説明

ウィンドウワイパのワイパブレードのためのワイパゴム

エラストマ材料又はゴム材料から成る成形体を有するウィンドウワイパのワイパブレードのためのワイパゴムであって、少なくとも部分的に表面コーティングされている。この表面コーティング(22)が炭素繊維(24)を含有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項の上位概念の形式の、ウィンドウワイパのワイパブレードのためのワイパゴム、並びにコーティング溶液、若しくはワイパゴムの製造法に関する。
【0002】
背景技術
ウィンドウワイパのワイパブレードのためのワイパゴム成形体は、様々な要求が課せられた機械的な成形材である。即ち、ワイパゴム成形体は、クリーニングすべき表面上に十分良好な払拭像を形成することを保証しなければならず、同時に、払拭過程中のノイズの発生はできるだけ僅かでなければならない。さらに、このような形式のワイパゴム成形体は、オゾンや紫外線のような環境的な影響に対して高い耐性を有していなければならない。このような形式の要求を課せられた成形体を保証するために、ワイパゴム成形体は一般的に適当なエラストマ又はゴム材料から製造されていて、表面はコーティングされている。コーティングにより、払拭過程中のワイパブレードとクリーニングすべき表面との間の摩擦係数は減じられ、表面のクリーニングに必要なワイパエッジの摩耗耐性は改善される。
【0003】
この関連で、ワイパゴム成形体の塩素処理や、しばしば付加的にグラファイトが施されることは普通である。このためにグラファイト粉末は、適当な有機溶剤において懸濁され、少なくともワイパゴムのワイパリップの領域に吹き付けられる。この有機溶剤は蒸発され、グラファイト粒子は微細に分配されてゴム表面上に残り、払拭過程中に、エラストマ材料とクリーニングすべき表面との間の摩擦を低減させる。
【0004】
欠点は、被着されたグラファイト粒子がしばしば、ワイパゴム成形体の材料に対して十分に付着せず、早期の剥離によりグラファイトの効果はしばしば、短時間の運転時間後に失われてしまうことにある。
【0005】
このような問題を解決するために、ドイツ連邦共和国特許出願公開第10132026号明細書に記載されたワイパ条片のためのコーティングでは、例えばグラファイトのような粒子状の固体潤滑剤が、例えばポリウレタン、ポリアミド又はエポキシ樹脂のような適当な有機バインダ内に懸濁され、塗布される。バインダ剤の硬化後、グラファイト粒子がワイパゴム成形体の表面に結合される。
【0006】
発明の開示
本発明の課題は、全ての運転条件下で、所要な耐用期間にわたって払拭品質を明らかに改善することができる、ウィンドウワイパのワイパブレードのためのワイパゴムを提供することである。
【0007】
この課題は有利には、独立請求項の特徴を有したワイパゴム、コーティング溶液、ワイパゴムの製造法により解決される。
【0008】
これは特に、本発明によるワイパゴムが、炭素繊維を含有する表面コーティングを有していることに基づいている。炭素繊維含有の表面コーティングを使用することにより、このコーティングが設けられたワイパゴムは、改善された払拭品質を有し、使用中の摩耗は明らかに減じられ、従って、ワイパゴムの塩素処理は省くことができる。
【0009】
本発明のさらに有利な構成は従属請求項に記載されている。
【0010】
ワイパゴムのコーティング内に含有された炭素繊維が部分的にのみ炭化されているならば有利である。部分炭化された炭素繊維の使用の特別な利点は、残留含量に、例えばヒドロキシ基、アミド基、イミド基、ニトリル基のような官能基を有していることである。このように残されている官能基は、コーティングのバインダ成分と反応し、炭素繊維は化学的に強固にワイパゴムの表面に固定される。
【0011】
炭素繊維が1mmよりもずっと小さい長さを有しているとさらに有利である。このような長さの繊維を使用する特別な利点は、高い払拭品質を維持しながらも、ワイパゴムの摩擦及び摩耗が十分減じられることにある。
【0012】
本発明の特に有利な構成によれば、コーティングプロセス中、磁界がワイパゴムに印加される。強磁性又は常磁性の炭素繊維をコーティングのために使用するならば、これらの炭素繊維は所望のように表面に方向付けることができる。特に有利にはこの場合、炭素繊維の配向が、コーティングすべきワイパゴム表面に対してほぼ垂直である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明による第1の実施の形態のワイパゴム横断面を概略的に示した図である。
【図2】ワイパゴムの表面コーティングの架橋の際に生じる化学反応を概略的に示した図である。
【0014】
次に本発明の実施の形態を図面につき詳しく説明する。
【0015】
発明の構成
図1には、本発明による第1実施例のウィンドウワイパのためのワイパブレードのワイパゴムが示されている。この場合、ワイパゴム10は、ワイパヘッド12を有していて、ワイパヘッド12の主な役割は、ワイパゴムを、ウィンドウワイパのワイパ条片(図示せず)に固定することである。この目的のために、ワイパゴム10には、ワイパゴムの長手方向に向けられた、ゴム材料によって取り囲まれた中空室14が、ワイパ条片を導入するために設けられている。さらにワイパゴム10はワイパリップ16を有しており、ワイパリップ16のワイパエッジ18は、クリーニングしたい表面と接触する。ワイパヘッド12とワイパリップ16とは例えば傾動ウエブ20を介して互いに結合されており、傾動ウエブ20は、ワイパヘッド12に対して相対的なワイパリップ16の傾動を、ウィンドウワイパの払拭方向に応じて可能にする。
【0016】
ワイパゴム10は、例えば適当なエラストマ若しくはゴム材料、例えば、天然ゴム(NR)、ポリクロロプレン(CR)、EPDM、イソプレン(IR)、ポリブタジエン(BR)、スチレンブタジエン(SBR)、アクリロニトリルブタジエン(NBR)、アクリロニトリルブタジエンとPVCの混合物、又は上記ゴム材料の混合物から製造されている。
【0017】
このようなワイパゴムの特に機械的な特性に良好に影響を与えることができるように、このワイパゴムには、有利には少なくともクリーニングしたい表面と接触する領域で、表面コーティング22が設けられている。
【0018】
この場合、表面コーティング22は例えば、図1に示したように、ワイパエッジ18を除いて、ワイパリップ16の側面のみを被覆している。しかしながら、ワイパリップ16には全体的に表面コーティング22が設けられていても良く、表面コーティング22は場合によっては、傾動ウエブ20若しくはワイパヘッド12の表面上にも少なくとも部分的に設けられていて良い。
【0019】
表面コーティング22は本発明によれば、繊維を含有した充填材を滑動剤として有している。繊維とは炭素繊維であって、この場合、炭素繊維は有利には部分的にのみ炭化されている。炭化過程が部分的にしか行われないと、繊維表面にはいくつかの官能基が残る。部分炭化された炭素繊維が、ポリアクリロニトリル(PAN)を主体として、若しくは、セルロース又はセルロース誘導体を主体として形成されるならば、部分炭化後にもなお、炭素繊維表面に、ヒドロキシ基、アミド基、イミド基、ニトリル基が残る。これにより、炭素繊維をその官能基を介して、反応樹脂に、ワイパゴム材料表面上で堅固に固定することができる。部分炭化された炭素繊維が、ワイパゴム10の表面に化学的に結合されていることにより、表面コーティング22の摩耗耐性は著しく上昇する。
【0020】
使用される炭素繊維は有利には例えば1mmよりも小さい長さを有していて、有利には200μmよりも短く、特に3〜100μmである。
【0021】
ワイパゴム材料をコーティングするために、炭素繊維と、例えばバインダとして樹脂成分とを有したコーティング溶液を使用する。コーティング溶液は有利には二成分系として構成されていて、この目的で有利には適当な硬化剤を含有している。コーティング溶液における炭素繊維の割合は、例えば10〜70重量%である。コーティング溶液の樹脂成分としては、例えば、ジシアネート、トリシアネート、又はオリゴシアネートを含有するシアネートエステルを主体とした樹脂が使用される。
【0022】
ワイパゴムへのコーティング溶液の塗布は、例えばトランスファローラによって、若しくは浸漬、噴霧により行われる。図1に示したワイパゴム10の場合、コーティングは有利には、ワイパリップ領域の両側で行われる。このためにまず、ワイパゴム成形材を、ワイパエッジ18において互いに結合されているタンデム成形材の形で押出、若しくは射出、又はプレス成形する。コーティング溶液の塗布は、ワイパゴム成形材の加硫及び個別化後に行われる。
【0023】
コーティング溶液の塗布後には、乾燥プロセス若しくは架橋プロセスが行われ、架橋プロセスの化学的なベースは図2に示されている。図2には概略的に1つの炭素繊維24が示されており、この炭素繊維24は、表面に、ヒドロキシ基の形の官能基を有している。この官能基は、図2に示した例では、水を脱離しながらジイソシアネートと反応し、繊維24を、シアネートエステルを主体として形成されたバインダ母材に化学的に固定する。
【0024】
別の構成によれば、炭素繊維を強磁性又は常磁性に調整することができる。このために、炭素繊維には予め、強磁性又は常磁性金属が、例えばPVD又はCVDによって有利には薄くコーティングされている。コーティング溶液の塗布中又は塗布後、特にその硬化前に、電磁場がワイパゴムに印加されると、コーティング溶液内に含まれる炭素繊維24が、形成された層22の表面において増加し、通常、ワイパゴム表面に対して垂直に向けられる。このようにして、表面コーティング22の摩擦抵抗はさらに減じることができる。
【0025】
次に、コーティング溶液の組成を例示する。このコーティング溶液のワイパゴム上への塗布により、著しく摩擦を減じるコーティングとなる。
【0026】
【表1】

【0027】
本発明によるワイパゴムは有利には、自動車、レール車両、又は航空機のためのウィンドウワイパにおいて使用することができ、かつ、化学プロセスの範囲での表面クリーニングのために使用することができる。さらに、ドア又は窓シール材のためのシール材料として使用することも考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマ材料又はゴム材料から成る成形体を有するウィンドウワイパのワイパブレードのためのワイパゴムであって、少なくとも部分的に表面コーティングされている形式のものにおいて、
表面コーティング(22)が炭素繊維(24)を含有していることを特徴とする、ウィンドウワイパのワイパブレードのためのワイパゴム。
【請求項2】
炭素繊維(24)が部分的にのみ炭化されている、請求項1記載のワイパゴム。
【請求項3】
炭素繊維(24)が、セルロース又はPANを主体として構成されている、請求項1又は2記載のワイパゴム。
【請求項4】
炭素繊維(24)の長さが1mmよりも小さい、請求項1から3までのいずれか1項記載のワイパゴム。
【請求項5】
炭素繊維(24)が強磁性又は常磁性として形成されている、請求項1から4までのいずれか1項記載のワイパゴム。
【請求項6】
ゴム材料のための、特に請求項1から5までのいずれか1項記載のワイパゴムのためのコーティング溶液であって、少なくとも1つの粒子状の潤滑剤とバインダ及び/又は溶剤とを含有している形式のものにおいて、
粒子状の潤滑剤が炭素繊維(24)によって形成されている、ゴム材料のための、特に請求項1から5までのいずれか1項記載のワイパゴムのためのコーティング溶液。
【請求項7】
バインダが、シアネートエステルを主体として形成されている、請求項6記載のコーティング溶液。
【請求項8】
コーティング溶液における炭素繊維(24)の含量が、10〜70重量%である、請求項6又は7記載のコーティング溶液。
【請求項9】
請求項6から8までのいずれか1項記載のコーティング溶液をワイパゴム成形体上に塗布し、乾燥プロセスを施すことを特徴とする、ワイパゴム、特に請求項1から5までのいずれか1項記載のワイパゴムを製造する方法。
【請求項10】
乾燥プロセスの前に、ワイパゴム(10)に磁場を印加する、請求項9記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−518713(P2011−518713A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−505454(P2011−505454)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【国際出願番号】PCT/EP2009/053857
【国際公開番号】WO2009/130117
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】