説明

ウィンカー制御支援装置、ウィンカー制御支援方法、及び、ウィンカー制御支援プログラム

【課題】車線変更、路肩発進等による操舵角の小さな変化でもウィンカーの自動的な解除に貢献する。
【解決手段】動作中検出手段11aが車両のウィンカーの動作中を検出すると、針路変更完了判定手段11dが進行方向ベクトル検出手段11bによって検出された車両の進行方向ベクトルと道路情報取得手段11cによって取得された、例えば道路の基準線、基準ベクトル等を示す道路情報とを比較し、その比較結果に基づいて車両の針路変更が完了したか否かを判定する。針路変更完了判定手段11dによって針路変更が完了したと判定されると、解除制御手段11eがウィンカーの動作解除を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のウィンカーの点滅/解除の制御を支援するウィンカー制御支援装置、ウィンカー制御支援方法、ウィンカー制御支援プログラム等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両には周囲の歩行者や他の車両の運転手に対して車両が左右何れの方向に曲がろうとしているかを通知するウィンカーが備えられている。ウィンカーは、運転者がステアリング近傍に備えられた方向選択スイッチを操作することで、方向指示器の点灯又は消灯することができるようになっている。
【0003】
また、車両の右左折終了後に自動的に方向選択スイッチを初期状態に戻して方向指示器の点灯を消灯させるウィンカーが知られている。そして、特許文献1に示すナビゲーション装置には、経路案内手段の経路出力に基づいて自車前方に存在する右左折を行う分岐点を検出し、運転者の右左折の意図を他の車両に通知する方向指示器の操作と経路案内における右左折を行う分岐点とが一致したときに、車両の回動が終了するまで方向指示器を点灯させるように制御する技術思想が開示されている。
【特許文献1】特開2007−112327号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1のナビゲーション装置では、右左折の完了を判断できるが、その判断は地図の交差点情報とハンドルの操舵角情報を合わせて判断しているため、例えば車両の車線変更時や路肩からの発進時などの操舵角の変化は小さい場合にはその右左折の完了を判断することができず、ウィンカーの動作を解除することができないという問題があった。また、従来の機械的にハンドルの操舵角を検知するものでは、上述した操舵角の小さな変化を検知するのは困難であり、それに対応しようとすると、交差点進入中の小さな舵角の戻り等でも運転者の意図しないときにウィンカーの動作が解除されてしまう危険性があった。このように本発明が解決しようとする課題は、上記した問題が一例として挙げられる。
【0005】
よって本発明は、上述した問題点に鑑み、車線変更、路肩発進等による操舵角の小さな変化でもウィンカーの自動的な解除に貢献することができるウィンカー制御支援装置、ウィンカー制御支援方法、ウィンカー制御支援プログラム等を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため本発明によりなされた請求項1記載のウィンカー制御支援装置は、車両のウィンカーの制御を支援するウィンカー制御支援装置において、前記ウィンカーが動作中であることを検出する動作中検出手段と、前記車両の進行方向ベクトルを検出する進行方向ベクトル検出手段と、前記車両が走行している道路における針路変更を判定するための道路情報を取得する道路情報取得手段と、前記動作中検出手段がウィンカーの動作中を検出しているときに、前記進行方向ベクトル検出手段が検出した進行方向ベクトルと前記道路情報取得手段が取得した道路情報との比較結果に基づいて、前記車両の針路変更が完了したか否かを判定する針路変更完了判定手段と、前記針路変更完了判定手段によって針路変更が完了したとの判定に応じて、前記ウィンカーの動作解除を制御する解除制御手段と、を有することを特徴とする。
【0007】
上記課題を解決するため本発明によりなされた請求項4記載のウィンカー制御支援方法は、車両のウィンカーの制御を支援するウィンカー制御支援方法において、前記ウィンカーが動作中であることを検出する動作中検出工程と、前記車両の進行方向ベクトルを検出する進行方向ベクトル検出工程と、前記車両が走行している道路における針路変更を判定するための道路情報を取得する道路情報取得工程と、前記ウィンカーの動作中を検出しているときに、前記検出した進行方向ベクトルと前記取得した道路情報との比較結果に基づいて、前記車両の針路変更が完了したか否かを判定する針路変更完了判定工程と、前記針路変更が完了したとの判定に応じて、前記ウィンカーの動作解除を制御する解除制御工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
上記課題を解決するため本発明によりなされた請求項5記載のウィンカー制御支援プログラムは、車両のウィンカーの制御を支援するウィンカー制御支援装置のコンピュータを、前記ウィンカーが動作中であることを検出する動作中検出手段、前記車両の進行方向ベクトルを検出する進行方向ベクトル検出手段、前記車両が走行している道路における針路変更を判定するための道路情報を取得する道路情報取得手段、前記動作中検出手段がウィンカーの動作中を検出しているときに、前記進行方向ベクトル検出手段が検出した進行方向ベクトルと前記道路情報取得手段が取得した道路情報との比較結果に基づいて、前記車両の針路変更が完了したか否かを判定する針路変更完了判定手段、前記針路変更完了判定手段によって針路変更が完了したとの判定に応じて、前記ウィンカーの動作解除を制御する解除制御手段、として機能させるためのウィンカー制御支援プログラムである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に係るウィンカー制御支援装置、ウィンカー制御支援方法、及び、ウィンカー制御支援プログラムの一実施の形態を、図1の基本構成図を参照して以下に説明する。
【0010】
図1において、ウィンカー制御支援装置10は、車両のウィンカーの制御を支援するウィンカー制御支援装置10において、前記ウィンカーが動作中であることを検出する動作中検出手段11aと、前記車両の進行方向ベクトルを検出する進行方向ベクトル検出手段11bと、前記車両が走行している道路における針路変更を判定するための道路情報を取得する道路情報取得手段11cと、前記動作中検出手段11aがウィンカーの動作中を検出しているときに、前記進行方向ベクトル検出手段11bが検出した進行方向ベクトルと前記道路情報取得手段11cが取得した道路情報との比較結果に基づいて、前記車両の針路変更が完了したか否かを判定する針路変更完了判定手段11dと、前記針路変更完了判定手段11dによって針路変更が完了したとの判定に応じて、前記ウィンカーの動作解除を制御する解除制御手段11eと、を有している。
【0011】
また、車両のウィンカーの制御を支援するウィンカー制御支援方法において、前記ウィンカーが動作中であることを検出する動作中検出工程と、前記車両の進行方向ベクトルを検出する進行方向ベクトル検出工程と、前記車両が走行している道路における針路変更を判定するための道路情報を取得する道路情報取得工程と、前記ウィンカーの動作中を検出しているときに、前記検出した進行方向ベクトルと前記取得した道路情報との比較結果に基づいて、前記車両の針路変更が完了したか否かを判定する針路変更完了判定工程と、前記針路変更が完了したとの判定に応じて、前記ウィンカーの動作解除を制御する解除制御工程と、を有している。
【0012】
ウィンカー制御支援装置10の記憶媒体等には、そのウィンカー制御支援装置10のコンピュータを、前記ウィンカーが動作中であることを検出する動作中検出手段11a、前記車両の進行方向ベクトルを検出する進行方向ベクトル検出手段11b、前記車両が走行している道路における針路変更を判定するための道路情報を取得する道路情報取得手段11c、前記動作中検出手段11aがウィンカーの動作中を検出しているときに、前記進行方向ベクトル検出手段11bが検出した進行方向ベクトルと前記道路情報取得手段11cが取得した道路情報との比較結果に基づいて、前記車両の針路変更が完了したか否かを判定する針路変更完了判定手段11d、前記針路変更完了判定手段11dによって針路変更が完了したとの判定に応じて、前記ウィンカーの動作解除を制御する解除制御手段11e、として機能させるためのウィンカー制御支援プログラムを記憶している。
【0013】
このようなウィンカー制御支援装置10によれば、動作中検出手段11aが車両のウィンカーの動作中を検出すると、針路変更完了判定手段11dが進行方向ベクトル検出手段11bによって検出された車両の進行方向ベクトルと道路情報取得手段11cによって取得された、例えば道路の基準線、基準ベクトル、道路の進行方向を示し且つ車両の進行方向ベクトルと接する接線、等を示す道路情報とを比較し、その比較結果に基づいて車両の針路変更が完了したか否かを判定する。針路変更完了判定手段11dによって針路変更が完了したと判定されると、解除制御手段11eがウィンカーの動作解除を制御する。
【0014】
よって、ウィンカーの動作中に、車両の進行方向ベクトルと車両の針路変更を判定するための道路情報とを比較して針路変更の完了を判定するようにしたことから、ハンドルの操舵角の変化が小さな車線変更を検出することができるため、車線変更時、路肩からの発進時等の終了に応じたウィンカーの自動的な動作解除に貢献することができる。また、ソフトウェアでウィンカーの動作を解除するか否かを判定するため、機械式で判定するよりも正確にウィンカーの動作を解除することができる。従って、車両の針路変更後のウィンカーの動作解除忘れを防止することができる。
【0015】
また、上述したウィンカー制御支援装置10において、前記道路情報が、前記道路における車線を示す車線データを有し、前記針路変更完了判定手段11dが、前記進行方向ベクトルと前記道路情報の車線データとの比較結果に基づいて、前記車両の車線変更の完了を判定する手段となっている。
【0016】
このようなウィンカー制御支援装置10によれば、針路変更完了判定手段11dが進行方向ベクトルと道路情報の車線データ(例えばベクトル、接線、等)との交わり角等の比較結果に基づいて、車両の車線変更の完了を判定する。
【0017】
よって、車両の進行方向ベクトルと道路情報の車線データとの比較結果に基づいて車両の車線変更の完了を判定するようにしたことから、車両が走行している道路の車線に関する車線データを車線情報として取得することで、車線変更の完了を正確に判定することができる。また、車両が走行している道路が3車線以上の場合は、その複数の車線の各々に対応した車線データを取得することで、車線変更の完了を確実に判定することができる。従って、より一層正確なウィンカーの動作解除に貢献することができる。
【0018】
また、上述したウィンカー制御支援装置10において、前記車両が進行する道路における交差点情報を取得する交差点情報取得手段11fと、前記針路変更完了判定手段11dによって針路変更が完了したとの判定に応じて、前記交差点情報取得手段11fが取得した交差点情報に基づいて前記車両が交差点に近づいているか否かを判定する交差点判定手段11gと、を有し、前記解除制御手段11eが、前記交差点判定手段11gによって車両が交差点に近づいていると判定されたときは、前記ウィンカーの動作を継続させる手段となっている。
【0019】
このようなウィンカー制御支援装置10によれば、交差点情報取得手段11fが交差点情報を取得すると、針路変更完了判定手段11dによる針路変更が完了したとの判定に応じて、交差点判定手段11gがその交差点情報に基づいて車両が交差点に近づいているか否かを判定する。そして、交差点が近づいていると判定されると、解除制御手段11eはウィンカーの動作を継続させる。
【0020】
よって、車両の針路変更が完了しても、車両の進行先の交差点情報を取得して、車両が交差点に近づいていると、ウィンカーの動作を継続させるようにしたことから、車両が交差点に車線を変更した後に進入して右左折する場合等に、運転者の意図に反してウィンカーの動作が解除されることを防止できる。
【実施例】
【0021】
以下、上述した本発明のウィンカー制御支援装置等をウィンカー制御システムに適用する場合の実施例を、図2乃至図7の図面を参照して以下に説明する。なお、説明を簡単化するために、本発明に関連する部分のみを説明する。
【0022】
図2において、ウィンカー制御システム1は、ハンドルECU(electronic control unit)2と、ウィンカー制御装置3と、上述した図1に示すウィンカー制御支援装置として機能するナビゲーション装置10と、を有して構成している。そして、ハンドルECU2とウィンカー制御装置3とナビゲーション装置10との各々は、車内LAN(local area network)5に通信可能に接続されている。
【0023】
ハンドルECU2は、車両のステアリングに設けられたステアリングの切れ角を検出する舵角センサを有している。ハンドルECU2は、舵角センサで検出した切れ角から操舵角情報を作成して車内LAN5に送出する又は予め定められた送信先に送信する。また、ハンドルECU2は、操舵角情報から車両の進行方向ベクトルを算出して車内LAN5に送出する又は前記送信先に送信する。
【0024】
ウィンカー制御装置3は、公知であるように、車両の前方及び後方に設けられて、歩行者、他の車両の運転者等に自車両の右左折を行う方向を通知するウィンカー装置(ウィンカー)4の点滅/消灯を制御する装置である。ウィンカー制御装置3は、車両のステアリングの近傍に設けられた方向選択スイッチの操作に応じて該当する方向のウィンカー装置4を点滅させ、また、その方向選択スイッチが初期状態に戻る等により該当するウィンカー装置4を消灯させる。または、ウィンカー制御装置3が、消灯条件の発生に応じて該当するウィンカー装置4を消灯させると共に、その方向選択スイッチを初期状態に復帰させる制御を行う。
【0025】
ナビゲーション装置10は、公知であるように、車両の移動に関する各種情報を運転者等に提供する装置となっている。ナビゲーション装置10は、図3に示すように、制御部11と、メモリ部12と、記憶部13と、GPS(global positioning system)受信機14と、表示部15と、接続部16と、操作部17と、を有している。
【0026】
制御部11は、ナビゲーション装置10全体の制御を司る。制御部11は、周知であるマイクロプロセッサユニット(MPU)、DSP(Digital Signal Processor)等が用いられる。そして、制御部11は、地図情報に基づいて、現在位置や目的地に関する情報、目的地までのルート探索や表示、最寄りの所定の店舗の検索やその表示あるいは店舗のサービス内容に関する情報の表示などを実施する。
【0027】
制御部11は、上記ウィンカー制御支援装置及びナビゲーション機能等を実現するための各種プログラム等を図示しない内蔵メモリに記憶している。詳細には、上述した図1に示す動作中検出手段11a、進行方向ベクトル検出手段11b、道路情報取得手段11c、針路変更完了判定手段11d、解除制御手段11e、交差点情報取得手段11f、交差点判定手段11g等の各種手段として制御部11を機能させるためのウィンカー制御支援プログラム等を内蔵メモリに記憶している。
【0028】
メモリ部12は、制御部11が読み書き自在のメモリ等の各種記憶媒体が用いられ、後述する複数の属性情報、スケール情報、設定情報、誘導情報等の各種情報を記憶する。そして、スケール情報は、利用者等によって現在設定されているスケールを示すスケールデータを有している。設定情報は、上記ウィンカー制御支援装置10に相当するウィンカー制御支援機能に対して、運転者等によって設定された機能を有効とするか否かを示すデータを有している。
【0029】
記憶部13は、ハードディスク装置を用いる場合について説明するが、DVD(digital versatile disk; digital video disc)、CD−ROM(compact disc read-only memory)等の各種記憶媒体を用いることができる。記憶部13は、複数のスケールで任意の箇所の地図を表示するための地図情報を有する地図情報データベース(DB)を記憶している。そして、地図情報DBは、指定された地点の地図情報を提供することが可能な構成になっている。
【0030】
GPS受信機14は、公知であるように、GPS衛星群を形成する複数の人工衛星が発射する電波を受信して、このGPS受信機14の現在の位置情報を求め、この現在の位置情報を制御部11にインタフェース(図示せず)を介して出力する。そして、制御部11は、入力された位置情報をメモリ部12に時系列的に記憶して格納する。なお、位置情報は、GPS受信機14が検出した時点の車両の位置を示す緯度、経度、検出日時等の各種データを有している。
【0031】
表示部15は、例えば車両のインストルメントパネルに運転者である搭乗者Aから目視可能なように設けられており、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)素子等の各種表示装置が用いられる。そして、表示部15は、例えば移動体を誘導するための誘導画面等を表示するための各種情報を制御部11からの要求に応じて表示する。
【0032】
通信部16は、上述した車内LAN5を介した各種情報の送受信が可能な通信装置が用いられ、制御部11から入力される情報を指定された送信先に車内LAN5を介して送信すると共に、受信した情報を制御部11に出力する。
【0033】
操作部17は、計算条件やルート設定等の指令入力用の各種キースイッチを有している。より具体的には、表示部15に表示された地図画像上の所望の位置にカーソルを移動させる矢印キーや、確認又は画定入力を行うエンターキー、メニュー選択キー等を有している。そして、操作部17は、利用者の操作等に応じた入力情報を制御部11に出力する。
【0034】
このように構成したナビゲーション装置10において、制御部11はナビゲーション機能のアプリケーション・プログラムを実行することで、公知であるように、利用者が指定した目的地までのルート情報を計算し、GPS受信機14で検出した位置情報と該ルート情報とを現在位置に対応した地図上に重畳して表示部15に表示することで、利用者を目的地に誘導する。
【0035】
次に、上述した記憶13に記憶している地図情報DBの一例を説明する。地図情報データベースは複数の地図情報を有している。地図情報の各々は、位置データ、地図画像データ、マークデータ、等を有している。
【0036】
その地図画像データは、例えば交差点の名称などの名称情報と、道路情報と、背景情報と、を有している。名称情報は、その領域における例えば交差点の名称や地域の名称などを絶対座標との位置関係で所定の位置に配置表示されるデータのテーブル構造に構成されている。道路情報は、その領域における道路要素データである道路を絶対座標との位置関係で所定の位置に配置表示させるデータのテーブル構造に構成されている。道路情報は、道路の車線数とその車線の幅、交差点、分岐点、等の各種データを有している。
【0037】
次に、車両の車線変更の完了を判定する判定方法の一例を、図4の図面を参照して説明する。なお、図4において、車両100のウィンカー4を動作させた時点で走行中の道路を走行路R1、この走行路R1から車両100が進入しようとする道路を目的路R2としている。そして、本実施形態では、車両100の進行方向ベクトルVを車両100の先端部から定義する場合について説明するが、本発明はこれに限定するものではなく、例えば車両100の重心部分、任意に定めた部分等から定義するなど種々異なる実施形態とすることができる。そして、進行方向ベクトルVは、車両100の車内LAN5を介して他の機器から取得できればそれを取得し、また、他の機器から取得できない場合は、GPS受信機14で異なる時間に検出した複数の車両位置から算出して取得することになる。
【0038】
制御部11は、GPS受信機14が検出した車両位置に対応し且つ車両100の走行路R1の特定が可能なスケールの地図情報を地図情報DBから取得し、その地図情報に対して図4に示すような車線データL(例えば線データ、ベクトルデータ、等)を定義する。なお、車両100が走行している道路に車線が複数存在する場合は、その車線数に対応した車線データLを定義することになる。そして、制御部11は、その車線データLを地図情報に重畳させた道路情報として取得してメモリ部12等に記憶する。
【0039】
車両100が走行路R1から目的路R2に車線変更を行う場合、車両100の進行方向ベクトルVは図4中の軌跡Tのように変化する。即ち、進行方向ベクトルVと車線データLが交差した場合は車両100の変更中、進行方向ベクトルVと車線データLが平行の場合は車両100が走行路R1における針路を維持して走行していると判定できる。なお、進行方向ベクトルVと車線データLとの比較方法としては、進行方向ベクトルVの起点を車線データ上に位置付けて、ずれ角を算出する方法や、進行方向ベクトルVと車線データLが平行であるか否かを比較する方法などが挙げられる。
【0040】
また、このような車線変更の完了判定方法は一例であり、例えば、地図情報から道路の詳細な情報を得られない場合は、その道路の接線や針路ベクトル等と車両のハンドルの操舵角から得られる車両100の予測針路である進行方向ベクトルVとの関係から判定するなど種々異なる判定方法を用いることができる。
【0041】
次に、ナビゲーション装置10の制御部11が実行するウィンカー制御支援処理の一例を、図5のフローチャートを参照して以下に説明する。このウィンカー制御支援処理は、ウィンカー制御装置3によるウィンカー装置4の動作開始等に応じて実行されることを前提としている。
【0042】
制御部11によって上記ウィンカー制御支援処理プログラムが実行されると、ステップS11において、通信部16を介してウィンカー制御装置3から取得したウィンカー動作状態情報等に基づいて、ウィンカー装置4が動作中(点滅中)であるか否かが判定される。ウィンカー装置4が動作中ではないと判定された場合(S11でN)、運転者による方向選択スイッチの復帰操作等によってウィンカー装置4の動作が解除されたと判定することができるため、処理を終了する。一方、ウィンカー装置4が動作中であると判定された場合(S11でY)、ステップS12に進む。
【0043】
ステップS12において、上述したように取得された車両100の進行方向ベクトルVが検出されてメモリ部12等に記憶され、ステップS13において、上述した道路情報が取得されてメモリ部12等に記憶され、ステップS14において、メモリ部12等の進行方向ベクトルVと道路情報とに基づいて車両100の針路情報(進行方向ベクトルVと車線データLとの交差角)が算出されてメモリ部12等に記憶され、その後ステップS15に進む。
【0044】
ステップS15において、メモリ部12等の針路情報と予め定められた針路変更判定条件との比較結果に基づいて、車両100が針路変更が完了したか否かが判定される。なお、針路変更判定条件の一例としては、前記交差角に対して針路変更の完了と判定する判定範囲や閾値などが挙げられる。そして、針路変更が完了していないと判定された場合(S15でN)、ステップS11に戻り、一連の処理が繰り返される。一方、針路変更が完了したと判定された場合(S15でY)、ステップS16に進む。
【0045】
ステップS16において、GPS受信機14が検出した車両位置に対応し且つ車両100の走行路R1の特定が可能なスケールの地図情報が地図情報DBから取得され、車両100が走行している走行路R1の進行方向又は車両位置における交差点の有無等を示す交差点情報がその地図情報から取得されてメモリ部12等に記憶され、ステップS17に進む。
【0046】
ステップS17において、メモリ12等の交差点情報に基づいて、車両100付近に交差点があるか否かが判定される。交差点があると判定された場合(S17でY)、ステップS11に戻り、一連の処理が繰り返される。即ち、ウィンカー装置4の動作解除を行わずに、支援処理を継続することになる。一方、交差点ではないと判定された場合(S17でN)、ステップS18において、ウィンカー制御装置3に対してウィンカー装置4の動作解除を要求する動作解除要求が通信部16を介して送信されることで、ウィンカー装置4の動作解除が制御され、上記方向選択スイッチを初期状態に復帰させ、その後処理を終了する。
【0047】
以上説明した図5に示すウィンカー制御支援処理を制御部11が実行することで、上述した請求項中の動作中検出手段、進行方向ベクトル検出手段、道路情報取得手段、針路変更完了判定手段、解除制御手段、交差点情報取得手段、交差点判定手段として制御部11が機能することになる。そして、図5に示すフローチャート中のステップS11が動作中検出手段、ステップS12が進行方向ベクトル検出手段、ステップS13が道路情報取得手段、ステップS15が針路変更完了判定手段、ステップS18が解除制御手段、ステップS16が交差点情報取得手段、ステップS17が交差点判定手段にそれぞれ相当している。
【0048】
次に、上述した構成のナビゲーション装置10の動作(作用)の一例を、図6及び図7の図面を参照して以下に説明する。
【0049】
図6において、走行路R1を走行している車両100が並設された目的路R2への車線変更に応じて右折のウィンカー装置4が動作(点滅)されると、ナビゲーション装置10は車両100の方向ベクトルVと車両100が走行している道路の道路情報との比較結果に基づいて、車両100の車線変更の完了を監視する。そして、ナビゲーション装置10は、目的路R2への車線変更が完了したと判定すると、交差点情報を取得して車両100の現在地付近に交差点Cがあるか否かを判定する。
【0050】
ナビゲーション装置10は、図6に示すように交差点Cがある(進入している)と判定した場合、車両100が交差点Cで右折する可能性があるため、ウィンカー装置3の動作を継続させる。そして、ナビゲーション装置10は、車両100の交差点Cでの右折に応じて再度針路変更を検出すると(軌跡T1)、その針路変更の完了を監視し、その後針路変更が完了したと判定すると、目的路R3に進入した車両100aの進行方向には新たな交差点がないことから、ウィンカー制御装置3を制御することで、ウィンカー装置3の動作を解除させる。
【0051】
また、交差点Cに進入した車両100がその交差点Cを直進して目的路R4に進入したた場合(軌跡T2)、ナビゲーション装置10は、目的路R4における車両100bの進行方向には新たな交差点がないことから、目的路R4における車両100bの走行開始に応じてウィンカー装置3の動作を解除させることになる。
【0052】
さらに、図7に示すように、車両100が走行路R1から対向車線R5を横断して目的路R6に進入する場合、ナビゲーション装置10は、右折のウィンカー装置4が動作(点滅)に応じて、車両100の方向ベクトルVと車両100が走行している道路の道路情報L1との比較結果に基づいて、車両100の車線変更の完了を監視する。そして、ナビゲーション装置10は、目的路R6への車線変更が完了していないと判定すると、その車線変更の完了を待つ。
【0053】
その後、車両100が目的路R6に進入すると、ナビゲーション装置10は、新たな道路情報L2を取得するため、該道路情報L2と進行方向ベクトルVとの比較結果に基づいて、針路変更が完了したと判定することになり、その目的路R6の進行方向には新たな交差点が存在しないことから、目的路R6における車両100のウィンカー装置3の動作を解除させることになる。
【0054】
以上説明したナビゲーション装置10によれば、ウィンカー装置3の動作中に、車両100の進行方向ベクトルVと車両の針路変更を判定するための道路情報とを比較して針路変更の完了を判定するようにしたことから、ハンドルの操舵角の変化が小さな車線変更の完了を検出することができるため、車線変更時、路肩からの発進時等の終了に応じたウィンカー装置3の自動的な動作解除に貢献することができる。また、ソフトウェアでウィンカー装置3の動作を解除するか否かを判定するため、機械式で判定するよりも正確にウィンカー装置3の動作を解除することができる。従って、車両100の針路変更後のウィンカー装置3の動作解除忘れを防止することができる。
【0055】
また、車両100の進行方向ベクトルVと道路情報の車線データLとの比較結果に基づいて車両100の車線変更の完了を判定するようにしたことから、車両100が走行している道路の車線に関する車線データLを車線情報として取得することで、車線変更の完了を正確に判定することができる。また、車両100が走行している道路が3車線以上の場合は、その複数の車線の各々に対応した車線データLを取得することで、車線変更の完了を確実に判定することができる。従って、より一層正確なウィンカー装置3の動作解除に貢献することができる。
【0056】
さらに、車両100の針路変更が完了しても、車両の進行先の交差点情報を取得して車両1010が交差点C等に近づいていると、ウィンカー装置3の動作を継続させるようにしたことから、車両100が交差点C等に車線を変更した後に進入して右左折する場合等に、運転者の意図に反してウィンカー装置3の動作が解除されることを防止できる。
【0057】
なお、本実施例では、本発明の上記ウィンカー制御支援装置をナビゲーション装置10で実現する場合について説明するが、本発明はこれに限定するものではなく、例えば車両に搭載されてウィンカー制御装置3との通信が可能な各種ECUやウィンカー制御装置3自体などで実現させたり、上記ウィンカー制御支援装置を単独の装置としてウィンカー制御システム1に用いるなど種々異なる実施形態とすることができる。
【0058】
例えば、上記ウィンカー制御支援装置を図2中のウィンカー制御装置3で実現する場合、ウィンカー制御装置3がナビゲーション装置10から地図情報、車両100の位置情報等の各種情報を取得したり、ウィンカー制御装置3にそれらの情報を取得するための構成を追加することで実現することができる。
【0059】
このように上述した実施例は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明に係るウィンカー制御支援装置の基本構成を示す構成図である。
【図2】ウィンカー制御システムの概略構成の一例を示すシステム構成図である。
【図3】図2中のナビゲーション装置の概略構成の一例を示す構成図である。
【図4】車両の進行方向ベクトルと道路情報の一例を説明するための図である。
【図5】図3中の制御部が実行するウィンカー制御支援処理の一例を示すフローチャートである。
【図6】図3中のナビゲーション装置の動作例1を説明するための図である。
【図7】図3中のナビゲーション装置の動作例2を説明するための図である。
【符号の説明】
【0061】
1 ウィンカー制御システム
10 ウィンカー制御支援装置(ナビゲーション装置)
11a 動作中検出手段(制御部)
11b 進行方向ベクトル検出手段(制御部)
11c 道路情報取得手段(制御部)
11d 針路変更完了判定手段(制御部)
11e 解除制御手段(制御部)
11f 交差点情報取得手段(制御部)
11g 交差点判定手段(制御部)
V 進行方向ベクトル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のウィンカーの制御を支援するウィンカー制御支援装置において、
前記ウィンカーが動作中であることを検出する動作中検出手段と、
前記車両の進行方向ベクトルを検出する進行方向ベクトル検出手段と、
前記車両が走行している道路における針路変更を判定するための道路情報を取得する道路情報取得手段と、
前記動作中検出手段がウィンカーの動作中を検出しているときに、前記進行方向ベクトル検出手段が検出した進行方向ベクトルと前記道路情報取得手段が取得した道路情報との比較結果に基づいて、前記車両の針路変更が完了したか否かを判定する針路変更完了判定手段と、
前記針路変更完了判定手段によって針路変更が完了したとの判定に応じて、前記ウィンカーの動作解除を制御する解除制御手段と、
を有することを特徴とするウィンカー制御支援装置。
【請求項2】
前記道路情報が、前記道路における車線を示す車線データを有し、
前記針路変更完了判定手段が、前記進行方向ベクトルと前記道路情報の車線データとの比較結果に基づいて、前記車両の車線変更の完了を判定する手段であることを特徴とする請求項1に記載のウィンカー制御支援装置。
【請求項3】
前記車両が進行する道路における交差点情報を取得する交差点情報取得手段と、
前記針路変更完了判定手段によって針路変更が完了したとの判定に応じて、前記交差点情報取得手段が取得した交差点情報に基づいて前記車両が交差点に近づいているか否かを判定する交差点判定手段と、
を有し、
前記解除制御手段が、前記交差点判定手段によって車両が交差点に近づいていると判定されたときは、前記ウィンカーの動作を継続させる手段であることを特徴とする請求項1又は2に記載のウィンカー制御支援装置。
【請求項4】
車両のウィンカーの制御を支援するウィンカー制御支援方法において、
前記ウィンカーが動作中であることを検出する動作中検出工程と、
前記車両の進行方向ベクトルを検出する進行方向ベクトル検出工程と、
前記車両が走行している道路における針路変更を判定するための道路情報を取得する道路情報取得工程と、
前記ウィンカーの動作中を検出しているときに、前記検出した進行方向ベクトルと前記取得した道路情報との比較結果に基づいて、前記車両の針路変更が完了したか否かを判定する針路変更完了判定工程と、
前記針路変更が完了したとの判定に応じて、前記ウィンカーの動作解除を制御する解除制御工程と、
を有することを特徴とするウィンカー制御支援方法。
【請求項5】
車両のウィンカーの制御を支援するウィンカー制御支援装置のコンピュータを、
前記ウィンカーが動作中であることを検出する動作中検出手段、
前記車両の進行方向ベクトルを検出する進行方向ベクトル検出手段、
前記車両が走行している道路における針路変更を判定するための道路情報を取得する道路情報取得手段、
前記動作中検出手段がウィンカーの動作中を検出しているときに、前記進行方向ベクトル検出手段が検出した進行方向ベクトルと前記道路情報取得手段が取得した道路情報との比較結果に基づいて、前記車両の針路変更が完了したか否かを判定する針路変更完了判定手段、
前記針路変更完了判定手段によって針路変更が完了したとの判定に応じて、前記ウィンカーの動作解除を制御する解除制御手段、
として機能させるためのウィンカー制御支援プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−274544(P2009−274544A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−126713(P2008−126713)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】