説明

イーサネットベースの電力機器の通信誤り監視システム及びその方法

【課題】電力システムにおいて、全体電力システムの余分の通信遅延を防ぎ、システムの実時間応答性を向上させること。
【解決手段】本発明は、マスター下位機器、少なくとも一つのスレーブ下位機器、及び上位監視盤が互いにイーサネットを介して接続され、マスター下位機器が、少なくとも一つのスレーブ下位機器に状態確認フレームを転送し、スレーブ下位機器から応答フレームを受信したか否かによって通信誤り有無を決定した後、通信誤り状態と決定された下位機器に関する情報を上位監視盤に転送する。上位監視盤は、マスター下位機器から通信誤り状態と決定された下位機器に関する情報を受信し、該当の下位機器を除く残りの接続された下位機器にイーサネットを介して必要なデータを要請して収集する。これによって、全体電力システムの余分の通信遅延を防ぎ、システムの実時間応答性及び安全性を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イーサネット(登録商標)ベースの電力監視システムに係り、特に、複数の下位機器と上位監視盤との間においてイーサネットを用いて通信する場合に、通信誤りを迅速で正確に診断することができるイーサネットベースの電力機器の通信誤り監視システム及びその方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
変電所に設置された保護継電器(Protection Relay)及びPLC(Programmable Logic Controller)などのような電力システムの通信がシリアルからイーサネットへと変わりつつあるなか、通信誤りが発生すると、スイッチ、光コンバータ、ケーブル、その他の機器などが複合的に関連されているため、誤りの原因を見出しにくい。
【0003】
保護継電器は、過電流、短絡事故、地絡(Ground fault)事故などを含む線路の各種の事故から系統を保護するための装置であり、現場の線路状態と計測データを上位監視盤に周期的に報告しなければならず、上位監視盤との通信上の信頼性が要求される。保護継電器やスイッチなどのような下位機器は、常時、系統、計測に関する重要なデータをイーサネットを通じて送受信しているが、通信誤り発生時にデバギングを行うための入出力装備がないため、追加に高価の装備及びネットワーク誤りの判別のための点検技術が必要とされる。そして、もし、通信誤りが発生した場合、誤りに対する原因分析と全体システムの正常復旧までには時間がかかる。これは、監視及び制御システムが通信により致命的な弱点を持っているということを意味する。
【0004】
図1は、従来技術に係るイーサネットベースの電力システムを示す図で、上位監視盤10、ハブ30及び多数の保護継電器50a〜50nを含んで構成される。
【0005】
変電所などに設置された各種保護継電器50a〜50nは、HMI(Human Machine Interaction)装置のような上位監視盤10とイーサネット及びハブ30を介して通信している。
【0006】
上位監視盤10は、イーサネットを介して第1保護継電器50aに特定データを要請すると、第1保護継電器50aは、要請されたデータを上位監視盤10に転送する。この時、他の保護継電器50b〜50nは、内部演算や保護アルゴリズムなどで動作している。
【0007】
そして、上位監視盤10は、第1保護継電器50aと通信した後、次の順番である第2保護継電器50bに特定データを要請し、第2保護継電器50bは、要請されたデータを上位監視盤10に転送する。
【0008】
このように、上位監視盤10は、第1保護継電器→第2保護継電器→…→第n保護継電器→第1保護継電器→…の順に連続して繰り返し通信を行う。
【0009】
すなわち、上位監視盤10が、ユーザによりあらかじめ設定されたデータ(バイナリ(Binary)データ、アナログデータ、イベントデータ等)を保護継電器に要請すると、それぞれの保護継電器は、当該要請されたデータを転送する方式で動作する。
【0010】
この時、通信ラインや機器などに種々の理由から誤りが生じると、図2に示すように、特定の保護継電器からは要請したデータを受信できなくなる。
【0011】
例えば、第2保護継電器50bに通信誤りが生じた場合、上位監視盤10は、第2保護継電器50bからは要請したデータを受信できなくなる。そして、誤りが発生すると、上位監視盤10はエラー処理をした後に、その次の順番の保護継電器にデータを要請する作業を行う。上位監視盤10は、最後の順番である第n保護継電器50nまでデータを要請して該当のデータを全て受信してから、上記誤りの生じた第2保護継電器50bにデータを再要請する方式で動作する。
【0012】
ここで、上位監視盤10は、データ要請に対して応答ができない保護継電器に対して直ちに再要請をしたり、次の順番でデータを再要請したりすることができる。
【0013】
このように、上位監視盤は、下位機器である特定の保護継電器との通信不良時に該当の保護継電器に再転送を実施し、通信不良が繰り返される場合には保護継電器の異常状態を類推して判断してきた。
【0014】
このような保護継電器の通信状態に基づく誤り診断方式は、誤り状態を判断するまで相当な時間がかかり、上位監視盤の誤り確認プロセスによってシステムの実時間監視及び制御が困難であった。
【0015】
一般に、上位監視盤は、保護継電器との通信誤り発生時に、または、通信ラインの断線、保護継電器の不良による通信失敗時にも、続けてデータ要請メッセージを転送する。ここで、誤りの原因がデータ間の衝突でない場合は、保護継電器との通信失敗現象は持続するから、保護継電器に続けてデータを要請することは、効率的なシステムの運営を阻害する要素とされる。
【0016】
また、より知能化した上位監視盤は、通信失敗が繰り返される保護継電器にデータ要請をしないように構成することもできるが、このようなシステムを構成すること自体が容易でないし、保護継電器の状態を実時間で反映することも困難である。特に、保護継電器の構成要素が複雑で多数である場合は、保護継電器の状態を実時間で反映するのが困難である。
【0017】
イーサネットを介したデータ通信において、上位監視盤と保護継電器とのデータ送受信時間は、正常の場合に約4msec〜50msecの時間がかかるが、正常でない場合には1sec〜5secの時間に加えて上位監視盤でデータを待機する遅延時間も必要とされる。したがって、保護継電器が多ければ多いほど全体システムで発生する遅延時間は算術級数的に増加する。
【0018】
したがって、全体システムの多数の装置における通信誤り状態を判断できる基準データがあるとすれば、この結果に基づいて上位システムは正常状態の装置にはデータを要求し、正常でない状態の装置にはデータを要求しない知能型の送受信が可能となり、現在の非効率的なシステムの動作方式を改善することが可能になるであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、イーサネットベースの電力機器の通信誤り監視システム及びその方法を対象とする。
【0020】
本発明は、マスター(Master)下位機器、少なくとも一つのスレーブ(Slave)下位機器及び上位監視盤は互いにイーサネットを介して接続され、
前記マスター下位機器から受信した状態確認フレームに対して応答フレームを転送する少なくとも一つのスレーブ(Slave)下位機器;前記スレーブ下位機器に状態確認フレームを転送し、前記スレーブ下位機器から応答フレームを受信したか否かによって通信誤り有無を決定した後、通信誤り状態と決定された下位機器に関する情報を前記上位監視盤に転送するマスター下位機器;及び、前記マスター下位機器から通信誤り状態と決定された下位機器に関する情報を受信し、該当の下位機器以外の残り接続された下位機器に前記イーサネットを介して必要なデータを要請して収集する上位監視盤;を含んでなり、これによって、多数の下位機器と上位監視盤とがイーサネットを用いて通信する場合、通信誤りを迅速で正確に診断することができるイーサネットベースの電力機器の通信誤り監視システム及びその方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、電力システムにおいて下位機器同士間の相互通信から、通信誤りの発生した特定の下位機器を実時間で検出し、誤りの発生した下位機器の情報を上位監視盤に通報するように構成することによって、全体電力システムの余分の通信遅延を防ぎ、システムの実時間応答性を向上させることができるイーサネットベースの電力機器の通信誤り監視システム及びその方法を提供する。
【0022】
上記目的を達成するための本発明の通信誤り監視システムは、マスター下位機器、少なくとも一つのスレーブ下位機器、及び上位監視盤は互いにイーサネットを介して接続され、
前記マスター下位機器から受信した状態確認フレームに対して応答フレームを転送する少なくとも一つのスレーブ下位機器と、
前記スレーブ下位機器に状態確認フレームを転送し、前記スレーブ下位機器から応答フレームを受信したか否かによって通信誤り有無を決定した後、通信誤り状態と決定された下位機器に関する情報を前記上位監視盤に転送するマスター下位機器と、
前記マスター下位機器から通信誤り状態と決定された下位機器に関する情報を受信し、該当の下位機器を除く残りの接続された下位機器に前記イーサネットを介して必要なデータを要請して収集する上位監視盤と、
を含んでなることを特徴とする。
【0023】
好適には、前記マスター下位機器は、前記応答フレームを受信しなかったスレーブ下位機器に反復して状態確認フレームを転送し、前記反復転送した状態確認フレームに対する応答フレームの未受信回数が、既に設定された基準回数を超過すると、該スレーブ下位機器を通信誤り状態と決定することを特徴とする。
【0024】
そして、前記マスター下位機器は、前記通信誤り状態と決定された下位機器に反復して状態確認フレームを転送し、前記下位機器から応答フレームを受信すると、該下位機器との通信誤りが復旧されたことを前記上位監視盤に知らせることを特徴とする。
【0025】
上記目的を達成するためのイーサネットベースの電力システムの通信誤り監視方法は、
マスター下位機器が、既に設定された周期にしたがってイーサネットを介して相互接続されたスレーブ下位機器に状態確認フレームを生成して転送するステップと、
前記スレーブ下位機器から応答フレームが受信されたか否かを判断するステップと、
前記スレーブ下位機器から応答フレームが受信されないと、前記スレーブ下位機器の応答失敗回数を増加させるステップと、
前記スレーブ下位機器への状態確認フレーム転送を反復し、累積された応答失敗回数が既に設定された基準回数を超過するか否か判断して、前記判断結果基準回数を超過すると、前記スレーブ下位機器を通信誤り状態と決定するステップと、
前記通信誤り状態と決定された下位機器に関する情報を、上位監視盤に実時間転送するステップと、を含んでなることを特徴とする。
【0026】
そして、前記応答フレームが受信されたか否かを判断した後に、前記スレーブ下位機器から応答フレームが受信されると、前記マスター下位機器が、前記イーサネットを介して接続された他のスレーブ下位機器に状態確認フレームを転送し、該当の下位機器から応答フレームが受信されたか否かを判断するステップをさらに含むことを特徴とする。
【0027】
また、前記累積された応答失敗回数が、既に設定された基準回数を超過するか否かを判断した後に、前記判断結果、超過しない場合に、前記マスター下位機器が、一定時間が経過した後に前記スレーブ下位機器に状態確認フレームを再転送し、応答フレームが受信されたか否かを判断することを特徴とする。
【0028】
上記通信誤り監視方法は、前記上位監視盤が、通信誤り状態と決定された下位機器に関する情報を受信した後に、この通信誤り状態と決定された下位機器にデータ転送を要請しないステップをさらに含んでなることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】従来技術によるイーサネットベースの電力システムを示す図である。
【図2】従来技術によるイーサネットベースの電力システムを示す図である。
【図3】本発明によるイーサネットベースの電力システムを示す図である。
【図4】本発明に適用された保護継電器の細部構成を示す図である。
【図5】図3に示す電力システムの通信誤りチェック方法を説明するための図である。
【図6】本発明の実施例による通信誤りチェックプロセスを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。図面中、同一の構成要素には可能な限り同一の参照符号を付する。なお、下記の説明において、本発明の要旨を曖昧にさせるとされる公知機能及び構成についての詳細な説明は省略するものとする。
【0031】
図3は、本発明の実施例によるイーサネットベースの電力システムを示す図で、上位監視盤10、ハブ(Hub)30、及び多数の保護継電器100a〜100nを含んで構成される。
【0032】
本発明の実施例では、説明の便宜上、下位機器を保護継電器とするが、これに限定されず、下位機器は、保護継電器(Protection Relay)、PLC(Programmable Logic Controller)、計測器、及び電力監視装置のうちのいずれか一つとすることもできる。特に、保護継電器はIED(Intelligent Electronic Device)とも呼ばれる。
【0033】
上位監視盤10は、ハブ30及びイーサネットを介して多数の保護継電器100a〜100nと接続されるもので、一定の周期ごとに各保護継電器100a〜100nに必要なデータを反復要請し、保護継電器から受信した応答データを記憶管理するHMI(Human Machine Interaction)装置のようなホストコンピュータで構成することができる。
【0034】
保護継電器100a〜100nは、上位監視盤10から特定データが要請されると、当該要請されたデータを抽出してイーサネットを介して上位監視盤10に転送する。
【0035】
ここで、保護継電器100a〜100nはマスター(Master)と少なくとも一つのスレーブ(Slave)とに区別され、マスターは、スレーブとそれぞれ通信して各スレーブの通信状態をチェックする。本実施例では、便宜上、第1保護継電器100aをマスターとし、残りの保護継電器100b〜100nをスレーブとする。
【0036】
スレーブ保護継電器100b〜100nは、マスター保護継電器100aから要請された状態確認フレームに対する応答フレームを転送する。そして、マスター保護継電器100aは、イーサネットを介して接続された特定のスレーブ保護継電器に状態確認フレームを転送する。マスター保護継電器100aは、各スレーブ保護継電器から応答フレームを受信したか否かによって通信誤り有無を決定し、通信誤り状態と決定された保護継電器の情報を上位監視盤10に転送する。
【0037】
上位監視盤10は、一般に、イーサネットを介して接続された多数の保護継電器100a〜100nに必要なデータを要請して収集する役割を果たす。そして、上位監視盤10は、マスター保護継電器100aから通信誤りの発生した保護継電器に関する情報を受信すると、該当する保護継電器を除く残りの保護継電器にのみデータを要請する。
【0038】
特定の保護継電器100aの細部構成を図4に示す。
【0039】
同図で、保護継電器100aは、電圧電流検出部110、キー入力部120、表示部130、記憶手段140、メモリー150、イーサネット通信部160、及び制御部170などを含んで構成される。
【0040】
電圧電流検出部110は、線路上の高電圧を一定の比率の低電圧に変える計器用変圧器(Potential Transformer;PT)と、線路上の大電流を一定の比率の低い電流に変える計器用変流器(Current Transformer;CT)を含んでなる。
【0041】
キー入力部120は、保護継電器100aの各種の計測及び動作モードやバックアップ周期などのユーザ設定情報を取り込むような構成となっている。
【0042】
表示部130は、電圧電流検出部110により検出された各種の電源状態やキー入力部120を通じて入力された各種の設定命令を文字またはグラフィックなどでディスプレイするLCDからなる。
【0043】
記憶手段140は、電圧電流検出部110及びキー入力部120を通じてそれぞれ入力されたイベントデータ、事故データ、ウェーブデータ、デマンドデータ及びキー操作データを制御部170の制御によって項目別に記憶するハードディスク(HDD)または不揮発性メモリーからなる。
【0044】
メモリー150は、イーサネットを介して接続された他の保護継電器100b〜100nとの通信状態及び誤りに関する情報を記憶する。
【0045】
イーサネット通信部160は、イーサネットを介して上位監視盤10及び他の保護継電器100b〜100nに接続されてデータを送受信する機能を担当する。
【0046】
制御部170は、上記した各構成の動作を制御するもので、電圧電流検出部110から入力された計測データを項目別に記憶手段140にそれぞれ記憶させ、上位監視盤10から転送された要請フレームを解析し、送信フレームを生成してイーサネット通信部160を通じて上位監視盤10に転送する。ここで、計測データは、イベントデータ、事故データ、ウェーブデータ、デマンドデータ及びキー操作データなどを含む。
【0047】
また、制御部170は、既に設定された周期ごとにイーサネットを介して接続された他の保護継電器100b〜100nに状態確認フレームを転送して応答を要請し、各保護継電器100b〜100nからの応答有無に基づく通信誤り状態をメモリー150に記憶させて管理する。
【0048】
図5は、図3に示す電力システムの通信誤りチェック方法を説明するための図である。図5に示すように、本実施例では、イーサネットを介して相互接続された多数の保護継電器100a〜100cのうちの一つである保護継電器100aはマスターに設定され、残りの保護継電器100b,100cはスレーブに設定される。ここで、保護継電器100a〜100cは互いに水平的な関係を有するが、便宜上マスターとスレーブとに区別するものとする。
【0049】
マスターに設定された保護継電器100aは、周期的に、スレーブに設定された保護継電器100b,100cに状態確認フレームを転送し、該当のスレーブ保護継電器100b,100cは応答フレームを生成してマスター保護継電器100aに転送して応答する。もちろん、通信誤りのあるスレーブ保護継電器100cからは応答フレームが転送されない。
【0050】
マスター保護継電器100aは、周期的に、スレーブ保護継電器100b,100cに状態確認フレームを転送して応答有無によって通信誤り有無を確認し、通信誤りがある場合、通信誤りの発生した保護継電器に関する情報を実時間で上位監視盤10に転送する。
【0051】
上位監視盤10では、マスター保護継電器100aが転送する上記の情報を用いて非正常状態の保護継電器100cにはデータの転送を要求しない。
【0052】
すなわち、上位監視盤10に全体下位機器に関する状態情報を転送するマスター保護継電器100aは、数msec単位で状態確認フレームを他のスレーブ保護継電器100b〜100nに転送し、該状態確認フレームを受信した保護継電器100b〜100nは、マスター保護継電器100aに応答フレームを転送する。この時、上位監視盤10との通信にTCP/IPを用いることから、トラフィックに影響を及ぼすことなく保護継電器100a〜100nとの通信が可能なわけである。
【0053】
それぞれの保護継電器100a〜100nは、一つのイーサネットを用いて、上位監視盤10との通信のためのTCP/IPソケットと実時間で保護継電器100a〜100n同士間の通信のためのソケットを別々に内部に備えることができるため、上位監視盤10の命令を処理しながらマスター保護継電器100aへの応答が可能である。
【0054】
特定の保護継電器との通信に連続して失敗した場合、マスター保護継電器100aは、通信誤りのある保護継電器に関する情報を上位監視盤10に送る。すると、上位監視盤10は、通信誤りのある保護継電器にデータの要求をしない。そのため、通信誤りの発生した保護継電器から応答を待つ遅延時間も要らず、結果として全体監視システムの実時間性が増大する。
【0055】
この場合、マスター保護継電器100aは、通信誤りのある保護継電器に対しても周期的に正常状態への復帰を実時間でチェックし、正常に復帰した瞬間にその正常状態への復帰を上位監視盤10に知らせる。
【0056】
このような通信はブロードキャスト方式のもので、上位監視盤10とは関係しないため、全体システムのトラフィック(Traffic)に影響を与えない。
【0057】
図6は、本発明によるイーサネットベースの電力システムにおける実時間通信誤り監視方法を示すフローチャートである。
【0058】
まず、マスターと設定された保護継電器100aは、既に設定された周期によって通信確認時点になると(S1)、スレーブと指定された特定の保護継電器100bに、状態確認フレームを生成して転送する(S2)。ここで、マスター保護継電器100aと少なくとも一つのスレーブ保護継電器100b〜100nとはイーサネットを介して互いに接続されている。
【0059】
続いて、マスター保護継電器100aは、状態確認フレームの転送されたスレーブ保護継電器100bから応答フレームを受信したか否か判断する(S3)。
【0060】
ここで、スレーブ保護継電器100bから応答フレームを受信すると、マスター保護継電器100aは、通信状態を確認する保護継電器がさらに存在するか否か判断する(S4)。もし、マスター保護継電器100aは、全てのスレーブ保護継電器100b〜100nとの通信確認が完了すると、次の通信確認周期まで待つ。
【0061】
一方、マスター保護継電器100aは、通信状態を確認するスレーブ保護継電器100c〜100nが残っていると、次の保護継電器100cに状態確認フレームを転送し(S5)、該保護継電器100cから応答フレームを受信したか否か判断する(S3)。
【0062】
スレーブ保護継電器100cから応答フレームを受信しなかった場合、マスター保護継電器100aは、保護継電器100cの応答失敗回数を増加させる(S6)。
【0063】
続いて、マスター保護継電器100aは、応答失敗した保護継電器100cの累積回数が、メモリー150に設定された基準回数を超過するか否か判断し(S7)、基準回数を超過すると、当該保護継電器100cを通信誤りの発生した保護継電器100cと決定し、この保護継電器100cに関する情報を実時間で上位監視盤10に転送する(S8)。
【0064】
上位監視盤10は、通信誤りの発生した非正常状態の保護継電器100cにはデータを要求しない。
【0065】
続いて、マスター保護継電器100aは、通信状態を確認するスレーブ保護継電器100nがさらに残っているか判断した後、次の保護継電器100nに状態確認フレームを転送し(S9、S10)、状態確認フレームの転送された保護継電器100nから応答フレームを受信したか否か判断する(S3)。
【0066】
一方、上記S7段階で累積された応答失敗回数が設定された基準回数を超過しないと判断される場合は、マスター保護継電器100aは、一定時間が経過した後に応答失敗した該当の保護継電器100cに状態確認フレームを再転送して、それに対する応答があるか否かチェックする(S11)。
【0067】
このように、本発明では、保護継電器100a〜100n間の通信を通じて通信誤りの発生時における通信誤りを迅速で正確に認識することができる。
【0068】
電力システムにおいて下位機器及び通信装備は、種々の原因により瞬間的にまたは連続して通信不良状態になることがあるが、上位監視盤10ではこのような通信状態を認識することができず、よって、下位機器同士間に、あらかじめ定義された図6に示すような流れに従って通信を行うようにしたわけである。
【0069】
すなわち、本発明は、下位機器同士間に通信を行うことで全体システムの通信上の正常/誤り状態を実時間で監視し、その結果を上位監視盤10に転送するように構成される。そして、上位監視盤10は、現在通信状態が不良である保護継電器とのデータ通信を中止し、通信不可能な保護継電器に通信を試みる余分の動作を省くことができる。
【0070】
本発明においてマスター保護継電器が状態確認フレームを転送する方法には様々なものがあり、例えば、数msecごとに順次に転送する、一定時間ごとに全体下位機器に一括として転送する、または、ポーリング(polling)方式で1:1にフレーム要求及び応答を行うことができる。これに限定されず、現場に応じてより好適な方法を使用することが可能である。
【0071】
以上では好適な実施例を中心に本発明を説明してきたが、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者にとっては、本発明の本質的な技術範囲内で様々な変形実施が可能であるということは明らかである。
【符号の説明】
【0072】
10 上位監視盤
100a〜100n 下位機器(保護継電器)
100a マスター下位機器
100b〜100n スレーブ下位機器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスター下位機器、少なくとも一つのスレーブ下位機器、及び上位監視盤は互いにイーサネットを介して接続され、
前記マスター下位機器から受信した状態確認フレームに対して応答フレームを転送する少なくとも一つのスレーブ下位機器と、
前記スレーブ下位機器に状態確認フレームを転送し、前記スレーブ下位機器から応答フレームを受信したか否かによって通信誤り有無を決定した後、通信誤り状態と決定された下位機器に関する情報を前記上位監視盤に転送するマスター下位機器と、
前記マスター下位機器から通信誤り状態と決定された下位機器に関する情報を受信し、該当の下位機器を除く残りの接続された下位機器に前記イーサネットを介して必要なデータを要請して収集する上位監視盤と、
を含んでなる、イーサネットベースの電力機器の通信誤り監視システム。
【請求項2】
前記マスター下位機器は、
前記応答フレームを受信しなかったスレーブ下位機器に反復して状態確認フレームを転送し、前記反復転送した状態確認フレームに対する応答フレームの未受信回数が、既に設定された基準回数を超過すると、該スレーブ下位機器を通信誤り状態と決定することを特徴とする、請求項1に記載のイーサネットベースの電力機器の通信誤り監視システム。
【請求項3】
前記マスター下位機器は、
前記通信誤り状態と決定された下位機器に反復して状態確認フレームを転送し、前記下位機器から応答フレームを受信すると、該下位機器との通信誤りが復旧されたことを前記上位監視盤に知らせることを特徴とする、請求項1に記載のイーサネットベースの電力機器の通信誤り監視システム。
【請求項4】
前記マスター下位機器及びスレーブ下位機器は、
保護継電器、PLC(Programmable Logic Controller)、計測器、及び電力監視装置のうちいずれか一つであることを特徴とする、請求項1に記載のイーサネットベースの電力機器の通信誤り監視システム。
【請求項5】
マスター下位機器が、既に設定された周期にしたがってイーサネットを介して相互接続されたスレーブ下位機器に状態確認フレームを生成して転送するステップと、
前記スレーブ下位機器から応答フレームが受信されたか否かを判断するステップと、
前記スレーブ下位機器から応答フレームが受信されないと、前記スレーブ下位機器の応答失敗回数を増加させるステップと、
前記スレーブ下位機器への状態確認フレーム転送を反復し、累積された応答失敗回数が既に設定された基準回数を超過するか否か判断して、前記判断結果基準回数を超過すると、前記スレーブ下位機器を通信誤り状態と決定するステップと、
前記通信誤り状態と決定された下位機器に関する情報を、上位監視盤に実時間転送するステップと、
を含んでなる、イーサネットベースの電力システムの通信誤り監視方法。
【請求項6】
前記応答フレームが受信されたか否かを判断した後に、
前記スレーブ下位機器から応答フレームが受信されると、前記マスター下位機器が、前記イーサネットを介して接続された他のスレーブ下位機器に状態確認フレームを転送し、該当の下位機器から応答フレームが受信されたか否かを判断するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項5に記載のイーサネットベースの電力システムの通信誤り監視方法。
【請求項7】
前記累積された応答失敗回数が、既に設定された基準回数を超過するか否かを判断した後に、
前記判断結果、超過しない場合に、前記マスター下位機器が、一定時間が経過した後に前記スレーブ下位機器に状態確認フレームを再転送し、応答フレームが受信されたか否かを判断することを特徴とする、請求項5に記載のイーサネットベースの電力システムの通信誤り監視方法。
【請求項8】
前記上位監視盤が、前記通信誤り状態と決定された下位機器にデータ転送を要請しないステップをさらに含んでなることを特徴とする、請求項5に記載のイーサネットベースの電力システムの通信誤り監視方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−147132(P2011−147132A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7039(P2011−7039)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【出願人】(593121379)エルエス産電株式会社 (221)
【氏名又は名称原語表記】LSIS CO., LTD
【Fターム(参考)】