
【解決手段】 ポリエステルフィルムおよびそのうえに設けられた塗布層からなり、塗布層の表面の中心線平均表面粗さが1〜10nmであることを特徴とする、インモールド転写用フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインモールド転写用フィルムに関し、詳しくは射出成形等において成形と同時に転写印刷するインモールド転写用の転写箔(インモールド用転写箔)の支持フィルムとして有用なインモールド転写用フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インモールド用転写箔として、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルムをベースフィルムとし、このベースフィルムの表面に離型層(メジューム層)を設け、更にその上に印刷層を塗工した積層フィルムが用いられている。
【0003】
このインモールド用転写箔は、成形転写後に離型層面と印刷層面との間で剥がされ、分離される。すなわち、成形転写後に印刷層は成形品の表面に接着して成形品の一部を構成することになり、離型層はベースフィルムに積層した状態で成形後取り除かれる。
【0004】
インモールド成形で成形される製品は多く、電子機器の筐体、特に携帯電話の筐体はインモールド成形で作られることが多い。近年、携帯電話に用いられるディスプレイの高精彩化が進み、ディスプレイ部には、高精彩な表面加工および印刷を付与することが求められている。
【0005】
【特許文献1】特開平6−115295号公報
【特許文献2】特開2004−223800号公報
【特許文献3】特開2004−174975号公報
【特許文献4】特開2004−58648号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の転写箔基材のポリエステルフィルムを用いて成形したのではインモールド成形で十分に平坦な表面を得ることができない。本発明の目的は、十分に平坦な表面を備え、高精彩な表面加工および印刷が可能なインモールド転写用フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、ポリエステルフィルムおよびそのうえに設けられた塗布層からなり、塗布層の表面の中心線平均表面粗さが1〜10nmであることを特徴とする、インモールド転写用フィルムである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、十分に平坦な表面を備え、高精彩な表面加工および印刷が可能なインモールド転写用フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
[ポリエステルフィルム]
本発明においてポリエステルフィルムを構成するポリエステルは、芳香族二塩基酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体とから合成される線状飽和ポリエステルである。かかるポリエステルの具体例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレン−2,6−ナフタレートを例示することができる。
【0010】
ポリエステルは、これらのポリエステルの共重合体であってもよく、上記ポリエステルを主体(例えば80モル%以上の成分)とし、少割合(例えば20モル%以下)の他の種類の樹脂とブレンドしたものであってもよい。ポリエステルとしてポリエチレンテレフタレートが力学的物性や成形性等のバランスがよいので特に好ましい。
【0011】
ポリエステルフィルムは、実質的に滑剤微粒子を含有しないことが好ましい。ここでいう滑剤微粒子は、触媒に起因する微粒子としてポリエステル重合の際に必然的に含有される微粒子以外の微粒子であり、フィルムの表面を粗くする目的で添加される微粒子を意味する。ポリエステルフィルム中に実質的に滑剤微粒子を含有しないことにより、インモールド成型による印刷で、高精彩な印刷を得ることができるため好ましい。滑剤微粒子がポリエステルフィルム中に存在すると、二軸製膜後のフィルム表面粗さが粗くなり、高精彩な印刷できないため好ましくない。
【0012】
ポリエステルフィルムはインモールド用転写箔の印刷層を反対面から確認することがあるため、透明性が高い方が好ましい。なお、ポリエステルフィルムは、例えば着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤を含有してもよい。
【0013】
ポリエステルフィルムは、例えば次の方法で製造することができる。すなわち、ポリエステルをフィルム状に溶融押出し、キャスティングドラムで冷却固化させて非晶未延伸フィルムとし、縦方向および横方向に延伸する。縦方向の延伸は例えば温度60〜130℃、好ましくは90〜125℃で、縦方向に例えば2.0〜4.0倍、好ましくは2.5〜3.5倍に延伸する。横方向の延伸は、例えば温度60〜130℃、好ましくは90〜125℃で、横方向に例えば2.0〜4.0倍、好ましくは3.0〜4.0倍に延伸する。二軸延伸後の面積倍率を13以下とすることが好ましい。
【0014】
なお、フィルムの延伸後には熱固定処理を行なうことが好ましい。熱固定処理は、最終延伸温度より高く融点以下の温度内で1〜30秒の時間内行なうことが好ましい。例えばポリエチレンテレフタレートフィルムでは150〜250℃の温度、2〜30秒の時間の範囲で選択して熱固定することが好ましい。その際、20%以内の制限収縮もしくは伸長、または定長下で行ない、また2段以上で行なってもよい。
【0015】
ポリエステルフィルムの表面の中心線表面粗さは、好ましくは1〜10nmである。ポリエステルフィルムの表面の中心線表面粗さをこの範囲とすることにより、塗布層の表面の中心線平均表面粗さが1〜10nmであるインモールド転写用フィルムを得ることができる。
【0016】
ポリエステルフィルムの厚みは、インモールド転写として使用する場合にハンドリング性、成形性、透明性の点から必要な強度を得るために、好ましくは12〜100μm、さらに好ましくは25〜75μmである。
【0017】
[塗布層]
ポリエステルフィルムのうえに設けれる塗布層の表面の中心線平均表面粗さは1〜10nmである。1nm未満であるとフィルムのハンドリングが困難となり、10nmを超えると印刷された表面が粗くなり高精細な印刷ができなくなる。
【0018】
この塗布層は易接着性の塗布層であると、印刷層の離型層との強固な密着性が得られて好ましい。塗布層の厚みは、好ましくは0.05〜0.30μmである。被膜層は、構成成分を水分散液あるいは乳化液の形態で使用して塗布することが好ましい。塗布層は好ましくは、共重合ポリエステルと微粒子とを含有する。
【0019】
共重合ポリエステルとしては、好ましくはガラス転移点40〜85℃の共重合ポリエステルを用いる。ガラス転移点が40℃未満であるとインモールド転写用フィルムの耐熱性、耐ブロッキング性が劣り、85℃を超えると易接着性が劣ることになり好ましくない。
【0020】
この共重合ポリエステルとしては、下記の多塩基酸成分とジオール成分から、ガラス点移転が40〜85℃となるものを選んで用いることができる。すなわち、多価塩基成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、2、6−ナフタレンジカルボン酸、1、4−シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ダイマー酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸を例示することができる。高分子バインダーを構成するポリエステル樹脂としては、2種以上のジカルボン酸成分を用いた共重合ポリエステルを用いることが好ましい。ポリエステルには、若干量であればマレイン酸、イタコン酸等の不飽和多塩基酸成分が、或いはp−ヒドロキシ安息香酸等の如きヒドロキシカルボン酸成分が含まれていてもよい。
【0021】
ポリエステルのジオール成分としては、エチレングリコール、1、4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1、6−ヘキサンジオール、1、4−シクロヘキサンジメタノール、キシレングリコール、ジメチロールプロパン等や、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールを例示することができる。
【0022】
塗布層の微粒子は、好ましくは平均粒子径20〜100nm、さらに好ましくは40〜80nmの微粒子を用いる。平均粒子径が20nm未満であるとフィルム巻き取ったときのブロッキング性やフィルムの巻取り性が劣り好ましくない。平均粒子径が100nmを超えると微粒子の欠落や塗布層の透明性が悪化することがあり好ましくない。
【0023】
塗布層中の微粒子の含有量は高々30重量%、好ましくは5〜30重量%である。5重量%未満であると、インモールド用転写箔の形態において帯電防止層と印刷層のブロッキングが発生することがあり好ましくない。30重量%を超えると微粒子が塗布層から欠落することがあり好ましくない。
【0024】
微粒子は、無機微粒子、有機微粒のいずれも用いることができる。
無機微粒子としては、例えば酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化錫、三酸化アンチモン、カーボンブラック、二硫化モリブデンからなる粒子を例示することができる。有機微粒子としては、例えばアクリル系架橋重合体、スチレン系架橋重合体、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、フェノール樹脂、ナイロン樹脂のような耐熱性樹脂からなる有機微粒子を例示することができる。
【0025】
就中、取り扱いや塗液中での安定性、塗膜中の分散性の点から、酸化ケイ素、架橋ポリスチレン樹脂粒子、架橋アクリル樹脂粒子が特に好ましい。最終乾燥の塗布厚みとしては、好ましくは0.05〜0.3μm、さらに好ましくは0.07〜0.2μmである。塗膜の厚さが0.05μm未満であると接着性が不十分となり、0.3μmを超えるとブロッキングを起こし易くなるので好ましくない。
【0026】
[帯電防止層]
ポリエステルフィルムの易接着性塗布層とは反対側に、帯電防止層を設けることが、生産性を向上の観点から好ましい。そして、帯電防止層には帯電防止剤としてカチオンポリマーが含まれることが好ましく、このカチオンポリマーは、下記式(1)で表わされる単位を有するポリマーであることが、高い帯電防止性を得られることから好ましい。
【0027】
【化1】

【0028】
塗膜の造膜性、凝集力や塗膜の耐水性、耐薬品を向上させるために非反応性モノマー成分と反応性モノマー成分を共重合することが好ましい。
なお、帯電防止層の表面固有抵抗値は1×1013[Ω/□]以下が好ましく、1×1012以下がさらに好ましい。
【0029】
帯電防止層には、微粒子が含有されることが好ましい。微粒子の平均粒子径は、好ましくは20〜100nm、さらに好ましくは40〜80nmである。100nmを超えると微粒子の欠落や塗布層の透明性が悪化することがあり好ましくない。20nm未満であるとフィルム巻き取った時のブロッキング性やフィルムの巻取り性が劣り好ましくない。
【0030】
微粒子としては、例えば酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化錫、三酸化アンチモン、カーボンブラック、二硫化モリブデンのような無機微粒子、アクリル系架橋重合体、スチレン系架橋重合体、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、フェノール樹脂、ナイロン樹脂のような耐熱性樹脂からなる有機微粒子を例示することができる。
【0031】
帯電防止層の厚みは、好ましくは0.01〜0.1μm、さらに好ましくは0.01〜0.06μmである。塗膜の厚さが0.01μm未満であると帯電防止性が不十分となり好ましくなく、0.1μmを超えるとインモールド用転写箔とのブロッキングを起こし易くなるので好ましくない。
【0032】
[製造方法]
本発明において各々の塗布層の塗設に用いられる上記組成物は、塗布層を形成させるために、水溶液、水分散液或いは乳化液等の水性塗液の形態で使用されることが好ましい。塗膜を形成するために、必要に応じて、前記組成物以外の他の樹脂、例えば着色剤、界面活性剤、紫外線吸収剤等を添加することができる。
【0033】
本発明に用いる水性塗布液の固形分濃度は、通常20重量%以下、好ましくは1〜10重量%である。1重量%未満であるとポリエステルフィルムへの塗れ性が不足することがあり好ましくなく、20重量%を超えると塗液の安定性や塗布層の外観が悪化することがあり好ましくない。
【0034】
水性塗布液のポリエステルフィルムへの塗布は、任意の段階で実施することができるが、ポリエステルフィルムの製造過程で実施するのが好ましく、さらには配向結晶化が完了する前のポリエステルフィルムに塗布するのが好ましい。
【0035】
ここで、結晶配向が完了する前のポリエステルフィルムは、未延伸フィルム、未延伸フィルムを縦方向または横方向の何れか一方に配向せしめた一軸配向フィルム、さらには縦方向および横方向の二方向に低倍率延伸配向せしめたもの(最終的に縦方向また横方向に再延伸せしめて配向結晶化を完了せしめる前の二軸延伸フィルム)等を含むものである。なかでも、未延伸フィルムまたは一方向に配向せしめた一軸延伸フィルムに、上記組成物の水性塗液を塗布し、そのまま縦延伸および/または横延伸と熱固定とを施すのが好ましい。
【0036】
水性塗液をフィルムに塗布する際には、塗布性を向上させるための予備処理としてフィルム表面にコロナ表面処理、火炎処理、プラズマ処理等の物理処理を施すか、あるいは組成物と共にこれと化学的に不活性な界面活性剤を併用することが好ましい。
【0037】
かかる界面活性剤は、ポリエステルフィルムへの水性塗液の濡れを促進する機能や塗液の安定性を向上させるものであり、例えば、ポリオキシエチレン−脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸金属石鹸、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩等のアニオン型、ノニオン型界面活性剤を挙げることができる。界面活性剤は、塗膜を形成する組成物中に、1〜10重量%含まれていることが好ましい。
【0038】
塗布方法としては、公知の任意の塗工法が適用できる。例えばロールコート法、グラビアコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、含浸法、カーテンコート法等を単独または組合せて用いることができる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。物性は下記の方法で評価した。
(1)中心線平均表面粗さ(Ra)
サンプルの易接着層の表面をJIS B0601に準じ、(株)小坂研究所製の表面粗さ測定機SE−3500を使用して、針の半径2μm、荷重0.7mNで拡大倍率2万倍、カットオフ0.25mmの条件下で測定した。チャートを描かせ、表面粗さ曲線からその中心線方向に測定長さLの部分を抜き取り、この抜き取り部分の中心線をX軸、縦倍率の方向とY軸として、粗さ曲線をY=f(x)で表わした時、次の式で与えられた値をnm単位で表わした。
【0040】
【数1】

【0041】
(2)摩擦係数
ASTM D1894−63に準じ、東洋テスター社製のスリッパリー測定器を使用し、塗膜形成面とポリエチレンテレフタレートフィルム(塗膜非形成面)との静摩擦係数(μs)を測定した。但し、スレッド板はガラス板とし、荷重は1kgとした。なお、フィルムの滑り性を下記の基準で評価した。
A+: 摩擦係数(μs)≦0.3 ……滑り性極めて良好
A:0.3<摩擦係数(μs)≦0.5 ……滑り性良好
B:0.5<摩擦係数(μs)≦0.8 ……滑り性やや不良
C:0.8<摩擦係数(μs) ……滑り性不良
上記基準で、Aまでが実用性能を満足する。
【0042】
(3)離型層接着性
フィルムの塗布面の上にメラミン樹脂のメチルエチルケトン/トルエン溶液を塗布し1μm厚さの離型層(メジューム層)の膜を形成させ、ホットプレス法により積層体として空型に乗せて成形したときの離型層の状況を観察し、下記の基準で評価した。
A:変化無し
B:一部分が剥離
C:全体的に剥離
上記基準で、Aまでが実用性能を満足する。
【0043】
(4)帯電防止層密着性
フィルムの帯電防止層の表面を指で10cm長を10往復擦りつけ、塗膜の欠落状態を観察し、帯電防止層密着性を下記の基準で評価した。
A+:変化無し
A:若干表面に変化有り
B:擦過面積の半分までが欠落
C:擦過面積の大部分が欠落
【0044】
(5)帯電防止性
サンプルフィルムの帯電防止層表面の表面固有抵抗を、タケダ理研社製・固有抵抗測定器を使用し、測定温度23℃、測定湿度60%の条件で、印加電圧100Vで1分後の表面固有抵抗値(Ω/□)を測定した。
【0045】
(6)耐ブロッキング性
サンプルフィルムの帯電防止層面とインモールド用転写箔の印刷面との耐ブロッキング性を評価するためスタンピングホイルの顔料箔(COLORIT)Pタイプ(クルツ社製)を使用して、帯電防止面と印刷面を合わせ、条件1温度60℃、圧力1kg/cmおよび条件2温度80℃、圧力1kg/cmを加えて、24時間その環境に保持した後、帯電防止層面とラベルのシール面のブロッキング状態を観察し、下記の基準で評価した。
A+:変化無し
A:若干表面に変化有り
B:一部分が剥離
C:全体的に剥離
上記基準で、Aまでが実用性能を満足する。
【0046】
(7)塗布層厚み
包埋樹脂でフィルムを固定し断面をミクロトームで切断し、2%オスミウム酸で60℃、2時間染色して、透過型電子顕微鏡(日本電子製JEM2010)を用いて、塗布層の厚みを測定した。
【0047】
(8)鏡面光沢度
JIS Z8741に準じ、転写後の印刷面の60度での鏡面光沢度を光沢計(日本電色工業製VG−2000)を用いて測定し、下記の基準より評価した。
A:90以上
B:90より小さく70以下
C:70より小さい
上記基準で、Aまでが実用性能を満足する。
【0048】
(9)総合評価
下記の基準で評価を実施した。
A+:中心線平均表面粗さが1から10nm、摩擦係数がA+、帯電防止層密着性がA+、帯電防止性が1×1012Ω/□以下、耐ブロッキング性がA+、離型層接着性がA、鏡面光沢度がAである(総合評価・極めて良好)
A:中心線平均表面粗さが1から10nm、摩擦係数がA、帯電防止層密着性がA、帯電防止性が1×1013Ω/□以下、耐ブロッキング性がA、離型層接着性がA、鏡面光沢度がAである(総合評価・良好)
B:中心線平均表面粗さが10nmより大きく、摩擦係数、帯電防止層密着性、耐ブロッキング性、離型層接着性、鏡面光沢度のいずれかがB以上、もしくは帯電防止性が1×1013Ω/□〜1×1014Ω/□である(総合評価・不良)
C:中心線平均表面粗さが10nmより大きく、摩擦係数、帯電防止層密着性、耐ブロッキング性、離型層接着性、鏡面光沢度のいずれかがC、もしくは帯電防止性が1×1014Ω/□以上である(総合評価・極めて不良)
【0049】
[実施例1、2]
滑剤微粒子を含まない溶融ポリエチレンテレフタレート([η]=0.65dl/g、Tg=78℃)をダイより押出し、常法により冷却ドラムで冷却して未延伸フィルムとし、次いで縦方向に3.4倍に延伸した後、表1に示す塗布層構成成分からなる塗布液(易接着層:8wt%、帯電防止層:4wt%)をそれぞれロールコーターで均一に塗布した。
【0050】
次いで、この塗布フィルムを引き続いて105℃で乾燥し、140℃で3.5倍に延伸し、さらに230℃で熱固定して表に示す塗膜を有するインモールド転写用フィルム(厚さ50μm)を得た。
【0051】
[比較例1〜3]
比較例1、2はベースフィルム中に表記載の内添微粒子を含有する以外は実施例1と同様にしてフィルムを得た。比較例3は易接着層と帯電防止層を設けていない以外は実施例1と同様にしてフィルムを得た。
【0052】
【表1】

【0053】
共重合ポリエステル: 酸成分がテレフタル酸50モル%/イソフタル酸45モル%/5−ナトリウムスルホイソフタル酸5モル%、グリコール成分がエチレングリコール90モル%/ジエチレングリコール10モル%で構成されている(Tg=40℃)。なお、ポリエステルは、特開平06−116487号公報の実施例1に記載の方法に準じて下記の通り製造した。すなわち、テレフタル酸ジメチル30部、イソフタル酸ジメチル27部、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル5部、エチレングリコール36部、ジエチレングリコール3部を反応器に仕込み、これにテトラブトキシチタン0.05部を添加して窒素雰囲気下で温度を230℃にコントロールして加熱し、生成するメタノールを留去させてエステル交換反応を行った。次いで反応系の温度を徐々に255℃まで上昇させ系内を1mmHgの減圧にして重縮合反応を行い、共重合ポリエステルを得た。
カチオンポリマー: 下記式に示す構造が80モル%/メチルアクリレート15モル%/N−メチロールアクリルアミド5モル%からなる共重合体である。
【0054】
【化2】

【0055】
微粒子1: シリカ微粒子(平均粒子径:80nm)(日産化学株式会社製 商品名スノーテックスZL)
微粒子2: シリカ微粒子(平均粒子径:40nm)(日産化学株式会社製 商品名スノーテックスOL)
離型剤: エポキシ基含有シリコーン(信越化学工業株式会社製 商品名X−22−163C)
添加剤: パラフィンワックス(中京油脂株式会社製 商品名セロゾール686)
架橋剤: オキサゾリン(株式会社日本触媒製 商品名エポクロスWS−700)
界面活性剤: ポリオキシエチレン(n=8.5)ラウリルエーテル(三洋化成株式会社製 商品名ナロアクティーN−85)。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明のインモールド転写用フィルムは、インモールド用転写箔の基材フィルムとして、インモールド成形に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルムおよびそのうえに設けられた塗布層からなり、塗布層の表面の中心線平均表面粗さが1〜10nmであることを特徴とする、インモールド転写用フィルム。
【請求項2】
ポリエステルフィルムが実質的に滑剤微粒子を含有しない、請求項1記載のインモールド転写用フィルム。
【請求項3】
塗布層が厚み0.05〜0.3μmの易接着性塗布層である、請求項1記載のインモールド転写用フィルム。
【請求項4】
塗布層がガラス転移点40〜85℃の共重合ポリエステルと平均粒子径20〜100nmの微粒子とを含有する、請求項1記載のインモールド転写用フィルム。
【請求項5】
ポリエステルフィルムの易接着性塗布層とは反対側に帯電防止層を備える、請求項3記載のインモールド転写用フィルム。

【公開番号】特開2006−187949(P2006−187949A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−1556(P2005−1556)
【出願日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】