説明

ウイルス性肝炎におけるsLDLR

本発明はウイルス性肝炎における可溶性LDL受容体(sLDLR)の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウイルス性肝炎、とりわけHBV感染における可溶性LDL受容体(sLDLR)の治療用途に関する。
【背景技術】
【0002】
すべての真核生物の原形質膜の構成成分であるコレステロールは、高等生物における細胞の増殖および生存に不可欠なものである。しかしながら、コレステロールの血清濃度が高いと、全身の動脈におけるアテロームプラークの形成により疾患および死の原因となる。哺乳類におけるコレステロール合成の主な部位は肝臓である。かなりな量のコレステロールが腸によっても形成される。これらの臓器によるコレステロール形成率は、食事供給源から吸収されるコレステロールの量によく反応する。肝臓および腸の外側の細胞は、コレステロールを新たに合成するよりもむしろ血清からコレステロールを捕捉する。コレステロールや他の脂質は、リポタンパク質により体液で運ばれ、リポタンパク質は比重の増加にしたがって分類される。リポタンパク質は疎水性脂質の芯とそれを取り囲む極性脂質とアポタンパク質の殻とからなる粒子である。これらのリポタンパク質には2つの役割があり、非常に疎水性の高い脂質を可溶化し、そして特定の標的細胞および組織の内外への特定の脂質の移動を制御するシグナルを含む。コレステロールは、非肝細胞の原形質膜上の特異的受容体に結合する低比重リポタンパク質(LDL)により体液で運ばれる。受容体−LDL複合体は、その後受容体介在性エンドサイトーシスとして知られる輸送機序により細胞内に取り込まれる(Goldsteinら、1979)。低比重リポタンパク質(LDL)受容体は、哺乳類の細胞において多数のリガンドのエンドサイトーシスを介在する、構造的に関連した細胞表面受容体ファミリーのプロトタイプである。
【0003】
ヒトLDL受容体についてクローンニングされた5.3キロベースのcDNAのヌクレオチド配列は、5つの構造的ドメインを明らかにし、そのうちのいくつかは他のタンパク質と配列相同性を共有する。そのNH2−末端リガンド結合ドメインは322残基からなり、47個のシステイン残基を含む。このドメインの後に4つの別のドメインが続き、1つ目は約350アミノ酸残基からなり、EGF受容体に相同性を有し、2つ目はO−結合糖に富んだ48アミノ酸残基からなり、3つ目は22アミノ酸残基の1回膜貫通ドメインであり、そして4つ目は50アミノ酸残基の細胞質ドメインである(Yamamotoら、1984)。
【0004】
抗ウイルス活性を示す可溶型LDLR、sLDLRは、インターフェロン誘導細胞の培養上清から(Fischerら、1993)および体液中(Fischerら、1994)で同定、単離された。IFNによる抗ウイルス状態の誘導に関与するいくつかのインターフェロン誘導タンパク質が同定された。抗ウイルス活性を示すそのタンパク質の1つがヒト羊膜WISH細胞の培養上清中で産生され蓄積された。このタンパク質は均質にまで精製され、sLDLRと同定された(EP0553667およびFischerら、1993参照)。sLDLRは、インターフェロンに応答して抗ウイルス状態に入った哺乳類細胞により培地に分泌されることがわかった。インターフェロンと対照的に、sLDLRは細胞において抗ウイルス状態を誘導しないが、それ自身が抗ウイルス性である。sLDLRは明らかにウイルスの複製、成熟および出芽の過程全体にわたって存在しなければならないことがわかった。これは、sLDLRがウイルスの集合(assembly)または出芽の阻害を導く複雑な過程に関与しているということを示唆する(未公開データ)。近年、C型肝炎ウイルスのエンドサイトーシスが、培養細胞上のLDL受容体により媒介されるということが示された(Agnelloら、1999)。
【0005】
肝臓の損傷や障害には様々な要因がある。ウイルスもしくは細菌感染、アルコール依存症、免疫学的疾患、または癌などによるものである。
【0006】
B型肝炎ウイルスおよびC型肝炎ウイルスによるウイルス性肝炎は、世界中の多数の人々を苦しめる管理がうまくいっていない疾患である。既知の肝炎ウイルスの数は絶えず増加している。BおよびC型肝炎ウイルスはさておき、ウイルス関連肝炎の原因となる少なくとも4つの他のウイルスがこれまでに発見されており、A型、D型、E型およびG型肝炎ウイルスと呼ばれている。
【0007】
ラミブジン(3TC)、商品名エピビル(Epivir)という抗HIV治療は、B型肝炎の治療にも承認されている。研究では、エピビルがB型肝炎ウイルスの量を非常に低いレベルに減少させることができるが、この効果は必ずしも充分なものではない。
【0008】
アデフォビルジピボキシル(ADV)は、慢性B型肝炎に効果を示すもう1つのHIV治療薬である。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、sLDLRがHBVによる肝臓感染症の治療および/または予防に有効であるという知見に基づくものである。
【0010】
本発明の第1の目的は、HBVによる肝臓感染症の治療および/または予防のための新規な手段を提供することである。したがって、本発明はHBVによるウイルス性肝炎の治療および/または予防のための医薬の製造のためのsLDLRの使用に関する。
【0011】
遺伝子医療的アプローチを適用し、sLDLRを肝臓に送達するために、本発明のさらなる側面は、病状の治療および/または予防のためのsLDLRのコーディング配列を含む発現ベクターの使用に関する。本発明はさらに、HBVによる肝臓感染症の予防および/または治療のための、sLDLRの内因性遺伝子活性化の使用、およびsLDLRを発現するように遺伝子操作された細胞の使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、ウイルス性肝炎、とりわけHBVウイルスによる肝炎におけるsLDLRの有益な効果の発見に基づくものである。
【0013】
本発明の第1の側面によれば、sLDLRはHBVによるウイルス性肝臓感染症の治療および/または予防のための医薬の製造のために使用される。
【0014】
本発明によれば、sLDLRは、慢性活性肝炎(慢性進行性肝炎とも呼ばれる)の治療および/または予防のための医薬の製造のためにも使用される。慢性活性肝炎は、肝臓細胞を損傷する肝臓の継続的な炎症である。慢性活性肝炎の原因には、ウイルス感染とその他のものとがある。その疾患は、肝臓細胞の壊死または死、活発な炎症、および肝不全、肝硬変および死をもたらし得る線維症によって特徴付けられる。発症率は10000人に1人である。危険因子は、自己免疫疾患、C型肝炎の感染経験、または6ヵ月以上のA型肝炎またはB型肝炎抗原陽性である。
【0015】
持続性慢性肝炎は、軽度で非進行性の肝臓炎症の形態であり、本発明によれば用語「肝臓感染症」に包含される疾患でもある。
【0016】
本発明において使用するためのsLDLRポリペプチドまたはタンパク質のムテインを得るために使用することができる、タンパク質におけるアミノ酸置換の製造法の例には、米国特許、MarkらのRE33,653号、4,959,314号、4,588,585号および4,737,462号、Kothsらの5,116,943号、Namenらの4,965,195号、Chongらの4,879,111号、ならびにLeeらの5,017,691号明細書に示されたようなあらゆる既知の方法工程や、米国特許第4,904,584号明細書(Shawら)に示されたリジン置換タンパク質が含まれる。
【0017】
用語「融合タンパク質」は、他のタンパク質に融合された、sLDLR、またはウイルス性sLDLR、またはそれらのムテインまたはフラグメントを含むポリペプチドであって、たとえば体液中での長時間の滞留時間を有するポリペプチドを意味する。したがって、sLDLRは、他のタンパク質やポリペプチドなど、たとえばイムノグロブリンやそのフラグメントなどに融合されてもよい。
【0018】
本明細書において用いられる「機能的誘導体」は、sLDLRおよびそれらのムテインおよび融合タンパク質の誘導体を含み、残基の側鎖に存在する官能基、またはN−もしくはC−末端基から、本技術分野において既知の手段により製造することができ、それらが依然として薬学的に許容できる、すなわちsLDLRの活性と実質的に同様のタンパク質の活性が損なわれておらず、かつそれを含む組成物に毒性を与えない限り、本発明に含まれる。
【0019】
これらの誘導体は、たとえば抗原性部位を隠し、体液におけるsLDLRの滞留を延長するポリエチレングリコール側鎖を含み得る。他の誘導体は、カルボキシル基の脂肪族エステル、カルボキシル基のアンモニアとの反応または一級アミンもしくは二級アミンとの反応によるアミド、アシル部分(たとえばアルカノイルまたは炭素環アロイル基)と形成されるアミノ酸残基の遊離のアミノ基のN−アシル誘導体、アシル部分と形成される遊離のヒドロキシル基(たとえばセリルまたはトレオニル残基のもの)のO−アシル誘導体が含まれる。
【0020】
sLDLR、ムテインおよび融合タンパク質の「活性画分」として、本発明は、sLDLRと実質的に同様の活性を有するならば、タンパク質分子のみ、またはそこに結合した関連分子または残基、たとえば糖またはリン酸残基を伴うポリペプチド鎖のあらゆるフラグメントまたは前駆体、またはタンパク質分子もしくは糖残基それら自体の会合体(aggregates)を含める。
【0021】
本発明の非常に好ましい実施態様において、用いられるsLDLRは、sLDLR、またはそのアイソフォーム、ムテイン、融合タンパク質、機能的誘導体、活性画分もしくは円順列誘導体である。これらのアイソフォーム、ムテイン、融合タンパク質または機能的誘導体は、sLDLRの生物学的活性を保持し、好ましくは本質的に少なくともsLDLRと同様の活性を有する。理想的には、このようなタンパク質は、未修飾のsLDLRと比較してさらに高い生物学的活性を有する。好ましい活性画分は、sLDLRの活性より良好な活性を有する、またはより良好な安定性またはより低い毒性もしくは免疫原性などのさらなる利点を有する、または大量生産が容易であるか、または精製が容易である。
【0022】
sLDLRの機能的誘導体は、タンパク質の性質、たとえば安定性、半減期、バイオアベイラビリティー、人体による寛容、または免疫原性を改善するためにポリマーにコンジュゲートされてもよい。この目標を達成するために、sLDLRは、たとえばポリエチレングリコール(PEG)に結合され得る。PEG化は、たとえば国際公開第92/13095号パンフレットに記載された既知の方法により実施できる。
【0023】
したがって、本発明の好ましい実施態様においては、使用されるsLDLRは、PEG化されている。
【0024】
本発明のさらに好ましい実施態様において、使用されるsLDLRは、sLDLRの全てまたは一部を含む融合タンパク質であり、イムノグロブリンの全てまたは一部に融合される。当業者は、得られる融合タンパク質はsLDLRの生物学的活性を保持することを理解するであろう。この融合は、直接でもよく、または出来るだけ短い1〜3のアミノ酸残基長またはより長いたとえば13アミノ酸残基長の短いリンカーペプチドを介してもよい。そのリンカーは、sLDLR配列とイムノグロブリン配列との間に導入される、たとえば配列E−F−M(Glu−Phe−Met)のトリペプチド、またはGlu−Phe−Gly−Ala−Gly−Leu−Val−Leu−Gly−Gly−Gln−Phe−Metを含む13アミノ酸リンカー配列であり得る。得られる融合タンパク質は、体液中の滞留時間(半減期)の延長、特異的活性の増加、発現レベルの増加、または融合タンパク質の精製が容易であるといったように性質が改善されている。
【0025】
好ましい実施態様において、sLDLRは、Ig分子の定常領域と融合される。好ましくは、たとえば、ヒトIgG1のCH2およびCH3ドメインなどの重鎖領域に融合される。sLDLRとイムノグロブリンの部分とを含む特定の融合タンパク質の産生は、たとえば国際公開第99/09063号パンフレットの実施例11に記載されている。Ig分子の他のアイソマーも本発明による融合タンパク質の産生に適しており、たとえばアイソフォームIgG2またはIgG4、またはIgMやIgAなどの他のIgクラスなどがある。融合タンパク質は、単量体または多量体、ヘテロ多量体またはホモ多量体のいずれでもよい。
【0026】
本発明の好ましい実施態様において、sLDLRは、約0.0001〜10mg/kg体重、または約0.01〜5mg/kg体重、または約0.1〜3mg/kg体重、または約1〜2mg/kg体重の量で使用される。そのうえ、更に好ましい実施態様において、sLDLRは、約0.1〜1000μg/kg体重、または1〜100μg/kg体重または約10〜50μg/kg体重の量で使用される。
【0027】
本発明はさらに、肝臓感染症の予防および/または治療のための医薬の製造におけるsLDLRのコーディング配列を含む発現ベクターの使用に関する。したがって、遺伝子治療的アプローチが、該疾患を治療および/または予防するために使用される。有利には、その後、sLDLRの発現がインサイチュで起こる。
【0028】
本発明はさらに、肝臓感染症、関節炎または炎症性大腸炎の治療および/または予防のための医薬の製造におけるsLDLRを産生するよう遺伝的に改変されている細胞の使用に関する。
【0029】
「薬学的に許容され得る」との定義は、活性成分の生物学的活性の有効性を妨げず、投与されるホストに対して毒性がない、あらゆる担体を包含することを意味する。たとえば、非経口投与として、活性タンパク質は、生理食塩水、デキストロース溶液、血清アルブミン、リンガー液などのビヒクル中で注射のための単位投与形態に処方されてもよい。
【0030】
本発明の医薬組成物の活性成分は、多様な方法で個体に投与することができる。投与経路には、皮内、経皮(たとえば徐放製剤で)、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、経口、硬膜外、局所および鼻腔内経路が含まれる。任意のその他の治療的に有効な投与経路が使用でき、たとえば、上皮または内皮組織を介した吸収や、活性薬剤をコードするDNA分子を患者に投与し(たとえばベクターを用いて)、活性薬剤がインビボで発現および分泌されるようにする遺伝子治療がある。加えて、本発明のタンパク質は、薬学的に許容され得る界面活性剤、賦形剤、担体、希釈剤およびビヒクルなどの生物学的に活性な薬剤である他の成分と共に投与することができる。
【0031】
非経口(たとえば、静脈内、皮下、筋肉内)投与に関して、活性タンパク質は、薬学的に許容され得る非経口用ビヒクル(たとえば、水、生理食塩水、デキストロース溶液)、および等張性を維持する添加剤(たとえばマンニトール)または化学的安定性を維持する添加剤(たとえば、保存料および緩衝剤)と共に、溶液、懸濁液、エマルジョンまたは凍結乾燥粉末として製剤されることができる。製剤は通常使用される技術により滅菌される。
【0032】
本発明の活性タンパク質のバイオアベイラビリティーは、国際公開第92/13095号パンフレットに記載されているように、体内におけるその分子の半減期を増加させるコンジュゲート手法、たとえばその分子のポリエチレングリコールへの連結を用いることによって改善することもできる。
【0033】
治療的に有効量の活性タンパク質は、アンタゴニストの種類、IL−18に対するアンタゴニストの親和性、アンタゴニストにより示される未解決の細胞毒性、投与経路、患者の臨床症状(内因性IL−18活性の非毒性レベルを維持するのが望ましいことなど)などの多くの変数の関数となるであろう。
【0034】
「治療的に有効量」とは、投与された場合、sLDLRがHBVウイルスの阻害をもたらす量である。単回または複数回投与として個体に投与される投与量は、sLDLR薬物動態特性、投与経路、患者の症状および特徴(性別、年齢、体重、健康状態、サイズ)、症状の範囲、併用療法、治療頻度ならびに期待される効果などの多様な因子によって変わる。確立された投与量範囲の調整および操作は充分に当業者の能力の範囲内であり、ならびに個体におけるIL−18の阻害を測定するインビトロおよびインビボ法の範囲内である。
【0035】
本発明によれば、sLDLRは、約0.0001〜10mg/kg体重、または約0.01〜5mg/kg体重、または約0.01〜5mg/kg体重、または約0.1〜3mg/kg体重、または約1〜2mg/kg体重の量で使用される。さらに好ましいsLDLRの量は、約0.1〜1000μg/kg体重、または約1〜100μg/kg体重または約10〜50μg/kg体重の量である。
【0036】
本発明による好ましい投与経路は、皮下経路による投与である。本発明によれば筋肉内投与がさらに好ましい。
【0037】
さらに好ましい実施態様において、sLDLRは毎日、または一日おきに投与される。
【0038】
日用量は通常、分割投与で、または所望の結果を得るために有効な徐放形態で投与される。2回目またはその後の投与は、初回または前回個体に投与された用量と同じまたはより少ない量、またはより多い量の投薬量で行うことができる。2回目またはその後の投与は、疾患の発症中または発症前に投与することができる。
【0039】
本発明によれば、sLDLRは、他の治療計画または薬剤に先立って、または同時に、または連続して(たとえば、多剤投与計画)、治療的に有効量で、その計画の有効性に従って医師により決定されたように、個体に予防的または治療的に投与することができる。他の治療薬剤と同時に投与される活性薬剤は、同一または異なる組成物で投与することができる。
【0040】
ここに本発明を説明したように、以下の実施例を参照することにより容易に理解されるであろう。この実施例は、例として提供されるものであり、本発明の限定を意図するものではない。
【実施例】
【0041】
実施例1:sLDLRの製造
1.1 HSLDLRフラグメントのPCR増幅
+292および+331フラグメントLDLR遺伝子を、完全LDLR遺伝子をテンプレートとして用いてPCR増幅により単離した。増幅は、テンプレート1ng、各プライマー400ng(6.1節参照)、0.2mMのdNTP混合物、2mMのMgCl2、5U PfuDNAポリメラーゼ(ストラタジーン)を、酵素を補足した緩衝液中に含有する反応混合物において、総反応容量100μlで行なった。まず94℃で2分加熱し、31回の熱サイクル(1分94℃、1分65℃、2分72℃)、その後72℃で10分処理した。
【0042】
1.2 プラスミドDNAの製造
プラスミドDNAを市販のキット(キアゲン、DNA Maxi Kit、カタログ番号12162)を用いて製造者により記載されたプロトコールにしたがって製造した。
【0043】
1.3 トランスフェクションと遺伝子増幅
CHO−DUKX細胞(DHFR活性欠損)を10%FBS補足F12中で増殖させた。トランスフェクションは、リポフェクトアミン(LipofectAmine)(ギブコ、BRL)を用いて製造者により記載されたプロトコールにしたがってカチオン性リポソームにより行なった。トランスフェクションの72時間後、細胞を選択培地に移した。DHFR活性発現細胞はコロニーを形成し、コロニーをトリプシン浸漬ペーパーディスクを用いて細胞を持ちあげることにより単離し、r−hsLDLR活性についてスクリーニングした。
【0044】
遺伝子増幅は以下の手順で行われた。
【0045】
選択培地で増殖されたコロニー(DHFR活性陽性)を、低密度(4000細胞個/cm2)で5−6のTフラスコに播種し、各フラスコは、メトトレキサートを0(対照として)〜100nMまでの範囲の濃度で増加させながら含有した。
【0046】
1.MTXに曝した約10日後、耐性コロニーがTフラスコの一部で顕微鏡的に可視化された。約10%の細胞生存率を示す培養物が次の増幅工程に選択された。
2.細胞が低密度(4000細胞個/cm2)で5−6のTフラスコに再播種され、各フラスコは、異なる濃度のメトトレキサートを含有した。細胞は工程1で選択された濃度(最低濃度)から、選択濃度の10倍(最高濃度)までの範囲でMTXの濃度を増加させながら再播種された。
3.工程1〜2が次の増幅ラウンドとして繰り返された。
4.最終の遺伝子増幅ラウンドの後、細胞は限界希釈によりサブクローニングされた。
5.r−hsLDLRを従来の方法により細胞から得た。
【0047】
1.4 バイオアッセイ
判定量的バイオアッセイを開発段階を通して生成物をモニターするために使用した。アッセイは、IFN−βに使用されるバイオアッセイと同様CPE阻害アッセイとした。開発の初期段階では、IFN−βを標準として使用した。後に精製r−hsLDLRのバッチにより置き換えた。
【0048】
WISH細胞を、37℃、5%CO2インキュベータ中で、10%FBSおよび4mMグルタミンを補足した1×MEMで培養した。アッセイの24時間前に、指数関数的に増殖した細胞を96−ウェルTCプレートに、40000細胞個/ウェルで播種した。検査されるべきサンプルおよび標準物質を希釈し、細胞含有ウェル中に分散させた。VSVを直ちにウェルにMOI 0.5pfu/細胞で添加した。プレートを37℃で16〜18時間インキュベートし、ついでエタノールで洗浄した。生存している細胞の単層をグラムクリスタルバイオレット(Gram Crystal Violet)染色により観察した。標準物質と比較した細胞変性効果の定量は、標準濃度に対する色密度をプロットすることにより行なわれた。
【0049】
実施例2:ウイルス感染ヘパトーマ細胞からのHBV放出阻害
sLDLRの病原性ウイルスを阻害する能力が、NIAID抗微生物獲得調整機関(AACF)により評価された。コンフルエントな2.2.15細胞(HBV感染ヒトHepG2肝細胞癌細胞(ATCC HB−8065)、構造的にHBVウイルス粒子を出芽している)培養物を、96ウェル平底組織培養プレート上に、2%ウシ胎仔血清を含むRPMI1640培地中に維持した(Korba & Gerin, Antivir.Res. 19:55-70, 1992)。培養物(2つの複製プレート上の4つの試験濃度のそれぞれにつき6つ)を、連続9日間毎日sLDL化合物で処理した。培地を毎日新しい試験化合物と交換した。培養培地中のHBVウイルス粒子DNAを最後の処理の24時間後に定量ブロットハイブリダイゼーションにより評価した。ニュートラルレッド色素(510nMでの取り込み色素の吸光度[A510])の取り込みを使用して、最後の処理の24時間後の毒素の相対レベルを決定した(Korba & Gerin, Antivir.Res. 19:55-70, 1992)。値は、同じプレート上に保持された未処理の細胞の9つの独立した培養物の平均のA510値の百分率として示す。毒性分析のための培養物は、抗ウイルス分析に使用したストック細胞の同一プールで同時に播種され、同一の方法で保持された。全部で3つの培養物を各濃度の試験化合物で処理した。毒性分析は、10倍高いレベルの試験化合物を利用した(3倍連続希釈法で)。CC50、EC50、EC90、およびS.I.(CC50/EC90)を算出した。ラミブジン(3TC)を陽性アッセイ対照として使用した。以下の結果が得られた。
【0050】
【表1】

【0051】
したがって、sLDLRは、毒性をはるかに下回る濃度でウイルス感染細胞からのHBVウイルス粒子の形成を阻害した。
【0052】
さらに、sLDLRで行った試験は、以下の表に示すように、アデフォビルジピボキシル耐性変異体と同様に全ての試験ラミブジンに対して活性であったことを示した。
【0053】
【表2】

【0054】
特定の実施態様の前述の記載は、他のものが現在の知識を適用することにより実施できるように本発明の一般的な性質を明らかにし、多様な適用に対して一般的な概念から逸脱することなくそのような特定の実施態様を容易に改変および/または適合し、したがってそのような適合および改変は、開示された実施態様と同等の意味および範囲内に包含されることを意図されるべきである。本明細書において用いられる表現や専門用語は、説明を目的とするものであり、限定を目的とするものではないことが理解されるべきである。
【0055】
[参考文献]
Agnello et al, (1999), PNAS, 96:12766-12771
Fischer et al, (1993), Science, Vol.262, 250-253
Goldstein et al, (1979), Nature, 279, 679-685
Yamamoto et al, (1984), Cell, Vol.39, 27-38

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肝臓感染症の治療および/または予防のための医薬の製造のためのsLDLRの使用。
【請求項2】
肝臓感染症がウイルス性である請求項1記載の使用。
【請求項3】
肝臓感染症が急性である請求項1記載の使用。
【請求項4】
肝臓感染症が慢性である請求項1記載の使用。
【請求項5】
sLDLRが、sLDLR、またはそのアイソフォーム、ムテイン、融合タンパク質、機能的誘導体、活性画分もしくは円順列誘導体である請求項1〜4のいずれかに記載の使用。
【請求項6】
sLDLRがPEG化されている請求項5記載の使用。
【請求項7】
sLDLRが融合タンパク質であり、かつイムノグロブリンの全てまたは一部に融合されたsLDLRの全てまたは一部を含む請求項5記載の使用。
【請求項8】
融合タンパク質が、イムノグロブリンの定常領域の全てまたは一部を含む請求項7記載の使用。
【請求項9】
イムノグロブリンがIgG1またはIgG2アイソタイプである請求項8記載の使用。
【請求項10】
sLDLRが、約0.0001〜10mg/kg体重、または約0.01〜5mg/kg体重、または約0.1〜3mg/kg体重、または約1〜2mg/kg体重の量で使用される請求項1〜9のいずれかに記載の使用。
【請求項11】
sLDLRが、約0.1〜1000μg/kg体重、または1〜100μg/kg体重、または約10〜50μg/kg体重の量で使用される請求項1〜10のいずれかに記載の使用。
【請求項12】
sLDLRが皮下に投与される請求項1〜11のいずれかに記載の使用。
【請求項13】
sLDLRが筋肉内に投与される請求項1〜12のいずれかに記載の使用。
【請求項14】
sLDLRが毎日投与される請求項1〜13のいずれかに記載の使用。
【請求項15】
sLDLRが一日おきに投与される請求項1〜14のいずれかに記載の使用。
【請求項16】
肝臓感染症の治療および/または予防のための医薬の製造におけるsLDLRのコーディング配列を含む発現ベクターの使用。
【請求項17】
遺伝子治療のための請求項16記載の使用。
【請求項18】
肝臓感染症の治療および/または予防のための医薬の製造における、細胞におけるsLDLRの内因性産生を誘導および/または増強するためのベクターの使用。
【請求項19】
肝臓感染症の治療および/または予防のための医薬の製造における、sLDLRを産生するように遺伝的に改変された細胞の使用。
【請求項20】
HBVによる肝臓感染症の治療および/または予防方法であって、それを必要とするホストに有効阻害量のsLDLRを投与することを含む方法。

【公表番号】特表2011−509254(P2011−509254A)
【公表日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−541140(P2010−541140)
【出願日】平成21年1月7日(2009.1.7)
【国際出願番号】PCT/IL2009/000023
【国際公開番号】WO2009/087622
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(500018608)イエダ リサーチ アンド ディベロップメント カンパニー リミテッド (35)
【Fターム(参考)】